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特開2024-16002締固め進捗状況の測定部を備えたコンクリート締固め装置
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  • 特開-締固め進捗状況の測定部を備えたコンクリート締固め装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016002
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】締固め進捗状況の測定部を備えたコンクリート締固め装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/08 20060101AFI20240130BHJP
   H02P 29/024 20160101ALI20240130BHJP
【FI】
E04G21/08
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023119704
(22)【出願日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】10 2022 118 542.7
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】511237955
【氏名又は名称】ワッカー ノイソン プロドゥクツィオン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Neuson Produktion GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Wackerstrasse 6, D-85084 Reichertshofen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ランゲ
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ベルガー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ディラー
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ジビラ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン グランツ
(72)【発明者】
【氏名】アルト ヴァイスコプフ
【テーマコード(参考)】
2E172
5H501
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172FA13
2E172FA18
2E172FA29
5H501CC04
5H501CC05
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL53
5H501MM09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】それぞれ現下で締固められたコンクリートの締固め度合いを捕捉することができる、コンクリート締固め装置、特に内部加振装置を示すこと
【解決手段】コンクリート締固め装置であって、流動性のあるコンクリート内に浸漬するための加振ハウジング(4)、電気モーター(5)、不均衡励振機(6)、電電流捕捉装置(11)、評価装置(12)を備え、作業状態は、加振ハウジング(4)を空中で位置決めすること、加振ハウジング(4)をコンクリート内に浸漬すること、コンクリート内に浸漬した加振ハウジング(4)を用いて締固め過程を実施すること、加振ハウジング(4)をコンクリートから引き上げることから選択され、評価装置(12)は、前述の作業状態のすべてを識別するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート締固め装置であって、該装置は、
流動性のあるコンクリート内に浸漬するための加振ハウジング(4)と、
電気モーター(5)によって駆動され、前記加振ハウジング(4)内に配置された不均衡励振機(6)と、
前記電気モーター(5)によって消費される電流を捕捉するための電流捕捉装置(11)と、
それぞれ現下で捕捉された電流に基づいて前記コンクリート締固め装置の作業状態を決定するための評価装置(12)とを備え、
前記作業状態は、以下のグループ、すなわち、
前記加振ハウジング(4)を空中で位置決めすること、
前記加振ハウジング(4)をコンクリート内に浸漬すること、
コンクリート内に浸漬した前記加振ハウジング(4)を用いて締固め過程を実施すること、
