(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159985
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ヒト化IL-4およびIL-4Rα動物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20241031BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20241031BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241031BHJP
C12N 15/877 20100101ALI20241031BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0735
C12N15/12
C12N15/877 Z
C12N15/90 104Z
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024150803
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2022147925の分割
【原出願日】2015-05-07
(31)【優先権主張番号】61/989,757
(32)【優先日】2014-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】リ-シェン ワン
(72)【発明者】
【氏名】インジー シュエ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェイ. マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ショーン スティーブンズ
(57)【要約】
【課題】非ヒト動物のIL-4および/もしくはIL-4Rα遺伝子が全体的または部分的にヒト化した、あるいはヒトまたはヒト化IL-4および/もしくはIL-4Rαタンパク質をそれぞれコードする配列を含むヒトIL-4および/もしくはIL-4Rα遺伝子で置換された非ヒト動物(例えば齧歯類、例えばネズミ科の動物、例えばマウスまたはラット)を提供する。
【解決手段】ヒト配列を含むIL-4および/またはIL-4Rαタンパク質をコードする核酸配列を含む非ヒト動物;全体的または部分的にヒト型であるIL-4および/またはIL-4Rα遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト動物;ヒトまたはヒト化IL-4および/またはIL-4Rαタンパク質を発現する非ヒト動物;内因性非ヒト動物IL-4および/またはIL-4Rα遺伝子の置換(全体的または部分的)を有する非ヒト動物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
齧歯類胚性幹(ES)細胞であって、
(i)ヒト化IL-4Rα遺伝子を形成するための、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座における齧歯類IL-4Rα遺伝子のゲノム断片の、ヒトIL-4Rα遺伝子のゲノム断片による置換を含み、
前記齧歯類IL-4Rα遺伝子のゲノム断片は、齧歯類IL-4Rα遺伝子のコーディングエクソン1のATG開始コドンからコーディングエクソン5までを含み、
前記ヒトIL-4Rα遺伝子のゲノム断片は、ヒトIL-4Rα遺伝子のコーディングエクソン1のATG開始コドンからコーディングエクソン5までを含み、
前記ヒト化IL-4Rα遺伝子が、前記ヒトIL-4Rα遺伝子のコーディングエクソン1のATG開始コドンからコーディングエクソン5まで、および前記齧歯類IL-4Rα遺伝子のコーディングエクソン6~9を含み、
前記ヒト化IL-4Rα遺伝子の発現が、前記内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座における齧歯類IL-4Rα調節エレメントの制御下にあり、そして、
(ii)ヒト化IL-4遺伝子を形成するための、内因性齧歯類IL-4遺伝子座における齧歯類IL-4遺伝子のゲノム断片の、ヒトIL-4遺伝子のゲノム断片による置換を含み、
前記齧歯類IL-4遺伝子のゲノム断片は、齧歯類IL-4遺伝子のエクソン1のATG開始コドンからエクソン4までを含み、
前記ヒトIL-4遺伝子のゲノム断片は、ヒトIL-4遺伝子のエクソン1のATG開始コドンからエクソン4までを含み、
前記ヒト化IL-4遺伝子の発現が、前記内因性齧歯類IL-4遺伝子座における齧歯類調節エレメントの制御下にある、齧歯類ES細胞。
【請求項2】
前記齧歯類ES細胞は、マウスES細胞である、請求項1に記載の齧歯類ES細胞。
【請求項3】
前記齧歯類ES細胞は、ラットES細胞である、請求項1に記載の齧歯類ES細胞。
【請求項4】
請求項1に記載の齧歯類ES細胞を含む、齧歯類胚。
【請求項5】
前記齧歯類ES細胞はマウスES細胞であり、前記齧歯類胚はマウス胚である、請求項4に記載の齧歯類胚。
【請求項6】
前記齧歯類ES細胞はラットES細胞であり、前記齧歯類胚はラット胚である、請求項4に記載の齧歯類胚。
【請求項7】
遺伝子改変齧歯類ES細胞の作製方法であって、
内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座における齧歯類IL-4Rα遺伝子のゲノム断片を、ヒトIL-4Rα遺伝子のゲノム断片によって置換して、ヒト化IL-4Rα遺伝子を形成することと、
内因性齧歯類IL-4遺伝子座における齧歯類IL-4遺伝子のゲノム断片を、ヒトIL-4遺伝子のゲノム断片によって置換して、ヒト化IL-4遺伝子を形成することであった、それによって前記遺伝子改変齧歯類ES細胞を得ることと
を含み、
前記齧歯類IL-4Rα遺伝子のゲノム断片は、齧歯類IL-4Rα遺伝子のコーディングエクソン1のATG開始コドンからコーディングエクソン5までを含み、
前記ヒトIL-4Rα遺伝子のゲノム断片は、ヒトIL-4Rα遺伝子のコーディングエクソン1のATG開始コドンからコーディングエクソン5までを含み、
前記ヒト化IL-4Rα遺伝子が、前記ヒトIL-4Rα遺伝子のコーディングエクソン1のATG開始コドンからコーディングエクソン5まで、および前記齧歯類IL-4Rα遺伝子のコーディングエクソン6~9を含み、
前記ヒト化IL-4Rα遺伝子の発現が、前記内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座における齧歯類IL-4Rα調節エレメントの制御下にあり、そして、
前記齧歯類IL-4遺伝子のゲノム断片は、齧歯類IL-4遺伝子のエクソン1のATG開始コドンからエクソン4までを含み、
前記ヒトIL-4遺伝子のゲノム断片は、ヒトIL-4遺伝子のエクソン1のATG開始コドンからエクソン4までを含み、
前記ヒト化IL-4遺伝子の発現が、前記内因性齧歯類IL-4遺伝子座における齧歯類調節エレメントの制御下にある、方法。
【請求項8】
前記齧歯類ES細胞は、マウスES細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記齧歯類ES細胞は、ラットES細胞である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年5月7日出願の米国仮特許出願第61/989,757号の優先権の利益を主張するものであり、当該仮特許出願の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照による組み込み
2015年5月7日に作成され、EFS-Webを介して米国特許商標庁に提出された31260_SEQ.txtという名称の16KBのASCIIテキストファイルの形態をとる配列表が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
ヒト配列を含むIL-4および/またはIL-4Rαタンパク質をコードする核酸配列を含む非ヒト動物が本明細書に開示されている。全体的または部分的にヒト型であるIL-4および/またはIL-4Rα遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト動物も本明細書に開示されている。ヒトまたはヒト化IL-4および/またはIL-4Rαタンパク質を発現する非ヒト動物も開示されている。さらに、ヒトまたはヒト化IL-4および/またはIL-4Rα核酸配列を含む非ヒト動物を作成・使用するための方法が開示されている。
【背景技術】
【0004】
IL-4およびIL-4Rαは、異常な2型ヘルパーT(Th2)細胞と関連する様々なヒトの疾患、障害、および状態を処置するための治療標的である。ヒトIL-4またはヒトIL-4Rαタンパク質を特異的に標的とする治療用分子の薬物動態学(PK)および薬力学(PD)の評価は、非ヒト動物、例えば、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)で日常的に遂行されている。しかしながら、ある特定の非ヒト動物では、これらの治療用分子は内因性IL-4またはIL-4Rαタンパク質を標的としないため、かかる治療用分子のPDを適正に判定することができない。
【0005】
さらに、異常なTh2細胞と関連する疾患の様々な非ヒト動物モデルを使用する、ヒト特異的なIL-4およびIL-4Rαタンパク質拮抗薬の治療有効性の評価は、かかる種特異的な拮抗薬が内因性IL-4またはIL-4Rαタンパク質と相互作用しない非ヒト動物では問題がある。
【0006】
したがって、非ヒト動物のIL-4および/もしくはIL-4Rα遺伝子が全体的または部分的にヒト化した、あるいはヒトまたはヒト化IL-4および/もしくはIL-4Rαタンパク質をそれぞれコードする配列を含むヒトIL-4および/もしくはIL-4Rα遺伝子で(例えば、内因性非ヒト遺伝子座において)置換された非ヒト動物(例えば齧歯類、例えばネズミ科の動物、例えばマウスまたはラット)に対するニーズがある。
【0007】
IL-4および/またはIL-4R遺伝子が非ヒト調節エレメント(例えば、内因性調節エレメント)の制御下にある、IL-4および/またはIL-4Rα遺伝子(例えば、ヒト化したもの、またはヒトのもの)を含む非ヒト動物に対するニーズもある。
【0008】
機能性IL-4タンパク質を発現するがヒトまたはヒト化IL-4遺伝子を含まない同齢の非ヒト動物の血液、血漿、または血清中に存在するIL-4タンパク質の濃度と類似した濃度にてヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を血液、血漿、または血清中に発現する、かつ/あるいは、機能性IL-4Rαタンパク質を発現するがヒトまたはヒト化IL
-4Rα遺伝子を含まない同齢の非ヒト動物の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上のIL-4Rαタンパク質のレベルと類似したレベルにてヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上に発現する、ヒト化した非ヒト動物に対するニーズもある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ヒト配列を含むIL-4および/またはIL-4Rαタンパク質をコードする核酸配列を含む非ヒト動物が提供される。
【0010】
全体的または部分的にヒト型であるIL-4および/またはIL-4Rα遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト動物が提供される。
【0011】
ヒトまたはヒト化IL-4および/またはIL-4Rαタンパク質を発現する非ヒト動物が提供される。
【0012】
内因性非ヒト動物IL-4および/またはIL-4Rα遺伝子の置換(全体的または部分的)を有する非ヒト動物が提供される。
【0013】
IL-4および/またはIL-4Rαのヒト化(全体的または部分的)を内因性非ヒトIL-4および/またはIL-4Rα遺伝子座において含む非ヒト動物が提供される。
【0014】
ヒトまたはヒト化IL-4遺伝子を有する非ヒト動物が提供され、この非ヒト動物は内因性IL-4タンパク質を発現せず、かつこの非ヒト動物は、機能性内因性IL-4タンパク質を発現するがヒトまたはヒト化IL-4遺伝子を含まない同齢の非ヒト動物の血液、血漿、または血清中に存在するIL-4タンパク質の濃度と類似した濃度にてヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を血液、血漿、または血清中に発現する。
【0015】
ヒトまたはヒト化IL-4Rα遺伝子を有する非ヒト動物が提供され、この非ヒト動物は内因性IL-4Rαタンパク質を発現せず、かつこの非ヒト動物は、機能性内因性IL-4Rαタンパク質を発現するがヒトまたはヒト化IL-4Rα遺伝子を含まない同齢の非ヒト動物の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上に存在するIL-4Rαタンパク質のレベルと類似したレベルにてヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上に発現する。
【0016】
一態様では、ヒトまたはヒト化IL-4および/またはIL-4Rα核酸配列を含む非ヒト動物が提供される。
【0017】
一態様では、内因性IL-4および/またはIL-4Rα遺伝子座における内因性IL-4および/またはIL-4Rαをコードする遺伝子の、ヒトまたはヒト化IL-4および/またはIL-4Rαタンパク質をコードする遺伝子による置換を含む遺伝子改変非ヒト動物が提供される。内因性齧歯類IL-4遺伝子座における内因性IL-4遺伝子の、ヒトIL-4遺伝子による置換を含む、および/または内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座における内因性IL-4Rα遺伝子の、ヒトIL-4Rα遺伝子による置換を含む、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)が提供される。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0018】
一態様では、内因性齧歯類IL-4遺伝子のヒト化を含む遺伝子改変齧歯類(例えば、マウスまたはラット)が提供され、このヒト化は、改変されたIL-4遺伝子を形成するための、内因性齧歯類IL-4遺伝子座における、ヒトIL-4遺伝子の少なくとも1つ
のエクソンを含む核酸配列による齧歯類IL-4遺伝子の少なくとも1つのエクソンを含む齧歯類核酸の置換を含み、改変されたIL-4遺伝子の発現は内因性齧歯類IL-4遺伝子座の齧歯類調節エレメントの制御下にある。
【0019】
一実施形態では、齧歯類はマウスまたはラットである。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0020】
一実施形態では、改変されたIL-4遺伝子は、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードし、ヒトIL-4遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4までを含む。
【0021】
一実施形態では、齧歯類は、マウスIL-4タンパク質を発現する能力を有しないマウスである。
【0022】
一実施形態では、齧歯類は、内因性マウスIL-4Rα遺伝子によってコードされたマウスIL-4Rαタンパク質を発現するマウスである。
【0023】
一実施形態では、齧歯類は、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現するマウスである。
【0024】
一実施形態では、ヒト化IL-4Rαタンパク質はヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインを含む。
【0025】
一実施形態では、ヒト化IL-4Rαタンパク質はマウスIL-4Rαタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。
【0026】
一実施形態では、齧歯類は、改変されたIL-4Rα遺伝子を形成するための、内因性マウスIL-4Rα遺伝子座における、ヒトIL-4Rα遺伝子の少なくとも1つのエクソンを含む核酸配列によるマウスIL-4Rα遺伝子の少なくとも1つのエクソンを含むマウス核酸の置換を含むマウスであり、改変されたIL-4Rα遺伝子の発現は内因性マウスIL-4Rα遺伝子座のマウス調節エレメントの制御下にある。
【0027】
一実施形態では、齧歯類はマウスであり、マウスIL-4のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4までを含むマウスIL-4配列の連続ゲノム断片(contiguous genomic fragment)が、ヒトIL-4のATG開始コドンから開始するエクソン
1からエクソン4までを含むヒトIL-4配列の連続ゲノム断片で置換されている。
【0028】
一実施形態では、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードする改変されたIL-4Rα遺伝子の発現は、内因性マウスIL-4Rα遺伝子座のマウス調節エレメントの制御下にある。
【0029】
一態様では、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子のヒト化を含む遺伝子改変齧歯類(例えば、マウスまたはラット)が提供され、このヒト化は、改変された(すなわち、ヒト化した)IL-4Rα遺伝子を形成するための、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座における、ヒトIL-4Rα遺伝子の少なくとも1つのエクソンをコードする核酸配列による齧歯類IL-4Rα遺伝子のエクソンを含む齧歯類核酸の置換を含み、改変されたヒト化IL-4Rα遺伝子の発現は、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座の齧歯類調節エレメントの制御下にある。
【0030】
一実施形態では、齧歯類はマウスまたはラットである。一実施形態では、齧歯類はマウ
スである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0031】
一実施形態では、改変されたIL-4Rα遺伝子は、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードし、かつヒトIL-4Rα遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までを含む。
【0032】
一実施形態では、齧歯類は、マウスIL-4Rαタンパク質を発現する能力を有しないマウスである。
【0033】
一実施形態では、齧歯類は、内因性マウスIL-4遺伝子によってコードされたマウスIL-4タンパク質を発現するマウスである。
【0034】
一実施形態では、齧歯類はヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現するマウスである。
【0035】
一実施形態では、齧歯類は、改変されたIL-4遺伝子を形成するための、内因性マウスIL-4遺伝子座における、ヒトIL-4遺伝子の少なくとも1つのエクソンをコードする核酸配列によるマウスIL-4遺伝子のエクソンを含むマウス核酸の置換を含むマウスであり、改変されたIL-4遺伝子の発現は、内因性マウスIL-4遺伝子座のマウス調節エレメントの制御下にある。
【0036】
一実施形態では、齧歯類はマウスであり、かつIL-4RαのATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までを含むマウスIL-4Rα配列の連続ゲノム断片が、ヒトIL-4RαのATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までを含むヒトIL-4Rα配列の連続ゲノム断片で置換されている。
【0037】
