(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159957
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】スタンディングパウチ及び包装物品
(51)【国際特許分類】
B65D 30/16 20060101AFI20241031BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241031BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241031BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B65D30/16 C
B32B27/00 H
B32B27/32 E
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024150326
(22)【出願日】2024-08-30
(62)【分割の表示】P 2023032953の分割
【原出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 直己
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 暢之
(72)【発明者】
【氏名】三木 祐二
(72)【発明者】
【氏名】浦川 直也
(57)【要約】
【課題】 製造時に不具合を生じ難く、内容物を充填してなる包装物品の落下耐性に優れたスタンディングパウチを提供する。
【解決手段】 スタンディングパウチ110は、一対の本体フィルム111A及び111Bと底フィルム112とを備え、前記一対の本体フィルムの各々は、ポリエチレンを含んだ第1基材層と、前記第1基材層上に設けられ、ポリエチレンを含んだ第1シーラント層とを含み、前記底フィルムは、ポリエチレンを含んだ第2基材層と、前記第2基材層上に設けられ、ポリエチレンを含んだ第2シーラント層とを含み、前記第2基材層の結晶化度は、前記一対の本体フィルムの各々の前記第1基材層の結晶化度と比較してより大きく、それらの差は15ポイント以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の本体フィルムと底フィルムとを備え、
前記一対の本体フィルムの各々は、ポリエチレンを含んだ第1基材層と、前記第1基材層上に設けられ、ポリエチレンを含んだ第1シーラント層とを含み、
前記底フィルムは、ポリエチレンを含んだ第2基材層と、前記第2基材層上に設けられ、ポリエチレンを含んだ第2シーラント層とを含み、
前記第2基材層の結晶化度は、前記一対の本体フィルムの各々の前記第1基材層の結晶化度と比較してより大きく、それらの差は15ポイント以上であるスタンディングパウチ。
【請求項2】
一対の本体フィルムと底フィルムとを備え、
前記一対の本体フィルムの各々は、ポリエチレンを含んだ第1基材層と、前記第1基材層上に設けられ、ポリエチレンを含んだ第1シーラント層とを含み、
前記底フィルムは、ポリエチレンを含んだ第2基材層と、前記第2基材層上に設けられ、ポリエチレンを含んだ第2シーラント層とを含み、
前記第2基材層の前記結晶化度は35%乃至95%の範囲内にあり、前記一対の本体フィルムの各々の前記第1基材層の前記結晶化度は5%乃至35%の範囲内にあるスタンディングパウチ。
【請求項3】
前記一対の本体フィルムの各々は、前記第1基材層と前記第1シーラント層との間に介在し、ポリエチレンを含んだ第1中間層を更に含んだ請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項4】
前記底フィルムは、前記第2基材層と前記第2シーラント層との間に介在し、ポリエチレンを含んだ第2中間層を更に含んだ請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項5】
前記一対の本体フィルムの各々は、前記第1基材層を間に挟んで前記第1シーラント層と向き合った最表層としての第1保護層を更に含んだ請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項6】
前記第1保護層は、熱硬化型樹脂の硬化物を含んだ請求項5に記載のスタンディングパウチ。
【請求項7】
前記底フィルムは、前記第2基材層を間に挟んで前記第2シーラント層と向き合った最表層としての第2保護層を更に含んだ請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項8】
前記第2保護層は、熱硬化型樹脂の硬化物を含んだ請求項7に記載のスタンディングパウチ。
【請求項9】
前記一対の本体フィルムの各々は、前記第1基材層と前記第1シーラント層との間に介在した第1ガスバリア層を更に含んだ請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項10】
前記底フィルムは、前記第2基材層と前記第2シーラント層との間に介在した第2ガスバリア層を更に含んだ請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項11】
前記一対の本体フィルム及び前記底フィルムの各々は、ポリエチレン含有量が90質量%以上である請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項12】
体積が0.2L乃至4.0Lの範囲内にある内容物を収容するための請求項1に記載のスタンディングパウチ。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載のスタンディングパウチと、
前記スタンディングパウチに収容された内容物と
を備えた包装物品。
【請求項14】
前記内容物の体積は0.2L乃至4.0Lの範囲内にある請求項13に記載の包装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンディングパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
スタンディングパウチへ内容物を充填してなる包装物品は、自立可能である。それ故、そのような包装物品は、例えば、自立させた状態で箱へ収納することができ、梱包が容易である。更に、そのような包装物品は、例えば、店舗の棚への見栄えよく且つ容易に並べることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、製造時に不具合を生じ難く、内容物を充填してなる包装物品の落下耐性に優れたスタンディングパウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によると、一対の本体フィルムと底フィルムとを備え、前記一対の本体フィルムの各々は、ポリエチレンを含んだ第1基材層と、前記第1基材層上に設けられ、ポリエチレンを含んだ第1シーラント層とを含み、前記底フィルムは、ポリエチレンを含んだ第2基材層と、前記第2基材層上に設けられ、ポリエチレンを含んだ第2シーラント層とを含み、前記第2基材層の結晶化度は、前記一対の本体フィルムの各々の前記第1基材層の結晶化度と比較してより大きく、それらの差は15ポイント以上であるスタンディングパウチが提供される。
【0006】
本発明の他の側面によると、一対の本体フィルムと底フィルムとを備え、前記一対の本体フィルムの各々は、ポリエチレンを含んだ第1基材層と、前記第1基材層上に設けられ、ポリエチレンを含んだ第1シーラント層とを含み、前記底フィルムは、ポリエチレンを含んだ第2基材層と、前記第2基材層上に設けられ、ポリエチレンを含んだ第2シーラント層とを含み、前記第2基材層の前記結晶化度は35%乃至95%の範囲内にあり、前記一対の本体フィルムの各々の前記第1基材層の前記結晶化度は5%乃至35%の範囲内にある上記側面に係るスタンディングパウチが提供される。
【0007】
本発明の更に他の側面によると、前記一対の本体フィルムの各々は、前記第1基材層と前記第1シーラント層との間に介在し、ポリエチレンを含んだ第1中間層を更に含んだ上記側面の何れかに係るスタンディングパウチが提供される。
【0008】
本発明の更に他の側面によると、前記底フィルムは、前記第2基材層と前記第2シーラント層との間に介在し、ポリエチレンを含んだ第2中間層を更に含んだ上記側面の何れかに係るスタンディングパウチが提供される。
【0009】
本発明の更に他の側面によると、前記一対の本体フィルムの各々は、前記第1基材層を間に挟んで前記第1シーラント層と向き合った最表層としての第1保護層を更に含んだ上記側面の何れかに係るスタンディングパウチが提供される。
【0010】
本発明の更に他の側面によると、前記第1保護層は、熱硬化型樹脂の硬化物を含んだ上記側面に係るスタンディングパウチが提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、前記底フィルムは、前記第2基材層を間に挟んで前記第2シーラント層と向き合った最表層としての第2保護層を更に含んだ上記側面の何れかに係るスタンディングパウチが提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、前記第2保護層は、熱硬化型樹脂の硬化物を含んだ上記側面に係るスタンディングパウチが提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記一対の本体フィルムの各々は、前記第1基材層と前記第1シーラント層との間に介在した第1ガスバリア層を更に含んだ上記側面の何れかに係るスタンディングパウチが提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記底フィルムは、前記第2基材層と前記第2シーラント層との間に介在した第2ガスバリア層を更に含んだ上記側面の何れかに係るスタンディングパウチが提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、前記一対の本体フィルム及び前記底フィルムの各々は、ポリエチレン含有量が90質量%以上である上記側面の何れかに係るスタンディングパウチが提供される。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、体積が0.2L乃至4.0Lの範囲内にある内容物を収容するための上記側面の何れかに係るスタンディングパウチが提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係るスタンディングパウチと、前記スタンディングパウチに収容された内容物とを備えた包装物品が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記内容物の体積は0.2L乃至4.0Lの範囲内にある上記側面に係る包装物品が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製造時に不具合を生じ難く、内容物を充填してなる包装物品の落下耐性に優れたスタンディングパウチが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る包装物品の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す包装物品の一部を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の包装物品の製造に使用するスタンディングパウチの一部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3のスタンディングパウチの本体フィルムとして使用可能な積層体の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図3のスタンディングパウチの底フィルムとして使用可能な積層体の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る包装物品の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0022】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0023】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0024】