前記加振ハウジング(4)をコンクリートから引き上げることから選択され、
前記評価装置(12)は、前記作業状態のすべてを識別するように構成されている、コンクリート締固め装置。
【請求項2】
さらなる作業状態として前記評価装置(12)により、
前記電気モーター(5)のスイッチオフ、
前記電気モーター(5)および/または前記不均衡励振機(6)の欠陥が捕捉可能である、請求項1記載のコンクリート締固め装置。
【請求項3】
前記電流捕捉装置(11)は、電流に加えて前記電気モーター(5)に印加される電圧も捕捉するように構成されている、請求項1または2記載のコンクリート締固め装置。
【請求項4】
前記電流捕捉装置(11)は、電流を所定のサンプリング間隔で捕捉するように構成されており、
前記サンプリング間隔は、5秒未満である、請求項1から3までのいずれか1項記載のコンクリート締固め装置。
【請求項5】
前記評価装置(12)は、それぞれ現下で捕捉された電流および/またはそれぞれ決定可能な電流勾配を考慮に入れてそれぞれの作業状態を決定するように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のコンクリート締固め装置。
【請求項6】
前記「締固め過程を実施する」作業状態が識別される期間中、電流経過を解釈するために解釈装置(13)が設けられており、
前記解釈装置(13)は、電流経過の解釈のためにそれぞれ現下の電流勾配を評価するように構成されており、
前記電流勾配が値ゼロに近づくことは、締固め進捗状況のための基準として有効である、請求項1から5までのいずれか1項記載のコンクリート締固め装置。
【請求項7】
前記電流勾配が値ゼロに近づくことについての限界値が予め設定され、
前記電流勾配が前記限界値に到達した際に操作者のための信号を生成するための信号装置が設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載のコンクリート締固め装置。
【請求項8】
前記電気モーター(5)に電流を供給するための電流供給線路(8)を備えている、請求項1から7までのいずれか1項記載のコンクリート締固め装置。
【請求項9】
前記電気モーター用の電源は、電気的エネルギー蓄積器(9)および/または電力網を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載のコンクリート締固め装置。
【請求項10】
前記電気的エネルギー蓄積器(9)は、制御電子系を有し、
前記電流捕捉装置(11)および/または前記評価装置(12)および/または前記解釈装置(13)は、前記制御電子系に結合されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のコンクリート締固め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締固め進捗状況を測定するための装置を備えたコンクリート締固め装置に関する。特に本発明は、例えばコンクリート締固めのための内部加振機などの内部加振装置に関する。
【0002】
ガス孔またはいわゆる「砂利ポケット」を避けながら所定の単位容積重量を達成するために、型枠に流し込んだ後の生コンクリートを締固めなければならないことは公知である。コンクリートの密度が10%低くなると、圧縮強度は既に半減する結果となる。しかしながら、コンクリートの過度な締固めは、ニートセメントのゾーン毎の濃縮とともにコンクリートの分離につながる可能性がある。
【0003】
より広いコンクリート流し込みは、通常、ホース型加振機またはロッド型加振機などの振動機もしくは加振機を使用して手作業で締固められる。この種の加振機は、生コンクリート内に浸漬された加振シリンダ(加振ハウジング)内部で不均衡体が電気モーターを介して駆動され、これによってコンクリートを締固める揺動が発生する内部加振機である。一方で建築材料のコンクリートは、多様で厳格な品質管理下におかれるが、コンクリートの専門的な締固めは、内部加振機の操作者の個々の技量に著しく依存している。最適で均一な締固め結果が得られるかどうかは、操作者個人が決定する。しかしながら、様々な操作者個人の技量の差は当然ながら非常に大きくなりかねないため、締固め品質にもかなりのばらつきが生じる可能性があり、このことは、特定のケースでは不十分な締固め結果、ひいては不十分なコンクリート強度につながる。
【0004】
英国特許出願公告第1097651号明細書からは、不均衡質量体を駆動する電気モーターの電力消費が、締固めるべきコンクリートの締固め度合いについての指標と見なされる内部加振機が公知である。電流消費の測定とその大まかな解釈とでは、締固め度合いを確実に決定することはできない。
【0005】
