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特開2024-160277ヘテロ接合性ELANE遺伝子の対立遺伝子の差次的ノックアウト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160277
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ヘテロ接合性ELANE遺伝子の対立遺伝子の差次的ノックアウト
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20241106BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241106BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20241106BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20241106BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALN20241106BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/113 Z ZNA
C12N5/071
C12N5/10
C12N15/55
A61P37/02
A61P7/00
A61K35/28
A61K48/00
A61K31/7105
C12N15/113 Z
C12N5/0789
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024125705
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2020563637の分割
【原出願日】2019-05-06
(31)【優先権主張番号】62/723,941
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/743,309
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/667,536
(32)【優先日】2018-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520433182
【氏名又は名称】エメンドバイオ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】バラム,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】イザール,リオール
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,アサエル
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル,ラフィ
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン マシアッチ,ミカル
(72)【発明者】
【氏名】ジョージソン,ジョセフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞の、重症先天性好中球減少症(SCN)又は周期性好中球減少症(CyN)に関連している変異を有する好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE遺伝子)の変異対立遺伝子を不活性化するための方法を提供する。
【解決手段】SCNまたはCyNに関連している変異を有するELANE遺伝子の変異対立遺伝子を賦活化するための方法であって、細胞は、rs104l4837等を含む特定のSNP群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性であり、方法は、細胞に、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子を含む組成物を導入することを含み、CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響する、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の、重症先天性好中球減少症(SCN)又は周期性好中球減少症(CyN)に関連
している変異を有する好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE遺伝子)遺伝子の変異対立
遺伝子を不活性化するための方法であって、前記細胞は、rs104l4837、rs3
76l005、rs1683564、rs9749274、rs74002l、rs20
l048029、rs199720952、rs28591229、rs7l33527
6、rs58082l77、rs3826946、rs10413889、rs76l4
8l944、rs376l008、rs10409474、rs3761007、rs1
72l6649、rs10469327、rs8l07095、rs10424470及
びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合
性であり、前記方法は、
前記細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及

17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することを含み、
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の複合体は、前記ELANE
遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響する、方法。
【請求項2】
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の前記複合体は、前記ELA
NE遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、前記変異対立遺伝子は、
前記1つ又は複数の多型部位に基づいて前記二本鎖切断のための標的とされる、請求項1
に記載の方法。
【請求項3】
CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列部を含む第2の
RNA分子を導入することをさらに含み、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレ
アーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子における第2の二本鎖切断に影響する、請
求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のRNA分子の前記ガイド配列部は、配列番号1~1192のいずれか1つに
記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドを含む、請求項1~3の何れか
一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の二本鎖切断は、前記ELANE遺伝子の非コード領域内である、請求項3又
は4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞は、rs104l4837又はrs376l005でヘテロ接合性であり、前
記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝
子のイントロン4における二本鎖切断に影響する、請求項3~5の何れか一項に記載の方
法。
【請求項7】
前記細胞は、rs10414837又はrs376l005でヘテロ接合性であり、前
記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝
子のイントロン3における二本鎖切断に影響する、請求項3~5の何れか一項に記載の方
法。
【請求項8】
前記細胞は、rs10414837又はrs376l005でヘテロ接合性であり、前
記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝
子の3’UTR領域における二本鎖切断に影響する、請求項3~5の何れか一項に記載の
方法。
【請求項9】
前記細胞は、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びC
RISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子のイントロン4における
二本鎖切断に影響する、請求項3~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞は、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びC
RISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子のイントロン3における
二本鎖切断に影響する、請求項3~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞は、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びC
RISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子の3’UTR領域におけ
る二本鎖切断に影響する、請求項3~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
重症先天性好中球減少症(SCN)若しくはCyNに関連しているELANE遺伝子変
異を有する前記細胞を、SCN若しくはCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有
する及び/又はSCN若しくはCyNに苦しむ対象から取得することを含み、前記対象は
、rs10414837、rs3761005、rs1683564、rs974927
4、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs285
91229、rs71335276、rs58082177、rs3826946、rs
10413889、rs761481944、rs3761008、rs1040947
4、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8107
095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ
又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1にSCN若しくはCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又は
SCN若しくはCyNに苦しむ対象を選択することであって、前記対象は、rs1041
4837、rs3761005、rs1683564、rs9749274、rs740
021、rs201048029、rs199720952、rs28591229、r
s71335276、rs58082177、rs3826946、rs1041388
9、rs761481944、rs376l008、rs10409474、rs376
l007、rs172l6649、rs10469327、rs8107095、rs1
0424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型
部位でヘテロ接合性である、こと、及び前記対象から前記細胞を取得することを含む、請
求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞を前記対象から動員によって及び/又はアフェレシスによって取得することを
含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞を前記対象から骨髄穿刺法によって取得することを含む、請求項14に記載の
方法。
【請求項16】
前記組成物を前記細胞に導入する前に前記細胞を予備刺激する、請求項1~15の何れ
か一項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞を培養増殖して細胞群を取得することをさらに含む、請求項12~16の何れ
か一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞を、幹細胞因子(SCF)、IL-3及びGM-CSFのうちの1つ又は複数
とともに培養する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞を少なくとも1つのサイトカインとともに培養する、請求項17又は18に記
載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのサイトカインは、組換えヒトサイトカインである、請求項19に
記載の方法。
【請求項21】
前記細胞は、複数の細胞の中の1つであり、前記第1のRNA分子又は前記第1及び前
記第2のRNA分子の両方を含む前記組成物を、前記複数の細胞の中の少なくとも前記細
胞及び他の細胞に導入し、そして前記複数の細胞の中の少なくとも前記細胞及び前記他の
細胞中の前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子を不活性化し、それにより複数の改
変細胞を取得する、請求項1~20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のRNA分子を含む前記組成物を導入すること又は前記第2のRNA分子の導
入は、前記細胞又は複数の細胞のエレクトロポレーションを含む、請求項1~21の何れ
か一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の方法によって取得される改変細胞。
【請求項24】
請求項21に記載の細胞を培養増殖することから取得される改変細胞。
【請求項25】
生着することができる、請求項23又は24に記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
【請求項26】
子孫細胞を生じることができる、請求項23~25の何れか一項に記載の改変細胞又は
複数の改変細胞。
【請求項27】
生着後に子孫細胞を生じることができる、請求項26に記載の改変細胞又は複数の改変
細胞。
【請求項28】
自家移植後に子孫細胞を生じることができる、請求項27に記載の改変細胞又は複数の
改変細胞。
【請求項29】
生着後少なくとも12か月間又は少なくとも24か月間子孫細胞を生じることができる
、請求項27又は28の何れか一項に記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
【請求項30】
前記改変細胞又は複数の改変細胞は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)であ
る、請求項23~29の何れか一項に記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
【請求項31】
前記改変細胞又は複数の改変細胞は、CD34+造血幹細胞である、請求項30に記載
の改変細胞又は複数の改変細胞。
【請求項32】
前記改変細胞又は複数の改変細胞は、骨髄細胞又は末梢単核細胞(PMC)である、請
求項23~31の何れか一項に記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
【請求項33】
前記ELANE遺伝子の1つの対立遺伝子の少なくとも一部を欠いている改変細胞。
【請求項34】
前記改変細胞は、rs104l4837、rs3761005、rs1683564、
rs9749274、rs74002l、rs20l048029、rs1997209
52、rs2859l229、rs7l335276、rs58082l77、rs38
26946、rs104l3889、rs76l48l944、rs376l008、r
s10409474、rs376l007、rs172l6649、rs1046932
7、rs8107095、rs10424470及びrs78302854から成る群か
ら選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である細胞から改変された、請求項
33に記載の改変細胞。
【請求項35】
請求項23~34の何れか一項に記載の改変細胞及び薬学的に許容される担体を含む、
組成物。
【請求項36】
前記細胞と前記薬学的に許容される担体とを混合することを含む、請求項35に記載の
組成物のインビトロ又はエクスビボ調製方法。
【請求項37】
インビトロ又はエクスビボで改変細胞を含む組成物を調製する方法であって、前記方法
は、
a)SCN若しくはCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又はS
CN若しくはCyNに苦しむ対象から取得した複数の細胞からHSPCを単離することで
あって、前記対象は、rs104l4837、rs376l005、rs1683564
、rs9749274、rs740021、rs201048029、rs199720
952、rs28591229、rs7l335276、rs58082l77、rs3
826946、rs104l3889、rs76148l944、rs376l008、
rs10409474、rs3761007、rs17216649、rs104693
27、rs8l07095、rs10424470及びrs78302854から成る群
から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、こと、そして前記対象か
ら前記細胞を取得すること、
b)1つ又は複数の細胞における前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子を不活性
化するよう、ステップ(a)の前記細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及

17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の
細胞における前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、前記細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができる
ガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、前記第2のRNA分子及
びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記1つ又は複数の細胞の前記ELANE
遺伝子における第2の二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、こと、任意選択で
c)ステップ(b)の前記改変細胞を培養増殖すること、を含み、
前記改変細胞は生着することができ、生着後に子孫細胞を生じることができる、方法。
【請求項38】
a)SCN若しくはCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又はS
CN若しくはCyNに苦しむ対象から取得した複数の細胞からHSPCを単離することで
あって、前記対象は、rs104l4837、rs376l005、rs1683564
、rs9749274、rs740021、rs201048029、rs199720
952、rs28591229、rs7l335276、rs58082l77、rs3
826946、rs104l3889、rs76148l944、rs376l008、
rs10409474、rs3761007、rs17216649、rs104693
27、rs8l07095、rs10424470及びrs78302854から成る群
から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、 こと、
b)1つ又は複数の細胞における前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子を不活性
化するよう、ステップ(a)の前記細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及

17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の
細胞の前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、前記細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができる
ガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、前記第2のRNA分子及
びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記1つ又は複数の細胞の前記ELANE
遺伝子における第2の二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、こと、任意選択で
c)ステップ(b)の前記細胞を培養増殖することであって、前記改変細胞は生着する
ことができ、生着後に子孫細胞を生じることができる、こと、及び
d)前記対象の前記SCN又はCyNを治療するために前記対象にステップ(b)又は
ステップ(c)の前記細胞を投与すること、を含む方法によってインビトロで調製される
組成物の使用。
【請求項39】
治療有効量の請求項21~34の何れか一項に記載の改変細胞、請求項35に記載の組
成物又は請求項36若しくは37に記載の方法によって調製された組成物を投与すること
を含む、SCN又はCyNで苦しんでいる対象の治療方法。
【請求項40】
SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する治療を必要とする対象
におけるSCN又はCyNの治療方法であって、前記対象は、rs104l4837、r
s376l005、rs1683564、rs9749274、rs74002l、rs
20l048029、rs199720952、rs2859l229、rs7l335
276、rs58082177、rs3826946、rs104l3889、rs76
l481944、rs376l008、rs10409474、rs3761007、r
s172l6649、rs10469327、rs8l07095、rs1042447
0及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ
接合性であり、前記方法は、
a)前記対象から取得した複数の細胞からHSPCを単離すること、
b)1つ又は複数の細胞における前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子を不活性
化するよう、ステップ(a)の前記細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及

17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の
細胞の前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、前記細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができる
ガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、前記第2のRNA分子及
びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記1つ又は複数の細胞の前記ELANE
遺伝子における第2の二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、こと、任意選択で
c)ステップ(b)の前記細胞を培養増殖することであって、前記改変細胞は生着する
ことができ、生着後に子孫細胞を生じることができる、こと、及び
d)前記対象にステップ(b)又はステップ(c)の前記細胞を投与し、それにより前
記対象の前記SCN又はCyNを治療すること、を含む、方法。
【請求項41】
SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する治療を必要とする対象
におけるSCN又はCyNの治療方法であって、前記対象は、rs10414837、r
s3761005、rs1683564、rs9749274、rs740021、rs
201048029、rs199720952、rs28591229、rs71335
276、rs58082177、rs3826946、rs10413889、rs76
1481944、rs3761008、rs10409474、rs3761007、r
s17216649、rs10469327、rs8107095、rs1 04244
70及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテ
ロ接合性であり、前記方法は、
前記対象に自家改変細胞又は自家改変細胞の子孫を投与することであって、前記自家改
変細胞は、前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子において二本鎖切断するように改
変され、
前記二本鎖切断は、CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼを
コードする配列及び第1のRNA分子を含む組成物を前記細胞に導入することから生じ、
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の複合体は、前記細胞の前記E
LANE遺伝子の前記変異対立遺伝子を不活性化するよう、前記ELANE遺伝子の前記
変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響する、こと、を含み、それにより前記対象の前
記SCN又はCyNを治療する、方法。
【請求項42】
SCN又はCyNと診断された対象のプールから治療のための対象を選択する方法であ
って、
a)前記対象のプールにおける各対象から細胞を取得するステップ、
b)各対象の細胞をSCN又はCyNに関連するELANE遺伝子変異について選別し、
SCN又はCyNに関連するELANE遺伝子変異を有する対象のみを選択するステップ

c)ステップ(b)において選択された前記対象の前記細胞を配列決定することによりr
s104l4837、rs376l005、rs1683564から成る群から選択され
る1つ又は複数の多型部位でのヘテロ接合性を選別するステップ、及び
d)治療のために前記1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である細胞を有する対象の
みを選択するステップを含む、方法。
【請求項43】
e)前記対象の骨髄から吸引によるか又は動員及び末梢血液のアフェレシスによるかの
いずれかにより造血幹細胞及び前駆細胞(HSPC)を取得すること、
f)ステップ(e)の前記HSPC細胞に
1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼ又は1つ又は複数のCRISPRヌクレ
アーゼをコードする配列
前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子に存在する前記1つ又は複数の多型部
位の前記ヘテロ接合性対立遺伝子のヌクレオチド塩基を標的とする配列番号:1~119
2のいずれか1つに記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドの配列中の
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、及び
前記ELANE遺伝子のイントロン3、イントロン4又は3’UTRにおける配列
を標的とするガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、
前記第1のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ又は複数の前記
HSPC細胞の前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における第1の二本鎖切断に
影響し、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記第1のR
NA分子と前記CRISPRヌクレアーゼの前記複合体が第1の二本鎖切断に影響した前
記1つ又は複数のHSPC細胞の前記ELANE遺伝子の両対立遺伝子のイントロン3、
イントロン4又は3’UTRにおける第2の二本鎖切断に影響し、それにより改変細胞を
取得する、こと、
g)前記対象にステップ(f)の前記改変細胞を投与し、それにより前記対象のSCN
又はCyNを治療すること、を含む、
ステップ(d)において選択された対象におけるSCN又はCyNを治療することをさ
らに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
配列番号:1~1192のいずれか1つに記載されている17~20個の近接している
ヌクレオチドの配列中の17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含むRNA
分子。
【請求項45】
請求項44に記載のRNA分子及びガイド配列部を含む第2のRNA分子を含む、組成
物。
【請求項46】
前記第2のRNA分子は、前記ELANE遺伝子の非コード領域を標的とする、請求項
45に記載の組成物。
【請求項47】
前記第2のRNA分子の前記ガイド配列部の前記ヌクレオチド配列は、前記第1のRN
A分子の前記ガイド配列部の前記配列とは異なるヌクレオチド配列である、請求項45又
は46に記載の組成物。
【請求項48】
前記第1及び/又は前記第2のRNA分子は、さらにCRISPRヌクレアーゼに結合
する配列を有する部分を含む、請求項45~47の何れか一項に記載の組成物。
【請求項49】
CRISPRヌクレアーゼに結合する前記配列は、tracrRNA配列である、請求
項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記第1及び/又は前記第2のRNA分子は、さらにtracrメイト配列を有する部
分を含む、請求項45~48の何れか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記第2のRNA分子は、1つ又は複数のリンカー部をさらに含む、請求項45~50
の何れか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記第1及び/又は前記第2のRNA分子は、長さが300ヌクレオチドまでである、
請求項42~51の何れか一項に記載の組成物。
【請求項53】
1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼ又は前記1つ又は複数のCRISPRヌクレ
アーゼをコードする配列、及び/又は1つ又は複数のtracrRNA分子又は前記1つ
又は複数のtracrRNA分子をコードする配列をさらに含む、請求項45~52の何
れか一項に記載の組成物。
【請求項54】
細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化するための方法であって、前記方法は、
前記細胞に請求項44に記載のRNA分子又は請求項45~53の何れか一項に記載の組
成物を送達することを含む、方法。
【請求項55】
SCN又はCyNを治療する方法であって、前記方法は、SCN又はCyNを有する対
象に請求項44に記載のRNA分子若しくは請求項45~53の何れか一項に記載の組成
物、又は請求項44に記載のRNA分子若しくは請求項45~53の何れか一項に記載の
組成物によって改変された細胞を送達することを含む、方法。
【請求項56】
前記1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼ及び/又は前記tracrRNA分子及
び前記RNA分子若しくは複数のRNA分子を、前記対象及び/又は細胞に実質的に同時
に又は異なる時間に送達する、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記方法は、
a)変異対立遺伝子から疾患発症性の変異を含むエキソンを除去することであって、
前記第1のRNA分子又は前記第1及び前記第2のRNA分子は、エキソン全体又は前記
エキソンの一部に隣接している領域を標的とする、こと、
b)遺伝子の複数のエキソン、オープンリーディングフレーム全体を除去すること、
又は遺伝子全体を除去すること、
c)前記第1のRNA分子又は前記第1及び前記第2のRNA分子が、変異対立遺伝
子のエキソン及びイントロンの間の選択的スプライシングシグナル配列を標的とすること

