(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159970
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】経路探索装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20241031BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20241031BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241031BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20241031BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20241031BHJP
【FI】
G01C21/34
G01C21/26 C
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024150536
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2023087877の分割
【原出願日】2016-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 喬浩
(72)【発明者】
【氏名】関谷 博之
(72)【発明者】
【氏名】谷川 裕史
(57)【要約】
【課題】運転手の個人差を好適に勘案した経路探索を実行可能な経路探索装置を提供する。
【解決手段】サーバ装置1は、移動体を運転する運転手に関するプロフィール情報と、車両の出発地及び目的地の情報とを端末装置2から受信する。サーバ装置1は、出発地から目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、プロフィール情報に対応する運転評価モデルに基づく運転難易度の評価値を算出する。そして、サーバ装置1は、算出した運転難易度の評価値に基づき、推奨経路を決定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得部と、
前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに基づく評価情報を取得する第2取得部と、
前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定部と、
を備える経路探索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路探索技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の車両からデータをサーバ装置に集約し、サーバ装置が機械学習により得た学習結果に関する情報を配信するシステムが知られている。例えば、特許文献1には、各車両の走行時の天候、時間帯などの状況を環境データとして収集し、環境データが示す状況ごとに学習するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転時の状況認識及び状況判断については、運転手の経験等に基づく個人差があり、運転手によって認識や判断が異なる場合がある。従って、経路探索においても、走行に好適な経路は、運転手によって異なる場合がある。特許文献1には、このような運転手の個人差を勘案すべき点については、何ら言及していない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、運転手の個人差を好適に勘案した経路探索を実行可能な経路探索装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、経路探索装置であって、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得部と、前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対応する撮影画像を、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに入力することで当該運転評価モデルから出力される評価情報を取得する第2取得部と、前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定部と、を備える。
請求項5に記載の発明は、経路探索装置であって、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得部と、前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに基づく評価情報を取得する第2取得部と、前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定部と、を備え、前記運転評価モデルは、移動体周囲の撮影画像と、プロフィールを備える判定者が前記撮影画像に基づき評価した運転に関する評価情報とに基づき、前記プロフィールの共通性により分類された前記判定者のグループごとに学習された運転評価モデルから前記運転手情報に適合する適合グループにおける運転評価モデルである。
