(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160313
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】自律走行作業装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/648 20240101AFI20241106BHJP
G05D 1/622 20240101ALI20241106BHJP
G05D 1/242 20240101ALI20241106BHJP
G05D 1/243 20240101ALI20241106BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241106BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G05D1/648
G05D1/622
G05D1/242
G05D1/243
G05D1/43
A47L9/28 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024131721
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2019235644の分割
【原出願日】2019-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】足立 尚庸
(57)【要約】
【課題】床面の様々な段差に対して、操作者の利便性を向上しつつ、適切に走行または作業を継続させる。
【解決手段】
自律走行作業装置1は、装置本体2と、走行部3と、清掃部4と、制御部10と、清掃エリアの床面に存在する段差を識別する1以上の段差種別を組み合わせてフロアタイプとして、1以上のフロアタイプを予め記憶すると共に、各フロアタイプの各段差種別について段差に対する走行または清掃に関する1以上のパラメータを記憶する記憶部11と、
床面に照射された所定の光を含んで撮像した画像の所定の光の形状に基づいて段差を検知する段差検知部7と、段差検知部7の検知結果に基づいて、段差種別を識別する段差識別部22と、を備える。制御部10は、自動によって設定されるフロアタイプに応じて段差に対して走行または清掃を行うように走行部3または清掃部4を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動的に走行および作業を行う自動運転を実行可能な自律走行作業装置であって、
装置本体と、
前記装置本体を走行させる走行部と、
前記装置本体の走行経路上で作業を行う作業部と、
手動または自動によって前記装置本体が作業エリアの走行または作業を行うように前記走行部または前記作業部を制御する制御部と、
前記作業エリアの床面に存在する段差を識別する1以上の段差種別を組み合わせてフロアタイプとして、1以上の前記フロアタイプを予め記憶すると共に、前記各フロアタイプの前記各段差種別について前記段差に対する走行または作業に関する1以上のパラメータを記憶する記憶部と、を備え、
更に、前記床面に照射された所定の光を含む画像を撮影し、前記画像の前記所定の光の形状に基づいて段差を検知する段差検知部と、
前記段差検知部の検知結果に基づいて、前記段差種別を識別する段差識別部と、を備え、
前記制御部は、自動によって設定される前記フロアタイプに応じて前記1以上のパラメータに基づいて前記段差に対して走行を行うように前記走行部を制御することを特徴とする自律走行作業装置。
【請求項2】
前記段差検知部は、前記所定の光として進行方向に直交する所定線長のレーザーラインを照射するラインマーカーを備えることを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記作業エリアを走行している間の走行状況または周辺状況を取得し、前記走行状況または前記周辺状況に基づいて前記フロアタイプを判定して自動で設定することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記作業エリアの環境地図に基づいて前記作業エリアを塗りつぶすような前記走行経路で前記装置本体を自動的に始点から終点まで走行させるテスト走行を実行するように前記走行部または前記作業部を制御して、前記テスト走行時の走行データまたは作業データを含む運転プランを作成するテスト走行制御部と、
前記運転プランの前記走行データまたは前記作業データに従って前記自動運転を実行するように前記走行部または前記作業部を制御する自動運転制御部と、を含み、
前記テスト走行制御部は、前記テスト走行時に前記フロアタイプを判定して自動で設定して前記運転プランに関連付けることを特徴とする請求項3に記載の自律走行作業装置。
【請求項5】
前記パラメータは、前記段差に対する走行規則を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記作業エリアを走行している間に前記段差検知部によって前記段差を検知した場合、前記段差の前記段差種別に設定されている前記パラメータの前記走行規則を取得し、前記走行規則に従って前記走行部または前記作業部を制御しつつ前記段差を走行するときの走行状況を取得し、前記走行規則に従った走行が成功したか否かを前記走行状況に基づいて判定し、前記走行規則に従った走行が成功しなかった場合には、前記走行状況に基づいて前記パラメータを再設定することを特徴とする請求項5に記載の自律走行作業装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記作業エリアを走行している間に前記段差検知部によって前記段差を検知した場合、前記段差の前記段差種別に設定されている前記パラメータの前記走行規則を取得し、前記走行規則に従って前記走行部または前記作業部を制御しつつ前記段差を走行するときの走行状況を取得し、前記走行規則に従った走行が成功したか否かを前記走行状況に基づいて判定し、前記走行規則に従った走行が成功しなかった場合には、前記走行規則に従った走行の失敗を示すと共に前記パラメータの再設定を促す情報を操作者に通知することを特徴とする請求項5に記載の自律走行作業装置。
【請求項8】
前記作業部は、前記床面に対する作業として清掃を行う清掃部で構成され、
前記パラメータは、前記清掃部が前記段差または前記床面に対して清掃を行う場合の清掃条件を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項9】
前記記憶部は、前記床面の材質を識別する1以上の床面種別を記憶すると共に、1つ以上の前記床面種別毎に設定される前記清掃条件を記憶し、
前記段差識別部は、前記段差検知部の検知結果に基づいて、走行中の床面の床面種別を識別し、
前記段差を境界線として前記床面の材質が変化する場合、前記清掃部は、前記床面の材質に応じた前記清掃条件に変更して清掃を行うことを特徴とする請求項8に記載の自律走行作業装置。
【請求項10】
前記段差検知部は、
前記装置本体の周囲の非作業対象を検知する光学式センサと、
前記画像を撮像するカメラと、
床面からの振動を検知する振動センサと、を更に備え、
前記制御部は、前記カメラの撮像結果と、前記光学式センサの検知結果および/または前記振動センサの検知結果との組み合わせに基づいて、前記段差を識別することを特徴とする請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的に走行および作業を行う自動運転を実行可能な自律走行作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自律走行作業装置は、所定の作業エリア(清掃エリア)で自動的に走行および作業(清掃)を行う自動運転を実行可能に構成される。例えば、自律走行作業装置は、電動モータによって回転駆動される回転ブラシと、床面に洗浄液を散布する給水機構と、床面上の洗浄汚水を吸引する吸引機構とを搭載して、洗浄液が散布された床面上で回転ブラシを回転することで床面の汚れを擦り落とすと共に洗浄汚水を吸引し、これにより清掃エリアの床面を清掃する。また、自律走行作業装置は、電動モータによって駆動される駆動輪を搭載して、駆動輪を駆動することで清掃エリアを走行する。このようにして、自律走行作業装置は、自動的に清掃エリアの床面を清掃しながら清掃エリアを走行する。
【0003】
例えば、特許文献1は、パスとランドマークの系列からなる経路情報に基づいて出発点から目的地点まで移動する走行ロボットであって、経路上にある障害物や道路工事中の箇所に遭遇したときに、経路情報に基づく走行を中断し、走行をやり直してから元の経路に戻る走行ロボットについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、自動運転を行う自律走行作業装置が床面を走行しながら清掃や洗浄作業を行う装置の場合は、床面に凹凸や溝などの段差があるときに、回転ブラシや吸引部材と床面との接触不良により、清掃斑や洗浄汚水の吸引漏れが生じることがある。また、自律走行作業装置は、段差の上を走行することで振動が発生し、その振動に起因して故障が発生することがあり、更に、床面に高い突出部分や深い溝などの高低差の大きい段差がある場合には、車輪の脱輪や駆動輪の空転が生じて横転や走行不能になるおそれがある。なお、床面には、点字ブロック、排水溝、グレーチング、床部材の境界など様々な段差が考えられるので、これらに対応して自動運転を行うことは困難である。そのため、自律走行作業装置では、自動運転において、床面に段差がある場合に、清掃斑や洗浄汚水の吸引漏れを回避する手段、並びに段差に対応して走行や清掃をする手段の提供が望まれている。なお、上記した特許文献1の走行ロボットは、経路上に段差や凹凸があった場合、走行を中断してしまうので、段差や凹凸並びにその周囲が清掃箇所から漏れてしまう。
【0006】
本発明は、上記したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、床面の様々な段差に対して、操作者の利便性を向上しつつ、適切に走行または作業を継続させることができる自律走行作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の自律走行作業装置は、自動的に走行および作業を行う自動運転を実行可能な自律走行作業装置であって、装置本体と、前記装置本体を走行させる走行部と、前記装置本体の走行経路上で作業を行う作業部と、手動または自動によって前記装置本体が作業エリアの走行または作業を行うように前記走行部または前記作業部を制御する制御部と、前記作業エリアの床面に存在する段差を識別する1以上の段差種別を組み合わせてフロアタイプとして、1以上の前記フロアタイプを予め記憶すると共に、前記各フロアタイプの前記各段差種別について前記段差に対する走行または作業に関する1以上のパラメータを記憶する記憶部と、を備え、更に、前記床面に照射された所定の光を含む画像を撮影し、前記画像の前記所定の光の形状に基づいて段差を検知する段差検知部と、前記段差検知部の検知結果に基づいて、前記段差種別を識別する段差識別部と、を備え、前記制御部は、自動によって設定される前記フロアタイプに応じて前記段差に対して走行または作業を行うように前記走行部または前記作業部を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の自律走行作業装置によれば、走行や作業に関するパラメータを、様々な段差に対して個別に設定でき、更に、様々なフロアタイプに対しても個別に設定できるので、フロアタイプを設定するだけで、様々な作業フロアの様々な段差に対応して、適切に走行や作業を行うことができる。特に、床面の画像に含まれる所定の光の形状に基づいて、段差を識別することができる。このように、床面の様々な段差に対して、操作者の利便性を向上しつつ、適切に走行または作業を継続させることができる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第2の自律走行作業装置において、前記段差検知部は、前記所定の光として進行方向に直交する所定線長のレーザーラインを照射するラインマーカーを備える。
【0010】
