(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160188
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】塞栓物装填済みカテーテルおよび医療器具セット
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
A61M25/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154164
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水田 亮
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀彬
(72)【発明者】
【氏名】生野 恵理
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267AA38
4C267AA41
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC10
4C267DD08
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG10
4C267GG21
4C267GG24
4C267HH08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プライミング操作時にカテーテルに装填された塞栓物の意図しない飛び出しを防止するカテーテルを提供する。
【解決手段】塞栓物装填済みカテーテル20に装填される塞栓物10は、装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面と接触して塞栓物10のカテーテル本体21の軸方向への移動を抑制する移動抑制力を受けている複数の接触部を、塞栓物10の外周面上に複数有する。カテーテル本体21は、注入用ハブを介して流体(プライミング液)を装填用ルーメン22内に注入する注入口および流体を装填用ルーメン22内から排出する排出口を有する。そして、塞栓物10が装填され、かつ複数の接触部が移動抑制力を受けている状態の装填用ルーメン22内には、装填用ルーメン22の先端から基端にかけて延在し、かつ注入口および排出口と連通した流体流路28が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のカテーテル本体と、
液体との接触により膨潤する塞栓物と、
前記カテーテル本体の先端から基端にかけて連通して設けられ、前記塞栓物が装填された装填用ルーメンと、
前記装填用ルーメンと連通する挿通路を有し、前記装填用ルーメンに流体を注入可能な注入用ハブと、
を備え、
前記塞栓物は、前記塞栓物の外周面上に、前記装填用ルーメンを画成する前記カテーテル本体の内周面と接触して前記塞栓物の前記カテーテル本体の軸方向への移動を抑制する移動抑制力を受けている複数の接触部を有し、
前記カテーテル本体は、前記注入用ハブを介して前記流体を前記装填用ルーメン内に注入する注入口および前記流体を前記装填用ルーメン内から排出する排出口を有し、
前記塞栓物が装填され、かつ前記複数の接触部が前記移動抑制力を受けている状態の前記装填用ルーメン内には、前記装填用ルーメンの先端から基端にかけて延在し、かつ前記注入口および前記排出口と連通した流体流路が形成されている、塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項2】
前記塞栓物は、軸方向と直交する方向の断面において、前記装填用ルーメンを画成する前記カテーテル本体の前記内周面とは異なる形状に形成されていることにより、前記カテーテル本体の前記内周面と接触する複数の前記接触部を有し、
前記流体流路は、少なくとも前記カテーテル本体の前記内周面と前記塞栓物の前記外周面との間に形成される空隙からなる第1流体流路を含む、請求項1記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項3】
前記流体流路は、少なくとも前記塞栓物の基端から先端にかけて前記塞栓物の内方に形成される空隙からなる第2流体流路を含む、請求項1または2記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項4】
前記塞栓物は、前記装填用ルーメンの軸方向に沿って延在し、かつ前記カテーテル本体の前記内周面と接触する複数の前記接触部を有する線状構造をなし、
前記流体流路は、少なくとも前記カテーテル本体の前記内周面と前記塞栓物との間に形成される空隙からなる第3流体流路を含む、請求項1記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の塞栓物装填済みカテーテルと、
前記塞栓物装填済みカテーテルの基端ハブの挿通路を介して前記装填用ルーメンに挿入可能な長尺状のプッシャー本体を備える送達用プッシャーと、を有する医療器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塞栓物装填済みカテーテルおよび医療器具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の大動脈に生じた瘤(大動脈瘤)は、瘤径の増大、破裂を防ぐ薬物的治療はなく、破裂の危険を伴う瘤径のものに対しては、一般的に外科的療法(手術)が行われる。また、大動脈瘤の手術は、従来、開腹または開胸して人工血管を移植する人工血管置換術が主流であったが、近年では、より低侵襲なステントグラフト内挿術(Endovascular Aneurysm Repair;EVAR)の適用が急速に拡大しつつある。
【0003】
一例として、腹部大動脈瘤(AAA:Abdominal aortic aneurysm)に対するステントグラフト内挿術においては、先端にステントグラフトを収容したカテーテルを患者の末梢血管から挿入し、ステントグラフトを動脈瘤患部に展開・留置することにより、動脈瘤への血流が遮断されて動脈瘤の破裂が防止され得る。
【0004】
一般的に、ステントグラフト内挿術で使用されるステントグラフトは、略Y字状に分岐した分岐部を備える「主本体部」と、分岐部に装着されると共に右腸骨動脈および左腸骨動脈にそれぞれ装着される「脚部」の2種類の部材を組み立てられる構造を有している。
【0005】
そのため、ステントグラフト内挿術において、内挿したステントグラフトの密着不足によるステントグラフト周囲からの血液漏れ、動脈瘤から枝分れした細い血管(側枝血管)からの血液の逆流などにより、動脈瘤内に血流が残存する、所謂「エンドリーク」が生じることがある。この場合、動脈瘤内に浸入した血流によって動脈瘤壁に圧がかかってしまうため、動脈瘤破裂の危険性が潜在する。
【0006】
下記特許文献1には、エンドリークを起因とする大動脈瘤内への血流残存を遮断するため、圧縮した比較的細長なスポンジ(塞栓物)をその管腔内に保持可能なカテーテルと、カテーテル内に保持された塞栓物を血液で満たされた動脈瘤内に押し出すプランジャーとを備えたデバイスについて開示されている。このデバイスに使用されるスポンジは、血液に曝されると直ちに拡張するため、動脈瘤内に押し出されて瘤内の血液を吸収すると膨張し、その状態で動脈瘤内に留置されて血流を遮断して破裂を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されるデバイスのような管腔に塞栓物を装填した状態のカテーテルは、管腔内に空気が存在する場合があり、瘤内に塞栓物を吐出した際、空気も一緒に排出されることがある。瘤内に排出された空気は、瘤の側枝血管に流れ込んでエアーエンボリズムを引き起こす可能性がある。そのため、術者は、塞栓物を装填した状態のカテーテルに対し、生理食塩水などのプライミング液をカテーテル内に注入して管腔内の空気を排出させるプライミング操作を行う。
【0009】
しかし、特許文献1に開示されるデバイスでは、カテーテルに塞栓物を装填した状態でプライミング操作を行うと、プライミング液の押圧力(水圧)によって塞栓物がカテーテルから意図せず飛び出してしまうことがある。塞栓物を装填するカテーテルは、血管などの生体管腔内に挿入して使用するため径サイズが小さく、一度カテーテルから飛び出た塞栓物を再び装填し直すのは困難であり、また、飛び出した塞栓物を再装填することは衛生的にも好ましくなく、改善の余地がある。
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、プライミング操作時にカテーテルに装填された塞栓物の意図しない飛び出しを防止できる塞栓物装填済みカテーテルおよび医療器具セットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本実施形態に係る塞栓物装填済みカテーテルは、長尺状のカテーテル本体と、液体との接触により膨潤する塞栓物と、前記カテーテル本体の先端から基端にかけて連通して設けられ、前記塞栓物が装填された装填用ルーメンと、
