(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160007
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】スピーカの磁気回路、スピーカ、及び移動体
(51)【国際特許分類】
H04R 9/02 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H04R9/02 102
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151246
(22)【出願日】2024-09-03
(62)【分割の表示】P 2022194586の分割
【原出願日】2018-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 良浩
(72)【発明者】
【氏名】古頭 晶彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 博之
(57)【要約】
【課題】ボイスコイルの振動に対する逆向き磁束の影響を抑える。
【解決手段】スピーカの磁気回路30が、上面31bおよび下面31aを有するセンタープレート31と、センタープレート31の下面31aに配置された第1磁石32と、センタープレート31の上面31bに、第1磁石32と磁力が反発する向きで配置された第2磁石33と、第2磁石33の上面33a側に配置されたトッププレート34と、第1磁石32の下面32a側に配置された内周部351、及び、内周部351の外縁から第2磁石33よりも高い位置まで延びた外筒部352、を有して形成されたヨーク35と、を備えたことを特徴としている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有するセンタープレートと、
前記センタープレートの下面に配置された第1磁石と、
前記センタープレートの上面に、前記第1磁石と磁力が反発する向きで配置された第2磁石と、
前記第2磁石の上面側に配置されたトッププレートと、
前記第1磁石の下面側に配置された内周部、及び、前記内周部の外縁から前記第2磁石よりも高い位置まで延びた外筒部、を有して形成されたヨークと、
を備えたことを特徴とするスピーカの磁気回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカの磁気回路、そのような磁気回路を備えたスピーカ、及び、そのようなスピーカが搭載された移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スピーカの磁気回路として、磁気的に互いに反発するように配置された2つの磁石を備えることで磁石からの磁束を効率よく利用できる磁気回路が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の磁気回路では、センタープレートを上下に挟んで2つの磁石が配置される。このとき、2つの磁石が磁気的に互いに反発するように配置されているので、センタープレートの近傍では、上記の2つの磁石からの磁束が互いに向きが揃った状態で集中する。このように集中した磁束の中にボイスコイルを配置することで、ボイスコイルの振動に、2つの磁石の磁束を効率よく利用できることとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、各磁石の磁束は、センタープレート側と、その反対側と、で互いに逆向きとなる。センタープレート側の磁束は、上記のようにセンタープレートの近傍に配置されたボイスコイルの振動に利用される。その一方、各磁石から見てセンタープレートと反対側の磁束は、ボイスコイルの振動に寄与する磁束とは向きが逆の逆向き磁束となって、ボイスコイルの振動に影響を与える場合がある。
【0005】
したがって、本発明の課題は、ボイスコイルの振動に対する逆向き磁束の影響を抑えることができるスピーカの磁気回路、そのような磁気回路を備えたスピーカ、及び、そのようなスピーカが搭載された移動体を提供すること等が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のスピーカの磁気回路は、上面および下面を有するセンタープレートと、前記センタープレートの下面に配置された第1磁石と、前記センタープレートの上面に、前記第1磁石と磁力が反発する向きで配置された第2磁石と、前記第2磁石の上面側に配置されたトッププレートと、前記第1磁石の下面側に配置された内周部、及び、前記内周部の外縁から前記第2磁石よりも高い位置まで延びた外筒部、を有して形成されたヨークと、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施例に係る移動体を示す模式図である。
