(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160211
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ロボットのためのガラスの壁およびドアの検出および距離測定、並びに、それらを制御する方法
(51)【国際特許分類】
G01V 8/10 20060101AFI20241106BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20241106BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20241106BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01V8/10 S
G01J5/48 A
G01B11/00 H
G01B11/26 H
G01V8/10 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024068804
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】10202301175Q
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(71)【出願人】
【識別番号】524155264
【氏名又は名称】プロックス エスジー プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PROX SG Pte Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】ミカイル コロボフ
(72)【発明者】
【氏名】オレグ コロボフ
(72)【発明者】
【氏名】プラトノフ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マクシム コロボフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自律システムのための、反射面を有するガラス壁を検出する方法を提供する。
【解決手段】視野(FOV)を有する少なくとも1つのIR画像装置と、少なくとも1つのIR放射体とを自律システムに配置するステップと、IR熱放射体により、自律システムから、FOVの外側に位置するIR熱シグネチャを放射するステップと、反射面で反射するIR熱シグネチャの存在を検出するステップと、FOV内の反射したIR熱シグネチャに基づいて、反射面からの自律システムの距離および角度を決定するステップと、を含む。反射面は、ガラス壁として特定される。センサアセンブリおよび自律システムも提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律システムのための、反射面を有するガラス壁を検出する方法であって、
視野(FOV)を有する少なくとも1つの赤外線(IR)画像装置と、少なくとも1つのIR放射体と、を前記自律システムに配置するステップと、
IR熱放射体により、前記自律システムから、前記FOVの外側に位置するIR熱シグネチャを放射するステップと、
前記反射面で反射する前記IR熱シグネチャの存在を検出するステップと、
前記FOV内の前記反射したIR熱シグネチャに基づいて、前記反射面からの前記自律システムの距離および角度を決定するステップと、を含み、
それにより、前記反射面を前記ガラス壁として特定する、方法。
【請求項2】
各IR放射体は、前記熱シグネチャを放射するように配置された複数の抵抗器を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IR放射体は、前記熱シグネチャを形成するように配置された抵抗器アレイを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記自律システムは、三角測量法に基づいて前記距離および角度を決定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記IR熱放射体は、長波長IR帯域内で前記熱シグネチャを放射する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ガラス壁を検出するように適合された、自律システムのセンサアセンブリであって、
視野(FOV)を有する少なくとも1つの赤外線(IR)熱センサと、
作動上、熱シグネチャを放射する少なくとも1つのIR放射体と、を含み、
これにより、作動上、IR熱シグネチャが反射面で反射され、前記反射されたIR熱シグネチャが前記FOV内で捕捉されると、前記センサアセンブリは、前記反射面からの前記IRセンサの距離および角度を決定し、前記反射面はガラス壁として識別される、センサアセンブリ。
【請求項7】
前記IR放射体の各々は抵抗器アレイを含み、前記抵抗器アレイの各抵抗器ユニットは、前記熱シグネチャのピクセルを形成する、
請求項6に記載のセンサアセンブリ。
