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特開2024-160032上空大気中の大気汚染物質の捕集方法と捕集システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160032
(43)【公開日】2024-11-11
(54)【発明の名称】上空大気中の大気汚染物質の捕集方法と捕集システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20241101BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20241101BHJP
   G01W 1/08 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
G01N1/02 A
G01W1/00 A
G01W1/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075330
(22)【出願日】2023-04-29
(71)【出願人】
【識別番号】723005838
【氏名又は名称】木口 倫
(72)【発明者】
【氏名】木口 倫
(72)【発明者】
【氏名】末継 淳
(72)【発明者】
【氏名】永吉 武志
(72)【発明者】
【氏名】間所 洋和
(72)【発明者】
【氏名】井上 誠
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA01
2G052AB01
2G052AB22
2G052AC02
2G052AD04
2G052CA02
2G052CA12
2G052ED06
2G052GA13
2G052GA14
2G052HA17
2G052HA18
(57)【要約】
【課題】上空大気中で捕集された大気汚染物質の測定結果の空間分布を様々な領域、時間において高い空間分解能で得る。
【解決手段】無人飛行体(ドローン)は、ドローンD01、D01およびD01’、ドローンD02、D02およびD02’に大別される。ドローンには大気中の水銀等を測定する固体吸着剤とマウント部及び気象センサ類が搭載され、これらのドローンの3次元空間における位置は、基地局(観測者)からの指令によって操作される。基地局は、ドローンと通信を行い、上空の任意の2点間の鉛直高度で周回軌道と鉛直・水平方向へ自由に移動させながら3次元空間の捕集対象の大気汚染物質を吸引捕集し、同時に気象センサ類による観測を行う。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空大気における大気汚染物質を捕集する方法であって、遠隔操作により飛行できる無人飛行体と、無人飛行体に装脱着可能な大気汚染物質の吸引捕集部とマウント部を備えた1台または複数台の探査機を上空の任意の高度で保持又は任意の範囲で移動させ、上空の大気汚染物質の捕集と気象情報の計測とを同時に行う、大気汚染物質の捕集方法と捕集システム。
【請求項2】
前記吸引捕集部の公知の固体吸着剤と吸引エアポンプとを用いる大気汚染物質の捕集において、固体吸着剤の内部又は前記気象情報の計測センサに直接風雨雪等の侵入を防ぐ軽量な覆い(カバー)で、前記固体吸着剤の大気開口側の先端部分又は前記計測センサを覆って用いられることを特徴とする請求項1に記載の大気汚染物質の捕集方法と捕集システム。
【請求項3】
前記吸引エアポンプに接続された固体吸着剤の固定・保護および容易に遮光可能なホルダを具備し、前記無人飛行体に装脱着可能なマウント部であって、マウント部を前記無人飛行体に固定して用いられることを特徴とする請求項1に記載の大気汚染物質の捕集方法と捕集システム。
【請求項4】
前記吸引エアポンプと前記気象情報の計測センサ類を固定・保護して収納し、前記無人飛行体に容易に装脱着可能な軽量・防水性等を有するケースであって、当該ケース外から取り入れた大気に含まれる大気汚染物質の捕集動作を行うことを特徴とする、請求項1に記載の大気汚染物質の捕集方法と捕集システム。
【請求項5】
前記大気汚染物質は、大気中の水銀であることを特徴とする請求項1に記載の大気汚染物質の捕集方法と捕集システム。
【請求項6】
前記固体吸着剤において、前記上空の大気汚染物質の所定量を破過することなく公知の方法よりも高流量で固体吸着剤に吸引捕集すること、吸引捕集された前記大気汚染物質の機器分析値が前記公知の方法で吸引捕集された機器分析値と同等精度であることを特徴とする、請求項1又は請求項5に記載の大気汚染物質の捕集方法と捕集システム。
【請求項7】
