(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159986
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】偏光子保護フィルム、偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241031BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/22
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024150812
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2020184284の分割
【原出願日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2019235668
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150212
【弁理士】
【氏名又は名称】上野山 温子
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】吉川 貴博
(72)【発明者】
【氏名】池田 哲朗
(57)【要約】
【課題】加湿環境下における耐久性が向上された偏光板を提供すること。
【解決手段】色素を含有する樹脂フィルムであって、吸水率が、3.0%以下である、偏光子保護フィルム、および、偏光子と、該偏光子の少なくとも片側に配置された上記偏光子保護フィルムと、を有し、65℃、90%RH環境下で96時間経過後における可視光線透過率の変化率が、10%以下である、偏光板。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素を含有する樹脂フィルムであって、
吸水率が、3.0%以下である、偏光子保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子保護フィルムならびに当該偏光子保護フィルムを用いた偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な画像表示装置の1つである液晶表示装置では、その画像形成方式に起因して、液晶セルの両側に偏光板が貼り合わされる。偏光板は、通常、偏光子と偏光子を保護する保護フィルムとを含み、視野角向上の観点から、位相差層をさらに含む位相差層付偏光板として用いられ得る。また、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置は、円偏光板を視認側に設けることにより、有機ELセルの高い反射性に起因する外光反射や背景の映り込み等の問題を防ぐことが行われている。一般的な円偏光板として、偏光子と位相差層(代表的には、λ/4板)とを、位相差層の遅相軸が偏光子の吸収軸に対して約45°の角度をなすように積層されたものが知られている。
【0003】
上記偏光板に関して、着色層を設けることにより、広帯域において高い偏光特性や良好な反射特性を得ることが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。しかしながら、着色層を設けた偏光板は、加湿環境下における耐久性が劣る場合がある。
【0004】
また、上記のとおり、位相差層付偏光板を用いて画像表示装置の視野角を向上することが知られているが、そのような画像表示装置では、表示画面に色味の差異(色ムラ)が視認される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2018/110503
【特許文献2】特開2018-72712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、加湿環境下における耐久性が向上された偏光板を提供することにある。また、表示画面における色ムラの改善を更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの局面によれば、色素を含有する樹脂フィルムであって、吸水率が、3.0%以下である、偏光子保護フィルムが提供される。
1つの実施形態において、上記偏光子保護フィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびシクロオレフィン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。
1つの実施形態において、上記偏光子保護フィルムは、90nm~160nmまたは200nm~320nmの正面位相差Re(550)を有する。
1つの実施形態において、上記偏光子保護フィルムは、樹脂フィルムの延伸フィルムである。
1つの実施形態において、上記偏光子保護フィルムは、長手方向を0°とした際に、時計回りに、20°~60°または110°~150°の方向に遅相軸を有する。
1つの実施形態において、上記偏光子保護フィルムは、ヘイズが、3%以下である。
本発明の別の局面によれば、偏光子と該偏光子の少なくとも片側に配置された上記偏光子保護フィルムとを有し、65℃、90%RH環境下で96時間経過後における可視光線透過率の変化率が、10%以下である、偏光板が提供される。
1つの実施形態において、上記偏光板においては、上記偏光子と上記偏光子保護フィルムとが、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せられている。
1つの実施形態において、上記偏光板の可視光線透過率が、20%以上である。
1つの実施形態において、上記偏光子保護フィルムが、90nm~160nmの正面位相差Re(550)を有し、上記偏光子の吸収軸方向と前記偏光子保護フィルムの遅相軸とのなす角度が、時計回りまたは反時計回りに、35°~55°である。
1つの実施形態において、上記偏光子が長尺状であり、上記偏光子保護フィルムが長尺状の斜め延伸フィルムであり、該偏光子と該偏光子保護フィルムとが、長手方向を揃えて貼り合せられている。
