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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160178
(43)【公開日】2024-11-12
(54)【発明の名称】抵抗溶接機
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/14 20060101AFI20241105BHJP
   B23K 11/30 20060101ALI20241105BHJP
   B23K 11/00 20060101ALN20241105BHJP
【FI】
B23K11/14
B23K11/30 310
B23K11/00 510
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075351
(22)【出願日】2023-04-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】396024819
【氏名又は名称】株式会社三友機械製作所
(71)【出願人】
【識別番号】596008817
【氏名又は名称】ナグシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳元 八大
(74)【代理人】
【識別番号】100189197
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 幸子
(72)【発明者】
【氏名】徳永 朋丈
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 政隆
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被溶接母材のコーティングや形状のばらつきに依らずに溶接品質を安定化できる抵抗溶接機を提供する。
【解決手段】抵抗溶接機は、重ね合わされた第1被溶接母材M1及び第2被溶接母材M2を挟んで加圧しながら通電して接合する。抵抗溶接機は、第1被溶接母材M1に接し、互いに絶縁して配置される第1電極131及び第2電極132と、第2被溶接母材M2に接し、互いに絶縁して配置される第1ベース122A及び第2ベース122Bを有する導電性ベース122と、を備える。第2被溶接母材M2は、第1被溶接母材M1に向けて突出し、第1被溶接母材M1に接し、互いに離れて配置される第1突起SA及び第2突起SBを有する。第1電極131と第1ベース122Aとで第1突起SAを挟み、第2電極132と第2ベース122Bとで第2突起SBを挟む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた第1被溶接母材及び第2被溶接母材を挟んで加圧しながら通電して接合する抵抗溶接機であって、 前記第1被溶接母材に接し、互いに絶縁して配置される第1電極及び第2電極と、 前記第2被溶接母材に接し、互いに絶縁して配置される第1ベース及び第2ベースを有する導電性ベースと、を備え、 前記第2被溶接母材は、前記第1被溶接母材に向けて突出し、前記第1被溶接母材に接し、互いに離れて配置される第1突起及び第2突起を有し、 前記第1電極と前記第1ベースとで前記第1突起を挟み、前記第2電極と前記第2ベースとで前記第2突起を挟む抵抗溶接機。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極との間に通電する電流を制御する電流制御部を備え、 前記電流制御部は、前記第1電極から前記第2電極に向けて第1電流を通電する第1チャンネルと、前記第2電極から前記第1電極に向けて第2電流を通電する第2チャンネルと、を有する請求項1に記載の抵抗溶接機。
【請求項3】
前記電流制御部は、前記第2電流の通電を、前記第1電流の通電と同時に開始するように制御する請求項2に記載の抵抗溶接機。
【請求項4】
前記電流制御部は、前記第2電流の通電を、前記第1電流の通電から遅れて開始するように制御する請求項2に記載の抵抗溶接機。
【請求項5】
