(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160037
(43)【公開日】2024-11-11
(54)【発明の名称】介護用具、およびそれを利用した介護方法
(51)【国際特許分類】
A61G 7/057 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
A61G7/057
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075337
(22)【出願日】2023-04-29
(71)【出願人】
【識別番号】514289676
【氏名又は名称】大石 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】大石 英夫
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA01
4C040AA04
4C040BB06
4C040GG03
(57)【要約】
【課題】 被介護者を仰臥位から側臥位に体位変換する際の、同被介護者および介護者の双方の肉体的、精神的負担を軽減する上、既存の寝返り用の補助具類の装着作業をより平易に行えるようにすることができる介護用具技術を提供する。
【解決手段】 被介護者8の少なくとも背部80を支持可能な左右間横幅寸法Aと縦長寸法Bとに設定された硬質な平滑大板からなり、左右何れか一方の縁が挿し込み端縁10とされ、該挿し込み端縁10とは反対がわとなる左右何れか他方の縁にハンドル部12が設けられた寝返り補助板1を有し、幅寸法E(,H)が、該寝返り補助板1の縦長寸法Bの1/6ないし1/2に設定され、先端30(40)から基端31(41)までの長さ寸法C(F)が、該寝返り補助板1の左右間横幅寸法A以上に設定された少なくとも一対の硬質且つ平滑な上下誘導双板2が、当該寝返り補助板1と組み合わされてなる介護用具である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者の少なくとも背部を支持可能な左右間横幅寸法と縦長寸法とに設定された硬質な平滑大板からなり、左右何れか一方の縁が挿し込み端縁とされ、該挿し込み端縁とは反対がわとなる左右何れか他方の縁にハンドル部が設けられた寝返り補助板を有し、幅寸法が、該寝返り補助板の縦長寸法の1/6ないし1/2に設定され、先端から基端までの長さ寸法が、該寝返り補助板の左右間横幅寸法以上に設定された少なくとも一対の硬質且つ平滑な上下誘導双板が、当該寝返り補助板と組み合わされてなることを特徴とする介護用具。
【請求項2】
被介護者の少なくとも背部を支持可能な左右間横幅寸法と縦長寸法とに設定された硬質な平滑大板からなり、左右何れか一方の縁が挿し込み端縁とされ、該挿し込み端縁とは反対がわとなる左右何れか他方の縁にハンドル部が設けられた寝返り補助板を有し、幅寸法が、該寝返り補助板の縦長寸法の1/6ないし1/2に設定され、先端から基端までの長さ寸法が、該寝返り補助板の左右間横幅寸法以上に設定された少なくとも一対の硬質且つ平滑な上下誘導双板が、当該寝返り補助板と組み合わされ、仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外より、先端からから挿し込まれた少なくとも一対の上下誘導双板の基端間より当該寝返り補助板が、同挿し込み端縁から案内される如く挿し込まれ、被介護者の少なくとも背部範囲を支持可能に配置され、介護者による側臥位への姿勢移行を補助可能なものとされたことを特徴とする介護用具。
【請求項3】
被介護者の少なくとも背部を支持可能な左右間横幅寸法と縦長寸法とに設定された硬質な平滑大板からなり、左右何れか一方の縁が挿し込み端縁とされ、該挿し込み端縁とは反対がわとなる左右何れか他方の縁にハンドル部が設けられた寝返り補助板を有し、幅寸法が、該寝返り補助板の縦長寸法の1/6ないし1/2に設定され、先端から基端までの長さ寸法が、該寝返り補助板の左右間横幅寸法以上に設定された硬質且つ平滑な上誘導小板および硬質且つ平滑な下誘導大板からなる少なくとも一対の上下誘導双板が、当該寝返り補助板と組み合わされてなることを特徴とする介護用具。
【請求項4】
寝返り補助板が、被介護者の背部、要部および下腿に及ぶ範囲を支持可能な左右間横幅寸法と縦長寸法とに設定された、前記請求項1ないし請求項3何れか一記載の介護用具。
【請求項5】
寝返り補助板が、その挿し込み端縁に沿って低摩擦摺動部が設けられ、同低摩擦摺動部の最先端に沿って高摩擦端部が設けられてなる、前記請求項1ないし請求項3何れか一記載の介護用具。
【請求項6】
上下誘導双板の上誘導小板の幅寸法および長さ寸法が、下誘導大板の幅寸法および長さ寸法よりも小さく設定され、同上誘導小板および下誘導大板は、夫々基端の幅寸法よりも先端の幅寸法が小さく設定されたものとなっている、前記請求項3記載の介護用具。
【請求項7】
被介護者の両脚間に挟み込み可能に設定された形状の仕切り部を有し、被介護者が側臥位の場合に該仕切り部の下がわとなる位置に、被介護者の脚の直径の1/3未満が嵌まる浅円弧筒部が設けられ、被介護者が側臥位の場合に該仕切り部の上がわとなる位置に、被介護者の脚の直径の1/3を超える範囲が嵌まる深円弧筒部が設けられた両脚保持ギプスと、該両脚保持ギプスを挟み込んだ被介護者の両脚の周囲に巻き付けられる少なくとも1本の緊縛ベルトとからなる両脚結束具が追加して組み合わされた、前記請求項1ないし請求項3何れか一記載の介護用具。
【請求項8】
仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板を、その先端から挿し込んだ後、該少なくとも一対の上下誘導双板の間に、寝返り補助板を、その挿し込み端縁から挿し込み、同寝返り補助板を、同上下誘導双板を案内に当該被介護者の少なくとも背部範囲下まで滑り込ませた上、各一対の上下誘導双板を抜き去り、当該寝返り補助板のハンドル部を掴み、同寝返り補助板の挿し込み端縁を支点に、上方に引き揚げるようにして被介護者を側臥位とするよう操作することを特徴とする、前記請求項1ないし請求項3何れか一記載の介護用具を利用した介護方法。
【請求項9】