d)前記第2のRNA分子が、変異対立遺伝子と機能性対立遺伝子の両方に存在する
配列を標的とすること、
e)前記第2のRNA分子が、イントロンを標的とすること、
f)エラープローン非相同末端結合(NHEJ)機構により前記変異対立遺伝子に挿
入又は欠失を受けさせ、前記変異対立遺伝子の配列にフレームシフトを生成すること、を
含み、
任意選択で前記フレームシフトは、前記変異対立遺伝子の不活性化又はノックアウト
を生じ、
好ましくは、前記フレームシフトにより前記変異対立遺伝子中に早期の終止コドンが
作成される又は前記フレームシフトにより前記変異対立遺伝子の転写物にナンセンス変異
依存mRNA分解機構が生じる、請求項54~56の何れか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記不活性化又は治療により前記変異対立遺伝子によってコードされる切断型タンパク
質及び前記機能性対立遺伝子によってコードされる機能性タンパク質が生じる、請求項5
5~57の何れか一項に記載の方法。
【請求項59】
a)前記細胞又は前記対象が、rs104l4837又はrs376l005でヘテ
ロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、
前記ELANE遺伝子のイントロン4における二本鎖切断に影響し、
b)前記細胞又は前記対象が、rs104l4837又はrs376l005でヘテ
ロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、
前記ELANE遺伝子のイントロン3における二本鎖切断に影響し、
c)前記細胞又は前記対象が、rs104l4837又はrs376l005でヘテ
ロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、
前記ELANE遺伝子の3’UTR領域における二本鎖切断に影響し、
d)前記細胞又は前記対象が、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2
のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、前記ELANE遺伝子のイ
ントロン4における二本鎖切断に影響し、
e)前記細胞又は前記対象が、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2
のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、前記ELANE遺伝子のイ
ントロン3における二本鎖切断に影響し、
f)前記細胞又は前記対象が、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2
のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、前記ELANE遺伝子の3
’UTR領域における二本鎖切断に影響する、請求項55~58の何れか一項に記載の方
法。
【請求項60】
細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化するための、請求項44に記載のRNA
分子、請求項35、45~53の何れか一項に記載の組成物又は請求項36若しくは37
に記載の方法により調製された組成物、の使用。
【請求項61】
細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化する使用のための、請求項44に記載の
RNA分子、請求項35若しくは45~53の何れか一項に記載の組成物又は請求項36
若しくは37に記載の方法により調製された組成物を含む薬物であって、前記細胞に請求
項44に記載のRNA分子、請求項35若しくは45~53の何れか一項に記載の組成物
又は請求項36若しくは37に記載の方法により調製された組成物を送達することにより
前記薬物を投与する、薬物。
【請求項62】
SCN又はCyNを有する又は有するリスクがある対象におけるSCN又はCyNを治
療、寛解又は防止するための、請求項1~22の何れか一項に記載の方法、請求項23~
34の何れか一項に記載の改変細胞、請求項35若しくは45~53の何れか一項に記載
の組成物又は請求項36~37に記載の方法により調製された組成物、又は請求項44に
記載のRNA分子、の使用。
【請求項63】
SCN又はCyNを治療、寛解又は防止する使用のための、請求項44のRNA分子、
請求項35若しくは45~53の何れか一項に記載の組成物、請求項36若しくは37に
記載の方法により調製された組成物又は請求項23~34の何れか一項に記載の改変細胞
を含む薬物であって、SCN又はCyNを有する又は有するリスクがある対象に、請求項
44のRNA分子、請求項35もしくは45~53の何れか一項に記載の組成物、請求項
36若しくは37に記載の方法により調製された組成物又は請求項23~34の何れか一
項に記載の改変細胞を送達することにより前記薬物を投与する、薬物。
【請求項64】
請求項44に記載のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPR
ヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記trac
rRNAをコードする配列、及び前記細胞の前記変異ELANE対立遺伝子を不活性化す
るために、前記RNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレ
アーゼをコードする配列、及び/又は前記tracrRNA分子若しくは前記tracr
RNAをコードする配列を前記細胞に送達するための説明書を備える、前記細胞の変異E
LANE対立遺伝子を不活性化するためのキット。
【請求項65】
請求項44に記載のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPR
ヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記trac
rRNAをコードする配列、及びSCN又はCyNを治療するよう前記RNA分子、CR
ISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/
又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列を前記SCN
又はCyNを有する又は有するリスクがある対象に送達するための説明書を備える、前記
対象のSCN又はCyNを治療するためのキット。
【請求項66】
請求項35若しくは45~53の何れか一項に記載の組成物、請求項36若しくは37
に記載の方法により調製された組成物、又は請求項23~34の何れか一項に記載の改変
細胞、及び前記細胞の前記ELANE遺伝子を不活性化するよう前記組成物を前記細胞に
送達するための説明書を備える、前記細胞の変異ELANE対立遺伝子を不活性化するた
めのキット。
【請求項67】
請求項35若しくは45~53の何れか一項に記載の組成物、請求項36若しくは37
に記載の方法により調製された組成物、又は請求項23~34の何れか一項に記載の改変
細胞、及びSCN又はCyNを治療するよう請求項35若しくは45~53の何れか一項
に記載の組成物、請求項36若しくは37に記載の方法により調製された組成物、又は請
求項23~34の何れか一項に記載の改変細胞をSCN若しくはCyNを有する又は有す
るリスクがある対象に送達するための説明書を備える、対象のSCN又はCyNを治療す
るためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月9日に出願された米国仮出願第62/743,309号、
2018年8月28日に出願された米国仮出願第62/723,941号、2018年5
月6日に出願された米国仮出願第62/667,536号の利益を主張するものであり、
その各々の内容を参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願を通じて、丸括弧で参照されることを含んで、各種出版物が参照される。本出願
において言及される全ての出版物の開示は、本発明が属する当該技術及び本発明とともに
利用されることができる当該技術分野の特徴の追加の記述を提供するために、その全体を
参照により本出願に援用される。
【0003】
配列リストに対する参照
本出願は、「190506_90522-A-PCTjSequenceJListi
ng_ADR.txt」と名前をつけたファイルに存在するヌクレオチド配列を参照によ
り援用し、このファイルはサイズが249キロバイトであり、MS-Windowsと互
換性があるオペレーションシステムを有する、IBM-PC機械フォーマットにおいて2
019年5月3日に作成され、2019年5月6日に本出願の一部として提出されたテキ
ストファイルに含まれる。
【背景技術】
【0004】
ヒトゲノムには、挿入及び欠失、反復配列のコピー数の差並びに一塩基多型(SNP)
を含む、いくつかの種類のDNAの変動がある。SNPは、ゲノム中の一塩基(アデニン
(A)、チミン(T)、シトシン(C)又はグアニン(G))がヒト対象間又は個人の一
対の染色体間で異なるときに生じるDNA配列の変動である。長年にわたって、種々のタ
イプのDNAの変動はピンポイントの遺伝形質若しくは疾患因果関係についての研究のマ
ーカーとして又は遺伝性障害の潜在的原因としてのいずれかで研究コミュニティの中心と
なってきた。SNPは通常、良性で疾患の原因ではないと考えられている。
【0005】
遺伝性障害は、ゲノム中の1つ又は複数の異常によって起こる。遺伝性障害は、「ドミ
ナントな」又は「潜性」のいずれかとみなされてもよい。潜性遺伝性障害は、提示される
ためには2コピーの(すなわち2個の対立遺伝子の)異常/欠損遺伝子が必要となる障害
である。対照的に、ドミナントな遺伝性障害では、正常な(機能性の/健康な)遺伝子又
は遺伝子群にわたって優位を示す遺伝子又は遺伝子群が関与する。このように、ドミナン
トな遺伝性障害においては、特定の遺伝性障害の症状を引き起こす又は寄与するためには
1コピー(すなわち対立遺伝子)のみの異常欠損遺伝子しか必要とされない。このような
変異には、例えば変化した遺伝子産物が新しい分子機能又は遺伝子発現の新しいパターン
を持つ機能獲得型変異が含まれる。機能獲得型変異は、一般的にドミナントネガティブ変
異である。ドミナントネガティブ変異の例は、1個の対立遺伝子が突然変異して機能を失
い、残された単一の野生型対立遺伝子が特定の細胞機能に十分なほどの必要なタンパク質
を作成しないハプロ不全である。他の例には、野生型対立遺伝子に対して拮抗的に働く遺
伝子産物を有するドミナントネガティブ変異が含まれる。
【0006】
好中球減少症
好中球減少症は、血液循環中の好中球の絶対数の減少と定義され、通常末梢血液中の好
中球絶対数(ANC)を測定することにより診断される。好中球減少症の重症度は、AN
Cが1000~1500/μLであると軽度、ANCが500~1000/μLであると
中等度、又はANCが500/μL未満であると重度とみなされる(Boxer 201
2)。
【0007】
好中球減少症は、先天性(遺伝性)又は後天性に分類することができる。先天性条件で
の、通常常染色体性優性遺伝の2つの主要なタイプは、周期性好中球減少症(CyN)及
び重症先天性好中球減少症(SCN)である。周期性好中球減少症は、好中球数が正常レ
ベルからゼロまで変動することにより特徴づけられる一方、重症先天性好中球減少症(S
CN)は、出生時に非常に低いANC(500/mT)が認められ、前骨髄球/骨髄球ス
テージで骨髄中の骨髄造血の成熟化が停止し、細菌感染症を早期発症することにより特徴
づけられる(Carlsson et al.2012;Horwitzら、2013)
【0008】
SCNを、血液中の非常に低いANCを測定し、骨髄穿刺法を検査して骨髄成熟の停止
を同定することにより診断してもよい(Dale 2017)。SCNは、通常生後6か
月前に診断される一方、CyNの診断は、概して生後2年の間、又はそれ以降になされ、
主要な臨床所見は反復性急性口腔医学的疾患である。SCNが疑われるとき、悪性血液疾
患を除外し、細胞充実度を決定し、骨髄成熟度を評価し、正確な原因の徴候を検出するた
めに、今では細胞遺伝学的骨髄試験が決定的である、骨髄検査が必要となることが多い。
SCN及びCyNを評価する際、抗好中球抗体アッセイ、免疫グロブリンアッセイ(Ig
GAM)、リンパ球免疫表現型検査、膵臓マーカー(血清トリプシノーゲン及び糞便エ
ラスターゼ)並びに脂溶性ビタミンレベル(ビタミンA、E及びD)も関心事項である(
Donadieu 2011を参照)。
【0009】
SCNは、常染色体性―潜性(HAX1、G6PC3)、常染色体性―ドミナント(E
LANE、GFI1)又はX染色体連鎖(WAS)型の遺伝であることができ、又は孤発
性に生じることもできる(Carlssonら、2012;Boxer 2012)。
【0010】
周期性及び先天性好中球減少症は、「好中球エラスターゼ遺伝子」(ELANE遺伝子
)―好中球エラスターゼのための遺伝子の突然変異によって引き起こされることが最も多
い。ELANE遺伝子変異は、SCN患者の40~55%で同定され、男性と女性は等し
く発症する(Donadieuら、2011;Dale2017)。ELANE遺伝子中
の突然変異は、常染色体性及び孤発性のSCNの症例と関連している(Carlsson
ら、2012)。今日までに、200種類を超える様々なELANE突然変異が同定され
てきており、全てのエキソン並びにイントロン3及びイントロン4にわたってランダムに
分布している(Skokowaら、2017)。例えば予後不良に特に関連づけられるC
151Y及びG214Rなどの、CyN及びSCNに関連する120種類を超える別個の
ELANE遺伝子変異が今では知られている(CyN及びSCNに関連するELANE遺
伝子の包括的リストについては、Makaryanら、2012を参照;またGerme
shausenら、2013を参照)。
【0011】
ELANEは、好中球細胞外トラップ(病原体と結合する繊維のネットワーク)の機能
に関与する好中球エラスターゼ(NE)をコードする。いくつかの研究から、変異ELA
NEの産物は、骨髄での好中球の産出を妨害し、好中球減少症を引き起こすことが示唆さ
れている。これらの研究から、NEでの突然変異は、小胞体ストレス応答(UPR)を惹
起し、骨髄での好中球形成プロセスにおける細胞損失につながることが分かる(Maka
ryanら、2017)。
【0012】
現在の治療
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、SCNの第一選択治療とみなされる(Co
nnelly,Choi及びLevine 2012)。G-CSFは、より多い好中球
の生産を刺激し、アポトーシスを遅延させる(Schaffer及びKlein 200
7)。SCN患者の10%はまだ重度の細菌性感染症又は敗血症で死亡するけれども、悪
性病変が発生している患者を含めて、全体の生存率は今では80%を超えると推定される
(Skokowaら、2017)。G-CSF療法は敗血症での死亡数を防止することに
成功しているけれども、長期治療するとSCN患者に骨髄異形成症候群(MDS)又は白
血病が発生するリスクが高まることと関連することが明らかになった。SCNにおいて最
も一般的な白血病は、AMLであるが、急性リンパ性白血病(ALL)、若年性骨髄単球
性白血病(JMML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び二重表現型白血病も文献
に報告されている(Connelly,Choi,及びLevine 2012)。G-
CSFに強い応答がある(投与量8μg/kg/day未満)患者は、G-CSF時から
15年後MDS/白血病の発症について累積発症率が15%だった一方、高投与量にも関
わらずG-CSFに対して応答不良だった患者の発症率は34%だったとこれまでに報告
された(Rosenbergら、2010)。
【0013】
造血幹細胞移植(HSCT)は、G-CSF療法に応答しない又はAML/MDSが発
症した患者に対しての代替的な根治療法である。しかしながら、HCTを受ける慢性好中
球減少症患者には、真菌及び移植片対宿主病などの感染性合併症が発症するリスクが高い
(Skokowaら、2017)。さらに、HCTでは、生存率を改善するためには適合
血縁ドナーが必要となるが、ほとんどの患者には利用可能な適合ドナーがいない(Con
nelly,Choi,及びLevine 2012)。
【発明の概要】
【0014】
開示されるのは、ドミナントな変異対立遺伝子を破壊する又は生じたmRNAを分解す
ることによりドミナントな変異対立遺伝子の発現をノックアウトする手法である。
【0015】
本開示は、一方の対立遺伝子は変異が疾患表現型を生じる変異タンパク質をコードする
ような変異を保持し(「変異対立遺伝子」)、他方の対立遺伝子は機能性タンパク質をコ
ードする(「機能性対立遺伝子」)、遺伝子の2個の対立遺伝子間を識別/区別するため
に少なくとも1つの自然発生のヘテロ接合性ヌクレオチドの差又は遺伝子多型(一塩基多
型(SNP)等)を利用する方法を提供する。
【0016】
本発明の実施形態は、ある一定の細胞又は対象においてドミナントな変異対立遺伝子を
発現する遺伝子の少なくとも1つのヘテロ接合性SNPを利用する方法を提供する。本発
明の実施形態において、利用されるSNPは、疾患表現型と関連してもしなくてもよい。
本発明の実施形態において、ガイド配列を含むRNA分子は、遺伝子の変異対立遺伝子中
のヘテロ接合性SNPに存在し、したがって遺伝子の機能性対立遺伝子中の異なるヌクレ
オチド塩基を有するヌクレオチド塩基を標的とすることにより遺伝子の変異対立遺伝子を
標的とする。
【0017】
いくつかの実施形態において、方法は、変異タンパク質の発現をノックアウトし、機能
性タンパク質の発現を許容するステップをさらに含む。
【0018】
本発明は、細胞の、重症先天性好中球減少症(SCN)又は周期性好中球減少症(Cy
N)に関連している変異を有する好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE遺伝子)遺伝子
の変異対立遺伝子を不活性化するための方法であって、細胞は、rs104l4837、
rs376l005、rs1683564、rs9749274、rs74002l、r
s20l048029、rs199720952、rs28591229、rs7l33
5276、rs58082l77、rs3826946、rs10413889、rs7
6l48l944、rs376l008、rs10409474、rs3761007、
rs172l6649、rs10469327、rs8l07095、rs104244
70及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテ
ロ接合性であり、方法は、
細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子を含む組
成物を導入することを含み、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、ELANE遺伝子の変異
対立遺伝子における二本鎖切断に影響する、方法を提供する。
【0019】
本発明は、本発明の方法によって取得される改変細胞を提供する。
【0020】
本発明は、ELANE遺伝子の1つの対立遺伝子の少なくとも一部を欠いている改変細
胞を提供する。
【0021】
本発明は、改変細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0022】
本発明は、本発明の細胞と薬学的に許容される担体とを混合することを含む、組成物の
インビトロ又はエクスビボ調製方法を提供する。
【0023】
本発明は、インビトロ又はエクスビボで改変細胞を含む組成物を調製する方法であって
、方法は、
a)SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又はSCN
又はCyNに苦しむ対象から取得した細胞からHSPCを単離することであって、対象は
、rs104l4837、rs376l005、rs1683564、rs974927
4、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs285
91229、rs7l335276、rs58082l77、rs3826946、rs
104l3889、rs76148l944、rs376l008、rs1040947
4、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8l07
095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ
又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、単離すること、及び対象から細胞を取得する
こと、
b)1つ又は複数の細胞におけるELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化するよ
う、ステップ(a)の細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の細胞にお
けるELANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイ
ド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、第2のRNA分子及びCRI
SPRヌクレアーゼの複合体は、1つ又は複数の細胞におけるELANE遺伝子における
第2の二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、導入すること、任意選択で
c)ステップ(b)の改変細胞を培養増殖することであって、改変細胞は生着すること
ができ、生着後に子孫細胞を生じることができる、培養増殖すること、を含む、方法を提
供する。
【0024】
本発明は、
a)SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又はSCN
又はCyNに苦しむ対象から取得した細胞からHSPCを単離することであって、対象は
、rs104l4837、rs376l005、rs1683564、rs974927
4、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs285
91229、rs7l335276、rs58082l77、rs3826946、rs
104l3889、rs76148l944、rs376l008、rs1040947
4、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8l07
095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ
又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、単離すること、
b)1つ又は複数の細胞におけるELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化するよ
う、ステップ(a)の細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の細胞にお
けるELANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイ
ド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、第2のRNA分子及びCRI
SPRヌクレアーゼの複合体は、1つ又は複数の細胞のELANE遺伝子における第2の
二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、導入すること、任意選択で
c)ステップ(b)の細胞を培養増殖することであって、改変細胞は生着することがで
き、生着後に子孫細胞を生じることができる、培養増殖すること、及び
d)対象のSCN又はCyNを治療するために対象にステップ(b)又はステップ(c
)の細胞を投与すること、を含む方法によってインビトロで調製される組成物の使用を提
供する。
【0025】
本発明は、治療有効量の本発明の改変細胞、組成物又は方法によって調製された組成物
を投与することを含む、SCN又はCyNで苦しんでいる対象の治療方法を提供する。
【0026】
本発明は、SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する治療を必要
とする対象におけるSCN又はCyNの治療方法であって、対象は、rs104l483
7、rs376l005、rs1683564、rs9749274、rs74002l
、rs20l048029、rs199720952、rs2859l229、rs7l
335276、rs58082177、rs3826946、rs104l3889、r
s76l481944、rs376l008、rs10409474、rs376100
7、rs172l6649、rs10469327、rs8l07095、rs1042
4470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位で
ヘテロ接合性であり、方法は、
a)対象から取得した細胞からHSPCを単離すること、
b)1つ又は複数の細胞におけるELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化するよ
う、ステップ(a)の細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の細胞にお
けるELANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイ
ド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、第2のRNA分子及びCRI
SPRヌクレアーゼの複合体は、1つ又は複数の細胞のELANE遺伝子における第2の
二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、導入すること、任意選択で
c)ステップ(b)の細胞を培養増殖することであって、改変細胞は生着することがで
き、生着後に子孫細胞を生じることができる、培養増殖すること、及び
d)対象にステップ(b)又はステップ(c)の細胞を投与し、それにより対象のSC
N又はCyNを治療すること、を含む、方法を提供する。
【0027】
本発明は、SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する治療を必要
とする対象におけるSCN又はCyNの治療方法であって、対象は、rs1041483
7、rs3761005、rs1683564、rs9749274、rs740021
、rs201048029、rs199720952、rs28591229、rs71
335276、rs58082177、rs3826946、rs10413889、r
s761481944、rs3761008、rs10409474、rs376100
7、rs17216649、rs10469327、rs8107095、rs1042
4470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位で
ヘテロ接合性であり、方法は、
対象に自家改変細胞又は自家改変細胞の子孫を投与することであって、自家改変細胞は
、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子が二本鎖切断するように改変され、
上記二本鎖切断は、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコー
ドする配列及び第1のRNA分子を含む組成物を細胞に導入することから生じ、CRIS
PRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、細胞におけるELANE遺伝子の変
異対立遺伝子を不活性化するよう、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子が二本鎖切断する
ことに影響する、投与すること、を含み、
それにより対象のSCN又はCyNを治療する、方法を提供する。
【0028】
本発明は、SCN又はCyNと診断された対象のプールから治療のための対象を選択す
る方法であって、方法は、
a)対象のプールにおける各対象から細胞を取得するステップ、
b)各対象の細胞をSCN又はCyNに関連するELANE遺伝子変異を求めて選別し
、SCN又はCyNに関連するELANE遺伝子変異を有する対象のみを選択するステッ
プ、
c)ステップ(b)において選択された対象の細胞を配列決定することによりrs10
4l4837、rs376l005、rs1683564から成る群から選択される1つ
又は複数の多型部位でのヘテロ接合性を選別するステップ、そして
d)治療のために1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である細胞を有する対象のみ
を選択するステップ、を含む方法を提供する。
【0029】
本発明の実施形態は、
e)対象の骨髄から末梢血液の吸引によるか又は動員及びアフェレシスによるかのいず
れかにより造血幹細胞及び前駆細胞(HSPC)を取得すること、
f)ステップ(e)のHSPC細胞に
1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼ又は1つ又は複数のCRISPRヌクレ
アーゼをコードする配列
ELANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在する1つ又は複数の多型部位のヘテロ接
合性対立遺伝子のヌクレオチド塩基を標的とする配列番号1~1192のいずれか1つに
記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドの配列中の17~20個のヌク
レオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、及び
ELANE遺伝子のイントロン3、イントロン4又は3’UTRにおける配列を標
的とするガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、
第1のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ又は複数のHSPC
細胞のELANE遺伝子の変異対立遺伝子における第1の二本鎖切断に影響し、第2のR
NA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体は、第1のRNA分子とCRISPRヌ
クレアーゼの複合体が第1の二本鎖切断することに影響した1つ又は複数のHSPC細胞
におけるELANE遺伝子の両対立遺伝子のイントロン3、イントロン4又は3’UTR
が第2の二本鎖切断することに影響し、それにより改変細胞を取得する、導入すること、
g)対象にステップ(f)の改変細胞を投与し、それにより対象のSCN又はCyNを
治療すること、を含む、選択された対象におけるSCN又はCyNを治療することをさら
に含む。
【0030】
本発明は、配列番号1~1192のいずれか1つに記載されている17~20個の近接
しているヌクレオチドの配列中の17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含
むRNA分子を提供する。
【0031】
本発明は、細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化するための方法であって、方
法は、細胞に本発明のRNA分子又は組成物を送達することを含む、方法を提供する。
【0032】
本発明は、細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化するための、本発明のRNA
分子、本発明の組成物又は本発明の方法により調製された組成物の使用を提供する。
【0033】
本発明は、細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化する使用のための、本発明の
RNA分子、本発明の組成物又は本発明の方法により調製された組成物を含む薬物であっ
て、細胞に本発明のRNA分子、本発明の組成物又は本発明の方法により調製された組成
物を送達することにより薬物を投与する、薬物を提供する。
【0034】
本発明は、SCN又はCyNを有する又は有するリスクがある対象におけるSCN又は
CyNを治療、寛解又は防止するための、本発明の方法、本発明の改変細胞、本発明の組
成物又は本発明の方法により調製された組成物、又は本発明のRNA分子の使用を提供す
る。
【0035】
本発明は、SCN又はCyNを治療、寛解又は防止する使用のための、本発明のRNA
分子、本発明の組成物、本発明の方法により調製された組成物又は本発明の改変細胞を含
む薬物であって、SCN又はCyNを有する又は有するリスクがある対象に、本発明のR
NA分子、本発明の組成物、本発明の方法により調製された組成物又は本発明の改変細胞
を送達することにより薬物を投与する、薬物を提供する。
【0036】
本発明は、本発明のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレア
ーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子又はtracrRNA分子をコ
ードする配列、及び細胞の変異ELANE対立遺伝子を不活性化するために、RNA分子
、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又
はtracrRNA又はtracrRNA分子をコードする配列を細胞に送達するための
説明書を備える、細胞の変異ELANE対立遺伝子を不活性化するためのキットを提供す
る。
【0037】
本発明は、本発明のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレア
ーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子又はtracrRNA分子をコ
ードする配列、及びSCN又はCyNを治療するようRNA分子、CRISPRヌクレア
ーゼ及び/又はtracrRNAをSCN又はCyNを有する又は有するリスクがある対
象に送達するための説明書を備える、対象のSCN又はCyNを治療するためのキットを
提供する。
【0038】
本発明は、本発明の組成物、本発明の方法により調製された組成物、又は本発明の改変
細胞、及び細胞のELANE遺伝子を不活性化するよう組成物を細胞に送達するための説
明書を備える、細胞の変異ELANE対立遺伝子を不活性化するためのキットを提供する
【0039】
本発明は、本発明の組成物、本発明の方法により調製された組成物、又は本発明の改変
細胞、及びSCN又はCyNを治療するよう本発明の組成物、本発明の方法により調製さ
れた組成物、又は本発明の改変細胞をSCN又はCyNを有する又は有するリスクがある
対象に送達するための説明書を備える、対象のSCN又はCyNを治療するためのキット
を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1。SNP位置の上流からイントロン3、イントロン4又は3’UTRまでのプロモーター領域を切除する。1つの実施例において、第1のガイド配列は変異対立遺伝子の上流領域のヘテロ接合性SNP位置の特異的配列を標的とし(戦略la-rs104l4837、戦略lb-rs376l005)、第2のガイド配列は遺伝子の2個の対立遺伝子に共通するイントロン4の配列を標的とする。
図2図2。SNP位置の上流からイントロン3、イントロン4又は3’UTRまでのプロモーター領域を切除する。1つの実施例において、第1のガイド配列は変異対立遺伝子の上流領域のヘテロ接合性SNP位置の特異的配列を標的とし(戦略la-rs10414837、戦略lb-rs3761005)、第2のガイド配列は遺伝子の2個の対立遺伝子に共通するイントロン3の配列を標的とする。別の実施例において、第1のガイド配列は変異対立遺伝子の上流領域ヘテロ接合性SNP位置の特異的配列を標的とし(戦略la-rs10414837、戦略lb-rs3761005)、第2のガイド配列は遺伝子の2個の対立遺伝子に共通する3’UTRの配列を標的とする。
図3図3。イントロン3、イントロン4又は3’UTRから3’UTRの下流の領域までを切除する。1つの実施例において、第1のガイド配列は変異対立遺伝子の上流領域ヘテロ接合性SNP位置の特異的配列を標的とし(戦略2-rs1683564)、第2のガイド配列は遺伝子の2個の対立遺伝子に共通するイントロン4の配列を標的とする。別の実施例において、第1のガイド配列は変異対立遺伝子の上流領域のヘテロ接合性SNP位置の特異的配列を標的とし(戦略2-rs1683564)、第2のガイド配列は遺伝子の2個の対立遺伝子に共通するイントロン3の配列を標的とする。さらなる実施例において、第1のガイド配列は変異対立遺伝子の上流領域のヘテロ接合性SNP位置の特異的配列を標的とし(戦略2-rs1683564)、第2のガイド配列は遺伝子の2個の対立遺伝子に共通する3’UTRの配列を標的とする。
図4図4。イントロン3、イントロン4又は3’UTRから3’UTRの下流の領域までを切除する。この戦略は、健常な対立遺伝子を無傷のままにする一方、疾患発症性対立遺伝子(「変異対立遺伝子」)を特異的にノックアウトするよう設計される。対立遺伝子特異的編集は、集団におけるヘテロ接合頻度が比較的高い区別する(ヘテロ接合性)SNP位置を標的とするガイドを使用することにより達成される。
図5図5。ヘテロ接合性頻度及び選択ヘテロ接合性SNP間の重複/連鎖に基づく集団内の予想される適用範囲。3個の治療戦略の代替解決策を設計すると、集団の約80%を含めることができてもよい。集団の約80%は、上記リストから1つ又は複数のヘテロ接合性SNPを保持していると評価される。そのうち33%は1つのヘテロ接合性SNPを保持し、31%はリストから2個のヘテロ接合性SNPを保持し、16%は3個のヘテロ接合性SNPを保持する。一方で、20%は上記リストのいかなるSNPも保持しない。
図6図6。HeLa細胞を96穴プレートに播種した(3K/ウェル)。24時間後、65ngのWT-Cas9又はDead-Cas9及びg36~g66として識別され、Turbofect試薬(サーモサイエンティフィック)を使用してELANEの異なる領域及びSNPを標的とする、20ngのgRNAプラスミドで同時導入した。編集の割合を以下の式にしたがって算出した。100%-(未編集バンド強度/全バンド強度)X100。3個の独立した実験のDead-Cas9バックグラウンド活性を減算した後の各gRNAの平均活性±SDを示す。
図7図7。健常ドナーからのHSCをspCas9-WT及びEMX1(sgEMXl)又はELANE(g35:INT4;g58:rs376l005;g62:rs1683564)のいずれかを標的とするgRNAのRNA構成要素でヌクレオフェクトした(nucleofected)。ヌクレオフェクション後72時間で、gDNAを抽出し、編集レベルをIDAAにより定量した。二度繰り返して実施された2個の独立した実験の平均編集%±SDを示す。
図8図8。ELANE遺伝子の変異対立遺伝子の特異的ノックアウトは、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子のイントロン4及びエキソン5を切除することにより媒介される。これは対立遺伝子特異的DSBを媒介するために、イントロン4でのDSBを媒介しSNP rs1683564を利用することにより成し遂げられる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施形態は、細胞の、重症先天性好中球減少症(SCN)又は周期性好中球減
少症(CyN)に関連している変異を有する好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE遺伝
子)遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化するための方法であって、細胞は、rs104l
4837、rs376l005、rs1683564、rs9749274、rs740
02l、rs20l048029、rs199720952、rs28591229、r
s7l335276、rs58082l77、rs3826946、rs1041388
9、rs76l48l944、rs376l008、rs10409474、rs376
1007、rs172l6649、rs10469327、rs8l07095、rs1
0424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型
部位でヘテロ接合性であり、方法は、
細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子を含む組
成物を導入することを含み、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、ELANE遺伝子の変異
対立遺伝子における二本鎖切断に影響する、方法を提供する。
【0042】
本発明の実施形態において、CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子は、EL
ANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、変異対立遺伝子は、1つ又
は複数の多型部位に基づいて二本鎖切断のための標的とする。
【0043】
本発明の実施形態において、CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子は、EL
ANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、変異対立遺伝子は、1つ又
は複数の多型部位での変異対立遺伝子の配列に基づいて二本鎖切断のための標的とする。
【0044】
本発明の実施形態において、CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子は、EL
ANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在する1つ又は複数の多型部位のヌクレオチド塩基に
基づいてELANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響する。
【0045】
本発明の実施形態は、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイ
ド配列部を含む第2のRNA分子を導入することをさらに含み、第2のRNA分子及びC
RISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子における第2の二本鎖切断に影響
する。
【0046】
本発明の実施形態において、組成物は、1、2、3又は複数のCRISPRヌクレアー
ゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列を含んでもよい。本発明の実施形態に
おいて、組成物を細胞に導入することは、細胞に1、2、3又は複数の組成物を導入する
ことを含む。本発明の実施形態において、各組成物は、異なるCRISPRヌクレアーゼ
もしくはCRISPRヌクレアーゼをコードする配列又は同一のCRISPRヌクレアー
ゼもしくはCRISPRヌクレアーゼをコードする配列を含んでもよい。2個のRNA分
子を含む本発明の実施形態において、第2のRNA分子は、第1のRNA分子と同じCR
ISPRヌクレアーゼと複合体を形成してもよいし、別のCRISPRヌクレアーゼと複
合体を形成してもよい。
【0047】
本発明の実施形態において、第2の二本鎖切断は、ELANE遺伝子の非コード領域内
である。本発明の実施形態において、ELANE遺伝子の非コード領域は、イントロン又
は非翻訳領域(UTR)から選択される。本発明の実施形態において、非コード領域は、
イントロン3又はイントロン4である。本発明の実施形態において、UTRは、3’UT
Rである。
【0048】
本発明の実施形態において、第1のRNA分子のガイド配列部は、配列番号:1~11
92の何れか1つに記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドを含む。
【0049】
本発明の実施形態によれば、第2のRNA分子のガイド配列部は、配列番号:1~11
92の何れか1つ、又は配列番号1193~2000の何れか1つに記載されている17
~20個の近接しているヌクレオチドの配列にある17~20個のヌクレオチドを含む。
【0050】
本発明の実施形態において、第2の二本鎖切断は、ELANE遺伝子の非コード領域内
である
【0051】
本発明の実施形態において、細胞は、rs104l4837又はrs376l005で
ヘテロ接合性であり、第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体は、EL
ANE遺伝子のイントロン4における二本鎖切断に影響する。
【0052】
本発明の実施形態において、細胞は、rs10414837又はrs376l005で
ヘテロ接合性であり、第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体は、EL
ANE遺伝子のイントロン3における二本鎖切断に影響する。
【0053】
本発明の実施形態において、細胞は、rs10414837又はrs376l005で
ヘテロ接合性であり、第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体は、EL
ANE遺伝子の3’UTR領域における二本鎖切断に影響する。
【0054】
本発明の実施形態において、細胞は、rs1683564でヘテロ接合性であり、第2
のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子のイントロン
4における二本鎖切断に影響する。
【0055】
本発明の実施形態において、細胞は、rs1683564でヘテロ接合性であり、第2
のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子のイントロン
3における二本鎖切断に影響する。
【0056】
本発明の実施形態において、細胞は、rs1683564でヘテロ接合性であり、第2
のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子の3’UTR
領域における二本鎖切断に影響する。
【0057】
いくつかの実施形態においては、細胞は、ELANE rs104l4837の多型部
位でヘテロ接合性であり、17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1
のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼとの複合体は、ELANE遺伝子の変異対立遺
伝子における二本鎖切断に影響し、ELANE遺伝子の機能性対立遺伝子における二本鎖
切断に影響しない。このような実施形態において、第1のRNA分子のガイド配列部は、
17~20個のヌクレオチドを有して含み、配列番号:82、86、93、94、115
、119、135、173、180、213、215、224、225、262、263
、307、308、319、323、351、352、374、461、462、466
、467、474、477、478、491、504、505、533、537、538
、550、556、569、570、583、584、684、685、714、745
、790、791、845、846、854、857、858、861、863、864
、880、881、886、890、891、901、911、912、936、937
、939、940、960、961、972、978、979、983、984、101
8、1034、1035、1040、1086、1110、1111、1135、114
4及び1145の何れか1つに記載されている17~20個の近接しているヌクレオチド
の配列を含んでもよい。
【0058】
いくつかの実施形態においては、細胞は、ELANE rs376l005の多型部位
でヘテロ接合性であり、17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1の
RNA分子とCRISPRヌクレアーゼとの複合体は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝
子における二本鎖切断に影響し、ELANE遺伝子の機能性対立遺伝子における二本鎖切
断に影響しない。このような実施形態において、第1のRNA分子のガイド配列部は17
~20個のヌクレオチドを有して含み、配列番号:26、57、65、66、70、18
7、188、191、206、220、221、243、245、261、275、35
6、357、392、417、418、431、441、442、447、488、51
3、514、545、546、548、598、599、604、607、608、61
2、613、639、648、658、659、660、680、681、742、74
3、755、756、759、762、763、767、771、772、773、78
6、787、815、816、818、819、820、831、836、849、85
0、870、871、898、899、907、908、1009、1010、1013
、1023、1029、1030、1082、1083、4093、1099、1100
、1101、1107、1108及び1182の何れか1つに記載されている17~20
個の近接しているヌクレオチドの配列を含んでもよい。
【0059】
いくつかの実施形態においては、細胞は、ELANE rs1683564の多型部位
でヘテロ接合性であり、17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1の
RNA分子とCRISPRヌクレアーゼとの複合体は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝
子における二本鎖切断に影響し、ELANE遺伝子の機能性対立遺伝子における二本鎖切
断に影響しない。このような実施形態において、第1のRNA分子のガイド配列部は17
~20個のヌクレオチドを有して含み、配列番号:52、87、122、164、175
、199、214、290、326、345、346、373、404、412、436
、437、451、452、483、484、517、520、525、617、618
、621、641、661、676、722、736、806、855、856、878
、879、888、889、896、903、905、913、914、929、933
、934、935、982、998、1021、1022、1026、1046、104
7、1053、1097、1121、1122、1124、1126、1127、113
1、1134、1175、1176、1183及び1190の何れか1つに記載されてい
る17~20個の近接しているヌクレオチドの配列を含んでもよい。
【0060】
本発明の実施形態は、重症先天性好中球減少症(SCN)又はCyNに関連しているE
LANE遺伝子変異を有する細胞を、SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子
変異を有する及び/又はSCN又はCyNに苦しむ対象から取得することを含み、対象は
、rs10414837、rs3761005、rs1683564、rs974927
4、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs285
91229、rs71335276、rs58082177、rs3826946、rs
10413889、rs761481944、rs3761008、rs1040947
4、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8107
095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ
又は複数の多型部位でヘテロ接合性である。
【0061】
本発明の実施形態は、第1にSCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を
有する及び/又はSCN又はCyNに苦しむ対象を選択することであって、対象は、rs
10414837、rs3761005、rs1683564、rs9749274、r
s740021、rs201048029、rs199720952、rs285912
29、rs71335276、rs58082177、rs3826946、rs104
13889、rs761481944、rs376l008、rs10409474、r
s376l007、rs172l6649、rs10469327、rs8107095
、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複
数の多型部位でヘテロ接合性であること、及び対象から細胞を取得することを含む。
【0062】
本発明の実施形態は、細胞を対象から動員によって及び/又はアフェレシスによって取
得することを含む。
【0063】
本発明の実施形態は、細胞を対象から骨髄穿刺法によって取得することを含む。
【0064】
本発明の実施形態において、組成物を細胞に導入する前に細胞を予備刺激する。
【0065】
本発明の実施形態は、細胞を培養増殖して細胞群を取得することを含む。
【0066】
本発明の実施形態において、細胞を、幹細胞因子(SCF)、IL-3及びGM-CS
Fのうちの1つ又は複数とともに培養する。
【0067】
本発明の実施形態において、細胞を少なくとも1つのサイトカインとともに培養する。
【0068】
本発明の実施形態において、少なくとも1つのサイトカインは、組換えヒトサイトカイ
ンである。
【0069】
本発明の実施形態において、細胞は、複数の細胞の中の1つであり、第1のRNA分子
又は第1及び第2のRNA分子の両方を含む組成物を、複数の細胞の中の少なくとも細胞
及び他の細胞に導入し、そして複数の細胞の中の少なくとも細胞及び他の細胞中のELA
NE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化し、それにより複数の改変細胞を取得する。
【0070】
本発明の実施形態において、第1のRNA分子を含む組成物を導入すること又は第2の
RNA分子の導入は、細胞又は複数の細胞のエレクトロポレーションを含む。
【0071】
本発明の実施形態は、本発明の方法によって取得される改変細胞を提供する。
【0072】
本発明の実施形態においては、改変細胞をさらに培養増殖する。
【0073】
本発明の実施形態において、改変細胞は、生着することができる。
【0074】
本発明の実施形態において、改変細胞は、患者に注入すると長期生着することができ、
注入後少なくとも12か月間で、好ましくは少なくとも24か月間で、そしてさらに一層
好ましくは注入後少なくとも30か月間で分化造血細胞を生じる。さらなる実施形態にお
いて、改変細胞は、自家対象に注入すると長期生着することができる。さらなる実施形態
において、改変細胞は、骨髄破壊せずに対象に注入しても長期生着することができる。本
発明の実施形態において、改変細胞は、ヒトである対象に生着すると、長期生着を提供す
る十分な数で対象に送達される。
【0075】
本発明の実施形態において、改変細胞又は改変細胞群は、子孫細胞を生じることができ
る。
【0076】
本発明の実施形態において、改変細胞又は改変細胞群は、生着後に子孫細胞を生じるこ
とができる。
【0077】
本発明の実施形態において、改変細胞又は改変細胞群は、自家移植後に子孫細胞を生じ
ることができる。
【0078】
本発明の実施形態において、改変細胞又は改変細胞群は、生着後少なくとも12か月間
又は少なくとも24か月間子孫細胞を生じることができる。
【0079】
1つの実施形態において、細胞又は細胞群は、幹細胞である。1つの実施形態において
、細胞は、胚性幹細胞である。1つの実施形態において、幹細胞は、造血幹細胞/前駆細
胞(HSPC)である。
【0080】
本発明の実施形態において、改変細胞又は改変細胞群は、CD34+造血幹細胞である
【0081】
本発明の実施形態において、改変細胞又は改変細胞群は、骨髄細胞又は末梢単核細胞(
PMC)である。
【0082】
本発明の実施形態は、ELANE遺伝子の1つの対立遺伝子の少なくとも一部を欠いて
いる改変細胞を提供する。
【0083】
本発明の実施形態において、改変細胞は、rs104l4837、rs3761005
、rs1683564、rs9749274、rs74002l、rs20l04802
9、rs199720952、rs2859l229、rs7l335276、rs58
082l77、rs3826946、rs104l3889、rs76l48l944、
rs376l008、rs10409474、rs376l007、rs172l664
9、rs10469327、rs8107095、rs10424470及びrs783
02854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である細胞
から改変された。
【0084】
本発明の実施形態は、改変細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0085】
本発明の実施形態は、本発明の細胞と薬学的に許容される担体とを混合することを含む
、組成物のインビトロ又はエクスビボ調製方法を提供する。
【0086】
本発明の実施形態は、インビトロ又はエクスビボで改変細胞を含む組成物を調製する方
法であって、方法は、
a)SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又はSCN
又はCyNに苦しむ対象から取得した複数の細胞からHSPCを単離することであって、
対象は、rs104l4837、rs376l005、rs1683564、rs974
9274、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs
28591229、rs7l335276、rs58082l77、rs3826946
、rs104l3889、rs76148l944、rs376l008、rs1040
9474、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8
l07095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択され
る1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、単離すること、及び対象から細胞を取
得すること、
b)1つ又は複数の細胞におけるELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化するよ
う、ステップ(a)の細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の細胞にお
けるELANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド
配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、第2のRNA分子及びCRIS
PRヌクレアーゼの複合体は、1つ又は複数の細胞におけるELANE遺伝子における第
2の二本鎖切断に影響し、それにより改変細胞を取得する、導入すること、任意選択で
c)ステップ(b)の改変細胞を培養増殖することであって、改変細胞は生着すること
ができ、生着後に子孫細胞を生じることができる、培養増殖すること、を含む、方法を提
供する。
【0087】
本発明の実施形態は、
a)SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又はSCN
又はCyNに苦しむ対象から取得した細胞からHSPCを単離することであって、対象は
、rs104l4837、rs376l005、rs1683564、rs974927
4、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs285
91229、rs7l335276、rs58082l77、rs3826946、rs
104l3889、rs76148l944、rs376l008、rs1040947
4、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8l07
095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ
又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、単離すること、
b)1つ又は複数の細胞におけるELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化するよ
う、ステップ(a)の細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の細胞にお
けるELANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイ
ド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、第2のRNA分子及びCRI
SPRヌクレアーゼの複合体は、1つ又は複数の細胞におけるELANE遺伝子における
第2の二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、導入すること、任意選択で
c)ステップ(b)の細胞を培養増殖することであって、改変細胞は生着することがで
き、生着後に子孫細胞を生じることができる、培養増殖すること、及び
d)対象のSCN又はCyNを治療するために対象にステップ(b)又はステップ(c
)の細胞を投与すること、を含む方法によってインビトロで調製される組成物の使用を提
供する。
【0088】
本発明の実施形態は、治療有効量の本発明の改変細胞、組成物又は方法によって調製さ
れた組成物を投与することを含む、SCN又はCyNで苦しんでいる対象の治療方法を提
供する。
【0089】
本発明の実施形態は、SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する治
療を必要とする対象におけるSCN又はCyNの治療方法であって、対象は、rs104
l4837、rs376l005、rs1683564、rs9749274、rs74
002l、rs20l048029、rs199720952、rs2859l229、
rs7l335276、rs58082177、rs3826946、rs104l38
89、rs76l481944、rs376l008、rs10409474、rs37
61007、rs172l6649、rs10469327、rs8l07095、rs
10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多
型部位でヘテロ接合性であり、方法は、
a)対象から取得した細胞からHSPCを単離すること、
b)1つ又は複数の細胞におけるELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化するよ
う、ステップ(a)の細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の細胞にお
けるELANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイ
ド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、第2のRNA分子及びCRI
SPRヌクレアーゼの複合体は、1つ又は複数の細胞におけるELANE遺伝子における
第2の二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、導入すること、任意選択で
c)ステップ(b)の細胞を培養増殖することであって、改変細胞は生着することがで
き、生着後に子孫細胞を生じることができる、培養増殖すること、及び
d)対象にステップ(b)又はステップ(c)の細胞を投与し、それにより対象のSC
N又はCyNを治療すること、を含む、方法を提供する。
【0090】
本発明の実施形態は、SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する
治療を必要とする対象におけるSCN又はCyNの治療方法であって、対象は、rs10
414837、rs3761005、rs1683564、rs9749274、rs7
40021、rs201048029、rs199720952、rs28591229
、rs71335276、rs58082177、rs3826946、rs10413
889、rs761481944、rs3761008、rs10409474、rs3
761007、rs17216649、rs10469327、rs8107095、r
s10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の
多型部位でヘテロ接合性であり、方法は、
対象に自家改変細胞又は自家改変細胞の子孫を投与することであって、自家改変細胞
は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子が二本鎖切断するように改変され、
上記二本鎖切断は、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコー
ドする配列及び第1のRNA分子を含む組成物を細胞に導入するから生じ、CRISPR
ヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、細胞におけるELANE遺伝子の変異対
立遺伝子を不活性化するよう、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に
影響する、投与すること、を含み、
それにより対象のSCN又はCyNを治療する、方法を提供する。
【0091】
本発明の実施形態は、SCN又はCyNと診断された対象のプールから治療のための対
象を選択する方法であって、方法は、
a)対象のプールにおける各対象から細胞を取得するステップ、
b)各対象の細胞をSCN又はCyNに関連するELANE遺伝子変異を求めて選別し
、SCN又はCyNに関連するELANE遺伝子変異を有する対象のみを選択するステッ
プ、
c)ステップ(b)において選択された対象の細胞を配列決定することによりrs10
4l4837、rs376l005、rs1683564から成る群から選択される1つ
又は複数の多型部位でのヘテロ接合性を選別するステップ、そして
d)治療のために1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である細胞を有する対象のみ
を選択するステップ、を含む方法を提供する。
【0092】
本発明の実施形態は、
e)対象の骨髄から末梢血液の吸引によるか又は動員及びアフェレシスによるかのいず
れかによりHSPC細胞を取得すること、
f)ステップ(e)のHSPC細胞に
1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼ又は1つ又は複数のCRISPRヌクレア
ーゼをコードする配列
ELANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在する1つ又は複数の多型部位のヘテロ接合
性対立遺伝子のヌクレオチド塩基を標的とする配列番号:1~1192のいずれか1つに
記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドの配列中の17~20個のヌク
レオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、及び
ELANE遺伝子のイントロン3、イントロン4又は3’UTRにおける配列を標的
とするガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、
第1のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ又は複数のHSPC細
胞におけるELANE遺伝子の変異対立遺伝子における第1の二本鎖切断に影響し、第2
のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体は、第1のRNA分子とCRISP
Rヌクレアーゼの複合体が第1の二本鎖切断することに影響した1つ又は複数のHSPC
細胞におけるELANE遺伝子の両対立遺伝子のイントロン3、イントロン4又は3’U
TRにおける第2の二本鎖切断に影響し、それにより改変細胞を取得する、導入すること

