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  • 特開-吸湿発熱性生地の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159989
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】吸湿発熱性生地の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/14 20060101AFI20241031BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20241031BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20241031BHJP
   D03D 15/217 20210101ALI20241031BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20241031BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20241031BHJP
   A41D 31/12 20190101ALI20241031BHJP
   A41D 31/06 20190101ALI20241031BHJP
   A41D 10/00 20060101ALI20241031BHJP
   A41B 9/02 20060101ALI20241031BHJP
   A41B 9/06 20060101ALI20241031BHJP
   A41B 9/12 20060101ALI20241031BHJP
   A41B 17/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
D04B1/14
D06M13/188
D03D15/47
D03D15/217
D02G3/04
A41D31/00 502C
A41D31/00 503B
A41D31/12
A41D31/06
A41D10/00 A
A41D10/00 D
A41D10/00 E
A41D10/00 F
A41D10/00 J
A41B9/02 E
A41B9/06 B
A41B9/12 A
A41B9/12 C
A41B17/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024150850
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2022140028の分割
【原出願日】2019-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小林 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】横山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】勝圓 進
(57)【要約】
【課題】コットン生地の吸湿発熱性を向上し、かつ身体への密着性もよく、さらに着心地の良さと共に、肌にやさしい吸湿発熱性衣料を提供する。
【解決手段】本発明の吸湿性生地及び吸湿性衣料は、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)と吸湿発熱加工していないセルロース系繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維で構成される紡績糸(B1)を含み、生地を100質量%としたとき、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は5~40質量%である。さらに弾性糸(C)を3~15質量%含んでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)と吸湿発熱加工していないセルロース系繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維で構成される紡績糸(B1)を含む吸湿発熱性生地であって、
前記生地を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は5~40質量%であることを特徴とする吸湿発熱性生地。
【請求項2】
吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)と吸湿発熱加工していないセルロース系繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維で構成される紡績糸(B)と、弾性糸(C)を含む吸湿発熱性生地であって、
前記生地を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は5~40質量%であることを特徴とする吸湿発熱性生地。
【請求項3】
吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)と吸湿発熱加工していないセルロース系繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維で構成される紡績糸(B)と、弾性糸(C)を含む吸湿発熱性生地であって、