一態様では、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現する遺伝子改変齧歯類(例えば、マウスまたはラット)が提供され、ここで、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現する齧歯類は正常な免疫系を含む、すなわちヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現する齧歯類の血液、血漿、または血清中の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)の数が、機能性内因性IL-4タンパク質を発現する齧歯類の血液、血漿、または血清中の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)の数と類似している。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0038】
一態様では、ヒトまたはヒト化IL-4遺伝子由来のIL-4タンパク質を発現する遺伝子改変齧歯類(例えば、マウスまたはラット)が提供され、齧歯類はその血清中にヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現する。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0039】
一実施形態では、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現する齧歯類の血清は、機能性内因性IL-4タンパク質を発現する齧歯類(例えば、野生型のマウスまたはラット)とほぼ同じレベルのIL-4タンパク質を有する。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0040】
一実施形態では、マウスは血清中にヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を、機能性内因性IL-4タンパク質を発現するが内因性マウスIL-4遺伝子座における内因性IL-4遺伝子のヒトIL-4遺伝子による置換を含まない同齢のマウスの血清中に存在するIL-4タンパク質のレベルの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、または200%の濃度で発現す
る。
【0041】
一実施形態では、マウスは血清中にヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を、機能性内因性IL-4タンパク質を発現するが内因性マウスIL-4遺伝子座における内因性IL-4遺伝子のヒトIL-4遺伝子による置換を含まない同齢のマウスの血清中に存在するマウスIL-4タンパク質のレベルの約10%~約200%、約20%~約150%、または約30%~約100%の濃度で発現する。
【0042】
一態様では、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する遺伝子改変齧歯類(例えば、マウスまたはラット)が提供され、齧歯類は、機能性内因性IL-4Rαタンパク質を発現する同齢の齧歯類の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上に存在するIL-4Rαタンパク質のレベルと類似したレベルで、免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上にヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0043】
一態様では、ヒトIL-4Rα遺伝子由来のIL-4Rαタンパク質を発現する遺伝子改変齧歯類(例えば、マウスまたはラット)が提供され、齧歯類はヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上に発現する。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0044】
一実施形態では、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する齧歯類の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)は、ほぼ同じレベルのIL-4Rαタンパク質を、機能性内因性IL-4Rαタンパク質を発現する齧歯類(例えば、野生型のマウスまたはラット)の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上に有する。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0045】
一実施形態では、マウスはヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上に、機能性内因性IL-4Rαタンパク質を発現するが内因性マウスIL-4Rα遺伝子座における内因性IL-4Rα遺伝子のヒトIL-4Rα遺伝子による置換を含まない同齢のマウスの免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上のIL-4Rαタンパク質の量の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、または200%の量で発現する。
【0046】
一実施形態では、マウスはヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上に、機能性内因性IL-4Rαタンパク質を発現するが内因性マウスIL-4Rα遺伝子座における内因性IL-4Rα遺伝子のヒトIL-4Rα遺伝子による置換を含まない同齢のマウスの免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上に存在するマウスIL-4Rαタンパク質の量の約10%~約200%、約20%~約150%、または約30%~約100%の量で発現する。
【0047】
一態様では、齧歯類IL-4Rα細胞外ドメインコード配列のヒトIL-4Rα細胞外ドメインコード配列による置換を含むヒト化IL-4Rα遺伝子を含む遺伝子改変齧歯類が提供され、ヒト化IL-4Rα遺伝子は齧歯類IL-4Rα膜貫通配列および齧歯類IL-4Rα細胞質配列を含み、ヒト化IL-4Rα遺伝子は内因性IL-4Rα遺伝子座の内因性齧歯類IL-4Rα調節エレメントの制御下にあり、かつ齧歯類は、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードするヒト化IL-4遺伝子をさらに含み、ヒト化IL-4遺伝子は内因性IL-4遺伝子座の内因性齧歯類IL-4調節エレメントの制御下にある。
【0048】
一実施形態では、齧歯類はマウスまたはラットである。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0049】
一実施形態では、マウスは、マウスIL-4タンパク質を発現する能力を有さず、かつマウスIL-4Rαタンパク質を発現する能力を有しない。
【0050】
一実施形態では、内因性齧歯類IL-4遺伝子座および/または齧歯類IL-4Rα遺伝子座の齧歯類調節エレメントまたは配列は、マウスまたはラット由来である。
【0051】
一実施形態では、齧歯類調節エレメントまたは配列は、齧歯類IL-4遺伝子座および/または齧歯類IL-4Rα遺伝子座の内因性齧歯類調節エレメントまたは配列である。
【0052】
一態様では、ヒトまたはヒト化IL-4および/またはIL-4Rαタンパク質を発現する非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)が提供され、非ヒト動物は内因性非ヒトIL-4Rα遺伝子座および/または内因性非ヒトIL-4Rα遺伝子座からヒトまたはヒト化IL-4および/またはIL-4Rαタンパク質を発現する。一実施形態では、非ヒト動物は齧歯類である。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0053】
一態様では、内因性マウスIL-4遺伝子座からヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現する遺伝子改変マウスが提供され、内因性マウスIL-4遺伝子は全体的または部分的に、ヒトIL-4遺伝子で置換されている。
【0054】
一実施形態では、ATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4まで(3’非翻訳領域を含む)およびエクソン4の下流の3’領域の一部分を含む、内因性マウスIL-4遺伝子座の約6.3kbの連続マウスゲノム核酸が除去され、ヒトIL-4遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4まで(3’非翻訳領域を含む)およびエクソン4の下流の3’領域の一部分を含む約8.8kbのヒトIL-4核酸配列で置換される。特定の実施形態では、マウスゲノム核酸と置き換わるヒトIL-4核酸配列は、ヒトBAC RP11-17K19のヒトIL-4遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4までおよびエクソン4の下流の3’領域の一部分を含む。特定の実施形態では、改変されたIL-4遺伝子は、マウスIL-4 5’調節エレメント、およびATG開始コドンから開始するヒトIL-4エクソン1からエクソン4まで(すなわち、IL-4タンパク質コード配列)を含む。
【0055】
一態様では、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子改変マウスが提供され、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードするヌクレオチド配列は全体的または部分的に、内因性マウスIL-4タンパク質をコードする内因性ヌクレオチド配列と置き換わる。
【0056】
一態様では、内因性マウスIL-4Rα遺伝子座からヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する遺伝子改変マウスが提供され、内因性マウスIL-4Rα遺伝子は全体的または部分的に、ヒトIL-4Rα遺伝子で置換されている。
【0057】
一実施形態では、ATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までおよびイントロン5の一部分を含む、内因性マウスIL-4Rα遺伝子座の約7.1kbの連続マウスゲノム核酸が除去され、ヒトIL-4Rα遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までおよびイントロン5の一部分を含む約15.6kbのヒトIL-4Rα核酸配列で置換される。特定の実施形態では、マウスゲノム核酸と置き換わ
るヒトIL-4α核酸は、ヒトBAC RP11-16E24のヒトIL-4α遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までおよびイントロン5の一部分を含む。特定の実施形態では、マウスゲノム核酸と置き換わるヒトIL-4Rα核酸は、ヒトIL-4Rα細胞外ドメインコード配列全体を含む。
【0058】
一態様では、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードする改変されたヒト化IL-4遺伝子を形成するために、齧歯類IL-4タンパク質をコードする齧歯類IL-4遺伝子配列をヒトIL-4遺伝子配列の1つ以上のエクソンを含むヒトIL-4核酸配列で置換することを含む、ヒト化IL-4齧歯類を作製するための方法が提供され、ここで、置換は内因性齧歯類IL-4遺伝子座においてなされ、ヒトIL-4遺伝子配列の1つ以上のエクソンを含むヒト化IL-4遺伝子配列であってヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードするヒト化IL-4遺伝子配列は、内因性齧歯類IL-4遺伝子座の齧歯類調節エレメントまたは配列(例えば、5’および/または3’調節エレメント)に作動可能に連結される。
【0059】
一実施形態では、齧歯類はマウスまたはラットである。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0060】
一実施形態では、齧歯類調節エレメントまたは配列はマウス由来である。一実施形態では、齧歯類調節エレメントまたは配列はラット由来である。
【0061】
一実施形態では、齧歯類調節エレメントまたは配列は、齧歯類IL-4遺伝子座の内因性齧歯類調節エレメントまたは配列である。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0062】
一実施形態では、齧歯類IL-4遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4核酸配列は、ヒトIL-4遺伝子配列の少なくとも1つのエクソンを含む。他の実施形態では、齧歯類IL-4遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4核酸配列は、ヒトIL-4遺伝子配列の少なくとも2つまたは少なくとも3つのエクソンを含む。一実施形態では、齧歯類IL-4遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4核酸配列は、ヒトIL-4遺伝子配列の4つのエクソンを全て含む。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0063】
一実施形態では、齧歯類IL-4遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4核酸配列は、ヒトIL-4(例えば、GenBank Accession No. NM_000589.3sで示される核酸によって
コードされるヒトIL-4タンパク質)と約85%、90%、95%、96%、97%、98%、または約99%同一であるタンパク質をコードする。
【0064】
一実施形態では、置換は内因性齧歯類IL-4遺伝子座においてなされ、ヒトIL-4遺伝子配列の1つ以上のエクソンを含むヒト化IL-4遺伝子配列であってヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードするヒト化IL-4遺伝子配列は、内因性齧歯類IL-4遺伝子座の内因性齧歯類調節エレメントまたは配列(例えば、5’および/または3’調節エレメント)に作動可能に連結される。
【0065】
一態様では、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードする改変されたヒト化IL-4遺伝子を形成するために、マウスIL-4タンパク質をコードするマウスIL-4遺伝子配列をヒトIL-4遺伝子配列で置換することを含む、ヒト化IL-4マウスを作製するための方法が提供される。
【0066】
一実施形態では、置換は内因性マウスIL-4遺伝子座においてなされ、その結果得ら
れるヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードするヒト化IL-4遺伝子は、内因性マウスIL-4遺伝子座のマウス調節エレメントまたは配列(例えば、5’および/または3’調節エレメント)に作動可能に連結される。
【0067】
一実施形態では、置換は内因性マウスIL-4遺伝子座においてなされ、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードするヒト化IL-4遺伝子は、内因性マウスIL-4遺伝子座の内因性マウス調節エレメントまたは配列(例えば、5’および/または3’調節エレメント)に作動可能に連結される。
【0068】
一態様では、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードする改変されたヒト化IL-4Rα遺伝子を形成するために、齧歯類IL-4Rαタンパク質をコードする齧歯類IL-4Rα遺伝子配列をヒトIL-4Rα遺伝子配列の1つ以上のエクソンを含むヒトIL-4Rα核酸配列で置換することを含む、ヒト化IL-4Rα齧歯類を作製するための方法が提供され、ここで、置換は内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座においてなされ、ヒトIL-4Rα遺伝子配列の1つ以上のエクソンを含むヒト化IL-4Rα遺伝子配列であってヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードするヒト化IL-4Rα遺伝子配列は、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座の齧歯類調節エレメントまたは配列(例えば、5’および/または3’調節エレメント)に作動可能に連結される。
【0069】
一実施形態では、齧歯類はマウスまたはラットである。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0070】
一実施形態では、齧歯類調節エレメントまたは配列はマウス由来である。一実施形態では、齧歯類調節エレメントまたは配列はラット由来である。
【0071】
一実施形態では、齧歯類調節エレメントまたは配列は、齧歯類IL-4Rα遺伝子座の内因性齧歯類調節エレメントまたは配列である。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0072】
一実施形態では、齧歯類IL-4Rα遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4Rα核酸配列は、ヒトIL-4Rα遺伝子配列の少なくとも1つのエクソンを含む。他の実施形態では、齧歯類IL-4αR遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4Rα核酸配列は、ヒトIL-4Rα遺伝子配列の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのエクソンを含む。一実施形態では、齧歯類IL-4Rα遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4Rα核酸配列は、ヒトIL-4Rα遺伝子配列の9つのエクソンを全て含む。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0073】
一実施形態では、齧歯類IL-4Rα遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4Rα核酸配列は、ヒトIL-4Rα(例えば、GenBank Accession No. NM_000418.3で示される核酸によってコードされるヒトIL-4Rαタンパク質)と約85%、90%、95%、96%、97%、98%、または約99%同一であるタンパク質をコードする。
【0074】
一実施形態では、齧歯類IL-4Rα遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4Rα核酸配列は、ヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインをコードするヒトIL-4Rα遺伝子配列の少なくとも1つのエクソンを含む。他の実施形態では、齧歯類IL-4Rα遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4Rα核酸配列は、ヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインをコードするヒトIL-4Rα遺伝子配列の少なくとも2つ、3つ、または4つのエクソンを含む。一実施形態では、齧歯類IL-4Rα遺伝子配列と置き換わるヒトIL-4Rα核酸配列は、ヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインをコードするヒトIL-4Rα遺伝子配列の5つのエクソンを全て含む。一実施形態では、齧歯類はマウス
である。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0075】
一実施形態では、齧歯類IL-4Rα遺伝子配列と置き換わるヒトまたはヒト化IL-4Rα遺伝子配列は、ヒトIL-4Rαタンパク質(例えば、GenBank Accession No.
