(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160251
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】アベナンスラミドLの化粧品または医薬品としての使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9794 20170101AFI20241106BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20241106BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241106BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241106BHJP
A61Q 3/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241106BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20241106BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241106BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241106BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241106BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20241106BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61K36/899
A61Q19/00
A61Q5/00
A61Q3/00
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/04
A61K45/00
A61K9/06
A61K9/08
A61K31/167
A23L33/105
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024119516
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2022553574の分割
【原出願日】2020-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】シュマウス,ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ブクダーン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥールマン,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】シュトリーヴェ,カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッペ,ホルガー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】皮膚保護のため、皮膚病、特に痒み及び痒みに関連した皮膚病の予防および/または処置に使用するための、新規薬剤または調製物を提供する。
【解決手段】アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の化粧品としてのまたは医薬品としての使用;ニューロキニン-1受容体NK1RアンタゴニストとしてのアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物;ならびにアベナルミック酸および/またはアベナンスラミドLを調製するための方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューロキニン-1受容体NK1Rのアンタゴニストとしての、アベナンスラミドLま
たはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の使用。
【請求項2】
小熱ショックタンパク質(sHSP)の発現を誘発するための、またはCD44の発現
を誘発するための、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物
の使用。
【請求項3】
小熱ショックタンパク質(sHSP)が、sHSP27(HSPB1、HSPB2、H
SPB3)およびαB-クリスタリン(CRYAB/HSPB5)からなる群から選択さ
れる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
抗酸化薬剤としての、またはBLVRBの発現を誘発するための、アベナンスラミドL
またはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の使用。
【請求項5】
スキンケア、ヘアケアもしくはネイルケアのための化粧品としての、ならびに/または
敏感肌、毛髪もしくは爪、皮膚刺激、皮膚発赤、膨疹、掻痒症(痒み)、皮膚の老化、し
わの形成、皮膚体積の減少、肌の弾力の喪失、色素斑、色素異常、乾燥肌、すなわち皮膚
の保湿を必要とする乾燥肌の予防および/もしくは処置における使用のための、請求項1
から4のいずれか一項に記載のアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエン
バク抽出物の使用。
【請求項6】
医薬としての使用のための、請求項1から4のいずれか一項に記載のアベナンスラミド
LまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物。
【請求項7】
皮膚疾患または角質疾患、特にバリアに関連した、炎症性、免疫アレルギー性、アテロ
ーム生成性、乾燥性または過剰増殖性構成成分を有する皮膚疾患または角質疾患の予防お
よび/または処置における使用のための、請求項6に記載のアベナンスラミドLまたはア
ベナンスラミドLを含むエンバク抽出物。
【請求項8】
皮膚疾患が、湿疹、乾癬、脂漏症、皮膚炎、紅斑、掻痒症(痒み)、耳炎、乾燥症、炎
症、刺激、線維症、扁平苔癬、ばら色粃糠疹、癜風、自己免疫性の水疱性疾患、じんま疹
様、アンジオダーマルおよびアレルギー性皮膚反応、ならびに創傷治癒からなる群から選
択される、請求項7に記載のアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバ
ク抽出物。
【請求項9】
食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物を調製するための、請求項1か
ら4のいずれか一項に記載のアベナンスラミドLまたはエンバク抽出物のアベナンスラミ
ドLの使用。
【請求項10】
エンバク抽出物が、Avena属の植物由来の、特にエンバク種Avena sati
vaもしくはAvena nuda由来の抽出物であり、および/または抽出物が水性ア
ルコール性または水性アセトン性の抽出物である、請求項1から9のいずれか一項に記載
の使用。
【請求項11】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物が、アベナンスラ
ミドL以外の少なくとも1種の自然発生の類似体アベナンスラミド、特にアベナンスラミ
ドA、B、C、G、H、KおよびR、ならびに/もしくはこれらの混合物からなる群から
選択される少なくとも1種の自然発生の類似体アベナンスラミドと組み合わせて使用され
、ならびに/またはアベナンスラミドLもしくはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出
物が、少なくとも1種の非自然発生の類似体アベナンスラミドと組み合わせて使用される
、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物が、
- 抗炎症性、抗細菌性もしくは抗真菌性物質、および/または
- 発赤緩和作用もしくは痒み緩和作用を有する物質、および/または
- 皮膚軟化剤、および/または
- 保湿調整剤、および/または
- 清涼化剤
と組み合わせて使用される、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物が、抗酸化剤、防
腐剤、(金属)キレート剤、浸透促進剤および/またはこれらの混合物からなる群から選
択される賦形剤と組み合わせて使用される、請求項1から12のいずれか一項に記載の使
用。
【請求項14】
化粧品または薬学的調製物が、局所的に、特に液剤、チンキ剤、ローション剤、ゲル剤
、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤またはシャンプー剤の形態で使用される、請求項5か
ら13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物が、アベナンスラミドLまたは
アベナンスラミドLを含むエンバク抽出物を、調製物の総重量に対して、0.0001~
10重量%の量で含む、請求項5から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
ニューロキニン-1受容体NK1Rのアンタゴニストとしての、アベナンスラミドLま
たはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物。
【請求項17】
(a)亜リン酸トリエチル(1)および4-ブロモクロトン酸メチル(2)を反応させ
て、メチル(2E)-4-(ジエチルホスホリル)ブタ-2-エノエート(3)を形成す
るステップ、
(b)HWE反応で、メチル(2E)-4-(ジエチルホスホリル)ブタ-2-エノエー
ト(3)を酢酸4-ホルミルフェニル(4)と反応させて、メチル(2E、4E)-5-
(4-ヒドロキシフェニル)ペンタ-2,4-ジエノエート(5)を形成するステップ、
(c)水酸化ナトリウム溶液を使用して、アベナルミック酸メチルエステル(5)を脱保
護して、アベナルミック酸(Avn Ac)を生成するステップ、ならびに
(d)カップリング試薬を使用し、任意の保護基を使用せずに、アベナルミック酸(Av
n Ac)を2-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸(6)と反応させて、アベナンスラミ
ドL(Avn L)を生成するステップ
を含む、アベナルミック酸および/またはアベナンスラミドLを調製するための方法。
【請求項18】
ステップ(b)が-78℃~0℃の温度、特に-50℃~0℃の温度で実施される、請
求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物
の化粧品または医薬品としての使用;ニューロキニン-1受容体(NK1R)アンタゴニ
ストとしてのアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物;なら
びにアベナルミック酸および/またはアベナンスラミドLを調製するための方法に関する
。
【背景技術】
【0002】
オートミールは、様々な乾燥性皮膚病に伴う痒みおよび刺激を和らげる緩和剤として何
世紀にもわたり使用されてきた。医療テキストは、様々な皮膚病の状態に対するオートミ
ール穀粉の局所的塗布を促進した。皮膚科診療におけるコロイド状オートミールに対する
最も一般的な臨床応用は、掻痒性皮膚の状態、例えば、アトピー性皮膚炎およびアレルギ
ー性または刺激性接触皮膚炎に対する補助的療法としての臨床応用である。エンバクの直
接的抗刺激性活性は、in vitroと臨床研究の両方で確立されてきた。エンバクの
抽出物は、ケラチノサイトにおけるリン脂質からのアラキドン酸のイオノフォア刺激性遊
離を低減し、プロスタグランジン生合成を阻害することが示されている。皮膚抗刺激剤の
幅広く拡散した使用にもかかわらず、抗炎症性活性を媒介するエンバクに存在する植物化
学物質について調べた研究は少ない。
【0003】
エンバクは、2つの主要な種、Avena sativa L.およびAvena n
uda L.(同義語はGilletおよびMagneによるAvena sativa
subsp.nuda(L.)、およびKoernによるAvena sativa
var.nuda(L.)を含む)に存在する。A.sativaは、エンバク(com
mon oat)または殻付きエンバクとしても公知であり、寒冷温帯気候、特に北欧州
および北アメリカの寒く、湿った領域で主に栽培されている。A.nudaは、収穫物が
収集された時点で殻が除去され、小麦と類似した、殻を含まない脱穀性を有するので、ハ
ダカエンバクまたは皮を取ったエンバクとして公知である。殻付きエンバクは地球規模の
エンバクの生産の大部分を代表するものであるが、ただし、ハダカエンバクが最も一般的
な種類である中国は除く。
【0004】
エンバクの組成は主にデンプン(65~85%)、タンパク質(15~20%、酵素を
含む)、脂質(3~11%)および高い含有量のβ-グルカンを含む約2~8.5%の食
用繊維である。エンバクはまた他の重要な生理活性化合物、例えば、フェノール系化合物
を含有する。
【0005】
フェノール系化合物は、抗酸化特性を有し、反応性酸素種(すなわちスーパーオキシド
アニオン、ヒドロキシル基およびペルオキシ基)が関与する変性疾患(例えば、心疾患お
よびがん)から防御することができる。
【0006】
フェノール系化合物の一般的な定義は、1つまたは複数のヒドロキシル基を有するベン
ゼン環を含有する任意の化合物である。フェノール系の酸、フラボノイド、濃縮タンニン
、クマリンおよびアルキルレゾルシノールがその例である。穀物中で、これら化合物は主
に果皮内に位置し、穀粒を剥皮してふすまを生成することにより濃縮することができる。
フェノール系化合物は、フラボノイド(フラボノール、フラボン、イソフラボン、アント
シアニン、フラバノール、フラバノンなどに下位分類される)および非フラボノイドにグ
ループ化することができる。フェノール系化合物は遊離フェノールまたはグリコシド形態
で存在することができる。フェノール系化合物は、比較的極性の傾向にあり、通常純粋ま
たは水性アルコール、例えば、エタノールおよびメタノールまたは水性アセトンに溶解す
る。穀物中の多くのフェノール系化合物(例えば、フェノール系の酸およびフラボノイド
)はまた果実および植物にも報告されているが、一部のフェノールは1つの植物種、例え
ば、エンバクアベナンスラミドに特有のものである。
【0007】
フェノール系化合物は、多くの活性を保有することが示されているが、最も重要なのは
、有害なフリーラジカルにより媒介される脂質過酸化および細胞の酸化的損傷を阻止する
抗酸化活性である。この特性はフリーラジカルをスカベンジし、水素原子または電子、ま
たはキレート金属カチオンを供与するフェノール系化合物の能力に関係している[Dyk
esら、Cereal Foods World、2007、105~111ページ]。
【0008】
全麦穀物中のフェノール系化合物の種類および濃度は、穀粒の植物多様性および性質に
より影響を受ける。高レベルのフェノール酸、トコフェロールおよびアルキル(アルケニ
ル)レゾルシノール誘導体を含有することに加えて、エンバクは特にアベナンスラミド(
Avns;N-シンナモイルアントラニレートアルカロイドまたはアントラニル酸アミド
としても公知)の独特な供給源であり、これらは他の穀物には存在しない。
【0009】
アベナンスラミド(これより以下、Avnsまたは単一のアベナンスラミド化合物に対
してAvnと略記する)は、アミド結合を有するアントラニル酸およびヒドロキシケイ皮
酸部分を含有する低分子量のフェノール系アミドであり、A.sativaもA.nud
aもエンバクにおける自然発生のフェノール系アミドの群である。これらは、真菌などの
病原菌への曝露に応答して植物により生成されるフィトアレキシンと、最初に同定された
。
【0010】
エンバクはおよそ40の異なる種類のAvnsの独特な群を含有し、これらはエンバク
穀粒と葉の両方に存在する。最も豊富なのはAvn A(N-(4’-ヒドロキシシンナ
モイル)-5-ヒドロキシアントラニル酸)、Avn B(N-(4’-ヒドロキシ-3
’-メトキシシンナモイル)-5-ヒドロキシアントラニル酸)およびAvn C(N-
(3’-4’-ジヒドロキシシンナモイル)-5-ヒドロキシアントラニル酸)であり、
これらは5-ヒドロキシアントラニル酸のアミドであり、p-クマリン、フェルラおよび
カフェインヒドロキシケイ皮酸をそれぞれ有する。これらAvnsは、構成的に種実に発
現し、ほとんどすべての粉砕画分に出現するが、これらの最も高い濃度はふすまおよび種
実の外層において生じる[BozH.、Czech Journal of Food
Sciences、2015、33巻(5号):399~404ページ]。エンバク穀粒
中のアベナンスラミド(Avns)の全含有量は、品種および農学的処置に応じて約2~
700mg/kg(0.0002~0.07%)であることが判明した[Maliaro
va M.ら、Journal of the Brazilian Chemical
Society、2015、26巻(11号)、2369~2378ページ]。
【0011】
Avnsがin vitroとin vivoの両方で強い抗酸化活性、ならびに細胞
の酸化的機能障害および酸化ストレス関連疾患、例えば、神経変性および心血管疾患の発
生を阻止または制限し得る抗炎症性、抗刺激性、抗アテローム生成および抗増殖性活性を
有し、皮膚刺激、老化、CHDおよびがんに対する追加の保護を提供することをいくつか
の研究が実証した[Perrelli A.ら、Oxidative Medicine
and Cellular Longevity、2018、DOI:10.1155
/2018/6015351]。
【0012】
エンバクからのAvnsの抽出は、様々な溶媒組成物、例えば、純粋または希釈された
エタノールおよびメタノールを使用して行った。異なる時間にわたり室温でまたは制御さ
れた加熱下で、例えば、ハダカエンバク、50%水性エタノールなどを用いて抽出手順が
達成された[Tong Lら、Journal of Integrative Agr
iculture、2014、13巻、1809ページ]。
【0013】
Maliarova、M.ら、Journal of the Brazilian
Chemical Society、2015、26巻(11号)、2369~2378
ページは、ハダカエンバクふすまからのAvnsの抽出についてメタノール、エタノール
およびイソプロパノールの効率を比較した。Avnsの最も高い収率に対する最適条件は
、メタノール濃度70%、抽出温度55℃および抽出時間165分間であった。
【0014】
Avnsの抗酸化活性は、典型的な穀物構成成分、フェルラ酸、ゲンチシン酸、p-ヒ
ドロキシ安息香酸、プロトカテク酸(protocagtechuic acid)、シ
リング酸、バリニン酸およびバニリンの抗酸化活性より10~30倍高いことが判明した
。Avnsは抗酸化活性が異なり、Avn Cが最も高い活性を有し、Avn Bおよび
Avn Aがこれに続く。Avnsを豊富に含むエンバク抽出物はin vitroでL
DL酸化を阻害する。エンバク抗酸化剤が血清コレステロールを低下させ、LDLコレス
テロール酸化および過酸化を阻害することによって心血管の危険性を減少させる潜在能力
を有することが、動物の研究でもヒト臨床試験でも確認された。エンバクおよびエンバク
ふすまの消費は、これらの高い繊維含有量ばかりでなく、Avnsによってもまた結腸が
んの危険性を減少させ得ることを別の研究は示した。さらに、Avnsを豊富に含むエン
バク抽出物は、アテローム動脈硬化症およびNF-kB転写因子の活性化を阻害すること
が示されており、NF-kB転写因子は感染症および炎症の調整剤である[Huesey
in Boz、Phenolic Amides(Avenanthramides)
in Oats-A Review、Czech J.Food Sci.、33巻、2
015(5号)、399~404ページ]。
【0015】
皮膚刺激の処置における広範囲に及ぶ使用にもかかわらず、エンバク中に存在し、抗炎
症性、抗痒み、抗刺激性、抗アテローム生成および抗増殖性活性に関与している植物化学
物質は今のところ明らかにされていない。
【0016】
WO2004/047833は、肥満細胞からのヒスタミンの物質P誘発性遊離の阻害
ならびに式2:
【化1】
(式中、m=0、1、2または3であり、p=0、1または2であり、n=0、1または
