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特開2024-160273感染症及び抗菌薬誘発性機能障害の予防及び/又は治療のための医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160273
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】感染症及び抗菌薬誘発性機能障害の予防及び/又は治療のための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/18 20060101AFI20241106BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/46 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C12Q1/18
C12Q1/02
A61P31/04
A61K45/06
A61P1/00
A61K31/11
A61K45/00
A61K38/12
A61P13/02 105
A61P9/14
A61P11/02
A61P11/00
A61P13/12
A61P1/16
A61P9/00
A61P25/00
A61P7/00
A61P27/02
A61P27/16
A61P17/00 101
A61P1/04
A61P17/00
A61P19/08
A61P19/02
A61P31/06
A61K9/20
A61K9/28
A61K9/48
A61K9/46
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/08
A61K9/02
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/70 401
A61K9/72
A61K9/12
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024125600
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2020559509の分割
【原出願日】2019-04-17
(31)【優先権主張番号】18169989.3
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】301076083
【氏名又は名称】ヨーロピアン モレキュラー バイオロジー ラボラトリー
【氏名又は名称原語表記】European Molecular Biology Laboratory
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】タイパス,アタナシオス
(72)【発明者】
【氏名】ゴンタオ ブロシャド,アナ リタ
(72)【発明者】
【氏名】ゴッチ,ステファン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細菌感染症及び抗菌薬誘発性機能障害の予防及び/又は治療のための医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、少数の細菌種の増殖の阻害において高い種特異性を示し、多剤耐性(MDR)臨床分離菌種に対しても有効である。これらの組み合わせのうちの1つは、非抗生物質バニリンと抗生物質スペクチノマイシンとを対にして、臨床的に関連しているグラム陰性病原菌及び多剤耐性大腸菌分離株の増殖に対して強い阻害効果を示す。第2の組の化合物は、ポリミキシンコリスチンを、ロペラミド、リファマイシン又はマクロライドと組み合わせる。本発明は、抗菌戦略の主な副作用を予防するための現在及び将来の薬剤開発の試みの主な試みである狭域抗菌薬療法を可能にする組み合わせに関する。また、本発明は、抗菌性化合物の使用によって誘発される、腸内マイクロバイオームに対する悪影響を予防するのに有用な混合医薬にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌に対する少なくとも2種の薬剤化合物の相乗的抗菌効果を特定する方法であって、
a)前記抗菌効果について試験される前記細菌を準備することと、
b)前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
なお、前記薬剤化合物のうちの少なくとも1種は、前記a)の細菌に対して抗菌効果を有することが知られており、前記薬剤化合物の他の少なくとも1種は、
(i)選択された第1の薬剤化合物と同じクラスに属すること、及び/又は選択された第1の薬剤化合物と同じ細菌細胞プロセスを標的とすることが知られている抗生物質、又は医薬として許容し得るその塩、並びに、
(ii)ヒト標的薬、食品添加物又は医薬として許容し得るその塩、
から選択される;
c)前記細菌における前記少なくとも2種の薬剤化合物の相乗的抗菌効果を特定することと、
d)工程c)において特定された前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
を含む、方法。
【請求項2】
細菌に対する少なくとも2種の薬剤化合物の拮抗的抗菌効果を特定する方法であって、
a)前記抗菌効果について試験される第1の細菌を準備することと、
b)前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
なお、前記薬剤化合物のうちの少なくとも1種は、第2の細菌に対して抗菌効果を有することが知られており、前記薬剤化合物の他の少なくとも1種は、抗生物質、ヒト標的薬、食品添加物、又は医薬として許容し得るその塩から選択され、好ましくは、前記薬剤化合物の他の少なくとも1種は、選択された第1の薬剤化合物とは異なるクラスに属すること、及び/又は選択された第1の薬剤化合物とは異なる細菌細胞プロセスを標的とすることが知られている;
c)前記a)の第1の細菌における前記少なくとも2種の薬剤化合物の拮抗的抗菌効果を特定することと、
d)工程c)において特定された前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
を含む、方法。
【請求項3】
前記細菌は、グラム陽性菌又はグラム陰性菌であり、前記細菌は、エンテロバクター属、エシェリキア属、赤痢菌属、セラチア属、プロテウス属、シュードモナス属、アシネトバクター属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、シュードモナス属、サルモネラ属、ヘリコバクター属、シトロバクター属、トレポネーマ属、マイコバクテリウム属、ボルデテラ属、ボレリア属、ブルセラ属、コリネバクテリウム属、紡錘菌属、レプトスピラ属、リステリア属、パスツレラ属、リケッチア属、フィーカリバクテリウム属、エガセラ属、ラクトニファクター属、大腸菌群、バチルス属、フランシセラ属、アシネトバクター属、レジオネラ属、アクチノバチルス属、コクシエラ属、ビフィドバクテリウム属、モビルンカス属、腸球菌属、放線菌属、ナイセリア属、クラミジア属、ビブリオ属、双球菌属、ラクトバチルス属、キンゲラ属、エルシニア属、クレブシエラ属、バクテロイデス属、ユーバクテリウム属、アリスティペス属、ルミノコッカス属、ロゼブリア属、パラバクテロイデス属、プレボテラ属、コプロコッカス属、ドレア属、ブラウティア属、オドリバクター属、クロストリジウム属、コリンセラ属、バイロフィラ属、アッカーマンシア属、ベイロネラ属、ヘモフィルス属、デスルホビブリオ属、ブチリビブリオ属、及び/又はカンピロバクター属のメンバーであり、任意に、前記細菌は、抗生物質耐性菌、特にその多剤耐性株である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
細菌感染症の予防及び/又は治療に用いる標的療法を開発する方法であって、
a)請求項1~3のいずれか一項に記載の方法を行うことと、
b)細菌に対する前記少なくとも2種の薬剤化合物の組み合わせの選択的抗菌効果を特定することと、
c)工程b)において特定された前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
を含む、方法。
【請求項5】
抗菌性医薬組成物を製造する方法であって、
a)請求項1~4のいずれか一項に記載の方法を行うことと、
b)選択された組み合わせを抗菌性医薬組成物に配合することと、
を含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によって製造される抗菌性医薬組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の抗菌性医薬組成物を用いる、腸内マイクロバイオームに対する悪影響を予防する方法であって、前記組成物の成分のうちの少なくとも1種が、少なくとも第1の細菌種及び第2の細菌種に対して抗菌効果を有し、少なくとも1種の他の成分が、前記第1の細菌種に対する前記抗菌効果を妨げる、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の抗菌性医薬組成物を用いて、抗菌薬耐性の発現及び/又は拡大を予防する方法。
【請求項9】
抗菌性医薬組成物であって、
(i)バニリン若しくは医薬として許容し得るその塩、又はバニリン誘導体若しくは医薬として許容し得るその塩と、
(ii)少なくとも1種の抗菌薬化合物又は医薬として許容し得るその塩と、
を含む、抗菌性医薬組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の抗菌薬化合物又は医薬として許容し得るその塩は、アミノグリコシド、マクロライド、ペニシリン、テトラサイクリン、リンコサミド、キノロン、フルオロキノロン、β-ラクタム、ポリミキシン、モノバクタム、グリシルサイクリン、アンサマイシン、スルホンアミド、オキサゾリジノン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、ストレプトグラミン、グリコペプチド、ポリペプチド、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、トリメトプリム、ノボビオシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リファンピン、リファンピシン、リファブチン若しくはリファキシミンのようなリファマイシン、チニダゾール、ビオマイシン及びカプレオマイシン、又は医薬として許容し得るその塩、特にストレプトマイシン、ジヒドロストレプトマイシン、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ジベカシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、ヒグロマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン及びベルダマイシン、又は医薬として許容し得るその塩、好ましくは、スペクチノマイシン、又は医薬として許容し得るスペクチノマイシンの塩から選択されるアミノグリコシドから選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
抗菌性医薬組成物であって、
(i)コリスチン及びポリミキシンB、又は医薬として許容し得るその塩、好ましくは、コリスチン又は医薬として許容し得るコリスチンの塩から選択されるポリミキシンと、
(ii)少なくとも1種の他の薬剤化合物、又は医薬として許容し得るその塩であって、前記少なくとも1種の他の薬剤化合物、又は医薬として許容し得るその塩が、ロペラミド、リファンピシン、リファブチン若しくはリファキシミンのようなリファマイシン、マクロライド、アミノグリコシド、ペニシリン、テトラサイクリン、リンコサミド、キノロン、フルオロキノロン、β-ラクタム、ポリミキシン、モノバクタム、グリシルサイクリン、アンサマイシン、スルホンアミド、オキサゾリジノン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、ストレプトグラミン、グリコペプチド、ポリペプチド、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、トリメトプリム、ノボビオシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リファンピン、チニダゾール、ビオマイシン及びカプレオマイシン、又は医薬として許容し得るその塩から選択され、好ましくは、前記少なくとも1種の他の薬剤化合物が、ロペラミド、リファンピシン、リファブチン若しくはリファキシミンのようなリファマイシン、又は、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、若しくはロキシスロマイシンのようなマクロライド、又は医薬として許容し得るその塩である、少なくとも1種の他の薬剤化合物、又は医薬として許容し得るその塩と、
を含む、抗菌性医薬組成物。
【請求項12】
抗菌性医薬組成物であって、
(i)アミノグリコシド、マクロライド、ペニシリン、テトラサイクリン、リンコサミド、キノロン、フルオロキノロン、β-ラクタム、ポリミキシン、モノバクタム、グリシルサイクリン、アンサマイシン、スルホンアミド、オキサゾリジノン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、ストレプトグラミン、グリコペプチド、ポリペプチド、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、トリメトプリム、ノボビオシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、リファンピシン、リファブチン若しくはリファキシミンのようなリファマイシン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リファンピン、チニダゾール、ビオマイシン及びカプレオマイシン、又は医薬として許容し得るその塩から選択される抗菌性化合物と、
(ii)抗生物質、ヒト標的薬、食品添加物、又は医薬として許容し得るその塩から選択される少なくとも1種の他の薬剤化合物であって、好ましくは、前記少なくとも1種の他の薬剤化合物が、プロカイン、メトホルミン、ベンザルコニウム、ベルベリン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アズトレオナム、ロペラミド、ピオシアニン、フェナジンメトスルファート、クリンダマイシン、リファンピシン、リファブチン若しくはリファキシミンのようなリファマイシン、パラコート、トリメトプリム、ドキシサイクリン、クルクミン、バニリン、カフェイン、アセチルサリチル酸、エピガロカテキンガレート、CHIR090、ミノサイクリン、スペクチノマイシン、及びホスホマイシン、又は医薬として許容し得るその塩である、少なくとも1種の他の薬剤化合物と、
を含み、
任意に、前記(i)の抗菌性化合物は、少なくとも第1の細菌及び第2の細菌に対して抗菌効果を有し、前記(ii)の化合物は、少なくとも1種の前記第1の細菌に対する前記(i)の化合物の前記抗菌効果に拮抗し、前記(ii)の化合物は、前記第2の細菌に対する前記(i)の化合物の前記抗菌効果に拮抗しない、抗菌性医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物は、細菌感染症の予防及び/又は治療に用いるためのものであり、前記細菌感染症は、消化管の感染症、尿生殖路の感染症、上気道及び下気道の感染症、鼻炎、扁桃炎、咽頭炎、気管支炎、肺炎、内臓の感染症、腎炎、肝炎、腹膜炎、心内膜炎、髄膜炎、骨髄炎、目の感染症、耳の感染症、皮膚の感染症、皮下の感染症、熱傷後の感染症、下痢、大腸炎、偽膜性大腸炎、皮膚障害、毒素性ショック症候群、菌血症、敗血症、骨盤内炎症性疾患、中枢神経系の感染症、創傷感染症、腹腔内感染症、血管内感染症、骨感染症、関節感染症、急性細菌性中耳炎、腎盂腎炎、深在性膿瘍並びに結核から選択される、請求項6又は9~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記細菌感染症は、グラム陰性菌によって引き起こされ、好ましくは、前記グラム陰性菌は、腸内細菌科若しくはモラクセラ科のメンバー、例えば、エンテロバクター属、エシェリキア属、サルモネラ属、クレブシエラ属、エルシニア属、赤痢菌属、セラチア属、プロテウス属、シュードモナス属、及び/又はアシネトバクター属のメンバーのようなガンマプロテオバクテリアであり、任意に、前記グラム陰性菌は、抗生物質耐性菌、特にその多剤耐性株である、請求項13に記載の、使用するための医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物の成分は、同時に、別々に又は連続的に、対象に投与され、前記対象は、ヒトのような哺乳動物、好ましくはヒト患者であり、任意に、前記組成物は、例えば錠剤、コーティング錠、発泡錠、カプセル剤、散剤、顆粒剤、糖衣錠、トローチ剤、丸剤、アンプル、ドロップ剤、坐剤、乳剤、軟膏剤、ゲル剤、チンキ、ペースト、クリーム、湿潤湿布、含嗽液、植物ジュース、鼻薬、吸入混合物、エアロゾル、洗口剤、口中噴霧剤、鼻噴霧剤、又は室内噴霧剤の形態のような、液体、乾燥又は半固体の形態である、請求項6又は9~14のいずれか一項に記載の、使用するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療学の分野に関し、より詳細には、細菌感染症及び抗菌薬誘発性機能障害(antibacterial-induced dysfunctions)の予防及び/又は治療のための医薬組成物に関する。本発明の組成物は、少数の細菌種の増殖の阻害において高い種特異性を示し、最も重要なことには、多剤耐性(MDR)臨床分離菌種に対しても有効である。興味深いことに、これらの組み合わせのうちの1つは、非抗生物質バニリンと抗生物質スペクチノマイシンとを対にして、臨床的に関連しているグラム陰性病原菌及び多剤耐性大腸菌(E. coli)分離株の増殖に対して驚くべき強い阻害効果を示す。第2の組の化合物は、ポリミキシンコリスチンを、ロペラミド、リファマイシン又はマクロライドと組み合わせたものである。重要なことに、本発明は、抗菌戦略の主な副作用を予防するための現在及び将来の薬剤開発の試みの主な試みである狭域抗菌薬療法(narrow-spectrum antibacterial therapies)を可能にする組み合わせに関する。また、本発明は、抗菌性化合物の使用によって誘発される、腸内マイクロバイオームに対する悪影響を予防するのに有用な混合医薬(pharmaceutical combinations)にも関する。
【背景技術】
【0002】
抗微生物薬耐性の拡大は、公衆衛生上の深刻な懸念となり、かつては治療が可能だった疾患を再び致命的なものとし、現代医学の画期的な成果を損なっている。新たな抗菌薬療法の発見は必須だが、新薬の開発には何年もかかり、残念ながら、抗生物質の開発は過去30年間行き詰まっている。その結果、ほんの一握りにすぎない新しい抗生物質クラスが1990年代以後市場に参入したが、これらはいずれも、現在、公衆衛生に最大の脅威をもたらすグラム陰性病原菌に対して活性を示さない。
【0003】
一般に、抗生物質は、正常かつ健康な腸内フローラを害する危険性に影響を与える。こうした阻害は、細菌の異常増殖を促進し、微生物における抗生物質耐性の発現の原因となり得る。細菌の増殖サイクルを阻害することにより、抗生物質は、速やかに耐性のある亜集団を選択する。このため、感染症を引き起こす院内抗生物質耐性日和見病原菌の割合は過去10年間で2倍を超え、抗生物質耐性菌自体が重篤な感染症を引き起こす可能性がある。その結果、更に深刻な問題が、他の細菌への耐性因子の起こり得る転移に影響を与える。
【0004】
混合薬(Drug combinations)及び薬剤の別の目的での使用は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のような臨床的に関連しているグラム陰性病原菌における、多剤耐性(MDR)細菌感染症の驚くべき増加に対する防御の第一線として作用し得る。混合薬は、治療によって解決する可能性のある余地(potential therapeutic solution space)を指数関数的に増加させ、有望な候補は、個々の化合物が既に認可されているか又は使用されているときには、迅速に臨床応用に移すことができる。
【0005】
多剤併用療法は多くの疾患において一般的であるが、細菌感染症についてはほとんど調査されていない。抗生物質併用は、機会だけでなく課題ももたらす。このような課題の1つは、適切な相互作用評価に、チェッカーボード形式(checkerboard format)により幾つかの濃度のそれぞれの薬剤を混合する必要があることである。これには厳密な試験が必要であることから、系統的な相互作用研究は困難である。その結果、現在の知見は乏しく、多くの独立した研究から得られたものであり、それぞれは、多様なアッセイ及び測定基準との少数の対の組み合わせを試験している。
【0006】
抗菌性混合薬に関する一般原理を明らかにするために、種々の菌株及び菌種にわたって、薬剤間相互作用(drug-drug interactions)を系統的にプロファイリングする必要がある。これまでの大規模な研究では、薬剤レベル又は菌種/菌株レベルのいずれかにおいて妥協する必要があった。抗生物質補助剤を特定することを主な目的として、ほとんどの研究は、単一の抗生物質と、1000種~2000種のこれまでに認可された薬剤、又は更に大規模な化学ライブラリーとの組み合わせをプロファイリングした。
【0007】
大腸菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含む多くの菌種がこのようにプロファイリングされているが、スクリーニング設計(単一薬剤用量における相乗作用のみを調査すること)は、比較分析を妨げる。相乗作用と拮抗作用の両方を定量化することができる、より小規模なスクリーニングが行われてきたが、これは大腸菌に限られており、単一の濃度において抗生物質21種の対の組み合わせが試験された。抗真菌薬についてのより大規模のスクリーニングは存在するが、これも同様の制限を受けており、例えば、組み合わせの最大の用量依存性プロファイリングは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における約200の薬剤対のプロファイリングであるのに対し、近年、単一薬剤用量の組み合わせではあるが、更に多くの対が種々の真菌種において試験されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
抗菌薬耐性の発現及び拡大は、公衆衛生に対する最も深刻な脅威のうちの1つに影響を与え、既知の抗菌性化合物が効果のない細菌株を発生させる。このため、選択的な細菌株に対して有効であることによって細菌の抗生物質耐性を克服することができる、新規な抗菌性医薬組成物を提供する必要がある。このような狭域抗菌薬療法は、患者の体内に存在する健康な微生物に対する化合物の悪影響によって引き起こされる抗生物質耐性の拡大及び副作用を緩和する等、現在の抗菌戦略の主な課題を克服することができる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、新規な抗菌性医薬組成物を提供することである。本発明の更なる目的は、多剤耐性(MDR)細菌株、例えば、大腸菌、ネズミチフス菌、及び緑膿菌のような臨床的に関連しているグラム陰性病原菌に対して有効な抗菌性医薬組成物を提供することである。本発明の更なる目的は、抗生物質耐性菌の発生とともに、腸内細菌叢等の患者の体内に存在する健康な微生物に対する化合物の悪影響を予防することができる抗菌薬療法の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、臨床的に関連しているグラム陰性菌の種々の菌株及び菌種における薬剤間相互作用を系統的にスクリーニング及び評価する方法を提供することによって解決される。スクリーニングの結果によって、強い抗菌活性を示す化合物の複数の相乗的な対、又は、例えば健康なマイクロバイオームでの抗生物質の使用によって生じる損傷を予防するための対抗治療戦略(antidote treatment strategy)として用いることができる拮抗的な対がもたらされる。これらの化合物の組み合わせの一部は、単一種の細菌の増殖を阻害する際に大きな種特異性を示し、最も重要なことには、MDR臨床分離菌種に対しても有効である。広域抗菌薬療法(broad spectrum antibacterial therapies)と比較して、このような選択的医薬組成物は、抗微生物薬耐性を選択する可能性がはるかに低いとともに、患者の腸内フローラに対する有害性は低い。
【0011】
本発明の発明者らは、本発明に記載された方法によって特定された医薬対(pharmaceutical pairs)のうちの一部が、バニリンに似た、食品添加物のような非抗生物質化合物を含有することを見いだした。重要なことに、このような組み合わせによって、抗菌戦略の主な副作用を予防するための現在及び将来の薬剤開発の主な試みである狭域抗菌薬療法が可能になる。本発明の他の目的は、本発明の詳説を検討する際に、当業者に明らかになる。
【0012】
本発明の第1の態様において、本発明の目的は、細菌に対する少なくとも2種の薬剤化合物の相乗的抗菌効果を特定する方法であって、
a)前記抗菌効果について試験される前記細菌を準備することと、
b)前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
なお、前記薬剤化合物のうちの少なくとも1種は、前記a)の細菌に対して抗菌効果を有することが知られており、前記薬剤化合物の他の少なくとも1種は、
(i)選択された第1の薬剤化合物と同じクラスに属すること、及び/又は選択された第1の薬剤化合物と同じ細菌細胞プロセスを標的とすることが知られている抗生物質、又は医薬として許容し得るその塩、並びに、
(ii)ヒト標的薬、食品添加物又は医薬として許容し得るその塩、
から選択される;
c)前記細菌における前記少なくとも2種の薬剤化合物の相乗的抗菌効果を特定することと、
d)工程c)において特定された前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
を含む、方法を提供することによって解決される。
【0013】
本明細書に用いられる「相乗作用(synergy)」又は「相乗効果(synergistic effect)」とは、少なくとも2種の化合物が相互作用し、単独で用いられる前述した化合物のうちのいずれかの個々の効果を合わせたものよりも大きい全体的な効果をもたらすときに生じる効果を指す。このため、この組み合わせは、単独で用いられる化合物のうちの1種の抗菌効果を大きく向上させる。換言すれば、相乗効果とは、2種の成分の組み合わせの細菌又は細菌種に対する総抗菌効果が、別々に測定したときのそれぞれの成分の抗菌効果を合わせたものよりも大きいことを意味する。