欧州特許第1165907号明細書からは、コンクリートの締固め進捗状況を求めるための測定システムを備えた内部加振機が公知である。ここでは、加振シリンダにおける振動が捕捉され、そこから締固め効果についての推論を導き出すことができる。しかしながら、加振シリンダにおいて対応する加速度センサを使用することは、実際には強い揺動と過酷な環境条件とに基づきその実現には困難しか伴わない。さらに、機械的ストレスの大きい環境では、付加的な信号線路が必要である。
【0006】
締固め進捗状況の測定および文書化は、依然としてコンクリート技術ではほとんど不可能である。内部加振機を用いた締固め持続時間および浸漬過程の数、ならびに浸漬ポイントの選択は、多くの場合、使用者の経験値に基づく。
【0007】
本発明が基礎とする課題は、それぞれ現下で締固められたコンクリートの締固め度合いを捕捉することができる、コンクリート締固め装置、特に内部加振装置を示すことである。
【0008】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴を有するコンクリート締固め装置によって解決される。好適な実施形態は、従属請求項に示されている。
【0009】
コンクリート締固め装置であって、該装置は、流動性のあるコンクリート内に浸漬するための加振ハウジングと、電気モーターによって駆動され、加振ハウジング内に配置された不均衡励振機(Unwuchterreger)と、電気モーターによって消費された電流を捕捉するための電流捕捉装置と、それぞれ現下で捕捉された電流に基づいてコンクリート締固め装置の作業状態を決定するための評価装置とを備え、ここで、作業状態は、以下のグループ、すなわち、加振ハウジングを空中で位置決めすること(電気モーターをアイドリング動作させること)、加振ハウジングをコンクリート内に浸漬すること、コンクリート内に浸漬した加振ハウジングを用いて締固め過程を実施すること、加振ハウジングをコンクリートから引き上げることから選択され、ここで、評価装置は、前述の作業状態のすべてを識別するように構成されている、コンクリート締固め装置が示される。
【0010】
電気モーターは、ここでは、不均衡励振機と一緒に加振ハウジング内に配置されてよい。一変形形態では、不均衡励振機だけが加振ハウジング内に配置されており、それに対して電気モーターは、加振ハウジングから空間的に分離されて固有のハウジング内に配置されている。この場合、電気モーターのトルクは、撓みシャフトを介して加振ハウジング内の不均衡励振機に伝達される
【0011】
作業状態は、特に、対応する高いサンプリングレートでそれぞれ正確に捕捉された電流経過に基づいて識別することができる。ここでは、それぞれ現下の電流値だけでなく、電流値の経時変化(例えばサンプリングレートを用いて捕捉可能)も重要な役割を果たすため、それぞれ特定の電流プロファイルが捕捉および識別可能になる。電流経過の傾向に基づいて、評価装置は、様々な作業状態を認識することができ、(意味がある限り)相互に区別することもできる。この目的のために、それぞれ現下で捕捉された電流プロファイルを、電流値および電流経過もしくは電流勾配、例えば既知の値もしくはパターンと比較することができ、この比較結果からそれぞれの作業状態についての推論を導き出すことができる。
【0012】
ここでは、「加振ハウジングを空中で位置決めする」作業状態と、「電気モーターをアイドリング動作させる」作業状態とは同一と見なされ得る。この場合、加振ハウジングはまだ空中にあり、まだコンクリート内には浸漬されていない。その際、電気モーターは、アイドリング状態かもしくはほぼアイドリング状態で動作させることができる。なぜなら、不均衡励振機をまだ自由に回転させることができるからである。
【0013】
締固め作業は、「加振ハウジングをコンクリート内へ浸漬する」作業状態で開始される。その際、加振ハウジングは、流動性のあるコンクリート内に徐々に沈められ、コンクリートは加振ハウジングの揺動を受容し減衰させる。その中で、依然として不均衡励振機を駆動できるようにするために電気モーターの電流消費が増加する。
【0014】
「締固め過程を実施する」作業状態では、加振ハウジングは十分完全にコンクリート内に浸漬され、使用者によって実質的に定位置に保持され、それによって、加振ハウジングはコンクリート内に留まる。コンクリート内の締固め効果に基づいて、加振ハウジングに対するコンクリートの減衰効果が変化し、このことも、不均衡励振機に作用する反力もしくは反モーメントの形態で作用する。これにより、電気モーターによる電流消費が変化し、これは評価装置によって捕捉することができる。
【0015】