請求項10に記載の発明は、経路探索装置であって、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得部と、前記複数の経路を構成する道路の各々で撮影された撮影画像を取得する第2取得部と、前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに基づく評価情報を取得する第3取得部と、前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定部と、を備え、前記第3取得部は、前記第2取得部が取得した撮影画像を前記運転評価モデルに入力することで、前記道路の各々に対する評価情報を取得する。
【0007】
請求項14に記載の発明は、経路探索装置が実行する制御方法であって、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得工程と、前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対応する撮影画像を、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに入力することで当該運転評価モデルから出力される評価情報を取得する第2取得工程と、前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定工程と、を有する。
請求項16に記載の発明は、経路探索装置が実行する制御方法であって、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得工程と、前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに基づく評価情報を取得する第2取得工程と、前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定工程と、を有し、前記運転評価モデルは、移動体周囲の撮影画像と、プロフィールを備える判定者が前記撮影画像に基づき評価した運転に関する評価情報とに基づき、前記プロフィールの共通性により分類された前記判定者のグループごとに学習された運転評価モデルから前記運転手情報に適合する適合グループにおける運転評価モデルである。
【0008】
請求項15に記載の発明は、コンピュータが実行するプログラムであって、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得部と、前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対応する撮影画像を、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに入力することで当該運転評価モデルから出力される評価情報を取得する第2取得部と、前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定部として前記コンピュータを機能させる。
請求項17に記載の発明は、コンピュータが実行するプログラムであって、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得部と、前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに基づく評価情報を取得する第2取得部と、前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定部として前記コンピュータを機能させ、前記運転評価モデルは、移動体周囲の撮影画像と、プロフィールを備える判定者が前記撮影画像に基づき評価した運転に関する評価情報とに基づき、前記プロフィールの共通性により分類された前記判定者のグループごとに学習された運転評価モデルから前記運転手情報に適合する適合グループにおける運転評価モデルである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】サーバ装置及び端末装置のブロック構成を示す。
【
図3】運転評価モデルの識別番号と当該運転評価モデルに対応する判定者のプロフィールを表す各項目との対応テーブルである。
【
図4】経路探索処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【
図5】変形例に係る経路探索システムの概略構成である。
【
図6】変形例に係る経路探索システムの概略構成である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、経路探索装置は、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得部と、前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに基づく評価情報を取得する第2取得部と、前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定部と、を備える。
【0011】
上記経路探索装置は、第1取得部と、第2取得部と、経路決定部とを備える。第1取得部は、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する。第2取得部は、出発地から目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、運転手情報に対応する運転評価モデルに基づく評価情報を取得する。経路決定部は、第2取得部が取得した評価情報に基づき、複数の経路から推奨経路を決定する。この態様では、経路探索装置は、移動体の運転手に適した運転評価モデルの評価情報に基づき経路探索を行うため、運転手の個人差を好適に勘案した経路探索を実行することができる。
