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特開2024-160292マグノリア及びキハダを有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160292
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】マグノリア及びキハダを有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20241106BHJP
   A61K 36/575 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 36/756 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K36/575
A61K36/756
A61K38/38
A61P25/22
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024129938
(22)【出願日】2024-08-06
(62)【分割の表示】P 2022172193の分割
【原出願日】2016-08-31
(31)【優先権主張番号】62/212,080
(32)【優先日】2015-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500379107
【氏名又は名称】ニュートラマックス ラボラトリーズ,インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】946 Quality Drive, Lancaster, South Carolina 29720 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,トッド
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ブレッドソー,デイヴィッド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】不安緩解特性をもつ天然物組成物を提供する。
【解決手段】本発明の不安緩解組成物は、マグノリア抽出物、キハダ抽出物、L‐テアニン、乳清タンパク質、および/またはS-アデノシルメチオニン(SAMe)のうち一種からそれ以上を有する相乗効果を示す組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不安緩解用の組成物であって、これを要する哺乳動物へ投与する、乳清タンパク質並びにマグノリアの抽出物及びキハダの抽出物を有する不安緩解用の組成物。
【請求項2】
前記乳清タンパク質がα-ラクトアルブミンを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は鎮静作用なく不安緩解変化を導入する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記哺乳動物について、ヒト、ペット動物、およびウマ科動物からなる群から選択する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
不安の徴候を抑制、緩和または治療する方法であって、これを必要とするヒト以外の哺乳動物へ乳清タンパク質並びにマグノリアの抽出物及びキハダの抽出物を有する組成物を投与して、不安の徴候を抑制、緩和または治療する方法。
【請求項6】
前記乳清タンパク質がα-ラクトアルブミンを有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が鎮静作用なく不安緩解変化を導入する請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物について、ヒト、ペット動物、およびウマ科動物からなる群から選択する請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は2015年8月31日に出願された米国仮特許出願第62/212,080号の優先権を主張し、この仮特許出願の内容を援用する出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、全体としてマグノリア、キハダ(phellodendron)、テアニン、乳清タンパク質(whey protein)および/またはS-アデノシルメチオニンを含有する不安緩解組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
不安、恐怖やストレスは大きな役割を果たし、ある意味多数のヒトやヒト以外の動物の行動障害の一因になっている。例えば、犬や猫の場合、嵐恐怖症、騒音恐怖症、社会的回避、恐怖関連攻撃、脅迫障害や服従的な排尿は明らかな不安要素であるが、尿マーキング、縄張り侵略やリソースガーディングなどの問題でさえ恐怖や不安によって増幅する。米国では、恐怖障害や不安障害にかかっている犬は2千3百万匹と推定され、治療や資産損傷にかかるコストが10億ドルに達している。保護施設に回されている犬のうち、およそ40%以上が行動上の問題のため捨てられ、猫のうち14%が行動問題のため放棄されている。ペットとしての猫の場合、行動問題がいぜんとして安楽死の最も普通に見られる原因である。ペットの飼い主に関する最近の調査によれば、犬の飼い主のうち41%が、飼っている犬が時々不安を示し、現在飼っている犬のうち29%が不安問題を抱えていると報告している。これら飼い主が報告している不安のうち最もよく見られる不安は、騒音恐怖症(17%)、分離不安(13%)、全般性不安(5%)である。