「加振ハウジングをコンクリートから引き上げる」作業状態では、加振ハウジングは、コンクリートから引き抜かれて持ち上げられる。このことは、加振ハウジングがますます自由に振動できるようになることにつながる。なぜなら、コンクリートの減衰効果が徐々に低下するからである。それに応じて、電気モーターも再び自由回転可能になるので、電気モーターによって消費される電力が減少し、電流消費は低減される。
【0016】
評価装置は、それぞれサンプリングされた電流値、電流値の勾配もしくは電流値の発展傾向を用いて、内部加振機がそれぞれどの作業状態にあるのかを識別することができる。締固め過程の期間中(「締固め過程を実施する」)、評価装置は、電流プロファイル、つまり電流値および勾配経過に基づいてコンクリートの締固め状態を識別し、例えば限界値と比較することができる。所定の限界値に達した場合、このことは、コンクリートがこの箇所において十分に締固められたことの基準として評価される。
【0017】
さらなる作業状態として、1つの変形形態では、評価装置によって「電気モータースイッチオフ」および「電気モーターおよび/または不均衡励振機不良」との作業状態を識別することができる。この場合、電気モーターは、電流を消費しないか、または例えば過度に少ない電流消費または過度に高い電流消費など、通常の作業状態のスキームに適合しない電流消費または電流プロファイルが識別される。
【0018】
電流捕捉装置は、電流に加えて電気モーターに印加される電圧も捕捉するように構成されてよい。これにより、測定精度をさらに高めることができる。
【0019】
電流捕捉装置は、電流を所定のサンプリング間隔で捕捉するように構成されていてよく、この場合、サンプリング間隔は、5秒未満であり得る。特に、サンプリング間隔は、2秒未満、1秒未満、0.5秒未満か、あるいは1/10秒以下であり得る。
【0020】
評価装置は、現下で捕捉された電流および/またはそれぞれ決定可能な電流勾配を有するそれぞれ現下で捕捉された電流プロファイルを考慮に入れて、それぞれの作業状態を決定するように構成されてよい。電流勾配は、ここでは、現下の電流値の経時変化である。したがって、捕捉された絶対電流値に応じて、場合によっては電流勾配との組み合わせにおいて、評価装置は、作業状態を捕捉し、コンクリートの締固め度合いも捕捉することができる。その際には、電流値と電流勾配とを一緒に評価することも、あるいは別個に評価することも可能である。評価についての例は、以降の図面の説明の枠内で説明する。
【0021】
「締固め過程を実施する」作業状態が識別される期間中、電流経過(Stromverlauf)を解釈する(Interpretieren)ために、解釈装置(Interpretationseinrichtung)が設けられてよく、ここで、この解釈装置は、電流経過の解釈のためにそれぞれ現下の電流勾配を評価するように構成されていてよく、ここで、電流勾配が値ゼロに近づくことは、締固め進捗状況のための基準として有効である。電流勾配がゼロに近づくことは、現下の電流経過の曲線がより平坦になることを意味する。このことは、締固め過程の経過において観察することができ、この場合、電流勾配がゼロに近づくということは、それぞれ現下で消費されている電流がほとんど変化していないことを意味する。このことは、加振シリンダの領域内のコンクリートが十分に締固められたことに対する基準と見なされる。
【0022】
ここでは、電流勾配が値ゼロに近づくことについての限界値が予め設定されていてよく、この場合、電流勾配が限界値に到達した際に操作者のための信号を生成するための信号装置が設けられてよい。したがって、電流勾配が実際に値ゼロに達することは必ずしも必要なことではない。むしろ、値ゼロへの接近、ひいては限界値への到達で十分である。限界値への到達は、その箇所におけるコンクリートが十分に締固められたことを意味する。この状態は、解釈装置によって確定することができ、それに従って、解釈装置は、コンクリートが十分に締固められたことを信号装置を介して操作者に信号で伝え、それによって、操作者は、加振ハウジングをコンクリート内の他の箇所に移動させることができる。
【0023】
電気モーターに電流を供給するために、電流供給線路が設けられてよい。ここでは、特に、電流捕捉装置は、電気モーターによって消費される電流を捕捉できるようにするために、電流供給線路の領域に配置されていてよい。
【0024】
電気的エネルギー蓄積器および/または電力網を有する電気モーター用の電源が設けられてよい。電気的エネルギー蓄積器は、例えば蓄電池であり得る。
【0025】
特に、電気的エネルギー蓄積器は、例えば背嚢のように操作者によって背中に背負われる担持可能な蓄電池を有することができる。これにより、コンクリート締固め装置用の電流は、専ら操作者によって背負われた蓄電池から受け取ることができる。それに伴って、操作者は自給自足となり、外部電力網接続部を必要としない。