2であり、
ただし、n=1または2である場合、p+m>0であり、
n=1または2である場合、R
1およびR
2は、それぞれの対において、それぞれHを表
すか、または別の化学結合を一緒に表し(例えば、ケイ皮酸誘導体などにおいて)、
m=1、2または3である場合、各Xは、独立して、OH、OアルキルまたはOアシルを
表し、
p=1または2である場合、各Yは、独立して、OH、OアルキルまたはOアシルを表し
、
p+m>0である場合、XおよびYのうちの少なくとも1つはOHおよびOアシルからな
る群から選択されることを条件とし、
R
3は、-Hまたはアルキル(特に-CH
3、または2~30個のC原子を有する他の直
鎖もしくは分枝のアルキル鎖であり、この文脈において、R
3はまた対応する薬学的に許
容される塩に対して-Hである)
の物質による痒みの処置および予防について記載している。
【0017】
WO2017/159964は、聴覚損失を予防するまたは処置するための、アベナン
スラミドLを含むアベナンスラミドについて記載している。
【0018】
EP157420は、5-リポキシゲナーゼ阻害剤として、アベナンスラミドLと構造
的に関係している化合物を含むアベナンスラミドについて記載している。
【0019】
Lotts T.ら、Experimental Dermatology 2017
、26巻(8号):739~742ページは、ジヒドロアベナンスラミドD(CAS69
7235-49-7、INCI名:ヒドロキシフェニルプロパミド安息香酸;Symri
seより提供されるSymCalmin(登録商標)中の活性成分)がどのように肥満細
胞脱顆粒を阻害するのかについて記載し、ニューロキニン-1受容体との相互作用を介し
た抗炎症性作用を示している。しかし、アベナンスラミド、特にアベナンスラミドLの活
性は記載されていない。
【0020】
Staender、S.ら、Targeting the Neurokinin R
eceptor1 with Aprepitant:A Novel Antipru
ritic Strategy、PLOS ONE(Public Library o
f Science)、2010、5巻(6号):0010968ページは、NKR1ア
ンタゴニストアプレピタントを適用することにより、ニューロペプチドSPを標的とする
ことが、どのように慢性掻痒症の処置に対して有効な手法であるかについて記載している
。
【0021】
慢性掻痒症は、全身性、皮膚、神経系および精神の疾患の、頻繁におよび全体的に生じ
る症状である。その病態生理は依然として完全に理解されていない。世界中のすべての成
人の20~27%が慢性掻痒症に悩まされていると現在予測されている。症状は、高い強
度および長い期間ならびにひっかき行動による皮膚の自己損傷を通常特徴とするので、患
者の生活の質に高い影響を及ぼす。長い間掻痒症は疼痛ほど重要視されてこなかったこと
を考慮すると、過去にこの症状の神経生物学的ベースにはあまり注目が払われてこなかっ
た。特定の処置戦略の探究が欠如している第2の理由は、根底にある疾患の処置によって
、掻痒症の症状が自動的に軽減するという仮定である。したがって、慢性掻痒症の処置の
今日までの主力は、依然として抗ヒスタミン剤、局所的および全身性コルチコステロイド
またはある特定の抗うつ剤である。しかし、これらの有効性は限定されており、コルチコ
ステロイドおよび抗うつ剤の全身適用は重度の副作用を伴うこともある。
【0022】
掻痒症はまた、皮膚バリア機能が損なわれた多くの皮膚病、例えば、アトピー性皮膚炎
(AD)および乾癬の重要な特徴である。皮膚バリアは、有害な物質、例えば、抗原およ
び感染性微生物の侵入を阻止し、水分の損失を阻止する。バリア機能の損失は赤み、薄片
、亀裂および粗い組織を特徴とする(「外側から内側」)乾燥、痒みのある皮膚に連結し
ているばかりでなく、表皮の炎症はまたバリアを弱める可能性もある(「内側から外側」
)。乾燥肌(乾燥症)および痒みを伴う根底にある皮膚病は、患者集団間で異なり得る。
皮膚バリアにおける構造的および生理学的変化は、年齢と共に生じ、高齢者の間でバリア
異常の発症率の増加をもたらし得る。乾燥症はこの集団において皮膚バリアに関連した掻
痒症の最も一般的な原因であり、慢性の痒みがある高齢患者の69%に報告されている。
しかし、小児および成人において、掻痒症の最も一般的な原因の1つがAD、慢性炎症性
障害であり、この場合患者は高い強度の痒みを経験する(G.Yosipovitchら
、Acta Derm.Venereol.2019、doi:10.2340/000
15555-3296)。
【0023】
さらに、トイレタリー、例えば、界面活性剤を含有する石鹸およびシャンプーの使用は
、有害作用、例えば、皮膚の刺激、乾燥、および痒みを引き起こし得る。乾燥肌、粗い皮
膚、および敏感肌を含む皮膚病態は、生活状態およびライフスタイルの変化により増加し
ている。皮膚病態を有する多くの人々は、洗剤を使用して皮膚を洗浄している間および/
または洗浄した後に痒みの症状を訴え、これは表皮ケラチノサイトから放出されるヒスタ
ミンと連結していることが示された(Y.Inamiら、Yakugaku Zassh
i、2012、132巻、1225~30ページ)。
【0024】
痒みは、ひっかき行動をもたらし、これが皮膚のバリア破壊を悪化させる。
【0025】
よって、化粧品および医薬品業界において、スキンケアまたは皮膚保護における、なら
びに皮膚病、特に痒みおよび/または痒みに関連した皮膚病の予防および/または処置に
使用するための、新規薬剤または調製物の開発に対する継続的必要性が存在する。
【0026】
最終製剤中で使用される物質は、一般的に、活性および投与に関連する濃度範囲におい
て、
- 毒物学的に許容されなければならない、
- 皮膚に十分許容されなければならない、
- 安定していなければならない(特に慣習的な製剤において)、
- 好ましくは無臭でなければならない、および
- 安く生産できなければならない(すなわち、標準的プロセスを使用し、および/また
は標準的な前駆体から出発して)
ことを覚えておいていただきたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、本発明の目的は、皮膚保護のため、および皮膚病、特に痒みおよび/また
は痒みに関連した皮膚病の予防および/または処置におけるこのような活性物質または調
製物の使用を提供することである。
【0028】
驚くことに、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、
極めて興味深い生物学的利益、例えば、抗酸化性、抗炎症性、抗痒み、抗刺激性および抗
アテローム生成活性を示し、よってスキンケアおよび皮膚保護のため、ならびに皮膚病の
予防および/または処置において有益な薬剤であることが結果的に判明したのである。特
に、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、皮膚病、特
にバリアに関連した、炎症性、免疫アレルギー性、アテローム生成性、乾燥性または過剰
増殖性の構成成分を有する皮膚障害または角質障害の予防および/または処置において有
効な薬剤であることが結果的に判明したのである。特に、アベナンスラミドLまたはアベ
ナンスラミドLを含む調製物は、痒みおよび/または痒みに関連した皮膚病の予防および
/または処置において有効な薬剤であることが結果的に判明したのである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
したがって、本発明の主要な目標は、ニューロキニン-1受容体NK1Rのアンタゴニ
ストとしての、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の使
用を提供することである。
【0030】
第2の態様では、本発明は、小熱ショックタンパク質の発現を誘発するためまたはCD
44の発現を誘発するための、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエン
バク抽出物の使用に関する。
【0031】
第3の態様では、本発明は、抗酸化剤としての、および/またはBLVRBの発現を誘
発するための、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の使
用に関する。
【0032】
第4の態様では、本発明は、スキンケア、頭皮ケア、ヘアケアもしくはネイルケアのた
めの化粧品としての、ならびに/または皮膚状態、我慢できないおよび敏感肌、皮膚刺激
、皮膚発赤、膨疹、掻痒症(痒み)、皮膚の老化、しわの形成、皮膚体積の減少、肌の弾
力の喪失、色素斑、色素異常、乾燥肌、すなわち皮膚の保湿を必要とする乾燥肌の予防お
よび/もしくは処置における使用のための、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミド
Lを含むエンバク抽出物の使用に関する。
【0033】
第5の態様では、本発明は、医薬としての使用のための、特に皮膚疾患または角質疾患
、特にバリアに関連した、炎症性、免疫アレルギー性、アテローム生成性、乾燥性もしく
は過剰増殖性の構成成分を有する皮膚病、特に痒みおよび/または痒みに関連した皮膚病
の予防および/または処置における使用のための、アベナンスラミドLまたはアベナンス
ラミドLを含むエンバク抽出物に関する。
【0034】
第6の態様では、本発明は、食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物を
調製するための、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の
使用に関する。
【0035】
第7の態様では、本発明は、ニューロキニン-1受容体NK1Rアンタゴニストとして
のアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物に関する。
【0036】
最後に、本発明は、アベナルミック酸またはアベナンスラミドLを調製するための方法
に関する。
【0037】
本発明は添付の特許請求の範囲において特定されている。しかし、本発明それ自体、な
らびにその好ましい変化形、他の目的および利点はまた、添付の実施例と併せて以下の詳
細な説明からも明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】メチル(2E)-4-(ジエチルホスホリル-)ブタ-2-エノエート、CDCl
3、300MHz;E異性体(結合定数=15Hz)の
1H NMRスペクトルである。
【0039】
【
図2】アベナルミック酸メチルエステル、CDCl
3、300MHz;化合物5の
1H NMRスペクトルである。
【0040】
【
図3】アベナルミック酸、DMSO-d
6、400MHzの
1H NMRスペクトルである。
【0041】
【
図4】アベナルミック酸、DMSO-d
6、101MHz
13Cの
13C NMRスペクトルである。
【0042】
【
図5】アベナルミック酸のLCMSスペクトルである。
【0043】
【
図6】アベナンスラミドL、DMSO-d
6、400MHzの
1H NMRスペクトルである。
【0044】
【
図7】アベナンスラミドL、DMSO-d
6、101MHzの
13C NMRスペクトルである。
【0045】
【
図8】アベナンスラミドLのLCMSスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の文脈内で、「アベナンスラミド(アントラニル酸アミド)」という一般用語は
、主にエンバク(Avena sativa)に見出されるが、モンシロチョウの卵(P
ieris brassicaeおよびP.rapae)および菌類に感染したカーネー
ション(Dianthus caryophyllus)にもまた存在するフェノール系
アルカロイドの群のメンバーを意味すると考えられている。
【0047】
アベナンスラミドは、自然に見出され、エンバクから単離および精製することができる。
エンバクの2つの主要な種はAvena sativa L.およびAvena nud
a L.(同義語はGilletおよびMagneによるAvena sativa s
ubsp.nuda(L.)およびKoernによるAvena sativa var
.nuda(L.)を含む)であり、これらは末梢領域、殻、トリコームまたはわらにお
いて最も高濃度であるように見える。50種より多くの明確に異なるアベナンスラミドが
エンバク穀粒から単離されている[Collins、Journal of Agric
ultural and Food Chemistry、37巻(1989)、60~
66ページ]。
【0048】
Avnsは以下の一般式1で表すことができる:
【化2】
【0049】
以下の表1は、一般式1に基づく自然発生の、単離および/または合成されたAvns
の例を示している。
【0050】
【0051】
エンバクにおいて最も豊富なアベナンスラミドは、アベナンスラミドA(2p、AF-
1またはBpとも呼ばれる)、アベナンスラミドB(2f、AF-2またはBfとも呼ば
れる)、アベナンスラミドC(2c、AF-6またはBcとも呼ばれる)、アベナンスラ
ミドL(非コリンズ略語;CAS番号172549-38-1)(アベナンスラミドO(
コリンズ略語)または2pdとも呼ばれる)、アベナンスラミドP(2fdとも呼ばれる
)およびアベナンスラミドQ(2cdとも呼ばれる)である。
【0052】
いくつかの研究は、これら後者のアベナンスラミドが抗炎症性、抗酸化性、抗痒み、抗
刺激性および抗アテローム生成活性を有することを実証しているが、これらの根底にある
機序および標的とされる分子は依然として解明されていない。
【0053】
自然に生じるアベナンスラミド化合物はまた代わりに有機合成により生成することもで
きる。
【0054】
前記調製した合成アベナンスラミド物質は、エンバクから抽出した対応する自然発生の
アベナンスラミド化合物と同一である。
【0055】
以下の一般式2:
【化3】
(式中、m=0、1、2または3であり、p=0、1または2であり、n=0、1または
2であり、
ただし、n=1または2である場合、p+m>0であり、
n=1または2である場合、R
1およびR
2は、それぞれの対において、それぞれHを表
すか、または別の化学結合を一緒に表し(例えば、ケイ皮酸誘導体などにおいて)、
m=1、2または3である場合、各Xは、独立して、OH、OアルキルまたはOアシルを
表し、
p=1または2である場合、各Yは、独立して、OH、OアルキルまたはOアシルを表し
、
p+m>0である場合、XおよびYのうちの少なくとも1つはOHおよびOアシルからな
る群から選択されることを条件とし、
R
3は、-Hまたはアルキル(特に-CH
3、または2~30個のC原子を有する他の直
鎖もしくは分枝のアルキル鎖であり、この文脈において、R
3はまた対応する薬学的に許
容される塩に対して-Hでもある)
による、重要な生物学的特性を有する、非自然発生のアベナンスラミド類似体は、例えば
、WO2004/047833A1またはWO2007/062957A1に付与された
有機合成方法で人為的に生成されている。
【0056】
本発明による式2の特に好ましい化合物は、
n=1もしくは2であり、p+m>0であり、および/または
p+m>0であり、XまたはY、XおよびYのうちの少なくとも1つはOHおよびOアル
キルからなる群から選択される化合物である。
【0057】
特に好ましくは、n=1であり、p+m>2であり、ただし、XおよびYのうちの少な
くとも2つはOHおよびOアルキルを含む群から一緒に選択されることを条件とする式2
の化合物が使用される。
【0058】
n=1であり、m=1、2または3であり、ただし、少なくとも1つのXがOHおよび
Oアルキルを含む群から選択されることを条件とし、ならびに/またはP=1もしくは2
であり、少なくとも1つのYがOHおよびOアルキルを含む群から選択されることを条件
とする式2の化合物を使用することもまた好ましい。
【0059】
nが値1を有する場合、R1およびR2はそれぞれ好ましくはHであり、ただし、R1
およびR2が一緒になって別の化学結合となることもまた可能である。
【0060】
式2およびWO2004/047833A1またはWO2007/062957A1に
開示された特定のアベナンスラミド化合物の定義に関して、前記文献における対応する開
示は参照により本明細書に組み込まれている。
【0061】
式2のアベナンスラミド類似体化合物は好ましくは
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
からなる群から選択される。
【0062】
上記例示は、n=1である式2の化合物に本質的に関する。
【0063】
しかし、n=0である式2の化合物の使用もまた多くの場合好ましく、この場合、m+
p=0であるか、またはm+p>1もしくは2であり、ただし、置換基XおよびYのうち
の少なくとも2つはOHおよびOアルキルを含む群から選択されることを条件とすること
が好ましい。
【0064】
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
を含む群から選択される式2(n=0)の化合物を使用することが特に好ましい。
【0065】
上記アベナンスラミド類似体化合物から、化合物番号8(ジヒドロアベナンスラミドD
)および番号27が特に好ましい。
【0066】
上記自然発生のアベナンスラミドおよび非自然発生のアベナンスラミド類似体に加えて
、N-(4’-ヒドロキシシンナモイル)-3-ヒドロキシアントラニル酸(YAvn
I)およびN-(3’-4’-ジヒドロキシシンナモイル)-3-ヒドロキシアントラニ
ル酸(YAvn II)を含めて、組換え酵母中に新規のアベナンスラミド類似体が生成
され、これらは、フェノール系エステルの生合成に関与している主要タンパク質をコード
している2種の植物遺伝子(タバコ由来の4cl-2およびアーティチョーク由来のhc
t)を用いてSaccharomyces cerevisiae株をエンジニアリング
することにより生成された。注目すべきことに、YAvn IおよびYAvn IIはA
vn AおよびAvn Cと構造的類似点をそれぞれ共有する。
【0067】
一般式1で表され、上記表1で特定された、アベナンスラミドLもしくはアベナンスラ
ミドL以外の自然発生の類似体アベナンスラミド化合物、例えば、アベナンスラミドA、
B、C、G、H、Kなど、または上記一般式2で表され、本発明に従い使用される非自然
発生の類似体アベナンスラミド化合物(本明細書でこれより以下「類似体」または「類似
体アベナンスラミド化合物」と一般的に名付けられている)はあまり十分に研究および記
載されていない。De Bruijnら、Food Chemistry 2019、2
77巻、682~690ページは、エンバク種子におけるこれらの典型的なLC-MSフ
ラグメンテーションパターンによりいくつかを同定した。
【0068】
本発明の文脈内で、「アベナンスラミドL」という用語は、それ自体、CAS番号17
2549-38-1を有し、一般式1で表され、表1において定義された、化合物アベナ
ンスラミドL(非コリンズ略語(アベナンスラミドO(コリンズ略語)または2pdとも
呼ばれる)を意味する。
【0069】
アベナンスラミドLおよびアベナンスラミドL以外の自然発生の類似体アベナンスラミ
ド化合物、一般式1で表され、上記表1で特定された(本明細書でこれより以下自然発生
の類似体アベナンスラミド化合物と名付けられている)は、自然に見出され、エンバクか
ら単離および精製することができる。エンバクの2つの主要な種はAvena sati
va L.およびAvena nuda L.である(同義語はGilletおよびMa
gneによるAvena sativa subsp.nuda(L.)、およびKoe
rnによるAvena sativa var.nuda(L.)を含む)。A.sat
ivaはエンバク(common oat)または殻付きエンバクとしても公知である。
A.nudaは、殻は収穫物が収集された時点で除去されるので、ハダカエンバクまたは
皮を取ったエンバクとして公知である。エンバクは、処理して、エンバク穀粒を含む構成
物質画分へと分離することができ、アベナンスラミドは末梢領域、殻、トリコームまたは
わらにおいて最も高濃度であるように見える。
【0070】
別のバージョンでは、アベナンスラミドLおよび自然発生のアベナンスラミド化合物は
、病原菌に感染したまたはエリシターで処理した、特にPuccinia corona
ta f.sp.avenaeを植菌した、エンバク、Avena sativa L.
