IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧

特開2024-160014情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
<>
  • 特開-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図1
  • 特開-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図2
  • 特開-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図3
  • 特開-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図4
  • 特開-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図5
  • 特開-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図6
  • 特開-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図7
  • 特開-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図8
  • 特開-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図9
  • 特開-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160014
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20241031BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241031BHJP
【FI】
G06T7/70 B
G06T7/00 650A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151429
(22)【出願日】2024-09-03
(62)【分割の表示】P 2020063601の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】今井 健太
(72)【発明者】
【氏名】青木 岳
(72)【発明者】
【氏名】松本 令司
(57)【要約】
【課題】平面を有する物体の法線を好適に算出可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】車載機1は、画像取得手段と、射影変換手段と、法線算出手段とを有する。画像取得手段は、平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する。射影変換手段は、第1画像に対する第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、第1画像の撮影位置から対象物までの距離と、対象物の法線の暫定値と、に基づき、第1画像を射影変換する。法線算出手段は、第1画像が射影変換された射影変換画像と第2画像との対象物の相関度に基づき、法線を算出する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する画像取得手段と、
前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、
前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、
前記対象物の法線の暫定値と、
に基づき、前記第1画像を射影変換する射影変換手段と、
前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する法線算出手段と、
を有し、
前記射影変換手段は、前記暫定値の初期値を、前記第1画像の撮影位置と前記第2画像の撮影位置とから定まるベクトルに基づき設定する、
情報処理装置。
【請求項2】
平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する画像取得手段と、
前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、
前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、
前記対象物の法線の暫定値と、
に基づき、前記第1画像を射影変換する射影変換手段と、
前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する法線算出手段と、
を有し、
前記射影変換手段は、前記暫定値の初期値を、前記第1画像又は前記第2画像の撮影位置と、前記対象物の位置とから定まるベクトルに基づき設定する、
情報処理装置。
【請求項3】
平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する画像取得手段と、
前記対象物の幾何的な情報である幾何情報を取得する幾何情報取得手段と、
前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、
前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、
前記対象物の法線の暫定値と、
に基づき、前記第1画像を射影変換する射影変換手段と、
前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する法線算出手段と、
を有し、
前記法線算出手段は、前記幾何情報に基づき、前記暫定値の更新値を決定する、
情報処理装置。
【請求項4】
前記法線算出手段は、前記法線の暫定値を変えて前記相関度を複数回算出した場合に当該相関度が最も高くなる前記暫定値を、前記法線として算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記対象物の幾何的な情報である幾何情報を取得する幾何情報取得手段を有し、