【
図2】
図1に示されているスピーカの内部構造を示す模式的な断面図である。
【
図3】
図1に断面が示されている磁気回路の外観斜視図である。
【
図4】
図3に示されている磁気回路を、
図1にも示されている断面が見えるようにカットした状態で示すカット図である。
【
図5】
図2~
図4に示されている第1実施例の磁気回路に対する比較例の磁気回路を示す図である。
【
図6】本発明の第2実施例に係る磁気回路を示す図である。
【
図7】本発明の第3実施例に係る磁気回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係るスピーカの磁気回路は、センタープレートと、第1磁石と、第2磁石と、トッププレートと、ヨークと、を備える。センタープレートは、上面および下面を有する。第1磁石は、センタープレートの下面に配置される。第2磁石は、センタープレートの上面に、第1磁石と磁力が反発する向きで配置される。トッププレートは、第2磁石の上面側に配置される。ヨークは、第1磁石の下面側に配置された内周部、及び、内周部の外縁から第2磁石よりも高い位置まで延びた外筒部、を有して形成される。
【0009】
本実施形態のスピーカの磁気回路では、まず、第1磁石の磁束のうち、センタープレートとは反対側の磁束は略ヨークの内部を通過する。この磁束の少なくとも一部が、第1磁石の磁束においてボイスコイルの振動に寄与する磁束とは向きが逆の逆向き磁束となる。つまり、第1磁石の磁束における逆向き磁束については、略ヨークの内部を通過することからボイスコイルの振動に与える影響は抑えられる。他方、第2磁石の磁束における逆向き磁束は、ヨークの外筒部の上端部と、第2磁石の上面側に配置されるトッププレートと、を経た経路を辿る。このとき、ヨークの外筒部が第2磁石よりも高い位置まで延びているので、第2磁石の磁束における逆向き磁束は、センタープレートの近傍から上方へと十分に離れた経路を辿ることとなる。これにより、この逆向き磁束についても、ボイスコイルの振動に与える影響が抑えられる。このように、本実施形態のスピーカの磁気回路によれば、ボイスコイルの振動に対する逆向き磁束の影響を抑えることができる。
【0010】
ここで、本実施形態では、上記の外筒部が、第1磁石、センタープレート、第2磁石、及びトッププレート、それぞれとの間にギャップを形成している。
【0011】
これにより、ボイスコイルは、センタープレートとヨークの外筒部とのギャップにおいて、センタープレートの近傍の磁束を良好に受けて振動することができる。そして、その振動を、トッププレートと外筒部とのギャップを介して、スピーカの振動板に良好に伝えることができる。
【0012】
また、本実施形態では、上記のギャップは、少なくともトッププレートとの間については、当該トッププレートの周方向について部分的に形成されている。そして、このギャップ以外の箇所については、ヨークがトッププレートに繋がっている。
【0013】
ヨークがトッププレートに繋がっている箇所は、第2磁石の磁束における上述した逆向き磁束の良好な通路となる。これにより、この逆向き磁束をセンタープレートの近傍から一層離すことができるので、ボイスコイルの振動への影響を更に抑えることができる。
【0014】
また、本発明の実施形態に係るスピーカは、振動板と、この振動板を振動させるボイスコイルと、このボイスコイルを動作させるための上述の磁気回路と、を備える。
【0015】
本実施形態のスピーカによれば、ボイスコイルを動作させるために、上述の磁気回路を採用しているので、ボイスコイルの振動に対する逆向き磁束の影響を抑えることができる。
【0016】
また、本発明の実施形態に係る移動体は、移動体本体と、この移動体本体に搭載された、上述のスピーカと、を備える。
【0017】
本実施形態の移動体によれば、ボイスコイルの振動に対する逆向き磁束の影響を抑えることができる上述のスピーカが搭載されているので、移動体本体の内部における良好な音声環境を得ることができる。