g)対象にステップ(f)の改変細胞を投与し、それにより対象のSCN又はCyNを
治療すること、を含む、選択された対象におけるSCN又はCyNを治療するステップを
さらに含む。
【0093】
本発明の実施形態は、配列番号:1~1192のいずれか1つに記載されている17~
20個の近接しているヌクレオチドの配列中の17~20個のヌクレオチドを有するガイ
ド配列部を含むRNA分子を提供する。
【0094】
本発明の実施形態は、ガイド配列部を含む第2のRNA分子をさらに含む。
【0095】
本発明の実施形態において、第2のRNA分子は、ELANE遺伝子の非コード領域を
標的とする。
【0096】
本発明の実施形態において、第2のRNA分子のガイド配列部のヌクレオチド配列は、
第1のRNA分子のガイド配列部の配列とは異なるヌクレオチド配列である。
【0097】
本発明の実施形態において、第1のRNA分子は、CRISPRヌクレアーゼに結合す
る配列を有する部分をさらに含む。本発明の実施形態において、第2のRNA分子は、C
RISPRヌクレアーゼに結合する配列を有する部分をさらに含む。
【0098】
本発明の実施形態において、CRISPRヌクレアーゼに結合する配列は、tracr
RNA配列である。
【0099】
本発明の実施形態において、第1のRNA分子は、tracrメイト配列を有する部分
をさらに含む。本発明の実施形態において、第2のRNA分子は、tracrメイト配列
を有する部分をさらに含む。
【0100】
本発明の実施形態において、第1のRNA分子は、1つ又は複数のリンカー部分をさら
に含む。本発明の実施形態において、第2のRNA分子は、1つ又は複数のリンカー部分
をさらに含む。
【0101】
本発明の実施形態において、第1のRNA分子は、長さが300ヌクレオチドまでであ
る。本発明の実施形態において、第2のRNA分子は、長さが300ヌクレオチドまでで
ある。
【0102】
本発明の実施形態において、組成物は、1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼ又は
1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼをコードする配列をさらに含む。本発明の実施
形態において、組成物は、1つ又は複数のtracrRNA分子又は1つ又は複数のtr
acrRNA分子をコードする配列をさらに含む。
【0103】
本発明の実施形態は、細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化するための方法で
あって、方法は、細胞に本発明のRNA分子又は組成物を送達することを含む、方法を提
供する。
【0104】
本発明の実施形態において、1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼ又は1つ又は複
数のCRISPRヌクレアーゼをコードする配列及びRNA分子又は複数のRNA分子を
、対象及び/又は細胞に実質的に同時に又は異なる時間に送達する。
【0105】
本発明の実施形態において、tracrRNA分子又は1つ又は複数のtracrRN
A分子をコードする配列及びRNA分子又は複数のRNA分子を、対象及び/又は細胞に
実質的に同時に又は異なる時間に送達する。
【0106】
本発明の実施形態において、方法は、
変異対立遺伝子から疾患発症性の変異を含むエキソンを除去することを含み、第1のRN
A分子又は第1及び第2のRNA分子は、エキソンのエキソン全体又は部分に隣接してい
る領域を標的とする。
【0107】
本発明の実施形態において、方法は、遺伝子のオープンリーディングフレーム全体、複
数のエキソンを除去すること、又は遺伝子全体を除去することを含む。
【0108】
本発明の実施形態において、第1のRNA分子又は第1及び第2のRNA分子は、変異
対立遺伝子のエキソン及びイントロンの間の選択的スプライシングシグナル配列を標的と
する。
【0109】
本発明の実施形態において、第2のRNA分子は、変異対立遺伝子と機能性対立遺伝子
の両方に存在する配列を標的とする。
【0110】
本発明の実施形態において、第2のRNA分子が、イントロンを標的とする。
【0111】
本発明の実施形態において、方法は、エラープローン非相同末端結合(NHEJ)機構
により変異対立遺伝子に挿入又は除去を受けさせ、変異対立遺伝子の配列にフレームシフ
トを生じさせることを生じる。
【0112】
本発明の実施形態において、フレームシフトは、変異対立遺伝子の不活性化又はノック
アウトを生じる。
【0113】
本発明の実施形態において、フレームシフトにより変異対立遺伝子中に早期の終止コド
ンが作成されるか、フレームシフトにより変異対立遺伝子の転写物のナンセンス変異依存
mRNA分解機構が生じる。
【0114】
本発明の実施形態において、不活性化又は治療により変異対立遺伝子によってコードさ
れる切断型タンパク質及び機能性対立遺伝子によってコードされる機能性タンパク質が生
じる。
【0115】
本発明の実施形態において、細胞又は対象が、rs104l4837又はrs376l
005でヘテロ接合性であり、第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体
が、ELANE遺伝子のイントロン4における二本鎖切断に影響する。
【0116】
本発明の実施形態において、細胞又は対象が、rs104l4837又はrs376l
005でヘテロ接合性であり、第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体
が、ELANE遺伝子のイントロン3における二本鎖切断に影響する。
【0117】
本発明の実施形態において、細胞又は対象が、rs104l4837又はrs376l
005でヘテロ接合性であり、第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体
が、ELANE遺伝子の3’UTR領域における二本鎖切断に影響する。
【0118】
本発明の実施形態において、細胞又は対象が、rs1683564でヘテロ接合性であ
り、第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体が、ELANE遺伝子のイ
ントロン4における二本鎖切断に影響する。
【0119】
本発明の実施形態において、細胞又は対象が、rs1683564でヘテロ接合性であ
り、第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体が、ELANE遺伝子のイ
ントロン3における二本鎖切断に影響する。
【0120】
本発明の実施形態において、細胞又は対象が、rs1683564でヘテロ接合性であ
り、第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体が、ELANE遺伝子の3
’UTR領域における二本鎖切断に影響する。
【0121】
本発明の実施形態は、細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化するための、本発
明のRNA分子、本発明の組成物又は本発明の方法により調製された組成物の使用を提供
する。
【0122】
本発明の実施形態は、細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化する使用のための
、本発明のRNA分子、本発明の組成物又は本発明の方法により調製された組成物を含む
薬物であって、細胞に本発明のRNA分子、本発明の組成物又は本発明の方法により調製
された組成物を送達することにより薬物を投与する、薬物を提供する。
【0123】
本発明の実施形態は、SCN又はCyNを有する又は有するリスクがある対象における
SCN又はCyNを治療、寛解又は防止するための、本発明の方法、本発明の改変細胞、
本発明の組成物又は本発明の方法により調製された組成物、又は本発明のRNA分子の使
用を提供する。
【0124】
本発明の実施形態は、SCN又はCyNを治療、寛解又は防止する使用のための、本発
明のRNA分子、本発明の組成物、本発明の方法により調製された組成物又は本発明の改
変細胞を含む薬物であって、SCN又はCyNを有する又は有するリスクがある対象に、
本発明のRNA分子、本発明の組成物、本発明の方法により調製された組成物又は本発明
の改変細胞を送達することにより薬物を投与する、薬物を提供する。
【0125】
本発明の実施形態は、本発明のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISP
Rヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子又はtracrRN
A分子をコードする配列、及び細胞の変異ELANE対立遺伝子を不活性化するために、
RNA分子、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列
、及び/又はtracrRNA又はtracrRNA分子をコードする配列を細胞に送達
するための説明書を備える、細胞の変異ELANE対立遺伝子を不活性化するためのキッ
トを提供する。
【0126】
本発明の実施形態は、本発明のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISP
Rヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子又はtracrRN
A分子をコードする配列、及びSCN又はCyNを治療するようRNA分子、CRISP
Rヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracr
RNA又はtracrRNA分子をコードする配列をSCN又はCyNを有する又は有す
るリスクがある対象に送達するための説明書を備える、対象のSCN又はCyNを治療す
るためのキットを提供する。
【0127】
本発明の実施形態は、本発明の組成物、本発明の方法により調製された組成物、又は本
発明の改変細胞、及び細胞のELANE遺伝子を不活性化するよう組成物を細胞に送達す
るための説明書を備える、細胞の変異ELANE対立遺伝子を不活性化するためのキット
を提供する。
【0128】
本発明の実施形態は、本発明の組成物、本発明の方法により調製された組成物、又は本
発明の改変細胞、及びSCN又はCyNを治療するよう本発明の組成物、本発明の方法に
より調製された組成物、又は本発明の改変細胞をSCN又はCyNを有する又は有するリ
スクがある対象に送達するための説明書を備える、対象のSCN又はCyNを治療するた
めのキットを提供する。
【0129】
定義
特に規定がない限り、本明細書において使用される技術的及び/又は科学的用語は、本
発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解されるのと同一の意味
を有する。本明細書において記載されるものと類似する又は同等の方法及び材料を本発明
の実施形態の実施又は試験において使用することができるがも、例示的な方法及び/又は
材料は以下に記載されるものである。矛盾のある場合、定義を含む、特許明細書が支配す
るであろう。さらに、材料、方法及び実施例は例証にすぎず、必ずしも制限することを意
図するものではない。
【0130】
用語「a」及び「an」は、上で、そして本明細書の他の場所で使用するとき、列挙さ
れる構成要素の「1つ又は複数」を指すと理解されるべきである。単数形の使用には、特
に他に明言されない限り複数形も含まれることは当業者の一人にとって明らかであろう。
したがって、用語「a」、「an」及び「少なくとも1つの」は、本出願において交換可
能に使用される。
【0131】
本教示をより良く理解することを目的として、そして本教示の範囲を決して制限せず、
他に示されない限り、本明細書及び請求項において使用される量、割合又は比率、及び他
の数値を表現する全ての数字は、用語「訳」によって全ての事例において修正されるとし
て理解されるべきである。したがって、特にそれとは反対の指示がない限り、以下の明細
書及び添付の特許請求項に記載されている数値パラメーターは、取得しようとする所望の
特性に依存して変動することができる近似である。最低限各数値パラメーターは、報告さ
れた有効数字の数を考慮して、そして通常の端数処理方法を適用することにより少なくと
も解釈されるべきである。
【0132】
特に明言されない限り、本発明の実施形態の特徴又は特徴群特有の条件又は関係を修正
する「実質的に」及び「およそ」などの形容詞は、この条件又は特質が、それが意図され
る適用にとって、実施形態の工程として許容できる範囲内と定義されるという意味と理解
される。特に他に指示がない限り、本明細書及び請求項における単語「or」は、排他的
なorよりむしろ包括的な「or」とみなされ、それが結合する項目の少なくとも1つ又
は任意の組み合わせを示す。
【0133】
本出願の記述及び請求項において、「含む(comprise)」、「含む(incl
ude)」及び「有する」の動詞並びにその活用形は、動詞の対象又は対象群が必ずしも
構成要素、要素又は動詞の対象若しくは対象群の部分の完全な一覧表ではないことを示す
よう使用される。本明細書において使用される他の用語は、当該技術分野において周知の
意味によって定義される。
【0134】
本明細書において使用するとき、用語「ヘテロ接合一塩基多型」又は「SNP」は、集
団内の対である染色体間で異なるゲノム中の単一のヌクレオチドの位置を指す。本明細書
において使用するとき、この位置で最も一般的な又は最も普及しているヌクレオチド塩基
は、参照(REF)、野生型(WT)、共通又は主要形と呼ばれる。この位置であまり普
及していないヌクレオチド塩基は、代替(ALT)、少数、希少又はバリアント形と呼ば
れる。
【0135】
RNA分子の「ガイド配列部」は、特異的な標的DNA配列にハイブリッド形成できる
ヌクレオチド配列を指し、例えば、ガイド配列部は、ガイド配列部の長さにわたって標的
とされるDNA配列と完全に相補的であるヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形
態においては、ガイド配列部は、長さが17、18、19、20、21、22、23又は
24ヌクレオチド、又は長さがおよそ17~24、18~22、19~22、18~20
又は17~20ヌクレオチドである。ガイド配列部の全長は、ガイド配列部の長さにわた
って標的とされるDNA配列と完全に相補的である。ガイド配列部は、ガイド配列部がC
RISPR複合体のDNA標的部として働くCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成す
ることができるRNA分子の一部であってもよい。ガイド配列部を有するDNA分子がC
RISPR分子と同時に存在すると、RNA分子は、CRISPRヌクレアーゼを特異的
な標的DNA配列に対して標的とすることができる。各可能性は、別々の実施形態を表す
。RNA分子は、いかなる望みの配列を標的とするようカスタム設計することができる。
【0136】
用語「標的とする」は本明細書において使用するとき、RNA分子が標的とされるヌク
レオチド配列を有する核酸に優先的にハイブリッドを形成するガイド配列部を指す。用語
「標的とする」は、標的とされるヌクレオチド配列を有する核酸に優先的にハイブリッド
形成するが、標的上のハイブリッド形成に加えて意図していないオフターゲットのハイブ
リッド形成も起きるかもしれないような、可変的なハイブリッド形成効率を包含すると理
解される。RNA分子がある配列を標的とする場合、RNA分子とCRISPRヌクレア
ーゼ分子の複合体がヌクレアーゼ活性のためにこの配列を標的とすると理解される。
【0137】
複数の細胞に存在するDNA配列を標的とするという文脈においては、この標的とする
ことは、RNA分子のガイド配列部が1つ又は複数の細胞の配列とハイブリッド形成する
ことを包含し、またRNA分子が複数の細胞のうち全てより少ない細胞の標的配列とハイ
ブリッド形成することを包含すると理解される。したがって、RNA分子が複数の細胞の
配列を標的とする場合、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体が1つ又は複数
の細胞の標的配列とハイブリッド形成すると理解され、また全てより少ない細胞の標的配
列とハイブリッド形成してもよいと理解される。したがって、RNA分子とCRISPR
ヌクレアーゼの複合体が1つ又は複数の細胞の標的配列とハイブリッド形成するのと関連
して二本鎖切断を導入し、また全てより少ない細胞の標的配列とハイブリッド形成するの
と関連して二本鎖切断を導入してもよい。本明細書において使用するとき、用語「改変細
胞」は、標的配列とのハイブリッド形成、すなわち標的上のハイブリッド形成の結果とし
てRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体により二本鎖切断が引き起こされた細
胞を指す。
【0138】
本発明の実施形態において、RNAガイド分子は、変異対立遺伝子の多型部位に存在す
るヌクレオチド塩基に基づいて変異対立遺伝子を標的としてもよい。
【0139】
本発明の実施形態において、RNA分子は、配列番号:1~1192のいずれか1つに
記載されている、又は以下のグループ配列番号:6、75、76、252、253、28
7、295、296、311、536、592、595、596、597、695、72
9、737、812、839、915、947、1048、1049、1070、107
1、1169に記載されている、又は以下のグループ配列番号:6、75、76、93、
94、97、98、148、149、171、173、180、182、183、184
、187、188、213、232、234、249、252、253、264、272
、287、291、295、296、305、306、307、308、311、326
、333、334、337、338、339、340、351、352、358、359
、378、379、385、388、399、408、410、419、420、426
、427、428、429、430、436、437、449、450、465、468
、476、477、478、480、495、497、499、500、508、511
、521、522、523、524、529、530、532、536、542、545
、546、564、565、566、573、574、583、584、591、592
、595、596、597、598、599、601、602、604、612、613
、616、622、623、634、644、645、658、659、661、670
、671、678、680、681、684、685、688、689、694、695
、714、715、716、722、723、724、729、736、737、739
、740、745、755、756、760、761、769、770、771、772
、775、776、786、787、806、809、812、818、819、821
、822、826、829、830、833、834、839、845、846、861
、862、874、875、876、877、884、888、889、890、891
、893、894、911、912、913、914、915、925、928、930
、931、939、940、942、946、947、948、949、950、957
、972、974、982、994、998、1006、1007、1008、1021
、1022、1026、1027、1028、1031、1032、1034、1035
、1039、1046、1047、1048、1049、1057、1070、1071
、1072、1074、1075、1076、1079、1084、1090、1091
、1093、1094、1095、1112、1113、1116、1117、1118
、1119、1121、1122、1124、1140、1168、1169、1170
、1171、1179に記載されている、又は以下のグループ配列番号:6、10、13
、14、19、21、22、23、24、25、26、29、30、34、35、36、
39、42、43、44、45、46、47、48、49、50、52、53、54、5
5、57、58、61、62、64、65、66、67、68、69、70、71、72
、73、74、75、76、82、86、87、88、89、91、92、93、94、
95、96、97、98、99、100、101、102、103、107、108、1
09.115、119、122、123.124.125.126、127、128、1
30、133、134、135、136、137、138、139、140、141、1
42、143、144、148、149、150、152、153、155、156、1
58、159、160、161、162、163、164、167、168、169、1
70、171、172、173、175、176、177、178、179、180、1
81、182、183、184、187、188、189、190、191、192、1
95、196、198、199、201、203、206、209、211、212、2
13、214、215、216、217、219、220、221、223、224、2
25、226、227、232、233、234、236、237、238、240、2
41、242、243、244、245、246、247、248、249、250、2
51、252、253、254、255、256、261、262、263、264、2
65、266、267、269、270、271、272、273、274、275、2
76、277、281、282、285、286、287、290、291、292、2
93、294、295、296、302、303、305、306、307、308、3
10、311、314、319、323、326、327、328、329、331、3
32、333、334、335、336、337、338、339、340、341、3
43、344、345、346、349、350、351、352、353、354、3
56、357、358、359、360、363、364、366、370、371、3
72、373、374、375、376、377、378、379、380、381、3
82、385、386、387、388、389、390、391、392、393、3
94、395、396、397、399、400、404、405、406、407、4
08、410、411、412、415、417、418、419、420、422、4
23、424、425、426、427、428、429、430、431、432、4
33、435、436、437、440、441、442、443、444、445、4
46、447、449、450、451、452、454、455、456、457、4
60、461、462、464、465、466、467、468、469、470、4
71、474、475、476、477、478、479、480、483、484、4
85、486、488、489、491、492、493、494、495、496、4
97、498、499、500、501、502、504、505、506、508、5
09、510、511、513、514、517、518、519、520、521、5
22、523、524、525、526、527、528、529、530、531、5
32、533、536、537、538、539、540、541、542、543、5
44、545、546、547、548、549、550、552、553、554、5
55、556、557、558、559、560、561、562、563、564、5
65、566、567、568、569、570、571、573、574、577、5
79、580、582、583、584、586、587、588、590、591、5
92、593、595、596、597、598、599、600、601、602、6
04、605、606、607、608、609、610、612、613、614、6
15、616、617、618、619、620、621、622、623、624、6
25、628、629、630、633、634、635、636、637、638、6
39、640、641、644、645、648、650、651、652、653、6
54、655、658、659、660、661、663、664、665、667、6
70、671、672、673、675、676、678、680、681、683、6
84、685、686、688、689、690、691、692、694、695、6
98、700、701、702、703、704、705、706、707、708、7
09、712、713、714、715、716、718、719、720、722、7
23、724、727、728、729、730、731、732、733、734、7
35、736、737、738、739、740、742、743、744、745、7
46、747、748、749、753、754、755、756、757、758、7
59、760、761、762、763、764、767、769、770、771、7
72、773、775、776、778、779、780、781、786、787、7
88、789、790、791、792、794、795、798、800、801、8
05、806、807、808、809、811、812、813、814、815、8
16、818、819、820、821、822、823、826、829、830、8
31、832、833、834、835、836、837、838、839、843、8
44、845、846、849、850、852、853、854、855、856、8
57、858、861、862、863、864、865、866、867、868、8
70、871、872、874、875、876、877、878、879、880、8
81、882、883、884、886、887、888、889、890、891、8
93、894、895、896、897、898、899、901、902、903、9
05、906、907、908、909、910、911、912、913、914、9
15、916、917、920、921、925、926、927、928、929、9
30、931、932、933、934、935、936、937、939、940、9
42、943、945、946、947、948、949、950、951、952、9
53、954、955、956、957、958、960、961、962、963、9
64、965、966、967、968、969、972、974、975、976、9
78、979、982、983、984、988、989、990、991、992、9
93、994、996、997、998、1001、1002、1003、1004、1
005、1006、1007、1008、1009、1010、1011、1012、1
013、1014、1015、1017、1018、1019、1020、1021、1
022、1023、1024、1026、1027、1028、1029、1030、1
031、1032、1033、1034、1035、1036、1037、1038、1
039、1040、1042、1043、1044、1045、1046、1047、1
048、1049、1050、1051、1052、1053、1054、1055、1
056、1057、1058、1061、1062、1063、1064、1069、1
070、1071、1072、1073、1074、1075、1076、1077、1
078、1079、1080、1081、1082、1083、1084、1086、1
090、1091、1093、1094、1095、1097、1099、1100、1
101、1102、1103、1104、1105、1107、1108、1110、1
111、1112、1113、1114、1115、1116、1117、1118、1
119、1120、1121、1122、1123、1124、1126、1127、1
128、1131、1132、1133、1134、1135、1136、1137、1
138、1139、1140、1142、1143、1144、1145、1147、1
148、1149、1151、1152、1153、1154、1155、1156、1
158、1159、1160、1162、1164、1165、1166、1167、1
168、1169、1170、1171、1172、1173、1175、1176、1
179、1180、1181、1182、1183に記載されている17~20個の近接
しているヌクレオチドの配列中の17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含
む。本発明のいかなる実施形態においても、RNA分子のガイド配列部は、配列番号:1
~1192の任意の単一の配列に、又は配列の上記グループからの任意の単一の配列に、
記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドを含んでもよいと理解される。
【0140】
本明細書において使用するとき、配列番号に記載されている「近接しているヌクレオチ
ド」は、いかなるヌクレオチドも介在しないで配列番号に記載されている順序のヌクレオ
チドの配列であるヌクレオチドを指す。
【0141】
本発明の実施形態において、ガイド配列部は、長さが20個のヌクレオチドであっても
よく、配列番号:1~1192の任意の1つに記載されている20個の近接しているヌク
レオチドの配列である20個のヌクレオチドから構成される。本発明の実施形態において
、ガイド配列部は、長さが20個のヌクレオチドより短くてもよい。例えば、本発明の実
施形態において、ガイド配列部は、長さが17、18又は19個のヌクレオチドであって
もよい。このような実施形態において、ガイド配列部は、それぞれ配列番号:1~119
2の任意の1つに記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドの配列中の、
17、18又は19個のヌクレオチドから構成されてもよい。例えば、配列番号:1に記
載されている17個の近接しているヌクレオチドの配列である17個のヌクレオチドを有
するガイド配列部は、以下のヌクレオチド配列の任意の1つから構成されてもよい(近接
している配列から除外されるヌクレオチドを取り消し線で印をつけた)。
【0142】
本発明の実施形態において、ガイド配列部は、長さが20個のヌクレオチドより長くて
もよい。例えば、本発明の実施形態において、ガイド配列部は、長さが21、22、23
又は24個のヌクレオチドであってもよい。このような実施形態において、ガイド配列部
は、配列番号:1~1192の任意の1つに記載されている20個の近接しているヌクレ
オチドの配列である20個のヌクレオチド及び標的配列の3’末端、標的配列の5’末端
又は両方に隣接するヌクレオチド又はヌクレオチドの配列に完全に相補的な追加のヌクレ
オチドを含む。
【0143】
本発明の実施形態において、CRISPRヌクレアーゼ及びガイド配列部を含むRNA
分子は、標的DNA配列に結合して標的DNA配列の切断を引き起こすCRISPR複合
体を形成する。Cpfl等の、CRISPRヌクレアーゼは、さらにtracrRNA分
子なしでCRISPRヌクレアーゼ及びRNA分子を含むCRISPR複合体を形成して
もよい。あるいは、Cas9等の、CRISPRヌクレアーゼは、CRISPRヌクレア
ーゼ、RNA分子及びtracrRNA分子の間でCRISPR複合体を形成してもよい
【0144】
本発明の実施形態において、RNA分子は、さらにtracrRNA分子の配列を含ん
でもよい。このような実施形態を、RNA分子のガイド部とトランス活性化型crRNA
(tracrRNA)の合成融合物として設計してもよい。(Jinek(2012)S
cience参照)。本発明の実施形態は、また別々のtracrRNA分子及びガイド
配列部を含む別々のRNA分子を利用してCRISPR複合体を形成してもよい。このよ
うな実施形態において、tracrRNA分子は、RNA分子と塩基対形成を介してハイ
ブリッドを形成してもよく、本明細書に記載される発明の特定の応用において有利になる
ことができる。
【0145】
用語「tracrメイト配列」は、tracrRNAと塩基対形成を介してハイブリッ
ドを形成し、CRISPR複合体の形成を促進するようtracrRNA分子と十分に相
補的な配列を指す。(US8906616参照)。本発明の実施形態において、RNA分
子は、tracrメイト配列を有する部分をさらに含んでもよい。
【0146】
本発明の実施形態によれば、RNA分子は、長さが300、290、280、270、2
60、250、240、230、220、210、200、190、180、170、1
60、150、140、130、120、110又は100個のヌクレオチドまでであっ
てもよい。各可能性は、別々の実施形態を表す。本発明の実施形態において、RNA分子
は、長さが17~300個のヌクレオチド、長さが100~300個のヌクレオチド、長
さが150~300個のヌクレオチド、長さが200~300個のヌクレオチド、長さが
100~200個のヌクレオチド又は長さが150~250個のヌクレオチドであっても
よい。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0147】
本開示の目的においては、「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域、及び遺
伝子産物の合成を調節する全てのDNA領域を含み、このような調節配列はコード及び/
又は転写配列に隣接してもしなくてもよい。したがって、遺伝子は、プロモーター配列、
ターミネーター、リボソーム結合部位及び内部リボソーム進入部位等の翻訳調節配列、エ
ンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界領域、複製開始点、マトリックス結合
領域及び遺伝子座調節領域を含むが、かならずしもこれらに限定されるものではない。
【0148】
「真核」細胞は、真菌細胞(酵母菌等)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞及びヒト
細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0149】
本明細書において使用するとき、用語HSPCは、造血幹細胞及び造血幹前駆細胞の両
方を指す。幹細胞の非限定的な例は、骨髄細胞、骨髄系前駆細胞、多能性前駆細胞、系統
限定前駆細胞を含む。
【0150】
本明細書において使用するとき、「前駆細胞」は、幹細胞に由来し、有糸分裂能力及び
多分化能(例えば、1つより多いが全ての種類ではない細胞の成熟系統へと分化又は発達
することができる)を保持する系統細胞を指す。本明細書において使用するとき、「造血
」又は「赤血球産生」は、各種種類の血液細胞(例えば、赤血球、巨核球、骨髄球(例え
ば、単球、マクロファージ及び好中球)ならびにリンパ球)ならびに体内(骨髄中等)で
形成される他の要素を指す。
【0151】
用語「ヌクレアーゼ」は、本明細書において使用するとき、核酸のヌクレオチドサブユ
ニット間のホスホジエステル結合を開裂することができる酵素を指す。ヌクレアーゼは、
天然源から分離されても由来してもよい。天然源は、任意の生存生物であってもよい。あ
るいは、ヌクレアーゼは、ホスホジエステル結合開裂能を保持する改変又は合成タンパク
質であってもよい。ヌクレアーゼ、例えば、CRISPRヌクレアーゼを使用して遺伝子
改変を成し遂げることができる。
【0152】
本発明の実施形態において、RNA分子は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在
するヘテロ接合性多型部位を標的とするよう設計され、RNA分子は、ELANE遺伝子
の変異対立遺伝子に存在するヘテロ接合性多型部位のヌクレオチド塩基、REF又はAL
Tを標的とする。
【0153】
本開示は、一方の対立遺伝子は変異が疾患表現型を生じる変異タンパク質をコードする
ような変異を保持し(「変異対立遺伝子」)、他方の対立遺伝子は機能性タンパク質をコ