前記法線算出手段は、前記幾何情報に基づき、前記対象物の領域を前記射影変換画像及び前記第2画像から抽出し、前記射影変換画像と前記第2画像の各々から抽出した領域に基づき前記相関度を算出する、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記射影変換手段は、前記第1画像と前記第2画像とに基づき、前記対象物の位置を算出し、前記対象物の位置と前記第1画像の撮影位置と前記暫定値とに基づき、前記距離を算出する、請求項1~5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1画像と前記第2画像とは、車両と共に移動するカメラにより生成され、
前記対象物は、標識である、請求項1~6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータにより、
平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得し、
前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、
前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、
前記対象物の法線の暫定値と、
に基づき、前記第1画像を射影変換し、
前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出し、
前記暫定値の初期値を、前記第1画像又は前記第2画像の撮影位置と、前記対象物の位置とから定まるベクトルに基づき設定する、
制御方法。
【請求項9】
平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する画像取得手段と、
前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、
前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、
前記対象物の法線の暫定値と、
に基づき、前記第1画像を射影変換する射影変換手段と、
前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する法線算出手段
としてコンピュータを機能させ、
前記射影変換手段は、前記暫定値の初期値を、前記第1画像又は前記第2画像の撮影位置と、前記対象物の位置とから定まるベクトルに基づき設定する、
プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の法線を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、平面物体の法線を算出する技術が知られている。例えば、特許文献1には、3枚以上の平面物体が写り込んだ画像を用いて、平面物体の法線を算出する法線推定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-97795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、3枚以上の平面物体が写り込んだ画像を用いて平面物体の法線を算出しているが、撮影状況によっては、3枚以上の平面物体が写り込んだ画像を取得することができない場合があり、より少ない画像枚数により平面物体の法線を算出できることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、平面を有する物体の法線を好適に算出することが可能な情報処理装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、
平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する画像取得手段と、
前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、
前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、
前記対象物の法線の暫定値と、
に基づき、前記第1画像を射影変換する射影変換手段と、
前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する法線算出手段と、
を有し、
前記射影変換手段は、前記暫定値の初期値を、前記第1画像の撮影位置と前記第2画像の撮影位置とから定まるベクトルに基づき設定する、
情報処理装置である。
また、請求項に記載の発明は、
平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する画像取得手段と、
前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、
前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、
前記対象物の法線の暫定値と、
に基づき、前記第1画像を射影変換する射影変換手段と、
前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する法線算出手段と、
を有し、
前記射影変換手段は、前記暫定値の初期値を、前記第1画像又は前記第2画像の撮影位置と、前記対象物の位置とから定まるベクトルに基づき設定する、
情報処理装置である。
また、請求項に記載の発明は、平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する画像取得手段と、
前記対象物の幾何的な情報である幾何情報を取得する幾何情報取得手段と、
前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、
前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、
前記対象物の法線の暫定値と、
に基づき、前記第1画像を射影変換する射影変換手段と、
前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する法線算出手段と、
を有し、
前記法線算出手段は、前記幾何情報に基づき、前記暫定値の更新値を決定する、
情報処理装置である。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、コンピュータにより、
平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得し、
前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、
前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、