NM_000418.3で示される核酸によってコードされるヒトIL-4Rαタンパク質)の細
胞外ドメインと約85%、90%、95%、96%、97%、98%、または約99%同一であるIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインをコードする。
【0076】
一実施形態では、置換は内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座においてなされ、ヒトIL-4Rα遺伝子配列の1つ以上のエクソンを含むヒト化IL-4Rα遺伝子配列であってヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードするヒト化IL-4Rα遺伝子配列は、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座の内因性齧歯類調節エレメントまたは配列(例えば、5’および/または3’調節エレメント)に作動可能に連結される。
【0077】
一態様では、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードする改変されたヒト化IL-4Rα遺伝子を形成するために、マウスIL-4Rαタンパク質をコードするマウスIL-4Rα遺伝子配列をヒトIL-4Rα核酸配列で置換することを含む、ヒト化IL-4Rαマウスを作製するための方法が提供される。
【0078】
一実施形態では、置換は内因性マウスIL-4Rα遺伝子座においてなされ、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードするヒト化IL-4Rα遺伝子は、内因性マウスIL-4Rα遺伝子座のマウス調節エレメントまたは配列(例えば、5’および/または3’調節エレメント)に作動可能に連結される。
【0079】
一実施形態では、置換は内因性マウスIL-4Rα遺伝子座においてなされ、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードするヒト化IL-4Rα遺伝子は、内因性マウスIL-4Rα遺伝子座の内因性マウス調節エレメントまたは配列(例えば、5’および/または3’調節エレメント)に作動可能に連結される。
【0080】
様々な態様では、本明細書に記載される遺伝子改変非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)は、それらの生殖系列に遺伝子改変を含む。
【0081】
一態様では、本明細書に記載されるような遺伝子改変を含む、非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)の胚が提供される。
【0082】
一態様では、本明細書に記載されるような遺伝子改変を含むドナー細胞を含む非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)の宿主胚が提供される。
【0083】
一態様では、本明細書に記載されるような遺伝子改変を含む多能性または全能性の非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)の細胞が提供される。一実施形態では、細胞は齧歯類細胞である。一実施形態では、細胞はマウス細胞である。一実施形態では、細胞は齧歯類ES細胞である。一実施形態では、細胞はマウスES細胞である。
【0084】
一態様では、非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)の卵子が提供され、非ヒト動物の卵子は異所性非ヒト動物染色体を含み、異所性非ヒト動物染色体は本明細書に記載されるような遺伝子改変を含む。一実施形態では、非ヒト動物は齧歯類である。一実施形態では、齧歯類はマウスである。一実施形態では、齧歯類はラットである。
【0085】
一態様では、ヒトIL-4遺伝子またはヒトIL-4Rα遺伝子を含むように遺伝子改
変されたマウスの胚、卵子、または細胞は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、およびC57BL/Olaから選択されるC57BL系統のマウスのものである。別の実施形態では、マウスは、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/Svlm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である系統からなる群から選択される129系統である(例えば、Festing et al.(1999)Revised nomenclature for strain 129 mice,Mammalian Genome 10:836を参照のこと。また、Auerbach et al(2000)Establishment and Chimera Analysis of 129/SvEv- and C57BL/6-Derived
Mouse Embryonic Stem Cell Linesも参照のこと)。特定の実施形態では、遺伝子改変マウスは、前述の129系統と前述のC57BL/6系統との混合である。別の特定の実施形態では、マウスは前述の129系統の混合、または前述のBL/6系統の混合である。特定の実施形態では、上記混合の129系統は129S6(129/SvEvTac)系統である。別の実施形態では、マウスはBALB系統、例えばBALB/c系統、である。さらに別の実施形態では、マウスはBALB系統と別の前述の系統との混合である。一実施形態では、マウスはスイスマウスまたはスイスウェブスターマウスである。
【0086】
様々な態様では、ヒトまたはヒト化IL-4Rおよび/またはIL-4核酸配列を含む非ヒト動物は、哺乳類および鳥類から選択される。一実施形態では、非ヒト動物は哺乳類である。一実施形態では、哺乳類はネズミ科である。
【0087】
一態様では、ヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬をスクリーニングする方法が提供される。方法は、治療薬候補の同定および治療有効性の評価に有用である。方法は、本明細書に記載されるようにIL-4およびIL-4Rαを二重にヒト化した遺伝子改変齧歯類に薬剤を投与することと、IL-4/IL-4Rαシグナル伝達経路によって媒介される生物学的機能に対する薬剤の効果を判定することと、薬剤が遺伝子改変齧歯類においてIL-4/IL-4Rαシグナル伝達経路によって媒介される機能と拮抗する場合に薬剤をヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬として同定することと、を含む。
【0088】
一実施形態では、薬剤は、IL-4またはIL-4Rαと結合する免疫グロブリン可変ドメインを含む。一実施形態では、薬剤は、ヒトIL-4またはIL-4Rαに特異的に結合するが、齧歯類IL-4またはIL-4Rαには結合しない。一実施形態では、薬剤は抗体である。特定の実施形態では、薬剤は、ヒトIL-4Rαと特異的に結合するが齧歯類IL-4Rαとは結合しない抗体である。
【0089】
一実施形態では、スクリーニング方法は、ヒトIL-4タンパク質およびヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する二重にヒト化したマウスを利用し、ヒト化IL-4Rαタンパク質は、内因性マウスIL-4Rαタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに連結されたヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインを含み、上記マウスはネズミのIL-4またはネズミのIL-4Rαを発現しない。
【0090】
一部の実施形態では、スクリーニングの方法は、本明細書に記載されるように二重にヒト化した齧歯類においてIL-4/IL-4Rαシグナル伝達と関連する疾患を誘発することと、薬剤を齧歯類に投与することと、薬剤が疾患を軽快させるかどうかを判定するこ
とと、薬剤が疾患を軽快させる場合に薬剤を、疾患を処置するために好適なヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬として同定することと、を含む。
【0091】
一部の実施形態では、IL-4/IL-4Rαシグナル伝達と関連する疾患は気道炎症であり、これは、齧歯類において、アレルゲン(例えば、チリダニ類抽出物)を一定期間、1回以上、鼻腔内投与することによって誘発できる。薬剤の投与の結果として気道炎症の程度(例えば、粘液貯留、気管支肺胞洗浄液中の浸潤性細胞、および/または総循環IgEのレベルによって表される)が低減するかどうかを測定することによって薬剤の効果を判定できる。
【0092】
一部の実施形態では、IL-4/IL-4Rαシグナル伝達と関連する疾患は、皮膚炎症またはアトピー性皮膚炎であり、これらは、齧歯類に皮膚損傷を生じさせ、損傷した皮膚をアレルゲン(例えば、細菌毒素またはチリダニ類抽出物)に一定期間、1回以上、曝露することによって誘発できる。薬剤の投与の結果として皮膚炎症が低減するかどうかを測定することによって薬剤の効果を判定できる。
【0093】
さらなる態様では、そのIL-4、IL-4Rα、およびIL-33遺伝子が本明細書に記載されるようにヒト化されている三重にヒト化した非ヒト動物が、化合物または化合物の組み合わせの薬力学(PD)および治療有効性を評価するために使用される。
【0094】
実施形態または態様の状況から明示的に、あるいは明らかに、除外されない限り、本明細書に記載される態様および実施形態の各々を一緒に使用できる。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
内因性齧歯類IL-4R遺伝子のヒト化を含む齧歯類であって、前記ヒト化が、改変されたIL-4遺伝子を形成するための、内因性齧歯類IL-4遺伝子座における、ヒトIL-4遺伝子の少なくとも1つのエクソンを含む核酸配列によるIL-4遺伝子のエクソンを含む齧歯類核酸の置換を含み、前記改変されたIL-4遺伝子の発現が、前記内因性齧歯類IL-4遺伝子座の齧歯類調節エレメントの制御下にある、齧歯類。
(項目2)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目1に記載の齧歯類。
(項目3)
前記改変されたIL-4遺伝子が、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードし、前記ヒトIL-4遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4までを含む、項目1に記載の齧歯類。
(項目4)
前記齧歯類が、マウスIL-4タンパク質を発現する能力を有しないマウスである、項目1に記載の齧歯類。
(項目5)
前記齧歯類が、内因性マウスIL-4Rα遺伝子によってコードされたマウスIL-4Rαタンパク質を発現するマウスである、項目1に記載の齧歯類。
(項目6)
前記齧歯類が、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現するマウスである、項目1に記載の齧歯類。
(項目7)
前記ヒト化IL-4Rαタンパク質が、前記ヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインを含む、項目6に記載のマウス。
(項目8)
前記ヒト化IL-4Rαタンパク質が、前記マウスIL-4Rαタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む、項目7に記載のマウス。
(項目9)
前記マウスが、改変されたIL-4Rα遺伝子を形成するための、内因性マウスIL-4Rα遺伝子座における、ヒトIL-4Rα遺伝子の少なくとも1つのエクソンをコードする核酸配列によるマウスIL-4Rα遺伝子のエクソンを含むマウス核酸の置換を含み、前記改変されたIL-4Rα遺伝子の発現が、前記内因性マウスIL-4Rα遺伝子座のマウス調節エレメントの制御下にある、項目6に記載のマウス。
(項目10)
前記齧歯類がマウスであり、マウスIL-4のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4までを含むマウスIL-4配列の連続ゲノム断片が、ヒトIL-4のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4までを含むヒトIL-4配列の連続ゲノム断片で置換されている、項目1に記載の齧歯類。
(項目11)
前記齧歯類が、機能性内因性マウスIL-4タンパク質を発現するが前記置換を含まない同齢のマウスの血清中に存在するマウスIL-4タンパク質のレベルの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、または200%の濃度にてヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を血清中に発現するマウスである、項目1に記載の齧歯類。
(項目12)
前記齧歯類が、機能性内因性マウスIL-4タンパク質を発現するが前記置換を含まない同齢のマウスの血清中に存在するマウスIL-4タンパク質のレベルの約10%~約200%、約20%~約150%、または約30%~約100%の濃度にてヒトIL-4タンパク質を血清中に発現するマウスである、項目1に記載の齧歯類。
(項目13)
内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子のヒト化を含む齧歯類であって、前記ヒト化が、ヒト化IL-4Rα遺伝子を形成するための、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座における、ヒトIL-4Rα遺伝子の少なくとも1つのエクソンを含む核酸配列による齧歯類IL-4Rα遺伝子のエクソンを含む齧歯類核酸の置換を含み、前記ヒト化IL-4Rα遺伝子の発現が、前記内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座の齧歯類調節エレメントの制御下にある、齧歯類。
(項目14)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目13に記載の齧歯類。
(項目15)
前記ヒト化IL-4Rα遺伝子が、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードし、前記ヒトIL-4Rα遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までを含む、項目13に記載の齧歯類。
(項目16)
前記齧歯類が、マウスIL-4Rαタンパク質を発現する能力を有しないマウスである、項目13に記載の齧歯類。
(項目17)
前記齧歯類が、内因性マウスIL-4遺伝子によってコードされたマウスIL-4タンパク質を発現するマウスである、項目13に記載の齧歯類。
(項目18)
前記齧歯類が、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現するマウスである、項目17に記載のマウス。
(項目19)
前記マウスが、改変されたIL-4遺伝子を形成するための、内因性マウスIL-4遺伝子座における、ヒトIL-4遺伝子の少なくとも1つのエクソンを含む核酸配列によるマウスIL-4遺伝子のエクソンを含むマウス核酸の置換を含み、前記改変されたIL-4遺伝子の発現が、前記内因性マウスIL-4遺伝子座のマウス調節エレメントの制御下
にある、項目18に記載のマウス。
(項目20)
前記齧歯類がマウスであり、マウスIL-4RαのATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までを含むマウスIL-4Rα配列の連続ゲノム断片が、ヒトIL-4RαのATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までを含むヒトIL-4Rα配列の連続ゲノム断片で置換されている、項目13に記載の齧歯類。
(項目21)
前記齧歯類が、機能性内因性マウスIL-4Rαタンパク質を発現するが前記置換を含まない同齢のマウスのB細胞および/またはT細胞のいずれかの免疫細胞上に存在するマウスIL-4Rαタンパク質のレベルの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、または200%の量にて、B細胞および/またはT細胞のいずれかの免疫細胞上にヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現するマウスである、項目13に記載の齧歯類。
(項目22)
前記齧歯類が、機能性内因性マウスIL-4Rαタンパク質を発現するが前記置換を含まない同齢のマウスのB細胞および/またはT細胞のいずれかの免疫細胞上に存在するマウスIL-4Rαタンパク質のレベルの約10%~約200%、約20%~約150%、または約30%~約100%の量にて、B細胞および/またはT細胞のいずれかの免疫細胞上にヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現するマウスである、項目13に記載の齧歯類。
(項目23)
ヒト化した齧歯類を作製するための方法であって、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードする改変されたIL-4遺伝子を形成するために、ヒトIL-4遺伝子の1つ以上のエクソンを含むヒトIL-4核酸配列で齧歯類IL-4核酸配列を置換することを含み、前記置換が、内因性齧歯類IL-4遺伝子座にあり、ヒトIL-4遺伝子配列の1つ以上のエクソンを含む前記改変されたIL-4遺伝子配列が、内因性齧歯類IL-4遺伝子座の齧歯類調節エレメントまたは配列に作動可能に連結される、方法。
(項目24)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記齧歯類調節エレメントまたは配列がマウスまたはラットに由来する、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記齧歯類調節エレメントまたは配列が、前記齧歯類IL-4遺伝子座の内因性齧歯類調節エレメントまたは配列である、項目23に記載の方法。
(項目27)
前記齧歯類IL-4核酸配列と置き換わる前記ヒトIL-4核酸配列が、前記ヒトIL-4遺伝子配列の少なくとも1つのエクソンを含む、項目23に記載の方法。
(項目28)
前記齧歯類IL-4核酸配列と置き換わる前記ヒトIL-4核酸配列が、前記ヒトIL-4遺伝子配列の少なくとも2つまたは少なくとも3つのエクソンを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記齧歯類IL-4核酸配列と置き換わる前記ヒトIL-4核酸配列が、前記ヒトIL-4遺伝子配列の4つのエクソンを全て含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記置換が内因性齧歯類IL-4遺伝子座にあり、前記ヒトIL-4遺伝子配列の1つ以上のエクソンを含む前記ヒトIL-4核酸配列が、前記内因性齧歯類IL-4遺伝子座の内因性齧歯類調節エレメントまたは配列に作動可能に連結される、項目23に記載の方
法。
(項目31)
ヒト化IL-4マウスを作製するための方法であって、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードする改変されたIL-4遺伝子を形成するために、マウスIL-4核酸配列をヒトIL-4核酸で置換することを含む、方法。
(項目32)
前記置換が内因性マウスIL-4遺伝子座にあり、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードする前記改変された遺伝子が、内因性マウス調節配列に作動可能に連結される、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記置換が内因性マウスIL-4遺伝子座にあり、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードする前記改変された遺伝子が、内因性マウス調節配列に作動可能に連結される、項目31に記載の方法。
(項目34)
ヒト化した齧歯類を作製するための方法であって、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードする改変されたIL-4Rα遺伝子を形成するために、ヒトIL-4Rα遺伝子配列の1つ以上のエクソンを含むヒトIL-4Rα核酸配列で齧歯類IL-4Rα核酸配列を置換することを含み、前記置換が、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座にあり、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードする前記改変されたIL-4Rα遺伝子が、前記内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座の齧歯類調節エレメントまたは配列に作動可能に連結される、方法。
(項目35)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記齧歯類調節エレメントまたは配列がマウスまたはラットに由来する、項目34に記載の方法。
(項目37)
前記齧歯類調節エレメントまたは配列が、前記齧歯類IL-4Rα遺伝子座の内因性齧歯類調節エレメントまたは配列である、項目34に記載の方法。
(項目38)
前記齧歯類IL-4Rα遺伝子配列と置き換わる前記ヒトIL-4Rα遺伝子配列が、前記ヒトIL-4Rα遺伝子配列の少なくとも1つのエクソンを含む、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記齧歯類IL-4Rα核酸配列と置き換わる前記ヒトIL-4Rα核酸配列が、前記ヒトIL-4Rα遺伝子配列の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのエクソンを含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記齧歯類IL-4Rα核酸配列と置き換わる前記ヒトIL-4Rα核酸配列が、前記ヒトIL-4Rα遺伝子配列の9つのエクソンを全て含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記置換が内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座にあり、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードする前記改変されたIL-4Rα遺伝子が、前記内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座の内因性齧歯類調節エレメントまたは配列に作動可能に連結される、項目34に記載の方法。
(項目42)
ヒト化したマウスを作製するための方法であって、ヒト化IL-4Rα遺伝子を形成するために、ヒトIL-4Rαの細胞外ドメインをコードするヒトゲノム断片によりマウスIL-4Rαの細胞外ドメインをコードするマウスエクソンを置換することを含む、方法。