前記生地を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は5~40質量%であり、前記セルロース系繊維の合計量(A+B)は85~97質量%であり、前記弾性糸(C)は3~15質量%含まれていることを特徴とする吸湿発熱性生地。
【請求項4】
前記生地は編み物であり、生地を構成する編み糸割合は、糸3本に対して1~2本は混紡紡績糸であり、残りの糸は吸湿発熱加工していないコットン紡績糸である請求項1~3に記載の吸湿発熱性生地。
【請求項5】
前記生地は丸編み生地であり、単位面積当たりの質量が80~300g/m2である請求項1~4のいずれかに記載の吸湿発熱性生地。
【請求項6】
前記弾性糸はポリウレタン糸である請求項2~5のいずれかに記載の吸湿発熱性生地。
【請求項7】
前記弾性糸は、丸編み生地の編み糸にループ糸の添え糸として挿入する請求項2~6のいずれかに記載の吸湿発熱性生地。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の吸湿発熱性生地で縫製したことを特徴とする吸湿発熱性衣料。
【請求項9】
請求項2~7のいずれかに記載の吸湿発熱性生地で縫製した吸湿発熱性衣料であり、弾性糸は身体の周囲方向に配置されていることを特徴とする吸湿発熱性衣料。
【請求項10】
前記衣料はインナー衣料であり、シャツ又はパンツである請求項8又は9に記載の吸湿発熱性衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コットン等のセルロース系繊維を主要繊維糸とする吸湿発熱性生地及びこれを用いた吸湿発熱性衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
吸湿発熱性は、乾燥した繊維が湿気(水分)を吸収する際に発熱する性質であり、例えば昼間天日に当てた布団を室内に取り込んで、数時間経過し室温と同じ温度になっていても、人体の皮膚を当てると暖かく感ずる現象として知られている。
【0003】
従来、吸湿発熱性繊維の製造方法として、下記特許文献1には、アクリル系繊維のヒドラジン架橋処理、加水分解処理及びカルボキシル基の塩型への転換からなる高吸放湿性繊維が提案されている。しかし、これらの提案はアクリル系繊維そのものの改質であり、他の繊維に応用することは困難であった。また、芯成分に獣毛繊維を使用し、鞘成分にセルロース繊維などを配置した複合紡績糸を本出願人は提案している(下記特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-089971号公報
【特許文献2】特許第3889652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、下着などのインナー衣料としてコットンが見直されており、コットン自体を吸湿発熱することの要求が市場からあるが、従来技術ではこのような要求に応ずることはできなかった。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、コットン生地の吸湿発熱性を向上し、かつ身体への密着性もよく、さらに着心地の良さと共に、肌にやさしい吸湿発熱性生地及び吸湿発熱性衣料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1番目の吸湿発熱性生地は、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)と吸湿発熱加工していないセルロース系繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維で構成される紡績糸(B1)を含む吸湿発熱性生地であって、前記生地を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は5~40質量%であることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2番目の吸湿発熱性生地は、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)と吸湿発熱加工していないセルロース系繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維で構成される紡績糸(B)と、弾性糸(C)を含む吸湿発熱性生地であって、前記生地を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は5~40質量%であることを特徴とする。さらには、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)と吸湿発熱加工していないセルロース系繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維で構成される紡績糸(B)と、弾性糸(C)を含む吸湿発熱性生地であって、前記生地を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は5~40質量%であり、前記セルロース系繊維の合計量(A+B)は85~97質量%であり、前記弾性糸(C)は3~15質量%含まれていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1番目の吸湿発熱性衣料は、前記第1番目の吸湿発熱性生地で縫製した衣料である。
