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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160318
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】EGFRxCD28多特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20241106BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241106BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12P21/08
C12N5/10
C12N15/63 Z
A61K39/395 T
A61K39/395 S
A61K38/16
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/46
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024131936
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2021556753の分割
【原出願日】2020-03-20
(31)【優先権主張番号】62/822,124
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリス スココス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェイ. マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ディー. ヤンコポーロス
(72)【発明者】
【氏名】ローリック ハーバー
(72)【発明者】
【氏名】チア-ヤン リン
(57)【要約】
【課題】EGFRxCD28多特異性抗体の提供。
【解決手段】本発明は、EGFRおよびCD28に結合する多特異性抗体(EGFRxCD28)ならびに抗EGFR抗体を提供する。かかる抗体は、例えば抗PD1抗体などのさらなる治療剤と組み合わせられ得る。当該抗体(および例えば抗PD1とのその組み合わせ)を投与することにより、癌(例えばEGFR発現癌)を治療する方法も提供される。本発明のEGFRxCD28抗体は、PD-1阻害と組み合わされた、腫瘍標的化免疫療法モダリティを具現化するものである。これら二特異性抗体は、一つのアームで腫瘍特異的抗原(TSA)(EGFR)に結合し、他のアームでT細胞の共刺激性受容体、CD28に結合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年3月22日に出願された米国仮特許出願第62/822,124号明細書に関連し、その利益を主張するものである。前述の出願の全内容は参照により本明細書に明示的に援用される。
【0002】
本発明は、EGF受容体とCD28に結合する抗体、および例えば癌を治療または予防するためのその使用方法に関連する。
【0003】
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる配列表を含む。当該ASCIIコピーは2020年3月19日に作成され、118003-10620_SL.txtという名称であり、サイズは63,481バイトである。
【背景技術】
【0004】
T細胞が例えばウイルス感染細胞や腫瘍細胞などの自身の細胞標的を認識し、殺傷する能力は、協調的な一連の相互作用に依存する。その中でもT細胞受容体(TCR)複合体(会合したCD3γ、δ、εおよびζ鎖を含む)による標的細胞の認識と結合が挙げられ、この相互作用はT細胞活性化の「シグナル1」とも呼称されている。TCRは標的細胞の表面上に発現されたMHCタンパク質の溝(groove)に提示されたウイルスペプチドまたは腫瘍ペプチドを認識する。そうした結合は一般的にアフィニティが低いため、「シグナル1」の誘発を成功させるためには、T細胞とその標的細胞の間のインターフェースに沿った多数のTCR複合体のクラスター形成が必要となる。このインターフェースは、「免疫シナプス」と呼称されている。T細胞の活性化は、追加の相互作用によってさらに促進することができる。例えばT細胞はその表面上にCD28と呼ばれる分子を有しており、この分子によって共刺激性の「シグナル2」が生じ、TCR複合体を介した活性化を増大させることができる。T細胞が、自身のTCR複合体を介して標的細胞を認識し、次いで標的細胞上の同系リガンドに結合したCD28を介した「シグナル2」とさらに連動することで、T細胞活性化が増強される。「シグナル1」と同様に、CD28介在性の「シグナル2」も、免疫シナプスでの共クラスター形成を介して発生すると考えられている。
【0005】
アゴニスト性の抗CD28 mAbは、培養T細胞の持続的な生体外拡張に適用することができるが、CD28に対する抗体の使用は、超アゴニスト性の抗CD28 mAbを全身性に試験した第I相臨床試験での一連の急性で重篤な有害事象の発生を受けて停止されている(Hunig,Nature Reviews Immunology.2012;12:317-318)。局所的な、または標的化された抗CD28 mAbの使用は、抗腫瘍免疫の促進に関し、低リスクで使用することができる。Jung et al.,Int J Cancer.2001 Jan 15;91(2):225-30。
【0006】
増殖因子および増殖因子受容体の様々なファミリーが、癌細胞の自律的増殖に関与していることが示されている。これらの中でも上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)およびペプチド増殖因子のEGFファミリーは、様々な癌腫型の病態および進行において中心的な役割を担っている。EGFRはErbB-2、ErbB-3、およびErbB-4の3種の追加タンパク質を包含する受容体ファミリーに属する。これらタンパク質とEGFファミリーの増殖因子は、統合型システムを形成する。そのシステムにおいて、個々の受容体型にヒットするシグナルがしばしば同ファミリーの他の受容体へと伝達されてしまう。
【0007】
T細胞活性化を対象とするモノクローナル抗体(mAb)が、抗腫瘍治療剤として臨床開発中である。しかし現行の治療法の大部分が、腫瘍微小環境の阻害的な性質の克服に苦労しており、効率的な腫瘍特異的T細胞活性化と、それに続く腫瘍細胞殺傷の創出に失敗している。例えば細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(cytotoxic T lymphocyte-associated protein、CTLA)-4やプログラム細胞死1(programmed cell death 1、PD-1)/プログラム細胞死リガンド1(programmed cell death ligand 1、PD-L1)などのチェックポイント阻害物質を対象とする数種のブロッキングmAbが、メラノーマ、腎細胞癌、非小細胞肺癌および進行性転移性の皮膚扁平上皮細胞癌に対して臨床承認されている。PD-1のブロッキングはT細胞活性化のブレイクを発生させるが、単剤としてのその有効性はしばしば、腫瘍のクリアランスや持続的な抗腫瘍応答を得るに不充分であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hunig,Nature Reviews Immunology.2012;12:317-318
【非特許文献2】Jung et al.,Int J Cancer.2001 Jan 15;91(2):225-30
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、分化抗原群28(Cluster of Differentiation
28、CD28)および上皮細胞増殖因子受容体を標的とする二特異性抗体(EGFRxCD28またはCD28xEGFR)を使用した免疫治療モダリティを提供するものであり、当該二特異性抗体は、PD-1ブロッキング抗体と組み合わされたときに、長期的な抗腫瘍免疫を誘導し、安定的な腫瘍内T細胞活性化を促進しつつ、全身性のサイトカイン分泌の兆候は同系およびヒト腫瘍異種移植片モデルの両方において認められなかった。遺伝子改変ヒト化免疫能正常マウスおよびカニクイザルにおける毒性試験により、これら二特異性抗体が、いくらかの単剤活性を呈すること、そしてそれ自体の毒性、または抗PD-1抗体との併用の毒性はないことが示された。まとめると、これらのデータから、このCD28をベースとした二特異性抗体物質と、PD-1阻害との併用が、安全な生物学的解決法を提供し、際立って増強された、特異性のある相乗的な抗腫瘍活性を有することが示唆される。
【0010】
一つの態様では、本発明は、25℃での表面プラズモン共鳴により測定したときに、約10-6M未満のKでヒトCD28に結合する第一の抗原結合ドメインと、25℃での表面プラズモン共鳴により測定したときに、約10-9M未満のKで標的腫瘍細胞上のヒト上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に特異的に結合する第二の抗原結合ドメインとを含む単離二特異性抗原結合分子を提供する。
【0011】
別の態様では、当該単離二特異性抗原結合分子は、抗ムチン(Mucine)16(MUC16)X CD3二特異性抗体と併せて使用され、EGFRを発現する標的細胞に対して検証されたときに、共刺激性の効果を示す。一つの実施形態では、当該共刺激性の効果は、以下のうちの一つ以上により示される:(a)ヒトT細胞を活性化し、EGFRを発現する標的細胞を殺傷するよう誘導する能力、(b)T細胞上のPD-1をアップレギュレートする能力、(c)PBMCからのサイトカインIFNガンマとTNFの放出を増大させる能力、(d)腫瘍細胞を激減させる能力、または(f)腫瘍クリアランスを増強する能力。別の実施形態では、当該共刺激性の効果は、以下のうちの一つ以上によりさらに示される:(g)T細胞/APCルシフェラーゼ系レポーターアッセイにおける、NFκB活性の活性化、または(h)初代CD4T細胞/APC機能性アッセイを使用したIL-2サイトカイン産生の測定。
【0012】
本発明は、以下を含む、EGFRとCD28に結合する多特異性(例えば、二特異性)抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)を提供する:(1)(a)配列番号2、30、40、および50からなる群から選択される一つに記載されるアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む重鎖可変領域のHCDRを含む免疫グロブリン鎖、および/または(b)配列番号16に記載されるアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む軽鎖可変領域のLCDRを含む免疫グロブリン鎖、を含むEGFR結合アーム、ならびにCD28結合アーム、または(2)(c)配列番号10、59、および63からなる群から選択される一つに記載されるアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む重鎖可変領域のHCDRを含む免疫グロブリン鎖、および/または(d)配列番号16および67からなる群から選択される一つに記載されるアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む軽鎖可変領域のLCDRを含む免疫グロブリン鎖、を含むCD28結合アーム、ならびにEGFR結合アーム。
【0013】
例えば、本発明の一つの実施形態では、EGFRとCD28に結合する多特異性(例えば、二特異性)抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、(1)(a)配列番号2、24、30、40、および50に記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸、もしくはそのバリアントを含む重鎖免疫グロブリン、もしくはその可変領域、および/または(b)配列番号16および28に記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む軽鎖免疫グロブリン、もしくはその可変領域、を含むEGFR結合アーム、ならびにCD28結合アーム、または(2)(c)配列番号10、26、59、および63に記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む重鎖免疫グロブリン、もしくはその可変領域、および/または(d)配列番号16、28、および67に記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む軽鎖免疫グロブリン、もしくはその可変領域、を含むCD28結合アーム、ならびにEGFR結合アーム、を含む。
【0014】
本発明のある実施形態では、EGFRとCD28に結合する多特異性抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、(1)(a)それぞれ、配列番号2、30、40、もしくは50に記載されるアミノ酸配列、および配列番号2、30、40、もしくは50に記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖免疫グロブリン、もしくはその可変領域、および/またはそれぞれ、配列番号16に記載されるアミノ酸配列、および配列番号16に対し、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖免疫グロブリン、もしくはその可変領域、を含むEGFR結合アーム、ならびにCD28結合アーム、または(2)(c)それぞれ、配列番号10、59、もしくは63に記載されるアミノ酸配列、および配列番号10、59、もしくは63に記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖免疫グロブリン、もしくはその可変領域、および/または(d)それぞれ、配列番号16、または67に記載されるアミノ酸配列、および配列番号16または67に記載されるアミノ酸配列に対し、少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖免疫グロブリン、もしくはその可変領域、を含むCD28結合アーム、ならびにEGFR結合アーム、を含む。
【0015】
本発明のある実施形態では、EGFRとCD28に結合する当該多特異性(例えば、二特異性)抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、以下を含む:(1)
アミノ酸配列:GDSIITFY(配列番号4、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、アミノ酸配列:IYYSGIT(配列番号6、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列:ARVSEDSYFHYGMDV(配列番号8、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、ならびに
アミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むEGFR結合アーム、ならびに
アミノ酸配列:GGSISSYY(配列番号12、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、アミノ酸配列:IYYSGIT(配列番号6、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列:ARWGVRRDYYYYGMDV(配列番号14、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、ならびにアミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、
アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、アミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むCD28結合アーム、
(2)
アミノ酸配列:GFTFSTFI(配列番号32、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、アミノ酸配列:ISSNGGTI(配列番号34、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列:TRGGDFWSGYYPFDY(配列番号36、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、アミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、
アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むEGFR結合アーム、ならびに
アミノ酸配列:GGSISSYY(配列番号12、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、アミノ酸配列:IYYSGIT(配列番号6、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、アミノ酸配列:ARWGVRRDYYYYGMDV(配列番号14、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、
ならびにアミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むCD28結合アーム、
(3)
アミノ酸配列:GFSFRDAW(配列番号42、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、アミノ酸配列:IRNKIDGGTT(配列番号44、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列:TTDIWNYVLFYYYGLDV(配列番号46、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、ならびにアミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むEGFR結合アーム、ならびに
アミノ酸配列:GGSISSYY(配列番号12、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、アミノ酸配列:IYYSGIT(配列番号6、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列:ARWGVRRDYYYYGMDV(配列番号14、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、ならびにアミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むCD28結合アーム、
(4)
アミノ酸配列:DDSIISYY(配列番号52、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、アミノ酸配列:IYYSGRT(配列番号54、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列:ARVSEDSYYHYGMDV(配列番号56、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、およびアミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むEGFR結合アーム、ならびに
アミノ酸配列:GGSISSYY(配列番号12、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、アミノ酸配列:IYYSGIT(配列番号6、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列:ARWGVRRDYYYYGMDV(配列番号14、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、ならびにアミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むCD28結合アーム。
【0016】
本発明のある実施形態では、EGFRとCD28に結合する当該多特異性(例えば、二特異性)抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、以下を含む:
(1)
配列番号2に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域、を含むEGFR結合アーム、ならびに配列番号10に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域、を含むCD28結合アーム、
(2)
配列番号30に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域、を含むEGFR結合アーム、ならびに
配列番号10に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域、を含むCD28結合アーム、
(3)
配列番号40に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域、を含むEGFR結合アーム、ならびに
配列番号10に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域、を含むCD28結合アーム、
(4)
配列番号50に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域、を含むEGFR結合アーム、ならびに
配列番号10に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域、を含むCD28結合アーム。
【0017】
本発明のある実施形態では、EGFRとCD28に結合する当該多特異性(例えば、二特異性)抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、以下を含む:
(1)
配列番号24に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むEGFR結合アーム、ならびに配列番号26に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むCD28結合アーム、
(2)
配列番号38に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むEGFR結合アーム、ならびに
配列番号26に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むCD28結合アーム、
(3)
配列番号48に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むEGFR結合アーム、
ならびに
配列番号26に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むCD28結合アーム、
(4)
配列番号58に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むEGFR結合アーム、
ならびに
配列番号26に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むCD28結合アーム。
【0018】
本発明のある実施形態では、多特異性(例えば、二特異性)抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、REGN7075(本明細書において、bsAb7075とも呼称される)、REGN6321(本明細書において、bsAb6321とも呼称される)、REGN6322(本明細書において、bsAb6322とも呼称される)、REGN6323(本明細書において、bsAb6323とも呼称される)である。他の二特異性抗体は、本明細書において、表9A、9Bおよび9Cに記載される親EGFR抗体を使用して生成されてもよく、それに伴い、親EGFR抗体のHCVRアームの配列は、WO2014/004427に見出される配列であってもよく、および親CD28抗体のHCVRアミノ酸配列は、本明細書において表3に見出される配列であってもよい。任意のEGFR HCVRアームを、本明細書に記載されるCD28 HCVRアームのいずれかとペア形成させてもよい。
【0019】
本発明はまた、以下を含む、上皮細胞増殖因子受容体に特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)を提供するものである:(i)配列番号2、24、30、38、40、48、50もしくは58に記載されるアミノ酸配列もしくはそのバリアントを含む重鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域、および/または(ii)配列番号16もしくは28に記載されるアミノ酸配列もしくはそのバリアントを含む軽鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域。本発明のある実施形態では、抗原結合タンパク質は、多特異性(例えば二特異性)である。
【0020】
本発明はまた、(例えば、腫瘍細胞の表面上の)EGFRポリペプチドまたはその抗原性断片、および(例えば、T細胞などの免疫細胞の表面上の)CD28ポリペプチドまたはその抗原性断片に結合される、本明細書に記載される多特異性抗原結合タンパク質を提供する。
【0021】
本発明はまた、以下を含む、本明細書に記載される多特異性(例えば二特異性)抗原結合タンパク質を作製する方法を提供する:当該抗原結合タンパク質の免疫グロブリン鎖をコードする一つ以上のポリヌクレオチドを、宿主細胞(例えば、CHO細胞)内に導入すること、(b)当該ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で当該宿主細胞を培養すること、ならびに(c)任意で、当該宿主細胞から、および/または当該宿主細胞が増殖される培地から、当該抗原結合タンパク質または免疫グロブリン鎖を単離すること。当該方法の産物である抗原結合タンパク質または免疫グロブリン鎖のいずれもが、本発明の一部である。
【0022】
本発明はまた、本発明の多特異性(例えば二特異性)抗原結合タンパク質の免疫グロブリン鎖のうちの一つ以上をコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明のポリヌクレオチドを含むベクターも、本発明の一部であり、ならびに本発明のポリヌクレオチド、ベクター、または抗原結合タンパク質を含む宿主細胞(例えば、CHO細胞)も本発明の一部である。
【0023】
本発明はまた、一つ以上の他の物質または製品と関連付けられ、任意でさらなる治療剤(例えば、PD-1阻害剤、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合断片、PD-L1阻害剤、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片、プラチナ系抗癌化学療法剤のパクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、抗癌抗体もしくはその抗原結合断片であるペムブロリズマブ、ニボルマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、および/またはセミプリマブ)と関連付けられた、本発明の多特異性抗原結合タンパク質のうちの一つ以上を含む組成物またはキットも提供する。本発明の多特異性抗原結合タンパク質、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤、および任意でさらなる治療剤を含む医薬製剤も、本発明の一部である。
【0024】
本発明はまた、本発明の多特異性抗原結合タンパク質、組成物および/または製剤を含む、容器および注射用デバイス(例えば、シリンジ、プレ充填型シリンジ、またはオートインジェクター)も提供する。
【0025】
本発明はまた、本発明の多特異性抗原結合タンパク質、その組成物または製剤を、対象(例えば、ヒト)に投与するための方法を提供するものであり、当該方法は、当該抗原結合タンパク質、組成物または製剤を、当該対象の身体内に、例えばシリンジ、プレ充填型シリンジまたはオートインジェクターなどを用いて注入することを含む。任意選択的にさらなる治療剤(例えば、セミプリマブ、ペムブロリズマブ、またはニボルマブ)も当該対象に投与される。
【0026】
本発明はまた、その必要のある対象(例えば、ヒト)において過増殖性疾患(例えば、EGFR発現癌)を治療または予防するための方法を提供するものであり、当該方法は、多特異性抗原結合タンパク質または組成物または製剤の有効量を、任意でさらなる治療剤(例えば、セミプリマブ、ペムブロリズマブ、またはニボルマブ)と関連付けて(例えば皮下、静脈内または筋肉内)投与することを含む。本発明のある実施形態では、EGFR発現癌は、食道癌、肺扁平上皮細胞癌、肺腺癌、子宮頚扁平上皮細胞癌、子宮内膜腺癌、膀胱尿路上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、皮膚癌、頭頚部扁平上皮細胞癌、脳腫瘍、多形性膠芽腫、乳癌、胃食道癌、胃食道腺癌、前立腺癌または卵巣癌である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A図1A~1Eは、内因性TSAを伴う癌細胞株において、EGFRxCD28二特異性抗体(REGN7075)は、TSAxCD3(MUC16xCD3)によるTCR刺激の存在下で、T細胞活性化を増強することを示す。図1Aおよび1Bにおいて、フローサイトメトリー解析により、EGFRxCD28二特異性抗体が、CD28+細胞およびEGFR+細胞に結合することが示される。(図1A)Jurkat細胞(CD28+細胞)。
図1B】(図1B)PEO1細胞(EGFR+細胞)。
図1C図1C~1Eにおいて、内因性MUC16およびEGFRを発現する癌標的細胞(卵巣癌細胞株のPEO1)、および指定される二特異性物質とともにヒトT細胞が96時間培養された。(図1C)腫瘍細胞殺傷、生存細胞の割合%。
図1D】(図1D)CD25T細胞の頻度(CD2中の割合%)。
図1E】(図1E)細胞障害性アッセイからの上清を、Cytometric Bead Array(CBA)キットを使用して解析した。放出されたIFNは、pg/mlとしてプロットされている。
図2A図2A~2Dは、腫瘍細胞上のCD28リガンド(CD86)の発現が、抗PD1処置との相乗効果を発揮し、CD8依存性抗腫瘍免疫を誘導することが示される。MC38腫瘍細胞は、CD28のリガンドであるCD86(MC38/CD86)、または空ベクター対照(MC38/EV)で形質導入された。WT C57BL6マウスは、最初にマウス1匹当たり1x10個の腫瘍細胞が移植され、腫瘍移植後0、3、7、10および14日目に、PD-1 mAbまたはrIgG2aアイソタイプ対照を用いて5mg/kgで処置された。図2A。経時的な平均腫瘍体積エラーバーは、±SEMを表す。統計的有意性は、二元配置ANOVAおよびテューキーの多重比較検定で判定された。
図2B図2B。経時的な生存率(<2000mmの腫瘍を有するマウスのパーセンテージ)。移植後60日目の統計的有意性は、ログランク(マンテル-コックス)検定で判定された。
図2C図2C。マウスはCD8枯渇抗体(CD8が枯渇される)またはアイソタイプ対照(枯渇無し)で処置された。CD8枯渇(点線)と枯渇無し(実線)で、経時的な平均腫瘍体積が示される。±SEM。統計的有意性は、二元配置ANOVAおよびテューキーの多重比較検定で判定された。
図2D図2D。MC38/CD86が移植され、PD1 mAbで処置された無腫瘍マウスの2回目の腫瘍移植(再チャレンジ)。図2A~2Dに関し、1群当たり10匹のマウスを用いた1回の実験からのデータが示されている。データは、少なくとも4回の別個の実験の代表値である。統計的有意性が示されている(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、および****p<0.0001).