【0004】
ウマの場合の不安も同様に馬産業に共通して認められる問題であり、行動上の問題、調教問題、能力低下の一因である。場合にもよるが、不安レベルが上昇すると、胃潰瘍などの健康関連問題が発生し、一部の研究では、ウマの多くに影響していることが示されている。馬の場合、不安は胃潰瘍の形だけでなく、行動的には突然の駆け出し、ジャンプ、パニック行動、馬運車への乗り込み困難、側対歩、馬房への入出拒否、蹄で地面をかく、噛みつきなどの形で現れる。犬の場合、不安障害の最も普通に見られるリスクファクターは、動物の保護施設や多数の養育先で獲得されたファクターであり、保護施設からの犬のうち68.3%以下がある形態の不安障害を抱えていると考えられる。行動診断に関する今までの一つの研究は、ダルメシアン、イングリッシュスプリンガースパニエル、ジャーマンシェパード、および混血種の場合には血統からの予測(breed predilections)が考えられることを示している。一方別な研究は、コッカースパニエル、シュナウザーやダックスフントなどは分離不安を発症する恐れがあることを示唆している。不安障害の発症は、年齢と共に増加し、その大きな理由は認識機能の欠損であり、三歳未満の犬では発症率22.5%であり、八歳以上の犬では発症率は36.5%に達する。
【0005】
恐怖は、ペットが脅威または危険と認識する具体的な刺激(物体、騒音、個人であるヒトなど)の存在による情動的な反応である。対照的に、不安は予想される危険または脅威に対する懸念または不愉快に関する反応である。換言すると、不安は確認できる刺激のない場合に現れる一方、恐怖に関しては、刺激は通常確認できる。不安およびこれに伴う心理学的ストレスの場合、短期間では病的状態にはならないが、ストレスや不安が慢性状態になると、ペットの健康、生活の快適性および寿命が損なわれることがある。従って、すべてのペットに対して最適な健康および快適性を担保するために、獣医は不安をペットにおける考えられるもう一つの病的状態と見なす。極端な場合、恐怖症は真の脅威がなくても発症するか、あるいは実際の脅威に対処する必要性とは無関係に発症する激しく、過度な異常恐怖反応である。恐怖は正常な適応反応であるが、恐怖症は異常であり、適応不良であり、一般的には正常機能を妨害する。不安は中程度の反応であり、見落とされることが多く、あるいは誤解されることが多いが、ペットの日常の健康に有意味な衝撃を与えることがある。
【0006】
犬の場合恐怖および不安の臨床的サインには、過度な警戒心、排泄、破壊、過度な発声、唾液過多、喘ぎ、隠れ行動、震え、逃亡行動がある。猫の場合、慢性的な不安および恐怖も過度なグルーミング、スプレイング(spraying)、猫同士間攻撃などの二次的な行動問題を引き起こし、猫の免疫系の犠牲による健康問題の素因になる。恐怖や不安の臨床的なサインの多くは、ペットおよび飼い主両者に対して有害であり、また両者を悩ますものであるため、飼い主がなぜこのような障害に対してアドバイスを求めるかの理由を容易に理解できるはずである。偶然ではないが、動物を保護施設へ手放すことに対して最も普通に見られるリスクファクター、および犬猫両者の安楽死に対して最も普通に見られるリスクファクターには、ハウスソイリング(house-soiling、不適切な排泄)、破壊、攻撃および過度に異常な行動があり、これらはいずれも不安の潜在的な臨床サインである。
【0007】
不安障害は単独で発症することは珍しく、多くは複数の組み合わせで発症する。雷雨恐怖症および騒音恐怖症は必ずしも同時に発症することはないが、雷雨恐怖症、騒音恐怖症および分離不安は単独で発症する場合よりも複数同時発症することのほうが考えられる以上に多い。この証拠は、ペット不安症の正確な原因は、確定することが難しく、同じペットに複数の病状が発症していることを示唆している。
【0008】
ヒトの場合、行動障害の“起因(triggers)”および発症の仕方は異なるが、不安、恐怖およびストレスはヒトの障害の素因となっている。ヒトやヒト以外の動物の行動障害を緩和する試みでは、ある種の合成薬が開発されている。例示すると、クロミプラミン塩酸塩、フルオキセチン塩酸塩、ベンゾジアゼピンやマレイン酸アセプロマジンがあるが、これらはいずれもヒトおよび/またはヒト以外の動物の不安を緩和する試みにおいて使用されてきた薬剤組成物である。これら薬剤は不安からの多少の解放を与えるが、大きな副作用として鎮静作用があり、ヒトやヒト以外の動物に傾眠傾向が出る。さらに、これら薬剤の多くは合成組成物であり、ヒトにとっては摂取を躊躇うものであり、またペットに投与することにも躊躇いが生じるものである。
【0009】
不安の生化学作用は非常に複雑であり、多くは理解不能である。研究が示すところによれば、セロトニン、γ‐アミノ酪酸(GABA)、グルタミン酸、ドーパミンからコルチゾール、アドレナリン、またサイロイドホルモンまでに至るほぼすべての型の神経伝達物質およびホルモンは不安にある種の役割を果たす傾向がある。不安は、多くの意味において、脳ストレスに対する生化学反応に過ぎない。何かが脳内の微妙な化学的バランスに変化をもたらすと、結果として不安が生じることが多い。
【0010】
従って、不安の理想的な管理については、マルチモーダル(multi-modal)でなければならず、即ち作用機序のひとつかそれ以上が基礎となる化学的不均衡を標的にし、これを修正する可能性が高くなるように構成する必要がある。ところが、セロトニン選択性再取り込み阻害薬(SSRI)、三環式抗うつ薬(TCA)やベンゾジアゼピンなどのFDA認可通常薬剤は一般に単一の作用機序を通じて作用する。
【0011】