<1>スタンディングパウチ及び包装物品
図1は、本発明の一実施形態に係る包装物品の正面図である。
図2は、
図1に示す包装物品の一部を拡大して示す断面図である。
図3は、
図1の包装物品の製造に使用するスタンディングパウチの一部を拡大して示す断面図である。
【0025】
ここで、
図2の断面は、
図1に示す包装物品100の幅方向に対して垂直であり且つ幅の中心を通る断面のうち、底近傍の部分である。また、
図3の断面は、スタンディングパウチ110の断面のうち
図2に描いている部分に相当している。なお、スタンディングパウチ110は、製造直後の状態では底部が畳まれて平たい形状を有しているが、
図3では、理解を容易にするために、底部をやや広げている。
【0026】
図1及び
図2に示す包装物品100は、包装体であるスタンディングパウチ110と、これに収容された内容物120とを含んでいる。
【0027】
スタンディングパウチ110は、
図2及び
図3に示すように、一対の本体フィルム111A及び111Bと底フィルム112とを含んでいる。
【0028】
本体フィルム111A及び111B並びに底フィルム112の各々は、後述するように、基材層とその上に設けられたシーラント層とを含んだ積層体である。
【0029】
内容物120を充填する前のスタンディングパウチ110では、
図3に示すように、本体フィルム111A及び111Bは、それらのシーラント層が向き合うように配置されている。底フィルム112は、そのシーラント層側から見て山折りになるように二つ折りされるとともに、本体フィルム111A及び111Bの一端の位置で、その山折り部MFが本体フィルム111A及び111Bの他端を向くように本体フィルム111A及び111Bによって挟まれている。
【0030】
本体フィルム111A及び111Bは、底フィルム112の山折り部MFの位置から本体フィルム111A及び111Bの上記他端まで縁部が互いにヒートシールされている。これにより、本体フィルム111A及び111Bは、それらの両脇に、
図1に示すヒートシール部HS1を形成している。
【0031】
底フィルム112は、その中央部を除いた部分が、本体フィルム111A及び111Bにヒートシールされている。具体的には、底フィルム112のうち山折り部MFによって区画された2つの部分の一方は、底フィルム112の中央部以外の位置で、本体フィルム111Aにヒートシールされており、
図1乃至
図3に示すヒートシール部HS2Aを形成している。また、底フィルム112のうち山折り部MFによって区画された2つの部分の他方は、底フィルム112の中央部以外の位置で、本体フィルム111Bにヒートシールされており、
図2及び
図3に示すヒートシール部HS2Bを形成している。そして、底フィルム112のこれら2つの部分は、スタンディングパウチ110の底部両脇の位置で外面同士が接着されている。
【0032】
なお、
図1に示すヒートシール部HS1及びHS4は、それぞれ、後述するサイドシール及びポイントシールによってヒートシールされた部分である。また、
図1乃至
図3に示すヒートシール部HS2A並びに
図2及び
図3に示すヒートシール部HS2Bは、後述する底シールによってヒートシールされた部分である。
【0033】
スタンディングパウチ110に内容物120を収容させてなる包装物品100では、本体フィルム111A及び111Bは、それらの上記他端が更にヒートシールされている。これにより、本体フィルム111A及び111Bは、それらの上記他端の位置に、
図1に示すヒートシール部HS3を形成している。
【0034】
スタンディングパウチ110は、その上方の角部を開封後に口部として利用できるように形成されている。この角部の位置には、易開封構造を設けることができる。易開封構造は、例えばノッチである。
【0035】
スタンディングパウチ110は、その上方角部以外の部分を、開封後に口部として利用できるように形成してもよい。例えば、スタンディングパウチ110は、その上方中央部を、開封後に口部として利用できるように形成してもよい。また、スタンディングパウチ110は、その上部に、口部材及び蓋体を更に含んでいてもよい。例えば、
図6に示す包装物品100Aのスタンディングパウチ110のように、内容物を抽出する部材であるスパウト113を、スタンディングパウチ110の上部の位置で本体フィルム111A及び111B間に介在させ、それらへ溶着するとともに、これを封止する部材であるキャップ114をスパウト113の口部へ嵌合又は螺合させてもよい。
【0036】
内容物120は、例えば、液体であるか、又は、液体と固体との混合物である。そのような内容物120は、例えば、食品又は薬剤である。
【0037】
内容物120の体積に制限はないが、ここで説明する技術は、内容物120の体積が大きい場合に特に有用である。この観点では、内容物120の体積は、0.2乃至4.0Lの範囲内にあることが好ましい。内容物120の体積は、より好ましくは、0.8L以上である。また、内容物120の体積は、より好ましくは3.0L以下である。
【0038】
<2>本体フィルム
図4は、
図3のスタンディングパウチの本体フィルムとして使用可能な積層体の一例を示す断面図である。
【0039】
図4に示す積層体10は、本体フィルム111A及び111Bに使用することができる。後述するように、積層体10には様々な変形が可能である。これら変形例に係る積層体も、本体フィルム111A及び111Bに使用することができる。
【0040】
積層体10は、保護層16と基材層11と印刷層14と接着剤層13Aと中間層18と無機化合物層15と被覆層17と接着剤層13Bとシーラント層12とをこの順に含んでいる。
【0041】
後述するように、基材層11と中間層18とシーラント層12とはポリエチレンを含んでいる。積層体10は、ポリエチレンの割合が90質量%以上であることが好ましい。ここで、積層体におけるポリエチレンの割合とは、積層体を構成する各層における樹脂材料の合計量に占めるポリエチレンの合計量の割合を意味する。ポリエチレンの割合を90質量%以上とすることにより、高いリサイクル性を達成することができる。
【0042】
<2.1>基材層
基材層11は、第1基材層である。基材層11はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、基材層11はポリエチレンからなる。
【0043】
基材層11の結晶化度は、底フィルム112について後述する基材層21の結晶化度と比較してより小さい。即ち、底フィルム112の基材層21の結晶化度は、本体フィルム111A及び111Bの各々の基材層11の結晶化度と比較してより大きい。これら結晶化度の差は、15ポイント以上であり、好ましくは20ポイント以上である。これら結晶化度の差は、例えば、70ポイント以下である。基材層21には、落下耐性が要求される。この要求を満たす結晶化度を基材層21において選定するとともに、この結晶化度に基材層11の結晶化度を近づけてしまうと、スタンディングパウチを製造しようとしても、フィルムのカールが大きく、製袋できないものとなってしまう。そのため、基材層11は基材層21に比べて結晶化度がある程度低いことが好ましい。具体的には、15ポイント以上低いことが好ましい。
【0044】
基材層11の結晶化度は、5%乃至35%の範囲内にあることが好ましい。基材層11の結晶化度は、より好ましくは10%以上である。また、基材層11の結晶化度は、より好ましくは30%以下である。
【0045】
ここで、「結晶化度」は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°乃至30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である。結晶化度の測定方法については、後で詳述する。
【0046】
後述するように、このような構成を採用したスタンディングパウチ110は、その製造時に不具合を生じ難い。また、後述するように、このような構成を採用したスタンディングパウチ110へ内容物120を充填してなる包装物品100は、落下耐性に優れている。
【0047】
基材層11に含まれるポリエチレンは、エチレンのホモポリマーであってもよく、エチレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。ポリエチレンがエチレンと他のモノマーとの共重合体である場合、共重合体に占めるエチレンの割合は、例えば、80mol%以上である。
【0048】
他のモノマーは、例えば、α-オレフィンである。一例によると、α-オレフィンは炭素数が3乃至20の範囲内にある。そのようなα-オレフィンは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、又は6-メチル-1-ヘプテンである。
【0049】
ポリエチレンは、エチレンと、酢酸ビニル及びアクリル酸エステルのうちの一方との共重合体であってもよい。また、エチレンと、酢酸ビニル、その完全乃至部分けん化物、(メタ)アクリル酸、又はそのエステル化物乃至イオン架橋物との共重合体であってもよい。
【0050】
基材層11は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は超低密度ポリエチレン(VLDPE)である。
【0051】
ここで、高密度ポリエチレンは、密度が0.942g/cm3以上であり、中密度ポリエチレンは、密度が0.930g/cm3以上0.942g/cm3未満であり、低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満であり、直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm3以上0.930cm3未満であり、超低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm3未満である。
なお、密度は、JIS K7112:1999に準拠した方法で得られる値である。
【0052】
基材層11に含まれるポリエチレンは、バイオマス由来のポリエチレンであってもよい。バイオマス由来のポリエチレンとしては、例えば、グリーンポリエチレン(Braskem社製)を使用することができる。
【0053】
或いは、基材層11に含まれるポリエチレンは、メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンであってもよい。ここで、メカニカルリサイクルとは、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕し、その後粉砕したフィルムをアルカリ洗浄してフィルム表面上の汚れ及び異物を除去した後、高温及び減圧下で乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させることでポリエチレンフィルムの除染を行うことである。
【0054】
或いは、基材層11に含まれるポリエチレンは、ケミカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンであってもよい。
【0055】
基材層11の融点は、100℃乃至140℃の範囲内にあることが好ましく、120℃乃至140℃の範囲内にあることがより好ましい。なお、融点は、JIS K7121-1987に準拠した方法で得られる値である。
【0056】
基材層11は、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。基材層11は、無延伸フィルムであることが望ましい。基材層11が、底フィルム112の基材層21より低い結晶化度を有し、無延伸フィルムである場合、スタンディングパウチ110の製造時に、本体フィルム111A及び111Bとして使用する積層体10が、熱によって反ることをより確実に防ぐことができる。基材層11が延伸フィルムである場合、基材層11は、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。なお、本明細書において、用語「フィルム」は厚さの概念を含まない。
【0057】
本明細書において、延伸フィルムが一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムの何れであるかは、以下に説明するように、広角X線回折法によるin-plane測定を行うことにより判別することができる。この測定によって得られるX線回折パターンは、フィルム面に存在している分子鎖の配向度に関する情報を含んでいる。