前記第1被溶接母材及び前記第2被溶接母材を挟む加圧力の方向に進退可能な加圧プラテンと、前記加圧力を受ける受圧プラテンと、を備え、 前記導電性ベースは、前記加圧プラテンに支持された回動軸の軸方向を中心に回動自在に設けられている請求項1又は請求項2に記載の抵抗溶接機。
【請求項6】
第1支柱と、第2支柱と、前記第1支柱と前記第2支柱とに張り渡されて前記加圧プラテンを支持する梁と、を含む支持構造体を備える請求項5に記載の抵抗溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の母材に加工された突起を他方の母材で加圧しながら通電することで抵抗発熱させて母材同士をスポット溶接するプロジェクション溶接装置があった(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、従来のプロジェクション溶接装置では、母材に施されたコーティングや形状のばらつきに起因して、溶接に不具合が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-55287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、被溶接母材のコーティングや形状のばらつきに依らずに溶接品質を安定化できる抵抗溶接機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る抵抗溶接機は、重ね合わされた第1被溶接母材及び第2被溶接母材を挟んで加圧しながら通電して接合する抵抗溶接機であって、前記第1被溶接母材に接し、互いに絶縁して配置される第1電極及び第2電極と、前記第2被溶接母材に接し、互いに絶縁して配置される第1ベース及び第2ベースを有する導電性ベースと、を備え、前記第2被溶接母材は、前記第1被溶接母材に向けて突出し、前記第1被溶接母材に接し、互いに離れて配置される第1突起及び第2突起を有し、前記第1電極と前記第1ベースとで前記第1突起を挟み、前記第2電極と前記第2ベースとで前記第2突起を挟む。(2)上記(1)において、前記第1電極と前記第2電極との間に通電する電流を制御する電流制御部を備え、前記電流制御部は、前記第1電極から前記第2電極に向けて第1電流を通電する第1チャンネルと、前記第2電極から前記第1電極に向けて第2電流を通電する第2チャンネルと、を有してよい。(3)上記(2)において、前記電流制御部は、前記第2電流の通電を、前記第1電流の通電と同時に開始するように制御してよい。(4)上記(2)において、前記電流制御部は、前記第2電流の通電を、前記第1電流の通電から遅れて開始するように制御してよい。(5)上記(1)又は(2)において、前記第1被溶接母材及び前記第2被溶接母材を挟む加圧力の方向に進退可能な加圧プラテンと、前記加圧力を受ける受圧プラテンと、を備え、前記導電性ベースは、前記加圧プラテンに支持された回動軸の軸方向を中心に回動自在に設けられていてよい。(6)上記(5)において、第1支柱と、第2支柱と、前記第1支柱と前記第2支柱とに張り渡されて前記加圧プラテンを支持する梁と、を含む支持構造体を備えてよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被溶接母材のコーティングや形状のばらつきに依らずに溶接品質を安定化できる抵抗溶接機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】抵抗溶接機の概略図である。
図2】溶接部を下方から見上げた斜視図である。
図3】加圧プラテン及び受圧プラテンの斜視図である。
図4】溶接部への作用を説明する断面図である。
図5】溶接部への通電状況を説明する断面図である。
図6】加圧力、第1電流及び第2電流のそれぞれと時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、抵抗溶接機100の概要図である。図2は、溶接部Wを下方から見上げた斜視図である。図3は、加圧プラテン120及び受圧プラテン130の斜視図である。図4は、溶接部Wへの作用を説明する断面図である。図5は、溶接部Wへの通電状況を説明する断面図である。図6は、加圧力、第1電流Q1及び第2電流Q2のそれぞれと時間tとの関係を示す図である。
なお、以下、共通する機能を有する部分には、同じ符号又は記号が付される場合がある。
【0010】