またはAvena nuda L.から単離される。
【0071】
アベナンスラミドLおよび天然の供給源から単離した自然発生の類似体アベナンスラミ
ド化合物は、代わりに有機合成によっても生成することができる。当技術分野で公知の合
成方法は、例えば、米国特許第6,096,770号および米国特許第6,127,39
2号、特開昭60019754号公報およびハンガリー特許第HU200996B号に例
示されている。
【0072】
前記調製した合成アベナンスラミド物質は、エンバクから抽出した対応する自然発生の
アベナンスラミド化合物と同一である。
【0073】
自然発生のアベナンスラミドLおよびエンバクから単離した自然発生の類似体アベナン
スラミド化合物とは別に、一般式2で表され、上で定義されたような非自然発生の類似体
アベナンスラミド化合物(本明細書でこれより以下非自然発生の類似体アベナンスラミド
化合物と名付けられている)は、文献において公知のステップによる有機合成法で、例え
ば、WO2004/047833A1またはWO2007/062957A1において付
与された方法により人為的に生成され、前記文献におけるアベナンスラミドL化合物およ
びこれらの類似体に関する対応する開示は参照により本明細書に組み込まれている。
【0074】
「アベナンスラミドL」または「類似体アベナンスラミド化合物」という用語は、存在
するこれらの様々な異性体、とりわけ、例えば、光曝露による光異性化で誘発された自然
発生のtrans-異性体ならびにcis-異性体もまた含むことを意図する。
【0075】
本発明の好ましい変化形では、エンバクから富化、単離および精製された天然アベナン
スラミドLが本発明に従い使用される。
【0076】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドL以外の自然発生のアベナンスラミド化合
物は、Avena属の植物から抽出により、特に任意のエンバク種、新鮮もしくは乾燥し
た、またはその部分、例えば、エンバク種Avena sativaまたはAvena
nudaの粉砕された穀粒、粉砕されていない穀粒、殻、トリコームまたはエンバクわら
から得られ、単離される。
【0077】
好ましい変化形では、エンバク抽出物のための出発原料は、Avena sativa
種もしくはAvena nuda種の粉砕されたもしくは粉砕されていない穀粒またはエ
ンバクわらである。
【0078】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミド(avenathramide)L以外の
自然発生のアベナンスラミド化合物を有利に抽出するための抽出溶媒(抽出剤)は、水と
有機溶媒の混合物からなる群から選択され、有機溶媒は好ましくは食料品または化粧品ま
たは薬学的調製物に適した溶媒である。言うまでもなくこのような溶媒は、食品、化粧品
または薬学的調製物の調製に適切であり、適合しなくてはならない。
【0079】
より好ましい変化形では、抽出溶媒は水とアルコールまたはアセトンの混合物を含む。
アルコールは好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール
、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールおよび混合物、すなわちこれらの組
合せからなる群から選択される。本発明の抽出ステップに対して最も好ましい抽出溶媒(
抽出剤)はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールもしくはアセ
トン、または前記溶媒の任意の混合物のそれぞれの組合せであり、それぞれは水との混合
物である。純粋な有機溶媒の使用はトリグリセリドの同時抽出により有利ではない。
【0080】
抽出溶媒中の、水の、有機溶媒に対する混合比、好ましくは水のアルコールに対する混
合比または水のアセトンに対する混合比は、いずれの場合も、生成した抽出溶媒に対して
、10:90~90:10(v/v)の範囲であり、好ましくは20:80~80:20
(v/v)の範囲であり、最も好ましくは30:70~70:30(v/v)の範囲であ
る。
【0081】
特に好ましい抽出溶媒(抽出剤)は、メタノール/水(3:7)、メタノール/水(1
:1)、メタノール/水(7:3)、エタノール/水(3:7)、エタノール/水(1:
1)、エタノール/水(1:4)、エタノール/水(7:3)、イソプロパノール/水(
3:7)、イソプロパノール/水(1:1)、イソプロパノール/水(7:3)、アセト
ン/水(3:7)、アセトン/水(1:1)、アセトン/水(7:3)である。
【0082】
前記抽出混合物(抽出剤)から、メタノール/水(1:1)、メタノール/水(7:3
)、エタノール/水(1:1)、エタノール/水(1:4)、イソプロパノール/水(3
:7)、イソプロパノール/水(1:1)、イソプロパノール/水(7:3)、アセトン
/水(3:7)、アセトン/水(1:1)およびアセトン/水(7:3)が特に有利であ
る。これは、これら抽出剤を用いた抽出が、高いアベナンスラミドL含有量(表10を参
照されたい)を有する抽出物を結果として生じるからである。これら抽出剤によるアベナ
ンスラミドLの収率は>150ppmであり、より好ましくは>190ppmであり、最
も好ましくは>200ppmである。
【0083】
抽出収率を改善するため、エンバク供給源は、30~80℃、好ましくは40~70℃
、より好ましくは50~60℃の範囲の温度で抽出される。粉砕されたエンバク穀粒に対
する抽出収率は、40~70℃の間で温度が増加すると共に増加する。粉砕されたエンバ
クからの抽出は、50~60℃の間の温度で、収率およびアベナンスラミドL含有量とい
う点から最も良い結果を生じ、したがって好ましい。
【0084】
天然または合成の単一アベナンスラミドL化合物の代わりに、アベナンスラミドLを含
むエンバク抽出物もまた本発明に従い使用することができる。本発明の文脈内で、「エン
バク抽出物」という用語は、エンバクから得られる化合物または化合物の混合物を包含す
ることが一般的に意図されている。
【0085】
アベナンスラミドLを含むまたはアベナンスラミドLの混合物および上に記載されてい
るようなアベナンスラミドL以外の自然発生の類似体アベナンスラミド化合物を包含する
このような抽出物は、水、アルコール、アセトンもしくはこれらの混合物を用いた抽出(
例えば、浸軟、浸出、ソックスレーの使用による抽出、マイクロ波または超音波)により
、またはこれら溶媒もしくはこれらの混合物を用いた亜臨界流体抽出により得られる。こ
れらは好ましくは様々な溶媒組成物、例えば、純粋なメタノール、エタノール、n-プロ
パノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールおよび
混合物、すなわちこれらの組合せ、または水との混合物中の前記溶媒を使用して抽出され
る。異なる時間にわたり室温でまたは制御された加熱下で、例えば、ハダカエンバク、5
0%水性エタノールなどを用いて、抽出手順が達成された[Tong L.ら、Jour
nal of Integrative Agriculture、2014、13巻、
1809ページ]。Maliarova、M.ら、Journal of the Br
azilian Chemical Society、2015、26巻(11号)、2
369~2378ページは、ハダカエンバクふすまからのAvnsの抽出について、メタ
ノール、エタノールおよびイソプロパノールの効率を比較した。Avnsの最も高い収率
に対する最適条件は、メタノール濃度70%、抽出温度55℃および抽出時間165分間
である。
【0086】
抽出物は、Avena属の植物、特に任意のエンバク種、新鮮もしくは乾燥した、また
はその部分、例えば、エンバク種のAvena sativaまたはAvena nud
aの粉砕された穀粒、粉砕されていない穀粒、殻、トリコームまたはエンバクわらから得
られる。抽出のための開始製品は、エンバク油生成から得られるエンバク穀粒残渣である
こともできる。
【0087】
好ましい変化形では、エンバク抽出物のための出発原料は、Avena sativa
種またはAvena nuda種の粉砕されたもしくは粉砕されていない穀粒またはエン
バクわらである。
【0088】
アベナンスラミドLおよび自然発生の類似体アベナンスラミド化合物を有利に抽出する
ための抽出溶媒(抽出剤)は、水と有機溶媒の混合物からなる群から選択され、有機溶媒
は好ましくは食料品または化粧品または薬学的調製物に適した溶媒である。言うまでもな
くこのような溶媒は、食品、化粧品または薬学的調製物の調製に適切であり、適合しなく
てはならない。
【0089】
より好ましい変化形では、抽出溶媒は水とアルコールまたはアセトンの混合物を含む。
アルコールは好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール
、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールおよびこれらの混合物、すなわち組
合せからなる群から選択される。本発明の抽出ステップに対して最も好ましい抽出溶媒(
抽出剤)はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールもしくはアセ
トン、または前記溶媒の任意の混合物のそれぞれの組合せであり、それぞれは水との混合
物である。純粋な有機溶媒の使用はトリグリセリドの同時抽出により有利ではない。
【0090】
抽出溶媒中の、水の、有機溶媒に対する、好ましくは水のアルコールに対するまたは水
のアセトンに対する混合比は、生成した抽出溶媒の各事例に対して、10:90~90:
10(v/v)の範囲であり、好ましくは20:80~80:20(v/v)の範囲であ
り、最も好ましくは30:70~70:30(v/v)の範囲である。
【0091】
特に好ましい抽出溶媒(抽出剤)は、メタノール/水(3:7)、メタノール/水(1
:1)、メタノール/水(7:3)、エタノール/水(3:7)、エタノール/水(1:
1)、エタノール/水(1:4)、エタノール/水(7:3)、イソプロパノール/水(
3:7)、イソプロパノール/水(1:1)、イソプロパノール/水(7:3)、アセト
ン/水(3:7)、アセトン/水(1:1)、アセトン/水(7:3)である。
【0092】
前記抽出混合物(抽出剤)から、メタノール/水(1:1)、メタノール/水(7:3
)、エタノール/水(1:1)、エタノール/水(1:4)、イソプロパノール/水(3
:7)、イソプロパノール/水(1:1)、イソプロパノール/水(7:3)、アセトン
/水(3:7)、アセトン/水(1:1)およびアセトン/水(7:3)が特に有利であ
る。これは、これらの抽出剤を用いた抽出が、高いアベナンスラミドL含有量(表10を
参照されたい)を有する抽出物を結果として生じるからである。これらの抽出剤によるア
ベナンスラミドLの収率は>150ppmであり、より好ましくは>190ppmであり
、最も好ましくは>200ppmである。
【0093】
抽出収率を改善するため、エンバク供給源は、30~80℃、好ましくは40~70℃
、およびより好ましくは50~60℃の範囲の温度で抽出される。粉砕されたエンバク穀
粒に対する抽出収率は、40~70℃の間で温度が増加すると共に増加する。粉砕された
エンバクからの抽出は、50~60℃の間の温度で、収率およびアベナンスラミド含有量
、特にアベナンスラミドL含有量という点から最も良い結果をもたらし、したがって好ま
しい。
【0094】
溶媒の組成を改変することは、抽出することになるアベナンスラミド物質、よって組成
物の抽出選択性を変え、これによってその生物学的活性を増強または減少させることがで
きる。
【0095】
本発明の好ましい変化形では、エンバク抽出物は、少なくともアベナンスラミドLを含
む、または少なくともアベナンスラミド(aventhramide)Lおよび上で記載
され、定義されたような1種もしくは複数のその類似体アベナンスラミド(anvena
nthramide)化合物を含む。
【0096】
本発明の別の好ましい変化形では、アベナンスラミド(avenanthramdie
)LまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、上で記載され、定義されたよう
な、アベナンスラミドL以外のおよび一般式1で表されたまたは表1で特定されたアベナ
ンスラミドからなる群から選択される1種、2種、3種もしくはさらにこれよりも多くの
自然発生の類似体アベナンスラミド化合物と組み合わせてさらに使用することができる。
よって、アベナンスラミドの生成した混合物は、アベナンスラミドLと、上の表1で特定
され、定義されたようなアベナンスラミドL以外の1種または複数の類似体アベナンスラ
ミド化合物との任意の可能な組合せを含むことができる。
【0097】
本発明の別の好ましい変化形では、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含
むエンバク抽出物は、アベナンスラミドL以外の、および上で記載され、定義されたよう
な上記一般式2で表されるアベナンスラミドからなる群から選択される1種、2種、3種
またはさらにこれよりも多くの非自然発生の類似体アベナンスラミド化合物と組み合わせ
てさらに使用することができる。よって、生成したアベナンスラミドの混合物は、アベナ
ンスラミドLと、上記一般式2で表されるようなアベナンスラミドL以外の1種または複
数の類似体アベナンスラミド化合物との任意の可能な組合せを含むことができる。
【0098】
好ましくは、エンバクから得られ、本発明に従い使用されるアベナンスラミドLまたは
アベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、よって、アベナンスラミドA、B、C、G
、H、KおよびRからなる群から選択される少なくとも1種のさらなる類似体アベナンス
ラミドと組み合わせてさらに使用することができる。本発明の範囲内には、アベナンスラ
ミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の任意の組合せが、A、B、C、
G、H、KおよびRからなる群から選択される1種、2種、3種またはさらにこれよりも
多くの他の自然発生の類似体アベナンスラミド化合物と組み合わせて包含される。
【0099】
好ましい変化形では、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽
出物は、アベナンスラミドの以下の組合せを含むことができる:Avns LとA;Av
ns LとB;Avns LとC;Avns LとG;Avns LとH;Avns L
とK;Avns LとR;Avns L、A、B;Avns L、A、C;Avns L
、A、G;Avns L、A、H;Avns L、A、K;Avns L、A、R、Av
ns L、B、C;Avns L、B、G;Avns L、B、H;Avns L、B、
K;Avns L、B、R;Avns L、C、G;Avns L、C、H;Avns
L、C、K;Avns L、C、R;Avns L、G、H;Avns L、G、K;A
vns L、G、R;Avns L、H、K;Avns L、H、R;Avns L、K
、R;Avns L、A、B、C;Avns L、A、B、G;Avns L、A、B、
C、H;Avns L、A、B、C、K;Avns L、A、B、C、R;Avns L
、A、C、G;Avns L、A、C、H;Avns L、B、C、G;Avns L、
B、C、H;Avns L、B、C、K;Avns L、B、C、R;Avns L、C
、G、H;Avns L、C、G、K;Avns L、C、G、R;Avns L、G、
H、K;Avns L、G、H、RおよびAvns L、H、K、R。
【0100】
加えて、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、アベ
ナンスラミドA、B、C、G、H、K、LおよびR以外のアベナンスラミド、例えば、表
1で特定されたようなアベナンスラミドD、E、FU、X、Y(2とも呼ばれる)、AA
、CCまたはOOも含むことができる。
【0101】
特に好ましい組合せは、Avns LとA;Avns LとB;Avns LとC;A
vns LとG;Avns LとH;Avns LとK;およびAvns LとRである
。しかし、最も好ましいアベナンスラミドの混合物はAvns LとAおよびA/B/C
と組み合わせたAvns Lである。非常に特に好ましいのは、実施例7で実証されたよ
うなその相乗効果により、Avn LとAvn Aの組合せである。
【0102】
溶媒の組成を改変することは、抽出することになるアベナンスラミド物質の抽出選択性
を変え、よって調製物の組成を変え、これによってその生物学的活性を増強または減少さ
せることができる。
【0103】
さらに好ましい変化形では、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエン
バク抽出物は、アベナンスラミドの以下の組合せを含むことができる:Avn Lと化合
物番号8(ジヒドロアベナンスラミドD)またはAvn Lと化合物番号27。
【0104】
驚くことに、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、
極めて興味深い生物学的メリット、例えば、抗炎症性、抗酸化性、抗痒み、抗刺激性およ
び抗アテローム生成活性を示し、よって皮膚保護に対して、ならびに皮膚病の予防および
/または処置において有益な薬剤であることが結果的に判明したのである。特に、アベナ
ンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、皮膚病、特にバリアに
関連した、炎症性、免疫アレルギー性、アテローム生成性、乾燥性または過剰増殖性タイ
プを有する皮膚障害または角質障害の予防および/または処置において有効な薬剤である
ことが結果的に判明したのである。
ニューロキニン-1受容体NK1Rのアンタゴニストとしての、アベナンスラミドLまた
はアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の使用
【0105】
第1の態様によると、本発明は、ニューロキニン-1受容体NK1Rのアンタゴニスト
としての、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の使用に
関連する。
【0106】
したがって、本発明は、それを必要とする対象において、ニューロキニン-1受容体N
K1Rを阻害するための方法であって、対象に、アベナンスラミドLまたはアベナンスラ
ミド(avenanthrmide)Lを含むエンバク抽出物を、対象においてニューロ
キニン-1受容体NK1Rを阻害するのに十分な量で投与することを含む方法に関する。
【0107】
驚くことに、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、
ニューロキニン-1受容体NK1RにおいてSPの結合に拮抗する能力を有することが結
果的に判明したのである。
【0108】
物質P(SP)は、炎症の重要な伝達物質であるため、主要な病原体の役割を果たすこ
とが公知である。SPは、タキキニンファミリーのペプチドのメンバーであり、哺乳動物
の末梢神経系および中枢神経系(CNS)において神経伝達物質またはモジュレーターと
して作用する。SPは神経繊維により生成され、分泌され、ニューロキニン-1受容体N
K1Rに結合する。ニューロキニン-1受容体NK1Rは、タキキニン受容体であり、細
胞内のシグナル伝達経路を活性化することが公知のGタンパク質カップリングしたレセプ
ターファミリーに属する。ニューロンからのこれらの産生に加えて、SPおよびそのNK
1受容体複合体は、異なる免疫細胞型、特に、ケラチノサイト、線維芽細胞および肥満細
胞を含む痒みの開始および伝達に関与している複数の皮膚細胞型に発現することが十分に
裏付けられている。
【0109】
特に、ケラチノサイト、線維芽細胞および肥満細胞でのSPの役割は、紅斑、膨疹およ
び掻痒症(痒み)を伴う炎症の誘導に主に関係しているように見える。
【0110】
次第に多くの記録がなされているように、SP-NK1受容体システムは多くの態様の
免疫応答を誘発またはモジュレートする。ニューロキニン-1受容体NK1Rの活性化は
、ホスホリパーゼC(PLC)/イノシトール-1,4,5-三リン酸塩(IP3)依存