前記探査機の吸引捕集部の固体吸着剤において、前記探査機の複数回の飛行により、同一の固体吸着剤に同種の大気汚染物質の所定量を繰り返して吸引捕集することを特徴とする、請求項1又は請求項5に記載の大気汚染物質の捕集方法と捕集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上空の一点または複数点における捕集対象の大気汚染物質を、地上等の低所にいながら安全・迅速・容易かつ低コストで、精度よく観測できる大気汚染物質の捕集方法と捕集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1によれば、大気汚染の常時監視は、都道府県等において継続的に大気汚染に係る測定を実施することにより、かつては緊急時対策や環境基準の適否判断の資料とすることに重点が置かれていた。現在では、環境影響評価、広域的汚染のメカニズム解明、環境基本計画等の策定のための基礎資料とするなど活用範囲が広がっているとされている。こうした大気汚染の常時監視は、従来、一般環境大気測定局と自動車排出ガス測定局や特定地点における各種観測等が行われ、これらの調査又は観測では固定点又は固定点観測を補完する短期間の移動観測が行われてきたが、いずれも地上付近で観測が行われた。
【0003】
大気中に放出された大気汚染物質は気象条件、例えば風速や気温等の影響により濃度が変動する。大気汚染物質の種類によっては地上と上空の行き来を繰り返しながら時間経過とともに濃度が変動したり、越境して広範囲に広がったりする場合があり、その汚染のメカニズム解明のためには、地上だけでなく、上空の3次元空間(鉛直・水平方向)の濃度や時間の変化を観測することが必要であった。
【0004】
また、上空の大気汚染物質の観測をしようとすると、比較的高空では航空機による観測が行われ、比較的低空ではビルの屋上や鉄塔等で観測が行われる場合があるが、これらの観測には多数の人員・コストがかかり、ビルの屋上や鉄塔等における高所作業では安全配慮が必要であった。
【0005】
地上や上空における公知のガス捕集装置による捕集方法として、特許文献1は、給電設備がない地上の観測場所であっても、大気に含まれる特定の捕集対象ガスを長期間にわたり継続して捕集できることを紹介している。特許文献1は、大気に含まれる捕集対象ガスを捕集するためのガス捕集部と、ガス捕集部を通じて大気を吸引するためのエアポンプと、大気の吸引動作を所定の捕集期間にわたり継続して行わせるようにエアポンプを駆動制御する吸引制御部と、この吸引制御部とエアポンプとに電力を供給する電源部とをケース内に収容し、かつ、当該ケース外から取り入れた大気に含まれる捕集対象ガスの捕集動作を行うことを特徴とする。特許文献2は、上空における大気採取装置であり、航空機に大気中に開口するガス採取器を具えたガス捕集器を取り付けたことを特徴とする上空大気の採取装置であり、例えば地上約3000mまでの比較的高空の大気を採取して気体中の対象ガス、例えばオキシダント、オゾン、窒素酸化物等を連続もしくは間欠的にその捕集に続いて測定を行うことができることを特徴とする。非特許文献2は、例えば吸引捕集用のポンプを用いて一定流量かつ一定時間、例えば数mLから数百mL程度で24時間をかけて主に揮発性の大気汚染物質を固体吸着剤に吸引捕集することが行われており、低流量で時間をかけて実施された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-128054号公報
【特許文献2】公開実用昭和54-1121871号公報
【非特許文献1】環境大気常時監視マニュアル第6版、環境省水・大気環境局
【非特許文献2】有害大気汚染物質等測定方法マニュアル、環境省水・大気環境局大気環境課
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、捕集装置の本体重量が約15kgであり、上空大気の高所における観測、例えばビルの屋上や鉄塔等に前記捕集装置を設置し、頻繁に観測に使うには可搬性に課題があること、前記捕集装置を複数の観測地点で同時に使用した場合には、その運搬にかかる人員・コスト増も避けられないこと、ビルや鉄塔が観測地点近傍にない場合の観測は困難であり、近傍にあったとしても観測に適した高度が得られるとは限らないこと等が想定される。また、前記捕集装置を遠隔操作により飛行できる無人飛行体に搭載した場合、積載重量の制限により、飛行困難又は飛行可能でも短時間しか飛行できず、捕集対象の大気汚染物質の分析に必要な所定の捕集量を捕集できない可能性がある。
【0008】
特許文献2に記載の技術においては、ガス捕集装置を航空機内外に搭載可能であり、高空の大気を航空機で移動しながら比較的広範囲に分布する大気汚染物質を吸引捕集可能である。しかし、一度機体の内外に固定されると、その取り外しは容易ではないことが想定される。航空機観測のフライト費用や人員にかかるコストは、ビルの屋上や鉄塔等での観測に比べて高く、複数の観測地点で同時観測する場合や、捕集対象の大気汚染物質の濃度が時間経過とともに大きく変動する場合に、時間分解能の高い頻繁な観測の実施は容易ではないこと等が想定される。さらに、航空機は航空可能な空域のみでしか飛行できないため、目的とする観測地点で観測ができない場合も想定される。
【0009】