本発明の第2の自律走行作業装置によれば、床面の画像に含まれるレーザーラインの形状に基づいて、段差を識別することができる。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第3の自律走行作業装置において、前記制御部は、前記作業エリアを走行している間の走行状況または周辺状況を取得し、前記走行状況または前記周辺状況に基づいて前記フロアタイプを判定して自動で設定する。
【0012】
本発明の第3の自律走行作業装置によれば、走行状況や周辺状況を考慮してフロアタイプを自動で選択するので、操作者は作業エリアの確認やフロアタイプの検討を行う必要がなく、操作者によるフロアタイプの手動設定を不要とするので、操作者の利便性を大幅に向上することができる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第4の自律走行作業装置において、前記制御部は、前記作業エリアの環境地図に基づいて前記作業エリアを塗りつぶすような前記走行経路で前記装置本体を自動的に始点から終点まで走行させるテスト走行を実行するように前記走行部または前記作業部を制御して、前記テスト走行時の走行データまたは作業データを含む運転プランを作成するテスト走行制御部と、前記運転プランの前記走行データまたは前記作業データに従って前記自動運転を実行するように前記走行部または前記作業部を制御する自動運転制御部と、を含み、前記テスト走行制御部は、前記テスト走行時に前記フロアタイプを判定して自動で設定して前記運転プランに関連付ける。
【0014】
本発明の第4の自律走行作業装置によれば、作業エリアの全体を確認できるテスト走行において走行状況や周辺状況を考慮するので、より適切なフロアタイプを選択することができる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第5の自律走行作業装置において、前記パラメータは、前記段差に対する走行規則を含む。
【0016】
本発明の第5の自律走行作業装置によれば、段差に対して様々な走行パターンを走行規則として設定することができ、例えば、段差上をそのまま通過して走行するパターンや、段差を回避して走行するパターン、段差に沿って走行するパターンなどを設定することができる。そして、自律走行作業装置は、段差に対して適切な走行パターンを取るような走行規則を、各段差のパラメータとして設定することができる。そのため、各段差に対する走行の安全性および精度を向上することができ、また、段差を目印にした走行を行うこともでき、更に操作者の利便性を向上することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第6の自律走行作業装置は、前記制御部は、前記作業エリアを走行している間に前記段差検知部によって前記段差を検知した場合、前記段差の前記段差種別に設定されている前記パラメータの前記走行規則を取得し、前記走行規則に従って前記走行部または前記作業部を制御しつつ前記段差を走行するときの走行状況を取得し、前記走行規則に従った走行が成功したか否かを前記走行状況に基づいて判定し、前記走行規則に従った走行が成功しなかった場合には、前記走行状況に基づいて前記パラメータを再設定する。
【0018】
本発明の第6の自律走行作業装置によれば、所定の段差に対して走行規則に従った走行が成功しなかった場合、その段差に対するパラメータを走行状況に基づいて再設定するので、次回にその段差を検知した場合、その段差に対してより適切な走行パターンで走行を行うことができ、これにより、各段差に対する走行の安全性および精度を向上することができる。例えば、パラメータの再設定では、段差閾値の調整や、段差沿い走行フラグ、段差回避フラグまたは走行時走行不可フラグの設定などを行うことができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第7の自律走行作業装置は、前記制御部は、前記作業エリアを走行している間に前記段差検知部によって前記段差を検知した場合、前記段差の前記段差種別に設定されている前記パラメータの前記走行規則を取得し、前記走行規則に従って前記走行部または前記作業部を制御しつつ前記段差を走行するときの走行状況を取得し、前記走行規則に従った走行が成功したか否かを前記走行状況に基づいて判定し、前記走行規則に従った走行が成功しなかった場合には、前記走行規則に従った走行の失敗を示すと共に前記パラメータの再設定を促す情報を操作者に通知する。
【0020】
本発明の第7の自律走行作業装置によれば、所定の段差に対して走行規則に従った走行が成功しなかった場合、操作者は、その段差に対する走行の失敗を確認することができ、また、その段差に対してより適切なパラメータを設定することができる。そのため、次回にその段差を検知した場合、その段差に対してより適切な走行パターンで走行を行うことができ、これにより、各段差に対する走行の安全性および精度を向上することができる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の第8の自律走行作業装置において、前記作業部は、前記床面に対する作業として清掃を行う清掃部で構成され、前記パラメータは、前記清掃部が前記段差または前記床面に対して清掃を行う場合の清掃条件を含む。
【0022】
本発明の第8の自律走行作業装置によれば、段差に対して様々な清掃パターンを清掃規則として設定することができ、例えば、段差上をそのまま通過して走行する際の清掃パターンや、段差を回避して走行する際の清掃パターン、段差に沿って走行する際の清掃パターンなどを設定することができる。そして、自律走行作業装置は、段差に対して適切な清掃パターンを取るような清掃規則を、各段差のパラメータとして設定することができる。そのため、各段差に対する清掃の安全性および精度を向上することができ、また、段差を目印にした清掃を行うこともでき、更に操作者の利便性を向上することができる。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第9の自律走行作業装置において、前記記憶部は、前記床面の材質を識別する1以上の床面種別を記憶すると共に、1つ以上の前記床面種別毎に設定される前記清掃条件を記憶し、前記段差識別部は、前記段差検知部の検知結果に基づいて、走行中の床面の床面種別を識別し、自律走行作業装置は、前記段差を境界線として前記床面の材質が変化する場合、前記清掃部は、前記床面の材質に応じた前記清掃条件に変更して清掃を行う。
【0024】
本発明の第9の自律走行作業装置によれば、床面の材質に対して様々な清掃パターンを清掃規則として設定することができ、例えば、セラミックなどの樹脂系床を清掃対象に設定する一方、カーペットなどの繊維系床を清掃対象外に設定することができる。そして、清掃エリアにおいて、異なる材質の床面が連続している場合には、材質に応じて自動的に清掃規則を切り替えることができ、操作者の利便性を向上することができる。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の第10の自律走行作業装置は、前記段差検知部は、前記装置本体の周囲の非作業対象を検知する光学式センサと、前記画像を撮像するカメラと、床面からの振動を検知する振動センサと、を更に備え、前記制御部は、前記カメラの撮像結果と、前記光学式センサの検知結果および/または前記振動センサの検知結果との組み合わせに基づいて、前記段差を識別する。
【0026】
本発明の第10の自律走行作業装置によれば、光学式センサ、カメラおよび振動センサのうち、各段差を検知するために適した組み合わせを適用することができる。また、各組み合わせの結果を比較することで、適切に段差を検知することができる。そのため、段差の検知率を向上することができ、段差に対する清掃の安全性および精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、自律走行作業装置は、床面の様々な段差に対して、操作者の利便性を向上しつつ、適切に走行または作業を継続させる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の構成を示す概要図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、フロアタイプと段差種別の組み合わせとを示す表である。
【
図3】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、段差種別とパラメータとを示す表である。
【
図4】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、清掃エリアとフロアタイプとを示す表である。
【
図5】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、床面種別とパラメータとを示す表である。
【
図6】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、段差種別と段差パターンの画像とを示す表である。
【
図7】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、スキャン走行の概要を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、スキャン走行で作成される環境地図の概要を示す平面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、テスト走行の概要を示す平面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、計測部および段差検知部並びにこれらの検知範囲を側方から示す概要図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、段差検知部並びにこれらの検知範囲を上方から示す概要図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、段差検知部のカメラが撮影したレーザーラインを含む床面の画像を示す概要図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、段差検知部のカメラが撮影したレーザーラインを含む床面の画像の例を拡大して示す概要図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、段差検知部のカメラが撮影したレーザーラインを含む床面の画像の例を拡大して示す概要図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、段差検知部のカメラが撮影したレーザーラインを含む床面の画像の例を拡大して示す概要図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置におけるスキャン走行の動作を示すフローチャートである。
【
図17】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置におけるスキャン走行の環境地図作成の動作を示すフローチャートである。
【
図18】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置におけるスキャン走行の段差検知の動作を示すフローチャートである。
【
図19】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置におけるスキャン走行の走行判定の動作を示すフローチャートである。
【
図20】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置におけるスキャン走行の段差走行失敗に対する処理の動作を示すフローチャートである。
【
図21】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置におけるテスト走行の動作を示すフローチャートである。
【
図22】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置におけるテスト走行の走行経路確認の動作を示すフローチャートである。
【
図23】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置における自動運転の動作を示すフローチャートである。