仰臥位の被介護者の両脚間に両脚結束具の両脚保持ギプスの仕切り部を配し、側臥位とした場合に下がわとなる脚に浅円弧筒部を嵌合し、側臥位とした場合に上がわとなる脚に深円弧筒部を嵌合した上、両脚の周囲に当該両脚結束具の少なくとも1本の緊縛ベルトを巻き掛け、該両脚を揃えた状態に纏めてから、同仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板を、その先端から挿し込んだ後、該少なくとも一対の上下誘導双板の間に、寝返り補助板を、その挿し込み端縁から挿し込み、同寝返り補助板を、同上下誘導双板を案内に当該被介護者の少なくとも背部範囲下まで滑り込ませた上、各一対の上下誘導双板を抜き去り、当該寝返り補助板のハンドル部を掴み、同寝返り補助板の挿し込み端縁を支点に、上方に引き揚げるようにして被介護者を側臥位とするよう操作した後、当該結束ベルトおよび両脚保持ギプスを被介護者の両脚から取り外すようにすることを特徴とする、前記請求項7記載の介護用具を利用した介護方法。
【請求項10】
仰臥位の被介護者の両脚間に両脚結束具の両脚保持ギプスの仕切り部を配し、側臥位とした場合に下がわとなる脚に浅円弧筒部を嵌合し、側臥位とした場合に上がわとなる脚に深円弧筒部を嵌合した上、両脚の周囲に当該両脚結束具の少なくとも1本の緊縛ベルトを巻き掛け、該両脚を揃えた状態に纏めてから、同仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板の上誘導小板を、その先端から挿し込んだ後、該上誘導小板の基端とマットレスなどの寝具との間に、当該被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板の下誘導大板を、その先端から挿し込んだ上、当該少なくとも一対の上下誘導双板の上誘導小板と、同下誘導大板との間に、寝返り補助板を、その挿し込み端縁から挿し込み、同寝返り補助板を、上誘導小板と下誘導大板とを案内に当該被介護者の少なくとも背部範囲下まで滑り込ませた後、各一対の上下誘導双板を抜き去り、当該寝返り補助板のハンドル部を掴み、同寝返り補助板の挿し込み端縁を支点に、上方に引き揚げるようにして被介護者を側臥位とするよう操作した後、周囲固定部に固定された既存の側臥位維持用具を用いて該被介護者の側臥位となった身体を安定的に保持するようにした上、当該両脚結束具の少なくとも1本の緊縛ベルトおよび両脚保持ギプスを被介護者の両脚から取り外すようにすることを特徴とする、前記請求項3を選択した請求項7記載の介護用具を利用した介護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、介助無しに自ら寝返りを打つことのできない床臥者(被介護者)に用いる介護技術に関連するものであり、特に、介護を施す介護者、および、介護を受ける被介護者の双方の負担を軽減する介護用具を製造、提供する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
身動きが自由にならない被介護者にとって、床ずれの防止や清拭、おむつの交換などに際し、その都度、介護者が、仰臥位の被介護者の肩や背中、腰などを上方に引きお越しながら転がすように押して側臥位に姿勢を変えたり、側臥位となった場合に被介護者の前方となる位置に配した介護者が、同介護者から遠いがわの仰臥位の被介護者の腕を掴んで引っ張ったり、立て膝とした被介護者の膝を引き倒したりするなどして側臥位に姿勢を変えたりする必要があり、こうした動作が一日に何度となく繰り返されるから、被介護者は勿論のこと介護者にとっても肉体的、精神的負担の大きな作業となっていた。
【0003】
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1に提案されているものに代表されるように、ベッド側面から立設する柵体に着脱自在に取り付けるための取付部と、屈曲自在の帯部と、帯部の一端に連結した軸部とを備え、帯部を軸部に巻きつけて収容自在とし、被介護者を仰向け状態から横向き状態へ寝返りをさせることができると共に、帯部を軸部に巻きつけて収容しておけば、寝返り等を必要としないとき、ベッド上面に帯部が敷設されないため、被介護者の不快感を和らげることができる。また、帯部を軸部に巻きつけて収容した状態であれば、介護用補助具が全体としてコンパクトになり、かつ、当該取付部が着脱自在であるから、複数のベッドにおいて相互に利用可能であって経済的であると共に、その持ち運びも容易であるから、介護者の負担が軽減される介護用補助具や、同特許文献2に見られるような、被介護者の両脚を開いた状態のまま身体を横転するときの介助具であって、該介助具は、仰臥位の被介護者の両脚の間に挟み得る大きさであり、その左右両側面に、被介護者の脚の内側にすっぽり嵌まり込み得る深さの脚保持溝を形成したものとされ、仰臥位の被介護者の左脚と右脚とを介助具の脚保持溝に嵌め込むと、被介護者の胴体と介助具とが全体として1本の丸太のような状態になると共に、被介護者の両脚は開いた状態に保持され、一人の介護者が被介護者の胴体と介助具とに手を当てて、それら被介護者の胴体と介助具とを同時に横転させることにより、被介護者を仰臥位と側臥位とに姿勢変更させることができる開脚保持式寝返り介助具、および、同特許文献3のように、被介護者の横方向に沿って配置され、内側に前記被介護者の身体を囲繞可能な空間を有する複数の円環状部材と、前記被介護者の縦方向に沿って配置され、各円環状部材を連結する連結部材とを備えており、各円環状部材が前記被介護者の身体を囲繞した状態で横方向に回転されることにより前記被介護者を寝返りさせることができるものとされた寝返り補助器などが散見される。
【0004】
しかし、前者特許文献1に示されているような介護用補助具は、使用する度に、帯部をベッドのマットレスと被介護者の背中や腰との間に挿し通し、同被介護者の身体に巻き掛けてから、同被介護者の身体を仰臥位から側臥位へと引き起こすようにして使用するものであるから、使用の前に必ず、仰臥位の被介護者の背中や腰などを僅かに浮かせるよう持ち上げる作業が必須となり、被介護者および看護者への負担が残されたものとなっていた。また、特許文献2の開脚保持式寝返り介助具は、被介護者の両脚を開脚した状態に束ねて仰臥位から側臥位への引き起こしを容易なものとしているが、被介護者の両肩および胴体を同時に引き起こす必要があり、介護者の負担が残るものであり、両脚と胴体との同時引き起こしを怠ると身体が捻れてしまい被介護者に苦痛を与えてしまう恐れがあった。さらに、特許文献3に代表する寝返り補助器は、被介護者に該寝返り補助器を装着する際に、ベッドのマットレスと被介護者の背中、腰および脚との間に円環状部材部分を挿し通す必要があり、同被介護者の身体を持ち上げなければ当該寝返り補助器内に、同被介護者を収容することができず、こうした寝返り補助器の装着および取り外しの作業の際に、被介護者および介護者の双方に大きな負担が掛かってしまう虞があるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-158573号公報