非特許文献2に記載の技術においては、小型のエアポンプを用いて低流量で時間をかけて大気汚染物質の捕集が行われるため、遠隔操作により飛行できる無人飛行体に捕集システムを搭載した場合、1回の飛行では捕集対象の大気汚染物質の分析に必要な所定の捕集量を捕集できない可能性がある。
【0010】
このため、上空の一点または複数点の大気汚染物質を地上等の低所にいながら、安全・迅速・容易かつ低コストで、精度よく観測できる方法とシステムが求められた。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
【0013】
本発明の上空大気中の大気汚染物質の捕集方法は、上空大気における微量な大気汚染物質を捕集する捕集方法であって、遠隔操作により飛行できる無人飛行体と、無人飛行体に装脱着可能な大気汚染物質の吸引捕集部を備えた1台または複数台の前記探査機を上空の任意の高度で保持又は任意の範囲で移動させ、上空の大気汚染物質の捕集と気象情報の計測とを同時に行うことを特徴とする。
【0014】
本発明の上空大気中の大気汚染物質の捕集方法は、前記吸引捕集部の公知の固体吸着剤と吸引エアポンプとを用いる大気汚染物質の捕集において、固体吸着剤の内部又は前記気象情報の計測センサに直接風雨雪等の侵入を防ぐ軽量な覆いであって、前記固体吸着剤の大気開口側又は計測センサの先端部分を覆って用いられることを特徴とする。
【0015】
本発明の上空大気中の大気汚染物質の捕集方法は、前記吸引エアポンプに接続された固体吸着剤の保護と固定および容易に遮光可能なホルダを具備し、前記無人飛行体に装脱着可能なマウント部であって、マウント部を前記無人飛行体に固定して用いられることを特徴とする。
【0016】
本発明の上空大気中の大気汚染物質の捕集方法は、前記吸引エアポンプと前記気象情報のセンサ類を収容し、前記無人飛行体に容易に装脱着可能な軽量・防水性のケースであって、当該ケース外から取り入れた大気に含まれる大気汚染物質の捕集動作を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明の上空大気中の大気汚染物質および捕集方法は、大気中の水銀およびその濃度に関することを特徴とする。
【0018】
本発明の上空大気中の大気汚染物質の捕集方法は、前記固体吸着剤において、前記上空の大気汚染物質の所定量を破過することなく公知の方法よりも高流量で固体吸着剤に吸引捕集すること、吸引捕集された前記大気汚染物質の機器分析値が前記公知の方法で吸引捕集された機器分析値と同等精度であることを特徴とする。
【0019】
本発明の上空大気中の大気汚染物質の捕集方法は、前記探査機の吸引捕集部の固体吸着剤において、前記探査機の複数回の飛行により、同一の固体吸着剤に同種の大気汚染物質の所定量を繰り返して吸引捕集することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以上のように構成されているので、上空の一点または複数点の大気汚染物質を地上等の低所にいながら、安全・迅速・容易かつ低コストで、精度よく観測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る、上空大気中の大気汚染物質の捕集方法において用いられるドローンと基地局(観測者)との観測時の位置の関係の第1の例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る、上空大気中の大気汚染物質の捕集方法において用いられるドローンと基地局との観測時の位置の関係の第2の例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る、上空大気中の大気汚染物質の捕集方法において用いられる複数台のドローンと基地局との観測時の位置の関係の第3の例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る、上空大気中の大気汚染物質の捕集方法において用いられる複数台のドローンと基地局との観測時の位置の関係の第4の例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る、上空大気中の大気汚染物質の捕集方法において用いられるドローンと基地局(観測者)との観測時の位置の関係の第5の例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る、上空大気中の大気汚染物質の捕集方法において用いられるドローンと基地局との観測時の位置の関係の第6の例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る、上空大気中の大気汚染物質の捕集方法において用いられる複数台のドローンと基地局との観測時の位置の関係の第7の例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る、上空大気中の大気汚染物質の捕集方法において用いられる複数台のドローンと基地局との観測時の位置の関係の第8の例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る、上空大気中の大気汚染物質の捕集方法において用いられる吸引捕集部の構成を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る、上空大気中の大気汚染物質の捕集方法において用いられるマウント部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態に係る上空大気中の大気汚染物質の捕集方法について説明する。この大気汚染物質の捕集方法においては、測定の対象となる大気汚染物質の上空大気中の3次元領域内を飛行する1台又は複数台の無人飛行体と、これに搭載された吸引捕集部とマウント部が用いられる。