性Ca2+-シグナル伝達経路を誘発する可能性があり、これが結果として、炎症誘発性
サイトカイン、例えば、インターロイキンの産生により炎症を生じる。両方の受容体は、
例えば、掻痒症の誘発および維持に関与している。NK1受容体アンタゴニストの使用を
介してSPの作用を阻止することは、皮膚障害、特に炎症性構成成分を有する皮膚障害の
処置に対する有望な治療手段として新たに浮上している。
【0111】
アベナンスラミドLのニューロキニン-1受容体NK1Rを阻害する能力は、実施例1
のように、ヒト組換えCHO細胞のアッセイを使用して実証することができる。
【0112】
驚くことに、アベナンスラミドLは、異なる濃度100、10、1および0.1ppm
のそれぞれにおいて、アベナンスラミドAの約2倍の活性がある。アベナンスラミドLは
また驚くことに、公知の合成ニューロキニン-1受容体NK1Rアンタゴニストジヒドロ
アベナンスラミドDより活性がある。
【0113】
アベナンスラミドCはアベナンスラミドLのおよそ2倍の活性があるが、極めて不安定
であるのに対して、アベナンスラミドLは、以下の実施例2で実証されているように、酸
素の作用および温度曝露による分解性が有意に低い。
【0114】
本発明によるアベナンスラミドLの使用は、前述のテストに記載されているようにニュ
ーロキニン-1受容体NK1Rに対する著しい活性を示し、ニューロキニン-1受容体N
K1Rが関係づけられている疾患の処置のため、特にスキンケア、頭皮ケア、ヘアケア、
ネイルケアのための化粧品として、ならびに/または皮膚状態、我慢できないおよび敏感
肌、皮膚刺激、皮膚発赤、膨疹、掻痒症(痒み)、皮膚の老化、しわの形成、皮膚体積の
減少、肌の弾力の喪失、色素斑、色素異常、乾燥肌、すなわち皮膚の保湿を必要とする乾
燥肌の予防および/もしくは処置における、または皮膚疾患もしくは角質疾患、特にバリ
アに関連した、炎症性、免疫アレルギー性、アテローム生成性、乾燥性もしくは過剰増殖
性の構成成分を有する皮膚疾患もしくは角質疾患の予防および/もしくは処置における医
薬として使用するための有望な道と考えられる。
【0115】
アベナンスラミドLはまた、実施例2で実証されているように、アベナンスラミドAお
よびCよりも有意に分解性が低い。
小熱ショックタンパク質の発現を誘発するための、またはCD44の発現を誘発するため
のアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の使用
【0116】
第2の態様によると、本発明は、小熱ショックタンパク質の発現および/もしくは遺伝
子発現を誘発するため、またはCD44の発現および/もしくは遺伝子発現を誘発するた
めのアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の使用に関する
。
【0117】
したがって、本発明は、それを必要とする対象において、小熱ショックタンパク質の発
現および/もしくは遺伝子発現を誘発するためのまたはCD44の発現および/もしくは
遺伝子発現を誘発するための方法であって、対象に、アベナンスラミドLまたはアベナン
スラミドLを含むエンバク抽出物を、対象において、小熱ショックタンパク質の発現およ
び/もしくは遺伝子発現を誘発するため、またはCD44の発現および/もしくは遺伝子
発現を誘発するために十分な量で投与することを含む方法に関する。
【0118】
驚くことに、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、
小熱ショックタンパク質(sHSP)の発現および/または遺伝子発現を誘発する能力を
有することが結果的に判明したのである。
【0119】
生物および細胞は、熱ショックタンパク質(HSP)と呼ばれるタンパク質の群の発現
を選択的に上方調節することにより、様々なストレス条件、例えば、環境、代謝性または
病態生理学的ストレスに応答する。
HSPは、新規タンパク質を安定化させて、正しいフォールディングを確実にする、ま
たは細胞ストレスにより損傷を受けたタンパク質が再びフォールディングするのを助け、
アポトーシスを阻止する分子シャペロンである。小熱ショックタンパク質(sHSP)は
、低い分子質量(12~43kDa)を有するATP非依存性分子シャペロンの、至る所
に存在する古いファミリーである。HSPは熱ショック後(常温よりも3~5℃上の温度
への曝露後、普通1時間またはそれよりも長い)、これらの発現が増加することにより同
定されている。熱ショックタンパク質の劇的な上方調節は、熱ショック応答の主要部分で
あり、主に熱ショック要素(HSF)により誘発される。
【0120】
HSPが熱による損傷から細胞を保護するという仮定は、以下の事実により支持される
:1)HSP発現はまさに熱耐性の発生および降下と並行して生じる(熱誘発性不活化に
対する抵抗);2)HSPの突然変異または不活化は高温で生存する細胞の能力を障害す
る;3)HSPの過剰発現は多くの場合高温に抵抗する細胞の能力を改善することができ
る。Avn Lを使用して熱ショックタンパク質を誘発することはこれまで記載されてい
ない。
【0121】
これらのタンパク質はこれらの分子質量に基づき6つの主要なファミリー、すなわちH
SP100、HSP90、HSP70、HSP60、HSP40および小熱ショックタン
パク質(sHSP)に分類されている。sHSPはサブユニット分子質量12~43kD
aを有する。小熱ショックタンパク質の例として、HSPB1、HSPB2およびHSP
B3(HSP27)、HSPB4(αA-クリスタリン)、HSPB5(αB-クリスタ
リン)、HSPB6(HSP20)およびHSPB8(HSP22)が挙げられる。
【0122】
大規模な研究は、sHSPの大部分、さらにαA-クリスタリンは、特に細胞タンパク
質のアンフォールディングをもたらすストレスの条件下で、非変性タンパク質に結合し、
よって、細胞を不可逆的タンパク質凝集による損傷から保護することによって、ATP非
依存性分子シャペロンとして作用することができることを実証した。タンパク質/ペプチ
ドの凝集の阻止における分子のシャペロン様活性に加えて、sHSP、例えば、HSP2
7およびαB-クリスタリンはまた、多様な細胞機能、例えば、ストレス耐性、タンパク
質フォールディング、タンパク質分解、細胞骨格完全性の維持、細胞死、分化、細胞周期
ならびにシグナル伝達および発生に関与している。sHSPファミリーのメンバーは、心
臓および神経保護、強力な抗アポトーシス活性、血管新生誘発特性および相互作用を含む
抗炎症特性を示す。これに加えて、小熱ショックタンパク質はまた免疫受容体を刺激する
こともでき、炎症誘発性シグナル伝達経路に関与しているタンパク質の適正なフォールデ
ィングにおいて重要である。
【0123】
ヒトsHSPは、これらの熱誘発性発現、組織および細胞内の局在化、構造、基質の好
みおよび機能に関して極めて異なる特徴を示す。これらの差異により、ヒトsHSPは、
急性および異なるタイプの慢性(疾患に関連した)ストレスから身を守ることに関して異
なる能力を示す。
【0124】
上で特定されたような、sHSP27(HSPB1、HSPB2、HSPB3)および
αB-クリスタリン(CRYAB/HSPB5)は、特にストレス条件下で、不可逆的タ
ンパク質凝集による損傷から細胞を保護するATP非依存性分子シャペロンとして作用す
ることができる。普通sHSPは、多様なストレス条件の間に生じる、凝集傾向のタンパ
ク質の早期アンフォールディング中間体を安定化させる。HSP27(HSPB2)は、
様々な細胞および組織において、例えば、表皮皮膚において事前のストレス刺激なしでも
見出すことができる。HSP27は大きなオリゴマー複合体としてそのシャペロン機能を
提供する。HSP27の誘発性は年齢と共に低減する。そのシャペロン機能に加えて、H
SP27は、皮膚バリアに連結している:その発現はケラチノサイトの分化と相関し、基
底層から顆粒層まで連続的に増加する。ケラチノサイトの分化は皮膚の角化層の形成をも
たらし、これは、優秀な表皮バリアの形成のために重要である。HSP27の損失はプロ
フィラグリンの過角化および誤処理に伴う。αB-クリスタリン(HspB5)は多くの
組織において構成的に発現され、抗アポトーシス特性およびシャペロン活性を有する。α
B-クリスタリンは、他のHSPと共に、すなわちHSP27と共にオリゴマーを形成す
ることができる。HSP27およびαB-クリスタリン(CRYAB)は角質層および有
棘層における健全な皮膚に局在している。
【0125】
小熱ショックタンパク質HSP27(HSPB2)およびαB-クリスタリン(CRY
AB)を上方調節するアベナンスラミドLの能力は、以下の実施例3により実証され得る
。
【0126】
結果は、驚くことに、アベナンスラミドLは100μMにおいて、小熱ショックタンパ
ク質HSP27(HSPB2)およびαB-クリスタリン(CRYAB)を上方調節する
が、大熱ショックタンパク質HSP90AA1およびHSP90AB1に対してはいかな
る作用もないことを示している。加えて、同じ試験濃度で試験した場合、アベナンスラミ
ドLは、アベナンスラミドAより効果的に小熱ショックタンパク質を上方調節する。
【0127】
よって、本発明の第2の態様の好ましい変化形では、アベナンスラミドLまたはアベナ
ンスラミドLを含むエンバク抽出物により上方調節される小熱ショックタンパク質は、H
SP27またはαB-クリスタリン(CRYAB)である。
【0128】
本発明に従うアベナンスラミドLの使用とは、上述の試験において顕著な活性を示し、
よって修復機序を媒介するための生理学的応答として、細胞の損傷を減少させるために、
および優秀な表皮バリアの形成において、有用と考えられる。加えて、小熱ショックタン
パク質の発現の誘発は、環境、代謝性または病態生理学的ストレスからヒトの皮膚、毛髪
および爪を保護するための重要な機序となり得る。
【0129】
またアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物調製物がCD
44の発現および/または遺伝子発現を誘発する能力を有することが結果的に判明したの
である。
【0130】
CD44は最もよく研究されたヒアルロン酸(HA)受容体であり、ケラチノサイトの
細胞表面上のHAに対する主要な受容体である。マトリックスHAは大部分の哺乳動物の
、表皮および真皮を含む組織の細胞外マトリックス(ECM)における主要なグリコサミ
ノグリカンであり、HAはいくつかの皮膚の表皮機能に関わっている。培養されたケラチ
ノサイト中のCD44(CD44 siRNAを使用)の下方制御はまたHA媒介性ケラ
チノサイトの分化および脂質合成を有意に阻害する[L.Y.Bourguignonら
、J.Invest.Dermatol.、2006、1356~1365ページ]。
【0131】
CD44は一般的に、豊富なHAを含有する組織中の細胞の増殖促進作用および遊走作
用を上方調節する。HAレベルおよび/またはHAとCD44の相互作用は、細胞分化を
調節することができる(例えば、表皮ケラチノサイトの角化および線維芽細胞の筋線維芽
細胞への分化)。正常な組織ホメオスタシスの間、表皮におけるヒアルロナン合成および
分解は活発であるが、バランスはとれている。しかし、このホメオスタシスが、侵襲、例
えば、外傷、バリア破壊、またはUVB照射により撹乱された場合にはいつでも、表皮ヒ
アルロナン含有量は急速に増加する。表皮侵襲後に見られるCD44の発現の増加はヒア
ルロナン蓄積と密接に相関する。その受容体CD44と一緒に作用するHAは、細胞生存
を支持し、上方調節されたHAシンターゼ発現を介して刺激されたHAの合成は、組織外
傷により誘発されるケラチノサイト活性化特有の特徴であり、恐らく適正な治癒応答に対
して重要なものである。CD44はまた炎症性応答を制限する役割を有するように見える
。これはまた炎症モデルにおいても示されている。
【0132】
老化した表皮は、多くの場合、バリア機能の異常および脂質合成の損失を特徴とする。
老化した皮膚の表皮機能障害および異常なケラチノサイト活性は、多くの場合、悪化した
臨床的帰結をもたらす(例えば、表皮の薄化(萎縮)、バリア機能障害、乾燥症/乾燥性
湿疹、創傷治癒の遅延、および炎症)。最近の研究は、異常なHA代謝が、皮膚の老化の
間のケラチノサイト活性に伴う変化、透過障壁ホメオスタシス、および創傷治癒に関与し
得ることを明らかにしている。
【0133】
CD44の発現を上方調節するアベナンスラミドLの能力は、以下の実施例4で実証す
ることができる。
【0134】
驚くことに、100μMにおいてアベナンスラミドLはCD44の発現を上方調節する
一方、アベナンスラミドAは同じ試験濃度でいかなる作用もないことを結果が示している
。
【0135】
本発明によるアベナンスラミドLの使用は、上述の試験において顕著な活性を示し、よ
って、HA/CD44媒介性活性、例えば、細胞の分化、増殖および移動、バリアホメオ
スタシス、皮膚の補水および創傷治癒に対する生理学的応答として有用であると考えられ
る。加えて、CD44の発現の誘発は、ヒトの皮膚、毛髪および爪を、環境、代謝性また
は病態生理学的ストレスから保護するための重要な機序となり得る。
抗酸化剤としての、またはBLVRBの発現を誘発するための、アベナンスラミドLまた
はアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の使用
【0136】
第3の態様によると、本発明は、抗酸化剤としての、またはBLVRBの発現を誘発す
るためのアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物の使用に関
する。
【0137】
したがって、本発明は、それを必要とする対象において、ROS形成を阻害するための
方法であって、対象に、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽
出物を、対象においてROS形成を阻害するのに十分な量で投与することを含む方法に関
する。
【0138】
「抗酸化剤」という用語は、本文書において使用される場合、被酸化性基質分子(例え
ば、被酸化性生物学的分子または被酸化性指標)を含有する混合物または構造中に存在す
る場合、被酸化性基質分子の酸化を有意に遅らせる、阻止するまたは阻害さえする物質ま
たは組成物を指す。抗酸化剤は、生物学的に重要な反応性フリーラジカルもしくは他の反
応性酸素種をスカベンジングすることにより、またはこれらの形成を阻止することにより
、またはフリーラジカルもしくは他の反応性酸素種を反応性の低い種に触媒作用により変
換することによって、作用することができる。
【0139】
驚くことに、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、
優れたラジカルスカベンジング活性、よって有意な抗酸化能を有することが結果的に判明
したのである。
【0140】
生物学的文脈において、反応性酸素種(ROS)は、酸素の正常な代謝の天然の副産物
として形成され、細胞シグナル伝達およびホメオスタシスにおいて重要な役割を有する。
しかし、環境ストレス(例えばUVまたは熱への暴露)を受けた時点で、ROSレベルは
劇的に増加し得る。累積的に、これは酸化ストレスとして公知である。
【0141】
酸化ストレスは、過剰のROSが細胞内で産生された場合(これは正常な抗酸化能を圧
倒し得る)、または抗酸化防御機序が損なわれた場合のいずれかの場合に生じる。反応性
酸素種(ROS)は酸素を含有する、化学的反応性のある化学種である。ROSの例とし
て、スーパーオキシドアニオン(O2
●-)、ヒドロキシル(OH●)、ペルオキシル(
RO2
●)アルコキシル(RO●)ラジカル、および非ラジカル化合物、例えば、過酸化
水素(H2O2)、次亜塩素酸(HOCl)および有機過酸化物が挙げられ、これらは、
内因性供給源(例えば、ミトコンドリア電子伝達鎖、チトクロムP450モノオキシゲナ
ーゼ、およびNADPHオキシダーゼ)、または外因性供給源(例えば汚染物質、薬物、
生体異物および放射線)のいずれかから生成され得る。ROS毒性は、主要な細胞の構成
成分に影響を与え、タンパク質、脂質およびDNAの有意な損傷、炎症、細胞および組織
傷害、ならびにアポトーシスの原因となる。
【0142】
抗酸化剤とは、細胞を酸化的損傷から保護し、よって、反応性酸素種(ROS)産生に
より引き起こされるいくつかの慢性疾患を阻止または緩和するのを助ける物質である。い
くつかの初期研究は、エンバク抽出物における有意な抗酸化活性を報告している。エンバ
クアベナンスラミドまたは誘導体を含有するいくつかの組成物が、これらの抗酸化性およ
びアンチエイジング活性により、化粧品、栄養補助食品および治療用調製物における使用
について記載されている。しかし、この活性に関与している抽出物中の特定の構成成分は
公知ではなかった。研究では、3種の最も豊富なアベナンスラミドA、BおよびCを合成
し、精製し、これらの抗酸化活性をin vitroシステムで測定した。すべてのアベ
ナンスラミドが抗酸化活性を示した。抗酸化活性の順番は、Avn C>Avn B>A
vn Aであることが判明した。
【0143】
酸化ストレスが、炎症性疾患を含む主要なヒト疾患の病因および進行において主要な役
割を果たし、これがまた老化にも関わっているという有力な証拠が存在する。酸化ストレ
スは皮膚の細胞構造に直接損傷を与えるばかりでなく、皮膚の炎症も増強し、皮膚のバリ
ア機能を弱め、微生物病原菌による感染症をも可能にする。老化のフリーラジカル理論に
よると、反応性酸素種(ROS)により開始される酸化的損傷は、老化の特徴である機能
低下に対する主要な誘因である。
【0144】
アベナンスラミドLのラジカルをスカベンジするまたはラジカル形成を阻害する能力、
およびその細胞の抗酸化活性は以下の実施例5および6により実証することができる。
【0145】
ABTSアッセイは、トロロックス(水溶性のビタミンE類似体)標準物質と比較した
場合、水相に生成するABTSラジカルをスカベンジする抗酸化剤の相対的能力を測定す
る。グリーンブルーの安定したラジカルカチオン性発色団2,2’-アジノ-ビス(3-
エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)(ABTS●+)は、強い酸化剤(例えば
、過マンガン酸カリウムまたは過硫酸カリウム)を使用した、ABTS塩との反応により
生成され、414、645、734および815nmにおいて最大吸収を有する。水素供
与する抗酸化剤によるブルーグリーンABTSラジカルの減少は、その特徴的な長い波吸
収スペクトルの抑制により測定される。
【0146】
以下の実施例5で実証されているように、アベナンスラミドAと比較して、類似の(濃
度5μMで)またはさらに改善された(濃度10μMで)抗酸化活性を有するアベナンス
ラミドLは、ラジカルスカベンジング活性により優れた抗酸化能を示し、よって有益な抗
酸化剤となることをABTSアッセイの結果は示している。
【0147】
アベナンスラミドLは、濃度5μMで使用した場合、ABTSアッセイを使用して決定
されたように、少なくとも40%のラジカルスカベンジング活性を有する。本発明の好ま
しい変化形では、アベナンスラミドLは、濃度10μMで使用した場合、少なくとも70
%のラジカルスカベンジング活性を有する。
【0148】
DCF-DAアッセイは、反応性酸素種(ROS)の存在により、2’,7’-ジクロ
ロフルオレセイン-ジアセテート(DCF-DA)が、極めて蛍光性の化合物2’,7’
-ジクロロフルオレセイン(DCF)へと酸化するのを検出することによる、酸化ストレ
スの検出のための蛍光定量的マイクロプレートアッセイである。DCF-DAアッセイは
、物質の細胞抗酸化活性を決定することを可能にする。
【0149】
DCF-DAアッセイの結果は、驚くことに、細胞系において、同じ試験濃度100μ
Mにおいて、アベナンスラミドLがアベナンスラミドAより高い抗酸化活性を示すことを
明確に示している。
【0150】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、BLVRBの
発現および/または遺伝子発現を誘発する能力を有することがまた結果的に判明したので
ある。
【0151】
ビリベルジン還元酵素は、正常な条件下ですべての組織内に見出される酵素である。ヒ
トにおいて、それぞれがそれ自体の遺伝子によってコードされている2種のアイソザイム
、ビリベルジン還元酵素A(BLVRA)およびビリベルジン還元酵素B(BLVRB)
