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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160302
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20241106BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B25J5/00 A
B25J13/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024130559
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2021547919の分割
【原出願日】2019-10-28
(31)【優先権主張番号】102018126873.4
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521181769
【氏名又は名称】フランカ エーミカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FRANKA EMIKA GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワ―ルマン ロックハルト、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スペニンゲル、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ザーバクヒアン、モハマドレーツァ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーネ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クー、ツェンク
(72)【発明者】
【氏名】ゴル、トーレ
(72)【発明者】
【氏名】ワーフィック、アーメド
(72)【発明者】
【氏名】ロインゲル、ベンヤーミン
(72)【発明者】
【氏名】クグレル、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】カーラフェル ガルシア、カーレス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本願発明は、特に可動ベース部分と少なくとも一つの複数の関節により結合されたマニピュレータを有する可動ロボットに関する。
【解決手段】ロボット(1)は複数の遠隔装置(2,3,4,5)を有する。またマニピュレータの支援により人間の手足と一緒に所定の動きのシーケンスを行うロボットに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ベース部分(6)と
少なくとも一つの多関節結合のロボットアーム(10)と、を有するロボット(1)であって、
前記ロボット(1)は、前記可動ベース部分(6)によって空間中を自由に動けるので人間に対して相対的に動くことができ、
前記ロボットアーム(10)は、独立した動きによって、または、遠隔制御の一環として前記人間と、さらに少なくとも一つの遠隔監視装置(2)、および/または少なくとも一つの遠隔診断装置(3)、および/または少なくとも一つの遠隔測定装置(4)、および/または少なくとも一つの遠隔療法装置(5)と、直接的にまたは間接的に相互作用をするように作られ、
前記ロボットアーム(10)はコンプライアンス制御され、
このコンプライアンス制御は、関節レベルで実際のトルクの制御を行なうインピ―ダンス制御に基づくものであり、
所望の動力学的な動きによって、さらに決められた予定された位置と実際の位置のずれ、および/または予定された速度と実際の速度のずれ、予定された加速度と実際の加速度のずれを考慮して、力またはトルクが決められ、
この決められた力またはトルクが、関節および軸の数と構造さらに自由度によって決まる前記ロボットの既知の運動学を用いて、トルク制御によって設定される所定の関節トルクに反映されるロボット。
【請求項2】
前記少なくとも一つの多関節結合のロボットアーム(10)が前記少なくとも一つの遠隔監視装置(2)、および/あるいは前記少なくとも一つの遠隔診断装置(3)、および/あるいは前記少なくとも一つの遠隔測定装置(4)、および/あるいは前記少なくとも一つの遠隔療法装置(5)を起動する、並びに/または、前記少なくとも一つの遠隔監視装置(2)、および/あるいは前記少なくとも一つの遠隔診断装置(3)、および/あるいは前記少なくとも一つの遠隔測定装置(4)、および/あるいは前記少なくとも一つの遠隔療法装置(5)と協働する請求項1に記載するロボット。
【請求項3】
前記ロボットアーム(10)は、自らと同一視される基準マニピュレータ(20)を介し、実際に動きを妨げる力をかけて、直接に、または、変換因子を介してユーザー(A)に伝えることができる、相互作用の抗力および抗トルクを検知するように構成されている請求項2に記載するロボット。
【請求項4】
前記遠隔監視装置(2)は複数の生体パラメータを検知する少なくとも一つのセンサー(14)を有し、前記ロボットアーム(10)は前記センサー(14)を体の所定の測定部位まで移動させる請求項1乃至3のいずれかに記載するロボット。
【請求項5】
前記遠隔診断装置(3)は少なくとも一つの超音波プローブ(16)を有し、前記ロボットアーム(10)が前記超音波プローブ(16)を体の所定の撮像部位まで移動させる、および/またはこの所定の撮像部位に沿って動かす請求項1乃至3のいずれかに記載するロボット。
【請求項6】
前記遠隔監視装置(2)は複数の生体パラメータを検知する少なくとも一つのセンサー(14)を有し、前記ロボットアーム(10)は前記センサー(14)を体の所定の測定部位まで移動させ、