前記対象物の法線の暫定値と、
に基づき、前記第1画像を射影変換し、
前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出し、
前記暫定値の初期値を、前記第1画像又は前記第2画像の撮影位置と、前記対象物の位置とから定まるベクトルに基づき設定する、
制御方法である。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、
平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する画像取得手段と、
前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、
前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、
前記対象物の法線の暫定値と、
に基づき、前記第1画像を射影変換する射影変換手段と、
前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する法線算出手段
としてコンピュータを機能させ、
前記射影変換手段は、前記暫定値の初期値を、前記第1画像又は前記第2画像の撮影位置と、前記対象物の位置とから定まるベクトルに基づき設定する、
プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】法線算出システムの概略構成である。
図2】車載機のブロック構成を示す。
図3】車載機の機能ブロック図を示す。
図4】道路上での第1画像及び第2画像の各取得時のカメラと対象物との俯瞰図を示す。
図5】(A)第1画像の例を示す。(B)第2画像の例を示す。
図6】(A)図5(A)に示す第1画像の破線枠内の画素領域を示す。(B)第1画像を射影変換した場合の破線枠内の画素領域を示す。(C)図5(B)に示す第2画像の破線領域内の画素領域を示す。
図7】法線算出処理の手順を示すフローチャートの一例である。
図8】変形例1に係る車載機のブロック構成図を示す。
図9】変形例2に係る法線算出システムの概略構成図である。
図10】変形例2に係る地図生成装置のブロック構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、情報処理装置は、平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する画像取得手段と、前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、前記対象物の法線の暫定値と、に基づき、前記第1画像を射影変換する射影変換手段と、前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する法線算出手段と、を有する。情報処理装置は、この態様により、対象物が写された2枚の画像に基づいて、対象物の法線を好適に算出することができる。
【0011】
上記情報処理装置の一態様では、前記法線算出手段は、前記法線の暫定値を変えて前記相関度を複数回算出した場合に当該相関度が最も高くなる前記暫定値を、前記法線として算出する。対象物の法線の推定精度が高いほど射影変換の精度が高まり、上記の相関度が高くなる。よって、情報処理装置は、法線の暫定値を変えて相関度を複数回算出し、算出した相関度を指標として法線を決定することで、最適な法線を好適に探索することができる。
【0012】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記射影変換手段は、前記暫定値の初期値を、前記第1画像の撮影位置と前記第2画像の撮影位置とから定まるベクトルに基づき設定する。これにより、情報処理装置は、対象物の正面方向に向かって撮影位置が移動する場合に、法線の暫定値の初期値を好適に設定することができる。
【0013】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記射影変換手段は、前記暫定値の初期値を、前記第1画像又は前記第2画像の撮影位置と、前記対象物の位置とから定まるベクトルに基づき設定する。これにより、情報処理装置は、対象物を正面方向から撮影する場合に、法線の暫定値の初期値を好適に設定することができる。
【0014】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記対象物の幾何的な情報である幾何情報を取得する幾何情報取得手段を有し、前記法線算出手段は、前記幾何情報に基づき、前記対象物の領域を前記射影変換画像及び前記第2画像から抽出し、前記射影変換画像と前記第2画像の各々から抽出した領域に基づき前記相関度を算出する。この態様により、情報処理装置は、射影変換画像及び第2画像から対象物の領域を的確に抽出し、対象物でない画素領域を比較対象とすることに起因した相関度の誤差の発生を好適に抑制することができる。
【0015】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記対象物の幾何的な情報である幾何情報を取得する幾何情報取得手段を有し、前記法線算出手段は、前記幾何情報に基づき、前記暫定値の更新値を決定する。この態様により、情報処理装置は、暫定値の更新値を好適に設定することができる。
【0016】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記射影変換手段は、前記第1画像と前記第2画像とに基づき、前記対象物の位置を算出し、前記対象物の位置と前記第1画像の撮影位置と前記暫定値とに基づき、前記距離を算出する。情報処理装置は、この態様により、射影変換に必要な距離を好適に算出することができる。