本発明の第2番目の吸湿発熱性衣料は、前記第2番目の吸湿発熱性生地で縫製した衣料であり、弾性糸は身体の周囲方向に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1~2番目の吸湿発熱性生地及び第1~2番目の衣料は、前記吸湿発熱加工したセルロース系繊維を5~40質量%含むことにより、コットン生地の吸湿発熱性を向上し、かつ身体への密着性もよく、さらに着心地の良さと共に、肌にやさしい吸湿発熱性生地及び吸湿発熱性衣料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるインナー衣料の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)と吸湿発熱加工していないセルロース系繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維で構成される紡績糸(B)を含む吸湿発熱性生地である。生地を100質量%としたとき、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は5~40質量%である。木綿(コットン)やレーヨンなどのセルロース系繊維には吸湿発熱性があるが(本宮達也ら著「繊維の百科事典」830頁左欄、2002年3月25日、丸善)、これにより適度な吸湿発熱性を付与し、かつ洗濯耐久性のある吸湿発熱衣料を実現できる。さらに、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)と吸湿発熱加工していないセルロース系繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維で構成される紡績糸(B)と、弾性糸(C)を含む吸湿発熱性生地であり、生地を100質量%としたとき、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は5~40質量%であり、セルロース系繊維合計量(A+B)は85~97質量%であり、弾性糸(C)は3~15質量%である。これにより適度な吸湿発熱性を付与し、かつ洗濯を繰り返しても型崩れしにくい吸湿発熱性衣料を実現できる。
【0012】
また、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)を5~40質量%混合することにより、吸湿発熱加工時のセルロース系繊維の傷みを未処理セルロース系繊維により補うことができる。生地を100質量%としたとき、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は5~30質量%が好ましく、さらに好ましくは6~20質量%である。また、コットン合計量(A+B):弾性糸の比率は質量%で88:12~94:6が好ましく、さらに好ましくは90:10~95:5である。
【0013】
吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)は、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物(吸湿発熱性を有する官能基をもつ化合物)がグラフト結合されているセルロース系繊維が好ましい。エチレン性不飽和二重結合を含む化合物は、例えば、1つのエチレン性不飽和二重結合と、1または2つのカルボン酸基とを含む化合物が挙げられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる少なくとも一つのカルボン酸、又はこれらのエステル若しくは塩であることが好ましい。これらの化合物をコットン表面に化学結合させると、耐洗濯性のある吸湿発熱機能を付与できる。前記グラフト結合は、電子線を照射することにより、セルロース系繊維表面にラジカルを発生させる反応、発生したラジカルに官能基(-OH、-NH2等)を含むエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を接触させることでセルロース系繊維の表面にグラフト結合する反応、前記活性基がカルボン酸基(-COOH)と反応して共有結合する反応等、様々な反応が関与して形成される。エチレン性不飽和二重結合を含む化合物はセルロース系繊維に対して1~30質量%の範囲付与されているのが好ましく、さらに好ましくは5~20質量%付与されている。前記の範囲であれば、未処理コットンと混紡しても吸湿発熱機能を発揮できる。
【0014】
吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)と吸湿発熱加工していないセルロース系繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)において、通常(a1)は8~50質量%であり、(a2)は50~92質量%である。好ましくは(a1)が10~45質量%であり、(a2)が55~90質量%である。
【0015】