【
図24】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置における自動運転の走行経路確認の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、種々の好ましい技術を開示しているが、本発明の技術範囲はこれらの態様に限定されるものではない。
【0030】
本発明の実施形態による自律走行作業装置1について説明する。
図1に示すように、自律走行作業装置1は、各部を収容するための装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3とを備える。自律走行作業装置1は、所定の作業を実行する作業機構(作業部)を装置本体2に搭載することができ、例えば、装置本体2の下方の床面の清掃作業を実行する清掃部4を作業部として備えて、自律走行清掃装置として機能する。自律走行作業装置1は、例えば、ショッピングモールなどの商業施設、オフィス、ホテル、病院、学校、工場などの全部または一部の領域を清掃エリア(作業エリア)として、清掃エリアの床面を清掃の対象とする。
【0031】
また、自律走行作業装置1は、装置本体2と周囲の壁や障害物(例えば、人や置物など)などの非作業対象との位置関係を計測する計測部5と、所定距離内の壁や障害物を検知する障害物検知部6と、床面の凹凸や溝などの段差を検知する段差検知部7とを備える。また、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各種機能の操作や表示のための操作表示部8と、自律走行作業装置1の各部に電力を供給し、バッテリー(図示せず)の残量監視や充電を制御するための電源部9とを備える。
【0032】
更に、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各部および各種機能(走行部3による走行、清掃部4による清掃作業、計測部5による計測など)を統括制御する制御部10と、清掃エリアの床面に存在する段差の組み合わせを示すフロアタイプや清掃エリアについて登録される運転プランを記憶する記憶部11と、外部機器と通信するための通信部12とを備える。自律走行作業装置1は、通信部12を介して、操作者の保有する操作端末13と通信可能に接続される。
【0033】
次に、自律走行作業装置1の動作の概要を説明する。
【0034】
自律走行作業装置1は、スキャン走行モード(手動走行モード)、テスト走行モードおよび自動運転モードの何れかの動作モードに切り替えられて動作して、それぞれのモードに応じてスキャン走行(手動走行)、テスト走行および自動運転を行う車両である。
【0035】
また、自律走行作業装置1は、
図2に示すように、清掃エリアの床面に存在する段差の組み合わせを示す1以上のフロアタイプを予め設定して記憶部11に記憶しておいて、スキャン走行、テスト走行または自動運転を行う際に、清掃エリアに対応するフロアタイプを選択し、フロアタイプに応じた走行を行う。床面の段差には、様々な種類の点字ブロック、様々な種類の排水溝、様々な種類のグレーチング、床部材の境界などが考えられ、フロアタイプは、1以上の段差をそれぞれ示す1以上の段差種別と関連付けられて登録される。フロアタイプは、操作者による操作表示部8または操作端末13の操作に応じて1以上の段差種別が選択されて登録されてもよく、あるいは、自律走行作業装置1が清掃エリアを走行しながら段差を検出し、検出された段差の段差種別を含むフロアタイプとして登録されてもよい。
【0036】
また、自律走行作業装置1は、
図3に示すように、各フロアタイプの1以上の段差種別のそれぞれについて、段差に対する走行または清掃に関する1以上のパラメータを予め設定して記憶部11に記憶する。このとき、一のフロアタイプにおいて、異なる段差種別の間では、同種のパラメータに対して、同じ設定値が設定されてよく、あるいは異なる設定値が設定されてもよい。
【0037】
例えば、走行に関するパラメータは、走行可能な段差の大きさの閾値(例えば、5mm単位での設定される高さ、深さ、幅など)、段差に沿って走行するか否かを示す段差沿い走行フラグ、段差を回避して走行するか否かを示す段差回避フラグ、段差を実際に走行できたか否かを示す走行時走行不可フラグなどの走行の取り決めに関する走行規則を含む。なお、段差の大きさとは、点字ブロックなどの突出した高さ、溝の深さ、グレーチングのピッチの長さや深さなどである。また、段差の清掃に関するパラメータは、清掃部4の清掃部材16のパッド圧やパッド回転数、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量などの清掃規則(作業規則)を含む。
【0038】
更に、自律走行作業装置1は、
図4に示すように、1以上の清掃エリアを登録可能となっていて、清掃エリア毎に、1以上のフロアタイプの何れかを関連付けて記憶部11に記憶する。このとき、異なる清掃エリアに対して、異なるフロアタイプが関連付けられてよく、あるいは共通の同じフロアタイプが関連付けられてもよい。
【0039】
あるいは、自律走行作業装置1は、段差種別の組み合わせが同じであるか否かに拘わらず、清掃エリア毎にフロアタイプを関連付けてもよい。例えば、異なる清掃エリアに対して、段差種別の組み合わせが同じであるフロアタイプ(同種のフロアタイプ)が関連付けられる場合があるが、この場合、共通の同じフロアタイプを関連付けるのではなく、清掃エリア毎に同種のフロアタイプを別々に用意して関連付ける。そして、フロアタイプの各段差種別の各パラメータは、清掃エリア毎に設定可能となる。
【0040】
また、自律走行作業装置1は、
図5に示すように、清掃エリアの床面の材質を識別する1以上の床面種別を予め設定して記憶部11に記憶してよい。そして、各床面種別の床面に対する清掃に関する1以上のパラメータを予め設定して記憶部11に記憶する。また、床面種別の清掃に関するパラメータは、清掃部4の清掃部材16のパッド圧やパッド回転数、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量などの清掃規則を含む。
【0041】
また、自律走行作業装置1は、
図6に示すように、走行時に検知した段差を識別するために、各段差の段差パターンとして、各段差の平面画像を予め設定して記憶部11に記憶してよい。段差パターンは、操作者による操作表示部8または操作端末13の操作に応じて登録されてもよく、あるいは走行中に段差検知部7のカメラ7bで撮影した画像が登録されてもよい。
【0042】
次に、自律走行作業装置1の各動作モードについて説明する。
【0043】
スキャン走行モードは、清掃対象の清掃エリアの環境地図を新規に作成するための動作モードである。自律走行作業装置1は、スキャン走行モードにおいて、
図7に示すように、操作者による操作表示部8または操作端末13の手動操作に応じて走行部3を制御して走行しながら清掃エリアの環境地図を作成するスキャン走行を行う。なお、スキャン走行では、自律走行作業装置1は、基本的には、走行部3による走行中に、清掃部4による床面の清掃を行わないが、例外として清掃を伴ってもよい。
【0044】
また、スキャン走行モードにおいて、自律走行作業装置1は、スキャン走行後に、操作者による操作表示部8または操作端末13の手動操作に応じて、
図8に示すように、環境地図の調整および各種エリア設定を行い、環境地図およびエリア設定を記憶部11に記憶する。環境地図のエリア設定は、例えば、環境地図内を走行する場合の始点や終点および各位置における自律走行作業装置1の向き、進入禁止エリアなどを含む。
図8では、ベルトパーテーションなどの障害物に対して進入禁止エリアを設定する例を示す。
【0045】
更に、スキャン走行モードでは、スキャン走行後に、既に登録された1以上のフロアタイプから、清掃エリアに対応するフロアタイプを選択し、そのフロアタイプを清掃エリア(環境地図)に関連付けて記憶部11に記憶してもよい。あるいは、スキャン走行の間に清掃エリアから検出される段差を含むフロアタイプを登録し、そのフロアタイプを清掃エリア(環境地図)に関連付けて記憶部11に記憶してもよい。
【0046】
テスト走行モードは、スキャン走行モードで作成された環境地図に基づいて清掃エリアのテスト走行を行うための動作モードである。自律走行作業装置1は、テスト走行モードにおいて、
図9に示すように、所定の清掃条件(作業条件)に基づいて清掃部4を制御して自動的に床面を清掃しながら、環境地図および所定の走行条件に基づいて走行部3を制御して、環境地図の清掃エリアを塗りつぶすような走行経路(
図9の一点鎖線参照)を自動的に始点から終点まで走行するテスト走行を行う。
図9では、設定された進入禁止エリアを回避して走行し、また、段差として検出した点字ブロックに沿って走行する例を示す。テスト走行時の走行条件および清掃条件は、標準的な初期設定でもよいが、テスト走行前またはテスト走行中に操作表示部8または操作端末13の手動操作に応じて設定可能である。
【0047】
自律走行作業装置1は、テスト走行中、走行経路に沿った所定のステップ毎の走行条件および清掃条件を取得して、走行経路の始点から終点までに亘って各ステップの走行条件および清掃条件を合わせて走行データおよび清掃データ(作業データ)として記憶部11に記憶しておく。ステップの間隔は、所定の時間間隔(例えば、25m/s)に設定されてもよく、あるいは所定の移動距離(例えば、0.5m)に設定されてもよい。また、自律走行作業装置1は、テスト走行中、計測部5、障害物検知部6または段差検知部7の計測結果や検知結果に応じて、各ステップの走行状況または周辺状況を取得して記憶部11に記憶しておく。例えば、走行状況または周辺状況として、段差走行時の段差情報や走行可否情報を取得する。
【0048】
なお、自律走行作業装置1は、問題を生じることなく始点から終点まで走行してテスト走行に成功した場合、その清掃エリア(環境地図)に対応する運転プランを登録する。この運転プランには、環境地図と共に、エリア設定、走行データおよび清掃データが記憶部11に記憶される。
【0049】
一方、自律走行作業装置1は、テスト走行中に障害物や段差などの問題が生じてテスト走行に失敗した場合、テスト走行を中止して、操作者にエラーを通知する。このようにエラーが通知された場合、自律走行作業装置1は、環境地図の調整および各種エリア設定、並びに走行条件および清掃条件の設定を再度行うことができ、その後、テスト走行を再度行うことができる。
【0050】
更に、テスト走行モードでは、テスト走行後に、既に登録された1以上のフロアタイプから、運転プランに対応するフロアタイプを選択し、そのフロアタイプを運転プランに関連付けて、即ち、清掃エリア(環境地図)に関連付けて、記憶部11に記憶してもよい。あるいは、テスト走行の間に清掃エリアから検出される段差を含むフロアタイプを登録し、そのフロアタイプを運転プランに関連付けて、即ち、清掃エリア(環境地図)に関連付けて、記憶部11に記憶してもよい。
【0051】
自動運転モードは、運転プランとして登録された走行および清掃を再現するように清掃エリアの自動運転を行うための動作モードである。自律走行作業装置1は、自動運転モードにおいて、運転プランの環境地図、エリア設定、走行データおよび清掃データ、並びにフロアタイプに基づいて走行部3および清掃部4を制御して、自動的に床面を清掃しながら環境地図の走行経路を自動的に始点から終点まで走行する自動運転を行う。自動運転時の走行条件および清掃条件は、運転プランの走行データおよび清掃データに基づいて設定されてもよいが、自動運転前または自動運転中に操作表示部8または操作端末13の手動操作に応じて設定可能である。
【0052】
また、自律走行作業装置1は、自動運転中、計測部5、障害物検知部6または段差検知部7の計測結果や検知結果に応じて、各ステップの走行状況または周辺状況を取得して記憶部11に記憶しておく。例えば、走行状況または周辺状況として、段差走行時の段差情報や走行可否情報を取得する。
【0053】
なお、自律走行作業装置1は、テスト走行モードをスキップして、運転プランの走行データおよび清掃データが登録されていない環境地図について自動運転を行うように自動運転モードに移行してもよい。この場合、自律走行作業装置1は、所定の清掃条件に基づいて清掃部4を制御して自動的に床面を清掃しながら、環境地図および所定の走行条件に基づいて走行部3を制御して、環境地図の清掃エリアを塗りつぶすような走行経路を自動的に始点から終点まで走行する自動運転を行う。