図3A図3Aおよび3Bは、A431ヒト異種移植片腫瘍モデルを示す。データは、図4および図5に対応している。図3Aは、処置前の末梢血における、ヒトCD45+細胞の生着を示す。
図3B図3Bは、A431のFACS解析を示す。各プロットに対して対象マーカーが示されている。
図4図4および図5は、EGFRxCD28(REGN7075)は、抗PD1(セミプリマブ)処置との相乗効果を発揮し、ヒト胎児肝臓CD34+細胞が生着したVHマウスにおいて抗腫瘍免疫を誘導したことを示す。具体的には、図4および図5において、A431類表皮癌腫の腫瘍細胞(ATCCから取得)が、胎児肝臓CD34+細胞が生着したSIRPAh/h TPOh/m Rag2-/- Il2rg-/-に皮下移植された。マウスは、胎児肝臓のドナー、ヒト免疫細胞の生着頻度および性別に基づき指定される処置群に分けられた。マウスは腹腔内(IP)処置され、腫瘍チャレンジの日に開始して実験期間中2~3日ごとに投与された。抗PD-1の投与は10mg/kgであり、EGFRxCD28またはPSMAxCD28は5mg/kgであった。データは、チャレンジ後の日数に対してプロットされた各処置群の平均A431腫瘍体積(mm±SEM)を示している。二元配置ANONA、テューキーの比較:**P<0.01、****P<0.001。(1群当たりn=10~12匹のマウス)。 図4は、ヒトCD34+細胞が生着したVHマウスにおいて腫瘍チャレンジ後の日数に対してプロットされた、各処置群(mm±SEM)(アイソタイプ、坑PD1単剤療法(セミプリマブ)、EGFRxCD28(REGN7075)単剤療法、またはEGFRxCD28(REGN7075)+抗PD1併用療法)の平均A431腫瘍体積を示す。二元配置ANONA、テューキーの比較:**P<0.01、****P<0.0001。
図5図5は、ヒトCD34+細胞が生着したVHマウスにおいて腫瘍チャレンジ後の日数に対してプロットされた、対照群(mm±SEM)(アイソタイプ、坑PD1単剤療法(セミプリマブ)、PSMAxCD28単剤療法、またはPSMAxCD28+抗PD1併用療法)の平均A431腫瘍体積を示す。二元配置ANONA、テューキーの比較:**P<0.01、****P<0.0001。
図6図6は、A431腫瘍細胞上のPSMA発現の欠落に関する検証を示す。MC38マウス腫瘍細胞株はヒトPSMAを発現するよう操作されており、陽性対照として使用された。
図7A図7Aおよび7B。予防的(図7A)または治療的(図7B)な処置のいずれかを受けたNSGマウスにおける、腫瘍チャレンジ後の日数に対してプロットされた、EGFRxCD28(REGN7075)を投与された各処置群の平均A431腫瘍体積(mm±SEM)。二元配置ANONA、テューキーの比較:****P<0.0001。
図7B】同上。
図8図8。NSGマウスにおける、腫瘍チャレンジ後の日数に対してプロットされた各処置群の平均A549腫瘍体積(mm±SEM)(アイソタイプまたはEGFRxCD28(REGN7075)で1mg/kgまたは10mg/kg)。二元配置ANONA、テューキーの比較:アイソタイプとEGFRxCD28の比較、1mg/kg(P<0.05)、****:P<0.0001;$ アイソタイプとEGFRxCD28の比較、10mg/kg(P<0.05)、$$$:P<0.001、$$$$:P<0.0001;@ EGFRxCD28 1mg/kgと10mg/kgの比較(P<0.05)。
図9A図9A~9D。EGFRxCD28(REGN7075)は、抗PD1(セミプリマブ)処置との相乗効果を発揮し、ヒト胎児肝臓CD34+細胞が生着したVHマウスにおいて抗腫瘍免疫を誘導した。(図9A)CITRUS(クラスターの特定、特徴解析および回帰)解析により特定される選択腫瘍CD8+T細胞クラスターのMFI、(図9B)指定処置群からの各クラスターにおける細胞頻度、(図9C)CITRUS解析により特定される選択腫瘍CD4+T細胞クラスターのMFI、(図9D)指定処置群からの各クラスターにおける細胞頻度。図9Bおよび9Dは、EGFRxCD28は、抗PD1処置との相乗効果を発揮し、ヒト胎児肝臓CD34+細胞が生着したVHマウスにおいて抗腫瘍免疫を誘導したことを実証する。
図9B】同上。
図9C】同上。
図9D】同上。
図10A図10A~10C。EGFRxCD28(REGN7075)の単独、または抗PD1(セミプリマブ)療法との併用は、カニクイザルにおいてCD28スーパーアゴニストと比較し、全身的なT細胞の活性化を誘導しない。カニクイザルは、指定用量(mg/kg)で二特異性抗体の単回投与を用いて処置された。時間は、投与後(時間)を示し、血清サイトカイン(IFNガンマ、IL-2、IL-6、IL-8、およびIL-10)(図10A)、相対的末梢血T細胞数(図10B)、Ki67+およびICOS+T細胞の頻度(CD3の割合%)(図10C)である。値は、平均±SEMを表す。1群当たり動物はN=3匹。P値は、アイソタイプ対照との比較で、二元配置ANOVAで計算された(**、p<0.01;***、p<0.001、および****、p<0.0001)。
図10B】同上。
図10C】同上。
図11図11は、PD-1抗体(REGN2810、米国特許出願公開第20150203579号においてH2M7798NまたはH4H7798Nと記載されている)と併用されたときに、抗EGFRX抗CD28抗体(REGN7075)により介在される、経時的な用量依存性の抗腫瘍応答を示している。
図12図12は、PD-1抗体(REGN2810)と併用されたときに、抗EGFRX抗CD28抗体(REGN7075)により介在される用量依存性の抗腫瘍応答を示している。
図13A図13A~13Cは、ヒトT細胞およびカニクイザルT細胞、ならびにJurkat細胞(CD28+エフェクター細胞)を含む様々な細胞に対する(図13A)、A375メラノーマ細胞、22RV1前立腺癌細胞、PEO1卵巣細胞、CAPAN膵臓細胞、SW1990膵臓細胞、およびH292肺細胞を含む様々な他の腫瘍標的細胞に対する(図13Bおよび13C)、様々な抗EGFRX抗CD28抗体の結合を記載する。アイソタイプ対照のIおよびIIは、それぞれMersおよびEGFRvIIIに結合する抗体である。
図13B】同上。
図13C】同上。
図14A図14Aおよび14Bは、抗EGFRx抗CD28二特異性抗体が、抗腫瘍特異積抗原(TSA)X抗CD3二特異性抗体の細胞障害能力を増強することを示す。当該試験には、抗STEAP2X抗CD3二特異性抗体(図14A)または抗PSMAX抗CD3二特異性抗体(図14B)のいずれかと併用された抗EGFRX抗CD28抗体が含まれた。抗STEAP2x抗CD3抗体は、WO2018/058001Aに記載されている。抗PSMAx抗CD3抗体は、WO2017/053856A1に記載されている。
図14B】同上。
図15A図15A、15B、15Cおよび15Dは、抗EGFRX抗CD28二特異性抗体が、PEO1細胞(図15A)、CAPAN2細胞(図15B)、SW1990細胞(図15C)、およびH292細胞(図15D)を含む様々な細胞株にわたり、抗腫瘍特異的抗原(TSA)X抗CD3二特異性抗体(抗MUC16X抗CD3)の細胞障害能力を増強することを示す。
図15B】同上。
図15C】同上。
図15D】同上。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を記載する前に、本発明は、記述される特定の方法および実験条件に限定されず、そうした方法および条件は変化し得ることを理解されたい。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態のみを記述する目的で使用されており、限定することは意図されておらず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることをも理解されたい。
【0029】
別段の規定がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の列挙された数値に関連して使用される場合、当該値が、1%以下にまで当該列挙された値から変化し得ることを意味する。例えば本明細書で使用される場合、「約100」という表現は、99および101、ならびにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0030】
本明細書に記載される方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、本明細書には好ましい材料および方法が記載される。本明細書に置いて言及される全ての特許、特許出願および非特許公開文献は、参照によりその全体で本明細書に援用される。
【0031】
PD-1ブロッキングmAbを用いたチェックポイント阻害は、T細胞活性化のブレイクを放出することが知られているが、単剤としてのその有効性はしばしば、多くの癌において腫瘍のクリアランスや持続的な抗腫瘍応答を常に得るに不充分であった。PD-1阻害に対する奏効率を改善するためのいくつかの方法が現在評価中である。実際に、PD-1 mAbに対する応答性を予測するバイオマーカーの特定、T細胞活性化を改善する共刺激性受容体を誘導するアゴニスト性抗体、または化学療法もしくは放射線療法とともにPD-1阻害を使用した非腫瘍標的化併用療法が全て現在、前臨床試験および臨床試験中である。しかし課題は、これら併用の多くが真の仮説に導かれた方法ではなく、既存の薬剤の入手し易さ、および治療法を組み合わせることの事後的な論理的根拠に基づいていることが多く、一部の症例では患者に転帰の悪化をもたらしてしまうことである。免疫システムのチェックポイント阻害および再活性化は、多くの患者において長期的な寛解の可能性をもたらすことが明白であり、T細胞の活性をさらに改善または増強して、さらに長期的な応答を促進する方法が保証される。そこで、PD-1 mAbの抗腫瘍効果を改善するために、EGFRxCD28二特異性抗体を使用してT細胞のシグナル伝達および活性化を増強するというコンセプトが導入された。実際に、本発明の新規併用免疫療法は、CD28共刺激性二特異性抗体は、PD-1 mAbとの相乗効果を発揮して、安定的なT細胞活性化を生じさせるだけでなく、全身的な毒性を伴わずに長期的な抗腫瘍応答をもたらすことが示された。その結果として、本発明の腫瘍標的化併用療法は、過去に報告されている非標的化方法を超える大幅な利点を提供するものである。CD28二特異性抗体を使用することで、腫瘍細胞表面上でクラスター化しない限りCD28を直接的には活性化せず、従来的なCD28活性化抗体の全身的な毒性(CLTA-4およびPD-1の遮断または他の共刺激性のアゴニスト二価抗体の併用でしばしば観察される毒性)を回避しながら、腫瘍部位でのみ共刺激を促進する可能性がもたらされた。遺伝子操作によりヒト化された正常免疫能マウス、ならびにカニクイザルにおける毒性試験により、これら二特異性物質は、単剤としての毒性は示さず、さらにPD-1 mAbとの併用でも毒性は示さなかった。同系モデルおよび異種モデルにわたる、EGFRxCD28と抗PD-1 mAbによる同様の抗腫瘍効果の強化とともに、安全性プロファイルからも当該治療モダリティが安定的であり、腫瘍モデルに特異的であるとは限定されず、免疫療法の新規併用法として広範な有用性を有し得ることが示唆された。
【0032】
腫瘍細胞のT細胞介在性殺傷を強化するために、腫瘍標的化法が開発されている。実際に、CD3を基にした二特異性抗体は、T細胞と腫瘍細胞を連結させてTCR/CD3を活性化し、それに伴い正常な「シグナル1」を模倣することによりT細胞の活性化を効率的に誘発することができる新興抗体となっている。しかし、有望な臨床効果があるにもかかわらず、CD3-二特異性物質は、T細胞活性化を誘導するが、腫瘍のみという特異性が無いために、サイトカイン放出症候群(CRS)との関連性がある可能性がある。さらに、共刺激(シグナル2)の非存在下でのTCR/CD3活性化は、これら試薬の潜在的な抗腫瘍効果を限定し得る、または減少させ得るアネルギーまたは活性化誘導型細胞死(AICD:activation induced cell death)を生じさせる可能性がある。そこで本明細書において、EGFRxCD28二特異性物質と抗PD-1 mAbの併用療法が、腫瘍特異的なT細胞活性化を誘導したことを最初に実証する。本明細書において示されるように、EGFRxCD28二特異性抗体は、「シグナル1」の非存在下では、限定的な活性であり、または活性がなく、そしてPD-1遮断は、腫瘍ペプチドに対する内因性の抗原特異的T細胞応答に依存する。したがってCD28-二特異性物質は、PD-1遮断とともに、長期的な抗腫瘍応答を誘導する内因性TCR/CD3依存性T細胞応答をブーストすることができる。
【0033】
PD-1 mAbの抗腫瘍活性はCD28依存性であり、T細胞活性化のPD-1阻害は、TCR/CD3および/またはCD28を介したシグナル伝達を減少させ、これら分子の空間的な局在に影響を与え得る。本明細書のデータは、PD-L1が標的細胞により発現されたときにPD-1が免疫シナプスに蓄積すること、および当該蓄積が当該シナプスでのCD28の減少と関連することを実証しており、このことからPD-1は、シナプスへのCD28の局在を妨害することによりT細胞阻害を行っている可能性が示唆される。さらにPD-1遮断がPD-1のシナプス局在を妨害し、それと同時にシナプスでのCD28の蓄積が増加していたことが判明した。このことから、PD-1 mAbがT細胞活性化を促進する能力をEGFRxCD28二特異性物質が大幅に強化することが可能となる。このメカニズムは、PD-1ブロッキング抗体がT細胞活性化を促進するメカニズムの1つであり得る。全体として、PD-1-PD-L1相互作用および/またはPD-1阻害の後の免疫シナプスでのPD-1およびCD28の局在の視覚化を行うことにより、T細胞活性化に対するPD-1遮断の効果、ならびに免疫シナプスレベルでのEGFRxCD28とPD-1 mAbの相乗効果に関する理解が進み得る。
【0034】
PD-1 mAbは、重要な新規免疫療法であるが、多くの症例で抗腫瘍活性のさらなる最適化が必要なことは確実である。CAR-T法が、「シグナル1」と「シグナル2」の両方を人工的に活性化するキメラ受容体を採用して抗腫瘍活性を改善したのと同様に、本明細書において、抗腫瘍活性を強化するためにPD-1阻害とCD28-二特異性物質(「シグナル2」を提供する)を組み合わせることの潜在的な利益について示す。当該方法は、各患者に対して個々にカスタマイズしなければならない多大な労力を要する細胞療法用の準備を必要とせず、さらには毒性のある化学療法で患者を先制的に「リンパ球枯渇」させること(しばしば有害な作用と関連付けられ、それゆえ患者が細胞療法を受け入れられない)も必要ないという点で、CAR-T療法と比較していくつかの実益がある。当該二特異性物質によるアプローチは、作用の特異性を通じて、有効性の上昇ならびに安全性の上昇の可能性をもたらす。まとめると、本明細書のデータから、CD28を基にした二特異性物質と、臨床的に実証された例えばセミプリマブなどのPD-1 mAbとの併用は、大幅に増強され、相乗効果的な抗腫瘍活性を有する忍容性良好な生物製剤的解決法を提供し得ることが示される。
【0035】
定義
「EGFR」および「EGFR断片」とは本明細書において使用される場合、非ヒト種由来であることが特定されていない限り(例えば、「マウスEGFR」、「マウスEGFR断片」、「サルEGFR」、「サルEGFR断片」など)、公知のヒトのEGFRタンパク質またはその断片を指す。本発明のある実施形態では、ヒトEGFRは、NCBIのアクセッション番号NP_005219.2に記載されるアミノ酸配列を含む。1つの実施形態では、ヒトEGFR(アクセッション番号005228.4のアミノ酸L25-A647)は、C末端のCPGG.mycエピトープ(E1-L10).GlyGly.mycエピトープ(E1-L10).SerGly.6XHis.SSGタグ(配列番号69)とともに示されている。
【0036】
本明細書において使用される場合、「CD28」とは、非ヒト種由来であることが特定されていない限り、共刺激性受容体としてT細胞上に発現される公知のヒトCD28タンパク質を指す。本発明のある実施形態では、ヒトCD28は、NCBIのアクセッション番号NP_006130.1に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
「単離された」抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)、ポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびベクターは、それらが生成される細胞または細胞培養物に由来する他の生物学的分子を少なくとも部分的に含まない。そのような生物学的分子としては核酸、タンパク質、他の抗体もしくはその抗原結合断片、脂質、炭水化物、または例えば細胞残渣や増殖培地などの他の物質が挙げられる。単離された抗原結合タンパク質はさらに、例えば宿主細胞に由来する生物学的分子やその増殖培地の生物学的分子などの発現システムの構成要素を少なくとも部分的に含まなくてもよい。概して、「単離された」という用語は、そのような生物学的分子が完全に存在しないこと、または水、緩衝剤もしくは塩が存在しないこと、または抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬製剤の構成要素が存在しないことを指すことは意図されない。
【0038】
以下の参照文献は、配列解析にしばしば使用されるBLASTアルゴリズムに関する:BLASTアルゴリズム:Altschul et al.(2005)FEBS J.272(20):5101-5109;Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649-656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149-163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;アライメントスコアリングシステム:Dayhoff,M.O.,et al.,“A model of evolutionary change in proteins.”in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.;Schwartz,R.M.,et al.,“Matrices for detecting distant relationships.”in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.’’M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66-70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;アライメント統計:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039;およびAltschul,S.F.“Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.”in Theoretical and Computational Methods
in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1-14,Plenum,N.Y.。
【0039】
本発明は、配列番号6、8、10、12、14、24、34、36、38、44、46、48、54、56および/または58に記載されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0040】
「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互接続された2つの重鎖(HC)と2つの軽鎖(LC)を含む、免疫グロブリン分子である。各重鎖(HC)は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと省略される)と重鎖定常領域(例えば、IgG、IgG1またはIgG4)とを含む。重鎖定常領域は、C1、C2、およびC3の三つのドメインを含む。各軽鎖(LC)は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと省略される)と軽鎖定常領域(例えば、ラムダまたはカッパ)とを含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。V領域とV領域はさらにフレームワーク領域(FR)と名付けられたより保存的な領域と、その間に配置された相補性決定領域(CDR)と名付けられた超可変性の領域に分けられ得る。VとVはそれぞれ3つのCDRと4つのFRを含み、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖CDRは、HCDRと呼称される場合もあり、軽鎖CDRは、LCDRと呼称される場合もある。本発明の異なる実施形態において、抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒトの生殖細胞系列の配列と同一であってもよく、または自然に、もしくは人為的に修飾されていてもよい。
【0041】
Y型IgG抗体の抗原結合アーム(例えば、CD28結合アームまたはEGFR結合アーム)とは、抗原に対する結合特異性を与える抗体の構造部分を指す。例えばIgG抗体の抗原結合アームは、軽鎖(LC)と関連付けられた重鎖(HC)を有する。
【0042】
例えば二特異性である抗体は、第一の抗原に結合するアームと、第二の抗原に結合する別のアームを含む。例えば、EGFRxCD28二特異性抗体は、EGFRに結合する1つのアームと、CD28に結合する別のアームを含む。
【0043】
二特異性抗原結合分子(例えば二特異性抗体)は、第一の抗原に結合するエフェクターアームと、第二の抗原に結合する標的化アームを有してもよい。エフェクターアームは、エフェクター細胞(例えば、T細胞)上の抗原に結合する第一の抗原結合ドメイン(例えば、抗CD28)であってもよい。標的化アームは、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)上の抗原に結合する第二の抗原結合ドメイン(例えば、抗EGFR抗体)であってもよい。ある例示的な実施形態によると、エフェクターアームは、CD28に結合し、標的化アームは、EGFRに結合する。
【0044】
抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などは、本明細書において使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成するいずれか天然の、酵素処理により取得可能な、合成の、もしくは遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の多特異性抗原結合断片は、複数の抗原に結合する(例えば、断片が二特異性である場合には二つの異なる抗原に結合する)。抗体の抗原結合断片は、例えばタンパク質消化、または抗体の可変ドメインおよび(任意で)定常ドメインをコードするDNAの操作と発現を含む遺伝子組み換え操作法などの任意の適切な標準的技術を使用して完全抗体分子から誘導されてもよい。抗原結合断片の非限定的な例としては、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、および(vi)dAb断片が挙げられる。
【0045】
抗体の抗原結合断片は、本発明のある実施形態では、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成のものであってもよく、概して一つ以上のフレームワーク配列に隣接するか、または一つ以上のフレームワーク配列とともにフレーム中に存在する少なくとも一つのCDRを含む。Vドメインと関連付けられたVドメインを有する抗原結合断片において、VドメインとVドメインは、任意の好適な配置で互いに対して配置され得る。例えば、可変領域は二量体であってもよく、およびV-V、V-VまたはV-Vの二量体を含有してもよい。あるいは抗体の抗原結合断片は、単量体のVドメインまたはVドメインを含有してもよい。
【0046】
ある実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも一つの定常ドメインに共有結合された少なくとも一つの可変ドメインを含有してもよい。本発明の抗体の抗原結合断片内に存在し得る可変ドメインと定常ドメインの非限定的な構成例としては:(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;(iv)V-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;および(xiv)V-Cが挙げられる。上記の構成例のいずれかを含む、可変ドメインと定常ドメインの任意の構成において、可変ドメインと定常ドメインは互いに直接結合されてもよく、または完全もしくは部分的なヒンジまたはリンカー領域により結合されてもよい。ヒンジ領域は、少なくとも2(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上)のアミノ酸からなる領域であってもよく、このヒンジ領域により単一ポリペプチド分子中の隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメインの間にフレキシブルな、またはセミフレキシブルな結合が生じる。さらに、本発明の抗体の抗原結合断片は、(例えば、ジスルフィド結合により)互いに非共有結合された、および/または一つ以上の単量体VドメインもしくはVドメインと非共有結合された、上記に列挙される可変ドメイン構成および定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含んでもよい。
【0047】
例えば抗体またはその抗原結合断片などの「組み換え」抗原結合タンパク質という用語は、例えばDNAのスプライシングおよびトランスジェニック発現などを含む組み換えDNA技術として当分野に公知の技術もしくは方法により生成され、発現され、単離され、または取得される分子を指す。当該用語は、非ヒト哺乳動物(トランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えばトランスジェニックマウスを含む)、または宿主細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)、または細胞発現系で発現された抗体、または組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体を含む。本発明は、本明細書に記載される組み換え抗原結合タンパク質を含む。
【0048】