前記装填用ルーメンと連通する挿通路を有し、前記装填用ルーメンに流体を注入可能な注入用ハブと、を備え、前記塞栓物は、前記塞栓物の外周面上に、前記装填用ルーメンを画成する前記カテーテル本体の内周面と接触して前記塞栓物の前記カテーテル本体の軸方向への移動を抑制する移動抑制力を受けている複数の接触部を有し、前記カテーテル本体は、前記注入用ハブを介して前記流体を前記装填用ルーメン内に注入する注入口および前記流体を前記装填用ルーメン内から排出する排出口を有し、前記塞栓物が装填され、かつ前記複数の接触部が前記移動抑制力を受けている状態の前記装填用ルーメン内には、前記装填用ルーメンの先端から基端にかけて延在し、かつ前記注入口および前記排出口と連通した流体流路が形成されている。
【0012】
また、本実施形態に係る医療器具セットは、上述した塞栓物装填済みカテーテルと、前記塞栓物装填済みカテーテルの基端ハブの挿通路を介して前記装填用ルーメンに挿入可能な長尺状のプッシャー本体を備える送達用プッシャーと、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、プライミング操作時にカテーテルに装填された塞栓物の意図しない飛び出しを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る医療器具セットおよびデリバリーシステムの構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システムの構成を示す図である。
【
図3】医療器具セットを構成する塞栓物装填済みカテーテルを軸方向に沿って切断した概略部分断面図である。
【
図4A】塞栓物装填済みカテーテルに装填された塞栓物の形態例を示す概略断面図である。
【
図4B】塞栓物装填済みカテーテルに装填された塞栓物の形態例を示す概略断面図である。
【
図4C】塞栓物装填済みカテーテルに装填された塞栓物の形態例を示す概略断面図である。
【
図5A】塞栓物装填済みカテーテルに装填された塞栓物の形態例を示す概略断面図である。
【
図5B】塞栓物装填済みカテーテルに装填された塞栓物の形態例を示す概略断面図である。
【
図5C】塞栓物装填済みカテーテルに装填された塞栓物の形態例を示す概略断面図である。
【
図6A】送達用プッシャーのハンドル部近傍の部分拡大図である。
【
図6B】送達用プッシャーの挿入状態を示す部分拡大図である。
【
図7A】本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、送達用カテーテルが瘤内に送達された状態を示す図である。
【
図7B】塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、瘤内にステントグラフトが展開された状態を示す図である。
【
図7C】塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、塞栓物装填済みカテーテルを送達用カテーテルに装着する前の状態を示す図である。
【
図7D】塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、塞栓物装填済みカテーテルを送達用カテーテルに装着した状態を示す図である。
【
図7E】塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、送達用プッシャーを塞栓物装填済みカテーテルに挿入中の状態を示す図である。
【
図7F】塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、送達用プッシャーによって塞栓物が瘤内に押し出された状態を示す図である。
【
図7G】塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、送達用カテーテルから塞栓物装填済みカテーテルを離脱させる状態を示す図である。
【
図8A】変形例1に係る塞栓物(円形螺旋形状)を装填した塞栓物装填済みカテーテルの概略斜視図である。
【
図8B】変形例1に係る塞栓物(三角螺旋形状)を装填した塞栓物装填済みカテーテルの概略斜視図である。
【
図8C】変形例1に係る塞栓物(四角螺旋形状)を装填した塞栓物装填済みカテーテルの概略斜視図である。
【
図9A】
図8Aに示した塞栓物を装填した塞栓物装填済みカテーテルの概略断面図である。
【
図9B】
図8Bに示した塞栓物を装填した塞栓物装填済みカテーテルの概略断面図である。
【
図9C】
図8Cに示した塞栓物を装填した塞栓物装填済みカテーテルの概略断面図である。
【
図10A】変形例1に係る塞栓物(ジグザグ形状)を装填した塞栓物装填済みカテーテルの概略斜視図である。
【
図10B】変形例1に係る塞栓物(波形状)を装填した塞栓物装填済みカテーテルの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0016】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のし易さの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0017】
本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200および塞栓物デリバリー医療システム300において、生体管腔(血管など)に挿入される側を「先端」とし、先端側と反対側(術者が把持する側)を「基端」とする。また、「先端」とは、最先端から軸方向(長手方向)における一定の範囲を含み、「基端」とは、最基端から軸方向における一定の範囲を含むことを意味する。
【0018】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0019】
[構成]
本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200および塞栓物デリバリー医療システム300について説明する。
【0020】
本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300は、一例として血管内に生じた瘤(例えば動脈瘤)の破裂を防止するための治療法である、腹部大動脈瘤(AAA)のステントグラフト内挿術に対するエンドリーク塞栓術に適用され得る。また、本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300が適用可能な治療法としては、上記エンドリーク塞栓術に限らず、血管や血管以外の生体管腔内に生じた瘤などの破裂を防止させるための他のインターベンション治療法にも適用可能である。
【0021】
図1には、本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200を構成する各デバイスが示されており、
図2には、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300を構成する各デバイスが示されている。
【0022】
<医療器具セット>
医療器具セット100は、
図1に示すように塞栓物10が装填された塞栓物装填済みカテーテル20と、送達用プッシャー30を備えている。
【0023】
〈塞栓物〉
塞栓物10は、血管内に生じた動脈瘤のような瘤内に留置され、瘤内に流入される血液を含む液体を吸収して膨張する。塞栓物10は、塞栓物装填済みカテーテル20に装填され、塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に装着された状態で送達用プッシャー30により押し出されて瘤内に留置される。
【0024】
塞栓物10は、生理条件下で血液を含む水性液体との接触により膨脹する膨張性材料(高分子材料(吸水ゲル材料)など)からなる細長い繊維状の線体(線状体)である。
【0025】
ここで、「生理条件」とは、哺乳動物(例えば、ヒト)の体内または体表面における少なくとも1つの環境特性を有する条件を意味する。そのような特性は、等張環境、pH緩衝環境、水性環境、中性付近(約7)のpH、又はそれらの組み合わせを包含する。また、「水性液体」は、例えば、等張液、水;血液、髄液、血漿、血清、ガラス体液、尿などの哺乳動物(例えば、ヒト)の体液を包含する。塞栓物10の外径は、塞栓物装填済みカテーテル20および送達用カテーテル40の内径に収容可能であればよく、例えばこれらカテーテルの内径と略同等とすることができる。また、塞栓物10の全長は、特に制限はないが、装填容易性と手技時間の短縮化などを考慮しつつ留置先となる瘤の大きさなどによって適宜決定されてよい。
【0026】
なお、塞栓物10の構成材料は、少なくとも血液のような液体を吸収して膨張し、かつ瘤内に留置された状態でも人体への有害性がない(または極めて低い)材料であれば、特に限定されない。また、塞栓物10は、X線、蛍光X線、超音波、蛍光法、赤外線、紫外線などの確認方法によって生体内の存在位置が確認可能な可視化材料が添加されていてよい。
【0027】
塞栓物10は、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面21aと接触して塞栓物10のカテーテル本体21の軸方向への移動を抑制する移動抑制力を受ける接触部11を、外周面上に複数有する。
【0028】
