(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001601
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】硬質表面用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 17/04 20060101AFI20231227BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20231227BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20231227BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C11D17/04
C11D1/90
C11D1/75
C11D3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100358
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光佑
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB27
4H003AC03
4H003AC15
4H003AD04
4H003BA12
4H003BA21
4H003DA05
4H003DB04
4H003DC02
4H003EA03
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB16
4H003EB30
4H003ED02
4H003ED28
4H003FA07
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】皮脂汚れと石鹸カス汚れの複合汚れに対する洗浄力が良好で、基材低損傷性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】(a)両性界面活性剤、(b)LogPが1.3以上の芳香族アルコール、(c)カルシウム安定度定数(pKCa)が6以上13以下のキレート剤、及び水を含有し、25℃でのpHが8以上12以下である、硬質表面用洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)両性界面活性剤[以下(a)成分という]、(b)LogPが1.3以上の芳香族アルコール[以下(b)成分という]、(c)カルシウム安定度定数(pKCa)が6以上13以下のキレート剤[以下(c)成分という]、及び水を含有し、25℃でのpHが8以上12以下である、硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項2】
任意に(a)成分以外の界面活性剤を含有し、全界面活性剤の含有量中に占める(a)成分の含有量の割合が50質量%以上である、請求項1に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)成分が、炭素数7以上14以下の炭化水素基を有するベタイン型両性界面活性剤、及び炭素数7以上14以下の炭化水素基を有するアミンオキシド型両性界面活性剤から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(b)成分が、ベンジルアルコールである、請求項1~3の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項5】
(c)成分が、アミノカルボン酸型キレート剤である、請求項1~4いずれか1項記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項6】
浴室用である、請求項1~5の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物を硬質表面に付着させた後、擦り洗いをせずにすすぐ、硬質表面の洗浄方法。
【請求項8】
前記硬質表面用洗浄剤組成物を泡の状態で硬質表面に付着させる、請求項7記載の硬質表面の洗浄方法。
【請求項9】
前記硬質表面用洗浄剤組成物を、泡形成機構を有するトリガー式スプレイヤーで、泡の状態にする、請求項8に記載の硬質表面の洗浄方法。
【請求項10】
前記トリガー式スプレイヤーが、蓄圧式スプレイヤーである、請求項9に記載の硬質表面の洗浄方法。
【請求項11】
硬質表面が、脂肪酸カルシウム塩を含む汚れが付着した硬質表面である、請求項7~10の何れか1項に記載の硬質表面の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用洗浄剤組成物及び硬質表面の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我々を取り巻く住宅環境設備には、タイル、プラスチック、金属等を材料とした各種硬質表面が存在し、日常生活において様々な汚れが付着する。中でも、浴室、台所等の硬質表面は、人が頻繁に接する表面でもあるために、多くの汚れが残留して蓄積し易く、更には洗浄で除去し難い性質を有するものとなっている。一般に、浴槽、浴室の壁や床といった浴室に付着する汚れは、身体洗浄剤やシャンプーなどに含まれる脂肪酸と水道水中のカルシウム等が結合した脂肪酸金属塩(石鹸カス)と皮脂汚れが複合化した頑固な汚れとなるため、難洗浄化する。この汚れに対しては、洗浄剤を付着させてスポンジなどを用いた擦り洗いが行われているが、浴室などの硬質表面を清掃具を用いて洗浄するのは煩雑な作業であり、特に高齢者にとっては重労働である。従って、擦るなどの力作業をせずとも誰でも簡単に除去できる技術が求められており、特定の界面活性剤、キレート剤、溶剤等を含有する洗浄剤組成物の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ベタイン型両性界面活性剤、特定の芳香族アルコール、キレート剤を含有し、全界面活性剤中のベタイン型両性活性剤の比率が65質量%以上、かつpHが2以上6以下である、硬質表面用洗浄剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、ホスホン酸系キレート剤と、それ以外のキレート剤、グリコール系溶剤、両性界面活性剤を含有し、全キレート剤に対するアニオン性界面活性剤の質量比が0.30以下であり、かつpHが5.8以上7.5以下である、硬質表面用液体洗浄剤組成物が開示されている。