【0026】
電流捕捉装置、評価装置、および解釈装置は、蓄電池に配置されていてよく、もしくは蓄電池の電子系(バッテリー管理システム)に結合されていてもよい。特に、これらの装置は、例えば電流捕捉装置のようにバッテリー管理システムに(部分的に)統合されていてもよい。
【0027】
特に、電気的エネルギー蓄積器は、制御電子系を有することができ、この場合、電流捕捉装置および/または評価装置および/または解釈装置は、制御電子系に結合されてもよい。電流捕捉装置、評価装置、および/または解釈装置は、空間的に制御電子系もしくはエネルギー蓄積器に配置されてもよい。
【0028】
以下では本発明のこれらのおよびさらなる利点と特徴とを、実施例に基づき添付の図面を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明によるコンクリート締固め装置としての内部加振機の概略図である。
図2】コンクリート締固め装置の異なる作業状態に依存した電流消費の変化についての一例を示した図である。
【0030】
図1は、内部加振機1とエネルギー装置2とを備えたコンクリート締固めシステムを概略図で示したものである。
【0031】
内部加振機1は、操作ホース3を有し、その一方の端部にはハウジングとして用いられる加振シリンダ4が取り付けられている。加振シリンダ4の内部には、電気モーター5が設けられており、この電気モーター5は、不均衡励振機6を回転駆動する。不均衡励振機6は、例えば、不均衡質量体が偏心的に取り付けられた不均衡シャフトであってよく、そのため、不均衡シャフトの回転の際に揺動が生成され、この揺動が、加振シリンダ4のハウジング外壁を介して、締固めるべきコンクリート内に導入される。電気モーター5と不均衡励振機6とを有するこの種の加振シリンダ4の構造自体は公知である。
【0032】
それ自体公知でもある変形形態(図示せず)では、電気モーター5は、加振シリンダ4内に配置されるのではなく、加振シリンダ4から空間的に分離された固有のハウジング内に配置されている。この場合、電気モーター5と、加振シリンダ4内に配置された不均衡励振機6との間を撓みシャフトが延在しており、この撓みシャフトを介して電気モーター5のトルクが不均衡励振機6に伝達可能である。撓みシャフトは、それに応じて加振シリンダ4を案内するためにも使用される操作ホース3によって取り囲まれている。
【0033】
図1に示されている操作ホース3は、数メートルの長さを有することができ、そのため、操作者は、締固め作業の際に加振シリンダ4をより長い距離にわたって締固めるべきコンクリート内に吊り下げることができる。ちなみに図1は、縮尺通りではなく、操作ホース3の実際の長さを再現したものではない。
【0034】
加振シリンダ4に対向する操作ホース3の端部には、切替装置7が取り付けられており、この切替装置7を介して電気モーター5のスイッチオン/スイッチオフが可能である。切替装置7は、電流線路8(電力ケーブル)用の連結箇所として用いることも可能である。電流線路8の給電路は、操作ホース3の内部において加振シリンダ4まで案内されており、そのため、操作ホース3は、保護ホースの機能も担っている。切替装置7に対向する電流線路8の端部には、図1には示されていないプラグをそれ自体公知の手法で設けられていてよい。
【0035】
このプラグは、エネルギー装置2に差し込まれていてよい。図1に示されている実施例では、エネルギー装置2の主要部品は、ユーザーが担持ベルトを用いて例えば背嚢のように自身の背中に背負うことができる、図示されていない担持装置に配置されてよい。ここでは、担持装置は、自身に固定された構成部品を確実に担持する担持フレームを有することができる。このことは、例えば独国特許出願公開第102018118552号明細書にも記載されている。エネルギー装置2は、電気的エネルギー蓄積器として蓄電池9を有する。蓄電池9は交換可能であってよく、消耗した場合には新しい蓄電池9に交換され得る。
【0036】
蓄電池9の代わりに、給電を、公共の電力網または工事現場に既存の電力網を介して提供することも可能である。
【0037】
さらに、エネルギー装置2の一部は、変換器10であってよく、この変換器10は、特に、蓄電池9から受け取られた電流を、電圧および周波数に関して電気モーター5に適した方式で変換する。次いで、この変換された電流は、変換器10から電流線路8を介して電気モーター5に供給される。
【0038】
象徴的に、さらに、エネルギー装置2には、電流捕捉装置11、評価装置12、および解釈装置13が設けられている。これらの構成部品は、内部加振機の他の箇所に配置されてもよい。しかしながら、そこにおいて電気モーター5によって消費される電流を正確に捕捉し、解釈するためには、蓄電池9もしくは変換器10の近傍へのそれらの配置が提案される。