ここで、「移動抑制力」とは、カテーテル本体21の径方向に沿って作用し、塞栓物10が受ける軸方向の押圧力に抗して塞栓物10の軸方向への移動を抑制する力である。詳細には、移動抑制力は、「カテーテル本体21の内周面21aからカテーテル本体21の軸中心方向に向かって塞栓物10を圧縮する圧縮力に起因した圧力」と、「カテーテル本体21に装填された際の塞栓物10の復元性により塞栓物10の軸中心からカテーテル本体21の内周面21aに向かう復元力(突っ張り力)に起因した圧力」の少なくとも一方を含む。
【0029】
移動抑制力は、少なくともプライミング操作時に意図しないカテーテル本体21からの塞栓物10の飛び出しが防止され、送達用プッシャー30などによる意図的な吐出操作時には塞栓物10が吐出可能な程度の力を有する。したがって、塞栓物10は、プライミング操作時には、プライミング液から受ける押圧力(水圧)に抗してカテーテル本体21から飛び出ず、吐出操作時には、その操作を妨げることなくスムーズに吐出される。移動抑制力は、上述したように圧縮力や復元力に起因する力であるため、塞栓物10の外径サイズ、カテーテル本体21の送達用ルーメンの内径サイズ、塞栓物10の弾性復元力などの調整要素を適宜設定することで適切な力に調整することができる。また、移動抑制力は、これら調整要素に加えて、塞栓物10やカテーテル本体21の材質に起因する摩擦力を調整することで、より適切なものとすることができる。
【0030】
塞栓物10は、
図3に示すように、複数の接触部11が移動抑制力を受けることにより、見かけ上の垂直抗力Nが増加し、「静止摩擦力F>プライミング液による押圧力P」の関係が維持され易くなる。そのため、塞栓物10は、プライミング操作の際に、プライミング液の押圧力Pに抗して装填用ルーメン22内に留まってカテーテル本体21から飛び出ることがない。
【0031】
また、塞栓物10が装填された状態の装填用ルーメン22内には、装填用ルーメン22の先端から基端にかけて延在し、かつ塞栓物装填済みカテーテル20のカテーテル本体21が有する液体(プライミング液)の注入口および排出口と連通する流体流路28が形成される。
【0032】
流体流路28は、塞栓物10が装填された状態で装填用ルーメン22内に形成される。流体流路28は、装填用ルーメン22内に液体が注入可能な注入口を有する液体注入部と連通するとともに、装填用ルーメン22から液体が排出可能な排出口を有する液体注入部と連通し、プライミング液などの液体が流通可能に構成される。本実施形態において、注入口は、液体注入部として機能する基端ハブ23の挿通路23aにおける先端側の開口部であり、流体流路28の液体注入側の開口部と連通する。本実施形態において、排出口は、液体排出部として機能する装填用ルーメン22の先端側の開口部であり、流体流路28の液体排出側の開口部と連通する。
【0033】
なお、流体流路28と連通する注入口は、基端ハブ23の挿通路23aにおける先端側の開口部に限定されず、カテーテル本体21に設けられて装填用ルーメン22と連通した液体注入用の開口部であればよい。また、流体流路28と連通する排出口は、装填用ルーメン22の先端側の開口部に限定されず、カテーテル本体21に設けられて装填用ルーメン22と連通した液体排出用の開口部であればよい。
【0034】
本実施形態において、塞栓物10は、
図1に示すように塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22の全長よりも短い。そのため、流体流路28は、少なくとも装填用ルーメン22の一部(塞栓物10の軸方向の前後に広がる空間)と、装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面21aと塞栓物10の外周面との間に形成される空隙からなる第1流体流路28aを含む構成となる。また、流体流路28は、少なくとも装填用ルーメン22の一部と、塞栓物10の基端から先端にかけて塞栓物10の内方に形成される空隙からなる第2流体流路28bを含む構成としてもよい。さらに、流体流路28は、少なくとも装填用ルーメン22の一部と、第1流体流路28aおよび第2流体流路28bを含む構成としてもよい。
【0035】
なお、塞栓物10の全長と装填用ルーメン22の全長とが略同一の場合、流体流路28は、第1流体流路28a、第2流体流路28bの少なくとも一方で構成されることとなる。第1流体流路28aや第2流体流路28bのみで構成される流体流路28は、一方の開口部が注入口(本実施形態における基端ハブ23の先端側の開口部)と連通し、他方の開口部が排出口(装填用ルーメン22の先端側の開口部)と連通する。
【0036】
このように、塞栓物装填済みカテーテル20は、装填用ルーメン22内に塞栓物10が装填された状態で、装填用ルーメン22内に流体流路28が形成される。そのため、塞栓物装填済みカテーテル20をプライミング操作した際、プライミング液は、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に注入された後、流体流路28を通って装填用ルーメン22内からスムーズに排出される。したがって、塞栓物10は、プライミング液から受ける押圧力が低減するため、移動抑制力による移動抑制効果と相俟って、カテーテル本体21からより飛び出し難くなる。
【0037】
図4A~
図4Cおよび
図5A~
図5Cには、本実施形態に係る塞栓物10の各形態において、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に装填された状態の概略断面図が示されている。
図4A~
図4Cおよび
図5A~
図5Cに示す塞栓物装填済みカテーテル20は、何れの形態においても接触部11が移動抑制力を受けた状態で装填用ルーメン22に装填され、この装填状態において、流体流路28が形成される。
【0038】
図4A~
図4Cに示すように、塞栓物10(塞栓物10A~塞栓物10C)は、外形が、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面21aの形状と異なり、外周面の複数箇所が接触部11(接触部11A~接触部11C)として機能する。接触部11A~接触部11Cは、移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触する。塞栓物10A~塞栓物10Cが装填用ルーメン22に装填された状態において、装填用ルーメン22内には、塞栓物10と内周面21aとの間の空隙によって第1流体流路28aが形成される。なお、接触部11A~接触部11Cの内周面21aとの接触形態は、点接触でもよいし面接触でもよく、移動抑制力を受けた状態で内周面21aと接触していれば特に制限はない。
【0039】
図4Aに示すように、塞栓物10Aは、断面形状が楕円形をなしている。塞栓物10Aは、長径方向の端部(図中2箇所)が接触部11Aとして機能し、移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触している。また、
図4Aに示すように、塞栓物10Aと内周面21aの間に形成された2箇所の空隙が第1流体流路28aとして機能する。
【0040】
図4Bに示すように、塞栓物10Bは、断面形状が星形多角形(星形正七角形)をなしている。塞栓物10Bは、内周面21aと対向する各頂点(図中7箇所)が接触部11Bとして機能し、移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触している。また、
図4Bに示すように、塞栓物10Bと内周面21aの間に形成された7箇所の空隙が第1流体流路28aとして機能する。
【0041】
図4Cに示すように、塞栓物10Cは、断面形状が略十字形をなしている。塞栓物10Cは、内周面21aと対向する頂端部の角部(図中8箇所)が接触部11Cとして機能し、移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触している。また、
図4Cに示すように、塞栓物10Cと内周面21aの間に形成された8箇所の空隙が第1流体流路28aとして機能する。
【0042】
図5A~
図5Cに示すように、塞栓物10(塞栓物10D~塞栓物10F)は、外形が、装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面21aの形状と略同形であり、外周面の略全面が接触部11(接触部11D~接触部11F)として機能する。接触部11D~接触部11Fは、移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触する。塞栓物10D~塞栓物10Fが装填用ルーメン22に装填された状態において、装填用ルーメン22には、塞栓物10の先端側から基端側にかけて内方に形成される空隙によって第2流体流路28bが形成される。
【0043】
図5Aに示すように、塞栓物10Dは、断面形状が略円筒形をなしている。塞栓物10Dは、外周面の略全域が接触部11Dとして機能し、外周面の複数箇所で移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触している。また、
図5Aに示すように、塞栓物10Dの内方に先端側から基端側にかけて連通して形成される内腔(空隙)が第2流体流路28bとして機能する。
【0044】