【0054】
運転プランは、走行経路に沿った複数のステップで構成され、各ステップには、走行データおよび清掃データ、並びに段差情報および走行可否情報が関連付けられる。また、運転プランは、上記した以外に、走行開始からの経過時間をステップ毎に関連付けて記憶してもよい。
【0055】
走行条件(走行データ)は、例えば、走行部3の走行経路上の自己位置データ(環境地図上の自己位置を示すX座標およびY座標、開始位置の向きに対する角度)、操舵フラグ(直進、左折、右折)、進行方向への走行速度[m/s]および旋回速度[deg/s]を含み、各ステップの走行条件からなる走行データに基づいて走行経路を図化することができる。あるいは、走行速度は、複数段階の速度の何れかに切り替えられてよく、走行条件は、走行速度の段階的な速度を数字(例えば、0~7の8段階)に換算してよい。
【0056】
清掃条件(清掃データ)は、例えば、清掃部4の清掃部材16のパッド圧やパッド回転数、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量を含む。パッド圧は、清掃部材16を床面に押し付ける力であり、供給水量は、洗浄液供給部17によって床面に供給される洗浄液(作業液)の量であり、吸引量は、吸引部18によって床面から洗浄後の汚水を吸引する際の吸引ブロア(図示せず)の稼働強度である。なお、パッド圧、パッド回転数、供給水量および吸引量は、複数段階の強度の何れかに切り替えられてよく、清掃条件は、パッド圧、パッド回転数、供給水量および吸引量の段階的な強度を数字(例えば、0~2の3段階や、0~4の5段階など)に換算して記憶するとよい。なお、清掃条件は、清掃部材16の作動/停止、回転速度を含んでもよい。
【0057】
次に、自律走行作業装置1の各部を説明する。
【0058】
走行部3は、装置本体2の下部に設けられていて、駆動輪として1つの前輪3aを備え、補助輪として一対の後輪3bを備える。前輪3aは、進行方向前側で装置幅方向中央に設けられ、駆動輪ユニット3cに軸支される。前輪3aは、走行駆動用モータ(図示せず)と前輪回転用エンコーダ(図示せず)とを備える。走行部3は、走行駆動用モータを駆動して前輪3aを回転させることで装置本体2を前進させ、前輪3aの回転を停止させることで装置本体2を停止させる。走行駆動用モータの駆動を制御することで、自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度の調整(加減速)が行われる。なお、走行部3は、走行駆動用モータが前輪3aを逆転させることで装置本体2を後退させてもよい。
【0059】
また、前輪3aは、操舵軸(図示せず)と操舵用モータ(図示せず)と操舵回転用エンコーダ(図示せず)とを備える。走行部3は、操舵用モータを駆動して操舵軸を回転させることで駆動輪ユニット3cと共に前輪3aの向きを変えて装置本体2を操舵し、前輪3aの向きを変えながら装置本体2を前進させることで、自律走行作業装置1(走行部3)を左折(左旋回)や右折(右旋回)させる。操舵用モータの駆動を制御することで、自律走行作業装置1(走行部3)の操舵角が調整される。例えば、操舵軸を回転させて進行方向に対して操舵角を左側または右側に90度傾けるように操舵用モータを制御しながら、装置本体2を前方または後方へ旋回することで、装置本体2は左側または右側に信地旋回する。
【0060】
一対の後輪3bは、進行方向後側で装置幅方向(左右方向)に間隔を空けて設けられ、それぞれ走行距離を回転量から把握するためのエンコーダ(図示せず)を備える。一対の後輪3bは、前輪3aの駆動による装置本体2の移動に応じて従動回転する。自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度の調整(加減速)と操舵は、後輪3bに備えられたエンコーダを用いて後輪3bの各々の回転量をフィードバックしながら走行駆動用モータと操舵用モータを制御することで行われてもよい。なお、本実施形態では、駆動輪の前輪3aと補助輪の後輪3bとを備える例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、例えば、他の実施形態では、補助輪の前輪3aと一対の駆動輪の後輪3bとを備えてもよい。
【0061】
走行部3は、動作モードがスキャン走行モードに設定されている場合、操作者による操作表示部8または操作端末13の手動操作に応じて動作する。操作表示部8または操作端末13の手動操作では、例えば、スキャン走行の開始、一時停止および終了の走行指示や、前進、後退、左回り、右回りなどの走行指示、走行速度および旋回速度などの走行条件が入力される。操作表示部8の走行指示は制御部10に入力され、また、操作端末13の走行指示は通信部12を介して制御部10に入力され、制御部10が走行指示に応じて走行部3を制御することになる。
【0062】
また、走行部3は、動作モードがテスト走行モードまたは自動運転モードに設定されている場合、環境地図または運転プランの走行データに基づいて制御部10(テスト走行制御部25または自動運転制御部26)の制御に応じて動作する。なお、制御部10は、走行速度および旋回速度を制御する場合、走行指示または走行データ(走行条件)を、走行部3の走行駆動用モータや操舵用モータの駆動設定値に換算し、この駆動設定値に基づいて走行駆動用モータや操舵用モータを制御する。
【0063】
清掃部4は、装置本体2の下部に設けられ、装置本体2の下方の床面を清掃するように構成される。清掃部4は、動作モードがスキャン走行モード、テスト走行モードおよび自動運転モードの何れに設定されている場合でも、操作者による操作表示部8または操作端末13の手動操作に応じて動作する。
【0064】
操作表示部8または操作端末13の手動操作では、例えば、清掃部材16の回転のオン/オフやパッド圧やパッド回転数の増減、洗浄液供給部17の供給のオン/オフや供給水量の増減、および吸引部18の吸引のオン/オフや吸引量の増減などの清掃指示が入力される。操作表示部8の清掃指示は制御部10に入力され、また、操作端末13の清掃指示は通信部12を介して制御部10に入力され、制御部10が清掃指示に応じて清掃部4を制御することになる。
【0065】
また、清掃部4は、動作モードがテスト走行モードまたは自動運転モードに設定されている場合、環境地図または運転プランの清掃データに基づいて制御部10(テスト走行制御部25または自動運転制御部26)の制御に応じて動作する。なお、制御部10は、清掃部材16、洗浄液供給部17および吸引部18を制御する場合、清掃指示または清掃データ(清掃条件)を、清掃部材16、洗浄液供給部17および吸引部18を駆動する各アクチュエータの駆動設定値に換算し、この駆動設定値に基づいて各アクチュエータを制御する。
【0066】
清掃部4は、例えば、洗浄液を用いて床面を清掃する湿式の清掃機構で構成され、床面に接触して床面を清掃する清掃部材16と、洗浄液を床面に供給する洗浄液供給部17と、床面を清掃した使用後の洗浄液、即ち、汚水を吸引する吸引部18とを備える。また、清掃部4は、清掃部材16を床面上で回転させる清掃部材用モータ(図示せず)と、清掃部材16を床面に対して上下方向に移動させる清掃部材用アクチュエータ(図示せず)とを備える。更に、清掃部4は、吸引部18で吸引された汚水を回収する汚水回収部(図示せず)を備える。
【0067】
清掃部材16は、装置本体2の内部から下方に突出した清掃シャフト(図示せず)に対して着脱可能に取り付けられる。清掃部材用モータが清掃シャフトを回転させると、清掃部材16は清掃シャフトを回転軸として回転し、清掃部材用アクチュエータが清掃シャフトを上下方向に移動させると、清掃部材16も上下方向に移動する。
【0068】
清掃部材16は、一対の洗浄パッドや一対の洗浄ブラシなどで構成され、一対の洗浄パッドまたは一対の洗浄ブラシは、進行方向略中央で装置幅方向(左右方向)に並んで取り付けられる。左側の洗浄パッドまたは洗浄ブラシが上方視時計回りに回転し、右側の洗浄パッドまたは洗浄ブラシが上方視反時計回りに回転して、幅方向中央側で前方から後方へ向かうように回転する。これにより、一対の洗浄パッドまたは一対の洗浄ブラシの前方の汚水や塵埃を幅方向中央側に収集しつつ後方へ排出する。
【0069】
洗浄液供給部17は、洗浄液を収容する洗浄液タンクや、この洗浄液タンクに接続された供給ポンプを備えていて、供給ポンプを用いて洗浄液タンクから床面に洗浄液を供給して散布する。洗浄液供給部17は、例えば、供給ポンプに電圧を印加して供給ポンプのインペラ(羽根車)を回転させることで洗浄液を供給する。この電圧を変更してインペラの回転数を調整することで、洗浄液の供給水量が調整される。例えば、電圧と洗浄液の供給水量との相関データを予め記憶部11に記憶しておくことで、所定の供給水量を要求された場合に、この供給水量に対応する電圧を供給水ポンプに印加することで、要求された供給水量に調整する。
【0070】
吸引部18は、吸引ブロアで構成される。汚水回収部は、スキージ19と、汚水ダクト(図示せず)と、汚水タンク(図示せず)とを備えていて、スキージ19は、清掃部材16より後方で床面に接地して設けられる。汚水回収部は、清掃部材16から後方に排出される汚水をスキージ19で受け止めて収集し、吸引部18は、汚水ダクトに接続されていて、スキージ19が収集した汚水を汚水ダクトへ吸引する。汚水回収部において、汚水ダクトへ吸引された汚水は、汚水ダクトに接続された汚水タンクへ回収される。
【0071】
このような清掃部4は、洗浄液供給部17が床面に洗浄液を散布しながら、清掃部材16の洗浄パッドまたは洗浄ブラシを清掃部材用モータが回転させると共に清掃部材用アクチュエータが床面に付勢して押し付けることで、床面を洗浄し、洗浄後の汚水を汚水回収部が回収する。
【0072】
計測部5は、装置本体2と周囲の壁や障害物などの非作業対象との位置情報(例えば、装置本体2の進行方向に対する角度や距離)を計測するレーザーレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)5aなどを備える。例えば、LRF5aは、装置本体2の前上部に設けられ、前方および側方に存在する非作業対象を検出する。計測部5は、装置本体2が走行している間、例えば、所定のタイミング毎に非作業対象との位置情報を計測する。
【0073】
障害物検知部6は、装置本体2から所定距離内の壁や障害物の有無を検知する超音波センサ6aなどを備える。例えば、超音波センサ6aは、装置本体2の前部に設けられる。障害物検知部6は、装置本体2が走行している間、常時稼働していてよい。
【0074】
段差検知部7は、装置本体2の進行方向側の床面の段差を検知する光学式センサとしての赤外線センサ7aおよびカメラ7bや、段差にラインを照射するラインマーカー7c、走行中の床面の段差を検知する振動センサ7dなどを備える。段差検知部7は、装置本体2が走行している間、常時稼働していてよい。なお、光学式センサは、特に赤外線センサである必要はなく、可視光センサであってもよい。
【0075】
赤外線センサ7aおよびカメラ7bは、
図1や
図10に示すように、装置本体2の前側に設けられ、ラインマーカー7cは、
図1や
図10に示すように、装置本体2の前側で前輪3aの駆動輪ユニット3cに取り付けられる。
図11に示すように、駆動輪ユニット3cの向き、即ち、前輪3aの向きを変えることで、ラインマーカー7cの照射位置や照射範囲を変えることができる。あるいは、ラインマーカー7cは、装置本体2の前側で照射位置や照射範囲を取ることができれば、駆動輪ユニット3cに取り付けられなくてもよく、駆動輪ユニット3cとは別の機構によって、前輪3aの向きに従動して照射位置や照射範囲を変えるように構成されてよい。なお、赤外線センサ7aおよびカメラ7bは、前輪3aの駆動輪ユニット3cに取り付けられてもよく、この場合、駆動輪ユニット3cの向き、即ち、前輪3aの向きを変えることで、赤外線センサ7aの検知範囲およびカメラ7bの撮影範囲を変えることができる。また、赤外線センサ7aおよびカメラ7bは、駆動輪ユニット3cとは別の機構によって、前輪3aの向きに従動して検知範囲および撮影範囲を変えるように構成されてよい。振動センサ7dは、前輪3aの駆動輪ユニット3cまたは後輪3bを軸支する従動輪ユニット(図示せず)に設けられる。