(項目43)
前記置換が内因性マウスIL-4Rα遺伝子座にあり、前記ヒト化IL-4Rα遺伝子がマウス調節配列に作動可能に連結される、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記置換が内因性マウスIL-4Rα遺伝子座にあり、前記ヒト化IL-4Rα遺伝子が内因性マウス調節配列に作動可能に連結される、項目42に記載の方法。
(項目45)
ヒト化IL-4Rα遺伝子およびヒト化IL-4遺伝子を含む齧歯類であって、前記ヒト化IL-4Rα遺伝子は、ヒトIL-4Rα細胞外ドメインをコードする配列による齧歯類IL-4Rα細胞外ドメインをコードする配列の置換から結果として得られ、前記ヒト化IL-4Rα遺伝子は、齧歯類IL-4Rα膜貫通ドメインをコードする配列と齧歯類IL-4Rα細胞質ドメインをコードする配列とを含み、前記ヒト化IL-4Rα遺伝子は、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座の内因性齧歯類IL-4Rα調節エレメントの制御下にあり、前記ヒト化IL-4遺伝子は、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードし、前記ヒト化IL-4遺伝子は、内因性齧歯類IL-4R遺伝子座の内因性齧歯類IL-4調節エレメントの制御下にある、齧歯類。
(項目46)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目45に記載の齧歯類。
(項目47)
前記齧歯類が、マウスIL-4タンパク質を発現する能力を有しないマウスであってマウスIL-4Rαタンパク質を発現する能力を有しないマウスである、項目45に記載の齧歯類。
(項目48)
前記内因性齧歯類IL-4遺伝子座および/または内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子座の前記齧歯類調節エレメントまたは配列が、マウスまたはラット由来である、項目45に記載の齧歯類。
(項目49)
前記齧歯類調節エレメントまたは配列が、前記齧歯類IL-4遺伝子座および/または齧歯類IL-4Rα遺伝子座の内因性齧歯類調節エレメントまたは配列である、項目45に記載の齧歯類。
(項目50)
ヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬をスクリーニングする方法であって、
二重にヒト化したIL-4およびIL-4Rαマウスを提供することと、
前記マウスにおいて肺の炎症を誘発することと、
薬剤を前記マウスに投与することと、
前記薬剤によって肺の炎症が低減するかどうかを判定することと、
前記薬剤を、肺の炎症を低減するその能力に基づいてヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬として同定することと、
を含む方法。
(項目51)
気道内の粘液貯留、気管支肺胞洗浄液中の好酸球性浸潤細胞、および/または総循環IgEを測定することによって肺の炎症の程度が判定される、項目50に記載の方法。
(項目52)
ヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬をスクリーニングする方法であって、
二重にヒト化したIL-4およびIL-4Rαマウスを提供することと、
前記マウスにおいて皮膚炎症を誘発することと、
薬剤を前記マウスに投与することと、
前記薬剤によって皮膚炎症が低減するかどうかを判定することと、
前記薬剤を、皮膚炎症を低減するその能力に基づいてヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬として同定することと、
を含む方法。
(項目53)
ヒト化IL-4Rα遺伝子が、ヒトIL-4Rα細胞外ドメインをコードする配列によるネズミのIL-4Rα細胞外ドメインをコードする配列の置換から結果として得られ、前記ヒト化IL-4Rα遺伝子が内因性のネズミのIL-4Rα遺伝子座の内因性のネズミのIL-4Rα調節エレメントの制御下にあり、ヒト化IL-4遺伝子がヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードし、前記ヒト化IL-4遺伝子は、内因性齧歯類IL-4R遺伝子座の内因性齧歯類IL-4調節エレメントの制御下にある、項目50または52に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】
図1は、IL-4およびIL-13のシグナル伝達のための受容体、ならびに、ヒトIL-4受容体α鎖(IL-4Rα)に特異的に結合する中和性完全ヒトモノクローナル抗体であるデュピルマブ(dupilumab)の作用機序を図示したものである(実寸に比例していない)。
【
図2A】
図2A~
図2Bは、IL-4(Il4)およびIL-4Rα(Il4ra)遺伝子座のヒト化のための戦略を図示したものである(実寸に比例していない)。(2A)図示されるように、ATG開始コドンにおいて開始するエクソン1からエクソン4(3’非翻訳領域を含む)までコード領域が広がるマウスIL-4遺伝子(上方)およびエクソン4の下流の3’領域の一部分が除去され、loxP導入hygro選択カセットloxP、ならびにヒトIL-4遺伝子(下方)のATGコドンにおいて開始するエクソン1からエクソン4(3’非翻訳領域を含む)までのコード領域およびエクソン4の下流の3’領域の一部分によって置換される。
【
図2B】
図2A~
図2Bは、IL-4(Il4)およびIL-4Rα(Il4ra)遺伝子座のヒト化のための戦略を図示したものである(実寸に比例していない)。(2B)図示されるように、ATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までコード領域が広がるマウスIL-4Rα遺伝子(上方)およびイントロン5の一部分が削除され、ヒトIL-4Rα遺伝子(下方)のATG開始コードから開始するエクソン1からエクソン5までのコード領域およびイントロン5の一部分、ならびにloxP導入neo選択カセットによって置換される。
【
図3】
図3は、二重にヒト化したIL-4/IL-4Rα(Il4
hu/hu/Il4ra
hu/hu)マウス由来のB細胞およびT細胞上のヒト化IL-4Rαタンパク質の発現を示す。
【
図4】
図4は、ヒト化IL4Rα(Il4ra
hu/hu)マウス由来の初代細胞を使用してIL-4およびIL-13のリガンド特異性および受容体機能性を示す。
【
図5】
図5は、野生型マウスにおけるインビボでのIL-4依存的なIgE産生を示すが、ヒト化したIL4Rα(Il4ra
hu/hu)マウスでは示されない。
【
図6】
図6は、エクスビボにおけるマウスB細胞での用量依存的なIL-4によるmIgE産生の誘発(左パネル)がデュピルマブによって用量依存的な様式で遮断される(右パネル)ことを示す。
【
図7】
図7は、デュピルマブが用量依存的な様式で、ヒト化IL4Rα(Il4ra
hu/hu)マウスにおいてインビボで、IL-25が誘発する肺疾患を防止することを示す。
【
図8】
図8は、チリダニ類抽出物(HDM)によって誘発された肺炎症モデルにおいて、二重にヒト化したIL-4およびIL-4Rα(IL-4
hu/hu/IL-4R
hu/hu)マウスを使用してデュピルマブの治療有効性を評価するための実験計画を示す。「REGN668」は、ヒトIL-4Rαを対象とするヒトモノクローナル抗体を指し、これはデュピルマブとしても知られる。「REGN129」は、マウスsol IL-13Rα2-Fcを指し、これはマウスIL-13R2αの細胞外ドメインとFcとの間の融合タンパク質である。
【
図9】
図9は、HDMによって誘発された肺炎症モデルにおいて、二重にヒト化したIL-4およびIL-4Rα(IL-4
hu/hu/IL-4R
hu/hu)マウスおよびアイソタイプ対照抗体を使用してデュピルマブの治療有効性を評価するための実験計画を示す。
【
図10A】
図10A~
図10CはマウスIL-33遺伝子座のヒト化のための戦略を図示する。
図10Aは、ATG開始コドンにおいて開始するエクソン2からエクソン8の終止コドンまでコード領域が広がるマウスIL-33遺伝子(上方)が削除され、ヒトIL-33遺伝子(下方)のATGコドンにおいて開始するエクソン2からエクソン8(3’非翻訳領域を含む)までのコード領域によって置換されることを図示する。
【
図10B】
図10A~
図10CはマウスIL-33遺伝子座のヒト化のための戦略を図示する。
図10Bは、マウスES細胞クローンMAID 7060のヒト化IL-33対立遺伝子を示し、これはloxPネオマイシン選択カセットを含有する。
【
図10C】
図10A~
図10CはマウスIL-33遺伝子座のヒト化のための戦略を図示する。
図10Cは、マウスES細胞クローンMAID 7061のヒト化IL-33対立遺伝子を示し、ここで、ネオマイシン選択カセットは除去されており、loxPおよびクローニング部位(77bp)はヒトIL-33配列の下流に残っており、マウス3’UTRはloxP部位の下流に保持されている。
【発明を実施するための形態】
【0096】
治療標的としてのIL-4およびIL-4Rα
アレルギー性疾患は、特に先進国において、加速度的に増加して発生する、ある範囲の疾患である。アトピー性皮膚炎、喘息、およびアレルギー性鼻炎は、アレルギーを有する患者の中でも最も一般的な炎症状態であり、これらの患者はしばしば多重の臨床症状の発症を患う。アレルギーの病因は、外因性抗原に対する異常な免疫応答に関連付けられる(Mueller et al.(2002)Structure,binding,and antagonists in the IL-4/IL-13 receptor
system,Biochim Biophys Acta 1592:237-250を参照のこと)。
【0097】
抗原特異的なIgEの過剰産生は、アレルギー性炎症を引き起こすために不可欠な要素である。異常な2型ヘルパーT細胞(Th2)の極性化はIgE応答の増加に寄与する。
【0098】
元々は活性化T細胞から同定されたインターロイキン-4(IL-4)およびインターロイキン-13(IL-13)は、アレルギーにおける免疫反応および炎症反応の開始および維持において中心的な役割を果たす主要なTh2サイトカインである。
【0099】
IL-4およびIL-13シグナル伝達は、共通のサブユニットであるIL-4受容体アルファ(IL-4Rα)を有する2種類の別個の受容体複合体によって媒介され、IL-4受容体アルファは、これら2種のサイトカインの間で重複する生物学的応答に寄与する可能性がある。
図1を参照のこと。
【0100】
インターロイキン-4/13シグナル伝達のための受容体およびデュピルマブの作用機序。IL-4Rαは、組織特異的および応答特異的な様式でIL-4およびIL-13の生物学的機能を媒介する2種類の別個のヘテロ二量体受容体複合体を形成する。IL-4Rαおよび一般的なサイトカイン受容体ガンマ鎖(γC)からなるI型受容体は、IL-4にとって一意的である。IL-4RαとIL-13Rα1との間で形成されるII型受容体は、IL-13の主要な受容体であるが、これはIL-4に対しても機能する。さらに、IL-13は、2番目に親和性の高い受容体であるIL-13Rα2に結合することになり、IL-13Rα2は一般的に、デコイ受容体として、または全長形態で線維化促進効果を有する可能性のあるものとして、認識される。
【0101】
デュピルマブは、ヒトIL-4Rαに対する拮抗性モノクローナル抗体であり、これはIL-4およびIL-13から誘発される生物学的活性を阻害する。デュピルマブは、受容体サブユニットへのIL-4の結合を妨げることによってIL-4シグナル伝達を遮断するが、一方で、IL-13シグナル伝達に対する阻害効果は、二量体の受容体の相互作用に干渉することによって媒介される可能性がある。
【0102】
共通のIL-4Rαサブユニットに対して向けられた完全ヒトモノクローナル抗体であるデュピルマブは、VelocImmune(登録商標)マウスを使用してRegeneron Pharmaceuticals,Inc.にて開発された。デュピルマブについては、中程度から重度の喘息の処置、および中程度から重度のアトピー性皮膚炎の処置のための臨床試験が実施中である。
【0103】
ネズミモデルにおけるデュピルマブの有効性の評価は、複数の課題を提起する:(a)デュピルマブは同起源のマウスIL-4受容体を認識しない、および(b)マウスIL-4タンパク質とヒトIL-4受容体との間に機能的相互作用の欠如がある。
【0104】
IL-4遺伝子およびタンパク質
IL-4遺伝子は、B細胞ならびに他の細胞タイプの活性化において重要な役割を果たす、分泌されるIL-4タンパク質をコードする(
図1を参照のこと)。
【0105】
ヒトIL-4。NCBI遺伝子ID:3565;一次ソース:HGNC:6014;RefSeq転写物:NM_000589.3;UniProt ID:P05112;ゲノムアセンブリ:GRCh37;場所:chr5:132,009,743-132,018,576 +ストランド。
【0106】
ヒトIL-4遺伝子は、染色体5上で5q31.1に位置する。ヒトIL-4遺伝子は4つのエクソンを有し、24アミノ酸のシグナルペプチドおよび129アミノ酸の成熟IL-4タンパク質を含む、長さ153アミノ酸の前駆体ポリペプチドをコードする。
【0107】
マウスIL-4。NCBI遺伝子ID:16189;一次ソース:MGI:96556;RefSeq転写物:NM_021283.2;UniProt ID:P07750;ゲノムアセンブリ:GRCm38;場所:chr11:53,612,350-53,618,606 -ストランド。
【0108】
マウスIL-4遺伝子は、染色体11上で11 31.97 cMに位置する。マウスIL-4遺伝子は4つのエクソンを有し、20アミノ酸のシグナルペプチドおよび120アミノ酸の成熟IL-4タンパク質を含む、長さ140アミノ酸の前駆体ポリペプチドをコードする。
【0109】
IL-4Rα遺伝子およびタンパク質
IL-4Rα遺伝子は膜貫通受容体IL-4Rαタンパク質をコードし、IL-4Rαタンパク質は、主にB細胞およびT細胞上に発現し、IL-4タンパク質およびIL-13タンパク質に対する受容体である(
図1を参照のこと)。
【0110】
ヒトIL-4Rα。NCBI遺伝子ID:3566;一次ソース:MGI:6015;RefSeq転写物:NM_000418.3;UniProt ID:P24394;ゲノムアセンブリ:GRCh37;場所:chr16:27,351,525-27,367,111 +ストランド。
【0111】
ヒトIL-4Rα遺伝子は、染色体16上で16p12.1-p11.2に位置する。ヒトIL-4Rα遺伝子は9つのコーディングエクソンを有し、25アミノ酸のシグナルペプチドおよび800アミノ酸の成熟IL-4Rαタンパク質を含む825アミノ酸の前駆体ポリペプチドをコードし、成熟タンパク質の最初の207個のアミノ酸残基は細胞外領域を構成する。ヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外領域(すなわち、細胞外ドメイン)は、ヒトIL-4Rα遺伝子のコーディングエクソン1から5までによってコードされる。
【0112】
マウスIL-4Rα。NCBI遺伝子ID:16190;一次ソース:MGI:105367;RefSeq転写物:NM_001008700.3;UniProt ID:P16382;ゲノムアセンブリ:GRCm38;場所:chr11:125,565,655-125,572,745 +ストランド。
【0113】
マウスIL-4Rα遺伝子は、染色体7上で7 68.94 cMに位置する。マウスIL-4Rα遺伝子は9つのコーディングエクソンを有し、25アミノ酸のシグナルペプチドおよび785アミノ酸の成熟IL-4Rαタンパク質を含む810アミノ酸の前駆体ポリペプチドをコードし、成熟タンパク質の最初の208個のアミノ酸残基は細胞外領域を構成する。マウスIL-4Rαタンパク質の細胞外領域(すなわち、細胞外ドメイン)は、マウスIL-4Rα遺伝子のコーディングエクソン1から5までによってコードされる。
【0114】
IL-4およびIL-4Rαタンパク質の種特異性
本明細書に示すように、野生型マウスではマウスIL-4は機能するが、ヒトIL-4は機能せず、また逆に、ヒト化IL-4Rα(Il4rahu/hu)マウスではヒトIL-4は機能するが、マウスIL-4は機能しない。(例えば、Andrews et
al.(2001)Reconstitution of a functional
human type II IL-4/IL-13 receptor in mouse B cells:demonstration of species specificity,J Immunol.166:1716-1722も参照のこと)。
【0115】
ヒトIL-4およびIL-4Rα阻害剤の種特異性
IL-4またはIL-4Rαタンパク質を標的とする治療用分子の候補は典型的には薬物動態学(PK)および薬力学(PD)について非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)で評価される。かかる治療用分子は、異常なTh2細胞に関連するヒトの疾患、障害、および状態のモデルである非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)においてインビボでの治療有効性についても試験される。
【0116】
しかしながら、ヒトIL-4またはIL-4Rαタンパク質に特異的な治療用分子(例えば、ヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα阻害剤)を齧歯類では、特にマウスでは、PDまたはインビボでの治療有効性について適切に評価することができない。これは、これらの治療用分子の標的が無いためである。上述のIL-4タンパク質の種特異性のために、ヒトIL-4またはIL-4Rαタンパク質を発現するトランスジェニック非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)を使用しても、この問題は克服されない。
【0117】
したがって、様々な実施形態では、ヒト特異的なIL-4またはIL-4Rαタンパク質拮抗薬または阻害剤のPDおよびインビボでの治療有効性を非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)において評価するために、ヒトIL-4および/またはIL-4Rαタンパク質で内因性IL-4および/またはIL-4Rαタンパク質を置換するのが望ましい。
【0118】
さらに、様々な実施形態では、ヒトIL-4および/またはIL-4Rαタンパク質の過剰発現または過少発現という潜在的な問題を避けるために、内因性IL-4および/またはIL-4Rα遺伝子の遺伝子座においてヒトIL-4および/またはIL-4Rα遺伝子を非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)のゲノム内に挿入すること、および少なくとも部分的に内因性IL-4および/またはIL-4Rα調節エレメントの制御下でヒトIL-4および/またはIL-4Rαタンパク質を非ヒト動物(例えば、齧歯類、例えば、マウスまたはラット)において発現させることが望ましい。
【0119】
遺伝子改変非ヒト動物
本明細書では、ヒトまたはヒト化IL-4および/またはヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードする改変されたIL-4遺伝子および/または改変されたIL-4Rα遺伝子を形成するために、内因性IL-4遺伝子座および/またはIL-4Rα遺伝子座において、ヒトIL-4核酸および/またはヒトIL-4Rα核酸により、その内因性IL-4遺伝子および/またはIL-4Rα遺伝子が全体的または部分的に置換されている遺伝子改変非ヒト動物が提供される。
【0120】
本明細書で使用される場合、「非ヒト動物」という句は、ヒトではない任意の脊椎のある生物体を指す。一部の実施形態では、非ヒト動物は哺乳類である。特定の実施形態では、非ヒト動物はラットまたはマウスなどの齧歯類である。
【0121】
一態様では、内因性IL-4遺伝子座において、ヒトIL-4核酸により、その内因性齧歯類IL-4遺伝子が全体的または部分的に置換されている遺伝子改変齧歯類(例えば、マウスまたはラット)が提供される。
【0122】
置換は、ヒトIL-4遺伝子の少なくとも1つのエクソンを含むヒト核酸による齧歯類IL-4遺伝子の少なくとも1つのエクソン、すなわち1つ以上のエクソン、の置換を伴う。一部の実施形態では、齧歯類IL-4遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4までを含む連続齧歯類ゲノム断片が、ヒトIL-4遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4までを含む連続ヒトゲノム断片で置換されている。特定の実施形態では、齧歯類はマウスであり、ATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4まで(3’非翻訳領域を含む)およびエクソン4の下流の3’領域の一部分を含む内因性マウスIL-4遺伝子座における約6.3kbの連続マウスゲノム断片が削除され、ヒトIL-4遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4まで(3’非翻訳領域を含む)およびエクソン4の下流の3’領域の一部分を含む約8.8kbのヒトIL-4核酸配列で置換される。
【0123】
一部の実施形態では、置換は内因性IL-4遺伝子遺伝子座に、改変されたヒト化IL-4遺伝子を生じさせ、改変されたIL-4遺伝子の発現は内因性IL-4遺伝子座の内因性調節エレメントの制御下にある。本明細書で使用される場合、「調節エレメント」という用語は、プロモーター、エンハンサー、および抑制エレメントなどの5’転写調節配列および転写終結配列などの3’転写調節配列の両方を含む転写調節配列を指す。一部の実施形態では、改変されたIL-4遺伝子の発現は、内因性の5’調節エレメントの制御下にある。他の実施形態では、改変されたIL-4遺伝子の発現は、内因性の3’調節エレメントの制御下にある。ある特定の実施形態では、改変されたIL-4遺伝子の発現は、内因性の5’調節エレメントおよび3’調節エレメントの制御下にある。
【0124】
内因性IL-4遺伝子座において形成された、改変されたヒト化IL-4遺伝子は、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質をコードする。「ヒト化」という用語は、非ヒト動物(例えば、マウスまたはラットなどの齧歯類)に見出される遺伝子またはタンパク質の部
分または配列を含む核酸またはタンパク質であって、非ヒト動物に見出されるものとは異なるが、代わりに、対応するヒト遺伝子またはタンパク質の部分または配列に該当する(それと同一である)部分または配列も含む、核酸またはタンパク質を指す。改変された、ヒト化IL-4遺伝子は、ヒトIL-4タンパク質(例えば、GenBank Accession No.