が存在する。ビリベルジン還元酵素は、ビリベルジンをビリルビンへと変換し、ビリルビ
ンは鎖を破壊する細胞内の抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーである。ビリル
ビンは反応性酸素種(ROS)の作用を介してビリベルジンへと変換され戻される。した
がって、このサイクルはROSの中和を可能にし、したがってビリベルジン還元酵素の還
元酵素機能は、細胞保護的であると考えられる。B.Baiら[J.Photochem
.Photobiol.B、2015、144巻、35~41ページ]は、ビリベルジン
がその抗酸化機序および細胞シグナル調節作用により媒介されるUVB照射誘発性皮膚の
光損傷の阻止においてある役割を果たしていることを示している。
【0152】
BLVRBの遺伝子発現を上方調節するアベナンスラミドLの能力は、以下の実施例4
により実証することができる。
【0153】
驚くことに、アベナンスラミドLは100μMにおいてBLVRBの遺伝子発現を上方
調節する一方、アベナンスラミドAは同じ試験濃度においていかなる作用もないことを結
果は示している。
本発明によるアベナンスラミドLの使用は、優れたラジカルスカベンジング活性および
BLVRBの発現および/または遺伝子発現を上方調節する活性、よって有意な抗酸化能
を示し、したがって抗酸化剤として有用であると考えられる。加えて、抗酸化能は、環境
、代謝性または病態生理学的ストレスからヒトの皮膚、毛髪および爪を保護するための重
要な機序であり得る。
【0154】
本発明の化合物、すなわちアベナンスラミドL、またはアベナンスラミドLを含むエン
バク抽出物は、ニューロキニン-1受容体NK1Rアンタゴニストとして確立された有益
な作用および明確な活性、小熱ショックタンパク質の発現および/もしくは遺伝子発現を
誘発するまたはCD44の発現および/または遺伝子発現を誘発するための活性、あるい
は抗酸化薬剤としての活性を示す。これら有望な特性により、本発明の化合物は、化粧品
としておよび医学的用途の両方に有用であると証明された。
【0155】
したがって、本発明の1つの態様は、アベナンスラミドLもしくはアベナンスラミドL
を含むエンバク抽出物の、スキンケア、頭皮ケア、ヘアケア、ネイルケアのための化粧品
としての使用、または皮膚状態、我慢できないおよび敏感肌、皮膚刺激、皮膚発赤、膨疹
、掻痒症(痒み)、皮膚の老化、しわの形成、皮膚体積の減少、肌の弾力の喪失、色素斑
、色素異常、乾燥肌、すなわち皮膚の保湿を必要とする乾燥肌の予防および/もしくは処
置における使用のためのものである。
【0156】
本発明の別の態様は、医薬としての使用のための、アベナンスラミドLまたはアベナン
スラミドLを含むエンバク抽出物に関する。
【0157】
上述の有望な特性により、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバ
ク抽出物は、皮膚疾患または角質疾患、特にバリアに関連した、炎症性、免疫アレルギー
性、アテローム生成性、乾燥性または過剰増殖性構成成分を有する皮膚疾患または角質疾
患の予防および/または処置において有益となるように有用である。特に、アベナンスラ
ミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、皮膚病、特に痒みおよび/ま
たは痒みに関連した皮膚病の予防および/または処置において有益となるように有用であ
る。このような皮膚障害の例として、湿疹、乾癬、脂漏症、皮膚炎、紅斑、掻痒症(痒み
)、耳炎、乾燥症、炎症、刺激、線維症、扁平苔癬、ばら色粃糠疹、癜風、自己免疫性の
水疱性疾患、じんま疹様、アンジオダーマルおよびアレルギー性皮膚反応、ならびに創傷
治癒が挙げられる。
【0158】
したがって、本発明の別の態様は、皮膚疾患または角質疾患、特にバリアに関連した、
炎症性、免疫アレルギー性、アテローム生成性、乾燥性または過剰増殖性構成成分を有す
る皮膚疾患または角質疾患の予防および/または処置における使用のためのアベナンスラ
ミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物に関する。
【0159】
したがって、本発明は、それを必要とする対象において、皮膚疾患または角質疾患、特
にバリアに関連した、炎症性、免疫アレルギー性、乾燥性または過剰増殖性構成成分を有
する皮膚疾患または角質疾患を処置するための方法であって、対象に、治療有効量のアベ
ナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物を、対象において、ニュ
ーロキニン-1受容体NK1を阻害する、および/または小熱ショックタンパク質の発現
もしくはCD44の発現を誘発する、および/またはROS形成を阻害するのに十分な量
で投与することを含む方法に関する。
【0160】
本発明の好ましい変化形では、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエ
ンバク抽出物は、掻痒症(痒み)の予防および/または処置に有益となるように有用であ
る。
【0161】
慢性掻痒症は、様々な皮膚病状態および全身性疾患に伴う一般的な症状であり、場合に
よっては公知の状態が根底にない。慢性掻痒症は、臨床的症状(例えば、罹患した/炎症
性の、または正常な/非炎症性の皮膚および/または二次的ひっかき病変の存在と合わせ
て)および根底にある原因(例えば、皮膚病、全身性、神経系、心身性、混合したまたは
不確定の起源)により分類される。SPおよびニューロキニン-1受容体NK1Rは痒み
のシグナル伝達に重要な役割を果たすことは研究により十分裏付けされている。これは、
以下を実証する研究により支持されている:(i)ニューロキニン-1受容体NK1Rは
、皮膚の複数の細胞型、例えば、ケラチノサイトおよび肥満細胞ならびにCNSにおいて
幅広く発現する;(ii)多くの掻痒性皮膚病状態において、表皮にニューロキニン-1
受容体NK1Rの過剰発現が存在し、より多数のSP発現する神経繊維および炎症細胞が
皮膚に見出される;ならびに(iii)ニューロキニン-1受容体NK1Rアンタゴニス
トを使用して、ニューロキニン-1受容体NK1Rを遮断すると、痒みシグナルの伝達は
妨害され、よって痒みは減少する。
【0162】
これらのそれぞれの目的に対するアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含む
エンバク抽出物の使用は、治療有効量の物質または調製物を添加することにより、物質の
それぞれの治療的活性を付与するための方法に対応する。
【0163】
本発明の文脈内で、組成物の有効量とは、利益、例えば、障害、疾患または処置される
状態に伴う症状の減少を示すのに十分な各活性成分の量である。本発明の場合のように、
組合せまたは調製物に適用された場合、この用語は、利益をもたらす組み合わせた活性成
分の量を指す。
【0164】
本発明の別の態様は、前記皮膚状態または前記皮膚障害または角質障害のスキンケアま
たは予防および/または処置に有用な食品、栄養補助食品、化粧品、医薬および獣医用調
製物を調製するための、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽
出物の使用に関する。
【0165】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、従来の食品、
栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物に簡単に組み込むことができる。
【0166】
本文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物を含
有する化粧品および/または皮膚科用または角質用製剤は、組成において従来のものであ
り、皮膚科用または角質用処置または美容ケアの文脈内で皮膚、毛髪および/または爪を
処置するために機能することができる。
【0167】
皮膚病状態または皮膚疾患は、多くの場合、乾燥肌、ひっかいた皮膚、皮膚病変または
さらには炎症を伴うので、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク
抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物は、特に有利には、皮膚保湿および/も
しくは水分保持物質、清涼化剤、オスモライト、角質溶解物質、栄養物質、抗炎症性、抗
細菌性もしくは抗真菌性物質ならびに/または発赤緩和作用もしくは痒み緩和作用を有す
る物質ならびに/または皮膚軟化剤を含有する。
【0168】
本文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物を、
他の活性物質、例えば、任意選択で、他の相乗的強化物質または補助的物質さえも、例え
ば、以下に詳細に記載および例示されているような、抗炎症性、抗細菌性もしくは抗真菌
性物質、発赤緩和作用もしくは痒み緩和作用を有する物質、皮膚軟化剤、保湿剤および/
または清涼化剤および/または抗酸化剤、保存剤、(金属)キレート剤、浸透促進剤、お
よび/または化粧品として、もしくは薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて使用する
ことが可能であり、場合によっては有利でもある。
【0169】
痒みは、特に皮膚が乾燥している場合、特定の強度で生じる。化粧品または医薬品中の
皮膚水分調整剤の使用は痒みを有意に緩和することができる。したがって、本発明による
使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物を
含む化粧品および/または薬学的調製物はまた特に有利には、1種または複数の保湿調整
剤および/または水分保持物質を含有することができ、化粧品および/または医薬品への
用途において適切または慣習的である任意の保湿調整剤、例えば、乳酸ナトリウム、ウレ
アおよび誘導体、アルコール、3~12個の炭素原子を含むアルカンジオールもしくはア
ルカントリオール、好ましくはC3~C10-アルカンジオールおよびC3~C10-ア
ルカントリオールを使用することができ、より好ましくは、保湿調整剤は、グリセロール
、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリ
コール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオ
ールおよび1,2-デカンジオール、コラーゲン、エラスチンまたはヒアルロン酸、アジ
ピン酸ジアシル、ワセリン、ウロカニン酸、レシチン、パンテノール、フィタントリオー
ル、リコピン、(擬似)セラミド、グリコスフィンゴリピド、コレステロール、フィトス
テロール、キトサン、コンドロイチン硫酸、ラノリン、ラノリンエステル、アミノ酸、ア
ルファヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)およびその誘導体、単糖、二
糖およびオリゴ糖、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、レ
ブロースおよびラクトース、ポリシュガー、例えば、β-グルカン、特にエンバクまたは
酵母由来の1,3-1,4-β-グルカン、アルファ-ヒドロキシ脂肪酸、トリテルペン
酸、例えば、ベツリン酸またはウルソル酸および藻抽出物からなる。
【0170】
物質に応じて、使用される水分保持調整剤の濃度は、すぐに使える化粧品または医薬品
最終生成物の総重量に対して、0.1~10%(m/m)の間、好ましくは0.5~5%
(m/m)の間である。これらのデータは、特に、有利に使用されるようなジオール、例
えば、ヘキシレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、
1,2-オクタンジオールおよび1,2-デカンジオール、ならびに1,2-ヘキサンジ
オールと1,2-オクタンジオールの混合物に適用される。
【0171】
化粧品および医薬品における清涼化剤の使用は痒みを緩和することができる。したがっ
て、本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含む
エンバク抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物はまた、特に有利には、1種ま
たは複数の清涼化剤を含有することができる。本発明の枠組み内での使用に対して好まし
い個々の清涼化剤が以下に列挙されている。当業者であれば、多くの他の清涼化剤をこの
リストに加えることができる;列挙された清涼化剤は互いに組み合わせて使用することも
できる:l-メントール、d-メントール、ラセミメントール、メントングリセロールア
セタール(商標名:Frescolat(登録商標)MGA)、乳酸メンチル(商標名:
Frescolat(登録商標)ML;乳酸メンチルは好ましくはl-乳酸メンチル、特
にl-乳酸l-メンチルである)、置換メンチル-3-カルボキサミド(例えばメンチル
-3-カルボン酸N-エチルアミド)、2-イソプロピル-N-2,3-トリメチルブタ
ンアミド、置換シクロヘキサンカルボキサミド、3-メントキシプロパン-1,2-ジオ
ール、2-ヒドロキシエチルメンチルカーボネート、2-ヒドロキシプロピルメンチルカ
ーボネート、N-アセチルグリシンメンチルエステル、イソプレゴール、シュウ酸メンチ
ルエチルアミド(商標名:Frescolat(登録商標)X-cool)、ヒドロキシ
カルボン酸メンチルエステル(例えば、メンチル3-ヒドロキシブチレート)、コハク酸
モノメンチル、2-メルカプトシクロデカノン、メンチル2-ピロリジン-5-オンカル
ボキシレート、2,3-ジヒドロキシ-p-メンタン、3,3,5-トリメチルシクロヘ
キサノングリセロールケタール、3-メンチル-3,6-ジ-およびトリオキサアルカノ
エート、3-メンチルメトキシアセテートおよびイシリン。
【0172】
特定の相乗効果に基づき好ましい清涼化剤は、l-メントール、d-メントール、ラセ
ミメントール、メントングリセロールアセタール(商標名:Frescolat(登録商
標)MGA)、乳酸メンチル(好ましくはl-乳酸メンチル、特にl-乳酸l-メンチル
(商標名:Frescolat(登録商標)ML)、置換メンチル-3-カルボキサミド
(例えば、メンチル-3-カルボン酸N-エチルアミド)、2-イソプロピル-N-2,
3-トリメチルブタンアミド、置換シクロヘキサンカルボキサミド、3-メントキシ-プ
ロパン-1,2-ジオール、2-ヒドロキシエチルメンチルカーボネート、2-ヒドロキ
シプロピルメンチルカーボネート、シュウ酸メンチルエチルアミド(商標名:Fresc
olat(登録商標)X-cool)およびイソプレゴールである。特に好ましい清涼化
剤は、l-メントール、ラセミメントール、メントングリセロールアセタール(商標名:
Frescolat(登録商標)MGA)、乳酸メンチル(好ましくはl-乳酸メンチル
、特にl-乳酸l-メンチル(商標名:Frescolat(登録商標)ML)、3-メ
ントキシプロパン-1,2-ジオール、2-ヒドロキシエチルメンチルカーボネート、シ
ュウ酸メンチルエチルアミド(商標名:Frescolat(登録商標)X-cool)
および2-ヒドロキシ-プロピルメンチルカーボネートである。
【0173】
非常に特に好ましい清涼化剤は、l-メントール、メントングリセロールアセタール(
商標名:Frescolat(登録商標)MGA)、シュウ酸メンチルエチルアミド(商
標名:Frescolat(登録商標)X-cool)および乳酸メンチル(好ましくは
l-乳酸メンチル、特にl-乳酸l-メンチル(商標名:Frescolat(登録商標
)ML)である。
【0174】
物質に応じて、使用される清涼化剤の濃度は、すぐに使える化粧品または医薬品最終生
成物の総重量に対して、好ましくは0.01~20重量%の間であり、特に0.1~5重
量%の間である。
【0175】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエ
ンバク抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物は、特に有利には、1種または複
数のオスモライトを含有することもできる。ここで述べることができるオスモライトの例
として、糖アルコール(ミオイノシトール、マンニトール、ソルビトール)、第4級アミ
ン、例えば、タウリン、コリン、ベタイン、ベタイングリシン、エクトイン、ジグリセロ
ールホスフェート、ホスホリルコリンまたはグリセロホスホリルコリン、アミノ酸、例え
ば、グルタミン、グリシン、アラニン、グルタメート、アスパルテートまたはプロリン、
ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、無機リン酸塩、および前記化合物
のポリマー、例えば、タンパク質、ペプチド、ポリアミノ酸およびポリオールを含む群由
来の物質が挙げられる。すべてのオスモライトは皮膚保湿作用を同時に有する。
【0176】
好ましくは、角質溶解物質もまた、特に有利には、アベナンスラミドLまたはアベナン
スラミドLを含むエンバク抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物において使用
することができる。角質溶解化合物として、アルファヒドロキシ酸の大きな群が挙げられ
る。例えばサリチル酸が好ましくは使用される。
【0177】
例えば、乾燥および/または痒みのある皮膚の局所的化粧品または医薬的処置のため、
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物を含む化粧品および
/または薬学的調製物において、特に高い割合の栄養物質もまた、親油性構成成分による
経表皮性水の損失を減少させるために特に有利である。好ましい一実施形態では、化粧品
または薬学的調製物は、1種または複数の栄養を与える動物および/または植物脂肪、な
らびに油、例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、精製したダイズ油、パーム油、ゴマ油、ナ
タネ油、アーモンド油、ルリジサ油、マツヨイグサ油、ヤシ油、シアバター、ホホバ油、
マッコウクジラ油、タロウ、牛脚油およびラード、ならびに任意選択で他の栄養を与える
構成成分、例えば、8~30個のC原子を有する脂肪族アルコールを含有する。ここで使
用される脂肪族アルコールは、飽和または不飽和のいずれかおよび直鎖もしくは分枝のい
ずれかであることができる。本発明による混合物と特に好ましく組み合わせることができ
る栄養物質はまた、特にセラミド、ここでは、角質層の水保持能力を著しく改善する、N
-アシルスフィンゴシン(スフィンゴシンの脂肪酸アミド)またはこのような脂質の合成
類似体(いわゆる擬似セラミド)を意味すると理解されているセラミド;リン脂質、例え
ば、ダイズレシチン、卵レシチンおよびセファリン;ならびにワセリン、パラフィン油お
よびシリコーン油を含み、後者は中でもジアルキル-およびアルキルアリールシロキサン
、例えば、ジメチルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンならびにこれら
のアルコキシ化および四級化誘導体を含む。
【0178】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含む調
製物を含む化粧品および/もしくは薬学的調製物はまた、1種もしくは複数の抗炎症性物
質および/または発赤を緩和する物質および/または痒みを緩和する他の物質を含有する
ことができ、これらは、この文脈において、すべての抗炎症性活性物質、ならびに発赤お
よび痒みを緩和し、化粧品および/または皮膚病への用途に対して適切なおよび/または
慣例的に使用されている活性物質を含む。コルチコステロイド種のステロイド系抗炎症性
物質、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン誘導体、例えば、ヒドロコルチゾン
17-ブチレート、デキサメタゾン、デキサメタゾンホスフェート、メチルプレドニゾロ
ンまたはコルチゾンは、抗炎症性化合物または発赤および/または痒みを緩和する化合物
として有利に使用される。他のステロイド系抗炎症剤もまたこのリストに加えることがで
きる。非ステロイド性抗炎症剤を使用することも可能である。ここで言及することができ