【0017】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記第1画像と前記第2画像とは、車両と共に移動するカメラにより生成され、前記対象物は、標識である。この態様により、情報処理装置は、車両から撮影された標識の法線を好適に算出することができる。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態によれば、制御方法は、コンピュータにより、平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得し、前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、前記対象物の法線の暫定値と、に基づき、前記第1画像を射影変換し、前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する。コンピュータは、この制御方法を実行することで、対象物が写された2枚の画像に基づいて、対象物の法線を好適に算出することができる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態によれば、プログラムは、平面を有する対象物を含む第1画像と、前記対象物を含む第2画像とを取得する画像取得手段と、前記第1画像に対する前記第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、前記第1画像の撮影位置から前記対象物までの距離と、前記対象物の法線の暫定値と、に基づき、前記第1画像を射影変換する射影変換手段と、前記第1画像が射影変換された射影変換画像と前記第2画像との前記対象物の相関度に基づき、前記法線を算出する法線算出手段としてコンピュータを機能させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、対象物が写された2枚の画像に基づいて、対象物の法線を好適に算出することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0021】
(1)システム概要
図1は、本実施例に係る法線算出システムの概略構成図である。図1に示す法線算出システムは、道路上又は道路周辺に存在する物体の法線を算出するシステムであり、車載機1と、カメラ2と、を有する。これらは同一の車両に搭載されている。以後では、法線を算出する対象となる物体を「対象物」と呼ぶ。
【0022】
車載機1は、カメラ2が生成したデータに基づき、対象物の法線を算出する。例えば、車載機1は、標識を対象物とみなし、標識を含むカメラ2の画像に基づき、当該標識の法線を算出する。なお、対象物は、標識の他、方面看板、キロポスト、100mポスト、デリニエータ等の平面を有する任意の地物であってもよい。車載機1は、「情報処理装置」の一例である。
【0023】
カメラ2は、車両に設置され、車両からの風景を撮影した画像(「撮影画像」とも呼ぶ。)を生成する。なお、撮影画像には、当該撮影画像の撮影日時(生成日時)を示す日時データがメタデータとして含まれている。カメラ2は、日時データが含まれる撮影画像を、車載機1へ供給する。
【0024】
なお、図1に示す法線算出システムの構成は一例であり、図1に示す構成に対して種々の変形を行ってもよい。例えば、車載機1と、カメラ2とが一体に構成されてもよい。この場合、車載機1と、カメラ2とは、1台のドライブレコーダとして構成されてもよい。また、車載機1は、複数の装置から構成されてもよい。この場合、複数の装置は、予め割り当てられた処理を実行し、かつ、互いに必要なデータの授受を装置間において行う。
【0025】
(2)装置構成
図2は、車載機1の機能的構成を示すブロック図である。車載機1は、主に、インターフェース11と、メモリ12と、コントローラ15とを有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0026】
インターフェース11は、車載機1と外部装置とのデータの授受に関するインターフェース動作を行う。本実施形態では、インターフェース11は、カメラ2等から出力されるデータを取得し、メモリ12へ供給する。
【0027】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリ(ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどを含む)などの各種のメモリにより構成される。メモリ12は、コントローラ15が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。また、メモリ12は、コントローラ15の作業メモリとして使用される。なお、コントローラ15が実行するプログラムは、メモリ12以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0028】
また、メモリ12は、機能的には、撮影画像記憶部16と、法線情報記憶部18とを有する。撮影画像記憶部16は、カメラ2が生成した撮影画像を記憶する。この撮影画像は、撮影日時を示す日時データをメタデータとして含む。法線情報記憶部18は、対象物の法線に関する情報(「法線情報」とも呼ぶ。)を記憶する。法線情報は、例えば、対象物の識別情報(種類又は/及び位置を示す情報などを含む)と、算出された法線ベクトル(向き情報)とが関連付けられた情報である。
【0029】
なお、撮影画像記憶部16及び法線情報記憶部18の少なくとも1つは、インターフェース11を介して車載機1と接続されたハードディスクなどの車載機1の外部の記憶装置に記憶されてもよい。
【0030】
コントローラ15は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ等を含み、車載機1の全体を制御する。この場合、コントローラ15は、メモリ12等に記憶されたプログラムを実行することで、対象物の法線算出処理などを行う。コントローラ15は、「画像取得手段」、「射影変換手段」、「法線算出手段」及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0031】
なお、コントローラ15が実行する処理は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。また、コントローラ15が実行する処理は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、コントローラ15が本実施例において実行するプログラムを実現してもよい。このように、コントローラ15は、プロセッサ以外のハードウェアにより実現されてもよい。
【0032】
(3)機能ブロック
コントローラ15が実行する法線算出処理について説明する。概略的には、コントローラ15は、対象物を含む2枚の撮影画像の一方に対し、対象物の法線の暫定値を設定して射影変換を行い、射影変換後の撮影画像と他方の撮影画像との相関度が最大となるように、法線の最適化を行う。
【0033】
図3は、法線算出処理に関するコントローラ15の機能的な構成を示すブロック図である。図3に示すように、コントローラ15は、機能的には、画像取得部21と、撮影パラメータ算出部22と、射影変換部23と、画像比較部24と、最適化部25とを有する。なお、撮影画像記憶部16には、カメラ2が生成する撮影画像が蓄積される。