【0012】
上記経路探索装置の一態様では、前記運転評価モデルは、移動体周囲の撮影画像と、プロフィールを備える判定者が前記撮影画像に基づき評価した運転に関する評価情報とに基づき、前記プロフィールの共通性により分類された前記判定者のグループごとに学習された運転評価モデルから前記運転手情報に適合する適合グループにおける運転評価モデルである。ここで、「適合グループ」は、プロフィールの共通性により分類された判定者のグループのうち、取得した運転手情報に適合するグループを指す。この態様によれば、経路探索装置は、取得した運転手情報が示す運転手の特徴に合致した運転評価モデルに基づき、経路探索に必要な各道路の評価情報を好適に取得することができる。
【0013】
上記経路探索装置の他の一態様では、経路探索装置は、前記複数の経路を構成する道路の各々で撮影された撮影画像を取得する第3取得部をさらに備え、前記第2取得部は、前記第3取得部が取得した撮影画像を前記運転評価モデルに入力することで、前記道路の各々に対する評価情報を取得する。この態様により、経路探索装置は、候補となる経路を構成する各道路で撮影された撮影画像を取得し、経路探索に必要な各道路に対応する評価情報を好適に算出することができる。
【0014】
上記経路探索装置の他の一態様では、経路探索装置は、道路ごとに、複数の運転評価モデルに基づく評価情報が関連付けられた地図データを記憶する記憶部をさらに備え、前記第2取得部は、前記道路の各々に対し、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに基づく評価情報を前記地図データから取得する。この態様により、経路探索装置は、地図データを参照することで、経路探索に必要な各道路に対応する評価情報を好適に取得することができる。
【0015】
上記経路探索装置の他の一態様では、経路探索装置は、前記移動体と共に移動する端末装置に対し、前記推奨経路の情報を送信する送信部をさらに備え、前記第1取得部は、前記運転手情報と、前記出発地及び前記目的地の情報とを前記端末装置から受信する。この態様により、経路探索装置は、移動体の経路案内を行う端末装置に対し、移動体の運転手に適した推奨経路の情報を好適に供給することができる。
【0016】
上記経路探索装置の他の一態様では、前記第2取得部は、複数の運転評価モデルを記憶するサーバ装置に対して前記運転手情報を送信することで、前記運転手情報に対応する運転評価モデルを取得し、当該運転評価モデルに基づき前記道路の各々に対する評価情報を算出する。この態様により、経路探索装置は、サーバ装置から受信した運転手に好適な運転評価モデルに基づき、経路探索に必要な評価情報を取得して推奨経路を決定することができる。好適な例では、前記評価情報は、運転難易度を示す情報、又は、見晴らしの良さを示す情報である。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態によれば、経路探索装置が実行する制御方法であって、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得工程と、前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに基づく評価情報を取得する第2取得工程と、前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定工程と、を有する。経路探索装置は、この制御方法を実行することで、運転手の個人差を好適に勘案した経路探索を実行することができる。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態によれば、コンピュータが実行するプログラムであって、移動体を運転する運転手に関する運転手情報と、前記移動体の出発地及び目的地の情報とを取得する第1取得部と、前記出発地から前記目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、前記運転手情報に対応する運転評価モデルに基づく評価情報を取得する第2取得部と、前記評価情報に基づき、前記複数の経路から推奨経路を決定する経路決定部として前記コンピュータを機能させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、運転手の個人差を好適に勘案した経路探索を実行することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0020】
[経路探索システムの概要]
図1は、本実施例に係る経路探索システムの概略構成である。経路探索システムは、運転手のプロフィールに基づき選択したモデルにより各道路を評価して経路探索を行うシステムであって、サーバ装置1と、端末装置2とを備える。
【0021】
サーバ装置1は、経路探索を要求する情報(「経路探索要求情報S1」とも呼ぶ。)を端末装置2から受信した場合に、経路探索要求情報S1において指定された出発地から目的地までの1又は複数の推奨経路を探索する。ここで、経路探索要求情報S1には、端末装置2のユーザの性別や運転歴などのプロフィールの情報が含まれており、サーバ装置1は、当該プロフィールを勘案して推奨経路を決定する。そして、サーバ装置1は、決定した推奨経路を示す情報(「推奨経路情報S2」とも呼ぶ。)を端末装置2へ送信する。
【0022】