「特異的結合する」または「特異的に結合する」という用語は、例えば、EGFRまたはCD28タンパク質などの抗原に対し、例えば25℃または37℃で、例えばOctet(登録商標)HTXバイオセンサーなどのリアルタイムの無標識バイオレイヤー干渉分光アッセイ、または例えばBIACORE(登録商標)などの表面プラズモン共鳴、または溶液-アフィニティELISAにより測定されたときに、約10-6M(例えば、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12M)未満の、Kとして表される結合アフィニティを有する抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)を指す。「抗EGFR」とは、EGFRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片などの抗原結合タンパク質(または例えば抗原結合アームなどの他の分子)を指す。「抗CD28」とは、CD28に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片などの抗原結合タンパク質(または例えば抗原結合アームなどの他の分子)を指す。「EGFRxCD28」とは、EGFRとCD28(および任意で一つ以上の他の抗原)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片などの抗原結合タンパク質(または他の分子)を指す。
【0049】
本発明は、本発明の抗原結合タンパク質(例えば、REGN7075(本明細書においてbsAb7075とも呼称される);REGN6321(本明細書においてbsAb6321とも呼称される);REGN6322(本明細書においてbsAb6322とも呼称される);REGN6323(本明細書においてbsAb6323とも呼称される)と同じEGFRエピトープおよびCD28エピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片などの抗原結合タンパク質を含む。他の抗EGFRX抗CD28抗原結合タンパク質は、表9A、9Bおよび9Cに見出され得る。本明細書に記載される二特異性抗体のEGFR HCVRアームのアミノ酸配列は、表1に見出され、本明細書に記載される二特異性抗体のCD28 HCVRアームのアミノ酸配列は、表3に見出され得る。本発明における使用のための他のEGFR親抗体は、WO2014/004427に記載される。REGN7075、REGN6321、REGN6322、およびREGN6323のEGFR HCVRアームおよびCD28 HCVRアームのアミノ酸配列は、表6に見出される。本発明に記載される共通軽鎖可変領域のアミノ酸配列も、表6に見出される。
【0050】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域など、抗原結合タンパク質の特異的抗原結合部位と相互作用する(例えば、EGFRまたはCD28上の)抗原性決定基を指す。一つの抗原が、複数のエピトープを有する場合もある。したがって、異なる抗体が、抗原上の異なる領域に結合し、異なる生物効果を有する場合もある。「エピトープ」という用語は、B細胞および/もしくはT細胞が応答する抗原上の部位を指す場合もあり、ならびに/または抗体により結合される抗原の領域を指す場合もある。エピトープは構造的または機能的に定義される場合もある。機能的エピトープは概して構造的エピトープのサブセットであり、相互作用のアフィニティに直接的に寄与する残基を有する。エピトープは線形構造または立体構造であってもよい。すなわち、非線形状のアミノ酸から構成されてもよい。ある実施形態では、エピトープは、例えばアミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面集団である決定基を含んでもよく、ある実施形態では、エピトープは、特定の三次元構造特性および/または特定の荷電特性を有してもよい。
【0051】
例えば抗体または断片またはポリペプチドなどの抗原結合タンパク質のエピトープの決定方法としては、アラニンスキャニング突然変異解析、ペプチドブロット解析(Reineke(2004)Methods Mol.Biol.248:443-63)、ペプチド開裂解析、結晶学的試験、およびNMR解析が挙げられる。さらに、例えば抗原のエピトープ切り出し、エピトープ抽出、および化学修飾などの方法を採用してもよい(Tomer(2000)Prot.Sci.9:487-496)。抗原結合タンパク質(例えば抗体または断片またはポリペプチド)と相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を特定するために使用され得るもう1つの方法は、質量分析法により検出される水素/重水素交換である。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267:252-259;Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照のこと。
【0052】
本発明は、CD28およびEGFRへの結合に関し、本発明の抗原結合タンパク質(例えば、REGN7075(本明細書においてbsAb7075とも呼称される);REGN6321(本明細書においてbsAb6321とも呼称される);REGN6322(本明細書においてbsAb6322とも呼称される);REGN6323(本明細書においてbsAb6323とも呼称される)ならびに表9A、9Bおよび9Cに記載されるものと競合する抗原結合タンパク質を含む。本明細書において使用される場合、「競合する」という用語は、抗原に結合し、別の抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)が当該抗原に結合することを阻害または妨害する抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)を指す。別段の記載が無い限り、当該用語はまた、例えば抗体などの2つの抗原結合タンパク質の間の両方向性における競合も含む。すなわち第一の抗体が抗原に結合し、第二の抗体による結合を妨害する。その逆も然り。したがって本発明のある実施形態では、競合は、そのような方向の一つで発生する。ある実施形態では、第一の抗原結合タンパク質(例えば抗体)と第二の抗原結合タンパク質(例えば抗体)は、同じエピトープに結合し得る。あるいは第一および第二の抗原結合タンパク質(例えば抗体)は、異なるが、しかし例えば重複するエピトープまたは重複しないエピトープに結合する場合もあり、この場合において、一方の結合が、例えば立体障害を介して第二の抗体の結合を阻害または妨害する。抗原結合タンパク質(例えば抗体)の間の競合は、例えばリアルタイムの無標識バイオレイヤー干渉分光アッセイなど、当分野に公知の方法により測定され得る。または抗原結合タンパク質(例えばモノクローナル抗体(mAb))の間の結合競合は、Octet RED384バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.)でのリアルタイムの無標識バイオレイヤー干渉分光アッセイを使用して決定することができる。
【0053】
典型的には、何等かの方法で改変された本発明の抗体またはその抗原結合断片は、EGFRおよびCD28に対する特異的結合の能力を保持している。例えば、活性がモルベースで表される場合、(親抗体と比較して)EGFRおよびCD28の結合活性を少なくとも10%保持している。好ましくは、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、親抗体のEGFRおよびCD28の結合アフィニティの少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%または100%以上を保持している。また、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、その生物活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換(抗体の「保存的バリアント」または「機能保存的バリアント」と呼称される)を含み得ることも意図される。
【0054】
例えば免疫グロブリン鎖(例えば、本明細書に具体的に記載されるアミノ酸配列を含む、REGN7075(本明細書においてbsAb7075とも呼称される);REGN6321(本明細書においてbsAb6321とも呼称される);REGN6322(本明細書においてbsAb6322とも呼称される);REGN6323(本明細書においてbsAb6323とも呼称される)のV、V、HCもしくはLC、またはそのCDR)などのポリペプチドの「バリアント」とは、本明細書に記載される参照アミノ酸配列(例えば、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、または58-67のいずれか)に対して、比較がBLASTアルゴリズムにより行われ、当該アルゴリズムのパラメーターが、各参照配列の全長での各配列間の最も大きな合致を与えるよう選択される場合(例えば、予測閾値:10、ワードサイズ:3、クエリ範囲における最大合致:0、BLOSUM62マトリクス;ギャップコスト:実在11、伸長1、条件付き組成スコアマトリクス調整)、少なくとも約70~99.9%(例えば、少なくとも70、72、74、75、76、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5または99.9%)同一であるか、類似であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。
【0055】
さらにポリペプチドのバリアントは、そのアミノ酸配列が本明細書に具体的に記載されているが、一つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)の変異、例えば一つ以上のミスセンス変異(例えば保存的置換)、非センス変異、欠失または挿入に関しては記載されていない参照ポリペプチドのアミノ酸配列も含み得る、免疫グロブリン鎖(例えば、REGN7075(本明細書においてbsAb7075とも呼称される);REGN6321(本明細書においてbsAb6321とも呼称される);REGN6322(本明細書においてbsAb6322とも呼称される);REGN6323(本明細書においてbsAb6323とも呼称される)のV、V、HCもしくはLC、またはそのCDR)などのポリペプチドを含み得る。例えば本発明は、配列番号16に記載されているが、そのような変異を一つ以上有するアミノ酸配列を含むEGFR結合アームの免疫グロブリン軽鎖(またはV)バリアント、および/または配列番号2に記載されているが、そのような変異を一つ以上有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖(またはV)バリアントを含むCD28xEGFR抗原結合タンパク質を含む。本発明のある実施形態では、CD28xEGFR抗原結合タンパク質は、当該CDRのうちの一つ以上(例えば、1、または2、または3)が、そのような変異(例えば保存的置換)のうちの一つ以上を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む免疫グロブリン軽鎖バリアント、および/または当該CDRのうちの一つ以上(例えば、1、または2、または3)が、そのような変異(例えば保存的置換)のうちの一つ以上を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む免疫グロブリン重鎖バリアント、を含む。
【0056】
例えば本明細書に記載される免疫グロブリン鎖の「保存的改変バリアント」または「保存的置換」とは、ポリペプチド中に、類似した特性(例えば電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、骨格構造および剛性など)を有する他のアミノ酸とのアミノ酸の置換が一つ以上存在するバリアントを指す。そのような変化はしばしば、当該抗体または断片の生物活性を大きく損なうことなく発生し得る。当業者であれば、ポリペプチドの非必須領域中の単一アミノ酸の置換は概して、生物活性を大きくは変化させないと認識している(例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of
the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(第4版)を参照のこと)。さらに、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物活性を大きく損なう可能性は低い。本発明は、そのような保存的に改変されたバリアント免疫グロブリン鎖を含むEGFRxCD28ならびに抗EGFR抗原結合タンパク質および/または結合アームを含む。
【0057】
類似の化学特性を伴う側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびスレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リシン、アルギニンおよびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。あるいは、保存的置換とは、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-45に開示されるPAM250 log-尤度マトリクスにおいて正の値を有する任意の変化である。
【0058】
抗原結合分子
本発明の抗体は、一特異性、二特異性または多特異性であってもよい。多特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であってもよく、または複数の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有してもよい。例えば、Tutt
et aI.,1991,J.Immunol.147:60-69;Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244を参照のこと。本発明の抗CD28抗体は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質と連結されることができ、または共発現されることができる。例えば、抗体またはその断片は、例えば別の抗体または抗体断片などの、一つ以上の他の分子実体に、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、または非共有結合または別手段により)機能的に連結されて、第二の結合特異性を有する二特異性抗体、または多特異性抗体を生成することができる。
【0059】
本明細書において「抗CD28抗体」という表現の使用は、一特異性抗CD28抗体、ならびにCD28結合アームと標的抗原に結合する第二のアームを含む多特異性(例えば二特異性)抗体の両方を含むことが意図される。したがって本発明は、免疫グロブリンの一つのアームがヒトCD28に結合し、当該免疫グロブリンの他方のアームが標的抗原に特異的である、二特異性抗体を含む。CD28二特異性抗体の他方のアームが結合する標的抗原は、標的化免疫応答が望ましい細胞、組織、器官、微生物またはウイルス上に発現される、またはそれらの近くで発現される任意の抗原であり得る。CD28結合アームは、本明細書の表3および8に記載されるHCVR/LCVRまたはCDRのアミノ酸配列のいずれかを含み得る。ある実施形態では、CD28結合アームは、ヒトCD28に結合し、ヒトT細胞の増殖を誘導する。
【0060】
抗体の一つのアームがCD28に結合し、他方のアームが標的抗原に結合する本発明の二特異性抗体の場合において、標的抗原は、例えばEGFRなどの腫瘍関連抗原であり得る。
【0061】
ある例示的実施形態によると、本発明は、CD28とEGFRに特異的に結合する二特異性抗原結合分子を含む。そのような分子は本明細書において、例えば、「抗CD28/抗EGFR」、または「抗CD28xEGFR」、または「CD28xEGFR」、または「EGFRXCD28」、または「抗EGFR/抗CD28」、または「抗EGFRxCD28」、または「EGFRxCD28」二特異性分子、または「抗EGFRX抗CD28」、または「抗CD28X抗EGFR」、または他の類似した用語として呼称される場合がある。
【0062】
ある例示的実施形態によると、二特異性抗原結合分子(例えば、二特異性抗体)は、エフェクターアームと標的化アームを有する場合がある。エフェクターアームは、エフェクター細胞(例えば、T細胞)上の抗原に結合する第一の抗原結合ドメイン(例えば、抗CD28抗体)であり得る。標的化アームは、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)上の抗原に結合する第二の抗原結合ドメイン(例えば、抗EGFR抗体)であり得る。ある例示的な実施形態によると、エフェクターアームは、CD28に結合し、標的化アームは、EGFRに結合する。二特異性抗CD28/EGFRは、エフェクター細胞(例えば、T細胞)に共刺激性シグナルを送り得る。
【0063】
本明細書において使用される場合、「抗原結合分子」という表現は、単独で、または一つ以上の追加のCDRおよび/もしくはフレームワーク領域(FR)と組み合わされて特定の抗原に特異的に結合する相補性決定領域(CDR)を少なくとも一つ含む、もしくはそれからなるタンパク質、ポリペプチドまたは分子複合体を意味する。ある実施形態では、抗原結合分子は、抗体または抗体の断片であり、それら用語は本明細書において別段に規定される。
【0064】
本明細書において使用される場合、「二特異性抗原結合分子」という表現は、少なくとも第一の抗原結合ドメインと、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質、ポリペプチドまたは分子複合体(例えば抗体またはその抗原結合断片)を意味する。二特異性抗原結合分子内の各抗原結合ドメインは、単独で、または一つ以上の追加のCDRおよび/またはFRと組み合わされて、特定の抗原に特異的に結合するCDRを少なくとも一つ含む。本発明の場合において、第一の抗原結合ドメインは、第一の抗原(例えば、CD28)に特異的に結合し、第二の抗原結合ドメインは、第二の明白に異なる抗原(例えば、EGFR)に特異的に結合する。
【0065】
本発明のある例示的実施形態では、二特異性抗原結合分子は、二特異性抗体である。二特異性抗体の各抗原結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(HCVR)と軽鎖可変ドメイン(LCVR)を含む。
【0066】
第一の抗原結合ドメインと第二の抗原結合ドメインは、直接または間接的に互いに結合されて、本発明の二特異性抗原結合分子を形成し得る。あるいは第一の抗原結合ドメインと第二の抗原結合ドメインはそれぞれ、別個の多量体化ドメインに結合され得る。一つの多量体化ドメインを、別の多量体化ドメインに関連付けることで、二つの抗原結合ドメインの間の関連付けが促進され、それにより二特異性抗原結合分子が形成される。本明細書において使用される場合、「多量体化ドメイン」は、同じもしくは類似した構造または構成の第二の多量体化ドメインと関連付けられる能力を有する任意の高分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたはアミノ酸である。例えば、多量体化ドメインは、免疫グロブリンC3ドメインを含むポリペプチドであってもよい。多量体化の構成要素の非限定的な例は、免疫グロブリンのFc部分(C2-C3ドメインを含む)、例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、ならびに各アイソタイプ群内の任意のアロタイプから選択されるIgGのFcドメインである。
【0067】
本発明の二特異性抗原結合分子は、典型的には二つの多量体化ドメイン、例えば二つのFcドメインを含み、当該Fcドメインはそれぞれ個々に、別個の抗体重鎖部分である。第一および第二の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG1、IgG2/IgG2、IgG4/IgG4など、同じIgGアイソタイプのドメインであってもよい。あるいは第一および第二の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG2、IgG1/IgG4、IgG2/IgG4など、異なるIgGアイソタイプのドメインであってもよい。
【0068】
ある実施形態では、多量体化ドメインは、少なくとも一つのシステイン残基を含む、1~約200アミノ酸の長さのFc断片またはアミノ酸配列である。他の実施形態では、多量体化ドメインは、システイン残基、または短いシステイン含有ペプチドである。その他の多量体化ドメインとしては、ロイシンジッパー、ヘリックス-ループモチーフもしくはコイルドコイルモチーフを含む、またはそれからなるペプチドまたはポリペプチドが挙げられる。
【0069】
任意の二特異性抗体の形式または技術を使用して、本発明の二特異性抗原結合分子を作製してもよい。例えば、第一の抗原結合特異性を有する抗体またはその抗原結合断片は、例えば第二の抗原結合特異性を有する別の抗体または抗体断片などの、一つ以上の他の分子実体に、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、または非共有結合、または別手段により)機能的に連結されて、二特異性抗原結合分子を形成することができる。本発明に関して使用することのできる具体的な二特異性のフォーマットの例としては、非限定的に例えば、scFv系二特異性フォーマットまたはダイアボディ二特異性のフォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(OVO)-Ig、クアドローマ(Quadroma)、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)、共通軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを有する共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEEO)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ(Ouobody)、IgG1/IgG2、二重作用Fab(OAF)-IgG、およびMab二特異性フォーマットが挙げられる(例えば、前述のフォーマットの概要に関し、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11および当該文献中に引用される参照文献を参照のこと)。
【0070】
本発明の二特異性抗原結合分子の場合において、例えばFcドメインなどの多量体化ドメインは、野生型、天然型のFcドメインと比較して、一つ以上のアミノ酸変化(例えば、挿入、欠失または置換)を含んでもよい。例えば、本発明は、FcとFcRnの間の結合相互作用が改変された(例えば強化された、または減弱された)改変Fcドメインを生じさせるような改変をFcドメイン中に一つ以上含む二特異性抗原結合分子を含む。一つの実施形態では、二特異性抗原結合分子は、C2領域またはC3領域中に改変を含み、この場合において当該改変は、酸性環境下(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲のエンドソーム)において、FcRnに対するFcドメインのアフィニティを増加させるものである。そのようなFc改変の非限定的な例としては、例えば、250位の改変(例えば、EまたはQ)、250位および428位の改変(例えば、LまたはF)、252位の改変(例えば、LN/FIWまたはT)、254位の改変(例えば、SまたはT)、および256位の改変(例えば、S/R/Q/EIDまたはT)、または428位および/もしくは433位(例えば、UR/S/P/QまたはK)および/もしくは434位(例えば、H/FまたはV)での改変、または250位および/もしくは428位での改変、または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)および434位での改変が挙げられる。一つの実施形態では、改変は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)の改変、428L、2591(例えば、V2591)、および308F(例えば、V308F)の改変、433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)の改変、252、254および256(例えば、252Y、254T、および256E)の改変、250Qおよび428Lの改変(例えば、T250QおよびM428L)、ならびに307および/または308の改変(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0071】
本発明はまた、第一のC3ドメインと第二のIg C3ドメインを含む二特異性抗原結合分子も含み、この場合において当該第一および第二のIg C3ドメインは、少なくとも一つのアミノ酸によって互いに異なり、そしてこの場合において、少なくとも一つのアミノ酸の差異は、当該アミノ酸の差異を欠く二特異性抗体と比較して、二特異性抗体のタンパク質Aへの結合を低下させる。一つの実施形態では、第一のIg C3ドメインはプロテインAに結合し、第二のIg C3ドメインは、例えばH95R(IMGTエクソンナンバリングによる;EUナンバリングではH435R)修飾などのプロテインA結合を減少または消失させる突然変異を含有する。第二のC3はさらに、Y96F改変(IMGTによる、EUではY436F)を含んでもよい。第二のCH3内に存在し得るさらなる改変としては、以下が挙げられる:IgG1抗体の場合には、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによる;EUではD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I);IgG2抗体の場合には、N44S、K52N、およびV82I(IMGT;EUではN384S、K392N、およびV422I);ならびにIgG4抗体の場合には、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによる;EUではQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)。
【0072】