NM_000589.3で示される核酸によってコードされるヒトIL-4タンパク質)と少なく
とも85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるか、または100%同一であるIL-4タンパク質をコードしてよい。
【0125】
内因性IL-4遺伝子座における内因性齧歯類IL-4遺伝子のヒトIL-4核酸による全体的または部分的な置換を有する遺伝子改変齧歯類を、置換に関してホモ接合性またはヘテロ接合性とすることができる。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は置換に関してヘテロ接合性である、すなわち、内因性齧歯類IL-4遺伝子の2つのコピーのうち1つのみがヒトIL-4核酸で置換されている。他の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は置換に関してホモ接合性、すなわち、内因性齧歯類IL-4遺伝子の両方のコピーがヒトIL-4核酸で置換されている。
【0126】
遺伝子改変齧歯類は、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を血清中に発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、内因性齧歯類IL-4タンパク質を発現しない。一実施形態では、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現する齧歯類の血清は、機能性内因性IL-4タンパク質を発現する齧歯類、例えば、野生型齧歯類(例えば、機能性内因性IL-4タンパク質を発現するが、内因性IL-4遺伝子座における内因性IL-4遺伝子のヒトIL-4核酸による全体的または部分的な置換を含まない齧歯類)、とほぼ同一のレベルのIL-4タンパク質を有する。「ほぼ同一のレベル」とは、何れかの方向へ(すなわち、より大きいまたはより小さい)野生型齧歯類におけるレベルの25%、20%、15%、10%、5%以下以内に含まれるレベルを意味する。他の実施形態では、齧歯類は、機能性内因性IL-4タンパク質を発現するが内因性IL-4遺伝子座における内因性IL-4遺伝子のヒトIL-4核酸による全体的または部分的な置換を含まない同齢の齧歯類の血清中に存在するIL-4タンパク質のレベルの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、または200%の濃度にてヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を血清中に発現する。
【0127】
一部の実施形態では、ヒトIL-4核酸による内因性齧歯類IL-4遺伝子の全体的または部分的な置換を有し、かつヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を血清中に発現する遺伝子改変齧歯類は、正常な免疫系を有する。すなわち、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現する齧歯類の血液、血漿、または血清中の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)の数が、機能性内因性IL-4タンパク質を発現する齧歯類であってヒトIL-4核酸による内因性齧歯類IL-4遺伝子の全体的または部分的な置換を有しない齧歯類の血液、血漿、または血清中の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)の数と類似である。
【0128】
さらなる実施形態では、ヒトIL-4核酸による内因性齧歯類IL-4遺伝子の全体的または部分的な置換を有し、かつヒトまたはヒト化IL-4タンパク質を発現する、遺伝子改変齧歯類は、内因性IL-4Rα遺伝子座における内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子のヒトIL-4Rα核酸による全体的または部分的な置換も含み、結果として、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質も発現する。
【0129】
別の態様では、その内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子が内因性IL-4Rα遺伝子座においてヒトIL-4Rα核酸で全体的または部分的に置換されている遺伝子改変齧歯類(
例えば、マウスまたはラット)が提供される。
【0130】
置換は、ヒトIL-4Rα遺伝子の少なくとも1つのエクソンを含むヒト核酸による、齧歯類IL-4Rα遺伝子の少なくとも1つのエクソン、すなわち1つ以上のエクソン、の置換を伴う。一部の実施形態では、置換は、ヒト細胞外ドメインをコードするヒトIL-4Rα遺伝子のエクソンのうちの少なくとも1つによる齧歯類細胞外ドメインをコードする齧歯類IL-4Rα遺伝子のエクソンのうちの少なくとも1つの置換を伴う。一部の実施形態では、置換は、ヒトIL-4Rα遺伝子の細胞外ドメインをコードする5つのエクソンのうちの少なくとも2つ、3つ、または4つを含むヒト核酸による置換を伴う。他の実施形態では、齧歯類IL-4Rα遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までを含む連続齧歯類ゲノム断片が、ヒトIL-4Rα遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までを含むゲノム断片で置換されている。特定の実施形態では、齧歯類はマウスであり、ATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までおよびイントロン5の一部分を含む、内因性マウスIL-4Rα遺伝子座の約7.1kbの連続マウスゲノム断片が除去され、ヒトIL-4Rα遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5までおよびイントロン5の一部分を含む、約15.6kbのヒトIL-4Rα核酸配列で置換される。
【0131】
一部の実施形態では、置換は内因性IL-4Rα遺伝子遺伝子座に、改変されたヒト化IL-4Rα遺伝子を生じさせ、改変されたIL-4Rα遺伝子の発現は、内因性IL-4Rα遺伝子座の内因性調節エレメントの制御下にある。
【0132】
内因性IL-4Rα遺伝子座において形成された、改変されたヒト化IL-4Rα遺伝子は、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質をコードする。一部の実施形態では、改変されたヒト化IL-4Rα遺伝子は、ヒトIL-4Rαタンパク質(例えば、GenBank
Accession No. NM_000418.3で示される核酸によってコードされるヒトIL-4タン
パク質)と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるか、または100%同一であるIL-4Rαタンパク質をコードする。他の実施形態では、改変されたIL-4Rα遺伝子は、ヒトIL-4Rαタンパク質(例えば、GenBank Accession No. NM_000418.3で示される核酸によってコードされるヒトIL-4タンパク質)の細胞外ドメインと少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるか、または100%同一である細胞外ドメインを含むヒト化IL-4Rαタンパク質をコードする。特定の実施形態では、ヒト化IL-4Rαタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、内因性齧歯類IL-4Rαタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインと同一である。
【0133】
内因性IL-4Rα遺伝子座における内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子のヒトIL-4Rα核酸による全体的または部分的な置換を有する遺伝子改変齧歯類は、置換に関してホモ接合性またはヘテロ接合性とすることができる。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は置換に関してヘテロ接合性である、すなわち、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子の2つのコピーのうち1つのみがヒトIL-4Rα核酸で置換されている。他の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は置換に関してホモ接合性である、すなわち、内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子の両方のコピーがヒトIL-4Rα核酸で置換されている。
【0134】
本明細書に開示される遺伝子改変齧歯類は、免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)上にヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、内因性齧歯類IL-4Rαタンパク質を発現しない。一実施形態では、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する齧歯類の免疫細胞は、機能性内因性IL-4Rαタンパク質を発現する野生型齧歯類であってヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現しない野生型齧歯類の免疫細胞上に機能性内因性IL-4Rαタンパク質
を発現する齧歯類とほぼ同一のレベルのIL-4Rαタンパク質を免疫細胞上に有する。他の実施形態では、齧歯類は、機能性内因性IL-4Rαタンパク質を発現するがヒトIL-4Rα核酸による内因性IL-4Rα遺伝子の全体的または部分的な置換を含まない同齢の齧歯類の免疫細胞上に存在するIL-4Rαタンパク質の量の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、または200%の量で、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を免疫細胞上に発現する。
【0135】
一部の実施形態では、ヒトIL-4Rα核酸による内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子の全体的または部分的な置換を有し、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する遺伝子改変齧歯類は、正常な免疫系を有する。すなわち、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する齧歯類の血液、血漿、または血清中の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)の数が、野生型齧歯類(例えば、機能性内因性IL-4Rαタンパク質を発現し、かつヒトIL-4Rα核酸による内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子の全体的または部分的な置換を有しない齧歯類)の血液、血漿、または血清中の免疫細胞(例えば、B細胞およびT細胞)の数と類似である。
【0136】
一部の実施形態では、ヒトIL-4Rα核酸による内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子の全体的または部分的な置換を有し、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する遺伝子改変齧歯類は、IL-4依存的シグナル伝達およびIL-13依存的シグナル伝達を媒介する能力を有し、かつIL-4依存的シグナル伝達およびIL-13依存的シグナル伝達を媒介する上で機能する。例えば、遺伝子改変齧歯類の免疫細胞上に発現されたヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインを有するヒト化IL-4Rαタンパク質は、ヒトIL-4と相互作用し、I型受容体の形成を介してヒトIL-4依存的シグナル伝達を媒介する(
図1を参照のこと)。ヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインを有するかかるヒト化IL-4Rαタンパク質はまた、ヒトおよびマウスのIL-13と相互作用し、II型受容体の形成を介してIL-13依存的シグナル伝達を媒介する(
図1を参照のこと)。遺伝子改変齧歯類において発現されたヒト化IL-4Rαタンパク質の機能性は、遺伝子改変齧歯類に由来する一次B細胞(primary B cells)を使用してIL-
4が誘発したIgEクラススイッチングを測定するアッセイなどの、以下の実施例で具体的に記載されるものを含む、当該技術分野で既知の様々なアッセイで評価することができる。
【0137】
さらなる実施形態では、ヒトIL-4Rα核酸による内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子の全体的または部分的な置換を有し、ヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する遺伝子改変齧歯類は、内因性IL-4遺伝子座における内因性齧歯類IL-4遺伝子のヒトIL-4核酸による全体的または部分的な置換も含み、結果として、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質も発現する。
【0138】
さらなる態様では、その内因性齧歯類IL-4遺伝子が内因性IL-4遺伝子座においてヒトIL-4核酸で全体的または部分的に置換されており、かつその内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子が内因性IL-4Rα遺伝子座においてヒトIL-4Rα核酸で全体的または部分的に置換されてもいる、二重にヒト化した齧歯類(例えば、マウスまたはラット)が提供される。かかる二重にヒト化した齧歯類は、各々のヒト化置換に関してホモ接合性またはヘテロ接合性とすることができる。特定の実施形態では、二重にヒト化した齧歯類は、ヒト化IL-4およびヒト化IL-4Rαの両方に関してホモ接合性である。
【0139】
二重にヒト化した齧歯類における内因性齧歯類IL-4遺伝子に対する遺伝子改変は、ヒトIL-4核酸による内因性齧歯類IL-4遺伝子の全体的または部分的な置換を有す
る遺伝子改変齧歯類について本明細書で上述される改変または置換を含む。同様に、二重にヒト化した齧歯類における内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子に対する遺伝子改変は、ヒトIL-4Rα核酸による内因性齧歯類IL-4Rα遺伝子の全体的または部分的な置換を有する遺伝子改変齧歯類について本明細書で上述される改変または置換を含む。従って、本明細書では、齧歯類IL-4遺伝子のヒト化に関しておよび齧歯類遺伝子のヒト化に関して上記で開示される特徴はそれぞれ、二重にヒト化した齧歯類に対して明確に組み込まれる。
【0140】
特定の実施形態では、ヒトIL-4タンパク質およびヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する二重にヒト化した齧歯類(例えば、マウスまたはラット)が提供され、ヒト化IL-4Rαタンパク質は、ヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインを含み、齧歯類の内因性IL-4Rαタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。特定の実施形態では、ヒトIL-4タンパク質およびヒト化IL-4Rαタンパク質の発現は、それぞれ、内因性齧歯類IL-4遺伝子座および齧歯類IL-4Rα遺伝子座の内因性齧歯類調節配列の制御下にある。
【0141】
一部の実施形態では、二重にヒト化した齧歯類は正常な免疫系(すなわち、免疫細胞の数が野生型齧歯類とほぼ同一である)を有し、血清中に野生型齧歯類とほぼ同一のレベルのIL-4タンパク質を有し、野生型齧歯類とほぼ同一の量のIL-4Rαタンパク質を免疫細胞上に発現し、ここで野生型齧歯類は、機能性内因性IL-4タンパク質およびIL-4Rαタンパク質を発現する齧歯類であってヒトまたはヒト化IL-4タンパク質またはIL-4Rαタンパク質を発現しない齧歯類である。
【0142】
特定の実施形態では、二重にヒト化した齧歯類は、機能性IL-4シグナル伝達経路を提示する。「機能性IL-4シグナル伝達経路」とは、ヒトまたはヒト化IL-4タンパク質およびヒトまたはヒト化IL-4Rαタンパク質の両方が、二重にヒト化した齧歯類において発現し、かつ二重にヒト化した齧歯類において互いに相互作用して、これにより下流のシグナル伝達を有効に媒介し、正常なIL-4シグナル伝達経路の生物学的活性を達成することを意味する。正常なIL-4シグナル伝達経路の生物学的活性が本明細書において上述され、
図1に図示されており、これらはTh2分化の開始および維持、B細胞の活性化および成長、IgEおよびIgG4へのクラススイッチングなどのI型受容体を介して媒介されるもの、および杯細胞過形成、上皮下線維症、および組織リモデリングなどのII型受容体シグナル伝達を介して媒介されるものを含む。例えば、二重にヒト化した齧歯類における機能性IL-4シグナル伝達経路は、例えば、チリダニへの曝露に応答した循環器におけるIgEの増加、気道炎症、および/または好酸球性浸潤細胞(eosinophilic infiltrating cells)により特徴付けられる炎症表現型によって表され、この
表現型は二重のヒト化を有しない野生型齧歯類内でも観察される。
【0143】
遺伝子改変非ヒト動物を作成する方法
齧歯類などの遺伝子改変非ヒト動物を当該技術分野で既知の方法を使用して作製できる。例えば、非ヒト動物と相同性の上流領域および下流領域に隣接したヒト核酸(ヒトIL-4またはIL-4Rα遺伝子などの全体または部分)を含有する標的化ベクターを作製できる。標的化構築物は、ヒト核酸に対して3’側に位置する薬剤選択カセット(例えば、一過性Cre発現ベクターによって後で除去できるloxP導入hygro選択カセット)も含む可能性がある。標的化ベクターを、例えば、電気穿孔法によって非ヒト動物細胞、例えば胚性幹(ES)細胞(マウスES細胞などの)、のゲノム中に導入できる。次いで、適正に標的化されたES細胞クローンを初期胚(例えば、8細胞期のマウス胚)に導入できる。適正に標的化されたES細胞に完全に由来する非ヒト動物は、例えば対立遺伝子解析に基づいて同定される。好適な遺伝子改変可能ES細胞が直ちに利用可能でない非ヒト動物については、本明細書に記載されるような遺伝子改変を含む非ヒト動物を作製