ードする(「機能性対立遺伝子」)、遺伝子の2個の対立遺伝子間を識別/区別するため
に少なくとも1つの自然発生のヌクレオチドの差又は遺伝子多型(一塩基多型(SNP)
等)を利用する方法を提供する。方法は、変異タンパク質の発現をノックアウトし、機能
性タンパク質の発現を許容するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、方
法は、ドミナントネガティブな遺伝性障害を治療、寛解又は予防するための方法である。
【0154】
本発明の実施形態は、ある一定の細胞又は対象においてドミナントな変異対立遺伝子を
発現する遺伝子の少なくとも1つのヘテロ接合性SNPを利用する方法を提供する。本発
明の実施形態において、利用されるSNPは、疾患表現型と関連してもしなくてもよい。
本発明の実施形態において、ガイド配列を含むRNA分子は、遺伝子の変異対立遺伝子中
のヘテロ接合性SNPに存在し、したがって遺伝子の機能性対立遺伝子中の異なるヌクレ
オチド塩基を有するヌクレオチドを標的とすることにより遺伝子の変異対立遺伝子を標的
とする。
【0155】
本発明の実施形態によれば、第1のRNA分子は、ELANE遺伝子のエキソン又はプ
ロモーターに存在する第1のヘテロ接合性SNPを標的とし、第1のRNA分子は、EL
ANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在する第1のSNPのヌクレオチド塩基、REF又は
ALTを標的とし、第2のRNA分子は、ELANE遺伝子の同一の又は異なるエキソン
又はイントロンに存在する第2のヘテロ接合性SNPを標的とし、第2のRNA分子は、
ELANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在する第2のSNPのヌクレオチド塩基、REF
又はALTを標的とするか、又は第2のRNA分子は、変異対立遺伝子又は機能性対立遺
伝子の両方に存在する非コード領域の配列を標的とする。
【0156】
本発明の実施形態によれば、第1のRNA分子又は第1及び第2のRNA分子は、EL
ANE遺伝子のプロモーター領域、開始コドンまたは非翻訳領域(UTR)に存在するヘ
テロ接合性SNPを標的とし、RNA分子は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在
するSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0157】
本発明の実施形態によれば、第1のRNA分子又は第1及び第2のRNA分子は、EL
ANE遺伝子の変異対立遺伝子の少なくともプロモーターの一部及び/又は開始コドン及
び/又はUTRの一部を標的とする。
【0158】
本発明の実施形態によれば、第1のRNA分子は、プロモーターの一部、ELANE遺
伝子のプロモーターに存在する第1のヘテロ接合性SNP、又はELANE遺伝子のプロ
モーターの上流に存在するヘテロ接合性SNPを標的とし、第2のRNA分子は、第2の
ヘテロ接合性SNPを標的とし、この第2のヘテロ接合性SNPは、第1のヘテロ接合性
SNPの下流のELANE遺伝子に存在し、ELANE遺伝子のプロモーター、UTRも
しくはイントロン又はエキソンにあり、第1のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異対
立遺伝子に存在する第1のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とし、第
2のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在する第2のSNPのヌクレ
オチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0159】
本発明の実施形態によれば、第1のRNA分子は、ELANE遺伝子のプロモーター、
プロモーターの上流、又はUTRに存在するヘテロ接合性SNPを標的とし、RNA分子
は、ELANE遺伝子の変異誘発遺伝子に存在するSNPのヌクレオチド塩基、REF又
はALTを標的とし、第2のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子及び機能
性対立遺伝子の両方のイントロンに存在する配列を標的とするよう設計される。
【0160】
本発明の実施形態によれば、第1のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子
又は機能性対立遺伝子の両方に存在するプロモーターの上流の配列を標的とし、第2のR
NA分子は、ELANE遺伝子の任意の位置に存在するヘテロ接合性SNPを標的とし、
第2のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在するSNPのヌクレオチ
ド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0161】
本発明の実施形態によれば、変異対立遺伝子から疾患発症性の変異を含むエキソンを除
去することであって、第1のRNA分子又は第1及び第2のRNA分子は、エキソンのエ
キソン全体又は一部に隣接している領域を標的とする、ことを含む方法が提供される。
【0162】
本発明の実施形態によれば、遺伝子のオープンリーディングフレーム全体、複数のエキ
ソンを除去すること、又は遺伝子全体を除去すること、を含む方法が提供される。
【0163】
本発明の実施形態によれば、第1のRNA分子はELANE遺伝子のエキソン又はプロ
モーターに存在する第1のヘテロ接合性SNPを標的とし、第2のRNA分子は、ELA
NE遺伝子の同一の又は異なるエキソン又はイントロンに存在する第2のヘテロ接合性S
NPを標的とし、第2のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在する第
2のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とするか、又は第2のRNA分
子は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子又は機能性対立遺伝子の両方に存在するイント
ロンの配列を標的とする。
【0164】
本発明の実施形態によれば、第1のRNA分子又は第1及び第2のRNA分子は、変異
対立遺伝子のエキソン及びイントロンの間の選択的スプライシングシグナル配列を標的と
する。
【0165】
本発明の実施形態によれば、第2のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子
と機能性対立遺伝子の両方に存在する配列を標的とする。
【0166】
本発明の実施形態によれば、第2のRNA分子は、イントロンを標的とする。
【0167】
本発明の実施形態によれば、エラープローン非相同末端結合(NHEJ)機構により変
異対立遺伝子に挿入又は欠失を受けさせ、変異対立遺伝子の配列にフレームシフトを生じ
させることを含む方法が提供される。
【0168】
本発明の実施形態によれば、フレームシフトは、変異対立遺伝子の不活性化又はノック
アウトを生じる。
【0169】
本発明の実施形態によれば、フレームシフトにより変異対立遺伝子中に早期の終止コド
ンが作成される。
【0170】
本発明の実施形態によれば、フレームシフトにより変異対立遺伝子の転写物にナンセンス
変異依存mRNA分解機構が生じる。
【0171】
本発明の実施形態によれば、不活性化又は治療により変異対立遺伝子によってコードさ
れる切断型タンパク質及び機能性対立遺伝子によってコードされる機能性タンパク質が生
じる。
【0172】
本開示の組成物及び方法は、SCN又はCyNを治療、予防、寛解又は悪化を遅くする
ために利用されてもよい。
【0173】
いくつかの実施形態において、細胞に、ELANE遺伝子のプロモーター領域、開始コ
ドン又は非翻訳領域(UTR)に存在するヘテロ接合性SNPを標的とするRNA分子を
送達することにより変異対立遺伝子を不活性化し、RNA分子は、ELANE遺伝子の変
異対立遺伝子に存在するSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0174】
いくつかの実施形態において、変異対立遺伝子は、少なくともプロモーターの一部を除
去すること及び/又は開始コドン及び/又はUTRの一部を除去することにより不活性化
される。いくつかの実施形態において、変異対立遺伝子を不活性化する方法は、少なくと
もプロモーターの一部を除去することを含む。このような実施形態において、1つのRN
A分子は、ELANE遺伝子のプロモーター又はプロモーターの上流に存在する第1のヘ
テロ接合性SNPを標的とするよう設計され、別のRNA分子は、第2のヘテロ接合性S
NPを標的とし、この第2のヘテロ接合性SNPは、第1のSNPの下流であり、ELA
NE遺伝子のプロモーター、UTRもしくはイントロン又はエキソンに存在する。あるい
は、1つのRNA分子は、ELANE遺伝子のプロモーター又はプロモーターの上流もし
くはELANE遺伝子のUTRに存在するヘテロ接合性SNPを標的とするよう設計され
てもよく、別のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子及び機能性対立遺伝子
の両方のイントロンに存在する配列を標的とするよう設計される。あるいは、1つのRN
A分子は、変異対立遺伝子及び機能性対立遺伝子の両方に存在するプロモーターの上流の
配列を標的とするよう設計されてもよく、他のガイドは、ELANE遺伝子のエキソン、
イントロン、UTR又はプロモーターの下流等の、ELANE遺伝子の任意の位置に存在
するヘテロ接合性SNPを標的とするよう設計され、RNA分子は、ELANE遺伝子の
変異対立遺伝子に存在するSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0175】
いくつかの実施形態において、変異対立遺伝子を不活性化する方法は、変異対立遺伝子
から疾患発症性の変異を含むエキソンを除去するステップを含むエキソンスキッピングス
テップを含む。変異対立遺伝子の疾患発症性の変異を含むエキソンを除去するには、エキ
ソンのエキソン全体又は一部に隣接している領域を標的とする2個のRNA分子が必要と
される。疾患発症性の変異を含むエキソンの除去は、野生型の活性の一部又は全てを保持
する残りのタンパク質生成物の発現を許容しながらタンパク質の疾患発症活性を除去する
よう設計されてもよい。単一のエキソンスキッピングの代わりとして、複数のエキソン、
オープンリーディングフレーム全体又は遺伝子全体を、切除されることが望まれる領域に
隣接している2個のRNA分子を使用して切除することができる。
【0176】
いくつかの実施形態において、変異対立遺伝子を不活性化する方法は、2個のRNA分
子を細胞に送達することを含み、1つのRNA分子は、ELANE遺伝子のエキソン又は
プロモーターに存在する第1のヘテロ接合性SNPを標的とし、RNA分子は、ELAN
E遺伝子の変異対立遺伝子に存在する第1のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はAL
Tを標的とし、他のRNA分子は、ELANE遺伝子の同一の又は異なるエキソン又はイ
ントロンに存在する第2のヘテロ接合性SNPを標的とし、RNA分子は、ELANE遺
伝子の変異対立遺伝子に存在する第2のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを
標的とするか、又は第2のRNA分子は、変異対立遺伝子又は機能性対立遺伝子の両方に
存在するイントロンの配列を標的とする。
【0177】
いくつかの実施形態において、RNA分子を、CRISPRヌクレアーゼが変異対立遺
伝子のエキソン及びイントロンの間の選択的スプライシングシグナル配列を標的とし、そ
れにより変異対立遺伝子の選択的スプライシングシグナル配列を破壊するために使用する
【0178】
変異対立遺伝子を不活性化するための上述した戦略の任意の1つ又は組み合わせを、本
発明の文脈において使用してもよい。
【0179】
変異対立遺伝子を不活性化するために、さらなる戦略を使用してもよい。例えば、本発
明の実施形態において、RNA分子は、二本鎖切断(DSB)を生じさせるためにCRI
SPRヌクレアーゼを変異対立遺伝子のエキソン又はスプライス部位に向けさせ、エラー
プローン非相同末端結合(NHEJ)機構によりヌクレオチドを挿入又は欠失させ、変異
対立遺伝子のフレームシフト変異を形成させるために使用される。フレームシフト変異に
より、(1)変異対立遺伝子に早期の終止コドンが作成されることにより変異対立遺伝子
が不活性化するかノックアウトされ、切断型タンパク質が作成されてもよく、又は(2)
変異対立遺伝子の転写物にナンセンス変異依存mRNA分解機構が生じてもよい。さらな
る実施形態において、1つのRNA分子は、CRISPRヌクレアーゼを変異対立遺伝子
のプロモーターに向けさせるために使用される。
【0180】
いくつかの実施形態において、変異対立遺伝子を不活性化する方法は、機能性タンパク
質の活性を活性化/増強することができる、タンパク質/ペプチド、タンパク質/ペプチ
ドをコードする核酸又は化学物質等の小分子を提供すること等により機能性タンパク質の
活性を増強することをさらに含む。
【0181】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、CRISPRヌクレアーゼ等の、RNAがガ
イドするDNAヌクレアーゼと結合する/関連している及び/又はCRISPRヌクレア
ーゼ等の、RNAがガイドするDNAヌクレアーゼを関心のある遺伝子の変異対立遺伝子
と機能性対立遺伝子との間に差がある少なくとも1つのヌクレオチド(ヘテロ接合性SN
P等)を含む配列(機能性対立遺伝子には存在しない変異対立遺伝子の配列等)に向けさ
せるRNA分子を提供する。
【0182】
いくつかの実施形態において、方法は、関心のある遺伝子の変異対立遺伝子を対立遺伝
子特異的RNA分子及びCas9タンパク質等の、CRISPRヌクレアーゼと接触する
ステップを含み、対立遺伝子特異的RNA分子及びCas9タンパク質等の、CRISP
Rヌクレアーゼは、関心のある遺伝子の機能性対立遺伝子のヌクレオチド配列と少なくと
も1つのヌクレオチドだけ異なる、関心のある遺伝子の変異対立遺伝子のヌクレオチド配
列と結合し、それによって変異対立遺伝子を改変又はノックアウトする。
【0183】
いくつかの実施形態において、対立遺伝子特異的RNA分子及びCRISPRヌクレア
ーゼは、関心のある遺伝子をコードする細胞に導入される。いくつかの実施形態において
、関心のある遺伝子をコードする細胞は、哺乳類対象にある。いくつかの実施形態におい
て、関心のある遺伝子をコードする細胞は、植物にある。
【0184】
いくつかの実施形態において、開裂した変異対立遺伝子は、エラープローン非相同末端
結合(NHEJ)機構により挿入又は欠失を受けさせ(インデル)、変異対立遺伝子の配
列にフレームシフトを生成する。いくつかの実施形態において、生成されたフレームシフ
トにより、変異対立遺伝子の不活性化又はノックアウトが生じる。いくつかの実施形態に
おいて、生成されたフレームシフトにより変異対立遺伝子中に早期の終止コドンが作成さ
れ、切断型タンパク質が生成する。このような実施形態において、方法は、変異対立遺伝
子によってコードされた切断型タンパク質及び機能性対立遺伝子によってコードされた機
能性タンパク質を生じる。いくつかの実施形態において、本発明の方法を使用して変異対
立遺伝子に生成されたフレームシフトにより、変異対立遺伝子の転写物にナンセンス変異
依存mRNA分解機構が生じる。
【0185】
いくつかの実施形態において、変異対立遺伝子は、「好中球エラスターゼ」遺伝子(E
LANE遺伝子)の対立遺伝子である。いくつかの実施形態において、RNA分子は、S
CN又はCyN遺伝性障害に関連する変異配列と共存する/関連づけられるELANE遺
伝子のヘテロ接合性SNPを標的とする。いくつかの実施形態において、RNA分子は、
ELANE遺伝子のヘテロ接合性SNPを標的とし、上記SNPのヘテロ接合性は、集団
内で高度に蔓延している。本発明の実施形態において、REFヌクレオチドは、治療すべ
き個々の対象の変異対立遺伝子には蔓延しているが、機能性対立遺伝子には蔓延していな
い。本発明の実施形態において、ALTヌクレオチドは、治療すべき個々の対象の変異対
立遺伝子には蔓延しているが、機能性対立遺伝子には蔓延していない。いくつかの実施形
態において、変異ELANE遺伝子内の疾患発症性の変異が標的とされる。
【0186】
本発明の実施形態において、ヘテロ接合性SNPは、ELANE関連疾患表現型に関連
していてもしていなくてもよい。本発明の実施形態において、ヘテロ接合性SNPは、E
LANE関連疾患表現型に関連している。本発明の実施形態において、SNPは、ELA
NE関連疾患表現型に関連していない。
【0187】
いくつかの実施形態において、ヘテロ接合性SNPは、関心のある遺伝子のエキソン内
にある。このような実施形態において、RNA分子のガイド配列部は、関心のある遺伝子
のエキソンを標的とするよう設計されてもよい。
【0188】
いくつかの実施形態において、ヘテロ接合性SNPは、関心のある遺伝子のイントロン
又はエキソン内にある。いくつかの実施形態において、ヘテロ接合性SNPは、イントロ
ンとエキソンの間のスプライス部位にある。いくつかの実施形態において、ヘテロ接合性
SNPは、関心のある遺伝子のPAM部位にある。
【0189】
当業者は、本発明の実施形態の各々において、個別に、本発明のRNA分子の各々は、
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接する関心のある標的ゲノムDNA配列に
関連しているような、CRISPRヌクレアーゼ等の、ヌクレアーゼと複合体を形成する
ことができることを、理解するであろう。次にヌクレアーゼは、標的DNAの開裂を媒介
してプロトスペーサー内部に二本鎖切断を作成する。したがって、本発明の実施形態にお
いて、本発明のガイド配列とRNA分子は、PAM部位から1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21
、22、23、24、25、26、27又は28ヌクレオチド上流又は下流の位置を標的
としてもよい。
【0190】
それゆえに、本発明の実施形態において、CRISPRヌクレアーゼ等の、ヌクレアー
ゼと複合体を形成している本発明のRNA分子は、標的部位から1、2、3、4、5、6
、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、
21、22、23、24、25、26、27、28遺伝子上流又は下流の対立遺伝子で二
本鎖切断に影響してもよい。当業者は、ヘテロ接合性多型部位が存在し、標的を明確化す
るために使用されるならば、RNA分子は、ヘテロ接合性多型部位のREF又はALTヌ
クレオチド塩基のみを標的として二本鎖切断に影響するよう設計されてもよいことを理解
するであろう。
【0191】
ヘテロ接合性多型部位がPAM部位内部にあるならば、RNA分子は、PAM部位から
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、1
7、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27又は28ヌクレオチ
ド上流又は下流の配列を標的とするよう設計されてもよく、RNA分子とヌクレアーゼの
複合体は、PAM部位のヘテロ接合性多型部位のREF又はALTヌクレオチド塩基の1
つのみを標的としてPAM部位での切断に影響するよう設計され、例えばtracrRN
Aは、ヘテロ接合性多型部位のREF又はALTヌクレオチド塩基の1つを標的とするよ
う設計されることが理解される。
【0192】
本発明の実施形態において、RNA分子は、ELANE遺伝子に存在するヘテロ接合性
多型部位を標的とするよう設計され、RNA分子及び/又はRNA分子及びCRISPR
ヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子に存在するヘテロ接合性多
型部位のヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とするよう設計される。
【0193】
本発明の実施形態において、RNA分子、組成物、方法、細胞、キット又は薬物は、ヘ
テロ接合体ELANE遺伝子に起因する疾患表現型を有する対象を治療するために利用さ
れる。本発明の実施形態において、疾患は、SCN又はCyNである。このような実施形
態において、方法は、疾患表現型を改善、寛解又は予防する。
【0194】
本発明の実施形態において、本発明のRNA分子、組成物、方法、細胞、キット又は薬
物は、対象を治療するにSCN又はCyNのための第2の治療と組み合わせて使用される
。本発明の実施形態において、本発明のRNA分子、組成物、方法、細胞、キット又は薬
物は、第2の治療の投与前に、第2の治療の投与中に及び/又は第2の治療の投与後に投
与される。
【0195】
本発明の実施形態において、本発明のRNA分子、組成物、方法、細胞、キット又は薬
物は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)治療と組み合わせて投与される。
【0196】
上記の実施形態は、CRISPRヌクレアーゼ、RNA分子(類)及びtracrRN
A分子が対象又は細胞内で同時に効果的であることを指す。CRISPR、RNA分子(
類)及びtracrRNA分子を実質的に同時に送達することができ、又は異なる時点で
送達できるが同時に効果を持つことができる。例えば、これには、RNA分子及び/又は
tracrRNA分子が対象又は細胞内に実質的に現存する前に、CRISPRヌクレア
ーゼを対象又は細胞に送達することが含まれる。
【0197】
本発明の実施形態によれば、細胞の、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化す
るための方法であって、方法は、
a)SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有し、rs104l48
37、rs3761005、rs1683564、rs9749274、rs74002
l、rs201048029、rs199720952、rs2859l229、rs7
l335276、rs58082l77、rs3826946、rs104l3889、
rs761481944、rs376l008、rs10409474、rs376l0
07、rs17216649、rs10469327、rs8107095、rs104
24470及びrs78302854から成る群から選択されるELANE遺伝子の1つ
又は複数の多型部位でヘテロ接合性である細胞を選択すること、
b)細胞に
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、細胞のELANE遺伝子
の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響するが、細胞のELANE遺伝子の機能性対
立遺伝子における二本鎖切断には影響しない、導入すること、を含み、
それにより細胞内のELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化する、方法を提供す
る。
【0198】
本発明の実施形態によれば、細胞の、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化す
るための方法であって、方法は、
a)SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有し、rs104l48
37、rs3761005、rs1683564、rs9749274、rs74002
l、rs201048029、rs199720952、rs2859l229、rs7
l335276、rs58082l77、rs3826946、rs104l3889、
rs761481944、rs376l008、rs10409474、rs376l0
07、rs17216649、rs10469327、rs8107095、rs104
24470及びrs78302854から成る群から選択されるELANE遺伝子の1つ
又は複数の多型部位でヘテロ接合性である細胞を選択するステップ、
b)細胞に
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入するステップであって、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、細胞のELANE遺伝子
の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響するが、ELANE遺伝子の機能性対立遺伝
子における二本鎖切断には影響しない、ステップを含み、
方法はさらに、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列
部を含む第2のRNA分子を導入することを含み、第2のRNA分子とCRISPRヌク
レアーゼとの複合体は、ELANE遺伝子における第2の二本鎖切断に影響し、
それにより細胞内のELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化する、方法を提供す
る。
【0199】
本発明の実施形態によれば、細胞の、SCN又はCyNに関連している変異を有するE
LANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化するための方法であって、細胞は、rs10
4l4837、rs3761005、rs1683564、rs9749274、rs7
4002l、rs201048029、rs199720952、rs2859l229
、rs7l335276、rs58082l77、rs3826946、rs104l3
889、rs761481944、rs376l008、rs10409474、rs3
76l007、rs17216649、rs10469327、rs8107095、r
s10424470及びrs78302854から成る群から選択されるELANE遺伝
子の1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性であり、方法は、
細胞に
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することであって、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、ELANE遺伝子の変異
対立遺伝子における二本鎖切断に影響する、導入すること、を含み、
それにより細胞内のELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化する、方法を提供す
る。
【0200】
本発明の実施形態によれば、細胞の、SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝
子変異を有し、rs104l4837、rs3761005、rs1683564、rs
9749274、rs74002l、rs201048029、rs199720952
、rs2859l229、rs7l335276、rs58082l77、rs3826
946、rs104l3889、rs761481944、rs376l008、rs1
0409474、rs376l007、rs17216649、rs10469327、
rs8107095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選
択されるELANE遺伝子の1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性であるELANE遺
伝子の変異対立遺伝子を不活性化するための方法であって、方法は、
細胞に
CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む
組成物を導入することを含み、
CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体は、ELANE遺伝子の変異
対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
方法はさらに、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列
部を含む第2のRNA分子を導入することを含み、第2のRNA分子とCRISPRヌク
レアーゼとの複合体は、ELANE遺伝子における第2の二本鎖切断に影響し、
それにより細胞内のELANE遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化する、方法を提供す
る。
【0201】
本発明の実施形態において、CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子の複合体
は、細胞のELANE遺伝子の変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響するが、細胞の
ELANE遺伝子の機能性対立遺伝子における二本鎖切断には影響しない。
【0202】
本発明の実施形態において、細胞はまた、rs104l4837、rs376l005
、rs1683564、rs9749274、rs74002l、rs20l04802
9、rs199720952、rs28591229、rs7l335276、rs58
082l77、rs3826946、rs104l3889、rs76l48l944、
rs376l008、rs10409474、rs376l007、rs172l664
9、rs10469327、rs8l07095、rs10424470及びrs783
02854から成る群から選択されるELANE遺伝子の少なくとも1つのさらなる多型
部位でヘテロ接合性である。
【0203】
本発明の実施形態において、SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を
有する細胞は、ELANE遺伝子変異を有する及び/又はSCN又はCyNで苦しんでい
る対象由来であってもよい。したがって、ELANE遺伝子変異を有する細胞を選択する
ことは、ELANE遺伝子変異を有する対象を選択することを含んでもよい。本発明のさ
らなる実施形態において、細胞を選択することは、ELANE遺伝子変異を有する対象由
来の細胞を選択することを含んでもよい。本発明の実施形態において、本主題発明の組成
物を細胞に導入することは、本発明の組成物をELANE遺伝子変異で苦しんでいる対象
の細胞に導入することを含んでもよい。
【0204】
したがって、本発明の実施形態において、細胞の、対象のELANE遺伝子の変異対立
遺伝子を不活性化するであって、方法は、SCN又はCyNを引き起こすELANE遺伝
子変異を有し、rs104l4837、rs376l005、rs1683564、rs
9749274、rs74002l、rs20l048029、rs199720952
、rs2859l229、rs71335276、rs58082l77、rs3826
946、rs104l3889、rs76l48l944、rs376l008、rs1
0409474、rs376l007、rs172l6649、rs10469327、
rs8107095、rs10424470及びrs78302854nから成る群から
選択されるELANE遺伝子の1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である対象を選択
するステップを含む、方法が提供される。
【0205】
したがって、本発明の実施形態は、ELANE遺伝子を求めて対象又は細胞を選別する
ことを包含する。当業者は、非限定的な例として、例えば、sequencing-by
-synthesis、サンガー塩基配列決定法、核型分析、蛍光インサイツハイブリダ
イゼーション法、及び/又はマイクロアレイ試験等の、従来技術のELANE遺伝子内の
変異を選別する方法を容易に理解するだろう。本発明の実施形態においては、ELANE
遺伝子内の変異をエキソン配列決定法により選別する。
【0206】
本発明の実施形態において、対象は、末梢血液中の好中球絶対数(ANC)を測定する
ことによりSCN又はCyNと診断される又は診断された。本発明の実施形態において、
SCNは、対象が生後6か月に達する前に診断される又は診断された。本発明の実施形態
において、CyNは、生後12か月と24か月の間に、又は生後24か月の後に診断され
る又は診断された。本発明の実施形態において、SCN又はCyNは、1つ又は複数の再
発性急性口腔医学的疾患によって診断される。本発明の実施形態において、SCN又はC
yNは、骨髄検査によって診断され、好ましくは、骨髄検査は、細胞遺伝学的骨髄調査で
ある。本発明の実施形態において、SCN又はCyNは、抗好中球抗体アッセイ、免疫グ
ロブリンアッセイ(Ig GAM)、リンパ球免疫表現型検査、膵臓マーカー(血清トリ
プシノーゲン及び糞便エラスターゼ)並びに脂溶性ビタミンレベル(ビタミンA、E及び
D)のうちの1つ又は複数によって診断される。全ての診断方法を他のいかなる診断方法
とともに使用してもよいことが理解される。
【0207】
本発明の実施形態において、SCN又はCyNと診断された対象は、ELANE遺伝子
のELANE病原性変異を同定するためにエキソンシーケンシングにより選別される。さ
らなる実施形態において、対象は、表1の少なくとも1つのSNPのヘテロ接合性を確認
するためにサンガーシーケンシングにより選別される。本発明の実施形態において、SN
Pは、rs1683564、rsI04l4837及びrs3761005のうちの1つ
である。本発明の実施形態において、ELANE遺伝子の変異対立遺伝子のヘテロ接合性
SNPのヌクレオチドは、BAC bioを使用して決定される。本発明の実施形態にお
いて、表2にしたがって適切なガイドを選択する。本発明の実施形態において、選択され
たガイドは、対象から取得した、PBMC等の、細胞に導入され、細胞の病原性ELAN
E変異の減少は、次世代シーケンス技術等によって測定される。
【0208】
CR1SPR/Cas9遺伝子編集システムを用いると、ヌクレアーゼを疾患発症性の
変異に立ち向かう配列特異的な様式で標的部位を標的とすることができる。造血幹細胞・
前駆細胞(HSPC)は自己複製と分化の両方の能力があるので(Yu,Natanso
n,and Dunbar 2016)、治療可能性がある。したがって、本発明の実施
形態は、ゲノム編集をHSPCに適用する。
【0209】
本発明の実施形態において、自家製治療では、SCN又はCyNと診断された患者由来
のCRISPR/Cas9で編集した自家CD34+造血幹細胞を利用する。本発明の実
施形態において、CD34+細胞は、骨髄又は患者にアフェレシスした後の末梢血単核球
(PBMC)から単離される。
【0210】
SCN又はCyN等の、ドミナントネガティブ(又は複合ヘテロ接合性)の徴候がある
場合、戦略は、変異対立遺伝子を編集することであり、ヘテロ接合性SNP配列を標的と
することにより変異していない対立遺伝子又は他のオフターゲットの開裂を避けることで
ある。
【0211】
本発明の実施形態は、以下のステップを含む。
本明細書の以下の表1のSNPのうちの少なくとも1つがヘテロ接合性を示すと同定され
たSCN又はCyNと診断された患者の選択。本発明の実施形態において、対象は、rs
104l4837、rs376l005又はrs1683564でヘテロ接合性であり、
候補患者の同定されたヘテロ接合性SNP位置に基づく治療戦略の選択。
末梢血液の吸引によるか又は動員及びアフェレシスによるかのいずれかにより対象の骨髄
からHSPC細胞を取得する、任意選択で、HSPC細胞を処理する(濃縮する、刺激す
る、両方等)

