(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160034
(43)【公開日】2024-11-11
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20241101BHJP
A61B 17/29 20060101ALI20241101BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20241101BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20241101BHJP
A61B 17/3201 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
A61B17/94
A61B17/29
A61B18/14
A61B1/018 511
A61B17/3201
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075333
(22)【出願日】2023-04-29
(71)【出願人】
【識別番号】516259332
【氏名又は名称】レイクR&D株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160370
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 鈴
(72)【発明者】
【氏名】小口 祐二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩一
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
【Fターム(参考)】
4C160GG26
4C160GG29
4C160GG32
4C160KK06
4C160MM32
4C160NN01
4C160NN03
4C161AA00
4C161BB00
4C161CC00
4C161DD03
4C161FF43
4C161GG15
(57)【要約】
【課題】接着に比べて強固に処置部を樹脂製シースに取り付けることができる内視鏡用処置具の提供
【解決手段】先端側からの所定距離に切り欠いた切欠部11cが設けられたシース11と、該シース11と略同径であって円環状硬質金属製の係止片81と、該切欠部11cに嵌め込むための円環状硬質金属製の係止片82と、該係止片81及び82を間隔をもって連結接続するための硬質金属製の連結片83から成る接続部品80を備え、係止片82を切欠部11cに嵌入し、係止片81をシース11先端の円環部分を覆うように配置し、操作ワイヤ12が係止片82の円環内を貫通して処置部150に接続されている内視鏡用処置具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡チャネルに挿脱される可撓性を有する長尺筒形樹脂製のシースと、該シース内に進退可能に配置された操作ワイヤと、前記シースの基端側に設けられて前記操作ワイヤを操作する操作部と、前記シースの先端側に取り付けられて生体患部の処置を行う処置部とを備える内視鏡用処置具であって、
先端側から所定寸法位置を切り欠いた第1切欠部が設けられた前記シースと、
前記シースの先端側面の円環部分を覆う外径且つ貫通孔が開口された第1係止片と、前記シースの第1切欠部に嵌め込まれて前記操作ワイヤが貫通可能な貫通孔が開口された第2係止片と、該第1係止片及び第2係止片とを連結するための第1連結片とから成る第1接続部品とを備え、
前記第1接続部品の第2係止片が前記シースの先端側の第1切欠部に嵌入され、前記第1係止片がシース先端側面の円環部分を覆うように配置され、前記操作ワイヤが前記第2係止片の貫通孔を貫通して前記処置部に接続されている内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記第1係止片が円形の貫通孔を開口した円環状であり、前記第2係止片が円形の貫通孔を開口した円環状である請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記シースが複数のルーメンを有し、前記操作ワイヤを挿通するルーメンの先端側から所定寸法位置に前記第1切欠部が設けられたマルチルーメンシースであって、前記第1接続部品が第1ルーメンに挿通された前記操作ワイヤを前記第2係止片の円環内を貫通するように配置された請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記第1係止片と接続される固定軸受と該固定軸受の外周に回動自在に位置して前記処置部と固着される回動軸受とを含む回動部を備え、該回動部が、前記シースに対して前記処置部が回動自在に支持された請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記第1接続部品が、前記第2係止片に、前記第1係止片の方向に延びる爪片を備えた請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