併用薬における逆の薬剤反応を追跡することが難しいため、FDAでは多数の活性成分をもつ薬剤を認可する方向にはない。従って、薬剤のみを使用するマルチモーダルアプローチは考えられない。FDAによって薬剤というよりは食品として規制されている栄養サプリメントおよび植物サプリメントは、多成分の新規な投与方法として構成でき、不安のマルチモーダルな管理に対してより大きな機会を提供するものである。この理由から、そして他の理由から、消費者が薬剤代替物を求めている現在、ヒトやヒト以外の動物に天然物を使用することがますます求められている。現在、これら天然物の一部については、既に食事療法サプリメントや各種食品に配合されている。
【0012】
上述したように、不安緩解特性をもつ天然物組成物には需要がある。この組成物は、正常な行動を支えるために役立ち、極端な傾眠性を誘導せずに鎮静効果を促進する組成物である必要がある。さらに、このような組成物は不安の臨床サインまたは症状を管理、制御できるように相乗効果をもつものでなければならない。
【発明の概要】
【0013】
本明細書で説明する目的および作用効果に従って、本発明の一つの態様は、L‐テアニンと乳清タンパク質(whey protein)を相乗的に併用した不安緩解組成物を提供するものである。実施態様では、乳清タンパク質はα‐ラクトアルブミンを有する。本発明の不安緩解組成物は、γ‐アミノ酪酸(GABA)およびセロトニンを含む一種かそれ以上の神経伝達物質の放出パターンにおける不安緩解変化を導入するものである。本発明組成物は、ヒト、ペット動物やウマ科の動物を始めとする哺乳類に経口投与できるように製剤化することができる。
【0014】
本発明の実施態様では、相乗効果を示す組成物はさらにマグノリアの抽出物(extract of magnolia)およびキハダの抽出物(extract of phellodendron)を有する。本発明の実施態様では、本発明の相乗効果を示す組成物はさらにRELORA(レロラ、リロラ、リローラ)を有する。
【0015】
本発明の別な態様は、哺乳類にL‐テアニンおよび乳清タンパク質を有する相乗効果を示す組成物を投与する、不安の症状を抑制、緩和または治療する方法に関する。本発明の実施態様では、相乗効果を示す組成物はさらにマグノリアの抽出物およびキハダの抽出物を有する。本発明の実施態様では、乳清タンパク質は、α‐ラクトアルブミンを有する乳清タンパク質濃縮物として与える。本発明の方法では、γ‐アミノ酪酸(GABA)およびセロトニンを始めとする一種かそれ以上の神経伝達物質の放出パターンにおける不安緩解変化を導入するのに十分な量で相乗効果を示す組成物を経口投与する。適用対象動物はヒト、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ウマ科の動物であればよい。
【0016】
さらに別な態様では、不安緩解組成物は、L‐テアニンおよびS‐アデノシルメチオニン(SAMe)の相乗効果を示す組成物を有する。この相乗効果を示す組成物は、グルタミン酸およびγ‐アミノ酪酸(GABA)を始めとする一種かそれ以上の神経伝達物質の放出パターンに不安緩解変化を導入するものである。この組成物については、哺乳動物に経口投与できるように製剤化することができる。本発明の実施態様では、SAMeはSAMeフィチン酸塩を有する。
【0017】
さらに別な態様では、不安緩解組成物は、L‐テアニン、乳清タンパク質、およびRELORAの相乗効果を示す組成物を有する。本発明の実施態様では、乳清タンパク質はα‐ラクトアルブミンを有する。本発明の実施態様では、乳清タンパク質は乳清タンパク質濃縮物である。
【0018】
本発明の実施態様では、本発明組成物は少なくとも2.0mgのL‐テアニン、少なくとも0.5mgの乳清タンパク質、および少なくとも0.5mgのRELORAを有する。本発明の他の実施態様では、本発明組成物は少なくとも2.0mgのL‐テアニン、少なくとも0.5mgの乳清タンパク質、および少なくとも3.0mgのRELORAを有する。
【0019】
以下、本発明の不安緩解組成物および対応する方法のいくつかの好適な実施態様を説明する。当業者ならば理解できるように、本発明組成物および方法は、他の異なる実施態様でも実施可能であり、また特許請求の範囲に記載した組成物および方法から逸脱しなくても、いくつかの細部は各種の自明な態様において一部変更可能である。従って、添付図面および説明は本質的に例示であり、限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本明細書に添付され、本明細書の一部を構成する添付図面に、本発明の不安緩解組成物のいくつかの態様を示す。これら図面は、発明の詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するものである。
図1】本発明組成物の投与後の基礎セロトニン(5-HT)出力を示す図である。
図2】本発明組成物の投与後の基礎GABA出力を示す図である。
図3】本発明組成物の投与後の基礎グルタミン酸出力を示す図である。
図4】本発明組成物の一実施態様の投与後のGABA出力の対比を示す図である。
図5図4に示した実施態様の投与後のグルタミン酸出力の対比を示す図である。
図6A】本発明組成物の投与後の高架式十字迷路(EPM)試験の結果を示す図である。
図6B】本発明組成物の一実施態様の投与後のEPM試験の対比を示す図である。
図6C】本発明組成物の別な実施態様の投与後のEPM試験の対比を示す図である。
図7A】本発明組成物の投与後のオープンフィールド(OF)試験の結果を示す図である。
図7B】本発明組成物の一実施態様の投与後のOF試験の対比を示す図である。
図7C】本発明組成物の別な実施態様の投与後のOF試験の対比を示す図である。
【0021】