【0058】
ポリマーフィルムを一軸延伸すると、シシケバブ構造と呼ばれる高次構造が現れる。シシケバブ構造は、伸長鎖晶であるシシ構造と、ラメラ晶であるケバブ構造とからなる。一軸延伸フィルムでは、この高次構造が高い秩序度で配列しており、それ故、一軸延伸フィルムに対する上記の測定によって得られるX線回折パターンは、シャープな回折ピークを含むことになる。即ち、一軸延伸フィルムに対して上記の測定を行った場合、明瞭な回折ピークが現れる。なお、「明瞭な回折ピーク」は、半値幅が10°未満の回折ピークを意味している。
【0059】
これに対し、二軸延伸フィルムの製造では、特定の方向へ延伸し、次いで、先の方向に対して垂直な方向へ延伸する。そのため、最初の延伸によって上記の高次構造を生じるものの、この高次構造は2回目の延伸によって乱される。そのため、二軸延伸フィルムに対して上記の測定を行った場合、これによって得られるX線回折パターンでは、回折ピークはブロードになっている。即ち、二軸延伸フィルムについて上記の測定を行った場合、明瞭な回折ピークは現れない。
【0060】
以上のように、一軸延伸フィルムと二軸延伸フィルムとでは、上記の測定によって得られるX線回折パターンが相違する。従って、これに基づいて、延伸フィルムが一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムの何れであるかを判別することができる。
【0061】
フィルムは、キャスト法、インフレーション法など、公知の製法にて製造することができる。また、密度が異なるポリエチレンを共押出法により押出した多層構造のポリエチレンフィルムを基材層11として用いることも可能である。延伸フィルムは、例えば、ポリエチレンをTダイ法又はインフレーション法などにより製膜して得られたフィルムを延伸することにより得られる。
【0062】
基材層11のヘイズは、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。なお、ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠した方法で得られる値である。
【0063】
基材層11の厚さは、10μm乃至200μmの範囲内にあることが好ましい。基材層11の厚さは、例えば、10μm乃至50μmの範囲内であり、又は、15μm乃至50μmの範囲内であり、又は、12μm乃至35μmの範囲内である。基材層11が薄すぎると、積層体10の強度が小さくなりやすい。また、基材層11が厚すぎると、積層体10の加工適性が低下しやすい。
【0064】
基材層11は、表面処理されていることが好ましい。この処理によると、基材層11と基材層11に隣接する層との密着性を向上させることができる。
【0065】
表面処理の方法は特に限定されない。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス及び/又は窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
【0066】
基材層11は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、及び改質用樹脂などが挙げられる。
【0067】
基材層11に占めるポリエチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一例によると、基材層11は、ポリエチレンからなる。他の例によると、基材層11はポリエチレンと添加剤とからなる。
【0068】
基材層11は、着色されていてもよく、例えば、白色であってよい。
【0069】
基材層11は、上述した通り、基材層21と比較して結晶化度がより低い。このような基材層11の場合、スタンディングパウチ110の製造時に、本体フィルム111A及び111Bとして使用する積層体10が、熱によって大きく反ることはない。従って、このような基材層11の場合、スタンディングパウチ110の製造時に、不良品や製造装置のトラブル等の不具合を生じ難い。この観点では、基材層11の結晶化度は、上述した範囲内にあることが好ましい。
【0070】
なお、基材層11の結晶化度は、基材層11に使用するポリエチレンフィルムの延伸度合いや、フィルム製造時又は製造後の熱履歴を制御することなどで調整することができる。例えば、製膜後に徐冷すると結晶化度は高まり、急冷すると結晶化度は下がる。また、結晶核剤などの添加物を配合することで結晶化度を向上させることも可能である。
【0071】
<結晶化度の測定方法>
基材層11の結晶化度は、平行ビーム法を用いたX線回折法によって測定する。以下に結晶化度の測定方法の一例について説明する。
【0072】
先ず、基材層11のX線回折パターンを、リガク社製の広角X線回折装置を使用し、アウト・オブ・プレーン(Out-of-plane)測定で、回折角度10°乃至30°の範囲を2θ/θスキャンさせることで得る。X線としては特性X線CuKαを用い、多層膜ミラーによりX線を平行化してX線を基材層11へ入射させ、受光ユニットには平板コリメータを取り付けたシンチレーション検出器を用いる。
【0073】
得られたX線回折パターンより、結晶成分のピーク面積と非晶成分のハローパターン面積とを求め、それら面積の合計に占める結晶成分のピーク面積の割合を結晶化度として算出する。
基材層11が複数の層を有する場合は、基材層11の最表面の何れか一方の結晶化度を測定する。
【0074】
基材層11がポリエチレンフィルムの場合、回折角度10°乃至30°の範囲でスキャンを行うと、(110)面と(200)面に対応する2つのシャープな結晶成分のピークとブロードな非晶成分のハローパターンとが観測される。これらを分離解析し、結晶成分のピークの面積と非晶成分のハローパターンの面積とを算出すると、下記式(1)より結晶化度が求められる。
【0075】
結晶化度=結晶成分のピーク面積/(結晶成分のピーク面積+非晶成分のハローパターン面積)…(1)
平行ビーム法以外のX線回折法として集中法が知られているが、集中法では、樹脂フィルム等の表面に凹凸を有する試料の場合、測定面の位置ずれによるピークの広がり等の測定結果への影響が生じやすい。これに対し、平行ビーム法では、表面に凹凸を有する試料の場合であっても、測定面の位置ずれが測定結果へ及ぼす影響が小さい。
【0076】
一方で、基材層11は、無延伸フィルムであることが好ましいが、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムであってもよく、上述の通り、これらの判別法としては、X線回折法によるin-plane法を用いることが可能である。このin-plane法は、X線入射角度θ、及び、回折されたX線が検出器にて検知される角度2θを、それぞれ、上記のout-of-plane法において特定の結晶面に対応した回折ピーク、例えば、ポリエチレンフィルムの(110)面に対応した回折ピークが検出されたときの角度θ及び角度2θへ固定し、この状態で、測定対象であるフィルムを面内方向にスキャンすることで回折パターンを得るというものである。
【0077】
機械方向(MD)に一軸延伸された一軸延伸フィルムに対してin-plane測定を行うと、MD方向を0°と定義した場合、(110)面に対応したシャープな回折ピークを角度2θが約±90°の位置に有する回折パターンを得ることができる。一方で、二軸延伸されたフィルムの場合は、一軸延伸により得られた高次構造が2回目の延伸により乱され、異方性が低下しているため、この(110)面に対応したシャープな回折ピークを有している回折パターンは得られない。従って、in-plane測定は、一軸延伸フィルムと二軸延伸フィルムとを互いから区別する方法の一つとして挙げることができる。
【0078】
<2.2>シーラント層
シーラント層12は、第1シーラント層である。シーラント層12は、基材層11と向き合っている。シーラント層12はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、シーラント層12はポリエチレンからなる。ポリエチレンとしては、例えば、基材層11が含むポリエチレンについて上述したものを使用することができる。シーラント層12は、好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は超低密度ポリエチレン(VLDPE)であり、より好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0079】
ポリエチレンは、環境負荷の観点から、バイオマス由来のポリエチレン又はリサイクルされたポリエチレンであることが好ましい。
【0080】
シーラント層12は、上述した添加剤を更に含んでいてもよい。
シーラント層12に占めるポリエチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一例によると、シーラント層12は、ポリエチレンからなる。他の例によると、シーラント層12はポリエチレンと添加剤とからなる。
【0081】
シーラント層12は、透明であってもよく、不透明であってもよい。後者の場合、シーラント層12は、白色、黒色、灰色、又はセピア色等とすることができる。シーラント層12において、これらの不透明な層は、単独で使用してもよく、これらの2以上を含んだ多層構造を形成していてもよく、これらと透明シーラントとの組み合わせであってもよい。シーラント層12が透明である積層体10は、これをスタンディングパウチ110の本体フィルム111A及び111Bとして使用した場合に、内容物120を視認し易い。シーラント層12が不透明である積層体10は、これをスタンディングパウチ110の本体フィルム111A及び111Bとして使用した場合に、印刷層14が表示する画像の視認を内容物120が妨げることがない。特に、白色のシーラント層12は、印刷層14が表示する画像の視認性を向上させる。
【0082】
シーラント層は、その材料樹脂に顔料等を混合することで、白色、灰色、又は黒色等に着色させることができる。例えば、シーラント層は、その材料樹脂に酸化チタンを混合すると白色に、カーボンブラックを混合すると黒色に、両方を混合すると灰色となる。シーラント層に遮光性を求める場合は、黒色、灰色、又はセピア色であることが好ましい。遮光性シーラントは、例えばカーボンブラックを含有する。
【0083】
シーラント層12の厚さは、製造する包装袋の形状や、収容される内容物の質量等を考慮して適宜設定できるが、例えば30μm以上が好ましく、内容物保持の観点から60μm以上がより好ましい。また、シーラント層12の厚さは、製袋効率とコストの面から、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下とすることができる。
【0084】
シーラント層12は、例えば、無延伸のポリエチレン樹脂フィルムであるか、又は、ポリエチレンの溶融押出により形成される層である。
【0085】
<2.3>印刷層
印刷層14は、第1印刷層である。印刷層14は、基材層11のシーラント層12と向き合った面に、即ち、基材層11の裏面に設けられている。なお、印刷層14が設けられる位置は限定されない。即ち、印刷層14は、基材層11の表面に設けてもよいし、基材層11とシーラント層12との間であれば、どの位置に設けてもよい。例えば、印刷層14は、中間層18の何れかの面に設けてもよい。また、積層体10は、複数の印刷層を含んでいてもよい。印刷層14は、省略してもよい。
【0086】
印刷層14に用いる印刷インキとしては、ポリエチレンに対する付着性を有するものであれば、特に限定されない。印刷層14は、例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、及び塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダ樹脂に、各種顔料、体質顔料、可塑剤、乾燥剤、及び安定剤等の添加剤が添加されているインキにより構成される。印刷インキとしては、バイオマス由来のインキを用いることが好ましい。印刷方式としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、及びシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、及びグラビアコート等の周知の塗布方式を用いることができる。また、遮光性インキも好ましく使用することができる。遮光性インキとしては、例えば、白色インキ、黒色インキ、銀インキ、及びセピア色インキ等が挙げられる。
