(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016024
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】抗体結合Siglec15及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240130BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023172391
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2022547787の分割
【原出願日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】63/000,566
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522040148
【氏名又は名称】ビオシオン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ミンジウ
(72)【発明者】
【氏名】シア、シュカイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】PD-1/PD-L1標的化療法に不応答性の癌患者に対する治療的アプローチを提供する。
【解決手段】ヒトSiglec15に特異的に結合する単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分が、本明細書において提供される。抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、及び抗体又はその抗原結合部分を発現する方法も提供される。免疫抱合体、二重特異性分子、キメラ抗原受容体、腫瘍溶解性ウイルス、及び抗体又はその抗原結合部分を含む医薬組成物、並びにそれを使用する治療法がさらに提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siglec15に結合する、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、
i)VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域を含む重鎖可変領域であって、前記VH CDR1領域、前記VH CDR2領域及び前記VH CDR3領域が、(1)配列番号1、2(X1=D、X2=Q)及び3のそれぞれ;(2)配列番号1、2(X1=E、X2=Q)及び3のそれぞれ;(3)配列番号1、2(X1=D、X2=K)及び3のそれぞれ;(4)配列番号9、10及び11のそれぞれ;又は(5)配列番号33、34及び35のそれぞれと、少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;及び/又は
ii)VL CDR1領域、VL CDR2領域及びVL CDR3領域を含む軽鎖可変領域であって、前記VL CDR1領域、前記VL CDR2領域及び前記VL CDR3領域が、(1)配列番号4、5及び6のそれぞれ;(2)配列番号12、13及び14のそれぞれ;又は(3)配列番号36、37及び38のそれぞれと、少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域;を含む、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願及び援用
本出願は、2020年3月27日に出願された米国仮特許出願第63/000,566号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
上記の出願、及びその中に又はその審査手続中に引用される全ての文献(「出願引用文献」)及び本明細書に引用又は参照される全ての文献(本明細書に引用される全ての文献、特許、公開特許出願を含むがこれらに限定されない)(「本明細書に引用される文献」)、及び本明細書に引用される文献に引用又は参照される全ての文献は、本明細書又は参照により本明細書に援用されるあらゆる文献に記載される、あらゆる製品についてのあらゆる製造業者の説明書、記載、製品仕様書、及び製品シートと一緒に、参照により本明細書に援用され、本発明の実施に用いられ得る。より詳細には、全ての参照される文献は、各個々の文献が、具体的に及び個別に、参照により援用されることが示されるのと同程度に、参照により援用される。本開示に記載されるあらゆるGenbank配列は、本開示の最先の有効出願日のものであるGenbank配列とともに、参照により援用される。
【0003】
本開示は、一般に、高い親和性及び機能性でSiglec15に特異的に結合する、完全ヒト、マウス、キメラ又はヒト化モノクローナル抗体などの単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分に関する。その抗体又は抗原結合部分をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、及びその抗体又は抗原結合部分を発現するための方法も提供される。本開示はさらに、免疫抱合体、二重特異性分子、キメラ抗原受容体、腫瘍溶解性ウイルス、及び抗体若しくはその抗原結合部分を含む医薬組成物、並びに本開示の抗Siglec15抗体を用いた診断及び治療方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
免疫療法は、癌などの疾患と闘う免疫システムを追加免疫する画期的な治療的アプローチである。それは、多くの適応症に適用可能であり、他の標準治療と比べて高グレードの毒性を低くする。PD-1/PD-L1経路が、腫瘍免疫療法において最新のターゲットであり、抗PD-1抗体Opdivo(登録商標)及びKeytruda(登録商標)、及び抗PD-L1抗体Tecentriq(登録商標)など、PD-1又はPD-L1のいくつかの阻害剤が臨床的に承認されている。しかしながら、ある患者のサブセットはかかる治療に応答しない。近年の研究によって明らかにされたように、Siglec15標的化は、PD-1/PD-L1標的化療法に不応答性の癌患者に対する補足的なアプローチであり得る(Jun Wang et al.,(2019)Nature Medicine 25:656-666)。
【0005】
Siglec15は、シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン構造を有するSiglecファミリーのメンバーである。それは、2つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン、アダプタータンパク質DAP12との相互作用に必須のリジン残基を有する膜貫通ドメイン、及び細胞質テールを含有する(Takashi Angata et al.,(2007)Glycobiology 17(8):838-846)。
【0006】
Siglec15は、破骨細胞上で発現され、破骨細胞分化及び骨改変において、ある役割を果たす(Hiruma Y et al.,(2011)Biochemical and Biophysical Research Communications 409(3):424-429;Takashi Angata(2020)Journal of Biomedical Science 27:10)。抗Siglec15抗体の投与によって、げっ歯類モデルにおいて骨破壊性骨吸収が阻害され、骨質量が増加した(Stuible M et al.,(2014)Journal of Biological Chemistry 289(10):6498-6512;Sato D et al.,(2018)Bone 116:172-180)。
【0007】
Siglec15は、腫瘍関連マクロファージ上でも発現し、優先的にシアリルTn(sialyl-Tn)抗原、腫瘍関連グリカン構造を認識する。シアリルTn/癌細胞系及びM-CSF誘発ヒトマクロファージ又はSiglec15+骨髄性細胞系の共培養によって、上皮間葉転換及び癌細胞の拡散転移を促進するトランスフォーミング増殖因子-βの産生が誘発された(TakamiyaR et al.,(2013)Glycobiology 23(2):178-187)。Lieping Chengらが、最近、Siglec15がさらに、非小細胞肺癌臨床試料において腫瘍細胞及び/又は腫瘍関連ストローマ細胞で発現されることを発見した。彼らは、Siglec15タンパク質が、T細胞増殖及び活性化を抑制し、抗Siglec15抗体がT細胞抑制を復帰変異(reverse)し、且つインビボで癌増殖を弱めることも見出した。Siglec15及びPD-L1は、癌組織において相互に排他的であり、Siglec15は、補足的治療標的としての役割を果たし得て、上記(Jun Wang et al.,(2019)、前出)のように、PD-1/PD-L1遮断に対して不応性である患者に代替の治療を提供する。NC318、ヒト化抗Siglec15抗体は、非小細胞肺癌、卵巣癌、黒色腫、結腸直腸癌、及び乳癌などの進行固形腫瘍を有する患者において臨床的に試験されており、疾患の長期の安定化が患者の54%で確認され、5.4%で奏効が確認された(SunJ et al.,(2021)Clin Cancer Res.27(3):680-688)。
【0008】
骨改変、及び腫瘍発生におけるSiglec15の関与を考慮すると、Siglect15は確かに、出現しつつある、有望な治療標的である。向上した薬学的特性を有する抗Siglec15抗体が必要とされている。
【0009】
本出願におけるいずれかの文書の引用又は同定は、かかる文書が、本発明の先行技術として利用可能であるという承認ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、Siglec15(例えば、ヒトSiglec15、及びサルSiglec15)に結合し、且つSiglec15-ch5G9(Nextcure)などの先行技術の抗Siglec15抗体と比較して、より高くないとしても同等の、Siglec15に対する結合親和性/能力、及びLRRC4CなどのリガンドへのSiglec15結合に対してブロッキング活性を有する、マウス、キメラ、ヒト若しくはヒト化単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を提供する。抗体又はその抗原結合部分は、Siglec15媒介T細胞抑制を復帰(reversing)することができる。
【0011】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、Siglec15タンパク質の検出、並びに腫瘍及び骨粗鬆症などのSiglec15関連疾患の治療及び予防を含む様々な用途に使用され得る。
【0012】
したがって、一態様において本開示は、Siglec15に結合する、i)VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域を含み得る重鎖可変領域であって、VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域が、(1)配列番号1、2(X1=D、X2=Q)及び3のそれぞれ;(2)配列番号1、2(X1=E、X2=Q)及び3のそれぞれ;(3)配列番号1、2(X1=D、X2=K)及び3のそれぞれ;(4)配列番号9、10及び11のそれぞれ;又は(5)配列番号33、34及び35のそれぞれと、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る、重鎖可変領域;及び/又はii)VL CDR1領域、VL CDR2領域及びVL CDR3領域を含み得る軽鎖可変領域であって、VL CDR1領域、VL CDR2領域、及びVL CDR3領域が、(1)配列番号4、5及び6のそれぞれ;(2)配列番号12、13及び14のそれぞれ;又は(3)配列番号36、37及び38のそれぞれと、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る軽鎖可変領域を有する、単離モノクローナル抗体(例えば、ヒト、マウス、キメラ又はヒト化抗体)、又はその抗原結合部分に関する。
【0013】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域を含み得る、重鎖可変領域と、VL CDR1領域、VL CDR2領域及びVL CDR3領域を含み得る、軽鎖可変領域と、を含み得て、VH CDR1領域、VH CDR2領域、VH CDR3領域、VL CDR1領域、VL CDR2領域、及びVL CDR3領域は、(1)配列番号1、2(X1=D、X2=Q)、3、4、5及び6のそれぞれ;(2)配列番号1、2(X1=E、X2=Q)、3、4、5及び6のそれぞれ;(3)配列番号1、2(X1=D、X2=K)、3、4、5及び6のそれぞれ;(4)配列番号9、10、11、12、13及び14のそれぞれ;又は(5)配列番号33、34、35、36、37及び38のそれぞれと、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得て、抗体又はその抗原結合フラグメントは、Siglec15に結合する。
【0014】
本開示の抗体又はその抗原結合部分の重鎖可変領域は、配列番号7(X1=D、X2=Q;X1=E、X2=Q;又はX1=D、X2=K)、15、39、40又は41と、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得て、抗体又はその抗原結合フラグメントは、Siglec15に結合する。配列番号7(X1=D、X2=Q)のアミノ酸配列は、配列番号27のヌクレオチド配列によってコードされ得て、配列番号15のアミノ酸配列は、配列番号29のヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0015】
本開示の抗体又はその抗原結合部分の軽鎖可変領域は、配列番号8、16、42又は43と、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得て、抗体又はその抗原結合フラグメントは、Siglec15に結合する。配列番号8及び16のアミノ酸配列は、配列番号28及び30のヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0016】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、(1)配列番号7(X1=D、X2=Q)及び8のそれぞれ;(2)配列番号7(X1=E、X2=Q)及び8のそれぞれ;(3)配列番号7(X1=D、X2=K)及び8のそれぞれ;(4)配列番号15及び16のそれぞれ;(5)配列番号39及び42のそれぞれ;(6)配列番号40及び42のそれぞれ;又は(7)配列番号41及び43のそれぞれと、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得て、抗体又はその抗原結合フラグメントは、Siglec15に結合する。
【0017】
本開示の単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分は、ジスルフィド結合によって連結された重鎖と軽鎖を含み得て、重鎖は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含み得て、軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含み得て、重鎖可変領域のC末端が重鎖定常領域のN末端に連結され、且つ軽鎖可変領域のC末端が軽鎖定常領域のN末端に連結され、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が、上述のアミノ酸配列を含み得て、且つ抗体又はその抗原結合部分がSiglec15に結合する。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2又はIgG4重鎖定常領域、例えば、例えば配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するヒトIgG1、IgG2又はIgG4重鎖定常領域であり得る。Fcフラグメントなどの重鎖定常領域は、低減された、又は増強されたFcR結合親和性を有するように操作され得る。軽鎖定常領域はカッパ(kappa)定常領域、例えば、例えば配列番号18に記載のアミノ酸配列を有するヒトカッパ定常領域であり得る。配列番号17及び18のアミノ酸配列は、配列番号31及び32のヌクレオチド配列によってそれぞれコードされ得る。
【0018】
特定の実施形態における本開示の抗体は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含み得る、又は2本の重鎖及び2本の軽鎖からなり得て、各重鎖は、上記の重鎖定常領域、重鎖可変領域又はCDR配列を含み得て、且つ各軽鎖は、上記の軽鎖定常領域、軽鎖可変領域又はCDR配列を含み得て、その抗体はSiglec15に結合する。本開示の抗体又はその抗原結合部分は、例えばIgG1、IgG2又はIgG4アイソタイプの完全長抗体であり得る。他の実施形態における抗体又はその抗原結合部分は、単鎖可変フラグメント(scFv)抗体、又はFab若しくはF(ab')2フラグメントなどの抗体フラグメントであり得る。
【0019】
本開示は、抗体又はその原結合部分と異なる結合特異性を有する第2の機能性部分(例えば、第2抗体)に連結された、本開示の抗体又はその原結合部分を含み得る二重特異性分子も提供する。本開示は、細胞毒などの治療薬に連結された、本開示の抗体又はその抗原結合部分を含み得る、抗体-薬物コンジュゲートなどの免疫抱合体も提供する。別の態様において、本開示の抗体又はその抗原結合部分は、キメラ抗原受容体(CAR)の一部であり得る。T細胞及びNK細胞などの、抗原キメラ受容体を含み得る免疫細胞も提供される。本開示の抗体又はその抗原結合部分はまた、腫瘍溶解性ウイルスによってコードされるか、又は腫瘍溶解性ウイルスと共に使用され得る。
【0020】
本開示の抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子、並びにかかる核酸を含み得る発現ベクター、及びかかる発現ベクターを含み得る宿主細胞も包含される。宿主細胞を使用して本開示の抗Siglec15抗体又はその抗原結合部分を調製する方法であって、(i)宿主細胞において抗体を発現させる工程、及び(ii)宿主細胞又はその細胞培養物から抗体を単離する工程を含み得る方法も提供される。
【0021】
本開示の抗体又は抗原結合部分、免疫抱合体、二重特異性分子、腫瘍溶解性ウイルス、CAR、CAR-T細胞、核酸分子、発現ベクター又は宿主細胞と、薬学的に許容される担体とを含み得る組成物も提供される。特定の実施形態において、組成物はさらに、抗癌剤などの治療薬を含有し得る。