本発明の別の局面によれば、上記偏光板を備えた、画像表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、色素を含有する樹脂フィルムであって、吸水率が、3.0%以下である偏光子保護フィルムを用いることにより、加湿環境下における耐久性が向上された偏光板が得られ得る。また、このような偏光子保護フィルムが偏光子よりも光学セル側となるように当該偏光板を配置することにより、表示画面における色ムラが改善された画像表示装置が得られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つの実施形態による偏光板を説明する概略断面図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態による偏光板を説明する概略断面図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態による偏光板を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0011】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記のとおりである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
【0012】
A.偏光子保護フィルム
本発明の実施形態による偏光子保護フィルムは、色素を含有する樹脂フィルムであって、吸水率が、3.0%以下である。従来の着色層を設けた偏光板は、環境による物性変化が大きく、加湿環境下において色素抜け等の問題が生じ得るが、偏光子保護フィルムに色素を含有させ、かつ、その吸水率を所定の値以下とすることにより、加湿環境下における物性変化が抑制された偏光板を得ることができる。
【0013】
上記偏光子保護フィルムの吸水率は、代表的には3.0%以下であり、好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2.0%以下であり、さらに好ましくは0%~1.5%である。偏光子保護フィルムの吸水率が当該範囲内である場合、着色層(偏光子保護フィルム)における水分の出入りに起因して生じ得る色素抜け等が抑制される結果、加湿環境下における物性変化が抑制された偏光板を得ることができる。なお、上記偏光子保護フィルムの吸水率は、JIS K 7209に準拠して求めることができる。
【0014】
A-1.樹脂フィルム
樹脂フィルムを形成する樹脂としては、所望の吸水率を実現し得る任意の適切な樹脂が用いられる。樹脂フィルムを形成する樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスルホン系樹脂等が挙げられる。中でも、加湿環境下における安定性に優れる(換言すれば、3%以下の吸水率を好適に実現できる)ことから、ポリエチレンテレフタレート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびシクロオレフィン系樹脂が好ましい。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。
【0015】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、好ましくはラクトン環やグルタルイミド環等の環状構造を主鎖中に有する(メタ)アクリル系樹脂が用いられる。グルタルイミド環を有する(メタ)アクリル系樹脂(以下、グルタルイミド樹脂とも称する)は、例えば、特開2006-309033号公報、特開2006-317560号公報、特開2006-328329号公報、特開2006-328334号公報、特開2006-337491号公報、特開2006-337492号公報、特開2006-337493号公報、特開2006-337569号公報、特開2007-009182号公報、特開2009-161744号公報、特開2010-284840号公報に記載されている。これらの記載は、本明細書に参考として援用される。
【0016】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、好ましくは、芳香族ポリカーボネートが用いられる。芳香族ポリカーボネートは、代表的には、カーボネート前駆物質と芳香族2価フェノール化合物との反応によって得ることができる。カーボネート前駆物質の具体例としては、ホスゲン、2価フェノール類のビスクロロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-p-トリルカーボネート、ジ-p-クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。芳香族2価フェノール化合物の具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジプロピルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが用いられる。特に、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンとを共に使用することが好ましい。
【0017】
上記シクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)であり得る。シクロオレフィンコポリマーとは、環状オレフィンとエチレン等のオレフィンとの共重合体である非結晶性の環状オレフィン系樹脂のことをいう。
【0018】
上記環状オレフィンとしては、多環式の環状オレフィンと単環式の環状オレフィンとが存在する。多環式の環状オレフィンとしては、ノルボルネン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブチルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン、ジメチルシクロテトラドデセン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエンなどが挙げられる。また、単環式の環状オレフィンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロドデカトリエンなどが挙げられる。
【0019】
上記シクロオレフィン系樹脂は市販品としても入手可能であり、例えば、Ticona社製のTopas、JSR社製のアートン、日本ゼオン社製のZEONOR、ZEONEX、三井化学社製のアペル等が挙げられる。
【0020】
上記樹脂フィルムは、単層で構成されていてもよく、多層構造を有していてもよい。多層構造を有する樹脂フィルムは、押出製法、ラミネート製法等の任意の適切な製造方法を用いて得られ得る。
【0021】
A-2.色素
上記色素の具体例としては、アントラキノン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、スクアリリウム系、シアニン系、ポルフィリン系、アザポルフィリン系、フタロシアニン系、サブフタロシアニン系、キニザリン系、ポリメチン系、ローダミン系、オキソノール系、キノン系、アゾ系、キサンテン系、アゾメチン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリドン系、イソインドリノン系、インダンスロン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、キノリン系、トリフェニルメタン系等の染料が挙げられる。染料は、マトリクスである上記樹脂フィルムと良好に相溶し得ることから、好ましく用いられ得る。