図5Bに示すように、塞栓物10Eは、断面形状が略円形をなし、内方に複数の微小孔(孔形状は円形、多角形を問わず)が形成されている。塞栓物10Eは、外周面の略全域が接触部11Eとして機能し、外周面の複数箇所で移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触している。また、
図5Bに示すように、塞栓物10Eの内方に先端側から基端側にかけて連通して形成される複数の孔(空隙)が第2流体流路28bとして機能する。なお、塞栓物10Eは、複数の微小孔における開口サイズや形成数について特に制限はなく、塞栓物10としての機能を担保しつつ液体が流通可能な構成であればよい。
【0045】
図5Cに示すように、塞栓物10Fは、断面形状が螺旋形をなしている。塞栓物10Fは、例えば平面視矩形板状に成形した後、装填用ルーメン22内に収容可能に軸方向と直交する短手方向に丸めて成形される。塞栓物10Fは、最外周面の略全域が接触部11Fとして機能し、最外周面の複数箇所で移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触している。また、
図5Cに示すように、塞栓物10Fの内方に先端側から基端側にかけて連通して形成される断面渦巻き状の空隙が第2流体流路28bとして機能する。
【0046】
以上のように、塞栓物10A~塞栓物10Fは、接触部11A~接触部11Fが移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触した状態で装填用ルーメン22に装填される。また、塞栓物10A~塞栓物10Fを装填した状態の装填用ルーメン22内には、プライミング液が流通可能な第1流体流路28aと第2流体流路28bの少なくとも一方を含む流体流路28が形成される。プライミング液は、流体流路28を通って装填用ルーメン22内を流通するため、プライミング操作時に塞栓物10が受ける押圧力は、流体流路28を有さない従来構成のデバイスと比べて格段に低減される。また、塞栓物10は、接触部11が移動抑制力を受けた状態で装填用ルーメン22内に装填されるため、プライミング液の押圧力に抗して装填用ルーメン22内に留まることができる。したがって、塞栓物装填済みカテーテル20は、プライミング操作時に塞栓物10の意図しない飛び出しが防止される。
【0047】
なお、塞栓物10は、
図4A~
図4Cや
図5A~
図5Cに示した形状に限定されない。塞栓物10は、少なくとも装填用ルーメン22内に装填された状態においてカテーテル本体21の内周面21aと接触した状態で移動抑制力を受ける接触部11を複数有し、かつ装填用ルーメン22に装填された状態で注入口(一例として、基端ハブ23の先端側の開口部)から装填用ルーメン22内に注入したプライミング液が排出口(一例として、装填用ルーメン22の先端側の開口部)から排出されるように第1流体流路28aや第2流体流路28bを含む流体流路28が形成可能な形状を有していればよい。また、塞栓物10は、軸方向における一部のみに接触部11を有する形状としてもよい。
【0048】
塞栓物10の他の形態例としては、
図4A~
図4Cに示した第1流体流路28aが形成可能な構成において、塞栓物10の先端側から基端側の外周面に、軸方向に沿う少なくとも一条の螺旋状波形の溝部(ねじ溝形状の螺旋溝)を設け、溝部を第1流体流路28aとして機能させ、溝部以外の外周面を接触部11として機能させるような構成が挙げられる。
【0049】
また、塞栓物10は、第1流体流路28aと第2流体流路28bの両方を備えた構成とすることもできる。例えば、
図4Aに示す断面楕円形の塞栓物10Aの内方に、
図5Aに示すような軸方向に先端から基端にかけて延在する内腔を設けた構成とすることもできる。
【0050】
〈塞栓物装填済みカテーテル〉
塞栓物装填済みカテーテル20は、内方に装填用ルーメン22が設けられる長尺状のカテーテル本体21と、カテーテル本体21の基端側に設けられる基端ハブ23と、一端が基端ハブ23の基端側と接続されて他端が活栓25のポート26と接続される可撓性を有するチューブ24を備えている。
【0051】
カテーテル本体21は、軸方向に沿って先端側の開口部から基端側の開口部にかけて連通する孔(装填用ルーメン22)が形成された管状部材である。カテーテル本体21の延在方向の長さは、適宜規定されるが、少なくとも塞栓物10が収容可能な長さを有していればよい。
【0052】
装填用ルーメン22の内径は、送達用カテーテル40のシースルーメン42の内径と略同等に設計されている。これにより、塞栓物10の外径は、塞栓物装填済みカテーテル20および送達用カテーテル40の内径と略同等にできる。
【0053】
塞栓物装填済みカテーテル20は、主として予め塞栓物10が装填された状態で供されるが、カテーテル本体21に装填される塞栓物10は、術者などが塞栓物10を把持してカテーテル本体21内に装填してもよい。塞栓物10の装填方法としては、術者が塞栓物10を把持して塞栓物装填済みカテーテル20の先端接続部27側または基端ハブ23側から挿入することができる。
【0054】
カテーテル本体21は、塞栓物10が収容された状態で先端接続部27を介して送達用カテーテル40のシースハブ43と係合して装着される。この装着状態において、送達用プッシャー30が基端ハブ23から挿入されることにより、装填される塞栓物10は、送達用カテーテル40に向けて押し出される。
【0055】
塞栓物装填済みカテーテル20の構成材料は、少なくとも送達用カテーテル40よりも剛性を有し、包装時などに装填される塞栓物10の破損が防止される程度の適度な硬さが得られる材料であれば、特に限定されない。カテーテル本体21の構成材料の一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルケトンなどの高分子材料またはこれらの混合物のような樹脂材料、形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンのような金属材料を好適に用いることができる。
【0056】
なお、カテーテル本体21は、塞栓物10の破損防止の観点からシース41よりも剛性を有していればよいため、材料自体を硬質なものにする他、シース41と同材料を採用したときには肉厚を厚くしてキンクし難い形態としてもよい。肉厚を可変した形態の場合、カテーテル本体21の外径がシース41の外径よりも太径となるが、塞栓物装填済みカテーテル20は送達用カテーテル40と係合部60を介して装着されるため、特に問題とはならない。
【0057】
基端ハブ23は、カテーテル本体21の装填用ルーメン22とチューブ24を連通させる挿通路23a(ルーメン)を備え、活栓25から流入する流体(生理食塩水などのプライミング液)を、チューブ24を介してカテーテル本体21に流通させる中間部材である。基端ハブ23は、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22にプライミング液を注入可能な注入用ハブとして機能する。装填用ルーメン22に装填された塞栓物10は、送達用プッシャー30が基端ハブ23の挿通路23aを介して装填用ルーメン22に挿通されることにより、送達用カテーテル40に向けて押し出される。
【0058】
基端ハブ23の構成材料としては、硬質樹脂のような硬質材料であれば、特に限定されない。基端ハブ23の構成材料の一例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレンなどを好適に用いることができる。
【0059】
また、基端ハブ23の基端側の内方には、図示しない止血弁が取り付けられている。止血弁は、例えば弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴムなどで構成された略楕円形の膜状(円盤状)の弁体を用いてよい。
【0060】
チューブ24は、一端が基端ハブ23の基端側と連結され、他端が活栓25のポート26と連結される。チューブ24は、ポート26に連結される図示しないプライミング用シリンジから流出される生理食塩水などの液体が流通する管路である。
【0061】
チューブ24は、操作性を考慮して可撓性を有する樹脂材料であれば、特に限定されない。チューブ24の構成材料の一例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどを好適に用いることができる。
【0062】
活栓25は、基端ハブ23の挿通路23aと、チューブ24を介してカテーテル本体21の装填用ルーメン22と連通する。活栓25のポート26には、チューブ24の基端側が接続される他、カテーテル本体21の装填用ルーメン22をプライミング操作するためのプライミング用シリンジを接続することもできる。本実施形態において、活栓25は、三方活栓を採用している。しかし、活栓25は、三方活栓に限定されず、他の形態(例えば二方活栓やポートが4つ以上の多方活栓など)を採用してもよい。
【0063】
先端接続部27は、塞栓物装填済みカテーテル20の先端側に設けられ、送達用カテーテル40のシースハブ43の基端側に着脱可能に接続される。先端接続部27は、シースハブ43の連通路43aにおける基端側の内周面に形成した係合凹部と、先端接続部27の径方向外方に突出する弾性変形可能な係合凸部と、で構成される、所謂スナップフィットのような形態を採用することができる。なお、先端接続部27のシースハブ43に対する接続形態は、特に限定されず、塞栓物装填済カテーテル20と送達用カテーテル40の接続状態が維持される、例えばねじ込み式のような他の接続形態を採用することもできる。また、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40とは、少なくとも接続状態において塞栓物10が移動可能に接続されればよい。
