(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159999
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20241031BHJP
B28B 23/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B28B1/30
B28B23/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151097
(22)【出願日】2024-09-03
(62)【分割の表示】P 2020100626の分割
【原出願日】2020-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】深津 志向
(72)【発明者】
【氏名】梶田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】西脇 智哉
(72)【発明者】
【氏名】宮田 賢優
(72)【発明者】
【氏名】清水 耕史
(57)【要約】
【課題】 積層型3Dプリンターの材料吐出ノズルから吐出した建設材料を積層して建設物を造成する際に、積層構造の層間補強を適切に行うことにより、品質の高い建設物を造成する。
【解決手段】 積層型3Dプリンター10の材料吐出ノズル20から吐出した建設材料を積層して建設物を造成する方法であって、材料吐出ノズル20から建設材料を吐出して積層構造90を形成する積層構造形成工程と、上下に積層された建設材料の層境界を貫通して補強材80を挿入するとともに、当該補強材80の頭部が最上層に位置する建設材料から突出せずに建設材料表面よりも建設材料内部に位置するように、当該補強材80を建設材料内に挿入する補強材挿入工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層型3Dプリンターの材料吐出ノズルから吐出した建設材料を積層して建設物を造成するための方法であって、
材料吐出ノズルから建設材料を吐出して積層構造を形成する積層構造形成工程と、
上下に積層された建設材料の層境界を貫通して補強材を挿入するとともに、当該補強材の頭部が最上層に位置する建設材料から突出せずに建設材料表面よりも建設材料内部に位置するように、当該補強材を建設材料内に挿入する補強材挿入工程と、
を含むことを特徴とする積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法。
【請求項2】
前記補強材挿入工程は、複数層からなる積層構造が形成された後に、当該複数層からなる積層構造に対して前記補強材を挿入することを特徴とする請求項1に記載の積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法。
【請求項3】
前記補強材挿入工程では、前記建設材料に対して前記補強材を挿入する際に、各補強材の挿入角度を一定に保つことを特徴とする請求項1または2に記載の積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法。
【請求項4】
前記補強材挿入工程では、上層に位置する積層構造単位と、当該上層に位置する積層構造単位の直下層に位置する積層構造単位とにおいて、挿入する補強材の位置が水平方向で相互に異なることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法。
【請求項5】
前記補強材は、横断面が一様であり、かつ直線上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建設分野において国内外を問わず、3Dプリント技術を用いて構造物を積層しながら造形する構築方法である積層型3Dプリンターが開発されている。積層型3Dプリンターの材料は、基本的にセメント系材料を用い、ミキサーで練り上げたモルタルをポンプ圧送し、3次元造形装置に供給している。積層型3Dプリンターを用いた施工は、型枠なしで構造体を積層造形することができ、省人化、デザインの自由度、安全性などの点で従来のコンクリート施工に比べて高い優位性をもつものと期待される。
【0003】
積層型3Dプリンターで造形したコンクリート構造物は、セメント系材料を積層しながら造形するため、層間にコールドジョイントのような不連続層が生じる。この不連続層の存在は、一般的なコンクリート構造物に比べ、層間の脆弱性に起因する強度低下を引き起こす可能性がある。従来の技術では、このような課題に対して、金属性の繊維を積層方向に挿入することで層間の力学的強度補強を行っている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、層間強化3D印刷コンクリート構造体およびその構築方法に関するものである。この構築方法は、以下の工程を含んでいる。印刷材料の第1層を印刷する工程。水平バーの複数のセクションに対して、印刷された印刷材料の最初の層の第1方向に沿ってセクションごとに水平バーを配置する工程。水平バーの配置の進行とともに、印刷材料の第2層を第1方向に沿って徐々に印刷し、事前に設定された短いバーの注入位置に印刷する前に、短いバーを短いバーの注入位置に注入する工程。当該工程では、水平バーは印刷材料の第1層に注入され、短いバーの上部は印刷材料の第1層の上面から露出する。この構築方法によれば、水平バーを3D印刷材料の層間に配置し、短いバーを注入することにより、印刷材料の層間の接着特性を効果的に強化することができるとしている。