端末装置2は、例えばスマートフォンなどの携帯端末であって、目的地への経路案内や現在位置周辺の地図の表示などを行う。本実施例では、端末装置2は、出発地を示す現在位置情報と、ユーザ入力により指定された目的地の情報と、ユーザのプロフィールの情報とを含む経路探索要求情報S1をサーバ装置1へ送信することで、推奨経路情報S2を受信する。そして、端末装置2は、受信した推奨経路情報S2に基づき案内すべき案内経路を決定し、経路案内を開始する。なお、端末装置2は、経路案内に必要な地図データ等を予め記憶してもよく、サーバ装置1から必要に応じて受信してもよい。
【0023】
[装置構成]
図2(A)は、サーバ装置1の概略構成を示す。
図2(A)に示すように、サーバ装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部15とを有する。通信部11、記憶部12、及び制御部15は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0024】
通信部11は、制御部15の制御に基づき、端末装置2から送信される経路探索要求情報S1の受信、及び、推奨経路情報S2の端末装置2への送信などを行う。通信部1は、本発明における「送信部」の一例である。
【0025】
記憶部12は、サーバ装置1の動作を制御するためのプログラムを保存したり、サーバ装置1の動作に必要な情報を保持したりする。また、記憶部12は、地図データ16と、撮影画像DB17と、運転評価モデルDB18とを記憶する。地図データ16は、道路に相当するリンクと、道路の接続部分(交差点)に相当するノードとにより表された道路データと、施設に関する施設情報とを含む。撮影画像DB17は、各道路上で撮影された撮影画像を当該道路と関連付けて記憶したデータベースである。例えば、撮影画像DB17に登録される撮影画像は、リンクごとに少なくとも1つ存在する。
【0026】
運転評価モデルDB18は、道路上で撮影した撮影画像から当該撮影画像に表示された道路の運転に関する評価を決定するためのモデル(「運転評価モデル」とも呼ぶ。)のデータベースである。運転評価モデルは、教師あり機械学習により得られたパターン識別器であって、例えば、ニューラルネットワーク(ディープラーニング)を適用して学習された学習データである。本実施例では、予め、道路上で撮影された撮影画像と、当該撮影画像を参照した者(「判定者」とも呼ぶ。)が判定した運転難易度の評価値との組み合わせを教師データとして学習することで、運転評価モデルを生成している。運転評価モデルDB18に登録されている各運転評価モデルは、性別や運転歴などのプロフィールの共通性を備えた判定者のグループごとに生成されている。運転評価モデルDB18のデータ構造については後述する。なお、運転難易度の評価値は、例えば、運転しやすいことを表す「0」又は運転しにくいことを示す「1」の2段階評価値であってもよく、3段階以上の評価値であってもよい。運転難易度の評価値は、本発明における「評価情報」の一例である。
【0027】
制御部15は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを備え、サーバ装置1内の各構成要素に対して種々の制御を行う。制御部15は、通信部11が経路探索要求情報S1を受信した場合に、経路探索要求情報S1が示す出発地から目的地までの経路のうち、道路(リンク)ごとのコストの合計コストが最小となる推奨経路の探索を行う。このとき、制御部15は、上述の各道路のコストを、運転難易度の評価値に基づき定めることで、端末装置2のユーザにとって運転しやすい経路を推奨経路として探索する。この場合、制御部15は、経路探索要求情報S1が示す端末装置2のユーザのプロフィールに基づき運転評価モデルDB18から運転評価モデルを抽出し、抽出した運転評価モデルと、撮影画像DB17に登録された撮影画像とを用いて各道路の運転難易度の評価値を決定する。制御部15は、本発明における「第1取得部」、「第2取得部」、「第3取得部」、「経路決定部」及びプログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0028】
図2(B)は、端末装置2の概略構成を示す。
図2(B)に示すように、端末装置2は、主に、通信部21と、記憶部22と、センサ部23と、入力部24と、制御部25と、出力部26とを有する。通信部21、記憶部22、センサ部23、入力部24、制御部25及び出力部26は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0029】
通信部21は、制御部25の制御に基づき、サーバ装置1へ経路探索要求情報S1を送信したり、サーバ装置1から送信される推奨経路情報S2及びその他経路案内に必要な情報を受信したりする。
【0030】
記憶部22は、制御部25が実行するプログラムや、制御部25が所定の処理を実行するのに必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部22は、入力部24への入力等に基づき制御部25が生成したプロフィールに関する情報(「プロフィール情報」とも呼ぶ。)を記憶する。プロフィール情報は、本発明における「運転手情報」の一例である。
【0031】
センサ部23は、車両の絶対的な位置情報などを生成するGPS受信機32と、ジャイロセンサ及び速度センサなどの自律測位装置33とを含む。センサ部23は、生成した出力信号を、制御部25へ供給する。
【0032】
