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特開2024-159967採点支援装置、その制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159967
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】採点支援装置、その制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20241031BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20241031BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G06Q50/20
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024150511
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2022168828の分割
【原出願日】2017-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【弁理士】
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 豊
(57)【要約】
【課題】記述方式や論述方式の設問に関して、採点時の作業負担を軽減して、より効率的に採点を行うことができる採点支援装置、その制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】採点支援装置100は、採点対象となる記述方式や論述方式の設問に対する解答を含む解答データを、前記設問ごとに類似する解答内容のグループに分類し、類似する解答内容のグループごとに採点基準を設定することで容易に採点基準が明確になり、採点時の作業負担を軽減できる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設問に対する正解または不正解の判定基準を示した判定情報に基づいて、前記設問に対する解答データが正解か不正解かを判定する正誤判定処理と、
前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果に基づいて前記判定情報を更新する判定情報更新処理と、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、前記正誤判定処理において、前記採点担当者による正解か不正解かの判定結果に基づいて算出される正誤判定率が所定のしきい値に到達したと判断された前記判定情報に基づき、前記解答データが正解か不正解かを判定する、
採点支援装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記判定情報更新処理において、前記解答データと前記設問の模範解答とを比較した比較結果、および、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果に基づいて前記判定情報を更新する、
請求項1に記載の採点支援装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記判定情報更新処理において、前記解答データと前記設問の模範解答との類似度、および、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果に基づいて前記判定情報を更新する、
請求項1に記載の採点支援装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記正誤判定処理において、複数の設問のそれぞれに対して、正解または不正解の判定基準を示した複数の前記判定情報に基づいて各設問の解答データが正解か不正解かを判定するとともに、前記採点担当者による正解か不正解かの判定結果に基づいて各設問に対する正誤判定率を算出し、算出される正誤判定率が所定のしきい値に到達したと判断された前記判定情報に基づき各設問に対する解答データが正解か不正解かを判定し、
前記制御部は、前記判定情報更新処理において、前記複数の設問のそれぞれに対して、各設問の解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果に基づいて前記判定情報を更新する、