HSPC細胞に(エクスビボエレクトロポレーション等により)
CRISPRヌクレアーゼ又は同一物をコードする配列(mRNA等)、
変異対立遺伝子の同定されたヘテロ接合性SNPの特定の配列(REF/ALT配列)を
標的とする特徴的なRNA分子及び
変異対立遺伝子と他の対立遺伝子の両方に共通である、イントロン3、イントロン4又は
3’UTR中の配列を標的とする非特徴的なRNA分子を含む組成物を導入し、
それによりHSPC細胞を編集してELANEの変異対立遺伝子発現をノックアウトする
。そして
編集したHSPCを候補患者に導入する。
【0212】
本発明の実施形態において、CD34+細胞を、骨髄又は患者アフェレシス後の末梢血
単核球(PBMC)から分離してもよい。骨髄又はPBMCを、HSPC動員後のアフェ
レシスにより患者から収集してもよい。本発明の実施形態において、アフェレシス生成物
を洗浄して血小板を除去してもよく、CliniMACSシステム(Miltenyi
Biotec)等を使用する生成により、CD34+細胞集団を濃縮してもよい。本発明
の実施形態において、選択された細胞を、組換えヒトサイトカインの混合物等により、エ
クスビボで予備刺激してもよい。本発明の実施形態において、細胞は、エレクトロポレー
ションを受けてもよい。本発明の実施形態において、エレクトロポレーションの前に、刺
激した細胞(CD34+細胞等)、CRISPRヌクレアーゼ、mRNA及びgRNAを
、限定条件下でプレインキュベートしてもよい。本発明の実施形態において、細胞を、C
RISPRヌクレアーゼ、mRNA/gRNA混合物により又は組み立て済みRNP(C
RISPRヌクレアーゼタンパク質であるリボヌクレアーゼタンパク質及びgRNA)に
よりエクスビボでエレクトロポレーションし、その後細胞洗浄する。本発明の実施形態に
おいて、細胞を、最終製剤へと懸濁する。本発明の実施形態において、細胞を再懸濁して
もよい。本発明の実施形態において、再懸濁した細胞を注入用バッグへと充填してもよい
。本発明の実施形態において、バッグをコントロールレートフリーザーのフリーズダウン
ステップを使用して凍結しても及び/又は気相の液体窒素内で保存してもよい。本発明の
実施形態において、製品を静脈内(IV)投与により患者に投与してもよい。
【0213】
ドミナントな遺伝性障害
当業者は、いかなる種類のヘテロ接合体遺伝性障害(ドミナントな遺伝性障害等)の全
ての対象も本明細書において記載される方法を受けてもよいことを理解するであろう。1
つの実施形態において、本発明を、例えばSCN又はCyN等のドミナントな遺伝性障害
に関与する、関連している又は原因となる遺伝子を標的とするために使用してもよい。い
くつかの実施形態において、ドミナントな遺伝性障害は、SCN又はCyNである。いく
つかの実施形態において、標的遺伝子は、ELANE遺伝子(Entrez Gene,
gene ID No:335)である。
【0214】
CRISPRヌクレアーゼ及びPAM認識
いくつかの実施形態において、配列特異的ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ
又はその機能性バリアントから選択される。いくつかの実施形態において、配列特異的ヌ
クレアーゼは、RNAでガイドされたDNAヌクレアーゼである。このような実施形態に
おいて、RNAでガイドされたDNAヌクレアーゼをガイドするRNA配列(Cpfl等
)は、このRNAでガイドされたDNAヌクレアーゼに結合する及び/又はこのRNAで
ガイドされたDNAヌクレアーゼを変異対立遺伝子とその対応物である機能性対立遺伝子
との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチド(SNP等)を含む配列に向けさせる。い
くつかの実施形態において、CRISPR複合体は、さらにtracrRNAを含まない
。非限定的な例において、RNAでガイドされたDNAヌクレアーゼはCRISPRヌク
レアーゼであるが、ドミナントな変異対立遺伝子と機能性対立遺伝子との間で異なる少な
くとも1つのヌクレオチドは、PAM部位内部にあっても及び/又はRNA分子がハイブ
リッド形成するよう設計された領域内部のPAM部位に近位であってもよい。当業者は、
RNA分子を、従来技術において周知の方法によりゲノム内の選択した標的と結合するよ
う操作することができることを理解するであろう。
【0215】
本発明の実施形態において、タイプIIのCRISPRシステムでは、成熟型crRN
Aを利用する、つまり追加の標的認識要求として、tracrRNA複合体がCas9等
の、CRISPRヌクレアーゼをcrRNAと、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM
)に隣接するプロトスペーサーに接する標的DNAのプロトスペーサーとの間のワトソン
・クリック塩基対形成を介して標的DNAに向かわせる。次に、CRISPRヌクレアー
ゼは、標的DNAの開裂を媒介してプロトスペーサー内部に二本鎖切断を作成する。当業
者は、本発明の操作されたRNA分子の各々がプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)
に接する関心のある標的ゲノムDNA配列と関連するように、例えばPAMが、非限定的
な例として、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)Cas
9 WT(SpCAS9)についてはNGG又はNAG、「N」は任意の核酸塩基であり
、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(SaCas9)に
ついてはNNGRRT、空腸(Jejuni)Cas9 WTについてはNNNVRYM
、SpCas9-VQRバリアントについてはNGAN又はNGNG、SpCas9-V
RERバリアントについてはNGCG、SpCas9-EQRバリアントについてはNG
AG、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(NmCas9)に
ついてはNNNNGATT又はCpflについてはTTTV等、利用されるCRISPR
ヌクレアーゼの種類に関連している配列と適合するようにさらに設計されることを理解す
るであろう。本発明のRNA分子は、各々が1つ又は複数の異なるCRISPRヌクレア
ーゼと組み合わせて複合体を形成するよう設計され、利用されるCRISPRヌクレアー
ゼに対してそれぞれ1つ又は複数の異なるPAM配列を利用して関心のあるポリヌクレオ
チド配列を標的とするよう設計される。
【0216】
いくつかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼ等の、RNAでガイドされた
DNAヌクレアーゼは、DNAを細胞のゲノムの所望の位置で切断させるために使用され
てもよい。最も一般的に使用されるRNAでガイドされたDNAヌクレアーゼは、CRI
SPRシステムに由来するけれども、他のRNAでガイドされたDNAヌクレアーゼも本
明細書において記載されるゲノム編集組成物及び方法において使用するために熟慮される
。例えば、その内容を参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2015-
0211023を参照する。
【0217】
本発明の実施において使用することができるCRISPRシステムは、非常に多岐にわ
たる。CRISPRシステムは、I型、II型、III型又はV型システムとすることが
できる。適切なCRISPRタンパク質の非限定的な例には、Cas3、Cas4、Ca
s5、Cas5e(又はCasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、C
as8al、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、CaslO、Casl
2a、Casl2b、Casl2c、Casl2d、Casl2d、Casl Od、C
asF、CasG、Casli、Csyl、Csy2、Csy3、Csel(又はCas
A)、Cse2(又はCasB)、Cse3(又はCasE)、Cse4(又はCasC
)、Cscl、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm
5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csbl、Csb
2、Csb3,Csxl7、Csxl4、CsxlO、Csxl6、CsaX、Csx3
、Cszl、Csxl5、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4及びCul966が
ある(Koonin 2017等を参照)。
【0218】
いくつかの実施形態において、RNAでガイドされたDNAヌクレアーゼは、II型C
RISPRシステムに由来するCRISPRヌクレアーゼ(Cas9等)である。CRI
SPRヌクレアーゼは、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogene
s)、ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus therm
ophilu)、ストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)、黄色
ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、髄膜炎菌(Neisse
ria meningitidis)、トレポネーマ・デンティコラ(Treponem
a denticola)、ノカルディオプシス ダッソンビエイ(Nocardiop
sis dassonvillei)、ストレプトマイセス プリスチナエスピラリス(
Streptomyces pristinaespiralis)、ストレプトマイセ
ス ヴィリドクロモジネス(Streptomyces viridochromoge
nes)、ストレプトマイセス ヴィリドクロモジネス(Streptomyces v
iridochromogenes)、ストレプトスポランギウム ロセウム(Stre
ptosporangium roseum)、ストレプトスポランギウム ロセウム(
Streptosporangium roseum)、アリサイクロバチルス アシド
カルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、
バシラス シュードミコイデス(Bacillus pseudomycoides)、
バシラス セレニチレデュセンス(Bacillus selenitireducen
s)、エグジゴバクテリウム シビリカム(Exiguobacterium sibi
ricum)、デルブリュッキ菌(Lactobacillus delbruecki
i)、ラクトバシラス サリバリウス(Lactobacillus salivari
us)、ミクロシラ マリナ(Microscilla marina)、バークホルデ
リア バクテリウム(Burkholderiales bacterium)、ポラロ
モナス ナフタレニボラン(Polaromonas naphthalenivora
ns)、ポラロモナス属(Polaromonas sp.)、クロコスファエラ ワト
ソニー(Crocosphaera watsonii)、シアノテス属(Cyanot
hece sp.)、ミクロキスティス エルギノーサ(Microcystis ae
ruginosa)、シネココッカス属(Synechococcus sp.)、アセ
トハロビウム アラビティカム(Acetohalobium arabaticum)
、アンモニフェックス デゲンシ(Ammonifex degensii)、カルディ
セルロシルプター・ベシイ(Caldicelulosiruptor becscii
)、カンディダートゥス デスルフォルディス(Candidatus Desulfo
rudis)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ディフ
ィシル菌(Clostridium difjicile)、フィネゴルディア マグナ
(Finegoldia magna)、(ナトラナエロビウス テルモフィルスムNa
tranaerobius thermophilus)、ペロトマクルム・サーモプロ
ピオニカム(Pelotomaculumthermopropionicum)、アシ
ドチオバシラス カルダス(Acidithiobacillus caldus)、ア
シディチオバチルス フェロオキシダンス(Acidithiobacillus fe
rrooxidans)、アロクロマティウム ビノサム(Allochromatiu
m vinosum)、マリノバクター属(Marinobacter sp.)、ニト
ロソコッカス ハロフィルス(Nitrosococcus halophilus)、
ニトロソコッカス ワトソニ(Nitrosococcus watsoni)、シュー
ドアルテロモナス ハロプランクティス(Pseudoalteromonas hal
oplankti)、クテドノバクテル ラセミファー(Ktedonobacter
racemifer)、メタノハロビウム エベスチガタム(Methanohalob
ium evestigatum)、アナベナ バリアビリス(Anabaena va
riabilis)、ノジュラリア スプミゲナ(Nodularia spumige
na)、ネンジュモ属(Nostoc sp.)、アルトロスピラ マキシマ(Arth
rospira maxima)、アルトロスピラ プラテンシス(Arthrospi
ra platensis)、アルトロスピラ属(Arthrospira sp.)、
リングビア属(Lyngbya sp.)、ミクロコレウス クソノプラステス(Mic
rocoleus chthonoplastes)、オスキラトリア属(Oscill
atoria sp.)、ペトロトーガ モビリス(Petrotoga mobili
s)、テルモシフォ アフリカヌス(Thermosipho africanus)、
アカリオクロリス マリナ(Acaryochloris marina)、フランシセ
ラ cf.ノビシダ Fxl(Francisella cf.novicida Fx
l)、アリサイクロバチルス アシドテレストリス(Alicyclobacillus
acidoterrestris)、オレイフィーラス属(Oleiphilus s
p.)、細菌CC09 39 24、デルタプロテオバクテリア細菌、又は既知のPAM
配列を有するCRISPRヌクレアーゼをコードする任意の種に由来してもよい。無培養
細菌によってコードされたCRISPRヌクレアーゼもまた、本発明の文脈において使用
してもよい(Burstein et al.Nature,2017を参照)。spC
as9 D1135Eバリアント、spCas9 VQRバリアント、spCas9 E
QRバリアント又はspCas9 VRERバリアント等の、既知のPAM配列を有する
CRISPRタンパク質のバリアントもまた、本発明の文脈において使用してもよい。
【0219】
したがって、Cas9タンパク質、修飾Cas9、Cas9のホモログあるいはオルソ
ログ等のあるCRISPRシステムのRNAでガイドされたDNAヌクレアーゼ、又はC
pfl及びそのホモログ並びにオルソログ等の、他の型のCRISPRシステムに属する
他のRNAでガイドされたDNAヌクレアーゼを、本発明の組成物において使用してもよ
い。
【0220】
特定の実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、自然起源のCasタンパク質
の「機能性誘導体」であってもよい。天然配列ポリペプチドの「機能性誘導体」は、天然
配列ポリペプチドと共通した定性的な生物学的特徴を有する化合物である。「機能性誘導
体」には、対応する天然配列ポリペプチドと共通した生物活性を有することを条件として
、天然配列のフラグメント並びに天然配列ポリペプチドの誘導体及びそのフラグメントが
含まれるが、これに限定されるものではない。本明細書において熟慮される生物活性は、
機能性誘導体がDNA基質をフラグメントに加水分解する能力である。用語「誘導体」は
、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、その共有結合的修飾物及びその融合物の両方
を包含する。Casポリペプチドの適切な誘導体又はそのフラグメントには、Casタン
パク質の変異体、融合物、共有結合的修飾物又はそれらのフラグメントが含まれるが、こ
れに限定されるものではない。Casタンパク質又はそのフラグメントを含む、Casタ
ンパク質及びCasタンパク質の誘導体又はそのフラグメントは、細胞から入手可能であ
ってもよく、化学的に合成してもよく、又はこれらの2個の製法の組み合わせによって入
手可能であってもよい。細胞は、自然にCasタンパク質を産生する細胞であってもよく
、又は自然にCasタンパク質を産生し、高い発現レベルで内因性Casタンパク質を産
生するか、内因性Casと同一又は異なるCasをコードする、外因的に導入された核酸
からCasタンパク質を産生するよう遺伝子改変された細胞であってもよい。いくつかの
場合において、この細胞は自然にはCasタンパク質を産生せず、Casタンパク質を産
生するよう遺伝子改変される。
【0221】
いくつかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、Cpflである。Cpf
lは、Tリッチなプロトスペーサー隣接モチーフを利用する単一のRNAでガイドされた
エンドヌクレアーゼである。Cpflは、DNAをねじれ形のDNA二本鎖切断により開
裂する。Acidaminococcus属及びLachnospiraceae属由来
の2個のCpfl酵素が、ヒト細胞において効率的なゲノム編集活性を行うことが証明さ
れている(Zetscheら、(2015)Cell.を参照)。
【0222】
したがって、Cas9タンパク質又は修飾Cas9あるいはCas9のホモログ、オル
ソログ又はバリアント等の、II型CRISPRシステムのRNAでガイドされたDNA
ヌクレアーゼあるいはCpfl及びそのホモログ、オルソログ又はバリアント等の、他の
型のCRISPRシステムに属する他のRNAでガイドされたDNAヌクレアーゼを、本
明細書において使用してもよい。
【0223】
いくつかの実施形態において、ガイド分子は、新規の又は改良された特性を加える1つ
又は複数の化学修飾(例えば、分解からの安定性の改善、ハイブリッドエネルギーの改善
又はRNAでガイドされたDNAヌクレアーゼとの結合特性の改善等)を含む。適切な化
学修飾には、修飾塩基、修飾糖部分又は修飾ヌクレオシド間結合が含まれるがこれに限定
されるものではない。適切な化学修飾の非限定的な例としては、4-アセチルシチジン、
5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、2’-0-メチルシチジン、5-カルボ
キシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジ
ン、ジヒドロウリジン、2’-0-メチルプソイドウリジン、「β、D-ガラクトシルキ
ュェオシン」、2’-0-メチルグアノシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデノシ
ン、1-メチルアデノシン、l-メチルプソイドウリジン、l-メチルグアノシン、1-
メチルイノシン、「2,2-ジメチルグアノシン」、2-メチルアデノシン、2-メチル
グアノシン、3-メチルシチジン、5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、7-
メチルグアノシン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-
チオウリジン、「β、D-マンノシルキューオシン」、5-メトキシカルボニルメチル-
2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、2
-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N-((9-β-D-リボフラノシル
-2-メチルチオプリン-6-イル)カルバモイル)スレオニン、N-((9-β-D-
リボフラノシルプリン-6-イル)N-メチルカルバモイル)スレオニン、ウリジン-5
-オキシ酢酸メチルエステル、ウリジン-5-オキシ酢酸、wybutoxosine、
キューオシン、2-チオシチジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-チオウリジン、
4-チオウリジン、5-メチルウリジン、N-((9-β-D-リボフラノシルプリン-
6-イル)-カルバモイル)スレオニン、2’-0-メチル-5-メチルウリジン、2’
-O-メチルウリジン、ワイブトシン、「3-(3-アミノ-3-カルボキシ-プロピル
)ウリジン、(acp3)u」、2’-O-メチル(M),3‘-ホスホロチオエート(
MS)、3’-チオPACE(MSP)、プソイドウリジン又は1-メチルプソイドウリ
ジンがある。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0224】
さらなる適切な化学修飾の非限定的な例としては、mA(1-メチルアデノシン)、
A(2-メチルアデノシン);Am(2‘-O-メチルアデノシン);ms
(2-メチルチオ-N-メチルアデノシン);iA(N-イソペンテニルアデノシ
ン);msi6A(2-メチルチオ-Nイソペンテニルアデノシン);ioA(N
-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);msioA(2-メチルチ
オ-N-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);gA(N-グリシニ
ルカルバモイルアデノシン(glycinylcarbamoyladenosine)
);tA(N-スレオニルカルバモイルアデノシン);msA(2-メチルチ
オ-N-スレオニルカルバモイルアデノシン);mA(N-メチル-N-ス
レオニルカルバモイルアデノシン);hnA(N-ヒドロキシノルバリルカルバモイ
ルアデノシン);mshnA(2-メチルチオ-N-ヒドロキシノルバリルカルバ
モイルアデノシン);Ar(p)(2’-O-リボシルアデノシン(リン酸塩));I(
イノシン);mI(l-メチルイノシン);mIm(l,2’-O-ジメチルイノシ
ン);mC(3-メチルシチジン);Cm(2’-O-メチルシチジン);sC(2
-チオシチジン);acC(N-アセチルシチジン);fC(5-ホルミルシチジ
ン);mCm(5,2’-O-ジメチルシチジン);acCm(N-アセチル-2
’-O-メチルシチジン);kC(ライシジン);mG(l-メチルグアノシン);
G(N-メチルグアノシン);mG(7-メチルグアノシン);Gm(2’-O
-メチルグアノシン);m G(N,N-ジメチルグアノシン);mGm(N
、2’-O-ジメチルグアノシン);m Gm(N,N,2’-O-トリメチルグ
アノシン);Gr(p)(2’-O-リボシルグアノシン(リン酸塩));yW(ワイブ
トシン);02yW(ペルオキシワイブトシン);OHyW(ヒドロキシワイブトシン)
;OHyW*(未修飾ヒドロキシワイブトシン);imG(ウイオシン);mimG(メ
チルウイオシン);Q(キューオシン);oQ(エポキシキューオシン);galQ(ガ
ラクトシルキュェオシン);manQ(マンノシル-キューオシン);preQ(7-
シアノ-7-デアザグアノシン);preQ(7-アミノメチル-7-デアザグアノシ
ン);G(アーケオシン);D(ジヒドロウリジン);mUm(5,2’-O-ジメ
チルウリジン);sU(4-チオウリジン);mU(5-メチル-2-チオウリ
ジン);sUm(2-チオ-2’-O-メチルウリジン);acpU(3-(3-ア
ミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン);hoU(5-ヒドロキシウリジン);m
U(5-メトキシウリジン);cmoU(ウリジン5-オキシ酢酸);mcmo
U(ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル);chmU(5-(カルボキシヒドロキ
シメチル)ウリジン));mchmU(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン
メチルエステル);mcmU(5-メトキシカルボニルメチルウリジン);mcm
m(5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン);mcmU(5
-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン);nmU(5-アミノメチル-
2-チオウリジン);mnmU(5-メチルアミノメチルウリジン);mnm
(5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン);mnmseU(5-メチルアミノ
メチル-2-セレノウリジン);ncmU(5-カルバモイルメチルウリジン);nc
m5Um(5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン);cmnm5U(5-
カルボキシメチルアミノメチルウリジン);cmnm5Um(5-カルボキシメチルアミ
ノメチル-2’-0-メチルウリジン);cmmm5s2U(5-カルボキシメチルアミ
ノメチル-2-チオウリジン);ジメチルアデノシン);Im(2’-0-メチルイノシ
ン);m4C(N4-メチルシチジン);m4Gm(N4,2’-0-ジメチルシチジン
);hm5C(5-ヒドロキシメチルシチジン);m3U(3-メチルウリジン);cm
5U(5-カルボキシメチルウリジン);m6Am(N6,2’-0-ジメチルアデノシ
ン);m62Am(N6,N6,0-2’-トリメチルアデノシン);m2’7G(N2
,7-ジメチルグアノシン);m2,2,7G(N2,N2,7-トリメチルグアノシン
);m3Um(3,2’-0-ジメチルウリジン);m5D(5-メチルジヒドロウリジ
ン);f5Cm(5-ホルミル-2’-0-メチルシチジン);m1Gm(l,2’-0
-ジメチルグアノシン);m’Am(l,2’-0-ジメチルアデノシン);xm5U(
5-タウリノメチルウリジン);xmVU(5-タウリノメチル-2-チオウリジン))
;imG-l4(4-デメチルウイオシン);imG2(イソウイオシン);又はac6
A(N6-アセチルアデノシン)がある。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
(米国特許第9,750,824号を参照)。
【0225】
変異対立遺伝子を特異的に標的とするガイド配列
一定の遺伝子には数千のSNPが含まれてもよい。遺伝子の各SNPを標的とするため
に24塩基対の標的ウィンドウを使用するとなると、数十万個のガイド配列が必要となる
だろう。SNPを標的とするよう利用されるときいかなる与えられたガイド配列であって
も、ガイド配列が分解する、活性が制限される、活性がなくなる、又はオフターゲット効
果が生じることがある。したがって、一定の遺伝子を標的とするには適切なガイド配列が
必要である。本発明によって、変異タンパク質の発現をノックアウトし、ELANE遺伝
子の変異対立遺伝子を不活性化し、そしてSCN又はCyNを治療するためのガイド配列
の新規なセットが同定された。
【0226】
本開示は、機能性対立遺伝子は未修飾のままの一方で変異対立遺伝子を不活性化するた
めに特異的に標的とすることができるガイド配列を提供する。本発明のガイド配列は、変
異対立遺伝子と機能性対立遺伝子との間で特異的に区別するよう設計され、区別する可能
性が最も高い。不活性化させたいと望まれる変異対立遺伝子を標的とする全ての可能なガ
イド配列のうち、本発明において開示される特異的なガイド配列は、開示される実施形態
で機能するのに特に効果的である。
【0227】
簡潔に言えば、ガイド配列は、以下の、(1)母集団、特定の民族集団又は患者集団で
の有病率が1%を超えて高く、同一の集団でのSNP/挿入/欠失/インデルヘテロ接合
率が1%を超える、ヘテロ接合性SNP/挿入/欠失/インデルを標的とし、(2)例え
ば、プロモーター、UTR、エキソン又はイントロン等の、遺伝子の任意の部分から5k
塩基以内等の、遺伝子の部分に近位のSNP/挿入/欠失/インデルの位置を標的とし、
(3)疾患/遺伝子のための創始者又は一般的な病原性変異を標的とするRNA分子を使
用して変異対立遺伝子を標的とするような特性を有してもよい。いくつかの実施形態にお
いて、母集団、特定の民族集団又は患者集団でのSNP/挿入/欠失/インデルの有病率
は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%
、13%、14%又は15%を超え、同一の集団でのSNP/挿入/欠失/インデルヘテ
ロ接合率は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%
、12%、13%、14%又は15%を超える。各可能性は、別々の実施形態を表し、随
意に組み合わせてもよい。
【0228】
各遺伝子について、SNP/挿入/欠失/インデルにしたがって、変異対立遺伝子を不
活性化するために以下の(1)1個のRNA分子を使用するノックアウト戦略―CRIS
PRヌクレアーゼを変異対立遺伝子に向けさせて二本鎖切断(DSB)を作成し、変異対
立遺伝子のエキソン又はスプライス部位領域でフレームシフト変異を形成するために、1
個のRNA分子を利用する、(2)2個のRNA分子を使用するノックアウト戦略―2個
のRNA分子を利用する。第1のRNA分子は、変異対立遺伝子のプロモーター内の領域
又は変異対立遺伝子の上流領域を標的とし、別のRNA分子は、変異対立遺伝子のプロモ
ーター、エキソン又はイントロン内の第1のRNA分子の下流を標的とする、(3)エキ
ソン(複数含む)スキッピング戦略―スプライス部位を破壊するために、イントロンの5
’末端(ドナー配列)又はイントロンの3’末端(アクセプター配列)の何れかのスプラ
イス部位領域にCRISPRヌクレアーゼを向けさせるために1個のRNA分子を使用し
てもよい。戦略のうち任意の1つを使用してもよい。あるいは、第1のRNA分子はエキ
ソンの上流領域を標的とし、第2のRNA分子は第1のRNA分子の下流領域の標的とし
、それによりエキソン(複数含む)を切除するように、2個のRNA分子を利用してもよ
い。各変異対立遺伝子について同定されたSNP/挿入/欠失/インデルの位置に基づい
て、変異対立遺伝子を不活性化するための上述した方法のいずれか1つ、又は組み合わせ
を利用してもよい。
【0229】
1個のRNA分子のみを使用するときは、SNPの位置がエキソンの中にあるか、又は
イントロンとエキソンとの間のスプライス部位のきわめて近く(20塩基対内等)にある
ときである。2個のRNA分子を使用するとき、ガイド配列は、第1のSNPが、5’非
翻訳領域内、プロモーター内又は転写開始点の5’最初の2キロベース等の、エキソン1
の上流にあり、第2のSNPが、転写開始点の5’最初の2キロベース、イントロン1、
2又は3内又はエキソン1、2又は3内等の、第1のSNPの下流であるように、2個の
SNPを標的としてもよい。
【0230】
本発明のガイド配列は、標的とする遺伝子の上流部分、好ましくは標的とする遺伝子の
最後のエキソンの上流部分のSNPを標的としてもよい。ガイド配列は、エキソン1の上
流、例えば、5’非翻訳領域内、プロモーター内又は転写開始点の5’最初の4~5キロ
ベース内のSNPを標的としてもよい。
【0231】
本発明のガイド配列はまた、既知のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位のき
わめて近く(50塩基対内、より好ましくは20塩基対内等)のSNPを標的としてもよ
い。
【0232】
本発明のガイド配列はまた、(1)標的とする遺伝子のヘテロ接合性SNP、(2)遺
伝子の上流及び下流のヘテロ接合性SNP、(3)母集団、特定の民族集団又は患者集団
での、SNP/挿入/欠失/インデルの有病率が1%を超えるSNP、(4)グアニジン
-シトシン含有量が30%を超えて85%未満である、(5)4以上のチミン/ウラシル
反復配列または8以上のグアニン、シトシン又はアデノシン反復配列がない、(6)オフ
ターゲット解析によって同定されたオフターゲットがない、及び(7)好ましくはイント
ロンよりエキソンを標的とするか、又はSNPの下流よりもSNPの上流である、ものを
標的としてもよい。
【0233】
本発明の実施形態において、SNPは、遺伝子の上流又は下流であってもよい。本発明
の実施形態において、SNPは、遺伝子の上流又は下流4,000塩基対内である。
【0234】
変異対立遺伝子と機能性対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、
関心のある遺伝子の疾患発症性変異配列の上流、下流又は内部であってもよい。変異対立
遺伝子と機能性対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、関心のある