ある実施形態では、Fcドメインは、複数の免疫グロブリンアイソタイプに由来するFc配列を含むキメラであってもよい。例えば、キメラFcドメインは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4のC2領域から誘導されたC2配列の一部または全てと、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4から誘導されたC3配列の一部または全てを含んでもよい。キメラFcドメインはまた、キメラヒンジ領域も含有してもよい。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域またはヒトIgG4ヒンジ領域から誘導された「下部ヒンジ」配列と組み合わされた、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域またはヒトIgG4ヒンジ領域から誘導された「上部ヒンジ」配列を含み得る。本明細書に記載される抗原結合分子のいずれかに含有され得るキメラFcドメインの特定の例には、N末端からC末端に向けて、以下を含む:[IgG4 C1]-[IgG4上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG4 C3]。本明細書に記載される抗原結合分子のいずれかに含有され得るキメラFcドメインの別の例は、N末端からC末端に向けて、以下を含む:[IgG1 C1]-[IgG1上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4
2]-[IgG1 C3]。本発明の抗原結合分子のいずれかに含有され得るキメラFcドメインのこれらの例、および他の例は、WO2014/022540 A1に記載されている。これら一般構造配置を有するキメラFcドメイン、およびそのバリアントは、Fc受容体結合が変化している可能性があり、これはつまりFcのエフェクター機能に影響を与える。
【0073】
本発明の抗体および抗原結合断片は、本明細書に具体的に記載されるアミノ酸配列(およびそのバリアント)を含む免疫グロブリン鎖ならびに当該抗体または断片に対する細胞性改変またはインビトロでの翻訳後改変を含む。例えば本発明は、本明細書に記載される重鎖および/または軽鎖のアミノ酸配列を含む、EGFRとCD28に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片、ならびに一つ以上のアスパラギン残基、セリン残基および/もしくはスレオニン残基がグリコシル化し、一つ以上のアスパラギン残基が脱アミド化し、一つ以上の残基(例えば、Met、Trpおよび/またはHis)が酸化し、N末端グルタミンがピログルタミン酸塩(pyroE)であり、ならびに/またはC末端リシンもしくは他のアミノ酸が失われている抗体および断片を含む。
【0074】
上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)結合分子および抗EGFR抗原結合アーム
本発明は、一つ以上のEGFR結合アームならびに一つ以上のCD28結合アームを含む、例えば抗体または抗原結合断片などの多特異性(例えば二特異性)抗原結合タンパク質を含む。
【0075】
EGFR結合アームは、タンパク質にEGFR結合能を与える多特異性抗原結合タンパク質の部分である。本発明のある実施形態では、二特異性抗体REGN7075、REGN6321、REGN6322、またはREGN6323のEGFR結合アームは、EGFRへのEGFの結合を妨害し、本発明の別の実施形態では、EGFR結合アームは、EGFRへのEGFの結合を妨害しない。例えば、Y型IgG抗体のEGFR結合アームとは、EGFRに対する結合特異性を与える抗体の構造部分を指す。例えば、本発明のある実施形態では、EGFR結合アームは、EGFRに特異的に結合するHCDR1、LCDR1、HCDR2、LCDR2、HCDR3およびLCDR3;HCVR(V)およびLCVR(V)ならびに/またはHCおよびLCを含む。
【0076】
本発明のある実施形態では、EGFR結合アームは、重鎖CDRの組み合わせ(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含むVを含む重鎖免疫グロブリン、および軽鎖CDRの組み合わせ(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含むVを含む対応する軽鎖免疫グロブリンを含み、それらは本明細書に記載され、または国際特許出願公開番号WO2014/004427に記載されている。
【0077】
「085N」、「086N」、「089N」、「102N」、「103N」、「116N」、「134P」、「136P」、「141P」、「142P」、「143P」、「144P」、「145P」、「147P」、「151P」、「153P」、「155P」、「157P」、「158P」、「159P」、「161P」、「163P」、「169P」および「171P」とは、WO2014/004427に記載されるいくつかの抗EGFR一特異性抗体の識別番号を指す。これら抗体のHCVRアームを使用して、表3に記載されるHCVRアミノ酸配列と、表6に記載されるアミノ酸配列を有する共通軽鎖を有する抗CD28アームを組み合わせて、EGFRを発現する腫瘍細胞とCD28を発現するT細胞を標的とする二特異性抗体を作製してもよい。「REGN7075」、「REGN6321」、「REGN6322」または「REGN6323」はそれぞれ、「bsAb7075」、「bsAb6321」、「bsAb6322」または「bsAb6323」とも呼称され、表1、6および8に記載される免疫グロブリン重鎖可変領域(V)または全長重鎖(またはそのバリアント)、ならびに表1、6および8に記載される対応する免疫グロブリン軽鎖可変領域(V)または全長軽鎖(またはそのバリアント)とを含むEGFR結合アームを含む二特異性抗体、またはそのCDR(HCDR1(またはそのバリアント)、HCDR2(またはそのバリアント)、およびHCDR3(またはそのバリアント))を含むV、ならびにそのCDR(LCDR1(またはそのバリアント)、LCDR2(またはそのバリアント)およびLCDR3(またはそのバリアント))を含む対応するVとを含むEGFR結合アームを含む二特異性抗体を指し、例えばこの場合において可変領域および/またはCDRは、本明細書に記載される特定のアミノ酸配列を含み、バリアントではない。かかるVは、CDR-Hはバリアントではないバリアントアミノ酸配列を含む場合もあり、および/またはかかるVは、CDR-Lはバリアントではないバリアントアミノ酸配列を含む場合もある。かかるEGFR結合アームは、EGFRxCD28多特異性抗原結合タンパク質を背景において呼称されてもよく、例えば085Nx14226P2と呼称される場合がある。本発明のある実施形態では、Vは、IgG重鎖定常ドメイン(例えば、IgG1またはIgG4(例えば、S228P変異を含む))に連結され、および/またはVは、ラムダまたはカッパ軽鎖定常ドメインに連結される。
【0078】
本発明はまた、EGFRタンパク質またはその抗原性断片(例えば、EGFRの細胞外ドメイン)に特異的に結合する、例えば抗体(例えばヒト抗体、モノクローナル抗体および組み換え抗体)などの抗原結合タンパク質およびその抗原結合断片も提供する。本明細書に記載される抗原結合タンパク質のいずれかと同じEGFR上のエピトープ、またはそれらとEGFRへの結合に関して競合する抗原結合タンパク質も、本発明の一部である。
【0079】
本発明の抗EGFR抗体およびその抗原結合断片としては、本明細書に記載される、またはWO2014/004427に記載される、085N、086N、089N、102N、103N、116N、134P、136P、141P、142P、143P、144P、145P、147P、151P、153P、155P、157P、158P、159P、161P、163P、169P、171P、mAb12999P2、mAb13008P2、mAb35193P2、mAb13006P2、REGN7075、REGN6321、REGN6322、もしくはREGN6323のEGFR結合アーム(またはそのバリアント)のCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、Vまたは全長免疫グロブリン配列、および/または本明細書に記載される、またはWO2014/004427に記載される、085N、086N、089N、102N、103N、116N、134P、136P、141P、142P、143P、144P、145P、147P、151P、153P、155P、157P、158P、159P、161P、163P、169P、171P、mAb12999P2、mAb13008P2、mAb35193P2、mAb13006P2、REGN7075、REGN6321、REGN6322、もしくはREGN6323のEGFR結合アーム(またはそのバリアント)のCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)、Vまたは全長免疫グロブリン配列を含むものも挙げられる。
【0080】
「REGN7075」、「REGN6321」、「REGN6322」または「REGN6323」は、本明細書に記載される免疫グロブリン重鎖可変領域(V)または全長重鎖(またはそのバリアント)、および本明細書に記載される対応する免疫グロブリン軽鎖可変領域(V)または全長軽鎖(またはそのバリアント)を含む抗EGFR抗体およびその抗原結合断片(例えば、一特異性抗体および断片)を指す場合もあり、またはそのCDR(HCDR1(またはそのバリアント)、HCDR2(またはそのバリアント)、およびHCDR3(またはそのバリアント))を含むV、ならびにそのCDR(LCDR1(またはそのバリアント)、LCDR2(またはそのバリアント)およびLCDR3(またはそのバリアント))を含む対応するVとを含む抗EGFR抗体およびその抗原結合断片(例えば、一特異性抗体および断片)を指す場合もあり、例えばこの場合において可変領域および/またはCDRは、本明細書に記載される特定のアミノ酸配列を含み、バリアントではない。かかるVは、CDR-Hはバリアントではないバリアントアミノ酸配列を含む場合もあり、および/またはかかるVは、CDR-Lはバリアントではないバリアントアミノ酸配列を含む場合もある。本発明のある実施形態では、Vは、IgG重鎖定常ドメイン(例えば、IgG1またはIgG4)に連結され、および/またはVは、ラムダまたはカッパ軽鎖定常ドメインに連結される。
【0081】
抗原結合タンパク質のREGN7075、REGN6321、REGN6322、およびREGN6323は、EGFR(および/または一つ以上の異なる抗原または異なるEGFRエピトープ)に結合する一つのHCVRアームと、T細胞上のCD28に結合する一つのHCVRアームとを有する二特異性抗EGFR抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)である。
【0082】
REGN7075、REGN6321、REGN6322、およびREGN6323の免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列を以下に記載する:
【0083】
REGN7075のEGFR構成要素
親EGFR mAb12999P2に由来するEGFRアームのHCVR):
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGDSIITFYWSWIRQPPGRGLEWIGYIYYSGITNYNPSLKSRVTISVDTSKNQVSLKLSSVTAADTAVYYCARVSEDSYFHYGMDVWGQGTTVTVSS
(配列番号2、下線部分はCDR)
CDR-H1:G D S I I T F Y(配列番号4)
CDR-H2:I Y Y S G I T(配列番号6)
CDR-H3:A R V S E D S Y F H Y G M
D V(配列番号8)
【0084】
二特異性抗体REGN7075のEGFRアームの全長重鎖
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGDSIITFYWSWIRQPPGRGLEWIGYIYYSGITNYNPSLKSRVTISVDTSKNQVSLKLSSVTAADTAVYYCARVSEDSYFHYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
(配列番号24)
【0085】
EGFRおよびCD28親抗体、ならびに二特異性抗体REGN7075のLCVR
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK
(配列番号16、下線部分はCDR)
CDR-L1:QSVSSSY(配列番号18)
CDR-L2:GAS(配列番号20)
CDR-L3:QQYGSSPWT(配列番号22)
【0086】
EGFRおよびCD28親抗体、ならびに二特異性物質の両方の全長軽鎖
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号28)
【0087】
REGN6321のEGFR構成要素
親EGFR mAb13008P2に由来するEGFRアームのHCVR):
EVQLVESGGGLVRPGGSLRLSCTASGFTFSTFIMFWVRQAPGKGLEYVSSISSNGGTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMGSLRAEDMAVYYCTRGGDFWSGYYPFDYWGQGTLVTVSS
(配列番号30、下線部分はCDR)
CDR-H1:G F T F S T F I(配列番号32)
CDR-H2:I S S N G G T I(配列番号34)
CDR-H3:T R G G D F W S G Y Y P F
D Y(配列番号36)
【0088】
二特異性抗体REGN6321のEGFRアームの全長重鎖
EVQLVESGGGLVRPGGSLRLSCTASGFTFSTFIMFWVRQAPGKGLEYVSSISSNGGTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMGSLRAEDMAVYYCTRGGDFWSGYYPFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
(配列番号38)
【0089】
EGFRおよびCD28親抗体、ならびに二特異性抗体REGN6321のLCVR
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK
(配列番号16、下線部分はCDR)
CDR-L1:QSVSSSY(配列番号18)
CDR-L2:GAS(配列番号20)
CDR-L3:QQYGSSPWT(配列番号22)
【0090】
EGFRおよびCD28親抗体、ならびに二特異性物質の両方の全長軽鎖
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号28)
【0091】
REGN6322のEGFR構成要素
親EGFR mAb35193P2に由来するEGFRアームのHCVR):
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCTASGFSFRDAWMTWVRQVPGKGLEWVGRIRNKIDGGTTDYNTPVKDRFTISRDDSKNTLYLQMNSLKTEDTAVYYCTTDIWNYVLFYYYGLDVWGQGTTVTVSS
(配列番号40、下線部分はCDR)
CDR-H1:G F S F R D A W(配列番号42)
CDR-H2:I R N K I D G G T T(配列番号44)
CDR-H3:T T D I W N Y V L F Y Y Y
G L D V(配列番号46)
【0092】
二特異性抗体REGN6322のEGFRアームの全長重鎖
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCTASGFSFRDAWMTWVRQVPGKGLEWVGRIRNKIDGGTTDYNTPVKDRFTISRDDSKNTLYLQMNSLKTEDTAVYYCTTDIWNYVLFYYYGLDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
(配列番号48)
【0093】
EGFRおよびCD28親抗体、ならびに二特異性抗体REGN6322のLCVR
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK
(配列番号16、下線部分はCDR)
CDR-L1:QSVSSSY(配列番号18)
CDR-L2:GAS(配列番号20)
CDR-L3:QQYGSSPWT(配列番号22)
【0094】
EGFRおよびCD28親抗体、ならびに二特異性物質の両方の全長軽鎖
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号28)
【0095】
REGN6323のEGFR構成要素
親EGFR mAb13006P2に由来するEGFRアームのHCVR):
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSDDSIISYYWSWIRQPPGKGLEWIGYIYYSGRTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQVSLKLNSVIAADTAVYYCARVSEDSYYHYGMDVWGQGTTVTVSS
(配列番号50、下線部分はCDR)
CDR-H1:D D S I I S Y Y(配列番号52)
CDR-H2:I Y Y S G R T(配列番号54)
CDR-H3:A R V S E D S Y Y H Y G M
D V(配列番号56)
【0096】
二特異性抗体REGN6323のEGFRアームの全長重鎖
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSDDSIISYYWSWIRQPPGKGLEWIGYIYYSGRTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQVSLKLNSVIAADTAVYYCARVSEDSYYHYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
(配列番号58)
【0097】
EGFRおよびCD28親抗体ならびに二特異性抗体REGN6323のLCVR
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK
(配列番号16、下線部分はCDR)
CDR-L1:QSVSSSY(配列番号18)
CDR-L2:GAS(配列番号20)
CDR-L3:QQYGSSPWT(配列番号22)
【0098】
EGFRおよびCD28親抗体、ならびに二特異性物質の両方の全長軽鎖
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号28)
【0099】
本発明のある実施形態では、mAb12999P2、mAb13008P2、mAb35193P2、またはmAb13006P2の重鎖は、以下から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖とペア形成される:
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK
(配列番号16);
および
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTPPITFGQGTRLEIK
(配列番号67);
【0100】
CD28(Cluster of Differentiation28)結合アーム
本発明は、一つ以上のCD28結合アームならびに一つ以上のEGFR結合アームを含む、例えば抗体または抗原結合断片などの多特異性(例えば二特異性)抗原結合タンパク質を含む。
【0101】
CD28結合アームは、タンパク質にCD28結合能を与える多特異性抗原結合タンパク質の部分である。例えば、Y型IgG抗体のCD28結合アームとは、CD28に対する結合特異性を与える抗体の構造部分を指す。例えば、本発明のある実施形態では、CD28結合アームは、CD28に特異的に結合するHCDR1、LCDR1、HCDR2、LCDR2、HCDR3およびLCDR3;HVCR(V)およびLCVR(V)ならびに/またはHCおよびLCを含む。
【0102】
本発明のある実施形態では、CD28結合アームは、重鎖CDRの組み合わせ(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含むVを含む重鎖免疫グロブリン、および軽鎖CDRの組み合わせ(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含むVを含む対応する軽鎖免疫グロブリンを含み、それらは本明細書に記載されている。本発明のある実施形態では、CD28結合アームは、本明細書に記載される重鎖可変領域(V)と、対応する軽鎖可変領域(V)を含む。
【0103】
親抗CD28抗体の14226P2、14193P2、および14216P2の免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列を以下に記載する:
【0104】
二特異性物質の調製に使用される親CD28 mAb
mAb14226P2
mAb14226P2のHCVR
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSYYWSWIRQPPGKGLEWIGYIYYSGITHYNPSLKSRVTISVDTSKIQFSLKLSSVTAADTAVYYCARWGVRRDYYYYGMDVWGQGTTVTVSS
(配列番号10)
CDR-H1:GGSISSYY(配列番号12)
CDR-H2:IYYSGIT(配列番号6)
CDR-H3:ARWGVRRDYYYYGMDV(配列番号14)
【0105】
mAb14226P2の全長重鎖
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSYYWSWIRQPPGKGLEWIGYIYYSGITHYNPSLKSRVTISVDTSKIQFSLKLSSVTAADTAVYYCARWGVRRDYYYYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNRFTQKSLSLSPGK
(配列番号26)
【0106】
mAb14226P2のLCVR
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK
(配列番号16)
CDR-L1:QSVSSSY(配列番号18)
CDR-L2:GAS(配列番号20)
CDR-L3:QQYGSSPWT(配列番号22)
【0107】
mAb14226P2の全長軽鎖
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号28)
【0108】
mAb14193P2
mAb14193P2のHCVR
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYAGNNKYYADSVKGRFTVSRDNSKKTLYLQMNSLRSEDTAVYYCAKDSYYDFLTDPDVLDIWGQGTMVTVSS
(配列番号59)
CDR-H1:GFTFSSYG(配列番号60)
CDR-H2:ISYAGNNK(配列番号61)
CDR-H3:AKDSYYDFLTDPDVLDI(配列番号62)
【0109】
mAb14193P2のLCVR
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK
(配列番号16)
CDR-L1:QSVSSSY(配列番号18)
CDR-L2:GAS(配列番号20)
CDR-L3:QQYGSSPWT(配列番号22)
【0110】
mAb14216P2
mAb14216P2のHCVR
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRNNMHWVRQAPGKGLEYVSGISSNGGRTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMGGLRAADMAVYFCTRDDELLSFDYWGQGTLVTVSS
(配列番号63)
CDR-H1:GFTFSRNN(配列番号64)
CDR-H2:ISSNGGRT(配列番号65)
CDR-H3:TRDDELLSFDY(配列番号66)
【0111】
mAb14216P2のLCVR
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK
(配列番号16)
CDR-L1:QSVSSSY(配列番号18)
CDR-L2:GAS(配列番号20)
CDR-L3:QQYGSSPWT(配列番号22)
【0112】
本発明のある実施形態では、14226P2、14193P2、または14216P2の重鎖は、以下から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖とペア形成される:
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSPWTFGQGTKVEIK
(配列番号16);
ならびに
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTPPITFGQGTRLEIK
(配列番号67);
【0113】
「14226P2」、「14193P2」または「14216P2」または「mAb14226P2」、「mAb14193P2」または「mAb14216P2」とは、本明細書に記載される二特異性物質のCD28アームが取得される親一特異性抗体を指す。本明細書に記載される免疫グロブリン重鎖可変領域(V)または全長重鎖(またはそのバリアント)、および本明細書に記載される対応する免疫グロブリン軽鎖可変領域(V)または全長軽鎖を含むCD28結合アーム、またはそのCDR(HCDR1(またはそのバリアント)、HCDR2(またはそのバリアント)、およびHCDR3(またはそのバリアント))を含むV、ならびにそのCDR(LCDR1(またはそのバリアント)、LCDR2(またはそのバリアント)およびLCDR3(またはそのバリアント))を含む対応するVとを含むCD28結合アームは、例えばこの場合において可変領域および/またはCDRは、本明細書に記載される特定のアミノ酸配列を含み、バリアントではない。かかるVは、CDR-Hはバリアントではないバリアントアミノ酸配列を含む場合もあり、および/またはかかるVは、CDR-Lはバリアントではないバリアントアミノ酸配列を含む場合もある。かかるCD28結合アームは、EGFRxCD28多特異性抗原結合タンパク質を背景において呼称されてもよく、例えば085Nx14226P2と呼称される場合がある。本発明のある実施形態では、Vは、IgG重鎖定常ドメイン(例えば、IgG1またはIgG4)に連結され、および/またはVは、ラムダまたはカッパ軽鎖定常ドメインに連結される。
【0114】
本発明はまた、CD28タンパク質またはその抗原性断片(例えば、CD28の細胞外ドメイン)に特異的に結合する、例えば抗体(例えばヒト抗体、モノクローナル抗体および組み換え抗体)などの抗原結合タンパク質およびその抗原結合断片も提供する。本明細書に記載される抗原結合タンパク質のいずれかと同じCD28上のエピトープ、またはそれらとCD28への結合に関して競合する抗原結合タンパク質も、本発明の一部である。