【0087】
<2.4>中間層
中間層18は、第1中間層である。中間層18は、基材層11とシーラント層12との間に設けられている。ここでは、中間層18は、基材層11と中間層18との間に印刷層14が介在するように、基材層11とシーラント層12との間に設けられている。中間層18は省略することができる。
【0088】
中間層18は、ポリエチレンを含んでいる。ポリエチレンとしては、例えば、基材層11が含むポリエチレンについて上述したものを使用することができる。
【0089】
中間層18に含まれるポリエチレンは、基材層11に含まれるポリエチレンと同じであってもよく、異なっていてもよい。また、中間層18は、上述した添加剤を更に含んでいてもよい。
【0090】
中間層18に占めるポリエチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一例によると、中間層18は、ポリエチレンからなる。他の例によると、中間層18はポリエチレンと添加剤とからなる。
【0091】
一例によれば、中間層18は、結晶化度が35%未満である。中間層18として結晶化度が小さなフィルムを用いることで、積層体10の強度を向上させること、特には、包装物品100の落下による破損(破袋)を生じ難くすることができる。このような観点では、中間層18は無延伸フィルムであることが好ましい。
【0092】
他の例によれば、中間層18は、結晶化度が35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。中間層18の結晶化度は、一例によると、75%以下である。
【0093】
中間層18として結晶化度が大きなフィルムを用いると、積層体10の強度、特には突き刺し強度が高まる。ポリエチレンの割合が高い積層体は、他の積層体と比較して腰が弱く、それ故、包装材料として使用した場合に折り曲げられる機会が多い。折り曲げられる機会が多くなると、ピンホールが発生する可能性が高まるが、突き刺し強度に優れている積層体10は、ピンホールを発生し難い。この観点から、中間層18は、延伸フィルムであることが好ましい。
【0094】
中間層18の融点は、100℃乃至140℃の範囲内にあることが好ましく、120℃乃至140℃の範囲内にあることがより好ましい。
【0095】
中間層18の厚さは、10μm乃至200μmの範囲内にあることが好ましく、15μm乃至50μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0096】
中間層18は、着色されていてもよく、例えば、白色であってよい。
【0097】
中間層18としては、キャスト法、インフレーション法など、公知の製法にて製造することができる。また、密度が異なるポリエチレンを共押出法により押出した多層構造のポリエチレンフィルムを中間層18として用いることも可能である。延伸フィルムは、例えば、ポリエチレンをTダイ法又はインフレーション法などにより製膜して得られたフィルムを延伸することにより得られる。
【0098】
<2.5>無機化合物層
無機化合物層15は、第1無機化合物層である。無機化合物層15は、中間層18の一方の面に設けられている。ここでは、無機化合物層15は、中間層18のシーラント層12と向き合った面に設けられている。無機化合物層15は、中間層18の基材層11と向き合った面に設けられていてもよい。無機化合物層15は、基材層11のシーラント層12と向き合った面に、ここでは、基材層11と印刷層14との間に設けられていてもよい。無機化合物層15は、基材層11のシーラント層12とは反対側の面に、ここでは、積層体の最外層に設けられていてもよい。無機化合物層15は省略することができる。
【0099】
無機化合物層15は、無機化合物、例えば、酸化アルミニウムや酸化ケイ素のような無機酸化物からなる薄膜であり、酸素や水蒸気の透過を抑制するガスバリア層又はその一部として機能する。無機化合物層15は、塗工によって形成したものであってもよく、無機化合物を蒸着したものであってもよい。
【0100】
無機化合物層15に含まれる無機化合物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、及び酸化錫等の金属酸化物が挙げられる。無機化合物層15は、金属酸化物からなる蒸着膜であることが好ましい。透明性及びバリア性の観点から、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されるものであってもよい。コストを考慮すると、金属酸化物は、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素から選択されるものであることが好ましい。加工時に引張延伸性に優れる観点では、金属酸化物として酸化ケイ素を用いることが好ましい。無機化合物層15を金属酸化物からなる蒸着膜とすることにより、積層体10のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。
【0101】
金属酸化物からなる蒸着膜は、透明性を有するため、金属からなる蒸着膜と比べて、積層体からなる包装材料を手にする使用者に、金属箔が使用されているとの誤認を生じさせ難いという利点がある。
【0102】
酸化アルミニウムからなる蒸着膜の膜厚は、5nm以上30nm以下であることが好ましい。膜厚が5nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が30nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が30nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、酸化アルミニウムからなる蒸着膜の膜厚は、7nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0103】
酸化ケイ素からなる蒸着膜の膜厚は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。膜厚が10nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が50nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が50nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、酸化ケイ素からなる蒸着膜の膜厚は、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0104】
無機化合物層15は、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜には、物理気相成長法又は化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、プラズマCVD法、及び光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、及びプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、及び誘導加熱方式の何れかの方式を用いることが好ましい。
【0106】
アルミニウムなどの金属蒸着膜は廃棄適性がある。要求される遮光性能やバリア性能が満たされるのであれば、無機化合物層15に代えてアルミニウム蒸着膜を用いることもできる。アルミニウム蒸着層の厚さは、40nmから80nmが好ましい。アルミニウム蒸着層は、中間層18にも基材層11にもシーラント層12にも設けることができる。アルミニウム蒸着層は、シーラント層12に設ける場合は40nm前後の厚さを有していることが好ましく、中間層18又は基材層11に設ける場合は80nm前後の厚さを有していることが好ましい。
【0107】
<2.6>被覆層
被覆層17は、第1被覆層である。被覆層17は、無機化合物層15を被覆している。無機化合物層15と被覆層17との積層体は、積層体10の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上させる第1ガスバリア層を構成している。第1ガスバリア層は、無機化合物層15のみを含んでいてもよく、被覆層17のみを含んでいてもよい。積層体10は、第1ガスバリア層を含んでいなくてもよい。
【0108】
被覆層17は、例えば、塗工で形成することができる。この塗工には、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、及びエポキシ樹脂などの樹脂を含んだ塗液を使用することができる。この塗液には、有機又は無機粒子、層状化合物、及び硬化剤などの添加剤を添加してもよい。
【0109】
被覆層17は、例えば、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び、金属アルコキシド又は金属アルコキシドの加水分解物の反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子とを含む有機無機複合層であってよい。この有機無機複合層は、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、及び、シランカップリング剤又はシランカップリング剤の加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを更に含んでいてよい。
【0110】
金属アルコキシド及びその加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC2H5)4]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC3H7)3]等の一般式M(OR)nで表されるもの、並びにその加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0111】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における、金属アルコキシド、その加水分解物又はそれらの反応生成物の合計含有量は、例えば、酸素バリア性の観点から40質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよく、65質量%以上であってもよい。また、上記塗液における、金属アルコキシド、その加水分解物又はそれらの反応生成物の合計含有量は、例えば、70質量%以下であってもよい。
【0112】
有機無機複合層に含まれる水溶性高分子は、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の水酸基含有高分子が挙げられる。酸素ガスバリア性を一層向上させる観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系の水溶性高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、例えば、40000乃至180000の範囲内にある。
【0113】
有機無機複合層に含まれるポリビニルアルコール系の水溶性高分子は、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化(部分けん化も含む)して得ることができる。この水溶性高分子は、酢酸基が数十%残存しているものであってもよく、酢酸基が数%しか残存していないものであってもよい。
【0114】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における水溶性高分子の含有量は、例えば、酸素バリア性の観点から15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。また、上記塗液における水溶性高分子の含有率は、例えば、酸素バリア性の観点から50質量%以下であってもよく、45質量%以下であってもよい。
【0115】