【0034】
画像取得部21は、対象物を含む2枚の撮影画像を撮影画像記憶部16から抽出する。この場合、画像取得部21は、例えば、撮影画像記憶部16に蓄積される各撮影画像に対して画像認識処理を行うことで対象物の検出を行う。この場合、画像取得部21は、パターンマッチングに基づく対象物の検出を行ってもよく、入力された画像から当該画像内に存在する特徴物の種類及びその画素領域の情報を出力する推論器を用いて対象物の検出を行ってもよい。上記の推論器は、例えば、深層学習などの機械学習に基づく学習モデルであり、画像取得部21は、事前の機械学習により得られた推論器のパラメータをメモリ12等から読み出すことで上記の推論器を構成し、当該推論器に撮影画像を入力する。そして、画像取得部21は、撮影画像から対象物を検出した場合、当該対象物を含む2枚の撮影画像を撮影画像記憶部16から抽出する。この2枚の撮影画像は、連続して撮影された撮影画像に限らず、十分な視差が生じるように所定のフレーム数分間隔が空けられた撮影画像であってもよい。以後では、画像取得部21が取得した2枚の撮影画像を、夫々、「第1画像」及び「第2画像」と呼ぶ。
【0035】
なお、車載機1は、画像取得部21において対象物を含む複数組の撮影画像を取得し、組毎の対象物の法線の算出結果を統計処理することで、法線情報記憶部18に記憶する対象物の法線を求めてもよい。
【0036】
撮影パラメータ算出部22は、撮影画像を撮影したカメラ2の撮影位置及び撮影姿勢を、撮影パラメータ(所謂、カメラ2の外部パラメータ)として算出する。この場合、撮影パラメータ算出部22は、種々のSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)において用いられる方法により、各撮影画像の撮影パラメータを認識する。また、撮影パラメータ算出部22は、SfM(Structure from Motion)などの手法を用いて、視点の異なる少なくとも4枚以上の撮影画像のみから、撮影パラメータを算出してもよい。
【0037】
撮影パラメータ算出部22は、算出した第1画像及び第2画像の撮影パラメータを示す情報を、射影変換部23に供給する。なお、撮影パラメータ算出部22は、第1画像及び第2画像に対してのみ撮影パラメータを算出する代わりに、カメラ2が生成する全ての撮影画像に対して撮影パラメータを算出してもよい。この場合、撮影パラメータ算出部22は、算出した撮影パラメータを、対象の撮影画像と関連付けて撮影画像記憶部16に記憶させてもよい。
【0038】
射影変換部23は、第1画像及び第2画像の一方を、他方の撮影位置及び撮影姿勢により撮影した画像となるように、射影変換を行う。本実施例では、射影変換部23は、第1画像に対して射影変換を行うことで、第2画像の撮影位置及び撮影姿勢に変換した第1画像(「射影変換画像」とも呼ぶ。)を生成する。この場合、射影変換部23は、射影変換に必要な対象物の法線ベクトルを所定の暫定値に設定することで、第1画像への射影変換を行う。射影変換部23による射影変換については後述する。
【0039】
画像比較部24は、第1画像が射影変換された射影変換画像と、第2画像との対象物の相関度(マッチングの度合)を算出する。この場合に用いられる相関度は、SAD(Sum of Absolute Difference)、SSD(Sum of Squared Difference)、NCC(Normalized Cross-Correlation)、ZNCC(Zero-mean Normalized Cross-Correlation)などの種々の指標であってもよい。この相関度は、色情報を用いて算出が行われてもよい。また、画像比較部24は、相関度の算出する場合、第1画像及び第2画像のうち、対象物が表された領域(「対象物領域」とも呼ぶ。)を任意の画像認識処理を行うことで抽出し、抽出した対象物領域を対象として相関度の算出を行う。なお、画像比較部24は、画像取得部21が第1画像及び第2画像上での対象物領域の検出を行っている場合には、画像取得部21による検出結果に基づき、上記の対象物領域を認識してもよい。
【0040】
最適化部25は、画像比較部24が算出した相関度に基づき、射影変換部23が射影変換に用いる対象物の法線ベクトルの最適化を行う。具体的には、最適化部25は、画像比較部24が算出する相関度が最大となるように、射影変換部23が射影変換に用いる対象物の法線ベクトルの暫定値を変更する。そして、最適化部25は、法線ベクトルの暫定値を変えて画像比較部24に射影変換を実行させ、その実行結果に基づく相関度を複数回算出した場合に当該相関度が最も高くなる法線ベクトルの暫定値を、対象物の法線ベクトルとみなす。ここで、最適化部25は、例えば、相関度が所定の閾値以上となるまで、又は、繰り返しの相関度の算出による相関度の変化量が所定の閾値以下となるまで、法線ベクトルの暫定値を変えて相関度を算出する処理を継続する。
【0041】
なお、このような法線ベクトルの最適化は、種々の最適化手法を用いることができる。例えば、最適化部25は、非線形の最適化手法であるLM法(Levenberg-Marquardt Method)、ニュートン法などを用い、次に探索すべき法線ベクトルの暫定値を設定してもよい。最適化部25は、法線ベクトルと対象物の識別情報とを関連付けた法線情報を、法線情報記憶部18に記憶する。
【0042】
車載機1は、法線情報記憶部18に記憶された法線情報を、所定の間隔により地図データを管理するサーバ装置等に送信してもよい。この場合、車載機1が生成した法線情報が地図データの更新処理に用いられる。
【0043】
(4)射影変換の詳細
次に、射影変換部23が実行する射影変換処理について説明する。図4は、道路上での第1画像及び第2画像の各取得時のカメラ2と対象物50との俯瞰図を示す。対象物50は、道路上に設けられた平面状の標識である。図4では、第1画像の取得時のカメラ2の位置「P1」と、第2画像の取得時のカメラ2の位置「P2」と、対象物50の中心位置「P3」とが明示されている。また、ここでは、前提として、第1画像が取得された後に第2画像が取得されたものとする。
【0044】
この場合、射影変換部23は、撮影パラメータ算出部22の算出結果に基づき、第1画像に対する第2画像の相対的な撮影位置を示す相対ベクトル(並進ベクトル)「t」と、第1画像に対する第2画像の相対的な撮影姿勢を示す回転行列「R」とを認識する。そして、射影変換部23は、以下の式に基づき、第1画像を第2画像に変換するための射影変換行列「H」を算出する。