基端側から所定寸法位置を切り欠いた第2切欠部が開口された前記シースと、
前記シースの基端側面の円環部分を覆う外径且つ貫通孔が開口された第3係止片と、前記シースの第2の切欠部に嵌め込まれ貫通孔が開口された第4係止片と、該第3係止片及び第4係止片とを連結するための第2連結片とから成る第2接続部品と、
前記シースの内腔に嵌入される所定長円筒状の挿入筒片及び該挿入筒片が貫通し前記シースの外径より大外径の円板状の蓋部を有する補強部品を備え、
前記第2接続部品の第4係止片が前記シースの基端側の第2切欠部に嵌入し、前記第3係止片が前記シース後端側の円環部分を覆うように配置され、
前記補強部品の挿入筒片が前記シースの基端側から前記第2接続部品の前記第4係止片及び前記第3係止片の貫通孔内を貫通し、前記第2接続部品の前記蓋部が前記操作部に固定された請求項1から5何れかに記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡のチャネル内に挿通され、体腔内で処置を行うための内視鏡用処置具に係り、特に、先端に処置部を取り付けた操作ワイヤが可撓性シース内に進退自在に挿通されて、前記処置部を用いて体腔内の生体組織を処置する内視鏡用処置具におけるシースを可撓性のある樹脂製とすることができる内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡のチャネル内に挿通され、体腔内に突出して処置を行うための内視鏡用処置具としては、長尺状の可撓性シース内を挿通する操作性ワイヤの先端側に処置部が配置され、基端側に操作部が連結された内視鏡用処置具が知られている。
【0003】
この処置部としては、例えば、体腔内患部組織等の把持・回収・切除等を行うためのカップ型鉗子である処置部や、高周波電流を印加して患部組織等の切開を行う鋏型の処置部等が挙げられる。
【0004】
この内視鏡用処置具に関する技術が記載された文献としては下記の特許文献が挙げられ、この特許文献1には、長尺状の可撓性シースとして、断面形状が矩形のステンレス線の金属材を密着巻きして成るコイルシースを用い、この可撓性シースの先端側に金属製の支持部材を用いてX状に交差開閉する一対の処置片を支持する連結構造が記載され、特許文献2には、長尺状の可撓性シースとして、絶縁性の樹脂材料のシースを用い、この可撓性シースの先端側に金属製の略円筒形状の固定金具をシース先端側から挿入して接着固定し、この固定金具に前記一対の処置片を支持する連結構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-59795号公報
【特許文献2】特開2014-188160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1に記載された内視鏡用処置具は、ステンレス線の金属材を密着巻きして成るコイルシースを用いているため製造時に部品点数が多く且つレーザ等の溶接作業箇所が多くなると共に高周波電流を印加する処置具を用いる際には安全性のために外周を覆う絶縁性の被覆が必要となる課題と、高周波電流を印加して操作ワイヤを通電した場合に、漏れ電流が比較的大きくなる課題と、柔軟性に乏しいために内視鏡システムの挿入部のチャネルへの挿入が比較的困難であるという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の内視鏡用処置具は、樹脂材料の可撓性シースの先端側に金属製の略円筒形状の固定金具をシース先端側から挿入して接着剤により固定するものであるが、接着は作業時の温湿度の影響を受けやすく、製造時の高温処理(例えば滅菌で60~70℃)による接着剤への影響、経年劣化による接着外れなど多数のリスクが存在し、このリスクに対する検証が必要で長い時間と大きな費用を要するという課題を招く可能性がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、部品点数の低減・安全性の向上・チャネルへの挿入の容易性の向上・従来の接着に比べて強固に処置部をシースに取り付けることができる樹脂製のシースを用いた内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明による内視鏡用処置具は、内視鏡チャネルに挿脱される可撓性を有する長尺筒形樹脂製のシースと、該シース内に進退可能に配置された操作ワイヤと、前記シースの基端側に設けられて前記操作ワイヤを操作する操作部と、前記シースの先端側に取り付けられて生体患部の処置を行う処置部とを備える内視鏡用処置具であって、