(抵抗溶接機)
本実施形態に係る抵抗溶接機100は、導体である金属等の被溶接母材同士を適切な力で挟んで加圧し、供給された電気エネルギーによって発生した抵抗熱(ジュール熱)により被溶接材同士を接合する抵抗溶接に用いることができる。抵抗溶接機100は、重ね合わされた第1被溶接母材M1及び第2被溶接母材M2を挟んで加圧しながら通電して接合する。抵抗溶接機100は、いわゆるインダイレクトのプロジェクション溶接に用いることができる。
【0011】
抵抗溶接機100は、例えば、図1に示すように、一斗缶の蓋に取手Tを座金を介して取り付ける場合、蓋となる第2被溶接母材M2を個別に順次に流すラインLの途中に配置される。第2被溶接母材M2が、抵抗溶接機100を構成する加圧プラテン120と受圧プラテン130との間に流れ着くまでに、取手Tを間に挟んだ状態で、蓋となる第2被溶接母材M2の下方に座金となる第1被溶接母材M1を重なり合った状態にする。具体的には、受圧プラテン130の上の定位置に、第1被溶接母材M1を載せ、その上に取手Tを載せておく。そして、抵抗溶接機100の配置場所に溶接対象となる重なり合った第1被溶接母材M1及び第2被溶接母材M2が位置したタイミング、すなわち、第2被溶接母材M2が受圧プラテン130の上に載せられた第1被溶接母材M1の上方に位置した状態で、加圧プラテン120を降下させて受圧プラテン130で受けて両者で挟んで加圧するとともに、電源134から電力を供給して、電流制御部Cで制御された電流を、第1電極131及び第2電極132に通電する。すると、図2に示すように、第2被溶接母材M2に予めプレス加工等によって形成された突起S(プロジェクションともいう。)の数に対応する必要な数の溶接ナゲットで構成された溶接部Wが形成されて、蓋となる第2被溶接母材M2と座金となる第1被溶接母材M1とが接合される。
【0012】
図1に示すように、抵抗溶接機100は、例えば、建築物の床Fに据え付けられる。抵抗溶接機100は、第1支柱111、第2支柱112及び第1支柱111と第2支柱112とに張り渡されて加圧プラテン120を支持する梁113を含む門型の支持構造体110を備えている。第1支柱111及び第2支柱112は、床Fに固定され、床Fにおける互いに離間した位置から上方に鉛直に延びている。梁113は、第1支柱111の上部と第2支柱112の上部とに固定されて張り渡されて水平に延びている。支持構造体110は、変形をバランスさせて、溶接部Wに作用する加圧力の偏りを抑えるため、幾何学的又は剛性的にシンメトリな構造となっている。
【0013】
抵抗溶接機100は、第1被溶接母材M1及び第2被溶接母材M2を挟む加圧力の方向に進退可能な加圧プラテン120と、加圧力を受ける受圧プラテン130と、を備えている。
【0014】
加圧プラテン120は、支持構造体110の梁113の中央に上部を支持されて鉛直方向に進退自在である。加圧プラテン120は、鉛直方向に延びている。
【0015】
図3に示すように、加圧プラテン120は、ヘッド121と、第2被溶接母材M2に接する導電性ベース122(バックアップともいう。)と、シリンダ123と、を備えている。シリンダ123は、ヘッド121を鉛直方向に進退させる。導電性ベース122は、ヘッド121の下端に設けられる。ヘッド121は、互いに絶縁して配置される第1ヘッド121A及び第2ヘッド121Bを備えている。導電性ベース122は、互いに絶縁して配置される第1ベース122A及び第2ベース122Bを備えている。ここで、導電性ベース122は、加圧プラテン120に支持された回動軸124の軸方向Xを中心に回動自在に設けられている。詳細には、導電性ベース122の第1ベース122Aは、加圧プラテン120の第1ヘッド121Aに支持された第1回動軸124aの軸方向Xを中心に回動自在に設けられている。同様に、導電性ベース122の第2ベース122Bは、加圧プラテン120の第2ヘッド121Bに支持された第2回動軸124bの軸方向Xを中心に回動自在に設けられている。これにより、第1ベース122Aと第2ベース122Bとがそれぞれ第1ヘッド121A及び第2ヘッド121Bの独立した動きに伴って独立して動くことができるので、図2に示すような第2被溶接母材M2に予め設けられた第1突起SAと第2突起SBとに加圧力を均等に配分できる。また、第1突起SA及び第2突起SBがそれぞれ複数設けられていても、それぞれに加圧力を均等に配分できる。よって、各溶接スポットにおける溶接強度のばらつきを低減でき、溶接品質を向上できる。