前記遠隔診断装置(3)は少なくとも一つの超音波プローブ(16)を有し、前記ロボットアーム(10)が前記超音波プローブ(16)を体の所定の撮像部位まで移動させる、および/またはこの所定の撮像部位に沿って動かし、
前記遠隔測定装置(4)は前記センサー(14)および/または前記超音波プローブ(16)が検知したデータを外部の受領箇所に送る請求項1乃至3のいずれかに記載するロボット。
【請求項7】
前記遠隔療法装置(5)は視聴覚装置(9)を有する請求項1乃至6のいずれかに記載するロボット。
【請求項8】
前記ロボットアーム(10)は中心側ベース部(12)と末梢側自由端部(13)を有する請求項1乃至7のいずれかに記載するロボット。
【請求項9】
前記遠隔監視装置(2)は複数の生体パラメータを検知する少なくとも一つのセンサー(14)を有し、前記ロボットアーム(10)は前記センサー(14)を体の所定の測定部位まで移動させ、
前記遠隔診断装置(3)は少なくとも一つの超音波プローブ(16)を有し、前記ロボットアーム(10)が前記超音波プローブ(16)を体の所定の撮像部位まで移動させる、および/またはこの所定の撮像部位に沿って動かし、
前記末梢側自由端部(13)は前記センサー(14)および/または前記超音波プローブ(16)を把持する請求項8に記載するロボット。
【請求項10】
前記遠隔監視装置(2)は複数の生体パラメータを検知する少なくとも一つのセンサー(14)を有し、前記ロボットアーム(10)は前記センサー(14)を体の所定の測定部位まで移動させ、
前記遠隔診断装置(3)は少なくとも一つの超音波プローブ(16)を有し、前記ロボットアーム(10)が前記超音波プローブ(16)を体の所定の撮像部位まで移動させる、および/またはこの所定の撮像部位に沿って動かし、
前記末梢側自由端部(13)は前記センサー(14)および/または前記超音波プローブ(16)と一体となっている請求項8に記載するロボット。
【請求項11】
前記可動ベース部分(6)上に胴部(7)を備え、前記ロボットアーム(10)の前記中心側ベース部(12)が直線方向に変位可能に前記胴部(7)に取り付けられている請求項8に記載するロボット。
【請求項12】
前記胴部(7)上に頭部(8)を備える請求項11に記載するロボット。
【請求項13】
前記遠隔療法装置(5)は前記胴部(7)の中、および/または前記頭部(8)の中にある請求項12に記載するロボット。
【請求項14】
前記遠隔監視装置(2)は複数の生体パラメータを検知する少なくとも一つのセンサー(14)を有し、前記ロボットアーム(10)は前記センサー(14)を体の所定の測定部位まで移動させ、
前記遠隔診断装置(3)は少なくとも一つの超音波プローブ(16)を有し、前記ロボットアーム(10)が前記超音波プローブ(16)を体の所定の撮像部位まで移動させる、および/またはこの所定の撮像部位に沿って動かし、
前記センサー(14)の測定部位および/または前記超音波プローブ(16)の撮像部位に対する相対的な動きが、力制御並びに/またはインピーダンス制御された移動動作および/あるいは回転動作および/あるいは傾き動作によってなされるように前記ロボットアーム(10)はできている請求項1、2、または3に記載するロボット。
【請求項15】
前記ロボットアーム(10)は中心側ベース部(12)と末梢側自由端部(13)を有し、
前記ロボットアーム(10)は、前記測定部位および/または前記撮像部位の領域内の接触力を、前記末梢側自由端部(13)にかかるトルクおよび/または前記末梢側自由端部(13)にかかる力に対する所定の閾値条件に到達するか、超えることに基づき、かつ/または、前記末梢側自由端部(13)にかかる力/トルクの所定の特徴および/あるいは前記末梢側自由端部(13)における位置/速度の所定の特徴に到達するか、超えることに基づき、決めるように前記ロボットアーム(10)はできている請求項14に記載するロボット。
【請求項16】
前記ロボットアーム(13)は遠隔制御可能である請求項14または15に記載するロボット。
【請求項17】
前記遠隔監視装置(2)は複数の生体パラメータを検知する少なくとも一つのセンサー(14)を有し、前記ロボットアーム(10)は前記センサー(14)を体の所定の測定部位まで移動させ、
前記遠隔診断装置(3)は少なくとも一つの超音波プローブ(16)を有し、前記ロボットアーム(10)が前記超音波プローブ(16)を体の所定の撮像部位まで移動させる、および/またはこの所定の撮像部位に沿って動かし、
前記センサー(14)および/または前記超音波プローブ(16)が前記胴部(7)の上または中に固定される請求項11、12、または13に記載するロボット。
【請求項18】
前記ロボット(1)は少なくとも一つの制御ユニット(18)を有し、該制御ユニット(18)は前記ロボット(1)に人間と相互に作用するための機械学習をさせることができる請求項1乃至17のいずれかに記載するロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は医療介護、療法、リハビリテーション、診断、カウンセリング等の過程において、能動的あるいは受動的に、または直接的あるいは間接的に人間または患者と相互に作用をするロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
人間と相互に作用をするロボットの用途の最も重要なものは、高齢者または高齢者以外でも介護の必要な人の介護の分野である。ここで、ロボットは必ずしもヒト型ロボットである必要はないが、人間が家庭で行う必要のある日常的な仕事をするのを手伝うだけでなく、人間が肉体的にストレスのかかる状況になるのを避けるため、人間が動き回る能力を支援することにより、例えば介護センタまたは好ましくはまだ自宅にいる人間に協力するものである。このような「介護ロボット」がさらに基本的な診察の仕事を引き受けることはきわめて合理的である。
【0003】