以下、本発明の不安緩解組成物の実施態様を詳細に説明する。なお、本発明の実施例については添付図面に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、マグノリア、キハダ、テアニン、S-アデノシルメチオニン(SAMe)、および/または乳清タンパク質の一種かそれ以上の組成物であって、ヒトやヒト以外の動物に適用することができる組成物に関する。一つの実施態様では、本発明の組成物はMagnolia officinalis、Phellodendron amurense、L-テアニン、およびα-ラクトアルブミンを含有する。これら物質を併用すると、これに多数の異なった生化学的なプロセスが関与する。すなわち、本発明の組成物は不安緩解に対して多様なアプローチを実現可能にする。特定の理論に拘るものではないが、一つの潜在的なモードは、(グルタミン酸、GABAなどの)多数の神経伝達物質に作用するモードか、セロトニンなどの神経伝達物質レベルの産生増大モード、脳波活性を変更するモードによるものである。
【0023】
さらに本発明の背景に触れると、Magnolia officinalisは中国を原産地とするマグノリアの一種である。Magnolia officinalisの樹皮および/または抽出物は、脳内のシナプスのGABA受容体(レセプター)およびシナプス領域外GABA受容体の両者の活性を強化するホノキオール(honokiol)およびマグノロール(magnolol)を含有する。GABAは、恐怖および不安の過度な刺激を受け極度に興奮したニューロンの働きを調整する、脳の主抑制神経伝達物質(chief inhibitory neurotransmitter)である。これら化合物の作用は、特異的なGABAレセプターに選択的に結合する作用と考えられ、鎮静作用を示さずに、ホノキオールおよびマグノロールが不安緩解作用を示す理由を説明することができる。
【0024】
Phellodendron amurenseは、通常キハダと呼ばれている樹木の一種である。キハダの果実、樹皮および/または抽出物には、化合物ベルベリンが豊富に存在している。マグノリアに加えてキハダ抽出物を併用すると、相乗的な効果を発揮し、単独で使用する場合よりもストレスおよび不安を抑制する効果が強くなる。一般的には、相乗効果は、2種以上の成分を併用した場合に、単独使用時の効果の合計よりも強い結果が得られる効果を示す。本発明の好適な実施態様では、相乗効果は加法的な効果よりも強い。マグノリアに加えてキハダ抽出物を併用した場合に認められる相乗効果は、ベルベリンがシナプス前のニューロンによってグルタミン酸がシナプスクレフト内に放出されることを抑制する事実による効果と考えることができる。このような併用によって、興奮性神経伝達物質グルタミン酸および抑制性神経伝達物質GABAの両者をシナプスレベルで調節することができる。実験室モデルでは、マグノリアとキハダを併用すると、ノイズ誘導不安のプラシーボ効果型臨床試験においてビーグル犬の不安を緩解できる。本発明の一部の実施態様では、マグノリアおよびキハダの併用薬として市販の製剤(RELORA、InterHealth Nutraceuticals,Inc.Benicia、Canada)を投与することができる。
【0025】
神経伝達物質グルタミン酸およびGABAは拮抗的に作用し、脳内のニューロン間の相互作用を調節する。グルタミン酸は主要な興奮性神経伝達物質であり、ニューロンの刺激および電気刺激に対する感受性を強くする。グルタミン酸は、過度の刺激を受けた場合の結果であることが多い、恐怖や不安に対して重要な役割を果たす。GABAは神経系における主要な抑制性神経伝達物質であり、グルタミン酸の効果を鎮静化および反転化することによって不安を制御するさいに同じように重要な役割を果たす。
【0026】
一つの実施態様では、マグノリアに加えてキハダ抽出物を併用するが、この併用は相乗効果を示し、化合物を単独使用する場合よりもストレスおよび不安をより効果的に制御する。この相乗効果は、これら化合物がグルタミン酸およびGABAの両者にシナプスレベルで示す効果によるものである。Magnolia officinalis抽出物、具体的にはその成分であるホノキオールおよびマグノロールが、脳内のシナプスのGABA受容体およびシナプス領域外GABA受容体の両者の活性を強める。Phellodendron amurense抽出物はベルベリンを含有する。ベルベリンは、グルタミン酸のシナプス前ニューロンによってシナプスクレフトへの放出を抑制する。換言すると、マグノリア抽出物がGABAを安定化する効果を強め、キハダ抽出物由来のベルベリンが興奮性のグルタミン酸の放出を阻止する。
【0027】
ベルベリンはPhellodendron amurenseに存在する明るい黄色のアンモニウム塩であり、オレゴングレープ、メギ、キンポウゲ、オウレンやウコンなどの植物にも存在する。通常、ベルベリンはこれら植物の根、根茎、幹や樹皮に存在する。
【0028】
L-テアニンは、アミノ酸グルタミン酸の構造的な類似体であり、神経系の最も重要な興奮性神経伝達物質である。多種類の茶の木に自然に存在するテアニンはグルタミン酸受容体を結合し、これをブロックし、従って興奮性のインパルスを抑制し、かつグルタミン酸の刺激効果を下げることによって神経保護効果を発揮するものと考えられる。テアニンは脳内のセロトニン、ドーパミンやGABAなどの神経伝達物質の安定性のレベルを高くする。また、テアニンはα脳波の発生を直接刺激し、深い緩和、覚醒および精神的な警戒感の状態を創り出す。
【0029】