【0115】
T細胞の表面上のCD28に結合し、T細胞の活性化および/または増殖を強化するCD28シグナル伝達をアゴナイズする本発明の多特異性EGFRxCD28抗原結合タンパク質は、本明細書において、「共-刺激性」または「共刺激性」と呼称される場合がある。T細胞の活性化は、T細胞受容体(TCR)/CD3複合体が、ペプチド-MHC複合体に結合することで始まり(シグナル1)、その後の活性化は、例えばT細胞上のCD28受容体が標的細胞上の自身の同系リガンドに結合するなど、第二の「共刺激性」受容体の連動(シグナル2)により強化される。例えばCD28二特異性抗体によるT細胞の活性化は、TCR/CD3複合体による内因性腫瘍抗原の認識に反応したシグナルの増幅、またはCD3-二特異性抗体を介した「シグナル1」活性化に反応したシグナルの増幅によりもたらされる場合がある。
【0116】
多特異性抗原結合タンパク質
本発明は、多特異性(例えば二特異性)で、少なくともEGFRとCD28に結合する抗原結合タンパク質を提供する。本明細書において使用される場合、かかる抗体はAxBの形式で呼称され、この場合においてAとはEGFRに結合する多特異性分子中の結合アームを指し、BとはCD28に結合する多特異性分子中の結合アームを指す。逆の場合もある。EGFRxCD28またはCD28xEGFRとは、EGFRとCD28に結合する多特異性抗原結合タンパク質を指す。多特異性抗原結合タンパク質中の特定のEGFRおよびCD28の結合アームは、AxBの形式で特定される場合もあり、この場合においてAは特異的アームを指し、Bは別の特異的アームを指す。例えば085Nx14226P2とは、本明細書に記載される085Nの抗EGFR結合アームと、本明細書に記載される14426P2の抗CD28結合アームを有する多特異性抗原結合タンパク質を指す。例えば085Nは、085Nの免疫グロブリン重鎖および軽鎖、またはその可変領域、またはそのCDRを含む結合アームであり、その配列は本明細書に具体的に記載され、またはそのバリアントである。
【0117】
ある実施形態では、多特異性抗原結合タンパク質は、二特異性抗原結合タンパク質を含む。本明細書において使用される場合、「二特異性抗原結合タンパク質」という表現は、少なくとも第一の抗原結合ドメインと、第二の抗原結合ドメインを含むタンパク質、ポリペプチドまたは分子複合体(例えば抗体またはその抗原結合断片)を意味する。二特異性抗原結合分子内の各抗原結合ドメインは、単独で、または一つ以上の追加のCDRおよび/またはFRと組み合わされて、特定の抗原に特異的に結合するCDRを少なくとも一つ含む。本発明の場合において、第一の抗原結合ドメインは、第一の抗原(例えば、CD28)に特異的に結合し、第二の抗原結合ドメインは、第二の明白に異なる抗原(例えば、EGFR)に特異的に結合する。
【0118】
多特異的結合とは、二つ以上の異なるエピトープ(EGFRおよびCD28、またはそれ以上)に結合することを指し、それらエピトープは同じ抗原上または異なる抗原上にあってもよい。多特異性には、二特異性、三特異性および四特異性が含まれる。
【0119】
本発明は、以下の多特異性抗原結合タンパク質(例えば、二特異性抗体またはその抗原結合断片)のいずれかを含む:REGN7075、REGN6321、REGN6322、REGN6323。ならびに表1のEGFR HCVRアームのいずれか(例えば親モノクローナル抗体のmAb12999P2、mAb13008P2、mAb35193P2およびmAb13006P2のHCVRアーム)と、表3のCD28 HCVRアームのいずれか(例えば、親mAb14226、mAb14193およびmAb14216のHCVRアーム)とを組み合わせることにより調製される二特異性抗体。また本発明は、本明細書に記載されるそれらの使用方法を含む。
【0120】
ポリヌクレオチド、および作製方法
本明細書に記載される任意のEGFRxCD28多特異性抗原結合タンパク質または抗EGFR抗原結合タンパク質の免疫グロブリン鎖をコードする単離ポリヌクレオチドも本発明の一部を成し、同様に本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含むベクター、および/またはポリヌクレオチド、ベクターもしくは抗原結合タンパク質を含む宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)も本発明の一部である。
【0121】
ポリヌクレオチドは、DNAおよびRNAを含む。本発明は、例えば、EGFR結合アームおよび/またはCD28結合アームの免疫グロブリンV、V、CDR-H、CDR-L、HCまたはLCをコードする本発明のポリヌクレオチドを含み、任意でそれらはプロモーターまたは他の発現制御配列に動作可能に連結されている。例えば本発明は、表2に記載されるヌクレオチド配列、および表4に記載されるヌクレオチド配列を含む任意のポリヌクレオチド(例えば、DNA)を提供する。
【0122】
本発明は、任意でプロモーターまたは他の発現制御配列または他のポリヌクレオチド配列に動作可能に連結される配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、29、31、33、35、39、41、43、45、49、51、53および/または55に記載されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。
【0123】
一般的に、「プロモーター」または「プロモーター配列」は、細胞中のRNAポリメラーゼに(例えば直接または他のプロモーター結合性のタンパク質もしくは物質を介して)結合し、コード配列の転写を開始する能力を有するDNA制御領域である。プロモーターは、エンハンサー配列およびリプレッサー配列を含む他の発現制御配列に、および/または本発明のポリヌクレオチドとともに、動作可能に連結されてもよい。遺伝子発現を制御するために使用され得るプロモーターとしては限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第5,385,839号および第5,168,062号)、SV40早期プロモーター領域(Benoist,et al.,(1981)Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’の長い末端リピート中に含有されるプロモーター(Yamamoto,et al.,(1980)Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner,et
al.,(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の制御配列(Brinster,et al.,(1982)Nature 296:39-42);例えばベータ-ラクタマーゼプロモーターなどの原核生物の発現ベクター(VIIIa-Komaroff,et al.,(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727-3731)、またはtacプロモーター(DeBoer,et al.,(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21-25)、また“Useful proteins from recombinant bacteria”in Scientific American(1980)242:74-94も参照のこと、および例えばGal4プロモーター、ADC(アルコール脱水素酵素)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーターもしくはアルカリホスファターゼプロモーターなどの酵母または他の真菌由来のプロモーター因子が挙げられる。
【0124】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターまたは他の発現制御配列に「動作可能に連結される」と、細胞または他の発現系において、コード配列は当該配列によりRNAポリメラーゼ介在性にRNA、好ましくはmRNAへと転写され、次いでRNAスプライシングを受け(イントロンを含む場合)、および任意で当該コード配列にコードされるタンパク質へと翻訳される。
【0125】
本発明は、そのヌクレオチド配列が本明細書に具体的に記載される免疫グロブリンポリペプチド鎖のバリアントである、免疫グロブリンポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドの「バリアント」とは、本明細書に記載される参照ヌクレオチド配列に対し、比較がBLASTアルゴリズムにより行われ、当該アルゴリズムのパラメーターが、各参照配列の全長での各配列間の最も大きな合致を与えるよう選択される場合(例えば、予測閾値:10、ワードサイズ:28、クエリ範囲における最大合致:0、合致/非合致スコア:1、-2;ギャップコスト:線形)、少なくとも約70~99.9%(例えば、70、72、74、75、76、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9%)同一であるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを指す。本発明のある実施形態では、本明細書に具体的に記載されるヌクレオチド配列のバリアントは、一つ以上のヌクレオチドの点変異、挿入(例えばフレーム内挿入)、または欠失(例えばフレーム内欠失)を一つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個)含む。そのような変異は、本発明のある実施形態では、ミスセンス変異またはノンセンス変異であってもよい。本発明のある実施形態では、そのようなバリアントポリヌクレオチドは、EGFR結合アームおよび/またはCD28結合アーム内に組み込まれ得る免疫グロブリンポリペプチド鎖をコードする。すなわち当該タンパク質は、EGFRおよび/またはCD28に対する特異的結合を保持する。
【0126】
哺乳動物細胞を含む真核細胞、および原核細胞の宿主細胞が、抗EGFRおよびEGFRxCD28抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)またはその抗原結合アームの発現のための宿主として使用されてもよい。そのような宿主細胞は当分野に周知であり、多くがAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手可能である。これら宿主細胞としては特にチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝臓細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、HEK-293細胞、および多数の他の細胞株が挙げられる。哺乳動物の宿主細胞としては、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマおよびハムスターの細胞が挙げられる。使用され得る他の細胞株は、昆虫細胞株(例えば、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)またはイラクサキンウワバ(Trichoplusia ni)、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞および真菌細胞である。真菌細胞としては、酵母および糸状菌が挙げられ、例えば、ピキア(Pichia)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブランファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・ミヌタ(Pichia minuta)(オガタエア・ミニュータ(Ogataea minuta)、ピキア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピキア・オプンティアエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・グエルクウム(Pichia
guercuum)、ピキア・ピジュペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スチプチス(Pichia stiptis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア種(Pichia sp.)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、 クルベロマイセス種(Kluyveromyces sp.)、クルベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ルクノエンス(Chrysosporium lucknowense)、フサリウム種(Fusarium sp.)、フサリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フサリウム・ヴェネナツム(Fusarium venenatum)、ニセツリガネゴケ(Physcomitrella patens)およびアカパンカビ(Neurospora crassa)が挙げられる。本発明は、抗EGFR抗体(例えば、WO2014/004427に見出されるEGFR抗体)、または本発明の抗EGFRx抗CD28抗原結合タンパク質、例えばREGN7075、REGN6321、REGN6322、REGN6323、および表9A、9Bもしくは9Cに示される抗EGFRX抗CD28抗原結合タンパク質、またはその免疫グロブリン(Ig)重鎖および/もしくは軽鎖をコードするポリヌクレオチド、および/または本発明の多特異性抗原結合タンパク質のEGFR結合アームとCD28結合アームをコードする一つ以上のポリヌクレオチドを含む単離宿主細胞(例えば、CHO細胞または上述の宿主細胞セットのいずれかタイプ)を含む。
【0127】
本発明はまた、本発明のEGFRxCD28および/または抗EGFR抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)、例えばREGN7075、REGN6321、REGN6322、REGN6323、ならびに表3のCD28 HCVRアーム(例えば親mAb14226、mAb14193およびmAb14216のHCVRアーム)のいずれかと表1のEGFR HCVRアーム(例えば親モノクローナル抗体のmAb12999P2、mAb13008P2、mAb35193P2、およびmAb13006P2のHCVRアーム)を組み合わせることにより調製される二特異性抗体、または表9A、9Bおよび9Cに示される二特異性抗体のいずれかに結合される、EGFRおよび/もしくはCD28、またはそれらの抗原性断片、または融合物(例えば、His(配列番号68)、Fcおよび/またはmyc)を発現する細胞も含み、例えばこの場合において当該細胞は、対象の身体内にあり、またはインビトロにある。
【0128】
さらに本発明はまた、本発明のEGFRxCD28および/またはEGFR抗原結合タンパク質を含む複合体、例えばEGFRおよび/もしくはCD28ポリペプチド、またはその抗原性断片またはその融合物と複合体化された本明細書に検討される抗体またはその抗原結合断片、および/または抗EGFR抗体もしくはEGFRxCD28抗体もしくはその断片に特異的に結合する二次抗体またはその抗原結合断片(例えば検出可能に標識された二次抗体)を含む複合体を提供する。本発明のある実施形態では、複合体は、インビトロにあり(例えば固形基質に固定される)、または対象の身体内にある。本発明のある実施形態では、EGFRは、腫瘍細胞の表面上にあり、CD28は、例えばT細胞などの免疫細胞の表面上にある。本発明のある実施形態では、T細胞は活性化される。
【0129】
組み換え抗体を生成する方法がいくつか存在し、それら方法は当分野に公知である。抗体の組み換え作製方法の一例は、米国特許第4816567号に開示されている。宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための任意の公知の方法による形質転換であってもよい。哺乳動物細胞に異種ポリヌクレオチドを導入する方法は当分野に周知であり、デキストラン介在トランスフェクション法、リン酸カルシウム沈殿法、ポリブレン介在トランスフェクション法、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、リポソーム内へのポリヌクレオチドの封入、バイオリスティック注入法、および核への直接的なDNAマイクロインジェクションが挙げられる。さらに核酸分子は、ウイルスベクターにより哺乳動物細胞内に導入されてもよい。細胞を形質転換させる方法は、当分野に周知である。例えば、米国特許第4399216号、同第4912040号、同第4740461号、および同第4959455号を参照のこと。
【0130】
本発明は、本発明の抗EGFRx抗CD28(例えば、REGN7075、REGN6321、REGN6322、またはREGN6323)抗原結合タンパク質、例えば本発明の抗体またはその抗原結合断片、またはその免疫グロブリン鎖を作製するための組み換え方法を含み、当該方法は、
(i)宿主細胞内に、EGFRxCD28、または抗EGFR抗原結合タンパク質の抗原結合アームをコードする軽鎖および重鎖免疫グロブリンをコードする一つ以上のポリヌクレオチドを導入することであって、例えばこの場合において当該ポリヌクレオチドはベクター中にあり、および/または宿主細胞の染色体内に統合され、および/またはプロモーターに動作可能に連結されていること、
(ii)当該ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で当該宿主細胞(例えば、CHOまたはピキアまたはピキア・パストリス)を培養すること、および
(iii)任意で、当該宿主細胞から、および/または当該宿主細胞が増殖した培地から、抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)または鎖を単離すること、を含む。本発明はまた、抗EGFRまたはEGFRxCD28抗原結合タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合断片も含み、それらは本明細書に記載される作製方法、および任意で本明細書に記載される精製方法の産物である。
【0131】
本発明のある実施形態では、EGFRxCD28(例えばREGN7075、REGN6321、REGN6322、またはREGN6323)抗原結合タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合断片を作製する方法は、例えばカラムクロマトグラフィー、沈殿および/またはろ過により当該抗原結合タンパク質を精製する方法を含む。検討されるように、当該方法の産物も、本発明の一部を成す。
【0132】
配列バリアント
本発明の抗体および二特異性抗原結合分子は、個々の抗原結合ドメインが誘導された対応する生殖細胞系列配列と比較して、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域ならびに/またはCDR領域において、一つ以上のアミノ酸の置換、挿入および/または欠失を含んでもよい。そのような変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば公開抗体配列データベースから利用可能な生殖細胞系列の配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明の抗原結合分子は、本明細書に開示される例示的アミノ酸配列のいずれかに由来する抗原結合断片を含んでもよく、この場合において一つ以上のフレームワーク領域および/またはCDR領域内の一つ以上のアミノ酸は、当該抗体が由来する生殖細胞系列の配列の対応する残基に、または別のヒト生殖細胞系列の配列の対応する残基に、または対応する生殖細胞系列の残基の保存的アミノ酸置換に、変異を受けている(そのような配列変化を本明細書において集合的に「生殖細胞系列変異」と呼称する)。当業者であれば、本明細書に開示される重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を用いて開始して、一つ以上の個々の生殖細胞系列変異またはその組み合わせを含む多くの抗体および抗原結合断片を容易に作製することができる。ある実施形態では、Vおよび/もしくはVドメイン内のフレームワークならびに/またはCDR残基の全てが、当該抗原結合ドメインが元々由来する元の生殖系列配列に存在する残基へと戻し変異される。他の実施形態では、特定の残基のみが、元の生殖細胞系列配列へと戻し変異される。例えばFR1の最初の8アミノ酸内、またはFR4の最後の8アミノ酸内に存在する変異残基のみが、またはCDR1、CDR2もしくはCDR3内に存在する変異残基のみが、戻し変異される。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDRの残基のうちの一つ以上が、異なる生殖細胞系列の配列(すなわち、抗原結合ドメインが元々由来する生殖細胞系列の配列とは異なる生殖細胞系列の配列)の対応する残基へと変異される。さらに抗原結合ドメインは、フレームワーク領域および/またはCDR領域内に二つ以上の生殖細胞系列変異の任意の組み合わせを含有してもよく、例えば特定の個々の残基は、特定の生殖細胞系列配列の対応する残基へと変異され、一方で元の生殖細胞系列配列とは異なる特定の他の残基は維持され、または異なる生殖細胞系列配列の対応する残基へと変異される。取得された時点で、一つ以上の生殖細胞系列変異を含有する抗原結合ドメインは、一つ以上の所望の特性に関して容易に検証することができる。所望の特性としては例えば結合特異性の改善、結合アフィニティの増加、アンタゴニスト性もしくはアゴニスト性の生物学的特性の改善または強化(場合によっては)、免疫原性の低下などが挙げられる。この一般的な方法で取得された一つ以上の抗原結合ドメインを含む二特異性抗原結合分子は、本発明内に包含される。
【0133】
また本発明は、一つまたは両方の抗原結合ドメインが、一つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含有する、抗原結合分子も含む。例えば本発明は、本明細書に開示されるHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、または4個以下等の保存的アミノ酸置換を有するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列を有する、抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、似た化学的特性(例えば電荷または疎水性)を伴う側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基により置換される置換である。一般的に保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能性特性を実質的に変化させない。類似の化学特性を伴う側鎖を有するアミノ酸群の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびスレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リシン、アルギニンおよびヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換の群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されるPAM250 log-尤度マトリクスにおいて正の値を有する任意の変化である。「中程度に保存的な」置換は、PAM250 log-尤度マトリクスにおいて、負ではない値を有する任意の変化である。
【0134】
本発明はまた、本明細書に開示されるHCVR、LCVRおよび/またはCDRのアミノ酸配列のいずれかと実質的に同一であるHCVR、LCVRおよび/またはCDRのアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子も含む。アミノ酸配列への言及であるとき、「実質的な同一性」または「実質的に同一」という用語は、二つのアミノ酸配列が、既定のギャップ重み付けを用いてプログラムのGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列された場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換により異なっている。二つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合には、配列同一性の百分率または類似性の程度は、置換の保存的性質に関して修正するために上向きに調整される場合がある。この調整を行う手段は、当業者に公知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.BioI.24:307-331を参照のこと。
【0135】
ポリペプチドに対する配列類似性は、配列同一性とも呼称され、典型的には配列解析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失およびその他の修飾に対して割り当てられた類似性の尺度を使用して類似の配列を合致させる。例えば、GCGソフトウェアは、GapおよびBestfitなどのプログラムを含有しており、これらプログラムをデフォルトのパラメーターで使用して、異なる生物種に由来する相同ポリペプチド、または野生型タンパク質とその変異体との間の相同ポリペプチドなどの非常に近縁なポリペプチド間の配列相同性または配列同一性を決定することができる。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列はまた、デフォルトパラメーターまたは推奨パラメーターのGCGバージョン6.1のプログラムを使用したFASTAを使用して比較されることもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリと検索配列の間の最良重複の領域のアラインメントおよび配列同一性の百分率を提供する(Pearson(2000)、上記)。本発明の配列を、異なる生物体からの多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、コンピュータープログラムのBLASTであり、特にデフォルトパラメーターを使用したBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.BioI.215:403-410、およびAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照のこと。