【実施例0018】
以下、本発明の実施例について図を参照して具体的に説明する。まず、第1実施例について説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施例に係る移動体を示す模式図である。
【0020】
本実施例における移動体1は乗用車であり、移動体本体10の後部座席の後方にスピーカ20が搭載されている。
【0021】
図2は、
図1に示されているスピーカの内部構造を示す模式的な断面図である。
【0022】
本実施例におけるスピーカ20は、フレーム21、振動板22、センターキャップ23、ダンパー24、ボイスコイル25、ボイスコイルボビン26、及び磁気回路30、を備える。振動板22は、その中央に貫通孔22aが設けられ、内周221がボイスコイルボビン26の上端部261に固定され、外周222がフレーム21の上端部211に固定されている。また、この振動板22の貫通孔22aが、ドーム状のセンターキャップ23で塞がれている。ダンパー24は、同心円状の波形に形成された円環状物であり、その内周241が、振動板22の内周221と共にボイスコイルボビン26の上端部261に固定されている。また、ダンパー24の外周242は、フレーム21における中間部212に固定されている。
【0023】
ボイスコイルボビン26は、詳細については後述する磁気回路30の内部に、上記の上端部261を上方へと突出させた状態で収容されている。そして、その磁気回路30の内部に位置する下端部262に、ボイスコイル25が巻かれている。ボイスコイル25には、音声信号回路から出力音声に応じた信号電流が供給される。磁気回路30の内部における磁束中に位置するボイスコイル25にこの信号電流が流れることで、ボイスコイル25にローレンツ力が働き、その信号電流の波形に応じてボイスコイル25が振動する。この振動は、ボイスコイルボビン26を介して振動板22に伝わり、振動板22が振動する。これにより、スピーカ20から音声が発生することとなる。
【0024】
図3は、
図1に断面が示されている磁気回路の外観斜視図であり、
図4は、
図3に示されている磁気回路を、
図1にも示されている断面が見えるようにカットした状態で示すカット図である。これらの
図3及び
図4には、磁気回路30とともに、ボイスコイル25及びボイスコイルボビン26が点線で示されている。
【0025】
本実施例における磁気回路30は、センタープレート31、第1磁石32、第2磁石33、トッププレート34、及びヨーク35、を備えている。
【0026】
センタープレート31は、下面31aおよび上面31bを有し、各々が磁性材料で円板状に形成された下面31a側の第1プレート311と上面31b側の第2プレート312とが互いに重ね合わされた二重プレートとなっている。
【0027】
第1磁石32は、センタープレート31の下面31aに重ねられて配置された円板状の磁石である。
【0028】
第2磁石33は、センタープレート31の上面31bに重ねられて配置された円板状の磁石である。このとき、第2磁石33は、第1磁石32と磁力が反発する向き、即ち、第1磁石32におけるセンタープレート31側の極性と、第2磁石33におけるセンタープレート31側の極性と、が互いに同極性となる向きで配置されている。
【0029】
トッププレート34は、磁性材料で中央部が凹んだ円板状に形成され、第2磁石33の上面33a側に配置されている。トッププレート34は、中央の凹んだ部分における第2磁石33側の面が第2磁石33の上面33aに重ねられている。
【0030】
ヨーク35は、磁性材料で内周部351と外筒部352とを有した形状に形成されている。内周部351は、上記のトッププレート34と同様に、中央部が凹んだ円板状に形成され、第1磁石32の下面32a側に配置されている。内周部351は、中央の凹んだ部分における第1磁石32側の面が第1磁石32の下面32aに重ねられている。外筒部352は、内周部351の外縁から第2磁石33よりも高い位置まで、具体的には、トッププレート34の外縁まで円筒状に延びている。
【0031】
本実施例では、ヨーク35の外筒部352が、下側の第1円筒部分352aと、上側の第2円筒部分352bと、が上下方向に積み重ねられて1つの円筒状に形成されている。第1円筒部分352aは、内周部351の外縁からセンタープレート31における第1プレート311と第2プレート312との境界と略同じ高さまで延びている。第2円筒部分352bは、この境界と略同じ高さからトッププレート34の外縁まで延びている。