【0022】
さらに別の態様において、本開示は、対象において免疫応答を調節する方法であって、本開示の抗体若しくはその抗原結合部分を、又はその代わりに、対象における免疫応答が調節されるように、対象においてそれを発現させることができる核酸分子を、治療有効量で対象に投与することを含む方法を提供する。好ましくは、本開示の抗体又はその抗原結合部分は、例えば、Siglec15媒介T細胞抑制を復帰変異することによって、対象における免疫応答を増強、刺激又は増加する。一部の実施形態において、この方法は、本開示の二重特異性分子、免疫抱合体、CAR-T細胞、又は抗体をコードする若しくは抗体を担持する腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。
【0023】
さらに別の態様において、本開示は、対象において骨量減少を阻害する、又は骨量を増加する方法であって、本開示の抗体若しくはその抗原結合部分を、又はその代わりに、それを発現させることができる核酸分子を、治療有効量で対象に投与することを含む方法を提供する。
【0024】
更なる態様において、本開示は、その必要がある対象において腫瘍成長を阻害する方法であって、本開示の抗体若しくはその抗原結合部分を、又はその代わりに、対象においてそれを発現させることができる核酸分子を、治療有効量で対象に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、その方法は、本開示の二重特異性分子、免疫抱合体、CAR-T細胞、又は抗体をコードする若しくは抗体を担持する腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。腫瘍は、固形又は非固形腫瘍であり得る。特定の実施形態において、腫瘍は、限定されないが、非小細胞肺癌、卵巣癌、黒色腫、結腸直腸癌、乳癌(トリプルネガティブ乳癌など)、頭頸部扁平上皮癌、子宮内膜癌、及び扁平上皮癌などの固形腫瘍である。一部の実施形態において、少なくとも1つの更なる抗癌抗体を、本開示の抗体又はその抗原結合部分、例えば抗VISTA抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗LAG-3抗体、抗CTLA-4抗体、抗TIM-3抗体、抗STAT3抗体、及び/又は抗ROR1抗体と共に投与することができる。さらに他の実施形態において、本開示の抗体又はその抗原結合部分は、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-21、GM-CSF及び/又はIL-4)、又は共刺激抗体(例えば、抗CD137及び/又は抗GITR抗体)と共に投与される。別の実施形態において、本開示の抗体又はその抗原結合部分は、エピルビシン、オキサリプラチン、及び/又は5-フルオロウラシル(5-FU)などの細胞毒性剤であり得る、化学療法薬と共に投与される。本開示の抗体又はその抗原結合部分は、例えばマウス、ヒト、キメラ若しくはヒト化抗体又はその抗原結合部分であり得る。
【0025】
本開示の他の特徴及び利点は、限定であると解釈されるべきではない以下の詳細な説明及び実施例から明らかになるであろう。本出願を通して引用される全ての参照文献、Genbankエントリ、特許及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。
【0026】
したがって、本発明の目的は、任意の既に公知の製品、その製品の作製方法、又はその製品の使用方法を本発明に包含することではなく、したがって、本出願人は、その権利を留保し、任意の既に公知の製品、プロセス、又は方法の放棄を本明細書に開示する。本発明は、USPTOの書面による記載及び実施可能要件(米国特許法第112条、第1段落)又はEPO(欧州特許条約(EPC)83条)を満たさない任意の製品、プロセス、又はその製品の作製方法又はその製品の使用方法を本発明の範囲内に包含することを意図しないことがさらに留意され、したがって、本出願人は、その権利を留保し、任意の既に記載された製品、その製品の作製方法、又はその製品の使用方法の放棄を本明細書に開示する。本発明の実施において、53条(c)EPC及び規則28(b)及び(c)EPCに準拠していることが有利であり得る。本出願の系統又は任意の他の系統又は任意の第三者の任意の先行出願における出願人の任意の登録特許の主題である任意の実施形態を明確に放棄する全ての権利が、明確に留保される。本明細書に記載されるいずれも、保証として解釈されるべきではない。
【0027】
本開示、特に、特許請求の範囲及び/又は段落において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含む(comprising)」などの用語が、米国特許法による意味を有し得;例えば、それらは、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含む(including)」などを意味し得ること;及び「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語が、米国特許法による意味を有し、例えば、それらは、明示されていない要素を許容するが、先行技術において見出されるか又は本発明の基本的又は新規な特徴に影響を与える要素を除外することが留意される。
【0028】
例として示されるが、本発明を記載される特定の実施形態のみに限定することは意図されていない、以下の詳細な説明が、添付の図面と併せて最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】捕捉ELISAにおける、ヒトSiglec15に対する抗体A1C8C6H1、A1D1B7H9、A1D5E2H1及びA1D11A7H10の結合能力を示す。
【
図1B】捕捉ELISAにおける、ヒトSiglec15に対する抗体A1E7G5D1、A1E10G7H9、A2A1D2F1及びA2A5G7E8の結合能力を示す。
【
図1C】捕捉ELISAにおける、ヒトSiglec15に対する抗体A2A6B1C2、A2G4C8G7及びA2H5F1A1の結合能力を示す。
【
図2A】細胞ベースの結合FACSアッセイにおける、ヒトSiglec15を発現するヒト-siglec15-2D3-1E1細胞に対する抗体A1C8C6H1、A1D1B7H9、A1D5E2H1及びA1D11A7H10の結合能力を示す。
【
図2B】細胞ベースの結合FACSアッセイにおける、ヒトSiglec15を発現するヒト-siglec15-2D3-1E1細胞に対する抗体A1E7G5D1、A1E10G7H9、A2A1D2F1及びA2A5G7E8の結合能力を示す。
【
図2C】細胞ベースの結合FACSアッセイにおける、ヒトSiglec15を発現するヒト-siglec15-2D3-1E1細胞に対する抗体A2A6B1C2、A2G4C8G7及びA2H5F1A1の結合能力を示す。
【
図3A】間接ELISAにおける、カニクイザルSiglec15に対する抗体A1C8C6H1、A1D1B7H9、A1D5E2H1及びA1D11A7H10の結合能力を示す。
【
図3B】間接ELISAにおける、カニクイザルSiglec15に対する抗体A1E7G5D1、A1E10G7H9、A2A1D2F1及びA2A5G7E8の結合能力を示す。
【
図3C】間接ELISAにおける、カニクイザルSiglec15に対する抗体A2A6B1C2、A2G4C8G7及びA2H5F1A1の結合能力を示す。
【
図4A】間接ELISAにおける、マウスSiglec15に対する抗体A1C8C6H1、A1D1B7H9、A1D5E2H1及びA1D11A7H10の結合能力を示す。
【
図4B】間接ELISAにおける、マウスSiglec15に対する抗体A1E7G5D1、A1E10G7H9、A2A1D2F1及びA2A5G7E8の結合能力を示す。
【
図4C】間接ELISAにおける、マウスSiglec15に対する抗体A2A6B1C2、A2G4C8G7及びA2H5F1A1の結合能力を示す。
【
図5A】競合ELISAにおける、ヒトSiglec15-LRRC4C結合をブロッキングする、抗体A1C8C6H1、A1D1B7H9、A1D5E2H1及びA1D11A7H10の能力を示す。
【
図5B】競合ELISAにおける、ヒトSiglec15-LRRC4C結合をブロッキングする、抗体A1E7G5D1、A1E10G7H9、A2A1D2F1及びA2A5C7E8の能力を示す。
【
図5C】競合ELISAにおける、ヒトSiglec15-LRRC4C結合をブロッキングする、抗体A2A6B1C2、A2G4C8G7及びA2H5F1A1の能力を示す。
【
図6A】競合ELISAにおける、ベンチマーク-ヒトSiglec15結合をブロックする、抗体A1C8C6H1、A1D1B7H9、A1D5E2H1及びA1D11A7H10の能力を示す。
【
図6B】競合ELISAにおける、ベンチマーク-ヒトSiglec15結合をブロックする、抗体A1E7G5D1、A1E10G7H9、A2A1D2F1及びA2A5C7E8の能力を示す。
【
図6C】競合ELISAにおける、ベンチマーク-ヒトSiglec15結合をブロックする、抗体A2A6B1C2、A2G4C8G7及びA2H5F1A1の能力を示す。
【
図7A】細胞ベースのブロッキングFACSアッセイにおける、細胞表面ヒトLRRC4Cに対してヒトSiglec15をブロックする、抗体A1C8C6H1、A1D1B7H9、A1D5E2H1及びA1D11A7H10の能力を示す。
【
図7B】細胞ベースのブロッキングFACSアッセイにおける、細胞表面ヒトLRRC4Cに対してヒトSiglec15をブロックする、抗体A1E7G5D1、A1E10G7H9、A2A1D2F1及びA2A5C7E8の能力を示す。
【
図7C】細胞ベースのブロッキングFACSアッセイにおける、細胞表面ヒトLRRC4Cに対してヒトSiglec15をブロックする、抗体A2A6B1C2、A2G4C8G7及びA2H5F1A1の能力を示す。
【
図8A】抗体A2A5C7E8及びA1E10G7H9が、細胞ベースの機能アッセイにおいて、Siglec15誘発CD8
+細胞抑制を復帰したことを示す。
【
図8B】抗体A2A5C7E8及びA1E10G7H9が、細胞ベースの機能アッセイにおいて、Siglec15誘発CD4
+細胞抑制を復帰したことを示す。
【
図9】捕捉ELISAにおいて、ヒトSiglec15に対する抗体A2A5C7E8-1、A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3の結合能力を示す。
【
図10】細胞ベースの結合FACSアッセイにおいて、ヒトSiglec15を発現するヒト-siglec15-2D3-1E1細胞に対する抗体A2A5C7E8-1、A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3の結合能力を示す。
【
図11】間接ELISAにおいて、カニクイザルSiglec15に対する抗体A2A5C7E8-1、A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3の結合能力を示す。
【
図12】間接ELISAにおいて、マウスSiglec15に対する抗体A2A5C7E8-1、A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3の結合能力を示す。
【
図13】競合ELISAにおいて、ヒトSiglec15-LRRC4C結合をブロックする、抗体A2A5C7E8-1、A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3の能力を示す。
【
図14】競合ELISAにおいて、ベンチマーク-ヒトSiglec15結合をブロックする、抗体A2A5C7E8-1、A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3の能力を示す。
【
図15A】細胞ベースの機能アッセイにおいて、抗体A2A5C7E8-1、A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3が、93.5nM Siglec15によって誘発されるCD8
+細胞抑制を復帰したことを示す。
【
図15B】細胞ベースの機能アッセイにおいて、抗体A2A5C7E8-1、A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3が、93.5nM Siglec15によって誘発されるCD4
+細胞抑制を復帰したことを示す。
【
図15C】細胞ベースの機能アッセイにおいて、抗体A2A5C7E8-1、A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3が、186.9nM Siglec15によって誘発されるCD8
+細胞抑制を復帰したことを示す。
【
図15D】細胞ベースの機能アッセイにおいて、抗体A2A5C7E8-1、A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3が、186.9nM Siglec15によって誘発されるCD4
+細胞抑制を復帰したことを示す。
【
図16】捕捉ELISAにおいて、ヒトSiglec15に対するマウス抗体B2D7H7A3C1、B2G12H3E8及びB2H2H1H7の結合能力を示す。
【
図17】細胞ベースの結合FACSアッセイにおいて、ヒトSiglec15を発現するヒト-siglec15-2D3-1E1細胞に対するマウス抗体B2D7H7A3C1、B2G12H3E8及びB2H2H1H7の結合能力を示す。
【
図18】間接ELISAにおいて、カニクイザルSiglec15に対するマウス抗体B2D7H7A3C1、B2G12H3E8及びB2H2H1H7の結合能力を示す。
【
図19】間接ELISAにおいて、マウスSiglec15に対するマウス抗体B2D7H7A3C1、B2G12H3E8及びB2H2H1H7の結合能力を示す。
【
図20】競合ELISAにおいて、ヒトSiglec15-LRRC4C結合をブロックする、マウス抗体B2D7H7A3C1、B2G12H3E8及びB2H2H1H7の能力を示す。
【
図21】競合ELISAにおいて、ベンチマーク-ヒトSiglec15結合をブロックする、マウス抗体B2D7H7A3C1、B2G12H3E8及びB2H2H1H7の能力を示す。
【
図22A】細胞ベースの機能アッセイにおいて、マウス抗体B2D7H7A3C1、B2G12H3E8及びB2H2H1H7が、Siglec15媒介CD8
+細胞抑制を復帰したことを示す。
【
図22B】細胞ベースの機能アッセイにおいて、マウス抗体B2D7H7A3C1、B2G12H3E8及びB2H2H1H7が、Siglec15媒介CD4
+細胞抑制を復帰したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示がより容易に理解され得ることを確実にするために、いくつかの用語がまず定義される。さらなる定義は、詳細な説明を通して記載される。
【0031】
「Siglec15」という用語は、変異体、アイソフォーム、ホモログ、オルソログ及びパラログを含む。例えば、ヒトSiglec15タンパク質に特異的な抗体は、ある場合において、サルなどの、ヒト以外の種に由来するSiglec15タンパク質と交差反応し得る。他の実施形態において、ヒトSiglec15タンパク質に特異的な抗体は、ヒトSiglec15タンパク質に完全に特異的であり得、他の種に対する又は他のタイプの交差反応性を示さないことがあり、又は全ての他の種ではなく特定の他の種に由来するSiglec15と交差反応し得る。
【0032】
「ヒトSiglec15」という用語は、Q6ZMC9のGenbank受託番号を有するヒトSiglec15のアミノ酸配列などの、ヒトに由来するアミノ酸配列を有するSiglec15タンパク質を指す。「サル又はアカゲザルSiglec15」及び「マウスSiglec15」という用語はそれぞれ、サル及びマウスSiglec15配列を指し、例えば、それぞれGenbank受託番号XP_028694069.1及びNP_001094508.1を有するアミノ酸配列を有するものである。
【0033】
「免疫応答」という用語は、例えば、侵入する病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌細胞の破壊、又はヒトの身体からの排除に対して選択的なダメージをもたらす、或いは自己免疫又は病理学的な炎症、正常なヒト細胞若しくは組織の場合における、上記の細胞又は肝臓によって産生されるリンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を意味する。
【0034】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、抗原-結合部位が通常、免疫グロブリン分子の可変領域内にある、少なくとも1つの抗原-結合部位を介して、Siglec15などの標的を認識し、特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書において使用されるその用語は、抗体が目的の生物活性を示す限り、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、単鎖Fv(scFv)抗体、重鎖抗体(HCAb)、軽鎖抗体(LCAb)、多特異性抗体、二重特異性抗体、単一特異性抗体、一価抗体、抗体の抗原-結合部位を含む融合タンパク質、及び抗原-結合部位を含む他のいずれかの改変免疫グロブリン分子(例えば、二重可変ドメイン免疫グロブリン分子)を包含する。抗体としては、限定されないが、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体が挙げられる。抗体は、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューとそれぞれ呼ばれるその重鎖定常ドメインの同一性に基づいて、免疫グロブリンの5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、又はそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のいずれかであることができる。免疫グロブリンの異なるクラスは、異なる既知のサブユニット構造及び三次元立体配置を有する。抗体は、限定されないが、裸抗体であるか、又は毒素及びラジオアイソトープなどの他の分子に結合され得る。別段の指定がない限り、本明細書で使用される「抗体」という用語は、インタクトな抗体の「抗原結合部分」を含む。IgGは、ジスルフィド結合によって相互に連結された2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含み得る糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)及び重鎖定常領域から構成され得る。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3から構成され得る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)及び軽鎖定常領域から構成され得る。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成され得る。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分類され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0035】