また、特許文献3には、(A)成分:非石鹸系アニオン界面活性剤を含む界面活性剤0.1~5.0質量%と、(B)成分:グリコール系溶剤と、(C)成分:アミノカルボン酸型キレート剤と、を含有し、前記(C)成分/前記(A)成分で表される質量比が、0.6~6.0であり、かつ、25℃におけるpHが10を超え12未満である浴室用液体洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-113455号公報
【特許文献2】特開2018-150523号公報
【特許文献3】特開2016-124965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、皮脂汚れと石鹸カス汚れの複合汚れに対する洗浄力が良好で、基材低損傷性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物及びこれを用いた硬質表面の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)両性界面活性剤[以下(a)成分という]、(b)LogPが1.3以上の芳香族アルコール[以下(b)成分という]、(c)カルシウム安定度定数(pKCa)が6以上13以下のキレート剤[以下(c)成分という]、及び水を含有し、25℃でのpHが8以上12以下である、硬質表面用洗浄剤組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、前記本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を硬質表面に付着させた後、擦り洗いをせずにすすぐ、硬質表面の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮脂汚れと石鹸カス汚れの複合汚れに対する洗浄力が良好で、基材低損傷性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物及びこれを用いた硬質表面の洗浄方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔硬質表面用洗浄剤組成物〕
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を含有し、25℃でのpHが8以上12以下である。
【0011】
本発明では、(a)成分、(b)成分、(c)成分を組み合わせて、弱アルカリ性領域で用いることで、皮脂汚れと石鹸カスとが複合化した頑固な汚れを、より効果的に除去することができる。これは、本発明の洗浄剤組成物が、弱アルカリ領域のpHを有することで、(a)成分、(b)成分、(c)成分の複合体が、皮脂由来の脂肪酸と水道水中のカルシウムが結合した脂肪酸金属塩(石鹸カス)の表面に効率的に吸着作用し、(c)成分がカルシウムイオンを引き抜くことで、(a)成分の両性界面活性剤が、一部脂肪酸イオンとなった脂肪酸金属塩を溶解分散させ、洗浄効果が促進したためと推察される。但し、作用メカニズムは上記の理由に限定されるものではない。
【0012】
(a)成分は、両性界面活性剤である。
(a)成分としては、ベタイン型界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる一種以上の両性界面活性剤が挙げられる。
【0013】
(a)成分は、炭素数7以上14以下の炭化水素基を有するベタイン型両性界面活性剤、及び炭素数7以上14以下の炭化水素基を有するアミンオキシド型両性界面活性剤から選択される1種以上の両性界面活性剤がより好ましい。これらが有する前記炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が挙げられる。また、前記炭化水素基の炭素数は、例えば8以上、そして、14以下であってよい。
【0014】
(a)成分のうち、前記ベタイン型両性界面活性剤は、炭素数7以上14以下の炭化水素基を1つ以上、好ましくは1つ以上4つ以下、より好ましくは3つ以下、更に好ましくは2つ以下有する。
(a)成分のうち、前記アミンオキシド型界面活性剤は、炭素数7以上14以下の炭化水素基を1つ以上、好ましくは1つ以上4つ以下、より好ましくは3つ以下、更に好ましくは2つ以下有する。
【0015】
(a)成分のうち、ベタイン型両性界面活性剤としては、下記一般式(a1-1)で表されるベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0016】
【0017】
〔式中、R11は炭素数7以上14以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R12は炭素数1以上6以下のアルキレン基である。Aは-COO-、-CONH-、-OCO-、-NHCO-、-O-から選ばれる基であり、pは0又は1の数である。R13、R14は、炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R15はヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1以上5以下のアルキレン基である。Bは、-SO3
-、-OSO3
-、-COO-から選ばれる基である。〕
【0018】
一般式(a1-1)において、R11の炭素数は好ましくは11又は12である。Aは好ましくは-COO-又は-CONH-であり、より好ましくは-CONH-である。R12の炭素数は好ましくは2又は3であり、R13、R14は好ましくはメチル基である。一般式(a1-1)中のpが0の場合は、R11は炭素数8以上14以下のアルキル基又はアルケニル基であってよい。
【0019】