α‐ラクトアルブミンは、ある種の乳清タンパク質組成物の一つの成分であり、また動物にアミノ酸を補給する高質な蛋白質源である。牛乳は、特に幼児および若い動物に対して食後鎮静特性を示す飲料と長い間考えられてきた。牛乳の不安緩解効果に関するヒトへの最初の研究は、1930年代に始まり、牛乳中のある種のタンパク質に鎮静効果があることが確認されている。α‐ラクトアルブミンは、抗酸化物質グルタチオン(システイン)および気分強化神経伝達物質セロトニン(トリプトファン)にアミノ酸前駆体を与えることによって神経保護特性を発揮する。
【0030】
脳は、身体が利用する酸素のうちほぼ20%を消費するため、反応性酸素種(ROS)がきわめて高い速度で発生し、脳細胞が特に酸化損傷を受けやすい。完全に発達した脳内のニューロンがなくなると、これは新しいニューロンの発生によっては代償できない。即ち、ROSの産生と抗酸化物質とのバランスが崩れ、幾種類かの神経学的障害の原因となる。グルタチオンは、神経系に存在する支配的な抗酸化物質である。脳細胞のグルタチオン含量は、グルタチオン前駆体をどの程度利用できるかに強く依存する。α‐ラクトアルブミンは、グルタチオンのアミノ酸前駆体であるシステインを補給する。
【0031】
脳のセロトニンレベルはストレス下では上昇するため、神経伝達物質は情動状態および気分を調節する重要な物質である。慢性的にストレスおよび不安が存在すると、セロトニンおよびその前駆体であるトリプトファンの利用できる濃度が不足し、セロトニンが機能的に必要な量に達しないことがある。α‐ラクトアルブミンはトリプトファン、および自然食品タンパク質源由来の他のアミノ酸の混合物を含有し、研究によれば、α‐ラクトアルブミンを食事療法的に補給すると、脳のトリプトファン活性およびセロトニン活性が強くなるため、ストレスに弱い被検体の認識能力が改善することが示唆されている。本発明の一つの実施態様では、α‐ラクトアルブミンが組成物の他の成分のセロトニン効果に相乗作用を与えるため、作動モードが一つ増えることになる。
【0032】
S‐アデノシルメチオニン(SAMe)は、自然に存在する化合物であり、体内全体の組織に存在する。分子レベルでは、SAMeはトランスメチル化経路(transmethylation)、トランススルフレーション経路やアミノプロピル化経路を始めとする各種の代謝経路に関与する。体内においては、SAMeはアミノ酸、メチオニン、およびトリホスフェートヌクレオチド(triphosphate nucleotide)から合成され、次にホルモンや神経伝達物質を始めとする多数の生物学的分子の生合成に関与する。
【0033】
SAMeを被験者に投与すると、各種の健康増進効果を発揮することが知られている。SAMeは遺伝子発現を調節し、遺伝子の突然変異の予防に役立つ。また、SAMeはミトコンドリア機能を維持し、リン脂質合成に関与し、細胞膜の完全性を維持し、セロトニン、ドーパミンやエピネフリン(アドレナリン)などの神経伝達物質、およびエストロゲンやメラトニンなどのホルモンを調節する。SAMeについてはさらに、虚血後のニューロン死を抑制し、脳内におけるグルコースの利用度を改善し、脳水腫を抑制し、EEGおよび誘導電位による発見物を正常化することによってこれらを改善し、発作によって損なわれた運動機能などの運動機能を改善することも知られている。SAMeは、例えば多数の薬剤研究のメタ分析において、情動の健全性を強化し、多くの処方薬と同程度な効果を示すが、これらの処方薬とは異なり副作用は著しく少ない。また、SAMeは不安、慢性の痛み、関節炎、リューマチ性線維筋痛症、慢性疲労症候群、アルツハイマー病に関連する認識困難、神経脈管疾患、およびAIDSに関連する神経病を治療するためにも使用されている。SAMeは中心神経系や末梢神経系の疾患を治療できるだけでなく、関節疾患、心臓血管系疾患、肝臓疾患も改善できる。
【0034】
当初、SAMeは製造時、輸送時や保存時そのイオンが不安定であるため、実際的ではないと考えられていたが、最終的にSAMeの安定な塩が開発された。例示すると、SAMeトシル酸二硫酸塩(tosylate disulfate)、SAMeのブタンジスルホン酸塩(butanedisulfonate salt)、SAMeのジ‐p‐トルエンスルホン酸二硫酸塩(di-para-toluene sulfonate disulfate salt)、SAMeのトリ‐p‐スルホン酸塩(tri-para-toluene sulfonic acid salt)、SAMeのブタンジスルホン酸塩(butanedisulphonate salt)、SAMeのジスルフェート p‐トルエンスルホン酸塩(disulfate p-toluensulfonate salt)などを挙げることができる。本発明の例示的な実施態様では、SAMeはフィチン酸の市販SAMe塩として投与する。
【0035】
当業者ならば、Magnolia officinalis、Phellodendron amurense、L‐テアニンおよび乳清タンパク質の組成物はそれぞれの成分を任意の量で含有できることを理解できるはずである。各成分は乳清タンパク質濃縮物などの濃縮物でもよい。さらに、ヒト被検体やヒト以外の動物被検体(哺乳動物、鳥、魚、爬虫類動物など)に本組成物を使用できる。
【0036】
一つの実施態様では、ヒト以外の動物を対象とする組成物は、0.5~3mgのMagnolia officinalis、0.03~0.2mgのPhellodendron amurense、17.0~450mgのL‐テアニン、および12.0~100mgのα‐ラクトアルブミンを含有することができる。あるいは、別な実施態様では、ヒト以外の動物を対象とする組成物は、0.01~10gのMagnolia officinalis、0.01~10gのPhellodendron amurense、0.01mg~10gのL‐テアニン、および0.01mg~10gのα‐ラクトアルブミンを含有することができる。
【0037】