【0014】
本明細書に用いられる「拮抗作用(antagonism)」又は「拮抗効果(antagonistic effect)」とは、少なくとも2種の化合物が相互作用し、単独で用いられるこれらのうちのいずれかの個々の効果を合わせたものよりも低い全体的な効果をもたらすときに生じる効果を指す。本明細書に用いられる「拮抗的な(antagonistic)」組み合わせは、単独で用いられる化合物のうちの1種の抗菌効果を妨げ得る。換言すれば、拮抗効果とは、化合物のうちの少なくとも1種が細菌又は細菌種に対して抗菌効果を有している場合、この抗菌効果は、少なくとも1種の他の化合物によって打ち消され得ることを意味する。このため、少なくとも1種の他の化合物は、前述した第1の化合物への「対抗手段(antidote)」と見なすことができる。少なくとも2種の化合物の組み合わせは、2種の化合物のうちの少なくとも1種の抗菌効果が、もう1種の化合物と組み合わせて用いられる際にマスキングされる場合、「拮抗効果」を有すると言う。
【0015】
「相乗」効果及び「拮抗」効果は、本明細書の「方法(Methods)」の節において以下に説明するように、並べ替えp値(permutation p-values)によってスコア化される。
【0016】
本発明に関連して、「ヒト標的薬(Human-targeted drug)」とは、ヒトにおける使用を意図した化合物を指すものとする。好ましくは、前述した薬剤の作用機序(MOA)は既知であり、細胞内の、細胞外の、又はヒト細胞膜内のヒト細胞に影響を及ぼし得る。前述したヒト標的薬の使用は、ヒト細胞又は生物を害する副作用を有するという事実に遭うことがある。このようなヒト標的薬の例としては、抗精神病薬、麻酔薬、減酸薬(acid-reducing medications)、化学療法薬、及び血圧薬(blood-pressure medications)が挙げられるが、これらに限定されない。逆に、「抗生物質(antibiotic)」という用語は、本発明に関連して、好ましくは微生物学的に活性のある化合物、すなわち、病原微生物/望ましくない微生物に対して用いるための化合物を指すものとする。
【0017】
本発明の目的は、細菌に対する少なくとも2種の薬剤化合物の拮抗的抗菌効果(antagonistic antibacterial effect)を特定する方法であって、
a)前記抗菌効果について試験される第1の細菌を準備することと、
b)前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
なお、前記薬剤化合物のうちの少なくとも1種は、第2の細菌に対して抗菌効果を有することが知られており、前記薬剤化合物の他の少なくとも1種は、抗生物質、ヒト標的薬、食品添加物、又は医薬として許容し得るその塩から選択され、好ましくは、前記薬剤化合物の他の少なくとも1種は、選択された第1の薬剤化合物とは異なるクラスに属すること、及び/又は選択された第1の薬剤化合物とは異なる細菌細胞プロセスを標的とすることが知られている;
c)前記a)の第1の細菌における前記少なくとも2種の薬剤化合物の拮抗的抗菌効果を特定することと、
d)工程c)において特定された前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
を含む、方法を提供することによって更に解決される。
【0018】
好ましくは、前述したa)の第1の細菌と、前述したb)の第2の細菌とは、異なる細菌属及び/又は異なる細菌種に属する。
【0019】
前記細菌は、グラム陽性菌又はグラム陰性菌であり、前記細菌は、エンテロバクター属(Enterobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、赤痢菌属(Shigella)、セラチア属(Serratia)、プロテウス属(Proteus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、シュードモナス属、サルモネラ属(Salmonella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、シトロバクター属(Citrobacter)、トレポネーマ属(Treponema)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、ブルセラ属(Brucella)、コリネバクテリウム属(Corynebacteria)、紡錘菌属(Fusobacterium)、レプトスピラ属(Leptospira)、リステリア属(Listeria)、パスツレラ属(Pasteurella)、リケッチア属(Rickettsia)、フィーカリバクテリウム属(Faecalibacteria)、エガセラ属(Eggerthella)、ラクトニファクター属(Lactonifactor)、大腸菌群(Coliform)、バチルス属(Bacillus)、フランシセラ属(Franscicella)、アシネトバクター属、レジオネラ属(Legionella)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、コクシエラ属(Coxiella)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacteria)、モビルンカス属(Mobiluncus)、腸球菌属(Enterococcus)、放線菌属(Actinomyces)、ナイセリア属(Neisseria)、クラミジア属(Chlamydia)、ビブリオ属(Vibrio)、双球菌属(Diplococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、キンゲラ属(Kingella)、エルシニア属(Yersinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、アリスティペス属(Alistipes)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、ロゼブリア属(Roseburia)、パラバクテロイデス属(Parabacteroides)、プレボテラ属(Prevotella)、コプロコッカス属(Coprococcus)、ドレア属(Dorea)、ブラウティア属(Blautia)、オドリバクター属(Odoribacter)、クロストリジウム属(Clostridia)、コリンセラ属(Collinsella)、バイロフィラ属(Bilophila)、アッカーマンシア属(Akkermansia)、ベイロネラ属(Veillonella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、デスルホビブリオ属(Desulfovibrio)、ブチリビブリオ属(Butyrivibrio)、及び/又はカンピロバクター属(Campylobacter)、又はその任意の近縁属のメンバーであり、任意に、前記細菌は、抗生物質耐性菌、特にその多剤耐性株である、前述した方法が好ましい。
【0020】
更に好ましくは、細菌に対する少なくとも2種の薬剤化合物の拮抗的抗菌効果を特定するための前述した方法であって、前述の抗菌効果について試験される前述した第1の細菌は、共生細菌及び/又はプロバイオティクス細菌、例えば、エンテロバクター属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、シュードモナス属、エシェリキア属、ヘリコバクター属、ナイセリア属、カンピロバクター属、クロストリジウム属、シトロバクター属、ビブリオ属、トレポネーマ属、マイコバクテリウム属、クレブシエラ属、放線菌属、バクテロイデス属、ボルデテラ属、ブルセラ属、コリネバクテリウム属、双球菌属、紡錘菌属、レプトスピラ属、パスツレラ属、プロテウス属、リケッチア属、赤痢菌属、パラバクテロイデス属、オドリバクター属、フィーカリバクテリウム属、コリンセラ属、エガセラ属、ラクトニファクター属、ロゼブリア属、大腸菌群、バチルス属、フランシセラ属、アシネトバクター属、レジオネラ属、アクチノバチルス属、コクシエラ属、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、ヘモフィルス属、ビフィドバクテリウム属、モビルンカス属、プレボテラ属、アッカーマンシア属、バイロフィラ属、ブラウティア属、コプロコッカス属、ドレア属、ユーバクテリウム属(Eubacteria)、ラクトバチルス属、ルミノコッカス属、ベイロネラ属、及び/又は腸球菌属のメンバーである、方法である。
【0021】
更に好ましくは、細菌に対する少なくとも2種の薬剤化合物の拮抗的抗菌効果を特定するための前述した方法であって、前述した第2の細菌は、病原菌、例えば、エンテロバクター属、エシェリキア属、赤痢菌属、セラチア属、プロテウス属、シュードモナス属、アシネトバクター属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、シュードモナス属、サルモネラ属、ヘリコバクター属、シトロバクター属、トレポネーマ属、マイコバクテリウム属、ボルデテラ属、ボレリア属、ブルセラ属、コリネバクテリウム属、紡錘菌属、レプトスピラ属、リステリア属、パスツレラ属、リケッチア属、フィーカリバクテリウム属、エガセラ属、ラクトニファクター属、大腸菌群、バチルス属、フランシセラ属、アシネトバクター属、レジオネラ属、アクチノバチルス属、コクシエラ属、ビフィドバクテリウム属、モビルンカス属、腸球菌属、放線菌属、ナイセリア属、クラミジア属、ビブリオ属、双球菌属、ラクトバチルス属、キンゲラ属、エルシニア属、及び/又はクレブシエラ属のメンバーである、方法である。
【0022】
重要なことに、細菌に対する少なくとも2種の薬剤化合物の拮抗的抗菌効果を特定するための前述した方法は、前述した第1の細菌における前述した少なくとも2種の薬剤化合物の拮抗的抗菌効果を特定するのに用いられ、前述した第1の細菌は、共生細菌及び/又はプロバイオティクス細菌である一方で、前述した少なくとも2種の薬剤化合物は、第2の細菌に対して抗菌効果を有し、前述した第2の細菌は病原菌である。このため、少なくとも2種の薬剤化合物は、病原菌に対して抗菌効果を有する一方で、共生細菌及び/又はプロバイオティクス細菌に対しては付帯的損害を予防及び/又は軽減する。このように、前述した少なくとも2種の薬剤化合物の使用は、化合物の組み合わせが、共生細菌及び/又はプロバイオティクス細菌に対して抗菌効果を有する前述した化合物の損傷を防止するため、化合物のうちの1種のみを使用するよりも好都合である。
【0023】
次に、本発明の更なる態様は、細菌感染症の予防及び/又は治療に用いる標的療法を開発する方法であって、
a)前述した方法を行うことと、
b)細菌に対する前記少なくとも2種の薬剤化合物の組み合わせの選択的抗菌効果を特定することと、
c)工程b)において特定された前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
を含む、方法に関する。
【0024】
本発明の更なる好ましい態様は、抗菌性医薬組成物を製造する方法であって、
a)前述した方法を行うことと、
b)選択された組み合わせを抗菌性医薬組成物に配合することと、
を含む、方法である。
【0025】
本発明の更に別の態様は、前述した方法によって製造される抗菌性医薬組成物に関する。
【0026】
本発明は、本発明の抗菌性医薬組成物を用いる、腸内マイクロバイオームに対する悪影響を予防する方法であって、前記組成物の成分のうちの少なくとも1種が、少なくとも第1の細菌種及び第2の細菌種に対して抗菌効果を有し、少なくとも1種の他の成分が、前記第1の細菌種に対する前記抗菌効果を妨げる、方法にも関する。
【0027】
更に好ましくは、本発明の抗菌性医薬組成物を用いる、腸内マイクロバイオームに対する悪影響を予防するための前述した方法であって、前述の抗菌効果について試験される前述した第1の細菌は、共生細菌及び/又はプロバイオティクス細菌、例えば、エンテロバクター属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、シュードモナス属、エシェリキア属、ヘリコバクター属、ナイセリア属、カンピロバクター属、クロストリジウム属、シトロバクター属、ビブリオ属、トレポネーマ属、マイコバクテリウム属、クレブシエラ属、放線菌属、バクテロイデス属、ボルデテラ属、ブルセラ属、コリネバクテリウム属、双球菌属、紡錘菌属、レプトスピラ属、パスツレラ属、プロテウス属、リケッチア属、赤痢菌属、パラバクテロイデス属、オドリバクター属、フィーカリバクテリウム属、コリンセラ属、エガセラ属、ラクトニファクター属、ロゼブリア属、大腸菌群、バチルス属、フランシセラ属、アシネトバクター属、レジオネラ属、アクチノバチルス属、コクシエラ属、キンゲラ・キンゲ、ヘモフィルス属、ビフィドバクテリウム属、モビルンカス属、プレボテラ属、アッカーマンシア属、バイロフィラ属、ブラウティア属、コプロコッカス属、ドレア属、ユーバクテリウム属、ラクトバチルス属、ルミノコッカス属、ベイロネラ属、及び/又は腸球菌属のメンバーである、方法である。
【0028】
前述した少なくとも1種の第1の細菌種は、1種の細菌種、又は、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種、18種、19種、20種、21種、22種、23種、24種、25種、26種、27種、28種、29種、30種、31種、32種、33種、34種、35種、36種、37種、38種、39種若しくは40種の他の細菌種、又はあらゆる数の共生細菌種及び/又はプロバイオティクス細菌種であり得る。
【0029】
加えて好ましくは、本発明の抗菌性医薬組成物を用いる、腸内マイクロバイオームに対する悪影響を予防するための前述した方法であって、前述した第2の細菌は、病原菌、例えば、エンテロバクター属、エシェリキア属、赤痢菌属、セラチア属、プロテウス属、シュードモナス属、アシネトバクター属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、シュードモナス属、サルモネラ属、ヘリコバクター属、シトロバクター属、トレポネーマ属、マイコバクテリウム属、ボルデテラ属、ボレリア属、ブルセラ属、コリネバクテリウム属、紡錘菌属、レプトスピラ属、リステリア属、パスツレラ属、リケッチア属、フィーカリバクテリウム属、エガセラ属、ラクトニファクター属、大腸菌群、バチルス属、フランシセラ属、アシネトバクター属、レジオネラ属、アクチノバチルス属、コクシエラ属、ビフィドバクテリウム属、モビルンカス属、腸球菌属、放線菌属、ナイセリア属、クラミジア属、ビブリオ属、双球菌属、ラクトバチルス属、キンゲラ属、エルシニア属、及び/又はクレブシエラ属のメンバーである、方法である。
【0030】
本発明はまた、本発明の抗菌性医薬組成物を用いて、抗菌薬耐性の発現及び/又は拡大を予防する方法を提供することによって解決される。
【0031】
本発明の更なる態様は、抗菌性医薬組成物であって、
(i)バニリン若しくは医薬として許容し得るその塩、又はバニリン誘導体若しくは医薬として許容し得るその塩と、
(ii)少なくとも1種の抗菌薬化合物又は医薬として許容し得るその塩と、
を含む、抗菌性医薬組成物に関する。
【0032】
好ましくは、前述した抗菌性医薬組成物であって、前記少なくとも1種の抗菌薬化合物又は医薬として許容し得るその塩は、アミノグリコシド、マクロライド、ペニシリン、テトラサイクリン、リンコサミド、キノロン、フルオロキノロン、β-ラクタム、ポリミキシン(正:polymyxin)、モノバクタム、グリシルサイクリン、アンサマイシン、スルホンアミド、オキサゾリジノン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、ストレプトグラミン(正:streptogramin)、グリコペプチド、ポリペプチド、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、トリメトプリム、ノボビオシン、エタンブトール、ホスホマイシン(正:fosfomycin)、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン(正:platensimycin)、ピラジナミド、キヌプリスチン(正:quinupristin)、ダルホプリスチン(正:dalfopristin)、リファンピン(正:rifampin)、リファンピシン、リファブチン若しくはリファキシミンのようなリファマイシン、チニダゾール、ビオマイシン及びカプレオマイシン、又は医薬として許容し得るその塩、特にストレプトマイシン、ジヒドロストレプトマイシン、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、アストロマイシン、ベカナマイシン、ジベカシン、フラミセチン、ゲンタマイシン、ヒグロマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン及びベルダマイシン、又は医薬として許容し得るその塩、好ましくはスペクチノマイシン、又は医薬として許容し得るスペクチノマイシンの塩から選択されるアミノグリコシドから選択される、前述した抗菌性医薬組成物である。
【0033】
本発明はまた、抗菌性医薬組成物であって、
(i)コリスチン及びポリミキシンB、又は医薬として許容し得るその塩、好ましくはコリスチン又は医薬として許容し得るコリスチンの塩から選択されるポリミキシンと、
(ii)少なくとも1種の他の薬剤化合物、又は医薬として許容し得るその塩であって、前記少なくとも1種の他の薬剤化合物、又は医薬として許容し得るその塩が、ロペラミド、リファンピシン、リファブチン若しくはリファキシミンのようなリファマイシン、マクロライド、アミノグリコシド、ペニシリン、テトラサイクリン、リンコサミド、キノロン、フルオロキノロン、β-ラクタム、ポリミキシン、モノバクタム、グリシルサイクリン、アンサマイシン、スルホンアミド、オキサゾリジノン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、ストレプトグラミン、グリコペプチド、ポリペプチド、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、トリメトプリム、ノボビオシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リファンピン、チニダゾール、ビオマイシン及びカプレオマイシン、又は医薬として許容し得るその塩から選択され、好ましくは、前記少なくとも1種の他の薬剤化合物が、ロペラミド、リファンピシン、リファブチン若しくはリファキシミンのようなリファマイシン、又は、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、若しくはロキシスロマイシンのようなマクロライド、又は医薬として許容し得るその塩である、少なくとも1種の他の薬剤化合物、又は医薬として許容し得るその塩と、
を含む、抗菌性医薬組成物に関する。
【0034】
本発明はまた、抗菌性医薬組成物であって、
(i)アミノグリコシド、マクロライド、ペニシリン、テトラサイクリン、リンコサミド、キノロン、フルオロキノロン、β-ラクタム、ポリミキシン、モノバクタム、グリシルサイクリン、アンサマイシン、スルホンアミド、オキサゾリジノン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、ストレプトグラミン、グリコペプチド、ポリペプチド、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、トリメトプリム、ノボビオシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、リファンピシン、リファブチン若しくはリファキシミンのようなリファマイシン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リファンピン、チニダゾール、ビオマイシン及びカプレオマイシン、又は医薬として許容し得るその塩から選択される抗菌性化合物と、
(ii)抗生物質、ヒト標的薬、食品添加物、又は医薬として許容し得るその塩から選択される少なくとも1種の他の薬剤化合物であって、好ましくは、前記少なくとも1種の他の薬剤化合物が、プロカイン、メトホルミン、ベンザルコニウム、ベルベリン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アズトレオナム、ロペラミド、ピオシアニン、フェナジンメトスルファート、クリンダマイシン、リファンピシン、リファブチン若しくはリファキシミンのようなリファマイシン、パラコート、トリメトプリム、ドキシサイクリン、クルクミン、バニリン、カフェイン、アセチルサリチル酸(正:acetylsalicylic acid)、エピガロカテキンガレート、CHIR090、ミノサイクリン、スペクチノマイシン、及びホスホマイシン、又は医薬として許容し得るその塩である、少なくとも1種の他の薬剤化合物と、
を含み、
任意に、前記(i)の抗菌性化合物は、少なくとも第1の細菌及び第2の細菌に対して抗菌効果を有し、前記(ii)の化合物は、少なくとも1種の前記第1の細菌に対する前記(i)の化合物の前記抗菌効果に拮抗し、前記(ii)の化合物は、前記第2の細菌に対する前記(i)の化合物の前記抗菌効果に拮抗しない、抗菌性医薬組成物を提供することによって解決される。
【0035】
本発明に関連して、「拮抗している(Antagonizing)」とは、「拮抗効果」を有することを指す。換言すれば、拮抗効果とは、化合物のうちの少なくとも1種が細菌又は細菌種に対して抗菌効果を有している場合、この抗菌効果は、少なくとも1種の他の化合物によって打ち消されること、すなわち、少なくとも1種の他の化合物が「拮抗する」ことを意味する。
【0036】
更に好ましくは、前述した抗菌性医薬組成物であって、前述した第1の細菌は、共生細菌及び/又はプロバイオティクス細菌、例えば、エンテロバクター属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、シュードモナス属、エシェリキア属、ヘリコバクター属、ナイセリア属、カンピロバクター属、クロストリジウム属、シトロバクター属、ビブリオ属、トレポネーマ属、マイコバクテリウム属、クレブシエラ属、放線菌属、バクテロイデス属、ボルデテラ属、ブルセラ属、コリネバクテリウム属、双球菌属、紡錘菌属、レプトスピラ属、パスツレラ属、プロテウス属、リケッチア属、赤痢菌属、パラバクテロイデス属、オドリバクター属、フィーカリバクテリウム属、コリンセラ属、エガセラ属、ラクトニファクター属、ロゼブリア属、大腸菌群、バチルス属、フランシセラ属、アシネトバクター属、レジオネラ属、アクチノバチルス属、コクシエラ属、キンゲラ・キンゲ、ヘモフィルス属、ビフィドバクテリウム属、モビルンカス属、プレボテラ属、アッカーマンシア属、バイロフィラ属、ブラウティア属、コプロコッカス属、ドレア属、ユーバクテリウム属、ラクトバチルス属、ルミノコッカス属、ベイロネラ属、及び/又は腸球菌属のメンバーである、抗菌性医薬組成物である。
【0037】
加えて好ましくは、前述した医薬組成物であって、前述した第2の細菌は、病原菌、例えば、エンテロバクター属、エシェリキア属、赤痢菌属、セラチア属、プロテウス属、シュードモナス属、アシネトバクター属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、シュードモナス属、サルモネラ属、ヘリコバクター属、シトロバクター属、トレポネーマ属、マイコバクテリウム属、ボルデテラ属、ボレリア属、ブルセラ属、コリネバクテリウム属、紡錘菌属、レプトスピラ属、リステリア属、パスツレラ属、リケッチア属、フィーカリバクテリウム属、エガセラ属、ラクトニファクター属、大腸菌群、バチルス属、フランシセラ属、アシネトバクター属、レジオネラ属、アクチノバチルス属、コクシエラ属、ビフィドバクテリウム属、モビルンカス属、腸球菌属、放線菌属、ナイセリア属、クラミジア属、ビブリオ属、双球菌属、ラクトバチルス属、キンゲラ属、エルシニア属、及び/又はクレブシエラ属のメンバーである、医薬組成物である。
【0038】
任意に、前述した(ii)の化合物は、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種、18種、19種、20種、21種、22種、23種、24種、25種、26種、27種、28種、29種、30種、31種、32種、33種、34種、35種、36種、37種、38種、39種若しくは40種の他の細菌種、又はあらゆる数の他の細菌種に対する前述した(i)の化合物の前述した抗菌効果に拮抗している。
【0039】
前述した化合物の組成物は、一般に、多種多様な医療用途、具体的には、細菌感染症及び/又はディスバイオシスの予防及び/又は治療に用いることができる。好ましくは、前述した組成物であって、前記組成物は、細菌感染症の予防及び/又は治療に用いるためのものであり、前記細菌感染症は、消化管の感染症、尿生殖路の感染症、上気道及び下気道の感染症、鼻炎、扁桃炎、咽頭炎、気管支炎、肺炎、内臓の感染症、腎炎、肝炎、腹膜炎、心内膜炎、髄膜炎、骨髄炎、目の感染症、耳の感染症、皮膚の感染症、皮下の感染症、熱傷後の感染症、下痢、大腸炎、偽膜性大腸炎、皮膚障害、毒素性ショック症候群、菌血症、敗血症、骨盤内炎症性疾患、中枢神経系の感染症、創傷感染症、腹腔内感染症、血管内感染症、骨感染症、関節感染症、急性細菌性中耳炎、腎盂腎炎、深在性膿瘍並びに結核から選択される、組成物である。
【0040】
更に好ましくは、前述した組成物であって、治療及び/又は予防される前記細菌感染症は、グラム陰性菌によって引き起こされ、好ましくは、前記グラム陰性菌は、腸内細菌科(正:Enterobacteriaceae)若しくはモラクセラ科(Moraxellaceae)のメンバー、例えば、エンテロバクター属、エシェリキア属、サルモネラ属、クレブシエラ属、エルシニア属、赤痢菌属、セラチア属、プロテウス属、シュードモナス属、及び/又はアシネトバクター属、又はその任意の近縁属のメンバーのようなガンマプロテオバクテリアであり、任意に、前記グラム陰性菌は、抗生物質耐性菌、特にその多剤耐性株である、組成物である
【0041】
重要なことに、ヒト又は患者の体内に存在する多くの細菌種は、共生細菌種又はプロバイオティクス細菌種である。抗生物質効果を有する化合物は、これらの共生細菌種又はプロバイオティクス細菌種に対しても有効であることが多く、これによって、例えば健康な腸内マイクロバイオームを損傷させる。このため、感染及び/又は疾患の原因である病原菌に対する抗生物質効果を可能にしつつ、共生細菌及び/又はプロバイオティクス細菌に対するこのような損傷の影響を予防することが重要である。
【0042】
「細菌叢(microbiota)」という用語は、ヒト等の高等生物と関連して見いだされる微生物全体を総称して指す。ヒトの細菌叢に属する生物は、一般に、細菌、古細菌、酵母、及び単細胞真核生物、並びにウイルス及び種々の寄生虫に分類され得る。