ベタイン型両性界面活性剤としては、アルキルカルボキシベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、及びアルキルアミノ脂肪酸塩から選ばれる1種以上が好ましい。ベタイン型両性界面活性剤は、アルキルアミドプロピル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、アルキル-N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルスルホベタイン、アルキルアミドプロピル-N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルスルホベタイン、及びアルキルアミドプロピル-N,N-ジメチル-プロピルスルホベタインから選ばれる1種以上がより好ましい。これらのアルキル基は炭素数7以上14以下である。ベタイン型両性界面活性剤は、ラウリン酸アミドプロピル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、ヒドロキシラウリルスルホベタイン、ラウリル-N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルスルホベタイン及びラウリン酸アミドプロピル-N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルベタインから選ばれる1種以上が更に好ましい。ベタイン型両性界面活性剤は、2種以上を用いてもよい。
【0020】
好ましいベタイン型両性界面活性剤としては、アルキル(炭素数8以上14以下)-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、脂肪酸(脂肪酸の炭素数8以上14以下)アミドプロピル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、アルキル(炭素数8以上14以下)-N,N-ジメチルエタンスルホベタイン、アルキル(炭素数8以上14以下)-N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルスルホベタイン、脂肪酸(脂肪酸の炭素数8以上14以下)アミドプロピル-N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルスルホベタイン、アルキル(炭素数8以上14以下)カルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等のベタイン等が挙げられる。
【0021】
(a)成分のうち、アミンオキシド型両性界面活性剤としては、下記一般式(a1-2)で表されるアミンオキシド型両性界面活性剤が挙げられる。
【0022】
【0023】
〔式中、R21は炭素数7以上14以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R22は炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、Aは-COO-、-CONH-、-OCO-、-NHCO-から選ばれる基である。pは0又は1の数であり、R23、R24は、それぞれ炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。〕
【0024】
一般式(a1-2)において、R21の炭素数は好ましくは11又は12である。Aは好ましくは-COO-又は-CONH-であり、より好ましくは-CONH-である。R22の炭素数は好ましくは2又は3であり、R23、R24は好ましくはメチル基である。一般式(a1-2)中のpが0の場合は、R21は炭素数8以上14以下のアルキル基又はアルケニル基であってよい。
【0025】
アミンオキシドとしては、具体的には、N-ラウリル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-ミリスチル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-ラウロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-ミリスチロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシドを挙げることができ、N-ラウリル-N,N-ジメチルアミンオキシド(ラウリルジメチルアミンオキシド)、N-ミリスチル-N,N-ジメチルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドが好ましく、N-ラウリル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-ミリスチル-N,N-ジメチルアミンオキシドが洗浄力の観点から好ましい。
【0026】
(b)成分は、LogPが1.3以上の芳香族アルコールである。
(b)成分は、洗浄性の観点から、LogP値が、1.3以上、好ましくは1.4以上、そして、基材低損傷性の観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0027】
本発明において、LogP値とは、水と1-オクタノールに対する有機化合物の親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数LogPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のLogP値が報告されており、例えば、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)等から入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のLogP値がない場合には、PerkinElmer社のHPから入手できるプログラム「PerkinElmer ChemDraw 19.1」等で計算することができる。このプログラムではLogPの値を取得できる。
【0028】
フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch,P.G. Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。本発明では、LogPの実測値があればそれを、無い場合はプログラムPerkinElmer ChemDraw 19.1により計算したLogP値を用いる。
【0029】
(b)成分の芳香族アルコールは、芳香族基及びヒドロキシ基を有するもので、好ましくは芳香族基及びヒドロキシ基を有し、且つ分子量が106以上250以下の化合物である。芳香族基は、芳香族炭化水素基であり、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0030】