【特許文献2】特許第2580492号明細書
【特許文献3】実用新案登録第3132543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種寝返り用の補助具類などは、何れも、それらの器具類を装着する際に、被介護者および介護者の双方に痛みや苦痛などの負担を強いるものとなっており、それら寝返り用の補助具類の装着の際の被介護者の苦痛や痛みを和らげることができると共に、介護者の肉体的、精神的負担を軽減し、さらに、高齢者の増加や介護に携わる人員の不足などに鑑み、1人の被介護者に対し1人の介護者が、寝返り介助する際の負担を大幅に軽減することができる新たな介護用具技術の開発の必要性を痛感するに至ったものである。
【0007】
(発明の目的)
そこで、この発明は、被介護者を仰臥位から側臥位に体位変換する際の、同被介護者および介護者の双方の肉体的、精神的負担を軽減する上、既存の寝返り用の補助具類の装着作業をより平易に行えるようにすることができる新たな介護用具技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の介護用具、およびそれを利用した介護方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の介護用具は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、被介護者の少なくとも背部を支持可能な左右間横幅寸法と縦長寸法とに設定された硬質な平滑大板からなり、左右何れか一方の縁が挿し込み端縁とされ、該挿し込み端縁とは反対がわとなる左右何れか他方の縁にハンドル部が設けられた寝返り補助板を有し、幅寸法が、該寝返り補助板の縦長寸法の1/6ないし1/2に設定され、先端から基端までの長さ寸法が、該寝返り補助板の左右間横幅寸法以上に設定された少なくとも一対の硬質且つ平滑な上下誘導双板が、当該寝返り補助板と組み合わされてなるものとした構成を要旨とする介護用具である。
【0009】
この基本的な構成からなる介護用具は、その表現を変えて示すならば、被介護者の少なくとも背部を支持可能な左右間横幅寸法と縦長寸法とに設定された硬質な平滑大板からなり、左右何れか一方の縁が挿し込み端縁とされ、該挿し込み端縁とは反対がわとなる左右何れか他方の縁にハンドル部が設けられた寝返り補助板を有し、幅寸法が、該寝返り補助板の縦長寸法の1/6ないし1/2に設定され、先端から基端までの長さ寸法が、該寝返り補助板の左右間横幅寸法以上に設定された少なくとも一対の硬質且つ平滑な上下誘導双板が、当該寝返り補助板と組み合わされ、仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外より、先端からから挿し込まれた少なくとも一対の上下誘導双板の基端間より当該寝返り補助板が、同挿し込み端縁から案内される如く挿し込まれ、被介護者の少なくとも背部範囲を支持可能に配置され、介護者による側臥位への姿勢移行を補助可能なものとされた構成からなる介護用具となる。
【0010】
より具体的には、被介護者の少なくとも背部を支持可能な左右間横幅寸法と縦長寸法とに設定された硬質な平滑大板からなり、左右何れか一方の縁が挿し込み端縁とされ、該挿し込み端縁とは反対がわとなる左右何れか他方の縁にハンドル部が設けられた寝返り補助板を有し、幅寸法が、該寝返り補助板の縦長寸法の1/6ないし1/2に設定され、先端から基端までの長さ寸法が、該寝返り補助板の左右間横幅寸法以上に設定された硬質且つ平滑な上誘導小板および硬質且つ平滑な下誘導大板からなる少なくとも一対の上下誘導双板が、当該寝返り補助板と組み合わされた構成からなる介護用具となる。
【0011】
さらに、具体的なものとして示すならば、被介護者の両脚間に挟み込み可能に設定された形状の仕切り部を有し、被介護者が側臥位の場合に該仕切り部の下がわとなる位置に、被介護者の脚の直径の1/3未満が嵌まる浅円弧筒部が設けられ、被介護者が側臥位の場合に該仕切り部の上がわとなる位置に、被介護者の脚の直径の1/3を超える範囲が嵌まる深円弧筒部が設けられた両脚保持ギプスと、該両脚保持ギプスを挟み込んだ被介護者の両脚の周囲に巻き付けられる少なくとも1本の緊縛ベルトとからなる両脚結束具が、前記何れか記載の寝返り補助板および上下誘導双板に追加して組み合わされた構成からなる介護用具となる。
【0012】
(関連する発明1)
上記したこの発明の基本をなす介護用具に関連し、この発明には、それを利用した介護方法も包含している。
即ち、仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板を、その先端から挿し込んだ後、該少なくとも一対の上下誘導双板の間に、寝返り補助板を、その挿し込み端縁から挿し込み、同寝返り補助板を、同上下誘導双板を案内に当該被介護者の少なくとも背部範囲下まで滑り込ませた上、各一対の上下誘導双板を抜き去り、当該寝返り補助板のハンドル部を掴み、同寝返り補助板の挿し込み端縁を支点に、上方に引き揚げるようにして被介護者を側臥位とするよう操作するようにした、この発明の基本をなす前記何れか一記載の介護用具を利用した介護方法である。
【0013】
この介護方法を、より具体的に示すと、仰臥位の被介護者の両脚間に両脚結束具の両脚保持ギプスの仕切り部を配し、側臥位とした場合に下がわとなる脚に浅円弧筒部を嵌合し、側臥位とした場合に上がわとなる脚に深円弧筒部を嵌合した上、両脚の周囲に当該両脚結束具の少なくとも1本の緊縛ベルトを巻き掛け、該両脚を揃えた状態に纏めてから、同仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板を、その先端から挿し込んだ後、該少なくとも一対の上下誘導双板の間に、寝返り補助板を、その挿し込み端縁から挿し込み、同寝返り補助板を、同上下誘導双板を案内に当該被介護者の少なくとも背部範囲下まで滑り込ませた上、各一対の上下誘導双板を抜き去り、当該寝返り補助板のハンドル部を掴み、同寝返り補助板の挿し込み端縁を支点に、上方に引き揚げるようにして被介護者を側臥位とするよう操作した後、当該結束ベルトおよび両脚保持ギプスを被介護者の両脚から取り外すようにした、当該両脚保持ギプスと緊縛ベルトとからなる両脚結束具が追加されてなる介護用具を利用した介護方法ということができる。