る例として、オキシカム、例えば、ピロキシカムもしくはテノキシカム;サリチレート、
例えば、アスピリン、Disalcid(登録商標)、Solprin(登録商標)もし
くはフェンドサル;酢酸誘導体、例えば、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インド
メタシン、スリンダク、トルメチンもしくはクリンダナク;フェナム酸、例えば、メフェ
ナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸もしくはニフルム酸;プロピオン酸誘導体、
例えば、イブプロフェン、ナプロキセンもしくはベノキサプロフェン;またはピラゾール
、例えば、フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾン、フェブラゾンもしくはアザプロ
パゾンが挙げられる。可能な選択肢は、天然の抗炎症性物質または発赤および/もしくは
痒みを緩和する物質を使用することである。植物抽出物、特別な高活性の植物抽出物画分
および植物抽出物から単離した高純度活性物質を使用することができる。カモミール、ア
ロエベラ、Commiphora種、Rubia種、ヤナギ、ヤナギソウ、ショウガ、G
lycyrrhiza種、Rubus種、エンバク、カレンデュラ、アルニカ、セントジ
ョーンズワート、ハニーサックル、ローズマリー、Passiflora incarn
ata、マンサク、ショウガまたはEchinacea由来の抽出物、画分および活性物
質、ならびに純粋な物質、例えば、中でも(アルファ-)ビサボロール、アピゲニン、ア
ピゲニン-7-グルコシド、ギンゲロール、例えば、[6]-ギンゲロール、パラドール
、例えば、[6]-パラドール、ボスウェル酸、フィトステロール、グリチルリチン、グ
ラブリジンおよびリコカルコンAが特に好ましい。前記製剤はまた、2種以上の抗炎症性
活性化合物の混合物を含有することができる。
【0179】
物質に応じて、使用することができる抗炎症性化合物の濃度は、すぐに使える化粧品ま
たは医薬品最終生成物の総重量に対して、0.005~2%(m/m)の範囲であり、好
ましくは0.05~0.5%(m/m)の範囲である。これらのデータは、特にビサボロ
ール、またはビサボロールとショウガ抽出物もしくは[6]-パラドールとの相乗的混合
物に適用される。
【0180】
他の抗細菌または抗真菌活性物質もまた、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミド
Lを含むエンバク抽出物を含有する化粧品および/または薬学的調製物において特に有利
に使用することができ、化粧品および/または医薬品への用途に適切または慣習的である
任意の抗細菌または抗真菌活性物質を使用することができる。従来の抗生剤の大きな群に
加えて、ここで有利な他の製品として、例えば、特にトリクロサン、クリンバゾール、オ
クトキシグリセリン、Octopirox(登録商標)(1-ヒドロキシ-4-メチル-
6-(2,4,4-トリメチルペンチル)-2(1H)-ピリドン2-アミノエタノール
塩)、キトサン、ファルネソール、モノラウリン酸グリセロールまたは前記物質の組合せ
が挙げられ、これらは中でも脇の下匂い、足の匂いまたはフケに対して使用される。
【0181】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエ
ンバク抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物はまた、1種または複数の皮膚軟
化剤を含有することができ、化粧品および/または医薬品への用途に適切または慣習的で
ある任意の皮膚軟化剤、例えば、アルファ-ビサボロール、アズレン、グアイアズレン、
18-β-グリチルレチン酸、アラントイン、アロエベラ汁またはゲル、Hamamel
is virginiana(マンサク)、Echinacea種、Centella
asiatica、カモミール、Arnica monatana、Glycyrrhi
za種、藻、海藻およびCalendula officinalisの抽出物、ならび
に植物油、例えば、スイートアーモンド油、バオバブ油、オリーブ油およびパンテノール
を使用することができる。
【0182】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含む調
製物を含む化粧品および/もしくは薬学的調製物はまた、1種または複数の化粧品として
または薬学的に許容される賦形剤、例えば、このような調製物に従来から使用されている
もの、例えば、抗酸化剤、防腐剤、(金属)キレート剤、浸透促進剤、界面活性物質、乳
化剤、香油、消泡剤、着色剤、着色作用を有する顔料、増粘剤、界面活性物質、乳化剤、
可塑剤、他の保湿および/もしくは水分保持物質、脂肪、油、ワックス、または化粧品製
剤の他の従来の構成成分、例えば、アルコール、ポリオール、ポリマー、泡安定剤、電解
質、有機溶媒もしくはシリコーン誘導体を含有することができる。化粧品および/または
医薬品への用途に対して適切なまたは従来から使用されてきた、任意の想像できる抗酸化
剤、防腐剤、(金属)キレート剤、浸透促進剤、界面活性物質、乳化剤、香油、消泡剤、
着色剤、着色作用を有する顔料、増粘剤、界面活性物質、乳化剤、可塑剤、他の保湿およ
び/もしくは水分保持物質、脂肪、油、ワックスまたは化粧品製剤の他の従来の構成成分
、例えば、アルコール、ポリオール、ポリマー、泡安定剤、電解質、有機溶媒またはシリ
コーン誘導体を本発明に従いここで使用することができる。
【0183】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物と特に好ましく組
み合わせることができる他の化粧品および医薬賦形剤、基剤および助剤に関しては、WO
03/069994、WO2004/047833またはWO2007/062957の
詳細な記載を参照することができる。
【0184】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエ
ンバク抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物はまた、1種または複数の抗酸化
剤を特に有利には含有することができ、化粧品および/または医薬品への用途に対して適
切なまたは従来から使用されている任意の抗酸化剤を使用することができる。有利には、
抗酸化剤は、アミノ酸(例えばグリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およ
びこれらの誘導体、イミダゾール(例えばウロカニン酸)およびこれらの誘導体、ペプチ
ド、例えば、D,L-カルノシン、D-カルノシン、L-カルノシンおよびこれらの誘導
体(例えばアンセリン)、カロチノイド、カロテン(例えばα-カロテン、β-カロテン
、リコピン)およびこれらの誘導体、リポ酸およびその誘導体(例えばジヒドロリポ酸)
、金チオグルコース、プロピルチオウラシルおよび他のチオール(例えばチオレドキシン
、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミンおよびこれらのグリコシル、N-ア
セチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチルおよびラウリル、パルミトイル、オ
レイル、γ-リノレイル、コレステリルおよびグリセリルエステル)およびこれらの塩、
チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル、チオジプロピオン酸
およびこれらの誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオ
シドおよび塩)ならびにスルホキシミン化合物(例えばブチオニンスルホキシミン、ホモ
システインスルホキシミン、ブチオニンスルホン、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-チオニ
ンスルホキシミン)(これらは非常に低い許容される用量で)、さらに(金属)キレート
剤、例えばα-ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン、α-ヒ
ドロキシ酸(例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリ
ルビン、ビリベルジン、EDTA、EGTAおよびこれらの誘導体、不飽和脂肪酸および
これらの誘導体(例えばγ-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘
導体、ユビキノンおよびユビキノールおよびこれらの誘導体、ビタミンCおよびその誘導
体(例えばパルミチン酸アスコルビル、リン酸マグネシウムアスコルビル、酢酸アスコル
ビル)、トコフェロールおよびこれらの誘導体(例えば酢酸ビタミンE)、ビタミンAお
よびその誘導体(例えばパルミチン酸ビタミンA)、さらにベンゾイン樹脂の安息香酸コ
ニフェリル、ルチン酸およびその誘導体、フェルラ酸(ferrulic acid)お
よびその誘導体、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒド
ログアイアシン酸、ノルジヒドログアイアレチン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿
酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、亜鉛およびその誘導体(例えばZn
O、ZnSO4)、ギンゲロール、例えば[6]-ギンゲロール、パラドール、例えば[
6]-パラドール、セレンおよびその誘導体(例えばセレンメチオニン)、スチルベンお
よびこれらの誘導体(例えばスチルベンオキシド、trans-スチルベンオキシド)、
ならびに前記活性化合物の誘導体(例えば塩、エステル、エーテル、糖、ヌクレオチド、
ヌクレオシド、ペプチドおよび脂質)、例えば、本発明に従い適切であるものからなる群
から選択される。
【0185】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエ
ンバク抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物はまた、保存目的のための1種ま
たは複数の物質を特に有利に含有することができ、化粧品および/または医薬品への用途
に適切または慣習的であり、有利には、例えば、中でも安息香酸、そのエステルおよび塩
;プロピオン酸およびその塩;サリチル酸およびその塩;2,4-ヘキサン酸(ソルビン
酸)およびその塩;ホルムアルデヒドおよびパラホルムアルデヒド;2-ヒドロキシビフ
ェニルエーテルおよびその塩;2-亜鉛スルフィドピリジンN-オキシド;無機亜硫酸塩
および亜硫酸水素塩;ヨウ素酸ナトリウム;クロロブタノール;4-ヒドロキシ安息香酸
およびその塩およびエステル;デヒドロ酢酸;ギ酸;1,6-ビス(4-アミジノ-2-
ブロモフェノキシ)-n-ヘキサンおよびその塩;エチル水銀-(II)-チオサリチル
酸のナトリウム塩;フェニル水銀およびその塩;10-ウンデシレン酸およびその塩;5
-アミノ-1,3-ビス(2-エチルヘキシル)-5-メチルヘキサヒドロピリミジン;
5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン;2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロ
パンジオール;2,4-ジクロロベンジルアルコール;N-(4-クロロフェニル)-N
’-(3,4-ジクロロフェニル)ウレア;4-クロロ-m-クレゾール;2,4,4’
-トリクロロ-2’-ヒドロキシ-ジフェニルエーテル;4-クロロ-3,5-ジメチル
フェノール;1,1’-メチレン-ビス(3-(1-ヒドロキシメチル-2,4-ジオキ
シイミダゾリジン-5-イル)ウレア);ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸塩;
2-フェノキシエタノール;ヘキサメチレンテトラミン;1-(3-クロロアリル)-3
,5,7-トリアザ-1-アゾニアアダマンタンクロリド;1-(4-クロロ-フェノキ
シ)-1(1H-イミダゾール-1-イル)-3,3-ジメチル-2-ブタノン;1,3
-ビス(ヒドロキシメチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオン;ベン
ジルアルコール;Octopirox(登録商標);1,2-ジブロモ-2,4-ジシア
ノブタン;2,2’-メチレン-ビス(6-ブロモ-4-クロロ-フェノール);ブロモ
クロロフェン;5-クロロ-2-メチル-3(2H)-イソチアゾリノンおよび2-メチ
ル-3(2H)イソチアゾリノンと塩化マグネシウムおよび硝酸マグネシウムの混合物;
2-ベンジル-4-クロロフェノール;2-クロロアセトアミド;クロルヘキシジン;酢
酸クロルヘキシジン;グルコン酸クロルヘキシジン;塩酸クロルヘキシジン;1-フェノ
キシ-プロパン-2-オール;N-アルキル(C12~C22)トリメチルアンモニウム
ブロミドおよびクロリド;4,4-ジメチル-1,3-オキサゾリジン;N-ヒドロキシ
メチル-N-(1,3-ジ(ヒドロキシメチル)-2,5-ジオキソイミダゾリジン-4
-イル)-N’-ヒドロキシメチルウレア;1,6-ビス(4-アミジノフェノキシ)-
n-ヘキサンおよびその塩;グルタルアルデヒド5-エチル-1-アザ-3,7-ジオキ
サビシクロ(3.3.0)オクタン;3-(4-クロロフェノキシ)-1,2-プロパン
ジオール;ハイアミン;アルキル(C8~C18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリ
ド;アルキル(C8~C18)ジメチルベンジルアンモニウムブロミド;サッカリン酸ア
ルキル(C8~C18)ジメチルベンジルアンモニウム;ベンジルヘミホルマール;3-
ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート;o-シメン-5-オール、または((ヒド
ロキシメチル)アミノ)酢酸ナトリウムなどの防腐剤からなる群から選択される任意の防
腐剤を使用することができる。
【0186】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエ
ンバク抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物はまた、1種または複数の(金属
)キレート剤を特に有利に含有することもでき、化粧品および/または医薬品への用途に
適切または慣習的である任意の金属キレート剤を使用することができる。好ましい(金属
)キレート剤として、α-ヒドロキシ脂肪酸、フィチン酸、ラクトフェリン、α-ヒドロ
キシ酸、例えば、中でもクエン酸、乳酸およびリンゴ酸、ならびにフミン酸、胆汁酸、胆
汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジンまたはEDTA、EGTAおよびこれらの誘導体が
挙げられる。
【0187】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエ
ンバク抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物はまた、1種または複数の浸透促
進剤を特に有利に含有することもでき、化粧品および/または医薬品への用途に適切また
は慣習的である任意の浸透促進剤を使用することができる。浸透促進剤は、皮膚を介して
活性物質の浸透性を増強し得る。好ましい浸透促進剤として、スルホキシド(例えば、ジ
メチルスルホキシド、DMSO)、脂肪酸(例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸
、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノール酸)、脂肪酸
エステル(例えばオレイン酸エチル、ラウリン酸エチル)および脂肪族アルコール(例え
ばカプリル、デシル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、オレイル、リノレイ
ルアルコール)、アゾン(例えばラウロカプラム)、ピロリドン(例えば2-ピロリドン
、2P)、アルコールおよびアルカノール(例えばエタノール、プロパノール、ブタノー
ルまたはデカノール)、グリセロール、テルペン(例えば1,8-シネオール、リモネン
、メントン、ネロリドール、リナロール、およびメントール)、界面活性剤(例えばSD
SおよびSLS)、ウレア、ジメチルイソソルビドが挙げられる。本発明により使用され
る好ましい浸透促進剤は、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,2
-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール(Hydrolite-5)、1,2-ヘ
キサンジオール(Hydrolite 6)、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オク
タンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオールまたは1,2-ドデカ
ンジオール;1-3-ブタンジオール(ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール
、1,1’オキシジ-2-プロパノール(ジプロピレングリコール)およびその異性体;
1,3-プロパンジオール;ポリオール、アルコール;ジメチルイソソルビド(INCI
名);クエン酸トリエチル;ブチレンカーボネート;炭酸グリセリン;ジプロピレングリ
コールまたはこれらの任意の混合物である。
【0188】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエ
ンバク抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物はまた、特に結晶性または微結晶
性固体、例えば、無機マイクロ顔料が調製物に組み込まれる場合、1種または複数のアニ
オン性、カチオン性、非イオン性および/または両性の界面活性剤を特に有利に含有する
ことができる。界面活性剤は、水中に有機の、非極性物質を可溶化することが可能な両親
媒性物質である。界面活性剤分子の親水性部分は普通極性の官能基、例えば、-COO-
、-OSO3
-または-SO3
-であり、疎水性部分は通常非極性炭化水素ラジカルであ
る。界面活性剤は分子の親水性部分の種類および電荷により一般的に分類される。これら
は4つの群に分割することができる:アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤;両
性界面活性剤;および非イオン性界面活性剤。
【0189】
アニオン性界面活性剤は、通常カルボキシレート、スルフェートまたはスルホネート基
を官能基として含有する。水溶液中で、これらは、酸性または中性媒体中に負荷電の有機
イオンを形成する。カチオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム基の存在により実質的
に独占的に特徴付けられる。水溶液中で、これらは酸性または中性媒体中で正荷電の有機
イオンを形成する。両性界面活性剤は、アニオン性基とカチオン性基の両方を含有し、し
たがってpH値に応じて、水溶液中でアニオン性またはカチオン性の界面活性剤のように
挙動する。これらは強酸性媒体中で正電荷を有し、アルカリ性媒体中で負電荷を有する。
中性pH領域では、対照的に、これらは両性イオンである。ポリエーテル鎖は非イオン性
界面活性剤の典型である。非イオン性界面活性剤は、水性媒体中ではイオンを形成しない
。
【0190】
有利に使用することができるアニオン性界面活性剤として以下が挙げられる:アシルア
ミノ酸(およびこれらの塩)、例えば、アシルグルタメート、例えば、アシルグルタミン
酸ナトリウム、ジ-TEA-パルミトイルアスパルテートおよびカプリル酸/カプリン酸
グルタミン酸ナトリウム;アシルペプチド、例えば、パルミトイル加水分解乳タンパク質
、ココイル加水分解ダイズタンパク質ナトリウムおよびココイル加水分解コラーゲンナト