【0039】
電流捕捉装置11、評価装置12、および解釈装置13は、実体的に別個の構成部品として存在する必要はない。むしろ、これらの装置は、蓄電池9内もしくは蓄電池9のバッテリー管理部内に、あるいは変換器10内またはその他の箇所に配置されてもよい。例えば、評価装置12および解釈装置13は、空間的に他の箇所に配置されてもよく、例えば、ソフトウェアアプリケーションとして、内部加振機の操作者に携帯されるスマートフォンに配置されてもよい。この場合は、電流捕捉装置によって捕捉された電流値を評価装置12に伝送するために、通信区間もしくはインターフェースを提供する必要がある。
【0040】
電流捕捉装置11は、電気モーター5によって消費される電流を捕捉するために用いられる。その際に、短いサンプリング間隔で電流を捕捉することが可能である。
【0041】
電流捕捉装置11の測定結果は評価装置12に転送され、この評価装置12は、以下でさらに図2に基づいて説明するように、それぞれ現下で捕捉された電流(電流値および電流経過もしくは電流勾配)に基づいて、それぞれ内部加振機の作業状態を捕捉することができる。
【0042】
解釈装置13は、締固め過程の期間中の電流経過を解釈するために設けられている。特に、解釈装置13は、締固め過程の期間中の締固め状態を識別して分類すべきである。
【0043】
解釈装置13により、コンクリートが現下で十分締固められたことが確定された場合、図示されていない信号装置を介して信号を内部加振機1の操作者のために与えることができ、それに伴って操作者は、対応する箇所での締固めを終了し、他の場所において継続する。
【0044】
締固め状態に関する情報は、様々な方式で操作者に伝達することができる。例えば、操作者には支援システムを介して、例えばスマートフォンにインストールされたアプリケーションを介して対応するデータを表示することができる。さらに、後からの文書化のための測定結果をプロトコル化することも容易に可能である。
【0045】
図2は、内部加振機1の様々な作業状態の間の電気モーター5によって消費された電流の経時変化を例示的に示している。それぞれの電流値は、電流捕捉装置11によって短いサンプリング間隔で捕捉することができる。
【0046】
位相aの間、内部加振機は空中で動作し、コンクリート内には浸漬されていない(アイドリング位相、アイドリング状態で電気モーターを動作させる、加振ハウジングを空中で位置決めする)。この位相では、消費された電流は恒常的に低い。
【0047】
加振ハウジングをコンクリート内に浸漬する間(位相b)、電流消費は増加し、検出可能な最大値に達する。
【0048】
それに続いて、内部加振機がコンクリート内に留まると(締固め過程)、コンクリートは、加振シリンダ4の有効範囲内で締固められる(位相c)。その際には負の電流勾配を用いることによって部分的に降下する電流経過を識別することができる。
【0049】
変化する電流勾配(電流降下)に基づいて、解釈装置13と連携した評価装置12により、締固め過程の進捗状況を推論することができる。締固めが進むほど、曲線経過は平坦になり、すなわち電流勾配はゼロに近づく。消費された電流は、この場合常に、空中でのアイドリング位相(位相a)よりも高いままであるので、アイドリング状態(位相a)と「浸漬」もしくは「締固め」状態(位相c)とは、常に相互に明確に区別することができる。
【0050】
加振シリンダ4がコンクリートから引き上げられる場合(位相d)、加振シリンダ4の位置変化による短時間の電流の上昇が観察される。それに続いて、内部加振機が再び空中に存在すると同時に消費電流は、アイドリングに対応する値まで下がる。最終的に、電流消費は、改めてアイドリング位相(位相e)に移行する。
【0051】
特に、内部加振機の動作のために使用することができるエネルギー蓄積器を有し、担持可能に背嚢システムに設けられたエネルギー装置の場合、通常は既に複数の測定装置が、例えばバッテリー制御電子系に存在しており、これらの測定装置を用いることにより、内部加振機を動作させるための電流および電圧の形態の入力電力を測定することができる。付加的なセンサ系、特に加振シリンダまたは保護ホース内のセンサ系は、ここでは不要である。
【0052】
高い測定精度とサンプリングレートとにより、電流経過から作業状態(アイドリング、浸漬、滞留、引き上げ)ならびにコンクリート内の内部加振機の締固め進捗状況を推論することが可能になる。そのつどの作業状態を求めるために、測定された値もしくはその経過および変化が既知の値もしくはパターンと比較される。
【0053】
測定は、蓄電池動作モードの内部加振機においてだけでなく、電力網動作モードの内部加振機においても適切な手法で実現することができる。
図1
図2
【外国語明細書】