【請求項8】
前記熱シグネチャは、長波長IRスペクトル内にある、
請求項6に記載のセンサアセンブリ。
【請求項9】
前記距離および前記角度は、三角測量法を通して決定される、
請求項6に記載のセンサアセンブリ。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか一項に記載のセンサアセンブリを有する自律システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションおよび衝突回避のためにガラスの壁およびドアの検出が必要なロボットに関する。本発明は、宅配ロボット、清掃ロボット、ホームロボット、介護(human aid)ロボットおよび他のロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
吸引式清掃ロボット、宅配ロボット、および飛行ドローン等の自律移動体は、施設内部または屋外において無人モードまたは遠隔制御モードでナビゲートすることが想定されている。この目的のために、ロボットには、通常、さまざまな種類の障害物との衝突を回避するように、多くのセンサ(超音波センサ、レーザ距離計、LIDARセンサ、マイクロ波センサ、画像センサ等)が備えられている。
【0003】
今日、建造物において、ガラスは非常に一般的な材料であるが、上述したセンサは、ガラスの壁およびドアの検出に著しい困難を抱えている。すなわち、ガラスは、レーザ、LIDAR、およびマイクロ波にとって透明であり、大部分の場合、ガラスの壁/ドアは、これらのセンサにより信頼性高く検知することができない。一方、超音波センサは、特にガラスのエッジを検出するのに十分な精度を提供することができない。
【0004】
この問題を軽減するための非常に一般的な解決法は、ロボットにタッチセンサ、ボタン、または他のセンサを設置して、障害物との衝突を、衝突が起こってから検出することであるが、この解決法は衝突を防止しない。
【0005】
したがって、本発明を通して、ガラスのパネル/壁等の透ける物体を検出する、自律システムのためのシステムおよび方法の提供が望まれている。
【0006】
本発明は、ロボットのためのガラスの壁およびドアの検出および距離測定装置と、それを制御する方法とを提供する。任意の既存の自律システムに実装または追加することができる費用対効果の高い解決法を本発明が提供することも望まれている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、自律システムのための、ガラス壁/反射面を検出する方法およびシステムを得ようとするものである。本発明の1つの態様では、自律システムのための、反射面を有するガラス壁を検出する方法が提供される。本方法は、視野(FOV)を有する少なくとも1つの赤外線(IR)画像装置と、少なくとも1つのIR放射体と、を自律システムに配置するステップと、IR熱放射体により、自律システムから、FOVの外側に位置するIR熱シグネチャを放射するステップと、反射面で反射するIR熱シグネチャの存在を検出するステップと、FOV内の反射したIR熱シグネチャに基づいて、反射面からの自律システムの距離および角度を決定するステップと、を含む。反射面は、ガラス壁として特定される。
【0008】
1つの実施形態では、各IR放射体は、熱シグネチャを放射するように配置された複数の抵抗器を含む。
【0009】
他の実施形態では、IR放射体は、熱シグネチャを形成するように配置された抵抗器アレイを含む。
【0010】
さらなる実施形態では、自律システムは、三角測量法に基づいて距離および角度を決定する。
【0011】
さらに他の実施形態では、IR熱放射体は、長波長IR帯域内で熱シグネチャを放射する。
【0012】
本発明の他の態様では、ガラス壁を検出するように適合された、自律システムのセンサアセンブリが提供される。センサアセンブリは、視野(FOV)を有する少なくとも1つの赤外線(IR)熱センサと、作動上、熱シグネチャを放射する少なくとも1つのIR放射体と、を含む。作動上、IR熱シグネチャが反射面で反射され、反射されたIR熱シグネチャがFOV内で捕捉されると、センサアセンブリは、反射面からのIRセンサの距離および角度を決定し、反射面はガラス壁として識別される。
【0013】
1つの実施形態では、IR放射体の各々は抵抗器アレイを含み、抵抗器アレイの各抵抗器ユニットは、熱シグネチャのピクセルを形成する。
【0014】
さらに他の実施形態では、熱シグネチャは、長波長IRスペクトル内にある。
【0015】
さらなる実施形態では、距離および角度は、三角測量法を通して決定される。
【0016】
さらに他の実施形態では、上述したセンサアセンブリを有する自律システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、以下の添付図面を参照しながら、本発明の非限定的な実施形態として説明される。
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る自律システムのための、ガラス壁を検出する方法を示す。