【0016】
このように、加圧プラテン120は、導電性ベース122を支持する回動軸124を有している。そして、導電性ベース122は、加圧プラテン120に支持された回動軸124の軸方向Xを中心に回動自在に設けられている。これにより、溶接加圧時に、導電性ベース122が第1被溶接母材M1及び第2被溶接母材M2における形状及び剛性のばらつきを吸収して馴染むように回動するので、第1被溶接母材M1と第2被溶接母材M2とが接触する部分である溶接部Wに作用する加圧力を均等にできる。よって、溶接による不具合を抑制できる。
【0017】
回動軸124の軸方向Xは、第1電極131と第2電極132とを結ぶ方向(第1突起SAと第2突起SBとを結ぶ方向)に沿っている。これにより、導電性ベース122が、軸方向Xを中心に回動して傾斜するので、溶接部Wにおける奥行き方向(第1電極131と第2電極132とを結ぶ方向及び鉛直方向に直交する方向)に並べられた複数の突起Sのそれぞれに作用する加圧力を均等にでき、溶接不具合を抑制できる。
【0018】
加圧プラテン120は、支持構造体110の支間中央、すなわち、梁113の中央に支持されることが好ましい。これにより、両端で支持された梁113に加圧プラテン120が支持されるので、単支柱の側面から横方向に延びる片持ちのアームで支持された場合のように、溶接加圧時の反力によって鉛直方向以外の方向に回転を生じさせるようなモーメントが加圧プラテン120と梁113との支持部にかからないようにできる(支持部に回転角を生じさせないようにできる)。そして、門型の支持構造体110に支持された抵抗溶接機100によれば、複数ある溶接スポットのそれぞれに対して作用する加圧力を均等にでき、溶接不具合を抑制できる。
【0019】
受圧プラテン130は、床Fに固定されて加圧プラテン120の鉛直方向の下方に配置される。
【0020】
受圧プラテン130は、第1電極131と、第2電極132と、第1電極131と第2電極132との間の電流を制御する電流制御部Cと、第1電極131と第2電極132との間に電気エネルギーを供給する電源134と、を備えている。第1電極131及び第2電極132は、受圧プラテン130の上端部に互いに離れて設けられている。第1電極131及び第2電極132は、互いに絶縁して配置されている。第1電極131及び第2電極132は、第1被溶接母材M1に接している。これにより、受圧プラテン130の上に第1被溶接母材M1を載せると、第1被溶接母材M1を通じて、第1電極131と第2電極132とが短絡する。
【0021】
(溶接部)
図2及び図5に示すように、溶接部Wは、第1被溶接母材M1と第2被溶接母材M2とをスポット溶接で接合する部分である。溶接部Wは、取手Tを基準とした両側に同数のスポット溶接部を有している。溶接部Wは、例えば、一斗缶の蓋となる第2被溶接母材M2と座金となる第1被溶接母材M1との間に取手Tを回動自在に挟んだ状態で、蓋となる第2被溶接母材M2と座金となる第1被溶接母材M1とを抵抗溶接機100を用いてスポット溶接で溶接することにより形成される。
【0022】
第1被溶接母材M1は、例えば、一斗缶に取手Tを取り付けるための座金となる金属板又はブリキ製等のコーティングされた金属板である。
【0023】
第2被溶接母材M2は、例えば、一斗缶の蓋となる金属板又はブリキ製等のコーティングされた金属板である。第2被溶接母材M2は、適宜、表面に、一斗缶の内容物に応じた耐薬品性等を有するコーティングがなされていてよい。コーティングは、例えば、金属めっき又は樹脂である。第1被溶接母材M1と第2被溶接母材M2とは、溶接品質の安定のため、同じ材質であることが好ましい。
【0024】
図5に示すように、第2被溶接母材M2は、突起Sを有している。詳細には、第2被溶接母材M2は、第1被溶接母材M1に向けて突出し、第1被溶接母材M1に接し、互いに離れて配置される第1突起SA及び第2突起SBを有している。これにより、第2被溶接母材M2の第1突起SA及び第2突起SBと第1被溶接母材M1とが接する部分に集中して通電させてスポット的に溶接できる。 突起Sは、同じ形状であることが好ましい。 第1突起SA及び第2突起SBは、それぞれ、複数であってよく、同数であることが好ましい。