リウム/カリウム;サルコシネート、例えば、ミリストイルサルコシン、ラウロイルサル
コシンTEA、ラウロイルサルコシンナトリウムおよびココイルサルコシンナトリウム;
タウレート、例えばタウリン酸ラウロイルナトリウムおよびタウリン酸メチルココイルナ
トリウム;ラクチル酸アシル、例えばラクチル酸ラウロイルおよびラクチル酸カプロイル
;アラニネート;カルボン酸および誘導体、例えば、ラウリン酸、ステアリン酸アルミニ
ウム、マグネシウムアルカノレートおよびウンデシル酸亜鉛;エステルカルボン酸、例え
ば、ステアロイルラクチレートカルシウム、ラウレス-6シトレートおよびPEG-4ラ
ウラミドカルボン酸ナトリウム;エーテルカルボン酸、例えば、ラウレス-13カルボン
酸ナトリウムおよびPEG-6コカミドカルボン酸ナトリウム;リン酸エステルおよび塩
、例えば、DEA-オレス-10ホスフェートおよびジラウレス-4リン酸;スルホン酸
および塩、例えば、イセチオン酸アシル、例えば、ココイルイセチオン酸ナトリウム/ア
ンモニウム;アルキルアリールスルホン酸塩;スルホン酸アルキル、例えばココモノグリ
セリドスルホン酸ナトリウム、オレフィン(C12~14)スルホン酸ナトリウム、ラウ
リルスルホ酢酸ナトリウムおよびPEG-3コカミド硫酸マグネシウム;スルホスクシネ
ート、例えば、ジオクチルソジウムスルホスクシネート、スルホコハク酸ラウレス二ナト
リウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウムおよびスルホコハク酸ウンデシレナミドM
EA-二ナトリウム;および硫酸エステル、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、例えば、
ラウレス硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸マグネシウム、ラウ
レス硫酸MIPA、ラウレス硫酸TIPA、ミレス硫酸ナトリウムおよびC12~13パ
レス硫酸ナトリウム、および硫酸アルキル、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル
硫酸アンモニウムおよびラウリル硫酸TEA。
【0191】
有利に使用することができるカチオン性界面活性剤として、アルキルアミン、アルキル
イミダゾール、エトキシ化アミンおよび第四級界面活性剤:RNH2CH2CH2COO
-(pH7において);RNHCH2CH2COO-B+(pH12において)(式中、
B+は任意のカチオン、例えば、Na+である);エステルクワットが挙げられる。
【0192】
第四級界面活性剤は、4つのアルキル基またはアリール基に共有結合した少なくとも1
個のN原子を含有する。これはpH値に関係なく正電荷をもたらす。アルキルベタイン、
アルキルアミドプロピルベタインおよびアルキルアミドプロピルヒドロキシスルファン(
hydroxysulphaine)が有利である。使用されるカチオン性界面活性剤は
また、好ましくは第四級アンモニウム化合物の群、特に塩化ベンジルトリアルキルアンモ
ニウムまたは臭化ベンジルトリアルキルアンモニウム、例えば、塩化ベンジルジメチルス
テアリルアンモニウム、ならびにアルキルトリアルキルアンモニウム塩、例えば、塩化セ
チルトリメチルアンモニウムまたは臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルジ
メチルヒドロキシエチルアンモニウムまたは臭化アルキルジメチルヒドロキシエチルアン
モニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムまたは臭化ジアルキルジメチルアンモニ
ウム、アルキルアミドエチルトリメチルアンモニウムエーテルスルフェート、アルキルピ
リジニウム塩、例えば、塩化ラウリルピリジニウムまたは塩化セチルピリジニウム、イミ
ダゾリン誘導体およびカチオン性性質の化合物、例えば、アミンオキシド、例えば、アル
キルジメチルアミンオキシドまたはアルキルアミノエチルジメチルアミンオキシドから選
択することができる。セチルトリメチルアンモニウム塩は特に有利に使用することができ
る。
【0193】
有利に使用することができる両性界面活性剤として、アシル/ジアルキルエチレンジア
ミン、例えば、アシルアンホ酢酸ナトリウム、アシルアンホジプロピオン酸二ナトリウム
、アルキルアンホ二酢酸二ナトリウム、スルホン酸アンホヒドロキシプロピルアシルナト
リウム、アシルアンホ二酢酸二ナトリウムおよびアシルアンホプロピオン酸ナトリウム;
N-アルキルアミノ酸、例えば、アミノプロピルアルキルグルタミド、アルキルアミノプ
ロピオン酸、アルキルイミドジプロピオン酸ナトリウムおよびラウロアンホカルボキシグ
リシネートが挙げられる。
【0194】
有利に使用することができる非イオン性界面活性剤として、アルコール;アルカノール
アミド、例えば、コカミドMEA/DEA/MIPA、アミンオキシド、例えば、ココア
ミドプロピルアミンオキシド;カルボン酸の、酸化エチレン、グリセロール、ソルビタン
または他のアルコールとのエステル化により形成されるエステル;エーテル、例えば、エ
トキシ化/プロポキシ化アルコール、エトキシ化/プロポキシ化エステル、エトキシ化/
プロポキシ化グリセロールエステル、エトキシ化/プロポキシ化コレステロール、エトキ
シ化/プロポキシ化トリグリセリドエステル、エトキシ化/プロポキシ化ラノリン、エト
キシ化/プロポキシ化ポリシロキサン、プロポキシ化ポリオキシエチレン(POE)エー
テルおよびアルキルポリグリコシド、例えば、ラウリルグルコシド、デシルグリコシドお
よびヤシグリコシド;スクロースエステルおよびエーテル;ポリグリセロールエステル、
ジグリセロールエステル、モノグリセロールエステル;メチルグルコースエステル、ヒド
ロキシ酸のエステルが挙げられる。
【0195】
アニオン性および/または両性界面活性剤と、1種または複数の非イオン性界面活性剤
との組合せの使用もまた有利である。
【0196】
界面活性物質は、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物
を含有する調製物中に、調製物の総重量に対して、1~98%(m/m)の間の濃度で存
在することができる。
【0197】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエ
ンバク抽出物を含む化粧品および/または薬学的調製物はまた、化粧品または薬学的調製
物を調製するために当技術分野で一般的に使用される1種または複数の乳化剤を特に有利
に含有することができる。水中油型(O/W)乳化剤は、例えば、ポリエトキシル化また
はポリプロポキシル化またはポリエトキシル化およびポリプロポキシル化製品、例えば、
脂肪族アルコールエトキシレート、エトキシ化ウールワックスアルコール、一般式R-O
-(-CH2-CH2-O-)n-R’のポリエチレングリコールエーテル、一般式R-
COO-(-CH2-CH2-O-)n-Hの脂肪酸エトキシレート、一般式R-COO
-(-CH2-CH2-O-)n-R’のエーテル化脂肪酸エトキシレート、一般式R-
COO-(-CH2-CH2-O-)n-C(O)-R’のエステル化脂肪酸エトキシレ
ート、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、エトキシ化ソルビタンエス
テル、コレステロールエトキシレート、エトキシ化トリグリセリド、一般式R-COO-
(-CH2-CH2-O-)n-OOH(式中、nは5~30の数である)のアルキルエ
ーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、一般式R-O-(
-CH2-CH2-O-)n-SO3-Hのアルキルエーテル硫酸塩、一般式R-O-(
-CH2-CH(CH3)-O-)n-Hの脂肪族アルコールプロポキシレート、一般式
R-O-(-CH2-CH(CH3)-O-)n-R’のポリプロピレングリコールエー
テル、プロポキシ化ウールワックスアルコール、エーテル化脂肪酸プロポキシレートR-
COO-(-CH2-CH(CH3)-O-)n-R’、一般式R-COO-(-CH2
-CH(CH3)-O-)n-C(O)-R’のエステル化脂肪酸プロポキシレート、一
般式R-COO-(-CH2-CH(CH3)-O-)n-Hの脂肪酸プロポキシレート
、ポリプロピレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、プロポキシ化ソルビタンエス
テル、コレステロールプロポキシレート、プロポキシ化トリグリセリド、一般式R-O-
(-CH2-CH(CH3)-O-)n-CH2-COOHのアルキルエーテルカルボン
酸、一般式R-O-(-CH2-CH(CH3)-O-)n-SO3-Hのアルキルエー
テル硫酸塩(およびこれらスルフェートのベースとなる酸)、一般式R-O-Xn-Ym
-Hの脂肪族アルコールエトキシレート/プロポキシレート、一般式R-O-Xn-Yn
-R’のポリプロピレングリコールエーテル、一般式R-COO-Xn-Yn-R’のエ
ーテル化脂肪酸プロポキシレート、および一般式R-COO-Xn-Ym-Hの脂肪酸エ
トキシレート/プロポキシレートを含む群から有利に選択することができる。
【0198】
本発明に従い、使用されるポリエトキシル化またはポリプロポキシル化またはポリエト
キシル化およびポリプロポキシル化O/W乳化剤は、O/W乳化剤が飽和したRおよびR
’基を含有する場合、特に11~18のHLB値、特により有利には14.5~15.5
のHLB値を有する物質を含む群から有利に選択される。O/W乳化剤が不飽和のRおよ
び/またはR’基を含有する場合、またはイソアルキル誘導体が存在する場合、このよう
な乳化剤の好ましいHLB値はまたより低くても、より高くてもよい。脂肪族アルコール
エトキシレートは、エトキシ化ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびセチルス
テアリルアルコール(セテアリルアルコール)を含む群から有利に選択される。
【0199】
以下の乳化剤が特に好ましい:ポリエチレングリコール(13)ステアリルエーテル(
ステアレス-13)、ポリエチレングリコール(14)ステアリルエーテル(ステアレス
-14)、ポリエチレングリコール(15)ステアリルエーテル(ステアレス-15)、
ポリエチレングリコール(16)ステアリルエーテル(ステアレス-16)、ポリエチレ
ングリコール(17)ステアリルエーテル(ステアレス-17)、ポリエチレングリコー
ル(18)ステアリルエーテル(ステアレス-18)、ポリエチレングリコール(19)
ステアリルエーテル(ステアレス-19)、ポリエチレングリコール(20)ステアリル
エーテル(ステアレス-20)、ポリエチレングリコール(12)イソステアリルエーテ
ル(イソステアレス-12)、ポリエチレングリコール(13)イソステアリルエーテル
(イソステアレス-13)、ポリエチレングリコール(14)イソステアリルエーテル(
イソステアレス-14)、ポリエチレングリコール(15)イソステアリルエーテル(イ
ソステアレス-15)、ポリエチレングリコール(16)イソステアリルエーテル(イソ
ステアレス-16)、ポリエチレングリコール(17)イソステアリルエーテル(イソス
テアレス-17)、ポリエチレングリコール(18)イソステアリルエーテル(イソステ
アレス-18)、ポリエチレングリコール(19)イソステアリルエーテル(イソステア
レス-19)、ポリエチレングリコール(20)イソステアリルエーテル(イソステアレ
ス-20)、ポリエチレングリコール(13)セチルエーテル(セテス-13)、ポリエ
チレングリコール(14)セチルエーテル(セテス-14)、ポリエチレングリコール(
15)セチルエーテル(セテス-15)、ポリエチレングリコール(16)セチルエーテ
ル(セテス-16)、ポリエチレングリコール(17)セチルエーテル(セテス-17)
、ポリエチレングリコール(18)セチルエーテル(セテス-18)、ポリエチレングリ
コール(19)セチルエーテル(セテス-19)、ポリエチレングリコール(20)セチ
ルエーテル(セテス-20)、ポリエチレングリコール(13)イソセチルエーテル(イ
ソセテス-13)、ポリエチレングリコール(14)イソセチルエーテル(イソセテス-
14)、ポリエチレングリコール(15)イソセチルエーテル(イソセテス-15)、ポ
リエチレングリコール(16)イソセチルエーテル(イソセテス-16)、ポリエチレン
グリコール(17)イソセチルエーテル(イソセテス-17)、ポリエチレングリコール
(18)イソセチルエーテル(イソセテス-18)、ポリエチレングリコール(19)イ
ソセチルエーテル(イソセテス-19)、ポリエチレングリコール(20)イソセチルエ
ーテル(イソセテス-20)、ポリエチレングリコール(12)オレイルエーテル(オレ
ス-12)、ポリエチレングリコール(13)オレイルエーテル(オレス-13)、ポリ
エチレングリコール(14)オレイルエーテル(オレス-14)、ポリエチレングリコー
ル(15)オレイルエーテル(オレス-15)、ポリエチレングリコール(12)ラウリ
ルエーテル(ラウレス-12)、ポリエチレングリコール(12)イソラウリルエーテル
(イソラウレス-12)、ポリエチレングリコール(13)セチルステアリルエーテル(
セテアレス-13)、ポリエチレングリコール(14)セチルステアリルエーテル(セテ
アレス-14)、ポリエチレングリコール(15)セチルステアリルエーテル(セテアレ
ス-15)、ポリエチレングリコール(16)セチルステアリルエーテル(セテアレス-
16)、ポリエチレングリコール(17)セチルステアリルエーテル(セテアレス-17
)、ポリエチレングリコール(18)セチルステアリルエーテル(セテアレス-18)、
ポリエチレングリコール(19)セチルステアリルエーテル(セテアレス-19)および
ポリエチレングリコール(20)セチルステアリルエーテル(セテアレス-20)。
【0200】
脂肪酸エトキシレートもまた以下の群から有利に選択される:ポリエチレングリコール
(20)ステアレート、ポリエチレングリコール(21)ステアレート、ポリエチレング
リコール(22)ステアレート、ポリエチレングリコール(23)ステアレート、ポリエ
チレングリコール(24)ステアレート、ポリエチレングリコール(25)ステアレート
、ポリエチレングリコール(12)イソステアレート、ポリエチレングリコール(13)
イソステアレート、ポリエチレングリコール(14)イソステアレート、ポリエチレング
リコール(15)イソステアレート、ポリエチレングリコール(16)イソステアレート
、ポリエチレングリコール(17)イソステアレート、ポリエチレングリコール(18)
イソステアレート、ポリエチレングリコール(19)イソステアレート、ポリエチレング
リコール(20)イソステアレート、ポリエチレングリコール(21)イソステアレート
、ポリエチレングリコール(22)イソステアレート、ポリエチレングリコール(23)
イソステアレート、ポリエチレングリコール(24)イソステアレート、ポリエチレング
リコール(25)イソステアレート、ポリエチレングリコール(12)オレアート、ポリ
エチレングリコール(13)オレアート、ポリエチレングリコール(14)オレアート、
ポリエチレングリコール(15)オレアート、ポリエチレングリコール(16)オレアー
ト、ポリエチレングリコール(17)オレアート、ポリエチレングリコール(18)オレ
アート、ポリエチレングリコール(19)オレアートおよびポリエチレングリコール(2
0)オレアート。
【0201】
ラウレス-11カルボン酸ナトリウムは、エトキシ化アルキルエーテルカルボン酸また
はその塩として有利に使用することができる。ラウレス-14硫酸ナトリウムは、アルキ
ルエーテル硫酸塩として有利に使用することができる。ポリエチレングリコール(30)
コレステリルエーテルは、エトキシ化コレステロール誘導体として有利に使用することが
できる。ポリエチレングリコール(25)ダイズステロールもまた有用であると証明され
ている。
【0202】
ポリエチレングリコール(60)マツヨイグサグリセリドはエトキシ化トリグリセリド
として有利に使用することができる。
【0203】
ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステルはまた、ポリエチレングリコール
(20)ラウリン酸グリセリル、ポリエチレングリコール(21)ラウリン酸グリセリル
、ポリエチレングリコール(22)ラウリン酸グリセリル、ポリエチレングリコール(2
3)ラウリン酸グリセリル、ポリエチレングリコール(6)(カプリル酸/カプリン酸)
グリセリル、ポリエチレングリコール(20)オレイン酸グリセリル、ポリエチレングリ
コール(20)イソステアリン酸グリセリルおよびポリエチレングリコール(18)(オ
レイン酸/ヤシ油脂肪酸)グリセリルを含む群から有利に選択される。
【0204】
ソルビタンエステルも同様に、ポリエチレングリコール(20)モノラウリン酸ソルビ
タン、ポリエチレングリコール(20)モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリ
コール(20)モノイソステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール(20)モノ
パルミチン酸ソルビタンおよびポリエチレングリコール(20)モノオレイン酸ソルビタ
ンを含む群から有利に選択される。
【0205】
有利なW/O乳化剤として以下を使用することができる:8~30個の炭素原子を有す
る脂肪族アルコール;8~24個、特に12~18個のC原子の鎖長を有する飽和および
/または不飽和、分枝および/または非分枝アルカンカルボン酸のモノグリセロールエス
テル;8~24個、特に12~18個のC原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和
、分枝および/または非分枝アルカンカルボン酸のジグリセロールエステル;8~24個
、特に12~18個のC原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/ま
たは非分枝アルコールのモノグリセロールエーテル;8~24個、特に12~18個のC
原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルコールの
ジグリセロールエーテル;8~24個、特に12~18個のC原子の鎖長を有する飽和お
よび/または不飽和、分枝および/または非分枝アルカンカルボン酸のプロピレングリコ
ールエステル;ならびに8~24個、特に12~18個のC原子の鎖長を有する飽和およ
び/または不飽和、分枝および/または非分枝アルカンカルボン酸のソルビタンエステル
。
【0206】
特に有利なW/O乳化剤として、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸
グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン
酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸プロピレングリ
コール、モノイソステアリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコ
ール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノラ
ウリン酸ソルビタン、モノカプリル酸ソルビタン、モノイソオレイン酸ソルビタン、ジス
テアリン酸スクロース、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコー
ル、ベヘニルアルコール、イソベヘニルアルコール、セラキルアルコール、チミルアルコ
ール、ポリエチレングリコール(2)ステアリルエーテル(ステアレス-2)、モノラウ
リン酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリルおよびモノカプリル酸グリセリルが挙げら
れる。
【0207】
本発明による使用の文脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエ
ンバク抽出物はまた、ヘアおよび頭皮ケア製品のための香水組成物の構成成分として使用
することもでき、特にこれらの特定の有効性により、追加の痒み緩和特性または抗アレル
ギー特性を、例えば、香りをつけた最終製品に付与することができる。特に好ましい香水