先端側から所定寸法位置を切り欠いた第1切欠部が設けられた前記シースと、
前記シースの先端側面の円環部分を覆う外径且つ貫通孔が開口された第1係止片と、前記シースの第1切欠部に嵌め込まれて前記操作ワイヤが貫通可能な貫通孔が開口された第2係止片と、該第1係止片及び第2係止片とを連結するための第1連結片とから成る第1接続部品とを備え、
前記第1接続部品の第2係止片が前記シースの先端側の第1切欠部に嵌入され、前記第1係止片がシース先端側面の円環部分を覆うように配置され、前記操作ワイヤが前記第2係止片の貫通孔を貫通して前記処置部に接続されていることを第1の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第1の特徴の内視鏡用処置具において、前記第1係止片が円形の貫通孔を開口した円環状であり、前記第2係止片が円形の貫通孔を開口した円環状であることを第2の特徴とし、該第2の特徴の内視鏡用処置具において、前記シースが複数のルーメンを有し、前記操作ワイヤを挿通するルーメンの先端側から所定寸法位置に前記第1切欠部が設けられたマルチルーメンシースであって、前記第1接続部品が第1ルーメンに挿通された前記操作ワイヤを前記第2係止片の円環内を貫通するように配置されたことを第3の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第1の特徴の内視鏡用処置具において、前記第1係止片と接続される固定軸受と該固定軸受の外周に回動自在に位置して前記処置部と固着される回動軸受とを含む回動部を備え、該回動部が、前記シースに対して前記処置部を回動自在に支持されることを第4の特徴とする。
【0012】
また本発明は、第1の特徴の内視鏡用処置具において、前記第1接続部品が、前記第2係止片に、前記第1係止片の方向に延びる爪片を備えたことを第5の特徴とする。
【0013】
また本発明は、第1から第5何れかの特徴の内視鏡用処置具において、
基端側から所定寸法位置を切り欠いた第2切欠部が開口された前記シースと、
前記シースの基端側面の円環部分を覆う外径且つ貫通孔が開口された第3係止片と、前記シースの第2の切欠部に嵌め込まれ貫通孔が開口された第4係止片と、該第3係止片及び第4係止片とを連結するための第2連結片とから成る第2接続部品と、
前記シースの内腔に嵌入される所定長円筒状の挿入筒片及び該挿入筒片が貫通し前記シースの外径より大外径の円板状の蓋部を有する補強部品を備え、
前記第2接続部品の第4係止片が前記シースの基端側の第2切欠部に嵌入し、前記第3係止片が前記シース後端側の円環部分を覆うように配置され、
前記補強部品の挿入筒片が前記シースの基端側から前記第2接続部品の前記第4係止片及び前記第3係止片の貫通孔内を貫通し、前記第2接続部品の前記蓋部が前記操作部に固定されたことを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による内視鏡用処置具は、部品点数の低減・安全性の向上・チャネルへの挿入の容易性の向上・従来の接着に比べて強固に処置部をシースに取り付けることができる樹脂製のシースを用いた内視鏡用処置具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による内視鏡用処置具を使用する内視鏡システムの全体構成を説明するための図。
【
図2】本発明の実施形態による内視鏡用処置具の全体構成を説明するための図。
【
図3】本発明の第1実施形態によるシングルルーメンの内視鏡用処置具を説明するための図。
【
図4】本発明の実施形態によるシース先端に処置具を取り付ける原理を説明するための図。
【
図5】本発明の第2実施形態によるマルチルーメンの内視鏡用処置具を説明するための図。
【
図6】本発明の第3実施形態による処置具の回動部を設けた内視鏡用処置具を説明するための図。
【
図7】本発明の第4の実施形態による接続部品及び内視鏡用処置具を説明するための図。
【
図8】本発明の第5の実施形態によるシース後端側に設ける接続部品及び補強部品を説明するための図。
【