【0005】
特許文献2に記載された技術は、ラメラ構造のコンクリート材料に対して、複数のスチール繊維を垂直に挿入するようにしたものである。
【0006】
特許文献3に記載された技術は、硬化性材料からコンポーネントを製造する方法に関するものである。このコンポーネント製造方法は、以下の工程を含んでいる。3D印刷プロセスにより、材料の少なくとも1つの層を印刷する工程。複数の同様の補強要素を層内に導入する工程。そして、コンポーネントが完了するまで上述した2つの工程を周期的に繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願公開第109680954号
【特許文献2】中国実用新案出願公開第206233586号
【特許文献3】国際公開第2019/092162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献を含めて従来の技術では、3Dプリント技術を用いて構造物を積層しながら造形する際に、構造物を補強するための繊維をどのようにして挿入するかが開示されていない。例えば、積層方向の繊維の出方によっては、積層するノズルの動きを阻害する可能性がある。すなわち、既に形成した積層構造から繊維の頭部が突出していると、次いで積層構造を形成する際に繊維が邪魔になり、積層構造に損傷が生じたり、積層構造を形成できなかったり、繊維が抜け落ちたりする。
【0009】
なお、従来の技術文献では、層間部分が力学的弱点となる前提的な証明が不十分である。さらに、層間に繊維がある場合と、層間に繊維がない場合の強度比較が開示されていない。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、積層型3Dプリンターの材料吐出ノズルから吐出した建設材料を積層して建設物を造成する際に、積層構造の層間補強を適切に行うことにより、品質の高い建設物を造成することが可能な積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法は、積層型3Dプリンターの材料吐出ノズルから吐出した建設材料を積層して建設物を造成するための方法であって、積層構造形成工程と補強材挿入工程とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
積層構造形成工程は、材料吐出ノズルから建設材料を吐出して積層構造を形成する工程である。補強材挿入工程は、上下に積層された建設材料の層境界を貫通して補強材を挿入するとともに、当該補強材の頭部が最上層に位置する建設材料から突出せずに建設材料表面よりも建設材料内部に位置するように、当該補強材を建設材料内に挿入する工程である。
【0013】
また、補強材挿入工程では、複数層からなる積層構造が形成された後に、当該複数層からなる積層構造に対して補強材を挿入することが可能である。
【0014】
また、補強材挿入工程では、建設材料に対して補強材を挿入する際に、各補強材の挿入角度を一定に保つことが好ましい。
【0015】
また、補強材挿入工程では、上層に位置する積層構造単位と、当該上層に位置する積層構造単位の直下層に位置する積層構造単位とにおいて、挿入する補強材の位置が水平方向で相互に異なることが好ましい。
【0016】
また、補強材は、横断面が一様(横断面の形状、太さが長さ方向で変化しない状態)であり、かつ直線上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法によれば、材料吐出ノズルから建設材料を吐出して積層構造を形成した後に、上下に積層された建設材料の層境界を貫通して補強材を挿入している。
【0018】
このように、積層型3Dプリンターの材料吐出ノズルから吐出した建設材料を積層して建設物を造成する際に、積層構造の層間補強を適切に行うことにより、品質の高い建設物を造成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る積層型3Dプリンターの模式図。
【
図2】本発明の実施形態に係る積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法のフローチャート。
【
図5】曲げ試験結果(補強材有無の比較)を示す説明図。
【
図6】曲げ試験結果(打ち込みと積層との比較)を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法(以下、層間補強方法と略記することがある)を説明する。