遺伝子のエキソン内部又はイントロン内部にあってもよい。いくつかの実施形態において
、変異対立遺伝子と機能性対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、
関心のある遺伝子のエキソン内部にある。いくつかの実施形態において、変異対立遺伝子
と機能性対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、関心のある遺伝子
のエキソン内部又はイントロン内部にある、すなわちイントロンとエキソンの間のスプラ
イス部位のきわめて近く、例えば、スプライス部位の1、2、3、4、5、6、7、8、
9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20ヌクレオチ
ド上流又は下流にある。
【0235】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのヌクレオチドは、一塩基多型(SNP
)である。いくつかの実施形態において、SNPのヌクレオチドバリアントの各々は、変
異対立遺伝子で発現してもよい。いくつかの実施形態において、SNPは、創始者又は一
般的な病原性変異であってもよい。
【0236】
ガイド配列は、(1)母集団で1%を超える等の、母集団での有病率が高いこと、そし
て(2)1%を超える等の、母集団でのヘテロ接合率が高いことの両方を持つSNPを標
的としてもよい。ガイド配列は、世界中に分布するSNPを標的としてもよい。SNPは
、創始者又は一般的な病原性変異であってもよい。いくつかの実施形態において、母集団
での有病率は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11
%、12%、13%、14%又は15%を超える。各可能性は、別々の実施形態を表す。
いくつかの実施形態において、母集団でのヘテロ接合率は、1%、2%、3%、4%、5
%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%又は15%を超
える。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0237】
いくつかの実施形態において、変異対立遺伝子と機能性対立遺伝子との間で異なる少な
くとも1つのヌクレオチドは、集団において有病率が高い疾患発症性変異と関連づけられ
る/共存する。このような実施形態において、「有病率が高い」とは、少なくとも92%
、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%を指す。各可
能性は、本発明の別々の実施形態を表す。1つの実施形態において、変異対立遺伝子と機
能性対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、疾患発症性変異である
。いくつかの実施形態において、SNPは集団内で高度に蔓延している。このような実施
形態において、「高度に蔓延している」とは、集団の少なくとも10%、11%、12%
、13%、14%、15%、20%、30%、40%、50%、60%又は70%を指す
。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0238】
本発明のガイド配列は、上記基準のいずれか1つを満たしてもよく、変異対立遺伝子を対
応する機能性対立遺伝子と区別する可能性が最も高い。
【0239】
いくつかの実施形態において、RNA分子は、以下の表1に示されるようなSNP由来
のELANE遺伝子に存在するヘテロ接合性SNPを標的とする。SNPの詳細は左から
1番目のカラムに示され、SNP IDを含む(一塩基多型のNCBIの2018年版デ
ータベース(dbSNP)に基づく)。rs番号がないバリアントについては、バリアン
トの特性をgnomAD 2018ブラウザーデータベースに基づいて示した。2番目の
カラムでは、各SNPに割り当てられた識別子を示す。3番目のカラムでは、ELANE
遺伝子上での各SNPの位置を示す。
【表1】
【0240】
図5ではヒト集団において表1から選択されたある一定のSNPの異型遺伝子性を開示
する。
【0241】
本発明の実施形態は、SNP位置の上流からイントロン3、イントロン4又は3’UT
Rまでのプロモーター領域を切除することを含んでもよい。ある実施形態において、第1
のガイド配列は、変異対立遺伝子の上流領域のヘテロ接合性SNPの特異的な配列(戦略
1a―rs104l4837、戦略1b-rs376l005)を標的とし、第2のガイ
ド配列は、遺伝子の2個の対立遺伝子に共通するイントロン4の配列を標的とする(図1
)。さらなる実施形態において、第1のガイド配列は、変異対立遺伝子の上流領域のヘテ
ロ接合性SNPの特異的な配列(戦略1a―rs104l4837、戦略1b-rs37
6l005)を標的とし、第2のガイド配列は、遺伝子の2個の対立遺伝子に共通するイ
ントロン3の配列を標的とする。別の実施形態において、第1のガイド配列は、変異対立
遺伝子の上流領域のヘテロ接合SNPの特異的な配列(戦略1a―rs104l4837
、戦略1b-rs376l005)を標的とし、第2のガイド配列は、遺伝子の2個の対
立遺伝子に共通する3’UTRの配列を標的とする(図2)。
【0242】
本発明の実施形態は、イントロン3、イントロン4又は3’UTRから3’UTRの下
流の領域を切除することを含んでもよい。ある実施形態において、第1のガイド配列は、
変異対立遺伝子の上流領域のヘテロ接合性SNP位置の特異的な配列(戦略2-rs16
83564)を標的とし、第2のガイド配列は遺伝子の2個の対立遺伝子に共通するイン
トロン4の配列を標的とする。さらなる実施形態において、第1のガイド配列は、変異対
立遺伝子の上流領域のヘテロ接合性SNP位置の特異的な配列(戦略2-rs16835
64)を標的とし、第2のガイド配列は遺伝子の2個の対立遺伝子に共通するイントロン
3の配列を標的とする。さらなる実施形態において、第1のガイド配列は、変異対立遺伝
子の上流領域のヘテロ接合性SNP位置の特異的な配列(戦略2-rs1683564)
を標的とし、第2のガイド配列は遺伝子の2個の対立遺伝子に共通する3’UTRの配列
を標的とする(図3)。
【0243】
本発明の実施形態は、イントロン3、イントロン4又は3’UTRから3’UTRの下
流領域までを切除する。この戦略は、健常な対立遺伝子を無傷のままにする一方、疾患発
症性対立遺伝子(「変異対立遺伝子」)を特異的にノックアウトするよう設計される。対
立遺伝子特異的編集は、集団におけるヘテロ接合頻度が比較的高い区別する(ヘテロ接合
性)SNP位置を標的とするガイドを使用することにより達成される(図4)。
【0244】
細胞への送達
例示される方法において、本明細書において記載されるRNA分子及び組成物を任意の
適切な手段により標的細胞又は対象に送達してもよいことが理解される。以下の実施形態
は、本発明のRNA分子及び組成物を送達する方法の非限定的な例を提供する。
【0245】
いくつかの実施形態において、本発明のRNA分子及び組成物は、任意の哺乳類又は植
物細胞を含む、ドミナントネガティブな対立遺伝子を含む及び/又は発現する任意の細胞
を標的としてもよい。例えば、1つの実施形態において、RNA分子は、変異ELANE
対立遺伝子を特異的に標的とし、標的細胞は、肝細胞である。
【0246】
本主題発明の、RNA分子組成物等の、核酸組成物を送達するために、任意の適切なウ
イルス性ベクターシステムを使用してもよい。従来のウイルス性又は非ウイルス性に基づ
く遺伝子導入方法は、核酸及び標的組織を導入するために使用することができる。特定の
実施形態において、核酸は、インビトロ又はエクスビボ遺伝子治療用途で投与される。非
ウイルス性ベクター送達システムは、裸の核酸及びリポソーム又はポロクサマー等の送達
媒体と複合体を形成する核酸を含む。遺伝子治療方法を概説するため、Anderson
(1992)Science 256:808-813、Nabel & Feigne
r(1993)TIBTECH 11:211-217、Mitani & Caske
y(1993)TIBTECH 11:162-166、Dillon(1993)TI
BTECH 11:167-175、Miller(1992)Nature 357:
455-460、Van Brunt(1988)Biotechnology 6(1
0):1149-1154、Vigne(1995)Restorative Neur
ology and Neuroscience 8:35-36、Kremer &
Perricaudet(1995)British Medical Bulleti
n 51(1):31-44、Haddada et al.(1995)in Cur
rent Topics in Microbiology and Immunolo
gy Doerfler and Bohm(eds.)、及びYu et al.(1
994)Gene Therapy 1:13-26を参照する。
【0247】
核酸及び/又はタンパク質の非ウイルス性送達方法としては、エレクトロポレーション
、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、粒子銃加速器、ビロソーム
、リポソーム、イムノリポソーム、脂質ナノ粒子(LNP)、ポリカチオン又は脂質:核
酸複合体、人工ビリオン及び核酸の薬剤増強取込みがあり、又は細菌もしくはウイルス(
アグロバクテリウム、根粒菌属、NGR234、Sinorhizoboiummeli
loti、Mesorhizobium loti、タバコモザイクウイルス、ジャガイ
モウイルスX、カリフラワーモザイクウイルス及びキャッサバ葉脈モザイクウイルス等)
によって植物に送達することができる。(Chung et al.(2006)Tre
nds Plant Sci.1 l(l):l-4等を参照)。Sonitron 2
000 system(Rich-Mar)等を使用するSonoporationも、
核酸を送達するために使用することができる。タンパク質及び/又は核酸のカチオン性―
脂質媒介送達も、インビボ又はインビトロ送達方法として熟慮される。(Zuris e
t al.(2015)Nat.Biotechnol.33(l):73-80を参照
; Coelho et al.(2013)N.Engl.J.Med.369、81
9-829; Judge et al.(2006)Mol.Ther.13、494
-505;及びBasha et al.(2011)Mol.Ther.19、218
6-2200も参照。)
【0248】
さらなる代表的な核酸送達システムとしては、Amaxa.RTM Biosyste
ms(ケルン、ドイツ)、Maxcyte、Inc.(ロックビル、Md.)、BTX
Molecular Delivery Systems(ホリストン、Mass.)及
びCopernicus Therapeutics Incによって提供されるものが
ある(米国特許第6,008,336号等を参照)。リポフェクションは、米国特許第5
,049,386号、米国特許第4,946,787号及び米国特許第4,897,35
5号に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(Transfect
am.TM.、Lipofectin.TM.及びLipofectamine.TM.
RNAiMAX等)。ポリヌクレオチドの効率的なレセプター認識リポフェクションに適
したカチオン性及び中性脂質としては、Feigner、WO91/17424、WO9
1/16024のものがある。送達を細胞(エクスビボ投与)又は標的組織(インビボ投
与)に対してすることができる。
【0249】
イムノリピド複合体等の標的リポソームを含む、脂質:核酸複合体の調製は、当業者に
周知である(Crystal(1995)Science 270:404-410;B
laeseら(1995)Cancer Gene Ther.2:291-297;B
ehrら(1994)Bioconjugate Chem.5:382-389;Re
myら(1994)Bioconjugate Chem.5:647-654;Gao
ら(1995)Gene Therapy 2:710-722;Ahmadら(199
2)Cancer Res.52:4817-4820;米国特許第186,183号、
同4,217,344号、同4,235,871号、同4,261,975号、同4,4
85,054号、同4,501,728号、同4,774,085号、同4,837,0
28号及び同4,946,787号等を参照)。
【0250】
さらなる送達方法としては、送達される核酸をEnGeneIC送達担体(EDV)に
パッケージングすることの使用がある。これらのEDVは、抗体の一方の腕が標的細胞へ
の特異性を有し、他方がEDVへの特異性を有する二重特異性抗体を使用して標的細胞に
特異的に送達される。この抗体は、EDVを標的細胞表面まで運び、次にEDVは細胞内
へとエンドサイトーシスにより運ばれる。一度でも細胞内に入れば、内容物が放出される
(MacDiarmidら(2009)Nature Biotechnology 2
7(7):643を参照)。
【0251】
核酸をウイルス媒介送達するためにRNA又はDNAウイルスベースシステムを使用す
ると、ウイルスを体内の特定の細胞にターゲティングし、ウイルスペイロードを核へ輸送
するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターを患者に直接投与する
こともできるし(インビボ)、又は細胞をインビトロで処理し、改変細胞を患者に投与す
ることもできる(エクスビボ)。核酸を送達するための従来のウイルスベースシステムと
しては、遺伝子導入用のレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイ
ルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアベクター及び単純ヘルペスベク
ターがあるが、これに限定されるものではない。
【0252】
レトロウイルスの指向性は、異種エンベロープタンパク質を組み込むことによって変化
させることができ、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大させることができる。レンチウイ
ルスベクターは、非分裂細胞に形質導入するか感染し、一般的に高いウイルス力価を引き
起こすことができるレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入システム
の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、6~10kbまでの異種配
列をパッケージする能力を有するシス作用性末端反復配列から成る。最小シス作用性LT
Rは、ベクターを複製しパッケージするのに十分であり、次に治療遺伝子を標的細胞に組
み込んで持続的な導入遺伝子発現を提供するために使用される。広く用いられるレトロウ
イルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイル
ス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及
びその組み合わせに基づくものがある(例えば、Buchschacherら(1992
)J.Virol.66:2731-2739;Johannら(1992)J.Vir
ol.66:1635-1640;Sommerfeltら(1990)Virol.1
76:58-59;Wilsonら(1989)J.Virol.63:2374-23
78;Millerら(1991)J.Virol.65:2220-2224;PCT
/US94/05700等を参照)。
【0253】
臨床試験において、少なくとも6個のウイルスベクター手法が現在利用可能であり、ヘ
ルパー細胞株に挿入された遺伝子により欠損ベクターを補完して形質導入薬剤を生成する
ことを含む手法を利用する。
【0254】
pLASN及びMFG-Sは、臨床試験において使用されてきたレトロウイルスベクタ
ーの例である(Dunbarら(1995)Blood 85:3048-305;Ko
hnら(1995)Nat Med.1:1017-102;Malechら(1997
)PNAS94:2212133-12138)。PA317/pLASNは、遺伝子治
療治験において使用された最初の治療ベクターであった(Blaeseら(1995))
。MFG-Sをパッケージしたベクトルについて50%以上の形質導入効率が観察された
(Ellemら(1997)Immunol Immunother.44(1):10
-20;Dranoffら(1997)Hum.Gene Ther.1:111-2)
【0255】
パッケージングセルは、宿主細胞に感染することができるウイルス粒子を形成するため
に使用される。このような細胞には、アデノウィルス、AAVをパッケージする293細
胞、及びレトロウイルスをパッケージするPsi-2 cells又はPA317が含ま
れる。遺伝子治療に使用されるウイルスベクターは通常、核酸ベクターをウイルス粒子に
パッケージする生産細胞株によって作成される。このベクターは通常、パッケージングし
、その後宿主に組み込む(適用可能な場合)ために必要とされる最小のウイルス配列を含
み、他のウイルス配列は、発現されるタンパク質をコードする発現カセットによって置換
される。欠損しているウイルス機能は、パッケージングセルラインによってトランスで供
給される。例えば、遺伝子治療で使用されるAAVベクターは、一般的にはパッケージン
グし、宿主ゲノムに組み込むために必要とされる、AAVゲノムからの末端逆位配列(I
TR)のみを持つ。ウイルスDNAは細胞株にパッケージされ、そこには他のAAV遺伝
子、すなわちrep及びcapをコードするが、ITR配列を欠いているヘルパープラス
ミドが含まれる。細胞株は、ヘルパーとしてのアデノウィルスにも感染する。ヘルパーウ
イルスは、AAVベクターの複製とヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進
する。ヘルパープラスミドは、ITR配列を欠いているので相当量はパッケージされてい
ない。アデノウィルスによる汚染を、アデノウィルスの方がAAVより感受性が高い熱処
理等によって低減することができる。さらに、AAVは、バキュロウイルスシステムを使
用して臨床規模で作成することができる(米国特許第7,479,554号を参照)。
【0256】
多くの遺伝子治療適用において、遺伝子治療ベクターは、特定の組織タイプに対して高
い特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターを、ウイルスコー
トタンパク質がこのウイルスの外面にある融合タンパク質としてのリガンドを発現するこ
とによってある一定の細胞タイプに特異性を有するよう改変することができる。このリガ
ンドは、関心のある細胞タイプに存在すると知られている受容体に親和性を有するよう選
択される。例えば、Hanら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.US
A92:9747-9751で、モロニーマウス白血病ウイルスをgp70に融合したヒ
トヘレグリンを発現するよう改変することができ、組換えウイルスは、ヒト上皮増殖因子
受容体を発現した特定のヒト乳がん細胞に感染することが報告された。この原理を、標的
細胞は受容体を発現し、ウイルスは細胞表面受容体のためのリガンドを含む融合タンパク
質を発現する、他のウイルス標的細胞ペアに拡張することができる。例えば、繊維状ファ
ージを、実質的にあらゆる選択された細胞の受容体に対する特異的結合親和性を有する抗
体断片(FAB又はFv等)を呈するよう操作することができる。上の記述は主にウイル
スベクターに適用されるけれども、同一の原理を非ウイルス性ベクターに適用することが
できる。このようなベクターを、特異的な標的細胞による取り込みを好む特異的取り込み
配列を含むよう操作することができる。
【0257】
遺伝子治療ベクターを、個々の患者に、一般的に全身投与(例えば、硝子体内、静脈内
、腹腔内、筋肉内、皮下又は脳内注入)又は上述したような、局所投与によりインビボで
送達することができる。あるいは、ベクターを、個々の患者から外植した細胞(例えば、
リンパ球、骨髄穿刺法、細胞生検等)又は万能ドナー造血幹細胞などの、細胞にエクスビ
ボで送達することができ、通常ベクターを組み込んだ細胞を選択した後に、続けて患者に
細胞を再移植する。
【0258】
診断、研究のため、又は遺伝子治療(例えば、遺伝子導入した細胞の宿主生物への再注
入を介して)のためのエクスビボ細胞遺伝子導入は、当業者に周知である。好ましい実施
形態において、細胞を対象生物から単離し、核酸組成物を用いて遺伝子導入し、対象生物
(患者等)に再注入する。エクスビボ遺伝子導入に適した各種細胞タイプは、当業者に周
知である(例えば、Freshneyら(1994)Culture of Anima
l Cells、A Manual of Basic Technique、3rd
ed及び、患者からの細胞の単離及び培養方法を考察するためのそこに引用されている参
考文献を参照)。
【0259】
適した細胞には、真核細胞及び/又は細胞株が含まれるが、これに限定されるものでは
ない。このような細胞又はこのような細胞から作製される細胞株の非限定的な例としては
、COS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-D
UXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV等)、VERO、MDCK、WI38、
V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NSO、SP2/0-Agl4、He
La、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T
等)、perC6 cells、任意の植物細胞(分化型又は未分化型)、及びSpod
opterafugiperda(Sf)等の昆虫細胞又はサッカロミセス、ピキア及び
シゾサッカロミセス等の真菌細胞がある。特定の実施形態において、細胞株は、CHO-
K1、MDCK又はHEK293細胞株である。さらに、初代細胞を単離し、治療される
患者に再導入して続けてガイドされたヌクレアーゼシステム(CRISPR/Cas等)
による治療をするためにエクスビボで使用してもよい。適した初代細胞には、末梢血単核
球(PBMC)、及び限定されるものではないが、CD4+T細胞又はCD8+T細胞等
の他の血液細胞サブセットが含まれる。適した細胞としてはまた、例として、胚性幹細胞
、人工多能性幹細胞、造血幹細胞(CD34+)、神経型幹細胞及び間葉系幹細胞等の幹
細胞がある。
【0260】
1つの実施形態において、幹細胞は、細胞遺伝子導入及び遺伝子治療のためのエクスビ
ボ方法において使用される。幹細胞を使用する利点は、インビトロで他の細胞タイプに分
化できること、又は骨髄内に生着するだろう哺乳類(細胞のドナー等)に導入することが
できることである。GM-CSF、IFN-γ及びTNF-α等のサイトカインを使用し
てCD34+細胞をインビトロで臨床的に重要な免疫細胞型に分化する方法が知られてい
る(非限定的な例として、Inabaら、J.Exp.Med.176:1693-17
02(1992)を参照)。
【0261】
既知の方法を使用して、幹細胞を形質導入及び分化のために単離する。例えば、CD4
+及びCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR-1(顆粒球)及びla
d(分化抗体提示細胞)等の不必要な細胞と結合する抗体を用いて骨髄細胞をパニングす
ることにより、幹細胞を骨髄細胞から単離する(非限定的な例として、Inabaら(1
992)J.Exp.Med.176:1693-1702を参照)。いくつかの実施形
態において、既に改変された幹細胞を使用してもよい。
【0262】
一般的に、細胞は少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に投与さ
れる。成句「薬学的に許容される」とは、適切な医学的良識の範囲内であり、過剰な毒性
、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症なしで、妥当な利益/リスク比率で
つりあった、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適している、化合物、物質、組
成物及び/又は剤形を指す。成句「薬学的に許容される担体」は、本明細書において使用
するとき、物質を被包する液体、固体充填剤、希釈剤、賦形剤又は溶媒等の薬学的に許容
される物質、組成物又は媒体を意味する。
【0263】
本明細書において記載されるRNA分子組成物のいずれの1つも、有糸分裂後の細胞又
は活発に分裂しない、例えば停止細胞である、任意の細胞においてゲノム編集するのに適
している。本発明のRNA分子組成物を使用して編集されることができる有糸分裂後の細
胞の例は、肝細胞を含むが、これに限定されるものではない。
【0264】
治療核酸組成物を含むベクター(例えば、レトロウイルス、リポソーム等)を、インビ
ボで細胞に形質導入するために生物に直接投与することもできる。投与は、注射、注入、
局所投与(点眼及びクリーム等)及びエレクトロポレーションを含むが、これに限定され
るものではない、分子を血液細胞又は組織細胞と究極的に接触させて導入するために通常
使用される経路のいずれかである。このような核酸を投与するのに適した方法は、当業者
に利用可能であり、周知であり、特定の組成物を投与するために1つを超える経路を使用
できるけれども、特定の経路が別の経路より即時で効果的な反応を提供できることが多い
。いくつかの実施形態によれば、組成物は、IV注射により送達される。
【0265】
免疫細胞(T細胞等)に導入遺伝子を導入するのに適したベクターには、非組み込みレ
ンチウイルスベクターが含まれる。米国特許出願公開第2009-0117617号を参
照する。
【0266】
薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物によって、及び組成物を投与する
ために使用される特定の方法によって部分的に決定される。したがって、以下に記載する
ように、利用可能な医薬品組成物の多種多様の適した製剤がある(Remington’
s Pharmaceutical Sciences、17th ed.、1989等
を参照)
【0267】
いくつかの実施形態によれば、RNAでガイドされるDNAヌクレアーゼと結合する/
関連している及び/又はRNAでガイドされるDNAヌクレアーゼを関心のある遺伝子の
変異誘発遺伝子と機能性対立遺伝子との間に差がある少なくとも1つのヌクレオチド(S
NP等)を含む配列(機能性対立遺伝子には存在しない変異誘発遺伝子の配列等)に向け
させるRNA分子を提供する。この配列は、疾患関連変異内部にあってもよい。この配列
は、疾患関連変異の上流又は下流にあってもよい。変異対立遺伝子と機能性対立遺伝子と
の間のいかなる配列の差も機能性対立遺伝子の活性を保存する一方、本発明のRNA分子
によって変異対立遺伝子を不活性化するため、そうでなければ変異対立遺伝子のドミナン
トな疾患発症性効果を無効にするために、標的となってもよい。
【0268】
開示される組成物及び方法はまた、患者のドミナントな遺伝障害を治療するための薬物
の製造に使用されてもよい。
【0269】
本明細書において開示されるいくつかの実施形態についての作用機構
SCN又はCyNを引き起こすと証明されたELANEの変異は、切断型N-終端タン
パク質を生成するフレームORF(オープンリーディングフレーム)の代替物からの翻訳
を媒介し、その結果ER及びタンパク質ミスフォールディングストレスの原因となる。
【0270】
いかなる理論又は機構にも拘束されることを望むものではないが、本発明は、SCN又
はCyNを防止、寛解又は治療するために、CRISPRヌクレアーゼを適用して変異し
た病原性ELANE対立遺伝子の発現を防止するか、変異した病原性対立遺伝子から切断
型非病原性ペプチドを作成するか、又は変異した病原性ELANEを修復/修正するなど
、変異した病原性ELANE対立遺伝子を処理するが機能性ELANE対立遺伝子は処理
しないために利用される。
【0271】
ORFの上流又は下流に位置するSNPを利用するいくつかの別の編集戦略を適用して
もよい。この戦略には、全遺伝子の除去、遺伝子のC―終端を除去するための遺伝子の切
断及び遺伝子の発現の減弱が含まれる。
【0272】
いくつかの実施形態において、2個のガイド(表2に開示されたガイド等)を、全遺伝
子(すなわちエキソン1、2、3、4及び5)を除去して変異タンパク質をノックアウト
するために利用してもよい。いくつかの実施形態において、第1のガイドRNAを、EL
ANE遺伝子の変異対立遺伝子のORF上流に位置するSNP/WT配列を標的とするこ
とにより対立遺伝子特異的DSBを媒介するために利用し、第2のガイドRNAを、EL
ANE遺伝子のエキソン5に位置する又は変異対立遺伝子の下流に位置するSNP/WT
配列、又はELANE遺伝子の対立遺伝子のイントロン4、3’UTR又は下流に位置す
る配列、又はELANE遺伝子の対立遺伝子のイントロン4、3’UTR又は下流に位置
するSNP/WT配列にDSBを媒介するために利用してもよい。
【0273】
エキソン3までに位置する終止コドンを獲得することになるフレームシフト変異を抱え
る健康な個人の記録がある。したがって、可能性のある戦略は、最大でエキソン1から3
までを含むように変異対立遺伝子を切断することであってもよい。いくつかの実施形態に
おいて、2個のガイド(表2に開示されたガイド等)を、ELANE遺伝子の変異対立遺
伝子のc-終端を切断するために利用してもよい。いくつかの実施形態において、第1の
ガイドRNAを、変異対立遺伝子のエキソン5又は下流のSNP/WT配列を標的とする
ことにより対立遺伝子特異的DSBを媒介するために利用してもよく、第2のガイドRN
Aを、ELANE遺伝子のイントロン1、2又は3に位置する配列又はSNP/WT配列
のDSBを媒介するために利用してもよい。切断型変異対立遺伝子によってコードされた
ペプチド/タンパク質は、病原性効果を示さなくてもよい。あるいは、ナンセンス変異依
存mRNA分解機構をトリガーとして変異対立遺伝子の発現をノックアウトしてもよい。
結果をmRNA及びタンパク質発現を検査することにより検証してもよい。
【0274】
いくつかの実施形態において、変異対立遺伝子の発現を、ORF上流に位置するSNP
を使用して配列を近位プロモーター及びエンハンサー領域から要素を切除することにより
減弱してもよい。非限定的な例において、SNPを標的とすることによりエンハンサー領
域の大部分を切除することにより、かなりの減少を達成してもよい。
ELANE遺伝子の変異対立遺伝子を特異的に標的とするRNAガイド配列の例
【0275】
多くのガイド配列は、変異対立遺伝子を標的とするよう設計することができるけれども
、以下の配列番号1~1192によって特定される表2に記載されたヌクレオチド配列は
、本明細書に記載されている方法を効果的に実行するために、そして対立遺伝子間を効果
的に区別するために特異的に選択された。
【0276】
カラム1~4を参照すると、カラム1に示される配列番号1~1192の各々は、操作
されたガイド配列に対応する。対応するSNPの詳細は、カラム2に示される。2番目の
カラムに示されるSNPの詳細は、表1に示されるSNP IDに対応する各SNPに割
り当てられた識別子を示す。カラム3は、各ガイド配列の標的が示される部位でELAN
E遺伝子の多型か野生型配列かどうかを示す。カラム4は、示される部位での各ガイド配
列のグアニン-シトシン含有量を示す。
【0277】
表2では、変異ELANE対立遺伝子配列内部の異なるSNPと関連づけて上記実施形
態において記載されるように使用するために設計されたガイド配列を示す。各操作された
ガイド分子はさらに、配列NGG又はNAG(「N」は任意の核酸塩基である)と適合す
るPAM等の、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に接して位置する関心のある標
的ゲノムDNA配列と関連するように設計される。このガイド配列は、SpCas9WT
(PAM SEQ:NGG)、SpCas9.VQR.l(PAM SEQ:NGAN)
、SpCas9.VQR.2(PAM SEQ:NGNG)、SpCas9.EQR(P
AM SEQ:NGAG)、SpCas9.VRER(PAM SEQ:NGCG)、S
aCas9WT(PAM SEQ:NNGRRT)、NmCas9WT(PAM SEQ
:NNNNGATT)、Cpfl(PAM SEQ:TTTV)又はJeCas9WT(
PAM SEQ:NNNVRYM)等を含むが、これに限定されない、1つ又は複数の異
なるCRISPRヌクレアーゼと組み合わせて機能するよう設計された。本発明のRNA
分子は各々、1つ又は複数の異なるCRISPRヌクレアーゼと組み合わせて複合体を形
成するよう設計され、利用されるCRISPRヌクレアーゼに対してそれぞれ1つ又は複
数の異なるPAM配列を利用して関心のあるポリヌクレオチド配列を標的とするよう設計
される。