有機無機複合層に使用されるシランカップリング剤としては、有機官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。そのようなシランカップリング剤としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ-メタクリロキシプリピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらの中から選択されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
シランカップリング剤としては、有機官能基としてエポキシ基を有するものを用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤は、ビニル基、アミノ基、メタクリル基又はウレイル基、イソシアネート基のように、エポキシ基とは異なる有機官能基を有していてもよい。また、これらを、誘導体化、多官能化、又は複合化したものでもよい。これらの中から選択されるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0117】
有機官能基を有するシランカップリング剤、その加水分解物又はそれらの反応生成物は、その有機官能基と水溶性高分子の水酸基との相互作用によって、被覆層17の酸素バリア性と、隣接する層との密着性とを一層向上させることができる。特に、シランカップリング剤、その加水分解物又はそれらの反応生成物がエポキシ基を有し、水溶性高分子がポリビニルアルコール(PVA)である場合、エポキシ基とPVAの水酸基との相互作用により、酸素バリア性と、隣接する層との密着性とを更に向上させることができる。
【0118】
有機無機複合層の形成に用いられる塗液における、シランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の合計含有量は、例えば、酸素バリア性の観点から1質量%以上であってもよく、2質量%以上であってもよい。また、上記塗液におけるシランカップリング剤、その加水分解物及びそれらの反応生成物の合計含有量は、例えば、酸素バリア性の観点から15質量%以下であってもよく、12質量%以下であってもよい。
【0119】
被覆層17の厚さは、50nm以上1000nm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。被覆層17の厚さが50nm以上であると、高いガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【0120】
<2.7>接着剤層
接着剤層13Aは、印刷層14が設けられた基材層11を中間層18へ貼り合わせている。接着剤層13Bは、無機化合物層15及び被覆層17が設けられた中間層18をシーラント層12へ貼り合わせている。中間層18を省略した場合、接着剤層13A及び13Bの一方は省略することができる。
【0121】
接着剤層13A及び13Bは、少なくとも1種類の接着剤からなる。接着剤は、1液硬化型接着剤であってもよく、2液硬化型接着剤であってもよく、非硬化型接着剤であってもよい。接着剤は、無溶剤型接着剤であってもよく、溶剤型接着剤であってもよい。
【0122】
接着剤としては、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリアミン系接着剤等のエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤及びオレフィン系接着剤などが挙げられる。バイオマス成分を含む接着剤も、好ましく用いることができる。接着剤は、好ましくは、ガスバリア性を有するポリアミン系接着剤、又はウレタン系接着剤である。ガスバリア性接着剤の具体例としては、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」及びDIC社製の「Paslim」が挙げられる。
【0123】
接着剤層13A及び13Bは、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とを含む樹脂組成物の硬化物であってもよく、必要に応じてリン酸変性化合物を更に含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。このような接着剤層13A及び13Bに使用する樹脂組成物のうち、主剤であるポリオール及び硬化剤であるイソシアネート化合物、又は、主剤であるポリアミン樹脂及び硬化剤であるエポキシ化合物を例にとると、主剤及び硬化剤のどちらか一方又は双方が、直鎖構造だけでなく屈曲した構造を有しているか、又は、そのような構造を形成し得るユニットを含んでいることが好ましい。例えば、芳香環のオルト位又はメタ位に置換基を有する化合物をこれらの構造に組み込むことで、硬化被膜において、直鎖状の架橋だけでなく屈曲状の架橋構造も形成することが可能となる。この屈曲状の架橋構造は、分子の配向を制御し、これにより、酸素バリア性や水蒸気バリア性に寄与し得る。樹脂組成物には、必要に応じて、更なるバリア性向上のため、無機層状化合物などの無機化合物を配合しても構わない。これにより、積層体10の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を更に改善することができる。
【0124】
接着剤層13A及び13Bの各々の厚さは、0.1μm乃至20μmの範囲内にあることが好ましく、0.5μm乃至10μmの範囲内にあることがより好ましく、1乃至5μmの範囲内にあることが更に好ましい。
【0125】
接着剤層13A及び13Bは、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法及びトランスファーロールコート法など従来公知の方法により、中間層18やシーラント層12の上に塗布及び乾燥することにより形成することができる。
【0126】
<2.8>保護層
保護層16は、第1保護層である。保護層16は、積層体10の最表層であって、基材層11のシーラント層12と向き合った面の裏面を被覆している。保護層16は、省略してもよい。
【0127】
保護層16は、熱硬化型樹脂の硬化物を含んでいる。熱硬化型樹脂は、耐熱性を有する硬化物を生じるものであれば特に限定されるものではなく、例として、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、及び水溶性高分子等が挙げられる。保護層16は、熱硬化型樹脂の硬化物を1種含むものであってもいし、2種以上を含むものであってもよい。保護層16には、例えば耐熱性を向上させる目的で、無機フィラーを配合することができる。
【0128】
保護層16は、一形態において、水溶性高分子を含むことが好ましく、有機金属化合物を更に含む有機無機複合層であることがより好ましい。
【0129】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の水酸基含有高分子が挙げられる。保護層16は、一形態において、被覆層17が含有し得るポリビニルアルコール系水酸基含有高分子を含むことが好ましい。
【0130】
保護層16は、有機金属化合物として、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び、金属アルコキシド又は金属アルコキシドの加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを含有することが好ましい。金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC2H5)4]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC3H7)3]等の一般式M(OR)nで表されるものが挙げられる。
【0131】
また、保護層16は、有機金属化合物として、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、及び、シランカップリング剤又はシランカップリング剤の加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを更に含むことが好ましい。
【0132】
保護層16は、一形態において、被覆層17を形成するための塗布液を用いて形成することができる。積層体10が被覆層17を含む場合、保護層16は、被覆層17を形成するために用いる塗布液と同じ塗布液を用いて形成された層であってもよい。保護層16は上述の塗布液を用いた方法に限らず、基材層11又は基材層21を構成するポリエチレン樹脂と、融点が高く耐熱性のある熱可塑性樹脂との共押出により製膜することも可能である。この場合、耐熱性のある熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリメチルペンテン樹脂などの融点が高い樹脂を用いることができる。この際、基材層11又は基材層21を構成するポリエチレン樹脂と、融点が高く耐熱性のある熱可塑性樹脂との接着性を考慮して、それらの間に接着性樹脂を介在させることもできる。
【0133】
保護層16は、ヒートシール時における積層体10の表面の熱ダメージを軽減する。積層体10、耐熱性に優れる保護層16を最表層に備えることにより、耐熱性に劣るポリエチレン樹脂を基材としながらも、ヒートシール性及び生産性が確保される。
【0134】
保護層16の厚さは、0.3μm乃至3μmの範囲内にあることが好ましい。保護層16が薄すぎると、高い耐熱性を達成し難い傾向にある。保護層16が厚すぎると、積層体10の製造過程において樹脂硬化膜を十分に乾燥させることが難しくなり易い。
【0135】
また、保護層16は、基材層11への耐熱性付与による製袋時の不具合発生の抑制だけでなく、輸送時のピンホールを抑制する効果も期待できる。
【0136】
<2.9>他の層
積層体10は、1以上の他の層を更に含むことができる。
例えば、積層体10は、中間層18の無機化合物層15が形成される面を被覆したアンカーコート層を更に含んでいてよい。或いは、積層体10は、基材層11の接着剤層13Aと向き合う面を被覆したアンカーコート層を更に含んでいてよい。或いは、積層体10は、中間層18の無機化合物層15が形成される面を被覆したアンカーコート層と、基材層11の接着剤層13Aと向き合う面を被覆したアンカーコート層とを更に含んでいてよい。
【0137】
アンカーコート層は、公知のアンカーコート剤を用いて形成することができる。これにより、層間の密着性、例えば、中間層18と金属酸化物からなる無機化合物層15との密着性を向上させることができる。アンカーコート剤としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等を例示できる。また、アンカーコート層として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びアクリルポリオールなどの各種水酸基含有高分子に対し、イソシアネート化合物を反応させたポリウレタン系硬化被膜を設けることもできる。また、基材と蒸着による層との間の密着性向上のため、アンカーコート剤には、上述した各種シランカップリング剤を配合することができる。耐熱性及び層間接着強度の観点からは、アンカーコート剤はポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0138】
<3>底フィルム
図5は、
図3のスタンディングパウチの底フィルムとして使用可能な積層体の一例を示す断面図である。
【0139】
図5に示す積層体20は、底フィルム112に使用することができる。後述するように、積層体20には様々な変形が可能である。これら変形例に係る積層体も、底フィルム112に使用することができる。
【0140】
積層体20は、保護層26と基材層21と印刷層24と接着剤層23Aと中間層28と無機化合物層25と被覆層27と接着剤層23Bとシーラント層22とをこの順に含んでいる。
【0141】
後述するように、基材層21と中間層28とシーラント層22とはポリエチレンを含んでいる。積層体20は、ポリエチレンの割合が90質量%以上であることが好ましい。ポリエチレンの割合を90質量%以上とすることにより、高いリサイクル性を達成することができる。
【0142】
<3.1>基材層
基材層21は、第2基材層である。基材層21はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、基材層21はポリエチレンからなる。