前記したような医療用ロボットはよく知られており、主に外科手術の分野で用いられていて、同分野ではこのようなロボットをユーザー、すなわち医者が対応する入力装置により操作する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記に基づき、本願発明の目的は人間を介護および援助することに関する行われている支援行動だけでなく、好ましくはさらに別の医療サービスを行い、提供できるロボットを提案することである。そのため、特に本願発明の目標は人-ロボット協働(HRC)の分野の産業用途から概ね知られていて、さらに医療、介護、療法およびリハビリテーションの分野で知られているロボットを用いることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は特許請求の範囲の請求項1にしたがう特徴を有するロボット、および特許請求の範囲の請求項18にしたがう特徴を有するロボットにより解決される。
【0006】
本願発明の第1の特長は、可動ベース部分と、少なくとも一つの複数の関節により結合されたロボットアームであって人間と直接的にまたは間接的に相互に作用をするロボットアームと、を有するロボットであって、さらに、少なくとも一つの遠隔監視装置、および/または少なくとも一つの遠隔診断装置、および/または少なくとも一つの遠隔測定装置、および/または少なくとも一つの遠隔療法装置、を有し、前記ロボットアームはコンプライアンス制御されるロボットである。
【0007】
このような特長によれば、前記ロボットアームが、ロボットを人間に怪我を負わせることなく意図したように人間と相互に作用をすることできるようにする精細な感度を備える。本願発明における相互に作用するとは、以下でセンサーおよびプローブの使用に関して説明する人間の所定の箇所に単に触ることだけでなく、能動的に手足を移動させること、すなわち人間が行う動きと同時に手足を移動させることを支援すること、また人間が行う動きのみによりロボットアームを動かされることも意味する。
【0008】
位置制御された軸を有するロボットは、前記した触ることや組み合わされた複数の動きのために人間または患者と相互に作用をすることには、根本的に向いていない。なぜならば、外部からロボットにかかる力を位置制御のために測定されなければならないからであり、この外部からロボットにかかる力がアドミッタンス制御としても知られる逆運動学によりロボットに伝えられる所望の動力学的な動きの基礎になる。本願発明のような場合、多くの異なる位置でのロボットの動きのため、プログラミングの作業が膨大になる。動きの種類によっては、ロボットの動きは交互に繰り返すものになる。必要とされる位置制御は極めて正確なものでなければならないが、人間自身がロボットとの相互作用の間に動いて、常にその位置を変えるのでそのような位置制御は不可能である。したがって、用いる制御の原理のため、このようなロボットは動きの経路のずれや人間が行う動きによる位置および力を検知することができないので、適切に反応するためにできない。
【0009】
本願発明によれば、前記した少なくとも一つのロボットアーム、好ましくはロボットシステムが使用するすべてのロボットアームは一体となったコンプライアンス制御を備えるか、固有のコンプライアンスの制御を備えるか、または能動的なコンプライアンス制御と受動的なコンプライアンス制御を備える。人間と所望の相互作用をする間に実行すべき動作を行うことを可能にするため、好ましくは軽量の多軸HRCロボットがこの目的のために用いられる。この多軸HRCロボットはコンプライアンス挙動に関してこのような目的のためにプログラム可能である。
【0010】
コンプライアンス制御は例えばいわゆるインピーダンス制御に基づくものであり、既に述べたアドミッタンス制御とは対照的に、その目的として関節レベルで実際のトルクの制御を行う。ここで、所望の動力学的な動きによって、さらに決められた予定された位置と実際の位置のずれ、および/または予定された速度と実際の速度のずれ、予定された加速度と実際の加速度のずれを考慮して、力とトルクが決められる。この決められた力とトルクが関節および軸の数および構造さらに自由度によって決まるロボットの既知の運動学を介して、トルク制御によって設定される所定の関節トルクに反映される。この目的のために間接の中に一体に備えられた複数のトルクセンサー素子は関節中の駆動ユニットのトランスミッションの出力部でそれぞれの場合で一番大きい一次元方向まわりのトルクを検知する。検知されるトルクは制御の目的で測定される変数として関節の弾性を考慮したものになる。特に、アドミッタンス制御として先端効果器にあるたった一つの力トルクセンサーを用いる場合と対照的に、所定のトルクセンサー装置を用いることにより、先端効果器にかかる力だけでなく、ロボットのリンクにかかる力およびロボットによって保持されるまたは操作される物、例えばプローブ、人間または個々の手足自身にかかる複数の力を測定でき、このような測定は人の組織が柔らかく、所定のコンプライアンスを有することも考慮したものである。トルクもロボットシステムの構造および/またはベース中の力センサーによって測定できる。特に、マニピュレータの複数の軸の個々の軸間の関節構造を用いることができ、この関節構造によって複数の軸まわりのトルクを検知できる。また、所定の力センサーを備える移動動作用関節を用いることも可能である。
【0011】
このように実現されるHRCロボットのコンプライアンス制御および感度は多くの点で本願発明にとって有利である。
【0012】
本願発明にかかるロボットは、好ましくは可動ロボットとして作られ、所定の敷地内を自由に、好ましくは自律的に動くことができ、該ロボットによって進歩性のあるやり方で人間の介護および支援に関する様々な特性を有する遠隔医療の複数の領域を結ぶ。このことはロボットのコンプライアンス動作または精細な感度によって設定され、実現される。
【0013】
遠隔医療は外科医(「遠隔医師」)、療法士、薬剤師、看護師等と患者の間の空間的および/または一時的な距離を埋める診断および療法として一般的に理解される。このような遠隔医療には、遠隔診断(例えば、遠隔心臓病学、遠隔糖尿病学等)だけでなく、リアルタイムでの患者の介護、例えば遠隔受診、遠隔精神医学、遠隔療法および遠隔リハビリテーション等も必要になる。