本発明の吸湿発熱性生地は、前記混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないセルロース系繊維で構成される紡績糸(B)とを含む。例えばインナーとして好ましい編み物の場合、繰り返し単位である3本の糸を使用するうち1本を(a1)を30質量%含む混紡紡績糸(A)とし、2本を未処理コットン紡績糸(B)とすると、生地を100質量%としたとき、吸湿発熱加工したセルロース系繊維(a1)を10質量%含む生地が得られる。
【0016】
前記生地は編み物又は織物が好ましい。編み物及び織物はインナー衣料にするのに好適である。とくに編み物は伸縮性があり、柔軟でインナー衣料に好適である。生地を構成する糸3本に対して1~2本は前記混紡紡績糸であり、残りの糸は吸湿発熱加工していないコットン紡績糸であるのが好ましい。編み物は、丸編、緯編、経編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編等を含み、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織、及びこれらを組み合わせた織物等いずれの織組織でもよい。編地を作製するには種々の交編方法が用いられる。交編編地は、経編みでも緯編みでもよく、例えば、トリコット、ラッセル、丸編み等が挙げられる。また編組織は、ハーフ編み、逆ハーフ編み、ダブルアトラス編み、ダブルデンビー編み、及びこれらを組み合わせた編み物等いずれの編組織でもよい。織物組織としては、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織、またはこれらを組み合わせた組織がある。この中でも丸編みを含む緯編み生地、又は経編み生地が好ましい。
【0017】
前記生地の単位面積当たりの質量は80~300g/m2が好ましく、より好ましくは90~250g/m2であり、さらに好ましくは100~200g/m2である。前記の範囲であればインナー衣料として好適である。
【0018】
前記弾性糸は、ポリウレタン糸及び異なる収縮率を持つ少なくとも2種類のポリマーを複合紡糸したコンジュゲート糸から選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。ポリウレタン弾性糸は、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。前記コンジュゲート糸とは、異なる収縮率を持つ少なくとも2種類のポリマーを複合紡糸したコンジュゲート糸であり、原糸の段階からクリンプ(捲縮)を発現しているが、熱が加わることにより、さらに大きいクリンプ(捲縮)を発現する。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリトリメチレンテレフタレート(PTT)とのコンジュゲート糸(バイコンポーネント糸)が好ましい。このような潜在捲縮型ストレッチ糸として、例えば東レ・オペロンテックス社製、商品名"ライクラT400"、KBセーレン社製、商品名"エスパンディ"、ユニチカ社製、商品名"Z10"などがある。通常使用される弾性糸はポリウレタン糸である。
【0019】
弾性糸は、例えば緯編み生地、丸編み生地の場合、スパンデックス裸糸をループ糸の添え糸として入れることが好ましく、経編み生地の場合、スパンデックス裸糸を挿入組織、又は緯糸挿入によって入れる。いわゆるインナー衣料の場合は、通常丸編みが採用され、弾性糸特にポリウレタン弾性糸はループ糸の添え糸として用いられる。ポリウレタン弾性糸は、通常20~40decitexの糸が2.5倍程度に引き延ばされた状態で添え糸として挿入される。
【0020】
本発明の吸湿発熱性生地で縫製した衣料は、弾性糸が身体の周囲方向に配置されている。いわゆるワンウェイストレッチ生地が好ましい。身体の周囲方向とは、胴体の周囲方向、及び腕の周囲方向のことである。これにより着心地が良く、洗濯を繰り返しても型崩れしにくいインナー衣料となる。この衣料は、シャツ又はパンツが好ましい。本発明のインナー衣料はコットンが85質量%以上、好ましくは88質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上の主要繊維であり、肌にやさしいインナー衣料である。
【0021】
次に本発明の製造方法について、セルロース系繊維としてコットン(天然セルロース繊維)を使った場合を例示して説明する。紡績用コットンスライバーに対して、連続法の場合は窒素雰囲気下で電子線を照射し、コットン繊維表面にラジカルを発生させ、直後に連続的にエチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に接触させる。電子線照射直後にエチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に接触させるのは、電子線照射により発生したラジカルを減衰させないためである。ラジカルは時間とともに減衰する傾向が高いので、電子線照射直後にエチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に接触させるのが好ましい。また、電子線照射後、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に接触させることを連続的に行うのは、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に発生したラジカルに効果的に接触できるため、好ましい。さらに、連続的に行うことは、長尺物の紡績用スライバーを処理するのに好都合である。さらに、窒素雰囲気下で電子線を照射すると、発生したラジカルが失活しにくいので好ましい。