請求項1に記載の採点支援装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記解答データから抽出される複数のトピックそれぞれの重要度を示す第1ベクトル、および、模範解答から抽出される複数のトピックそれぞれの重要度を示す第2ベクトルに基づいて前記模範解答に対する前記解答データの正解類似度を算出するとともに、前記第1ベクトル、および、前記模範解答から抽出される複数のトピックと異なるトピックそれぞれの重要度を示す第3ベクトルに基づいて前記模範解答に対する前記解答データの不正解類似度を算出する類似度算出処理を実行し、
前記制御部は、前記判定情報更新処理において、前記類似度算出処理により算出された前記正解類似度および前記不正解類似度に基づいて判定される前記解答データと前記設問の模範解答との類似度、および、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果に基づいて前記判定情報を更新する、
請求項1に記載の採点支援装置。
【請求項6】
前記制御部は、各解答データに対して、算出された前記正解類似度が設定された正解類似度しきい値以上で、かつ、前記不正解類似度が設定された不正解類似度しきい値以上の場合、採点者による手動採点を実施する、
請求項5に記載の採点支援装置。
【請求項7】
装置が、
設問に対する正解または不正解の判定基準を示した判定情報に基づいて、前記設問に対する解答データが正解か不正解かを判定する正誤判定処理と、
前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果に基づいて前記判定情報を更新する判定情報更新処理と、
を実行し、
前記正誤判定処理は、前記採点担当者による正解か不正解かの判定結果に基づいて算出される正誤判定率が所定のしきい値に到達したと判断された前記判定情報に基づき、前記解答データが正解か不正解かを判定する処理を含む、
採点支援方法。
【請求項8】
コンピュータに、
設問に対する正解または不正解の判定基準を示した判定情報に基づいて、前記設問に対する解答データが正解か不正解かを判定する正誤判定処理と、
前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果に基づいて前記判定情報を更新する判定情報更新処理と、
を実行させ、
前記正誤判定処理は、前記採点担当者による正解か不正解かの判定結果に基づいて算出される正誤判定率が所定のしきい値に到達したと判断された前記判定情報に基づき、前記解答データが正解か不正解かを判定する処理を含む、
制御プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記述式や論述式の設問に対する答案の採点処理を支援する採点支援装置、その制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大学の入学試験や各種資格試験、受験対策のための模擬試験等においては、大別して、マークシートにより複数の選択肢から解答を選択する択一方式や、用語や文節、簡易な文章を解答する記述方式、小論文等の論述方式等が採用されている。これらの試験における採点は、マークシートを用いた択一方式では自動採点による手法が採用されている。一方、記述方式や論述方式に関しては、一乃至複数の採点者による採点作業が必要になるため、採点時の作業時間が増大して作業負担が大きくなったり、解答に対する評価がばらついたりするという問題を有していた。
【0003】
そのため、このような問題を解決するための様々な手法が提案されている。例えば、特許文献1には、記述方式や論述方式の設問について、設問ごとに採点担当者の採点者端末に模範解答データと解答者の答案データとを提示して、採点処理を実行させることにより、同一答案用紙の採点を複数の採点者により同時に分業しつつ、設問ごとの採点を特定の一人の採点者に担当させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】2004-069746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような採点方法においては、基本的に、一人又は複数の採点者が模範解答等に基づいて人手で採点を行っているため、採点時の作業負担を十分に軽減することができず、改善の余地を有していた。
【0006】