一つの実施態様では、本発明組成物は少なくとも0.5mgのRELORA、少なくとも2.0mgのL‐テアニン、少なくとも0.5mgの乳清タンパク質、および少なくとも1.5mgのSAMeを含有することができる。
【0038】
一つの実施態様では、イヌ科などのヒト以外の動物を対象とする本発明組成物は少なくとも6.0mgのRELORA、少なくとも3.0mgのL‐テアニン、少なくとも1.0mgの乳清タンパク質、および少なくとも3.0mgのSAMeを含有することができる。
【0039】
一つの実施態様では、ネコ科などのヒト以外の動物を対象とする本発明組成物は少なくとも3.0mgのRELORA、少なくとも2.0mgのL‐テアニン、少なくとも0.5mgの乳清タンパク質、および少なくとも1.0mgのSAMeを含有することができる。
【0040】
一つの実施態様では、ウマ科のヒト以外の動物を対象とする本発明組成物は少なくとも20.0mgのRELORA、少なくとも15.0mgのL‐テアニン、少なくとも5.0mgの乳清タンパク質、および少なくとも10.0mgのSAMeを含有することができる。
【0041】
一つの実施態様では、ヒトを対象とする本発明組成物は少なくとも20.0mgのRELORA、少なくとも15.0mgのL‐テアニン、少なくとも5.0mgの乳清タンパク質、および少なくとも10.0mgのSAMeを含有することができる。
【0042】
犬や猫などのペット動物を対象とする一つの実施態様では、本発明組成物は一回の投与形態として37mgのRELORA、17mgのL‐テアニン、および12mgの乳清タンパク質を含有することができる。
【0043】
犬や猫などのペット動物を対象とする一つの実施態様では、本発明組成物は一回の投与形態として75mgのRELORA、35mgのL‐テアニン、および25mgの乳清タンパク質を含有することができる。
【0044】
犬や猫などのペット動物を対象とする一つの実施態様では、本発明組成物は一回の投与形態として450mgのRELORA、205mgのL‐テアニン、および100mgの乳清タンパク質を含有することができる。
【0045】
犬や猫などのペット動物を対象とする一つの実施態様では、本発明組成物は一回の投与形態として0.5mgのMagnolia officinalis抽出物、0.03mgのPhellodendron amurense抽出物、17mgのL‐テアニン、および12mgのα‐ラクトアルブミンを含有することができる。
【0046】
ウマ科の動物を対象とする一つの実施態様では、本発明組成物は750mgのRELORA、150mgのL‐テアニン、および1000mgの乳清タンパク質を含有することができる。
【0047】
ウマ科の動物を対象とする一つの実施態様では、本発明組成物は1500mgのRELORA、300mgのL‐テアニン、および1000mgの乳清タンパク質を含有することができる。
【0048】
当業者ならば、各成分マグノリア、キハダ、テアニンおよび/または乳清タンパク質(またはα‐ラクトアルブミン)を任意に組み合わせ、結合できることを理解できるはずである。例えば、一つの実施態様では、マグノリア抽出物およびα‐ラクトアルブミンで構成することができ、キハダまたはテアニンは使用しない。あるいは、本発明の組成物は、キハダ抽出物およびα‐ラクトアルブミンで構成することができ、マグノリアまたはテアニンは使用しない。また、マグノリア、キハダ、テアニン、および/または目的の反応を与える乳清タンパク質(またはα‐ラクトアルブミン)のうちの単独成分、またはこれら単独成分を有する組み合わせを提供できる。製剤については、他のフラボノイド、ω‐3脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)、バレリアン、SAMe、あるいは(α‐S1トリプシンカゼインなどの)他の牛乳タンパク質、あるいは牛乳タンパク質を含有する産生物、および/またはSceletium tortuosumを有することも可能である。
【0049】
本発明組成物は任意に組み合わせることができ、ヒトまたはヒト以外の動物に任意の組み合わせで提供できる。本発明の一つの実施態様では、本発明組成物は単位投薬/投与形態を有し、制限するものではないが、例示すると経口投与、直腸投与、静脈注射投与、経皮投与、筋肉注射投与、経皮投与、経粘膜投与、局所投与などが好適である。
【0050】
本発明組成物は、経口投与が可能な投与形態をもつ。経口投与可能な投与形態について、制限するものではないが例示すると、錠剤、カプセル剤、液体に分散できるか、あるいは食品に振りかけることができる粉薬、溶液、懸濁液やエマルジョンなどの液体薬、柔らかいゲル/チューインカプセル剤、チューインバーやその他の公知投与形態である。本発明の一部の実施態様では、本発明組成物は錠剤、カプセル剤、または柔らかいチューイン剤を含む。経口投与可能な投薬形態については、即時放出、延長放出または遅延放出が可能である。本発明組成物は被覆してもよく、あるいは被覆しなくてもよい。

実施例1:不安緩解組成物で7日間治療した後のC57B1/6マウスの海馬透析物サンプルにおける神経伝達物質放出パターンの評価
【0051】
脳内の神経伝達物質の放出パターンについて、実験動物の視床下部領域に挿入し(微小透析プローブ)、人工脳脊髄液(CSF)を使用して透析によってプローブをフラッシュ処理する手順によって測定した。これは、神経伝達物質およびその他の小さなタンパク質のインビボ脳内レベルを取得し、これを測定する許容された共通方法である。
【0052】