【0043】
「マイクロバイオーム(microbiome)」という用語は、ヒト等の高等生物と関連して見いだされる、微生物全体、これらの遺伝的要素(ゲノム)、及び環境相互作用を総称して指す。
【0044】
マイクロバイオームは、多くの共生細菌株又はプロバイオティクス細菌株を含む。「共生(commensal)」という用語は、宿主に対して通常無害であり、宿主と相利共生関係を築くこともできる生物を指す。ヒトの体は約100兆の共生生物を含有しており、その数はヒトの細胞の10倍であることが示されている。
【0045】
本明細書に用いられる「プロバイオティック(probiotic)」という用語は、適切な量で投与されるとき、宿主に健康上の利益を付与する、生きている微生物を意味する。プロバイオティクスは、食品及び栄養補助食品(例えば、カプセル、タブレット及び粉末であるが、これらに限定されない)に利用可能である。プロバイオティクスを含有する食品の例は、ヨーグルト、発酵乳及び未発酵乳、味噌、テンペ、並びに一部のジュース及び大豆飲料である。ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、腸球菌属、連鎖球菌属、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、バチルス属、エシェリキア属、及びラクトコッカス属(Lactococcus)等の、マイクロバイオームの一部の細菌株は、プロバイオティクス機能を有することが知られている。
【0046】
「ディスバイオシス(dysbiosis)」という用語(細菌異常増殖症とも呼ばれる)は、あらゆる種類のマイクロバイオームの不均衡を指すものとする。例えば、健康なヒトのマイクロバイオームでは通常少数の菌種は、ディスバイオシスの状態では過剰に多くなるのに対し、健康なヒトの通常の優占菌種は、ディスバイオシスの状態では少数となる。最も多くの場合、ディスバイオシスは、特に小腸内細菌異常増殖(SIBO)又は小腸内真菌異常増殖(SIFO)時の、消化管の病気である。ディスバイオシスは、炎症性腸疾患、細菌性膣症及び大腸炎等の疾病と関連していることが報告されている
【0047】
本発明の更に別の実施の形態は、前述した使用するための組成物であって、前記組成物の前記成分は、同時に、別々に又は連続的に、対象に投与され、前記対象は、ヒトのような哺乳動物、好ましくはヒト患者であり、任意に、前記組成物は、例えば錠剤、コーティング錠、発泡錠、カプセル剤、散剤、顆粒剤、糖衣錠、トローチ剤、丸剤、アンプル、ドロップ剤、坐剤、乳剤、軟膏剤、ゲル剤、チンキ、ペースト、クリーム、湿潤湿布(moist compress)、含嗽液、植物ジュース、鼻薬、吸入混合物、エアロゾル、洗口剤、口中噴霧剤、鼻噴霧剤、又は室内噴霧剤の形態のような、液体、乾燥又は半固体の形態である、組成物に関する。
【0048】
ここで本発明を、以下の実施例において添付の図面を参照して更に記載するが、本発明はこれらに限定されない。本発明のために、引用された全ての参考文献は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1-1】グラム陰性菌における対の混合薬のハイスループットプロファイリングを示す図である。a)スクリーニングのための薬剤及び菌種の選択。組み合わせスクリーニングに用いられる79種の薬剤が、カテゴリーに分類されている。抗菌薬は、別のカテゴリー:β-ラクタム類、マクロライド類、テトラサイクリン類、フルオロキノロン類、及びアミノグリコシド類を構成するのに十分な代表種(2種超)がスクリーニングされた抗生物質クラスを除いて、標的別に分類されている。ヒト標的薬及び食品添加物の分類は、MoAがほとんどの場合不明確なため、これ以上精緻化されていない。6菌株における79種の薬剤の完全な集合に対して、62種の配列薬剤のサブセットがプロファイリングされた。菌株は、菌種に応じて色分けされている。b)薬剤間相互作用の定量化。増殖は、薬剤が存在していない状態、単一の薬剤が存在する状態及び両方の薬剤が存在する状態で経時的に吸光度(OD595 nm)を測定することによって、プロファイリングされた。相互作用は、ブリス独立性(Bliss independence)に従って定義された。期待値(fa×fq)よりも有意に低い適合度又は高い適合度はそれぞれ、相乗作用又は拮抗作用を示している。相乗作用及び拮抗作用は、4×4のチェッカーボードにおける増殖によって評価された。
図1-2】同上
図2-1】薬剤間相互作用ネットワークの原理を示す図である。a)拮抗作用は、相乗作用よりも多く見られる(prevalent)。6菌株において検出可能な相乗作用及び拮抗作用に対する観察された割合。本発明者らは、相乗的相互作用(1230)よりも拮抗的相互作用(1354)を多く検出したが、これらの拮抗作用の検出能は、16920の組み合わせに対して12778の組み合わせと、より低い。b)及びd)大腸菌における薬剤間相互作用ネットワーク。ノードは、薬剤カテゴリー(b)又はこれらが標的とする一般的な細胞プロセスに応じて分類された薬剤(d)のいずれかを表す。ノードの色は、図1aによる標的細胞プロセスを示し、ノードのサイズは、カテゴリー/グループ内の薬剤の数を反映する。エッジは、相乗作用(青色)及び拮抗作用(オレンジ色)を表し、厚さは、それぞれのカテゴリー/グループの薬剤間の相互作用の数を反映する。同じカテゴリーの薬剤又は一般的な細胞標的の薬剤間の相互作用は、自己相互作用エッジによって表される。弱い相互作用を含む保存された相互作用が示されている。c)及びe)拮抗作用は、ほぼ独占的に、異なるカテゴリーに属する薬剤(c)、又は異なる細胞プロセスを標的とする薬剤(e)の間で生じるのに対し、相乗作用は、同じカテゴリー内の薬剤(c)、又は同じプロセスを標的とする薬剤(e)の間でも多い。b及びdには、大腸菌の薬剤間相互作用の定量化が示されている。カイ二乗検定のp値が示されている。
図2-2】同上
図3-1】菌株間及び菌種間の薬剤間相互作用の保存性を示す図である。a)薬剤間相互作用は、大腸菌において保存されている。大腸菌2菌株の相互作用スコアの散布図;少なくとも1菌株について有意な相互作用が示されている。濃青色:両菌株における保存された強い相互作用、淡青色:一方の菌株では強い相互作用、他方の菌株では一致した作用(保存された弱い相互作用)。灰色:1菌株において専ら生じる相互作用、又は菌株間で相反する相互作用(保存されていない相互作用)。Rはピアソン相関を表し、nはプロットされた相互作用の総数を表す。b)薬剤間相互作用は、全3菌種内で高度に保存されている。1菌種当たり少なくとも1菌株において観察された有意な相互作用が示されている。色はaと同様であり、比較不能とは、菌株間で単一薬剤用量反応(single drug dose responses)が有意に異なる組み合わせを指す。c)薬剤相互作用のプロファイルは、系統発生学的に(正:phylogenetically)誘導される。菌株のクラスター化は、薬剤相互作用プロファイルのピアソン相関に基づく(全ての対の混合薬を考慮)。同じ菌種の菌株は、腸内細菌の2菌種である大腸菌及びネズミチフス菌(S. Typhimurium)とともにクラスターを形成し、系統発生学的により遠い緑膿菌(P. aeruginosa)よりも互いによく似た作用を示す。d)薬剤間相互作用は、大部分が種特異的である。ベン図は、3菌種間の相互作用の重なりを示し、n=相互作用の総数、nc=菌種間の相反する相互作用(一方の菌種では相乗作用、他方の菌種では拮抗作用)、ベン図では説明されない。e)保存された薬剤間相互作用ネットワーク。ノードは、(図2dと同様に)標的細胞プロセスによって分類され色付けされた個々の薬剤を表す。薬剤の名称は、3文字コードによって表されている。破線エッジ及び実線エッジ(Dashed and full edges)はそれぞれ、2菌種間又は3菌種間の保存された相互作用に対応する。f)相乗作用は、拮抗作用よりも保存される。モザイクプロットは、菌種間の保存された相互作用と保存されていない相互作用との間の相乗作用及び拮抗作用の定量化を示す。カイ二乗検定のp値が示されている。
図3-2】同上
図3-3】同上
図4-1】バニリンが多重抗生物質耐性(mar)表現型を誘導することを示す図である。a)バニリン及びアスピリン(アセチルサリチル酸)の薬剤間相互作用プロファイルは類似しており(図14を参照)、このことはMoAが共通であることを示唆している。サリチル酸塩/アスピリンによるMarR抑制因子の不活性化を介するmar応答誘導の模式図が示されている。b)バニリンは、marAに依存してAcrAタンパク質レベルを上昇させる。非処理、又はバニリン(150 μg/ml)若しくはアスピリン(500 μg/ml)による処理後の指数関数的に増殖する細胞の代表的なイムノブロットが示され、負荷量は、細胞密度及び恒常的に発現させたRecAによって制御される。バープロット(Barplots)は、AcrAタンパク質レベルの定量化を表し、n=5~6である。c)バニリン(150 μg/ml)処理又はアスピリン(500 μg/ml)処理に対するmarA発現レベルは、ΔmarR変異株よりも野生型において強い。発現は、RT-qPCRによって測定され、野生型における薬剤非処理に対して規準化され、n=4である。d)及びe)バニリン(150 μg/ml)及びアスピリン(500 μg/ml)は、クロラムフェニコール(d)又はシプロフロキサシン(e)のMICを増加させる。拮抗作用は、ΔmarA変異株及びΔacrA変異株ではそれぞれ、弱く、消失し、n=3である。エラーバーは、標準偏差を表す(b~e)。
図4-2】同上
図4-3】同上
図5-1】グラム陰性MDR臨床分離株に対する強力な相乗的組み合わせを示す図である。a)8×8のチェッカーボードとして示されるin vitroでの相乗効果。バニリン-スペクチノマイシンの組み合わせは、MDR大腸菌の菌株に対してのみ相乗的に作用する。薬剤対は、列ごとに同じであり、最初のチェッカーボードにおいて示されている。スクリーニングにおいて相互作用が検出された菌種は、最後のチェッカーボードの後に示されている。濃度は、薬剤ごとに均等な段階で増加し(色調(key)を参照)、最小濃度及び最大濃度のみは、それぞれの菌種の最初の菌株についてμg/mlにより示されている。コリスチンを除いて、同じ濃度範囲が用いられた。示されているように、より高いコリスチン濃度がコリスチン耐性肺炎桿菌(K. pneumoniae)929に用いられた。2連の生物試料(two biological replicates)のうちの1つが示されている。b)ハチノスツヅリガ(Galleria mellonella)感染モデルにおける同じMDR株に対する薬剤相乗作用。幼虫を大腸菌及び肺炎桿菌MDR分離株(それぞれ、106 CFU及び104 CFU)に感染させ、未処理のままにするか、又は単一の薬剤若しくは組み合わせによって処理した。幼虫生存率%は、感染後、示されている間隔においてモニターし、処理当たりn=10幼虫であった。3連又は4連の生物試料の平均が示されており、エラーバーは標準偏差を表す。
図5-2】同上
図6-1】データ分析パイプラインを示す図である。a)データ分析パイプラインのフローチャート。b)配列薬剤の単一薬剤適合度の推定。薬剤間相互作用はまれなため、npクエリー薬剤(query drugs)(プレート)間のgaq(二重薬剤による増殖)とgq(プレート間の上位5%の増殖ウェルの平均から推定される、クエリー薬剤単独による増殖)との間の最良適合線の傾きは、配列薬剤単独の適合度の代理変数(proxy)fa(式3)に相当する。Rは、npプレート間のgaqとgqとの間のピアソン相関係数を表す。幾つかの相互作用を有する配列薬剤の例として、3 μg/mlのスペクチノマイシンを収容する、大腸菌BW25113のウェルA9が示されており、幾つかのクエリー薬剤(プレート)は期待適合度(淡灰色の点)から外れているため、faの四分位範囲に相当するプレートの半分のみがfaを推定するのに用いられた。c)大腸菌のブリススコア(ε)分布の第1、第2及び第3四分位の密度分布。Q1、Q2及びQ3はそれぞれ、ε分布の第1、第2及び第3四分位の中央値を表す。nは、用いられた混合薬の数を表す。
図6-2】同上
図7-1】データの質制御を示す図である。a)単一及び二重薬剤処理の高い反復相関性(replicate correlation)。透明な箱ひげ図は、配列薬剤のみを収容する同じバッチのプレート間のピアソン相関係数を含む(第2の薬剤の代わりにLBが用いられた)。nは、相関の総数を表す。完全な箱ひげ図は、全てのプレートにわたる同じプレート内の二重薬剤反復試料ウェル(double drug replicate wells)間のピアソン相関係数を含む。nは、相関に用いられるウェルの数を表し、nmax=(62薬剤+1 LB)×3濃度=189である。増殖中央値(median growth)が20%を超えるウェルのみが考慮された。b)増殖中央値がより低いウェルは、より低い反復相関性を有する。大腸菌iAi1についての全プレートにわたる全ウェルの増殖中央値の関数として、aから箱ひげ図を作成するのに用いられた二重薬剤相関係数がプロットされる。(配列薬剤の強い阻害により)増殖が全体的により低いウェルは、増殖値のより低い広がりと、薬剤用量反応曲線のシグモイド性(sigmoidal nature)との組み合わせにより、再現性が低い。c)薬剤間相互作用は、まれである。菌株ごとに求められた全てのブリススコア(ε)の密度分布。d)相乗作用及び拮抗作用の検出能は、単一薬剤処理の効果によって異なる。大腸菌BW(実施例)における全組み合わせの全薬剤濃度比について、期待適合度(fa×fq)の関数として、ブリススコア(ε)がプロットされる。両方の変数を要約した箱ひげ図は、軸(n=101322、中央線は中央値に対応し、ウィスカー(whiskers)はIQRの1.5倍をカバーする)に加えて示されている。拮抗作用及び相乗作用を検出するための盲点が示されており、これらはともに期待適合度に基づいている(図8c及びdも参照)ため、単一の薬剤による菌株の増殖に依存している。単独では大腸菌を阻害しない、スクリーニングに用いられる薬剤の数により、拮抗作用の盲点となる混合薬の数は多くなる。e)(スクリーニングにおいて求められた)薬剤単独の最小適合度に対する薬剤当たりの相互作用数の散布図。強い相互作用及び弱い相互作用が表されている。nは相互作用の総数を表し、Rはピアソン相関係数である。菌株は、パネルa及びcとして色分けされている。f)全菌株における薬剤当たりの相互作用数の密度分布。
図7-2】同上
図7-3】同上
図8-1】ベンチマークを示す図である。a)より良好な真陽性及び偽陽性を評価するために、検証集合は相乗作用及び拮抗作用において高められる。スクリーニングと検証集合との間の相互作用割合の比較。スクリーニングの集計には、強い相互作用と弱い相互作用の両方(図3b)が考慮される。b)1菌株当たりのベンチマークされた相互作用の数。c)及びd)相互作用と呼ぶための統計的閾値の感受性分析。c)ε分布を適切な薬剤濃度に制限するのに用いられる期待適合度(fa×fb)カットオフの関数としての相互作用の総量。強い薬剤間相互作用は、これらが有意だったε分布に応じて、完全な分布のみ(すなわち、全ての期待適合ウェル)、適切なウェルのみ(すなわち、相乗作用ではfa×fbがカットオフよりも大きい全ウェル、及び拮抗作用ではfa×fbが(1-カットオフ)よりも小さい全ウェル)、又はこれらの両方に分類される。弱い薬剤間相互作用は独立して割り当てられ、完全性のために白色で表される。本発明者らは、検証データセットに対してベンチマークした後、検出された全相互作用の最大数とともに、最も高い精度及び再現性(recall)(それぞれ、91%及び74%)という結果をもたらしたため、0.2の期待適合度カットオフを選択した。d)相互作用を割り当てるための一意の基準として、種々のp値閾値にわたるスクリーニングの受信者動作特性(ROC)曲線(ウィルコクソン(Wilcoxon)順位和の並べ替え検定)。スクリーニング閾値に選択されたp値(0.05)は、灰色の×印によって示されている。ヒットと呼ぶための付加的なパラメーターに対する感受性が示されており、これによって、相互作用を、拮抗作用又は相乗作用のいずれかであるが両方ではない(一方だけの相互作用)、すなわち、強い相互作用及び弱い相互作用の閾値とすることができる。真陽性率及び偽陽性率は、検証データセットに基づいて推定された。最終的でかつ最良のパラメーター実行集合の精度及び再現性が示されており、一方だけの相互作用、p<0.05、fa×fbカットオフ=0.2、及び、強い相互作用では|ε|>0.1、弱い相互作用では|ε|>0.06である。TP、TN、FP及びFNはそれぞれ、真陽性(True Positives)、真陰性(True Negatives)、偽陽性(False Positives)及び偽陰性(False Negatives)を表す。nは、ベンチマークされた混合薬の総数を示す。e)ロエベ相加性(Loewe additivity)相互作用モデルによるβ-ラクタム類間の相乗作用。4菌株のβ-ラクタム類間の3つの組み合わせの8×8のチェッカーボードの結果が示されている。それぞれのプロットの灰色の線は、ロエベ相加性モデルの帰無仮説を表すのに対し、黒色の線は、IC50のアイソボールに相当し、アイソボールは、ロジスティック曲線を補間された薬剤濃度(色の付いたドット)に適合させることによって推定される。ピペラシリンは、大腸菌において50%増殖阻害に達しなかったため、IC20及びIC40アイソボールはそれぞれ、大腸菌BW及び大腸菌iAi1におけるアモキシシリン+ピペラシリンの組み合わせに用いられた。
図8-2】同上
図8-3】同上
図8-4】同上
図8-5】同上
図9-1】比較不能な薬剤間相互作用のベンチマークを示す図である。a)バープロットは、菌種内での保存度に応じた、ベンチマークされた混合薬の区分を示す。円グラフは、比較不能な薬剤間相互作用内の、偽陽性及び真陽性(FP及びTP)、並びに偽陰性及び真陰性(FN及びTN)の割合を示す。b)緑膿菌におけるアモキシシリンとセフォタキシムとの組み合わせ:比較不能な薬剤間相互作用の例。スクリーニングの結果は、上のボックスに示されている。両菌株の期待適合度の関数としてのブリススコアが左側に示され、ブリススコアの密度分布が右側に示されている。nは、ブリススコアの総数を表し、Q1及びQ3はそれぞれ、第1四分位及び第3四分位のブリススコアを示す。拮抗作用は、PAO1に対してのみ検出された(Q3>0.1)。PA14は両薬剤に対して高度に耐性があり(左上のパネル)、これによって、拮抗作用の検出は不可能であった。ベンチマークの結果は、相互作用が、PA14ではより弱く、より高い濃度ではほとんど目に見えるものの、両菌株において拮抗的であることを示している(下のボックス)。チェッカーボード上の色は適合度を反映し、黒色のドットはブリススコアが0.1を超える薬剤比に対応する。
図9-2】同上
図9-3】同上
図10-1】保存された弱い薬剤間相互作用のベンチマークを示す図である。a)バープロットは、図9aと同様にベンチマークされた混合薬の区分を示す。円グラフは、保存された弱い相互作用内の、偽陽性(FP)及び真陽性(TP)の割合を示す。b)ネズミチフス菌におけるドキシサイクリンとアミカシンとの組み合わせ:保存された弱い薬剤間相互作用の例。スクリーニングの結果は、上のボックスに示されている。両菌株の期待適合度の関数としてのブリススコアが左側に示され、ブリススコアの密度分布が右側に示されている。nは、ブリススコアの総数を表し、Q1及びQ3はそれぞれ、第1四分位及び第3四分位のブリススコアを示す。強い相乗作用がST14028に対してのみ検出され(Q1<-0.1)、その後保存された弱い相乗作用がST LT2に割り当てられた(Q1<-0.06)。下のボックスに示されているベンチマークの結果は、相互作用が両菌株において相乗的であることを確認する。チェッカーボード上の色は適合度を反映し、黒色のドットはブリススコアが-0.1未満である薬剤比に対応する。
図10-2】同上
図10-3】同上
図11-1】サルモネラ及びシュードモナスの薬剤間相互作用ネットワークを示す図である。a)及びb)薬剤カテゴリー相互作用ネットワーク。ノードは、図1aによる薬剤カテゴリーを表す。ノードの色/サイズ及びエッジの色/厚さは、図2bと同様にプロットされる。ここでは、保存された弱い相互作用を含む保存された相互作用が示されている。c)及びd)細胞プロセスにわたる薬剤間相互作用。ここでは、a及びbと同様に表されているが、同じ一般的な細胞プロセスを標的とする薬剤カテゴリーが分類されている。e)a及びbのネットワークにおける相乗作用及び拮抗作用の定量化。カイ二乗検定のp値が示されている。大腸菌と同様に、拮抗作用は、ネズミチフス菌及び緑膿菌において異なるカテゴリーに属する薬剤間で、相乗作用よりも頻繁に、かつ、ほぼ独占的に生じる。緑膿菌では、同じカテゴリーの薬剤間で生じる相互作用は非常に少ない。
図11-2】同上
図11-3】同上
図11-4】同上
図12-1】薬剤の拮抗作用が細胞内薬物濃度の減少によることが多いことを示す図である。a)第2の薬剤(拮抗薬;青色)の添加による取り込みの減少又は流出の増加を介して細胞内薬物濃度(黒色)を減少させるMoAの模式図。b)大腸菌BWの本発明者らのスクリーニングにおいて特定されたゲンタマイシン(赤色、5 μg/ml)及びシプロフロキサシン(金色、2.5 μg/ml)の種々の拮抗薬も、同じ菌株又はその親株MG1655における2種の殺菌性薬剤の死滅効果を回復させる(rescue)(それぞれ、右上及び左上のパネル)。クリンダマイシン(ゲンタマイシンに対する)とクルクミン(シプロフロキサシンに対する)を除いて、他の全ての拮抗薬は、相互作用する薬剤の細胞内濃度を減少させ(下のパネル)、ゲンタマイシンは放射性標識化合物を用いて検出され、シプロフロキサシンはLC-MS/MSによって検出される。回復度(The degree of rescue)(上のパネル)は、細胞内濃度の減少(下のパネル)を反映しており、このことは、これらの相互作用のほとんどが、拮抗される薬剤の細胞内濃度の調節に大きく依存していることを意味する。c)拮抗される薬剤の細胞内濃度を制御する主要構成要素を欠く大腸菌BW変異株では、拮抗作用は消散する。アミノグリコシド類は、PMF活性化取り込み(PMF-energized uptake)、故に呼吸器複合体に依存し、シプロフロキサシンは、AcrAB-TolCによって流出する。ゲンタマイシンについては、おそらく、MoA、及びアミノグリコシド類の取り入れが正のフィードバックループに関連付けられるため、クリンダマイシンとの相互作用(細胞内ゲンタマイシン濃度を調節しない。パネル(b)を参照)であっても、呼吸が損なわれると、ほとんどの相互作用が消散する。シプロフロキサシンについては、ΔacrA変異株においてパラコート及びカフェインとの拮抗作用が消散し、このことは、両化合物がAcrAB-TolCポンプ(パラコートにおいて知られている)を誘導することを意味している。これに対して、ΔacrA変異株における、クルクミン、ベンザルコニウム及びドキシサイクリンとの相互作用は、大部分がインタクトなままである。第一に、細胞内シプロフロキサシン濃度を調節しないため、クルクミンが期待される(パネルbを参照)。他の2つの事例では、AcrAB-TolCに加えて他の成分(複数の場合もある)が、シプロフロキサシンの取り入れ/排出の変化の原因である可能性が高い。シプロフロキサシン及びゲンタマイシンの濃度は、MIC(シプロフロキサシン及びゲンタマイシンそれぞれについて、70%及び100%のMIC)に従って全ての菌株において調整された。ブリス相互作用スコア(ε)は、スクリーニングと同様に算出され、3連~8連の試料間の平均及び標準偏差によって表される。d)大腸菌BWにおけるゲンタマイシン及びシプロフロキサシンの拮抗作用ネットワーク。ノードは、標的細胞プロセスに応じて色付けされた薬剤を表す(図1aと同様)。実線エッジ及び破線エッジはそれぞれ、細胞内抗生物質濃度が測定された拮抗的薬剤間相互作用、及び細胞内抗生物質濃度が測定されなかった拮抗的薬剤間相互作用を表す。拮抗される薬剤の細胞内濃度を結果として減少させる薬剤相互作用は、黒色のエッジによって表される。e)(d)におけるネットワークの拮抗的薬剤間相互作用の定量化。フルオロキノロン類及びアミノグリコシド類のバーはそれぞれ、シプロフロキサシン及びゲンタマイシンと同じ作用を示すと仮定して、2つのクラスの他の全てのメンバーに対する拮抗的相互作用の推定を説明している。
図12-2】同上
図12-3】同上
図12-4】同上
図13-1】薬剤間相互作用の大部分が菌種内で保存されており、部分的にしかMoAにより駆動されないことを示す図である。a)及びb)薬剤間相互作用は、ネズミチフス菌(a)、及び緑膿菌(b)において保存されている。それぞれの菌種の2菌株における相互作用スコアの散布図;少なくとも1菌株についての有意な相互作用のみが示されている。色付け及び分類は、図3aと同様である。Rはピアソン相関を表し、nはプロットされた相互作用の総数を表す。緑膿菌の相関性が低いのは、全体として相互作用が少なく弱いことによるものと考えられる。c)全ての薬剤カテゴリー間の単色性(Monochromaticity)。単色性指数(MI)は、2つのカテゴリーの薬剤間の相互作用が、相乗作用と拮抗作用のバックグラウンド比よりも相乗的である(MI=-1)か、又は拮抗的である(MI=1)かを反映する。MIは、少なくとも2つの相互作用を有する全てのカテゴリー対について、6菌株の全ての相互作用を用いて算出した。ヒートマップ中の白色のセルは、相互作用が観察されなかったか又は不十分な数の相互作用が観察されたカテゴリー対に対応する。d)ヒト標的薬、及びLPS又はPMF阻害薬は、強く無差別な補助剤である。パネルcの薬剤カテゴリーごとのMIの密度分布が示されている。nは、i相互作用に関与するカテゴリーの薬剤の量を表す。
図13-2】同上
図13-3】同上
図13-4】同上
図14-1】グラム陰性MDR臨床分離株に対する活性のある相乗作用を示す図である。a)MDR大腸菌及び肺炎桿菌臨床分離株に対する付加的な混合薬(図5aに関連)。相互作用は8×8のチェッカーボードとして示され、相乗作用は黒色の太い境界線を有する。薬剤対は、列ごとに同じであり、最初のチェッカーボードにおいて示されている。スクリーニングにおいて相互作用が検出された菌種は、最後のチェッカーボードの後に示されている。濃度は、薬剤ごとに均等な段階で増加し(色調を参照)、最小濃度及び最大濃度のみは、それぞれの菌種の最初の菌株についてμg/mlにより示されている。コリスチン以外は、全ての大腸菌及び肺炎桿菌MDR株について同じ濃度範囲が用いられた。2連の試料(two replicates)のうちの1つが示されている。
図14-2】同上
図14-3】同上