【0032】
そして、外筒部352のうちの第1円筒部分352aと内周部351とが一体成形されて、磁気回路30における下半分を占める第1外殻部30aとなっている。また、外筒部352のうちの第2円筒部分352bとトッププレート34とが一体成形されて、磁気回路30における上半分を占める第2外殻部30bとなっている。第1外殻部30aと第2外殻部30bとは、センタープレート31における第1プレート311と第2プレート312との境界を挟んで上下対称な形状となっている。
【0033】
ここで、本実施例では、ヨーク35の外筒部352は、第1磁石32、センタープレート31、及び第2磁石33、の間に、これらの部位の周方向について全周に亘って巡るように全周ギャップGP11を形成している。また、外筒部352は、トッププレート34との間については、トッププレート34の周方向について断続的に部分ギャップGP12を形成している。部分ギャップGP12は、トッププレート34の周方向に一定の間隔を開けて4箇所に円弧状のスリットとして設けられている。
【0034】
全周ギャップGP11には、ボイスコイルボビン26においてボイスコイル25が巻かれた下端部262を含む本体円筒部263が配置される。この本体円筒部263は、下端部262のボイスコイル25が、センタープレート31の外縁とヨーク35の外筒部352との間に位置するように配置される。
【0035】
本体円筒部263の上端縁からは4つの舌片部264が上方に延出しており、これら4つの舌片部264が上記の4箇所の部分ギャップGP12を通って第2外殻部30bの外へと突出している。そして、このようなボイスコイルボビン26の上端部261、即ち、4つの舌片部264の上端部261に、
図1に示されている振動板22の内周221及びダンパー24の内周241が固定されている。
【0036】
図5は、
図2~
図4に示されている第1実施例の磁気回路に対する比較例の磁気回路を示す図である。
【0037】
この比較例の磁気回路50は、センタープレート51、第1磁石52、第2磁石53、及びヨーク54、を備えている。
【0038】
センタープレート51は、第1実施例におけるセンタープレート31と同様の二重プレートであり、その下面51aに第1磁石52が重ねられて配置され、上面51bに第2磁石53が重ねられて配置されている。第2磁石53は、第1磁石52と磁力が反発する向きで配置される。ヨーク54は、第1磁石52に重ねられて配置される内周部541と、その外縁から上方へと延びた外筒部542と、を有している。ここで、比較例の磁気回路50では、ヨーク54の外筒部542は、センタープレート51の上面51bと略同じ高さまで延びたものとなっている。
【0039】
ヨーク54の外筒部542は、第1磁石52及びセンタープレート51の間に、これらの部位の周方向について全周に亘って巡るように全周ギャップGP51を形成している。第2磁石53は、この外筒部542の上端縁から更に上方に突出して配置されている。
【0040】
そして、このような比較例の磁気回路50において、センタープレート51の外縁とヨーク54の外筒部542との間にボイスコイル61が位置するようにボイスコイルボビン62が配置される。
【0041】
比較例の磁気回路50では、第1磁石52の第1磁束M51と第2磁石53の第2磁束M52とは、ボイスコイル61が位置するセンタープレート51の外縁近傍では、互いに向きが略揃った状態で集中し、ボイスコイル61の振動に利用される。その後、第1磁束M51は、外筒部542と内周部541というヨーク54の内部を通り、途中でセンタープレート51の外縁近傍とは逆向きになりつつ第1磁石52に至る。他方、第2磁束M52は、外筒部542の上端縁から漏れ出て第2磁石53に至る。このときの磁束は、ボイスコイル61の近くを通る上に、センタープレート51の外縁近傍とは逆向きに進む逆向き磁束M52aとなる。このため、比較例の磁気回路50では、このような逆向き磁束M52aが、ボイスコイル61の振動に影響を与える場合がある。
【0042】
尚、ここでは、第1磁石52及び第2磁石53の磁束M51,M52が、