【0064】
〈送達用プッシャー〉
送達用プッシャー30は、基端ハブ23に挿通されてカテーテル本体21に収容された塞栓物10を押し出し、送達用カテーテル40のシースルーメン42を介して瘤内へと送達させるための長尺な棒状部材である。送達用プッシャー30は、棒状のプッシャー本体31と、プッシャー本体31の基端側に設けられて塞栓物10を瘤内に送達する際に術者が把持するハンドル部32を備えている。
【0065】
送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20を送達用カテーテル40に装着した状態において、術者によりハンドル部32が把持された状態で所定操作されると、装填用ルーメン22に装填された塞栓物10を、送達用カテーテル40のシースルーメン42を介して瘤内へと押し出す。具体的に、送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20および送達用カテーテル40の軸方向に沿って押し出し操作されることにより、塞栓物装填済みカテーテル20に装填された塞栓物10を外部(瘤内)へと押し出す。
【0066】
送達用プッシャー30のプッシャー本体31の本体長は、塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に装着された装着状態において、基端ハブ23の挿通路23aの基端から、送達用カテーテル40のシース41の先端開口部41a(シースルーメン42と連通する先端側の開口部)に至るまでの距離よりも長い。そのため、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の装着させた状態で送達用プッシャー30を基端ハブ23から挿入させれば、一度の押し出し操作によって、装填用ルーメン22内に装填された塞栓物10を、挿通路23a→シースハブ43→シースルーメン42の順で通過させてして瘤内に押し出すことができる。
【0067】
図6Aに示すように、ハンドル部32は、先端側に大径傘部32aを有し、大径傘部32aの基端側に延在する小径柄部32bを有する略キノコ型の形状をなしており、ハンドル部32の最大外径となる大径傘部32aの外径寸法は、基端ハブ23の挿通路23aの内径寸法よりも大きく設計されている。これにより、
図6Bに示すように、送達用プッシャー30を塞栓物装填済みカテーテル20に挿入した際に、大径傘部32aが基端ハブ23の挿通路23aに挿入されないため、送達用プッシャー30の挿入長を制限することができる。また、ハンドル部32は、大径傘部32aによって基端ハブ23に入り込むことがないため、送達用プッシャー30により塞栓物10の押し出し操作が終了した際に、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱操作に連れて挿入状態のまま同時に引き抜き易く、離脱操作が簡便となる。なお、送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱操作前に、塞栓物装填済みカテーテル20から引き抜いてもよい。
【0068】
なお、ハンドル部32は、塞栓物装填済みカテーテル20に挿入した際に、大径傘部32aが基端ハブ23の基端側と嵌合可能な構成とすることもできる。このような構成とすることにより、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱の際に、送達用プッシャー30が塞栓物装填済みカテーテル20から外れることなく確実に引き抜くことができる。
【0069】
プッシャー本体31の構成材料は、塞栓物10が搬送可能な適度な硬さと可撓性が得られる材料であれば、特に限定されない。プッシャー本体31の構成材料の一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ETFEなどのフッ素系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルケトンなどの高分子材料またはこれらの混合物のような樹脂材料、形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンのような金属材料を好適に用いることができる。
【0070】
<デリバリーシステム>
次に、本実施形態に係るデリバリーシステム200について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るデリバリーシステム200は、医療器具セット100に加えて、生体管腔内に留置された状態で塞栓物装填済みカテーテル20が着脱される送達用カテーテル40を備えている。
【0071】
〈送達用カテーテル〉
送達用カテーテル40は、例えば生体管腔内に留置可能な既存のカテーテルを利用することもできる。そのため、本実施形態に係るデリバリーシステム200において、医療器具セット100および送達用カテーテル40をセット販売して市場に供給することもできるが、医療器具セット100のみを販売して市場に供給したとしても、既存のカテーテルを送達用カテーテル40として利用することにより、デリバリーシステム200として機能させることができる。
【0072】
送達用カテーテル40は、例えば軸方向に沿って先端側の開口部から基端側の開口部にかけて連通する孔(シースルーメン42)が形成された長尺な管状部材からなるシース41を備え、生体管腔内に留置されて塞栓物10を瘤内まで送達させるための導入路として機能する。シース41は、その全長に亘って後述する挿通補助部材50の本体51が挿通可能である。したがって、シース41の軸方向の長さは、少なくとも挿通補助部材50の本体51よりも短く設定される。
【0073】
シースルーメン42の内径は、装填用ルーメン22の内径と略同等に設計されている。これにより、係合部60による塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の接続状態において装填用ルーメン22からシースルーメン42へと塞栓物10をスムーズに移動させることができる。
【0074】
シース41の構成材料は、蛇行や湾曲といった生体管腔の曲がり形状に追従できる程度の可撓性および剛性を有する材料であれば、特に限定されない。シース41の構成材料の一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルケトンなどの高分子材料、またはこれらの混合物のような樹脂材料を好適に用いることができる。
【0075】
また、送達用カテーテル40は、シース41の基端側に連結されるシースハブ43と、一端がシースハブ43の基端側と接続されて他端が活栓45と接続される可撓性を有するチューブ44を備える。
【0076】
シースハブ43は、シースルーメン42とチューブ44との間、および装填用ルーメン22とシースルーメン42との間を連通させる連通路43aを備え、活栓45から流入する流体(プライミング液など)を、チューブ44を介してシース41に流通させると共に、塞栓物装填済みカテーテル20から押し出された塞栓物10をシースルーメン42内に導くための中間部材である。シースハブ43は、送達用カテーテル40を生体管腔内に留置させる際に挿通補助部材50が挿通される。
【0077】
なお、シースハブ43の構成材料は、上述した基端ハブ23の構成材料として例示した材料と同様のものを用いることができる。
【0078】
シースハブ43は、塞栓物装填済みカテーテル20の先端接続部27と接続される。シースハブ43と先端接続部27の接続状態において、装填用ルーメン22とシースルーメン42は、軸方向で揃う。これにより、カテーテル本体21から押し出された塞栓物10は、シースハブ43の内壁面に突き当たることによる破損(折れ曲がりまたは先端側の潰れ)が防止される。
【0079】
チューブ44は、一端がシースハブ43の基端側と連結され、他端が活栓45のポート46と連結される。チューブ44は、ポート46に連結される図示しないプライミング用シリンジから流出される生理食塩水などの液体が流通する管路である。なお、チューブ44の構成材料は、上述したチューブ24の構成材料として例示した材料と同様のものを用いることができる。
【0080】
活栓45は、シースハブ43の連通路43aと、チューブ44を介してシース41のシースルーメン42と連通する。活栓45のポート46には、チューブ44の基端側が接続される他、シース41のシースルーメン42をプライミング操作するためのプライミング用シリンジ、造影剤または薬剤などを注入する液剤投入用シリンジを接続することもできる。本実施形態において、活栓45は、三方活栓を採用している。しかし、活栓45は、三方活栓に限定されず、他の形態(例えば二方活栓やポートが4つ以上の多方活栓など)を採用してもよい。
【0081】
また、シースハブ43の基端側の内方には、止血弁が取り付けられている。止血弁は、例えば弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴムなどで構成された略楕円形の膜状(円盤状)の弁体を用いてよい。