図15-1】バニリン-スペクチノマイシン間の相乗作用の作用機序を示す図である。a)スペクチノマイシンのMICは、野生型大腸菌BW、及びAcrAB-TolC流出ポンプ又はそのMarA調節因子のメンバーの単一遺伝子ノックアウトにおける100 μg/mlのバニリン添加により減少する。このため、バニリン-スペクチノマイシン間の相乗作用は、AcrAB-TolCに対するバニリンの効果(図4)とは無関係である。b)バニリン関連化合物の500 μg/mlのアスピリンが、スペクチノマイシンに拮抗してMICを約3倍増加させることから、相乗作用は、バニリン-スペクチノマイシン間に特異的である。c)MoAをデコンボリューションするための、大腸菌BW Keioコレクションにおけるバニリン-スペクチノマイシンの組み合わせのプロファイリング。バニリン-スペクチノマイシンの組み合わせ(相乗作用)、及び対照としてバニリンと別のアミノグリコシドのアミカシンとの組み合わせ(拮抗作用)に対する全変異株(n=9216)の薬剤間相互作用スコアεのバイオリン図が示されている。赤色のドットによって、Keioライブラリーに含まれる2つのmdfA欠失クローンの相互作用スコアが示されている。バニリン-スペクチノマイシン間の相乗作用はmdfAが存在しない状態では失われるのに対し、バニリン-アミカシン間の拮抗作用は影響を受けず、このことは、バニリン-スペクチノマイシン間の相乗作用がMdfAに依存することを示している。d)mdfAの欠失は、AcrAB-TolCの有無とは関係なく、スペクチノマイシンのMICを増加させ、バニリンとの相乗作用を消失させる。プラスミド(pmdfA)からのmdfAの軽度の過剰発現は、バニリンとの相乗作用を更に高め、(野生型における組み合わせのMICと比較して)スペクチノマイシンのMICを約2倍減少させる。このため、MdfAレベルは、スペクチノマイシン-バニリン間の相乗作用の程度に直接相関している。e)mdfAの過剰発現は、たとえMICが変化しなくても、スペクチノマイシンの感受性を増加させる。大腸菌BWの増殖及びpmdfAは、スペクチノマイシンの2倍連続希釈物において測定され(8時間後のOD595 nm)、対応する菌株の非薬剤増殖に対して規準化された(白色及び黒色のドット;n=3の平均)。スペクチノマイシンの用量反応は、平均されたデータ点のロジスティックフィットを用いて算出された(MICは、最初に個々の反復試料(replicates)を当てはめ、次いで平均することによって算出されることに留意されたい)。近似曲線は、pmdfA及び大腸菌BWについてそれぞれ、実線及び破線により表される。f)バニリンは、mdfAに依存して細胞内にスペクチノマイシンを蓄積させる。細胞内スペクチノマイシンは、トリチウム標識化合物(n=4)を用いて測定される。全てのMICバープロットについて、エラーバーは標準偏差を表し、n=3~10である。
図15-2】同上
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明に関連して用いられる「感染(infection)」という用語は、対象内又は対象上における細菌、ウイルス、真菌、原生動物又は他の微生物の存在、及び、細菌、ウイルス、真菌、原生動物又は他の微生物による侵襲に関する。侵襲には、宿主生物における病原微生物の望ましくない増殖が含まれる。より一般的には、微生物感染は、微生物集団(複数の場合もある)の存在が宿主動物に害を及ぼす、あらゆる状況であり得る。このため、微生物感染は、哺乳動物の体内若しくは体上に過剰な微生物が存在するときに、又は、微生物集団(複数の場合もある)の存在の影響が哺乳動物の細胞若しくは他の組織を損傷しているときに存在する。したがって、このような侵襲微生物の増殖の阻害は、微生物集団(複数の場合もある)によって感染された対象に利益をもたらす。細菌感染症の例は、尿路感染症(UTI)、腎感染症(腎盂腎炎)、産婦人科感染症(gynecological and obstetrical infections)、気道感染症(RTI)、慢性気管支炎の急性増悪(AECB)、市中肺炎(CAP)、院内肺炎(HAP)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、腹腔内肺炎(IAI)、急性中耳炎、急性副鼻腔炎、敗血症、カテーテル関連敗血症、軟性下疳、クラミジア、皮膚感染症、菌血症である。
【0051】
本発明の組成物によって予防及び/又は治療される前述の感染症は、好ましくはグラム陰性菌によって引き起こされ、前述のグラム陰性菌は、ガンマプロテオバクテリア、例えば、腸内細菌科又はモラクセラ科のメンバー、例えば、エンテロバクター属、エシェリキア属、サルモネラ属、クレブシエラ属、エルシニア属、赤痢菌属、セラチア属、プロテウス属、シュードモナス属、及び/又はアシネトバクター属のメンバーであり、任意に、前述の細菌は、抗生物質耐性菌、具体的にはその多剤耐性株である。
【0052】
本明細書に用いられる「抗生物質(antibiotic)」という用語は、低濃度において、或る特定の微生物、通常は細菌を死滅させる又はその増殖を妨げる化学物質に関するが、一部の抗生物質は、真菌又は原生動物による感染症の治療にも用いられる。抗生物質は、微生物によって引き起こされる感染症を治療するのに、ヒト、動物又は園芸用薬剤において用いられる。本発明に含まれる抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質、ポリミキシン類、オキサゾリジノン類、ストレプトグラミン類(正:streptogramins)、アンサマイシン類、カルバセフェム(carbacefem)、カルバペネム類、セファロスポリン類、グリコペプチド類、グリシルサイクリン類、マクロライド類、モノバクタム類、ペニシリン類、ポリペプチド類、キノロン類、フルオロキノロン類、スルホンアミド類、β-ラクタム類、テトラサイクリン類、並びに、バンコマイシン、ダプトマイシン、トリメトプリム、ノボビオシン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、ポリミキシン類(正:polymyxins)、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファマイシン、例えば、リファンピシン、リファブチン又はリファキシミン、チニダゾール、ビオマイシン及びカプレオマイシン等の他のものであるが、これらに限定されない。
【0053】
「医薬組成物」という用語は、そこに含まれる有効成分の生物学的活性を有効にするような形で存在すると共に、該組成物が投与されることとなる対象に対して許容することができないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。本発明の医薬組成物は、当該技術分野で既知の多様な方法により投与され得る。当業者により理解されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化することとなる。医薬として許容し得る希釈剤には、生理食塩水及び水性緩衝溶液が含まれる。「医薬として許容し得る担体」は、有効成分以外の、対象に対して非毒性である医薬製剤中の成分を指す。医薬として許容し得る担体には、生理学的に適合可能なあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。上記担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適し得る。
【0054】
本発明による医薬組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤等の補助剤も含有し得る。微生物の存在の抑制は、上記滅菌法、並びに様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を含めることの両方によって保証され得る。また、等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウム等を上記組成物中に含めることも望ましい場合がある。さらに、注射用医薬品形の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることにより引き起こされ得る。
【0055】
本明細書で使用される「非経口投与」及び「非経口に投与される」という語句は、経腸投与及び局所投与以外の、通常は注射による投与の様式を意味し、それには、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び注入が含まれる。選択された投与経路にかかわらず、適切な水和形で使用され得る本発明の化合物、及び/又は本発明の医薬組成物は、当業者に既知の慣用の方法により医薬として許容し得る剤形へと製剤化される。本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、及び投与様式のために望ましい治療応答を達成するのに有効な、その患者に有毒でない有効成分の量が得られるように変動され得る。選択される投与量レベルは、使用される特定の本発明の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、治療の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用されるその他の薬物、化合物、及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康、及び既往歴、並びに医療分野でよく知られた要因等を含む多様な薬物動態的な要因に依存することとなる。
【0056】
上記組成物は、滅菌され、該組成物が注射器により送達可能である程度に流体でなければならない。水の他に、一実施形態においては、上記担体は、等張性の緩衝生理食塩溶液である。適切な流動性は、例えばレシチン等のコーティングを使用することによって、分散液の場合に所望の粒度を維持することによって、そして界面活性剤を使用することによって維持することができる。多くの場合において、等張剤、例えば糖類、多価アルコール類、例えばマンニトール又はソルビトール、及び塩化ナトリウムが上記組成物中に含まれることが好ましい。
【0057】
投薬計画は、担当医及び臨床的要因により決定されることとなる。医療分野においてよく知られるように、任意の1人の患者のための投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、性別、投与時間及び投与経路、全体的な健康、並びに併用投与されるその他の薬物を含む多くの要因に依存する。典型的な用量は、例えば0.001 μg~1000 μgの範囲であり得るが、この例示的範囲を下回る又は上回る用量が、特に上述の要因を考慮して想定される。一般的に、上記医薬組成物の通常の投与としての投薬計画は、1日につき1 μg~10 mgの単位の範囲であるべきである。上記投薬計画が持続注入である場合に、それはまた、それぞれ1分間につき体重1キログラム当たり1 μg~10 mgの単位の範囲にあるべきである。経過は、定期的な評価により確認され得る。本発明の組成物は、局所的に又は全身的に投与され得る。投与は一般的に、非経口的、例えば静脈内であり、医薬組成物はまた、標的部位に、例えば内部標的部位若しくは外部標的部位への微粒子銃による送達によって、又は動脈中の部位へのカテーテルによって直接的に投与することもできる。非経口投与のための調製物には、滅菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及びエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体には、水、アルコール性/水性の溶液、エマルジョン、又は懸濁液が含まれ、これらには生理食塩水及び緩衝媒体が挙げられる。非経口用ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース、及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、又は不揮発性油が含まれる。静脈内用ビヒクルには、補液及び栄養補充薬、電解質補充薬(例えばリンゲルデキストロースを基礎とする電解質補充薬)等が含まれる。例えば抗微生物剤、酸化防止剤、キレート化剤、及び不活性ガス等のような保存剤及びその他の添加剤が存在してもよい。さらに、本発明の医薬組成物は、上記医薬組成物の意図される使用に応じてインターロイキン又はインターフェロン等の更なる作用物質を含み得る。
【0058】
本発明に関連して、或る特定の実施形態において用いられる「対象(subject)」という用語は、好ましくは、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、又は、好ましくはヒトを指す。「患者」という用語は、好ましくは、診断、予後診断又は治療が望まれる哺乳動物、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ウマ、畜牛(cattle)、乳牛(cow)、ネコ、イヌ、サル、又は、好ましくは、ヒト、例えばヒト患者を指す。本発明の対象は、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、及び寄生虫感染症等の疾患に罹患している危険性があり得る。本発明に関連する医療適用のより詳細な説明は、本明細書の別の箇所に示す。
【0059】
本明細書に用いられる「治療する(treating)」という用語は、病気と関連する有害症状を安定化させる若しくは低減すること、疾患の症状(disease symptom)の重症度を低減すること、疾患の進行速度を遅らせること、病状(disease condition)の進行を抑制する若しくは安定化させること、又は、望ましい方法により病態(disease state)と関連する測定基準(metric)を変更することを意味する。
【実施例0060】
臨床的に関連しているグラム陰性菌における薬剤間相互作用を一貫して系統的に評価するために、本発明者らは、4×4チェッカーボードアッセイを用い、異なる3菌種の6菌株において、79種の薬剤を単独で及び対の組み合わせによりスクリーニングした。本発明者らは、1菌株当たりおよそ3000種の混合薬を得て、これによって、本発明者らは、薬剤間相互作用の多くの一般原理を検出することができた。これらには、i)相互作用の大部分が種特異的であり、相乗作用は頻度が低いが、より保存されていること、及び、ii)拮抗作用が、異なるプロセスを標的とする薬剤間でのみ専ら生じるのに対し、相乗作用は、同じプロセスを標的とする薬剤に対して共通であることが含まれていた。本発明者らは、さらに、拮抗作用が、細胞内薬物濃度の減少によって引き起こされることが多いこと、並びに、多くの相乗作用が、多剤耐性及び広範囲薬剤耐性(MDR及びXDR)臨床分離株に対しても有効であることを実証する。そして、本発明者らは、これらのデータを用いて、単独では抗菌活性を有さないが、併用すると多くの薬剤に拮抗し、特にスペクチノマイシンと相乗的に大腸菌に対して作用するバニリンの相互作用メカニズムを調査した。
【0061】
本発明者らは、全て治療が困難な感染症に関連している、3種の異なるグラム陰性菌において、およそ3000対の混合薬を用量依存的にプロファイリングした。全体として、本発明者らは、スクリーニングされた組み合わせの約15%を占める、試験された6菌株において2500を超える相乗作用及び拮抗作用を特定した。この定量的かつ包括的なデータセットによって、本発明者らは、薬剤間相互作用の背後にある一般原理を導き出し、菌種間での保存に取り組み、同じ菌種又は密接に関連している菌種のMDR臨床分離株に対しても有効である強力な相乗作用を発見することができた。
【0062】
本発明者らのデータから、3つの一般原理が明らかになる。1つ目に、薬剤間相互作用は、たとえ個々の薬剤が菌種間で同じ細胞標的を有するとしても、高度に種特異的である。これは、薬剤間相互作用の背後にある基礎的なメカニズムが保存されていないためである可能性が高い。このようなメカニズムは、標的とされたプロセス間の細胞内ワイヤリング(intracellular wiring)と、組み合わされた薬剤の取り込み/流出の調節の両方に依存している。プロセス間のワイヤリングは、密接に関連している微生物種の間であってもほとんど保存されていないと考えられ、取り込みと薬剤流出の両方は、細菌細胞の最も多様な部分である、そのエンベロープ、保有する余剰な輸送系(harboring redundant transport systems)、及びアセンブリー機構/酵素に依存している。薬剤間相互作用の種特異性についての複数の結果が存在する。このことは、抗菌薬では、現在及び将来の薬剤開発の主な試みである狭域療法が、既に認可された薬剤の相乗的組み合わせから得ることができることを意味している。一方、種特異的な拮抗作用は、抗生物質療法による腸内細菌叢への付帯的損害を緩和するのに用いることができる。非抗生物質も常在腸内フローラに大きな損害を与えるため、このような拮抗作用は、ヒトの腸内細菌叢に対する薬剤の悪影響を最小化するためのより一般的な対抗戦略であり得る。
【0063】
2つ目に、拮抗作用と相乗作用には、明確に分離可能な特性がある。拮抗作用は異なるプロセスを標的とする薬剤間で厳密に生じるが、相乗作用は同じプロセスを標的とする薬剤に対して生じる可能性がより高い。この差異は、薬剤標的レベルにおいて明確な機構的根拠を有する。種々の段階において化学的又は遺伝的にプロセスを阻害することは、生物間に相乗効果をもたらすことが知られている。最も頑強な抗菌薬単独療法のうちの一部は、同じ又は直接的に関連するプロセスを阻害する多標的薬からもたらされる。一方、別のコアプロセスを標的とする薬剤を組み合わせることによって、DNA及びタンパク質合成阻害薬の場合と同様に、生物がより安定な平衡に達しやすくすることができる。遺伝子が酵母における別の機能的プロセスの一部であるとき、一貫して、遺伝的相互作用はより一般的に緩和される。
【0064】
3つ目に、拮抗作用は相乗作用よりも多く見られ、薬剤の無作為又は経験的な混合に効果がある場合、これは、個々の薬剤の有効性の低下である可能性が最も高いことを示している。診療所において一般的に用いられている混合薬、例えば、敗血症患者におけるリネゾリドとメロペネムであっても、一部の病原菌に対して強い拮抗効果を示すことがある。拮抗的相互作用は、診療所において有効性及び潜在的な毒性の問題を提起するが、これらの使用は、耐性分離株を逆選択(counter-select)することができる。一方、相乗作用は、病原菌種間の拮抗作用よりも保存されており、これは、組み合わせの臨床的使用を促進する。
【0065】
そして、同じクラスの抗菌薬には、他の薬剤と類似の相互作用があったが、本発明者らが試験したほとんどの拮抗作用は、細胞内薬物濃度の調節によるものであった。このことは、薬剤間相互作用がMoAによって部分的にしか誘導されず、これらの主な標的の直接的な機能的相互作用と自動的に解釈されるべきではないことを示唆している。これは、細菌種間での薬剤間相互作用の保存性が低い理由である可能性が高いが、その主な標的は高度に保存されている。さらに、多くの抗生物質クラスは、なる細分化、又は異常値作用(outlier behaviors)を有するメンバーを示した。これは、クラスのメンバーのうちの1つを検討することによって、クラス全体の一般的な結論を引き出す危険性をあらわにする。同様に、本発明者らは、殺菌性薬剤と酸化ストレスとの間の排他的な相乗作用又は拮抗作用を観察しなかったが、このことは、これらの種々のクラスの抗生物質と活性酸素種との相互関係が、これまで考えられていたものよりも複雑であり得ることを示唆している。本発明者らが本明細書において報告する相互作用は、増殖阻害レベルにある。本発明者らは系統的に調査しなかったが、16/16の薬剤間相互作用も死滅レベルにおいて検出可能であった。今後、薬剤間相互作用の結果が、種々のレベル(阻害、死滅、持続的形成)においてどのように関連しているかを評価するために、より系統的なプロファイリングが必要となる。
【0066】
本発明者らの研究は、一般原理を解明することを超えて、グラム陰性菌種において比類のない数の薬剤間相互作用を提供する。本発明者らは、確立された昆虫感染モデルを利用して、MDR臨床分離株に対する幾つかの相乗的な対の効力をin vitroで、また、これらのうちの2つについてはin vivoで実証した。更に多くの薬剤対は、本発明者らのデータセット内でまだ明らかにされていない。興味深いことに、ヒト標的薬は、本発明者らのスクリーニングにおいて最も頻繁な抗生物質補助剤の中の1種であり、本発明者らは4種の食品添加物しか含めなかったが、本発明者らは64の相乗作用を特定し、これらのうちの1つはMDR大腸菌分離株の増殖を阻害した。特にこの場合、バニリンは、特定の腸内細菌のトランスポーターMdfAを介して細胞内濃度を増加させたため、スペクチノマイシンと相乗的に作用した。このため、将来の組み合わせスクリーニングにおけるより多くのヒト標的薬及び食品添加物のプロファイリングは、解決する可能性のある余地を増加させるだけでなく、MDR病原菌に対する効率的な治療戦略にもつながる可能性がある。更に多くのヒト標的薬が、これまで認識されていたものよりも細菌増殖を阻害するため、このような補助戦略は特に適切である。
【0067】
要約すると、本発明者らは、薬剤間相互作用の重要な原理を明らかにし、生物又は個体間のこれらの保存性を評価するための枠組みを提供する、グラム陰性菌における対の混合薬の包括的な資源を生み出した。このような情報は、他の微生物における同等のスクリーニング、対の混合薬の基礎的なメカニズムを調査する研究、及びこれらの結果の計算予測の基礎として有用であり得る。さらに、薬剤間相互作用の一般原理のうちの一部は、感染症治療薬及び微生物を超えて当てはまり得る。抗菌薬療法について、本発明者らの研究は、非抗生物質が補助剤として適用可能である(hold)という見込みを強調し、狭域療法の新たな方針を提供する。
【0068】
方法
菌株、菌株培養及び薬剤
本研究においてプロファイリングされたグラム陰性菌3種それぞれについて、本発明者らは、広く用いられ配列決定された次の2菌株を用いた。大腸菌K-12 BW25113及びO8 IAI1、ネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)LT2及び14028s、緑膿菌PAO1及びPA14。選択された相乗作用を検証するために、本発明者らは、ヒト患者検体から回収された、次の6種のMDR臨床腸内細菌科(Enterobacteriaceae)分離株をプロファイリングした。大腸菌124、1027、1334、並びに肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)718、929及び980。
【0069】
本研究に用いられる全ての変異株は、PCRによりP1ファージを用いて野生型BW25113への変異を確認し再形質導入した(retransducing)後の大腸菌Keioノックアウトコレクションを用い、作製した。必要に応じてプラスミドpCP20を用い、カナマイシン耐性カセットを切除した。mdfAの過剰発現に用いられるプラスミドは、可動性(mobile)大腸菌ORFライブラリーから入手した。
【0070】
本発明に用いられる薬剤は、塩酸メトホルミン(TCI Chemicals社)、クリンダマイシン及びブレオマイシン(アプリケム(Applichem)社)、CHIR-090(メドケムトロニカ(MedChemtronica)社)、並びにバニリン(ロス(Roth)社)を除いて、シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)社から購入した。ストックは、サプライヤーの推奨(好ましくは、水中に溶解する)に従って調製し、プレート内に配列するまで、-30℃の暗所に保管した。全ての混合薬実験について、薬剤を、透明な384ウェルプレート(グライナーバイオワン(Greiner BioOne GmbH)社)内で適切な作用濃度(working concentrations)に希釈し、それぞれのウェルには、総容量30 μlの溶原性ブロス培地(Lysogeny Broth medium)を入れた。薬剤の添加後、細胞を、0.01の初期OD595 nmにおいて、一晩培養物から接種した。全ての菌株に同じ出発ODを用いた。全ての液体処理(薬剤添加、細胞混合)を、Biomek FX液体ハンドラー(ベックマン・コールター(Beckman Coulter)社)を用いて行った。プレートを通気性の14の膜(Breathe-Easy(商標))によって密封し、湿度飽和インキュベーター(Cytomat2、Thermo Scientific)内で37℃において、連続的に振盪しながら、結露を避けるために蓋をせずにインキュベートした。OD595 nmを、Filtermax F5マルチモードプレートリーダー(モレキュラーデバイス(Molecular Devices)社)によって、40分ごとに12時間測定した。
【0071】
最小発育阻止濃度(MIC)の算出
本発明者らは、MICを、振盪しながら、溶原性ブロス中37℃、8時間のインキュベーション後に、微生物の増殖を阻害するのに必要な最低濃度と定義した(384ウェルプレート、出発OD595 nm 0.01)。全ての薬剤に対するMICは、ハイスループットスクリーニング及び追跡実験に用いられる全ての菌株について、抗生物質濃度の2倍連続希釈物に対する増殖(8時間のOD595 nm)のロジスティックフィット(logistic fit)を用いて算出した。
【0072】
対の薬剤相互作用のハイスループットスクリーニング
全ての混合薬実験について、薬剤を透明な384ウェルプレート(グライナーバイオワン社)内で適切な作用濃度に希釈し、それぞれのウェルには、総容量30 μlのLBを入れた。薬剤の添加後、細胞を、約0.01の初期OD595 nmにおいて、一晩培養物から接種した。全ての菌株に同じ接種サイズを用いた。全ての液体処理(薬剤添加、細胞混合)を、Biomek FX液体ハンドラー(ベックマン・コールター社)を用いて行った。プレートを通気性の膜(Breathe-Easy(商標))によって密封し、湿度飽和インキュベーター(Cytomat2、Thermo Scientific)内で37℃において、連続的に振盪しながら、結露を避けるために蓋をせずにインキュベートした。OD595 nmを、Filtermax F5マルチモードプレートリーダー(モレキュラーデバイス社)によって、40分ごとに12時間測定した。実験及び分析パイプラインのフローチャートは、図6aに示されている。データ分析はRを用いて実行し、ネットワークはCytoscapeを用いて作成した。
【0073】
実験パイプライン
薬剤間相互作用のスクリーニングは、4×4のチェッカーボードを用いて行った。62種の薬剤を、種々の濃度によって384ウェルプレートに2連に(in duplicates)配列した(配列薬剤)。それぞれのプレートは、配列薬剤を含まない12の無作為に分散させたウェルを含有し、9つのウェルにはクエリー薬剤のみを入れ、3つのウェルにはいかなる薬剤も入れなかった。単一濃度の1種のクエリー薬剤を、3つの対照ウェルを除いて、384ウェルプレートの全てのウェルに加えた。全ての薬剤を1濃度当たり1回、時には2回クエリーした。本発明者らは、クエリーとして、大腸菌及びネズミチフス菌において78種の薬剤、並びに緑膿菌において76種の薬剤を用いた。合計79種のクエリー薬剤をスクリーニングし、これらのうち75種の薬剤は3菌種全てに共通であった。62種の配列薬剤は、79種のクエリー薬剤のサブセットであった。同じ薬剤濃度を、クエリー薬剤と配列薬剤の両方において用いた。3つの薬剤濃度(2倍希釈系列)を、菌株及び薬剤に合わせて調整されたMIC曲線に基づいて選択した。単一の薬剤ごとに、最も高い薬剤濃度(可能な限りMICに近い濃度)と、最も低い適合度を求めた。