【0076】
赤外線センサ7aは、発光部および受光部を備え、発光部から前方の床面に赤外線を照射して、床面を反射した赤外線を受光部が受光する。例えば、点字ブロックなどの凸部は、床面より早く赤外線を反射し、また、排水溝やグレーチングなどの凹部は、赤外線を反射せず、もしくは床面より遅れて反射するので、赤外線センサ7aは、床面で反射した赤外線の受光結果に基づいて段差を検知し、制御部10の段差識別部22は、その検知結果に基づいて段差種別や段差の大きさを識別する。
【0077】
カメラ7bは、装置本体2の周囲の画像を撮影して、制御部10の段差識別部22は、その画像に段差パターンが含まれるか否かを判定して、段差を検知すると共に段差種別や段差の大きさを識別する。
【0078】
また、カメラ7bは、ラインマーカー7cが照射したラインを含む画像を撮影して、制御部10の段差識別部22は、その画像のラインの形状に基づいて、段差を検知すると共に段差種別や段差の大きさを識別する。ラインマーカー7cは、所謂ラインレーザーであり、レーザーポインタの光軸上のレンズで一方向に拡散させることで、照射部にレーザーラインを投影させるものであり、
図12に示すように、装置本体2の進行方向側(前輪3aの向き)に向かってレーザー光を照射することで、ラインマーカー7cから所定距離だけ離れた位置で、進行方向に直交する所定線長のレーザーラインを床面上に照射し、また、カメラ7bは、レーザーラインと共に床面の画像を撮影する。なお、ラインマーカー7cは、レーザー光を照射するものに限定されず、他の光を照射するものでもよい。
【0079】
振動センサ7dは、加速度センサなどで構成され、自律走行作業装置1の走行中に床面からの振動を検知し、その振動量の変化に基づいて床面の段差や床面の材質の変化を検知し、制御部10の段差識別部22は、その検知結果に基づいて段差種別や段差の大きさ、または床面種別を識別する。例えば、振動センサ7dは、床面から溝や凹部などの段差へ下がる際の振動、床面から凸部などの段差への上がる際の振動、沈み込むように走行する際の振動を検知することで床面の段差を検知し、カーペットなどの繊維系床へ移動する際の走行負荷の増加による振動、セラミックなどの樹脂系床へ移動する際の走行負荷の減少による振動を検知することで床面の材質を検知する。
【0080】
操作表示部8は、装置本体2の後上部に設けられ、例えば、キースイッチと、緊急停止ボタンと、タッチパネルとを備え、操作表示部8の各部は、制御部10に接続されている。操作表示部8は、装置本体2に取り付けられる操作表示パネルなどで構成されてよく、あるいは、装置本体2に対して着脱可能に装着されるタブレット端末などで構成されてもよい。なお、タブレット端末などで構成される操作表示部8は、通信部12によって無線通信を介して制御部10に接続されて、自律走行作業装置1を遠隔操作可能となる。
【0081】
キースイッチは、オン、オフを切替可能に構成されている。キースイッチをオンに切り替えることで、電源部9から各部に電力が供給されて自律走行作業装置1が稼働する一方、キースイッチをオフに切り替えることで、電源部9から各部への電力供給が停止されて自律走行作業装置1の稼働が停止する。緊急停止ボタンは、操作されることで、自律走行作業装置1の各部の動作(特に、自動運転モードでの自動運転)を強制的に停止(制動)する。
【0082】
タッチパネルは、制御部10からの制御信号に応じて様々な画面を表示し、各画面でのタッチ操作に基づく操作信号を制御部10へと送信する。例えば、キースイッチをオンにして自律走行作業装置1を稼働すると、タッチパネルは、動作モードを選択可能なモード選択画面(図示せず)を表示する。
【0083】
モード選択画面には、例えば、図示しないが、スキャン走行ボタン、テスト走行ボタンおよび自動運転ボタンが操作可能に表示される。スキャン走行ボタン、テスト走行ボタンまたは自動運転ボタンが操作されると、動作モードがスキャン走行モード、テスト走行モードまたは自動運転モードに切り替えられる。
【0084】
スキャン走行モードにおいて、タッチパネルは、スキャン走行の開始、一時停止および終了の走行指示や、前進、後退、左回り、右回りなどの走行指示、走行速度および旋回速度などの走行条件を設定可能な設定画面を表示する。
【0085】
スキャン走行が終了して環境地図が作成されると、その環境地図についてテスト走行を行うためにテスト走行ボタンが操作可能となり、テスト走行モードにおいて、タッチパネルは、テスト走行の各走行指示や各走行条件、並びにテスト走行の清掃部材16、洗浄液供給部17および吸引部18の清掃指示や清掃条件を設定可能な設定画面を表示する。なお、テスト走行ボタンは、記憶部11に環境地図が記憶されている場合に操作可能としてもよい。この場合、タッチパネルは、テスト走行ボタンの操作に応じて環境地図を選択可能な選択画面を表示し、環境地図が選択されると、テスト走行の各走行指示や各走行条件、並びにテスト走行の各清掃指示や各清掃条件を設定可能な設定画面を表示する。
【0086】
自動運転ボタンは、記憶部11に運転プランが記憶されている場合に操作可能とする。自動運転モードにおいて、タッチパネルは、自動運転ボタンの操作に応じて運転プランを選択可能な選択画面を表示し、運転プランが選択されると、自動運転の各走行指示や各走行条件、並びに自動運転の各清掃指示や各清掃条件を設定可能な設定画面を表示する。
【0087】
電源部9は、装置本体2内部に搭載されたバッテリー(電源)および充電回路を備え、外部電源に接続することでバッテリーが充電され、また、自律走行作業装置1の各部へと電力を供給する。電源部9は、バッテリーの残量を示す信号を制御部10へと出力してもよい。
【0088】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)などのコンピュータで構成され、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリなどを含む記憶部11に接続されている。また、制御部10は、上記の走行部3、清掃部4、計測部5、障害物検知部6、段差検知部7、操作表示部8、電源部9および通信部12などの自律走行作業装置1の各部に接続されている。
【0089】
また、制御部10は、通信部12を介して操作端末13などの外部機器と通信可能に接続される。通信部12は、操作端末13などの外部機器と、Wi-Fiなどの無線LANやBluetooth(登録商標)、LTE回線などの通信規格によって無線通信を行う。
【0090】
操作端末13は、タッチパネルなどの操作表示器を備えていて、操作表示部8と共に、または操作表示部8の代わりに、自律走行作業装置1の各種機能の操作や表示をすることができる。換言すれば、操作端末13は、操作表示部8のタッチパネルと同様に、動作モードを選択可能なモード選択画面や、スキャン走行モード時のスキャン走行の各走行指示や各走行条件の設定画面、テスト走行モード時の環境地図の選択画面、並びにテスト走行の各走行指示や各走行条件および各清掃指示や各清掃条件の設定画面、自動運転モード時の運転プランの選択画面、並びに自動運転の各走行指示や各走行条件および各清掃指示や各清掃条件の設定画面を表示して、入力された各種設定および各種選択を通信部12へと送信する。
【0091】
記憶部11は、自律走行作業装置1の各部および各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御部10が、記憶部11に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各部および各種機能を統括制御する。例えば、制御部10は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、モード切替部20、地図作成部21、段差識別部22、走行判定部23、スキャン走行制御部24、テスト走行制御部25、自動運転制御部26として動作する。これにより、自律走行作業装置1は、事前に記憶されたプログラムに従って自律的に走行し自動で作業することができる。また、記憶部11は、1つ以上の清掃エリアの各環境地図を記憶すると共に、各清掃エリア(環境地図)に対応する運転プランも記憶する。
【0092】
モード切替部20は、動作モードをスキャン走行モード、テスト走行モードまたは自動運転モードの何れかに切り替える。モード切替部20は、例えば、モード選択画面において、スキャン走行ボタン、テスト走行ボタンおよび自動運転ボタンの操作に応じて動作モードをスキャン走行モード、テスト走行モードまたは自動運転モードにそれぞれ切り替える。
【0093】
地図作成部21は、自律走行作業装置1が走行している間にSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などの技術を用いてリアルタイムで自己位置の推定と環境地図の作成とを行う。具体的には、地図作成部21は、所定の清掃エリアを走行中に、計測部5の計測結果として、装置本体2と装置本体2の周囲の非作業対象との位置情報を取得し、この計測部5の計測結果に基づいて、所定の時間間隔毎または所定の距離間隔毎に、装置本体2の周囲の局所地図を作成する。また、地図作成部21は、局所地図と走行部3の各エンコーダによる検出結果(走行部3の移動量)とに基づいて、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置(座標)を推定する。
【0094】
そして、地図作成部21は、各局所地図をつなぎ合わせる(合成する)ことで清掃エリアの環境地図を作成する。また、地図作成部21は、局所地図中の自己位置(計測部5が計測した各位置情報)をつなぎ合わせる(合成する)ことで環境地図上の走行軌跡(走行経路)を再現する。
【0095】
段差識別部22は、自律走行作業装置1が走行している間に(例えば、スキャン走行中、テスト走行中、自動運転中に)、床面の段差や材質に関する段差検知部7の検知結果に基づいて、進行方向側または床面に存在する段差の段差種別や走行中の床面の床面種別を識別する。また、段差識別部22は、計測部5で計測される位置情報や地図作成部21で作成される局所地図や環境地図に基づいて、局所地図や環境地図における自律走行作業装置1の自己位置を推定し、局所地図や環境地図の自己位置に基づいて算出されるオドメトリ(進路や位置)のブレに基づいて段差を識別してもよい。なお、段差識別部22は、自律走行作業装置1が所定のフロアタイプを設定されて走行している場合、そのフロアタイプに含まれる1以上の段差種別の中から、段差種別を識別する。
【0096】
段差検知部7が段差を検知した場合、段差識別部22は、計測部5の計測結果の位置情報に基づいて、検知した段差の位置情報を算出する。段差識別部22は、識別した段差種別と、算出した位置情報とを記憶部11に記憶する。なお、段差識別部22は、段差の位置情報が、運転プランの走行データの何れのステップに応答するかを判別して、段差種別と位置情報とを運転プランの対応するステップに含めてもよい。
【0097】
更に、段差識別部22は、段差検知部7の赤外線センサ7a、カメラ7bおよび振動センサ7dのそれぞれの検知結果の組み合わせに応じて、段差種別や床面種別を識別する。例えば、段差識別部22は、赤外線センサ7aで検知された赤外線の反射光の受光結果と、振動センサ7dで検知された走行時の振動量などの組み合わせに基づいて、洗浄対象ではないカーペットなどの繊維系床の検出を可能とする。
【0098】
または、段差識別部22は、カメラ7bの撮影画像に対して、記憶部11に記憶された段差パターンを用いて、パターンマッチングなどの画像処理を行い、撮影画像から段差パターンに一致する部分画像を検出した場合、その段差パターンに対応する段差を撮影位置から検出する。あるいは、段差識別部22は、カメラ7bの撮影画像のパターンマッチングの結果、色違いの段差パターンを検出したとき、色違いの段差パターンが検出された床面の位置で、赤外線センサ7aによって赤外線の反射光の受光結果を取得し、この受光結果に基づいて床面の凹凸を検出した場合、色違いの段差パターンに対応する段差を撮影位置から検出する。
【0099】
また、段差識別部22は、
図12に示すように、ラインマーカー7cが床面に照射したレーザーラインをカメラ7bが撮影した場合、画像におけるレーザーラインの形状に基づいて、レーザーラインが照射された箇所の段差を検知すると共に段差種別や段差の大きさを識別する。