【0045】
【数1】

ここで、「N」は、カメラ2の内部パラメータを示し、「h」は、第1画像の撮影位置P1から対象物50の平面までの垂線の長さ(「対象物距離」とも呼ぶ。)を示し、「n」は、対象物50の法線ベクトルを示す。なお、カメラ2の内部パラメータNに関する情報は、例えば、メモリ12等に予め記憶されている。
【0046】
まず、法線ベクトルnの暫定値である法線ベクトルnの初期値の設定方法について説明する。
【0047】
第1の例では、射影変換部23は、法線ベクトルnの初期値を、並進ベクトルtの逆方向ベクトル(-t)に設定する。一般に、道路に設けられた標識の場合、運転者が視認し易いように車両の進行方向の反対方向に標識が向けられていることが多い。以上を勘案し、射影変換部23は、並進ベクトルtの逆方向ベクトル(-t)を法線ベクトルnの初期値に設定することで、法線ベクトルnの初期値を正確性の高い値に設定することができる。
【0048】
第2の例では、射影変換部23は、法線ベクトルnの初期値を、対象物50の中心位置P3から第2画像の取得時のカメラ2の位置P2までのベクトル(即ち、P2-P3)に設定する。なお、標識が水平面に対して垂直であることを前提とする場合には、射影変換部23は、位置P2と位置P3の高さ(標高)成分については考慮せず、これらの値を0に設定して上記ベクトルを算出するとよい。上述したように、道路に設けられた標識の場合、運転者が視認し易いように標識は車両に向けられていることが一般的であるため、第2の例においても、射影変換部23は、法線ベクトルnの初期値を正確性の高い値に設定することができる。なお、第2の例において、射影変換部23は、法線ベクトルnの初期値を、対象物50の中心位置P3から第1画像の取得時のカメラ2の位置P1までのベクトル(即ち、P1-P3)に設定してもよい。
【0049】
次に、対象物距離hの算出方法について説明する。射影変換部23は、第1画像及び第2画像を用いて、三角測量を用いたステレオ計測法に基づいて、3次元位置である対象物50の中心位置P3を算出する。また、その後、好適には、射影変換部23は、バンドル調整などの最適化手法に基づき、算出した3次元点の最適化を行う。この場合、射影変換部23は、第1画像及び第2画像に加えて、又はこれに代えて、対象物50が表示された他の撮影画像を用いて対象物50の中心位置P3を算出してもよい。そして、射影変換部23は、算出した対象物50の中心位置P3と、第1画像の取得時の撮影位置P1との距離と、法線ベクトルnの暫定値とを用いて、点と平面の距離公式に基づき、対象物距離hを算出する。
【0050】
以上のように、射影変換部23は、並進ベクトルtと、回転行列Rと、法線ベクトルnの暫定値(初期値)と、対象物距離hとを夫々算出し、上式に基づき、射影変換行列を算出する。これにより、射影変換部23は、第1画像への射影変換を好適に実行することができる。
【0051】
次に、射影変換部23による射影変換の具体例について説明する。
【0052】
図5(A)は、図4の例における第1画像の一例を示し、図5(B)は、図4の例における第2画像の一例を示す。図5(A)に示す第1画像及び図5(B)に示す第2画像では、速度制限に関する標識である対象物50が写されている。図6(A)は、図5(A)に示す第1画像の破線枠F1内の画素領域を示す。図6(B)は、第1画像を射影変換した場合の破線枠F1内の領域に相当する画素領域を示す。図6(C)は、図5(B)に示す第2画像の破線枠F2内の画素領域を示す。
【0053】
射影変換部23は、第2画像の第1画像に対する相対的な撮影位置を示す並進ベクトルt、及び、第2画像の第1画像に対する相対的な撮影姿勢を示す回転行列R等を用いて算出した射影変換行列を第1画像に適用する。この場合、図6(B)に示すように、第1画像が射影変換された射影変換画像では、第2画像と同様の見え方になるように対象物の大きさ及び姿勢が変化する。なお、この場合、射影変換行列に用いた法線ベクトルnは暫定値であるため、法線ベクトルnの暫定値の精度(正確度)に応じ、第2画像の見え方とのずれが生じる。その後、画像比較部24は、射影変換画像に対して破線枠F3が示す画素領域を対象物領域として抽出し、抽出した破線枠F3内の画素領域と、第2画像から対象物領域として抽出した破線枠F2内の画素領域と比較することで、相関度を算出する。この場合、法線ベクトルnの暫定値の正確度が高い(即ち真の値に近い)ほど、対応する相関度が高くなる。よって、車載機1は、相関度が高くなる法線ベクトルnの暫定値を最適化により求めることで、正確な法線ベクトルnを求めることができる。
【0054】
(5)処理フロー
図7は、車載機1が実行する法線算出処理の手順を示すフローチャートの一例である。車載機1は、図7に示すフローチャートの処理を、例えば、法線を算出すべき対象物をカメラ2が生成する撮影画像から検出した場合に実行する。
【0055】
まず、車載機1は、対象物が含まれる第1画像及び第2画像を取得する(ステップS11)。この場合、車載機1は、カメラ2が生成する撮影画像を記憶する撮影画像記憶部16から、法線を算出する対象となる対象物が含まれる任意の2枚の撮影画像を、夫々、第1画像及び第2画像として抽出する。なお、車載機1は、対象物を含む複数組の撮影画像を取得し、取得した撮影画像の各組について後述のステップS12~ステップS18を行うことで法線ベクトルを算出し、算出した法線ベクトルの平均などの代表値を、求めるべき対象物の法線として算出してもよい。
【0056】
次に、車載機1は、第1画像及び第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢に相当する並進ベクトルt及び回転行列Rを算出する(ステップS12)。この場合、車載機1は、例えば、第1画像及び第2画像を含む複数の画像を解析することで、並進ベクトルt及び回転行列Rを算出する。
【0057】
次に、車載機1は、対象物の法線ベクトルnの暫定値を設定する(ステップS13)。この場合、車載機1は、1回目の処理では、第1画像の撮影位置、第2画像の撮影位置又は対象物の位置のいずれか2つの相対位置に基づき、法線ベクトルのnの暫定値を設定する。また、車載機1は、2回目以降の処理では、最適化手法に基づき、法線ベクトルのnの暫定値を前回値から変更する。
【0058】