【0025】
スポット溶接部は、図2に示すように、例えば、第1突起SAに対応する位置に等間隔で同直線上に沿って並んだ6か所、第2突起SBに対応する位置に等間隔で同直線上に沿って並んだ6か所、合計12か所に設けられる。第1突起SAに対応する位置のスポット溶接部の数と、第2突起SBに対応する位置のスポット溶接部の数は、同数であることが好ましく、片側6か所に限らず、合計12か所に限らない。
【0026】
このように、抵抗溶接機100は、第1被溶接母材M1に接し、互いに絶縁して配置される第1電極131及び第2電極132と、第2被溶接母材M2に接し、互いに絶縁して配置される第1ベース122A及び第2ベース122Bを有する導電性ベース122と、を備えている。第2被溶接母材M2は、第1被溶接母材M1に向けて突出し、第1被溶接母材M1に接し、互いに離れて配置される第1突起SA及び第2突起SBを有している。ここで、抵抗溶接機100は、第1電極131と第1ベース122Aとで第1突起SAを挟み、第2電極132と第2ベース122Bとで第2突起SBを挟むようになっている。このように、第1ベース122A及び第2ベース122Bが互いに絶縁して配置されているので、それぞれが溶接部Wの形状や剛性のばらつきを吸収して溶接部Wに馴染むように加圧できる。また、図5に示すように、第1電極131又は第2電極132の一方からの電流は、導電性ベース122を介することなく、第1被溶接母材M1又は第2被溶接母材M2を通じて、他方の電極に流れるようにできる。そして、単一の導電性ベースが第1電極131側から第2電極132側まで跨る場合と比較して、第1被溶接母材M1の抵抗と第2被溶接母材M2の抵抗を近づけることができるので、第1被溶接母材M1の通電量q1と第2被溶接母材M2の通電量q2を均等にしやすくできる。よって、被溶接母材のコーティングや形状のばらつきに依らずに溶接品質を安定化できる。
【0027】
(電流制御部) 抵抗溶接機100は、第1電極131と第2電極132との間に通電する電流を制御する電流制御部Cを備えている。電流制御部Cは、第1電極131から第2電極132に向けて第1電流Q1を通電する第1チャンネルと、第2電極132から第1電極131に向けて第2電流Q2を通電する第2チャンネルと、を有している。これにより、第1チャンネルからの通電で、第1電極131に近い第1突起SAと第1被溶接母材M1との溶接接点の温度を第2突起SBと第1被溶接母材M1との溶接接点の温度より比較的早めに上昇させて第1突起SAと第1被溶接母材M1との溶接接点におけるコーティングの破壊と溶接を開始できる。そして、第2チャンネルからの通電で、第2電極132に近い第2突起SBと第1被溶接母材M1との溶接接点の温度を、第1チャンネルからの通電で余熱された第1突起SAと第1被溶接母材M1との溶接接点の温度より比較的早めに上昇させて、第2突起SBと第1被溶接母材M1との溶接接点におけるコーティングの破壊と溶接をすると同時に第1突起SAと第1被溶接母材M1との溶接接点における溶接を進行できる。このように、方向の異なる第1チャンネル及び第2チャンネルから通電するので、被溶接母材のコーティングを破壊しつつ、第1電極131側の溶接接点と第2電極132側の溶接接点とをバランスよく加熱して溶接できる。 したがって、第1電極131側からと第2電極132側からの双方向から通電できるので、一方向のみから通電する場合のように電極に近い溶接接点が比較的強く溶接されるといったようなことなく、偏りなくバランスできる。また、一方向の通電により、溶接品質のばらつきの要因となるため予めスクレーパ等で機械的に剥がす必要があった絶縁層等の高抵抗のコーティングを熱で破壊し、他方向の通電により、コーティングのない状態と同等の条件で良好に溶接できる。よって、被溶接母材のコーティングや形状のばらつきに依らずに溶接品質を安定化できる。
【0028】