図1~6は本発明の実施形態に係る積層型3Dプリンターにおける積層方向の層間補強方法を説明するもので、
図1は積層型3Dプリンターの模式図、
図2及び
図3は層間補強方法のフローチャート、
図4は力学試験用試験体の模式図、
図5は曲げ試験結果(補強材有無の比較)を示す説明図、
図6は曲げ試験結果(打ち込みと積層との比較)を示す説明図である。
【0021】
<層間補強方法の概要>
本発明の実施形態に係る層間補強方法は、
図1に示すように、積層型3Dプリンター10の材料吐出ノズル20から吐出した建設材料(例えば、セメント系材料)を積層して建設物を造成するための方法に関するものである。この層間補強方法は、
図2に示すように、積層構造形成工程(S10)と補強材挿入工程(S20)とを含んでいる。そして、積層構造形成工程(S10)と補強材挿入工程(S20)とを繰り返して実施することにより建設物を造成するようになっている。
【0022】
<層間補強方法に使用する装置>
本発明の実施形態に係る層間補強方法に用いる積層型3Dプリンター10は、
図1に示すように、建設材料を吐出する材料吐出ノズル20と、材料吐出ノズル20を所望の位置に移動させるロボットアーム30と、材料吐出ノズル20に建設材料を供給する材料供給ポンプ40と、各装置の駆動制御を行う制御装置50とを主要な構成要素とする。なお、制御装置50は各装置を総合的に制御する装置であってもよいし、ロボットアーム30、材料吐出ノズル20、材料供給ポンプ40等を個々に制御する装置であってもよい。さらに、本実施形態の積層型3Dプリンター10は、建設材料により形成した積層構造90の層間に補強材80を挿入する補強材挿入装置70を備えている。
【0023】
なお、
図1に示す積層型3Dプリンター10は、構成機器を移動台車60上に搭載した装置としているが、本発明の実施形態に係る層間補強方法に用いる積層型3Dプリンター10は、造成する建設物の規模や形状等、種々の要素に合わせて適宜変更することができる。
【0024】
<建設材料>
建設材料は、3Dプリンターを用いて建設物を造成するための材料であり、例えば、セメント系材料や合成樹脂材料等のように、材料吐出ノズル20から吐出させて積層することにより建設物を造成することができれば、どのような材料であってもよい。本実施形態では、セメント系材料を用いている。本実施形態では、材料吐出ノズル20から吐出した建設材料により積層構造90を形成し、積層構造90を集合して建設物を造成している。
【0025】
<補強材>
補強材80は、建設材料により形成した積層構造90の層間に挿入して層間補強を行うための材料であり、金属製あるいは炭素系(CFRP)等のように、剛性を有する繊維を用いる。本実施形態で補強材80として用いる繊維は、積層材料の層境界を貫いて真っ直ぐに挿入するために、横断面が一様であり、かつ直線状であることが好ましい。したがって、端部がフック形状のものや、端部にアンカーを形成したものは適さない。なお、横断面が一様とは、横断面の形状や太さが長さ方向で変化しない状態のことであり、ほぼ同様の太さを有する円柱状や角柱状の繊維を意味する。
【0026】
また、補強材80として使用する繊維は、積層構造90に挿入した際に、セメント系材料との空隙を極力減らすよう、積層構造90に対して層境界を貫いて垂直に挿入する。なお、積層構造90に対して補強材80を挿入する際に、補強材80が層間部分を垂直に貫くように挿入することが好ましいが、積層構造90と補強材80との間に隙間ができなければ、補強材80が若干傾斜することは許容される。また、補強材80が有する剛性の程度は、積層構造90に対して真っ直ぐに挿入できればよく、弾性及び可撓性を有していてもよい。
【0027】
<補強材挿入装置>
補強材挿入装置70は、例えば、田植え機のような装置であり、積層構造90に対して補強材80を真っ直ぐに挿入できるようになっている。すなわち、補強材装入装置70は、積層構造90に対して補強材80を真っ直ぐに挿入できればどのような装置であってもよく、造成する建設物の規模や形状等、種々の要素に合わせて適宜変更することができる。なお、
図1に示す補強材挿入装置70はロボットアーム30に取り付けてあり、ロボットアーム30と一体に移動するようになっているが、補強材挿入装置70とロボットアーム30とを別体に移動する装置としてもよい。
図1に示す補強材挿入装置70は、積層構造90を構成するセメント系材料(建設材料)を吐出した直後に、補強材80を積層構造90に挿入するようになっている。なお、積層構造90を構成するセメント系材料(建設材料)を吐出した直後とは、セメント系材料(建設材料)が硬化してしまい、補強材80を積層構造90に挿入できなくなる前の状態のことである。
【0028】
<積層構造形成工程>
積層構造形成工程は、材料吐出ノズル20から建設材料を吐出して積層構造90を形成する工程である。この積層構造形成工程では、積層型3Dプリンター10を用いて、制御装置50の制御により、ロボットアーム30を動作させるとともに、材料吐出ノズル20からセメント系材料(建設材料)を吐出させながら、所望形状の積層構造90を製造する。この際、積層する建設材料は複数層とするが、作製する積層構造90の形状や建設材料の種類等に応じて積層数は適宜変更して実施することができる。