【0082】
ここで、本実施形態に係るデリバリーシステム200を構成する各デバイスの寸法例について説明する。なお、以下に示される数値は一例であって、これらに限定されるものではない。
【0083】
本実施形態に係るデリバリーシステム200において、送達用カテーテル40を外径6Frサイズ(内径1.8mm)のカテーテルとし、適用される術式を腹部大動脈瘤(AAA)のステントグラフト内挿術に対するエンドリーク塞栓術とした場合、塞栓物10の外径を0.4~1.9mm(好ましくは1.6mm程度)、塞栓物装填済みカテーテル20の内径を送達用カテーテル40の内径と同等の1.0~1.8mm(好ましくは1.8mm程度)とすることができる。また、塞栓物装填済みカテーテル20のカテーテル本体21の本体長は30~105cm(好ましくは42cm程度)、送達用カテーテル40のシース41の本体長は39~90cm(好ましくは47cm程度)、送達用プッシャー30のプッシャー本体31の本体長は79~205cm(好ましくは96cm程度)とすることができる。また、塞栓物10の全長は、瘤サイズによって適宜決定されるが、塞栓物装填済みカテーテル20への装填容易性と手技時間短縮の観点から30~100cmの範囲(好ましくは40cm程度)とすることができる。
【0084】
<塞栓物デリバリー医療システム>
次に、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300の構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300は、デリバリーシステム200に加えて、生体管腔内に送達用カテーテル40を送達させる挿通補助部材50を備えている。
【0085】
〈挿通補助部材〉
挿通補助部材50は、本体51の軸方向に沿って先端側から基端側にかけて挿通するガイドワイヤルーメン52が形成され、事前に生体管腔内に挿通されたガイドワイヤに沿って送達用カテーテル40を瘤内まで送達させる際の挿入を補助するための補助具である。
【0086】
挿通補助部材50は、生体管腔内に送達用カテーテル40を挿入する際の折れ曲がりなどを防ぐため、送達用カテーテル40に挿入して組み付けられる。また、ガイドワイヤルーメン52は、送達用カテーテル40のシースルーメン42よりも内径が小さい。このため、送達用カテーテル40を瘤内に送達させる際に、送達用カテーテル40のガイドワイヤに対する軸ずれを小さくでき、より送達が容易になる。
【0087】
挿通補助部材50の構成材料は、送達用カテーテル40よりも硬質で可撓性を有する材料であれば、特に限定されない。挿通補助部材50の構成材料の一例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFEなどのフッ素系樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドのような樹脂材料、形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンのような金属材料を好適に用いることができる。
【0088】
[動作]
次に、
図7A~
図7Gを適宜参照しながら、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300の動作について説明する。
【0089】
以下の説明では、塞栓物デリバリー医療システム300を、腹部大動脈瘤(AAA)のステントグラフト内挿術に対するエンドリーク塞栓術に適用した際の動作例であり、塞栓物10は、
図4Aに示す断面形状が楕円形のものを用いている。また、
図7C~
図7Gにおいて、瘤内を「A」、血管内を「V」、体外を「O」とし、塞栓物デリバリー医療システム300の各デバイスの配置位置が体系的に把握可能なように表現した。
【0090】
まず、術前の準備工程として、術者は、
図7Aに示すように、挿通補助部材50を挿入した送達用カテーテル40のシース41を、穿刺部位となる患者の肢体からイントロデューサー(例えば
図7Aの二点鎖線で示された部材)を介して経皮的に生体管腔へと挿入し、送達用カテーテル40の先端開口部41aを腹部大動脈瘤まで送達させる。先端開口部41aが瘤内まで送達されると、挿通補助部材50を抜去する。なお、送達用カテーテル40は、挿通補助部材50を使用せず、予め動脈瘤内に挿入したガイドワイヤを用いて動脈瘤患部まで送達させてもよい。また、送達用カテーテル40については生体管腔への導入前にプライミング操作を行う。
【0091】
次に、術者は、
図7Bに示すように、イントロデューサーを介してステントグラフトSGを圧縮挿入したカテーテル(ステントグラフトデバイス)を生体管腔内に挿入し、予め動脈瘤内に挿入したガイドワイヤを用いて動脈瘤患部まで移動させる。その後、患部にてカテーテルからステントグラフトSGを展開し留置する。これにより、
図7Bに示すように、送達用カテーテル40は、ステントグラフトSGの脚部と血管壁との間を介して、送達用カテーテル40の先端部がステントグラフトSGと動脈瘤の血管壁との間、すなわち動脈瘤内に挿入され、先端開口部41aが瘤内に位置した状態で生体管腔内に留置される。
【0092】
次に、
図7Cに示すように、塞栓物10が装填された塞栓物装填済みカテーテル20を準備する。
図7Cには、塞栓物装填済みカテーテル20が、送達用カテーテル40に装着される前の状態が示されている。
【0093】
術者は、塞栓物装填済みカテーテル20を送達用カテーテル40に装着させる前に、プライミング操作を行う。塞栓物10は、カテーテル本体21の内周面21aに接触部11が接触した状態で装填されている。塞栓物10の接触部11は、カテーテル本体21の径方向に沿う力である移動抑制力を受けている。また、塞栓物10が装填された状態の装填用ルーメン22内には、装填用ルーメン22の先端から基端にかけて延在し、かつ塞栓物装填済みカテーテル20のカテーテル本体21が有するプライミング液の注入口(基端ハブ23の先端側の開口部)および排出口(装填用ルーメン22の先端側の開口部)と連通する流体流路28が形成される。
【0094】
プライミング操作において、プライミング液は、注入口から注入されると流体流路28を通って装填用ルーメン22内を流通した後、排出口から排出される。そのため、塞栓物10は、プライミング液から受ける押圧力が低減する。また、塞栓物10は、接触部11に移動抑制力が働いた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触して装填されるため、プライミング液の押圧力に抗してカテーテル本体21に留まった状態を維持する。そのため、塞栓物装填済みカテーテル20は、プライミング操作時に塞栓物10がカテーテル本体21から飛び出ない。すなわち、塞栓物装填済みカテーテル20は、プライミング操作時における意図しない飛び出しが防止される。
【0095】
塞栓物装填済みカテーテル20のプライミング操作が終わると、術者は、
図7Dに示すように、送達用カテーテル40のシースハブ43の基端に、塞栓物装填済みカテーテル20の先端接続部27を装着させる。この際、装填用ルーメン22の軸中心は、シースルーメン42の軸中心と揃う。
【0096】
次に、術者は、
図7Eに示すように、ハンドル部32を把持した状態でプッシャー本体31の先端を基端ハブ23の基端側から挿入する。基端ハブ23から挿入された送達用プッシャー30の先端は、塞栓物装填済みカテーテル20内に装填された塞栓物10の基端と当接し、術者の押し出し操作によって、塞栓物10を送達用カテーテル40のシースルーメン42へと押し出して移動させる。
【0097】
そして、術者は、
図7Fに示すように、基端ハブ23から挿入された送達用プッシャー30を押し出し操作してシースルーメン42から塞栓物10を瘤内へと押し出す。その後、術者は、
図7Gに示すように、空になった塞栓物装填済みカテーテル20を送達用プッシャー30と共に、送達用カテーテル40から離脱させる。送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20に挿入した状態で送達用カテーテル40から離脱させることができる。これにより、瘤内に対する塞栓物10の1回目の挿入動作が完了する。なお、挿入動作において、送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱操作前に、塞栓物装填済みカテーテル20から引き抜いてもよい。
【0098】
エンドリーク塞栓術では、
図7Cから
図7Gに示す一連の塞栓物留置動作を、瘤内に塞栓物10が必要量だけ装填されるまで繰り返し行う。なお、塞栓物10の必要量は、患者のCTデータを基に動脈瘤の体積を計算し、その値から当該動脈瘤に展開した場合のステントグラフトSGの体積分を引いた値として算出する。
【0099】