【0019】
【
図2A】
図2Aは、ガラス壁に面している、本発明の一実施形態に係る自律システムを示す側面図を例示している。
【0020】
【0021】
【
図3】
図3は、ガラス壁を検出するセンサアセンブリを有する、本発明の一実施形態に係る自律システムの平面図を示す。
【0022】
【
図4】FIG.4A、4B、および4Cは、本発明の実施形態に係る3つの熱シグネチャパターンを例示している。
【0023】
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る自律システムのセンサアセンブリを示す。
【0024】
【
図6】
図6は、本発明の他の実施形態に係る自律システムのための他のセンサアセンブリを示す。
【0025】
【
図7】
図7は、researchgate.netから取得したさまざまなタイプのガラスの反射率のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上記の概要に沿って、本発明の進歩的な特徴が理解されるように、多数の具体的な実施形態および代替的な実施形態の説明を以下に提供する。しかしながら、当業者には、本発明が、こうした具体的な詳細なしに実施することができることが明らかであろう。本発明を不明瞭にしないように、細部のうちのいくつかについては詳細に記載しない場合がある。参照を容易にするため、複数の図に共通する同じかまたは類似する特徴に言及する場合には、複数の図を通して共通の参照符号を使用する。
【0027】
本発明は、赤外線(IR)スペクトルの範囲内、少なくとも8~15μm(すなわち、長波長IR)における窓ガラスの反射率に基づいて作成しており、8~15μmの赤外線(IR)スペクトル(すなわち、長波長IR)は、-80℃~+89℃の物体温度に対応している。
【0028】
Wikipediaによると、この領域は「熱画像(thermal imaging)」領域であり、そこでは、センサは、室温よりわずかに温度が高いだけの物体、例えば人体の完全に受動的な画像を、熱放射のみに基づいて、かつ、太陽、月、または赤外線照明器のような照明を必要とすることなく、得ることができる。この領域は「熱赤外」とも呼ばれる。[“Infrared”,Wikipedia.org(online),<URL:https://en.wikipedia.org/wiki/Infrared>を参照]。
【0029】
図7は、さまざまなタイプのガラスの反射率のグラフを示す。Raul J Martin-Palma,et.al.“Silver-based low-emissivity coatings for architectural windows:Optical and structural properties”。ResearchGate.net[online],May,1998,[<URL:https://www.researchgate.net/publication/>から2023年3月16日検索]。図示するように、一般的なガラスは、8.5~11.5μm付近の帯域の波長に対して20%を超える反射率を有する。言い換えれば、この範囲の波長を放射する物体は、非常に一般的な熱画像装置およびカメラによって検出することができる。例えば、SeekThermal CompactPRO
TMで使用されている低コストの熱センサは、-40℃~+330℃の温度の物体を検知するのに十分である。-40℃~+330℃の温度は、長波長IR(LWIR)帯域のほとんどをカバーする。上記熱センサは、例えば、36°の広視野レンズを有する206×156の熱センサである。
【0030】
約-20℃~+65℃の温度を有する任意の物体は、8.5~11.5μmの帯域のIR放射線源となり得る。[sspickle “Blackbody wavelength from temperature”,May,2017,[URL:<https://www.vcalc.com/wiki/sspickle/>から2023年3月16日検索]を参照]。上記に鑑み、本発明の目的は、自律装置にIRカメラおよびIR放射体が搭載され、IR放射体によって放射されガラス壁で反射されるIRの熱シグネチャに関する方向情報を取得し、さらに、自律装置からガラス壁までの距離を計算する、ガラス壁検出システムおよび検出方法を提供することである。
【0031】
IRカメラは、物体の熱画像を取得することができる任意のデバイスとすることができる。このデバイスは、IR放射体のシグネチャを探索し、検出されたガラス壁に関する情報(方向および/または距離)をロボットに送信するか、または、外部デバイス(例えば、ロボットのコンピュータ)による最終的な処理に向けて生の(または前処理された)画像データを送信する画像プロセッサを含み得る(または含まなくてもよい)。
【0032】
IR放射体は、温度が周囲の温度と異なる任意のデバイスとすることができ、その温度の差は、IRカメラによって検出することができる。高温のIR源は、電力を熱に変換する抵抗器のように単純なものであり得る。
【0033】