【0100】
例えば、
図13に示すように、床面に段差がない場合には、画像のレーザーラインは直線状に検出されるので、段差識別部22は、段差を検知しない。
図14に示すように、床面にグレーチングなどの深い凹状の段差がある場合には、画像のレーザーラインは断続的に検出されるので、段差識別部22は、グレーチングの段差を検知する。
図15に示すように、床面に点字ブロックなどの凸状の段差がある場合には、画像のレーザーラインは進行方向に突出した部分を伴って検出されるので、段差識別部22は、点字ブロックの段差を検知する。図示しないが、床面に溝などの浅い凹状の段差がある場合には、画像のレーザーラインは進行方向と逆方向に突出した部分を伴って検出されるので、段差識別部22は、溝の段差を検知する。
【0101】
走行判定部23は、自律走行作業装置1が所定のフロアタイプを設定されて走行しているときに、段差検知部7が検知した段差の段差種別や床面種別を段差識別部22が識別した場合、その段差に対する走行および清掃や、その床面に対する清掃を判定する。このとき、走行判定部23は、設定されているフロアタイプと識別された段差種別とについて記憶部11に記憶されている走行や清掃に関するパラメータを取得し、特に、段差閾値、段差沿い走行フラグ、段差回避フラグおよび走行時走行不可フラグなどの走行規則を取得する。そして、走行判定部23は、走行部3の走行状態や赤外線センサ7a、カメラ7bまたは振動センサ7dによる段差検知部7の検知結果に基づいて自律走行作業装置1の走行状況を監視しながら、検知した段差に対して、取得した走行規則に従って走行するように走行部3を制御する。更に、走行判定部23は、走行規則に従った自律走行作業装置1による段差の走行が成功したか否かを、取得した走行状況に基づいて判定する。
【0102】
例えば、段差検知部7が検知した段差の大きさ(高さや深さ)が、走行規則の段差閾値より大きい場合、走行判定部23は、その段差を走行不可と判定する。この場合、走行判定部23は、走行規則に従って段差を走行できないので、走行規則に従った段差の走行が成功しなかったと判定する。そして、走行判定部23は、段差沿い走行フラグがオンの場合には、段差に沿って走行するように走行部3を制御し、あるいは、段差回避フラグがオンの場合には、段差を回避して走行するように走行部3を制御する。このように、段差を走行する前に、段差を走行できないと判定する場合には、走行判定部23は、段差に沿って、あるいは段差を回避して走行するように走行部3を制御する。このとき、走行判定部23は、段差走行の失敗を操作表示部8や操作端末13を介して操作者に通知する。
【0103】
一方、段差検知部7が検知した段差の大きさ(高さや深さ)が、走行規則の段差閾値以下(以上)の場合、走行判定部23は、その段差を走行可能と判定して、段差を走行するように走行部3を制御する。
【0104】
また、段差の大きさ(高さや深さ)が段差閾値以下(以上)の場合や、走行時走行不可フラグがオフの場合において、走行判定部23が走行可能と判定した段差を走行する間も、走行判定部23は、自律走行作業装置1の走行状況を継続して監視し、走行規則に従った段差の走行が成功したか否かを判定する。
【0105】
例えば、走行部3の前輪3aや走行駆動用モータが段差に対して空転して段差を超えることができない場合、走行判定部23は、走行規則に従った段差の走行が成功しなかったと判定する。また、段差を走行するときの走行負荷の増加によって走行部3の走行駆動用モータに過度な負荷が生じた場合や、振動センサ7dが過度な振動を検知した場合、走行判定部23は、走行規則に従った段差の走行が成功しなかったと判定する。このように、段差を走行中に、段差の走行が成功でないと判定する場合には、走行判定部23は、その判定時、あるいは、自律走行作業装置1の走行終了後に、段差走行の失敗を操作表示部8や操作端末13を介して操作者に通知する。
【0106】
上記のように、走行規則に従った段差の走行が成功しなかったと判定した場合、走行判定部23は、段差種別の走行時走行不可フラグをオンに設定し、また、走行規則に従った走行の失敗を示す情報や段差種別のパラメータの再設定を促す情報を発行し、操作表示部8や操作端末13を介して表示やアラートなどで出力して操作者に通知する。なお、段差種別のパラメータの再設定を促す情報は、段差の走行が成功でないと判定したとき、または自律走行作業装置1の走行終了後に、操作表示部8や操作端末13に表示するとよい。このとき、段差閾値の再設定や、段差沿い走行フラグまたは段差回避フラグのオンの設定を促すことで、パラメータの再設定を促す。
【0107】
また、走行判定部23は、識別された床面種別に基づいて床面の材質の変化を検出した場合、変化後の床面種別について記憶部11に記憶されている清掃規則を取得する。そして、走行判定部23は、取得した清掃規則に基づいて清掃部4の清掃条件を変更し、変更後の清掃条件で清掃するように清掃部4を制御する。例えば、走行判定部23は、床面がセラミックなどの樹脂系床の場合には、清掃を行うように清掃部4を制御するが、床面がカーペットなどの繊維系床の場合には、清掃を行わない清掃部4を制御する。
【0108】
スキャン走行制御部24について、
図16~
図20のフローチャートを参照しながら説明する。スキャン走行制御部24は、スキャン走行モードにおいて、操作表示部8または操作端末13を介したスキャン走行の開始操作に応じてスキャン走行を開始する(ステップS1)。スキャン走行制御部24は、スキャン走行を開始すると、操作表示部8または操作端末13を介して前進、後退、左回り、右回りなどの走行指示や走行速度および旋回速度などの走行条件を入力し、走行指示や走行条件に応じて走行部3を制御して自律走行作業装置1を走行させる。
【0109】
スキャン走行制御部24は、自律走行作業装置1を走行させながら環境地図の作成を行い(ステップS2)、具体的には、所定の時間間隔毎または所定の距離間隔毎に、計測部5によって周囲の非作業対象の位置情報を計測すると共に(ステップS21)、地図作成部21によって周囲の局所地図を作成する。スキャン走行制御部24は、地図作成部21によって局所地図を作成する度につなぎ合わせて清掃エリアの環境地図を作成する(ステップS22)。
【0110】
スキャン走行制御部24は、清掃エリアの環境地図が完成すれば(ステップS3:YES)、操作表示部8または操作端末13を介したスキャン走行の終了操作に応じてスキャン走行を終了し(ステップS4)、作成した環境地図を記憶部11に記憶する。清掃エリアの環境地図が完成していなければ(ステップS3:NO)、スキャン走行制御部24は、スキャン走行を継続する。
【0111】
なお、スキャン走行制御部24は、スキャン走行を開始するときに清掃エリアに対してフロアタイプを設定することで、段差識別部22によって段差を識別しつつ、走行判定部23によってフロアタイプに応じて段差に対する走行を判定しながら、スキャン走行を行うことができる。例えば、記憶部11に記憶された1以上のフロアタイプから、操作表示部8または操作端末13を介して、フロアタイプを選択して設定する。
【0112】
具体的には、スキャン走行制御部24は、スキャン走行を行う間、床面の段差の検知を行い(ステップS5)、具体的には、段差検知部7によって床面の段差を検知し(ステップS31)、段差識別部22によって段差種別を識別する(ステップS32)。段差を検知しない場合(ステップS6:NO)、スキャン走行制御部24は、そのままスキャン走行を継続する。
【0113】
一方、段差を検知した場合(ステップS6:YES)、スキャン走行制御部24は、走行判定部23によってフロアタイプに応じて段差に対する走行を判定する(ステップS7)。このとき、走行判定部23は、このフロアタイプの段差種別について記憶部11に設定されているパラメータを取得し(ステップS41)、また、パラメータの中から、段差閾値、段差沿い走行フラグ、段差回避フラグおよび走行時走行不可フラグなどの走行規則を取得して、走行規則に基づいて段差に対する走行を判定する(ステップS42)。
【0114】
そして、スキャン走行制御部24は、走行判定部23によって、取得した走行規則に従って段差に対して走行するように走行部3を制御する(ステップS8)。例えば、段差回避フラグがオンの場合、走行判定部23は段差を回避して走行するように走行部3を制御する(ステップS9)。この場合、段差を回避した走行を終了し、即ち、段差を通過すると、スキャン走行制御部24は、スキャン走行を継続する。
【0115】
または、段差沿い走行フラグがオンの場合、走行判定部23は段差に沿って走行するように走行部3を制御する(ステップS10)。この場合、段差に沿った走行を終了し、即ち、段差を通過すると、スキャン走行制御部24は、スキャン走行を継続する。
【0116】
あるいは、段差回避フラグ、段差沿い走行フラグおよび走行時走行不可フラグが全てオフであって、段差識別部22で識別された段差の大きさが段差閾値以下の場合、走行判定部23は段差に対してそのまま走行するように走行部3を制御する(ステップS11)。このとき、段差の走行が成功した場合(ステップS12:YES)、スキャン走行制御部24は、テスト走行を継続する。
【0117】
一方、段差の走行が成功しなかった場合(ステップS12:YES)、スキャン走行制御部24は、段差走行失敗に対する処理を行い(ステップS13)、具体的には、走行判定部23によって走行の失敗を示す情報やパラメータの再設定を促す情報を出力させて操作者に通知し(ステップS51)、また、その段差のパラメータである走行時走行不可フラグをオンに設定させる(ステップS52)。そして、段差を通過すると、スキャン走行制御部24は、スキャン走行を継続する。
【0118】
また、スキャン走行制御部24は、スキャン走行を終了するとき、操作表示部8または操作端末13を介して、作成した環境地図の調整(地図の回転、障害物や壁の追加や削除など)および各種エリア設定(始点や終点、進入禁止エリアの設定など)を促し、環境地図およびエリア設定を記憶部11に記憶する。
【0119】
更に、スキャン走行制御部24は、スキャン走行の終了後、操作表示部8または操作端末13を介して、記憶部11に記憶された1以上のフロアタイプから、スキャン走行を行った清掃エリア(環境地図)に対応するフロアタイプを選択させて、そのフロアタイプを清掃エリアに関連付けてもよい。あるいは、スキャン走行制御部24は、スキャン走行中に段差識別部22によって検知された段差を含むフロアタイプを新たに登録して、そのフロアタイプを清掃エリアに関連付けてもよい。
【0120】
テスト走行制御部25について、
図21~
図22および
図18~
図20のフローチャートを参照しながら説明する。テスト走行制御部25は、テスト走行モードにおいて、操作表示部8または操作端末13を介したテスト走行の開始操作に応じて、スキャン走行で作成した環境地図について、または記憶部11に記憶された1以上の環境地図から操作表示部8または操作端末13を介して選択された環境地図について、テスト走行を開始する(ステップS61)。以下では、テスト走行において、床面の清掃を行う例を説明するが、床面の清掃は停止していてもよい。
【0121】
このとき、テスト走行制御部25は、操作表示部8または操作端末13を介して、走行部3の走行速度および旋回速度などの走行条件や、清掃部4の清掃部材16のパッド圧やパッド回転数、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量などの清掃条件を入力し、走行条件および清掃条件に応じて走行部3および清掃部4を制御して自律走行作業装置1のテスト走行を行う。
【0122】
また、テスト走行制御部25は、環境地図および各種エリア設定(始点や終点の設定など)に基づいて走行経路を確認しながらテスト走行を行う(ステップS62)。具体的には、計測部5によって周囲の非作業対象の位置情報を計測すると共に、地図作成部21によって周囲の局所地図を作成して、更に局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置を推定する(ステップS81)。テスト走行制御部25は、環境地図の清掃エリアを塗りつぶすように始点から終点まで走行する走行経路を決定し、環境地図における自律走行作業装置1の自己位置を確認しつつこの走行経路を辿るように走行部3を制御する(ステップS82)。
【0123】