【0014】
この介護方法を、表現を変えて示すと、仰臥位の被介護者の両脚間に両脚結束具の両脚保持ギプスの仕切り部を配し、側臥位とした場合に下がわとなる脚に浅円弧筒部を嵌合し、側臥位とした場合に上がわとなる脚に深円弧筒部を嵌合した上、両脚の周囲に当該両脚結束具の少なくとも1本の緊縛ベルトを巻き掛け、該両脚を揃えた状態に纏めてから、同仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板の上誘導小板を、その先端から挿し込んだ後、該上誘導小板の基端とマットレスなどの寝具との間に、当該被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板の下誘導大板を、その先端から挿し込んだ上、当該少なくとも一対の上下誘導双板の上誘導小板と、同下誘導大板との間に、寝返り補助板を、その挿し込み端縁から挿し込み、同寝返り補助板を、上誘導小板と下誘導大板とを案内に当該被介護者の少なくとも背部範囲下まで滑り込ませた後、各一対の上下誘導双板を抜き去り、当該寝返り補助板のハンドル部を掴み、同寝返り補助板の挿し込み端縁を支点に、上方に引き揚げるようにして被介護者を側臥位とするよう操作した後、周囲固定部に固定された既存の側臥位維持用具を用いて該被介護者の側臥位となった身体を安定的に保持するようにした上、当該両脚結束具の少なくとも1本の緊縛ベルトおよび両脚保持ギプスを被介護者の両脚から取り外すようにした、当該上下誘導双板が上誘導小板と下誘導大板とからなり、しかも当該両脚保持ギプスと緊縛ベルトとからなる両脚結束具が追加されてなる介護用具を利用した介護方法ということができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、この発明の介護用具によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、被介護者の少なくとも背部とマットレスなどの寝具との間に、寝返り補助板を挿し込むのに先だって、該寝返り補助板の縦長寸法の1/6ないし1/2に設定された少なくとも一対の上下誘導双板を挿し込み、それら上下誘導双板を案内として該寝返り補助板を挿し込むことにより、該寝返り補助板を低摩擦にて挿し込むことができ、しかも仰臥位から側臥位へと姿勢移行する際の被介護者の少なくとも背部を当該寝返り補助板が支持するから、体位移行に伴う被介護者の痛みや苦痛などを解消出来るのは勿論のこと、被介護者および介護者の双方の肉体的、精神的負担を大幅に軽減することができるという秀でた特徴が得られるものである。
【0016】
加えて、寝返り補助板が、被介護者の背部、要部および下腿に及ぶ範囲を支持可能な左右間横幅寸法と縦長寸法とに設定された介護用具によると、該寝返り補助板によって被介護者の身体の頭部と両足を除く略全体を背部がわから支持することができるものとなり、被介護者の体重の集中を防止して広範囲に分散することができるから、被介護者への負担が大幅に軽減されるものとなる。
【0017】
また、寝返り補助板が、その挿し込み端縁に沿って低摩擦摺動部が設けられ、同低摩擦摺動部の最先端に沿って高摩擦端部が設けられてなる介護用具によれば、低摩擦摺動部が、上下誘導双板間への寝返り補助板の挿し込みの際の摩擦抵抗を格段に軽減して介護者への負担を一段と軽減するものとなる上、被介護者を仰臥位から側臥位へ、または、側臥位から仰臥位へと体位移行する際に、支点となる挿し込み端縁の低摩擦摺動部の最先端に沿って設けられた高摩擦端部が、マットレスなどの寝具との摩擦抵抗を高め、滑ること無くより確実に寝返り補助板を引きお越し操作できるものとなり、被介護者への苦痛や、介護者への負担をより一層改善し得るものとなる。
【0018】
そして、上下誘導双板が、上誘導小板と下誘導大板との組み合わせからなるものとされた、この発明の介護用具によれば、被介護者の少なくとも背部とマットレスなどの寝具との間に、寝返り補助板を挿し込むのに先だって、最も挿し込みの抵抗が少ない上誘導小板を挿し込み、次に、該上誘導小板とマットレスなどの寝具との間に、下誘導大板を挿し込むようにすることにより、上下誘導双板の挿し込み抵抗を大幅に軽減することができ、被介護者および介護者の双方の肉体的、精神的負担を、さらに軽減することができ、該上誘導小板よりも長い下誘導大板の基端の上面を案内として、寝返り補助板の挿し込み端縁を滑走させるようにして、該上誘導小板と下誘導大板との間に当該寝返り補助板を挿し込むようことができるから、1人の介護者であっても簡単且つ迅速に寝返り補助板を被介護者の少なくとも背部下に配置することができるものとなり、しかも被介護者の衣類を巻き込んだり、身体を摩擦したりするのを、より確実に防止して痛みや苦痛を与えることなく、仰臥位から側臥位へと姿勢移行することができるものとなる。
【0019】
さらにまた、両脚保持ギプスと少なくとも1本の緊縛ベルトとからなる両脚結束具が追加して組み合わされた、この発明の介護用具によれば、被介護者の両脚間に両脚保持ギプスを挟み少なくとも1本の緊縛ベルトで両脚を揃えた状態に纏め、仰臥位から側臥位へと姿勢移行される際に、該被介護者の両脚がもつれてしまうのをより確実に防止し、被介護者の苦痛を和らげると共に、介護者の作業効率を大幅に改善することができるものとなる。
【0020】
そして、この発明の介護用具を利用した介護方法によれば、仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、直接的に寝返り補助板を挿し込むのではなく、同寝返り補助板を挿し込むのに先駆けて、少なくとも一対の上下誘導双板を挿し込んだ後に、該上下誘導双板を案内として当該寝返り補助板を挿し込むよういすることにより、同寝返り補助板を挿し込む際に被介護者の衣類を巻き込んだり、身体を摩擦したりするのを、より確実に防止して痛みや苦痛を与えることなく、しかも介護者への負担も大幅に軽減し、当該被介護者を仰臥位から側臥位へと姿勢移行する作業を格段に効率化することができるという効果を発揮する。