そこで、本発明は、記述方式や論述方式の設問に関して、採点時の作業負担を軽減して、より効率的に採点を行うことができる採点支援装置、その制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る採点支援装置は、設問に対する正解または不正解の判定基準を示した判定情報に基づいて、前記設問に対する解答データが正解か不正解かを判定する正誤判定処理と、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果に基づいて前記判定情報を更新する判定情報更新処理と、を実行する制御部を備え、前記制御部は、前記正誤判定処理において、前記採点担当者による正解か不正解かの判定結果に基づいて算出される正誤判定率が所定のしきい値に到達したと判断された前記判定情報に基づき、前記解答データが正解か不正解かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記述方式や論述方式の設問に関して、採点時の作業負担を軽減して、より効率的に採点を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る採点支援装置の一実施形態を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る採点支援装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係る採点支援装置の制御方法の一例における解答データの登録方法を示すフローチャートである。
図4】一実施形態に係る採点支援装置の制御方法の一例における採点基準の設定を示すフローチャートである。
図5】一実施形態に係る採点支援装置の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る採点支援装置、その制御方法及び制御プログラムについて、実施形態を示して詳しく説明する。
図1は、本発明に係る採点支援装置の一実施形態を示すブロック図である。
【0011】
本発明に係る採点支援装置100は、例えば図1に示すように、概略、画像読取部110と、画像処理部120と、類似度算出部130と、判定情報更新部140と、達成度判断部150と、正誤判断処理部160と、表示部170と、入力操作部180と、記憶部190と、を有している。ここで、採点支援装置100は、パーソナルコンピュータ等の情報処理端末を含むシステムにより実現される。また、少なくとも、画像処理部120と類似度算出部130と判定情報更新部140と達成度判断部150と正誤判断処理部160は、CPU(中央演算処理装置)やMPU(マイクロプロセッサ)等の演算処理手段或いはコンピュータにより実現される。
【0012】
画像読取部110は、解答用紙を画像データとして読み取って、例えば解答者の属性(受験番号等)に関連付けて記憶部190の所定の記憶領域に保存する。ここで、画像読取部110は、他の構成と採点支援装置100に一体的に設けられているものであってもよいし、外付けのスキャナ等のように、別体の構成を有しているものであってもよい。
【0013】
画像処理部120は、画像読取部110により読み取った解答用紙の画像データに対して所定の画像処理を施して、設問ごとの解答内容を文字認識してテキスト化処理した解答データとして取得する。具体的には、画像処理部120は、画像読取部110により読み取った解答用紙の画像データを設問ごとに分解して、採点対象となる記述方式や論述方式の設問の画像データを抽出する。そして、画像処理部120は、抽出したそれぞれの画像データに対して文字認識処理を実行して、解答内容をテキスト変換する。テキストデータに変換された採点対象となる解答内容の解答データは、解答人数が多い設問の順に並び替えられて記憶部190の所定の記憶領域に保存される。
【0014】
類似度算出部130は、設問の正解(正答)に対する類似度、及び、不正解に対する類似度を算出する。ここで、類似度は、例えば正解である模範解答と重要単語及び文章構成が実質的に一致している場合、正解に対する類似度である類似度Aを100%、不正解に対する類似度である類似度Bを0%とし、当該重要単語や同義となる文章構成等が全く使用されていない場合、類似度Aを0%、類似度Bを100%として、重要単語や同義となる文章構成等の使用頻度に応じて正解に対する類似度、及び、不正解に対する類似度を算出する。
【0015】
具体的には、類似度算出部130は、まず抽出された設問に対する解答データを形態素解析し、解答データの各トピック(名詞)の重要度に応じてベクトル化する。模範解答の全トピック(名詞)の重要度をベクトルAと、解答データの全トピック(名詞)の重要度をベクトルBとすると、ベクトルAの大きさとベクトルBの大きさとの積を分母とし、ベクトルAの各トピックの重要度ベクトルと、それに対応する解答データのトピックのベクトルとの積の総和を分子とした値を、模範解答に対する解答データの正解類似度として算出する。同様に模範解答の全トピック(名詞)と異なる不正解トピックの重要度をベクトルCとすると、ベクトルCの大きさとベクトルBの大きさとの積を分母とし、ベクトルCの各トピックの重要度ベクトルと、それに対応する解答データのトピックのベクトルとの積の総和を分子とした値を、模範解答に対する解答データの不正解類似度として算出する。演算処理手段は、模範解答に対する解答データの正解類似度及び不正解類似度を記憶部190に記憶する。
【0016】