【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】

【表2-6】

【表2-7】

【表2-8】

【表2-9】

【表2-10】

【表2-11】

【表2-12】

【表2-13】

【表2-14】

【表2-15】

【表2-16】

【表2-17】

【表2-18】

【表2-19】

【表2-20】

【表2-21】

【表2-22】

【表2-23】

【表2-24】

【表2-25】

【表2-26】

【表2-27】

【表2-28】

【表2-29】

【表2-30】

【表2-31】
【0278】
前述の実施形態にとって、本明細書に開示された各実施形態は、他の開示された実施形
態の各々に適用できると考慮される。例えば、本発明の任意のRNA分子又は組成物を本
発明の任意の方法において利用してもよいことが理解される。
【0279】
本明細書において使用するとき、全ての見出しはただ構成のためのみであり、いかなる
方式でも本開示を制限することを意図するものではない。いかなる個々の段落の内容も全
ての段落に等しく適用可能であってもよい。
【0280】
本発明のより完全な理解を容易にするために、実施例を以下に提供する。以下の実施例
で本発明を作成し、実施する例示的モードを説明する。しかしながら、本発明の範囲はこ
れらの実施例において開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、説明のみを
目的としている。
【0281】
さらに、本発明における以下の実施例は、SpCas9及びSpCas9を開示される
SNP位置に向けさせるのに適したガイド配列を、利用することを含む方法を開示する。
実施例では開示される戦略の実現可能性が証明される。当業者は、特定の戦略の各々を適
用するために同一のガイド配列を異なるCRISPRヌクレアーゼとともに使用して、開
示されるSNPを標的としてもよいことを理解するだろう。さらに、特定の戦略の各々を
適用するために、他のCRISPRヌクレアーゼを同一のSNPに向けさせる異なるガイ
ド配列を他のヌクレアーゼと一緒に使用してもよい。
【実施例0282】
実験的詳細
実施例1:SpCas9と組み合わせて機能するのに適したSNPを標的とするガイド配
列及び開示される戦略に従う配列を選別する
HeLa細胞を96穴プレートに播種した(3K/ウェル)。24時間後、細胞を65
ngのWT-Cas9又はDead-Cas9及びg36~g66として識別され、Tu
rbofect試薬(サーモサイエンティフィック)を使用してELANEの異なる領域
及びSNPを標的とする、20ngのgRNAプラスミドで同時導入した。12時間後、
新鮮な培地を加え、そして遺伝子導入後72時間で、ゲノムDNAを抽出し、そしてCa
s9によって標的とされる予想領域を増幅し、生成物のサイズをDNAラダーによるキャ
ピラリー電気泳動により分析した。バンドの強度をPeak Scanner soft
ware vl.0を使用して分析した。編集の割合を以下の式にしたがって算出した。
100%-(未編集バンド強度/全バンド強度)X100。図6には、3個の独立した実
験のDead-Cas9バックグラウンド活性を減算した後の各gRNAの平均活性±S
Dを表す。
【0283】
【表3】
【0284】
実施例2:切除戦略の実現可能性を証明する
HeLa細胞をspCas9-WTとRNAのペア(複数)で同時導入したが、戦略l
a、lb及び2のためにそれぞれsg35(INT4)とg39(rs104l4837
)、g58(rs376l005)又はg62(rs1683564)のいずれかだった
。遺伝子導入後72時間で、gDNAを抽出し、droplet digital PC
R(ddPCR)キット(10042958及び10031228、バイオ・ラッドラボ
ラトリーズ)を使用して、エキソン1(戦略1)又はエキソン5(戦略2)のコピー数の
減少を測定することにより切除効率を評価した。さらに、戦略2の切除率を正規化するた
めにエキソン1を使用する一方、戦略1の切除率を正規化するためにエキソン5を使用し
た。表4に開示される結果には、2個の独立した実験の平均%切除±SD(標準偏差)を
示す。
【0285】
【表4】
【0286】
実施例3:異なるsgRNAによる編集を区別して対立遺伝子を評価する
製造業者説明書に従って、参照配列を標的とする、リボ核タンパク質複合体(RNP)
を関連しているgRNAsから構築し、WT-Cas9(#1081058)又はHiF
iCas9(#1081060)をIntegrated DNA Technolog
y(IDT)から購入した。次にRNPを、関連しているSNPを抱えるiPSCへと4
D-Nucleofecor(R)システム(ロンザ)を使用してヌクレオフェクト(n
ucleofected)した。72時間後、gDNAを抽出し、SNP領域を増幅し、
NGS分析に送った。対立遺伝子の区別を参照対立遺伝子及び別の対立遺伝子で検出され
た編集割合にしたがって評価した。各部位でのインデル頻度をCas-Analyzer
ソフトウェアを使用して算出した。結果を表5に要約する。
【0287】
【表5】
【0288】
実施例4:HSCでの編集効率
健常ドナーからのHSCをspCas9-WT及びEMX1(sgEMXl)又はEL
ANE(g35:INT4;g58:rs376l005;g62:rs1683564
)のいずれかを標的とするgRNAのRNA構成要素でヌクレオフェクトした(nucl
eofected)。ヌクレオフェクション後72時間で、gDNAを抽出し、編集レベ
ルをIDAAにより定量した。図7には、二度繰り返して実施された2個の独立した実験
の平均編集%±SDを示す。
【0289】
実施例5:機能性成熟アッセイ
修正された細胞における表現型の救出を証明するために、患者由来の人工多能性幹細胞
(iPSC)から始める成熟アッセイを、再プログラム化された体細胞から調製した。こ
の細胞は、患者由来細胞の再生可能な供給源を提供し、疾患表現型を正確に再現すること
が分かっている。簡潔には、患者のPBMCを、Oct4、Sox2、Nanog、Li
n28、L-Myc、Klf4及びSV40LTである、再プログラム化遺伝子を発現す
るエピソーム構築物で遺伝子導入する。同一のSNP遺伝子型を抱える患者由来iPSC
及び通常のiPSCを、市販のキット(STEMdiff(商標)Hematopoie
tic Kit、STEMCELL Technologies)を使用して造血前駆細
胞へと分化する。12日後、分化効率を、フローサイトメトリー分析で前駆細胞マーカー
CD34及びCD45の発現のために細胞を分析することにより推定する。通常及びSC
N分化前駆細胞は、遺伝子編集を受け、幹細胞因子(SCF)、IL-3及び好中球への
分化を促進するGM-CSFを含む条件培地で5日間生育する。通常の未編集及び編集さ
れた細胞、すなわちSCNの編集された細胞を好中球へと分化する一方、未編集のSCN
に由来する細胞は分化の早い段階で停止する。好中球への分化効率を、フローサイトメト
リーで好中球表面マーカー(例えばCD16、CD66b及び汎骨髄マーカーCD33の
発現上昇等)を検出することにより測定する。
【0290】
実施例6:免疫不全マウスにおけるインビボ投与量範囲知見及び体内分布パイロット研究
G-CSFを投与した後の、免疫不全NSGマウスにおける自己複製能力及び多系列能
力を有するHSCの存在及び数を測定するために投与スケジュール、投与量範囲及び投与
経路を研究する。長期生着を確立するための機能免疫システムを再生することができるH
SCの存在及び数を測定するために再増殖アッセイを実施する。このような検証のために
、ヒトの生着及び造血系再増殖を高度に支持する、NSG細胞株を使用する。NSGマウ
スは、複数のサイトカインシグナル経路が欠損し、自然免疫に多くの欠陥があるのに加え
、成熟T細胞、B細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞を欠いているNOD SCID
マウスである。一次移植の16週間後に生着を評価する(移植後12週間後分析)。
【0291】
NSGマウスにおける16週間の体内分布パイロット研究では、投与量及び最大持続時
間を調べ、いくつかの細胞投与量レベルで実施する。この研究には、3個の投与量レベル
と未編集のSCN細胞を受けたマウスのグループが含まれる。パイロット研究の期間は1
6週間であるが、投与量が高い2個のグループのうちの1個は6か月間まで継続する。こ
のパイロット研究でマウスは6か月間生存し、中心的な体内分布研究の期間は6か月であ
る。この研究の間、qPCRによる発現の持続性及び免疫組織化学を研究する。
【0292】
実施例7:免疫不全マウスにおける中心的な体内分布研究
中心的な体内分布研究ではNSGマウスを利用し、実施例6のパイロット投与量範囲の
知見に従う。この研究は、優良試験所基準(GLP)を遵守して実行され、中心的な非臨
床薬物動態、薬力学及び毒性学研究である。毒性研究は、HSC注入後の死亡率、臨床的
知見、体重及び器官重量、並びに臨床的及び解剖学的病理学に基づく。
【0293】
遺伝子を編集したCD34+細胞をNSGマウスに移植するには、内在性骨髄の枯渇を
提供し、ドナー細胞の生着を許容するために、前処理が必要となる。したがって、臨床状
況を模倣するためにブスルファン前処理を利用する。グループあたり10匹の雄と雌のマ
ウスの3個のグループ(遺伝子を編集した細胞、未編集の細胞及びブスルファン媒体のみ
のコントロール)を利用する。
【0294】
NSGマウスモデルはヒト好中球を枯渇した状況と完全に類似するものではないけれど
も、エクスビボ遺伝子編集細胞をインビボ注射する前に、全ての割合のマウスをブスルフ
ァンで処理し、骨髄機能を枯渇させるので、この研究は遺伝子編集CD34+細胞の体内
分布研究に使用するためのモデルの妥当性に影響しない。利用可能な好中球欠乏マウス株
、Lyz2Cre/CreMcl-lflox/flox(Mcl-lΔMyelo)の
骨髄系細胞白血病(Mcl-1)抗アポトーシス性タンパク質から、Mcl-lが骨髄系
特異的に欠乏すると非常に重度の好中球減少症が生じることが分かる(Csepregi
ら、2018)。Mcl-lΔMyeloマウスは繁殖することができ、その生存率は、
特定の病原体がいない(specific pathogen-free)条件と従来の
収容条件の両方で正常に近かった。しかしながら、NSGマウスとは対照的に、Mcl-
ΔMyeloマウスモデルでは限られた経験しかない。
【0295】
実施例8:修正分析
配列番号1~1192に記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドの配
列中の17~20個のヌクレオチドを含むガイド配列を、標的上の活性の高さについてス
クリーニングする。標的上の活性は、DNAキャピラリー電気泳動分析により測定される
【0296】
DNAキャピラリー電気泳動分析によると、配列番号1~1192に記載されている1
7~20個の近接しているヌクレオチドの配列中の17~20個のヌクレオチドを含むガ
イド配列は、ELANE遺伝子の修正に適していることが分かる。
【0297】
実施例9:ELANEの対立遺伝子特異的ノックアウトの有効性
ELANE遺伝子の変異対立遺伝子の特異的ノックアウトは、ELANE遺伝子の変異
対立遺伝子のイントロン4及びエキソン5を切除することにより媒介される。これは、図
8に描かれるような対立遺伝子特異的DSBを媒介するために、イントロン4でのDSB
を媒介しSNPrs1683564を利用することにより成し遂げられる。この戦略を用
いるとHSCが効率的に成熟好中球及び機能性好中球へと分化できることを証明するため
に、健常ドナーを、イントロン4のそれぞれのSNP(表1参照)を標的とするg35及
びg62を含むRNPを有するHSC(ロンザ)でヌクレオフェクトする(nucleo
fected)。未編集の細胞をポジティブコントロールとして使用する。ヌクレオフェ
クション後48(48)時間で、公表された手順書(Zhenwang Jieら、Pl
osOne 2017)にしたがってHSCを好中球に分化する。編集された細胞と未編
集の細胞の分化効率を、好中球特異的マーカーCD66b及びCD177で染色した後F
ACSによって測定する。HSC媒介好中球の機能を評価するために、以下のアッセイを
実行する。
1.貪食性をEZCell(商標)Phagocytosis Assay Kit(
BioVision)を使用してアッセイする。このキットは、フローサイトメトリーに
よる迅速で正確な検出及びインビトロでの貪食性の定量化のためのツールとして事前に標
識されたザイモサン粒子を利用する。
2.HSC由来好中球を大腸菌と共に培養し、次に細菌をコロニー形成のために寒天板
に播種することによってキリングアッセイを実施する。未処理の細菌または未分化のHSC
と 培養した細菌をコントロールとして使用する。死滅効率は次のように計算される:(コ
ロニー数Neutrophils /コロニー数コントロール)x100。