【0136】
Fcバリアントを含む抗体
本発明のある実施形態によると、例えば中性pHと比較して酸性pHで、FcRn受容体への抗体結合を強化する、または減弱させる一つ以上の変異を含むFcドメインを含む、抗EGFRX抗CD28二特異性抗原結合分子が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのC2またはC3領域に変異を含む抗体および抗原結合分子を含み、この場合において当該変異は、酸性環境において(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲のエンドソームにおいて)FcRnに対するFcドメインのアフィニティを増加させる。そのような変異によって、動物に投与されたときの抗体の血清半減期が延長され得る。そのようなFc改変の非限定的な例としては、例えば、
250(例えば、EまたはQ);
250および428(例えば、LまたはF);
252(例えば、L/Y/F/WまたはT)、
254(例えば、SまたはT)、ならびに/または
256(例えば、S/R/Q/E/DまたはT);
の位置での改変、または
428および/もしくは433(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)、ならびに/または
434(例えば、H/FまたはY);
の位置での改変、または
250および/もしくは428;
の位置での改変、または
307もしくは308(例えば、308F、V308F)、および/または
434の位置での改変が挙げられる。
【0137】
一つの実施形態では、改変は、
428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)の改変;
428L、259I(例えば、V259I)および308F(例えば、V308F)の改変;
433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)の改変;
252、254および256(例えば、252Y、254T、および256E)の改変;
250Qおよび428Lの改変(例えば、T250QおよびM428L);ならびに/または
307および/もしくは308の改変(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0138】
例えば、本発明は、以下からなる群から選択される変異の一つ以上のペアまたは変異群を含むFcドメインを含むEGFRxCD28二特異性抗原結合分子を含む:
250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);
252Y、254Tおよび256E(例えば、M252Y、S254TおよびT256E);
428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);ならびに
433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)。
【0139】
前述のFcドメイン変異、および本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の変異のあらゆる可能性のある組み合わせが、本発明の範囲内に予期される。
【0140】
抗体および抗原結合分子の生物学的特徴
本発明は、高いアフィニティでCD28およびEGFRに結合する抗体およびその抗原結合断片を含む。本発明はまた、治療背景および望ましい特定の標的化特性に応じて、中程度または低いアフィニティでヒトCD28および/またはEGFRに結合する抗体およびその抗原結合断片も含む。例えば一つのアームがCD28に結合し、別のアームが標的抗原(例えばEGFR)に結合する二特異性抗原結合分子の場合、標的抗原結合アームは、高いアフィニティで標的抗原に結合し、一方で抗CD28アームは中程度または低いアフィニティのみでCD28に結合することが望ましい場合がある。この様式において、標的抗原を発現する細胞に対する抗原結合分子の優先的標的化は、全般的な/非標的のCD28結合と、それに関連して生じる有害な副作用を回避しながら実現され得る。
【0141】
ある実施形態によると、本発明は、ヒトCD28に(例えば25℃で)、例えば本明細書の実施例1および13に規定されるようなアッセイフォーマットを使用して表面プラズモン共鳴により測定したときに約200nM未満のKで結合する抗体および抗体の抗原結合断片を含む。ある実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、例えば本明細書の実施例1および13に規定されるアッセイフォーマットまたは非常に類似したアッセイを使用して表面プラズモン共鳴により測定したときに、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約60nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、または約5nM未満のKで、CD28に結合する。ある実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、約5nM~約20nMのKでCD28に結合する。
【0142】
本発明はさらに、例えば本明細書の実施例1および13に規定されるアッセイフォーマットまたは非常に類似したアッセイを使用して、25℃または37℃で表面プラズモン共鳴により測定したときに、約3分を超える解離半減期(t1/2)でCD28に結合する抗体も含む。ある実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片は、例えば本明細書の実施例1および13に規定されるアッセイフォーマットまたは非常に類似したアッセイを使用して、25℃または37℃で表面プラズモン共鳴により測定したときに、約5分を超える、約10分を超える、約20分を超える、約30分を超える、約40分を超える、約50分を超える、約60分を超える、約70分を超える、約80分を超える、約90分を超える、約100分を超える、約200分を超える、約300分を超える、約400分を超える、約500分を超える、約600分を超える、約700分を超える、約800分を超える、約900分を超える、約1000分を超える、または約1200分を超えるt1/2でCD28に結合する。
【0143】
本発明は、ヒトCD28とヒトEGFRに同時に結合する能力を有する二特異性抗原結合分子(例えば二特異性抗体)を含む。ある実施形態によると、本発明の二特異性抗原結合分子は、CD28および/またはEGFRを発現する細胞と特異的に相互作用する。二特異性抗原結合分子がCD28および/またはEGFRを発現する細胞に結合する程度は、本明細書の実施例10Aおよび10Bに解説されるように蛍光活性化細胞ソーティング法(FACS)により算定することができる。例えば本発明は、CD28を発現するがEGFRを発現しないヒト細胞株(例えばJurkat細胞)、およびEGFRを発現するがCD28を発現しないヒト卵巣癌細胞株(例えばPEO1)に特異的に結合する二特異性抗原結合分子を含む。一部の実施形態では、二特異性抗原結合分子は、CD28を発現するヒトまたはカニクイザルのT細胞に、1x10-5M未満のEC50値で結合する。一部の実施形態では、二特異性抗原結合分子は、CD28を発現するヒトまたはカニクイザルのT細胞に、1x10-12M~1x10-5MのEC50値で結合する。ある実施形態では、二特異性抗原結合分子は、CD28を発現するヒトまたはカニクイザルのT細胞に、1x10-9M~1x10-5MのEC50値で結合する。ある実施形態では、二特異性抗原結合分子は、EGFRを発現する細胞株の表面に、約2.5x10-8M未満のEC50で結合する。細胞または細胞株の表面に対する二特異性抗原結合分子の結合は、実施例10Aおよび10Bに記載されるようにインビトロでのFACS結合アッセイにより測定することができる。
【0144】
本明細書に記載されるEGFRxCD28抗原結合タンパク質は、例えばバリアント免疫グロブリン鎖を含み、以下の特性のうちの一つ以上を呈してもよい:
- CD34+細胞(例えば、胎児肝臓CD34+細胞)が生着したマウス(例えば、VHマウス(Rag2null/γ null/huSirp-a/huTPO))において、ヒト腫瘍細胞(例えば、A431腫瘍細胞)の増殖および/または生存を減少させる。任意でこの場合においてEGFRxCD28は、PD1アンタゴニスト(例えばセミプリマブなどの抗PD1)と関連付けられて投与される。
- ヒトPBMCを含むマウス(例えば(NOD/SCID/γ null))において、ヒト腫瘍細胞(例えば、A431腫瘍細胞)の増殖および/または生存を減少させる(例えばこの場合において腫瘍細胞と混合されたヒトPBMCがマウスに皮下移植される)。任意でこの場合においてEGFRxCD28は、PD1アンタゴニスト(例えばセミプリマブなどの抗PD1)と関連付けられて投与される。
- ヒトPBMCを含むマウス(例えばNOD/SCID/γ null)において、ヒト腫瘍細胞(例えば、A549腫瘍細胞)の増殖および/または生存を減少させる(例えばこの場合においてヒトPBMCはマウスに腹腔内移植され、腫瘍細胞はマウスに皮下移植される)。任意でこの場合においてEGFRxCD28は、PD1アンタゴニスト(例えばセミプリマブなどの抗PD1)と関連付けられて投与される。
- Jurkat CD28+細胞に結合する。
- PE01 EGFR+細胞に結合する。および/または
- 例えば10mg/kgでカニクイザルに投与されたときに有意なサイトカイン放出(例えば、インターフェロンガンマ、IL-2、IL-6、IL-8および/またはIL-10)を生じさせない。
【0145】
本発明は、対象において腫瘍細胞を激減させる能力を有する抗EGFRおよびEGFRxCD28二特異性抗原結合分子を含む(例えば実施例3~5を参照)。例えばある実施形態によると、抗EGFRおよびEGFRxCD28二特異性抗原結合分子が提供され、この場合において治療有効用量での対象への当該抗原結合分子の単回投与は、対象において多数の腫瘍細胞の減少を生じさせる。
【0146】
本発明は、A375メラノーマ細胞、22RV1前立腺細胞、PEO1卵巣細胞、CAPAN2膵臓細胞、SW1990膵臓細胞、およびH292胚細胞を含む様々な腫瘍細胞に対する結合能力を有する抗EGFRX抗CD28二特異性抗原結合分子を含む(実施例10Aおよび10Bを参照のこと)。したがって本発明の二特異性抗体は、多数の癌症状の治療に有用であることが証明され得る。
【0147】
本発明は、様々な細胞株で抗腫瘍特異的抗原(TSA)X抗CD3二特異性抗体の細胞障害の有効性を強化する能力を有する抗EGFRX抗CD28二特異性抗原結合分子を含む(実施例11を参照のこと)。この方法を使用する場合、TSAXCD3二特異性抗体は、抗STEAP2X抗CD3、抗PSMAX抗CD3、または抗MUC16X抗CD3の二特異性物質が挙げられ得る。抗EGFRX抗CD28抗体は、例えばPD-1またはPD-L1に対する抗体などのチェックポイント阻害物質、または任意の他のチェックポイント阻害物質と組み合わされた時に有用であることも証明され得る(実施例9を参照のこと)。ある実施形態では、抗EGFRX抗CD28と、抗TSAX抗CD3二特異性物質とチェックポイント阻害物質の両方とを組み合わせることが有益であり得る。
【0148】
本発明の抗体はさらに、水素-重水素交換を使用してヒトEGFR上の特定のエピトープに結合することも証明された(実施例12を参照のこと)。特に本発明の特定の抗体は、ヒトEGFRのアミノ酸残基345-368(配列番号70)、ヒトEGFRのアミノ酸残基399-416(配列番号71)、およびヒトEGFRのアミノ酸残基133-154(配列番号72)に結合/相互作用することが見出された。
【0149】
エピトープマッピングおよび関連技術
本発明の抗原結合分子が結合するCD28またはEGFR上のエピトープは、CD28タンパク質またはEGFRタンパク質の3個以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上)のアミノ酸の単一連続配列からなる場合がある。あるいはエピトープは、CD28またはEGFRの複数の非連続的アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなる場合もある。本発明の抗体は、CD28単量体内に含有されるアミノ酸と相互作用する場合があり、またはCD28二量体の二つの異なるCD28鎖上のアミノ酸と相互作用する場合もある。本明細書において使用される場合、「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域中の特定の抗原結合部位と相互作用する抗原性決定基を指す。一つの抗原が、複数のエピトープを有する場合もある。したがって、異なる抗体が、抗原上の異なる領域に結合し、異なる生物効果を有する場合もある。エピトープは、立体構造的または直線状のいずれであってもよい。立体構造的エピトープは、直線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントに由来する空間的に並置したアミノ酸によって生成される。直線状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基によって生成されるエピトープである。特定の状況では、エピトープは、抗原上の糖、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0150】
当業者に公知の様々な技術を使用して、抗体の抗原結合ドメインが、ポリペプチドまたはタンパク質内の「一つ以上のアミノ酸と相互作用する」か否かを決定することができる。特定の抗体または抗原結合ドメインのエピトープまたは結合ドメインの決定に使用され得る技術の例としては、例えば、Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harb.,NY)に記載される定型的なクロスブロッキングアッセイ、点突然変異誘導法(例えば、アラニンスキャニング突然変異誘導法、アルギニンスキャニング突然変異誘導法など)、ペプチドブロット解析(Reineke,2004,Methods Mol
Biol 248:443-463)、プロテアーゼ保護およびペプチド切断解析が挙げられる。さらに例えば抗原のエピトープ切り出し、エピトープ抽出、および化学修飾などの方法を採用することができる(Tomer,2000,Protein Science 9:487-496)。抗体と相互作用するポリペプチド内のアミノ酸の特定に使用され得るもう1つの方法は、質量分析法により検出される水素/重水素交換法である。総称的な用語として、水素/重水素交換法は、対象タンパク質を重水素標識すること、次いで抗体を当該重水素標識タンパク質に結合させることを含む。次にタンパク質/抗体複合体を水に移し、抗体により保護された残基(重水素標識の状態を維持する)を除く全ての残基で水素-重水素交換を発生させる。抗体を解離させた後、標的タンパク質にプロテアーゼ切断と質量分析を行い、それにより重水素標識残基が明らかとなり、当該重水素標識残基が、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に相当する。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259;Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照のこと。あるいはある実施形態では、対象タンパク質が抗体に結合し、次いで水素-重水素交換が行われる。抗体を解離させた後、標的タンパク質にプロテアーゼ切断と質量分析を行い、それにより重水素標識されていない残基が明らかとなり、当該重水素標識されていない残基が、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に相当する。X線結晶構造解析を使用して、抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を特定することもできる。
【0151】
本発明は、本明細書に記載される特定の例示的な抗体(例えば、表1、3、6、9A、9Bおよび9Cに記載されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)と同じエピトープに結合する抗CD28および抗EGFR抗体をさらに含む。本発明は、本明細書に記載される特定の例示的な抗体(例えば、表1、3、6、9A、9Bおよび9Cに記載されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと、CD28および/またはEGFRへの結合に関して競合する抗CD28および/または抗EGFR抗体も含む。
【0152】
本発明はまた、ヒトCD28に特異的に結合する第一の抗原結合ドメインと、ヒトEGFRに特異的に結合する第二の抗原結合断片を含む二特異性抗原結合分子も含み、この場合において当該第一の抗原結合ドメインは、本明細書に記載される特定の例示的CD28特異的抗原結合ドメインのいずれかと同じCD28上のエピトープに結合し、および/または当該第二の抗原結合ドメインは、本明細書に記載される特定の例示的EGFR特異的抗原結合ドメインのいずれかと同じEGFR上のエピトープに結合する。
【0153】
ある実施形態では、本発明は、配列番号72に記載されるEGFRのアミノ酸残基133-154、配列番号70に記載されるEGFRのアミノ酸残基345-368、または配列番号71に記載されるEGFRのアミノ酸残基399-416のうちの一つ以上と相互作用する二特異性抗原結合分子を含む。
【0154】
同様に本発明はまた、ヒトCD28に特異的に結合する第一の抗原結合ドメインと、ヒトEGFRに特異的に結合する第二の抗原結合断片を含む二特異性抗原結合分子も含み、この場合において当該第一の抗原結合ドメインは、本明細書に記載される特定の例示的CD28特異的抗原結合ドメインのいずれかとCD28への結合に関して競合し、および/または当該第二の抗原結合ドメインは、本明細書に記載される特定の例示的EGFR特異的抗原結合ドメインのいずれかとEGFRへの結合に関して競合する。
【0155】
特定の抗原結合分子(例えば抗体)またはその抗原結合ドメインが、本発明の参照抗原結合分子と同じエピトープに結合する、または競合するか否かを、当分野に公知の定型的な方法を使用して容易に決定することができる。例えば被験抗体が本発明の参照二特異性抗原結合分子と同じCD28(またはEGFR)上のエピトープに結合するかを決定するために、当該参照二特異性分子を最初にCD28タンパク質(またはEGFRタンパク質)に結合させる。次に、CD28(またはEGFR)分子に結合する被験抗体の能力が評価される。被験抗体が、参照二特異性抗原結合分子で結合を飽和した後にCD28(またはEGFR)に結合することができた場合、当該被験抗体は、当該参照二特異性抗原結合分子とCD28(またはEGFR)への結合に関して競合しないこと、および/または抗原上の異なる部位に結合する抗体間に立体干渉があることが結論付けられ得る。他方で被験抗体が、参照二特異性抗原結合分子で結合を飽和した後にCD28(またはEGFR)分子に結合することができなかった場合、当該被験抗体は、本発明の参照二特異性抗原結合分子とCD28(またはEGFR)への結合に関して競合する。次いで追加の定型的な実験(例えば、ペプチド突然変異および結合分析)を実施して、観察された被験抗体の結合の欠落が実際に、参照二特異性抗原結合分子と同じエピトープに結合することが原因であるのか、または立体遮断(または別の現象)が、観察された結合の欠落の原因であるのかを確認することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、または当分野で利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的な抗体結合アッセイを使用して実施することができる。本発明のある実施形態によると、競合結合アッセイにおいて測定したとき、例えば1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍余剰な一方の抗原結合タンパク質が、他方の抗体の結合を、少なくとも50%、好ましくは75%、90%、またはさらには99%まで阻害する場合、二つの抗原結合タンパク質は、抗原への結合に関して競合する(例えば、Junghans et aI.,Cancer Res.1990:50:1495-1502を参照のこと)。あるいは、一方の抗原結合タンパク質の結合を減少させる、または消滅させる、抗原中の本質的に全てのアミノ酸の変異が、他方の結合も減少または消滅させる場合、二つの抗原結合タンパク質は、同じエピトープに結合する可能性がある。一方の抗原結合タンパク質の結合を減少させるアミノ酸の変異のサブセットのみが、他方の結合も減少または消滅させる場合、二つの抗原結合タンパク質は、「重複するエピトープ」を有する可能性がある。
【0156】
抗体またはその抗原結合ドメインが、参照抗原結合分子と結合に関して競合するかを決定するために、以下の2つの方向性で上述の結合法が実施される:第一の方向性では、参照抗原結合分子は、飽和条件下でCD28タンパク質(またはEGFRタンパク質)に結合され、その後、CD28(またはEGFR)分子への被験抗体の結合が評価される。第二の方向性では、被験抗体が、飽和条件下でCD28(またはEGFR)分子に結合され、その後、CD28(またはEGFR)分子への参照抗原結合分子の結合が評価される。両方の方向性で、第一の(飽和)抗原結合分子のみがCD28(またはEGFR)分子に結合することができた場合、被験抗体と参照抗体は、CD28(またはEGFR)への結合に関して競合すると結論付けられる。当業者に認識されるように、参照抗原結合分子と結合に関して競合する抗体が必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合するわけではなく、重複エピトープまたは隣接エピトープにより参照抗体の結合が立体妨害されている可能性もある。
【0157】
抗原結合ドメインの調製と二特異性分子の構築
特定の抗原に特異的な抗原結合ドメインは、当分野に公知の任意の抗体作製法により調製することができる。二つの異なる抗原(例えば、CD28とEGFR)に特異的な二つの異なる抗原結合ドメインが得られたら、定型的な方法を使用して、それらを互いに対して適切に配置し、本発明の二特異性抗原結合分子を作製することができる。(本発明の二特異性抗原結合分子の構築に使用され得る例示的な二特異性抗体形式の検討は、本明細書において別に提示される)。ある実施形態では、本発明の多特異性抗原結合分子の個々の構成要素(例えば重鎖と軽鎖)のうちの一つ以上が、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体に由来する。そうした抗体の作製方法は、当分野に周知である。例えば本発明の二特異性抗原結合分子の重鎖および/または軽鎖のうちの一つ以上は、VELOCIMMUNE(商標)技術を使用して調製することができる。VELOCIMMUNE(商標)技術(または任意の他のヒト抗体作製技術)を使用して、ヒト可変領域とマウス定常領域を有する、特定抗原(例えばCD28またはEGFR)に対して高アフィニティのキメラ抗体を最初に単離する。抗体を特徴解析し、アフィニティ、選択性、エピトープなどを含む所望の特徴について選択する。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域と置き換えて、完全ヒト重鎖および/または軽鎖を作製し、これを本発明の二特異性抗原結合分子に組み込んでもよい。
【0158】
遺伝子操作された動物を使用して、ヒト二特異性抗原結合分子を作製してもよい。例えば内因性のマウス免疫グロブリン軽鎖可変配列を再構成および発現することができない遺伝子改変マウスを使用してもよく、この場合において当該マウスは、内因性のマウスカッパ座位で、マウスカッパ定常遺伝子に動作可能に連結されたヒト免疫グロブリン配列によりコードされる一つまたは二つのヒト軽鎖可変ドメインのみを発現する。そのような遺伝子改変マウスを使用して、二つの異なるヒト軽鎖可変領域遺伝子セグメントのうちの一つに由来する可変ドメインを含む、同一軽鎖に関連付けられた二つの異なる重鎖を含む完全ヒト二特異性抗原結合分子を作製することができる。(例えば、二特異性抗原結合分子を作製するためのかかる改変マウスおよびその使用に関する詳細な検討について、米国特許出願公開第2011/0195454号を参照のこと)。
【0159】
生物学的均等
本発明は、記載される抗体のアミノ酸配列とは異なるが、CD28およびEGFRに結合する能力は保持しているアミノ酸配列を有する抗原結合分子を包含する。そのようなバリアント分子は、親配列を比較したときに、一つ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換を含むが、記載される抗原結合分子と本質的に均等な生物学的活性を呈する。同様に、本発明の抗原結合分子をコードするDNA配列は、開示される配列と比較したときに、一つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、または置換を含むが、本発明の記載される抗原結合分子と本質的に生物学的に均等な抗原結合分子をコードする配列を包含する。そのようなバリアントアミノ酸配列およびDNA配列の例は、上記に検討される。
【0160】
本発明は、本明細書に記載される例示的抗原結合分子のいずれかに対して、生物学的に均等である抗原結合分子を含む。二つの抗原結合タンパク質または抗体が、薬学的な均等物または薬学的な代替物であり、類似した実験条件下で、単回投与または複数回投与のいずれかで同モル用量で投与されたときに、その吸収の速度および範囲が有意な差を示さない場合、それら二つの抗原結合タンパク質または抗体は生物学的に均等とみなされる。いくつかの抗体で、吸収の範囲は同等であるが、吸収の速度は同等ではなく、しかし吸収速度における当該差異が意図的であり、ラベリングに反映されており、例えば慢性的使用での有効身体薬物濃度の獲得に必須ではなく、試験された特定の医薬品にとって医学的に重要ではないとみなされるために、それら抗体が生物学的に均等であるとみなされ得る場合、それら抗体は均等物、または薬学的代替物とみなされる。
【0161】
一つの実施形態では、二つの抗原結合タンパク質は、その安全性、純度および有効性において臨床的に意義のある差異が無ければ、生物学的に均等である。
【0162】
一つの実施形態では、参照産物と生物学的産物の間の一回以上の交換が、当該交換が行われなかった場合の継続治療と比較して、免疫原性における臨床的に意義のある変化をはじめとする有害作用リスクの予測される上昇、または有効性の消失を伴わずに交換され得た場合、二つの抗原結合タンパク質は、生物学的に均等である。
【0163】
一つの実施形態では、二つの抗原結合タンパク質は、使用される疾患に関して当該機序で判明している程度まで共通の作用機序により両方ともが作用する場合、生物学的に均等である。
【0164】