本明細書において使用される際の、抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、Siglec15タンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能が、完全長抗体のフラグメントによって行われ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含み得る二価フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR);並びに(viii)ナノボディ、単一可変ドメイン及び2つの定常ドメインを含有する重鎖可変領域を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、それらをVL及びVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい)として作製可能にする合成リンカーによる、組換え方法を用いて結合され得る。このような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、これらのフラグメントは、インタクトな抗体と同じように有用性についてスクリーニングされる。
【0036】
本明細書において使用される際の「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えば、Siglec15タンパク質に特異的に結合する単離抗体は、Siglec15タンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトSiglec15タンパク質に特異的に結合する単離抗体は、他の種に由来するSiglec15タンパク質などの他の抗原に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0037】
本明細書において使用される際の「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0038】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域はまた、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダム若しくは部位特異的変異誘発又はインビボで体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図されない。
【0039】
本明細書において使用される際の「マウス抗体」という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がマウス生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域はまた、マウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のマウス抗体は、マウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダム若しくは部位特異的変異誘発又はインビボで体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される際の「マウス抗体」という用語は、別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がマウスフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことは意図されていない。
【0040】
「キメラ抗体」という用語は、非ヒト源に由来する遺伝物質を、ヒトに由来する遺伝物質と組み合わせることによって作製される抗体を指す。又はより一般に、キメラ抗体は、特定の種に由来する遺伝物質を、別の種に由来する遺伝物質とともに有する抗体である。
【0041】
本明細書において使用される際の「ヒト化抗体」という用語は、タンパク質配列が、ヒトにおいて天然に産生される抗体形態との類似性を増大するように修飾された、非ヒト種に由来する抗体を指す。
【0042】
「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。
【0043】
「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書において、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と同義的に使用される。
【0044】
本明細書において使用される際、「ヒトSiglec15に特異的に結合する」抗体は、ヒトSiglec15タンパク質(場合により、1つ以上の非ヒトに由来するSiglec15タンパク質)に結合するが、非Siglec15タンパク質に実質的に結合しない抗体を指すことが意図される。好ましくは、抗体は、「高い親和性」、すなわち、5.0×10-9M以下、より好ましくは、1.0×10-9M以下、より好ましくは、1.0×10-10M以下のKDでヒトSiglec15タンパク質に結合する。
【0045】
本明細書において使用される際の、タンパク質又は細胞に「実質的に結合しない」という用語は、タンパク質又は細胞に結合しないか又は高い親和性で結合しない、すなわち、1.0×10-6M以上、より好ましくは、1.0×10-5M以上、より好ましくは、1.0×10-4M以上、より好ましくは、1.0×10-3M以上、さらにより好ましくは、1.0×10-2M以上のKDでタンパク質又は細胞に結合することを意味する。
【0046】
IgG抗体に対する「高い親和性」という用語は、標的抗原に対して5.0×10-9M以下、より好ましくは、1.0×10-9M以下、さらにより好ましくは、5.0×10-10M以下、さらにより好ましくは、1.0×10-10M以下、さらにより好ましくは、5.0×10-11M以下のKDを有する抗体を指す。しかしながら、「高い親和性」結合は、他の抗体アイソタイプに対して変化し得る。例えば、IgMアイソタイプに対する「高い親和性」結合は、10-6M以下、より好ましくは、10-7M以下、さらにより好ましくは、10-8M以下のKDを有する抗体を指す。
【0047】
本明細書において使用される際の「Kassoc」又は「Ka」という用語が、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度を指すことが意図される一方、本明細書において使用される際の「Kdis」又は「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。本明細書において使用される際の「KD」という用語は、解離定数を指すことが意図され、これは、Kd対Kaの比率(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。抗体についてのKD値は、当該技術分野において十分に確立された方法を用いて決定され得る。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を用いる、好ましくは、Biacore(商標)システムなどのバイオセンサーシステムを用いることによる。
【0048】
最大半量の有効濃度としても知られている「EC50」という用語は、特定の曝露時間の後の、ベースラインと最大値との間の中間の応答を誘導する抗体の濃度を指す。
【0049】
半数阻害濃度としても知られている「IC50」という用語は、抗体の非存在と比べて50%だけ特定の生物学的又は生化学的機能を阻害する抗体の濃度を指す。
【0050】
「対象」という用語は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、及びは虫類などの、哺乳動物及び非哺乳動物を含むが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ及びウマなどの哺乳動物が好ましい。
【0051】
「治療有効量」という用語は、疾患若しくは病態(癌など)に関連する症状を予防若しくは改善し、及び/又は疾患若しくは病態の重症度を低下させるのに十分な、本開示の抗体若しくはその抗原結合部分の量を意味する。治療有効量は、治療される病態に関して理解され、実際の有効量は、当業者によって容易に理解される。
【0052】
本開示の様々な態様が、以下のサブセクションにさらに詳細に記載される。
【0053】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、Siglec15-ch5G9などの上述の抗Siglec15抗体と比較して、より良くないとしても、同等の結合親和性でヒト又はサルSiglec15に特異的に結合する。
【0054】
更なる機能特性としては、そのリガンドへのSiglec15結合をブロックする能力、及びSiglec15媒介T細胞抑制を復帰する能力が挙げられる。
【0055】
本開示の例示的な抗体又はその抗原結合部分は、以下に、及び実施例に記載のように構造的及び化学的に特性決定される。抗体の重/軽鎖可変領域のアミノ酸配列番号を以下の表1にまとめる。抗体の重鎖定常領域は、例えば、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するヒトIgG1重鎖定常領域であり得て、抗体の軽鎖定常領域は、例えば、配列番号18に記載のアミノ酸配列を有するヒトカッパ定常領域であり得る。本開示の抗体は、ヒト、マウス、キメラ又はヒト化抗体であり得る。
【0056】
表1中の重鎖可変領域CDR及び軽鎖可変領域CDRは、Kabat番号付けシステムによって定義されている。しかしながら、当該技術分野において周知であるように、CDR領域はまた、重鎖/軽鎖可変領域配列に基づいて、Chothia、及びIMGT、AbM、又はContact番号付けシステム/方法などの他のシステムによって決定され得る。
【0057】
【0058】
ヒトSiglec15に結合する他の抗Siglec15抗体のVH及びVL配列(又はCDR配列)は、本開示の抗Siglec15抗体のVH及びVL配列(又はCDR配列)と「混合及び適合させる」ことができる。好ましくは、VH及びVL鎖(又はこのような鎖内のCDR)が、混合及び適合される場合、特定のVH/VL対合からのVH配列が、構造的に類似のVH配列で置き換えられる。同様に、好ましくは、特定のVH/VL対合からのVL配列が、構造的に類似のVL配列で置き換えられる。
【0059】
したがって、一実施形態において、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、
(a)表1中で上に列挙されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び
(b)表1中で上に列挙されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は別の抗Siglec15抗体のVLを含み、ここで、抗体は、ヒトSiglec15に特異的に結合する。
【0060】
別の実施形態において、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、
(a)表1中で上に列挙される重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3領域;及び
(b)表1中で上に列挙される軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3領域又は別の抗Siglec15抗体のCDRを含み、ここで、抗体は、ヒトSiglec15に特異的に結合する。
【0061】
さらに別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合部分は、ヒトSiglec15に結合する他の抗体のCDR、例えば、重鎖可変領域からのCDR1及び/又はCDR3と組み合わされた抗Siglec15抗体の重鎖可変CDR2領域、並びに/或いは異なる抗Siglec15抗体の軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3を含む。
【0062】
さらに、CDR1及び/又はCDR2ドメインから独立して、CDR3ドメインは、単独で、同種抗原に対する抗体の結合特異性を決定することができること、及び複数の抗体が、予想通りに、共通のCDR3配列に基づいて、同じ結合特異性を有して生成され得ることが当該技術分野において周知である。例えば、Klimka et al.,British J.of Cancer 83(2):252-260(2000);Beiboer et al.,J.Mol.Biol.296:833-849(2000);Rader et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:8910-8915(1998);Barbas et al.,J.Am.Chem.Soc.116:2161-2162(1994);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:2529-2533(1995);Ditzel et al.,J.Immunol.157:739-749(1996);Berezov et al.,BIAjournal 8:Scientific Review 8(2001);Igarashi et al.,J.Biochem(Tokyo)117:452-7(1995);Bourgeois et al.,J.Virol 72:807-10(1998);Levi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:4374-8(1993);Polymenis and Stoller,J.Immunol.152:5218-5329(1994)及びXu and Davis,Immunity 13:37-45(2000)を参照されたい。また、米国特許第6,951,646号明細書;同第6,914,128号明細書;同第6,090,382号明細書;同第6,818,216号明細書;同第6,156,313号明細書;同第6,827,925号明細書;同第5,833,943号明細書;同第5,762,905号明細書及び同第5,760,185号明細書を参照されたい。これらの参照文献はそれぞれ、全体が参照により本明細書に援用される。
【0063】
したがって、別の実施形態において、本開示の抗体は、抗Siglec15抗体の重鎖可変領域のCDR2、並びに抗Siglec15抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域の少なくともCDR3、又は別の抗Siglec15抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR3を含み、ここで、抗体は、ヒトSiglec15に特異的に結合することが可能である。これらの抗体は、好ましくは、(a)Siglec15との結合について競合し;(b)機能的特性を保持し;(c)同じエピトープに結合し;及び/又は(d)本開示の抗Siglec15抗体と同様の結合親和性を有する。さらに別の実施形態において、抗体は、抗Siglec15抗体の軽鎖可変領域のCDR2、又は別の抗Siglec15抗体の軽鎖可変領域のCDR2をさらに含み得、ここで、抗体は、ヒトSiglec15に特異的に結合することが可能である。別の実施形態において、本開示の抗体は、抗Siglec15抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR1、又は別の抗Siglec15抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR1をさらに含み得、ここで、抗体は、ヒトSiglec15に特異的に結合することが可能である。
【0064】
別の実施形態において、本開示の抗体は、1つ以上の保存的修飾だけ、本開示の抗Siglec15抗体のものと異なるCDR1、CDR2及びCDR3配列の重鎖及び/又は軽鎖可変領域配列を含む。特定の保存的配列修飾が、抗原結合を除去せずに作製され得ることが、当該技術分野において理解される。例えば、Brummell et al.,(1993)Biochem 32:1180-8;de Wildt et al.,(1997)Prot.Eng.10:835-41;Komissarov et al.,(1997)J.Biol.Chem.272:26864-26870;Hall et al.,(1992)J.Immunol.149:1605-12;Kelley and O'Connell(1993)Biochem.32:6862-35;Adib-Conquy et al.,(1998)Int.Immunol.10:341-6及びBeers et al.,(2000)Clin.Can.Res.6:2835-43を参照されたい。
【0065】
したがって、一実施形態において、抗体は、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域及び/又はCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで:
(a)重鎖可変領域CDR1配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/又はその保存的修飾を含み;及び/又は
(b)重鎖可変領域CDR2配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/又はその保存的修飾を含み;及び/又は
(c)重鎖可変領域CDR3配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/又はその保存的修飾を含み;及び/又は
(d)軽鎖可変領域CDR1、及び/又はCDR2、及び/又はCDR3配列は、上記の表1に列挙される配列;及び/又はその保存的修飾を含み;
(e)抗体は、ヒトSiglec15に特異的に結合する。
【0066】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、上述される以下の機能特性の1つ又は複数、例えばヒトSiglec15に対する高い親和性結合、及びSiglec15媒介T細胞抑制を復帰する能力を保持する。