判定情報更新部140は、設問の解答に対する正解/不正解の判断結果に基づいて採点基準となるパラメータを更新する。具体的には、判定情報更新部140は、画像処理部120によりテキストデータ化された解答内容と、当該設問の模範解答とを比較して、又は、類似度算出部130により算出された類似度に基づいて、採点担当者により判断された「正解/不正解」の判断結果に基づいて、設問ごとの採点を行う際の基準となる、正解、不正解を明示する「正解リスト/不正解リスト」を更新する。また、判定情報更新部140は、上記の採点担当者による「正解/不正解」の判断に基づいて算出される正誤判定率を更新する。更新された「正解リスト/不正解リスト」及び正誤判定率は、記憶部190の所定の記憶領域に保存される。
【0017】
達成度判断部150は、判定情報更新部140により更新されたパラメータのしきい値に対する達成の程度を判断する。具体的には、達成度判断部150は、更新された正誤判定率が予め設定されたしきい値(判断しきい値Ath、Bth)の水準まで到達した場合に、上記の「正解リスト/不正解リスト」に基づいて十分信頼性の高い正解/不正解の判断が実現できると判断する。この判断結果は、記憶部190の所定の記憶領域に保存される。
【0018】
正誤判断処理部160は、達成度判断部150により所定の達成度に到達したと判断されたパラメータに基づいて、設問の解答に対する正解/不正解の判断を実行する。具体的には、正誤判断処理部160は、達成度判断部150により正誤判定率が所定のしきい値に到達と判断された「正解リスト/不正解リスト」に基づいて、設問の解答に対する正解/不正解の判断を自動的に実行し、当該判断に基づく採点を確定する。確定された採点は、記憶部190の所定の記憶領域に保存される。
【0019】
表示部170は、ディスプレイや表示パネルを有し、上記の各部において取り扱う各種のデータ等を表示する。入力操作部180は、例えばキーボードやマウス等の入力装置を有し、表示部170に表示されたデータやメニュー等を選択して所定の処理を実行する。記憶部190は、上記の各部において取り扱う、又は、生成される各種のデータを所定の記憶領域に保存する。また、記憶部190は、上記の各部における処理や機能を実現するための制御プログラムを保存する。ここで、記憶部190は、その一部又は全部がリムーバブル記憶媒体としての形態を有し、採点支援装置100に対して着脱可能に構成されているものであってもよい。
記憶部190は、解答内容、解答人数、解答内容ベクトル、正規化採点結果等を記憶するメモリである。
【0020】
なお、本実施形態においては、図示を省略したが、採点支援装置100は、外部機器との間で、各種のデータの送受信を行うインターフェース部(I/F部)を備えていてもよい。ここで、I/F部は、外部機器に直接接続するものであってもよいし、ネットワークを介して接続されるものであってもよい。この場合、通信ケーブルを介して接続される有線接続方式や、ワイファイ(Wi-Fi(登録商標))等の通信規格による無線接続方式を適用することができる。
【0021】
(採点支援装置の制御方法)
次に、本実施形態に係る採点支援装置の制御方法及び制御プログラムについて、図面を参照して説明する。
図2図3図4は、本実施形態に係る採点支援装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0022】
本実施形態に係る採点支援装置の制御方法においては、採点対象となる記述方式や論述方式の設問ごとの正解リスト/不正解リストを生成する処理と、生成された正解リスト/不正解リストに基づいて、設問の解答に対する正解/不正解の判断を自動的に実行し、当該判断に基づく採点を確定する実採点処理と、が実行される。これらの処理は、採点支援装置100に適用される、画像処理部120と類似度算出部130と判定情報更新部140と達成度判断部150と正誤判断処理部160とを含む演算処理手段、又は、コンピュータにおいて、特定のプログラムを実行することにより実現される。
【0023】
本実施形態に係る採点支援装置100の制御方法は、図2図3図4のフローチャートに示すように、まず、例えば筆記具による手書きの解答用紙の採点作業や解答者に関する属性等の種々の情報を統括管理する事業者や教育機関等において、試験終了後に全解答者の解答用紙を採点支援装置100の画像読取部110により一括読み取り(スキャニング)する(ステップS102)。ここで、画像読取部110は、解答用紙全体を読み取るものであってもよいし、特定の領域を指定して読み取るものであってもよい。
【0024】