本発明の実施形態のシステムには、IRカメラから取り込まれたデータを処理するための、コンピュータデバイスのような処理装置(内蔵または専用)が必要であることが理解される。反射の法則の理解に基づき、システムは、三角測量法を使用して、デバイスと反射面との間の距離を計算する。それは、得られた入射角と、画像装置と放射体との間の距離とを使用して、カメラと反射面との間の距離を計算することを含む。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る、ロボットのような自律システムのためのガラス壁の検出方法を示す。本方法は、ステップ110において、赤外線(IR)画像装置およびIR放射体を自律システムに配置することと、ステップ120において、IR放射体を介して、自律システムからIR熱シグネチャを放射することと、ステップ130において、IR画像装置の視野(FOV)に入る反射面で反射したIR熱シグネチャを検出することと、ステップ140において、IR熱シグネチャに基づいて、反射面に対する自律システムの距離および角度を決定することとを含む。
【0035】
ステップ110において、自律システムは、1つ以上のIR画像装置を搭載し、関心領域をスキャンして画像装置のFOV内にガラスパネル/壁が存在するか否かを決定する。ステップ120においては、自律システムから1つ以上のIR熱シグネチャを放射する1つ以上デバイスが設けられてもよい。IR熱シグネチャは、自律システム(から)のものであると一意に識別することができることが好ましい。IR熱シグネチャは、ガラス壁のような任意の反射面によって反射可能である。IRスペクトルで熱シグネチャを利用する利点は、ガラスが透明なガラスであっても熱シグネチャは反射されるということであり、したがって、ここに開示する方法によれば、自律システム/装置のために透明なガラスパネル/壁を検出することができる。ステップ130において、IR熱シグネチャが任意のガラスパネル/壁で反射され、(ガラスパネル/壁で)反射されたIR熱シグネチャがIR画像装置のFOV内に入ると、自律システムは、ガラスパネル/壁がIR画像装置のFOV内にあることを認識する。それにより、ステップ140において、IR画像装置からガラスパネル/壁への距離および角度/方向を適宜計算することができる。
【0036】
図2Aは、ガラス壁210に面している、本発明の一実施形態に係る自律システム200を示す側面図を例示している。
図2では、前側がガラス壁210に面するように配置された自律システム200の側面図を示しており、これにより、自律システム200の前側(ここではIRセンサS)とガラス壁210との間の距離を決定することができる。この実施形態では、IRセンサSは、LWIR放射体Eの下方に取り付けられて、自律システム200の前側で垂直軸を形成しており、これにより、自律システム200の前面(ES)がガラス壁210と平行になる。IRセンサSは、IR熱シグネチャを検出/捕捉する視野(FOV)を有する。IRセンサSに対するIR放射体Eの位置および向きは、作動上、IR放射体Eによって放射されるIR熱シグネチャがIRセンサSによって直接検出されない、すなわちFOVから外れるように構成されていることに留意すべきである。Lは、LWIRセンサSとLWIR放射体Eとの間の距離を表し、Rは、垂直軸上のSとEとの間の中心点を表す。垂直なガラス壁210には、E、RおよびSに対応するE’R’およびS’が、説明のための参照点としてマークされている。熱シグネチャは、IR放射体Eから放射され、R’においてガラス壁210で反射されてIRセンサSに到達する。Lおよびαは分かっている。したがって、自律システム200と壁との間の距離は以下のように決定することができる。
【0037】
【0038】
IRセンサSの仕様(例えば、画像アレイの解像度およびFOV)を通して角度αを容易に得ることができることは当業者には明らかであるため、ここでは、さらなる詳細については省略する。
【0039】
図2Aにおける説明、および、後述する
図2Bの説明に基づき、IRセンサSは、角度αおよびβを決定するための2次元(2D)熱画像センサであるべきであり、角度βは壁への方向を計算するために必要とされ、角度αは壁までの距離を計算するために必要とされる。
【0040】
本実施形態では、IRセンサSはアレイセンサであり、これにより、システムは、アレイセンサ上の熱シグネチャ(画像)の位置(x,y)をさらに検出することができる。熱シグネチャがIRセンサS上で複数のピクセルを占め得るとの理解の上で、位置(x,y)は、単なる熱シグネチャの参照位置であってもよく、または、熱シグネチャの1つの信号ピクセルの位置であってもよい。したがって、(アレイセンサの)各x座標およびy座標に対して、それぞれ角度βxおよび角度αyを適宜決定することができる。
【0041】
図2Bは、
図2Aの平面図をさらに示す。この平面図では、点E、R、およびSは、同じ点上に示されている。参照点線ER’によって示すように、IR放射体Eからの信号をIRセンサSによって検出することができる唯一の方向は、線ER’がガラス壁210に直交するとき、すなわち、ER’がデバイスからガラス壁210までの最短距離であるときであり、その方向は、角度βとして決定される。同様に、センサの仕様に基づいて角度βを得ることもできることもまた、当業者には明らかである。