【0023】
図1は、この大気汚染物質の捕集方法において用いられる無人飛行体(ドローン)と地上の1点に固定された単一の基地局の関係を示す。ここで、図1の構成においては、ドローンはD01の1機のみである。ドローンD01には大気中の水銀等を捕集する吸引捕集部と気象センサが搭載され、これらの3次元空間における位置は、基地局100からの指令によって操作される。これによって、基地局100は、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、地上から任意の高度M0において保持されたドローン(観測点)における上空大気の吸引捕集を行うことができ、かつ、ドローンに対する指令を発することができる。任意の高度M0において保持されたドローンD01は、観測時の状況や目的等にあわせて任意の高度M0から鉛直方向の任意の高度M1に移動、保持させた状態でも観測できる。
【0024】
図2は、ドローンD01とD01’をそれぞれ任意の高度M0と任意の高度M0から鉛直方向の任意の高度M1’に同時に飛行させる場合の無人飛行体(ドローン)と地上の1点に固定された単一の基地局の関係を示す。ドローンD01とD01’には、前記大気中の水銀等を捕集する吸引捕集部と気象センサが搭載され、それぞれ基地局100とそれぞれの観測高度においてP1とP1’の経路で通信する。これによって、基地局100は、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、全てのドローンに対する指令を発することができ、かつ、複数のドローン(観測点)を用いて任意の高度M0とM0から鉛直方向の任意の高度M1’においてそれぞれ2機を保持させた状態で上空大気の吸引捕集を同時に行うことができる。基地局100は上記に説明される動作が行える限りにおいて、地上に固定されていてもよく、車両等に搭載されて移動可能とされていてもよい。また、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、ドローンD01とD01’は自動飛行型でもよい。ドローンに搭載される観測機器の構成については後述する。
【0025】
図3は、ドローンD01とD02をそれぞれ任意の高度M0に保持させ、2機同時に飛行させる場合の無人飛行体(ドローン)と地上の1点に固定された単一の基地局の関係を示す。ドローンD01とD02には、前記大気中の水銀等を捕集する吸引捕集部と気象センサが搭載され、それぞれ基地局100とそれぞれの観測高度においてP1とP2の経路で通信する。これによって、基地局100は、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、全てのドローンに対する指令を発することができ、かつ、複数のドローン(観測点)を用いて地上から任意の高度M0で保持された上空大気の吸引捕集を同時に行うことができる。また、前記任意の高度M0において保持されたドローンD01とD02は、観測時の状況や目的等にあわせて任意の高度M0から鉛直方向の任意の高度M1に移動、保持させた状態でも観測できる。このように、複数のドローンを同時に、かつ移動、保持させた状態で飛行させることによって、特に広い範囲にわたる領域内の観測結果を得ることができる。
【0026】
図4は、ドローンD01とD01’、ドローンD02とD02’をそれぞれ任意の高度M0と任意の高度M0から鉛直方向の任意の高度M1’に保持させ、2機同時に飛行させる場合の無人飛行体(ドローン)と地上の1点に固定された単一の基地局の関係を示す。ドローンD01とD01’はP1とP1’、ドローンD02とD02’はP2とP2’の経路で通信し、前記任意の高度M0とM0から鉛直方向の任意の高度M1’において一定間隔で保持させた状態で、ドローンD01を任意の高度M1’に移動させることなく2高度の同時観測ができる。前記基地局100は上記に説明される動作が行える限りにおいて、地上に固定されていてもよく、車両等に搭載されて移動可能とされていてもよい。また、前記基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、前記ドローンD01とD01’は自動飛行型でもよい。
【0027】