するために他の方法を採用できる。かかる方法としては、例えば、非ES細胞ゲノム(例えば、線維芽細胞または誘発された多能性細胞)を改変すること、および核移植を利用して好適な細胞、例えば卵母細胞、に改変されたゲノムを導入すること、および改変された細胞(例えば、改変された卵母細胞)を胚の形成に好適な条件下で非ヒト動物に懐胎させることが挙げられる。
【0144】
遺伝子改変非ヒト動物を利用する方法
一態様では、本明細書に開示される遺伝子改変IL-4および/またはIL-4Rα非ヒト動物は、以下の実施例でさらに例示されるように、ヒト特異的なIL-4および/またはIL-4Rα拮抗薬、例えば中和性の抗IL-4抗体および/または抗IL-4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)、の薬力学(PD)および治療有効性を様々な疾患モデルにおいて評価するために使用される。
【0145】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に開示される二重にヒト化したIL-4およびIL-4Rαマウスを使用してヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬をスクリーニングする方法を提供する。
【0146】
「IL-4またはIL-4Rα拮抗薬」とは、IL-4またはIL-4Rαによって媒介される1つ以上の生物学的機能を遮断、抑制、または阻害する分子(例えば、抗体)を意味する。「ヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬」は、ヒトIL-4またはIL-4Rαに特異的な拮抗薬であって齧歯類IL-4またはIL-4Rαに対しては実質的に作用しない拮抗薬を指す。
【0147】
特定の実施形態では、スクリーニング方法は、ヒトIL-4タンパク質およびヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する二重にヒト化したマウスを利用し、ここでヒト化IL-4Rαタンパク質は、内因性マウスIL-4Rαタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに連結されたヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインを含み、このマウスは、マウスIL-4またはマウスIL-4Rαを発現しない。
【0148】
一部の実施形態では、ヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬のスクリーニング方法は、本明細書に記載されるようにIL-4およびIL-4Rαについて二重にヒト化した遺伝子改変齧歯類に薬剤を投与することと、IL-4/IL-4Rαシグナル伝達経路によって媒介される生物学的な機能に対する薬剤の効果を判定することと、薬剤が遺伝子改変齧歯類においてIL-4/IL-4Rαシグナル伝達経路によって媒介される機能と拮抗する場合に、薬剤をヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬として同定することと、を含む。
【0149】
一実施形態では、薬剤は、IL-4またはIL-4Rαと結合する免疫グロブリン可変ドメインを含む。一実施形態では、薬剤は、ヒトIL-4またはIL-4Rαと特異的に結合するが、齧歯類IL-4またはIL-4Rαとは結合しない。一実施形態では、薬剤は抗体である。特定の実施形態では、薬剤は、ヒトIL-4Rαと特異的に結合するが齧歯類IL-4Rαとは結合しない抗体である。
【0150】
一実施形態では、スクリーニング方法は、ヒトIL-4タンパク質およびヒト化IL-4Rαタンパク質を発現する二重にヒト化したマウスを利用し、ここでヒト化IL-4Rαタンパク質は、内因性マウスIL-4Rαタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに連結されたヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインを含み、このマウスは、ネズミのIL-4またはネズミのIL-4Rαを発現しない。
【0151】
一部の実施形態では、スクリーニングの方法は、本明細書に記載されるように二重にヒ
ト化した齧歯類においてIL-4/IL-4Rαシグナル伝達と関連する疾患を誘発することと、当該齧歯類に薬剤を投与することと、薬剤が疾患を軽快させるかどうかを判定することと、薬剤が疾患を軽快させる場合に薬剤を、疾患を処置するために好適なヒト特異的なIL-4またはIL-4Rα拮抗薬として同定することと、を含む。
【0152】
「IL-4/IL-4Rαシグナル伝達と関連する疾患」とは、IL-4/IL-4Rαシグナル伝達によって媒介される生物学的機能が関係している疾患を意味する。IL-4/IL-4Rαシグナル伝達と関連する疾患の例としては、例えば、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(タバコの煙に少なくとも部分的に起因する場合がある)、炎症性腸疾患、多発性硬化症、関節炎、アレルギー性鼻炎、好酸球性食道炎、および乾癬などの炎症疾患または障害が挙げられる。喘息は、好酸球性または非好酸球性の喘息である可能性があり、またステロイド感受性喘息またはステロイド抵抗性喘息である可能性がある。
【0153】
一部の実施形態では、IL-4/IL-4Rαシグナル伝達と関連する疾患は気道炎症であり、これは、齧歯類において、アレルゲン(例えば、チリダニ類抽出物)を一定期間、1回以上、鼻腔内投与することによって誘発できる。薬剤の投与の結果として、気道炎症の程度(例えば、粘液貯留、気管支肺胞洗浄液中の好酸球性浸潤細胞、総循環IgEのレベル、および/またはマイクロアレイ発現解析によって測定可能な発現プロファイルの変化によって表される)が低減したかどうかを測定することによって薬剤の効果を判定できる。気道炎症を誘発するために使用されるアレルゲンおよび試験される薬剤を同時または異なる時期に投与できる。一部の実施形態では、アレルゲンは1回投与または複数回投与で齧歯類に与えられ、試験される薬剤は、少なくとも1回のアレルゲン投与が齧歯類になされた後に齧歯類に投与される。
【0154】
一部の実施形態では、IL-4/IL-4Rαシグナル伝達と関連する疾患は、皮膚炎症またはアトピー性皮膚炎であり、これらは、齧歯類に皮膚損傷を生じさせ、損傷した皮膚をアレルゲン(例えば、細菌毒素またはチリダニ類抽出物)に一定期間、1回以上、曝露することによって誘発できる。薬剤の投与の結果として皮膚炎症が低減するかどうかを測定することによって薬剤の効果を判定できる。
【0155】
更なる態様では、三重にヒト化した非ヒト動物(すなわち、そのIL-4、IL-4Rα、およびIL-33遺伝子がヒト化された非ヒト動物)が、例えば、ヒト特異的なIL-4および/またはIL-4Rα拮抗薬、およびヒト特異的なIL-33拮抗薬などの候補化合物の薬力学(PD)および治療有効性を評価するために使用される。
【0156】
「IL-33拮抗薬」とは、IL-33によって媒介される1つ以上の生物学的機能またはシグナル伝達を遮断、抑制、または阻害する分子(例えば、抗体)を意味する。「ヒト特異的なIL-33拮抗薬」は、ヒトIL-33に特異的である拮抗薬であって齧歯類IL-33に対しては実質的に作用しない拮抗薬を指す。IL-33は、IL-33抗体などの拮抗薬の存在下で減退するST2およびIL-1 RAcPを介したシグナル伝達を刺激することが知られている。米国特許出願公開第2014/0271658 A1号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどのインビトロまたはインビボのアッセイでIL-33シグナル伝達をアッセイすることによってST2およびIL-1 RAcPを介したIL-33シグナル伝達の阻害を判定できる。例えば、米国特許出願公開第2014/0271658 A1号に記載されるものなどのアッセイを、ヒトIL-33の発現についてホモ接合性であるアレルゲン感受性を高めた動物においてIL-33に対する抗体の肺の炎症に対する効果を評価するために使用できる。IL-33拮抗薬として効果的であるIL-33抗体は、肺の炎症細胞の減少に向かう傾向ならびにIL-4およびIL-5などのサイトカインの減少に向かう傾向を示すはず
である。
【0157】
特定の実施形態では、三重にヒト化した非ヒト動物が、候補化合物を評価するために本明細書において使用され、ここで、三重にヒト化した動物は、ヒトIL-4タンパク質、マウスIL-4Rαタンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに連結されたヒトIL-4Rαタンパク質の細胞外ドメインを含むヒト化IL-4Rαタンパク質、およびヒトIL-33タンパク質を発現する三重にヒト化したマウスであり、当該マウスは、マウスIL-4、マウスIL-4Rα、またはマウスIL-33を発現しない。
【0158】
一部の実施形態では、例えば、ヒト特異的なIL-4および/もしくはIL-4Rα拮抗薬、またはヒト特異的なIL-33拮抗薬などの候補化合物の薬力学(PD)および治療有効性を評価するために、三重にヒト化した非ヒト動物が使用される。例えば、ヒト特異的なIL-4抗体、ヒト特異的なIL-4Rα抗体、およびヒト特異的なIL-33抗体を、三重にヒト化した動物(齧歯類(例えば、マウスまたはラット)など)で個別に試験することができ、これらのPDプロファイルおよび治療有効性を評価および比較することができる。
【0159】
他の実施形態では、例えば、化合物の組み合わせが相乗的な治療効果を示すかどうかを判定するために、化合物の組み合わせ(例えば、ヒト特異的なIL-4および/またはIL-4Rα拮抗薬抗体とヒト特異的なIL-33拮抗薬抗体との組み合わせ)の有効性を、個別に使用されたときの化合物の有効性と比較して評価するために、三重にヒト化した非ヒト動物が使用される。特定の実施形態では、ヒト特異的なIL-4抗体とヒト特異的なIL-33抗体との組み合わせが、三重にヒト化した非ヒト動物で試験される。他の特定の実施形態では、ヒト特異的なIL-4Rα抗体とヒト特異的なIL-33抗体との組み合わせが、三重にヒト化した非ヒト動物で試験される。
【0160】
候補化合物または化合物の組み合わせを評価するために、IL-4/IL-4Rαシグナル伝達およびIL-33シグナル伝達と関連する疾患を、三重にヒト化した動物において誘発できる。IL-4/IL-4Rαシグナル伝達およびIL-33シグナル伝達と関連する疾患の例としては、例えば、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(タバコの煙に少なくとも部分的に起因する場合がある)、炎症性腸疾患、多発性硬化症、関節炎、アレルギー性鼻炎、好酸球性食道炎、および乾癬などの炎症疾患または障害が挙げられる。喘息は好酸球性または非好酸球性の喘息である可能性があり、またステロイド感受性喘息またはステロイド抵抗性喘息である可能性がある。化合物または化合物の組み合わせの効果を、本明細書で上述されたようなIL-4/IL-4Rα二重ヒト化動物と同様に評価できる。
【0161】
本発明は以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【実施例0162】
実施例1
ヒトIL-4遺伝子による内因性マウスIL-4遺伝子の置換
ヒトIL-4遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4まで(3’非翻訳領域を含む)のコーディング部分およびエクソン4の下流の3’領域の一部分を含有する8.8kbのヒトIL-4遺伝子により、ATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン4まで(3’非翻訳領域を含む)のコーディング部分およびエクソン4下流の3’領域の一部分に広がる6.3kbのネズミのIL-4遺伝子遺伝子座を置換した。
図2Aを参照のこと。
【0163】
単一の標的化工程でマウスIL-4遺伝子をヒトIL-4遺伝子で置換するための標的
化構築物は、VelociGene(登録商標)遺伝子工学技術(Valenzuela
et al.(2003)High-throughput engineering
of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis,Nature Biotech,21(6):652-659を参照のこと)を使用して構築した。マウスIL-4DNAおよびヒトIL-4DNAは、それぞれ、細菌人工染色体(BAC)クローンbMQ-41A12およびRP11-17K19から得た。簡潔に述べると、エクソン1のATGコドンからエクソン4(3’非翻訳領域を含む)およびエクソン4の下流の3’領域の一部分まで広がる8.8kbのヒトIL-4配列(ゲノム座標:GRCh37:chr5:132,009,743-132,018,576(+ストランド))およびloxP導入hygro選択カセットに隣接したマウスIL-4の上流相同性アームおよび下流相同性アームを含有する、ギャップ修復クローニングによって生成され、SbfIで直線化された標的化構築物をF1H4マウス胚性幹(ES)細胞(C57BL/6×129F1雑種)に電気穿孔した。適正に標的化されたES細胞(MAID 879)を、薬剤選択カセットを除去するために一過性Cre発現ベクターを用いてさらに電気穿孔した。薬剤カセット(MAID 1553)を有しない標的化されたES細胞クローンを、VelociMouse(登録商標)法によって8細胞期のSWマウス胚に導入した(米国特許第7,294,754号、同第7,576,259号、同第7,659,442号、およびPoueymirou et al.(2007) F0 generation
mice that are essentially fully derived
from the donor gene-targeted ES cells allowing immediate phenotypic analyses,Nature Biotech.25(1):91-99を参照のこと)。ヒト化IL-4遺伝子を有するVelociMice(登録商標)(ドナーES細胞に完全に由来するF0マウス)を、対立遺伝子アッセイの改変を用いてマウス対立遺伝子の消失およびヒト対立遺伝子の獲得について遺伝子型を決定することによって同定した(Valenzuela
et al.(2003)を参照のこと)。
【0164】
適正に標的化されたES細胞クローンをロスオブネイティブアレル(LONA)アッセイ(Valenzuela et al.2003)によって同定した。上記アッセイでは、除去の対象となったマウスIL-4遺伝子内の配列に対して特異的な2つのTaqMan(商標)定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって、天然の改変されていないIL-4遺伝子のコピー数を決定した。qPCRアッセイは、以下のプライマー-プローブのセット(5’から3’へと記載される)を含んだ:上流フォワードプライマー、CATGCACGGA GATGGATGTG(配列番号:1);上流リバースプライマー、GACCCCTCAG GTCCACTTAC C(配列番号:2);上流プローブ、FAM-AACGTCCTCA CAGCAACGA-MGB(配列番号:3);下流フォワードプライマー、GTGCCCAGGT GTGCTCATG(配列番号:4);下流リバースプライマー、CGCCTGCCTC CTCACTTTAT C(配列番号:5);下流プローブ、FAM-ATCTGCTTCA CCATCCACT-MGB(配列番号:6);ここでFAMは5-カルボキシフルオレセイン蛍光プローブを指し、BHQはブラックホール消光剤型の蛍光消光剤を指す(Biosearch Technologies)。標的化ベクターを取り込み、そのゲノムに組み込んだES細胞クローンから精製されたDNAを、384ウェルPCRプレート(MicroAmp(商標)Optical 384-Well Reaction Plate、Life Technologies)中で製造業者の推奨に従ってTaqMan(商標)Gene Expression Master Mix(Life Technologies)と組み合わせて、Applied Biosystems Prism 7900HT(これはPCR過程の間に蛍光データを収集し、蓄積した蛍光が予め設定された閾値に達するフラクショナルPCRサイクル(fractional PCR cycle)である閾値サイクル(Ct)を決定する
)においてサイクルさせた。上流および下流IL-4特異的qPCRおよび標的ではない参照遺伝子に対する2つのqPCRが、各DNAサンプルについて実行された。各IL-4特異的qPCRと各参照遺伝子qPCRとの間のCt値(ΔCt)の差を算出し、次いで各ΔCtとアッセイされたサンプル全てについてのメジアンΔCtとの間の差を算出して、各サンプルについてのΔΔCt値を得た。各サンプルにおけるIL-4遺伝子のコピー数を以下の式から算出した:コピー数=2×2-ΔΔCt。そのネイティブコピーのうちの1つを失った、適正に標的化されたクローンは、1と等しいIL-4遺伝子コピー数を有することになる。ヒトIL-4遺伝子配列が、ヒト化した対立遺伝子において除去されたマウスIL-4遺伝子配列と置き換わったことの確認は、以下のプライマー-プローブのセット(5’から3’へと記載される)を含むTaqMan(商標)qPCRアッセイによって確認された:ヒトフォワードプライマー、GCCTGGACCA AGACTCTGT(配列番号:7);ヒトリバースプライマー、ACCGTGGGAC GGCTTCTTAC(配列番号:8);ヒト上流プローブ、FAM-CACCGAGTTG ACCGTAACAG ACATC-BHQ(配列番号:9)。hygro選択カセットがヒトIL-4遺伝子配列と共に、ヒト化した対立遺伝子に挿入されたことの確認は、以下のプライマー-プローブのセット(5’から3’へと記載される)を含むTaqMan(商標)qPCRアッセイによって確認された:hygroフォワードプライマー、TGCGGCCGAT CTTAGCC(配列番号:10);hygroリバースプライマー、TTGACCGATT CCTTGCGG(配列番号:11);hygroプローブ、FAM-ACGAGCGGGT TCGGCCCATT C-BHQ(配列番号:12)。
【0165】