動脈瘤内に必要量の塞栓物10の留置が完了すると、術者は、送達用カテーテル40を瘤内および生体管腔から引き抜く。この際、塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に装着され、かつ送達用プッシャー30が送達用カテーテル40に挿入された状態で、送達用カテーテル40を瘤内および生体管腔から引き抜いてもよい。また、送達用カテーテル40を瘤内および生体管腔から引き抜く前に、送達用カテーテル40から塞栓物装填済みカテーテル20を離脱させつつ、送達用プッシャー30を送達用カテーテル40から引き抜いてもよい。また、送達用カテーテル40を瘤内および生体管腔から引き抜く前に、送達用プッシャー30を送達用カテーテル40および塞栓物装填済みカテーテル20から引き抜いた後に、送達用カテーテル40から塞栓物装填済みカテーテル20を離脱させてもよい。なお、何れの場合でも、塞栓物10の留置後のバルーンによるステントグラフトSGの追加拡張や造影操作などのために、イントロデューサーは生体管腔内に留置したままにする。
【0100】
その後、動脈瘤内に留置された塞栓物10は、瘤内の血液などの液体と接触して徐々に膨潤し、完全に膨脹した塞栓物10が動脈瘤内面とステントグラフト外面との間の空間が埋まって瘤内が閉塞される。これにより、動脈瘤は、破裂が防止されることとなる。
【0101】
[変形例]
上述した実施形態は以下のような構成に改変することができる。また、以下の変形例を本発明の要旨を逸脱しない範囲の中で任意に組み合わせて実施することもできる。なお、以下に説明する変形例は、上述した実施形態と同一の機能を有する構成要件について同一の符号を付して詳細な説明を省略し、特に言及しない構成、部材などについては、上述した実施形態と同様のものとしてよい。
【0102】
〈変形例1〉
変形例1に係る塞栓物10(塞栓物10G~塞栓物10M)は、
図8A~
図11の何れかに示すように、装填用ルーメン22の軸方向に沿って延在し、かつ塞栓物10の外周面の一部が接触部11(接触部11G~接触部11M)として機能して装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面21aと接触する線状構造をなす。ここで、「線状構造」とは、螺旋形状のような二次構造、ジグザグ形状、波形状などを含む非直線状の立体構造であり、カテーテル本体21の内周面21aと複数箇所で接触する。
【0103】
変形例1に係る塞栓物10D~塞栓物10Fは、上述した線状構造をなし、接触部11G~接触部11Mが移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと複数箇所で接触して装填用ルーメン22内に装填される。装填用ルーメン22内に塞栓物10D~塞栓物10Fが装填された状態において、装填用ルーメン22内には、塞栓物10と内周面21aとの間やカテーテル本体21の径方向で対向する塞栓物10の間の空隙によって形成される第3流体流路28cが形成される。なお、接触部11の内周面21aとの接触形態は、特に制限されず、点接触でもよいし面接触でもよい。
【0104】
図8A~
図8Cには、変形例1に係る塞栓物10のうち螺旋形状を有する形態(塞栓物10G~塞栓物10K)を装填した塞栓物装填済みカテーテル20の概略斜視図が示されている。
図9A~
図9Cには、塞栓物10G~塞栓物10Kを装填した塞栓物装填済みカテーテル20の概略断面図が示されている。
【0105】
図8Aに示すように、塞栓物10Gは、装填用ルーメン22の軸方向に沿って延在し、軸方向から見て楕円形の螺旋形状をなしている。塞栓物10Gは、長径方向の端部が接触部11Gとして機能し、カテーテル本体21の内周面21aに移動抑制力を受けた状態で接触している。また、
図9Aに示すように、塞栓物10Gと内周面21aの間、およびカテーテル本体21の径方向や軸方向で対向する塞栓物10Gの間に形成された空隙が第3流体流路28cとして機能する。
【0106】
図8Bに示すように、塞栓物10Hは、装填用ルーメン22の軸方向に沿って延在し、軸方向から見て三角形の螺旋形状(三角螺旋形状)をなしている。塞栓物10Hは、三角形状の頂点部が接触部11Hとして機能し、カテーテル本体21の内周面21aに移動抑制力を受けた状態で接触している。また、
図9Bに示すように、塞栓物10Hと内周面21aの間、およびカテーテル本体21の径方向や軸方向で対向する塞栓物10Hの間に形成された空隙が第3流体流路28cとして機能する。
【0107】
図8Cに示すように、塞栓物10Kは、装填用ルーメン22の軸方向に沿って延在し、軸方向から見て四角形の螺旋形状(四角螺旋形状)をなしている。塞栓物10Kは、四角形状の頂点部が接触部11Kとして機能し、カテーテル本体21の内周面21aに移動抑制力を受けた状態で接触している。また、
図9Cに示すように、塞栓物10Kと内周面21aの間、およびカテーテル本体21の径方向や軸方向で対向する塞栓物10Kの間に形成された空隙が第3流体流路28cとして機能する。
【0108】
図10A、
図10Bには、変形例1に係る塞栓物10のうち螺旋形状以外の他の線状構造(ジグザグ形状、波形状)を有する形態例(塞栓物10L、塞栓物10M)を装填した塞栓物装填済みカテーテル20の概略斜視図が示されている。
図11には、塞栓物10Lまたは塞栓物10Mを装填した塞栓物装填済みカテーテル20の概略断面図が示されている。
【0109】
図10Aに示すように、塞栓物10Lは、装填用ルーメン22の軸方向に沿って延在するジグザグ形状(三角波形状)をなしている。塞栓物10Lは、ジグザグ形状の頂点部が接触部11Lとして機能し、カテーテル本体21の内周面21aに移動抑制力を受けた状態で接触している。また、
図11に示すように、塞栓物10Lと内周面21aの間や軸方向で対向する塞栓物10Lの間に形成された空隙が第3流体流路28cとして機能する。
【0110】
図10Bに示すように、塞栓物10Mは、装填用ルーメン22の軸方向に沿って延在する波形状(正弦波形状)をなしている。塞栓物10Mは、波型の頂点部が接触部11Mとして機能し、カテーテル本体21の内周面21aに移動抑制力を受けた状態で接触している。また、
図11に示すように、塞栓物10Mと内周面21aの間や軸方向で対向する塞栓物10Mの間に形成された空隙が第3流体流路28cとして機能する。
【0111】
以上のように、変形例1に係る塞栓物装填済みカテーテル20において、装填用ルーメン22の軸方向に延在する非直線な線状構造をなす塞栓物10G~塞栓物10Mは、何れも接触部11G~接触部11Mが移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと複数箇所で接触して装填用ルーメン22に装填される。また、塞栓物10G~塞栓物10Mを装填した状態のカテーテル本体21には、プライミング液が流通可能な第3流体流路28cを含む流体流路28が形成される。そのため、変形例1に係る塞栓物装填済みカテーテル20は、上述した
図4A~
図4Cや
図5A~
図5Cに示した各形態と同様、プライミング操作時における塞栓物10の意図しない飛び出しが防止される。
【0112】
なお、変形例1に係る塞栓物装填済みカテーテル20は、上述した
図8A~
図8C、
図10A、
図10Bに示す各形態を任意に組み合わせることもできる。例えば、塞栓物10は、先端側から中間部分までの領域を
図8Aに示す螺旋形状とし、中間部分から基端側までの領域を
図10Aに示すジグザグ形状とすることができる。
【0113】
また、変形例1に係る塞栓物装填済みカテーテル20は、
図8A~
図11に示した形態に限定されず、装填用ルーメン22の軸方向に沿って延在し、かつ外周面の一部が接触部11として機能して装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面21aと接触する線状構造をなす塞栓物10を装填した構成であればよい。また、塞栓物10は、その一部のみを装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面21aと接触する線状構造としてもよい。
【0114】
〈その他の変形例〉
上述した実施形態において、
図4A~
図4Cに示す形態は、装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面21aの形状を円形とし、塞栓物10の軸方向と直交する方向の断面形状または軸方向から見た形状を、カテーテル本体21の内周面21aとは異なる形状(すなわち、非円形)を有する構成であった。しかし、塞栓物10の形状は、少なくともカテーテル本体21の内周面21aの形状と異なる形状をなしていればよい。したがって、カテーテル本体21の内周面21aの形状を非円形とし、塞栓物10は、内周面21aに内接する円形とした構成とすることもできる。このように、カテーテル本体21の内周面21aの形状を非円形、塞栓物10の断面形状を内周面21aと異なる円形としても、カテーテル本体21の内周面21aと接触する接触部11が移動抑制力を受けた状態で装填用ルーメン22内に装填され、かつ第1流体流路28aや第2流体流路28bを含む流体流路28が装填用ルーメン22内に形成される。そのため、塞栓物装填済みカテーテル20は、プライミング操作時に塞栓物10の意図しない飛び出しが防止される。
【0115】
また、塞栓物10は、上述した各形態(塞栓物10A~塞栓物10M)を適宜組み合わせることができる。したがって、塞栓物10は、塞栓物10A~塞栓物10Fの中から任意に選択したものを組み合わせた形態、塞栓物10G~塞栓物10Mの中から任意に選択したものを組み合わせた形態に加えて、塞栓物10A~塞栓物10Fの中から任意に選択したものと塞栓物10G~塞栓物10Mの中から任意に選択したものを組み合わせた形態とすることができる。