生物学的に均等であることは、インビボおよびインビトロの方法により実証されてもよい。生物学的に均等であることの測定方法としては例えば、(a)時間関数として血液、血漿、血清または他の体液中で抗体またはその代謝物の濃度が測定される、ヒトまたは他の哺乳動物におけるインビボ検査、(b)ヒトのインビボ生体利用効率に相関し、合理的な指標であるインビトロ検査、(c)抗体(またはその標的)の適切な急性薬理学的作用が時間関数として計測される、ヒトまたは他の哺乳動物におけるインビボ検査、および(d)抗体の安全性、有効性または生体利用効率もしくは生物学的均等性を立証する、適切に管理された臨床試験が挙げられる。
【0165】
本明細書に記載される例示的二特異性抗原結合分子の生物学的に均等なバリアントは、例えば、残基もしくは配列の様々な置換を行うこと、または生物活性に必須ではない末端もしくは内部の残基または配列を欠失させることにより構築されてもよい。例えば生物学的活性に必須ではないシステイン残基を欠失させ、または他のアミノ酸と置換させて、再生時に不必要な、または不適切な分子内ジスルフィド架橋を形成させないようにできる。他の状況では、生物学的に均等な抗体は、抗体のグリコシル化特性を改変するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を消滅または除去させる変異を含む、本明細書に記載される例示的二特異性抗原結合分子を含んでもよい。
【0166】
種選択性および種交差反応性
ある実施形態によると本発明は、ヒトのCD28には結合するが、他種由来のCD28には結合しない抗原結合分子を提供する。本発明はさらに、ヒトのEGFRには結合するが、他種由来のEGFRには結合しない抗原結合分子も提供する。本発明はさらに、ヒトCD28と、一種以上の非ヒト種由来のCD28に結合する抗原結合分子、および/またはヒトEGFRと、一種以上の非ヒト種由来のEGFRに結合する抗原結合分子も含む。
【0167】
本発明のある例示的実施形態によると、ヒトCD28および/またはヒトEGFRに結合し、場合によって、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザルもしくはチンパンジーのCD28および/またはEGFRのうちの一つ以上にも結合してもよく、または結合しなくてもよい抗原結合分子が提供される。例えば本発明の特定の例示的実施形態では、ヒトCD28とカニクイザルCD28に結合する第一の抗原結合ドメインと、ヒトEGFRに特異的に結合する第二の抗原結合ドメインを含む二特異性抗原結合分子が提供される。
【0168】
免疫複合体
本発明は、例えば治療部分など、別の部分と複合体化された(「免疫複合体」)、例えばREGN7075、REGN6321、REGN6322、REGN6323、または本明細書に記載されるCD28抗体のいずれかに由来するHCVRとペア形成される抗EGFR HCVRの任意の組み合わせなどのEGFRxCD28抗原結合タンパク質、例えば抗体または抗原結合断片を包含する。本発明のある実施形態では、抗EGFR、またはEGFRxCD28抗原結合タンパク質、例えば抗体または抗原結合断片は、本明細書に記載されるさらなる治療剤のいずれかと複合体化される。本明細書において使用される場合、「免疫複合体」という用語は、別の抗原結合タンパク質、薬剤、放射性医薬品、受容体部分、酵素、ペプチド、タンパク質もしくは治療剤に化学的に、または生物学的に連結された例えば抗体または抗原結合断片などの抗原結合タンパク質を指す。
【0169】
ある実施形態では、治療部分は、サイトカイン、化学療法剤、免疫抑制剤、または放射性同位体であってもよい。細胞障害剤としては、細胞に有害な任意の剤が挙げられる。免疫複合体の形成に適した細胞障害剤および化学療法剤の例は、当分野に公知である(例えばWO 05/103081を参照のこと)。
【0170】
投与および治療
本発明は、例えばREGN7075、REGN6321、REGN6322、REGN6323、または本明細書に記載されるCD28抗体のいずれかに由来するHCVRとペア形成される抗EGFR HCVRの任意の組み合わせなどのEGFRxCD28多特異性抗原結合タンパク質、またはその医薬組成物を、対象(例えば、過増殖性障害に罹患するヒト)に投与するための方法を提供し、当該方法は、当該対象(例えば、ヒト)の身体内に、例えば非経口的に当該抗原結合タンパク質またはその医薬組成物を導入することを含む。例えば当該方法は、シリンジの針で、当該対象の身体を突き刺すこと、および当該対象の身体内、例えば対象の静脈、動脈、腫瘍、筋組織、または皮下組織に、抗原結合タンパク質または医薬組成物を注入すること、を含む。
【0171】
EGFRxCD28、もしくは抗EGFR抗原結合タンパク質、またはその医薬組成物を投与する様式は変化し得る。投与経路としては、非経口、経口、口腔、直腸、経粘膜、腸管、経口;筋肉内、皮下、皮内、髄内、くも膜腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻内、眼内、吸入、送気、局所、皮膚、眼内、硝子体内、経皮、または動脈内が挙げられる。
【0172】
本発明はまた、本発明のEGFRxCD28もしくは抗EGFR抗原結合タンパク質、またはその医薬組成物を含む容器(例えば、キャップされたプラスチックもしくはガラスのバイアルまたはアンプル、クロマトグラフィーカラム、中空内径針またはシリンジシリンダー)も提供する。
【0173】
本発明はまた、EGFR、またはEGFRとCD28(EGFRxCD28)に特異的に結合する一つ以上の抗原結合タンパク質(例えば、抗体または抗原結合断片)、またはそれらの医薬製剤を含む注射用デバイスも提供する。注射用デバイスは、キット内にパッケージングされてもよい。注射用デバイスは、例えば筋肉内、皮下または静脈内などの非経口経路を介して対象の身体内に物質を導入するデバイスである。例えば注射用デバイスは、シリンジまたはオートインジェクター(例えば医薬製剤でプレ充填されている)であってもよく、それらは例えば、注入される液体(例えば抗体もしくは断片またはその医薬製剤を含む)を保持するためのシリンダーまたはバレル(barrel)、当該液体の注入のために皮膚、血管または他の組織を突き刺すための針、およびシリンダーから、針の内径を通して対象の身体内へと当該液体を押し出すためのプランジャーを含む。
【0174】
プレ充填されたシリンジは、組成物(例えば、多特異性抗原結合タンパク質および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物)で充填され、その後、患者/対象に当該組成物を投与する医師や介護者などのエンドユーザーに販売、または移送されるシリンジである。
【0175】
抗原結合分子の治療用途
本発明は、対象における過増殖性疾患を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、EGFRxCD28抗原結合タンパク質(例えばREGN7075、REGN6321、REGN6322、REGN6323、または本明細書に記載されるCD28抗体のいずれかに由来するHCVRとペア形成される抗EGFR HCVRの任意の組み合わせなど)の治療有効量を当該対象に、任意で例えば抗体(例えばペムブロリズマブ、ニボルマブ、および/またはセミプリマブ)またはその抗原結合断片などのPD-1および/またはPD-L1阻害剤と関連付けて投与することを含む。本発明のある実施形態では、当該方法は、対象の癌がEGFRを発現しているかを判定することを含む。そのような発現が観察された場合、EGFRxCD28および/または抗EGFR抗原結合タンパク質が投与される。例えば本発明のある実施形態では、当該方法は、当該癌の生検を採取すること(例えば、治療担当医により実施される)、および当該癌の細胞がEGFRを発現しているかを判定し、または(例えば患者または対象の代わりに)別の個人または実体に指示してそのような判定を行い、EGFR発現が存在した場合、当該対象に抗EGFRまたはEGFRxCD28抗原結合タンパク質を投与すること、を含む。本発明のある実施形態では、医師が、(当該患者または対象の代わりに)例えば病理学者などの別の他の個人または実体に指示して、生検を実施する。本発明のある実施形態では、EGFR発現は、免疫組織化学法(IHC)で、またはELISA(酵素結合免疫吸着検査法)により検証される。
【0176】
本発明は、その必要のある対象に、EGFR、またはCD28とEGFRに特異的に結合する二特異性抗原結合分子を含む治療用組成物を投与する工程を含む方法を含む。治療用組成物は、本明細書に開示される抗体または二特異性抗原結合分子のいずれかと、薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含んでもよい。
【0177】
本発明の抗体および二特異性抗原結合分子(およびそれらを含む治療用組成物)は特に、免疫応答の刺激、活性化および/または標的化が有益となる任意の疾患または障害の治療に有用である。特に本発明の抗EGFR、またはEGFRxCD28二特異性抗原結合分子は、EGFRの発現もしくは活性、またはEGFR+細胞の増殖と関連付けられる、またはそれらに介在される任意の疾患または障害の治療、予防および/または改善に使用され得る。本発明の治療方法が実現される作用機序には、例えばT細胞などのエフェクター細胞の存在下でEGFRを発現する細胞を殺傷することが含まれる。本発明の二特異性抗原結合分子を使用して阻害または殺傷され得るEGFR発現細胞としては、例えば、肺癌細胞が挙げられる。
【0178】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、ウサギ)、好ましくはEGFR発現癌の予防および/または治療の必要のあるヒトである。対象は、EGFR発現癌を有してもよく、かかる状態を発現しやすい状態にあってもよく、および/またはEGFR活性の阻害もしくは低下、またはEGFR+細胞の激減から利益を得てもよい。一つの実施形態では、対象は、過増殖性疾患を有してもよく、または発症するリスクがあってもよい。
【0179】
本明細書の目的に対する過増殖性疾患とは、異常で過剰な、および/または制御されていない細胞増殖を特徴とする疾患を指し、例えばこの場合において当該細胞はEGFRを発現する。例えば過増殖性疾患としてはEGFR発現癌が挙げられる。様々な癌がEGFRを発現する。EGFR発現癌の例としては限定されないが、食道癌、肺扁平上皮細胞癌、肺腺癌、子宮頚扁平上皮細胞癌、神経膠腫、甲状腺癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、結腸直腸癌、結腸癌、膀胱癌、直腸癌、頭頚部癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、尿路上皮癌、前立腺癌、精巣癌、乳癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、胃食道癌(例えば、胃食道腺癌)、およびメラノーマが挙げられる。したがって本発明の抗体および二特異性抗原結合分子は、様々な癌の治療に使用することができる。
【0180】
例えばこの場合において、治療される特定の対象の細胞においてEGFR発現が確認されている、EGFR発現癌であり得る固形腫瘍細胞または癌性血液細胞を特徴とする癌としては、食道癌、肺扁平上皮細胞癌、肺腺癌、子宮頚扁平上皮細胞癌、子宮内膜腺癌、膀胱尿路上皮癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、結腸直腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、皮膚癌(例えば頭頚部扁平上皮細胞癌)、脳腫瘍(例えば、多形性膠芽腫)、乳癌、胃食道癌(例えば胃食道腺癌)、前立腺癌、および/または卵巣癌が挙げられる。
【0181】
本発明の抗原結合分子はまた、例えば結腸、肺、脳、腎臓の癌および膀胱に生じる(または本明細書に検討される任意の癌に由来する)原発性および/または転移性の腫瘍などの治療にも使用され得る。ある例示的実施形態によると、本発明の二特異性抗原結合分子は、卵巣癌の治療に使用される。
【0182】
本発明はまた、対象の残存癌の治療方法も含む。本明細書において使用される場合、「残存癌」という用語は、抗癌治療後の対象における、一つ以上の癌性細胞の存在または持続を意味する。
【0183】
ある態様によると、本発明は、例えばEGFR発現と関連する過増殖性疾患(例えば肺癌)の治療のための方法を提供するものであり、当該方法は、例えば対象が他のタイプの抗癌治療に非応答性であることが示された後に、対象に、本明細書に記載される抗EGFR、またはEGFRxCD28二特異性抗原結合分子のうちの一つ以上を投与することを含む。例えば、本発明は、例えば肺癌などの過増殖性疾患を治療するための方法を含み、当該方法は、例えば肺癌などの癌に罹患する患者に対し、当該対象が標準治療を受けた1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、1週後、2週後、3週後もしくは4週後、2カ月後、4カ月後、6カ月後、8カ月後、1年、またはそれ以上の後に、当該患者または対象に、抗EGFR、またはEGFRxCD28二特異性抗原結合分子を投与することを含む。他の態様では、IgG4 Fcドメインを含む本発明の抗EGFR、またはEGFRxCD28二特異性抗原結合分子は、最初に一回以上の時点で対象に投与され(例えば、安定的な卵巣癌細胞の初期の激減を提供する)、その後、例えばIgG1 Fcドメインなどの異なるIgGドメインを含む同等の二特異性抗原結合分子が、その後の時点で投与される。本発明の抗EGFR、またはEGFRxCD28抗体は、例えば抗EGFR/抗CD3二特異性抗体などの他の二特異性抗原結合分子と併せて使用され得ることが予期される。また、本発明の二特異性抗体は、例えばPD-1を標的とする、および他を標的とするさらなる治療剤と併せて使用されることも予期される。同じ腫瘍抗原(例えばEGFR)を標的とする二つの二特異性抗体を組み合わせることも有益であり得るが、一つはT細胞上のCD3を標的とする二特異性物質で、他方はCD28のような共刺激性分子を標的とする二特異性物質を組み合わせることも有益であり得る。この組み合わせを単独で使用して腫瘍細胞殺傷を強化してもよく、またはチェックポイント阻害物質と組み合わせて使用してもよい。
【0184】
例えばEGFR発現癌などの過増殖性疾患の治療または予防のための、例えば抗体もしくは抗原結合断片などのEGFRxCD28、または抗EGFR抗原結合タンパク質の「有効」投与量または「治療有効」投与量は、治療対象における疾患の一つ以上の徴候および/または症状が、当該徴候および/もしくは症状の退行または消失を誘導することにより、または当該徴候および/もしくは症状の進行を阻害することにより、改善するために充分な抗原結合タンパク質の量である。本発明のある実施形態では、抗EGFR、またはEGFRxCD28抗原結合タンパク質の治療有効投与量は、0.1~2000mg、例えば0.1mg IV(静脈内)Q2W(二週ごと)~2000mg IV Q2Wである。投与量は、投与される対象の年齢および大きさ、標的の疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。ある実施形態では、初回投与量の後の、抗原結合タンパク質の第二の投与または継続する複数回の投与は、初回投与量とほぼ同じ、または初回投与量未満、または初回投与量よりも多くてもよい量であり得、この場合において継続投与は、2週間間隔である。
【0185】
患者に投与される抗原結合分子の投与量は、患者の年齢および大きさ、標的の疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。好ましい投与量は、典型的には体重または体表面積に従い計算される。状態の重症度に応じて、治療の頻度と期間が調節され得る。二特異性抗原結合分子を投与するための効果的な用量およびスケジュールは経験的に決定され得るが、例えば、患者の進行は定期的な評価によってモニタリングすることができ、それに応じて投与量が調整される。さらに用量の種間拡張は、当分野に公知の方法を使用して実施することができる(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0186】
本発明のある実施形態によると、抗原結合分子(例えば、抗CD28抗体、またはEGFRおよびCD28に特異的に結合する二特異性抗原結合分子)の複数回投与は、既定の時間経過で対象に投与されてもよい。本発明の本態様による方法は、本発明の抗原結合分子の複数回投与量を対象に連続的に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「連続的に投与する」とは、抗原結合分子の各投与量が、例えば所定の間隔(例えば、時間、日、週または月)をあけた異なる日など、異なる時点で対象に投与されることを意味する。本発明は、抗原結合分子の一つの初回投与量、次いで当該抗原結合分子の一つ以上の第二の投与量、および任意で次いで当該抗原結合分子の一つ以上の第三の投与量を連続的に投与することを含む方法を含む。
【0187】
「初回投与量」、「第二の投与量」、および「第三の投与量」という用語は、本発明の抗原結合分子の投与の時間的な順序を指す。したがって、「初回投与量」は、治療レジメンの開始時に投与される投与量である(また「基準投与量」とも呼称される)、「第二の投与量」は、初回投与量の後に投与される投与量であり、「第三の投与量」は、第二の投与量の後に投与される投与量である。初回投与量、第二の投与量、および第三の投与量は全て、同じ量の抗原結合分子を含有し得るが、投与頻度に関しては概して互いに異なり得る。しかしある実施形態では、初回投与量、第二の投与量、および/または第三の投与量に含有される抗原結合分子の量は、治療経過の間に(例えば適宜調整されて加減され)、互いに異なっている。特定の実施形態では、二つ以上の投与量が、治療レジメンの開始時に「負荷投与量」として投与され、その後に続く投与量が、より低い頻度ベースで投与される(例えば、「維持投与量」)。
【0188】
本発明の一つの例示的実施形態では、第二および/または第三の各投与量は、直前の投与量の1~数週後に投与される。「直前の投与量」という文言は、本明細書において使用される場合、複数回の投与の順序を意味し、当該順序のまさに次の投与量の投与が、その間の投与を伴わずに行われる前に患者に投与される抗原結合分子の投与を意味する。
【0189】
本発明の本態様による方法は、患者に、抗原結合分子(例えば抗CD28抗体、またはEGFRとCD28に特異的に結合する二特異性抗原結合分子)の第二および/または第三の投与量を任意の回数投与することを含んでもよい。例えばある実施形態では、一つの第二の投与量のみが患者に投与される。他の実施形態では、二つ以上の第二の投与量が患者に投与される。同様にある実施形態では、一つの第三の投与量のみが患者に投与される。他の実施形態では、二つ以上の第三の投与量が患者に投与される。
【0190】
複数の第二の投与量を含む実施形態では、各第二の投与量は、他の第二の投与量と同じ頻度で投与されてもよい。同様に、複数の第三の投与量を含む実施形態では、各第三の投与量は、他の第三の投与量と同じ頻度で投与されてもよい。あるいは第二および/または第三の投与量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの経過中に変化し得る。投与頻度も、臨床検査後の個々の患者のニーズに応じて、医師により治療経過中に調整されてもよい。
【0191】
診断用途
また本発明の二特異性抗体を使用して、例えば診断目的など、サンプル中のCD28もしくはEGFR、またはCD28発現細胞もしくはEGFR発現細胞を検出および/または測定してもよい。例えば、抗EGFR、またはEGFRxCD28抗体、またはその抗原結合断片を使用して、CD28またはEGFRの異常発現(例えば過剰発現、過小発現、発現の欠如など)を特徴とする状態または疾患を診断してもよい。CD28またはEGFRに関する例示的な診断アッセイは、例えば患者から取得されたサンプルを、本発明の抗体と接触させることなどを含んでもよく、この場合において当該抗体は、検出可能な標識またはレポーター分子で標識される。あるいは標識されていない抗体が、それ自体が検出可能に標識されている二次抗体と組み合わされて、診断応用に使用され得る。検出可能な標識またはレポーター分子は、例えばH、14C、32p、35S、もしくは125Iなどの放射性同位体、例えばフルオレセインイソチオシアネートもしくはローダミンなどの蛍光部分または化学発光部分、または例えばアルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼもしくはルシフェラーゼなどの酵素であり得る。サンプル中のCD28もしくはEGFRを検出または測定するために使用され得る具体的な例示的アッセイとしては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、および蛍光活性化細胞ソーティング法(FACS)が挙げられる。本発明によるCD28またはEGFRの診断アッセイにおいて使用され得るサンプルとしては、正常な状態または病的な状態で、検出可能な量のCD28タンパク質もしくはEGFRタンパク質またはその断片を含有する、患者から取得可能な任意の組織サンプルまたは液体サンプルが挙げられる。概して、健常な患者(例えば異常なCD28もしくはEGFRのレベルまたは活性と関連した疾患または状態に罹患していない患者)から取得された特定のサンプル中のCD28またはEGFRのレベルを測定して、基準もしくは標準的なCD28またはEGFRのレベルを最初に確立する。次にCD28またはEGFRの基準レベルを、CD28またはEGFRに関連する疾患または状態を有すると疑われる個体から得られたサンプルにおいて測定されたCD28レベルまたはEGFRレベルと比較してもよい。
【0192】
組み合わせ、および医薬製剤
本発明は、EGFRxCD28、および/または抗EGFR抗原結合タンパク質、ならびに一つ以上の成分を含む組成物、ならびにそれらの使用方法、ならびに当該組成物の作製方法を提供する。本発明のEGFRxCD28、または抗EGFR抗原結合タンパク質、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む医薬製剤(例えば、水を含む水性医薬製剤)は、本発明の一部である。
【0193】
本発明は、本発明の抗原結合分子を含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、適切な担体、賦形剤、および輸送、送達、忍容性などの改善をもたらす他の剤とともに製剤化されてもよい。数多くの適切な製剤が、全ての薬剤師に公知の以下の処方集に見出され得る:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、小胞(例えば、LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies社、カリフォルニア州カールスバッド)を含有する(カチオン性またはアニオン性の)脂質、DNA共役体、無水吸収ペースト、水中油および油中水のエマルション、乳剤カルボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル、ならびにカルボワックスを含有する半固形混合物が挙げられる。またPowell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照のこと。
【0194】
例えば抗体およびその抗原結合断片などのEGFRxCD28抗原結合タンパク質(例えば、REGN7075;REGN6321;REGN6322;REGN6323、または本明細書に記載されるCD28抗体のいずれかに由来するHCVRとペア形成される抗EGFR HCVRの任意の組み合わせ)の医薬製剤を調製するために、抗原結合タンパク質は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤と混合される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1984);Hardman,et
al.(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,N.Y.;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,N.Y.;Avis,et al.(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.を参照のこと。本発明のある実施形態では、医薬製剤は、滅菌されている。そのような組成物は、本発明の一部である。
【0195】
本発明の医薬製剤は、EGFRxCD28、または抗EGFR抗原結合タンパク質、ならびに例えば水、緩衝剤、保存剤、および/または洗剤をはじめとする薬学的に許容可能な担体を含む。
【0196】
本発明の範囲は、例えば例えば抗体またはその抗原結合断片などのEGFRxCD28、または抗EGFR抗原結合タンパク質を含む、例えば凍結乾燥など乾燥した組成物、または薬学的に許容可能な担体を含むが、実質的に水を含まないその医薬製剤を含む。
【0197】
様々な送達系が公知であり、本発明の医薬組成物を投与するために使用され得る。例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体介在性エンドサイトーシスなどが挙げられる(例えば、Wu et aI.,1987,J.BioI.Chem.262:4429-4432を参照のこと)。導入方法としては限定されないが、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および経口経路が挙げられる。組成物は、例えば点滴またはボーラス注射、上皮層または皮膚粘膜層(例えば口腔粘膜、直腸粘膜、および腸管粘膜など)を介した吸収など、任意の簡便な経路により投与されてもよく、他の生物活性剤とともに投与されてもよい。投与は、全身または局所であり得る。
【0198】
本明細書において検討されるように、本発明は、本明細書のEGFRxCD28もしくは抗EGFR抗原結合タンパク質、例えば抗体もしくはその抗原結合断片、または薬学的に許容可能な担体もしくは賦形剤を含むその医薬製剤のいずれかを含む容器(例えば、プラスチックまたはガラスバイアル)または注射用デバイス(例えば、シリンジ、プレ充填されたシリンジ、またはオートインジェクター)を提供する。
【0199】