次いで、採点支援装置100の画像処理部120において、画像読取部110により読み取った解答用紙の画像データを設問ごとに分解して、採点対象となる記述方式や論述方式の設問の画像データを抽出する(ステップS104)。画像処理部120は、抽出したそれぞれの画像データに対して文字認識処理を実行して、解答内容をテキスト化するためのテキスト変換を行う(ステップS106)。上記解答は解答用紙によるものであるが、音声による解答内容を音声認識してテキスト化したテキスト変換でもよいし、その他の手段によって解答されたアナログデータの解答をテキスト変換してもよい。ここではテキスト変換された解答のデータを未解答のデータを含めて解答データと総称する。ステップS106後に、演算処理手段は、未登録の状態のデータを、設問に対応づけて記憶部190に記録する。
【0025】
次いで、図2図3に示すように、ステップS107に移行する。演算処理手段によって実行されるステップS107は、ステップS202~ステップS222を含んでいる。まず、演算処理手段は、解答データに対応する全解答人数を特定し、記憶部190に全解答人数を登録する(ステップS202)。そして、登録解答人数が全解答人数に達していない1つの設問を抽出し(ステップS204)、抽出された1つの設問に対応する複数の解答データを記憶部190から抽出する(ステップS206)。抽出された1つの設問に対応する複数の解答データの登録解答人数の総計が全解答人数に達していない場合(ステップS208 NO)、抽出された1つの設問に対応する複数の解答データの中から未登録の解答データを1つ抽出する(ステップS210)。
【0026】
抽出された未登録の解答データと実質的に同一の内容と判断された登録済みの解答データが記憶部190に記憶されていれば(ステップS212 YES)、未登録の解答データを登録済みの解答データのグループのデータとして記憶部190に記憶し、対応する設問の登録解答人数を+1にカウントアップして記憶部190に記憶し(ステップS214)、ステップS208に戻る。
【0027】
一方、抽出された未登録の解答データと実質的に同一の内容の解答データが登録済みとして記憶部190に記憶されていなければ(ステップS212 NO)、未登録の解答データを、すでに登録されている解答データとは別の新たな登録済み解答データのグループのデータとして記憶部190に記憶し(ステップS216)、対応する設問の登録解答人数を+1にして記憶部190に記憶し(ステップS218)、ステップS208に戻る。
【0028】
ステップS208において、ステップS214、ステップS218における登録解答人数の総計が全解答人数に達した場合(ステップS208 YES)、全設問に対応する解答人数が全解答人数に達しなければ(ステップS220 NO)、ステップS204に戻り、達すれば(ステップS220 YES)、デジタルデータに変換された採点対象となる解答内容の解答データのグループを、解答人数が多い設問の順に並び替えて、記憶部190の所定の記憶領域に保存する(ステップS222)。
【0029】
次いで、図2図4に示すように、採点基準の設定に移行する(ステップS108)。演算処理手段によって実行されるステップS108は、ステップS302~ステップS332を含んでいる。演算処理手段は、全設問の採点基準の設定が完了していなければ(ステップS302 NO)、採点基準の設定が未完了の設問を抽出し、対応する解答データの1つ以上のグループを記憶部190から読み出し(ステップS304)、このうち、正規化採点結果が未登録の解答データのグループで且つ最も登録解答人数の多いグループを抽出する(ステップS306)。
【0030】
抽出された解答データのグループの自動採点化を有効に設定した場合(ステップS308 YES)、各解答データの正解類似度及び不正解類似度を類似度算出部130で算出する(ステップS310)。
【0031】
算出された正解類似度が、設定された正解類似度しきい値以上で、且つ算出された不正解類似度が、設定された不正解類似度しきい値以上の場合、採点者による手動採点(正規化採点結果判定)が実施され(ステップS312 YES)、手動採点の結果が有効とみなされる場合は(ステップS316 YES)ステップS318に移行する。手動採点の結果が有効とみなされない場合は(ステップS316 NO)ステップS314に移行し、自動採点による類似度に基づいて模範解答に対する解答データの正規化採点結果を登録する。この場合、正解類似度と不正解類似度とのうちのより高い方の値を正規化採点結果として登録する。なお、ここで、正解類似度は模範解答との類似度が高いほど「1」に近づき、不正解類似度は模範解答との類似度が高いほど「0」に近づく。
【0032】