【0116】
また、上述した実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300は、
図7A~
図7Gに示すように、塞栓物10の送達方式として、生体管腔内に留置した送達用カテーテル40の基端側に塞栓物装填済みカテーテル20の先端側を装着し、送達用プッシャー30を塞栓物装填済みカテーテル20に挿入して瘤内に塞栓物10を吐出させる方式とした。しかし、塞栓物デリバリー医療システム300は、上述した送達方式に限定されず、他の送達方式(例えば、「ダイレクト・インサーション方式」や「インダイレクト・インサーション方式」など)に対応した機器構成としても同様の効果を奏することができる。ここで、「インダイレクト・インサーション方式」とは、第1のカテーテル(送達用カテーテル40に相当)に塞栓物10が装填された第2のカテーテル(塞栓物装填済みカテーテル20に相当)を挿入し、第2のカテーテルの先端を瘤内に到達させた状態で送達用のプッシャー(送達用プッシャー30に相当)を第2のカテーテルに挿入して塞栓物10を瘤内に送達させる方式である。また、「インダイレクト・インサーション方式」とは、塞栓物10が装填された第2のカテーテル(塞栓物装填済みカテーテル20に相当)の先端の一部を生体管腔内に留置された第1のカテーテル(送達用カテーテル40に相当)のシース内に挿入させ、装填用のプッシャーを第2のカテーテルに挿入して塞栓物10を第1のカテーテルに移し、第2のカテーテルを第1のカテーテルから抜去した後、第1のカテーテルに送達用のプッシャー(送達用プッシャー30に相当)を挿入して塞栓物10を瘤内に送達させる方式である。本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300は、上記何れの塞栓物送達方式であっても、塞栓物装填済みカテーテル20をプライミング操作した際の塞栓物10の意図しない飛び出しを防止することができる。
【0117】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態に係る塞栓物装填済みカテーテル20は、長尺状のカテーテル本体21と、液体との接触により膨潤する塞栓物10と、カテーテル本体21の先端から基端にかけて連通して設けられ、塞栓物10が装填された装填用ルーメン22と、装填用ルーメン22と連通する挿通路(挿通路23a)を有し、装填用ルーメン22に流体(プライミング液)を注入可能な注入用ハブ(基端ハブ23)を備えている。塞栓物10は、塞栓物10の外周面上に、装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面21aと接触して塞栓物10のカテーテル本体21の軸方向への移動を抑制する移動抑制力を受けている複数の接触部11を有する。カテーテル本体21は、注入用ハブを介して流体を装填用ルーメン22内に注入する注入口および流体を装填用ルーメン22内から排出する排出口を有する。そして、塞栓物10が装填され、かつ前記複数の接触部が前記移動抑制力を受けている状態の装填用ルーメン22内には、装填用ルーメン22の先端から基端にかけて延在し、かつ注入口および排出口と連通した流体流路28が形成されている。
【0118】
このような構成により、塞栓物10は、複数の接触部11が移動抑制力を受けた状態で装填用ルーメン22内に装填されため、プライミング液の押圧力に抗して装填用ルーメン22内に留まることができる。また、塞栓物10が装填された装填用ルーメン22内には、注入口および排出口と連通する流体流路28が形成されため、プライミング液は、流体流路28を通って装填用ルーメン22内を流通することができる。したがって、塞栓物装填済みカテーテル20は、塞栓物10をカテーテル本体21に装填した状態でプライミング操作しても、塞栓物10の意図しない飛び出しが防止できる。
【0119】
また、本実施形態に係る塞栓物装填済みカテーテル20において、塞栓物10は、軸方向と直交する方向の断面において、装填用ルーメン22を画成するカテーテル本体21の内周面21aとは異なる形状に形成されていることにより、カテーテル本体21の内周面21aと接触する複数の接触部11を有し、流体流路28は、少なくともカテーテル本体21の内周面21aと塞栓物10の外周面との間に形成される空隙からなる第1流体流路28aを含んだ構成としてもよい。
【0120】
このような構成により、塞栓物10は、外周面の複数の接触部11が移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触して装填用ルーメン22内に装填される。また、塞栓物10が装填された装填用ルーメン22内には、カテーテル本体21の内周面21aと塞栓物10の外周面との間に形成される空隙からなる第1流体流路28aを含む流体流路28が形成される。したがって、プライミング液は、注入口から注入されると、流体流路28を通って排出口から排出される。塞栓物10は、接触部11が移動抑制力を受けた状態で装填用ルーメン22内に装填されるため、プライミング液の押圧力に抗して装填用ルーメン22内に留まる。そのため、塞栓物装填済みカテーテル20は、塞栓物10をカテーテル本体21に装填した状態でプライミング操作しても、塞栓物10の意図しない飛び出しが防止できる。
【0121】
また、本実施形態に係る塞栓物装填済みカテーテル20において、流体流路28は、少なくとも塞栓物10の基端から先端にかけて塞栓物10の内方に形成される空隙からなる第2流体流路28bを含んだ構成としてもよい。
【0122】
このような構成により、塞栓物10は、外周面の略全面が接触部11として機能し、この接触部11が移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触して装填用ルーメン22内に装填される。また、塞栓物10が装填された装填用ルーメン22内には、塞栓物10と基端から先端にかけて塞栓物10の内方に形成される空隙によって第2流体流路28bを含む流体流路28が形成される。したがって、プライミング液は、注入口から注入されると、流体流路28を通って排出口から排出される。塞栓物10は、接触部11が移動抑制力を受けた状態で装填用ルーメン22内に装填されるため、プライミング液の押圧力に抗して装填用ルーメン22内に留まる。そのため、塞栓物装填済みカテーテル20は、塞栓物10をカテーテル本体21に装填した状態でプライミング操作しても、塞栓物10の意図しない飛び出しが防止できる。
【0123】
また、本実施形態に係る塞栓物装填済みカテーテル20において、塞栓物10は、装填用ルーメン22の軸方向に沿って延在し、かつカテーテル本体21の内周面21aと接触する複数の接触部11を有する線状構造をなし、流体流路28は、少なくともカテーテル本体21の内周面21aと塞栓物10との間に形成される空隙からなる第3流体流路28cを含んだ構成としてもよい。
【0124】
このような構成により、塞栓物10は、外周面の一部が接触部11として機能し、この接触部11が移動抑制力を受けた状態でカテーテル本体21の内周面21aと接触して装填用ルーメン22内に装填される。また、塞栓物10が装填された装填用ルーメン22内には、少なくともカテーテル本体21の内周面21aと塞栓物10との間に形成される空隙からなる第3流体流路28cを含む流体流路28が形成される。したがって、プライミング液は、注入口から注入されると、流体流路28を通って排出口から排出される。塞栓物10は、接触部11が移動抑制力を受けた状態で装填用ルーメン22内に装填されるため、プライミング液の押圧力に抗して装填用ルーメン22内に留まる。そのため、塞栓物装填済みカテーテル20は、塞栓物10をカテーテル本体21に装填した状態でプライミング操作しても、塞栓物10の意図しない飛び出しが防止できる。
【0125】
また、本実施形態に係る医療器具セット100は、上述した何れかの塞栓物装填済みカテーテル20と、塞栓物装填済みカテーテル20の基端ハブ23の挿通路23aを介して装填用ルーメン22に挿入可能な長尺状のプッシャー本体31を備える送達用プッシャー30と、を有する。
【0126】
このような構成により、医療器具セット100は、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40とを装着状態としたとき、送達用プッシャー30を基端ハブ23から挿入させることにより、装填用ルーメン22内に装填された塞栓物10を、送達用カテーテル40を介して瘤内へ容易に押し出すことができる。また、塞栓物装填済みカテーテル20は、塞栓物10をカテーテル本体21に装填した状態でプライミング操作しても、塞栓物10の意図しない飛び出しが防止できる。
【符号の説明】
【0127】
10(10A~10M) 塞栓物、
11(11A~11M) 接触部、
20 塞栓物装填済みカテーテル、
21 カテーテル本体(21a 内周面)、
22 装填用ルーメン、
23 基端ハブ(23a 挿通路)、
28 流体流路(28a 第1流体流路、28b 第2流体流路、28c 第3流体流路)、
30 送達用プッシャー、
31 プッシャー本体、
40 送達用カテーテル、
50 挿通補助部材、
100 医療器具セット
200 デリバリーシステム、
300 塞栓物デリバリー医療システム。