図5に示すようにセンタープレート51及びヨーク54の順で通過して第1磁石52及び第2磁石53に帰還する場合について説明した。しかしながら、逆向き磁束がボイスコイル61の振動に影響を与える事態は、第1磁石52及び第2磁石53の極性配置が逆向きになった次のような場合においても同様に生じ得る。即ち、第1磁石52及び第2磁石53の磁束が、
図5とは逆にヨーク54及びセンタープレート51の順で通過して第1磁石52及び第2磁石53に帰還する場合にも同様に生じ得る。
【0043】
一方、
図2~
図4に示されている第1実施例の磁気回路30では、第1磁石32の第1磁束M31及び第2磁石33の第2磁束M32は
図4に示されているような経路を辿る。
【0044】
まず、第1磁束M31は、センタープレート31の内部及びその近傍を通過した後は、ヨーク35の外筒部352及び内周部351を通過して第1磁石32へと至る。つまり、第1磁束M31は、センタープレート31の近傍以外では、略ヨーク35の内部を通過する。このため、第1磁束M31のうちセンタープレート31の近傍とは逆向きに進む逆向き磁束M31aがボイスコイル25の振動に与える影響は抑えられる。この点は、上述した比較例の磁気回路50と同様である。
【0045】
他方、第2磁束M32は、センタープレート31の近傍からヨーク35に至り、ヨーク35の外筒部352の上端部からトッププレート34へと通過して第2磁石33へと至る。このとき、ヨーク35の外筒部352が第2磁石33よりも高い位置まで延びている。その結果、外筒部352の上端部からトッププレート34へと、センタープレート31の近傍とは逆向きに進む逆向き磁束M32aが辿る経路は、センタープレート31の近傍から上方へと十分に離れることとなる。これにより、第2磁束M32のうちの逆向き磁束M32aについても、ボイスコイル25の振動に与える影響は抑えられる。
【0046】
以上に説明したように、本実施例の磁気回路30によれば、逆向き磁束M31a,M32a、特にトッププレート34側の第2磁石33の逆向き磁束M32aについて、ボイスコイル25の振動に対する影響を抑えることができる。
【0047】
尚、ここでも、上述した比較例の磁気回路50と同様に、第1磁石32及び第2磁石33の磁束M31,M32が、
図4に示すようにセンタープレート31及びヨーク35の順で通過して第1磁石32及び第2磁石33に帰還する場合について説明した。しかしながら、逆向き磁束の影響が抑えられる点については、第1磁石32及び第2磁石33の極性配置が逆向きになった次のような場合においても同様に生じ得ることができる。即ち、第1磁石32及び第2磁石33の磁束が、
図4とは逆にヨーク35及びセンタープレート31の順で通過して第1磁石32及び第2磁石33に帰還する場合にも同様に得ることができる。
【0048】
ここで、本実施例では、上記の外筒部352が、第1磁石32、センタープレート31、第2磁石33、トッププレート34との間に全周ギャップGP11及び部分ギャップGP12を形成している。
【0049】
これにより、ボイスコイル25は、センタープレート31とヨークの外筒部352との全周ギャップGP11において、センタープレート31の近傍の磁束を良好に受けて振動することができる。そして、その振動を、トッププレート34と外筒部352との部分ギャップGP12を介して、スピーカ20の振動板22に良好に伝えることができる。
【0050】
また、本実施例では、外筒部352とトッププレート34との間については部分ギャップGP12が形成されている。そして、この部分ギャップGP12以外の箇所については、ヨーク35の外筒部352がトッププレート34に繋がっている。
【0051】
ヨーク35の外筒部352がトッププレート34に繋がっている箇所は、第2磁石33への逆向き磁束M32aの良好な通路となる。これにより、第2磁石33への逆向き磁束M32aをセンタープレート31の近傍から一層離すことができるので、ボイスコイル25の振動への影響を更に抑えることができる。
【0052】
また、
図2に示されている第1実施例のスピーカ20によれば、ボイスコイル25を動作させるために、上述の磁気回路30を採用しているので、ボイスコイル25の振動に対する上記の逆向き磁束M31a,M32aの影響を抑えることができる。
【0053】
また、
図2に示されている第1実施例の移動体1によれば、ボイスコイル25の振動に対する逆向き磁束M31a,M32aの影響を抑えることができるスピーカ20が搭載されているので、移動体本体10の内部における良好な音声環境を得ることができる。