一方、算出された正解類似度が、設定された正解類似度しきい値未満の場合、採点者による手動採点が実施されず(ステップS312 NO)、自動採点を行い、自動採点による類似度に基づいて模範解答に対する解答データの正規化採点結果を不正解類似度(例えば「0」)で登録する(ステップS314)。また、算出された正解類似度が、設定された正解類似度しきい値以上で、且つ算出された不正解類似度が、設定された不正解類似度しきい未満の場合も手動採点が実施されず(ステップS312 NO)、自動採点を行い、自動採点による類似度に基づいて模範解答に対する解答データの正規化採点結果を正解類似度(例えば「1」)で登録する(ステップS314)。
【0033】
ステップS308において、抽出された解答データのグループの自動採点化が有効に設定されていない場合(ステップS308 NO)、或いはステップS316において、採点者による手動採点が有効であると判断された場合(ステップS316 YES)、採点者に解答データ群を提示する(ステップS318)。
【0034】
採点者は提示された解答データを模範解答にしたがって適宜採点し、採点結果を入力し(ステップS320)、演算処理手段は入力結果による類似度に基づいて模範解答に対する解答データの正規化採点結果を登録する(ステップS322)。
【0035】
次いで、抽出された解答データのグループのうち、自動採点を優先して登録された正規化採点結果(ステップS314)の人数と、手動採点を優先して登録された正規化採点結果(ステップS322)の人数と、の割合である採点済み割合を算出し(ステップS324)、算出値が自動採点開始しきい値以上であれば(ステップS326 YES)、自動採点を有効化し(ステップS328)、算出値が自動採点開始しきい値未満であれば(ステップS326 NO)、ステップS330に移行する。
【0036】
ステップ330では、算出値が手動採点開始しきい値以上であれば(ステップS330
YES)、手動採点を無効化してから(ステップS332)ステップS302に移行し、算出値が手動採点開始しきい値未満であれば(ステップS326 NO)、ステップS302に移行する。
【0037】
そして、全設問の採点基準の設定が完了していれば(ステップS302 YES)、ステップS110の採点基準の調整に移行する。ステップS110では、模範解答の解答ベクトルと解答データのグループの解答ベクトルとの正解類似度、不正解類似度を算出し、ステップS108で得られた正規化採点結果が正解類似度、不正解類似度の高い方に一致しているかどうか確認し、一致していなければ採点者または採点を管理する採点管理者に一致していない旨を通知する。
【0038】
採点者または採点管理者は、正解類似度が高いと判定された解答内容と、不正解類似度が高いと判定された解答内容とを比較し、採点結果の変更の必要性を判断する。採点者または採点管理者は、変更が必要と判断した場合、正規化採点結果に修正を加え、ステップS110を最初からやり直し、変更が必要でないと判断した場合、ステップS112の採点に移行する。採点者は、ステップS112において、解答データのグループごとに正規化採点結果によってもたらされた配点に応じて点を獲得点数とし、全設問の全グループの採点が完了することで全解答者の採点が終了する。
【0039】
なお、ステップS107は、演算処理手段が行うことなしに採点者が全解答を手動で採点することで省略できる。この場合、全件登録済みとしてステップS108に移行すればよい。
【0040】
また、ステップS107は、類似の解答内容を同一の採点者に採点させることで省略できる。この場合、各採点者の採点済みの正解リスト/不正解リストを作成し、正解リスト/不正解リストと類似する解答を採点者に採点させればよい。
【0041】
(変形例)
次に、本実施形態に係る採点支援装置の変形例について説明する。
図5は、本実施形態に係る採点支援装置の変形例を示す概略図である。
【0042】
上述した実施形態に係る採点支援装置100は、事業者や教育機関等に設置されるセンター機器に適用することができる。本発明はこのような形態に限定されるものではなく、例えば、採点支援装置100の一部の機能を外部の他の機器や端末で実行する変形例を有するものであってもよい。
【0043】
具体的には、例えば図5に示すように、変形例に係る採点支援装置は、事業者等に設置されるセンター機器210と、複数の採点担当者に割り当てられた採点者端末220と、少なくともセンター機器210及び採点者端末220が接続されたネットワーク300と、を有している。ここで、ネットワーク300は、インターネット等の公衆利用が可能なネットワークであってもよいし、事業者や教育機関等の特定の団体による限定的に利用可能なネットワークであってもよい。
【0044】
センター機器210は、例えば上述した実施形態に示した採点支援装置100と同等の構成を有し、採点者端末220は、少なくとも表示部と、入力操作部と、記憶部と、I/F部と、これらの各部を制御するCPUとを備えた構成を有している。ここで、採点者端末220は、センター機器210からネットワーク300を介して提供される採点対象となる設問の解答データと正解データとを受け取って表示部に表示することにより、採点担当者が解答の正解/不正解の判断を行う。判断結果はネットワーク300を介してセンター機器210に送信される。