図9】第5の実施形態のシース種類による取り付け構造例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る内視鏡用処置具を詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面において、患部の処置を行う処置部が位置する側を先端側、操作部が位置する側を基端側と呼ぶ。
【0017】
[内視鏡システムの基本的構成]
図1は本実施形態に係る内視鏡用処置具が適用される内視鏡システム1を示す図である。この内視鏡システム1は、生体の体腔内に挿入するための挿入部2と、基端側に設けられ挿入部2の先端を上下左右方向に湾曲操作するためのダイヤルを有する内視鏡操作部3と、前記挿入部2と内視鏡操作部3との間を接続するように配置された処置具導入部4とを備え、前記処置具導入部4から挿入部2の先端に向かって長手方向に形成された細長中空孔の内視鏡チャネル5が形成され、この内視鏡チャネル5内に、生体組織の採取および/または止血の処置を行うための処置部150及びシース11を挿通し、操作部13より操作するように構成されている。
【0018】
[内視鏡用処置具の基本的構成]
図2は本実施形態に係る内視鏡用処置具10を示す図である。この内視鏡用処置具10は、開閉する一対のカップ状の処置片を含み、体腔内の生体組織を採取しまたは生体組織を挟みつつ所要の電流を通電し生体組織を電気焼灼し止血する処置部150と、該処置部150を先端側に取り付けて内視鏡チャネルに挿脱される可撓性を有する細長い長尺筒型樹脂製のシース11と、該シース11内に進退可能に配置された操作ワイヤ12と、操作ワイヤ12を進退操作する操作部13と、前記シース11の先端側に設けられて処置部150をシース先端に固定するための第1の接続部品80と、シース11の基端側に設けられてシース後端を操作部13に固定するための第2の接続部品60を備える。
【0019】
前記操作部13は、操作者が親指等を挿入する操作部本体13aと、操作者が人差し指及び中指等を挿入して前記操作部本体13aに対してスライド(移動)するスライダ13bと、シース11の後端と接続するためのシース接続部13cと、操作ワイヤ12へ高周波電流を通電するためのコネクタ13dとを備える。
【0020】
特に本実施形態によるシース11は、可撓性があり且つ非導通の軟質な樹脂製であって、処置部150の先端側からの抜け防止を施して取り付け固定するための接続部品80と、同様に操作部13の先端側からの抜け防止を施して取り付け固定するための第2の接続部品60とを備える。
【0021】
前記シース11は、長さが500~2000mmの、可撓性を有しかつ適度の腰の強さ(屈曲耐性)を有する細長筒状且つ軟質な樹脂製であって、例えば、PTFE、PEEK、PPS、ポリエチレン、またはポリイミド、等が好ましいが、この材質に限られるものではない。
【0022】
[第1の実施形態]
次に本発明の第1の実施形態による内視鏡用処置具を
図3及び
図4を参照して詳細説明する。
図3は、本実施形態に係る内視鏡用処置具のシース先端側に処置部150を接続部品80により取り付ける構造を示す図であって、(a)は取り付け後の平面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA-A断面図、(d)は(c)の部分Bの拡大図である。
【0023】
まず、本実施形態が適用される処置部150は、
図3(a)に示す如く、開閉する一対のカップ状の処置片15及び16と、該処置片15及び16の基端側をX状に公差して軸18を中心に回動して開閉するための平行クランク機構を形成する開閉リンク19と、該開閉リンク19の基端側に取り付けられて直線的に進退する進退リンク21[
図3(d)]と、これら処置片15及び16と軸18と開閉リンク19とを支持するための一対の腕部及び支持脚14aを有する支持部14を備え、前記進退リンク21をシース軸方向に進退することにより開閉リンク19が軸18を中心としてカップ状の処置片15及び16を開閉するように構成されている。
【0024】
本実施形態によるシース11は、先端側から基端側へ距離L1の(所定寸法)位置にシース径の約1/2弱の深さで切り欠いた第1の切欠部11cが開けられ、このシース11の先端側に接続部品80により処置部150が抜けないように取り付けられる。この切欠部11cの開口サイズはシース11の内腔に後述の円環状の係止片82が嵌入可能な大きさであれば良い。
【0025】
この接続部品80は、
図4に示す如く、シース11の円環と略同内径円環状であって硬質金属製の係止片81と、前記シース11の切欠部11cに嵌め込むための(係止片81と比して)小径の円環状であって硬質金属製の係止片82と、該円環状の係止片81及び82の一部を間隔をもって連結接続するための硬質金属製の連結片83とから一体的に構成され、前記係止片82は、シースの内腔に嵌まる外径且つ操作ワイヤが挿通可能な内径に設定される。連結片83は外周面からの突き出し量を少なくするためにシース外皮周方向に沿って湾曲していても良い。