【0143】
上記の通り、基材層21の結晶化度は、基材層11の結晶化度と比較してより大きい。基材層21の結晶化度は、35%乃至95%の範囲内にあることが好ましい。基材層21の結晶化度は、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。また、基材層21の結晶化度は、より好ましくは90%以下である。
【0144】
基材層21は、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。基材層21は、延伸フィルムであることが望ましい。基材層21が延伸フィルムである場合、基材層21は、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。基材層21が、本体フィルム111A及び111Bの各々の基材層11より高い結晶化度を有し、延伸フィルムである場合、このような基材層21を含んだ積層体20は、スタンディングパウチ110の底フィルム112として使用した際の耐衝撃強度がとりわけ高い。
【0145】
基材層21は、上述した通り、基材層11と比較して結晶化度がより高い。このような基材層21を含んだ積層体20は、スタンディングパウチ110の底フィルム112として使用すると耐衝撃強度が高く、内容物120を充填して包装物品100とした際の落下耐性に優れている。また、このような基材層21を含んだ積層体20は、突き刺し強度にも優れている。これらの観点では、基材層21の結晶化度は、上述した範囲内にあることが好ましい。
【0146】
ポリエチレンは、結晶性高分子であるため、結晶部と非晶部とを併せ持っている。結晶化度が高いポリエチレンは、結晶部分の比率が高い。この結晶部分は樹脂の粘弾性挙動における弾性部分を支配するため、結晶化度が高いとフィルムの剛性が向上する。
【0147】
この粘弾性挙動の影響で、結晶化度の高いフィルムにおいては、樹脂の塑性変形に伴う歪も大きくなる。その結果、フィルムに加わった瞬間衝撃にて発生した歪に対して樹脂の変形を抑制する効果が得られ、破壊が起きにくくなる。このため、ポリエチレンを含み結晶化度が高い基材層21を備えた積層体20は、高い突き刺し強度を有し得る。
【0148】
この基材層21を構成するポリエチレンとしては、αオレフィンを共重合させたエチレン-αオレフィン共重合体が好ましく用いられる。その理由としては、底材の基材層21の結晶化度を35%以上に調整した場合、その結晶間にタイ(tie)分子を形成しやすくなるからである。結晶化度向上による剛性付与だけでなくタイ(tie)分子形成による靭性向上も期待され、このような基材層21を底フィルムに使用した場合、落下耐性に特に優れたスタンディングパウチを実現することができる。この場合、基材層21において、エチレン-αオレフィン共重合体は、単独で使用してもよく、他のポリエチレンとの混合物であっても構わない。
【0149】
以上の点を除き、基材層21には、基材層11について上述したのと同様の構成を採用することができる。
【0150】
<3.2>シーラント層
シーラント層22は、第2シーラント層である。シーラント層22は、基材層21と向き合っている。シーラント層22はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、シーラント層12はポリエチレンからなる。シーラント層22には、シーラント層12について上述したのと同様の構成を採用することができる。
【0151】
<3.3>印刷層
印刷層24は、第2印刷層である。印刷層24は、基材層21のシーラント層22と向き合った面に、即ち、基材層21の裏面に設けられている。なお、印刷層24が設けられる位置は限定されない。即ち、印刷層24は、基材層21の表面に設けてもよいし、基材層21とシーラント層22との間であれば、どの位置に設けてもよい。例えば、印刷層24は、中間層28の何れかの面に設けてもよい。また、積層体20は、複数の印刷層を含んでいてもよい。印刷層24は、省略してもよい。
【0152】
印刷層24には、印刷層14について上述したのと同様のインキを使用することができる。印刷層24は、印刷層14について上述したのと同様の方法により形成することができる。
【0153】
<3.4>中間層
中間層28は、第2中間層である。中間層28は、基材層21とシーラント層22との間に設けられている。ここでは、中間層28は、基材層21と中間層28との間に印刷層24が介在するように、基材層21とシーラント層22との間に設けられている。中間層28は省略することができる。
【0154】
中間層28は、ポリエチレンを含んでいる。ポリエチレンとしては、例えば、基材層11が含むポリエチレンについて上述したものを使用することができる。
【0155】
中間層28には、中間層18について上述したのと同様の構成を採用することができる。中間層28は、中間層18について上述したのと同様の方法で製造することができる。
【0156】
<3.5>無機化合物層
無機化合物層25は、第2無機化合物層である。無機化合物層25は、中間層28の一方の面に設けられている。ここでは、無機化合物層25は、中間層28のシーラント層22と向き合った面に設けられている。無機化合物層25は、中間層28の基材層21と向き合った面に設けられていてもよい。無機化合物層25は、基材層21のシーラント層22と向き合った面に、ここでは、基材層21と印刷層24との間に設けられていてもよい。無機化合物層25は、基材層21のシーラント層22とは反対側の面に、ここでは、積層体の最外層に設けられていてもよい。無機化合物層25は省略することができる。
【0157】
無機化合物層25には、無機化合物層15について上述したのと同様の構成を採用することができる。無機化合物層25は、無機化合物層15について上述したのと同様の方法で形成することができる。
【0158】
アルミニウムなどの金属蒸着膜は廃棄適性がある。要求される遮光性能やバリア性能が満たされるのであれば、無機化合物層25に代えてアルミニウム蒸着膜を用いることもできる。アルミニウム蒸着層の厚さは、40nmから80nmが好ましい。アルミニウム蒸着層は、中間層28にも基材層21にもシーラント層22にも設けることができる。アルミニウム蒸着層は、シーラント層22に設ける場合は40nm前後の厚さを有していることが好ましく、中間層28又は基材層21に設ける場合は80nm前後の厚さを有していることが好ましい。
【0159】
<3.6>被覆層
被覆層27は、第2被覆層である。被覆層27は、無機化合物層25を被覆している。無機化合物層25と被覆層27との積層体は、積層体20の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上させる第2ガスバリア層を構成している。第2ガスバリア層は、無機化合物層25のみを含んでいてもよく、被覆層27のみを含んでいてもよい。積層体20は、第2ガスバリア層を含んでいなくてもよい。
【0160】
被覆層27には、被覆層17について上述したのと同様の構成を採用することができる。被覆層27は、被覆層17について上述したのと同様の方法で形成することができる。
【0161】
<3.7>接着剤層
接着剤層23Aは、印刷層24が設けられた基材層21を中間層28へ貼り合わせている。接着剤層23Bは、無機化合物層25及び被覆層27が設けられた中間層28をシーラント層22へ貼り合わせている。中間層28を省略した場合、接着剤層23A及び23Bの一方は省略することができる。
【0162】
接着剤層23A及び23Bは、接着剤層13A及び13Bについて上述したのと同様の接着剤からなる。接着剤層23A及び23Bには、接着剤層13A及び13Bについて上述したのと同様の構成を採用することができる。接着剤層23A及び23Bは、接着剤層13A及び13Bについて上述したのと同様の方法で形成することができる。
【0163】
<3.8>保護層
保護層26は、第2保護層である。保護層26は、積層体20の最表層であって、基材層21のシーラント層22と向き合った面の裏面を被覆している。保護層26は、省略してもよい。
【0164】
保護層26には、保護層16について上述したのと同様の構成を採用することができる。保護層26は、保護層16について上述したのと同様の方法で形成することができる。
【0165】
<3.9>他の層
積層体20は、1以上の他の層を更に含むことができる。
例えば、積層体20は、中間層28の無機化合物層25が形成される面を被覆したアンカーコート層を更に含んでいてよい。或いは、積層体20は、基材層21の接着剤層23Aと向き合う面を被覆したアンカーコート層を更に含んでいてよい。或いは、積層体20は、中間層28の無機化合物層15が形成される面を被覆したアンカーコート層と、基材層21の接着剤層23Aと向き合う面を被覆したアンカーコート層とを更に含んでいてよい。アンカーコート層は、積層体10のアンカーコート層について上述したアンカーコート剤を用いて形成することができる。
【0166】
<4>効果
上記のスタンディングパウチ110は、その製造時に不具合を生じ難く、これに内容物120を充填してなる包装物品100の落下耐性に優れている。これについて、以下に説明する。
【0167】
スタンディングパウチ110に内容物120を充填してなる包装物品は、正立落下させると、その衝撃で底フィルム112が破壊され易い。とりわけ、内容物120の体積が大きい場合、正立落下の衝撃は大きく、底フィルム112が破壊され易い。上記の包装物品100では、底フィルム112の基材層21の結晶化度が、本体フィルム111A及び111Bの各々の基材層11の結晶化度と比較して十分に大きい。それ故、底フィルム112の耐衝撃強度が高く、包装物品100は落下耐性に優れている。この落下耐性効果は、とりわけ、内容物120の体積が大きい場合に顕著に発揮される。特に、底フィルム112の基材層21がエチレン-αオレフィン共重合体を含む場合は、その結晶化度を35%以上に調整すると、その結晶間にタイ(tie)分子を形成しやすくなり、結晶化度向上による剛性付与だけでなくタイ(tie)分子形成による靭性向上も期待され、剛性向上と靭性向上によるスタンディングパウチの落下耐性改善効果を発揮することができる。
【0168】
また、スタンディングパウチ110の製造では、底フィルム112として使用する積層体20を二つ折りする。そして、二つ折りした積層体20を、本体フィルム111A及び111Bとして使用する一対の積層体10の間に挟んで、それらをヒートシールする。
【0169】
スタンディングパウチの製造に使用する製袋機は、例えば、ヒートシール工程と裁断工程とをこの順に行うものである。ヒートシール工程では、搬送過程でシーラント層22から見て山折りになるように二つ折りした積層体20を、シーラント層12が向き合うように搬送している一対の積層体10の間に挟み込み、これらをヒートシールバーでヒートシールする。具体的には、底シール、ポイントシール、及びサイドシールを行い、これにより、ヒートシール部HS1、HS4、HS2A及びHS2Bを形成する。なお、ヒートシール部HS1は、長さ方向が搬送方向に対して垂直である。また、裁断工程では、ヒートシールによって得られた複合体を、個々のスタンディングパウチ110へと裁断する。
【0170】
包装物品100は、例えば、充填工程とヒートシール工程とをこの順に行う充填機を使用して製造することができる。充填工程では、スタンディングパウチ110へ内容物120を充填する。ヒートシール工程では、スタンディングパウチ110の開口部をヒートシールバーでヒートシールして、ヒートシール部HS3を形成する。以上のようにして、包装物品100を得る。
【0171】
結晶化度が高い基材層は、このヒートシール等において加わる熱による収縮が大きい。それ故、結晶化度が高い基材層を含んだ積層体は、熱が加わった場合に反りを生じ易い。
【0172】
本体フィルムとして使用する積層体が含む基材層及び底フィルムとして使用する積層体が含む基材層の結晶化度が高く、これら積層体の全てが熱によって大きく反ると、不良品や製造装置のトラブルを生じるリスクが高まる。また、これら積層体の全てが熱によって反り易い場合、上記の不具合を防止するための製造条件の調整が困難になる。
【0173】