(b)成分は、洗浄性の観点から、下記一般式(b-1)で表される化合物が好ましい。
R1bO-(R2bO)l-H (b-1)
(式中、R1bは、芳香族基を有し、且つ総炭素数6以上10以下の炭化水素基であり、lは0以上2以下の整数であり、R2bは炭素数2以上4以下のアルキレン基である。好ましくは、該化合物の分子量は106以上250以下である。)
【0031】
R1bの総炭素数は、芳香族基を含めた炭素数であり、R1bの総炭素数は、洗浄性の観点から、6以上、そして、基材低損傷性の観点から、10以下、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。R1bは、芳香族炭化水素基であり、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
一般式(b-1)中のlは、洗浄性の観点から、1以下が好ましく、0がより好ましい。
【0032】
(b)成分としては、具体的には、洗浄性と基材低損傷性の両立の観点から、ベンジルアルコール(分子量:108、LogP:1.46)、フェノキシエタノール(分子量:138、LogP:1.39)、2-フェニルエタノール(分子量:122、LogP:1.74)、3-フェニル-1-プロパノール(分子量:136、LogP:2.16)、シンナミルアルコール(分子量:134、LogP:1.98)、ベンジルグリコール(分子量:152、LogP:1.30)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(分子量:152、LogP:1.71)、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル(分子量:210、LogP:1.87)から選ばれる1種以上が挙げられる。(b)成分は、ベンジルアルコール、フェノキシエタノールから選ばれる1種以上が好ましい。(b)成分は、ベンジルアルコールとフェノキシエタノールの組み合わせであってよい。本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(b)成分としてベンジルアルコール及びフェノキシエタノールから選択される1種以上、更にベンジルアルコールを含有することが好ましい。
【0033】
(c)成分は、カルシウム安定度定数(pKCa)が6以上13以下のキレート剤である。
【0034】
(c)成分のpKCaは、以下の方法で測定されたものである。
<pKCaの測定方法>
緩衝液として、KOHを0.1M、NH4Clを0.1M、NH4OHを0.1M含有する水溶液を調製する。
この緩衝液を用いて全ての試料溶液を調製する。また、これら試料溶液の温度をすべて20℃にして測定を行う。Ca2+濃度の測定には、一例として、オリオン(株)製のイオンメーター920AとCa2+イオン電極を用いることができる。
先ず、塩化カルシウム濃度と電極の電位の関係を求め、検量線を作成する。塩化カルシウムの5.36×10-2mol/L溶液、試料化合物((c)成分)の5.36×10-4mol/L溶液を調製する。調製した試料化合物の溶液100mlに塩化カルシウム溶液を1ml加え、5分間撹拌する。残存しているCa2+濃度をCa2+イオン電極を用いて測定する。試料化合物はCa2+と1:1でキレート錯体を形成すると仮定して下記の式からpKCa(カルシウム安定度定数、Ca安定度定数)を求める。
【0035】
【0036】
(c)成分としては、アミノカルボン酸型キレート剤、リン酸型キレート剤、ホスホン酸型キレート剤、ヒドロキシカルボン酸型キレート剤などが挙げられる。
(c)成分は、洗浄性の観点から、アミノカルボン酸型キレート剤が好ましい。
【0037】
アミノカルボン酸型キレート剤としては、メチルグリシン二酢酸(MGDA)(6.3)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)(6.5)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(12.2)、ニトリロ三酢酸(NTA)(6.6)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)(10.7)、N-ヒドロキシエチル-エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)(7.2)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)(7.0)、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。括弧内の数値は上記方法で測定した当該化合物のpKCaである。塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましい。
【0038】
(c)成分は、洗浄性の観点から、アミノカルボン酸型キレート剤が好ましく、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N-ヒドロキシエチル-エチレンジアミン三酢酸、アスパラギン酸二酢酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上がより好ましく、エチレンジアミン四酢酸又はその塩が更に好ましい。
【0039】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、洗浄性と基材低損傷性の両立の観点から、(a)成分を、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは4質量%以下含有する。
【0040】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、洗浄性と基材低損傷性の観点から、(b)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下含有する。
【0041】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、(c)成分を、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有する。