【0014】
本願発明の第1の実施形態では、前記少なくとも一つの複数の関節により結合されたロボットアームまたはマニピュレータが、その関節内にトルクおよび/または力の検知手段を備えていて、前記少なくとも一つの遠隔監視装置および/または前記少なくとも一つの遠隔診断装置および/または前記少なくとも一つの遠隔測定装置を能動的に起動させ、および/または前記少なくとも一つの遠隔監視装置および/または前記少なくとも一つの遠隔診断装置および/または前記少なくとも一つの遠隔測定装置と相互に作用する。
【0015】
本願発明のロボットの一つの好ましい実施形態では、前記遠隔監視装置は様々な生体パラメータ(例えば、血圧、脈拍、心電図、血糖値等)を検知するための少なくとも一つのセンサーを有し、前記マニピュレータは前記少なくとも一つのセンサーを測定目的に合った人体の測定部位まで移動させ、その次のステップでは測定を行うことを可能にするため前記センサーを適切にその測定部位に当て、またはその測定部位上を動かす。この測定には皮下測定も含まれるものでよい。
【0016】
本願発明のロボットの別の好ましい実施形態では、前記遠隔診断装置は少なくとも一つの超音波プローブを有し、前記ロボットアームは自律的に前記超音波プローブを人体の所定の撮像部位に移動させ、かつ/または接触を維持しながら前記人体の所定の撮像部位にそって動かす。さらに、検査を実施する時に、前記ロボットアームは撮像される画像の質にしたがって人体に当てる前記超音波プローブの角度を変えることができ、必要であれば同時に制御ユニットが検査を行う時にリアルタイムで撮像された画像の情報内容をチェックできる。
【0017】
この目的で、前記ロボットの遠隔測定装置は前記センサーおよび/または前記超音波プローブによって得たデータ(測定値、画像データ)を外部の受け取り点に送るようにできていて、その結果例えば遠隔医療の外科医がこれらのデータをチェックすることが可能になり、またはデータが基準から逸脱した場合に備え付けられた監視システムが適切な緊急手段を開始できる。このように、この遠隔測定装置は監視される患者がいる敷地内に備えられた無線LANと直接通信できるようになっている。
【0018】
さらに、本願発明によれば、前記ロボットの前記遠隔療法装置が人間用の視聴覚装置またはインタフェースを有しており、このような装置のおかげで医師、看護師等と患者または介護が必要な人の間の通信がいつでも可能になっている。特に行われている測定によって、このような通信がいつでも可能になっている。これにより、患者または介護が必要な人と離れた場所にいる医師、看護師または療法士との間の偶発的な通信が可能になるだけでなく、前記ロボットアームが適切なやり方で行なっている測定や治療の動作の間における通信も可能になる。本願発明によれば、通信が続いている間に前記ロボットアームが患者に接触することも可能である。
【0019】
本願発明でいう療法には、ロボットがそのロボットアームによって、事実上「手作業で」人間、人間の部分または人間の手足を操作する可能性が含まれてもよく、この操作は、例えば、直接前記ロボットに備え付けられた、または配置された除細動器やシリンジを用いる緊急の場合には、遠隔医療の外科医または療法士によるリアルタイム制御にしたがって行うものでも、ロボット自身の制御によるものでもよい。
【0020】
可動構造のロボットは、前記少なくとも一つのロボットアームが中心側ベース部(肩部)と末梢側自由端部(手部)を有し、前記末梢側自由端部が自動的にセンサーおよび/または超音波プローブを掴むか、またはセンサーおよび/または超音波プローブと相互に作用する別体の先端効果器を掴むようにできている。
【0021】
しかしながら、一つの好ましい実施形態では、センサーおよび/または超音波プローブは既に前記ロボットアームの前記末梢側自由端部中に一体に取り付けられており、例えば血圧および脈拍を測るまたは心電図を測定するセンサーが一体に取り付けられる。
【0022】
さらに、本願発明にかかるロボットは、ベース本体部または胴部が前記可動ベース上に配置され、このベース本体部または胴部には前記マニピュレータの前記中心側ベース部が変位可能に備えられ、特に直線方向に変位可能になっている。好ましくは、複数の関節により結合されたロボットアームが前記胴部の各側面に前記胴部中の前記中心側ベース部を介して備えられる。前記可動ベース部分によって、前記ロボット自身が空間中を自由に動くことができ、そのため患者に対して相対的に動くことができる。例えば、前記ロボットはドイツ特許出願公開第102016004840号公報に記載されている可動ロボットのような構造になっているものでよく、同公報の公開内容は本明細書中で明確に参照される。
【0023】
好ましくは、頭部または頭部に似た装置が前記胴部の上に備えられており、この頭部または頭部に似た装置は、前記遠隔療法装置の視聴覚装置、例えばカメラとマイクロフォンおよびスピーカを有するスクリーンまたはタッチスクリーンを含むものでよい。
【0024】
本願発明によれば、前記少なくとも一つのロボットアームは7軸マニピュレータの構造になっていて、対応する自由度を有し、その構造に応じてコンプライアンス制御および/または力制御されるようにできている。
【0025】
前記したように、本願発明のロボットの制御原理はセンサーまたは超音波プローブを患者の測定部位または撮像部位まで移動させるのに特に好都合である。コンプライアンス制御によって、前記ロボットアームの疑似的な感知能力に基づく動きを可能にする。
【0026】