次に、車載機1は、第1画像の撮影位置と対象物との距離である対象物距離hを算出する(ステップS14)。この場合、例えば、車載機1は、ステップS13で設定した法線ベクトルの暫定値と、第1画像及び第2画像に基づき算出した対象物の中心位置とに基づき、対象物距離hを算出する。なお、2回目以降の処理では、車載機1は、対象物距離hを、最適化手法に基づき更新された法線ベクトルを用いて計算する。この処理は、図3の射影変換部23により実行される。
【0059】
そして、車載機1は、ステップS12~ステップS14で算出した並進ベクトルt、回転行列R、法線ベクトルnの暫定値、対象物距離hに基づき、射影変換行列を算出する(ステップS15)。そして、車載機1は、算出した射影変換行列により射影変換した第1画像である射影変換画像と、第2画像との対象物の相関度を算出する(ステップS16)。
【0060】
そして、車載機1は、法線ベクトルの最適化を終了すべきか否か判定する(ステップS17)。例えば、車載機1は、ステップS16で算出された相関度が所定の閾値以上となった場合、ステップS13~ステップS16の処理を規定回数だけ繰り返した場合、又は、ステップS16で算出される相関度の変化幅が所定の閾値未満である場合などに、最適化を終了すべきと判定する。そして、車載機1は、最適化を終了する場合(ステップS17;Yes)、対象物の法線ベクトルを決定する(ステップS18)。この場合、車載機1は、相関度が最も高くなった法線ベクトルの暫定値を、対象物の法線ベクトルとして決定する。その後、車載機1は、決定した対象物の法線ベクトルに関する情報を、法線情報記憶部18に記憶する。一方、車載機1は、最適化を終了すべきでないと判定した場合(ステップS17;No)、ステップS13へ処理を戻す。この場合、車載機1は、ステップS13において、適用する最適化手法に基づき、法線ベクトルのnの暫定値を前回値から変更し、ステップS14~ステップS16の処理を実行する。
【0061】
以上説明したように、実施例に係る車載機1は、画像取得手段と、射影変換手段と、法線算出手段とを有する。画像取得手段は、平面を有する対象物を含む第1画像と、対象物を含む第2画像とを取得する。射影変換手段は、第1画像に対する第2画像の相対的な撮影位置及び撮影姿勢と、第1画像の撮影位置から対象物までの距離と、対象物の法線の暫定値と、に基づき、第1画像を射影変換する。法線算出手段は、第1画像が射影変換された射影変換画像と第2画像との対象物の相関度に基づき、法線を算出する。これにより、車載機1は、対象物を含む2枚の画像に基づいて対象物の法線を正確に算出することができる。
【0062】
(6)変形例
上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上記実施例に適用されてもよい。
【0063】
(変形例1)
車載機1は、対象物の形状に関する幾何情報をさらに参照して法線算出処理を行ってもよい。
【0064】
図8は、変形例1に係る車載機1Aのブロック構成図を示す。車載機1Aは、図2に示す車載機1のブロック構成と同様に、インターフェース11、メモリ12、及びコントローラ15を備える。メモリ12は、撮影画像記憶部16と、法線情報記憶部18と、幾何情報記憶部19とを有する。そして、車載機1Aのコントローラ15は、機能的には、画像取得部21、撮影パラメータ算出部22、射影変換部23、画像比較部24、及び最適化部25に加えて、幾何情報取得部26を有する。
【0065】
幾何情報記憶部19は、対象物として法線検出が行われる対象となる地物の幾何情報を記憶する。この幾何情報は、対象の地物の幾何的な情報(即ち形状を示す情報)であり、例えば形状が異なる地物の種類(カテゴリ)ごとに存在する。例えば、対象物が標識を含む場合には、標識の種類ごとに、当該種類に該当する標識の形状を示す情報が幾何情報として幾何情報記憶部19に記憶される。例えば、速度制限の標識が丸形状、横断歩道の標識が三角形状、交差点の標識がひし形形状である場合には、これらの情報が幾何情報として幾何情報記憶部19に記憶される。なお、幾何情報は、サイズの情報を含んでもよい。
【0066】
幾何情報取得部26は、画像取得部21が検出した対象物に対応する幾何情報を幾何情報記憶部19から抽出する。例えば、画像取得部21は、学習等により得られた推論器に撮影画像を入力したときに出力される対象物の種類の情報を幾何情報取得部26に供給し、幾何情報取得部26は、画像取得部21から供給された対象物の種類に紐付いた幾何情報を幾何情報記憶部19から抽出する。そして、幾何情報取得部26は、抽出した幾何情報を画像比較部24又は最適化部25の少なくとも一方に供給する。このように、コントローラ15は、「幾何情報取得手段」として機能する。
【0067】
画像比較部24による幾何情報の活用について説明する。画像比較部24は、幾何情報取得部26から供給される幾何情報に基づき、相関度の算出を行う。例えば、画像比較部24は、第1画像が射影変換された射影変換画像と、第2画像とから対象物領域を夫々抽出する処理において、幾何情報を用いる。例えば、図5に示す対象物50の場合、画像比較部24は、幾何情報に基づき対象物50が丸形状であることを認識し、対象物領域として抽出する範囲(図5及び図6の破線枠F1~F3参照)を、丸形状に設定する。この場合、画像比較部24は、丸形状の画素領域を、対象物領域として抽出する。これにより、画像比較部24は、対象物領域を的確に抽出し、対象物でない画素領域を比較対象とすることに起因した相関度の誤差の発生を好適に抑制することができる。
【0068】
次に、最適化部25による幾何情報の活用について説明する。最適化部25は、幾何情報取得部26から供給される幾何情報に基づき、射影変換部23による射影変換に用いる法線ベクトルの暫定値の更新値(変更する値)を決定してもよい。例えば、最適化部25は、幾何情報が示す対象物の形状に近づく方向に、暫定値を変化させる方向(即ち、解の探索方向)を限定する。この場合、最適化部25は、例えば、法線ベクトルの初期値から異なる方向に変化させた所定個の暫定値を設定する。そして、最適化部25は、設定した暫定値に基づく射影変換画像の対象物が、幾何情報が示す形状に最も近づく暫定値を、暫定値を変化させる方向(即ち、解を探索すべき方向)として認識する。このように、最適化部25は、幾何情報を用いることで、最適化を行う法線ベクトルの暫定値の探索範囲を好適に限定し、処理負荷を低減することができる。
【0069】
(変形例2)
車載機1が実行する法線算出処理を、車載機1とは別の装置が実行してもよい。
【0070】