3.EZCell(商標)Cell Migration/Chemotaxis A
ssay Kit(Biovision)を使用して走化性をアッセイする。
【0298】
実施例10:治療用の患者選択
ステップ1:SCN又はCyNと診断された4人の患者A~Dを、エキソンシーケンシ
ングしてELANE遺伝子内のELANE病原性変異を同定することにより選別する。ス
テップ2:同定された変異を有する対象を、次にサンガーシーケンシングしてrs168
3564、rs104l4837及びrs376l005の少なくとも1つのヘテロ接合
性を確認することにより選別する。ステップ3.rs1683564、rs104l48
37及びrs376l005少なくとも1つでヘテロ接合性であると決定された各対象に
ついて、ELANE遺伝子内の変異対立遺伝子のヘテロ接合性SNPのヌクレオチドを、
BAC bioを使用して決定する。ステップ4.表6にしたがって適切なガイドを選択
する。
【表6】
【0299】
ステップ5.選択されたガイドをそれぞれの対象から取得したPBMCに導入し、PBM
Cにおける病原性ELANE変異の減少を次世代シーケンス技術により検証する。患者A
~Dのための方法論を以下に説明する。
1.患者Aをステップ1にしたがって選別し、表現型及び臨床的状況と一致している、
ELANEの既知の病原性変異があることが分かる。患者Aを関心のあるSNPの周りで
、ステップ2にしたがって選別し、3個のSNPrs10414837、rs16835
64及びrs376l005の全てでホモ接合性であることが分かる。患者Aを、治療に
好適ではないと判断する。
2.患者Bを既知の病原性ELANE変異について検証する。患者Bを、ステップ2に
したがって選別し、SNPrs1683564及びrs104l4837でホモ接合性で
あることが分かる。患者Bは、プロモーター領域のrs376l005でヘテロ接合性で
あると分かる。患者Bを、治療に好適であると判断する。ステップ3にしたがって病原性
ELANE変異と同一の対立遺伝子に存在するヌクレオチド(連鎖決定)を決定する。患
者Bは、ELANE病原性変異と同一の対立遺伝子のrs3761005SNP位置に参
照ヌクレオチド塩基があることが分かる。g58refは、このSNPの提示と完全に相
補性があり、イントロン4の非コード領域に向けられるg35と併せて選択される。ステ
ップ4にしたがって、選択されたガイド組成物は、ガイドg58ref及びg35のペア
を含む。この選択されたガイドのペアを使用する変異した対立遺伝子の切除が成功したか
を患者PMBCにNGS読み取りを使用するステップ5にしたがって検証する。
3.患者Cは、幼児期から重度の好中球減少症に苦しんでいる。ステップAにしたがっ
て選別し、ELANE遺伝子には病原性変異を見出さなかった。患者Cを、治療に好適で
ないと判断する。
4.患者Dは、ELANE遺伝子に既知の病原性変異があると検証され、ステップ2に
したがってSNPの遺伝子型を同定すると、3個のSNPのうち、2個でヘテロ接合性で
あることが分かる、つまりrs104l4837とrs1683564の両方がヘテロ接
合性であると分かる一方、rs3761005はホモ接合性であると分かる。遺伝子操作
に使用する2個の可能性のあるSNP間の選択をする。選択をするために、ステップ3を
実行してSNPと病原性変異間の連鎖を決定する、すなわち、SNP(参照又は代替)の
どのヌクレオチドがELANE病原性変異と同一の対立遺伝子に存在するかを決定する(
SNP提示)。患者Dをrs10414837の参照提示があると判断し、sg39re
fが使用に適していると判断する。rs1683564SNPを参照すると、代替提示は
、ELANE病原性変異と関連づけられていることが分かり、ガイドとしてsg62al
tが使用に適していると判断する。これらのガイドの各々をg35と併せて使用する。ス
テップ4にしたがって、可能性のあるガイド組成物の2個のペア、sg39ref+g3
5及びg62alt+g35を同定する。ガイドペアのいずれが好ましいか決定するため
に、ガイドの各々及びガイドペアの編集特性及び特徴のデータベースを評価してオフター
ゲット効果及び編集効率を決定する。データベース評価に基づいてガイドペアを選択し、
NGS読み取りを提供するPMBCにステップ5にしたがって、利用する。





図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0279
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0279】
本明細書において使用するとき、全ての見出しはただ構成のためのみであり、いかなる方式でも本開示を制限することを意図するものではない。いかなる個々の段落の内容も全ての段落に等しく適用可能であってもよい。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.細胞の、重症先天性好中球減少症(SCN)又は周期性好中球減少症(CyN)に関連している変異を有する好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE遺伝子)遺伝子の変異対立遺伝子を不活性化するための方法であって、前記細胞は、rs104l4837、rs376l005、rs1683564、rs9749274、rs74002l、rs20l048029、rs199720952、rs28591229、rs7l335276、rs58082l77、rs3826946、rs10413889、rs76l48l944、rs376l008、rs10409474、rs3761007、rs172l6649、rs10469327、rs8l07095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性であり、前記方法は、
前記細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む組成物を導入することを含み、
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の複合体は、前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響する、方法。
2.前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の前記複合体は、前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、前記変異対立遺伝子は、前記1つ又は複数の多型部位に基づいて前記二本鎖切断のための標的とされる、上記1に記載の方法。
3.CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することをさらに含み、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子における第2の二本鎖切断に影響する、上記1又は上記2に記載の方法。
4.前記第1のRNA分子の前記ガイド配列部は、配列番号1~1192のいずれか1つに記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドを含む、上記1~3の何れかに記載の方法。
5.前記第2の二本鎖切断は、前記ELANE遺伝子の非コード領域内である、上記3又は4に記載の方法。
6.前記細胞は、rs104l4837又はrs376l005でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子のイントロン4における二本鎖切断に影響する、上記3~5の何れかに記載の方法。
7.前記細胞は、rs10414837又はrs376l005でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子のイントロン3における二本鎖切断に影響する、上記3~5の何れかに記載の方法。
8.前記細胞は、rs10414837又はrs376l005でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子の3’UTR領域における二本鎖切断に影響する、上記3~5の何れかに記載の方法。
9.前記細胞は、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子のイントロン4における二本鎖切断に影響する、上記3~5の何れかに記載の方法。
10.前記細胞は、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子のイントロン3における二本鎖切断に影響する、上記3~5の何れかに記載の方法。
11.前記細胞は、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記ELANE遺伝子の3’UTR領域における二本鎖切断に影響する、上記3~5の何れかに記載の方法。
12.重症先天性好中球減少症(SCN)若しくはCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する前記細胞を、SCN若しくはCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又はSCN若しくはCyNに苦しむ対象から取得することを含み、前記対象は、rs10414837、rs3761005、rs1683564、rs9749274、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs28591229、rs71335276、rs58082177、rs3826946、rs10413889、rs761481944、rs3761008、rs10409474、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8107095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、上記1~11の何れかに記載の方法。
13.第1にSCN若しくはCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又はSCN若しくはCyNに苦しむ対象を選択することであって、前記対象は、rs10414837、rs3761005、rs1683564、rs9749274、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs28591229、rs71335276、rs58082177、rs3826946、rs10413889、rs761481944、rs376l008、rs10409474、rs376l007、rs172l6649、rs10469327、rs8107095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、こと、及び前記対象から前記細胞を取得することを含む、上記12に記載の方法。
14.前記細胞を前記対象から動員によって及び/又はアフェレシスによって取得することを含む、上記13又は14に記載の方法。
15.前記細胞を前記対象から骨髄穿刺法によって取得することを含む、上記14に記載の方法。
16.前記組成物を前記細胞に導入する前に前記細胞を予備刺激する、上記1~15の何れかに記載の方法。
17.前記細胞を培養増殖して細胞群を取得することをさらに含む、上記12~16の何れかに記載の方法。
18.前記細胞を、幹細胞因子(SCF)、IL-3及びGM-CSFのうちの1つ又は複数とともに培養する、上記17に記載の方法。
19.前記細胞を少なくとも1つのサイトカインとともに培養する、上記17又は18に記載の方法。
20.前記少なくとも1つのサイトカインは、組換えヒトサイトカインである、上記19に記載の方法。
21.前記細胞は、複数の細胞の中の1つであり、前記第1のRNA分子又は前記第1及び前記第2のRNA分子の両方を含む前記組成物を、前記複数の細胞の中の少なくとも前記細胞及び他の細胞に導入し、そして前記複数の細胞の中の少なくとも前記細胞及び前記他の細胞中の前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子を不活性化し、それにより複数の改変細胞を取得する、上記1~20の何れかに記載の方法。
22.前記第1のRNA分子を含む前記組成物を導入すること又は前記第2のRNA分子の導入は、前記細胞又は複数の細胞のエレクトロポレーションを含む、上記1~21の何れかに記載の方法。
23.上記21又は22に記載の方法によって取得される改変細胞。
24.上記21に記載の細胞を培養増殖することから取得される改変細胞。
25.生着することができる、上記23又は24に記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
26.子孫細胞を生じることができる、上記23~25の何れかに記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
27.生着後に子孫細胞を生じることができる、上記26に記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
28.自家移植後に子孫細胞を生じることができる、上記27に記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
29.生着後少なくとも12か月間又は少なくとも24か月間子孫細胞を生じることができる、上記27又は28の何れかに記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
30.前記改変細胞又は複数の改変細胞は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)である、上記23~29の何れかに記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
31.前記改変細胞又は複数の改変細胞は、CD34+造血幹細胞である、上記30に記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
32.前記改変細胞又は複数の改変細胞は、骨髄細胞又は末梢単核細胞(PMC)である、上記23~31の何れかに記載の改変細胞又は複数の改変細胞。
33.前記ELANE遺伝子の1つの対立遺伝子の少なくとも一部を欠いている改変細胞。
34.前記改変細胞は、rs104l4837、rs3761005、rs1683564、rs9749274、rs74002l、rs20l048029、rs199720952、rs2859l229、rs7l335276、rs58082l77、rs3826946、rs104l3889、rs76l48l944、rs376l008、rs10409474、rs376l007、rs172l6649、rs10469327、rs8107095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である細胞から改変された、上記33に記載の改変細胞。
35.上記23~34の何れかに記載の改変細胞及び薬学的に許容される担体を含む、組成物。
36.前記細胞と前記薬学的に許容される担体とを混合することを含む、上記35に記載の組成物のインビトロ又はエクスビボ調製方法。
37.インビトロ又はエクスビボで改変細胞を含む組成物を調製する方法であって、前記方法は、
a)SCN若しくはCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又はSCN若しくはCyNに苦しむ対象から取得した複数の細胞からHSPCを単離することであって、前記対象は、rs104l4837、rs376l005、rs1683564、rs9749274、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs28591229、rs7l335276、rs58082l77、rs3826946、rs104l3889、rs76148l944、rs376l008、rs10409474、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8l07095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、こと、そして前記対象から前記細胞を取得すること、
b)1つ又は複数の細胞における前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子を不活性化するよう、ステップ(a)の前記細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む組成物を導入することであって、
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の細胞における前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、前記細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記1つ又は複数の細胞の前記ELANE遺伝子における第2の二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、こと、任意選択で
c)ステップ(b)の前記改変細胞を培養増殖すること、を含み、
前記改変細胞は生着することができ、生着後に子孫細胞を生じることができる、方法。
38.a)SCN若しくはCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する及び/又はSCN若しくはCyNに苦しむ対象から取得した複数の細胞からHSPCを単離することであって、前記対象は、rs104l4837、rs376l005、rs1683564、rs9749274、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs28591229、rs7l335276、rs58082l77、rs3826946、rs104l3889、rs76148l944、rs376l008、rs10409474、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8l07095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である、 こと、
b)1つ又は複数の細胞における前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子を不活性化するよう、ステップ(a)の前記細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む組成物を導入することであって、
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の細胞の前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、前記細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記1つ又は複数の細胞の前記ELANE遺伝子における第2の二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、こと、任意選択で
c)ステップ(b)の前記細胞を培養増殖することであって、前記改変細胞は生着することができ、生着後に子孫細胞を生じることができる、こと、及び
d)前記対象の前記SCN又はCyNを治療するために前記対象にステップ(b)又はステップ(c)の前記細胞を投与すること、を含む方法によってインビトロで調製される組成物の使用。
39.治療有効量の上記21~34の何れかに記載の改変細胞、上記35に記載の組成物又は上記36若しくは37に記載の方法によって調製された組成物を投与することを含む、SCN又はCyNで苦しんでいる対象の治療方法。
40.SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する治療を必要とする対象におけるSCN又はCyNの治療方法であって、前記対象は、rs104l4837、rs376l005、rs1683564、rs9749274、rs74002l、rs20l048029、rs199720952、rs2859l229、rs7l335276、rs58082177、rs3826946、rs104l3889、rs76l481944、rs376l008、rs10409474、rs3761007、rs172l6649、rs10469327、rs8l07095、rs10424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性であり、前記方法は、
a)前記対象から取得した複数の細胞からHSPCを単離すること、
b)1つ又は複数の細胞における前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子を不活性化するよう、ステップ(a)の前記細胞に、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、を含む組成物を導入することであって、
前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の複合体は、1つ又は複数の細胞の前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響し、
任意選択で、前記細胞にCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体は、前記1つ又は複数の細胞の前記ELANE遺伝子における第2の二本鎖切断に影響し、
それにより改変細胞を取得する、こと、任意選択で
c)ステップ(b)の前記細胞を培養増殖することであって、前記改変細胞は生着することができ、生着後に子孫細胞を生じることができる、こと、及び
d)前記対象にステップ(b)又はステップ(c)の前記細胞を投与し、それにより前記対象の前記SCN又はCyNを治療すること、を含む、方法。
41.SCN又はCyNに関連しているELANE遺伝子変異を有する治療を必要とする対象におけるSCN又はCyNの治療方法であって、前記対象は、rs10414837、rs3761005、rs1683564、rs9749274、rs740021、rs201048029、rs199720952、rs28591229、rs71335276、rs58082177、rs3826946、rs10413889、rs761481944、rs3761008、rs10409474、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8107095、rs1 0424470及びrs78302854から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性であり、前記方法は、
前記対象に自家改変細胞又は自家改変細胞の子孫を投与することであって、前記自家改変細胞は、前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子において二本鎖切断するように改変され、
前記二本鎖切断は、CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列及び第1のRNA分子を含む組成物を前記細胞に導入することから生じ、前記CRISPRヌクレアーゼ及び前記第1のRNA分子の複合体は、前記細胞の前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子を不活性化するよう、前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における二本鎖切断に影響する、こと、を含み、それにより前記対象の前記SCN又はCyNを治療する、方法。
42.SCN又はCyNと診断された対象のプールから治療のための対象を選択する方法であって、
a)前記対象のプールにおける各対象から細胞を取得するステップ、
b)各対象の細胞をSCN又はCyNに関連するELANE遺伝子変異について選別し、SCN又はCyNに関連するELANE遺伝子変異を有する対象のみを選択するステップ、
c)ステップ(b)において選択された前記対象の前記細胞を配列決定することによりrs104l4837、rs376l005、rs1683564から成る群から選択される1つ又は複数の多型部位でのヘテロ接合性を選別するステップ、及び
d)治療のために前記1つ又は複数の多型部位でヘテロ接合性である細胞を有する対象のみを選択するステップを含む、方法。
43.e)前記対象の骨髄から吸引によるか又は動員及び末梢血液のアフェレシスによるかのいずれかにより造血幹細胞及び前駆細胞(HSPC)を取得すること、
f)ステップ(e)の前記HSPC細胞に
1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼ又は1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼをコードする配列
前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子に存在する前記1つ又は複数の多型部位の前記ヘテロ接合性対立遺伝子のヌクレオチド塩基を標的とする配列番号:1~1192のいずれか1つに記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドの配列中の17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含む第1のRNA分子、及び
前記ELANE遺伝子のイントロン3、イントロン4又は3’UTRにおける配列を標的とするガイド配列部を含む第2のRNA分子を導入することであって、
前記第1のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ又は複数の前記HSPC細胞の前記ELANE遺伝子の前記変異対立遺伝子における第1の二本鎖切断に影響し、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記第1のRNA分子と前記CRISPRヌクレアーゼの前記複合体が第1の二本鎖切断に影響した前記1つ又は複数のHSPC細胞の前記ELANE遺伝子の両対立遺伝子のイントロン3、イントロン4又は3’UTRにおける第2の二本鎖切断に影響し、それにより改変細胞を取得する、こと、
g)前記対象にステップ(f)の前記改変細胞を投与し、それにより前記対象のSCN又はCyNを治療すること、を含む、
ステップ(d)において選択された対象におけるSCN又はCyNを治療することをさらに含む、上記42に記載の方法。
44.配列番号:1~1192のいずれか1つに記載されている17~20個の近接しているヌクレオチドの配列中の17~20個のヌクレオチドを有するガイド配列部を含むRNA分子。
45.上記44に記載のRNA分子及びガイド配列部を含む第2のRNA分子を含む、組成物。
46.前記第2のRNA分子は、前記ELANE遺伝子の非コード領域を標的とする、上記45に記載の組成物。
47.前記第2のRNA分子の前記ガイド配列部の前記ヌクレオチド配列は、前記第1のRNA分子の前記ガイド配列部の前記配列とは異なるヌクレオチド配列である、上記45又は46に記載の組成物。
48.前記第1及び/又は前記第2のRNA分子は、さらにCRISPRヌクレアーゼに結合する配列を有する部分を含む、上記45~47の何れかに記載の組成物。
49.CRISPRヌクレアーゼに結合する前記配列は、tracrRNA配列である、上記48に記載の組成物。
50.前記第1及び/又は前記第2のRNA分子は、さらにtracrメイト配列を有する部分を含む、上記45~48の何れかに記載の組成物。
51.前記第2のRNA分子は、1つ又は複数のリンカー部をさらに含む、上記45~50の何れかに記載の組成物。
52.前記第1及び/又は前記第2のRNA分子は、長さが300ヌクレオチドまでである、上記42~51の何れかに記載の組成物。
53.1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼ又は前記1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又は1つ又は複数のtracrRNA分子又は前記1つ又は複数のtracrRNA分子をコードする配列をさらに含む、上記45~52の何れかに記載の組成物。
54.細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化するための方法であって、前記方法は、前記細胞に上記44に記載のRNA分子又は上記45~53の何れかに記載の組成物を送達することを含む、方法。
55.SCN又はCyNを治療する方法であって、前記方法は、SCN又はCyNを有する対象に上記44に記載のRNA分子若しくは上記45~53の何れかに記載の組成物、又は上記44に記載のRNA分子若しくは上記45~53の何れかに記載の組成物によって改変された細胞を送達することを含む、方法。
56.前記1つ又は複数のCRISPRヌクレアーゼ及び/又は前記tracrRNA分子及び前記RNA分子若しくは複数のRNA分子を、前記対象及び/又は細胞に実質的に同時に又は異なる時間に送達する、上記54又は55に記載の方法。
57.前記方法は、
a)変異対立遺伝子から疾患発症性の変異を含むエキソンを除去することであって、前記第1のRNA分子又は前記第1及び前記第2のRNA分子は、エキソン全体又は前記エキソンの一部に隣接している領域を標的とする、こと、
b)遺伝子の複数のエキソン、オープンリーディングフレーム全体を除去すること、又は遺伝子全体を除去すること、
c)前記第1のRNA分子又は前記第1及び前記第2のRNA分子が、変異対立遺伝子のエキソン及びイントロンの間の選択的スプライシングシグナル配列を標的とすること、
d)前記第2のRNA分子が、変異対立遺伝子と機能性対立遺伝子の両方に存在する配列を標的とすること、
e)前記第2のRNA分子が、イントロンを標的とすること、
f)エラープローン非相同末端結合(NHEJ)機構により前記変異対立遺伝子に挿入又は欠失を受けさせ、前記変異対立遺伝子の配列にフレームシフトを生成すること、を含み、
任意選択で前記フレームシフトは、前記変異対立遺伝子の不活性化又はノックアウトを生じ、
好ましくは、前記フレームシフトにより前記変異対立遺伝子中に早期の終止コドンが作成される又は前記フレームシフトにより前記変異対立遺伝子の転写物にナンセンス変異依存mRNA分解機構が生じる、上記54~56の何れかに記載の方法。
58.前記不活性化又は治療により前記変異対立遺伝子によってコードされる切断型タンパク質及び前記機能性対立遺伝子によってコードされる機能性タンパク質が生じる、上記55~57の何れかに記載の方法。
59. a)前記細胞又は前記対象が、rs104l4837又はrs376l005でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、前記ELANE遺伝子のイントロン4における二本鎖切断に影響し、
b)前記細胞又は前記対象が、rs104l4837又はrs376l005でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、前記ELANE遺伝子のイントロン3における二本鎖切断に影響し、
c)前記細胞又は前記対象が、rs104l4837又はrs376l005でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、前記ELANE遺伝子の3’UTR領域における二本鎖切断に影響し、
d)前記細胞又は前記対象が、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、前記ELANE遺伝子のイントロン4における二本鎖切断に影響し、
e)前記細胞又は前記対象が、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、前記ELANE遺伝子のイントロン3における二本鎖切断に影響し、
f)前記細胞又は前記対象が、rs1683564でヘテロ接合性であり、前記第2のRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの前記複合体が、前記ELANE遺伝子の3’UTR領域における二本鎖切断に影響する、上記55~58の何れかに記載の方法。
60.細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化するための、上記44に記載のRNA分子、上記35、45~53の何れかに記載の組成物又は上記36若しくは37に記載の方法により調製された組成物、の使用。
61.細胞の、変異ELANE対立遺伝子を不活性化する使用のための、上記44に記載のRNA分子、上記35若しくは45~53の何れかに記載の組成物又は上記36若しくは37に記載の方法により調製された組成物を含む薬物であって、前記細胞に上記44に記載のRNA分子、上記35若しくは45~53の何れかに記載の組成物又は上記36若しくは37に記載の方法により調製された組成物を送達することにより前記薬物を投与する、薬物。
62.SCN又はCyNを有する又は有するリスクがある対象におけるSCN又はCyNを治療、寛解又は防止するための、上記1~22の何れかに記載の方法、上記23~34の何れかに記載の改変細胞、上記35若しくは45~53の何れかに記載の組成物又は上記36~37に記載の方法により調製された組成物、又は上記44に記載のRNA分子、の使用。
63.SCN又はCyNを治療、寛解又は防止する使用のための、上記44のRNA分子、上記35若しくは45~53の何れかに記載の組成物、上記36若しくは37に記載の方法により調製された組成物又は上記23~34の何れかに記載の改変細胞を含む薬物であって、SCN又はCyNを有する又は有するリスクがある対象に、上記44のRNA分子、上記35もしくは45~53の何れかに記載の組成物、上記36若しくは37に記載の方法により調製された組成物又は上記23~34の何れかに記載の改変細胞を送達することにより前記薬物を投与する、薬物。
64.上記44に記載のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列、及び前記細胞の前記変異ELANE対立遺伝子を不活性化するために、前記RNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又は前記tracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列を前記細胞に送達するための説明書を備える、前記細胞の変異ELANE対立遺伝子を不活性化するためのキット。
65.上記44に記載のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列、及びSCN又はCyNを治療するよう前記RNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列を前記SCN又はCyNを有する又は有するリスクがある対象に送達するための説明書を備える、前記対象のSCN又はCyNを治療するためのキット。
66.上記35若しくは45~53の何れかに記載の組成物、上記36若しくは37に記載の方法により調製された組成物、又は上記23~34の何れかに記載の改変細胞、及び前記細胞の前記ELANE遺伝子を不活性化するよう前記組成物を前記細胞に送達するための説明書を備える、前記細胞の変異ELANE対立遺伝子を不活性化するためのキット。
67.上記35若しくは45~53の何れかに記載の組成物、上記36若しくは37に記載の方法により調製された組成物、又は上記23~34の何れかに記載の改変細胞、及びSCN又はCyNを治療するよう上記35若しくは45~53の何れかに記載の組成物、上記36若しくは37に記載の方法により調製された組成物、又は上記23~34の何れかに記載の改変細胞をSCN若しくはCyNを有する又は有するリスクがある対象に送達するための説明書を備える、対象のSCN又はCyNを治療するためのキット。
【外国語明細書】