したがって、本願発明はさらに、前記センサーおよび/または前記超音波プローブを測定部位/撮像部位に対して移動させることを、力制御並びに/またはインピーダンス制御された前記マニピュレータの移動動作および/あるいは回転動作および/あるいは傾き動作によって行うことを意図する。このようにすれば、前記ロボットの独立した動きによって、または例えば遠隔医療をする医師が前記ロボットアームの向きと動きを前記インタフェースのカメラを介してリアルタイムでチェックできる遠隔制御の一部として、前記ロボットは撮像部位および測定部位で人間と接触する点での動きを妨げる力を効果的に「感じ」および「検知」できる。生じる接触力は、少なくとも前記末梢側自由端部にかかるトルクおよび/もしくは前記末梢側自由端部にかかる力に対する所定の閾値条件に到達するか、同閾値条件を超えること、かつ/または、既に存在するもしくは利用できる力/トルクの特徴および/あるいは前記末梢側自由端部あるいは前記先端効果器における与えられた位置/速度の特徴に到達するか、超えることに基づき、その接触力を定め、または限定して、患者を傷つけないようする。
【0027】
このような複数の異なる動きのパターン、トルクのパターンおよび/または力のパターンによるコンプライアンス挙動は超音波画像を撮像するのに特に有利である。なぜならば、役に立つ超音波画像を得るためには、超音波プローブは一つには撮像部位の皮膚に対する角度は複数の異なる角度で、またその皮膚に対する力の状態は複数の異なる力の状態で、動かすことができなければならないからであり、このように超音波プローブを動かすことは、本願発明のロボットはその制御ロジックに基づいて自動的に行うことができるか、または遠隔医療をする医師を介してリアルタイムで行うことができる。
【0028】
本願発明のロボットはコンプライアンス制御され、または検知できるようにできており、機械学習を通して学ぶことができた、自分自身のみの判断で行う動きおよび動作によって人間と相互に作用することが可能であるだけでなく、遠隔医療をする医師または療法士による遠隔制御を改良する。
【0029】
前記マニピュレータはその複数の関節内のトルクおよび/または力測定センサーによって動きを妨げる力を検知でき、すなわち人間が前記マニピュレータの先端効果器または前記マニピュレータによって動かされたセンサーと超音波プローブに接触することにより生じる抗トルクおよび抗力を検知できるため、このような抗トルクおよび抗力は他の視聴覚的に収集したデータ(例えば、遠隔医療技師がした質問に対する患者の回答、痛感の伝達、顔の表情の検知等)とともに、フィードバックとして遠隔医療技師が操作する基準マニピュレータを介して同技師に送ることができる。この基準マニピュレータは、患者の所にあるマニピュレータと同じ構造であることが望ましく、遠隔医療をする医師が基準マニピュレータを動かしている間、患者側のマニピュレータで検知された力およびトルクを基準マニピュレータが実際に動きを妨げる力を生じさせて遠隔医療をする医師に伝える。その結果、遠隔医療をする医師は患者側のマニピュレータで検知された力およびトルクを実際に感じることができる。このようにして、遠隔医療をする医師自身が患者側のマニピュレータが次々と「感じる」力を感じることができ、そのためリアルタイムで作用を与えることができる。遠隔医療をする医師は。自身がロボットアームを動かすと、いわば触覚に関するフィードバックを受け取る。
【0030】
ロボットアームまたはマニピュレータの従来の遠隔制御システムでは、マニピュレータが行う動きは、離れた場所にいるユーザーによってカメラを介して、さらにせいぜい単純な触覚のフィードバック信号(振動)によって制御されるが、本願発明の構造によれば、人間とロボットが相互作用する間での患者のいる側で生じる力およびトルクが、基準マニピュレータすなわち制御マニピュレータを介して、ユーザーにそのまま、または必要ならば変換因子(増幅)を介して伝えることが可能である。
【0031】
遠隔医療をする医師または療法士は、前記基準マニピュレータを動かすことによって、患者側のマニピュレータが検知する力およびトルクを直接感じるので、医師は離れた場所から患者に対して注射をすることもでき、また療法士は患者側のマニピュレータを介して、リハビリテーションの訓練のように患者の体の部分を操る、例えばマッサージをしたり、また手足を動かしたりすることができる。このことは本願発明の第2の特長に関連して後記する。
【0032】
センサーまたは超音波プローブが接触すると測定部位または撮像部位の人間の皮膚は柔らかい組織を介して当然凹むので、前記したように厳格な位置制御されたロボットアームを用いることはこのような目的では根本的に除外される。
【0033】
しかしながら、本願発明にしたがって与えられるコンプライアンス制御の場合、前記ロボットアーム自身が制御された動きを行うことができるので、例えば前記ロボットアームが前記超音波プローブを目標とする撮像部位の上に移動させ、同撮像部位の上を動かすことができる。このようにすることで、前記ロボットアームは柔らかい組織を介して変化する動きを妨げる力を自律的に検知することができる。基本的に前記ロボットは前記センサーまたは前記超音波マニピュレータが皮膚に接触している時、その状態が実際にどうなっているのかを知る必要がある。本願発明によれば、このことは適切な閾値条件および/または個別の特徴によって可能になる。
【0034】
原則として、このような特徴は前記ロボットアームが検知する力および/またはトルクおよび/または位置および/または速度の具体的な特有の性質であると理解され、このような具体的な特有の性質は単なる閾値を超えるものである。この特徴には、例えば測定される力、トルク、位置および/または速度の固有の時間変動およびこれらのパラメータに依存する特性が含まれる。
【0035】
本願発明の別の実施形態では、前記ロボットは少なくとも一つの制御ユニットを有し、この制御ユニットは人間との相互作用するための前記ロボットの機械学習を可能にする。適当なアルゴリズムを与えることによって、前記ロボットは人間または患者の動作や必要とすることに対して対応できるようになる。例えば、前記ロボットは時間経過とともに手足の可動性が一層限られてくることがわかると、前記ロボットは手足を動かす時に、その力およびトルクを手足が発生する動きを妨げる力にしたがって調節する。
【0036】
さらに、前記ロボットは使用を始める前にプリセットし、すなわちプログラムして、人間の個々の必要なことや動作に合うようにできる。したがって、本願発明のロボットは療法、介護、医療および他の支援に用いる個人向けに合わせた支援システムになる。