【0045】
これにより、上述した実施形態に示した制御方法のうち、採点担当者による判断が必要なステップを含む処理を採点者端末220で実行することができるので、設問ごとの作業を複数の採点担当者により同時並行して行うことができ、採点時の作業時間の増大による負担を軽減しつつ、複数の採点者により採点する場合であっても解答に対する評価のばらつきを抑制して、より効率的に採点を行うことができる。
【0046】
なお、採点者端末220は、図5に示した構成において、ネットワーク300を介してセンター機器210から採点対象となる設問の解答データと正解データとを受け取って(ダウンロードして)正解/不正解の判断を行う形態に限定されない。例えば採点者端末220をクラウド型の端末として、ネットワーク300を介してセンター機器210にアクセスしているときだけ、正解データや採点対象となる設問の解答データを利用することができるようにして、採点者端末220にデータがダウンロード、保存されないようにするものであってもよい。この形態によれば、解答者の採点結果や属性等を含む、採点作業に関わる個人データや重要データの流出を防止することができる。
【0047】
なお、上記実施形態は、初期に自動採点を無効として手動採点を行い、データを蓄積してからステップS308で自動採点に切り替えることが好ましい。
なお、上記実施形態において、不正解の配点を、完全な誤答の0点と、0点より高い部分点とに仕分けし、最も類似度の高い不正解の点数に配点としてもよく、また設定されたしきい値を超える類似度が複数ある場合、しきい値を超えた複数の類似度の配点の平均値を配点としてもよい。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実行可能な範囲で上記複数の実施形態の各構成を組合せしてなしたものを含み、また特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0049】
(付記)
[1]
採点対象となる設問の解答を含む解答データを、前記設問ごとに類似する解答内容のグループに分類し、
前記類似する解答内容のグループごとに採点基準を設定することを特徴とする採点支援装置。
【0050】
[2]
前記採点基準の設定は、模範解答内容に対する各解答内容の正解類似度及び不正解類似度に基づいて自動採点から採点者による手動採点に切り替えることを含むことを特徴とする[1]に記載の採点支援装置。
【0051】
[3]
設定された前記採点基準により自動採点による正規化採点結果または手動採点による正規化採点結果に応じた採点割合にしたがって自動採点の有効化及び手動採点の無効化の少なくとも1つを設定することを特徴とする[1]または[2]に記載の採点支援装置。
【0052】
[4]
採点対象となる設問の解答を含む解答データを、前記設問ごとに類似する解答内容のグループに分類し、
前記類似する解答内容のグループごとに採点基準を設定することを特徴とする採点支援装置の制御方法。
【0053】
[5]
コンピュータに、
採点対象となる設問の解答を含む解答データを、前記設問ごとに類似する解答内容のグループに分類させ、
前記類似する解答内容のグループごとに採点基準を設定させることを特徴とする採点支援装置の制御プログラム。
【符号の説明】
【0054】
100 採点支援装置
110 画像読取部
120 画像処理部
130 類似度算出部
140 判定情報更新部
150 達成度判断部
160 正誤判断処理部
170 表示部
180 入力操作部
190 記憶部

図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-10-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明に係る採点支援装置は、設問に対する正解または不正解の判定基準と前記設問に対する解答データとを比較した比較結果を示した判定情報に基づいて、前記設問に対する解答データが正解か不正解かを判定する正誤判定処理と、前記判定情報に基づいて正解か不正解かを判定した結果と、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果とを比較して算出される正誤判定率に基づいて前記判定情報を更新する判定情報更新処理と、を実行する制御部を備え、前記制御部は、前記判定情報更新処理において更新された判定情報に基づいて正解か不正解かを判定した結果と、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果と、を比較して算出される正誤判定情報が所定の閾値を超えた場合に、前記更新された判定情報に基づいて、前記解答データが正解か不正解かを判定することを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設問に対する正解または不正解の判定基準と前記設問に対する解答データとを比較した比較結果を示した判定情報に基づいて、前記設問に対する解答データが正解か不正解かを判定する正誤判定処理と、