入力部24は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、経路探索のための目的地を指定する入力、運転手のプロフィールの入力などを受け付け、生成した入力信号を制御部25へ供給する。出力部26は、例えば、制御部25の制御に基づき出力を行うディスプレイやスピーカ等である。
【0033】
制御部25は、プログラムを実行するCPUなどを含み、端末装置2の全体を制御する。例えば、制御部25は、入力部24によるユーザ入力等に基づきプロフィール情報を生成し、記憶部22に記憶させる。また、制御部25は、入力部24による目的地の入力を検知した場合に、入力された目的地の情報と、GPS受信機32等が出力する現在位置情報と、記憶部22に記憶されたプロフィール情報とを含む経路探索要求情報S1を通信部21によりサーバ装置1へ送信する。そして、制御部25は、通信部21がサーバ装置1から推奨経路情報S2を受信した場合に、推奨経路を出力部26に出力させ、案内経路として設定するか否かの入力を入力部24により受け付ける。その後、制御部25は、設定された経路を案内する情報を出力部26に出力させる。
【0034】
[運転評価モデルの抽出]
サーバ装置1は、経路探索要求情報S1を受信した場合に、経路探索要求情報S1に含まれるプロフィール情報に基づき運転評価モデルを運転評価モデルDB18から抽出する。ここで、運転評価モデルDB18に登録される各運転評価モデルは、性別や運転歴などのプロフィールの共通性を有する判定者のグループごとに生成され、グループで共通するプロフィールの分類情報と関連付けられている。よって、サーバ装置1は、プロフィール情報が示すプロフィールと共通するプロフィールの分類情報に関連付けられた運転評価モデルを、運転評価モデルDB18から抽出する。
【0035】
図3は、運転評価モデルDB18に含まれる各運転評価モデルの識別番号(「モデルID」とも呼ぶ。)と当該運転評価モデルに対応する判定者のプロフィールの分類情報との対応テーブルである。
図3の対応テーブルは、「性別」、「運転歴」、「居住地」、「年齢」、及び「モデルID」の各項目を有する。
【0036】
ここで、モデルID「M001」の運転評価モデルは、性別が男、運転歴が5年未満、居住地が東京都、年齢が25歳~39歳である判定者が参照した撮影画像と、当該判定者が撮影画像を参照して判定した運転難易度の評価値との組み合わせを教師データとして学習して得られた運転評価モデルを示す。同様に、モデルID「M002」の運転評価モデルは、性別が男、運転歴が5年未満、居住地が東京都、年齢が40歳~59歳である判定者が参照した撮影画像と、当該判定者が撮影画像を参照して判定した運転難易度の評価値との組み合わせを教師データとして学習して得られた運転評価モデルを示す。また、モデルID「M251」の運転評価モデルは、性別が女、運転歴が5年未満、居住地が埼玉県、年齢が60歳~69歳である判定者が参照した撮影画像と、当該判定者が撮影画像を参照して判定した運転難易度の評価値との組み合わせを教師データとして学習して得られた運転評価モデルを示す。また、モデルID「M342」の運転評価モデルは、性別が女、運転歴が5年以上、居住地が神奈川県、年齢が24歳以下である判定者が参照した撮影画像と、当該判定者が撮影画像を参照して判定した運転難易度の評価値との組み合わせを教師データとして学習して得られた運転評価モデルを示す。また、モデルID「M445」の運転評価モデルは、性別が女、運転歴が5年以上、居住地が北海道、年齢が70歳以上である判定者が参照した撮影画像と、当該判定者が撮影画像を参照して判定した運転難易度の評価値との組み合わせを教師データとして学習して得られた運転評価モデルを示す。
【0037】
このように、運転評価モデルは、性別、運転歴、居住地、年齢に基づき判定者をグループ分けした場合のグループごとに生成されている。一般に、運転手が知覚する運転難易度は、運転手の性別、運転歴、居住地(即ちよく走行するエリア)、年齢等によって異なる。以上を勘案し、本実施例では、運転手が感じる運転難易度に影響があるプロフィールの項目に基づき判定者をグループ分けし、サーバ装置1は、分けられたグループごとに予め生成された運転評価モデルを運転評価モデルDB18として記憶しておく。
【0038】
なお、
図3の例では、運転歴は5年未満と5年以上との2つに分類され、居住地は都道府県により分類され、年齢は5段階により分類されていたが、各項目の分類方法はこれに限定されない。例えば、運転歴は3段階以上に分けられてもよく、居住地はより広域なエリア(例えば7地方)又はより詳細なエリアにより分類されてもよい。同様に、年齢は5段階以外の段階により分類されてもよい。なお、運転歴に代えて、又はこれに加えて、
図3の対応テーブルには、運転歴以外の運転履歴(例えば事故の回数又は頻度、急ブレーキの回数又は頻度等)に関する項目が設けられてもよい。
【0039】
サーバ装置1は、
図3に示すような対応テーブルを参照し、プロフィール情報が示すプロフィールから、当該プロフィールに適合する判定者のグループ(適合グループ)に対応する運転評価モデルを運転評価モデルDB18から抽出する。具体的には、サーバ装置1は、
図3に示す対応テーブルを参照し、プロフィール情報に含まれる性別、運転歴、居住地、年齢に該当するレコードに記録されたモデルIDに対応する運転評価モデルを運転評価モデルDB18から抽出する。例えば、プロフィール情報が示す性別が「男」、運転歴が「3年」、居住地が「東京都」、年齢が「45歳」である場合、
図3の2番目のレコードに記録されたモデルID「M002」の運転評価モデルを運転評価モデルDB18から抽出する。
【0040】
[経路探索処理]
次に、運転評価モデルを用いた経路探索処理について説明する。