【0067】
様々な実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、例えば、ヒト、マウス、ヒト化若しくはキメラ抗体又はその抗原結合部分であることができる。
【0068】
本明細書において使用される際、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に実質的に影響を与えないか又は変化させないアミノ酸修飾を指すことが意図される。このような保存的修飾は、アミノ酸置換、付加及び欠失を含む。修飾は、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発などの、当該技術分野において公知の標準的な技術によって、本開示の抗体に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、本開示の抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置換され得、改変された抗体が、本明細書に記載される機能アッセイを用いて、保持された機能(すなわち、上記の機能)について試験され得る。
【0069】
本開示の抗体は、修飾された抗体を操作するように、出発材料として本開示の抗Siglec15抗体のVH/VL配列の1つ以上を有する抗体を用いて調製され得る。抗体は、1つ又は両方の可変領域(すなわち、VH及び/又はVL)内、例えば、1つ以上のCDR領域内及び/又は1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上の残基を修飾することによって操作され得る。それに加えて又はその代わりに、抗体は、例えば抗体のエフェクター機能を改変するために、定常領域内の残基を修飾することによって操作され得る。
【0070】
特定の実施形態において、CDRグラフト法は、抗体の可変領域を操作するのに使用され得る。抗体は、主に、6つの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外部の配列より個々の抗体間でより異なっている。CDR配列が、ほとんどの抗体-抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列にグラフトされた特定の天然抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann et al.,(1998)Nature 332:323-327;Jones et al.,(1986)Nature 321:522-525;Queen et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.を参照されたい。U.S.A.86:10029-10033;米国特許第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書及び同第6,180,370号明細書も参照されたい)。
【0071】
したがって、本開示の別の実施形態は、上述される、本開示の配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域、及び/又は上述される、本開示の配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分に関する。これらの抗体が、本開示のモノクローナル抗体のVH及びVL CDR配列を含む一方、それらは、異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0072】
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベース又は刊行されている参照文献から得られる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列の配列データベース(www.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで、インターネットで利用可能)、並びにKabat et al.,(1991)(上記に引用される);Tomlinson et al.,(1992)J.Mol.Biol.227:776-798;及びCox et al.,(1994)Eur.J.Immunol.24:827-836(これらのそれぞれの内容が、参照により本明細書に明示的に援用される)において見出され得る。別の例として、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、Genbankデータベースにおいて見出され得る。例えば、HCo7 HuMAbマウスにおいて見出される以下の重鎖生殖細胞系列配列は、添付のGenbank受託番号1-69(NG--0010109、NT--024637及びBC070333)、3-33(NG--0010109及びNT--024637)並びに3-7(NG--0010109&NT--024637)において利用可能である。別の例として、HCo12 HuMAb マウスにおいて見出される以下の重鎖生殖細胞系列配列は、添付のGenbank受託番号1-69(NG--0010109、NT--024637及びBC070333)、5-51(NG--0010109及びNT--024637)、4-34(NG--0010109及びNT--024637)、3-30.3(CAJ556644)並びに3-23(AJ406678)において利用可能である。
【0073】
抗体タンパク質配列は、当業者に周知の、Gapped BLAST(Altschul et al.,(1997)、上記を参照)と呼ばれる配列類似性検索法の1つを用いて、コンパイルされたタンパク質配列データベースに対して比較される。
【0074】
本開示の抗体において使用するための好ましいフレームワーク配列は、本開示の抗体によって使用されるフレームワーク配列と構造的に類似のものである。VH CDR1、CDR2、及びCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子において見出されるものと同一の配列を有するフレームワーク領域にグラフトされ得、又はCDR配列は、生殖細胞系列配列と比較して1つ以上の変異を含むフレームワーク領域にグラフトされ得る。例えば、ある場合において、抗体の抗原結合能力を維持又は強化するために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが分かっている(例えば、米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書及び同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0075】
別のタイプの可変領域修飾は、VH及び/又はVL CDR1、CDR2及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させることであり、それによって、対象とする抗体の1つ以上の結合特性(例えば、親和性)を改善する。部位特異的変異誘発又はPCR媒介変異誘発は、変異を導入するために行われ得、抗体結合に対する効果、又は対象とする他の機能的特性が、当該技術分野において公知のインビトロ又はインビボアッセイにおいて評価され得る。好ましくは、保存的修飾(当該技術分野において公知であるように)が導入される。変異は、アミノ酸置換、付加又は欠失であり得るが、好ましくは、置換である。さらに、典型的に、CDR領域内の1、2、3、4又は5つ以下の残基が改変される。
【0076】
したがって、別の実施形態において、本開示は、(a)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR1領域;(b)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR2領域;(c)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVH CDR3領域;(d)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVL CDR1領域;(e)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVL CDR2領域;及び(f)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含むVL CDR3領域を含む重鎖可変領域を含む、単離された抗Siglec15モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を提供する。
【0077】
本開示の操作された抗体は、修飾が、例えば、抗体の特性を改善するために、VH及び/又はVL内のフレームワーク残基に行われたものを含む。典型的に、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、一手法は、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列配列へと「復帰変異(back-mutate)」させることである。より詳細には、体細胞変異を起こした抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することによって同定され得る。
【0078】
別のタイプのフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それによって、抗体の潜在的な免疫原性を低下させるために、フレームワーク領域内、或いは1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基を変異させることを含む。この手法は、「脱免疫化」とも呼ばれ、米国特許出願公開第20030153043号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0079】
フレームワーク若しくはCDR領域内で行われる修飾に加えて、又はその代わりに、本開示の抗体は、典型的に、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存的細胞毒性などの、抗体の1つ以上の機能的特性を改変するために、Fc領域内に修飾を含むように操作され得る。さらに、本開示の抗体は、同様に抗体の1つ以上の機能的特性を改変するために化学修飾され得るか(例えば、1つ以上の化学部分が、抗体に結合され得る)又はそのグリコシル化を改変するために修飾され得る。
【0080】
一実施形態において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域におけるシステイン残基の数が変化される、例えば、増加又は減少されるように修飾される。この手法は、米国特許第5,677,425号明細書にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖の組み立てを容易にするために、又は抗体の安定性を増大若しくは低下させるために変化される。
【0081】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生体半減期を減少させるように変異される。より詳細には、1つ以上のアミノ酸変異は、抗体が、天然Fc-ヒンジ領域SpA結合と比べて損なわれたブドウ球菌(Staphylococcal)プロテインA(SpA)結合を有するように、Fc-ヒンジフラグメントのCH2-CH3ドメイン境界領域に導入される。この手法は、米国特許第6,165,745号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0082】
さらに別の実施形態において、抗体のグリコシル化は、修飾される。例えば、非グリコシル化抗体が作製され得る(すなわち、抗体は、グリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増大するために改変され得る。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つ以上の部位を改変することによって達成され得る。例えば、1つ以上のアミノ酸置換は、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位をなくし、それによって、その部位におけるグリコシル化をなくすように行われ得る。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増大し得る。例えば、米国特許第5,714,350号明細書及び同第6,350,861号明細書を参照されたい。
【0083】
それに加えて又はその代わりに、改変されたタイプのグリコシル化を有する抗体、例えば、減少した量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体又は増加したバイセクティングGlcNac構造を有する抗体が作製され得る。このような改変されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増大することが実証されている。このような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現することによって達成され得る。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、当該技術分野において記載されており、本開示の組換え抗体を発現する宿主細胞として使用され、それによって、改変されたグリコシル化を有する抗体を産生することができる。例えば、細胞株Ms704、Ms705、及びMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8(α(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ)を欠いており、Ms704、Ms705、及びMs709細胞株において発現される抗体が、それらの炭水化物においてフコースを欠くようになっている。Ms704、Ms705、及びMs709 FUT8-/-細胞株を、2つの置換ベクターを用いて、CHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的化破壊によって生成した(米国特許出願公開第2004/0110704号明細書及びYamane-Ohnuki et al.,(2004)Biotechnol Bioeng 87:614-22を参照されたい)。別の例として、欧州特許第1,176,195号明細書には、このような細胞株において発現される抗体が、α-1,6結合関連酵素を減少させるか又は除去することによって低フコシル化を示すように、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞株が記載されている。また、欧州特許第1,176,195号明細書には、抗体のFc領域に結合するか又は酵素活性を有さない、フコースのN-アセチルグルコサミンへの付加に対して低い酵素活性を有する細胞株、例えばラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)が記載されている。国際公開第03/035835号には、フコースをAsn(297)連結炭水化物に結合する能力を低下させ、その宿主細胞において発現される抗体の低フコシル化ももたらす変異CHO細胞株であるLec13細胞が記載されている(Shields et al.,(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照)。修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体はまた、国際公開第06/089231号に記載されるように、ニワトリ卵において産生され得る。或いは、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、アオウキクサ属(Lemna)などの植物細胞において産生され得る。植物系における抗体の産生のための方法は、2006年8月11日に出願されたAlston&Bird LLP代理人整理番号040989/314911号に対応する米国特許出願に開示されている。国際公開第99/54342号には、操作された細胞株において発現される抗体が、抗体の増加したADCC活性をもたらすバイセクティングGlcNac構造を示すように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞株が記載されている(Umana et al.,(1999)Nat.Biotech.17:176-180も参照)。或いは、抗体のフコース残基は、フコシダーゼ酵素を用いて切断され得;例えば、フコシダーゼα-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino et al.,(1975)Biochem.14:5516-23)。
【0084】
本開示によって想定される本明細書の抗体の別の修飾は、ペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生体(例えば、血清)半減期を増加させるために、ペグ化され得る。抗体をペグ化するために、抗体、又はそのフラグメントは、典型的に、1つ以上のPEG基が抗体又は抗体フラグメントに結合される条件下で、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応される。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって行われる。本明細書において使用される際、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-又はアリールオキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するのに使用されているPEGの形態のいずれかを包含することが意図される。特定の実施形態において、ペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は、当該技術分野において公知であり、本開示の抗体に適用され得る。例えば、欧州特許第154 316号明細書及び欧州特許第0 401 384号明細書を参照されたい。
【0085】
本開示の抗体は、その異なるクラスを検出及び/又は区別するために、それらの様々な物理的特性によって特徴付けられ得る。
【0086】