【0042】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、基材低損傷性の観点から、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比である(a)/(b)が、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
【0043】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、水を含有する。水を含有する液体組成物であってよい。水は、組成物の全量が100質量%となるような量で用いられる。
【0044】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、任意に(a)成分以外の界面活性剤〔以下、(a’)成分という〕を含有することができる。本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、全界面活性剤の含有量中に占める(a)成分の含有量の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってもよい。ここで、全界面活性剤の含有量は、組成物中の(a)成分の含有量と(a’)成分の含有量との合計であってよい。
【0045】
(a’)成分としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤から選ばれる界面活性剤が挙げられる。
【0046】
(a’)成分の非イオン界面活性剤としては、炭素数10以上18以下のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、炭素数10以上18以下のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、炭素数10以上、18以下の脂肪酸基を有するポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルグリコシド、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8以上18以下の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル、炭素数6以上18以下のアルキル基を有するアルキルモノグリセリルエーテル、等が挙げられる。
前記のポリオキシアルキレンアルキルエーテルはアルキレンオキシドとして、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選ばれる1種以上が付加したものが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。アルキレンオキシドが、エチレンオキシドとプロピレンオキシドを含む場合、ブロック結合型でもランダム結合型であってもよい。また、前記のアルキレンオキシドの平均付加モル数は、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは50以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは20以下である。
前記アルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテルは、グリセリン骨格の平均ユニット数が、例えば1以上4以下、好ましくは2以下である。
【0047】
非イオン界面活性剤は、炭素数6以上18以下のアルキル基を有するアルキルモノグリセリルエーテルが好ましい。
【0048】
(a’)成分の陰イオン界面活性剤としては、炭化水素基を1つ以上と、スルホン酸基、硫酸エステル基及びカルボン酸基からなる群から選ばれる基の1つ以上とを有する陰イオン界面活性剤が挙げられる。
(a’)成分の陰イオン界面活性剤としては、アルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩及び脂肪酸又はその塩等が挙げられる。陰イオン界面活性剤は、アルキル硫酸エステル又はその塩が好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩のオキシアルキレン基は、オキシエチレン基が好ましい。また、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩のオキシアルキレン基の平均付加モル数は、1以上10以下が好ましい。脂肪酸又はその塩としては、炭素数10以上18以下の脂肪酸又はその塩が挙げられる。
(a’)成分の陰イオン界面活性剤の炭化水素基、更にアルキル基又はアルケニル基は、炭素数10以上18以下が好ましい。また、陰イオン界面活性剤の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。なお、陰イオン界面活性剤の量は、対イオンをナトリウムイオンに置き換えた化合物に基づく量である。
【0049】
(a’)成分の陽イオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が挙げられる。第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤としては、窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数8以上16以下の炭化水素基であり、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基及びアリールアルキル基(ベンジル基等)からなる群から選ばれる基である4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が挙げられる。なかでも、殺菌性能を有する4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が好ましく、殺菌性能の点から、ベンジル基を有する4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が好ましい。なお、陽イオン界面活性剤の量は、対イオンを塩化物イオンに置き換えた化合物に基づく量である。
【0050】