上記のスタンディングパウチ110では、本体フィルム111A及び111Bの各々の基材層11の結晶化度が、底フィルム112の基材層21の結晶化度と比較して十分に小さい。それ故、スタンディングパウチ110の製造において、本体フィルム111A及び111Bとして使用する積層体10は、熱によって大きく反ることはない。従って、スタンディングパウチ110は、その製造時に、不良品や製造装置のトラブル等の不具合を生じ難い。
【0174】
また、スタンディングパウチ110では、本体フィルム111A及び111B並びに底フィルム112の各々のポリエチレン含有量を90質量%以上とすることができる。そのようなスタンディングパウチ110は、リサイクル性にも優れている。
【実施例0175】
以下に、本発明に関連して行った試験の結果を記載する。
【0176】
(1)スタンディングパウチの製造
(1.1)例1
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。
【0177】
(1.1.1)本体フィルムとして使用する積層体の製造
以下の方法により、本体フィルム111A及び111Bとして使用する積層体10を製造した。ここでは、印刷層14及び保護層16は省略した。
【0178】
基材層11としては、厚さが30μmであり、結晶化度が23.2%である高密度ポリエチレンフィルムを使用した。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において示す結晶化度は、上述した測定方法により測定したものである。
【0179】
中間層18としては、厚さが32μmであり、両面にコロナ処理が施された無延伸の高密度ポリエチレンフィルムを使用した。中間層18の一方の面には、図示しないアンカーコート層、無機化合物層15及び被覆層17を順次形成した。
【0180】
アンカーコート層の形成に際しては、先ず、以下の方法によりアンカーコート剤を調整した。即ち、アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートとを、アクリルポリオールのOH基の数に対してトリレンジイソシアネートのNCO基の数が等量となるように混合し、全固形分(アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量)が5質量%になるよう酢酸エチルで希釈した。希釈後の混合液に、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを、アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量100質量部に対して5質量部となるように更に添加し、これらを混合することでアンカーコート剤を調製した。
【0181】
次に、中間層18のコロナ処理が施された一方の面に、上記の方法で調製したアンカーコート剤をグラビアコート法により塗布した。この塗布は、乾燥状態の塗膜の厚さが0.1μmとなるように行った。このようにして、アンカーコート層を形成した。
【0182】
無機化合物層15としては、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、透明な酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を、厚さが40nmとなるようにアンカーコート層上に形成した。蒸着膜のO/Si比は、蒸着に使用する材料の種類を調整することなどにより1.8とした。
【0183】
被覆層17の形成に際しては、先ず、以下の方法により、被覆層形成用塗布液を調整した。
即ち、下記のA液、B液及びC液を、それぞれ、70/20/10の質量比で混合することで、有機無機混合物を含む被覆層形成用塗布液(以下、単に「塗布液」ともいう。)を調製した。
A液:テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)17.9gとメタノール10gとに0.1N塩酸72.1gを加えて30分間攪拌して加水分解させた固形分5質量%(SiO2換算)の加水分解溶液。
B液:ポリビニルアルコールの5質量%水/メタノール溶液(水:メタノールの質量比は95:5)。
C液:1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートを水/イソプロピルアルコールの混合液(水:イソプロピルアルコールの質量比は1:1)で固形分5質量%に希釈した加水分解溶液。
【0184】
次に、無機化合物層15に、上記のようにして調製した被覆層形成用塗布液を、乾燥状態の塗膜の厚さが0.3μmとなるように塗布した。このようにして、有機無機混合物からなる被覆層17を形成した。
【0185】
次いで、中間層18の無機化合物層15等を形成した面とは反対側の面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して、接着剤層13Aを形成した。続いて、接着剤層13Aを間に挟んで基材層11と中間層18とを貼り合わせた。
【0186】
シーラント層12としては、厚さが120μmである無延伸の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した。シーラント層12の一方の面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布して、接着剤層13Bを形成した。そして、接着剤層13Bを間に挟んでシーラント層12と被覆層17とが向き合うように、シーラント層12を、基材層11及び中間層18を含んだ複合体へ貼り合わせた。
以上のようにして、積層体10を製造した。
【0187】
(1.1.2)底フィルムとして使用する積層体の製造
以下の方法により、底フィルム112として使用する積層体20を製造した。ここでは、印刷層24及び保護層26は省略した。
【0188】
基材層21としては、厚さが25μmであり、結晶化度が54.1%である、エチレン-αオレフィン共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した。
【0189】
シーラント層22及び中間層28としては、それぞれ、(1.1.1)においてシーラント層12及び中間層18として使用したものを使用した。また、無機化合物層25、被覆層27、アンカーコート層、接着剤層23A及び接着剤層23Bには、それぞれ、(1.1.1)において無機化合物層15、被覆層17、アンカーコート層、接着剤層13A及び接着剤層13Bに使用した材料を使用した。
【0190】
そして、(1.1.1)において積層体10について上述したのと同様の方法により、積層体20を製造した。
【0191】
(1.1.3)製袋
積層体10から各々がなる2つのロールと積層体20からなるロールとを、製袋機に設置した。そして、製袋機を稼動して、縦240mm、横160mm、シール幅5mm、底シール折り込み幅40mmであり、800mLの内容物を収容可能なスタンディングパウチ110を製造した。
【0192】
なお、ここで使用した製袋機は、ヒートシール工程と裁断工程とをこの順に行うものである。ヒートシール工程では、搬送過程でシーラント層22から見て山折りになるように二つ折りした積層体20を、シーラント層12が向き合うように搬送している一対の積層体10の間に挟み込み、これらをヒートシールバーでヒートシールする。具体的には、底シール、ポイントシール、及びサイドシールを行い、これにより、ヒートシール部HS1、HS4、HS2A及びHS2Bを形成する。なお、ヒートシール部HS1は、長さ方向が搬送方向に対して垂直である。また、裁断工程では、ヒートシールによって得られた複合体を、個々のスタンディングパウチ110へと裁断する。
【0193】
(1.2)例2
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、積層体20の基材層21として、厚さが25μmであり、結晶化度が54.1%である直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%である高密度ポリエチレンフィルムを使用した。この点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0194】
(1.3)例3
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、底フィルムの積層体20を製造する際に、中間層28、接着剤層23A、アンカーコート層、無機化合物層25、及び被覆層27を省略して、接着剤層23Bを介して基材層21とシーラント層22とを貼り合わせた。また、本体フィルムの積層体10を製造する際に、中間層18はそのままに、アンカーコート層、無機化合物層15、及び被覆層17を省略した。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0195】
(1.4)例4
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、底フィルムとしての積層体20について、基材層21上に、例1において中間層28に対して形成したのと同様のアンカーコート層、無機化合物層及び被覆層を順次形成する一方で、中間層28と、その上に形成した、接着剤層23A、アンカーコート層、無機化合物層25、及び被覆層27とを省略して、接着剤層23Bを介して基材層21の被覆層形成面とシーラント層22とを貼り合わせた。また、シーラント層22として、厚さが120μmである無延伸の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムに代えて、厚さが150μmである無延伸の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを用いた。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0196】
(1.5)例5
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、本体フィルムとしての積層体10については、基材層11上に、例1において中間層18に対して形成したのと同様のアンカーコート層、無機化合物層及び被覆層を順次形成する一方で、中間層18と、その上に形成した、接着剤層13A、アンカーコート層、無機化合物層15、及び被覆層17とを省略して、接着剤層13Bを介して基材層11の被覆層形成面とシーラント層12とを貼り合わせた。また、底フィルムとしての積層体20については、基材層21上に、例1において中間層28に対して形態したのと同様のアンカーコート層、無機化合物層及び被覆層を順次形成する一方で、中間層28と、その上に形成した、接着剤層23A、アンカーコート層、無機化合物層25、及び被覆層27とを省略して、接着剤層23Bを介して基材層21の被覆層形成面とシーラント層22とを貼り合わせた。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0197】
(1.6)例6
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、底フィルムとしての積層体20の中間層28として、厚さが32μmであり、両面にコロナ処理が施された無延伸の高密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、二軸延伸された直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した。この点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0198】
(1.7)例7
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、本体フィルムの基材層11として、厚さが30μmであり結晶化度が23.2%である高密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが30μmであり結晶化度が27.6%である高密度ポリエチレンフィルムを使用した。この点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0199】
(1.8)例8