【0021】
加えて、寝返り補助板および同上下誘導双板に両脚結束具を追加して組み合わされてなる、この発明の介護用具を利用した介護方法によると、該両脚結束具の両脚保持ギプスと緊縛ベルトとによって被介護者8の両脚が揃えられた状態に保持されるから、仰臥位から側臥位へ姿勢移行される場合に、不用意に両脚が崩れるのを防止することができる上、被介護者の両脚の中、側臥位の場合に下がわ配置となる片脚に、浅円弧筒部が嵌合され、上がわ配置となる別の片脚に深円弧筒部が嵌合されるよう装着することにより、下がわの片脚がマットレスなどの寝具に接地し、円滑に転がるよう姿勢移行できる上、上がわの片脚が深円弧筒部によって確りと保持されるものとなり、両脚が崩れることなく、被介護者の苦痛を解消すると共に、介護者への作業負担を軽減し、より効率的な介護を実現化することができる。
【0022】
さらに、寝返り補助板および同上下誘導双板に両脚結束具を追加して組み合わされてなる、この発明の介護用具に、既存の側臥位維持用具を併用した介護方法によれば、この発明の介護用具によって仰臥位から側臥位へと姿勢移行された被介護者の身体を、当該既存の側臥位維持用具によって保持し、側臥位姿勢のまま安定的に支持することにより、治療や清拭やおむつ替えなどの様々な処置をより安全且つ効率的に行うことができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
寝返り補助板は、仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外がわから挿し込まれ、同仰臥位の被介護者の姿勢を側臥位と移行するよう引きお越し可能とする機能を分担し、少なくとも背部を支持可能な左右間横幅寸法と縦長寸法とに設定され、仰臥位から側臥位に姿勢変更される被介護者の体を充分な強度をもって支持できる程度に硬質な平滑大板からなり、左右何れか一方の縁が挿し込み端縁とされ、該挿し込み端縁とは反対がわとなる左右何れか他方の縁にハンドル部が設けられたものとしなければならず、当該寝返り補助板の左右間横幅と縦長が被介護者の背部および要部に及ぶ範囲か、または、背部、要部および下腿に及ぶ範囲かの何れか一方を支持可能な寸法に設定されたものとするのが望ましく、また、左右何れか一方の縁から左右何れか他方の縁にかけて横断された場合の断面形状が、被介護者の背部の丸みに沿うよう凹面状の緩やかな曲率をもって僅かに湾曲されたものとすることが可能である。
【0024】
寝返り補助板の挿し込み端縁は、硬質な平滑大板の左右何れか一方の縁が、シーツや衣類などに低摩擦で接するよう面取りされたものとすべきであり、該寝返り補助板の左右間横幅寸法の左右何れか一方の縁から数mmないし数cmの表裏範囲に渡り摩擦軽減用の帯状の低摩擦シートが貼着されたものや、同左右何れか一方の縁から数mmないし数cmの範囲に渡り、樹脂や自然石、人工石、金属などの低摩軽減用の部品が、外嵌されたものや、埋め込まれたもの等とされた低摩擦摺動部が、平滑面を連ねるよう仕上げられたものとするのが望ましく、当該挿し込み端縁または低摩擦摺動部の最先端部分に、引き起こしの際の支点をより確実に固定できるよう、摩擦用の天然ゴムや合成ゴムなどの部品からなる高摩擦端部が一体化されたものとすることができる。
【0025】
寝返り補助板のハンドル部は、同寝返り補助板を仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に挿し込む際に、介護者の手や腕などへの負担を軽減する機能を担い、持ち運びに際しても把持し易いよう、同寝返り補助板のハンドル部となる範囲に凹状部を設け、その凹部に棒状のハンドルが架設されたものとすることができる外、後述する実施例にも示すように、高摩擦の軟質樹脂製の膨出形状のグリップが設けられたものとすることができる。
【0026】
上下誘導双板は、仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、寝返り補助板を挿し込むのに先駆けて挿し込まれ、該寝返り補助板の挿し込みに抗する摩擦力を低減し、より弱い力でも該寝返り補助板を挿し込むことができるよう補助する機能を担い、一対の上下誘導双板は、共に同じ形状、寸法のものとすることができる外、互いに異なる形状、寸法に設定されたものとすることができ、後述する実施例にも示すように、上誘導小板、および、同上誘導小板よりも大きな下誘導大板の少なくとも一対の組み合わせからなるものとすることができ、介護者の作業性や被介護者の負担の軽減などを考慮すると、該上誘導小板および下誘導大板の一対が2組か、または、後述する実施例にも示しているように、該上誘導小板および下誘導大板の一対が3組かの何れか一方からなるものとするのが良い。
【0027】
上下誘導双板の上誘導小板は、仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、下誘導大板および寝返り補助板を挿し込むのに先駆けて、該仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に対し始めに挿し込まれ、後続して挿し込まれる下誘導大板および寝返り補助板の上がわ(仰臥位の被介護者がわ)を案内可能とする機能を担い、幅寸法が、該寝返り補助板の縦長寸法の1/6ないし1/2に設定され、先端から基端までの長さ寸法が、該寝返り補助板の左右間横幅寸法以上に設定された硬質且つ平滑な小板状のものとしなければならず、基端の幅寸法よりも先端の幅寸法が小さく設定されたものとするのが望ましく、当該上誘導小板の先端には、前述の寝返り補助板の挿し込み端縁と同様の低摩擦摺動部が設けられたものとすることができ、また、同上誘導小板の後端には、前述の寝返り補助板のハンドル部と同様に、棒状のハンドルや高摩擦の軟質樹脂製の膨出形状のグリップが設けられたものとすることができ、さらにまた、先端から基端にかけて縦断された場合の断面形状が、被介護者の背部の丸みに沿うよう凹面状の緩やかな曲率をもって僅かに湾曲されたものとすることが可能である。
【0028】