(a’)成分としては、複合汚れに対する洗浄力、保存安定性、及び泡立ちの観点から、非イオン界面活性剤、及び陰イオン界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましく、炭素数6以上18以下のアルキル基を有するアルキルモノグリセリルエーテル、及びアルキル基の炭素数が10以上18以下のアルキル硫酸エステル塩から選ばれる1種以上がより好ましい。本発明の硬質表面用洗浄剤組成物が(a’)成分を含有する場合、該組成物は、(a’)成分として、炭素数6以上18以下のアルキル基を有するアルキルモノグリセリルエーテルを含有することが好ましい。
【0051】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物が(a’)成分を含有する場合、該組成物は、(a’)成分を、例えば0.1質量%以上、更に0.5質量%以上、そして、5質量%以下、更に3質量%以下含有することができる。
【0052】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(b)成分以外の溶剤を含有することもできる。(b)成分以外の溶剤としては、(b’)(b)成分以外の溶解度パラメーターδが15.0未満の溶剤〔以下、(b’)成分という〕が挙げられる。(b’)成分としては、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、更に芳香環を持たないグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、分子量が60以上500以下の脂肪族グリコールエーテルが挙げられる。
【0053】
(b’)成分としては、例えば、
(1)プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール等のプロピレングリコール系溶剤、
(2)メチルグリコール(エチレングリコールモノメチルエーテル)、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ブチルグリコール(エチレングリコールモノブチルエーテル)、2-tert-ブトキシエタノール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、イソブチルジグリコール等のエチレングリコール系エーテル溶剤、
(3)メチルプロピレングリコール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピルプロピレングリコール(プロピレングリコールモノプロピルエーテル)、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピルプロピレンジグリコール(ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコール系エーテル溶剤、
などが挙げられる。
【0054】
(b’)成分としては、プロピルプロピレンジグリコール(分子量:176)、ブチルグリコール(分子量:118)、プロピルプロピレングリコール(分子量:118)、ブチルジグリコール(分子量:162)、2-tert-ブトキシエタノール(分子量:118)、イソブチルジグリコール(分子量:162)、メチルプロピレングリコール(分子量:90)、及びメチルグリコール(分子量:76)から選ばれる1種以上が好ましく、ブチルジグリコールがより好ましい。本発明の硬質表面用洗浄剤組成物が(b’)成分を含有する場合、洗浄性の観点から、該組成物は、(b’)成分として、ブチルジグリコールを含有することが好ましい。
【0055】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物が(b’)成分を含有する場合、該組成物は、(b’)成分を、例えば0.1質量%以上、更に0.5質量%以上、そして、5質量%以下、更に4質量%以下含有することができる。
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物が(b’)成分を含有する場合、(b)成分の含有量と(b’)成分の含有量の質量比である(b)/(b’)が、保存安定性の観点から、0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、そして、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
【0056】
また、(b)成分以外の溶剤としては、(b)成分以外の溶解度パラメーターδが15.0以上19.5以下の溶剤が挙げられる。かかる溶剤としては、例えば、炭素数が6以上24以下の、脂肪酸とアルコールとのエステル化合物が挙げられ、より具体的には、酢酸イソブチル、ヘキサン酸エチル、イソ酪酸イソブチル、オクタン酸エチル、安息香酸ヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、ミリスチン酸イソプロピル、及びオレイン酸エチルから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0057】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、25℃のpHが、8以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、そして、12以下、好ましくは11以下である。
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、25℃におけるpHが所定の範囲になるようにpH調整剤を配合して適宜調整する。pH調整剤としては、アルカリ金属の水酸化物や、アルカリ金属の珪酸塩などのアルカリ剤や、カルボン酸、スルホン酸、無機酸などの酸剤が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられ、アルカリ金属の珪酸塩としては珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、具体的には、メタ珪酸ナトリウム、オルト珪酸ナトリウム、1号珪酸ナトリウム、2号珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウム、4号珪酸ナトリウム、1K珪酸カリウム、2K珪酸カリウムが挙げられる。カルボン酸としては、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸、酢酸などの脂肪酸などが挙げられ、スルホン酸としては、メタキシレンスルホン酸やパラトルエンスルホン酸などが挙げられ、無機酸としては硫酸、塩酸などが挙げられる。