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、本体フィルムとしての積層体10については、被覆層17を省略し、接着剤層13Bにドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりにエポキシ-アミン系ガスバリア性接着剤を使用した。また、底フィルムとしての積層体20については、被覆層27を省略し、接着剤層23Bにドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりにエポキシ-アミン系ガスバリア性接着剤を使用した。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0200】
(1.9)例9
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、本体フィルムとしての積層体10については、基材層11上に、例1において中間層18に対して形成したのと同様のアンカーコート層及び無機化合物層を順次形成した。そして、中間層18と、その上に形成した、接着剤層13A、アンカーコート層、無機化合物層15、及び被覆層17とを省略し、接着剤層13Bにドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりにエポキシ-アミン系ガスバリア性接着剤を使用し、これを無機化合物層の上に塗布することにより基材層11の無機化合物層形成面とシーラント層12とを貼り合わせた。また、底フィルムとしての積層体20については、基材層21に、例1において中間層28に対して形成したのと同様のアンカーコート層及び無機化合物層を順次形成した。そして、中間層28と、その上に形成した、接着剤層23A、アンカーコート層、無機化合物層25、及び被覆層27とを省略し、接着剤層23Bにドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりにエポキシ-アミン系ガスバリア性接着剤を使用し、これを無機化合物層の上に塗布することにより基材層21の無機化合物層形成面とシーラント層22とを貼り合わせた。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0201】
(1.10)例10
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、本体フィルムとしての積層体10については、アンカーコート層、無機化合物層15、及び被覆層17を省略し、接着剤層13Bにドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりにエポキシ-アミン系ガスバリア性接着剤を使用した。また、底フィルムとしての積層体20については、アンカーコート層、無機化合物層25、及び被覆層27を省略し、接着剤層23Bにドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりにエポキシ-アミン系ガスバリア性接着剤を使用した。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0202】
(1.11)例11
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、本体フィルムとしての積層体10については、基材層11の中間層貼り合わせ面とは反対側に、ポリアミドイミド樹脂の有機溶剤溶液(不揮発成分濃度5質量%)を用いて厚さが1μmの保護層16を形成した。底フィルムとしての積層体20についても、基材層21の中間層貼り合わせ面とは反対側に、ポリアミドイミド樹脂の有機溶剤溶液(不揮発成分濃度5質量%)を用いて厚さが1μmの保護層26を形成した。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0203】
(1.12)例12
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、本体フィルムとしての積層体10については、無機化合物層15に代えて厚さが40nmのアルミニウム蒸着層を設けた。底フィルムとしての積層体20についても、無機化合物層25に代えて厚さが40nmのアルミニウム蒸着層を設けた。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0204】
(1.13)例13
図1乃至
図5を参照しながら説明したスタンディングパウチ110を、以下の方法により製造した。即ち、本例では、本体フィルムとしての積層体10については、中間層18と、その上に形成した、接着剤層13A、アンカーコート層、無機化合物層15、及び被覆層17とを省略した。そして、シーラント層12の一方の面に、厚さが80nmのアルミニウム蒸着層を形成し、そのアルミニウム蒸着層形成面と基材11とを、接着剤層13Bを介して貼り合わせた。接着剤層13Bには、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)に代えて、ウレタン系ガスバリア接着剤を使用した。また、底フィルムとしての積層体20については、中間層28と、その上に形成した、接着剤層23A、アンカーコート層、無機化合物層25、及び被覆層27とを省略した。そして、シーラント層22の一方の面に、厚さが80nmのアルミニウム蒸着層を形成し、そのアルミニウム蒸着層形成面と基材21とを、接着剤層23Bを介して貼り合わせた。接着剤層23Bには、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)に代えて、ウレタン系ガスバリア接着剤を使用した。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチ110を製造した。
【0205】
(1.14)比較例1
底フィルム112を形成するための積層体20において、基材層21として、厚さが25μmであり、結晶化度が54.1%である直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが30μmであり、結晶化度が23.2%である高密度ポリエチレンフィルムを使用した。この点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチを製造した。
【0206】
(1.15)比較例2
本体フィルム111A及び111Bを形成するための積層体10において、基材層11として、厚さが30μmであり、結晶化度が23.2%である高密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が54.1%である直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した。また、底フィルム112を形成するための積層体20において、基材層21として、厚さが25μmであり、結晶化度が54.1%である直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが30μmであり、結晶化度が23.2%である高密度ポリエチレンフィルムを使用した。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチを製造した。
【0207】
(1.16)比較例3
本体フィルム111A及び111Bを形成するための積層体10において、基材層11として、厚さが30μmであり、結晶化度が23.2%である高密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%である高密度ポリエチレンフィルムを使用した。また、底フィルム112を形成するための積層体20において、基材層21として、厚さが25μmであり、結晶化度が54.1%である直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが30μmであり、結晶化度が23.2%である高密度ポリエチレンフィルムを使用した。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチを製造した。
【0208】
(1.17)比較例4
本体フィルム111A及び111Bを形成するための積層体10において、基材層11として、厚さが30μmであり、結晶化度が23.2%である高密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が54.1%である直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した。この点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチを製造した。
【0209】
(1.18)比較例5
本体フィルム111A及び111Bを形成するための積層体10において、基材層11として、厚さが30μmであり、結晶化度が23.2%である高密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が54.1%である高密度ポリエチレンフィルムを使用した。また、底フィルム112を形成するための積層体20において、基材層21として、厚さが25μmであり、結晶化度が54.1%である直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%である高密度ポリエチレンフィルムを使用した。これらの点を除き、本例では、例1と同様の方法によりスタンディングパウチを製造した。
【0210】
(2)評価方法
(2.1)製袋時における不具合の発生
例1乃至13及び比較例1乃至5の各々について、製袋時における不具合の発生を調べた。製袋時における不具合の発生状況は、以下の基準に基づいて評価した。
A:良品率90%以上
B:良品率80%以上-90%未満
C:良品率80%未満
a:底フィルムの疑似融着がなかった(底の基材層の結晶化度大)
b:底フィルムの疑似融着があった(底の基材層の結晶化度小)
【0211】
(2.2)落下試験
例1乃至13及び比較例1乃至5の各スタンディングパウチに5℃の冷水800mLを充填して、包装物品を製造した。各々の例において、30個の包装物品を製造した。包装物品を地上100cmの高さから、底フィルムを下にした状態(正立状態)で落下させた。落下試験を実施した包装物品の総数に対する、底フィルムが破壊した包装物品の数の割合(%)を、「破壊発生確率」として算出した。
【0212】
(3)結果
評価結果を以下の表1乃至表3に示す。
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
表1乃至表3に示すように、比較例1乃至5では、包装物品を落下させた際に底フィルムが破壊され易いか、又は、製袋時における不具合を生じた。これに対し、例1乃至11では、包装物品を落下させた際に底フィルムが破壊され難く、製袋時における不具合を高い頻度で生じることはなかった。結晶化度が高い基材層は、製袋時の加熱による収縮が大きい。本体フィルム及び底フィルムの双方の基材層の結晶化度が35%以上であると、それぞれのフィルムが製袋装置に供給されるヒートシールユニット近傍において、熱の影響をうけてカールしてしまい、製袋の良品率が下がってしまう。より具体的には、シール工程でフィルムが折りたたまれてしまったり、ずれてしまったりして正常な包装袋とならない割合が増える。製袋速度を落とすなどして製袋装置を調整することで良品率を上げることもできるが、本体フィルムの基材層の結晶化度が底フィルムの基材層の結晶化度に対して15ポイントより小さいか、又は、本体フィルムの基材層の結晶化度が35%未満であると、通常の製袋条件であっても製袋時における不具合を生じず、底フィルムの疑似融着がなく、落下させた際に底フィルムが破壊され難いものとなる。
10…積層体、11…基材層、12…シーラント層、13A…接着剤層、13B…接着剤層、14…印刷層、15…無機化合物層、16…保護層、17…被覆層、18…中間層、20…積層体、21…基材層、22…シーラント層、23A…接着剤層、23B…接着剤層、24…印刷層、25…無機化合物層、26…保護層、27…被覆層、28…中間層、100…包装物品、100A…包装物品、110…スタンディングパウチ、111A…本体フィルム、111B…本体フィルム、112…底フィルム、113…スパウト、114…キャップ、120…内容物、HS1…ヒートシール部、HS2A…ヒートシール部、HS2B…ヒートシール部、HS3…ヒートシール部、HS4…ヒートシール部、MF…山折り部。