【0022】
1つの実施形態においては、色素として、アントラキノン系、オキシム系、ナフトキノン系、キニザリン系、オキソノール系、アゾ系、キサンテン系またはフタロシアニン系の染料が用いられる。これらの染料を用いれば、440nm~510nmの範囲の波長帯域に吸収極大波長を有する偏光子保護フィルムを形成することができる。
【0023】
1つの実施形態においては、色素として、インジゴ系、ローダミン系、キナクリドン系またはポルフィリン系の染料が用いられる。これらの染料を用いれば、560nm~610nmの範囲の波長帯域に吸収極大波長を有する偏光子保護フィルムを形成することができる。
【0024】
また、上記色素として、顔料を用いてもよい。顔料の具体例としては、例えば、黒色顔料(カーボンブラック、ボーンブラック、グラファイト、鉄黒、チタンブラック等)、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、多環式顔料(キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、キノフタロン系、金属錯体系、ジケトピロロピロール系等)、染料レーキ系顔料、白色・体質顔料(酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、光輝材顔料(パール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)等が挙げられる。
【0025】
上記色素の含有割合は、色素の種類、所望の光吸収特性等に応じて、任意の適切な割合とされ得る。上記色材の含有割合は、マトリクス樹脂(樹脂フィルム)100重量部に対して、例えば、0.01重量部~5.0重量部であり、より好ましくは0.05重量部~2.0重量部であり、さらに好ましくは0.10重量部~1.0重量部である。
【0026】
A-3.偏光子保護フィルムの光学特性
1つの実施形態においては、偏光子保護フィルムは、特定波長範囲の光を選択的に吸収する(すなわち、特定範囲の波長帯域に吸収極大波長を有する)。別の実施形態においては、偏光子保護フィルムは、可視光領域全波長を吸収するように機能する。好ましくは、偏光子保護フィルムは、特定波長範囲の光を選択的に吸収する。特定波長範囲の光を選択的に吸収する偏光子保護フィルムによれば、可視光線透過率の低下(すなわち、輝度の低下)を抑制しつつ、反射防止機能を高めることができる。また、吸収される光の波長を調整することにより、B項に記載の偏光板の反射色相をニュートラルにすることができる。
【0027】
1つの実施形態においては、偏光子保護フィルムは、440nm~510nmおよび/または560nm~610nmの範囲の波長帯域に吸収極大波長を有する。2以上の吸収極大波長を有する偏光子保護フィルムは、例えば、複数種の色素を含有させることにより得ることができる。
【0028】
偏光子保護フィルムの吸収極大波長での透過率は、好ましくは0%~80%であり、より好ましくは0%~70%である。
【0029】
偏光子保護フィルムの可視光線透過率は、好ましくは30%~90%であり、より好ましくは30%~80%である。
【0030】
偏光子保護フィルムのヘイズは、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、さらにより好ましくは0%~0.5%である。偏光子保護フィルムのヘイズが当該範囲内であれば、偏光子保護フィルムを透過する光の偏光が維持される結果、偏光度が高い偏光板が得られ得る。
【0031】
1つの実施形態において、上記偏光子保護フィルムは、光学的に異方性であり、位相差フィルムとしても機能し得る。位相差フィルムとして機能し得る偏光子保護フィルムの面内位相差Re(550)は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、偏光子保護フィルムは、λ/4板またはλ/2板として機能し得る。以下、偏光子保護フィルムがλ/4板またはλ/2板である場合について説明する。
【0032】
偏光子保護フィルムがλ/4板である場合、その面内位相差Re(550)は、好ましくは90nm~160nmであり、より好ましくは120nm~160nmであり、さらに好ましくは135nm~155nmである。λ/4板は、代表的にはnx>ny=nzまたはnx>ny>nzの屈折率楕円体を有する。なお、本明細書において例えば「ny=nz」は、厳密に等しいのみならず、実質的に等しいものを包含する。また、Nz係数は、例えば0.9~2であり、好ましくは1~1.5であり、より好ましくは1~1.3である。
【0033】
λ/4板として機能する偏光子保護フィルムの厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは10μm~80μmであり、さらに好ましくは10μm~60μmであり、最も好ましくは30μm~50μmである。
【0034】
λ/4板は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。上記のとおり、偏光子保護フィルムには色素が配合されることから、色素の種類および配合量を調整することにより、波長分散特性によらず、色相のシフトを抑制することができる。
【0035】
λ/4板は、好ましくは、色素を含有する樹脂フィルムの延伸フィルムである。延伸フィルムの延伸方向は、限定されず、例えば、長手方向および/または幅方向あるいは斜め方向であり得る。延伸方法としては、例えば、横一軸延伸、固定端二軸延伸、逐次二軸延伸が挙げられる。固定端二軸延伸の具体例としては、樹脂フィルムを長手方向に走行させながら、短手方向(幅方向)に延伸させる方法が挙げられる。この方法は、見かけ上は横一軸延伸であり得る。また、斜め延伸を採用することにより、幅方向に対して所定の角度の配向軸(遅相軸)を有する長尺状の延伸フィルムを得ることができる。斜め延伸方法の具体例は、例えば、WO2012/053218、WO2016/047465、特開2013-97216号公報等に記載されている。これらの記載は、本明細書に参考として援用される。
【0036】