【0022】
エチレン性不飽和二重結合を含む化合物をコットン繊維の表面に接触させる方法は、浸漬法又はスプレ-法などいかなる方法でも良い。例えば、エチレン性不飽和二重結合を含む化合物を水溶液に調製して、スライバーを浸漬させるかまたは、スライバーにスプレーして、付与するのが好ましい。
【0023】
本発明においては、前記処理後の紡績用スライバーとそれ以外の未処理スライバーを混紡し精紡することにより、吸湿発熱機能を有する紡績糸が得られる。混紡は通常はダブリング工程の入る練条工程が好ましい。しかし、梳綿工程(カード)、粗紡工程、精紡工程でも可能であり、ウエブ、スライバー、フリース、粗紡糸を複数本引き揃え、所定倍率引き伸ばすことにより混紡できる。粗紡工程や精紡工程では、撚り掛けする際に構成繊維のマイグレーションにより混紡できる。さらには、前記処理後の紡績用スライバーを混打綿工程まで戻して所望の混紡割合にすることも可能である。
【0024】
前記吸湿発熱加工したコットンと吸湿発熱加工していないコットンを混紡した後は、常法にしたがい混紡紡績糸(A)とする。また、吸湿発熱加工していないコットンの紡績糸も常法にしたがい紡績糸(B)とする。前記混紡紡績糸(A)と紡績糸(B)と弾性糸(C)を所定量使用して吸湿発熱性生地とする。この生地は常法にしたがい晒、染色、柔軟仕上げなどの後加工することは任意である。
【0025】
図1は本発明の一実施形態におけるインナー衣料1の正面図である。このインナー衣料1は長袖シャツの例である。身体の周囲方向、すなわち胴体の周囲方向(矢印2)、及び腕の周囲方向(矢印3)には弾性糸が配置されている。
【実施例0026】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0027】
<吸湿発熱性>
(1)試料生地(編み物生地)を20cm×20cmに採取し、乾燥機において4時間処理し、シリカゲル入りのデシケーター内で一晩放置する。
(2)処理後の試料を二つ折りにし、その中心に熱電対温度センサーを取り付け、さらに二つ折りにし、試験体とする。
(3)恒温恒湿機を用いて試験体を20℃、40%RHの環境下で2時間処理した後、恒温恒湿機の設定を20℃、90%RHに変化させたときの温度変化を1分毎に15分間測定する。
(4)未処理コットンスライバーを使用した綿番手50番の糸からなる編み物生地(比較例1)を基準生地とし、測定15分間における基準生地の最高温度と、同じく実施例生地の最高温度との差を、最大温度差(℃)として算出する。
【0028】
(実施例1)
<スライバーの処理>
コットンスライバー(単位長さあたりの質量、単位ゲレン:25.0g/6yd(4.6g/m))に対し、エレクトロカーテン型電子線照射装置EC250/30/90L(岩崎電気社製)を使用して電子線を15kGyで4回照射した。電子線照射したスライバーを直後に0.4重量%の浸透剤を含有するアクリル酸(ナカライテスク株式会社製)の32質量%水溶液に浸漬し、マングルでスライバー重量に対して約100質量%のピックアップ率となるように絞った。次に、連続して100℃のスチームで10分間前記スライバーを加熱処理した。次に連続して未反応のアクリル酸を除去するため前記スライバーを水洗し、ついで80℃で乾燥して容器にコイリングして収納した。このようにして得られたスライバーを"処理コットン"と呼ぶ。この処理コットンにはアクリル酸が8質量%結合していた。
<紡績糸>
(1)処理コットンを含む混紡糸
前記処理コットンと未処理コットンとを混打綿工程で混紡し、綿番手50番の糸を紡績した。混紡糸中の処理コットンの割合は30重量%となるようにした。
(2)未処理コットン紡績糸
未処理コットンスライバーを使用して綿番手50番の糸を紡績した。
<編み物の編成>
前記処理コットンを含む混紡糸と、未処理コットン紡績糸と、弾性糸を使用し、未処理コットン紡績糸2本に対して処理コットンを含む混紡糸を1本の割合で供給糸とし、丸編機を使用して天竺編組織の編物を編成した。生地の処理コットンの割合は10質量%となる。
<晒、染色>
得られた編み物を常法にしたがい晒処理および染色処理を行った。
<縫製>
以上のようにして得られた編み物生地を使用して、インナー衣料の長袖シャツを縫製した。弾性糸は身体の周囲方向に配置して縫製した。得られたインナー衣料の長袖シャツを図1に示す。1着の重量は男性用Lサイズで145gであった。
【0029】
(実施例2)
<紡績糸>
実施例1で用いた処理コットンを含む紡績糸及び未処理コットン紡績糸を用いた。
<弾性糸>
市販のポリウレタン系弾性糸の22decitex品を用いた。
<編み物の編成>
前記処理コットンを含む混紡糸と、未処理コットン紡績糸と、弾性糸を使用し、未処理コットン紡績糸2本に対して処理コットンを含む混紡糸を1本の割合で供給糸とし、弾性糸は生地の7質量%となるように挿入した。なお、弾性糸は2.5倍に引き延ばされるようにテンションを加えた状態で、生地の7質量%となるよう、それぞれの糸に添え糸として挿入した。丸編機を使用して天竺編組織の編物を編成した。