電流制御部Cは、図6に示すように、破線で示された電極加圧力(加圧プラテン120と受圧プラテン130とで被溶接母材を挟む加圧力)が上昇して最大となっている間に、初めに最大となった時点から所定のディレイの後に、パルス形状の電流を複数回、所定の冷却時間を空けて断続的に通電するように制御する。このように、電流制御部Cは、電極加圧力と電流を同期させて制御する。なお、電流制御部Cは、パルス形状、パルス電流の通電回数、冷却時間を、環境温度、コーティングの構造、溶接部Wの構造等に応じて適宜変更できる。
【0029】
電流制御部Cは、第2電流Q2の通電を、第1電流Q1の通電と同時に開始するように制御してよい。これにより、第1電流Q1による第1突起SAと第1被溶接母材M1との溶接接点及び第2電流Q2による第2突起SBと第1被溶接母材M1との溶接接点への、コーティングの破壊及び溶接の作用を同じにできる。よって、溶接品質を安定化できる。
【0030】
図6に示すように、電流制御部Cは、第2電流Q2の通電を、第1電流Q1の通電から遅延時間DTの分だけ遅れて開始するように制御してよい。これにより、第2電流Q2による全ての溶接接点の溶接の前に、第1電流Q1による第1突起SAと第1被溶接母材M1との溶接接点におけるコーティングの破壊と溶接及び第2電流Q2による溶接のための余熱を促すことができる。よって、溶接品質を安定化できる。なお、電流制御部Cは、遅延時間DTを、環境温度、コーティングの構造、溶接部Wの構造等に応じて適宜変更できる。
【0031】
第2電流Q2は、第1電流Q1と同じ大きさであってよい。これにより、第1突起SAと第1被溶接母材M1との溶接接点と第2突起SBと第1被溶接母材M1との溶接接点とを、溶接品質に偏りなくバランスよく溶接できる。
【0032】
第2電流Q2は、第1電流Q1より大きい方が好ましい。これにより、第1電流Q1によるコーティング破壊、余熱、溶接開始の後の、第2電流Q2による本溶接のための加熱を確実にできる。
【0033】
以上説明したように、実施形態に係る抵抗溶接機100は、重ね合わされた第1被溶接母材M1及び第2被溶接母材M2を挟んで加圧しながら通電して接合する。抵抗溶接機100は、第1被溶接母材M1に接し、互いに絶縁して配置される第1電極131及び第2電極132と、第2被溶接母材M2に接し、互いに絶縁して配置される第1ベース122A及び第2ベース122Bを有する導電性ベース122と、を備えている。第2被溶接母材M2は、第1被溶接母材M1に向けて突出し、第1被溶接母材M1に接し、互いに離れて配置される第1突起SA及び第2突起SBを有している。抵抗溶接機100は、第1電極131と第1ベース122Aとで第1突起SAを挟み、第2電極132と第2ベース122Bとで第2突起SBを挟むようになっている。このように、第1ベース122A及び第2ベース122Bが互いに絶縁して配置されているので、それぞれが溶接部Wの形状や剛性のばらつきを吸収して溶接部Wに馴染むように加圧できる。また、第1電極131又は第2電極132の一方からの電流は、導電性ベース122を介することなく、第1被溶接母材M1又は第2被溶接母材M2を通じて、他方の電極に流れるようにできる。したがって、単一の導電性ベースが第1電極131側から第2電極132側まで跨る場合と比較して、第1被溶接母材M1の抵抗と第2被溶接母材M2の抵抗を近づけることができるので、第1被溶接母材M1の通電量q1と第2被溶接母材M2の通電量q2を均等にしやすくできる。よって、被溶接母材のコーティングや形状のばらつきに依らずに溶接品質を安定化できる。
【0034】
なお、本発明の技術的範囲は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0035】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、上述の実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0036】
100 抵抗溶接機
120 加圧プラテン
121 ヘッド
121A 第1ヘッド
121B 第2ヘッド
122 導電性ベース
122A 第1ベース
122B 第2ベース
123 シリンダ
124 回動軸
130 受圧プラテン
131 第1電極
132 第2電極
134 電源
C 電流制御部
M1 第1被溶接母材
M2 第2被溶接母材
Q1 第1電流
Q2 第2電流
SA 第1突起
SB 第2突起
T 取手
W 溶接部
q1 通電量