例えば、抗体は、軽鎖又は重鎖可変領域のいずれかにおける1つ以上のグリコシル化部位を含み得る。このようなグリコシル化部位は、抗体の増加した免疫原性又は改変された抗原結合による抗体のpKの改変をもたらし得る(Marshall et al.,(1972)Annu Rev Biochem 41:673-702;Gala and Morrison(2004)J Immunol 172:5489-94;Wallick et al.,(1988)J Exp Med 168:1099-109;Spiro(2002)Glycobiology 12:43R-56R;Parekh et al.,(1985)Nature 316:452-7;Mimura et al.,(2000)Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含むモチーフにおいて起こることが知られている。ある場合には、可変領域グリコシル化を含まない抗Siglec15抗体を有することが好ましい。これは、可変領域にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択することによって、又はグリコシル化領域内の残基を変異させることによって、達成され得る。
【0087】
好ましい実施形態において、抗体は、アスパラギン異性部位を含まない。アスパラギンの脱アミド化は、N-G又はD-G配列において起こり得、結合をポリペプチド鎖に導入し、その安定性を低下させる(イソアスパラギン酸効果)イソアスパラギン酸残基の生成をもたらし得る。
【0088】
各抗体は、一般に6~9.5のpH範囲内の特有の等電点(pI)を有する。IgG1抗体のpIは、典型的に、7~9.5のpH範囲内であり、IgG4抗体のpIは、典型的に、6~8のpH範囲内である。正常範囲外のpIを有する抗体が、インビボ条件下でいくらかのアンフォールディング及び不安定性を有し得ると推測されている。したがって、正常範囲内のpI値を有する抗Siglec15抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲内のpIを有する抗体を選択することによって、又は荷電表面残基を変異させることによって達成され得る。
【0089】
別の態様において、本開示は、本開示の抗体の、重鎖及び/又は軽鎖可変領域、或いはCDRをコードする核酸分子を提供する。その核酸は、全細胞で、細胞溶解物で、又は部分的に精製された若しくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、標準的な技術によって、他の細胞成分又は他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸又はタンパク質から精製された場合に、「単離された」又は「実質的に純粋にされた」核酸である。本開示の核酸は、例えばDNA又はRNAであり得て、イントロン配列を含有しても、又はしていなくてもよい。好ましい実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0090】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに記載されるヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体について、ハイブリドーマによって作製される抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得られる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を用いて)得られる抗体について、このような抗体をコードする核酸が、遺伝子ライブラリーから回収され得る。
【0091】
本開示の好ましい核酸分子は、Siglec15モノクローナル抗体のVH及びVL配列、又はCDRをコードする核酸分子を含む。VH及びVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたら、これらのDNAフラグメントは、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子又はscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作され得る。これらの操作において、VL又はVHをコードするDNAフラグメントは、抗体定常領域又はフレキシブルリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNAフラグメントに作動可能に連結される。この文脈において使用される「作動可能に連結される」という用語は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がフレーム内に留まるように、2つのDNAフラグメントが結合されることを意味することが意図される。
【0092】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で公知であり、これらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得られる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG1又はIgG4定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子について、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0093】
VL領域をコードする単離されたDNAは、軽鎖定常領域、CLをコードする別のDNA分子にVLをコードするDNAを作動可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(並びにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で公知であり、これらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得られる。好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、κ又はλ定常領域であり得る。
【0094】
scFv遺伝子を生成するために、VH及びVL配列が、フレキシブルリンカーによって結合されたVL及びVH領域を有する連続一本鎖タンパク質として発現され得るように、VH及びVLをコードするDNAフラグメントは、フレキシブルリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別のフラグメントに作動可能に連結される(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;Huston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879-5883;McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-554を参照されたい)。
【0095】
本開示のモノクローナル抗(mAbs)体は、トランスジェニックマウスのプラットフォーム(例えば、CAMouseHG,B000.60.01T(G15),HG5042,Chongqing CamabBiotech Ltd.)を用いて、完全ヒト抗体を産生するように遺伝子操作されたトランスジェニックマウスを標的抗原、つまりSiglec15、特にヒトSiglec15で免疫化することによって産生され得る。Kohler G,and Milstein C,Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity,Nature,256:495-497(1975)に記載される方法に従って、免疫化トランスジェニックマウスからの脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させた。続いて、融合された「ハイブリッド細胞」をプレートに分配し、融合の7~10日後に、生存しているハイブリドーマコロニーを顕微鏡で観察する。例えば、2週間後、各ウェルからの上清を抗原結合テストにかけることができ、目的の抗体を分泌する陽性ハイブリドーマを限界希釈によってサブクローニングして、細胞系のクローン性を確実にし、次いでモノクローナル抗体を精製した。
【0096】
本開示の抗体は、当技術分野でよく知られている他の方法、例えば、Bリンパ球のウイルス若しくは発癌性形質転換及びファージディスプレイ技術によっても作製することができる。
【0097】
本開示の抗体はまた、例えば、当該技術分野において周知であるような、組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション方法の組合せを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマ中で産生され得る(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。一実施形態において、標準的な分子生物学技術によって得られる部分的又は完全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写及び翻訳調節配列に作動可能に連結されるように、1つ以上の発現ベクターに挿入される。これに関して、「作動可能に連結される」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳調節配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節する意図された機能を果たすように、抗体遺伝子が、ベクターにライゲートされることを意味することが意図される。
【0098】
「調節配列」という用語は、抗体遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990))に記載されている。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列は、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指向するウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルスに由来するプロモーター及び/又はエンハンサー、例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)及びポリオーマを含む。或いは、ユビキチンプロモーター又はβ-グロビンプロモーターなどの非ウイルス調節配列が使用され得る。さらにまた、調節要素は、SV40初期プロモーター及びヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復配列からの配列を含む、SRαプロモーター系などの異なる源に由来する配列から構成される(Takebe et al.,(1988)Mol.Cell.Biol.8:466-472)。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0099】
抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、同じ又は別個の発現ベクターに挿入され得る。好ましい実施形態において、可変領域は、VHセグメントが、ベクター内のCHセグメントに作動可能に連結され、VLセグメントが、ベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常及び軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターに可変領域を挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を生成するために使用される。それに加えて又はその代わりに、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが、抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質に由来するシグナルペプチド)であり得る。
【0100】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子を有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号明細書;同第4,634,665号明細書及び同第5,179,017号明細書を参照されたい)。例えば、典型的に、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞において、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を与える。好ましい選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr-宿主細胞における使用のため)及びneo遺伝子(G418選択のため)を含む。
【0101】
軽鎖及び重鎖の発現のため、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語の様々な形態が、外来性DNAを原核生物又は真核生物宿主細胞に導入するために一般的に使用される多種多様な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。原核生物又は真核生物宿主細胞のいずれにおいても本開示の抗体を発現させることが理論上可能であるが、真核細胞、特に哺乳動物細胞が、原核細胞より、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立て、分泌する可能性が高いため、このような真核細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。
【0102】
本開示の組換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)J.Mol.Biol.159:601-621に記載されているような、DHFR選択可能マーカーとともに使用される、Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載されている、dhfr-CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞を含む。特に、NSO骨髄腫細胞との使用について、別の好ましい発現系は、国際公開第87/04462号、国際公開第89/01036号及び欧州特許第338,841号明細書に開示されるGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが、哺乳動物宿主細胞に導入されるとき、抗体は、宿主細胞における抗体の発現又は、より好ましくは、宿主細胞が増殖される培養培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたって、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて、培養培地から回収され得る。
【0103】
本開示の抗体は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)などの免疫抱合体を形成するために、治療剤にコンジュゲートされ得る。好適な治療剤としては、細胞毒素、アルキル化剤、DNA副溝結合剤、DNA挿入剤、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼI又はII阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質、及び抗有糸分裂剤が挙げられる。ADCにおいて、抗体及び治療剤は、好ましくは、ペプチジル、ジスルフィド、又はヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーを介してコンジュゲートされる。より好ましくは、リンカーは、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、Ser、又はGluなどのペプチジルリンカーである。ADCは、米国特許第7,087,600号明細書;同第6,989,452号明細書;及び同第7,129,261号明細書;国際公開第02/096910号;国際公開第07/038,658号;国際公開第07/051,081号;国際公開第07/059,404号;国際公開第08/083,312号;及び国際公開第08/103,693号;米国特許出願公開第2006/0024317号明細書;同第2006/0004081号明細書;及び同第2006/0247295号明細書(これらの開示内容は、参照により本明細書に援用される)に記載されているように調製され得る。
【0104】
別の態様において、本開示は、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を生成するために、少なくとも1つの他の機能分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体又はリガンド)に連結された本開示の1つ以上の抗体を含む二重特異性分子を特徴とする。したがって、本明細書において使用される際、「二重特異性分子」は、3つ以上の特異性を有する分子を含む。
【0105】
二重特異性分子は、多くの異なるフォーマット及びサイズであり得る。サイズスペクトルの一方の側では、二重特異性分子は、同一の特異性の2つの結合アームを有する代わりに、それぞれ異なる特異性を有する2つの結合アームを有することを除いて、従来の抗体フォーマットを保持している。他方の側では、ペプチド鎖によって連結される2つの一本鎖抗体フラグメント(scFv's)、いわゆるBs(scFv)2構築物からなる二重特異性分子である。中間サイズの二重特異性分子は、ペプチジルリンカーによって連結される2つの異なるF(ab)フラグメントを含む。これらの及び他のフォーマットの二重特異性分子は、遺伝子組換え、体細胞ハイブリダイゼーション、又は化学的方法によって調製され得る。例えば、Kufer et al.(上記に引用される);Cao and Suresh,Bioconjugate Chemistry,9(6),635-644(1998);及びvan Spriel et al.,Immunology Today,21(8),391-397(2000)、並びにそれらの中に引用される参照文献を参照されたい。
【0106】
優先的に癌細胞を感染させ及び死滅させる、腫瘍溶解性ウイルスも、本明細書において提供される。本開示の抗体は、腫瘍溶解性ウイルスとともに使用され得る。或いは、本開示の抗体をコードする腫瘍溶解性ウイルスは、ヒトの身体に導入され得る。
【0107】
抗Siglec15 scFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)も、本明細書において提供され、この抗Siglec15 scFvは、本明細書に記載されるCDR及び重鎖/軽鎖可変領域を含む。
【0108】