なお、テスト走行制御部25は、テスト走行が行われる間、所定のステップ間隔毎に、走行条件および清掃条件、並びに段差種別を取得して記憶部11に記憶しておき、走行経路の始点から終点までに亘る走行条件および清掃条件からなる走行データおよび清掃データが記憶部11に記憶される。
【0124】
テスト走行制御部25は、例えば、走行条件として、計測部5が計測した位置情報に基づいて自己位置(X座標およびY座標、角度)を取得する。また、走行部3の前輪3aの前輪回転用エンコーダで前輪3aの走行回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の走行速度を取得する。更に、走行部3の前輪3aの操舵回転用エンコーダで前輪3aの操舵回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の旋回速度を取得する。テスト走行制御部25は、例えば、清掃条件として、清掃部4の清掃部材16のパッド圧やパッド回転数、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量について、設定されている段階的な強度を取得する。更に、テスト走行制御部25は、テスト走行中に段差検知部7によって検知されて段差識別部22が識別した段差種別を取得する。
【0125】
テスト走行制御部25は、自律走行作業装置1が始点から終点まで走行して清掃エリアの塗りつぶしが終了した場合(ステップS63:YES)、テスト走行を終了し(ステップS64)、清掃エリア(環境地図)に対応する運転プランを作成して記憶部11に記憶する。自律走行作業装置1が終点まで到達していない場合や清掃エリアの塗りつぶしが完成していない場合(ステップS63:NO)、テスト走行制御部25は、テスト走行を継続する。
【0126】
なお、テスト走行制御部25は、テスト走行を開始するとき、清掃エリアに対してフロアタイプを設定することで、スキャン走行と同様にして、段差識別部22によって段差を識別しつつ、走行判定部23によってフロアタイプに応じて段差に対する走行を判定しながら、テスト走行を行うことができる。例えば、テスト走行を行う環境地図に関連付けられたフロアタイプを設定し、または1以上のフロアタイプから、操作表示部8または操作端末13を介して、フロアタイプを選択して設定する。
【0127】
具体的には、テスト走行制御部25は、テスト走行を行う間、床面の段差の検知を行い(ステップS65)、具体的には、段差検知部7によって床面の段差を検知し(ステップS31)、段差識別部22によって段差種別を識別する(ステップS32)。段差を検知しない場合(ステップS66:NO)、テスト走行制御部25は、そのままテスト走行を継続する。
【0128】
一方、段差を検知した場合(ステップS66:YES)、テスト走行制御部25は、走行判定部23によってフロアタイプに応じて段差に対する走行を判定する(ステップS67)。このとき、走行判定部23は、このフロアタイプの段差種別について記憶部11に設定されているパラメータを取得し(ステップS41)、また、パラメータの中から、清掃部4の清掃部材16のパッド圧やパッド回転数、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量などの清掃規則と、段差閾値、段差沿い走行フラグ、段差回避フラグおよび走行時走行不可フラグなどの走行規則とを取得して、走行規則および清掃規則に基づいて段差に対する走行および清掃を判定する(ステップS42)。
【0129】
そして、テスト走行制御部25は、走行判定部23によって、取得した走行規則に従って段差に対して走行するように走行部3を制御すると共に、取得した清掃規則に従って段差に対して清掃するように清掃部4を制御する(ステップS68)。例えば、段差回避フラグがオンの場合、走行判定部23は段差を回避して走行するように走行部3を制御する(ステップS69)。この場合、段差を回避している間、床面の清掃を停止するように清掃部4を制御する。そして、段差を回避した走行を終了し、即ち、段差を通過すると、テスト走行制御部25は、テスト走行を継続する。
【0130】
または、段差沿い走行フラグがオンの場合、走行判定部23は段差に沿って走行するように走行部3を制御する(ステップS70)。この場合、段差に沿って走行している間、清掃規則に従って床面を清掃するように清掃部4を制御する。そして、段差に沿った走行を終了し、即ち、段差を通過すると、テスト走行制御部25は、テスト走行を継続する。
【0131】
あるいは、段差回避フラグ、段差沿い走行フラグおよび走行時走行不可フラグが全てオフであって、段差識別部22で識別された段差の大きさが段差閾値以下の場合、走行判定部23は段差に対してそのまま走行するように走行部3を制御すると共に、清掃規則に従って清掃するように清掃部4を制御する(ステップS71)。このとき、段差の走行が成功した場合(ステップS72:NO)、テスト走行制御部25は、テスト走行を継続する。
【0132】
一方、段差の走行が成功しなかった場合(ステップS72:YES)、テスト走行制御部25は、段差走行失敗に対する処理を行い(ステップS73)、具体的には、走行判定部23によって走行の失敗を示す情報やパラメータの再設定を促す情報を出力させて操作者に通知し(ステップS51)、また、その段差のパラメータである走行時走行不可フラグをオンに設定させる(ステップS52)。そして、段差を通過すると、テスト走行制御部25は、テスト走行を継続する。
【0133】
更に、テスト走行制御部25は、テスト走行の終了後、操作表示部8または操作端末13を介して、記憶部11に記憶された1以上のフロアタイプから、テスト走行で作成された運転プランに対応するフロアタイプを選択させて、そのフロアタイプを運転プランに関連付けてもよい。あるいは、テスト走行制御部25は、テスト走行中に段差識別部22によって清掃エリアに存在する段差を検出し、検出された段差を含むフロアタイプを登録して、そのフロアタイプを運転プランに関連付けてもよい。
【0134】
自動運転制御部26について、
図23~
図24および
図18~
図20のフローチャートを参照しながら説明する。自動運転制御部26は、自動運転モードにおいて、操作表示部8または操作端末13を介した自動運転の開始操作に応じて、テスト走行で作成された運転プランについて、または記憶部11に記憶された1以上の運転プランから操作表示部8または操作端末13を介して選択された運転プランについて、自動運転を開始する(ステップS91)。
【0135】
このとき、自動運転制御部26は、操作表示部8または操作端末13を介して、走行部3の走行速度および旋回速度などの走行条件や、清掃部4の清掃部材16のパッド圧やパッド回転数、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量などの清掃条件を入力し、走行条件および清掃条件に応じて走行部3および清掃部4を制御して自律走行作業装置1の自動運転を行う。
【0136】
また、自動運転制御部26は、運転プランの環境地図、走行データおよび清掃データに基づいて走行経路を確認しながら自動運転を行う(ステップS92)。具体的には、計測部5によって周囲の非作業対象の位置情報を計測すると共に、地図作成部21によって周囲の局所地図を作成し、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置を推定して、更に、局所地図を環境地図にマッチングさせることで、環境地図上の自己位置を推定する(ステップS111)。自動運転制御部26は、環境地図上の自律走行作業装置1の自己位置を確認しつつ、走行データに示される走行経路を辿るように走行部3を制御すると共に(ステップS112)、清掃データに示される清掃を行うように清掃部4を制御する(ステップS113)。
【0137】
なお、自動運転制御部26は、自動運転が行われる間、所定のステップ間隔毎に、段差種別を取得して記憶部11に記憶しておく。自動運転制御部26は、例えば、自動運転中に段差検知部7によって検知されて段差識別部22が識別した段差種別を取得する。
【0138】
自動運転制御部26は、自律走行作業装置1が走行データに基づいて始点から終点まで走行した場合(ステップS93:YES)、自動運転を終了する(ステップS94)。自律走行作業装置1が終点まで到達していない場合(ステップS93:NO)、自動運転制御部26は、自動運転を継続する。
【0139】
なお、自動運転制御部26は、自動運転を開始するとき、清掃エリアに対してフロアタイプを設定することで、スキャン走行やテスト走行と同様にして、段差識別部22によって段差を識別しつつ、走行判定部23によってフロアタイプに応じて段差に対する走行を判定しながら、自動運転を行うことができる。例えば、自動運転を行う運転プランに関連付けられたフロアタイプを設定し、または1以上のフロアタイプから、操作表示部8または操作端末13を介して、フロアタイプを選択して設定する。
【0140】
具体的には、自動運転制御部26は、自動運転を行う間、床面の段差の検知を行い(ステップS95)、具体的には、段差検知部7によって床面の段差を検知し(ステップS31)、段差識別部22によって段差種別を識別する(ステップS32)。段差を検知しない場合(ステップS96:NO)、走行判定部23は、清掃規則に従って清掃するように清掃部4を制御していて(ステップS102)、自動運転制御部26は、そのまま自動運転を継続する。
【0141】
一方、段差を検知した場合(ステップS96:YES)、自動運転制御部26は、走行判定部23によってフロアタイプに応じて段差に対する走行を判定する(ステップS97)。このとき、走行判定部23は、このフロアタイプの段差種別について記憶部11に設定されているパラメータを取得し(ステップS41)、また、パラメータの中から、清掃部4の清掃部材16のパッド圧やパッド回転数、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量などの清掃規則と、段差閾値、段差沿い走行フラグ、段差回避フラグおよび走行時走行不可フラグなどの走行規則とを取得して、走行規則および清掃規則に基づいて段差に対する走行および清掃を判定する(ステップS42)。
【0142】
そして、自動運転制御部26は、走行判定部23によって、取得した走行規則に従って段差に対して走行するように走行部3を制御すると共に、取得した清掃規則に従って段差に対して清掃するように清掃部4を制御する(ステップS98)。例えば、段差回避フラグがオンの場合、走行判定部23は段差を回避して走行するように走行部3を制御する(ステップS99)。この場合、段差を回避している間、床面の清掃を停止するように清掃部4を制御する。そして、段差を回避した走行を終了し、即ち、段差を通過すると、自動運転制御部26は、自動運転を継続する。
【0143】
または、段差沿い走行フラグがオンの場合、走行判定部23は段差に沿って走行するように走行部3を制御する(ステップS100)。この場合、段差に沿って走行している間、清掃規則に従って床面を清掃するように清掃部4を制御する(ステップS102)。そして、段差に沿った走行を終了し、即ち、段差を通過すると、自動運転制御部26は、自動運転を継続する。
【0144】
あるいは、段差回避フラグ、段差沿い走行フラグおよび走行時走行不可フラグが全てオフであって、段差識別部22で識別された段差の大きさが段差閾値以下の場合、走行判定部23は段差に対してそのまま走行するように走行部3を制御する(ステップS101)。このとき、段差の走行が成功した場合(ステップS103:NO)、走行判定部23は、清掃規則に従って清掃するように清掃部4を制御していて(ステップS102)、テスト走行制御部25は、テスト走行を継続する。
【0145】
一方、段差の走行が成功しなかった場合(ステップS103:YES)、自動運転制御部26は、段差走行失敗に対する処理を行い(ステップS104)、具体的には、走行判定部23によって走行の失敗を示す情報やパラメータの再設定を促す情報を出力させて操作者に通知し(ステップS51)、また、その段差のパラメータである走行時走行不可フラグをオンに設定させる(ステップS52)。そして、段差を通過すると、自動運転制御部26は、自動運転を継続する。
【0146】