上下誘導双板の下誘導大板は、仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、先に挿し込まれた上誘導小板と、当該マットレスなどの寝具との間に、挿し込まれ、該上誘導小板との間に寝返り補助板が挿し込まれるのを案内する機能を分担し、幅寸法が、該寝返り補助板の縦長寸法の1/6ないし1/2に設定され、上誘導小板よりも大きな形状、寸法とされ、先端から基端までの長さ寸法が、該寝返り補助板の左右間横幅寸法以上に設定された硬質且つ平滑な大板状のものとしなければならず、基端の幅寸法よりも先端の幅寸法が小さく設定されたものとするのが望ましく、当該上誘導小板と同様に、下誘導大板の先端には、前述の寝返り補助板の挿し込み端縁と同様の低摩擦摺動部が設けられたものとすることができ、また、同下誘導大板の後端には、前述の寝返り補助板のハンドル部と同様に、棒状のハンドルや高摩擦の軟質樹脂製の膨出形状のグリップが設けられたものとすることができ、さらにまた、先端から基端にかけて縦断された場合の断面形状が、被介護者の背部の丸みに沿うよう凹面状の緩やかな曲率をもって僅かに湾曲されたものとすることが可能である。
【0029】
寝返り補助板および少なくとも一対の上下誘導双板(上誘導小板と下誘導大板)は、何れも硬質且つ平滑な板状のものとすべきであるが、その素材は様々なものとすることが可能であり、例えば、ポリカーボネート樹脂やABS樹脂などの合成樹脂製のものや、炭素繊維樹脂やガラス繊維樹脂などの複合素材製のもの、木や合板などの木製のもの、アルミニウム合金やステンレス合金その他の金属製のもの、または、それらの素材が組み合わせられてなるものなどとすることができる。
【0030】
両脚結束具は、被介護者の両脚を纏め、介護者による被介護者の姿勢変更操作をより容易なものとする機能を担い、被介護者の両脚間に挟み込み可能に設定された形状の仕切り部を有し、被介護者が側臥位の場合に該仕切り部の下がわとなる位置に、被介護者の脚の直径の1/3未満が嵌まる浅円弧筒部が設けられ、被介護者が側臥位の場合に該仕切り部の上がわとなる位置に、被介護者の脚の直径の1/3を超える範囲が嵌まる深円弧筒部が設けられた両脚保持ギプスと、該両脚保持ギプスを挟み込んだ被介護者の両脚の周囲に巻き付けられる少なくとも1本の緊縛ベルトとからなるものとするのが望ましく、該両脚保持ギプスおよび緊縛ベルトは、被介護者の脚に触れる範囲に、圧迫を軽減して摩擦を高め、滑りを止めるフェルトや軟質ゴム、軟質発泡樹脂などの貼着や、フロッキー加工などによる起毛処理などが施され、柔軟性や通気性を有したものとするのが良い。
【0031】
この発明の基本をなす介護用具を利用した介護方法は、仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板を、その先端から挿し込んだ後、該少なくとも一対の上下誘導双板の間に、寝返り補助板を、その挿し込み端縁から挿し込み、同寝返り補助板を、同上下誘導双板を案内に当該被介護者の少なくとも背部範囲下まで滑り込ませた上、各一対の上下誘導双板を抜き去り、当該寝返り補助板のハンドル部を掴み、同寝返り補助板の挿し込み端縁を支点に、上方に引き揚げるようにして被介護者を側臥位とするよう操作することにある。
【0032】
また、介護用具を利用した介護方法は、後述する実施例の作用・効果の項にも示すように、当該上下誘導双板および寝返り補助板の仰臥位の被介護者の背部下への挿入操作か、該寝返り補助板の挿入後に当該上下誘導双板を抜き去った後か、または、該寝返り補助板による側臥位への姿勢移行操作かの何れかの操作段階に先駆けて、仰臥位の被介護者の両脚間に両脚結束具の両脚保持ギプスの仕切り部を配し、側臥位とした場合に下がわとなる脚に浅円弧筒部を嵌合し、側臥位とした場合に上がわとなる脚に深円弧筒部を嵌合した上、両脚の周囲に当該両脚結束具の少なくとも1本の緊縛ベルトを巻き掛け、該両脚を揃えた状態に纏める作業を行うことができ、さらに、該緊縛ベルトは、被介護者の背部、腰部、下腿の範囲に及ぶ縦長寸法に設定された寝返り補助板と、該被介護者の両脚間に取り付けられた両脚保持ギプスとを一括りにするよう巻き掛けて装着できる長さ寸法に設定されたものとすることが可能である。
【0033】
さらにまた、介護用具を利用した介護方法は、後述する実施例の作用・効果の項にも示すように、仰臥位の被介護者の少なくとも背部と、それに接するマットレスなどの寝具との間に、同被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板の上誘導小板を、その先端から挿し込んだ後、該上誘導小板の基端とマットレスなどの寝具との間に、当該被介護者の左右何れか一方の外がわから少なくとも一対の上下誘導双板の下誘導大板を、その先端から挿し込んだ上、当該少なくとも一対の上下誘導双板の上誘導小板と、同下誘導大板との間に、寝返り補助板を、その挿し込み端縁から挿し込み、同寝返り補助板を、上誘導小板と下誘導大板とを案内に当該被介護者の少なくとも背部範囲下まで滑り込ませた後、各一対の上下誘導双板を抜き去り、当該寝返り補助板のハンドル部を掴み、同寝返り補助板の挿し込み端縁を支点に、上方に引き揚げるようにして被介護者を側臥位とするよう介護の作業を進めるのが良い。
【0034】
また、介護用具を利用した介護方法は、該介護用具を利用して被介護者を側臥位とするよう操作した後、ベッドの補助柵や手摺りなどの周囲固定部に固定された既存の側臥位維持用具を、側臥位の被介護者の身体を僅かに浮かせ、同被介護者の身体に沿わせた寝返り補助板およびその挿し込み端縁を案内とするようにして巻き掛けてから該寝返り補助板を抜き去るようにすれば、当該被介護者の側臥位を安定的に保持することができ、従前までの仰臥位の被介護者の背部を僅かに浮かせるようにして既存の側臥位維持用具を巻き掛けるよりも、被介護者および介護者への負担を大幅に軽減できるものとなり、そしてまた、両脚結束具が装着されている場合には、治療や清拭、おむつ替えなどの必要に応じて行われる処置の前後何れかに、同両脚結束具の少なくとも1本の緊縛ベルトおよび両脚保持ギプスを被介護者の両脚から取り外すようにすることができる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図面は、この発明の介護用具、およびそれを利用した介護方法の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【
図1】寝返り補助板を示す背面図、平面図、右側面図、正面図、底面図である。