抗Siglec15 CARは、(a)抗Siglec15 scFvを含む細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;及び(c)細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0109】
CARは、新生受容体を小胞体に指向する、細胞外抗原結合ドメインのN末端におけるシグナルペプチド、及び受容体を結合のためにより多く利用できるようにする、細胞外抗原結合ドメインのN末端におけるヒンジペプチドを含有し得る。CARは、好ましくは、細胞内シグナル伝達ドメインにおいて、主要な細胞内シグナル伝達ドメイン及び1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。主に使用される、最も有効な主要な細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAMを含むCD3-ζ細胞質ドメインであり、そのリン酸化が、T細胞活性化をもたらす。共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、CD137及びOX40などの共刺激タンパク質に由来し得る。
【0110】
CARは、T細胞増殖、持続性、及び抗腫瘍活性を促進する因子、例えば、サイトカイン、及び共刺激リガンドをさらに追加し得る。
【0111】
本明細書において提供されるCARを含む操作された免疫エフェクター細胞も提供される。ある実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、又は胚性幹細胞である。ある実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞である。
【0112】
別の態様において、本開示は、薬学的に許容される担体とともに製剤化される、本開示の1つ以上の抗体又はその抗原結合部分、二重特異性体、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体、核酸分子、発現ベクター又は宿主細胞を含み得る医薬組成物を提供する。抗体又はその抗原結合部分、二重特異性体、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体、核酸分子、発現ベクター又は宿主細胞は、組成物が、2つ以上の抗体(又はその抗原結合部分、二重特異性体、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体、核酸分子、発現ベクター又は宿主細胞)を含むとき、別々に投与され得る。組成物は、1つ以上のさらなる薬学的に有効な成分、例えば、別の抗体又は薬剤、例えば、抗腫瘍薬を任意に含有し得る。
【0113】
医薬組成物は、あらゆる賦形剤を含み得る。使用され得る賦形剤は、担体、表面活性剤、増粘剤又は乳化剤、固体結合剤、分散若しくは懸濁補助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング、崩壊剤、滑沢剤、甘味料、防腐剤、等張剤、及びそれらの組合せを含む。好適な賦形剤の選択及び使用が、Gennaro,ed.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.(Lippincott Williams&Wilkins 2003)(その開示内容は、参照により本明細書に援用される)に教示されている。
【0114】
好ましくは、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に好適である。投与経路に応じて、有効成分は、酸の作用及びそれを不活性にし得る他の天然条件からそれを保護するための材料でコーティングされ得る。本明細書において使用される際の「非経口投与」という語句は、経腸及び局所投与以外の、通常注射による投与方法を意味し、限定はされないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外並びに胸骨内注射及び注入を含む。或いは、本開示の抗体は、経口(non-parenteral)経路によって、例えば、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下又は局所的に投与され得る。
【0115】
医薬組成物は、滅菌水溶液又は分散体の形態であり得る。それらはまた、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は他の高い薬物濃度に好適な規則的な構造で製剤化され得る。
【0116】
単一剤形を製造するために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、治療される対象及び特定の投与方法に応じて変化し、一般に、治療効果を生じる組成物の量である。一般に、100%のうち、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、約0.01%~約99%の有効成分、好ましくは、約0.1%~約70%、最も好ましくは、約1%~約30%の有効成分の範囲である。
【0117】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するために調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、経時的に数回の分割投与で投与されてもよく、又は用量は、治療状況の緊急性により示されるとき比例的に減少若しくは増加され得る。投与の容易性及び投与量の均一性のため、非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書において使用される際の投与単位形態は、治療される対象に対する単位投与量として適した物理的に分離した単位を指し;各単位は、必要な医薬担体とともに、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の有効成分を含有する。或いは、抗体は、あまり頻繁でない投与が必要とされる場合、徐放性製剤として投与され得る。
【0118】
組成物の投与のため、投与量は、約0.0001~100mg/kgの範囲であり得る。
【0119】
本開示の抗Siglec15抗体、若しくはその抗原結合部分、又は二重特異性分子(bispecifics)、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体の「治療上有効な投薬量」によって、好ましくは、疾患症状の重症度が低下し、及び疾患症状がない期間の頻度及び長さが増加し、又は疾患罹患による身体障害若しくは能力障害が予防される。例えば、腫瘍を有する対象の治療について、「治療有効投与量」は、好ましくは、非治療対象と比べて、少なくとも約20%、より好ましくは、少なくとも約40%、さらにより好ましくは、少なくとも約60%、さらにより好ましくは、少なくとも約80%だけ腫瘍増殖を阻害する。治療有効量の治療用抗体は、腫瘍サイズを減少させるか、又は典型的にヒトであるか又は別の哺乳動物であり得る対象において症状を改善することができる。
【0120】
医薬組成物は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤であり得る。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸が使用され得る。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0121】
治療用組成物は、医療デバイス、例えば、(1)無針皮下注射デバイス(例えば、米国特許第5,399,163号明細書;同第5,383,851号明細書;同第5,312,335号明細書;同第5,064,413号明細書;同第4,941,880号明細書;同第4,790,824号明細書;及び同第4,596,556号明細書);(2)微小注入ポンプ(米国特許第4,487,603号明細書);(3)経皮デバイス(米国特許第4,486,194号明細書);(4)注入装置(米国特許第4,447,233号明細書及び同第4,447,224号明細書);並びに(5)浸透デバイス(米国特許第4,439,196号明細書及び同第4,475,196号明細書)(これらの開示内容は、参照により本明細書に援用される)によって投与され得る。
【0122】
特定の実施形態において、本開示のモノクローナル抗体は、インビボで適切な分布を確実にするため製剤化され得る。例えば、本開示の治療用抗体が、血液脳関門を通過することを確実にするために、それらは、リポソーム中で製剤化され得、これらは、特定の細胞又は器官への選択的輸送を促進するための標的分子をさらに含み得る。例えば米国特許第4,522,811号明細書;同第5,374,548号明細書;同第5,416,016号明細書;及び同第5,399,331号明細書;V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685;Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038;Bloeman et al.,(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owais et al.,(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180;Briscoe et al.,(1995)Am.J.Physiol.1233:134;Schreier et al.,(1994)J.Biol.Chem.269:9090;Keinanen and Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;及びKillion and Fidler(1994)Immunomethods 4:273を参照されたい。
【0123】
本開示の組成物は、例えば癌及び骨粗鬆症の治療を含む、インビトロ及びインビボでの多くの有用性を有する。ヒト対象に抗体を投与して、例えば、インビボにて腫瘍成長を阻害し、又は骨量減少を阻害することができる。
【0124】
Siglec15媒介T細胞抑制を復帰し、且つ癌細胞の増殖及び生存を阻害する、本開示の抗Siglec15抗体又は抗原結合部分の能力を仮定すると、本開示は、対象において腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、腫瘍成長が対象において阻害されるように、本開示の組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。本開示の組成物によって治療することができる腫瘍の非制限的な例としては、限定されないが、非小細胞肺癌、卵巣癌、黒色腫、結腸直腸癌、乳癌(トリプルネガティブ乳癌など)、頭頸部扁平上皮癌、子宮内膜癌、及び扁平上皮癌が挙げられる。さらに、本開示の抗体を用いてその成長が阻害され得る、不応性又は再発性悪性疾患が挙げられる。
【0125】
別の態様において、本開示は、骨量減少を阻害するか、又は骨量を増加する方法であって、本開示の抗体、又はその抗原結合部分を有効量で対象に投与することを含む方法を提供する。
【0126】
別の態様において、本開示は、本開示の抗Siglec15抗体、若しくはその抗原結合部分、又は二重特異性分子、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体が、対象において腫瘍成長の阻害に有効である、1種又は複数種の更なる抗体と同時投与される、併用治療方法を提供する。一実施形態において、本開示は、抗Siglec15抗体(又はその抗原結合部分、又はCAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体)と、1種又は複数種の更なる抗体、例えば抗VISTA抗体、抗LAG-3抗体、抗PD-L1抗体、及び抗PD-1抗体及び/又は抗CTLA-4抗体と、を対象に投与することを含む、腫瘍成長を対象において阻害する方法を提供する。特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0127】
Siglec15シグナル伝達活性化はまた、標準的な癌治療とさらに組み合わされ得る。例えば、Siglec15シグナル伝達阻害は、CTLA-4及び/又はLAG-3及び/又はPD-1遮断及びさらに化学療法レジメンと組み合わされ得る。例えば、細胞毒性剤であり得る化学療法剤が、抗Siglec15抗体とともに投与され得る。例えば、エピルビシン、オキサリプラチン、及び5-FUが、抗Siglec15療法を受けている患者に投与される。
【0128】
任意に、抗Siglec15及び1つ以上のさらなる抗体(例えば、抗CTLA-4及び/又は抗LAG-3及び/又は抗PD-1抗体)の組合せは、免疫原、例えば、癌性細胞、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド、及び炭水化物分子を含む)、並びに免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞とさらに組み合わされ得る(He et al.,(2004)J.Immunol.173:4919-28)。使用され得る腫瘍ワクチンの非限定的な例としては、黒色腫抗原のペプチド、例えば、gp100のペプチド、MAGE抗原、Trp-2、MART1及び/又はチロシナーゼ、又はサイトカインGM-CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞が挙げられる。
【0129】
抗Siglec15療法と組み合わされ得る他の療法としては、限定はされないが、インターロイキン-2(IL-2)投与、放射線、外科手術、又はホルモン遮断が挙げられる。
【0130】
別の態様において、本開示は、本開示の抗Siglec15抗体、若しくはその抗原結合部分、又は二重特異性分子、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体が、骨量減少の阻害に有効である、1種又は複数種の更なる作用剤(agent)と同時投与される、併用治療の方法を提供する。一実施形態において、本開示は、抗Siglec15抗体(若しくはその抗原結合部分、又はCAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体)と、骨粗鬆症治療用の1種又は複数種の更なる抗体、例えば抗抗RANKL抗体、及び抗IL-11抗体と、を対象に投与することを含む、骨量減少を対象において阻害する方法を提供する。特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0131】
本明細書において説明される治療剤の組合せは、薬学的に許容される担体中の単一の組成物と同時に、又は薬学的に許容される担体中の各薬剤を含む別個の組成物として同時に投与され得る。別の実施形態において、治療剤の組合せは、連続して投与され得る。
【0132】
さらに、組合せ治療の2つ以上の用量が、連続して投与される場合、連続投与の順序は、投与の各時点で逆になり得るか又は同じ順序に保持され得、連続投与は、同時投与と組み合わされ得、又はそれらの任意の組合せである。
【0133】
本開示は、以下の実施例によってさらに例示され、これは、さらなる限定として解釈されるべきではない。本出願を通して引用される全ての図及び全ての参照文献、Genbank配列、特許及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。
【実施例0134】
実施例1 ハイブリドーマ技術を用いたヒト抗Siglec15モノクローナル抗体の産生
免疫化
トランスジェニックマウスプラットフォームCAMouseHG(HG5042,Chongqing CAMAB Biotech Ltd.)を使用して、完全ヒト抗体を生成した。E Harlow,D.Lane,Antibody:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998に記載されている方法に従って、トランスジェニックマウスを免疫化した。C末端にヒトIgG1 Fcを有する自家製の組換えヒトSiglec15タンパク質(配列番号19に記載のアミノ酸配列)を免疫原として使用し、自家製カニクイザルSiglec15-hisタンパク質(配列番号21に記載のアミノ酸配列)を、抗血清力価を決定するため、及び抗原特異的抗体を分泌するハイブリドーマをスクリーニングするために使用した。免疫化投与量は、一次及び追加免疫の両方のために50μgのヒトSiglec15-Fcタンパク質/マウス/注射を含んでいた。免疫応答を増加させるために、完全フロイントアジュバント及び不完全フロイントアジュバント(Sigma,St.Louis,Mo.,USA)を、一次及び追加免疫のためにそれぞれ使用した。簡潔には、まず、ボルテックスを用いてバイアル中でアジュバントを穏やかに混合することによって、アジュバント-抗原混合物を調製した。所望の量のアジュバントを、加圧滅菌された1.5mLの微小遠心分離管に移した。抗原を、0.5~0.67mg/mlの範囲の濃度を有するPBS又は生理食塩水中で調製した。次に、計算された量の抗原を、アジュバントとともに微小遠心分離管に加え、得られた混合物を、2分間にわたって穏やかにボルテックスすることによって混合して、油中水型エマルジョンを生成した。次に、アジュバント-抗原エマルジョンを、動物に注射するための適切なシリンジに吸い込ませた。合計で50μgの抗原を、150~200μlの体積で注射した。各動物を免疫化し、次に、抗血清力価に応じて3~4回追加接種した。良好な力価を有する動物に、融合前に腹腔内注射によって最終追加接種を与えた。
【0135】
ハイブリドーマ融合及びスクリーニング
マウス骨髄腫細胞株(SP2/0-Ag14、ATCC#CRL-1581)の細胞を培養して、融合直前に対数期段階に到達させた。免疫化マウスに由来する脾臓細胞を、Kohler G,and Milstein C,"Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity",Nature,256:495-497(1975)に記載される方法にしたがって、滅菌的に調製し、骨髄腫細胞と融合させた。続いて、融合された「ハイブリッド細胞」を、DMEM/20%のFCS/HAT培地中の96ウェルプレート中に分配した。生存しているハイブリドーマコロニーが、融合の7~10日後に顕微鏡で観察された。2週間後、組換えカニクイザルSiglec15-hisタンパク質を使用して、各ウェルからの上清を間接ELISAにかけた。次いで、カニクイザルSiglec15-hisタンパク質に結合した陽性ハイブリドーマスクリーニング抗体を選択し、24ウェルプレートに移した。これらのハイブリドーマコロニーを、ヒトSiglec15-LRRC4C結合のその活性についてさらに試験した。高特異性カニクイザルSiglec15結合及びSiglec15-LRRC4Cブロッキング活性を示した抗体を産生するハイブリドーマクローンを、細胞株のクローン性を確実にするために限界希釈によってサブクローニングし、次に、モノクローナル抗体を精製した。簡潔には、5~10カラム体積でPBS緩衝液を用いて、タンパク質Aセファロースカラム(Bestchrom(Shanghai)Biosciences、カタログ番号AA0273)を洗浄した。ハイブリドーマモノクローンの細胞上清をカラムに通し、次いで、タンパク質の吸光度がベースラインに達するまで、PBS緩衝液を使用してカラムを洗浄した。カラムを、溶出緩衝液(0.1M グリシン-HCl、pH2.7)で溶離し、直ちに中和緩衝液(1M トリスHCl、pH9.0)を含む1.5mlチューブに収集した。免疫グロブリンを含有する画分をプールし、4℃にてPBS中で一晩透析した。続いて、精製されたモノクローナル抗体のインビトロ機能活性を、以下のように特性決定した。