【0029】
<補強材挿入工程>
補強材挿入工程は、
図3に示すように、上下に積層された建設材料の層境界を貫通して補強材80を挿入するとともに、当該補強材80の頭部が最上層に位置する建設材料から突出せずに建設材料表面よりも建設材料内部に位置するように、当該補強材80を建設材料内に挿入する工程である。なお、
図3に示すフローチャートは、補強材挿入工程の一例を示すもので、本発明に係る層間補強方法では、必ずしも、すべての要件を満たすように工程を実施する必要はない。この補強材挿入工程では、補強材挿入装置70を用いて複数層からなる積層構造90が作製されたら(S11)、当該複数の積層構造90に存在する層間に補強材80を挿入する。
【0030】
また、補強材挿入工程では、建設材料に対して補強材80を挿入する際に、各補強材80の挿入角度を一定に保つことが好ましい(S12)。各補強材80の挿入角度を一定に保つとは、積層構造90の層間に挿入する複数の補強材80の挿入角度が互いに同一であることをいう。
【0031】
また、補強材挿入工程では、上層に位置する積層構造90の単位と、当該上層に位置する積層構造90の単位の直下層に位置する積層構造90の単位とにおいて、挿入する補強材80の位置が水平方向で相互に異なることが好ましい(S13)。上述したように、積層構造90に対して補強材80を挿入する角度は、補強材80が層間部分を垂直に貫くように挿入することが好ましいが、積層構造90と補強材80との間に隙間ができなければ、補強材80が積層構造90に対して若干傾斜していてもよい。
【0032】
積層構造90に対する補強材80の挿入は、積層型3Dプリンター10の材料吐出ノズル20からセメント系材料を吐出して積層構造90を造形するとほぼ同時に行う。すなわち、積層型3Dプリンター10にアタッチメントとして取り付けられた補強材挿入装置70を用いて、造形された積層構造90の所定の位置に補強材80を直ちに挿入することで、セメント系材料が固化する前に繊維を挿入することができる。これにより、補強材80の層間において補強材80の挿入位置にズレが生じ難い。また、積層構造90の造形に対して、後追いで補強材80を挿入するため、材料吐出ノズル20の動作を阻害しない。
【0033】
積層構造90に対して補強材80を挿入する際には、次層(上層)の積層構造90を造形する時に材料吐出ノズル20の動作を阻害しないように、補強材80の頭部が最上層に位置する建設材料から突出せずに建設材料表面よりも建設材料内部に位置するように、当該補強材80を建設材料内に挿入する。また、補強材挿入装置70は、材料吐出ノズル20からセメント系材料を吐出した後に、直ちに補強材80を挿入できる形状とする。例えば、ローラーのような形状で田植えをするように補強材80を挿入する方法を採用することができる。また、補強材挿入装置70は、積層型3Dプリンター10を後追いするような配置とする必要がある。そして、補強材挿入装置70は、材料吐出ノズル20の移動速度に合わせて、補強材80の挿入スピードを制御する。
【0034】
<層間補強方法の評価>
次に、本発明の層間補強方法を用いて作製した積層構造90(建設物)の強度評価について説明する。積層構造90(建設物)の強度評価においては、
図4に示すように、寸法が40mm×40mm×160mmの試験体を作製した。また、補強材80として、直径が0.55mm、0.7mm,1.2mmの鋼繊維を用いた。そして、試験体の内部に各直径を有する鋼繊維を挿入した試験体(それぞれ、S55、S70、S120と称する)と、鋼繊維を挿入しない試験体(N0と称する)とを用意し、3点曲げ試験を行った。各試験体は、門型3Dプリンターにて積層したセメント系材料の層間に、鋼繊維を挿入することで作製した。
【0035】
試験結果を
図5に示す。
図5に示すように、鋼繊維を挿入したいずれの試験体も、鋼繊維を挿入しない試験体と比較して強度が増加していることから、鋼繊維を挿入することにより層間の強度が増加していることが解る。
【0036】
図6に、積層型3Dプリンター10で作製した積層試験体と、型枠に打ち込んだ打込み試験体の強度比較を示す。両者とも、
図5に示す試験体と同様の寸法とし、繊維は混入していない。
図6に示すように、積層試験体の強度は、打込み試験体よりも約36%低下した。これは層間が力学的弱点になることを示している。
【0037】
上述した力学的データは、いずれも実験に用いた試験体についてのものである。しかし、機械(3Dプリンターを構成する各機器)、建設材料、種々の条件を変更した場合においても、このような力学データの傾向は表れるものと考えるのが妥当である。
【符号の説明】
【0038】
10 積層型3Dプリンター
20 材料吐出ノズル
30 ロボットアーム
40 材料供給ポンプ
50 制御装置
60 移動台車
70 補強材挿入装置
80 補強材
90 積層構造