このように構成された接続部品80は、係止片81がシース11の先端側の円環部分を覆うと共に係止片82が切欠部11cに嵌め込まれることによってシース先端部分に取り付けられ、硬質金属製のためにシース先端部分を強固にすることができる。
【0026】
このように構成された本実施形態による内視鏡用処置具は、
図4の如く、例えば、シース11の先端面円環部分を係止片82が覆うと共に前記先端側の切欠部11cに係止片82が入り込むように嵌入する第1工程と、基端側からシース11の内腔を貫通して突き出した操作ワイヤ12の先端を進退リンク21[
図3(d)]に固定的に接続する第2工程と、該第2工程により操作ワイヤ12の先端側に固定した処置部150をシース11内に引き込み、処置部150と接続部品80の係止片81との接触面をレーザ等により「・」で示す位置他を溶接固着する第3工程を行うことによって、シース先端側に処置部150を抜けないように固定して組み立てられる。
【0027】
このように構成された内視鏡用処置具は、拡大断面を表す
図3(d)に示す如く、操作ワイヤ12の先端が係止片82の円環を貫通して進退リンク21に接続される。
図3(a)乃至(c)に示す如く、接続部品80の係止片81がシース11の先端を覆い且つ係止片82がシース11の切欠部11cに嵌め込まれ、更に処置部150の支持部14の底面が前記係止片81に溶接されると共に操作ワイヤが係止片82の円環内を貫通することによって、処置部150をシース11の先端から抜けないように固定することができる。すなわち、本実施形態による内視鏡用処置具は、操作ワイヤ12が貫通した接続部品80の係止片82をシース11の切欠部11cに嵌め込み且つシース11の先端の円環部分を覆う係止片81が処置部150の支持部14と溶接されることによって、接続部品80をシース11の先端に固定することができる。
【0028】
このように構成された内視鏡用処置具は、シース11が可撓性を有しかつ適度の腰の強さ(屈曲耐性)を有する細長筒状の樹脂により構成しているため、ステンレス線の金属材を密着巻きしたコイルシースに比べ、部品点数やレーザ等の溶接作業箇所を少なくし、絶縁性の被覆を要せず、柔軟性があるためにチャネルへの挿入を容易にすることができる。さらに本実施形態による内視鏡用処置具は、処置部のシース先端への固定に接着剤を使用しないため、製造時の高温処理(例えば滅菌で60~70℃)による接着剤への影響や経年劣化による接着外れなどリスクを防止することもできる。
【0029】
[第2の実施形態]
前述の実施形態による内視鏡用処置具は、本発明を操作ワイヤのみを挿通するシースに適用する例であるが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば処置部を患部に案内するためのガイドワイヤも挿通する多内腔のマルチルーメンシースに適用することもでき、この第2の実施形態による内視鏡用処置具を、
図5を参照して詳細に説明する。
図5は、マルチルーメンシースの先端側に処置部150を接続部品80により取り付ける構造を示す図であって、(a)は取り付け後の平面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA-A断面図、(d)は(c)の部分Bの拡大図、(e)先端側から見た正面図である。
【0030】
本実施形態が適用されるシース110は、
図5(c)(d)に示す如く、操作ワイヤ12を挿入するルーメン110aとガイドワイヤを挿通するルーメン110bとが開口されるマルチルーメンシースであって、拡大断面を表す
図5(d)に示す如く、操作ワイヤ12の先端が係止片82の円環を貫通して進退リンク21に接続され、
図5(a)乃至(c)、(e)の如く、接続部品80の係止片81がシース110先端のルーメン110aの円環部分を覆い、且つ係止片82がシース110の切欠部11cに嵌め込まれ、更に処置部150の支持部14の底面が前記係止片81に溶接されることによって、処置部150をシース11の先端に抜けないように固定することができる。
【0031】
すなわち、本実施形態による内視鏡用処置具は、シース110が操作ワイヤ12を挿通するルーメン110aとガイドワイヤを挿通するルーメン110bとを有するマルチルーメンシースに対して、操作ワイヤ12が貫通した接続部品80の係止片82をシース110の切欠部11cに嵌め込み且つシース110先端のルーメン110a円環部分を覆う係止片82を処置部150の支持部14に溶接して接続部品80をシース110の先端に固定すると共に、接続部品80がルーメン110aに挿通された操作ワイヤ12が係止片82の円環内を貫通するように配置されている。