【0037】
本願発明の別の特長は、少なくとも一つの複数の関節により結合されたロボットアームに関するものであり、該ロボットアームはコンプライアンス制御され、患者に手足と相互に作用する時に、その手足用に用意された所定の順序の複数の動きを行うことができる。
【0038】
そのような所定の順序の複数の動きは、例えばリハビリテーションの訓練である。本願発明を目的とするリハビリテーション訓練は医学的、理学療法的、人間工学療法的等に従来認められている任意の操作手段であると理解され、一般的に外科医、理学療法士、職業的な療法士等によって患者に対して行い、用いることができる。
【0039】
一つの実施形態では、前記ロボットアームは患者の手足を動かしている間、同時に所定の順序の複数の動き、またはリハビリテーション訓練を行うが、好ましくは、所定の力制御された動き、並びに/またはインピーダンス制御された動き、並びに/または回転および/あるいは傾き制御された動きとともに行う。
【0040】
人間の手足は、例えば先端効果器上にある、すなわち複数の関節により結合されたロボットアームの末梢側端部にある、カフのようなホルダーによって把持され、保持される。このようにすることにより、前記ロボットアームは所望の順序の複数の動きを可能にするため、それ自身により制御された動き、または療法士が基準マニピュレータを介して離れた場所から制御する基準の動きを実行し、力の変動および速度に関する所定の順序の複数の動きを手足に与え、同時に手足を動かす。
【0041】
本願発明の前記の特長の場合と同様に第1の前記ロボットまたは前記少なくとも一つのロボットアームは可動ベース部分上に配置されるか、または、例えば、椅子や長椅子の領域内に固定される。前記ロボットアームを車椅子に配置することも考えられる。
【0042】
本願発明のロボットの好ましい実施形態では、前記ロボットアームは実行する順序の複数の動きの間に手足の可動性が検知されるようにできている。
【0043】
各関節中にあるトルク測定センサーおよび/または力測定センサーを用いるロボットアームの場合、リハビリテーション訓練の間に手足の可動性がないことの結果として生じるいかなる動きを妨げる力も、または患者が能動的に加える作用のために動きを妨げる力が生じればその力も検出できる。そのような場合には、前記ロボットアームはコンプライアンス制御されているために、前記ロボットアームは、次に行う順序の複数の動きの力、向きおよび速度を即座に調整すること、または、動きを中断するかあるいは逆の順序かつ逆の方向の複数の動きをすることができる。このような動きを妨げる力も療法士による遠隔制御用に基準マニピュレータを通して複製できる。
【0044】
好ましくは、前記ロボットアームは、前記ロボットアームにかかるトルクおよび/もしくは力が所定の閾値条件に達する、および/あるいは同条件を超えること、並びに/または、所定の力/トルクの特徴に到達するか、超えること、および/あるいは所定のロボットアームにおける位置/速度の特徴に到達するか、超えることに基づいて手足の可動性の程度を決める。
【0045】
例えば、リハビリテーションの訓練用の前記所定の順序の複数の動きは、患者のトレーニング条件およびその日の状態によって変わる。そのため、一般的に予め決まった厳密な動きを前記ロボットアームが行うことはできない。したがって、本願発明の別の実施形態では、前記ロボットは少なくとも一つの制御ユニットを有するものでよく、この制御ユニットは、例えば人間と相互に作用する目的で行う可能な順序の複数の動きについて前記ロボットが機械学習することを可能にする。
【0046】
また別の実施形態では、本願発明の第2特長にかかる前記ロボットアームまたはマニピュレータは、さらに少なくとも一つの遠隔監視装置、および/または少なくとも一つの遠隔診断装置、および/または少なくとも一つの遠隔測定装置、および/または少なくとも一つの遠隔療法装置を有するものでよい。
【0047】
本願発明によれば、インピーダンス制御によって実現されるコンプライアンス制御動作によって、前記した実施形態におけるロボットまたはロボットアームまたはマニピュレータが、前記ロボットアームが人間の柔らかい領域または手足に加える力(およびトルク)によって人間が怪我をすることが決してないように、人間または患者と相互に作用することが可能になり、このような患者と相互に作用することは、前記ロボットまたはロボットアームまたはマニピュレータが、医師または療法士によって遠隔制御されているか、または前記ロボットまたはロボットアームまたはマニピュレータがそれ自身のプログラム可能な動きおよび学習可能な動きによって人間または患者と相互に作用するかに関わらず、可能になっている。前記ロボットアームのセンサー技術によって、さらにインピーダンス制御によって、柔らかい組織のコンプライアンスを常に検知し、認識することができるし(例えば、腹部の壁部を介した器官の検査)、または前記ロボットアームは手足を移動させ、動かす時に(例えば、リハビリテーション訓練の間に)その手足の可動性を決める筋肉が動く限界および関節が動く限界を、常に検知し、認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本願発明のさらなる利点および特徴は添付した図面を参照して説明される実施形態の説明から明らかになる。
【0049】
図1図1は本願発明の第1の特長にしたがうロボットの概略図である。
図2図2は本願発明にかかる可動ロボットの斜視図である。
図3図3は人間と相互に作用をする可動ロボットの概略図である。
図4図4は患者側ロボットアームと基準ロボットアームの間の遠隔制御用の構造の概略図である。
図5図5は本願発明の第2の特長にしたがうロボットの概略図である。