【0074】
単独で増殖を阻害しなかった薬剤については、本発明者らは、他の菌株/菌種の感受性に従って、又は診療所での若しくは研究のためのこれらの使用に従って、濃度を選択した。大腸菌及びネズミチフス菌は、菌種内でほぼ同様の単一薬用量反応(single drug dosage responses)を示したため、それぞれの菌種の両菌株に対して同じ薬剤濃度を用いた。これに対して、緑膿菌ではMICが数倍異なることが多く、このため、2菌株間で薬剤濃度を調整した。
【0075】
薬剤間相互作用のスクリーニングは、4×4のチェッカーボードを用いて行った。62種の薬剤を、種々の濃度によって384ウェルプレートに2連に配列した(配列薬剤)。それぞれのプレートは、配列薬剤を含まない12の無作為に分散させたウェルを含有し、9つのウェルにはクエリー薬剤のみを入れ、3つのウェルにはいかなる薬剤も入れなかった。単一濃度の1種のクエリー薬剤を、3つの対照ウェルを除いて、384ウェルプレートの全てのウェルに加えた。全ての薬剤を1濃度当たり1回、時には2回クエリーした。本発明者らは、クエリーとして、大腸菌及びネズミチフス菌において78種の薬剤、並びに緑膿菌において76種の薬剤を用いた。合計79種のクエリー薬剤をスクリーニングし、これらのうち75種の薬剤は3菌種全てに共通であった。62種の配列薬剤は、79種のクエリー薬剤のサブセットであった。同じ薬剤濃度を、クエリー薬剤と配列薬剤の両方において用いた。
【0076】
増殖曲線の平滑化及び分析
ゴンペルツ(Gompertz)モデルを、ノイズ低減のためにRパッケージgrofitバージョン1.1.1-1を用いることによって、(増殖が観察されたときに)全ての増殖曲線に適合させた。適合の質をピアソン相関(R)によって評価し、全505の増殖曲線の約95%では0.95よりも高かった。0.95未満のRは、ホスホマイシン等の一部の薬剤の特徴を示す非シグモイド形状の増殖曲線、又は非常にノイズの多いデータのいずれかを示した。第1の事例では、更なる分析のために元のデータを保存した。第2の事例では、ノイズのあるデータを除去した。プレート効果は、それぞれの行及び列の中央値に多項式を当てはめて補正した。LBのバックグラウンドシグナルは、同じプレートから増殖していないウェルの中央曲線を差し引くことによって除去した。これらは、単一又は二重の薬剤処理のいずれかが増殖を完全に阻害したウェルであり、それぞれのプレートは、少なくとも3つのこうしたウェルを含有していた。系統的影響を補正するために、データを菌株ごと及びバッチごとに処理した。
【0077】
適合度の推定
本発明者らは、適合度を評価するために、単一の時点のOD595 nm測定(増殖)を用いた。これは、撹乱がなく増殖した細胞の定常期への推移に対応し、これによって、本発明者らは、誘導期、増殖速度又は最大増殖に対する薬剤の効果を把握することができる。このため、本発明者らは、OD595 nmを、大腸菌BW25113及び緑膿菌の両菌株については8時間、高速増殖菌(fast-growers)大腸菌iAi1及びネズミチフス菌14028sについては7時間、そして、増殖の遅いネズミチフス菌LT2については9時間の時点で用いた。
【0078】
ブリス独立性モデルによれば、薬剤間相互作用はまれであると仮定すると、ほとんどの混合薬では、配列薬剤の適合度(fa)は、両方の薬剤の存在下での適合度(faq)をクエリー薬剤単独の適合度(fq)で割ったものに等しい。
【数1】
(式1)
ε=0の場合、
【数2】
(式2)
式中、εはブリススコアを表し、fは適合度を表し、gは増殖を表し、aは配列薬剤を表し、qはクエリー薬剤を表し、そして0は薬剤がないことを表す。両方の薬剤の存在下での適合度(faq)は、両方の薬剤の存在下での増殖(gaq)を、同じプレートの薬剤を含まないウェルの増殖中央値(g0)で割ることによって算出した。単一のクエリー薬剤の適合度(fq)は、それぞれのバッチ間の上位5%の増殖ウェルを、それぞれのプレートの薬剤を含まないウェルの増殖中央値(g0)で割ることによって求めた。この測定基準は、クエリー薬剤のみを収容する9つのウェルのみを用いるよりも、実験誤差に左右されない。それにもかかわらず、両方のfqの推定値は、非常に類似した結果をもたらす(ピアソン相関=0.98)。式2に従って、配列薬剤の適合度(fa)を、バッチ内のn種のクエリー薬剤q間の所与のウェルに対して、バッチ内の全てのプレート(クエリー薬剤)間のgaqとgqとの間の最良適合線の傾きによって推定した(図6b)。
【数3】
配列薬剤の数(nr arrayed drugs)
(式3)
【0079】
本発明者らは、多くの相互作用(gaqとgqとの間のピアソン相関r 0.7未満)を有した薬剤を収容するウェルについては、相関性を向上させfaを推定することができるように、クエリー薬剤点(最小18)を制限した。プレートの数を制限した後であっても、rが依然として0.7未満だったウェルは、高ノイズ(~約2%)のために、更なる分析から外した。バッチ内の75%を超えるプレートにおいて増殖を示さないウェルについては、faを0と見なした。
【0080】
相互作用のスコア
ブリス独立性
ブリススコア(ε)を、上述(式1)のように、それぞれのウェルについて算出した。少なくとも、3×3薬剤濃度×2(2連)(duplicates)×2(クエリー薬剤及び配列薬剤)=36、又は18(クエリー薬剤のみ)のスコアを、薬剤対ごとに求めた。薬剤間相互作用は、ブリス独立性モデルに基づいて、次の3つの段階により推論した。a)完全なε分布に基づく強い相互作用、b)適切な薬剤濃度に制限されたε分布に基づく強い相互作用、及びc)菌種内の保存された弱い相互作用。本研究において示された菌種間比較、薬剤間相互作用ネットワーク、及び単色性分析には、全ての薬剤間相互作用が含まれている。
【0081】
a)完全なε分布に基づく強い薬剤間相互作用
ウィルコクソン順位和検定の10000順列(薬剤対ごと、菌株ごと)を行った。全ての順列に対して、所与の組み合わせのε分布を、所与の菌株の完全なε集合から無作為にサンプリングした同じサイズのε分布と比較した。並べ替えp値は、次のように算出した。
【数4】
(式4)
式中、Nは順列の総数(10000)であり、pnはn番目の順列について求められたウィルコクソン順位和検定のp値である。強い薬剤間相互作用は、次の2つの基準を同時に満たす、これらの薬剤対に割り当てた。i)相乗作用又は拮抗作用のそれぞれについて、ε分布の第1四分位又は第3四分位が-0.1未満又は0.1超、及びii)pが0.05未満(多重検定、ベンジャミニ・ホッホベルグ(Benjamini-Hochberg)での補正後)。一方だけの薬剤相互作用のみが考慮されたため、相乗作用と拮抗作用の基準を同時に満たす、これらのわずかな相互作用を、中性として再度割り当てた(|0.1|を超えるεにおいてのみn=1)。薬剤間相互作用の強度を反映させるために、第1四分位と第3四分位との間の最も高い絶対ε値を、単一相互作用スコア(ε)として用いた。
【0082】
b)適切な薬剤濃度に制限されたε分布に基づく強い薬剤間相互作用。薬剤相互作用は濃度依存性であるため、薬剤濃度比を相乗作用又は拮抗作用のいずれかに適切なものに制限した後、同じ統計的手順を繰り返した。この制約は、期待適合度(単一薬剤の適合度の積、fa×fb)が、相乗作用については0.2未満であり、拮抗作用については0.8を超える濃度比に対応するε値である、両方の相互作用についての盲点を除外することによって加えた(図7d)。これらの相互作用は、制限された薬剤濃度比を用いて求められた、これらのp値及びεによって記述される。ほとんどの相互作用は、完全なε分布と制限されたε分布の両方に基づいて検出されたが、種々の方法のそれぞれは、一意的に特定された相互作用を有していた(図8c)。0.2の期待適合度カットオフを用いて、本発明者らは、完全なε分布から90の一意的に特定された相互作用、及び制限されたε分布から379の一意的に特定された相互作用を有する、最大数の強い相互作用(1950)を特定した(感受性分析も参照)。
【0083】
さらに、期待適合度に基づいてε値を制限することによって、あらゆる所与の薬剤対について相乗作用又は拮抗作用が検出可能であるかを定義することができる。適切な期待適合度空間内の5εスコア未満の薬剤対に対して、これらの試料サイズが不十分なため、有意なp値は見いだされなかった。相乗作用及び拮抗作用は、全ての相互作用のそれぞれ1%及び25%について検出することができなかった。
【0084】
c)菌種内の保存された弱い薬剤間相互作用
1菌種当たり2菌株のうち1菌株だけで強い薬剤間相互作用を示す薬剤対については、相互作用の兆候が同じであれば、第2の菌株に相互作用を割り当てるための基準は、0.06よりも大きい|ε第2の菌株|に緩めた。この手法を用いて割り当てられた相互作用は、保存された弱い相互作用と称される。
【0085】
ロエベ相加性
十分な増殖阻害を有する高分解能8×8チェッカーボードが検証データセットにおいて利用可能だったβ-ラクタム類間の組み合わせについて、ロエベ相加性を用いて相互作用を確認した。薬剤間相互作用は、二次元薬剤濃度プロットにおけるアイソボール(isoboles)(等増殖線(lines of equal growth))の形状から推論した。特に明記しない限り、全てのアイソボールは、50%増殖阻害(IC50)に対応し、ロジスティックモデルへ適合させることにより、アイソボール及びドットを表す線IC50補間濃度を用いて得られた。IC50濃度(又は他のICn%)を補間するために、ロジスティックモデルを用いて、第2の薬剤の種々の濃度にわたって第1の薬剤のそれぞれの濃度についての増殖を適合させた。このモデルの帰無仮説は、相加性の線によって表され、線状アイソボールは、2種の薬剤によって等しい個別ICを結ぶ。
【0086】
感受性分析
本発明者らは、感受性分析を行うことによって、相互作用を割り当てるのに用いられる主な統計的パラメーターの妥当性を確認した。他のパラメーターを一定に保ちながら、幾つかの期待適合度(fa×fb)カットオフを試験した(図8c)。ε分布を(期待適合度に基づいて)適切な薬剤濃度に制限することの付加価値は、この基準を用いて専ら見いだされた強い薬剤間相互作用の割合(本発明者らの選択されたカットオフでは約19%)によって、強く裏付けられた。選択されたカットオフ(0.2;相乗作用については0.2未満のfa×fbのウェル、及び拮抗作用については0.8を超えるfa×fbのウェルを無視する)は、割り当てられた全相互作用の最大数、並びに検証データセットに対するベンチマーク後の最も高い精度(91%)及び再現性(74%)という結果をもたらした(図8c)。
【0087】
強い(|ε|が0.1超)相互作用及び弱い(|ε|が0.06超)相互作用を定義するのに適用された閾値の適合性は、真陽性率及び偽陽性率(それぞれ、TPR及びFPR、図8d)に対するこれらの影響によって評価した。|ε|が0.1超の閾値は、相互作用を割り当てるのに最小強度を課すため、有用である。0.1は、全てのε分布の第1四分位及び第3四分位の中央値の約3倍に相当する(図6c)。この閾値を低下させると、相互作用と呼ぶ際の曖昧さにより幾つかの薬剤対が中性に再度割り当てられるため、TPRが低下する。この閾値を大きくすると、非常に強い相互作用のみが割り当てられるため、TPRが低下する(図8d)。薬剤間相互作用は菌種内で高度に保存されており、全ての菌種において観察されたεの高い相関性を示している(図3a、並びに図13a及びb)。このことは、最初に相互作用スコア|ε|が0.1を超えた場合、本発明者らが第2の菌株の相互作用強度閾値を緩める動機となり、これらを保存された弱い相互作用と命名した(dubbing these interactions weak and conserved)。保存された弱い相互作用を本発明者らの分析に含めると、TPRが15%増加した。|ε|が0.06を超える弱い相互作用の閾値を加えること(全てのε分布の第1四分位と第3四分位の中央値の約2倍)は、適切なFPRを維持するために重要である(図8d)。
【0088】
ベンチマーク及び臨床分離株チェッカーボードアッセイ
スクリーニング後の検証実験のために、及びMDR臨床分離株に対する選択された相乗作用を試験するために、8×8チェッカーボードアッセイを行った(図5)。スクリーニングの際と同様に、薬剤なしの対照について、初期定常期におけるOD595 nmに基づいて増殖を評価した。スクリーニングにおいて用いられた時点をここでもスクリーニング菌株に用いたが、全ての大腸菌及び肺炎桿菌MDR分離株には8時間を用いた。適合度は、それぞれの個々のチェッカーボードについて、単一又は二重の薬剤処理後のOD595 nmを薬剤非処理のもので割ることによって算出した。ブリススコア(ε)は、混合薬ごとに試験した全ての濃度比について算出し、薬剤対ごとに49のε値を得た。混合薬は、薬剤のうちの1種のみ、及びその後の第2の薬剤との組み合わせが増殖を完全に阻害したウェルを除いた後、ε分布に基づいて分析した。ε分布の中央値が0.1を超えたか、又はQ3が0.15を超えた場合に、拮抗作用と呼んだ。全ての実験は、2連の生物試料(biological duplicates)により行い、相互作用は、2連の試料(duplicates)が一致するときに有効であると考えられた。
【0089】
同様に、ε分布の中央値が-0.1未満だったか、又はQ1が-0.15未満だった場合に、相乗作用と呼んだ。そして、全ての相互作用は手作業で検査し、小さい濃度域でしか相互作用が生じなかったがカットオフの直下に中央値及び四分位が依然としてある10の薬剤対は、回収して、適切な薬剤相互作用を割り当てた。
【0090】
薬剤間相互作用の保存性の評価
同じ菌種の菌株間の薬剤間相互作用の保存性を、相互作用スコアεのピアソン相関によって評価した。潜在的に保存されていない薬剤間相互作用については、2菌株の期待適合度分布を考慮した。2つの分布がウィルコクソン順位和検定に従って有意に異なるとき(多重検定でのBH補正後のp値が0.05未満)、薬剤対は2菌株間で比較可能ではないと見なされた。
【0091】
薬剤間相互作用の菌種間保存性を評価するために、本発明者らは、3菌種全てにおいて調査された薬剤対のみを考慮した。薬剤間相互作用は、2菌株のうちの少なくとも1菌株において検出され、他の菌株において相互作用兆候の変化が観察されなかったときに、菌種内で検出されると定義した。次いで、相互作用を3菌種間で比較した。薬剤間の相互作用の兆候が菌種間で変化した事例(相反する相互作用;全相互作用の約7%)は、比較「菌種間」ベン図(図3d)から除外した。現在の分析では、所与の薬剤間相互作用は菌種間で保存される可能性があるが、菌種内では保存されない可能性があることに留意されたい。
【0092】
単一薬剤レベルでの保存性は、共有された耐性及び感受性に基づいて定義した。薬剤濃度のうちの1つが増殖を少なくとも30%阻害する場合、菌株は所与の薬剤に対して感受性があると考えられた。菌種間の薬剤間相互作用の保存性に従って、両方の菌種のうちの少なくとも1菌株が同じ兆候(感受性又は耐性)を有するとき、単一薬剤応答が菌種間で保存される。
【0093】
単色性指数
薬剤対間の単色性指数(MI)は、Szappanosらに従って次のように定義した。
【数5】
rij>bの場合、
rij=bの場合(正:if)、
rij<bの場合、
(式5)
式中、rijは、クラスi及びjの薬剤間の全ての相互作用に対する拮抗作用の比率を表し、bは、全ての相互作用に対する拮抗作用の比率を表す。本発明者らは、MIを算出するために、クラスi及びjの薬剤間の相互作用を最低2つ設定した。クラスi及びjの薬剤間で拮抗作用のみが生じる場合は、MIは1となり、相乗作用のみが生じる場合は、MIは-1となる。拮抗作用の割合がバックグラウンド比bを反映する場合、MIは0となる。薬剤カテゴリー対ごとに1つのMI指数を求めるために、全ての菌種間で強い薬剤相互作用と弱い薬剤相互作用の両方を考慮した。
【0094】
ハチノスツヅリガ感染モデルにおける混合薬の評価
混合薬の有効性を評価するために、in vivoモデルとして、最終齢幼虫期のオオハチミツガ(ハチノスツヅリガ)の幼虫を用いた。幼虫は、UKワックススワームズ(UK Waxworms)社(シェフィールド(Sheffield)、英国)、及びTZ-テラリスティック(TZ-Terraristik)社(クロッペンブルク(Cloppenburg)、ドイツ)から購入した。バニリン(20%DMSO中)、スペクチノマイシン(蒸留水)、コリスチン(蒸留水)、及びクラリスロマイシン(20%DMSO/0.01%氷酢酸)の原液を新たに調製し、PBS中で必要な濃度に希釈した。薬剤及び細菌懸濁液を、Hamilton精密シリンジを用い、最後まで残った(last)左腹脚(薬剤)及び右腹脚(抗生物質)を介して、血体腔に10 μLアリコートを注入することによって投与した。対照には、未感染の幼虫と、薬剤に用いた溶媒を用いて両方の最後まで残った腹脚に注入した幼虫の両方が含まれていた。薬物毒性を、単一の薬剤又は混合薬のいずれかの連続希釈物の注入によって事前に評価し、薬剤は、ほとんど/全く毒性を生じない量で用いた。同様に、最適な接種物を特定するために、10 μlの連続希釈細菌懸濁液(1×102コロニー形成単位(CFU)~1×107 CFU)を幼虫に接種することによって、時間死滅曲線を作成した。最終実験については、10匹の幼虫のグループを、菌株/混合薬ごとに注入し、ペトリ皿に入れ、37℃においてインキュベートした。幼虫を、大腸菌及び肺炎桿菌分離株についてそれぞれ106 CFU及び104 CFUの(亜)致死量によって感染させ、続いて感染の1時間後、幼虫に薬剤を注入した。幼虫の生存は、2人の観察者が別々に、指示された時点においてモニターした。それぞれの菌株/混合薬を、3回又は4回の独立した実験において評価した。
【0095】
細胞生存率アッセイ及び細胞内抗生物質濃度
シプロフロキサシン
大腸菌BW25113の一晩培養物を50 mlのLBに1:1000に希釈し、37℃において約0.5のOD595 nmまで増殖させた。培養物に、パラコート(50 μg/ml)、バニリン(150 μg/ml)、ベンザルコニウム(5 μg/ml)、カフェイン(200 μg/ml)、ドキシサイクリン(0.5 μg/ml)、リファンピシン(5 μg/ml)、トリメトプリム(5 μg/ml)、又はクルクミン(100 μg/ml)を加え、37℃において30分間インキュベートした後に、最終濃度2.5 μg/mlのシプロフロキサシンを加えた。培養物を、両方の薬剤の存在下で、37℃において1時間インキュベートした。薬剤を含まない寒天ペトリ皿上に蒔いた洗浄細胞ペレットを16時間インキュベートした後にCFUを計数することによって、細胞生存率を決定した。細胞内シプロフロキサシンは、先述したように、タンデム質量分析(LC-MS/MS)に連結された液体クロマトグラフィーを用いて定量した。洗浄されていない細胞ペレットを直接凍結し、350 μlのアセトニトリルによって溶解し、続いて、3回の凍結解凍サイクルを行った(解凍は、超音波浴中で5分間行った)。細胞残渣を16000 gにおいてペレット化し、上清を注入前に0.22 μmシリンジフィルターを通して濾過した。クロマトグラフィーによる分離は、ウォーターズ(Waters)社のBEH C18カラム(2.1×50 mm;1.7 μm)上で、次のように流速0.5 mL/分の2分間の勾配によって、40℃において遂行した。(i)0分~0.5分、1%の移動相B;(ii)0.5分~1.2分、1%~95%の移動相Bの直線勾配;(iii)1.2分~1.6分、95%の移動相B;及び、(iv)1.6分~1.7分、初期条件に戻す(移動相Aは水中0.1%ギ酸からなり、移動相Bはアセトニトリル中0.1%ギ酸からなっていた)。試料は、分析まで4℃に維持した。試料注入量は、5 μLであった。シプロフロキサシンの検出は、ポジティブモードにおいてエレクトロスプレーイオン化を用いるウォーターズ社のQ-Tofプレミア機器で行った。トランジション332>314をモニターするとともに、コーン電圧を8に設定し、衝突エネルギーを20に設定した。シプロフロキサシンの添加時に、細胞内シプロフロキサシンをCFUに規準化した。
【0096】
ゲンタマイシン
細胞内ゲンタマイシンは、先述したように、[3H]-ゲンタマイシン(1 mCi/ml;ハルトマンアナリティック社(Hartmann Analytic Corp.))を測定することによって定量した。大腸菌MG1655(BW25113の親株(正:the parental strain))の一晩培養物を5 mlのLBに1:1000に希釈し、約0.1のOD595 nmまで増殖させた。[3H]-ゲンタマイシンを冷却ゲンタマイシン中で希釈して5 mg/ml(0.1 mCi/ml)原液とし、次いで、最終濃度5 μg/ml(0.1 μCi/ml)において、第2の薬剤であるベルベリン(200 μg/ml)、エリスロマイシン(15 μg/ml)、メトホルミン(13000 μg/ml)、プロカイン(6000 μg/ml)、ロペラミド(400 μg/ml)、ベンザルコニウム(5 μg/ml)、リファンピシン(5 μg/ml)、又はクリンダマイシン(200 μg/ml)と同時に培養物に加えた。その後、培養物を回転振盪器で37℃においてインキュベートした。0時間、0.5時間、1時間、1.5時間及び2時間の時点において、500 μlのアリコートを取り出し、1 mlの非標識ゲンタマイシン(250 μg/ml)によって前処理した0.45 μm孔径のHAWPメンブレンフィルター(ミリポア(Millipore)社)にアプライした。フィルターを10 mlの1.5%NaClによって洗浄し、計数バイアルに入れ、52℃において30分間乾燥させた。次いで、8 mlの液体シンチレーションを乾燥フィルターに加え、バイアルを室温において一晩インキュベートした後、5分間計数した。ゲンタマイシン取り込み効率は、ゲンタマイシンの108細胞当たりの総蓄積量(ng)と表し、本明細書では、簡略化のために最終時点(2時間)についてプロットする。細胞生存率は、CFUによって決定した。
【0097】
スペクチノマイシン
細胞内スペクチノマイシンは、[3H]-スペクチノマイシン(1 μCi/mg;ハルトマンアナリティック社)を測定することによって定量した。大腸菌BW25113の一晩培養物を、バニリン(150 μg/ml)を含む及びこれを含まない1 ml LBに1:1000に希釈し、約0.5のOD595 nmまで増殖させた。50 μg/mlの[3H]-スペクチノマイシン:スペクチノマイシン1:100を加え、培養物を1時間インキュベートした。培養物をペレット化し、50 μg/mlの非標識スペクチノマイシンを含むPBSによって2回洗浄し、1%SDS中に再懸濁させ、85℃において20分間インキュベートした。溶解物を8 mlの液体シンチレーション(パーキンエルマー(Perkin Elmer)社のULTIMA Gold)と混合し、パーキンエルマー社のTri-Carb 2800TRを用いて1分間計数した。測定された放射能は、OD595 nmによって測定された細胞数に対して規準化した。
【0098】
RNA分離、cDNA作製、及び定量的RT-PCR
大腸菌BW25113及びmarR欠失変異株の一晩培養物を20 mlのLBに1:2000に希釈し、37℃において約0.2のOD595 nmまで増殖させた。アスピリン又はバニリンをそれぞれ500 μg/ml及び150 μg/mlの最終濃度まで培養物に加え(対照にはDMSOを加え)、続いて、撹拌しながら37℃において30分間インキュベートした。細胞を回収し、製造業者の指示に従い、RNeasy Protect Bacteria Mini Kit(キアゲン(Qiagen)社)を用いて、RNA抽出を行った。cDNAは、SuperScript(商標)III Reverse Transcriptase(サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)社)を用いて、qRT-PCR用に作製した。marA及びmdfA発現レベルは、製造業者(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)の説明書に従い、SYBR(商標)Green PCRマスターミックスを用いて、定量的RT-PCRにより推定した。marA及びrecAのプライマー配列は、先述されている。全ての実験は、少なくとも3連の生物試料において行い、相対的発現レベルは、参照としてrecA発現を用い、Livakらに従って推定した。
【0099】
タンパク質定量化のためのイムノブロット分析
大腸菌BW25113及びΔmarA変異株の一晩培養物を、500 μg/mlのアスピリン、150 μg/mlのバニリン又はDMSO(薬剤溶媒対照)を含有する50 mlのLBに1:1000に希釈し、続いて、撹拌しながら37℃において約0.5のOD595 nmまで増殖させた。細胞を、対応する薬剤又はDMSOを含有するPBS中で洗浄し、次いで、OD595 nmが1に一致するように再懸濁させた。細胞ペレットをレムリ(Laemmli)緩衝液中に再懸濁させ、95℃に3分間加熱し、続いて、1:200000希釈において抗AcrA(a-AcrA)ポリクローナル抗血清(K.M. Posからの寄付)を用いてイムノブロット分析を行った。一次抗血清は、1:5000希釈において抗ウサギHRP(A0545、シグマ(Sigma)社)を用いて検出した。バンドのピクセル濃度は、ImageJを用いて定量化した。少なくとも5連の異なる生物試料をブロットし、これらの平均及び標準偏差によって概括した。
【0100】
薬剤相互作用のMoAを特定するための大腸菌Keioノックアウトコレクションのスクリーニング
大腸菌Keioノックアウトコレクション(1つの変異株当たり2つの独立したクローン)を、先述したように、Rotor HDA(シンガー・インスツルメンツ(Singer Instruments)社)を用いて、LB寒天プレート中に1536フォーマットにより配列した。それぞれの変異株の増殖は、バニリン(200 μg/ml)、スペクチノマイシン(4 μg/ml)、及びこれらの組み合わせの存在していない状態及び存在下で、37℃において13時間インキュベートした後のコロニー濁度(colony opacity)から推定した。全てのプレートは、18メガピクセルのCanon Rebel T3i(キャノン(Canon)社)を用いて、制御された照明条件(spImager、S&Pロボティクス(S&P Robotics)社)下で画像化した。実験は、3回反復した。それぞれの変異株の適合度は、外枠プレート効果(outer-frame plate effects)を補正した後、条件(バニリン、スペクチノマイシン、又はこれらの両方)における増殖をLBにおける増殖で割ることによって算出した。ブリススコアは、1回の反復(replicate)ごとに式1に従って算出した後、平均した。