【0042】
本発明の他の実施形態では、自律システム200は、2つ以上のIR放射体Eを含んでいてもよい。さらなる実施形態では、複数のIR放射体Eは、異なる熱信号シグネチャを放射してもよく、これは、ガラス壁のエッジのような、ガラス壁のより多くの情報または特徴を取得するのに役立ち得る。複数のIR放射体Eにより、IRセンサSは、熱シグネチャがガラス壁で反射されたときに複数の応答を受信することができる。自律システムにおけるIRセンサSに対するIR放射体Eの場所/位置に応じてガラス壁からIRセンサによって検出することができる熱シグネチャの存在/不在は、ガラス壁の特徴および輪郭を決定するための参照として使用することができる。
【0043】
図3は、ガラス壁310を検出するセンサアセンブリを有する、本発明の一実施形態に係る自律システム300の平面図である。本図において、ガラス壁310は、自律システム300が向いている方向に対して傾斜している。この実施形態では、センサアセンブリは、IRセンサSと、4つのIR放射体E
1、E
2、E
3およびE
4と、を備えており、IRセンサSの各側に2つの放射体が直線状に配置されている。ガラス壁310は、点線で示す開口部または窓Wを有し、これは空所または非反射面である。開口部Wは、ドアの開口部であり得る。さらに図示するように、自律システム300は、ガラス壁310の前に配置されている。センサアセンブリが動作しているとき、IR放射体は、それぞれ、ガラス壁310上に熱シグネチャを放射し、IRセンサSは、熱シグネチャを探してガラス壁310をスキャンする。
図3に示すように、E
1、E
2およびE
4からの熱シグネチャは、ガラスパネル310で反射され(
図3ではE
1’、E
2’およびE
4’と示す)、IRセンサSによって検出される。E
3は、非反射面上にあたるため検出されず、したがって、その地点にはガラス面がないとみなされる。
【0044】
自律システム300が通常、非反射性の障害物があるかスキャンするいくつかの検出手段を備えることは、当業者には理解される。他の検出手段も開口部Wにいかなる障害物も検出しない場合、それは空所であると判断することができる。より具体的には、本実施形態は、E2’とE4’との間に開口部Wがあると概算することができる。
【0045】
この実施形態では、IRセンサSの位置は、直線状に配置され、地面に対して平行である。放射体Eおよび/またはセンサSの数を増加させることにより、上記概算の精度を向上できることが分かる。
【0046】
さらに
図3において、ガラス壁310の手前の現在位置を中心に自律システム300が回転(パン)するとき、IRセンサSは、熱信号E
1’、E
2’、E
3’およびE
4’を、それらが反射面(すなわちガラス壁310)に放射されたときは検出し、開口部Wに当てたときはそれらの不在を検出する。こうした連続的なスキャンおよび検出により、ガラス壁のエッジを含む形状をさらに決定することができる。本発明が要求するような放射体EおよびセンサSは、非常に低コストの構成要素であり、本発明の実施形態に係る任意の自律システムに実装するのに非常に費用対効果が高いことに留意すべきである。作動的には、センサアセンブリが自律システム上の領域にわたってパンしている場合、捕捉された画像は、熱シグネチャの存在および不在を決定することにより、その領域をマッピングするのにまとめて使用され得る。マッピング結果の精度は、IRセンサSの解像度および/またはフレームレートによって影響を受け得る。
【0047】
計算幾何学およびコンピュータビジョンの概念を組み合わせることにより、自律システムによって、同時的な位置特定およびマッピングを実現することができる。本発明の実施形態を利用して、自律システムは、視野内の物体までの距離を分析することにより、その周囲のマップを構築し、そのマップを使用して、ナビゲートと、ガラス壁/パネルを含む障害物の回避とを行うことができる。
【0048】
本技術分野には既知の他のシステムおよび方法があり、したがって、ここでは、簡略化のため、これらの詳細は省略する。
【0049】
放射体EとセンサSとの間の距離は、自律システム300の設計に応じて変更することができることにも留意すべきである。
【0050】
1つの実施形態では、放射体Eは、熱シグネチャを放射するように制御できる任意の熱素子であり得る。これらの放射体Eは、自律システムを周囲から識別するものとして使用可能な熱シグネチャを放射することが好ましい。熱素子は、-20℃~+65℃の範囲で熱または冷気を放射することが可能な任意の制御可能な熱デバイスまたは構成要素とすることができる。それは、抵抗器またはペルチェ素子であり得る。システムによって制御可能なデバイスを使用する利点は、周囲温度から区別可能な熱シグネチャを放射するように、デバイスを調整および制御することができることである。この熱シグネチャは、異なる温度を通して識別することができる。他の実施形態では、熱シグネチャは、センサSによって視覚的に識別可能ないくつかの形状のパターンであってもよい。例えば、放射体Eは、作動上でパターンを形成するように配置された抵抗器またはペルチェ素子のアレイを備えていてもよい。