図6図6は車椅子に取り付けられたロボットアームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は本願発明にかかる可動ロボット1の原理を示す。この可動ロボット1は例えば患者の家庭内での介護および/またはサービス用ロボットとして用いることができる。可動ロボット1は、少なくとも一つの遠隔監視装置2、および/または少なくとも一つの遠隔診断装置3、および/または少なくとも一つの遠隔測定装置4、および/または少なくとも一つの遠隔療法装置5を有し、これらの装置のそれぞれが含まれるか否かは、複数の異なる実施形態それぞれの必要性による。また、ロボット1は同ロボット1が機械学習できるようにする少なくとも一つの制御ユニット18を有するものでよい。
【0051】
図2に示すように、ロボット1は可動ベース部分6を有し、この可動ベース部分6はロボット1が平面上を動くために用いられる可動プラットホームとして役立つ。この目的のため、モーター駆動ホイール(図示せず)がベース部分6の内部に設けられる。
【0052】
胴部7は可動ベース部分6の上に配置され、その長手方向軸周りにベース部分6に対して相対的に回転できる。胴部7の上には頭部8があり、頭部8は胴部7に対して相対的に回転できる。
【0053】
頭部8はカメラおよびスピーカと一体となったスクリーンの形のインタフェース9を有する。インタフェース9を介して、外界との任意の通信、例えばビデオ電話による通信が可能になっている。
【0054】
胴部7の両側には、関節によって互いに接続された複数の軸部材11からなるロボットアームまたはマニピュレータ10が設けられている。軸部材11または間節の数によってこのようなマニピュレータ10に与えられるすべての自由度の数が決まる。
【0055】
本願発明によれば、これらのロボットアーム10はコンプライアンス制御され、感度が高い。
【0056】
各マニピュレータ10は胴部7に取り付けられた中心側ベース部12と例えば手類似の把持構造部である末梢側自由端部13とを有する。
【0057】
中心側ベース部12は胴部7の長手方向に直線的に胴部7に対して滑動させることができ、さらに具体的には各マニピュレータ10の中心側ベース部12は独立して動かすことができる。
【0058】
本願発明によれば、少なくとも一つのセンサー14が一体となって手部13内に設けられており、センサー14は人間に接触するとその人間の体または皮膚の対応する測定部位における様々な生体パラメータを検知する。
【0059】
物置棚15が胴部7の後部側に配置され、物置棚15の中には例えば別のセンサー、特に超音波プローブ16または除細動器のような緊急時用装置が配置されている。
【0060】
本願発明にかかるコンプライアンス制御方式のロボットアーム10によって、センサー16を末梢自由把持部13が直接掴み、患者の所まで動かすことが可能になる。すなわち、マニピュレータ10を動かしてそのマニピュレータ10の末梢自由端部13が胴部7の側面、前面および/または背面の領域あるいは表面に向かって直接動くことができるように、複数の軸部材11は大きさが決められ、互いに関節結合されて動かすことができる。このようなマニピュレータ10の可動性により、寝ている、または座っている患者のほとんどどの部分にマニピュレータを動かして、例えば測定手順を行うだけでなく、ロボットの前側または後側および側方の床から直接物体を拾い上げることができる。
【0061】
図3は本願発明にかかるロボット1の人間17との相互作用の例を概略的に示す。
【0062】
ロボット1はそのロボットアーム10を用い、その末梢手部13によって超音波プローブ16を座っている人間17の膝まで移動させ、そこで所定の撮像を行う。超音波検査をしているの間に、人間17はインタフェース9を介して外科医と直接ビデオおよび音声で交信できる。
【0063】
しかし、図4中に図解するように、この動きは外科医が基準マニピュレータまたは基準ロボットアームを動かすことによって遠隔制御することもできる。
【0064】
図4は医療または他の療法に応用する目的でロボット1または少なくとも一つのロボットアーム10を遠隔制御することが本願発明によって可能であることを概略的に図解する。
【0065】
ロボット1が現場で患者の所にいる一方、基準または制御ロボット19は医者Aの場所に在る。制御ロボット19は患者側ロボット1のロボットアーム10と構造が同一の基準マニピュレータ20を有する。言い換えれば、医者側基準マニピュレータ20は同じ数の自由度を有しているだけでなく、トルクおよび力センサーを含めて同一の駆動ユニットをすべての複数の関節部分に有する。
【0066】
医者Aは自身の手Hにより基準マニピュレータ20を動かすことによって基準マニピュレータ20を操作する。この場合、医者Aが基準マニピュレータ20にもたらした、または与えた動きはその動きの質および量において同一のロボットアーム10の動きに変換される。この変換は図4中の複数の矢印によって表されている。
【0067】
言い換えれば、医者Aが例えばプローブを移動させて患者の体の所定の検査箇所に移動させる動きを行うと、その過程で基準マニピュレータ20中に力およびトルクが生じ、同じ力とトルクがロボット10に伝達される。これらの力およびトルクのすべてによって一連の動きのすべてが最終的に決まる。これにより、医者Aはロボット1中に備えられた視聴覚手段(カメラ、マイクロフォン)を介してリアルタイムで検査の過程を監視し制御できる。
【0068】
しかし、本願発明によれば、実体的なフィードバックが医者Aに与えられるものである。すなわち、人間と相互に作用をする時の、この場合、例えばプローブを柔らかい体の箇所に当てる時のロボットアーム10の動作の過程で動きを妨げる力が生じる。この動きを妨げる力は抗力および抗トルクの結果としてロボットアーム10の関節中にある対応するセンサーによって検知される。この動きを妨げる力がリアルタイムで基準マニピュレータ20にそのまま伝達され、基準マニピュレータ20はその関節中にある駆動ユニットを起動させることにより、この動きを妨げる力と同じ力を医者Aに伝える。一方、医者Aは基準マニピュレータ20を移動させ、または動かす。この様子もまた矢印で示されている。結果的に、医者Aは自身でこの動きを妨げる力を感じることができ、それによって自身の次の動作をこの動きを妨げる力に合わせ、次の連続する動きを調整できる。