組成物は、(a)知覚的に有効量の香水、(b)痒みを調整する、抗アレルギー性および
/または減感作量の、アントラニル酸アミドと抗フケ剤の相乗的に有効な混合物、ならび
に(c)任意選択で、1種または複数の賦形剤および/または添加物を含む。アベナンス
ラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、特有の弱い匂いだけを有す
るか、または完全に無臭でさえあり、この特性によりこれらが特に香水組成物に使用され
ることから、特に有利であることが証明された。
【0208】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、従来の化粧品
または皮膚科用または角質用製剤、例えば、中でもポンプスプレー剤、エアゾールスプレ
ー剤、クリーム剤、シャンプー剤、軟膏剤、チンキ剤、ローション剤、ネイルケア製品(
例えば、マニキュア液、マニキュア液リムーバー、爪バルサム)などに難なく組み込むこ
とができる。本文脈内で、アントラニル酸アミドと抗フケ剤の相乗的に有効な組合せを、
他の活性化合物と組み合わせることもまた可能であり、場合によっては有利である。本文
脈内で、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物を含有する
化粧品および/または皮膚科用または角質用製剤は、その他の点では、組成において従来
のものであることができ、美容ケアまたは皮膚科用または角質用処置の文脈内で皮膚、毛
髪および/または爪を処置するために使用することができる。
【0209】
化粧品または薬学的調製物が溶液またはローション剤である場合、使用することができ
る溶媒として以下が挙げられる:水または水溶液;脂肪油、脂肪、ワックスおよび他の天
然および合成の脂肪体、好ましくは脂肪酸と低いC数を有するアルコールとのエステル、
例えば、イソプロパノール、プロピレングリコールまたはグリセロール、または脂肪族ア
ルコールと、低いC数を有するアルカン酸とのエステル、または脂肪酸とのエステル;低
いC数を有するアルコール、ジオールまたはポリオール、およびこれらのエーテル、好ま
しくはエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセロール、エチレン
グリコール、エチレングリコールモノエチルまたはモノブチルエーテル、プロピレングリ
コールモノメチル、モノエチルまたはモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメ
チルまたはモノエチルエーテルおよび類似の生成物。上述の溶媒の混合物が特に使用され
る。アルコール性溶媒の場合、水は追加の構成物質であることができる。
【0210】
化粧品または薬学的調製物はまた、局所的適用に適した形態、例えば、ローション剤、
水性もしくは水性アルコール性ゲル、ベシクル分散剤、または単純もしくは複雑な乳剤と
して(O/W、W/O、O/W/OまたはW/O/W)、液体、半液体もしくは固体、例
えば、ミルク、クリーム剤、ゲル剤、クリーム剤-ゲル剤、ペースト剤またはスティック
剤へと製剤化することもでき、任意選択でエアゾール剤としてパッケージされてもよいし
、ムースもしくはスプレーの形態を取ることもできる。このような製剤は通常の方法によ
り調製される。
【0211】
乳剤を調製するために、油相は、以下の物質の群から有利に選択することができる:鉱
油、ミネラルワックス;脂肪油、脂肪、ワックスならびに他の天然および合成脂肪体、好
ましくは脂肪酸と低いC数を有するアルコール、例えば、イソプロパノール、プロピレン
グリコールもしくはグリセロールとのエステル、または脂肪族アルコールと、低いC数を
有するアルカン酸とのもしくは脂肪酸とのエステル;安息香酸アルキル;シリコーン油、
例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン
およびその混合した形態。
【0212】
有利には、3~30個のC原子の鎖長を有する、飽和および/または不飽和、分枝およ
び/または直鎖アルカンカルボン酸と、3~30個のC原子の鎖長を有する、飽和および
/または不飽和、分枝および/または直鎖アルコールとのエステル、芳香族カルボン酸と
、3~30個のC原子の鎖長を有する、飽和および/または不飽和、分枝および/または
直鎖アルコールとのエステルの群からのものを使用することができる。好ましいエステル
油として、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプ
ロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸n-ブチル、ラウリン酸n-ヘキシル、
オレイン酸n-デシル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノナ
ン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ス
テアリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルドデシル、オレイン酸オレイ
ル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、エルカ酸エルシルならびにこのようなエス
テルの合成、半合成および天然混合物、例えばホホバ油が挙げられる。
【0213】
加えて、油相は、分枝および非分枝炭化水素およびワックス、シリコーン油、ジアルキ
ルエーテルを含む群から有利に選択することができ、この群は飽和または不飽和、分枝ま
たは非分枝アルコール、さらに脂肪酸トリグリセリド、具体的には8~24個、特に12
~18個のC原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝
アルカンカルボン酸のトリグリセロールエステルを含む。脂肪酸トリグリセリドは、合成
、半合成および天然油、例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ピーナッツ油、ナ
タネ油、アーモンド油、パーム油、ヤシ油、パーム核油などを含む群から有利に選択する
ことができる。このような油およびワックス構成成分の任意の混合物もまた有利に使用す
ることができる。場合によっては、油相の唯一の脂質成分としてワックス、例えば、パル
ミチン酸セチルを使用することも有利である。有利には、油相は、2-エチルヘキシルイ
ソステアレート、オクチルドデカノール、イソトリデシルイソノナノエート、イソエイコ
サン、2-ヤシ油脂肪酸エチルヘキシル、C12~15安息香酸アルキル、カプリル酸-
カプリン酸トリグリセリドおよびジカプリリルエーテルを含む群から選択される。C12
~15安息香酸アルキルと2-エチルヘキシルイソステアレートの混合物、C12~15
安息香酸アルキルとイソトリデシルイソノナノエートの混合物ならびにC12~15安息
香酸アルキル、2-エチルヘキシルイソステアレートおよびイソトリデシルイソノナノエ
ートの混合物が特に有利である。炭化水素パラフィン油、スクワランおよびスクアレンも
また有利に使用することができる。油相はまた有利には、環式もしくは直鎖シリコーン油
を含有することができ、またはこのような油から完全になることもできるが、ただし他の
油相構成成分がシリコーン油に加えて好ましくは使用される。シクロメチコン(例えば、
デカメチルシクロペンタシロキサン)をシリコーン油として有利に使用することができる
。しかし、他のシリコーン油もまた有利に使用することができ、これには、例えば、ウン
デカメチルシクロトリシロキサン、ポリジメチルシロキサンおよびポリ(メチルフェニル
シロキサン)が含まれる。シクロメチコンおよびイソトリデシルイソノナノエートとシク
ロメチコンおよび2-エチルヘキシルイソステアレートの混合物もまた特に有利である。
【0214】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物を含有し、乳剤の
形態を取る調製物の水相は、低いC数を有するアルコール、ジオールまたはポリオール、
ならびにこれらのエーテル、好ましくはエタノール、イソプロパノール、プロピレングリ
コール、グリセロール、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルまたはモノ
ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノエチルまたはモノブチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテルおよび類似の生成物、な
らびにまた低いC数を有するアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、1,
2-プロパンジオールおよびグリセロール、および特に1種または複数の増粘剤を有利に
含むことができ、増粘剤は、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、多糖およびこれらの誘
導体を含む群、例えば、ヒアルロン酸、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセル
ロース、特に有利には、ポリアクリレートを含む群、好ましくはいわゆるカーボポールを
含む群由来のポリアクリレート、例えば、カーボポール型980、981、1382、2
984および5984から、それぞれこれら自体でまたは組み合わせて、有利に選択する
ことができる。
【0215】
高い含有量の処置物質は、皮膚の局所的、予防的または化粧品による処置のための、ア
ベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物を含有する調製物にお
いて普通有利である。好ましい変化形に従い、組成物は、1種または複数の動物および/
または植物処置脂肪および油、例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、精製されたダイズ油、
パーム油、ゴマ油、ナタネ油、アーモンド油、ルリジサ油、マツヨイグサ油、ヤシ油、シ
アバター、ホホバ油、マッコウクジラ油、牛脂、牛脚油およびラード、ならびに任意選択
で他の処置構成物質、例えば、C8~C30脂肪族アルコールを含有する。ここで使用さ
れる脂肪族アルコールは、飽和または不飽和および直鎖または分枝の脂肪族アルコールで
あり、例として、デカノール、デセノール、オクタノール、オクテノール、ドデカノール
、ドデセノール、オクタジエノール、デカジエノール、ドデカジエノール、オレイルアル
コール、リシノレイルアルコール、エルカアルコール、ステアリルアルコール、イソステ
アリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ア
ラキジルアルコール、カプリルアルコール、カプリックアルコール、リノレイルアルコー
ル、リノレニルアルコールおよびベヘニルアルコール、ならびにこれらのゲルベアルコー
ルを挙げることができる。このリストは、所望する場合、構造的、化学的に関連した他の
アルコールを含むように拡張することができる。脂肪族アルコールは、好ましくは天然脂
肪酸から生じ、普通脂肪酸の対応するエステルから還元により調製される。自然発生の脂
肪および脂肪油から還元により形成される脂肪族アルコール画分、例えば、牛脂、ピーナ
ッツ油、ナタネ油、綿実油、ダイズ油、ヒマワリ油、パーム核油、あまに油、トウモロコ
シ油、ヒマシ油、ナタネ油、ゴマ油、ココアバターおよびココア脂肪もまた使用すること
ができる。
【0216】
本発明による組成物またはエンバク抽出物と好ましく組み合わせることができる処置物
質として、以下もまた挙げることができる:セラミド、N-アシルスフィンゴシンと考え
られているもの(スフィンゴシンの脂肪酸アミド)またはこのような脂質の合成類似体(
いわゆる擬似セラミド)であり、これらは角質層の水保持能力を明確に改善する;リン脂
質、例えばダイズレシチン、卵レシチンおよびセファリン;Vaseline、パラフィ
ンおよびシリコーン油、後者は中でもジアルキル-およびアルキルアリール-シロキサン
、例えば、ジメチルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサン、ならびにこれ
らのアルコキシ化されたおよび四級化された誘導体を含む。
【0217】
加水分解した動物および/または植物タンパク質もまた、本発明による組成物またはエ
ンバク抽出物を含有する製剤に有利に加えることができる。この関連で有利な例として、
特にエラスチン、コラーゲン、ケラチン、乳タンパク質、ダイズタンパク質、エンバクタ
ンパク質、マメタンパク質、アーモンドタンパク質および小麦タンパク質画分または対応
する加水分解タンパク質、ならびにこれらの脂肪酸との縮合物、さらに四級化加水分解タ
ンパク質が挙げられ、加水分解植物タンパク質の使用が好ましい。
【0218】
アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物を含有する化粧品
または薬学的調製物はまた、化粧品としてまたは薬学的に許容される担体、例えば、当技
術分野で一般的に使用される以下のうちの1種を含むことができる(これらに限定されな
い):ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、ア
カシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性
セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ剤、メチルセルロース、
ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネ
シウム、鉱油など。化粧品または薬学的調製物はまた、上記構成成分に加えて、滑沢剤、
湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液、防腐剤などを含むことができる。適切な薬学
的に許容される担体および製剤は、Remington’s Pharmaceutic
al Sciences(第19版、1995)に詳細に記載されている。
【0219】
好ましい変化形では、食品、栄養補助食品、化粧品、医薬または獣医用調製物は、調製
物の総重量または最終組成物に対して、アベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを
含むエンバク抽出物を、0.0001~10重量%、好ましくは0.0005~5重量%
、より好ましくは0.001~1重量%の量で含む。
【0220】
使用のため、アベナンスラミドLを含有する化粧品もしくは薬学的調製物またはアベナ
ンスラミドLを含む調製物は、十分な量で、および化粧品または医薬品で慣習的であるよ
うな方式で、皮膚、毛髪および/または爪に適用される。
【0221】
ニューロキニン-1受容体NK1Rを阻害するその有意な作用のために、アベナンスラ
ミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物は、ニューロキニン-1受容体N
K1Rアンタゴニストとして適切である。
【0222】
よって、別の態様に従い、本発明は、ニューロキニン-1受容体NK1Rアンタゴニス
トとしてのアベナンスラミドLまたはアベナンスラミドLを含むエンバク抽出物に関する
。
【0223】
最後に、本発明は、アベナルミック酸および/またはアベナンスラミドLを調製するた
めの方法であって、
(a)亜リン酸トリエチル(1)と4-ブロモクロトン酸メチル(2)を反応させて、メ
チル(2E)-4-(ジエチルホスホリル)ブタ-2-エノエート(3)を形成するステ
ップ;
(b)HWE反応において、メチル(2E)-4-(ジエチルホスホリル)ブタ-2-エ
ノエート(3)を酢酸4-ホルミルフェニル(4)と反応させて、メチル(2E、4E)
-5-(4-ヒドロキシフェニル)ペンタ-2,4-ジエノエート(5)を形成するステ
ップ;
(c)水酸化ナトリウム溶液を使用して、アベナルミック酸メチルエステル(5)を脱保
護して、アベナルミック酸(Avn Ac)を生成するステップ;および
(d)カップリング試薬を使用し、任意の保護基を使用せずに、アベナルミック酸(Av
n Ac)を2-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸(6)と反応させて、アベナンスラミ
ドL(Avn L)を生成するステップ
を含む方法に関する。
【0224】
アベナルミック酸(Avn Ac)の合成のため、Li Y.ら、Food Chem
istry、2014、158巻、41~47ページからの公知の手順を少し改変して使
用して、亜リン酸トリエチル(1)および4-ブロモクロトン酸メチル(2)から出発し
て、メチル(2E)-4-(ジエチルホスホリル)ブタ-2-エノエート(3)をおよそ
収率80%で形成した。
【0225】
酢酸4-ホルミルフェニル(4)とのHWE反応において、メチル(2E)-4-(ジ
エチルホスホリル)ブタ-2-エノエート(3)を直接使用した。
【0226】
好ましい変化形では、Li Y.らからの公知の手順とは対照的に、本発明による方法
における方法ステップ(b)は、-78℃→0℃の温度、好ましくは-58℃→0℃の温
度における水素化ナトリウムの使用を含み、メチル(2E、4E)-5-(4-ヒドロキ
シフェニル)ペンタ-2,4-ジエノエート(5;アベナルミック酸メチルエステル)を
良い収率および優れた純度で生成する。これらは単純な摩砕で得られる。
【0227】
公知の合成と比較して、中間生成物(5)はその極性により、沈殿により有利に精製す
ることができる。
【0228】
アベナルミック酸メチルエステル(5)から出発して、1M水酸化ナトリウム溶液を使
用して、最終の脱保護ステップを実施し、さらに精製せずに、アベナルミック酸(Avn
Ac)を定量的収率および優れた純度で生成する。
【0229】
公知の合成と比較して、この合成ステップは穏やかな条件下で実施することができる。
【0230】
アベナンスラミドL(Avn L)を合成するため、驚くことに、カップリング試薬(
ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミ
ノプロピル)カルボジイミド(EDC)または1-シアノ(Ccano)-2-エトキシ
-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキ
サフルオロホスフェート(COMU))を使用し、任意の保護基を使用せずに、純粋なア
ベナルミック酸(Avn Ac)を2-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸(6)と反応さ
せた。
【化6】
【0231】
本発明の合成は、Miyagawa、Hら、Bioscience、Biotechn
ology、Biochemistry、1995、59巻(12号)、2305~23
06ページにおいて以前に報告された合成と比較して、必要なステップの数を3つ減少さ
せる。
【0232】
カップリング試薬および非保護の出発材料の使用は、驚くことに、危険な化合物、例え
ば、塩化チオニルまたは塩化オキサリルを回避した、より速い、より安価で、環境的にや
さしい合成をもたらす。アベナンスラミドLの精製は、水性分離、これに続く結晶化によ
り実施することができ、良い純度を生成し、またはその後分取HPLCを使用することに
より、以下の実施例8で実証されているように、優れた純度および収率をもたらすことが
できた。
【0233】
本発明が具体的に示され、好ましい変化形を参照して記載されている一方で、本発明の
趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細において様々な変更が行われ得る
ことを当業者であれば理解している。さらに、本発明は、他に具体的に指摘されていない
限り、すべての可能な変化形において上記に記載されている要素の任意の組合せを包含す
る。
【0234】
本発明は、以下の実施例を参照してここで詳細に記載されるが、これら実施例は単に本
発明の例示であるので、本発明の内容は以下の実施例により、または以下の実施例に限定
されるわけではない。
【実施例0235】
本発明の実施例を以下に記載する。しかし、本発明は詳述された実施例に限定されると
解釈されるべきではない。