【0032】
このように構成された内視鏡用処置具は、第1実施形態同様に、ステンレス線の金属材を密着巻きしたコイルシースに比べ、部品点数やレーザ等の溶接作業箇所を少なくし、絶縁性の被覆を要せず、柔軟性があるためにチャネルへの挿入を容易にすることができる。さらに本実施形態による内視鏡用処置具は、接着剤を使用しないため、高温処理による接着剤への影響や経年劣化による接着外れなどリスクを防止することもできる。
【0033】
なお、本例では内腔であるルーメンが2つのマルチルーメンシースに本発明を適用する例を説明したがルーメンの数は2つに限られるものではなく、3つ以上であっても良い。
【0034】
また、前述の各実施形態においては、シースの先端に配置した接続部品を露出する例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、接続部品を含むシース先端部分を熱収縮性のチューブにより覆い、加熱により収縮させてシース先端部分をチューブにより被覆するように構成しても良く、後述の実施形態においても同様である。この例の内視鏡用処置具は、シースの折れ・裂けを防止する補強効果、接続部品の更なる抜け防止効果、内視鏡挿入部のチャネル内での引っ掛かりの防止効果を期待することができる。
【0035】
[第3の実施形態]
前述の各実施形態による内視鏡用処置具は、シースの先端側に処置部を固定する例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、処置部を操作者の操作により回動自在に構成しても良く、この実施形態を、
図6を参照して説明する。
図6は、マルチルーメンシースの先端側に回動自在とした処置部150を接続部品80により取り付ける構造を示す図であって、(a)は取り付け後の平面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は部分Bの拡大図である。
【0036】
本実施形態が適用されるシース110は、第2実施形態と同様にルーメン110a及びルーメン110bとが開口されるものであって、本実施形態による内視鏡用処置具は、断面を示す
図6(b)(c)の如く、シース110の先端側に取り付けた接続部品80と処置部150との間に処置部150をシース110に対して回動可能に支持する回動部200を設けたものである。
【0037】
本実施形態による内視鏡用処置具は、操作ワイヤ12の先端が係止片82の円環を貫通して進退リンク21に接続され、接続部品80の係止片81がシース110先端のルーメン110aの開口部を覆い、且つ係止片82がシース110の切欠部11cに嵌め込み、更に処置部150の支持部140と接続部品80の係止片81との間に滑り軸受を形成する回動部200を設け、回動部200の基端側を係止片81に溶接することによって、処置部150をシース11の先端に抜けず且つ回動可能に支持することができる。
【0038】
この回動部200は、拡大図である
図6(c)の如く、操作ワイヤ12を挿通するシース110先端のルーメン110aの円環部分を覆う円環状の係止片81に挿入してレーザ等により溶接固定される固定軸受202と、該固定軸受202の細径部の外周に配置され、操作ワイヤ12と接続された進退リンク21を貫通する処置部150の支持部の支持脚140aに溶接された回動軸受201とを備え、回動軸受201に固定された処置部150が、固定軸受202の外周を回動自在且つ先端側へ抜けないように構成されている。すなわち、本実施形態においては、前記係止片81と接続される固定軸受202と該固定軸受202の外周に回動自在に位置して処置部と溶接して固着される回動軸受201を含む回動部200を設け、該回動部200がシース110に対して処置部150を回動自在に支持している。
【0039】
このように構成された本実施形態による内視鏡用処置具は、医師等の操作者が操作部13の操作部本体13aを回動することにより操作ワイヤ12が回転し、シース110に対して処置部150を回動することができ、前述の各実施形態による効果に加え、シース110に対して処置部150を回転可能として処置を施すのに最適な方向に回動することができる。
【0040】
このように構成された内視鏡用処置具は、前述の各実施形態同様に、ステンレス線の金属材を密着巻きしたコイルシースに比べ、部品点数やレーザ等の溶接作業箇所を少なくし、絶縁性の被覆を要せず、柔軟性があるためにチャネルへの挿入を容易にすることができることに加え、接着剤を使用しないため、高温処理による接着剤への影響や経年劣化による接着外れなどリスクを防止することもできる。