【
図2】さらに改良を加えた寝返り補助板を示す背面図、平面図、右側面図、正面図、底面図である。
【
図3】上下誘導双板の上誘導小板および下誘導大板を示す背面図、平面図、右側面図、正面図、である。
【
図4】両脚結束具の両脚保持ギプスおよび緊縛ベルトを示す三面図である。
【
図6】両脚結束具を装着された仰臥位の被介護者を示す側面図である。
【
図7】両脚結束具を装着された仰臥位の被介護者を示す平面図である。
【
図8】上誘導小板を背下に挿し込まれた仰臥位の被介護者を示す平面図である。
【
図9】下誘導大板を背下に挿し込まれた仰臥位の被介護者を示す平面図である。
【
図10】上下誘導双板を背下に挿し込まれた仰臥位の被介護者を示す正面図である。
【
図11】上下誘導双板間に寝返り補助板が挿し込まれた状態を示す正面図である。
【
図12】上下誘導双板間に寝返り補助板が挿し込まれた状態を示す平面図である。
【
図13】側臥位への移行を開始する寝返り補助板を示す正面図である。
【
図14】側臥位への移行を終える寝返り補助板を示す正面図である。
【
図15】護用具を利用した介護方法を示すフローチャートである。
【実施例0036】
図1ないし
図5に示す事例は、被介護者8の少なくとも背部80を支持可能な左右間横幅寸法Aと縦長寸法Bとに設定された硬質な平滑大板からなり、左右何れか一方の縁が挿し込み端縁10とされ、該挿し込み端縁10とは反対がわとなる左右何れか他方の縁にハンドル部12が設けられた寝返り補助板1を有し、幅寸法E(,H)が、該寝返り補助板1の縦長寸法Bの1/6ないし1/2に設定され、先端30(40)から基端31(41)までの長さ寸法C(F)が、該寝返り補助板の左右間横幅寸法A以上に設定された少なくとも一対の硬質且つ平滑な上下誘導双板2が、当該寝返り補助板1と組み合わされてなる、この発明の介護用具における代表的な一実施例を示すものである。
【0037】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の寝返り補助板1は、被介護者8の背部80、要部81および下腿(脚)82,83に及ぶ範囲を支持可能な左右間横幅寸法A(300mm)と縦長寸法B(1300mm)とに設定されたアルミニウム合金板製の心材の全体に硬質合成樹脂製の皮膜(樹脂素材の静摩擦係数が0.3ないし0.5)が設けられてなる硬質な平滑大板1からなり、左右何れか一方の縁10が角を落として面取りされた挿し込み端縁10とされ、該挿し込み端縁10とは反対がわとなる左右何れか他方の縁11に、高摩擦軟質合成樹脂製(樹脂素材の静摩擦係数が1.2ないし1.5)のハンドル部12が、縦長寸法B方向に沿う帯状の範囲に渡って配され、同帯状の範囲の左右間横幅寸法A方向の外端縁に沿って、上下方向(平滑大板1の厚み方向)に膨出し、強固に一体化されたものとなっており、さらに、縦長寸法B方向の両端から約320mmの左右間横幅寸法A方向の外縁(10,11)寄りとなる合計4箇所の夫々に、牽引用の紐や、被介護者8の身体に繋着するバンド類等を通したり、保管時にフックなどに掛けたりすることができる操作用孔13,13,……が上下方向(平滑大板1の厚み方向)に貫通されたものとなっている。
【0038】
また、
図2に示すように、この発明の寝返り補助板1は、その挿し込み端縁10に沿って低摩擦(素材の静摩擦係数が0.03~0.45)のフッ素樹脂被膜、人工石の埋込、金属部品の貼り付けなどからなる細帯状の低摩擦摺動部14が設けられ、さらに、同低摩擦摺動部14の最先端に沿って天然ゴムまたは合成ゴムなどからなる直線状の高摩擦端部15(素材の静摩擦係数が1.2ないし1.5)が設けられ、また、左右何れか他方の縁11に手指を通すことができる上下反転凹字状のハンドル孔16が設けられ、該ハンドル孔16の両端間に金属製の円柱棒からなるハンドル部12が架け渡され強固に一体化されたものとすることができる。
【0039】
図3に示す上下誘導双板2の上誘導小板3は、その長さ寸法Cが、寝返り補助板1の左右間横幅寸法A(300mm)と同じ300mmに設定され、同上誘導小板3の円弧形とされた先端30の幅寸法Dが95mm、同円弧形とされた基端31の幅寸法Eが150mmに設定されたアルミニウム合金製の板に低摩擦(素材の静摩擦係数が0.3ないし0.5)の合成樹脂皮膜が設けられ、該基端31には、牽引用の紐を通したり、保管時にフックなどに掛けたりすることができる操作用孔32が同上誘導小板3の厚み方向に貫通されたものとなっており、該上誘導小板3の基端31の幅寸法E(150mm)が、寝返り補助板1の縦長寸法B(1300mm)の1/6ないし1/2に設定されたものとなっている。
【0040】
上下誘導双板2の下誘導大板4は、その長さ寸法Fが、寝返り補助板1の左右間横幅寸法A(300mm)よりも長い330mmに設定され、同下誘導大板4の円弧形とされた先端40の幅寸法Gが130mm、同円弧形とされた基端41の幅寸法Hが230mmに設定されたアルミニウム合金製の板に低摩擦(素材の静摩擦係数が0.3ないし0.5)の合成樹脂皮膜が設けられ、該基端41には、牽引用の紐を通したり、保管時にフックなどに掛けたりすることができる操作用孔42が同下誘導大板4の厚み方向に貫通されたものとなっており、該下誘導大板4の基端41の幅寸法H(230mm)が、寝返り補助板1の縦長寸法B(1300mm)の1/6ないし1/2に設定されたものとなっている。
【0041】
図4に示すように、両脚結束具5の両脚保持ギプス6が、被介護者8の両脚82,83間に挟み込み可能に設定された形状部分の厚みJが100mm、長さKが440mmの仕切り部60を有し、被介護者8が側臥位の場合に該仕切り部60の下がわとなる位置に、被介護者8の脚82(83)の直径Lの1/3未満が嵌まる深さMの浅円弧筒部61が設けられ、被介護8者が側臥位の場合に該仕切り部60の上がわとなる位置に、被介護者8の脚83(82)の直径Lの1/3を超える範囲が嵌まる深さNの深円弧筒部62が設けられており、該両脚保持ギプス6を挟み込んだ被介護者8の両脚82,83の周囲に巻き付けられる長さ寸法Pであって、一端に面ファスナの雄70、他端に面ファスナの雌71が設けられた少なくとも1本の緊縛ベルト7が、当該両脚保持ギプス6と組み合わされ、当該両脚結束具5となっている。
【0042】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の介護用具(寝返り補助板1,上下誘導双板2,両脚結束具5)は、