回収された液体は、脳の海馬部位に存在していた細胞外液および間質液を表す。この部位は、通常微小透析にとって好ましく、かつ一般的な部位である。というのは、脳のこの部位で何らかの変化が測定された場合、これは脳組織全体の約80%に相当すると考えられるからである。上記液体の神経伝達物質のレベルは、これら神経伝達物質のシナプス前ニューロンによる放出とこれら神経伝達物質のニューロンへの再取り込みとの間の複雑なバランスを表すだけでなく、神経伝達物質間に相互作用がある場合にはこの相互作用を示すものである。従って、これら結果は、化合物や化合物組成物が脳の神経化学にどのように影響するかを示す。
【0053】
メスC57B1マウスをグループ分け(6匹/グループ)し、各種の化合物またはプラシーボを7日間経口投与し、評価を行った。6日目に各マウスを麻酔処置し、脳の海馬部位に微小透析プローブを挿入した。各プローブを微小灌流ポンプに接続し、人工CSFで灌流した状態で、微小透析サンプリングを手術後の翌日に開始した。7日目に各化合物を投与する90分前に30分アリコートでサンプルを取得した。次に、各アリコートを分析し、各サンプル中のGABA、グルタミン酸およびセロトニン(5‐HT)を定量した。神経伝達物質の分析を二段階で行い、各化合物の慢性効果および急性効果を確認した。
【0054】
以下に記載する結果において、化合物AはL‐テアニン、化合物BはMagnoliaofficinalis抽出物およびPhellodendron amurense抽出物を有する組成物、化合物Cはα‐ラクトアルブミンを有する乳清タンパク質、化合物DはSAMe、そして化合物Eはグルタチオンである。実施態様で使用した化合物Bは市販の製剤(RELORA、InterHealth Nutraceuticals,Inc.Benicia、CA)である。実施態様で使用した化合物Cは、80%α‐ラクトアルブミンに標準化した。また実施態様で使用した化合物Dは、市販のSAMeフィチン酸塩とした。化合物Aの投与量は6.66mg/kg、化合物Bの投与量は12.5mg/kg、化合物Cの投与量は2.36mg/kg、化合物Dの投与量は6.02mg/kg、そして化合物Eの投与量は13.6mg/kgであった。種間外挿の等価投与量については、当業者ならば、通常の投与量変換法によって算出できる。

基礎神経伝達物質出力
【0055】
まず、各神経伝達物質の基礎出力レベルについて、測定を行い、神経伝達物質への各化合物の長期間にわたる慢性効果を求めた。基礎レベルは、24時間サイクルにおける各神経伝達物質の最低レベルを表す。7日目の投与日の前に3種類の30分アリコートにおける各神経伝達物質のレベルの平均算出することによってこれらレベルを求めた(サンプル-90分~-60、サンプル-60分~-30、およびサンプル-30分~時間0)。基礎レベルについては、化合物の神経伝達物質レベルに対する慢性効果を表すものとして測定した。即ち、新規に投与する前に認められた最小効果が何であるかを測定した。次に、これら化合物の急性効果を決定するために、各化合物/組成物の7日目の投与後3.5時間(210分)までに投与した後のアリコートで、各神経伝達物質のレベルを分析した。
【0056】
上記組成物の個々の成分それぞれだけでなく、それぞれの成分を有する組成物を6日間投与した後に、セロトニン(5‐HT)、GABAおよびグルタミン酸の基礎出力を測定した。次に、各神経伝達物質の平均濃度について、スチューデント式試験によってプラシーボ群について測定された平均基礎出力と比較し、2組のデータ間に有意差があるかどうかを決定した。
【0057】
セロトニンに関して、評価対象化合物のそれぞれは、セロトニンの基礎出力に対して統計的に有意な効果(p‐値<0.05)が認められなかった(図1を参照)。即ち、例えば、L‐テアニン、RELORA、あるいは乳清タンパク質はいずれも基礎セロトニンレベルに効果を示さなかった。他方、化合物A+B+C(テアニン+マグノリア/キハダ+乳清タンパク質)の組成物では、セロトニンの基礎出力に対して統計的に有意な効果(p‐値<0.05)が認められた。L‐テアニンおよび乳清タンパク質を有する組成物(A+C)も、基礎セロトニンレベルが有意に低くなった。これら結果は、脳セロトニンレベルに対する組成物の予期しなかった相乗効果を説明するものである。
【0058】
テアニン/マグノリア/キハダ(A+B)、およびL‐テアニンおよび乳清タンパク質(A+C)の組成物については、GABAレベルの予期しなかった相乗効果の向上が認められた(図2を参照)。同様に、テアニンおよびSAMe(A+B)の組成物も基礎GABA出力が有意に向上した。
【0059】
基礎グルタミン酸出力(図3を参照)については、テアニン/マグノリア/キハダ(A+B)の組成物でも上昇が認められた。同様に、テアニンおよびSAMe(A+B)の組成物も基礎グルタミン酸出力に有意な向上が認められた。

急性神経伝達物質出力
【0060】
各化合物および/または各組成物の7回目の投与後に、投与後210分まで30分増分でCSFのアリコートを回収した。各アリコートにおける神経伝達物質の濃度は、基礎出力結果に表れなかった急性の短期間変化を示す。
【0061】
結果をグラフにプロットした。なお、x軸は7日目の投与後の時間を示し、y軸は実験の前半部分で判明した基礎出力増減率%を示す。この測定値を使用する理由は、神経伝達物質の実際の濃度が被検体動物間で有意にバラツクためである。この方法を使用すると、データを標準化できる上に、本質的に各動物が自己の個々の制御に対処できる。次に、分散分析(ANOVA)を使用して結果を分析し、何らかの統計的に有意な治療効果があるかについて検出を行った。
【0062】
まず、GABAに対するこれら化合物の急性効果を見ると、ANOVA(p<0.05)によって分析する限り、試験期間中プラシーボと比較した場合、個々の成分A、BまたはCについては、統計的に有意な治療効果は認められなかったが、図4に示す通り、ANOVAによって分析した場合、成分(A+B+C)の組成物の治療効果は、プラシーボよりも統計的に有意差が認められた。従って、これら結果は、L‐テアニンおよびマグノリア/キハダおよび乳清タンパク質(A+B+C)の組成物はGABAに対して有意な相乗効果を示すが、各成分それ自体は効果を示さないことを説明するものである。