斜め延伸によって得られたλ/4板は、長手方向を0°とした場合に、時計回りに好ましくは20°~60°、より好ましくは35°~55°、さらに好ましくは38°~52°、さらにより好ましくは40°~50°、さらにより好ましくは42°~48°、特に好ましくは44°~46°の方向または好ましくは110°~150°、より好ましくは128°~142°、さらに好ましくは130°~140°、さらにより好ましくは132°~138°、特に好ましくは134°~136°の方向に配向軸(遅相軸)を有する。
【0037】
偏光子保護フィルムがλ/2板である場合、その面内位相差Re(550)は、好ましくは200nm~320nmであり、さらに好ましくは210nm~280nmであり、最も好ましくは230nm~240nmである。λ/2板は、代表的には、nx>ny=nzの屈折率楕円体を有することが好ましい。λ/2板のNz係数は、例えば0.9~2であり、好ましくは1~1.5であり、より好ましくは1~1.3である。
【0038】
λ/2板として機能する偏光子保護フィルムの厚みは、λ/2板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは10μm~80μmであり、さらに好ましくは10μm~60μmであり、最も好ましくは30μm~50μmである。
【0039】
λ/2板は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。上記のとおり、偏光子保護フィルムには色素が配合されることから、色素の種類および配合量を調整することにより、波長分散特性によらず、色相のシフトを抑制することができる。
【0040】
λ/2板は、好ましくは、上記色素を含有する樹脂フィルムの延伸フィルムである。樹脂フィルムの延伸方法としては、偏光子保護フィルムがλ/4板である場合に関して例示した延伸方法と同様のものが用いられ得る。
【0041】
斜め延伸によって得られたλ/2板は、長手方向を0°とした場合に、時計回りまたは反時計回りに、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは13°~17°であり、特に好ましくは約15°の方向に配向軸(遅相軸)を有する。
【0042】
別の実施形態において、上記偏光子保護フィルムは、光学的に等方性である。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。当該実施形態において、偏光子保護フィルムの厚みは、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは15μm~60μmであり、さらに好ましくは20μm~40μmである。
【0043】
B.偏光板
本発明の実施形態による偏光板は、偏光子と、該偏光子の少なくとも片側に配置されたA項に記載の偏光子保護フィルム(以下、着色偏光子保護フィルム)と、を有する。当該偏光板の可視光線透過率は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%~50%である。また、当該偏光板の偏光度は、99.9%以上であり、好ましくは99.95%以上である。
【0044】
上記偏光板の65℃、90%RH環境下で96時間経過後における可視光線透過率の変化率は、代表的には10%以下であり、好ましくは5.0%以下であり、より好ましくは3.0%以下であり、さらに好ましくは2.0%以下であり、さらにより好ましくは0%~1.0%である。色素を含み、かつ、吸水率が低い樹脂フィルムを偏光子保護フィルムとして用いることにより、加湿環境下における耐久性に優れた偏光板が得られ得る。なお、上記可視光線透過率の変化率は、下記式に基づいて算出される。
可視光線透過率の変化率(%)=(96h後の可視光線透過率-初期の可視光線透過率)/初期の可視光線透過率×100
【0045】
図1および
図2はそれぞれ、本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。偏光板100aは、偏光子10と、その一方の側に配置された着色偏光子保護フィルム20と、を有する。偏光板100bは、偏光子10と、その一方の側に配置された着色偏光子保護フィルム20と、他方の側に配置された第2の偏光子保護フィルム30と、を有する。第2の偏光子保護フィルム30は、着色偏光子保護フィルムであってもよく、通常の偏光子保護フィルム(色素を含有しない偏光子保護フィルム)であってもよい。
【0046】
図示しないが、着色偏光子保護フィルム20は、代表的には、接着層を介して偏光子10の表面に積層されている。第2の偏光子保護フィルム30は、接着層を介して、あるいは、接着層を介することなく密着して、偏光子10の表面に積層されている。接着層としては、任意の適切な粘着剤層または接着剤層が用いられ得る。粘着剤層は、代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。接着剤層は、代表的には紫外線硬化型接着剤またはポリビニルアルコール系接着剤で形成される。
【0047】
偏光子10としては、任意の適切な偏光子が用いられる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く、特に好ましい。偏光子の厚みは、好ましくは、0.5μm~80μmである。
【0048】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、代表的には、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製される。延伸は染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、延伸してから染色してもよい。延伸、染色以外にも、例えば、膨潤、架橋、調整、水洗、乾燥等の処理が施されて作製される。例えば、染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗することで、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。なお、ポリビニルアルコール系フィルムは、単層のフィルム(通常のフィルム成形されたフィルム)であってもよく、樹脂基材上に塗布形成されたポリビニルアルコール系樹脂層であってもよい。単層のポリビニルアルコール系フィルムから偏光子を作製する技術は当業界で周知である。樹脂基材上に塗布形成されたポリビニルアルコール系樹脂層から偏光子を作製する技術は、例えば特開2009-098653号公報に記載されている。
【0049】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは38%~45.5%であり、より好ましくは40%~45%である。
【0050】
偏光子の偏光度は、好ましくは99.9%以上であり、より好ましくは99.95%以上である。