図9は、変形例2に係る法線算出システムの概略構成図である。図9に示すように、法線算出システムは、車載機1Xと、カメラ2と、地図生成装置4とを有する。車載機1Xは、図2に示す車載機1と同等の構成を有し、地図生成装置4とデータ通信可能となっている。なお、車載機1Xは、法線情報記憶部18を有していない。そして、車載機1Xは、カメラ2から供給される撮影画像を、計測データ「Im」として地図生成装置4に送信する。この場合、車載機1Xは、撮影画像を一時的に蓄積してもよく、カメラ2から供給される撮影画像を蓄積することなく地図生成装置4に送信してもよい。
【0071】
地図生成装置4は、撮影画像を含む計測データImを車載機1から受信し、受信した計測データImを蓄積する。そして、地図生成装置4は、蓄積した計測データImに基づき、実施例で説明した車載機1による法線算出処理を実行する。この場合、地図生成装置4は、車載機1Xから受信した計測データImをリアルタイムで処理することで、対象物の法線ベクトルの算出を行ってもよく、ユーザ入力等に基づく所定のタイミングにおいて、法線ベクトルの算出を行ってもよい。地図生成装置4は、「情報処理装置」の一例である。
【0072】
図10は、地図生成装置4の機能的構成を示すブロック図である。地図生成装置4は、インターフェース41と、メモリ42と、コントローラ45と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0073】
インターフェース41は、地図生成装置4と外部装置とのデータの授受に関するインターフェース動作を行う。メモリ42は、RAM、ROM、その他不揮発性メモリ(ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどを含む)などの各種のメモリにより構成される。メモリ42は、コントローラ45が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。また、メモリ42は、コントローラ45の作業メモリとして使用される。なお、コントローラ45が実行するプログラムは、メモリ42以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0074】
また、メモリ42は、機能的には、計測データ記憶部46と、法線情報記憶部47とを有する。計測データ記憶部46は、車載機1から受信した計測データImを記憶する。法線情報記憶部47は、地図生成装置4が生成する法線情報を記憶する。なお、計測データ記憶部46及び法線情報記憶部47の少なくとも1つは、インターフェース41を介して地図生成装置4と接続されたハードディスクなどの地図生成装置4の外部の記憶装置に記憶されてもよい。上記の記憶装置は、地図生成装置4と通信を行うサーバ装置であってもよい。また、上記の記憶装置は、複数の装置から構成されてもよい。
【0075】
コントローラ45は、CPU、GPUなどのプロセッサ等を含み、車載機1の全体を制御する。この場合、コントローラ45は、メモリ42等に記憶されたプログラムを実行することで、特徴物の変化点検出に関する処理を行う。コントローラ45は、「画像取得手段」、「射影変換手段」、「法線算出手段」及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0076】
このように、車載機1X以外の任意の装置により、法線算出処理が行われてもよい。なお、車載機1と地図生成装置4とがデータ通信により計測データImの授受を行う代わりに、車載機1が記憶媒体に記憶した計測データImを地図生成装置4が読み出すことで取得してもよい。この場合、上記の記憶媒体は、計測時には車載機1に電気的に接続されることにより、車載機1による計測データImの書込みが行われる。
【0077】
(変形例3)
対象物は、道路上又は道路周辺の標識等の地物に限定されず、平面形状を有する任意の物体であってもよい。
【0078】
この場合、カメラ2は、車両以外の移動体に設けられてもよい。例えば、カメラ2は、自走式ロボットに備えられてもよい。この場合であっても、自走式ロボット又は自走式ロボットからカメラ2の検出データを取得した情報処理装置は、実施例で説明した法線算出処理を実行することで、対象物の法線を算出する。
【0079】
(変形例4)
車載機1は、撮影パラメータ(撮影位置及び撮影姿勢)を、カメラ以外の種々のセンサの出力を用いて認識してもよい。
【0080】
この場合、車載機1は、例えば、センサユニットと有線又は無線により電気的に接続する。センサユニットは、車両の位置及び姿勢(進行方向)に関する情報を検出するセンサ群である。センサユニットは、例えば、GPS受信機、加速度センサ、ジャイロセンサ、IMU(Inertial Measurement Unit)などの複数のセンサを含んでいる。上記のGPS受信機は、RTK測位方式(即ち干渉測位方式)に基づき車両の絶対的な位置(例えば緯度、経度、及び高度の3次元位置)を示す高精度な位置情報を生成するものであってもよい。なお、センサユニットは、カメラ2の位置及び撮影姿勢を直接検出するようにカメラ2に設けられたセンサであってもよい。センサユニットは、センサによる検出結果と、検出日時を示す日時データとを関連付けた情報(「センサ情報」とも呼ぶ。)を、車載機1へ供給する。そして、車載機1は、第1画像及び第2画像に付加された日時データが示す日時と一致する日時データを含むセンサ情報を参照することで、第1画像及び第2画像に対する撮影位置及び撮影姿勢を算出する。ここで、参照したセンサ情報が、車両の位置及び進行方向を示す場合には、車載機1は、車両に対するカメラ2の相対的な位置及び向きを示すカメラ設置情報をさらに参照することで、対象の撮影画像を撮影したカメラ2の位置及び撮影姿勢を特定する。上記のカメラ設置情報は、例えばメモリ12に予め記憶されている。この態様によっても、車載機1は、好適に撮影パラメータを算出することができる。
【0081】
なお、上述した実施例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータであるコントローラ等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。
【0082】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0083】
1 車載機
2 カメラ
4 地図生成装置
16 撮影画像記憶部
18、47 法線情報記憶部
46 計測データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10