図5は、ドローン1機を用いて地上から任意の観測高度M0で保持させた状態で、水平移動の周回軌道M3をM3’の方向に周回しながら観測を行う場合の無人飛行体(ドローン)と地上の1点に固定された単一の基地局100(観測者)の関係を示す。この場合にはドローンD01は、それぞれ基地局100と観測高度M0、周回軌道M3、M0からの周回軌道M3の鉛直方向への移動M1、周回軌道M3の水平方向への移動M2においてP1の経路で通信する。これによって、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、全てのドローンに対する指令を発することができ、かつ、前記任意の高度M0、M0からの鉛直方向への移動M1および水平方向への移動M2において、前記周回軌道M3の移動をしながらドローン(観測点)における上空大気の吸引捕集を行うことができる。この場合、ドローンの周回軌道M3は様々な飛行パターン、例えば円や楕円等軌道等でも良く、周回方向のM3’は逆方向でも良い。また、周回軌道M3の範囲、周回数は、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、任意に指定できかつ自動飛行型でも良い。このように、1機のドローンでも任意の高度と範囲での周回軌道と周回軌道を鉛直・水平方向へ移動させることによって、上空の3次元空間領域内の観測結果を得ることができる。
【0028】
図6は、ドローンD01とD01’をそれぞれ任意の高度M0と任意の高度M0から鉛直方向の任意の高度M1’に保持させ、2機同時に飛行させる場合の無人飛行体(ドローン)と地上の1点に固定された単一の基地局の関係を示す。ドローンD01とD01’はそれぞれP1とP1’の経路で通信し、基地局100は、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、全てのドローンに対する指令を発することができ、かつ、前記任意の高度M0、M0から鉛直方向への移動M1’および水平方向への移動M2において、前記周回軌道M3の周回方向M3’の水平移動をしながらドローン(観測点)における上空大気の吸引捕集を行うことができる。この場合、ドローンの周回軌道M3は様々な飛行パターン、例えば円や楕円等軌道等でも良く、周回方向のM3’は逆方向でも良い。これによって、前記任意の高度M0およびとM0から鉛直方向の任意の一定高度M1’において前記の周回軌道を、図5と同様な1機のドローンD01を用いて前記任意の高度M1に移動させることなく鉛直2高度の同時観測ができる。
【0029】
図7は、ドローンD01とD02をそれぞれ任意の高度M0に保持させ、2機同時に飛行させる場合の無人飛行体(ドローン)と地上の1点に固定された単一の基地局の関係を示す。ドローンD01とD02を飛行させる場合、それぞれP1およびP2の経路で通信し、基地局100は、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、全てのドローンに対する指令を発することができ、かつ、任意の高度M0、M0から鉛直方向への移動M1および水平方向への移動M2において保持させた状態で、周回軌道M3を周回方向M3’に水平移動しながら複数のドローン(観測点)における上空大気の吸引捕集を行うことができる。この場合、図5と同様に、ドローンの周回軌道M3は様々な飛行パターン、例えば円や楕円等軌道等でも良く、周回方向のM3’は逆方向でも良い。また周回軌道M3の範囲、周回数は、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、任意に指定できかつ自動飛行型でも良い。
【0030】
図8は、ドローンD01とD01’、D02とD02’をそれぞれ任意の高度M0と任意の高度M0から鉛直方向の任意の高度M1’に保持させ、鉛直方向に2機同時に飛行させる場合の無人飛行体(ドローン)と地上の1点に固定された単一の基地局の関係を示す。ドローンD01とD01’はそれぞれP1とP1’、ドローンD02とD02’はそれぞれP1とP2’の経路で通信し、基地局100からその飛行が制御できる限りにおいて、それぞれ基地局100と前記任意の高度M0、M0から鉛直方向の任意の高度M1’ において1機のドローンを用いて前記周回軌道を任意の高度M1に移動させることなく鉛直2高度の同時観測ができる。このため、このようにドローンを複数用いることによって、隊列(観測点の3次元空間配置)の自由度を更に高めることができる。
【0031】
以下に、上記の捕集方法を実現する捕集システムについて説明する。この捕集システムは、前記のドローンD01に搭載された吸引捕集部とマウント部と、基地局100で構成される。図9は、吸引捕集部の構成を示すブロック図である。ここで、吸引捕集部の制御のための構成要素は周知のものであるために、その記載は除外され、吸引捕集に関する構成要素のみが記載されている。
【0032】