【0051】
色素を含有しない偏光子保護フィルムである場合の第2の偏光子保護フィルム30は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0052】
偏光板を画像表示装置に適用したときに第2の偏光子保護フィルムが光学セルとは反対側に配置される場合(外側保護層である場合)の第2の偏光子保護フィルムの厚みは、代表的には300μm以下であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは5μm~80μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。なお、表面処理が施されている場合、外側保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0053】
偏光板を画像表示装置に適用したときに第2の偏光子保護フィルムが光学セル側に配置される場合(内側保護層である場合)の第2の偏光子保護フィルムの厚みは、好ましくは5μm~200μm、より好ましくは10μm~100μm、さらに好ましくは10μm~60μmである。
【0054】
着色偏光子保護フィルム20は、上記のとおり、A項に記載の偏光子保護フィルムである。着色偏光子保護フィルムが光学的に異方性であり、位相差フィルムとしても機能する場合、偏光板100aまたは100bは位相差層付偏光板である。このような位相差層付偏光板を、着色偏光子保護フィルム(位相差層)が偏光子よりも光学セル側となるように光学セルの視認側に配置することにより、視野角向上効果が得られるとともに、画面の色ムラが抑制され得る。このような効果は、特に、着色偏光子保護フィルムが広幅な斜め延伸フィルム(例えば、幅方向の長さが600mm以上、好ましくは800mm~2000mmの斜め延伸フィルム)である場合に顕著である。具体的には、斜め延伸フィルムは、通常、いわゆるロールツーロールプロセスで偏光子に積層されて長尺状の偏光板を形成し、その後、所望の寸法に切断されて光学セルに貼り合わせられる。ここで、広幅な斜め延伸フィルムを用いて作製された大画面用(例えば40インチ以上、好ましくは50インチ以上の画面用)の偏光板には、面内、特に対角の隅部において位相差ムラが大きい傾向があり、当該位相差ムラに起因して画面に色ムラが生じ得る。これに対し、上記偏光板によれば、着色偏光子保護フィルムが色素を含むことにより、位相差に依らない色制御が可能になる結果、画面の色ムラが抑制され得る。なお、本明細書において「ロールツーロールプロセス」とは、長尺のフィルム同士をロール搬送しながら、その長手方向を揃えて連続的に貼り合わせる方法をいう。
【0055】
着色偏光子保護フィルム20がλ/4板として機能する場合、偏光子10の吸収軸と着色偏光子保護フィルム20の遅相軸とのなす角度が、時計回りまたは反時計回りに、例えば35°~55°であり、好ましくは38°~52°であり、より好ましくは40°~50°であり、さらに好ましくは42°~48°であり、特に好ましくは44°~46°となるように配置することにより、偏光板100aまたは100bは円偏光板として機能し得る。
【0056】
上記円偏光板は、例えば、λ/4板として機能する着色偏光子保護フィルムを偏光子よりも視認側となるように光学セルの視認側に配置することにより、反射防止フィルムとしても機能し得る。具体的には、円偏光板は、着色偏光子保護フィルムが特定波長の光を吸収することにより、優れた反射防止機能を発揮する。また、着色偏光子保護フィルムが特定波長範囲の光を選択的に吸収することにより、反射色相を適切に調整することができ、かつ、画像表示装置の広色域化に寄与し得る偏光板を得ることができる。例えば、440nm~510nmおよび560nm~610nmの範囲の波長帯域に吸収極大波長を有する着色偏光子保護フィルムを用いることにより、赤色光と緑色光、および、緑色光と青色光の混色が良好に防止される結果、画像表示装置の広色域化が可能となり、明るくかつ鮮やかな画質を得ることができる。
【0057】
図3は、本発明の別の実施形態による偏光板の概略断面図である。偏光板100cは、第2の偏光子保護フィルム30と、偏光子10と、着色偏光子保護フィルム20と、位相差フィルム40と、をこの順に有する。本実施形態において、着色偏光子保護フィルム20は、λ/2板として機能する。また、位相差フィルム40は、λ/4板として機能する位相差フィルムである。偏光板100cにおいては、偏光子10の吸収軸と位相差フィルム40の遅相軸とのなす角度は、時計回りまたは反時計回りに、好ましくは65°~85°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは約75°である。さらに、偏光子10の吸収軸と着色偏光子保護フィルム20の遅相軸とのなす角度は、時計回りまたは反時計回りに、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは13°~17°であり、さらに好ましくは約15°である。2つの位相差フィルムを上記のような軸角度で配置することにより、広帯域において非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する円偏光板が得られ得る。
【0058】
C.画像表示装置
上記B項に記載の偏光板は、光学セルを備えた画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明は、上記偏光板を備えた画像表示装置を包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶セルを備えた液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)セルを備えた有機EL表示装置等が挙げられる。代表的には、上記偏光板は、液晶セル、有機ELセル等の光学セルの視認側に配置されて、視野角向上効果および/または反射防止効果を広帯域に渡って安定に発揮し得る。また、このとき、着色偏光子保護フィルムが偏光子よりも光学セル側となるように偏光板を配置することにより、視野角向上効果に加えて色ムラ抑制効果が得られ得る。なお、液晶セルおよび有機ELセルについては、本発明の特徴的な部分ではなく、かつ、業界で周知の構成が採用され得るので、詳細な説明は省略する。
【実施例0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下のとおりである。
【0060】
(1)正面位相差
測定対象のフィルムを長さ4cmおよび幅4cmに切り出し、測定試料とした。当該測定試料について、Axometrics社製、製品名「Axoscan」を用いて面内位相差を測定した。測定波長は550nm、測定温度は23℃であった