図4は、運転評価モデルを用いた経路探索処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【0041】
まず、端末装置2は、経路探索を指示する入力があるか否か判定する(ステップS101)。そして、端末装置2は、経路探索を指示する入力がある場合(ステップS101;Yes)、上述の入力において指定された目的地の情報と、GPS受信機32等が出力する現在位置情報と、記憶部22に記憶されたプロフィール情報とを含む経路探索要求情報S1を、サーバ装置1へ送信する(ステップS102)。一方、端末装置2は、経路探索を指示する入力がない場合(ステップS101;No)、引き続き、経路探索を指示する入力の有無をステップS101で監視する。
【0042】
端末装置2による経路探索要求情報S1の送信後、サーバ装置1は、経路探索要求情報S1を端末装置2から受信する(ステップS201)。そして、サーバ装置1は、経路探索要求情報S1に含まれるプロフィール情報を参照し、適用すべき運転評価モデルを運転評価モデルDB18から抽出する(ステップS202)。
【0043】
そして、サーバ装置1は、経路探索要求情報S1により特定されるサーバ装置1の現在位置(即ち出発地)から目的地までの経路探索であって、運転評価モデルから算出する運転難易度の評価値をコストとする経路探索を開始する(ステップS203)。この場合、サーバ装置1は、経路を構成する道路(即ち地図データ16上のリンク)に対応する撮影画像を撮影画像DB17から抽出し、抽出した撮影画像を運転評価モデルに入力することで、対象の道路に対応する運転難易度の評価値を算出する(ステップS204)。このとき、サーバ装置1は、道路ごとのコスト(リンクコスト)を、算出した運転難易度の評価値に比例した値に設定してもよく、通常の経路探索において所要時間等を勘案して算出するリンクコストに上述の評価値に応じた値を加算した値に設定してもよい。なお、この場合、運転難易度の評価値は、運転しにくい道路ほど高い値となるように設定されるとよい。
【0044】
そして、サーバ装置1は、道路ごとのリンクコストの合計が最も低い1又は所定個数の推奨経路を決定する(ステップS205)。この場合、サーバ装置1は、出発地から目的地までの推奨経路の候補となる各候補経路について、当該候補経路を構成する全道路のリンクコストを合計し、リンクコストの合計が最も低い1又は所定個数の推奨経路を決定する。これにより、サーバ装置1は、運転手にとって運転難易度が低いと推定される道路から構成される経路を、推奨経路として好適に決定することができる。そして、サーバ装置1は、決定した推奨経路に関する推奨経路情報S2を、経路探索要求情報S1の送信元の端末装置2へ送信する(ステップS206)。
【0045】
一方、端末装置2は、経路探索要求情報S1の送信後、サーバ装置1がステップS206で送信した推奨経路情報S2を受信する(ステップS103)。そして、端末装置2は、ユーザが選択した推奨経路を案内経路として決定し、決定した案内経路に沿って走行するための案内を開始する(ステップS104)。
【0046】
以上説明したように、本実施例に係るサーバ装置1は、車両を運転する運転手に関するプロフィール情報と、車両の出発地及び目的地の情報とを端末装置2から受信する。サーバ装置1は、出発地から目的地までの複数の経路を構成する道路の各々に対し、プロフィール情報に対応する運転評価モデルに基づく運転難易度の評価値を算出する。そして、サーバ装置1は、算出した運転難易度の評価値に基づき、推奨経路を決定する。このように、サーバ装置1は、車両の運転手に適した運転評価モデルから算出した運転難易度の評価値に基づき経路探索を行うため、運転手の個人差を好適に勘案した経路探索を実行することができる。
【0047】
[変形例]
次に、実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0048】
(変形例1)
端末装置2は、サーバ装置1が実行する経路探索処理の一部又は全部を実行してもよい。
【0049】
図5は、本変形例に係る経路探索システムの構成例である。
図5の例では、端末装置2は、道路データ及び施設情報などを含む地図データ20を記憶しており、記憶部22に記憶したプロフィール情報「Sa」をサーバ装置1へ送信する。この場合、サーバ装置1は、プロフィール情報Saが示すプロフィールに基づき運転評価モデルDB18から運転評価モデルを抽出する。そして、サーバ装置1は、抽出した運転評価モデルの情報(「抽出モデル情報Sb」とも呼ぶ。)を端末装置2へ送信する。端末装置2は、目的地の入力を受け付けて経路探索を実行する場合、
図4のステップS203~S205を実行することで、推奨経路を決定する。この場合、端末装置2は、ステップS204で必要となる経路上の各道路の撮影画像を、経路画像情報「Sc」としてサーバ装置1から受信する。この場合、例えば、端末装置2は、撮影画像が必要な道路のリンクID等を指定した要求信号をサーバ装置1へ送信し、サーバ装置1は、受信した要求信号に含まれるリンクID等に対応する撮影画像を撮影画像DB17から抽出して経路画像情報Scとして送信する。
【0050】
このように、本変形例によれば、端末装置2は、実施例に係る経路探索処理をサーバ装置1に代えて好適に実行することができる。なお、本変形例において、端末装置2は、本発明における「経路探索装置」の一例であり、端末装置2の制御部25は、本発明における「第1取得部」、「第2取得部」、「第3取得部」、「経路決定部」及びプログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0051】