図9において、測定対象となるのは大気中の水銀であるため、水銀を捕集する固体吸着剤12が共に設けられる。この固体吸着剤12は、珪藻土粒子等の表面に金を焼き付けした捕集剤を充てんされた吸着剤であり、大気中の水銀を、一定流量で吸引捕集し、大気中の水銀は、金アマルガムとして捕集される。固体吸着剤は水銀を破過なく捕集できるものであれば、他の捕集剤のものを用いることもできる。
【0033】
吸引捕集部10には、気温、湿度、気圧を同時計測できる気象センサ14もドローンに搭載される。固体吸着剤に捕集された水銀は、公知の水銀分析装置、例えば、加熱気化冷原子吸光法又は加熱気化冷原子蛍光法により水銀を検出する機器分析装置を用いて測定され、気象センサ14で計測された計測値は、20℃における大気中の水銀濃度の算出に用いることができる。
【0034】
また、吸引捕集部10のエアポンプ11においては、予め吸引捕集の条件、例えば流量、捕集大気量、捕集開始時間(タイマー)を設定し、ドローンが所定の高度に到達した段階で吸引を開始する、等の動作を行わせることもできる。この場合、予め設定した吸引捕集の流量は、固体吸着剤の破過とエアポンプの誤作動が起こらない範囲において、公知のエアポンプにおける吸引捕集の流量(0.1~0.5mL/min)以上の高流量で捕集させることができる。このとき、例えば水銀の機器分析値は公知の方法で吸引捕集された機器分析値と同等精度で捕集することができる。また、固体吸着剤の破過とエアポンプの誤作動が起こらない範囲において、1回目に捕集を行った固体吸着剤を用いて、同一の吸引捕集条件および複数回の同一条件での飛行観測を行い、捕集対象物質の捕集量を増やすこともできる。
【0035】
吸引捕集部10の気象センサ本体およびエアポンプは収納・固定できるケース内にあり、ケースは軽量で防水性があり、かつ結露が発生しない材質と構造を有する。また、ドローンの積載重量の制限やケースの容量・重量の限りにおいて、複数台の気象センサ等やエアポンプを収納することもできる。なお、気象センサモジュール15はケース外に延長させ、固体吸着剤の捕集時の外気温、湿度、気圧を計測することができる。
【0036】
図10は、マウント部20であり、固体吸着剤12をドローン回転翼の影響を受けにくい吸着捕集部10から離れた位置に固定できる。マウント部の上部片面(側面A)には吸引チューブ13を用いてエアポンプ11に接続した固体吸着剤12を固体吸着剤の固定・保護ホルダ内に格納し、さらに遮光フィルム23により遮光、固定バンド24により、固体吸着剤を確実に固定・保護することができる。また、固体吸着剤の外気開口部先端部に覆い(カバー)21が設けられ、観測時の風雨雪等が侵入すること、かつ吸引捕集時の誤作動を防ぐこともできる。マウント部の側面Aの反対側(側面B)は、気象センサモジュールを格納でき、側面A同様にカバー21が設けられ、観測時の風雨雪等が侵入すること、かつ吸引捕集時の誤作動を防ぐこともできる。また、カバー21は、軽量かつ丈夫な材質であれば良く、固体吸着剤の外気開口部の上部の先端部分に配置することで、ドローン回転翼の影響を低減することもできる。
【0037】
上記の例では、気象センサ14は気温、湿度、気圧の測定を行うものとしたが、他の物理量を測定するセンサを用いた場合においても、同様のシステムあるいは無線センサシステムを用いることができる。このような物理量として、目的に応じて、例えば、風向・風速、大気中の水銀の評価指標となるものとして、大気中の粉塵(エアロゾル)、微小粒子状物質(PM2.5等)、ガス状物質(CO、CO2濃度、NH3、CH4、H2、C2H5OH、C3H8、C4H10、揮発性有機化合物等)、放射性物質等の濃度等を測定してもよい。あるいは、これらの測定を適宜組み合わせて同時に行ってもよい。こうした場合でも、このシステムを用いることによって、特に3次元空間内の一領域における様々な測定を効率的かつ確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
10 吸引捕集部
11 エアポンプ
12 固体吸着剤
13 吸引用チューブ
14 気象センサ本体
15 気象センサモジュール
16 通信ケーブル
20 マウント部
21 覆い(カバー)
22 固体吸着剤の固定・保護ケース
23 遮光フィルム
24 フィルム固定バンド
100 基地局(観測者)
D01 高度M0の1機目の無人飛行体(ドローン)
D02 高度M0の2機目の無人飛行体(ドローン)
D01’ D01の鉛直方向で飛行する2機目の無人飛行体(ドローン)
D02’ D02の鉛直方向で飛行する2機目の無人飛行体(ドローン)
M0 地上からドローンまでの任意高度
M1、M1’ 高度別観測時の鉛直方向へのドローン移動経路
M2 高度別観測時の水平方向へのドローン移動経路
M3 ドローン周回移動観測時の軌道
M3’ドローン周回移動観測時の軌道の方向
P1、P2、P1’、P2’ 基地局(観測者)とドローンの通信経路
図1
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図3
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図10