上記のように、本実施形態によれば、自動的に走行および清掃を行う自動運転を実行可能な自律走行作業装置1は、装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3と、装置本体2の走行経路上で清掃を行う清掃部4と、手動または自動によって装置本体2が清掃エリアの走行または清掃を行うように走行部3または清掃部4を制御する制御部10と、清掃エリアの床面に存在する段差を識別する1以上の段差種別を組み合わせてフロアタイプとして、1以上のフロアタイプを予め記憶すると共に、各フロアタイプの各段差種別について段差に対する走行または清掃に関する1以上のパラメータを記憶する記憶部11と、を備える。制御部10は、手動または自動によって設定されるフロアタイプに応じて段差に対して走行または清掃を行うように走行部3または清掃部4を制御する。
【0147】
このような構成により、自律走行作業装置1は、走行や清掃に関するパラメータを、様々な段差に対して個別に設定でき、更に、様々なフロアタイプに対しても個別に設定できるので、フロアタイプを設定するだけで、様々な清掃フロアの様々な段差に対応して、適切に走行や清掃を行うことができる。このように、床面の様々な段差に対して、操作者の利便性を向上しつつ、適切に走行または清掃を継続させることができる。
【0148】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、制御部10は、清掃エリアを走行している間の走行状況または周辺状況を取得し、走行状況または周辺状況に基づいてフロアタイプを判定して自動で設定する。
【0149】
このような構成により、自律走行作業装置1は、走行状況や周辺状況を考慮してフロアタイプを自動で選択するので、操作者は清掃エリアの確認やフロアタイプの検討を行う必要がなく、操作者によるフロアタイプの手動設定を不要とするので、操作者の利便性を大幅に向上することができる。
【0150】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、制御部10は、清掃エリアの環境地図に基づいて清掃エリアを塗りつぶすような走行経路で装置本体2を自動的に始点から終点まで走行させるテスト走行を実行するように走行部3または清掃部4を制御して、テスト走行時の走行データまたは清掃データを含む運転プランを作成するテスト走行制御部25と、運転プランの走行データまたは清掃データに従って自動運転を実行するように走行部3または清掃部4を制御する自動運転制御部26と、を含む。テスト走行制御部25は、テスト走行時にフロアタイプを判定して自動で設定して運転プランに関連付ける。
【0151】
このような構成により、自律走行作業装置1は、清掃エリアの全体を確認できるテスト走行において走行状況や周辺状況を考慮するので、より適切なフロアタイプを選択することができる。
【0152】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、各フロアタイプの各段差種別の各パラメータを手動操作に応じて設定可能にする。
【0153】
このような構成により、自律走行作業装置1において、操作者は、各フロアタイプに適切なパラメータや、各段差に適切なパラメータを自由に調整できるので、操作者の利便性を大幅に向上することができる。
【0154】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、記憶部11は、1以上の清掃エリアを登録すると共に、1以上の清掃エリア毎に手動または自動によって設定されるフロアタイプを関連付けて記憶する。そして、自律走行作業装置1は、1以上の清掃エリア毎に、対応するフロアタイプの各段差種別の各パラメータを手動操作に応じて設定可能にする。
【0155】
このような構成により、自律走行作業装置1において、操作者は、清掃エリア毎に各段差に適切なパラメータを自由に調整できるので、操作者の利便性を大幅に向上することができる。例えば、異なる清掃エリアに対して、段差種別の組み合わせが同じである同種のフロアタイプが関連付けられる場合でも、共通の同じフロアタイプを関連付けるのではなく、清掃エリア毎に同種のフロアタイプを別々に用意して関連付けるので、フロアタイプの各段差種別の各パラメータは、清掃エリア毎に設定可能となる。
【0156】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、パラメータは、段差に対する走行規則を含む。
【0157】
このような構成により、自律走行作業装置1は、段差に対して様々な走行パターンを走行規則として設定することができ、例えば、段差上をそのまま通過して走行するパターンや、段差を回避して走行するパターン、段差に沿って走行するパターンなどを設定することができる。そして、自律走行作業装置1は、段差に対して適切な走行パターンを取るような走行規則を、各段差のパラメータとして設定することができる。そのため、各段差に対する走行の安全性および精度を向上することができ、また、段差を目印にした走行を行うこともでき、更に操作者の利便性を向上することができる。
【0158】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、床面の段差を検知する段差検知部7を更に備える。制御部10は、清掃エリアを走行している間に段差検知部7によって段差を検知した場合、段差の段差種別に設定されているパラメータの走行規則を取得し、走行規則に従って走行部3または清掃部4を制御しつつ段差を走行するときの走行状況を取得し、走行規則に従った走行が成功したか否かを走行状況に基づいて判定し、走行規則に従った走行が成功しなかった場合には、走行状況に基づいてパラメータを再設定する。
【0159】
このような構成により、自律走行作業装置1は、所定の段差に対して走行規則に従った走行が成功しなかった場合、その段差に対するパラメータを走行状況に基づいて再設定するので、次回にその段差を検知した場合、その段差に対してより適切な走行パターンで走行を行うことができ、これにより、各段差に対する走行の安全性および精度を向上することができる。例えば、パラメータの再設定では、段差閾値の調整や、段差沿い走行フラグ、段差回避フラグまたは走行時走行不可フラグの設定などを行うことができる。
【0160】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、床面の段差を検知する段差検知部7を更に備える。制御部10は、清掃エリアを走行している間に段差検知部7によって段差を検知した場合、段差の段差種別に設定されているパラメータの走行規則を取得し、走行規則に従って走行部3または清掃部4を制御しつつ段差を走行するときの走行状況を取得し、走行規則に従った走行が成功したか否かを走行状況に基づいて判定し、走行規則に従った走行が成功しなかった場合には、走行規則に従った走行の失敗を示すと共にパラメータの再設定を促す情報を操作者に通知する。
【0161】
このような構成により、自律走行作業装置1は、所定の段差に対して走行規則に従った走行が成功しなかった場合、操作者は、その段差に対する走行の失敗を確認することができ、また、その段差に対してより適切なパラメータを設定することができる。そのため、次回にその段差を検知した場合、その段差に対してより適切な走行パターンで走行を行うことができ、これにより、各段差に対する走行の安全性および精度を向上することができる。
【0162】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、床面に対する作業を行う作業部として、床面の清掃を行う清掃部4を備えていて、パラメータは、清掃部4が段差に対して清掃を行う場合の清掃規則を含む。
【0163】
このような構成により、自律走行作業装置1は、段差に対して様々な清掃パターンを清掃規則として設定することができ、例えば、段差上をそのまま通過して走行する際の清掃パターンや、段差を回避して走行する際の清掃パターン、段差に沿って走行する際の清掃パターンなどを設定することができる。そして、自律走行作業装置1は、段差に対して適切な清掃パターンを取るような清掃規則を、各段差のパラメータとして設定することができる。そのため、各段差に対する清掃の安全性および精度を向上することができ、また、段差を目印にした清掃を行うこともでき、更に操作者の利便性を向上することができる。
【0164】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、記憶部11は、床面の材質を識別する1以上の床面種別を記憶すると共に、1つ以上の床面種別毎に設定される清掃規則を記憶する。段差を境界線として床面の材質が変化した場合、清掃部4は、床面の材質に応じた清掃規則に従って清掃を行う。
【0165】
このような構成により、自律走行作業装置1は、床面の材質に対して様々な清掃パターンを清掃規則として設定することができ、例えば、セラミックなどの樹脂系床を清掃対象に設定する一方、カーペットなどの繊維系床を清掃対象外に設定することができる。そして、清掃エリアにおいて、異なる材質の床面が連続している場合には、材質に応じて自動的に清掃規則を切り替えることができ、操作者の利便性を向上することができる。
【0166】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、装置本体2の周囲の非作業対象を検知する赤外線センサ7aなどの光学式センサと、装置本体2の周囲の画像を撮像するカメラ7bと、床面からの振動を検知する振動センサ7dと、を更に備える。制御部10は、赤外線センサ7aなどの光学式センサの検知結果、カメラ7bの撮像結果および振動センサ7dの検知結果の2つ以上の組み合わせに基づいて、段差を識別する。
【0167】
このような構成により、自律走行作業装置1は、赤外線センサ7aなどの光学式センサ、カメラ7bおよび振動センサ7dのうち、各段差を検知するために適した組み合わせを適用することができる。また、各組み合わせの結果を比較することで、適切に段差を検知することができる。そのため、段差の検知率を向上することができ、段差に対する清掃の安全性および精度を向上することができる。
【0168】
なお、上記した実施形態では、走行に関するパラメータとして、段差閾値、段差沿い走行フラグ、段差回避フラグおよび走行時走行不可フラグなどの走行規則を設定する例を説明したが、本発明は走行規則をこれらに限定せず、他の走行パターンに対応する走行規則を含んでもよい。また、清掃に関するパラメータとして、清掃部4の清掃部材16のパッド圧やパッド回転数、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量などの清掃規則を設定する例を説明したが、本発明は清掃規則をこれらに限定せず、他の清掃パターンに対応する清掃規則を含んでもよい。
【0169】
また、上記した実施形態では、操作表示部8および操作端末13によって、走行部3を操作する例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、操作者が手動操作可能なハンドルおよびスロットルを備えて走行部3を操作ように構成してもよい。
【0170】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自律走行作業装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明は、自律的に走行し自動で作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置によって、ショッピングモールなどの商業施設の床面の清掃作業や、工場、鉄道ターミナルなどの作業エリアの自動作業を行う、自動床面洗浄・清掃装置やカメラで監視を行う警備装置などの産業用(業務用)作業ロボットに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0172】
1 自律走行作業装置
2 装置本体
3 走行部
4 清掃部(作業部)
5 計測部
6 障害物検知部
7 段差検知部
7a 赤外線センサ
7b カメラ
7c ラインマーカー
7d 振動センサ
8 操作表示部
10 制御部
11 記憶部
12 通信部
13 操作端末
20 モード切替部
21 地図作成部
22 段差識別部
23 走行判定部
24 スキャン走行制御部
25 テスト走行制御部
26 自動運転制御部