図5ないし
図15に示すように、仰臥位の被介護者8の両脚82,83間に両脚結束具5の両脚保持ギプス6の仕切り部60を配し、側臥位とした場合に下がわとなる脚82に浅円弧筒部61を嵌合し(a)、側臥位とした場合に上がわとなる脚83に深円弧筒部62を嵌合(b)した上、両脚82,83の周囲に合計2本の結束ベルト7,7を巻き掛け、該両脚82,83を揃えた状態に纏めて(c)から、仰臥位の被介護者8の背部80ないし要部81に及ぶ範囲と、それに接するベッド9のマットレス90との間に、同被介護者8の側臥位とした場合に上がわとなる例えば右の外がわから合計3対の上下誘導双板2,2,2の上誘導小板3,3,3を、夫々先端30,30,30から挿し込む(d)、このとき各上誘導小板3,3,3は、低摩擦(素材の静摩擦係数が0.3ないし0.5)の合成樹脂皮膜が施されているから、被介護者8の衣類やマットレス90のシーツなどに引っ掛かること無く、低摩擦抵抗のまま挿し込むことが可能である。
【0043】
その後、各上誘導小板3,3,3の基端31,31,31とマットレス90との間に、当該被介護者8の側臥位とした場合に上がわとなる例えば右の外がわから当該合計3対の上下誘導双板2,2,2の下誘導大板4,4,4を、夫々先端40,40,40から挿し込む(e)。この際も、各下誘導大板4,4,4が、低摩擦(素材の静摩擦係数が0.3ないし0.5)の合成樹脂皮膜が施されたものとなっているから、マットレス90のシーツなどに引っ掛からずに低摩擦抵抗にて挿し込むことが可能である。
【0044】
このようにして合計3対の上下誘導双板2,2,2を挿し込んだ(d)、(e)後、それら各上誘導小板3,3,3,と下誘導大板4,4,4との間に、寝返り補助板1を、その挿し込み端縁10から挿し込むこととなるが、各誘導大板4,4,4の基端41,41,41が、各上誘導小板3,3,3よりも長く露出しており、より円滑に挿し込み端縁10を挿し込み操作することが可能なものとなっており、そのまま該寝返り補助板1を、当該上誘導小板3,3,3と下誘導大板4,4,4とを案内に当該被介護者8の背部80、要部81および下腿(両脚)82,83に及ぶ範囲下まで円滑に滑り込ませ(f)る操作を行うことができるものとなっている。この際、各上下誘導双板2,2,2および寝返り補助板1が互いに低摩擦(素材の静摩擦係数が0.3ないし0.5)の合成樹脂皮膜が施されたもの同士が摺動することから、介護者は軽い力で該寝返り補助板1のハンドル部12を押し込むだけで簡単に滑り込ませることが可能である。
【0045】
また、
図2に示した寝返り補助板1を使用すると、挿し込み端縁10に沿って低摩擦(素材の静摩擦係数が0.03~0.45)細帯状の低摩擦摺動部14が設けられているから、合計3対の上下誘導双板2,2,2の各上誘導小板3,3,3,と各下誘導大板4,4,4との間に、寝返り補助板1を挿し込む際の摩擦抵抗がさらに軽減され、介護者はより小な力で挿し込み操作することができるものとなる。この後、全ての上下誘導双板2,2,2の上誘導小板3,3,3と下誘導大板4,4,4とを抜き去り(g)、寝返り補助板1のハンドル部12を掴み、同寝返り補助板1の挿し込み端縁10を支点に、上方に引き揚げるようにして被介護者8を側臥位とするよう操作(h)する。この際(h)、両脚保持ギプス6の下向きとなった浅円弧筒部61はマットレス90に接地せず、被介護者8の下がわとなる脚82がマットレス90上を転がるよう姿勢移行され、しかも上がわの脚83が、深円弧筒部62によって確りと保持されるから、揃えられた両脚82,83が崩れることなく、円滑に側臥位へと移行されることとなる。
【0046】
この際(h)、
図2に示した寝返り補助板1を使用すると、当該低摩擦摺動部14の最先端に沿って直線状の高摩擦端部15(素材の静摩擦係数が1.2ないし1.5)が設けられているから、該寝返り補助板1の挿し込み端縁10が、マットレス90のシーツ上を滑ることなく、より確実に支点としての機能を果たすことができるものとなる。また、
図1および
図2の何れの寝返り補助板1,1を使用した場合にも、ハンドル部12が確り把持できる形状とされているから、一連の作業(f)、(h)の介護者への負担を格段に軽減するものとなる。
続いて、
図13および
図14に示すように、側臥位となった被介護者8が向かい合うベッド9の補助柵91に固定された既存の側臥位維持用具EM(例えば当該特開2006-158573号公報の介護用補助具)を該被介護者8の身体に巻き掛けるように装着し、同被介護者8の側臥位の姿勢を安定的に保持するようにし(j)た上、当該寝返り補助板1を外し去り(k)、当該結束ベルト7および両脚保持ギプス6を被介護者の両脚から取り外し(m)、必要な治療や清拭やおむつ替えなどの処置を行った(n)後、再度、結束ベルト7および両脚保持ギプス6を再び被介護者の両脚に装着し(p)、寝返り補助板1を該被介護者の背部80、要部81および下腿(両脚)82,83に及ぶ範囲に接するよう配して同被介護者の身体を背部80がわから支え、挿し込み端縁10をマットレス90のシーツに接するようにして、引き起こしのときとは逆に、該被介護者の身体80,81,82,83を受け止めると共に、既存の側臥位維持用具EMによる保持を交えながらゆっくりと側臥位から仰臥位へと姿勢を移行(q)させ、当該寝返り補助板1がマットレス90(シーツ)に接地する直前に、同寝返り補助板1を抜き去る(r)ように操作し、既存の側臥位維持用具EMを該被介護者の身体80から取り外し(s)、一連の介護作業を終了する。
【0047】
(結 び)
叙述の如く、この発明の介護用具、およびそれを利用した介護方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの寝返り用の補助具類の技術に比較して、介護作業の効率を大幅に高めることができる上、介護用具を軽量且つ低廉化して遥かに経済的なものとすることができる上、仰臥位から側臥位へと姿勢移行される被介護者への痛みや苦痛を格段に軽減できる上、介護者の肉体的、精神的負担をも大幅に軽減できるものとなるから、医療業界および介護業界はもとより、介護用品業界と、それらを利用しつつ家族の介護を行う一般家庭においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。