(2)可視光線透過率
実施例および比較例で作製した偏光板について、紫外可視分光光度計(日本分光社製、製品名「V7000シリーズ」)を用いて可視光線透過率を測定した。具体的には、偏光板を、紫外可視分光光度計(日本分光社製 V-7100)を用いて波長380nm~780nmの透過率Tsを測定して、可視光線透過率Tsとした。このTsは、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
(3)吸水率
実施例および比較例で用いた着色層(着色偏光子保護フィルムまたは着色粘着剤層)について、JIS K 7209に記載の「プラスチックの吸水率及び沸騰吸水率試験方法」に準拠して測定した。試験片の大きさは50mm辺の正方形の平板で、水温25℃の水に24時間試験片を浸水させた後、浸水前後の重量変化を測定することにより求めた。単位は%である。
(4)ヘイズ
実施例および比較例で用いた着色層(着色偏光子保護フィルムまたは着色粘着剤層)について、JIS 7136で定める方法により、ヘイズメーター(村上色彩科学研究所社製、商品名「HN-150」)を用いて測定した。
(5)厚み
シックネステスターを用いて、幅方向の厚みを10mmピッチで測定し、その平均値を厚みとして算出した。
【0061】
[実施例1]
1.偏光子の作製
厚み30μmのポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ製、製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長手方向に5.9倍になるように長手方向に一軸延伸しながら同時に膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの偏光子を作製した。
具体的には、膨潤処理は20℃の純水で処理しながら2.2倍に延伸した。次いで、染色処理は得られる偏光子の単体透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整されたヨウ素とヨウ化カリウムの重量比が1:7である30℃の水溶液中において処理しながら1.4倍に延伸した。更に、架橋処理は、2段階の架橋処理を採用し、1段階目の架橋処理は40℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.2倍に延伸した。1段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は5.0重量%で、ヨウ化カリウム含有量は3.0重量%とした。2段階目の架橋処理は65℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.6倍に延伸した。2段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は4.3重量%で、ヨウ化カリウム含有量は5.0重量%とした。また、洗浄処理は、20℃のヨウ化カリウム水溶液で処理した。洗浄処理の水溶液のヨウ化カリウム含有量は2.6重量%とした。最後に、乾燥処理は70℃で5分間乾燥させて偏光子を得た。
【0062】
2.着色偏光子保護フィルムの作製
イソソルビド(以下「ISB」と略記することがある)81.98質量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(以下「TCDDM」と略記することがある)47.19質量部、ジフェニルカーボネート(以下「DPC」と略記することがある)175.1質量部、及び触媒として、炭酸セシウム0.2質量%水溶液0.979質量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、樹脂100重量部に対して0.29重量部の染料(山田化学社製 商品名FDG-007)と同時に二軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅300mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み70μmの着色ポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。
さらに、未延伸の上記ポリカーボネート樹脂フィルムを、同時二軸延伸機を用い、予熱処理および同時二軸延伸に供し、位相差フィルムとして機能する着色偏光子保護フィルムを得た。予熱温度は145℃とした。延伸温度は140℃(Tg+10℃)とし、長手方向の延伸倍率を1.2倍、幅方向の延伸倍率を1.9倍とした。
得られた着色偏光子保護フィルムの厚みは30μmであり、正面位相差Re(550)は144nmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。また、遅相軸方向は、長手方向に対して135°であった。
【0063】
3.偏光板の作製
上記偏光子の一方の側に、紫外線硬化型接着剤を介して、TACフィルム(富士フィルム社製、製品名「TG60UL」、厚み:60μm)をロールツーロールにより貼り合わせ、次いで、偏光子の他方の側に、紫外線硬化型接着剤を介して、上記着色偏光子保護フィルムをロールツーロールにより貼り合わせ、これにより、保護フィルム/偏光子/着色偏光子保護フィルムの構成を有する長尺状の偏光板1を得た。
【0064】
偏光板1の着色偏光子保護フィルム側表面にアクリル系粘着剤層を設け、該アクリル系粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルに貼り合せて積層体1を得た。
【0065】
[実施例2]
色素として山本化成社製、製品名「PD-320」を0.3重量部用いたこと、および、延伸温度を139℃(Tg+9℃)としたこと以外は実施例1と同様にして、着色偏光子保護フィルムを得た。得られた着色偏光子保護フィルムの厚みは30μmであり、正面位相差Re(550)は135nmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。また、遅相軸方向は、長手方向に対して135°であった。
上記着色偏光子保護フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルム/偏光子/着色偏光子保護フィルムの構成を有する長尺状の偏光板2を得た。
【0066】
偏光板2の着色偏光子保護フィルム側表面にアクリル系粘着剤層を設け、該アクリル系粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルの片側に貼り合せて積層体2を得た。
【0067】