【0054】
次に、第2実施例について説明する。この第2実施例では、トッププレート34とヨーク35の外筒部352との間に設けられた部分ギャップの形状が上述した第1実施例と異なっている。一方で、移動体、スピーカ、及び磁気回路の内部構造については、第1実施例と同等である。以下では、第2実施例について、これらの同等な内容については説明を割愛し、第1実施例との相違点に注目して説明を行う。
【0055】
図6は、本発明の第2実施例に係る磁気回路を示す図である。尚、この
図6では、
図3に示されている構成要素と同等な構成要素については、
図3と同じ符号が付されている。以下では、それら同等な構成要素の重複説明を割愛する。
【0056】
この第2実施例の磁気回路70では、トッププレート34とヨーク35の外筒部352との間に設けられた4箇所の部分ギャップGP71の形状が、上述した第1実施例のように円弧状のスリットではなく円形孔となっている。そして、この円形孔の部分ギャップGP71から、下端がボイスコイルボビン86の本体円筒部に繋がった丸棒部864が延出している。第2実施例では、4本の丸棒部864の上端部861に、
図1に示されている振動板22の内周221及びダンパー24の内周241が固定される。
【0057】
以上に説明した第2実施例の磁気回路70でも、逆向き磁束についてボイスコイルの振動に対する影響を抑えることができることは言うまでもない。
【0058】
次に、第3実施例について説明する。この第3実施例では、トッププレートとヨークの外筒部との間にも全周ギャップが設けられている点が上述した第1実施例と異なっている。この第3実施例についても、第1実施例との相違点に注目して説明を行う。
【0059】
図7は、本発明の第3実施例に係る磁気回路を示す図である。
【0060】
第3実施例の磁気回路90は、センタープレート91、第1磁石92、第2磁石93、トッププレート94、及びヨーク95、を備えている。ヨーク95は、内周部951及び外筒部952を備えている。本実施例では、センタープレート91、第1磁石92、第2磁石93、トッププレート94、及びヨーク95の内周部951は、互いに同心の円環形状を有している。
【0061】
ヨーク95の外筒部952は、内周部951の外縁から第1磁石92の上面92aの近傍まで延びた第1円筒部分952aと、その位置からトッププレート94における上下方向の途中位置まで延びた第2円筒部分952bと、を備えている。そして、第2円筒部分952bの上端縁と、トッププレート94の外縁と、の間には、外筒部952における他の部分とセンタープレート91、第1磁石92、及び第2磁石93、との各間と同様に全周ギャップGP91が形成されている。
【0062】
本実施例では、下端部106aにボイスコイル105が巻かれたボイスコイルボビン106が全体に亘って円筒型に形成されており、その上端部106b側が、トッププレート94の周りの全周ギャップGP91を通って磁気回路90の外部へと延出している。そして、このような円筒型のボイスコイルボビン106の上端部106bに、
図1に示されている振動板22の内周221及びダンパー24の内周241が固定される。
【0063】
以上に説明した第3実施例の磁気回路90でも、逆向き磁束についてボイスコイル105の振動に対する影響を抑えることができることは言うまでもない。
【0064】
尚、本発明は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0065】
例えば、上述した第1実施例~第3実施例では、本発明にいう移動体の一例として、乗用車である移動体1が例示されている。しかしながら、本発明にいう移動体はこれに限るものではなく、スピーカを搭載可能な移動体であれば大型車両や二輪車や鉄道車両、あるいは船舶等であってもよく、その具体的な態様を問うものではない。
【0066】
また、上述した第1実施例~第3実施例では、本発明にいうスピーカや磁気回路の各一例として、
図2~
図4、及び
図7に示された外観や内部構造を有するスピーカ20や磁気回路30,70,90が例示されている。しかしながら、本発明にいうスピーカや磁気回路はこれらに限るものではなく、本発明の目的が達成できる構成を有する限りにおいては、その具体的な外観や内部構造については任意に設定し得る。