【0058】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物には、製品の付加価値を増大させるなどのために、香料、色素、防腐剤、酸化防止剤、安定化剤、ハイドロトープ剤、酵素、漂白剤、分散剤、表面改質剤、増粘剤等を任意に配合することができる(但し、前記(a)~(c)成分を除く)。
例えば、分散剤としては、ポリアクリル酸、アクリル酸-アリルアルコール共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、ヒドロキシアクリル酸重合体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、テトラメチレン1,2-ジカルボン酸、コハク酸、アスパラギン酸等の重合体または共重合体及びそのアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩から、選ばれる1種以上が挙げられる。
【0059】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、浴室、浴槽、洗面器、タイル、化粧室、洗面台、鏡、台所まわりのシンク、カウンタートップ、水道まわり等の硬質表面の洗浄に好適に用いられる。浴室用として好適に用いられる。ここで、浴室用とは、浴室のみならず、浴槽、洗面器など、浴室内に存在する他の硬質表面を有する物品をも対象とするものである。
【0060】
〔硬質表面の洗浄方法〕
本発明の硬質表面の洗浄方法は、前記本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を硬質表面に付着させた後、擦り洗いせずにすすぐ、硬質表面の硬質表面の洗浄方法である。
すなわち、本発明の硬質表面の洗浄方法では、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を用いる。該組成物の好ましい態様は、前記した本発明の硬質表面用洗浄剤組成物と同じである。
本発明の硬質表面の洗浄方法は、前記本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を、硬質表面、例えば、皮脂汚れ及び/又は石鹸カス汚れが付着した硬質表面に付着させた後、擦り洗いせずにすすぐ、硬質表面の洗浄方法として好適に実施できる。
【0061】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、硬質表面が、脂肪酸カルシウム塩を含む汚れが付着した硬質表面であってよい。脂肪酸カルシウム塩を含む汚れは、例えば、石鹸カス汚れである。したがって、本発明の洗浄方法では、硬質表面が、皮脂汚れと石鹸カス汚れの複合汚れが付着した硬質表面であってよい。
【0062】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、前記硬質表面用洗浄剤組成物を、好ましくは泡の状態で、硬質表面に付着させる。本発明では、前記硬質表面用洗浄剤組成物を、泡形成機構を有するトリガー式スプレイヤーで、泡の状態にすることが好ましい。前記トリガー式スプレイヤーは、蓄圧式スプレイヤーが好ましい。泡形成機構を有するトリガー式スプレイヤーは、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物で述べたものを使用できる。
【0063】
本発明の硬質表面の洗浄方法としては、より具体的には、前記硬質表面用洗浄剤組成物を、原液で、硬質表面に付着させる、又は前記硬質表面用洗浄剤組成物を、原液で、希釈せずに硬質表面に付着させる、つまり、前記硬質表面用洗浄剤組成物を、希釈することなく、硬質表面に付着させる洗浄方法が挙げられる。更に、前記硬質表面用洗浄剤組成物を、希釈することなく、硬質表面に付着させる洗浄方法が挙げられる。
前記硬質表面用洗浄剤組成物を希釈することなく硬質表面に付着させるとは、該洗浄剤組成物を、意図的に水などで希釈した後、硬質表面と付着させないことである。例えば、水滴等が付着した硬質表面と付着させたり、前記硬質表面用洗浄剤組成物を硬質表面に付着させた後、硬質表面に水滴が付着したりする場合は、前記硬質表面用洗浄剤組成物を希釈することなく硬質表面に付着させると理解できる。
本発明では、前記硬質表面用洗浄剤組成物の原液をそのまま、つまり組成を変動させることなく、硬質表面に付着させることが好ましい。例えば、前記硬質表面用洗浄剤組成物を、含水したスポンジに付着させることなく、汚れが付着した硬質表面に付着させる。硬質表面に付着した後は、前記硬質表面用洗浄剤組成物の組成が変動してもよい。すなわち、硬質表面に付着した後は、前記硬質表面用洗浄剤組成物の組成が希釈又は濃縮されてもよい。
【0064】
但し、本発明の(a)成分、(b)成分、(c)成分を含む濃厚組成物を調製しておき、該濃厚組成物を水で希釈して本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を調製し、硬質表面に付着させてもよい。すなわち、本発明の(a)成分、(b)成分、(c)成分を含有する濃厚組成物を水で希釈して本発明の硬質表面用洗浄剤組成物に調製し、該硬質表面用洗浄剤組成物を硬質表面に付着させた後、擦り洗いせずにすすぐ、硬質表面の洗浄方法であってもよい。
【0065】
また、本発明の硬質表面の洗浄方法は、前記硬質表面用洗浄剤組成物を、硬質表面に付着させた後、擦り洗いをせずにすすぐ、好ましくは硬質表面に付着させた後、所定時間放置した後、擦り洗いせずにすすぐ、洗浄方法が挙げられる。つまり、スポンジ等の可撓性材料や手指等を用いた擦り洗いをすることなく付着させ、外力をかけずにそのまま放置する洗浄方法が挙げられる。前記組成物の付着後、必要により所定時間放置した後は、硬質表面を水ですすぐ。すすぐ際は、手などで外力(物理的力)を掛けてもよく、単に水流ですすいでもよい。
【0066】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、前記硬質表面用洗浄剤組成物を、対象物である硬質表面の面積100cm2に対して、好ましくは1g以上、より好ましくは3g以上、更に好ましくは5g以上、そして、好ましくは15g以下、より好ましくは12g以下、更に好ましくは10g以下の割合で付着させる、更に、塗布又は噴霧することが好ましい。