【0069】
医者側の基準マニピュレータ20と患者側のロボットアーム10の間で力とトルクが対応するローカルネットワークまたはグローバルネットワーク21(WLAN、5G等)を介して伝達されるが、この伝達の間、所定の状況では所定の変換因子(力の増幅または減衰)をいずれの方向の変換でも用いることができる。
【0070】
ロボット1は個別の患者に合わせて調整することもできる。この場合、ロボット1は予め患者専用にプログラミングされ、またはロボット1が患者と長時間相互に作用する間に機械学習させられる。このような機械学習では、例えば力、トルク、位置並びに/または速度の特徴および/あるいはパラメータの形式の所定の閾値条件を設定する。このようにすれば、医者Aが遠隔医療を応用した手術および訓練の最中に基準マニピュレータの間違った操作をすると、例えばプローブを過剰に当てることになるが、そのような間違った操作をした場合でも患者に痛みを与えたり、怪我を負わせたりすることを防ぐことができる。また、このような閾値条件を用いると、医者Aが始めからロボットアーム10が間違った動きをするように基準マニピュレータ20を操作した場合でも、ロボットアーム10は人間と相互に作用する時に適切な力およびトルクを加えることができる。ロボットアーム10は機械学習、機械適応の結果として、いわゆる医者Aが予め設定した動きの量である、前記した適切な力およびトルクをロボットアームはわかっているのである。結果として、本願発明によれば、ロボット1は適応型補助システムであるため、必要な場合、医者Aの命令を修正することができる。
【0071】
本願発明によれば、前記した特性および条件は遠隔リハビリテーションの目的で応用することができる。遠隔リハビリテーションでは、図5で図解するように例えば既知のリハビリテーション訓練を反映する決められた順序の複数の動きが遠隔制御される。
【0072】
療法士Tは離れた場所で基準マニピュレータ20を動かす(ネットワーク21を介して操作する)。患者Pの所には、同じ構造のマニピュレータ22があり、このマニピュレータ22はその先端効果器とそれに所定の人間工学的手段、例えばカフ23によって患者Pの腕を把持して動かすことができる。
【0073】
療法士Tが自身の手Hによって基準マニピュレータ20に対して行う所定の順序の複数の動きは、患者側のマニピュレータ22にそのまま、または所定の変換因子を考慮して伝達されるが、この伝達は、患者側のマニピュレータ22での動きで生じる力およびトルクを測定することによって行われる。すなわち、矢印で概略的に示されるように、関節中にある駆動ユニットは、患者Pの腕を動かす時にこの所定の順序の複数の動きが対応するやり方で行われるように制御される。
【0074】
前記したように、療法士Tは患者P内に動きを妨げる力が生じるとフィードバックを受け取り、怪我を防ぐために閾値条件を考慮することができる。
【0075】
しかしながら、好ましい実施形態では、遠隔制御する必要性はない。すなわち、療法士Tによる要求は必要ない。しかし、ロボットアーム22は患者Pの手または足を動かす目的で所定の順序の複数の動きをそれ自身が行うことができるようになっていて、ロボットアーム22自身がそのような動きをすることができるのである。
【0076】
このような動きのシーケンスは、対応するメモリユニットに保存でき、事前に対応するプログラミングをおこなうことにより、患者Pまたは患者Pの病状に適合させることができ、さらに/または機械学習によってさらに修正して患者Pに合うようにすることができる。
【0077】
例えばリハビリテーションの訓練の間に患者Pの腕を動かすことにより、ロボットアーム22は腕を動かす間に生じる動きを妨げる力を、各関節中にある駆動ユニット中の力測定用センサーおよびトルク測定用センサーが即座に検知して、その後の動きを止めたり、調節したり、元に戻る方向にしたりすることができる。ここで、動きを妨げる力は例えば筋肉の性質によるものである場合もあるし、痛みのために患者Pが発生する場合もある。言い換えれば、抗力および/または抗トルクとして表すことができる動きを妨げる力を測定することは、可動性を評価する尺度として用いることができる。
【0078】
このことは、患者P自身が行うリハビリテーション動作または訓練シーケンスの目的でロボットアーム22を自動的に動かす場合にも可能である。このような場合、ロボットアーム22は、重力補償された状態であり、そのため動きを妨げる力を受けずに動かされ、患者Pの動きによって生じた力およびトルクを検知できる。
【0079】
この場合、ロボットアーム22は筋肉発達および筋肉の可動性のための訓練装置の一種として役立つ。患者Pが決まった順序の複数の動作を行う時に、ロボットアーム22が、決められた動きを妨げる力を患者Pに与え、この動きを妨げる力は訓練中に変えることができるように、ロボットアーム22をプログラムする。本願発明にかかるロボットはいつでも実際に生じる力およびトルクを測定できるので、このような動きを妨げる力または動きを妨げる力の曲線は、患者Pに適合させて予めプログラムすることができるし、さらに/または、そのロボット自身が機械学習によって離れた場所にある複数の運動ユニットを動かして決めることができる。
【0080】
図6に示すように、このようなロボットアーム22は可動プラットホーム上に固定することができる、または、例えば図6に示すように車いす24上に取り付けることができる。
【0081】
本願発明にしたがう前記した実施形態および実施例のすべてに共通するのは、患者側のマニピュレータ10,22と医者側または療法士側のマニピュレータ20がコンプライアンス制御され、そのため感知能力が高いロボットアームとして設計され、構成され、プログラムされているということである。本願発明のロボットおよびそのロボットが取り付けられるシステムは、機械学習システムとして設計されることが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6