(変形例2)
運転評価モデルに基づき算出された運転難易度の評価値が地図データに予め含まれていてもよい。
【0052】
図6は、本変形例に係る経路探索システムの構成を示す。
図6の例では、端末装置2は、各運転評価モデルに基づき算出された運転難易度の評価値を道路ごとに関連付けた情報(「運転評価情報Ie」とも呼ぶ。)が地図データ20に含まれている。この場合、各道路の運転難易度の評価値は、例えば、各運転評価モデルのモデルIDごとに地図データ20に記録されている。また、
図6の構成例では、端末装置2は、
図3の対応テーブルを予め記憶しておく。そして、端末装置2は、経路探索の実行時には、例えば、プロフィール情報に対応する運転評価モデルのモデルIDを
図3の対応テーブルを参照して特定した後、経路を構成する各道路の運転難易度の評価値を、特定したモデルID及び対象の道路のリンクIDから地図データ20を参照して取得する。この態様によっても、端末装置2は、運転難易度の評価値に基づく各経路のコストを算出し、推奨経路を決定することができる。
【0053】
なお、
図6の例に代えて、サーバ装置1が経路探索を実行する構成において、サーバ装置1が備える地図データに運転評価情報Ieが含まれていてもよい。この場合であっても、サーバ装置1は、端末装置2から受信したプロフィール情報に対応する運転評価モデルのモデルIDを
図3の対応テーブルを参照して特定した後、経路を構成する各道路の運転難易度の評価値を、特定したモデルID及び対象の道路のリンクIDから地図データを参照して取得する。この態様によっても、サーバ装置1は、運転難易度の評価値に基づく各経路のコストを算出し、推奨経路を決定することができる。
【0054】
(変形例3)
運転評価モデルは、車両の走行環境に基づきさらに分類して生成されてもよい。
【0055】
この場合、
図3の対応テーブルでは、性別、運転歴、居住地、年齢等のプロフィールに関する項目に加えて、天候、道路種別、時間帯などの走行環境に関する項目がさらに設けられる。そして、運転評価モデルは、走行環境に関する項目に基づく分類ごとに予め生成され、運転評価モデルDB18に記憶される。この場合、各走行環境に対応する運転評価モデルは、各走行環境において道路上で撮影された撮影画像ごとに、撮影画像と、当該撮影画像を参照して判定者が判定した運転難易度の評価値との組み合わせを教師データとして学習することで生成される。
【0056】
そして、例えば、端末装置2は、経路探索を指示する入力があった場合には、図示しない雨滴センサ等のセンサ部23の出力や地
図DB20等を参照し、現在の車両の走行環境を認識する。そして、端末装置2は、認識した走行環境を示す情報を経路探索要求情報S1に含めてサーバ装置1へ送信する。この場合、サーバ装置1は、経路探索要求情報S1に含まれるプロフィール情報及び走行環境を示す情報に適合する運転評価モデルを選択し、当該運転評価モデルを用いて経路探索に必要な運転難易度の評価値を算出する。このように、本変形例によれば、サーバ装置1は、現在の車両の走行環境をさらに勘案し、運転しやすい経路を推奨経路として決定することができる。
【0057】
(変形例4)
運転評価モデルにより判定する対象は、運転難易度に限定されない。例えば、運転評価モデルにより判定する対象は、見晴らしの良さであってもよい。
【0058】
この場合、運転評価モデルDB18に登録される各運転評価モデルは、道路上で撮影された撮影画像と、当該撮影画像を参照した判定者が判定した見晴らしの良さの評価値との組み合わせを教師データとして学習することで生成される。そして、これらの各運転評価モデルは、実施例と同様に、性別や年齢などのプロフィールの共通性を有する判定者のグループごとに生成され、共通するプロフィールの分類情報と関連付けられて運転評価モデルDB18に記憶される。そして、
図4の経路探索処理では、端末装置2は、実施例と同様に、ステップS102において、プロフィール情報を含む経路探索要求情報S1をサーバ装置1に送信する。この場合、サーバ装置1は、ステップS202において、端末装置2から受信した経路探索要求情報S1に含まれるプロフィール情報が示すプロフィールに適合する運転評価モデルを運転評価モデルDB18から抽出する。そして、サーバ装置1は、ステップS203において、運転評価モデルから算出される見晴らしの良さの評価値をコストとする経路探索を開始する。この場合、運転評価モデルから算出される見晴らしの良さの評価値は、見晴らしが悪いほど高い値となるように設定される。そして、サーバ装置1は、ステップS204及びステップS205を実行することで推奨経路を決定し、決定した推奨経路に関する推奨経路情報S2をステップS206において端末装置2へ送信する。
【0059】
本変形例によれば、サーバ装置1は、見晴らしが良い道路から構成される経路を、観光の観点又は安全の観点において好適な推奨経路として決定することができる。ここで、見晴らしが良い道路から構成される経路は、例えば、観光の観点であれば、観光地において景観の優れる道路から構成される経路等が該当し、安全運転の観点であれば、遠方からでも比較的歩行者を発見しやすい安全な道路から構成される経路等が該当する。なお、端末装置2は、運転難易度と見晴らしの良さのいずれの指標を採用して経路探索を実行するかをユーザに選択させる入力を入力部24により受け付けてもよい。この場合、端末装置2は、受け付けた入力に基づき、運転難易度と見晴らしの良さのいずれの指標を用いるかを指定する情報を経路探索要求情報S1に含めてサーバ装置1へ送信する。