【0041】
[第4の実施形態]
前述の実施形態による内視鏡用処置具は、
図4に示した構造の第1の接続部品80を使用する例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、他の構造の接続部品であっても良く、この接続部品の他の構造例を、
図7を参照して説明する。
【0042】
本実施形態による接続部品90は、
図7の如く、シース110と略同径円環状の係止片91と、前記シース110の切欠部110cに嵌め込むための(係止片91と比して)小径の円環状の係止片92と、該係止片92の下端から係止片91の方向に向かって折れ曲がるように突出する爪片94と、前記円環状の係止片91及び92の一部を直線的に連結するための連結片93とから構成される。
【0043】
本実施形態による内視鏡用処置具は、
図7(c)の平面図に示す如く、前述の実施形態と同様な工程によりシース110の先端において接続部品90の係止片91がシース110の先端を覆い且つ係止片92をシース110の切欠部110cに嵌め込み、更に処置部150の支持部14の底面を前記係止片91に溶接することに加え、
図7(d)の断面図の如く、爪片94をシース110の先端側に向かってルーメン内壁に沿わせるまたは食い込ませることにより、接続部品のぐらつきを防止すると共に処置部150をシース11の先端に抜けないように固定することができる。
【0044】
[第5実施形態]
前述の各実施形態による内視鏡用処置具は、シースの先端側に処置部を接続部品により取り付ける例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、樹脂製シースの基端側を補強する構造を加えても良く、この他の実施形態を、
図8以降を参照して説明する。
【0045】
まず、前述の実施形態による内視鏡用処置具は、可撓性がある合成樹脂製のシースを使用するため操作部への取り付けるシース基端側での折れや裂け等の破損を防止する必要があり、このため第5の実施形態による内視鏡用処置具は、操作部に接続するシース基端側にも本発明による接続部品を適用する。
図8は、本実施形態によるシース基端側に取り付ける接続部品60及び補強部品70並びに当該部品をシース基端に取り付けた状態を説明するための断面を示す図である。
【0046】
まず、本実施形態による接続部品60は、
図8(a)に示す如く、操作ワイヤを挿通するルーメンの基端側から所定間隔位置に開口された第2の切欠部110dに嵌入される硬質金属製の係止片61と、シースの基端側のルーメン開口部の円環部分を覆う硬質金属製の係止片62と、該係止片61及び係止片62の一部を間隔をもって連結接続する硬質金属製の連結片63とから一体的に構成される。前記係止片61は、
図8(c)にも示す如く、連結片63と接続される上部がシース外周に沿った湾曲形状且つ下部がガイドワイヤを挿通するルーメン領域に接するための直線形状であって、シースの内腔に嵌まる外径且つ操作ワイヤが挿通可能な内径に形成される。前記係止片62は、操作ワイヤを挿通するルーメンを覆って操作ワイヤが挿通可能な内径の円環状に形成されている。また、連結片63は外周面からの突き出し量を少なくするためにシース外皮周方向に沿って湾曲していても良い。
【0047】
本実施形態による補強部品70は、操作ワイヤを挿通するルーメンを補強するための部品であって、
図8(b)に示す如く、操作ワイヤを挿通するルーメンに挿入される円筒状の挿入筒片71と、該挿入筒片71の基端側が貫通してシース径より大きく基端面を覆う円板状の蓋片72とから構成される。この挿入筒片71の長さは、操作部近傍のシースが折れやすいため操作部の取り扱いに邪魔にならない程度に長い方が好ましい。なお、シングルルーメンシースの場合、挿入筒片71は蓋片72の中央を貫通するように組み立てられる。
【0048】
このように構成された接続部品60及び補強部品70は、シース110基端側のルーメン110aの基端側の円環部分を係止片62が覆うと共にシース110の所定位置に開口された切欠部110dに係止片61が入り込むように嵌入する工程と、シース110基端側のルーメン110aに補強部品70の挿入筒片71を挿入してシース110の基端側の全面を円板状の蓋片72が覆うように取り付ける工程と、接続部品60及び補強部品70を取り付けたシース110を操作部13のシース接続部13cに挿入する工程と、を行うことによって、
図8(d)及び(e)に示す如く、挿入筒片71が操作ワイヤ用のルーメン110aの内腔に位置して補強すると共に接続部品60が挿入筒片71の抜け防止を施すことができる。
【0049】