【0136】
実施例2 BIACORE表面プラズモン共鳴を用いた、抗Siglec15モノクローナル抗体の結合親和性の決定
実施例1で作製された、精製抗Siglec15モノクローナル抗体(mAbs)を、Biacore T200システム(GE healthcare,Pittsburgh,PA,USA)によって、結合親和性及び結合速度について特性決定した。
【0137】
簡潔には、ヤギ抗マウスIgG(GE healthcare、カタログ番号BR100839、ヒト抗体捕捉キット)を、Biacore(GE healthcare,Pittsburgh,PA,USA)によって提供される標準的なアミンカップリングキットを用いて、第一級アミンを介して、CM5チップ(カルボキシメチルデキストラン被覆チップ、GE healthcare、カタログ番号BR-1005-30)に共有結合した。バイオセンサー表面上の未反応部分を、エタノールアミンでブロックした。次いで、濃度13.3nMの本開示の精製抗Siglec15抗体及び13.3nMの抗Siglec15ベンチマーク(BMとも呼ばれるch5G12、米国特許出願公開第2019/0202912号明細書参照、配列番号24及び25のそれぞれに記載の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列)をそれぞれ、流量10μL/分にてチップ上に流した。次いで、段階希釈された組換えヒトSiglec15-hisタンパク質(自家製、配列番号20に記載のアミノ酸配列)又はカニクイザルSiglec15-hisタンパク質(自家製、配列番号21に記載のアミノ酸配列)、80nMで開始するHBS-EP+緩衝液中の2倍段階稀釈溶液をそれぞれ、流量30μL/分でチップ上に流した。抗原-抗体結合キネティクスを2分間にわたって追跡し、解離キネティクスを10分間追跡した。結合及び解離曲線を、Biacore評価ソフトウェアを用いて、1:1 Langmuir結合モデルに適合させた。KD、Ka及びKd値を決定し、以下の表2にまとめた。
【0138】
【0139】
本開示のすべての抗Siglec15抗体が、ベンチマークと比較して、同等又は高い結合親和性で、ヒトSiglec15及びカニクイザルSiglec15に特異的に結合した。抗体A2A1D2F1、A2A5C7E8、A1E10G7H9及びA1D1B7H9は最も高い結合親和性を示した。
【0140】
実施例3 抗Siglec15抗体のSiglec15結合活性
捕捉ELISA、フローサイトメトリー(FACS)及び間接ELISAによって、Siglec15に対する結合活性について、本開示の抗体をさらに試験した。
【0141】
3.1 捕捉ELISA
簡潔には、96ウェルプレートを、37℃にて2時間、PBS中の2μg/mlのAffiniPureヤギ抗ヒトIgG F(ab')2フラグメント特異的(Jackson Immuno Research, Cat#109-005-097)100μlで被覆した。洗浄緩衝液(PBS+0.05%(v/v)Tween(登録商標)-20、PBST)でプレートを1回洗浄し、次に、ブロッキングバッファー(PBST中の5%(w/v)脱脂乳)200μlで4℃にて一晩ブロックした。プレートを4回洗浄した。本開示の100μl段階希釈抗Siglec15抗体、ベンチマーク及びhIgG(静脈内注射用のヒト免疫グロブリン(pH4)、Hualan Biological Engineering Inc.)、66.7nMで開始するPBST中の2.5%(w/v)無脂肪乳中の5倍希釈液と共に、37℃で40分間インキュベートし、次に再び4回洗浄した。捕捉抗体を含有するプレートを、100μlのビオチン標識ヒトSiglec15-hisタンパク質(配列番号20を有する自家製、PBST中の2.5%(w/v)無脂肪乳中で145ng/ml)と共に37℃で40分間インキュベートし、4回洗浄し、ストレプトアビジンコンジュゲートHRP(PBST中で1:10000希釈、Jackson Immuno Research、カタログ番号016-030-084、100μl/ウェル)と共に、37℃で40分間インキュベートした。最後の洗浄後、プレートを、ELISA基質TMB(Innoreagents、カタログ番号TMB-S-002)100μl/ウェルと共にインキュベートした。1M H2SO450μl/ウェルを用いて、室温にて4分で反応を停止し、TMBについて450nm及び基準波長として630nmの二波長モードを用いて、各ウェルの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取り、次いでOD(450~630)値を抗体濃度に対してプロットした。Graphpad Prismソフトウェアを用いてデータを分析し、EC50値を報告した。
【0142】
3.2 細胞ベースの結合FACS
自家製の、ヒトSiglec15(uniprot#Q6ZMC9のアミノ酸残基Met1-Pro328)を発現するヒト-siglec15-2D3-1E1細胞を用いて、フローサイトメトリー(FACS)によって、細胞膜上で細胞表面Siglec15への抗Siglec15抗体の結合活性を試験した。リポフェクタミン(lipofectamine)3000トランスフェクション試薬(Thermo Fisher)の説明書に従って、EcoRI部位とXbaI部位の間にヒトSiglec15コード配列が挿入されたpCMV-T-Pプラスミドを、HEK-293細胞(ATCC#CRL-1573)にトランスフェクトすることによって、ヒト-siglec15-2D3-1E1細胞を作製した。ヒト-siglec15-2D3-1E1細胞を細胞培養フラスコから収集し、2回洗浄し、2%(v/v)ウシ胎仔血清(FACS緩衝液)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁した。96ウェルプレート中の細胞2×105個/ウェルを、氷上で40分間にわたって、FACS緩衝液中の100μL段階希釈抗Siglec15抗体又は対照(66.67nMで開始して、5倍段階稀釈)中でインキュベートした。FACS緩衝液で細胞を2回洗浄し、R-フィコエリトリンAffiniPureヤギ抗ヒトIgG、Fcγフラグメント特異的100μL(FACS緩衝液中で1:1000希釈、Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-115-098)を添加した。暗所にて4℃で40分間インキュベーションした後、細胞を3回洗浄し、FACS緩衝液中で再懸濁した。Becton Dickinson FACS Canto II-HTS機器を用いて、蛍光を測定した。Graphpad Prismソフトウェアを用いてデータを分析し、EC50値を報告した。
【0143】
3.3 間接ELISA
カニクイザル又はマウスSiglec15タンパク質への抗Siglec15抗体の交差反応を測定した。簡潔には、96ウェルマイクロプレートを、37℃で2時間にわたって、100μlの、炭酸/重炭酸緩衝液(pH9.6)中のカニクイザルSiglec15-hisタンパク質(配列番号21を有する自家製の)2μg/ml、又はマウスSiglec15-hisタンパク質(配列番号22を有する自家製の)2μg/mlで被覆した。ELISAプレートを洗浄緩衝液(PBS+0.05%のTween-20、PBST)で1回洗浄し、次いで4℃で一晩、ブロッキングバッファー(PBST中5%(w/v)無脂肪乳)200μl/ウェルでブロックした。プレートを4回洗浄し、37℃で40分間にわたって、本開示の段階希釈抗Siglec15抗体又は対照(66.7nMで開始し、2.5%(w/v)無脂肪乳でPBST中5倍希釈)100μlと共にインキュベートした。ELISAプレートを再び、4回洗浄し、37℃で40分間にわたって、ペルオキシダーゼAffiniPureヤギ抗ヒトIgG、F(ab')2フラグメント特異的(PBST緩衝液中1:5000希釈、Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-035-097、100μl/ウェル)と共にインキュベートした。最後の洗浄後、プレートをTMB(Innoreagents、カタログ番号TMB-S-002)100μl/ウェルと共にインキュベートした。1M H2SO450μlを使用して室温で4分後に反応を停止し、TMBについて450nm及び基準波長として630nmの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで各ウェルの吸光度を読み取り、OD(450~630)値を抗体濃度に対してプロットした。Graphpad Prismソフトウェアを用いてデータを分析し、EC50値を報告した。
【0144】
3つのアッセイの結果を
図1A~1Cから4A~4Cに示した。
【0145】
図1A~1Cから、A1C8C6H1を除いて、本開示のすべての抗体が、ベンチマークよりも低いEC
50及び高いBmax(最大結合)で、ヒトSiglec15に特異的に結合したことが分かる。
【0146】
図2A~2Cに示されるように、抗Siglec15抗体A1D1B7H9、A1D11A7H10、A1E10G7H9、A2A1D2F1、A2G4C8G7及びA2H5F1A1は、ベンチマークと比較して高いBmaxで(低いEC
50で)、より効率的に細胞表面ヒトSiglec15に結合した。
【0147】
図3A~3Cから、本開示の抗体の大部分が、ベンチマークと比較して、同様な結合活性でカニクイザルSiglec15タンパク質に結合したことが示された。本開示のごく数種の抗体が、
図4A~4Cに示すように、マウスSiglec15に対する同様な、又はより良い結合活性を示した。例えば、抗体A1E10G7H9及びA2A1D2F1は、ベンチマークよりも高いBmaxを示した。
【0148】
実施例4 Siglec15-LRRC4C又はSiglec15-ベンチマーク結合に対する抗Siglec15抗体のブロッキング活性
4.1 リガンドブロッキングELISA
Siglec15-LRRC4C結合をブロックする、本開示の抗Siglec15抗体の活性を競合ELISAアッセイで測定した。LRRC4Cは、Siglec15のリガンドであり、癌細胞によって発現され得る(国際公開第2018/057753号)。簡潔には、ヒトSiglec15-Fcタンパク質(配列番号19のアミノ酸配列を有する自家製)100μlを96ウェルマイクロプレート上に、37℃で2時間にわたって、炭酸/重炭酸緩衝液中で2μg/mLにて被覆した。プレートを洗浄緩衝液(PBS+0.05%のTween-20、PBST)で1回洗浄し、4℃で一晩、PBST中の5%(w/v)無脂肪乳)でブロックした。次いで、洗浄緩衝液を用いて、プレートを4回洗浄した。
【0149】
2.5%(w/v)無脂肪乳を含むPBST中の段階希釈抗Siglec15抗体又は対照(5倍連続稀釈で66.67nMで開始)を、Siglec15-Fc結合プレートに100μl/ウェルで添加し、ヒトSiglec15-Fcタンパク質と共に37℃で40分間インキュベートした。洗浄緩衝液を用いて、プレートを再び4回洗浄し、次いでビオチン標識ヒトLRRC4C-Fcタンパク質(配列番号23を有する自家製)290ng/mlを添加し、それと共に、100μl/ウェルにて37℃で40分間インキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液を用いて再度洗浄した。その後、プレートに、100μl/ウェルのストレプトアビジンコンジュゲートHRP(PBST緩衝液中1:5000希釈、Jackson Immunoresearch、Cat#016-030-084)を加え、37℃で40分間にわたってインキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液を用いて再度洗浄した。最後に、TMBを加え、反応を、1MのH2SO4を用いて停止させ、各ウェルの吸光度を、TMBについて450nm及び基準波長として630nmの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで読み取り、次に、OD(450~630)値を、抗体濃度に対してプロットした。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、IC50値を報告した。
【0150】
4.2 ベンチマークブロッキングELISA
ベンチマーク-ヒトSiglec15結合をブロックする、本開示の抗Siglec15抗体の能力を競合ELISAアッセイにおいて測定した。簡潔には、PBS中2μg/mLにて96ウェルマイクロプレート上にベンチマークを100μ/ウェルで被覆し、37℃で2時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄緩衝液で1回洗浄し、4℃で一晩、PBST中の5%(w/v)無脂肪乳でブロックした。翌日、本開示の抗Siglec15抗体又は対照を4倍連続稀釈にて80nMで開始して、ビオチン標識ヒトSiglec15-Fcタンパク質(配列番号19を有する自家製タンパク質、2.5%の無脂肪乳を含むPBST中に37ng/ml)で希釈し、室温で40分間インキュベートした。プレートを4回洗浄した後、抗体/Siglec15-Fc混合物を100μl/ウェルにてベンチマーク被覆プレートに添加した。37℃で40分間インキュベートした後、プレートを再び、洗浄緩衝液を用いて4回洗浄した。次に、プレートに、ストレプトアビジンコンジュゲートHRP100μl/ウェルを加え、37℃で40分間インキュベートした。洗浄緩衝液を用いて、プレートを再度洗浄した。最後に、TMBを加え、1M H2SO4を用いて反応を停止させ、TMBについて450nm及び基準波長として630nmの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで各ウェルの吸光度を読み取り、次に、OD(450~630)値を抗体濃度に対してプロットした。Graphpad Prismソフトウェアを用いてデータを分析し、IC50値を報告した。
【0151】
4.3 細胞ベースのリガンドブロッキングFACS
細胞表面LRRC4CへのSiglec15タンパク質の結合をブロックする、抗Siglec15抗体の活性を、自家製LRRC4C-3F12-1B9細胞を用いて、フローサイトメトリー(FACS)によって評価した。簡潔には、リポフェクタミン3000トランスフェクション試薬(Thermo Fisher)の説明書に従って、EcoRI部位とXbaI部位の間に挿入されたヒトLRRC4C(uniprot#Q9HCJ2のアミノ酸残基Met1-lle640)をコードするヌクレオチド配列を、pCMV-T-Pプラスミド構築物でHEK-293細胞(ATCC#CRL-1573)にトランスフェクトした。その後の細胞ベースリガンドブロッキンアッセイのために、LRRC4C-3F12-1B9と名付けられた安定細胞を選択した。
【0152】
簡潔には、本開示の抗Siglec15抗体又は対照を、66.67nMで開始して5倍段階希釈で、ヒトSiglec15-マウスFcタンパク質(配列番号26を有する自家製、FACS緩衝液中で8μg/ml)で希釈し、室温で40分間インキュベートした。次いで、LRRC4C-3F12-1B9細胞を細胞培養フラスコから収集し、2回洗浄し、2%(v/v)ウシ胎児血清(FACS緩衝液)含有するPBS中に再懸濁した。次いで、96ウェルプレートにおける1×105細胞/ウェルを抗体/Siglec15-マウスFc混合物100μL中で4℃にて40分間インキュベートした。プレートをFACS緩衝液で2回洗浄し、次いでR-フィコエリトリンAffiniPure F(ab')2フラグメントヤギ抗マウスIgG(H+L)100μL/ウェル(FACS緩衝液中で1:1000希釈、Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-116-146)を添加し、暗所にて4℃で40分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。Becton Dickinson FACS Canto II-HTS機器を用いて、蛍光を測定した。Graphpad Prismソフトウェアを用いてデータを分析し、IC50値を報告した。
【0153】
3つのアッセイの結果は
図5A~5Cから7A~7Cであった。
【0154】
本開示のすべての抗Siglec15抗体が、ヒトSiglec15-ヒトLRRC4C結合をブロッキングすることができ、且つそのブロッキング活性は、ベンチマークと同様な、又はベンチマークより低いことが、
図5A~5Cから分かる。
【0155】
図6A~6Cから、抗体A1E7G5D1、A2A5C7E8、A2G4C8G7及びA2H5F1A1が、ヒトSiglec15-ベンチマーク結合をブロックすることができることが示され、ベンチマークが結合した同じ又は類似のエピトープにそれらが結合したことが示唆される。抗体A1C8C6H1、A1D1B7H9、A1D5E2H1、A1D11A7H10、A1E10G7H9、A2A1D2F1及びA2A6B1C2は、ベンチマークへのヒトSiglec15結合をブロックすることができず、A1C8C6H1、A1D1B7H9、A1D5E2H1、A1D11A7H10、A1E10G7H9、A2A1D2F1及びA2A6B1C2は、ベンチマークと比べて異なるエピトープに結合し得ることが示唆される。
【0156】
さらに、
図7A~7Cに示されるように、本開示のすべての抗Siglec15抗体は、ベンチマークと同様な、又は低いブロッキング活性で、マウスFcを有する細胞表面ヒトLRRC4CへのヒトSiglec15の結合をブロッキングすることができた。
【0157】
実施例5 抗Siglec15抗体の熱安定性