[実施例3]
色素の添加量を0.18重量部にしたこと、および、延伸温度を142℃(Tg+12℃)としたこと以外は実施例1と同様にして、着色偏光子保護フィルムを得た。得られた着色偏光子保護フィルムの厚みは20μmであり、正面位相差Re(550)は100nmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。また、遅相軸方向は、長手方向に対して135°であった。
上記着色偏光子保護フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルム/偏光子/着色偏光子保護フィルムの構成を有する長尺状の偏光板3を得た。
【0068】
偏光板3の保護フィルム(TACフィルム)側表面にアクリル系粘着剤層を設け、該アクリル系粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルの片側に貼り合せて積層体3を得た。
【0069】
[実施例4]
ノルボルネン系ポリマー(JSR社製 商品名ARTON)を用いたこと、色素の添加量を0.2重量部にしたこと、および、延伸温度をTg+12度としたこと以外は、実施例1と同様にして着色偏光子保護フィルムを得た。得られた着色偏光子保護フィルムの厚みは25μmであり、正面位相差Re(550)は100nmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。また、遅相軸方向は、長手方向に対して135°であった。
上記着色偏光子保護フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルム/偏光子/着色偏光子保護フィルムの構成を有する長尺状の偏光板4を得た。
【0070】
偏光板4の保護フィルム(TACフィルム)側表面にアクリル系粘着剤層を設け、該アクリル系粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルの片側に貼り合せて積層体4を得た。
【0071】
[実施例5]
色素の添加量を0.37重量部にしたこと、および、延伸温度をTg+10度としたこと以外は実施例4と同様にして、着色偏光子保護フィルムを得た。得られた着色偏光子保護フィルムの厚みは40μmであり、正面位相差Re(550)は140nmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。また、遅相軸方向は、長手方向に対して135°であった。
上記着色偏光子保護フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルム/偏光子/着色偏光子保護フィルムの構成を有する長尺状の偏光板5を得た。
【0072】
偏光板5の着色偏光子保護フィルム側表面にアクリル系粘着剤層を設け、該アクリル系粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルの片側に貼り合せて積層体5を得た。
【0073】
[実施例6]
色素の添加量を0.36重量部にしたこと、および、延伸温度をTg+5度としたこと以外は実施例1と同様にして、着色偏光子保護フィルムを得た。得られた着色偏光子保護フィルムの厚みは40μmであり、正面位相差Re(550)は270nmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。また、遅相軸方向は、長手方向に対して135°であった。
上記着色偏光子保護フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルム/偏光子/着色偏光子保護フィルムの構成を有する長尺状の偏光板6を得た。
【0074】
偏光板6の保護フィルム(TACフィルム)側表面にアクリル系粘着剤層を設け、該アクリル系粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルの片側に貼り合せて積層体6を得た。
【0075】
[実施例7]
アクリル樹脂(カネカ社製 商品名HTX)を用いたこと、および、色素として山本化成社製、製品名「PD-320」を0.39重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、着色偏光子保護フィルムを得た。得られた着色偏光子保護フィルムの厚みは40μmであり、正面位相差Re(550)は0nmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。
上記着色偏光子保護フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルム/偏光子/着色偏光子保護フィルムの構成を有する長尺状の偏光板7を得た。
【0076】
偏光板7の保護フィルム(TACフィルム)側表面にアクリル系粘着剤層を設け、該アクリル系粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルの片側に貼り合せて積層体7を得た。
【0077】
[実施例8]
PET樹脂を用いたこと、および、色素として山本化成社製、製品名「PD-320」を0.18重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、着色偏光子保護フィルムを得た。得られた着色偏光子保護フィルムの厚みは20μmであり、正面位相差Re(550)は350nmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。
上記着色偏光子保護フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルム/偏光子/着色偏光子保護フィルムの構成を有する長尺状の偏光板8を得た。
【0078】
偏光板8の保護フィルム(TACフィルム)側表面にアクリル系粘着剤層を設け、該アクリル系粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルの片側に貼り合せて積層体8を得た。
【0079】
[比較例1]
1.偏光子の作製
実施例1と同様にして偏光子を作製した。
2.位相差フィルムの作製
色素を添加しなかったこと以外は実施例1の着色偏光子保護フィルムの作製と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの厚みは30μmであり、正面位相差Re(550)は144nmであった。また、遅相軸方向は、長手方向に対して135°であった。
3.着色粘着剤層の作製