【0101】
結果
グラム陰性菌における混合薬のハイスループットプロファイリング
グラム陰性菌は、ヒトにおいて最も治療が困難な感染症のうちの一部を引き起こす。本発明者らは、薬剤間相互作用及び密接に関連する菌種間のこれらの保存性を検討するために、世界保健機関による最も危険性の高いグループに全て属する、大腸菌、ネズミチフス菌(Salmonella enterica serogroup Typhimurium)、及び緑膿菌の3種のガンマプロテオバクテリア種を選択した。
【0102】
同じ菌種の菌株間で薬剤応答が変化することがあるため、本発明者らは、1菌種当たり2菌株を選択した(図1a)。本発明者らは、最大79種の化合物単独、及び対の組み合わせにより、それぞれの菌株を調査した。薬剤は、全ての主な薬剤クラスから59%の抗生物質、23%のヒト標的薬及び食品添加物から構成され、これらのほとんどは、抗菌活性及び/又は補助活性(adjuvant activity)が報告され、18%の他の化合物、例えば、プロトン駆動力(PMF)阻害薬又は酸化ストレス誘導薬は、抗生物質活性及び/又は取り込みに関連する可能性により、細菌標的又は遺伝毒性効果が知られていた(図1a)。全体として、本発明者らは、6菌株それぞれにおいて、最大2883の対の混合薬をプロファイリングした。
【0103】
組み合わせスクリーニングのための、適切な菌株に合わせて調整された濃度を選択するために、全ての菌株において薬剤を予備試験した。本発明者らは、それぞれの薬剤について次の3つのサブ阻害濃度(subinhibitory concentrations)を選択した。ほぼ完全、中程度、及び軽度/増殖阻害なし、平均して、それぞれ、50%~100%、25%~50%及び0%~25%の最小発育阻止濃度(MIC)に相当する。薬剤なしの対照、及び単一薬剤の対照とともに、本発明者らは、増殖読み出しとして吸光度を用いて、4×4用量マトリックス(dose matrix)においてそれぞれの混合薬を評価し、薬剤処理細胞と薬剤非処理細胞との間の増殖比として適合度を算出した(図1図6)。全ての実験を少なくとも2回、平均4回行い、全ての実験には優れた反復相関(平均ピアソン相関=0.93;図7a及びb)があった。
【0104】
本発明者らは、ブリス独立性モデルを用いて、全ての薬剤間相互作用を定量化した(図1b)。併用療法を評価するための代替モデルであるロエベ相加性とは対照的に、ブリスモデルは、単独では効果がないが他の薬剤の活性を強める薬剤(補助剤)に適合させることができる。この特徴は、本質的に抗生物質耐性の微生物(緑膿菌及びMDR臨床分離株)並びに抗菌活性を欠くヒト標的薬又は食品添加物を調査する、本発明者らのスクリーニングに特に適切である。モデルの帰無仮説と一致して、ブリススコアは、全ての菌種について0に集中している(図7c)。本発明者らは、組み合わせ(4×4用量マトリックス)ごとに求められた全てのブリススコア(ε)から、-1~1の範囲の単一の相互作用スコアεを導き出した。このスコアεは、薬剤対内の全てのブリススコアの第1四分位及び第3四分位を反映していた。相乗作用及び拮抗作用は、p値が0.05未満(ウィルコクソン順位和検定の10000順列のベンジャミニ・ホッホベルグ補正後)である場合に有意であると考えられた。強い相互作用は、|ε|が0.1を超える付加的な効果量(effect size)要件を有していたのに対し、弱い相互作用は、同じ菌種の2菌株のうちの1菌株については効果量閾値を満たすことが可能だったが、他の菌株についてはその直下であった(|ε|>0.06;図3a)。
【0105】
全体として、本発明者らは、大腸菌について約19%の相互作用(強い/弱い相乗作用及び拮抗作用)、ネズミチフス菌について約16%、及び緑膿菌について約11%の相互作用を検出した。これは、大腸菌において試験された抗生物質の限定された集合のヒット率70%超と、種々の真菌において試験された抗真菌薬のより大規模な集合のヒット率2%未満との間である。不一致は、次のものによる可能性が高い。(i)薬剤選択バイアス、(ii)過去の試験において用いられた単一薬剤濃度(偽陰性率及び偽陽性率を大幅に増加させ得る)、並びに(iii)異なるデータ分析及びパラメーター設定。例えば、本発明者らは、単独で増殖を阻害しない薬剤が、本発明者らのスクリーニングにおいてより少ない相互作用に関与することを観察した(図7e)。本明細書において試験された79種の薬剤のうち、69種はそれぞれの菌株において少なくとも1つの相互作用を有し、大腸菌の相互作用の中央値は薬剤当たり12~13であり、ネズミチフス菌では11であり、また緑膿菌では5~6であった(図7f)。
【0106】
混合薬は、以前に種々の細菌において系統的に調査されていなかったため、本発明者らは、これらのデータセットをベンチマークする根拠となる真実を欠いていた。この制限を克服するために、本発明者らは、6菌株にわたって242の組み合わせを選択し、より高い精度の8×8チェッカーボードアッセイを用いて検証集合を作製した(図8a及びb)。本発明者らは、この検証集合を用いて、本発明者らの相互作用特定手法の性能を評価するとともに、本発明者らのスクリーニングをベンチマークした(図8c及びd)。全体として、本発明者らの精度及び再現性はそれぞれ、91%及び74%であった。(偽陰性によってもたらされた)再現性がわずかに低いことは、検証実験において薬剤濃度範囲が広くカバーされていることにより部分的に説明することができ、これによって、本発明者らの相互作用検出能が向上する(図9)。さらに、本発明者らは、試験した全ての弱い相互作用の90%(n=46;図10)を確認し、本発明者らの相互作用特定手法の理論的根拠が真実であることを証明した。実際に、本発明者らのヒットにおいて弱い相互作用を含むことは、より高い再現性に寄与する(図8d)。同じクラスの抗生物質(β-ラクタム類)間で観察された一握りの相乗作用については、本発明者らは、同じ標的を有する薬剤間の相互作用を評価するのにより適したロエベ相加性モデルを用いて、相互作用を確認した(図8e)。
【0107】
全体として、本発明者らは、グラム陰性菌における薬剤間相互作用の大規模で高い質のデータセットを作成し、17050種の混合薬を用量依存的に調査した。本発明者らは、この豊富なデータセットを手にして、薬剤間相互作用に影響を与える一般原理を探索した。
【0108】
拮抗作用及び相乗作用には、明確な選択性がある
本発明者らは、6菌株にわたって1354の拮抗的薬剤間相互作用及び1230の相乗的薬剤間相互作用を検出し、これら2つの相互作用が同様の頻度で生じることを示唆した。しかしながら、両方の種類の相互作用の検出能を補正すると、拮抗作用は相乗作用よりも50%ほど多く見られる(図2a)。これは、本発明者らが、組み合わせ(少なくとも1種の個々の薬剤が増殖を阻害するこれらの薬剤対;図7d)の75%についてのみ、拮抗作用を検出することができるのに対し、相乗作用はほぼ全ての組み合わせにおいて検出可能である(99%)からである。また、抗真菌薬についてのより高い拮抗作用の出現率も報告されている。
【0109】
驚くべきことに、拮抗作用及び相乗作用は、本発明者らのデータにおいて明確な二分法を示した。拮抗作用は、ほぼ独占的に、全ての菌種について種々の細胞プロセスを標的とする薬剤間で生じたが、相乗作用は、同じクラスの薬剤又は同じプロセスを標的とする薬剤についても多かった(図2b~e及び図11)。機構的には、拮抗作用は、薬剤標的レベルでの相互作用によって説明することができ、2種の阻害薬は、細胞が撹乱を受けた別のプロセスを緩衝しやすくする。細菌では、DNA及びタンパク質合成阻害薬がこのように作用する(図2b)。これがより広範囲の現象であることと一致して、酵母のゲノム全域にわたる遺伝的相互作用の研究では、緩和相互作用(拮抗作用)は、種々の機能的プロセスの一部である必須遺伝子(感染症治療薬の標的)間で高められる。しかしながら、拮抗作用は、干渉効果、例えば、1種の薬剤が、細胞から第2の薬剤を取り除くのに必要なポンプの発現を誘導することからも発生し得る。本発明者らは、細胞内薬物濃度の調節によってどの程度拮抗作用が誘導されるかを調査するために、大腸菌において種々の薬剤とゲンタマイシン又はシプロフロキサシンとの16の拮抗的相互作用を試験した(図12a)。最初は増殖阻害レベルで検出されたが、全ての拮抗作用は死滅レベルで真に保たれ、14/16は、細胞内ゲンタマイシン又はシプロフロキサシン濃度を減少させた(図12b)。試験された幾つかの事例において、これは、第2の薬剤が、ゲンタマイシンのPMF活性化取り込みを減少させるか、又は腸内細菌の主な流出ポンプであるAcrAB-TolCの発現を誘導することによりシプロフロキサシンの流出を増加させ、それぞれの変異株のバックグラウンドでは拮抗作用が中和されたために生じる可能性が高かった(図12c)。全体として、本発明者らの結果は、大部分の拮抗作用は、主な薬剤標的の直接的な相互作用によるものではなく、細胞内薬物濃度の調節によるものであることを示唆している(図12d及びe)。
【0110】
拮抗的相互作用とは異なり、同じ細胞プロセスを標的とする薬剤間では、相乗作用が生じることが多かった(図2b~e及び図11)。実際に、相乗作用は、本発明者らのデータセット内の薬剤カテゴリー間で考えられる混合薬が約15倍多いことを考慮すると、3菌種全てにわたって同じカテゴリーの薬剤内で有意に高められる(p値<10~16、フィッシャー直接検定(正:Fisher's exact test))。機構的には、同じ機能的プロセスを種々の段階において標的にすれば、その重複性を解消する(tease apart)ことができる。例えば、β-ラクタム類は、多数のかつ重複することが多いペニシリン結合タンパク質(PBP)に対して種々の親和性を有し、このことは、両者の間の多くの相乗作用を説明する可能性が高い(図2b図8e、並びに図11a及びb)。
【0111】
拮抗作用のように、細胞内薬物濃度の調節により、相乗作用も生じ得る。多くの生物における膜標的化合物の一般的な透過化の役割、及び薬剤の取り込みがグラム陰性病原菌の主なボトルネックとなっていることと一致して、検出された全ての相乗作用の4分の1は、本発明者らのスクリーニングにおいて、8種の膜標的薬剤のうちの少なくとも1種を含む(ウィルコクソン順位和検定、p値=0.044)。例えば、疎水性マクロライド類は、外膜(OM)の負に荷電した面を通過することが困難であるが、リポ多糖(LPS)に結合してOMを破壊するポリミキシンによって増強され得る。しかしながら、膜標的化合物も拮抗作用の約16%を占めており、このことは、膜の完全性の乱れが細胞内薬物濃度を減少させる可能性もあることを示唆している。ベンザルコニウムは、ゲンタマイシンとシプロフロキサシンの細胞内への取り入れ(import)を妨害する可能性が高いため、一貫して、ゲンタマイシンとシプロフロキサシンの両方の細胞内濃度を減少させる(図12b及びc)。最もよく知られ、広く使用されている相乗作用のうちの1つは、アミノグリコシド類とβ-ラクタム類の相乗作用である。診療所での緑膿菌に対するその使用と一致して、本発明者らは、緑膿菌における2つの抗生物質クラスの特定のメンバー間に複数の強い相乗作用を検出したが、他の2菌種では相互作用がより少なかった(図2b図11a及びb)。
【0112】
薬剤間相互作用は、大部分が種特異的である
本発明者らは、薬剤間相互作用の保存性を検討した。菌種内の相互作用は高度に相関しており(図3a、並びに図13a及びb)、保存性は53%~76%の範囲であり、菌種によって異なっていた(図3b)。本発明者らが、試験された濃度範囲が両方の菌株についての相乗作用又は拮抗作用を検出することを妨げる比較不能な相互作用を無視する場合、保存性は実際にはより高い(68%~87%、及び平均80%)(図3b及び図7d)。菌種内の薬剤間相互作用の高い保存性は、このような相互作用が一般に、単純な遺伝的撹乱に対して左右されないという知見と一致している。菌種内での全体的に高度の保存性にもかかわらず、相互作用の13%~32%は菌株特異的であり、その大部分は第2の菌株では中性であった。一方の菌株に対しては相乗作用を示し、他方の菌株に対しては拮抗作用を示す混合薬は非常に少なかったが(16の相互作用)、このような菌株の相違は、本発明者らの検証集合においても持続した。
【0113】
保存性は菌種内では比較的高いが、菌種間では非常に低い(図3c及びd)。相互作用の大多数(70%)は3菌種のうちの1菌種で生じ、系統発生学的に密接に関連する3菌種全てにおいて薬剤間相互作用の5%しか保存されていなかった。保存性が3菌種における単一薬剤レベルではるかに高いため(薬剤の73%に対して耐性/感受性を共有)、このことは、混合薬が薬物作用に種特異性を付与することができることを示している。このような特異性は、病原菌に特異的な相乗作用、及び多い共生生物に特異的な拮抗作用を利用することによって、付帯的損害の少ない狭域療法を生み出すのに有用であり得る。
【0114】
次いで、本発明者らは、3菌種全てについて、個々の薬剤レベルにおいて、保存された薬剤間相互作用ネットワークを調査した(図3e)。これは、コリスチンとマクロライド類との強い相乗作用等のグラム陰性菌の保存された弱点を明らかにしただけでなく、既知の抗生物質クラスが不均一に作用することが多いことも明らかにした。例えば、β-ラクタム類とアミノグリコシド類との間の既知の相乗作用は、本発明者らのスクリーニングに用いられた強力なアミノグリコシド類(アミカシン及びトブラマイシン)、並びに、細胞分裂関連PBPを特異的に標的とするβ-ラクタム類(ピペラシリン、アズトレオナム、セフォタキシム)に限られ、これは過去の報告と一致している。さらに、ロペラミド、ベラパミル及びプロカイン等のヒト標的薬の多くは、膜標的薬と同様に一般的な増強作用を示し、このことは、これらが薬剤の取り込みを促進するか、又は流出を損ない得ることも示唆しており、大腸菌でのロペラミドの役割、及び結核菌(Mycobacterium tuberculosis)でのベラパミルの役割に関する過去の報告と一致している。
【0115】
そして、本発明者らは、相乗作用があまり見られない(図2a)にもかかわらず、拮抗作用よりも相乗作用が有意に保存されることを見いだした(図3f)。これは、i)同じカテゴリーの薬剤間で相乗作用が高められ、機能的プロセス内の相互作用が進化を通じて保存されることがこれまで示されていること、ii)膜標的薬は、グラム陰性菌に対して一般的な増強役割を有し、薬剤をOMに通過しやすくすること、及びiii)拮抗作用は、薬剤の取り入れ/取り込みに依存することが多く(図12)、これらは、あまり保存されていないエンベロープ機構によって制御されることからと考えられる。
【0116】
薬剤間相互作用プロファイルは、薬剤の作用機序及び化学特性を明らかにする
対の薬剤相互作用は、作用機序(MoA)誘導型であると考えられており、薬剤クラスは互いに、純粋に相乗的又は拮抗的に相互作用する。同じカテゴリーの薬剤メンバーは、本発明者らの保存された薬剤間相互作用ネットワークにおいて異なる相互作用を示した(図3e)ため、本発明者らは、相互作用が保存されているか否かとは無関係に、全ての菌種間の全ての薬剤カテゴリーの対について単色性指数(MI)を算出することによって、これをより系統的に対処することを決定した。2つの薬剤カテゴリー間の相互作用の相乗作用と拮抗作用の割合がともに、全ての相互作用の場合と同じとき、MIは0となる。高度に単色のカテゴリー対では、MIは、拮抗作用及び相乗作用に対してそれぞれ1及び-1に近づく。MIは、全体的に高く、特に、明確に定義された抗生物質クラス間で高い。さらに、β-ラクタム類、テトラサイクリン類及びマクロライド類を含む多くの抗生物質は、他の抗生物質クラスとの拮抗作用及び相乗作用の混在を示す(図13c)。β-ラクタム類は、その複数のPBP標的に対して多様な親和性を示す(他のクラスとの相互作用の混在を説明する可能性がある)が、同じことは、特異的な標的を有するタンパク質合成阻害薬には当てはまらない。この場合、不均一なクラスの作用は、クラスメンバーの種々の化学特性、このため、取り込み及び流出系への種々の依存性に起因し得る。薬剤カテゴリーごとにMIを集約することによって、より広いカテゴリーが、より一致しない相互作用を示すという見解が強固なものになった(図13d)。興味深いことに、ヒト標的薬は、主に相乗作用を示す最大のカテゴリーであり、多くのヒト標的薬が補助剤として作用し得るという仮説を裏付けた。
【0117】
本発明者らは、試験された薬剤の中から、構造的に関連するアセチルサリチル酸(アスピリン)とともにクラスターを形成する着香化合物バニリンを選択した。サリチル酸塩及びアスピリンは、転写抑制因子MarRの結合及び不活性化を介して、腸内細菌の主な流出ポンプであるAcrAB-TolCの発現を誘導する(図4a)。同様の作用と一致して、バニリン処理は、marAの過剰発現により、大腸菌におけるAcrAタンパク質レベルを上昇させた(図4b及びc)。バニリン又はアスピリン処理でのより高いAcrAレベルは、より高いクロラムフェニコール及びシプロフロキサシンMICをもたらした(図4d及びe)。サリチル酸塩について過去に報告されているように、バニリンは、おそらくMarA相同体Robを介して、MarR/Aと独立して薬剤耐性に対して付加的な小効果を及ぼす(図4c~e)。
【0118】
全体として、本発明者らのデータは、相互作用が薬剤標的だけでなく、薬剤の化学特性に密接に関連する薬剤の取り込み及び流出にも依存するが、薬剤間相互作用がMoAの特定に使用することができることを示唆している。これは、薬物間相互作用のメカニズムに関する研究、又はこれらの結果の計算予測に関する研究と一致している。
【0119】
MDR臨床分離株に対する有効な薬剤相乗作用
本発明者らが検出した相互作用が耐性分離株に適切であるかを試験するために、本発明者らは、抗生物質、ヒト標的薬又は食品添加物を含む7つの保存された強い相乗作用を選択し、6種のMDR及びXDR大腸菌及び肺炎桿菌臨床分離株に対するこれらの有効性を評価した。これらの菌株は全て感染患者から回収され、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended spectrum β-lactamase)(ESBL)耐性を保有し、種々のカルバペネマーゼを多く保有する、世界的に存在する良好なクローン系統に属していた。肺炎桿菌1菌株(929)も、最後の手段となる抗生物質コリスチンに対して耐性がある。全ての薬剤対は、試験された菌株のほとんどにおいて相乗的に作用した(図5a及び図14)。本発明者らは、さらに、コリスチン-クラリスロマイシン間、及びスペクチノマイシン-バニリン間の、これらの相乗作用のうちの2つを、抗菌活性を評価するための確立された感染モデル、オオハチミツガ(ハチノスツヅリガ)の確立された感染モデルによって試験した。両方の組み合わせは、これらのMDR株からハチノスツヅリガを防御することによって、in vivoでも相乗的に作用した(図5b)。
【0120】
これらの相乗作用の中で最も強いものは、コリスチンと種々のマクロライド類との間にある(図5及び図15)。他のポリミキシン類は、マクロライド類をグラム陰性菌のOMに通過しやすくすることが知られているが、この特定の相乗作用は、低いコリスチン濃度(0.3 μg/ml未満)において生じ、コリスチン耐性株に対しても活性があり(図5、肺炎桿菌929)、このことは、マクロライド類が、まだ知られていないメカニズムを介してコリスチンの作用も強め、マクロライド類が、コリスチン耐性病原菌をコリスチンに再感作させ得ることを意味している。抗生物質の対に加えて、ヒト標的薬又は食品添加物と抗生物質との組み合わせも、MDR分離株に対して有効であった。例えば、局所麻酔薬のプロカインは、大腸菌及び肺炎桿菌MDR分離株を、フシジン酸及びドキシサイクリンに再感作させた(図14)が、本発明者らのスクリーニングでは、単独では細菌の増殖を阻害しなかった。
【0121】
ロペラミドは、ドキシサイクリンとコリスチンの両方を増強した。マクロライド類とコリスチンとの組み合わせと同様に、リボソーム又はPMF7を阻害する薬剤が、主にOMに作用するコリスチンの活性をどのように強めることができるかは、現在不明である。さらに、局所麻酔薬のプロカインは、大腸菌及び肺炎桿菌MDR分離株を、フシジン酸及びドキシサイクリンに再感作させたが、本発明者らのスクリーニングでは、単独では細菌の増殖を阻害することができなかった。そして、一般的に用いられている食品添加物バニリンは、大腸菌MDR分離株におけるスペクチノマイシンの活性を強めた。この狭域の強い相互作用は、ほとんど無視されている抗生物質を再利用する可能性を切り開く。少量のバニリン(65 μg/ml)は、大部分が耐性の大腸菌をスペクチノマイシンに感作させ、MICを30 μg/ml超から約15 μg/mlにした。この相乗作用は、抗菌薬療法における食品添加物の役割を調査することの重要性を明白にする。
【0122】
バニリンは他のアミノグリコシド類を含む多くの他の薬剤に拮抗するため、バニリンによる大腸菌MDR分離株におけるスペクチノマイシンの活性の強い増強は興味深かった。本発明者らは、この相互作用がスペクチノマイシン及びバニリンに特異的であり、他のアミノグリコシド類又はアスピリンには特異的ではなく、このため、AcrAB-TolCに対するバニリンの効果とも無関係であることを確認した(図15a~c)。次いで、本発明者らは、ゲノム全域の大腸菌遺伝子ノックアウトライブラリーを調査して、バニリン-スペクチノマイシン間の相互作用を抑制するが、アミカシン(別のアミノグリコシド)-バニリン間の相互作用に影響しない変異株を特定した。ヒットした上位のうちの1つはmdfAであり、これは、起電性化合物と電気的中性化合物の両方を排出する主要ファシリテータースーパーファミリー(Major Facilitator Superfamily)(MFS)トランスポーターをコードする(図15c)。MdfAがスペクチノマイシンの取り込みに関与していることと一致して、ΔmdfA細胞はスペクチノマイシンに対してより耐性があり、バニリンには反応しなかった(図15d)のに対し、mdfAを過剰発現する細胞は、過去に報告されているように、スペクチノマイシンに対してより感受性があり(図15e図15dのMICレベルでは目に見えない)、バニリンは、この効果を更に悪化させた(図15d)。バニリンの添加は、mdfAに依存して細胞内スペクチノマイシン濃度を上昇させた(図15e)。この時点では、細胞外に化合物を排出することが知られているMdfAが、細胞内でスペクチノマイシンの取り入れをどのように促進するかは不明確である。しかしながら、本発明者らは、大腸菌及びネズミチフス菌における相乗作用を本発明者らのスクリーニングとその後のMDR大腸菌分離株で検出したが、mdfAを欠く系統発生学的により遠い緑膿菌及び肺炎桿菌分離株では検出しなかった(図5a)ため、mdfAの有無は、この相互作用の種特異性と一致している。さらに、この狭域の強い相互作用は、ほとんど無視されている抗生物質を再利用する可能性を切り開く。少量のバニリン(65 μg/ml)は、大部分が耐性の大腸菌をスペクチノマイシンに感作させ、MICを30 μg/ml超から約15 μg/mlにし、これは、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)におけるスペクチノマイシンのMICに類似しており、スペクチノマイシンは依然として臨床的に用いられる。この相乗作用は、特に、組み合わせ療法における食品添加物の幾つかが穏やかな抗菌活性を有するため、組み合わせ療法における食品添加物の役割を調査することの重要性を明白にする。
【0123】
表1:スクリーニングにおいて検出された薬剤間相互作用。略語:「Anta」=拮抗作用、「Syn」=相乗作用、「NA」=データ利用不能。
【表1-A-1】
【表1-A-2】
【表1-A-3】
【表1-A-4】
【表1-A-5】
【表1-A-6】
【表1-A-7】
【表1-A-8】
【表1-B-1】
【表1-B-2】
【表1-B-3】
【表1-B-4】
【表1-B-5】
【表1-B-6】
【表1-B-7】
【表1-B-8】
【表1-B-9】
【表1-C-1】
【表1-C-2】
【表1-C-3】
【表1-C-4】
【表1-C-5】
【表1-C-6】
【表1-C-7】
【表1-C-8】
【表1-C-9】
【0124】
表中英語表記
混合薬
相互作用の兆候
薬剤1
薬剤2
大腸菌BW25113
大腸菌iAi1
バシトラシン
リファンピシン
ベンザルコニウム
シュードモン酸
フシジン酸
ポリミキシンB
ロペラミド
ノボビオシン
セファクロル
クラリスロマイシン
ミノサイクリン
クロルヘキシジン
エリスロマイシン
メシリナム
レボフロキサシン
シクロセリンD
ピオシアニン
コリスチン
メロペネム
メトホルミン
アモキシシリン
ニトロフラントイン
ピペラシリン
ドキシサイクリン
ペニシリンG
ベラパミル
スペクチノマイシン
ブレオマイシン
セルレニン
ストレプトゾトシン
アズトレオナム
フレオマイシン
バニリン
イミペネム
トブラマイシン
プロカイン
アミカシン
パラコート
トリメトプリム
ホスホマイシン
アジスロマイシン
モキシフロキサシン
アセチルサリチル酸(Acetylsalicylic acid)
スルファモノメトキシン
セフスロジン
ピューロマイシン
シプロフロキサシン
クロラムフェニコール
ゲンタマイシン
マイトマイシンC
カフェイン
オキサシリン
スピラマイシン
クリンダマイシン
クルクミン
トリクロサン
セフォタキシム
ベルベリン
フルシトシン
セファレキシン
リネゾリド
フェンホルミン
相互作用スコア
p順列
【符号の説明】
【0125】
図面訳
図1a
79 Drugs 79種の薬剤
Cell wall 細胞壁
Human targeted ヒト標的
Protein synthesis タンパク質合成
Membrane 膜
RNA polymerase RNAポリメラーゼ
other DNA 他のDNA
other cell wall 他の細胞壁
β-lactam β-ラクタム
human drug ヒト用薬
food additive 食品添加物
antifungal 抗真菌薬
macrolide マクロライド
aminoglycoside アミノグリコシド
tetracycline テトラサイクリン
other protein synthesis inhibitor 他のタンパク質合成阻害薬
oxidative stress inducer 酸化ストレス誘導薬
fatty acid biosynthesis 脂肪酸生合成
other membrane 他の膜
multiple 複数のもの
folic acid biosynthesis 葉酸生合成
fluoroquinolone フルオロキノロン
Interaction scores 相互作用スコア
Antagonism 拮抗作用
Synergy 相乗作用
~3000 drug pairs/strain 約3000の薬剤対/菌株
62 drugs x 6 strains 62種の薬剤×6菌株
Escherichia coli 大腸菌
Salmonella Typhimurium ネズミチフス菌
Pseudomonas aeruginosa 緑膿菌