q2 通電量

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた第1被溶接母材及び第2被溶接母材を挟んで加圧しながら通電して接合する抵抗溶接機であって、
前記第1被溶接母材に接し、前記第1被溶接母材を通じて短絡する第1電極及び第2電極と、
前記第2被溶接母材に接し、互いに絶縁されて独立して動くことができ、前記第2被溶接母材を介して通電できる第1ベース及び第2ベースを有する導電性ベースと、を備え、
前記第2被溶接母材は、前記第1被溶接母材に向けて突出し、前記第1被溶接母材に接し、互いに離れて配置される第1突起及び第2突起を有し、
前記第1電極と前記第1ベースとで前記第1突起を挟み、前記第2電極と前記第2ベースとで前記第2突起を挟む
抵抗溶接機。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極との間に通電する電流を制御する電流制御部を備え、
前記電流制御部は、前記第1電極から前記第2電極に向けて第1電流を通電する第1チャンネルと、前記第2電極から前記第1電極に向けて第2電流を通電する第2チャンネルと、を有する
請求項1に記載の抵抗溶接機。
【請求項3】
前記電流制御部は、前記第2電流の通電を、前記第1電流の通電と同時に開始するように制御する
請求項2に記載の抵抗溶接機。
【請求項4】
前記電流制御部は、前記第2電流の通電を、前記第1電流の通電から遅れて開始するように制御する
請求項2に記載の抵抗溶接機。
【請求項5】
前記第1被溶接母材及び前記第2被溶接母材を挟む加圧力の方向に進退可能な加圧プラテンと、前記加圧力を受ける受圧プラテンと、を備え、
前記導電性ベースは、前記加圧プラテンに支持された回動軸の軸方向を中心に回動自在に設けられている
請求項1又は請求項2に記載の抵抗溶接機。
【請求項6】
第1支柱と、第2支柱と、前記第1支柱と前記第2支柱とに張り渡されて前記加圧プラテンを支持する梁と、を含む支持構造体を備える
請求項5に記載の抵抗溶接機。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた第1被溶接母材及び第2被溶接母材を挟んで加圧しながら通電して接合する抵抗溶接機であって、
前記第1被溶接母材に接し、互いに離れて設けられ、互いに絶縁して配置された、前記第1被溶接母材を通じて短絡する第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電気エネルギーを供給する電源と、を備え、
前記第2被溶接母材に接し、互いに絶縁されて独立して動くことができ、前記第2被溶接母材を介して通電できる第1ベース及び第2ベースを有する導電性ベースと、を備え、
前記第2被溶接母材は、前記第1被溶接母材に向けて突出し、前記第1被溶接母材に接し、互いに離れて配置される第1突起及び第2突起を有し、
前記第1電極と前記第1ベースとで前記第1突起を挟み、前記第2電極と前記第2ベースとで前記第2突起を挟む
抵抗溶接機。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極との間に通電する電流を制御する電流制御部を備え、
前記電流制御部は、前記第1電極から前記第2電極に向けて第1電流を通電する第1チャンネルと、前記第2電極から前記第1電極に向けて第2電流を通電する第2チャンネルと、を有する
請求項1に記載の抵抗溶接機。
【請求項3】
前記電流制御部は、前記第2電流の通電を、前記第1電流の通電と同時に開始するように制御する
請求項2に記載の抵抗溶接機。
【請求項4】
前記電流制御部は、前記第2電流の通電を、前記第1電流の通電から遅れて開始するように制御する
請求項2に記載の抵抗溶接機。
【請求項5】
前記第1被溶接母材及び前記第2被溶接母材を挟む加圧力の方向に進退可能な加圧プラテンと、前記加圧力を受ける受圧プラテンと、を備え、
前記導電性ベースは、前記加圧プラテンに支持された回動軸の軸方向を中心に回動自在に設けられている
請求項1又は請求項2に記載の抵抗溶接機。
【請求項6】
第1支柱と、第2支柱と、前記第1支柱と前記第2支柱とに張り渡されて前記加圧プラテンを支持する梁と、を含む支持構造体を備える
請求項5に記載の抵抗溶接機。