抗Siglec15抗体をその熱安定性についても試験した。簡潔には、タンパク質の熱シフトアッセイを用いて、GloMelt(商標)Thermal Shift Protein Stabilityキット(Biotium、カタログ番号33022-T)を用いてTm(融解温度)を決定した。次いで、GloMelt(商標)色素を解凍し、室温に到達させた。色素を含むバイアルをボルテックスし、遠心分離した。次に、200倍色素5μLをPBS95μLに添加することによって、10倍色素を調製した。10倍色素2μL及び抗体10μgを添加し、20μLの総反応体積になるまでPBSを添加した。色素及び抗体を含むチューブを、短時間にわたって回転させ、表3のパラメータを有する融解曲線プログラムを用いて設定されたリアルタイムPCRサーモサイクラー(Roche、LightCycler 480II)に入れた。
【0158】
【0159】
【0160】
本開示の抗体の融解温度を表4に示し、本開示の抗体はおそらく、ヒトの身体において安定であると示唆された。
【0161】
実施例6 Siglec15媒介T細胞抑制を復帰させた抗Siglec15抗体
DPBS中で抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)50ng/mL(eBioscience Inc.、カタログ番号16-0037-85)を96ウェルマイクロプレート上に100μl/ウェルにて4℃で一晩被覆した。翌日に、未結合の抗CD3モノクローナル抗体を、PBMC添加直前に吸引した。
【0162】
10%FBS(Gibco、カタログ番号10099-141)が補充されたRPMI-1640培地(Gibco、カタログ番号A10491-01)で健康なヒトドナーからの総PBMCを洗浄し、200gにて15分間遠心分離し、上清を除去した。次いで、PBMC細胞を0.5μM CFSE(Invitrogen、カタログ番号C1157)にて氷上で20分間標識化し、最終細胞密度は1×106細胞/mLであった。10%FBSで補充されたRPMI-1640の4倍体積を細胞に添加し、室温にて5分間インキュベートした。プレートを300gで10分間遠心し、10%FBSで補充されたRPMI-1640培地に密度6×106細胞/mLにて細胞を再懸濁した。一方、本開示の段階希釈抗Siglec15抗体又は対照(10%FBSで補充されたRPMI-1640培地中で4倍希釈、120μg/mlで開始)をヒトSiglec15-Fcタンパク質(配列番号19の自家製、10%FBSで補充されたRPMI-1640培地中で40μg/ml)と体積比1:1で混合し、室温で30分間インキュベートした。次いで、PMBC細胞を含有する培地50μLと抗体/Siglec15-Fc 50μlの混合物を抗CD3結合プレートに添加し、CO2インキュベータ内で37℃にて3日間インキュベートした。次いで、FACS緩衝液100μLを各ウェルに添加し、細胞を数回ピペットで取り、U字形プレートに移した。U字形プレートを遠心し、上清を除去した。次いで、HFCR50μl/ウェル(FACS緩衝液中で1:10希釈、Biolegend Inc、カタログ番号422302)と共に、暗所で細胞を4℃で15分間インキュベートした。細胞を抗CD4(Biolegend Inc.、カタログ番号357410)及び抗CD8(Biolegend Inc.、カタログ番号301066)蛍光mAbs(FACS緩衝液中で1:10希釈)で4℃にて30分間染色した。細胞をFACS緩衝液(200μL/ウェル)中で2回洗浄し、FACS緩衝液(200μL/ウェル)に再懸濁した。Becton Dickinson FACS Canto II-HTS機器を用いて、蛍光を測定した。Graphpad Prismソフトウェアを用いてデータを分析し、EC50値を報告した。
【0163】
【0164】
抗体A2A5C7E8及びA1E10G7H9は、ベンチマークと比較して高いEC50で、Siglec15媒介CD8+T細胞及びCD4+T細胞抑制を復帰させることができたことが分かる。注目すべきことには、高い用量の抗体A2A5C7E8は、T細胞抑制の復帰においてベンチマークよりも効果的であり、その結果、CD4+及びCD8+T細胞増殖パーセンテージが高くなった。
【0165】
実施例7 抗Siglec15抗体のシークエンシング
2つの抗体A2A5C7E8及びA1E10G7H9をシークエンシングし、完全重鎖及び軽鎖可変領域配列及び定常領域配列を得た。重鎖及び軽鎖可変領域の配列番号を表1に示し、データベースにおける配列アライメントによって、重鎖/軽鎖のアイソタイプを決定した。
【0166】
実施例8 抗Siglec15抗体A2A5C7E8の遺伝子操作
例えば、抗体の産生、安定性、安全性及び/又は有効性に悪影響を及ぼし得るCDR領域における特定のアミノ酸残基の脱アミド及び異性化などの翻訳後修飾を避ける、又は低減するために、抗体A2A5C7E8(以降で、A2A5C7E8-1とも呼ばれる)がさらに、重鎖CDR2領域において修飾された。合計2つの修飾バリアント、つまりA2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3が得られ、そのCDR及び重鎖/軽鎖可変領域配列番号を表1に示した。
【0167】
ヒトIgG1重鎖定常領域(配列番号17)に連結されたA2A5C7E8-2又はA2A5C7E8-3の重鎖可変領域をコードするヌクレオチドをそれぞれ含有するベクター、及びヒトカッパ軽鎖定常領域(配列番号18)に連結された軽鎖可変領域をコードするヌクレオチドをそれぞれ含有するベクターを、PEI 1mg/mLで、軽鎖:重鎖構築物の比率1.1:1で、293F懸濁液細胞培養物50ml中で一過性にトランスフェクトした。
【0168】
実施例9 修飾A2A5C7E8バリアントの特性決定
修飾バリアントA2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3を上述のように精製し、Biacore、捕捉ELISA、間接ELISA、細胞ベース結合FACS、競合ELISA及び細胞ベース機能性アッセイにおいて、修正が加えられた、又は修正なしの上述の実施例のプロトコル、及び以下に記載のプロトコルにも従って試験した。
【0169】
マウスSiglec15に対する修飾A2A5C7E8バリアント結合親和性を測定するBiacore試験に対して、マウスSiglec15-hisタンパク質(配列番号22を有する自家製)を使用した。
【0170】
T細胞抑制の復帰変異(reversion)試験において、本開示のA2A5C7E8バリアント又は対照濃度48μg/mを、ヒトSiglec15-Fcタンパク質(配列番号19、10%FBSで補充されたRPMI-1640培地中で20μg/ml)と1:1体積比で混合し、濃度120μg/mlの本開示のA2A5C7E8バリアント又は対照を、ヒトSiglec15-Fcタンパク質(10%FBSで補充されたRPMI-1640培地中で40μg/ml)と1:1体積比で混合した。
【0171】
Biacore試験結果を表5-1及び5-2にまとめた。他のアッセイの結果を
図9~14及び15A~15Dに示した。
【0172】
【0173】
【0174】
表5-1及び5-2に示すように、修飾バリアントA2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3が、ベンチマークよりも高い結合親和性で、ヒトSiglec15及びカニクイザルSiglec15に特異的に結合した。抗体A2A5C7E8-3は、ベンチマークよりもマウスSiglec15に対する高い結合親和性も示した。抗体A2A5C7E8-2は、ベンチマークと比較してマウスSiglec15に対して同等の結合親和性を示した。
【0175】
図9及び10に示すように、ベンチマークよりも修飾バリアントA2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3に、より効率的に、又はより高いBmaxでヒトSiglec15に結合し、
図13に示すように、ベンチマークよりも効率的にSiglec15-LRRC4C結合を阻害した。さらに、
図11及び12によれば、修飾バリアントA2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3は、ベンチマークよりもカニクイザルSiglec15及びマウスSiglec15に効率的に結合した。
【0176】
図14に示すように、修飾バリアントA2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3は、ベンチマーク-Siglec15結合をブロックすることができ、修飾バリアントA2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3がベンチマークに対して同様なエピトープに結合したことが示された。
【0177】
図15A~15Dに示すように、細胞ベースの機能性アッセイにおいて、修飾バリアントA2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3が、Siglec15媒介CD8
+T細胞及びCD4
+T細胞抑制を復帰し、ベンチマークと比べて、同様な、又は高い細胞増殖パーセンテージが得られた。注目すべきことには、ヒトSiglec15-Fcタンパク質が比較的低い用量で使用された場合に、抗体A2A5C7E8-2及びA2A5C7E8-3は、CD4
+及びCD8
+T細胞抑制の復帰においてベンチマークよりも有効であった。
【0178】
実施例10 ハイブリドーマ技術を用いたマウス抗Siglec15モノクローナル抗体の産生
免疫化、ハイブリドーマ融合及びスクリーニング
以下の修正を加えた実施例1におけるプロトコルに従って、マウスの免疫化、ハイブリドーマ融合及びスクリーニングを実施した。詳細には、正常なマウスを使用し、免疫化投与量は、一次免疫化のために組換えヒトSiglec15-Fcタンパク質50μg/マウス/注射を含有し、追加免疫のためにヒトSiglec15-Fcタンパク質25μg/マウス/注射を含有した。濃度範囲0.25~0.67mg/mlでPBS又は生理食塩水中で抗原を調製した。合計で50又は25μgの抗原を150~200μlの体積で注射した。各動物を免疫化し、次に、抗血清力価に応じて3~4回追加接種した。自家製のヒトSiglec15-hisタンパク質を使用して、融合細胞培養上清を間接ELISAにかけた。ヒトSiglec15-hisタンパク質に結合する陽性ハイブリドーマスクリーニング抗体を選択し、24ウェルプレートに移した。これらのハイブリドーマを、細胞ベース結合FACS、捕捉ELISA、間接ELISA及びリガンドブロッキングELISAにもかけた。高特異性ヒトSiglec15-his結合、カニクイザルSiglec15-his結合、マウスSiglec15-his結合及びヒトSiglec15-LRRC4Cブロッキング活性を示す抗体を産生するハイブリドーマクローンを、細胞株のクローン性を確実にするために限界希釈によってサブクローニングし、次に、モノクローナル抗体を精製した。
【0179】
実施例11 BIACORE表面プラズモン共鳴を用いたマウス抗Siglec15モノクローナル抗体の結合親和性の決定
実施例10で生成された精製マウス抗Siglec15モノクローナル抗体を、Biacore T200システム(GE healthcare,Pittsburgh,PA,USA)によって、その結合親和性及び結合速度について特性決定した。
【0180】
簡潔には、ヤギ抗マウスIgG(GE healthcare、カタログ番号BR100838、マウス抗体捕捉キット)が、Biacore(GE healthcare,Pittsburgh,PA,USA)によって提供される標準的なアミンカップリングキットを用いて、第一級アミンを介して、CM5チップ(GEhealthcareから市販のカルボキシメチルデキストラン被覆チップ、カタログ番号BR100530)に共有結合された。バイオセンサー表面上の未反応部位をエタノールアミンでブロックした。濃度13.3nMの本開示の精製マウス抗Siglec15抗体をそれぞれ、流量10μL/分でチップ上に流した。次いで、段階希釈ヒトSiglec15-hisタンパク質(自家製、配列番号20に記載のアミノ酸配列)、カニクイザルSiglec15-hisタンパク質(自家製、配列番号21に記載のアミノ酸配列)、又はマウスSiglec15-hisタンパク質(自家製、配列番号22に記載のアミノ酸配列)(80nMで開始してHBS-EP+緩衝液(Biacoreによって提供された)中で2倍希釈)を流量30μL/分でチップ上に流した。抗原-抗体結合キネティクスを2分間にわたって追跡し、解離キネティクスを10分間追跡した。結合及び解離曲線を、Biacore評価ソフトウェアを用いて、1:1 Langmuir結合モデルに適合させた。KD、Ka及びKd値を決定し、以下の表6-1及び6-2にまとめた。
【0181】
【0182】
【0183】
本開示のすべてのマウス抗Siglec15抗体が、高い結合親和性でヒトSiglec15、カニクイザルSiglec15及びマウスSiglec15に特異的に結合した。
【0184】
実施例12 マウス抗Siglec15モノクローナル抗体の結合活性
捕捉ELISA、間接ELISA及びフローサイトメトリー(FACS)によって、ヒトSiglec15、カニクイザルSiglec15及びマウスSiglec15に対するマウス抗Siglec15抗体の結合活性をさらに決定した。
【0185】
AffiniPureヤギ抗マウスIgG、F(ab')
2フラグメント特異的(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号115-005-072)をAffiniPureヤギ抗ヒトIgGF(ab')
2フラグメント特異的の代わりに、100μl/ウェルで使用したことを除いては、実施例3のプロトコルに従って、捕捉ELISAを行った。その結果を
図16に示した。
【0186】
96ウェルプレートにおける1.5×10
5細胞/ウェルを、FACS緩衝液中の段階希釈抗Siglec15抗体又は対照(66.67nMで開始し、5倍段階稀釈)100μL中で40分間氷上にてインキュベートし、R-フィコエリトリンAffiniPureF(ab')
2フラグメントヤギ抗マウスIgG(H+L)(FACS緩衝液中で1:1000希釈、Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-116-146)100μLを細胞に添加したことを除いては、実施例3のプロトコルに従って、細胞ベースFACSを行った。その結果を
図17に示した。
【0187】
ペルオキシダーゼAffiniPureヤギ抗マウスIgG、Fcγフラグメント特異的(Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-035-071)をR-フィコエリトリンAffiniPureヤギ抗ヒトIgG、Fcγフラグメント特異的の代わりに100μl/ウェルで使用したことを除いては、実施例3のプロトコルに従って、間接EELISAを行った。その結果を
図18及び19に示した。
【0188】
本開示のマウス抗Siglec15抗体が、ベンチマーク(BMとも呼ばれるch5G12、米国特許出願公開第2019/0202912号明細書参照、配列番号24及び25にそれぞれ記載の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列)と比較して、高いBmax(最大結合)及び低いEC
50でヒトSiglec15に特異的に結合したことが
図16から分かり、より多くのヒトSiglec15タンパク質に、より効率的に結合したことが示唆される。
図17によれば、本開示のマウス抗Siglec15抗体は、FACS試験において、少し活性が劣るが細胞表面ヒトSiglec15に特異的に結合した。
【0189】
本開示のマウス抗Siglec15抗体が、ベンチマークよりも高い結合活性でカニクイザルSiglec15タンパク質に特異的に結合することが
図18から示され、本開示のマウス抗Siglec15抗体が、ベンチマークと比べて少し低い結合活性でマウスSiglec15タンパク質に特異的に結合することが
図19から示された。
【0190】
実施例13 Siglec15-LRRC4C又はSiglec15-ベンチマーク結合に対するマウス抗Siglec15抗体のブロッキング活性
本開示のマウス抗Siglec15抗体を、上述のプロトコルに従ってリガンドブロッキングELISA及びベンチマークブロッキングELISAにおいても試験した。その結果を
図20及び21に示した。
【0191】
本開示のマウス抗Siglec15抗体が、ヒトSiglec15-ヒトLRRC4C結合をブロッキングすることができ、且つそのブロッキング活性がベンチマークよりも少し高いことが
図20から分かる。
【0192】
本開示のマウス抗Siglec15抗体が、ヒトSiglec15-ベンチマーク結合をブロックすることができることが
図21に示され、本開示のマウス抗Siglec15抗体が、ベンチマークが結合したのと同様なエピトープに結合し得ることが示唆される。
【0193】
実施例14 Siglec15媒介T細胞抑制を復帰変異させたマウス抗Siglec15抗体
以下に記載の修正及びプロトコルも加えて、上記の実施例のプロトコルに従って、Siglec15媒介T細胞抑制を復帰する生物活性について、本開示のマウス抗Siglec15抗体をさらに試験した。
【0194】
T細胞抑制の復帰変異試験において、濃度400μg/mlの本開示のマウス抗Siglec15抗体又は対照を、ヒトSiglec15-Fcタンパク質(配列番号19、10%FBSで補充されたRPMI-1640媒体中に40μg/ml)と体積比1:1で混合した。その結果を
図22A及び22Bに示した。
【0195】
本開示のマウス抗Siglec15抗体が、ベンチマークと比較して低い、又は同様なEC50でSiglec15媒介CD8+T細胞及びCD4+T細胞抑制を復帰させることができ、且つ高用量の本開示の抗体での処置によって、細胞増殖パーセンテージがかなり高くなったことが分かる。
【0196】
次いで、本開示のマウス抗体をシークエンシングし、重鎖/軽鎖可変領域の配列番号を表1にまとめた。興味深いことに、3つの抗体B2D7H7A3C1、B2G12H3E8及びB2H2H1A7が同じ重鎖/軽鎖CDR配列を有した。
【0197】
本開示は、1つ以上の実施形態とともに上述されているが、本開示が、それらの実施形態に限定されないことが理解されるべきであり、説明は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれ得る際、全ての代替例、修飾、及び均等物を包含することが意図される。本明細書に引用される全ての参照文献は、全体が参照によりさらに援用される。
【0198】
本出願中の配列が、以下に要約される。
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
本発明の好ましい実施形態を詳細に記述しているが、その多くの明らかな変形形態が、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく可能であるため、上記のパラグラフによって定義される本発明は、上記の明細書に記載の特定の詳細に限定されないことを理解されたい。