図1b
Growth profiling 増殖プロファイリング
Synergy 相乗作用
Drugs 1 & 2 薬剤1及び2
Drug 1 薬剤1
No Drug 薬剤なし
Drug 2 薬剤2
Antagonism 拮抗作用
Expected growth 期待増殖
Bliss independence model ブリス独立性モデル
Fitness 適合度
Expected fitness 期待適合度
Drug 1 + 2 薬剤1+2
4x4 dosage matrix 4×4薬用量マトリックス

図2a
Interactions - as fraction of detectable 検出可能な割合としての相互作用
Antagonism 拮抗作用
Synergy 相乗作用

図2b
Drug category 薬剤カテゴリー
aminoglycoside アミノグリコシド
oxidative stress 酸化ストレス
other DNA 他のDNA
RNA polymerase RNAポリメラーゼ
folic acid biosynthesis 葉酸生合成
fluoroquinolone フルオロキノロン
multiple 複数のもの
other cell wall 他の細胞壁
β-lactam β-ラクタム
other membrane 他の膜
fatty acid biosynthesis 脂肪酸生合成
food additive 食品添加物
human drug ヒト用薬
other protein synthesis inhibitor 他のタンパク質合成阻害薬
tetracycline テトラサイクリン
macrolide マクロライド
Antagonism 拮抗作用
Synergy 相乗作用
n=455 interactions n=455の相互作用