【0063】
グルタミン酸に関しては、個々の成分(A、B、C)も、あるいは組成物(A+B+C)もグルタミン酸レベルに対して直接的な治療効果を示さなかったが、これら結果は、投与後120~210分後に組成物(A+B+C)が治療効果を発揮する傾向を説明するものである(図5を参照)。当業者ならば、グルタミン酸レベルの変化が、誘導することがより難しい神経伝達物質変化のうちの一つであることを理解できるはずである。

実施例2:本発明組成物の不安緩解特性の行動試験による評価
【0064】
ウィスターラット(16匹/グループ)に個々の成分(L‐テアニン、マグノリア/キハダ、および乳清タンパク質)を投与し、三方向組成物(テアニン+マグノリア/キハダ+乳清タンパク質)を始めとするこれら三成分の何種類かの組成物を投与した。マグノリア/キハダ組成物としては市販の(RELORA、InterHealth Nutraceuticals,Inc.Benicia、Canada)を投与した。投与した乳清タンパク質については、80%α‐ラクトアルブミンに標準化した。ラットには、14日間にわたって毎日投与し、次に一連の行動評価を行って、ラットに不安緩解効果、あるいは鎮静効果があったかを検出した。治療グループは次の通りであった。
1:L‐テアニン+マグノリア/キハダ
2:L‐テアニン+乳清タンパク質
3:マグノリア/キハダ+乳清タンパク質
4:L‐テアニン+マグノリア/キハダ+乳清タンパク質
5:L‐テアニン
6:マグノリア/キハダ
7:乳清タンパク質
ラットを以下のグループに分けた。

高架式十字迷路試験
【0065】
高架式十字迷路(EPM)試験は、明るく照明された、開放高架エリアにおける齧歯動物の自然な嫌悪感(特徴的な不安)を利用する試験である。EPMは予測力がきわめて高く、化合物の潜在的な不安緩解活性を解明するために利用されることが多い。この試験を行っている間、高架式迷路に置いた後にラットのビデオ撮影を行う。ビデオ画像を分析し、ラットが迷路の開放高架部分に止まっている時間の%を求める。開放アームにより長く止まったラットについては、感じている不安が少ないと考える。以下の表1に、各ラットが迷路の開放アームで費やした平均時間量を示す。









表1
【0066】
この実験では、治療4の成分を有する組成物を投与したラットは、プラシーボを投与したラットよりも迷路の開放アームに平均して3分間長く止まり(図6Aを参照)、化合物の不安緩解効果を示した。同様に、(治療2)のL‐テアニン/乳清タンパク質を有する組成物を投与したラットは、プラシーボを投与したラットよりも迷路の開放アームに平均して5分間長く止まり(図6を参照)、化合物の不安緩解効果を示した。(治療1)のL‐テアニン/マグノリア/キハダ組成物、および(治療3)のマグノリア/キハダ/乳清タンパク質組成物は、事後対比において統計的に有意な効果を示した(いずれもp<0.05で分析;それぞれ図6Bおよび図6Cを参照)。

鎮静の尺度としてのオープンフィールド活性
【0067】
オープンフィールド試験における歩行運動活性は、ある化合物の鎮静特性のすぐれた尺度である。一例として、ベンゾジアゼピンなどの多くの不安緩解化合物の顕著な副作用は、投与に関連する著しい鎮静作用である。これらの物質は効果がかなりすぐれた不安緩解剤であるが、望ましくない鎮静作用を有していることが多い。
【0068】
この試験は、照明が明るく、出入りが自由な囲み体の中にラットを入れることによって行う。ラットをビデオ撮影し、試験中にラットが歩行移動した全距離を歩行運動活性の指標として記録する。鎮静作用を受けたラットは歩行移動距離が短くなり、活動的なラットは全歩行移動距離がより長くなる。

表2
a:一匹のラットについては、ビデオ追跡が不正確であったため分析から排除した。
【0069】
表2に記載し、かつ図7Aに図示した結果は、投与した化合物/組成物はいずれもラットの歩行運動活性に鎮静効果をもたないことを示す。いずれのラットもプラシーボよりも活動的で、探索や探知にどん欲な興味を示した。実際、事後対比は歩行運動活性が高くなる傾向を示した。これは、特に治療1[t(30)=3.58、p<0.01;t‐試験]および治療3[t(30)=1.99、p<0.06;t‐試験]についていえる(図7Bおよび図7Cを参照)。鎮静作用を示さずに不安緩解効果をもつ化合物は、不安の治療剤としてきわめて望ましい候補と考えられる。
【0070】
以上の結果から、経口投与に好適な上に効果のある組成物を提供でき、各種の実施態様において、各種の神経伝達物質の放出パターンに変化を導入できることによって示されるように、脳神経化学に影響を与えることができることを理解できるはずである。その上、各種の行動評価は各種の本発明組成物の不安緩解効果を実証するものである。本発明の組成物の個々の化合物は脳神経化学や行動に効果を示さないが、驚くべきことに、組成物には相乗効果が認められた。
【0071】
以上の記載は、説明を目的とするものであり、網羅的な説明ではなく、換言すれば実施態様を開示してきた正確な形態に限定するものではない。上記開示に照らせば、自明な一部変更などは実施可能である。上記の実施態様は、当業者ならば、本発明を各種実施態様で実施でき、かつ意図する具体的な用途に対応できるベストな実施可能態様を提供するように選択したものである。これら一部変更などは、公正な、法的な、また公平な範囲に従って解釈した場合に特許請求の範囲内に包摂されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C