<晒、染色>
得られた編み物を常法にしたがい晒処理および染色処理を行った。
<縫製>
以上のようにして得られた編み物生地を使用して、インナー衣料の長袖シャツを縫製した。弾性糸は身体の周囲方向に配置して縫製した。得られたインナー衣料の長袖シャツを図1に示す。1着の重量は男性用Lサイズで170gであった。
【0030】
(実施例3)
実施例1の処理コットンを含む混紡糸と、未処理コットン紡績糸と、弾性糸を使用し、未処理コットン紡績糸1本に対して処理コットンを含む混紡糸を2本の割合で供給糸とし、丸編機を使用して天竺編組織の編物を編成した。生地の処理コットンの割合は20質量%となる。
【0031】
(比較例1)
処理コットンを使用しない以外は実施例1と同様に実施した。
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から明らかなとおり、実施例1-3は吸湿発熱性が高かった。また着用試験をしたところ、実施例2及び実施例3は、体への密着性が良く、さらに着心地の良さと共に、肌にやさしいシャツであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の吸湿発熱性生地及びこれを用いた吸湿発熱性衣料は、シャツ、パンツなどのインナー衣料に好適である。また、肌にやさしいことからTシャツなどにも好適である。
【符号の説明】
【0035】
1 インナー衣料
2 胴体の周囲方向
3 腕の周囲方向
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿発熱性生地の製造方法であって、
吸湿発熱加工したコットン繊維(a1)と吸湿発熱加工していないコットン繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないコットン繊維で構成される紡績糸(B)とを含む吸湿発熱性生地の製造方法であり、
前記吸湿発熱性生地は編物であり、
前記吸湿発熱加工したコットン繊維(a1)は、エチレン性不飽和二重結合を含み吸湿発熱性を有する官能基をもつ化合物がグラフト結合されたコットン繊維であり、
前記混紡紡績糸(A)と前記紡績糸(B)の糸本数の割合を、糸3本に対して1~2本を前記混紡紡績糸(A)とし、残りの糸を前記紡績糸(B)として、前記編物を編成し、
前記吸湿発熱性生地を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したコットン繊維(a1)は5~40質量%であり、
前記混紡紡績糸(A)において、前記吸湿発熱加工したコットン繊維(a1)は10~45質量%であり、前記吸湿発熱加工していないコットン繊維(a2)は55~90質量%である、吸湿発熱性生地の製造方法。
【請求項2】
吸湿発熱性生地の製造方法であって、
吸湿発熱加工したコットン繊維(a1)と吸湿発熱加工していないコットン繊維(a2)を含む混紡紡績糸(A)と、吸湿発熱加工していないコットン繊維で構成される紡績糸(B)とを含む吸湿発熱性生地の製造方法であり、
前記吸湿発熱性生地は編物であり、
前記吸湿発熱加工したコットン繊維(a1)は、エチレン性不飽和二重結合を含み吸湿発熱性を有する官能基をもつ化合物がグラフト結合されたコットン繊維であり、
前記混紡紡績糸(A)と前記紡績糸(B)の糸本数の割合を1:2~2:1として、前記編物を編成し、
前記吸湿発熱性生地を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したコットン繊維(a1)は5~40質量%であり、
前記混紡紡績糸(A)において、前記吸湿発熱加工したコットン繊維(a1)は10~45質量%であり、前記吸湿発熱加工していないコットン繊維(a2)は55~90質量%である、吸湿発熱性生地の製造方法。
【請求項3】
前記吸湿発熱性生地を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したコットン繊維(a1)は5~40質量%であり、残余は前記吸湿発熱加工していないコットン繊維(a2)である、請求項1または2に記載の吸湿発熱性生地の製造方法。
【請求項4】
前記吸湿発熱性生地は、弾性糸を含み、
前記吸湿発熱性生地を100質量%としたとき、前記吸湿発熱加工したコットン繊維(a1)は5~40質量%であり、残余は前記吸湿発熱加工していないコットン繊維(a2)と前記弾性糸であり、前記混紡紡績糸(A)と前記紡績糸(B)の合計量は85~97質量%であり、前記弾性糸は3~15質量%である、請求項1または2に記載の吸湿発熱性生地の製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、コットン等のセルロース系繊維を主要繊維糸とする吸湿発熱性生地の製造方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
(実施例3)
実施例1の処理コットンを含む混紡糸と、未処理コットン紡績糸と、弾性糸を使用し、未処理コットン紡績糸1本に対して処理コットンを含む混紡糸を2本の割合で供給糸とし、丸編機を使用して天竺編組織の編物を編成した。生地の処理コットンの割合は19質量%となる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
【表1】