[シース種類による樹脂製シースの基端側を補強する構造例]
次にシース種類の相違に対応した操作部への取り付け構造例を
図9を参照して説明する。
図9(a)はシース種類がガイドワイヤを挿入しないマルチルーメンシースに適用した例を示し、
図9(b)はガイドワイヤ挿入部をシースに取り付け、ガイドワイヤを挿入部から挿入するマルチルーメンシースに適用した例を示す図である。
【0050】
まず、本実施形態に適用される操作部は、前述の
図2を用いて説明したように操作者が親指等を挿入する操作部本体と、操作者が人差し指及び中指等を挿入して前記操作部本体に対してスライドするスライダと、シース後端を接続するためのシース接続部と、操作ワイヤへ通電するためのコネクタとを備え、操作ワイヤの基端をスライダに接続し、操作部本体に対してスライダを進退操作することによって処置部をシースの先端側において出し入れするように構成されるものであり、他実施形態も同様であるが、この例に限られるものではない。
【0051】
[適用例1]
ガイドワイヤを挿入しないマルチルーメンシースの基端側を補強する適用例は、
図9(a)の断面図に示す如く、操作部本体先端側のシース接続部13cが、シース110を挿通するために開口された貫通孔13fと、該貫通孔13fより大径であって該大径と貫通孔13f径との段差に蓋片72を押しつけるネジ構造の係止部13eを備え、シース接続部13cの基端側から補強部品70を取り付けたシース110を先端側に向かって挿通して係止部13eが蓋片72を先端側に押しつけることによって補強部品70をシース接続部13cに固定することができる。
【0052】
このように構成された本実施形態による内視鏡用処置具は、補強部品70の挿入筒片71がシース接続部13cの貫通孔13f内から突出した位置まで基端側のシース110のルーメン110aの内腔に位置することによって、シースの折れや裂け等の破損を防止すると共に接続部品60が挿入筒片71の抜け防止を施すことができる。
【0053】
[適用例2]
ガイドワイヤ挿入部をシースに取り付け、シースのルーメンに取り付けた挿入部からガイドワイヤを挿入するマルチルーメンシースへの適用例は、
図9(b)に示す如く、シース接続部13c及び係止部13eが蓋片72を先端側に押しつけることにより補強部品70をシース接続部13cに固定する構造は前述の適用例と同様であり、シース110のルーメン110bに開口したガイドワイヤ挿入孔11fにパイプ30aを取り付けたガイドワイヤ挿入部30を挿入して固定する点と、前記挿入筒片71を前記ガイドワイヤ挿入孔11fの開口位置より先端側まで長尺状に延ばし、挿入筒片71とパイプ30aとがルーメン110a及び110bにおいて重複する重複部分を設けた点が相違し、これらの相違点によって2つのルーメン110a及び110b内を2本の筒部(挿入筒片71及びパイプ30a)を挿入して強度を更に向上することができる。
なお、本例においてはガイドワイヤ挿入部を有するマルチルーメンシースに適用した例を説明したが、ガイドワイヤ挿入部を設けずにガイドワイヤをガイドワイヤ挿入孔11fに直接挿入しても良い。
【0054】
また、前述の各実施形態においては処置部としてカップ型鉗子を例にとって説明したが、本発明はこの処置部に限られることなく、例えば、高周波電流を印加して患部組織等の切開を行う鋏型の処置部等であっても良い。
【0055】
また、前述の各実施形態においてはシース先端側の切欠部に嵌入する係止片は形状がルーメンと同形状の円環状である例を説明したが、これに限られることなく、ルーメン断面より小さく且つ係止片の抜け防止が可能な多角形形状であっても良く、接続部品の形状もシース端面と切欠部内に位置して操作ワイヤが挿入されることにより抜け防止が可能な多角形形状であっても良い。
【符号の説明】
【0056】
1:内視鏡システム、2:挿入部、3:内視鏡操作部、4:処置具導入部、
5:内視鏡チャネル、10:内視鏡用処置具、11:シース、11c:切欠部、
11f:ガイドワイヤ挿入孔、12:操作ワイヤ、13:操作部、
13a:操作部本体、13b:スライダ、13c:シース接続部、
13d:コネクタ、13e:係止部、13f:貫通孔、14:支持部、
14a:支持脚、15:処置片、18:軸、19:開閉リンク、
21:進退リンク、30:ガイドワイヤ挿入部、30a:パイプ、
70:補強部品、71:挿入筒片、72:蓋片、80:接続部品、
81:係止片、82:係止片、83:連結片、60:接続部品、61:係止片、
62:係止片、63:連結片、94:爪片、110:シース、110c:切欠部、
110a:ルーメン、110b:ルーメン、140:支持脚、150:処置部、
200:回動部、201:回動軸受、202:固定軸受