図4A、
図4Bおよび
図4Cは、3つの熱シグネチャパターンを例示している。これらは、限定のためのものではなく、単に説明を目的とするものである。
【0051】
本明細書で説明するように、抵抗器アレイとは、本発明が要求するような所望の熱シグネチャを放射するように配置された複数の抵抗器を指す。これらの抵抗器アレイまたは複数の抵抗器は、所望の熱シグネチャを放射する放射体を製造するための安価かつ拡張性のある解決法であり得る。それは、1つのデバイスとしてパッケージされていてもよく、自律システム上に配置された独立した複数の抵抗器であってもよい。各抵抗器ユニットは、熱シグネチャの1つの(熱)ピクセルを形成することができ、抵抗器アレイに含まれる抵抗器ユニットの数は、用途に応じて高度にカスタマイズ可能である。これにより、熱シグネチャを、熱またはその波長範囲によって制御することができるだけでなく、自律システムに固有のパターンとして提示することもできる。これらの抵抗器は、サイズが小さく低コストである。疑義を避けるために言っておくと、抵抗器アレイ、個々の抵抗器ユニット等は、本発明を限定するものではなく、自律システムのためにガラス壁を検出するための熱シグネチャを放射する可能な手段として理解されるべきである。
【0052】
図5は、本発明の一実施形態に係る自律システム500のセンサアセンブリの平面図である。自律システム500は、IRセンサSと、2つのIR放射体E
1およびE
2とを含む。この構成により、図示するように、自律システム500からガラス壁510までの距離Dを求める計算が可能になる。2つの放射体EおよびセンサSは、直線状配置で設置され、2つの放射体Eは、センサSから各側に距離Lだけ離れて設置されている。センサアセンブリがガラス壁と平行な向きにある場合、例えば、L
1=L
2であり、α
1=α
2である場合、自律システム500からガラス壁510までの距離Dを求めることができる。
【0053】
他の実施形態では、自律システム500のセンサアセンブリは、前述した実施形態と同様に配置された2つのセンサSと1つの放射体Eとを含んでいてもよく、自律システム500とガラス壁510との間の距離を検出してもよい。
【0054】
図6は、本発明の他の実施形態に係る他のセンサアセンブリ600を示す。センサアセンブリ600は、2つのセンサS
1、S
2と9つの放射体Eとを備えている。センサS
1およびS
2は、並んで配置され、参照軸(図示せず)を形成している。放射体E
0
1、E
0
2、E
0
3、E
0
4およびE
0
5はすべて、同じ参照軸上にS
1、S
2と並んで配置されており、その順序は以下である。
【0055】
E0
1-S1-E0
2-E0
3-E0
4-S2-E0
5
【0056】
放射体E0
nの配置は、上記の実施形態で記載したように、ガラス壁のエッジおよび輪郭をスキャンおよび検出するように構成されている。
【0057】
放射体E1
1およびE1
2は、それぞれ、センサS1の上方および下方に配置されている。放射体E2
1およびE2
2は、それぞれ、S2の上方および下方に配置されている。放射体E1
1およびE1
2は、S1までの距離および方向を測定するために設けられ、放射体E2
1、E2
2は、S2までの距離および方向を測定するために設けられている。
【0058】
本発明によれば、センサアセンブリに必要なセンサSおよび/または放射体Eの数に制限はない。当業者には、必要な数はその用途に依存することが理解される。放射体は、その用途に必要な任意の好適なサイズ、形状および温度放射とすることができる。熱シグネチャはさらに、その適用性を向上させるため、各放射体に対して固有の熱シグネチャを与えるように作動的に変更されてもよい。
【0059】
任意の熱画像カメラを通して検出することができる幅広い赤外線スペクトルのうち、長波長赤外線、別名 遠赤外線が使用されることが好ましい。言い換えれば、本発明の他の実施形態では、システムは、ガラス壁の存在を検出するために長波長IR(LWIR)センサおよび長波長赤外線(LWIR)放射体を採用してもよい。また、先に説明したように、自律システムは、2つ以上のLWIRセンサおよび/または2つ以上のLWIR放射体を備えていてもよい。複数のセンサおよび/または放射体は、ガラス壁を検出するための適応性および精度を提供する。
【0060】
本発明は、自律システムからの熱シグネチャの反射画像を検出する熱画像装置を使用することによってガラス壁を検出する、自律システムのための解決法を提供する。
【0061】
具体的な実施形態について記載および説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に対して多くの変更、改変、変形、およびそれらの組合せを行うことができることが理解される。
【外国語明細書】