【0067】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、洗浄力を高める観点から、硬質表面用洗浄剤組成物を硬質表面に付着後、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上、更に好ましくは30秒以上、より更に好ましくは40秒以上、そして、同様の観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは10分以下、放置する。この場合、最初に前記組成物が硬質表面に付着した時点を放置の開始としてよい。前記所定時間がこの範囲の時間であってよい。
なお、放置する際の温度は、室温でよく、例えば、10℃以上30℃以下が挙げられる。
【0068】
また、本発明の硬質表面の洗浄方法では、洗浄力を高める観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上、更に好ましくは30秒以上、より更に好ましくは40秒以上、そして、同様の観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは10分以下、前記液体洗浄剤組成物と洗浄対象である硬質表面とを付着させる。
【0069】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、前記硬質表面用洗浄剤組成物を、汚れが付着した硬質表面を該組成物中に浸漬させて付着させてもよいが、効率的に洗浄力を高める観点から、噴霧又は塗布して、汚れが付着した硬質表面に付着させる方法が好ましい。本発明では、前記硬質表面用洗浄剤組成物を液状又は泡状で硬質表面に付着させることが好ましい。
前記硬質表面用洗浄剤組成物を、汚れが付着した硬質表面に付着させる方法は、噴霧又は塗布が好ましく、液滴状にして噴霧する又は泡状にして塗布する方法が好ましい。前記した本発明のスプレー容器入り硬質表面用洗浄剤物品を用いることが好ましい。
【0070】
本発明の硬質表面の洗浄方法は、浴室、台所又はトイレの洗浄方法、更に浴室の洗浄方法として好ましい。
【0071】
本発明の硬質表面の洗浄方法では、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を直接硬質表面に付着させる。そして、前記組成物が付着した状態で放置すればよいため、洗浄時において、スポンジ等の可撓性材料による擦り洗いのような外力をかける作業を必要としない。
さらに、本発明の硬質表面の洗浄方法は、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を、好ましくは泡状の前記組成物を、硬質表面に塗布してそのまま放置するため、硬質表面に前記組成物を長く留めることができる。
本発明の硬質表面の洗浄方法は、前記硬質表面用洗浄剤組成物を付着させた硬質表面を、水ですすぐ、好ましくは前記硬質表面用洗浄剤組成物を付着させた硬質表面を、所定時間放置後、水ですすぐ。本発明の硬質表面用洗浄剤組成物はすすぎ性がよいため、少量の水ですすぎを完了できる。
【実施例0072】
<石鹸カス洗浄性能評価>
浴室に付着する石鹸カス汚れの組成を参考にして調製したモデル石鹸カス汚れを、ポリプロピレン製プレート(株式会社エンジニアリングテストサービス製、形状は80mm×120mm)上に製膜した。モデル石鹸カス汚れの調製と製膜の方法は、前記プレートを、固形石鹸(花王(株)製、「ホワイト」)を溶かした水溶液(2質量%)、塩化カルシウム水溶液(0.7質量%)に順に浸漬させ、その後乾燥させる工程を10回繰り返すことでモデル石鹸カス汚れの調製と製膜を行った。モデル石鹸カス汚れを前記プレートに製膜した後、プレートの汚れ部分に、表1、2の硬質表面用洗浄剤組成物10μLを滴下し、25℃で5分放置後、水洗した。プレートをスキャナー(株式会社リコー、RICOH MP C5504、読み取り条件 原稿種類:グレースケール、解像度:600dpi)で取り込み、ImageJ(画像処理ソフトウェア)にて洗浄前後のグレー値を算出し、下式にて洗浄率を算出した。
洗浄率(%)=(洗浄前のグレー値-洗浄後のグレー値)/(洗浄前のグレー値-プレートのグレー値)×100
【0073】
<基材低損傷性>
アクリル製プレート(70mm×10mm×1mm、日本テストパネル(株)製)を長さ68mmになるように両端を固定し、歪みを生じさせた(歪み率:2.86%)。歪みを生じさせたアクリル製プレートに8つ切りにした脱脂綿(川本産業株式会社、キュアレット、4cm×4cm)を更に半分の厚みにしたものを乗せ、この脱脂綿に洗浄液を200μL含侵し50℃で3時間静置したのち、アクリル製プレートの表面状態を目視により観察し、下記基準で基材損傷性を評価した。この評価方法の概略を
図1に示した。
○:アクリル製プレートが割れないか、ヒビが確認できるが割れない
×:アクリル製プレートが割れる
【0074】
【0075】
【0076】
表中の成分は以下のものである。また、表中、(a)/全界面活性剤(質量%)は、全界面活性剤の含有量中に占める(a)成分の含有量の割合である。また、塩酸は1N-HCl水溶液を、水酸化ナトリウムは48%水酸化ナトリウム水溶液を、それぞれ、組成物のpHが表中の値となるような量(表中、適量と示す)で用いた。
両性界面活性剤(1):アンヒトール20AB、花王株式会社、ラウリン酸アミドプロピルベタイン
両性界面活性剤(2):アンヒトール20HD、花王株式会社、ラウリルヒドロキシスルホベタイン
両性界面活性剤(3):アンヒトール20N、花王株式会社、ラウリルジメチルアミンオキシド
非イオン界面活性剤(1):エマルゲン108、花王株式会社、ポリオキシエチレンラウリルエーテル
非イオン界面活性剤(2):2-エチルヘキシルモノグリセリルエーテル
陰イオン界面活性剤(1):エマール2F-HP、花王株式会社、ラウリル硫酸ナトリウム
EDTA:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム
HIDA:ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、東京化成工業株式会社
ポリアクリル酸カリウム:重量平均分子量8000