前記判定情報に基づいて正解か不正解かを判定した結果と、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果とを比較して算出される正誤判定率に基づいて前記判定情報を更新する判定情報更新処理と、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、前記判定情報更新処理において更新された判定情報に基づいて正解か不正解かを判定した結果と、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果と、を比較して算出される正誤判定情報が所定の閾値を超えた場合に、前記更新された判定情報に基づいて、前記解答データが正解か不正解かを判定する、
採点支援装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記解答データから抽出される複数のトピックそれぞれの重要度を示す第1ベクトル、および、模範解答から抽出される複数のトピックそれぞれの重要度を示す第2ベクトルに基づいて前記模範解答に対する前記解答データの正解類似度を算出するとともに、前記第1ベクトル、および、前記模範解答から抽出される複数のトピックと異なるトピックそれぞれの重要度を示す第3ベクトルに基づいて前記模範解答に対する前記解答データの不正解類似度を算出する類似度算出処理を実行し、
前記制御部は、前記判定情報更新処理において、前記類似度算出処理により算出された前記正解類似度および前記不正解類似度に基づいて判定される前記解答データと前記設問の模範解答との類似度、および、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果に基づいて前記判定情報を更新する、
請求項1に記載の採点支援装置。
【請求項3】
前記制御部は、各解答データに対して、算出された前記正解類似度が設定された正解類似度しきい値以上で、かつ、前記不正解類似度が設定された不正解類似度しきい値以上の場合、採点者による手動採点を実施する、
請求項に記載の採点支援装置。
【請求項4】
前記制御部は、手動採点の結果が有効とみなされない場合、算出された前記正解類似度と、算出された前記不正解類似度とをそれぞれ正規化した値のうち、より高い方の値を正規化採点結果として登録する、
請求項3に記載の採点支援装置。
【請求項5】
前記制御部は、手動採点の結果が有効であると判断された場合、前記採点担当者に各解答データを提示する、
請求項3に記載の採点支援装置。
【請求項6】
装置が、
設問に対する正解または不正解の判定基準と前記設問に対する解答データとを比較した比較結果を示した判定情報に基づいて、前記設問に対する解答データが正解か不正解かを判定する正誤判定処理と、
前記判定情報に基づいて正解か不正解かを判定した結果と、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果とを比較して算出される正誤判定率に基づいて前記判定情報を更新する判定情報更新処理と、
を実行し、
前記判定情報更新処理において更新された判定情報に基づいて正解か不正解かを判定した結果と、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果と、を比較して算出される正誤判定情報が所定の閾値を超えた場合に、前記更新された判定情報に基づいて、前記解答データが正解か不正解かを判定する
採点支援方法。
【請求項7】
コンピュータに、
設問に対する正解または不正解の判定基準と前記設問に対する解答データとを比較した比較結果を示した判定情報に基づいて、前記設問に対する解答データが正解か不正解かを判定する正誤判定処理と、
前記判定情報に基づいて正解か不正解かを判定した結果と、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果とを比較して算出される正誤判定率に基づいて前記判定情報を更新する判定情報更新処理と、
を実行させ、
前記判定情報更新処理において更新された判定情報に基づいて正解か不正解かを判定した結果と、前記解答データに対して採点担当者により判定された正解か不正解かの判定結果と、を比較して算出される正誤判定情報が所定の閾値を超えた場合に、前記更新された判定情報に基づいて、前記解答データが正解か不正解かを判定させる
制御プログラム。