標的化されたES細胞に由来するマウスについて、尾部の生検から精製されたDNAをアッセイして、それらのIL-4遺伝子型を決定し、ヒト化IL-4対立遺伝子が生殖系列を通じて伝達されたことを確認するために、同一のLONAアッセイを使用した。置換についてヘテロ接合性の2匹の子を交配して、ヒトIL-4遺伝子による内因性マウスIL-4遺伝子の置換についてホモ接合性であるマウスを生じさせる。表現型の決定のために、置換についてホモ接合性である子を使用する。
【0166】
ネズミのIL-4遺伝子座とヒトIL-4遺伝子を含む配列との上流ジャンクションは、
【化1】
内となるように設計され、ここで、ヒトIL-4配列は斜字体で示され、IL-4コード配列は括弧付きで示される。ヒトIL-4遺伝子を含有する配列とloxP導入hygro選択カセットとの下流ジャンクションは、
【化2】
内となるように設計され、ここで、ヒトIL-4配列は斜字体で示され、IL-4コード配列は括弧付きで示される。loxP導入hygro選択カセットの配列とネズミのIL-4遺伝子座との下流ジャンクションは、
【化3】
内となるように設計され、ここで、hygroカセット配列は斜字体で示される。
【0167】
実施例2
ヒトIL-4Rα細胞外ドメイン遺伝子配列による内因性マウスIL-4Rα細胞外ドメイン遺伝子配列の置換
ヒトIL-4Rα遺伝子の、ATG開始コドンから開始するエクソン1からエクソン5まで、およびイントロン5の一部分、を含む15.6kbのヒトIL-4Rα遺伝子により、ATG開始コドンから開始するコーディングエクソン1からエクソン5およびイントロン5の一部分まで広がる7.1kbのネズミIL-4Rα遺伝子遺伝子座を置換した。マウスのエクソン6から9は保持され、エクソン1から5(すなわち、細胞外ドメイン)のみがヒト化された。
図2Bを参照のこと。
【0168】
単一の標的化工程でマウスIL-4Rα遺伝子をヒトIL-4Rα遺伝子で置換するための標的化構築物は、VelociGene(登録商標)遺伝子工学技術(Valenzuela et al.(2003)High-throughput engineering of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis,Nature
Biotech,21(6):652-659を参照のこと)を使用して構築した。マ
ウスIL-4RαDNAおよびヒトIL-4RαDNAは、それぞれ、細菌人工染色体(BAC)クローンRP23-136G14およびRP11-166E24から得た。簡潔に述べると、エクソン1のATGコドンからエクソン5およびイントロン5の一部分まで広がる15.6kbのヒトIL-4Rα配列(ゲノム座標:GRCh37:chr16:27,351,525-27,367,111(+ストランド))およびloxP導入neo選択カセットに隣接したマウスIL-4Rα遺伝子の上流相同性アームおよび下流相同性アームを含有する、ギャップ修復クローニングによって生成され、NotIで直線化された標的化構築物を、F1H4マウス胚性幹(ES)細胞(C57BL/6×129F1雑種)に電気穿孔した。適正に標的化されたES細胞(MAID 803)を、薬剤選択カセットを除去するために一過性Cre発現ベクターを用いてさらに電気穿孔した。薬剤カセット(MAID 1444)を有しない標的化されたES細胞クローンを、VelociMouse(登録商標)法によって8細胞期のSWマウス胚に導入した(米国特許第7,294,754号、同第7,576,259号、同第7,659,442号、およびPoueymirou et al.(2007) F0 generation mice that are essentially fully derived from the donor gene-targeted ES cells allowing immediate phenotypic analyses,Nature Biotech.25(1):91-99を参照のこと)。ヒト化IL-4Rα遺伝子を有するVelociMice(登録商標)(ドナーES細胞に完全に由来するF0マウス)を、対立遺伝子アッセイの改変を用いてマウス対立遺伝子の消失およびヒト対立遺伝子の獲得について遺伝子型を決定することによって同定した(Valenzuela
et al.(2003)を参照のこと)。
【0169】
適正に標的化されたES細胞クローンを、ロスオブネイティブアレル(LONA)アッセイ(Valenzuela et al.2003)によって同定した。上記アッセイでは、除去の対象となったマウスIL-4Rα遺伝子内の配列に対して特異的な2つのTaqMan(商標)定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって、天然の、改変されていないIL-4Rα遺伝子のコピー数を決定した。qPCRアッセイは、以下のプライマー-プローブのセット(5’から3’へと記載される)を含んだ:上流フォワードプライマー、CCGCTGGCAT GTGTATTGTG(配列番号:16);上流リバースプライマー、TGAGTGTGGG ACCCTCAAGA G(配列番号:17);上流プローブ、FAM-TGACCCAAGC CCTACATGGC CACT-BHQ(配列番号:18);下流フォワードプライマー、TGAGGAGAGC TCACGGGAAT C(配列番号:19);下流リバースプライマー、ACCCATCTCC
TGCGTTTCTG(配列番号:20);下流プローブ、FAM-TTGACACGCC AGCTACACTG CTCCA-BHQ(配列番号:21);ここでFAMは5-カルボキシフルオレセイン蛍光プローブを指し、BHQはブラックホール消光剤型の蛍光消光剤を指す(Biosearch Technologies)。標的化ベクターを取り込み、そのゲノムに組み込んだES細胞クローンから精製されたDNAを、384ウェルPCRプレート(MicroAmp(商標)Optical 384-Well Reaction Plate、Life Technologies)中で製造業者の推奨に従ってTaqMan(商標)Gene Expression Master Mix(Life Technologies)と組み合わせて、Applied Biosystems Prism 7900HT(これはPCR過程の間に蛍光データを収集し、蓄積した蛍光が予め設定された閾値に達するフラクショナルPCRサイクルである閾値サイクル(Ct)を決定する)においてサイクルさせた。上流および下流IL-4Rα特異的qPCRおよび標的ではない参照遺伝子に対する2つのqPCRが、各DNAサンプルについて実行された。各IL-4Rα特異的qPCRと各参照遺伝子qPCRとの間のCt値(ΔCt)の差を算出し、次いで各ΔCtとアッセイされたサンプル全てについてのメジアンΔCtとの間の差を算出して、各サンプルについてのΔΔCt値を得た。各サ
ンプルにおけるIL-4Rα遺伝子のコピー数を以下の式から算出した:コピー数=2×2-ΔΔCt。そのネイティブコピーのうちの1つを失った、適正に標的化されたクローンは、1と等しいIL-4Rα遺伝子コピー数を有することになる。ヒトIL-4Rα遺伝子配列が、ヒト化した対立遺伝子において除去されたマウスIL-4Rα遺伝子配列と置き換わったことの確認は、以下のプライマー-プローブのセット(5’から3’へと記載される)を含むTaqMan(商標)qPCRアッセイによって確認された:ヒトフォワードプライマー、ACCTGCGTCT CCGACTACAT G(配列番号:22);ヒトリバースプライマー、GAGCTCGGTG CTGCAATTG(配列番号:23);ヒトプローブ、FAM-TGGGACCATT CATCTTCCAC TCGCA-BHQ(配列番号:24)。neo選択カセットがヒトIL-4Rα遺伝子配列と共に、ヒト化した対立遺伝子に挿入されたことの確認は、以下のプライマー-プローブのセット(5’から3’へと記載される)を含むTaqMan(商標)qPCRアッセイによって確認された:neoフォワードプライマー、GGTGGAGAGG CTATTCGGC(配列番号:25);neoリバースプライマー、GAACACGGCG GCATCAG(配列番号:26);neoプローブ、FAM-TGGGCACAAC AGACAATCGG CTG-BHQ(配列番号:27)。
【0170】
標的化されたES細胞に由来するマウスについて、尾部の生検から精製されたDNAをアッセイして、それらのIL-4Rα遺伝子型を決定し、ヒト化IL-4Rα対立遺伝子が生殖系列を通じて伝達されたことを確認するために、同一のLONAアッセイを使用した。置換についてヘテロ接合性の2匹の子を交配して、ヒトIL-4Rα遺伝子による内因性マウスIL-4Rα遺伝子の置換についてホモ接合性であるマウスを生じさせる。表現型決定のために、置換についてホモ接合性である子を使用する。
【0171】
ネズミのIL-4Rα遺伝子座とヒトIL-4Rα遺伝子を含有する配列との上流ジャンクションは、
【化4】
内となるように設計され、ここで、ヒトIL-4Rα配列は斜字体で示され、IL-4Rαコード配列は下線付きで示される。ヒトIL-4Rα遺伝子を含有する配列とloxP導入neo選択カセットとの下流ジャンクションは、
【化5】
内となるように設計され、ここで、ヒトIL-4Rα配列は斜字体で示され、カセット配列は小文字で示される。loxP導入neo選択カセットの配列とネズミのIL-4Rα
遺伝子座との下流ジャンクションは、5’- tattgttttg ccaagttcta attccatcag acctcgacct gcagccccta gataacttcg tataatgtat gctatacgaa gttatcctag
gttggagctc TCTGTAGCCA GGTAACCAAG GGTCCCAGGG GAACCCCCAG TGTGGACGCG GACTGCACAT GACACAGGGC GGCCTCCCCA TTCATGACTG TTTTTCTCCT
TGCAG(ACTTC CAGCTGCCCC TGATACAGCG CCTTCCACTG GGGGTCACCA TCTCCTGCCT CTGCATCCCG TTGTTTTGCC TGTTCTGTTA CTTCAGCATT ACCAA)GTGAG TTCCTGCTTT GGCTGGTGTC TCTGGCTGGC CCTTCAGCAG TGCTCTCAGA GGTCACAGTC ATTGTGCTGG
CTGAGAAAAG(配列番号:30)内となるように設計され、ここで、マウスIL-4Rαコード配列は括弧付きで示され、neoカセット配列は小文字で示される。
【0172】
実施例3
二重にヒト化したIL-4/IL-4Rαマウスの生成
二重にヒト化したIL-4/IL-4Ra(Il4hu/hu/Il4rahu/hu
)マウスを以下のように生成した。ヒト化IL-4Rα遺伝子およびloxP導入neoカセットを含むES細胞クローンMAID 803を、Cre発現ベクターを用いて電気穿孔し、loxP導入neoカセットを除去して、薬剤選択カセット無しでヒト化IL-4Rα遺伝子を含むES細胞クローンMAID 1444を生成した(実施例2を参照のこと)。ヒト化IL-4遺伝子およびloxP導入hygroカセットを含む、ES細胞クローンMAID 879を生成するために使用された同一の標的化構築物(実施例1を参照のこと)を、ES細胞クローンMAID 1444に電気穿孔して、879 Het/1444 Het(Il4+/hu/Il4ra+/hu)ES細胞を生成し、続いてこれを、Cre発現ベクターを用いて電気穿孔して、loxP導入hygroカセットを除去し、ヒト化IL-4遺伝子およびヒト化IL-4Rα遺伝子を含むES細胞クローン(MAID 1553/1444)を生成した。二重にヒト化したIL-4/IL-4Rαマウスを生成するために、薬剤カセットを有しないES細胞クローンMAID 1553/1444を8細胞期のSWマウス胚に導入した。
【0173】
実施例4
ヒトIL-4遺伝子置換およびヒトIL4Rα遺伝子置換を有するマウスにおける、完全ヒトIL-4Rα mAbであるデュピルマブの有効性評価
方法
8.8kbのヒトIL-4ゲノム配列によるマウス全長IL-4遺伝子座の置換(実施例1および
図2Aを参照のこと)、および対応するヒトIL-4RαゲノムDNAの15.6kbの断片によるマウスIL-4Rα(CD124)遺伝子の細胞外領域(すなわち、細胞外ドメイン)の置換(実施例2および
図2Bを参照のこと)の両方のために、VelociGene(登録商標)技術を使用して、遺伝子改変マウスを生成した。
【0174】
ホモ接合性ヒト化IL-4Rα遺伝子を有するマウスを、ヒト遺伝子の発現および機能について検証した。ヒト化したマウスによるヒトIL-4Rαの発現を判定するために、野生型およびヒト化したマウスの脾臓細胞を収集し、蛍光活性化細胞分類(FACS)解析のためにマウスCD3、マウスCD19、ヒトCD124、およびマウスCD124に対する蛍光標識抗体で処理した。(例えば、Blaeser et al.(2003)Targeted inactivation of the IL-4 receptor a chain I4R motif promotes allergic airway inflammation,J Exp Med 198(8):1189-1200を参照のこと)。
【0175】
リガンドの特異性および受容体の機能性を実証するために、ヒト化IL-4Rαマウスに由来する初代細胞を使用した。野生型およびヒト化IL-4Rαマウス由来の大腿骨骨髄細胞を使用して骨髄由来マクロファージを、10%のウシ胎児血清を含有するDMEMに20%のL-細胞ならし培地を加えたものの中で7日間培養した。
【0176】
次いで細胞を、培地中で希釈した20ng/mLのマウスIL-4、マウスIL-13、ヒトIL-4、ヒトIL-13、またはビヒクルで個別に20時間処理した。各条件由来の4連のサンプルを遺伝子発現解析のために採取した。
【0177】
これらのサンプル由来の全RNAを抽出し、Cy3-CTPを組み込むことによってcRNAへと増幅した。次いで、各サンプル由来のCy3標識cRNAを、マウスのトランスクリプトームをカバーする43,538個の60塩基長のオリゴからなるカスタム仕様のAgilentアレイにハイブリダイズさせた。Agilent Feature Extraction Software9.5を使用して、スキャンしたアレイ画像からデータを抽出した。
【0178】
実験群間で差を示すように発現した遺伝子を、スチューデントのt検定(p<0.05、変動比≧1.5)を使用して同定した。これらの遺伝子の発現クラスターを、GeneSpring GX7.3由来のピアソン相関クラスタリングアルゴリズムを使用して生成した。
【0179】
ヒト化IL-4Rα(Il4rahu/hu)マウスから単離された一次B細胞を用いたインビトロIgEクラススイッチングアッセイを使用して、IL-4に対するデュピルマブの中和効果を評価した。
【0180】
インビボでのマウスIL-25の発現のために、野生型(WT)およびヒト化IL-4Rα(Il4rahu/hu)マウスに、裸プラスミドDNA溶液の大容積(ハイドロダイナミック)駆動遺伝子送達を受容させた(例えば、Liu et al.(1999)Hydrodynamics-based transfection in animals by systemic administration of plasmid DNA,Gene Therapy 6:1258-1266を参照のこと)。8日後に末梢血液を回収して、市販のELISAキット(R&D systems、米国ミネソタ州)を使用して血清ネズミIgE(mIgE)レベルを測定した。
【0181】
7日間培養で、ヒト化マウス脾臓細胞由来精製一次B細胞を、細菌性LPSで活性化すると共に、増加する量の組み換え型ヒトIL-4と混合して、免疫グロブリンのクラススイッチングを誘発した。抗体遮断実験のために、精製したB細胞を、増加する用量のデュピルマブと共に30分間インキュベートした後、0.167nMの組み換え型ヒトIL-4を添加して7日間培養した。IL-4非存在下でのIgE産生またはアイソタイプ対照mAbを用いた場合のIgE産生が、それぞれ、(◇)および(△)で示される。市販のELISAキットを使用して培養上清中のネズミのIgEのレベルを測定した(例えば、Moon et al.(1989)Regulation of IgG1 and
IgE synthesis by interleukin 4 in mouse
B cells,Scand I Immunol 30:355-361を参照のこと)。
【0182】
インターロイキン-25(IL-25)は、Th2細胞によって産生されるサイトカインであり、その主な活性はIL-4およびIL-13の産生を介して媒介され、肺の粘液産生の増加および杯細胞過形成などの組織特異的な症状を誘発する(Fort et a
l.(2001)IL-25 induces IL-4,IL-5,and IL-13 and Th2-associated pathologies in vivo,Immunity 15(6):985-995を参照のこと)。
【0183】
IL-13の欠如は、標的器官におけるIL-25が誘発する症状から動物を保護する。したがって、ヒト化IL-4遺伝子および/またはヒト化IL-4Rα遺伝子を含むマウスにおいて、インビボでのデュピルマブの薬力学特性(PD)を評価するために、IL-25駆動性肺炎症モデルを使用した。
【0184】
ヒト化IL-4Rα(Il4rahu/hu)マウスにおいて、肺の粘液貯留を測定することにより、IL-25-誘発性炎症法(IL-25-induced inflammation method)を
使用して、II型受容体に対するデュピルマブのPD応答の特性を明らかにした。
【0185】
0日目に、WTおよびヒト化IL-4Rα(Il4rahu/hu)マウスにマウスIL-25発現ベクターのハイドロダイナミック送達を受容させ、その後、示された用量でデュピルマブまたはアイソタイプ対照mAbを注射した。一日おきに合計4投与、追加的な抗体投与がなされた。8日目に、安楽死させたマウスから肺組織を回収し、処理した肺切片を過ヨウ素酸シッフによって染色した後、病理学的変化について盲検法によりスコア化した。
【0186】
結果
ヒト化IL-4Rαマウスは以下を示すように特徴付けられた。(a)二重にヒト化したIL-4/IL-4Rα(Il4
hu/hu/Il4ra
hu/hu)マウス由来の初代細胞上のヒトIL-4Rαの発現(
図3を参照のこと)、(b)ヒト化IL-4Rα(Il4ra
hu/hu)マウスにおけるIL-4リガンド特異性の変化(
図4を参照のこと)、および(c)ヒト化IL-4Rα(Il4ra
hu/hu)マウスにおけるIL-13経路の機能性(
図4を参照のこと)。
【0187】
ゲーテッドB細胞およびT細胞の集団(gated B and T cell populations)上の