図2c
Drug category 薬剤カテゴリー
Interactions 相互作用
Within カテゴリー内
Across カテゴリー間

図2d
Drug general target 薬剤の一般的な標的
cell wall 細胞壁
human ヒト
protein synthesis タンパク質合成
oxidative stress 酸化ストレス
membrane 膜

図2e
Drug general target 薬剤の一般的な標的
Interactions 相互作用
Within カテゴリー内
Across カテゴリー間

図3a
EC iAi1 interaction score EC iAi1相互作用スコア
EC BW interaction score EC BW相互作用スコア
Strong & conserved 保存された強い相互作用
Weak & conserved 保存された弱い相互作用
Non-conserved 保存されていない相互作用

図3b
nr interactions 相互作用の数
E. coli 大腸菌
S. Typhimurium ネズミチフス菌
P. aeruginosa 緑膿菌
Non-comparable 比較不能な相互作用
Non-conserved 保存されていない相互作用
Weak & conserved 保存された弱い相互作用
Strong & conserved 保存された強い相互作用

図3c
Pearson correlation coefficient ピアソン相関係数

図3d
E. coli 大腸菌
S. Typhimurium ネズミチフス菌
P. aeruginosa 緑膿菌

図3e
Human targeted ヒト標的
Membrane & LPS 膜及びLPS
Protein synthesis タンパク質合成
Cell wall 細胞壁

図3f
Partially conserved 部分的に保存された相互作用
Synergy 相乗作用
Antagonism 拮抗作用
Conserved 保存された相互作用
Nonconserved 保存されていない相互作用
Fully conserved 完全に保存された相互作用

図4a
75 Drugs 75種の薬剤
Interactions across all strains 全菌株間の相互作用
Similar drug interaction profile across species 菌種間の類似する薬剤相互作用プロファイル
Vanillin バニリン
Acetylsalisylic acid アセチルサリチル酸(正:Acetylsalicylic acid)
Acetylsalicylic acid mode of action アセチルサリチル酸の作用機序
Drug resistance 薬剤耐性
Salicylate サリチル酸塩
Acetylsalicylic acid アセチルサリチル酸
MarR-inactive MarR不活性

図4b
E. coli BW 大腸菌BW
Vanillin バニリン
Aspirin アスピリン
Protein levels タンパク質レベル
Control 対照
Vanilin バニリン(正:Vanillin)

図4c
marA expression (fold change) marA発現(倍率変化)
E. coli BW 大腸菌BW
Control 対照
Vanillin バニリン
Aspirin アスピリン

図4d
Chloramphenicol MIC (μg/ml) クロラムフェニコールのMIC(μg/ml)
E. coli BW 大腸菌BW
Control 対照
Vanillin バニリン
Aspirin アスピリン

図4e
Ciprofloxacin MIC (μg/ml) シプロフロキサシンのMIC(μg/ml)
E. coli BW 大腸菌BW
Control 対照
Vanillin バニリン
Aspirin アスピリン

図5a
In vitro activity in vitro活性
Clarithromycin クラリスロマイシン
E. coli 大腸菌
Colistin コリスチン
Vanillin バニリン
Spectinomycin スペクチノマイシン
K. pneumoniae 肺炎桿菌
Not tested 試験しなかった

図5b
G. mellonella infections ハチノスツヅリガ(G. mellonella)感染
E. coli 大腸菌
K. pneumoniae 肺炎桿菌
Drug A: Colistin 薬剤A:コリスチン
Drug B: Clarithromycin 薬剤B:クラリスロマイシン
Drug A: Spectinomycin 薬剤A:スペクチノマイシン
Drug B: Vanillin 薬剤B:バニリン
Legend 凡例
% survival 生存%
Time post infection (h) 感染後の時間(時間)
No drug 薬剤なし
Drug A 薬剤A
Drug B 薬剤B
Drug A + Drug B 薬剤A+薬剤B
fitness 適合度
S. typhimurium ネズミチフス菌
P. aeruginosa 緑膿菌
Concentration drug A (μg/ml) 薬剤Aの濃度(μg/ml)
Concentration drug B (μg/ml) 薬剤Bの濃度(μg/ml)

図6a
Experimental and analytical pipeline 実験及び分析パイプライン
MIC curves & Selection of drug concentrations MIC曲線、及び薬剤濃度の選択
79 drugs 79種の薬剤
(drug conc. (μg/ml)) (薬剤濃度(μg/ml))
Pairwise drug combinations screen 対の混合薬スクリーニング
Query drugs (79) クエリー薬剤(79種)
No query drug クエリー薬剤なし
Array drugs (62) 配列薬剤(62種)
No drug wells 薬剤のないウェル
No array drug 配列薬剤なし
Growth curve smoothing & Correction for plate effects 増殖曲線の平滑化及びプレート効果の補正
Time 時間
Double and single fitness calculation 二重及び単一適合度の算出
Growth double drug 二重薬剤による増殖
Growth single query drug 単一クエリー薬剤による増殖
Growth single array drug 単一配列薬剤による増殖
Single and double fitness replicate correlation 単一及び二重適合度の反復相関
Replicate 反復
Bliss scores ブリススコア
Drug 薬剤
Interaction scores 相互作用スコア
3 species, 6 strains 3菌種、6菌株
Density 密度
Single interaction scores 単一相互作用スコア
Restriction to relevant drug concentrations 適切な薬剤濃度への制限
Expected fitness 期待適合度
Blind spot synergy 相乗作用の盲点
Blind spot antagonism 拮抗作用の盲点
Comparison of drug interactions 薬剤相互作用の比較
strain 菌株
within species 菌種内
across species 菌種間
Selection of combinations for MRD clinical isolates MRD臨床分離株に対する組み合わせの選択

図6b
Well A9 ウェルA9
Array drug: spectinomycin 3 μg/ml 配列薬剤:スペクチノマイシン3 μg/ml
Growth double drug 二重薬剤による増殖
Growth single query drug 単一クエリー薬剤による増殖
41 plates (query drugs) 41のプレート(クエリー薬剤)
proxy 代理変数
Array drugs 配列薬剤
Top 5% growing wells across plates プレート間の上位5%の増殖ウェル

図6c
Density 密度
Distributions of Qx of Bliss scores (ε) distributions ブリススコア(ε)分布のQxの分布
n=2883 combinations n=2883の組み合わせ

図7a
Pearson correlation ピアソン相関
Single drug replicate plates 1連の薬剤試料プレート
Double drug replicate wells per plate プレート当たり2連の薬剤試料ウェル

図7b
Pearson correlation ピアソン相関
Median growth across all plates 全プレート間の増殖中央値
n=181 wells n=181ウェル

図7c
Density 密度
Bliss scores ブリススコア

図7d
Bliss interaction score ブリス相互作用スコア
Bliss expected fitness ブリス期待適合度
Antagonistic interactions 拮抗的相互作用
No interaction 相互作用なし
Synergistic interactions 相乗的相互作用
Antagonism blind spot 拮抗作用の盲点
Synergy blind spot 相乗作用の盲点

図7e
Nr interactions per drug 薬剤当たりの相互作用の数
Lowest single drug fitness in screen スクリーニングにおける最も低い単一薬剤適合度
p-val<10-16 p値<10-16

図7f
Density 密度
Interactions per drug 薬剤当たりの相互作用
Strain 菌株
Number interactions 相互作用の数

図8a
Screen スクリーニング
Benchmarking ベンチマーク
n=17050 drug combinations n=17050の混合薬

図8b
nr benchmarked combinations ベンチマークされた組み合わせの数

図8c
Recall (%) 再現性(%)
Precision (%) 精度(%)
#interactions 相互作用の数
Expected fitness cutoff 期待適合度カットオフ
Interactions found with: 相互作用は、次のものによって見いだされた
Both criteria 両方の基準
only all expected fitness wells 全ての期待適合度のウェルのみ
only relevant expected fitness wells 適切な期待適合度のウェルのみ

図8d
True positive rate 真陽性率
False positive rate 偽陽性率
weak interaction cutoff 弱い相互作用カットオフ
Recall=0.74 再現性=0.74
Precision=0.91 精度=0.91
p-value < 0.05 p値<0.05
1-sided interactions 一方だけの相互作用
strong interaction threshold 強い相互作用閾値

図8e
Cefotaxime (μg/ml) セフォタキシム(μg/ml)
Amoxicillin (μg/ml) アモキシシリン(μg/ml)
Cefsulodin (μg/ml) セフスロジン(μg/ml)
Penicillin G (μg/ml) ペニシリンG(μg/ml)
Piperacillin (μg/ml) ピペラシリン(μg/ml)
fitness 適合度

図9a
Neutral interactions 中性の相互作用
Strong & conserved 保存された強い相互作用
Weak & conserved 保存された弱い相互作用
Non-comparable 比較不能な相互作用
Non-conserved 保存されていない相互作用
# interactions 相互作用の数

図9b
Amoxicillin + Cefotaxime アモキシシリン+セフォタキシム
High throughput screen ハイスループットスクリーニング
Bliss scores ブリススコア
Expected fitness 期待適合度
Density 密度
n=36 wells n=36ウェル
n=30 wells n=30ウェル
Benchmarking ベンチマーク
Cefotaxime (μg/ml) セフォタキシム(μg/ml)
Amoxicillin (μg/ml) アモキシシリン(μg/ml)
fitness 適合度
Replicate 反復
n=49 wells n=49ウェル

図10a
Neutral interactions 中性の相互作用
Strong & conserved 保存された強い相互作用
Weak & conserved 保存された弱い相互作用
Non-comparable 比較不能な相互作用
Non-conserved 保存されていない相互作用

図10b
Doxycycline + Amikacin ドキシサイクリン+アミカシン
High throughput screen ハイスループットスクリーニング
Bliss scores ブリススコア
Expected fitness 期待適合度
Density 密度
n=66 wells n=66ウェル
n=54 wells n=54ウェル
Benchmarking ベンチマーク
Amikacin (μg/ml) アミカシン(μg/ml)
Doxycycline (μg/ml) ドキシサイクリン(μg/ml)
fitness 適合度
Replicate 反復
n=25 wells n=25ウェル
n=37 wells n=37ウェル
n=49 wells n=49ウェル

図11a
S. Typhimurium ネズミチフス菌
Antagonism 拮抗作用
Synergy 相乗作用
aminoglycoside アミノグリコシド
oxidative stress 酸化ストレス
RNA polymerase RNAポリメラーゼ
other DNA 他のDNA
multiple 複数のもの
fluoroquinolone フルオロキノロン
folic acid biosynthesis 葉酸生合成
beta-lactam β-ラクタム
other cell wall 他の細胞壁
fatty acid biosynthesis 脂肪酸生合成
other membrane 他の膜
food additive 食品添加物
human drug ヒト用薬
tetracycline テトラサイクリン
other protein synthesis inhibitor 他のタンパク質合成阻害薬
macrolide マクロライド
n=374 interactions n=374の相互作用

図11b
P. aeruginosa 緑膿菌
Antagonism 拮抗作用
Synergy 相乗作用
macrolide マクロライド
oxidative stress 酸化ストレス
folic acid biosynthesis 葉酸生合成
RNA polymerase RNAポリメラーゼ
multiple 複数のもの
fluoroquinolone フルオロキノロン
other DNA 他のDNA
beta-lactam β-ラクタム
other cell wall 他の細胞壁
antifungal 抗真菌薬
other membrane 他の膜
fatty acid biosynthesis 脂肪酸生合成
food additive 食品添加物
human drug ヒト用薬
other protein synthesis inhibitor 他のタンパク質合成阻害薬
tetracycline テトラサイクリン
aminoglycoside アミノグリコシド

図11c
S. Typhimurium ネズミチフス菌
membrane 膜
cell wall 細胞壁
human ヒト
protein synthesis タンパク質合成
oxidative stress 酸化ストレス

図11d
P. aeruginosa 緑膿菌
membrane 膜
cell wall 細胞壁
human ヒト
protein synthesis タンパク質合成
oxidative stress 酸化ストレス

図11e
S. Typhimurium ネズミチフス菌
P. aeruginosa 緑膿菌
# interactions 相互作用の数
Within カテゴリー内
Across カテゴリー間

図12a
Drug 薬剤
Antagonist 拮抗薬
Outer membrane 外膜
Periplasm 周辺質
Inner membrane 内膜
Cytoplasm 細胞質
Respiratory chain 呼吸鎖
Porins ポリン
Efflux pumps 流出ポンプ

図12b
Gentamicin ゲンタマイシン
Ciprofloxacin シプロフロキサシン
(CFU+/- antagonist) (CFU+/-拮抗薬)
Intracellular concentration ratio (+/- antagonist) 細胞内濃度比(+/-拮抗薬)
Control 対照
Procaine プロカイン
Metformin メトホルミン
Benzalkonium ベンザルコニウム
Berberine ベルベリン
Erythromycin エリスロマイシン
Loperamide ロペラミド
Clindamycin クリンダマイシン
Rifampicin リファンピシン
Paraquat パラコート
Trimethoprim トリメトプリム
Doxycycline ドキシサイクリン
Curcumin クルクミン
Vanillin バニリン
Caffeine カフェイン

図12c
Interaction score 相互作用スコア
Procaine プロカイン
Benzalkonium ベンザルコニウム
Clindamycin クリンダマイシン
E. coli BW 大腸菌BW
Paraquat パラコート
Doxyxycline ドキシサイクリン(正:Doxycycline)
Curcumin クルクミン
Caffeine カフェイン

図12e
# Antagonisms 拮抗作用の数
Gentamicin ゲンタマイシン
Ciprofloxacin シプロフロキサシン
Aminoglycosides アミノグリコシド類
Fluoroquinolones フルオロキノロン類
Antibiotic intracellular concentration: 抗生物質の細胞内濃度:
Decreased 減少した
Not decreased 減少しなかった
Not tested 試験しなかった

図12d
Gentamicin ゲンタマイシン
Pyocyanin ピオシアニン
Benzalkonium ベンザルコニウム
Procaine プロカイン
Loperamide ロペラミド
Metformin メトホルミン
Berberine ベルベリン
Rifampicin リファンピシン
Aztreonam アズトレオナム
Clindamycin クリンダマイシン
Clarithromycin クラリスロマイシン
Erythromycin エリスロマイシン
Ciprofloxacin シプロフロキサシン
Fosfomycin ホスホマイシン
Spectinomycin スペクチノマイシン
Minocycline ミノサイクリン
Doxycycline ドキシサイクリン
Paraquat パラコート
Acetylsalisylic acid アセチルサリチル酸(正:Acetylsalicylic acid)
Curcumin クルクミン
Caffeine カフェイン
Vanillin バニリン
Trimethoprim トリメトプリム
Antibiotic intracellular concentration: 抗生物質の細胞内濃度:
Decreased 減少した
Not decreased 減少しなかった
Not tested 試験しなかった

図13a
Strain comparison ST 菌株の比較ST
ST14028s interaction score ST14028sの相互作用スコア
STLT2 interaction score STLT2の相互作用スコア
Strong & conserved 保存された強い相互作用
Weak & conserved 保存された弱い相互作用

図13b
Strain comparison PA 菌株の比較PA
PA14 interaction score PA14の相互作用スコア
PAO1 interaction score PAO1の相互作用スコア
Strong & conserved 保存された強い相互作用
Weak & conserved 保存された弱い相互作用

図13c
Monochromaticy index (MI) 単色性指数(正:Monochromaticity index)(MI)
beta-lactam β-ラクタム
other cell wall 他の細胞壁
other DNA 他のDNA
RNA polymerase RNAポリメラーゼ
fluoroquinolone フルオロキノロン
folic acid biosynthesis 葉酸生合成
multiple 複数のもの
other membrane 他の膜
fatty acid biosynthesis 脂肪酸生合成
oxidative stress 酸化ストレス
other protein synthesis 他のタンパク質合成
tetracycline テトラサイクリン
aminoglycoside アミノグリコシド
macrolide マクロライド
antifungal 抗真菌薬
food additive 食品添加物
human drug ヒト用薬

図13d
β-lactams β-ラクタム類
other cell wall 他の細胞壁
oxidative stress 酸化ストレス
fatty acid biosynthesis 脂肪酸生合成
other membrane 他の膜
food additives 食品添加物
human drugs ヒト用薬
fluoroquinolone フルオロキノロン
folic acid biosynthesis 葉酸生合成
multiple 複数のもの
other DNA 他のDNA
RNA polymerase RNAポリメラーゼ
tetracyclines テトラサイクリン類
aminoglycosides アミノグリコシド類
macrolides マクロライド類
other protein synthesis 他のタンパク質合成

図14
Loperamide ロペラミド
Erythromycin エリスロマイシン
E. coli 大腸菌
Colistin コリスチン
K. pneumoniae 肺炎桿菌
Detected 検出された
Azithromycin アジスロマイシン
Procaine プロカイン
Fusidic acid フシジン酸
Not tested for all species 全ての菌種について試験しなかった
Doxycycline ドキシサイクリン
Legend 凡例
fitness 適合度
Concentration drug A (μg/ml) 薬剤Aの濃度(μg/ml)
Concentration drug B (μg/ml) 薬剤Bの濃度(μg/ml)
S. typhimurium ネズミチフス菌
P. aeruginosa 緑膿菌

図15a
Spectinomycin MIC (μg/ml) スペクチノマイシンのMIC(μg/ml)
E. coli BW 大腸菌BW
Control 対照
Vanillin バニリン

図15b
Spectinomycin MIC (μg/ml) スペクチノマイシンのMIC(μg/ml)
E. coli BW 大腸菌BW
Control 対照
Vanillin バニリン
Aspirin アスピリン

図15c
Interaction score 相互作用スコア
Amikacin + Vanillin アミカシン+バニリン
Spectinomycin + Vanillin スペクチノマイシン+バニリン

図15d
Spectinomycin MIC (μg/ml) スペクチノマイシンのMIC(μg/ml)
E. coli BW 大腸菌BW
Control 対照
Vanillin バニリン

図15e
growth normalized to no drug 薬剤なしに規準化された増殖
log10 Spectinomycin conc. スペクチノマイシンの濃度log10
E. coli BW 大腸菌BW

図15f
Fold change Intracellular spectinomycin normalised to E. coli BW 大腸菌BWに規準化された細胞内スペクチノマイシンの倍率変化
E. coli BW 大腸菌BW
Control 対照
Vanillin バニリン
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図8-5】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図15-1】
図15-2】
【手続補正書】
【提出日】2024-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌に対する少なくとも2種の薬剤化合物の相乗的抗菌効果を特定する方法であって、
a)前記抗菌効果について試験される前記細菌を準備することと、
b)前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
なお、前記薬剤化合物のうちの少なくとも1種は、前記a)の細菌に対して抗菌効果を有することが知られており、前記薬剤化合物の他の少なくとも1種は、
(i)選択された第1の薬剤化合物と同じクラスに属すること、及び/又は選択された第1の薬剤化合物と同じ細菌細胞プロセスを標的とすることが知られている抗生物質、又は医薬として許容し得るその塩、並びに、
(ii)ヒト標的薬、食品添加物又は医薬として許容し得るその塩、
から選択される;
c)前記細菌における前記少なくとも2種の薬剤化合物の相乗的抗菌効果を特定することと、
d)工程c)において特定された前記少なくとも2種の薬剤化合物を選択することと、
を含む、方法。