アクリル酸n-ブチル、水酸基含有モノマーを共重合してなるアクリル系ポリマー100重量部に対し、ラジカル発生剤(ベンゾイルパーオキサイド、日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)を0.3重量部、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)を1重量部、色素(山田化学社製、商品名「FDG-007」)を0.3重量部、フェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製、商品名「IRGANOX1010」)を0.2重量部含んでなる着色粘着剤を作製した。粘着剤の剥離が容易となる処理を施したPET基材(三菱樹脂社製、商品名「MRF38CK」)上に、上記粘着剤を20μmの厚みで塗工し、155℃で2分乾燥させて、着色粘着剤層を得た。得られた着色粘着剤層の厚みは23μmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。
4.偏光板の作製
上記偏光子の一方の側に、紫外線硬化型接着剤を介して、TACフィルム(富士フィルム社製、製品名「TG60UL」、厚み:60μm)をロールツーロールにより貼り合わせ、次いで、偏光子の他方の側に、紫外線硬化型接着剤を介して、上記位相差フィルムをロールツーロールにより貼り合わせ、これにより、保護フィルム/偏光子/位相差フィルム(保護フィルムを兼ねる)の構成を有する長尺状の偏光板C1を得た。
【0080】
上記偏光板C1を、上記着色粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルの片側に貼り合せて積層体C1を得た。このとき、偏光板C1の位相差フィルム側が有機ELパネルと対向するように積層した。
【0081】
[比較例2]
1.偏光子の作製
実施例1と同様にして偏光子を作製した。
2.位相差フィルムの作製
色素を添加しなかったこと以外は実施例4の着色偏光子保護フィルムの作製と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの厚みは25μmであり、正面位相差Re(550)は100nmであった。また、遅相軸方向は、長手方向に対して135°であった。
3.着色粘着剤層の作製
色素の添加量を0.29重量部としたこと以外は比較例1と同様にして、着色粘着剤層を得た。得られた着色粘着剤層の厚みは23μmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。
4.偏光板の作製
上記偏光子の一方の側に、紫外線硬化型接着剤を介して、TACフィルム(富士フィルム社製、製品名「TG60UL」、厚み:60μm)をロールツーロールにより貼り合わせ、次いで、偏光子の他方の側に、紫外線硬化型接着剤を介して、上記位相差フィルムをロールツーロールにより貼り合わせ、これにより、保護フィルム/偏光子/位相差フィルム(保護フィルムを兼ねる)の構成を有する長尺状の偏光板C2を得た。
【0082】
上記偏光板C2を、上記着色粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルの片側に貼り合せて積層体C2を得た。このとき、偏光板C2の保護フィルム(TACフィルム)側が有機ELパネルと対向するように積層した。
【0083】
[比較例3]
1.偏光子の作製
実施例1と同様にして偏光子を作製した。
2.位相差フィルムの作製
色素を添加しなかったこと以外は実施例5の着色偏光子保護フィルムの作製と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの厚みは40μmであり、正面位相差Re(550)は140nmであった。また、遅相軸方向は、長手方向に対して135°であった。
3.着色粘着剤層の作製
色素として山本化成社製、商品名「PD-320」を0.33重量部添加したこと以外は比較例1と同様にして、着色粘着剤層を得た。得られた着色粘着剤層の厚みは23μmであり、590nmに吸収極大波長を有していた。
4.偏光板の作製
上記偏光子の一方の側に、紫外線硬化型接着剤を介して、TACフィルム(富士フィルム社製、製品名「TG60UL」、厚み:60μm)をロールツーロールにより貼り合わせ、次いで、偏光子の他方の側に、紫外線硬化型接着剤を介して、上記位相差フィルムをロールツーロールにより貼り合わせ、これにより、保護フィルム/偏光子/位相差フィルム(保護フィルムを兼ねる)の構成を有する長尺状の偏光板C3を得た。
【0084】
上記偏光板C3を、上記着色粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルに貼り合せて積層体C3を得た。このとき、偏光板C3の位相差フィルム側が有機ELパネルと対向するように積層した。
【0085】
[参考例1]
1.偏光子の作製
実施例1と同様にして偏光子を作製した。
2.位相差フィルムの作製
色素を添加しなかったこと以外は実施例2の着色偏光子保護フィルムの作製と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの厚みは30μmであり、正面位相差Re(550)は135nmであった。また、遅相軸方向は、長手方向に対して135°であった。
3.偏光板の作製
上記偏光子の一方の側に、紫外線硬化型接着剤を介して、TACフィルム(富士フィルム社製、製品名「TG60UL」、厚み:60μm)をロールツーロールにより貼り合わせ、次いで、偏光子の他方の側に、紫外線硬化型接着剤を介して、上記位相差フィルムをロールツーロールにより貼り合わせ、これにより、保護フィルム/偏光子/位相差フィルム(保護フィルムを兼ねる)の構成を有する長尺状の偏光板R1を得た。
【0086】
上記偏光板R1を、アクリル系粘着剤層を介して55インチ以上の有機ELパネルの片側に貼り合せて積層体R1を得た。このとき、偏光板R1の位相差フィルム側が有機ELパネルと対向するように積層した。
【0087】
≪信頼性試験≫
実施例および比較例で得られた偏光板を65℃、90%RHのオーブンへ投入し、96時間後に取り出して可視光線透過率を測定し、初期の(オーブン投入前の)可視光線透過率からの変化率を求めた。
【0088】
≪色ムラ評価≫
実施例および比較例で得られた積層体に関して、消灯状態および点灯状態での面内ムラを目視にて確認した。実用上問題ないレベルを「良好」、面内の色相変化として視認できるレベルであるものを「不良」と評価した。
【0089】
【0090】
表1に示されるとおり、実施例の着色偏光子保護フィルムを用いた偏光板は、加湿環境下における透過率の変化率が小さく、安定性に優れることが分かる。また、実施例の着色偏光子保護フィルムを偏光子よりも光学セル側に配置することにより、色ムラが抑制されることが分かる。