IL-4Rα(CD124)の標識化プロファイルが示され、陰影を付けた区域で対応する染色されていない細胞集団の分布が示される
図3に示すように、野生型およびヒト化IL-4Rα(Il4ra
hu/hu)マウスは類似した量のIL-4Rαタンパク質をB細胞(CD19
+、CD3
-)およびT細胞(CD19
-、CD3
+)上に発現する。
【0188】
図4(左側)に示すように、野生型(Il4ra
+/+)マウスは、ヒトIL-4ではなくマウスIL-4に応答し、マウスIL-13およびヒトIL-13の両方に応答する。
図4(右側)に示すように、ヒト化IL-4Rα(Il4ra
hu/hu)マウスは、マウスIL-4ではなくヒトIL-4に応答し、マウスIL-13およびヒトIL-13の両方に応答する。
【0189】
このデータは、IL-13ではなくIL-4が野生型およびヒト化IL-4Rα(Il4rahu/hu)マウスにおいて種特異性を呈することを示す。
【0190】
図5に示すように、IL-4のIgEクラススイッチングを媒介する主要な因子としての役割が、ヒト化IL-4Rα(Il4ra
hu/hu)マウスにおけるマウスIL-25遺伝子送達の後の循環IgEレベルの上昇の欠如によって支持された。
【0191】
デュピルマブモノクローナル抗体は、インビトロおよびインビボで研究された。
【0192】
図6に示すように、デュピルマブは、ヒト化IL-4Rα(Il4ra
hu/hu)マ
ウス由来の一次B細胞の培養液において、ヒトIL-4に誘発されたIgE産生を妨げる。
【0193】
図7に示すように、デュピルマブは、10mg/kg以上で、IL-25に誘発された肺の症状を用量依存的に低減した(25mg/kgで粘液に関する症状を低減した)。
【0194】
結論
上記結果は、サイトカインに誘発された炎症を有する遺伝子改変マウスモデルにおける、完全ヒト抗ヒトIL-4Rαモノクローナル抗体であるデュピルマブの薬理活性を実証している。
【0195】
ヒトIL-4遺伝子および/またはヒトIL-4Rα遺伝子による置換を有する遺伝子改変マウスの生成は、異種間での交差反応性が制限された状態で遺伝子オルソログの機能および抗体候補のインビボでの有効性を評価するための強力なツールを提供する。
【0196】
実施例5
チリダニ類抽出物(HDM)に誘発された肺炎症モデル
チリダニ類(HDM)抽出物(Greer laboratories)の鼻腔内曝露によって、二重にヒト化したIL-4およびIL-R4αマウスにおいて慢性気道炎症を誘発した。簡潔に述べると、先ず、10日間のHDM懸濁液(2.5μg/mLの濃度にて20μl)の鼻腔内滴下によってマウスの感受性を高めた。2週間の回復期間後、5週目と12週目との間に週3回、鼻腔内HDM適用によってマウスは再曝露された。皮下注射によるデュピルマブ(抗IL4Rα抗体)の処置を、週に2回の頻度で7週目から開始し、12週目の実験終了まで行った。さらなる解析のために、組織サンプルを回収した。
図8に実験計画を図示する。
【0197】
二重にヒト化したIL-4およびIL-4Rαマウスを使用した、HDMに誘発された気道炎症モデルにおけるデュピルマブの治療有効性の実証
上述のプロトコルを使用して、二重にヒト化したIL-4およびIL-4Rα(IL-4hu/hu/IL-4Rhu/hu)マウスにおいて気道疾患を誘発した。肺組織の組織学的解析により、鼻腔内へのHDM滴下が気道における粘液産生の増加を引き起こしたことが示された。デュピルマブの処置は、HDMに曝露されたマウスにおける粘液貯留を低減した。気管支肺胞洗浄液(BALF)中の浸潤細胞の解析により、好酸球数が、HDM滴下によって増加し、デュピルマブの処置によって減少したことが示される。ヒト化したマウスにおけるHDMの処置によって総循環IgEが上昇したが、これは有能なIL-4シグナル伝達経路を示唆する。デュピルマブの使用により、IgEのレベルを低減できた。対照的に、IL-4シグナル伝達に干渉することなくIL-13とのみ拮抗するコンパレーター分子であるIL13R2α-Fcは、粘液貯留の低減および好酸球浸潤の防止において同等の活性を有した。にもかかわらず、循環IgEレベルでは、デュピルマブとIL-13拮抗薬であるIL13R2α-Fcとの間で差を示す効果が検出された。IL-13経路単独の遮断は、HDMに誘発されたIgEレベルを低減するには不十分であったが、一方で、デュピルマブは、IL-4経路およびIL-13経路の両方を遮断することによって、アレルギーの主たる病原性媒介物であるIgEの産生を低減した。
【0198】
別個の実験の組では、異なる対照を使用したことを除いて上述のものと同一のプロトコルを使用して、二重にヒト化したIL-4およびIL-4Rα(IL-4
hu/hu/IL-4R
hu/hu)マウスにおいて気道疾患を誘発した。これらの実験では、デュピルマブと同一のIgGアイソタイプのアイソタイプ対照抗体を使用した。
図9に実験計画を図示する。Dynabeads mRNAキット(Life Tech)を使用して全RNAからmRNAを精製し、Scriptseq RNA Library Prepキ
ット(Illumina)を使用してmRNAからストランド特異的なRNA配列ライブラリを調製した。33bpの読み取り長さでHiSeq 2000(Illumina)を使用してライブラリをシーケンシングし、Clcbio(Qiagen)RNA-Seqワークフローを使用して未加工の読み取りから遺伝子発現レベルを抽出した。実験群間で差を示すように発現された遺伝子を、スチューデントのt検定(p<0.05、変動比≧1.5)を使用して同定した。これらの遺伝子の発現クラスターをGeneSpring GX7.3由来のピアソン相関クラスタリングアルゴリズムを使用して生成した。二重にヒト化したIL-4およびIL-4Rαマウスにおいて、HDMが肺の遺伝子発現の変動を誘発することが見出され、かかる変動は、デュピルマブによって遮断された。処置期間の終了時に安楽死させたマウスから血清サンプルを回収した。血清のネズミIgEレベルを市販のELISAキット(R&D systems)を使用して測定した。通常の一元配置ANOVA法を使用して統計解析をおこなった。
【0199】
実施例6
抗原に誘発された皮膚炎症モデル
二重にヒト化したIl-4およびIl-4Rαマウスにおける慢性皮膚炎を、以下の手順で誘発できる。ヒト化したマウスの背中の毛を電気バリカンで剃り、次いで粘着テープで剥いで軽い傷を負わせ、皮膚バリアを破壊した。アレルゲン(オボアルブミンに細菌毒素またはチリダニ類抽出物を加えたものなど)の溶液に浸したガーゼパッチを1週間、皮膚に取り付け、これに続く2週間を回復期間とした。合計で7週間の間に、この手順を3回繰り返し、アトピー性皮膚炎様の皮膚病巣を誘発する。処置したマウスは、IgEレベルの増加、掻痒、上皮の肥厚、アトピー性皮膚炎の典型的な症状を有することになる。
【0200】
実施例7
ヒト化IL-4Rαを発現するマウスにおける抗ヒトIL-4Rα抗体のPKプロファイルの特徴付け
この実施例は、REGN668(ヒトIL-4Rαを対象とするヒトモノクローナル抗体、「デュピルマブ」としても知られる)および対照抗体REGN646(サル代用、抗mfIL-4R非結合対照抗体)のPKプロファイルを評価するために実施される実験を記載する。
【0201】
これらの実験で使用されたマウスは、MAID 1444(ヒト化IL-4Rα、または「IL-4RαHumIn」についてホモ接合性であり、IL-4Rα細胞外ドメインはヒトのものであり、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインはマウスのものである)および系統を一致させた(75%がC57BL/6、25%が129Sv)野生型(「WT」)の20~23週齢のマウスであった。研究群は、薬剤当たり/投与当たりのコホートサイズが5匹のホモ接合性および5匹の系統を一致させたWTである、オスおよびメスの、合計40匹のマウスを含んだ。抗体(PBS緩衝液中)を、皮下注射により10mg/kgにてマウスに与えた。解析のために、注射した日(タイムポイント「0」または0日目)、注射の6時間後、ならびに1日目、3日目、7日目、10日目、14日目、21日目、および30日目にそれぞれ血液サンプルを採取した。
【0202】
循環する薬剤(すなわち、REGN668またはREGN646)のレベルは、ELISAイムノアッセイを使用する全ヒト抗体解析によって決定した。簡潔に述べると、ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch、#109-005-098)を96ウェルプレート上にコーティングして、試験される血清中のヒト抗体を捕捉し、次いでプレートに結合した抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch、#109-035-098)およびTMB基質(BD Pharmingen)を用いて検出した。血清サンプルを、1:100~1:243,000の範囲でサ
ンプルごとに6段階に段階希釈し、それぞれの抗体の参照標準を12段階に段階希釈した。血清中の薬剤抗体濃度を、Graphpad Prismソフトウェアを使用して作成した参照標準曲線に基づいて算出した。
【0203】
マウスIL-4Rαタンパク質のみを有する野生型マウスと比較して、IL-4Rα
HumInマウスでは、REGN 668の半減期が短くなることが見出された。PKプロファイルにおけるこの差異は、モノクローナル抗体とヒトIL-4α受容体との間の、標的により媒介される相互作用および排除によって説明できる。したがって、ヒトまたはヒト化IL-4Rαを発現するマウスは、前臨床マウスモデルにおいて抗ヒトIL-4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)のPK特性を特徴付けるために好適なシミュレーションを提供する。
【0204】
ヒト化IL-4および/またはIL-4Rαマウスの用途
ヒト化IL-4および/またはIL-4Rαは、ヒト特異的なIL-4および/またはIL-4Rα拮抗薬(例えば、中和性の抗IL-4抗体および/または抗IL-4Rα抗体、例えば、デュピルマブ)の薬力学(PD)を評価するために有用である。
【0205】
ヒト化IL-4および/またはIL-4Rαマウスにおける薬物動態学(PK)アッセイおよびPDアッセイは、当該技術分野で既知の標準的な手順に従って遂行される。
【0206】
ヒト化IL-4および/またはIL-4Rαマウスは、ヒト特異的なIL-4および/またはIL-4Rα拮抗薬(例えば、中和性の抗IL-4抗体および/または抗IL-4Rα抗体、例えば、デュピルマブ)のインビボでの治療有効性を、例えば本明細書の上記に示したような、当該技術分野で既知の様々な疾患モデルにおいて試験するために有用である。
【0207】
実施例8
ヒトIL-33遺伝子による内因性マウスIL-33遺伝子の置換
マウスIL-33遺伝子(NCBI遺伝子ID:77125、一次ソース:MGI:1924375;RefSeq転写物:NM_001164724.1;UniProt
ID:Q8BVZ5;ゲノムアセンブリ:NCBI37/mm9;場所:chr19:29,999,604-30,035,205 +ストランド)は、8個のエクソンを有し、266アミノ酸のタンパク質をコードする(GenBank Accession No. NP_001158196.1)。
【0208】
ヒトIL-33遺伝子(NCBI遺伝子ID:90865、一次ソース:HGNC:16028;RefSeq転写物:NM_033439.3;UniProt ID:O95760;ゲノムアセンブリ:GRCh37/hg19;場所:chr9:6,215,149-6,257,983 +ストランド)も、8個のエクソンを有し、270アミノ酸のタンパク質をコードする(GenBank Accession No. NP_254274.1)。
【0209】
ヒトIL-33遺伝子のATG開始コドンから開始するエクソン2からエクソン8まで(3’非翻訳領域を含む)を含有する16333bpのヒトゲノムセグメントにより、ATG開始コドンから開始するエクソン2から終止コドンを含むエクソン8のコーディング部分まで広がる9381bpのマウスIL-33遺伝子遺伝子座を置換した。
図10Aを参照のこと。
【0210】
単一の標的化工程で、ヒトIL-33ゲノムセグメントによりマウスIL-33遺伝子を置換するための標的化構築物は、VelociGene(登録商標)遺伝子工学技術(Valenzuela et al.(2003)High-throughput e
ngineering of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis,Nature Biotech,21(6):652-659を参照のこと)を使用して構築した。これは、マウスおよびヒトのIL-33 DNAを、それぞれ、細菌人工染色体(BAC)クローンであるbMQ-350I18およびCTD-3015M15から得たこと、ならびに標的化ベクターがloxPネオマイシン選択カセットを含んでいたことを除いて、ヒトIL-4ゲノムセグメントによりマウスIL-4遺伝子を置換するための上記の実施例1に記載された手順と類似である(
図10B)。
【0211】
適正に標的化されたES細胞クローン(MAID 7060)を、ロスオブネイティブアレル(LONA)アッセイ(Valenzuela et al.2003)によって同定した。上記アッセイでは、除去の対象となったマウスIL-33遺伝子内の配列に対して特異的な2つのTaqMan(商標)定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって、天然の、改変されていないIL-33遺伝子のコピーの数を決定した。qPCRアッセイは、以下のプライマー-プローブのセットを含んだ(5’から3’へと記載される):
上流(「mTU」):
フォワードプライマー、TTGGACTAGTAACAAGAAGGGTAGCA(配列番号:31);
リバースプライマー、CCTTTCCCATCACCCTCTAACTT(配列番号:32);
プローブ(MGB)、AGCTCTGGTGGACAGA(配列番号:33);
下流(「mTD」):
フォワードプライマー、TCTCTGCCAAGCTGCTTATCC(配列番号:34);
リバースプライマー、GGCTGCATGGAAGAGGTGAA(配列番号:35);
プローブ(MGB)、CTCTCCACAAATCG(配列番号:36)。
【0212】
ヒトIL-33遺伝子の配列が、ヒト化した対立遺伝子においてマウスIL-33遺伝子配列と置き換わったことの確認は、以下のプライマー-プローブのセットを含むTaqMan(商標)qPCRアッセイによって確認された(5’から3’へと記載される):
上流(「hTU」)
フォワードプライマー、CAGGCAGGAATAGCTGAGATAATCT(配列番号:37);
リバースプライマー、TGTGGAGCAAAAAGTGGTTGAT(配列番号:38);
プローブ(MGB)、CCTGTGAATAGTGATAAAC(配列番号:39);
下流(「hTD」):
フォワードプライマー、CAGTTCCAAACGATAGGCTCAA(配列番号:40);
リバースプライマー、ATAATTCTGTGAAGCATCTGGTCTTC(配列番号:41);
プローブ(MGB)、CTAGAGCTGCTAGTAAAA(配列番号:42)。
【0213】
ネズミのIL-33遺伝子座とヒトIL-33遺伝子を含有する配列との上流ジャンクション(
図10Bでは「I」で示される)は、
【化6】
内となるように設計され、ここで、ヒトIL-33配列は斜字体で示され、ヒト開始コドンATGは下線付きで示される。ヒトIL-33ゲノム配列を含む配列とloxPネオマイシン選択カセットとの下流ジャンクション(
図10Bでは「II」で示される)は、
【化7】
内となるように設計され、ここで、ヒトIL-33配列は斜字体で示され、ジャンクションは「/」記号で示され、lox P部位は下線付きで示される。loxPneo選択カセットの配列とネズミのIL-33遺伝子座との下流ジャンクション(
図10Cでは「III」で示される)は、5’-AGCCCCTAG
A TAACTTCGTA TAATGTATGC TATACGAAGT TATGCTAGTA ACTATAACGG
TCCTAAGGTA GCGAGCTAGC/CGCCTGTGCG TTCTGGGTTG AATGACTTAA TGCTTCCAAC TGAAGAAAGG GTAACAGAGA GAAAGAAAGC CATTCTTGGC-3’(配列番号:45)内となるように設計され、ここで、ジャンクションは「/」記号によって示され、loxP部位は下線付きで示される。
【0214】
適正に標的化されたES細胞(MAID 7060)を、一過性Cre発現ベクターを用いてさらに電気穿孔して、薬剤選択カセットを除去し、薬剤カセットを有さないES細胞クローン(MAID 7061)を得た。これらのMAID 7061 ES細胞内の上流ジャンクション(
図18Cでは「I」で示される)は、MAID 7060 ES細胞内のものと同一である。下流ジャンクション(
図18Cでは「II」で示される)は、
【化8】
内となるように設計され、ここで、3’ヒトIL-33配列は、最初の「/」記号の前まで斜字体で示され、マウスIL-33 3’配列は、2番目の「/」記号の後ろから斜字体で示され、loxP部位は下線付きで示される。
【0215】
適正に標的化されたES細胞(MAID 7060またはMAID 7061)を、VelociMouse(登録商標)法によって8細胞期のSWマウス胚に導入した(米国特許第7,294,754号、同第7,576,259号、同第7,659,442号、およびPoueymirou et al.(2007) F0 generation
mice that are essentially fully derived
from the donor gene-targeted ES cells allowing immediate phenotypic analyses,Nature Biotech.25(1):91-99を参照のこと)。ヒト化IL-33遺伝子を有するVelociMice(登録商標)(ドナーES細胞に完全に由来するF0マウス)を、対立遺伝子アッセイの改変を用いてマウス対立遺伝子の消失およびヒト対立遺伝子の獲得について遺伝子型を決定することによって同定した(Valenzuela et al.(2003)を参照のこと)。標的化されたES細胞に由来するマウスついて、尾部の生検から精製されたDNAをアッセイして、それらのIL-33遺伝子型を決定し、ヒト化IL-33対立遺伝子が生殖系列を通じて伝達されたことを確認するために、同一のLONAアッセイを使用した。置換についてヘテロ接合性の2匹の子を交配して、内因性マウスIL-33遺伝子のヒトIL-33遺伝子による置換についてホモ接合性であるマウスを生成した。