本発明の医薬組成物は、標準的な針とシリンジを用いて皮下送達されてもよく、または静脈内送達されてもよい。さらに皮下送達に関しては、ペン送達デバイスが、本発明の医薬組成物の送達に容易に応用される。そのようなペン送達デバイスは、再利用可能であり、またはディスポーザブルであり得る。再利用可能なペン送達デバイスは一般的に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用している。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空になった時点で、その空のカートリッジは容易に廃棄することができ、そして医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。その後、ペン送達デバイスは再利用されることができる。ディスポーザブルのペン送達デバイスの場合、交換可能なカートリッジはない。むしろディスポーザブルなペン送達デバイスが、医薬組成物でプレ充填されて販売されており、医薬組成物はデバイス内の貯蔵部に保持されている。貯蔵部の医薬組成物が空になった時点で、デバイス全体が廃棄される。
【0200】
多くの再利用可能な、およびディスポーザブルのペン送達デバイスならびにオートインジェクター送達デバイスが、本発明の医薬組成物の皮下送達に応用される。例えば、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、英国ウッドストック)またはHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs社、イリノイ州アボットパーク)を参照のこと。
【0201】
ある状況下では、医薬組成物は、放出制御システムで送達され得る。一つの実施形態では、ポンプを使用してもよい(上記のLanger;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照のこと)。別の実施形態では、多量体性材料を使用してもよい。Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照のこと。さらに別の実施形態では、放出制御システムを組成物の標的の近傍に配置してもよい。それに伴い、全身投与量のほんの一部のみで充分となる(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115-138を参照のこと)。他の放出制御システムは、Langer,1990,Science 249:1527-1533によるレビューに検討されている。
【0202】
注射用調製物は、静脈内注射、皮下注射、皮内注射および筋肉内注射、静注点滴などのための剤形が含まれ得る。これら注射用調製物は、公的に知られている方法により調製され得る。例えば注射用調製物は、例えば注射に従来使用される無菌の水性媒体または油性媒体に、上述される抗体またはその塩を溶解、懸濁、または乳化させることによって調製され得る。注射用の水性媒体としては、例えば生理食塩水、および適切な可溶化剤と組み合わせて使用され得る他の等張性溶液がある。注射用の油性媒体も、本発明の一部である。そのような油性媒体は、可溶化剤と混合され得る。
【0203】
上述の経口使用または非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の投与量に適合した単位投与量の剤形に調製されることが有益である。そのような単位投与量の剤形としては例えば、錠剤、丸薬、カプセル、注射液(アンプル)、座薬などが挙げられる。前述の含有される抗体の量は、単位投与量の特に注射液の形態での剤形当たり、概して約0.1~約2000mgである。
【0204】
本発明は、一つ以上の追加の治療活性成分と組み合わされた、本明細書に記載される例示的な抗体および二特異性抗原結合分子のいずれかを含む組成物および治療用製剤を含み、および当該組み合わせを、その必要のある対象に投与することを含む治療方法を含む。
【0205】
本発明の抗原結合分子と混合され得る、または関連付けられて投与され得る例示的な追加治療剤としては例えば、化学療法剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチンなどの抗癌化学療法剤)、放射線療法、PD-1(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブまたはセミプリマブ(米国特許第9,987,500号を参照のこと)などの抗PD-1抗体)、CTLA-4、LAG3、TIM3、およびその他を標的とするチェックポイント阻害剤、例えばGITR、OX40、4-1BBなどの分子を標的とする共刺激性アゴニスト二価抗体、他の共刺激性CD28二特異性抗体、ならびに腫瘍関連抗原(例えばMUC16(ムチン(mucin)16)、PSMA、またはSTEAP2)と例えばCD3(MUC16xCD3、PSMAxCD3、またはSTEAP2xCD3)に結合する多特異性(例えば二特異性)抗体およびその抗原結合断片が挙げられる。CD3に結合する抗原結合ドメインを含む例示的な二特異性抗体としては限定されないが、例えばWO2017/053856A1、WO2014/047231A1、WO2018/067331A1、およびWO2018/058001A1に記載されているものが挙げられる。EGFRは、多様な癌において発現される。したがって本発明の二特異性抗EGFRxCD28抗体は、様々な癌の治療において、CD3に結合する抗原結合ドメインを含む様々な二特異性抗体と組み合わされて使用することができる。
【0206】
本発明のさらなる実施形態では、EGFRxCD28、および/またはEGFR抗原結合タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合断片と関連付けられて対象に投与されるさらなる治療剤は、Physicians’ Desk Reference 2003(Thomson Healthcare;57th edition(Nov.1,2002))に従って、または特定の剤とともに通常提供される承認済みの処方情報に従って対象に投与される。
【0207】
さらなる治療剤と関連付けて治療有効投与量のEGFRxCD28および/または抗EGFR抗原結合タンパク質を投与することによる、治療または予防の必要のある対象におけるEGFR発現癌の治療方法または予防方法は、本発明の一部である。
【0208】
「~と関連付けられる」という用語は、本発明の構成要素であるEGFRxCD28、または抗EGFR抗原結合タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合断片が、例えばセミプリマブなどのさらなる治療剤とともに、一つの組成物中に、例えば同時送達用に製剤化されることができ、または二つ以上の組成物(例えば当該構成要素を含むキット)中に別々に製剤化されることができることを示す。互いに関連付けられて投与される構成要素は、対象に、他の構成要素が投与されるときとは異なるときに投与されることができる。例えば各投与は、治療レジメンの一部として所与の期間を超える間隔で、同時ではなく(例えば別々に、または連続して)投与されてもよい。互いに関連付けられて投与される別個の構成要素は、同じ投与セッション中、本質的に同時ではあるが、連続して投与されてもよい。さらに互いに関連付けられて投与される別個の構成要素は、同じ経路で、または別の経路で対象に投与されてもよい。
【実施例0209】
以下の実施例は、当業者に、本発明の方法および組成物をどのように作製および使用するかに関する完全な開示と説明を提供するために提示されており、本発明者らが自身の発明であるとみなす範囲を限定することは意図されていない。
【0210】
実施例1:抗EGFRxCD28抗体の構築
抗EGFR抗体の作製
抗EGFR抗体は、ヒト免疫グロブリン重鎖と、ユニバーサル軽鎖可変領域をコードするDNAを含有するVELOCIMMUNE(登録商標)マウスに、EGFR発現細胞株(A431)をアジュバントとともに直接投与して免疫応答を刺激することにより取得された。すなわち、当該マウスで生成された抗体は、異なる重鎖可変領域を有するが、本質的に同一の軽鎖可変ドメインを有している。
【0211】
抗体の免疫反応は、EGFR特異的免疫アッセイによりモニタリングされた。望ましい免疫応答が獲得されたときに、米国特許第7,582,298号に記載されるように、ミエローマ細胞と融合させることなく抗原陽性B細胞から抗EGFR抗体は直接単離された。
【0212】
表1は、本発明の選択された抗EGFR抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域、およびCDRのアミノ酸配列識別子を記載する。対応する核酸配列の識別子は、表2に記載される。
表1:親EGFRモノクローナル抗体(mAb)のアミノ酸配列識別子
【表1】
表2:親EGFRの核酸配列識別子モノクローナル抗体(mAb)
【表2】
【0213】
抗CD28抗体の作製
抗CD28抗体は、マウスIgG2aのFc部分と融合されたヒトCD28タンパク質を用いて、またはCD28を発現する細胞を用いて、またはCD28をコードするDNAを用いて、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖とユニバーサル軽鎖可変領域をコードするDNAを含む操作されたマウス)を免疫化することにより取得された。
【0214】
抗体の免疫反応は、CD28特異的免疫アッセイによりモニタリングされた。望ましい免疫応答が獲得されたときに、米国特許第7,582,298号に記載されるように、抗CD28抗体は、抗原陽性B細胞から直接単離された。
【0215】
表3は、本発明の選択された抗CD28抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域、およびCDRのアミノ酸配列識別子を記載する。対応する核酸配列の識別子は、表4に記載される。
【0216】
本実施例の方法にしたがって作製された例示的な抗CD28抗体の特定の生物学的特性を、以下に記載される実施例において詳細に説明する。
表3:親CD28のアミノ酸配列識別子モノクローナル抗体(mAb)
【表3】
表4:親CD28抗体の核酸配列識別子
【表4】
【0217】
CD28とEGFRに結合する二特異性抗体(bsAb)の作製
抗EGFR特異的結合ドメインと、抗CD28特異的結合ドメインを含む二特異性抗体は、標準的な方法を使用して構築された。この場合において当該抗EGFR抗原結合ドメインと、当該抗CD28抗原結合ドメインは各々、共通LCVRとペア形成された異なる別個のHCVRを含む。一部の例では、二特異性抗体は、抗CD28抗体の重鎖、抗EGFR抗体の重鎖、および共通軽鎖を利用して構築され、以下の表5、6、7および8に示される抗体をコードするアミノ酸および核酸の配列といった構成要素を含有する。EGFRとCD28に結合する追加的な二特異性抗体は、表9A、9Bおよび9Cに示される名称を有する親モノクローナル抗体を使用して調製されてもよい。
表5:抗EGFRx抗CD28二特異性抗体のHCVRアームに対する抗体名称の要約
【表5】
表6:抗EGFRx抗CD28二特異性抗体のアミノ酸配列
【表6】
表7:抗EGFRx抗CD28二特異性抗体をコードする核酸配列
【表7】
表8.二特異性抗体bsAb7075、bsAb6321、bsAb6322、およびbsAb6323の全長免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列とヌクレオチド配列
【表8】
D=指定配列をコードするDNAのヌクレオチド配列
P=指定配列のポリペプチドのアミノ酸
数は、指定配列の配列番号を指す。
HCは、指定抗体の全長重鎖である。
LCは、指定抗体の全長軽鎖である。
【0218】
親EGFR抗体由来の一つのHCVRと、親CD28抗体由来の他のHCVRアームを含む追加的な二特異性抗体が、本明細書に記載される技術を使用して作製されてもよい。これら追加的な抗EGFR X 抗CD28二特異性抗体を作製するために使用される親EGFR抗体は、WO2014/004427に記載されるHCVR配列を有する。これら追加的な抗EGFR X 抗CD28二特異性抗体を作製するために使用される親CD28抗体は、表3に上述されるアミノ酸配列を有する。これら抗EGFRおよび抗CD28結合ドメイン(ペア形成)は、以下の表9A、9Bおよび9Cに示される。
表9A:抗EGFR x 抗CD28の追加的二特異性抗体のHCVRアームに対する親抗体名称の要約
【表9A-1】

【表9A-2】

表9B:抗EGFRx抗CD28の追加的二特異性抗体のHCVRアームに対する親抗体名称の要約
【表9B】

表9C:抗EGFR x 抗CD28の追加的二特異性抗体のHCVRアームに対する親抗体名称の要約
【表9C】
【0219】
以下の実施例に記載される二特異性抗体は、ヒト可溶性ヘテロ二量体hCD28タンパク質、およびヒトEGFRに結合することが判明している結合アームからなる(以下のBiacore結合データを参照のこと)。例示される二特異性抗体は、2014年8月28日に公開された米国特許出願公開第20140243504A1号に記載される改変(キメラ)IgG4 Fcドメインを有するよう改変された。
【0220】
本実施例に従い生成された二特異性抗体は、二つの別個の抗原結合ドメイン(すなわち結合アーム)を含む。第一の抗原結合ドメインは、抗CD28抗体に由来する重鎖可変領域(CD28-VH)を含み、第二の抗原結合ドメインは、抗EGFR抗体に由来する重鎖可変領域(EGFR-VH)を含む。抗EGFRと抗CD28の両方とも、共通軽鎖を共有する。CD28-VH/EGFR-VHのペア形成によって、T細胞上のCD28と、腫瘍細胞上のEGFRを特異的に認識する抗原結合ドメインが生成される。
【0221】
CD28とEGFRに結合する二特異性抗体の特徴解析
SPR反応速度法:反応速度法の結合パラメーターは、T-200装置およびCM5センサー(GE Healthcare社)を使用した表面プラズモン共鳴(SPR)により決定された。二重参照(double referenced)センサーグラムを、Scrubber(BioLogics Software社)を使用して1:1の結合モデルに広く適合させた。解離速度定数(kd)は、解離フェーズ中の結合反応における変化を適合させることにより決定され、結合速度定数(ka)は、異なる濃度での分析物の結合を適合させることにより決定された。Kは、kdとkaの比率から計算された。解離半減期(t1/2)は、ln2/kdとして計算されて、分単位に転換された。
【0222】
EGFR特定法:抗hFcモノクローナルAb(REGN2567)は、従来的なEDC/NHSカップリング化学法を使用してCM5センサー表面にカップリングされた。200~250RUのEGFRxCD28 Abが、この表面上に捕捉された。30nMで始まる6点の3倍希釈のhEGFR.mmHを、5分間、50uL/分の流速でこの表面上に注入した。表面は、20mM H3PO4の10秒間のパルスで再生された。解離は10分間測定された。センサーグラムが処理され、上述のように適合された。
【0223】
CD28捕捉方法の詳細:抗mFcポリクローナルAb(GE)は、従来的なEDC/NHSカップリング化学法を使用してCM5センサー表面にカップリングされた。約30RUのhCD28.mFcがこの表面上に捕捉された。90nMで始まる6点の3倍希釈のEGFRxCD28 Abを、4分間、50uL/分の流速でこの表面上に注入した。解離は5分間測定された。表面は、10mMグリシン、pH1.5を40秒間注入して再生された。センサーグラムが処理され、上述のように適合された。
【0224】
Biacore解析は、EGFRxCD28が、約9.3E-10のKでhEGFRに結合したこと、および約5.2E-08のKでhCD28に結合したことを示した(表10および11)。
表10:EGFRへの結合に関するBiacore反応速度
【表10】

表11:CD28への結合に関するBiacore反応速度
【表11】
【0225】
次にヒトT細胞含有末梢血単核球(PBMC)とPEO-1の共培養を使用して、EGFRxCD28が細胞障害活性とT細胞活性化を誘導する能力を検証した。ヒト末梢血単核球(PBMC)は、健康なドナーの白血球パックから単離された。PBMC単離は、50mL SepMate(商標)チューブをメーカーの推奨プロトコールに従い使用した密度勾配遠心分離法により行われた。簡潔に述べると、15mLのFicollPaque PLUSを、50mL SepMateチューブ内に層状にして、次いでD-PBSで1:2希釈された30mLの白血球を加えた。その後の工程は、SepMateのメーカープロトコールに従った。その後、CD3+ T細胞は、StemCell Technologies社のEasySepヒトT細胞単離キットをメーカーの推奨説明書に従い使用してPBMCから単離された。単離されたCD3+ T細胞は、1バイアル当たり50×10細胞の濃度で10% DMSO含有FBS中に凍結された。
【0226】
EGFRxCD28は、MUC16xCD3によるT細胞の腫瘍細胞殺傷の誘導能力(データは示さず)を、18.8%から71.5%へと著しく上昇させた(図1C)。このT細胞の細胞殺傷の強化と一致して、EGFRxCD28は、CD25発現とIFNγサイトカイン放出により評価した場合のT細胞の活性化も強化した(図1Dおよび1E)。注目すべきは、非標的化CD3結合対照の存在下(「シグナル1」の非存在下)でのEGFRxCD28は、T細胞の細胞傷害性にも活性化にも作用しなかったことである(図1C~1E)。
【0227】
実施例2:腫瘍細胞上の天然CD28リガンドの過剰発現は、PD-1 mAb治療との相乗効果を発揮して、インビボでのCD8 T細胞依存性の長期的な抗腫瘍活性を誘導する。
CD28と、その天然リガンドの結合は、インビボでPD-1 mAbの抗腫瘍効果を強化することができるかを判定するために、MC38腫瘍細胞を操作して、CD28の共刺激性リガンドの一つであるCD86を過剰発現させた。具体的には、共刺激性リガンドを発現するよう操作された腫瘍細胞株を作製するために、マウスCD86または空のベクター、およびピューロマイシン抵抗性遺伝子(それぞれ、(pLVX.EF1a.CD86-puroおよびpLVX.EF1a.EV-puro)をコードする、EF1aプロモーターを有するpLVXレンチウイルスプラスミドを使用して、HEK293T細胞をトランスフェクトし、ウイルス粒子の産生を促進した。次にこれを使用して、MC38(National Cancer Institute,Laboratory of Tumor Immunology & Biology)を感染させた。CD86を発現する操作細胞株は、蛍光活性化細胞ソーティング法(FACS)により単離した。ATCCの推奨条件下、0.5μg/mlのピューロマイシンの存在下で細胞を維持した。得られた細胞株は、MC38/CD86およびMC38/EVと指定した。
【0228】
MC38/CD86細胞と、抗PD-1 mAb治療の組み合わせは、腫瘍増殖を有意に阻害し(図2A)、空ベクター対照をトランスフェクトされた陰性対照のMC38(MC38-EV)と比較して、安定的な生存利益が得られたことと関連して、完全な腫瘍退縮がもたらされた(図2B)。治療経過中のCD8T細胞の枯渇は、MC38/CD86と抗PD-1 mAb治療の併用により惹起された抗腫瘍効果を完全に消滅させたことから、CD8T細胞への依存性が示された(図2C)。注目すべきは、最初にMC38/CD86を移植され、抗PD-1 mAbで治療された無腫瘍マウスは、初回の腫瘍移植から60日よりも後に移植された2回目のMC38親腫瘍を拒絶したことであり、このことからT細胞メモリー応答の存在が示唆される(図2D)。結論として、これらのデータから、CD28リガンドの構成的発現と抗PD-1治療の相乗効果によって、インビボで長期的なCD8依存性の抗腫瘍免疫がもたらされ得ることが示される。
【0229】
実施例3:抗PD-1抗体と併用されたEGFRxCD28抗体の投与は、マウスヒトの腫瘍異種移植片を制御し、排除した。Vは、ヒトCD34幹細胞が生着された。
PD-1ブロッキングAb(REGN2810(セミプリマブ)、E.Burova et al.,Characterization of the Anti-PD-1
Antibody REGN2810 and Its Antitumor Activity in Human PD-1 Knock-In Mice.Mol Cancer Ther 16,861-870(2017))と併用されたEGFRxCD28二特異性抗体の有効性が、ヒト腫瘍異種移植片モデルを使用して検証された。ヒト免疫細胞群の生着は、FACSにより実証された(図3A)。A431類表皮癌腫の腫瘍細胞(ATCCから取得)を、胎児肝臓CD34+細胞が生着したSIRPAh/h TPOh/m Rag2-/- Il2rg-/-に皮下移植した。マウスは、胎児肝臓のドナー、ヒト免疫細胞の生着頻度および性別に基づき、4群に分けられた。マウスは、移植当日(0日)に始まり、1週当たり2回、アイソタイプ対照、5mg/kgのEGFRxCD28、10mg/kgのPD-1、またはその併用が腹腔内注射で投与された。その後、実験期間中、2~3日おきに抗体注射が投与された。腫瘍は二次元(長さx幅)で測定され、腫瘍体積が計算された(長さx幅x0.5)。腫瘍が指定される腫瘍エンドポイント(腫瘍体積>2000mmまたは腫瘍潰瘍形成)に到達したときに、マウスは安楽死された。
【0230】
A431腫瘍細胞上のEGFRおよびPD-L1の発現は、FACSにより実証された(図3B)。各群は、腫瘍チャレンジの当日に始まり、以下を用いて腹腔内(IP)で治療された:
(1)10mg/kg ヒトアイソタイプ対照No.1+5mg/kg ヒトアイソタイプ対照No.2
(2)10mg/kg 抗ヒトPD-1(REGN2810、セミプリマブ)+5mg/kg ヒトアイソタイプ対照No.2
(3)5mg/kg EGFRxCD28(REGN7075)+10mg/kg ヒトアイソタイプ対照No.1、または
(4)5mg/kg EGFRxCD28(REGN7075)+10mg/kg 抗ヒトPD-1(REGN2810)。その後、実験期間中、1週当たり2回、抗体注射が投与された。腫瘍は二次元(長さx幅)で測定され、腫瘍体積が計算された(長さx幅x0.5)。腫瘍が指定される腫瘍エンドポイント(腫瘍体積>2000mmまたは腫瘍潰瘍形成)に到達したときに、マウスは安楽死された。
アイソタイプ対照No.1およびアイソタイプ対照No.2は、Fel d1に結合する陰性対照抗体である。
【0231】
各処置群における経時的なA431腫瘍のサイズを、図4に記載する。抗PD-1と併用されたEGFRxCD28は、ヒト化マウスにおいてヒト腫瘍異種移植片を相乗効果的に制御し、排除した。EGFRxCD28の単剤療法は、腫瘍の増殖を有意に遅延させることができ、抗PD-1 Abとの併用はさらに腫瘍の進行を阻害した。対照のPSMAxCD28 Abを同じ治療設定で使用した場合、抗PD1治療と併用してもしなくても、腫瘍増殖阻害は観察されなかった(図5)。A431腫瘍細胞上にPSMAは発現していないことは、FACSにより実証された(図6)。
【0232】
これらのデータから、抗PD1単剤療法では限定的な抗腫瘍応答であり、抗EGFR単剤療法では部分的な抗腫瘍応答であったが、併用療法では強力で安定的な抗腫瘍免疫応答があったことが示された。
【0233】
実施例4:単剤療法としてのEGFRxCD28抗体の投与は、ヒトPBMC細胞が生着したNSGマウスにおいて、ヒトA431腫瘍異種移植片を制御し、排除した。
A431類表皮癌腫の腫瘍細胞(ATCCから取得)を、ヒトPBMCと混合し、NSGマウス(NOD/SCID/γ null)の皮下に移植した。マウスを、予防的(0、3、7日目に治療)または治療的(3、7、10日目)のいずれかのプロトコールで処置した。
【0234】
予防的プロトコールについて、マウスは4つの処置群に分けられた。各群は、以下を用いて腹腔内(IP)処置された:
(1)5mg/kg 対照Ab EGRvIIIxCD3(bs17664D)
(2)5mg/kg EGFRxCD28(REGN7075)
(3)0.5mg/kg EGFRxCD28(REGN7075)
(4)0.05mg/kg EGFRxCD28(REGN7075)
【0235】
治療的プロトコールについて、マウスは3つの処置群に分けられた。各群は、以下を用いて処置された:
(1)5mg/kg 対照Ab EGRvIIIxCD3(bs17664D)
(2)5mg/kg EGFRxCD28(REGN7075)
(3)0.05mg/kg EGFRxCD28(REGN7075)
【0236】
腫瘍は二次元(長さx幅)で測定され、腫瘍体積が計算された(長さx幅x0.5)。腫瘍が指定される腫瘍エンドポイント(腫瘍体積>2000mmまたは腫瘍潰瘍形成)に到達したときに、マウスは安楽死された。
【0237】
各処置群で処置されたマウスの平均腫瘍サイズを、図7Aおよび7Bに要約する。これらのデータから、予防的処置では、強力な抗腫瘍応答が検証された3つ全ての投与量で観察されたが、応答は、治療的処置での完全性よりは低かった。
【0238】
実施例5:単剤療法としてのEGFRxCD28抗体の投与は、ヒトPBMC細胞が生着したNSGマウスにおいて、ヒトA549腫瘍異種移植片を制御し、排除した。
A549肺腺癌腫の腫瘍細胞(ATCCから取得)を、NSGマウス(NOD/SCID/γ null)に0日目で皮下移植した。ヒトPBMCは、3日目に腹腔内生着させた。マウスは4つの処置群に分けられた。各群は、以下を用いて腹腔内(IP)処置された:
(1)10mg/kg 対照Ab EGRvIIIxCD3(bs17664D)
(2)1mg/kg EGFRxCD28(REGN7075)
(3)10mg/kg EGFRxCD28(REGN7075)
【0239】
Ab処置は、15、22および29日目に投与された。腫瘍は二次元(長さx幅)で測定され、腫瘍体積が計算された(長さx幅x0.5)。腫瘍が指定される腫瘍エンドポイント(腫瘍体積>2000mmまたは腫瘍潰瘍形成)に到達したときに、マウスは安楽死された。
【0240】
各処置群で処置されたマウスの平均腫瘍サイズを、図8に要約する。生着腫瘍を用いた治療的処置の状況下で、有意な用量依存性の抗腫瘍応答が観察された。
【0241】
実施例6:EGFRxCD28共刺激性二特異性抗体は、CD28+およびEGFR+細胞に結合する。
フローサイトメトリー解析を利用して、Jurkat細胞(CD28+細胞)およびPEO1細胞(EGFR+細胞)に対するEGFRxCD28(REGN6323)の結合が判定された。各細胞型への抗体の結合が観察された。図1Aおよび1Bを参照のこと。
【0242】
内生的にEGFRを発現する細胞株(PEO1、EGFR)を、1μMのViolet Cell Trackerで標識し、37℃で一晩置いた。それとは別にヒトPBMC(New York Blood Center)またはカニクイザルのPBMC(Covance社、ニュージャージー州クランフォード)を、1x10細胞/mLで補充RPMI培地に播種し、37℃で一晩インキュベートして、付着マクロファージ、樹状細胞、および一部の単球を激減させることによりリンパ球を富化させた。翌日、標的細胞を、付着細胞激減ナイーブヒトPBMC(エフェクター/ターゲット細胞は4:1の比率)、および単独または固定濃度(2.5μg/ml)のTSAxCD28二特異性物質と組み合わされたTSAxCD3または非標的化CD3系二特異性物質のいずれかの連続希釈とともに37℃で96時間共インキュベートした。無酵素細胞解離緩衝液を使用して細胞培養プレートから細胞を取り出し、フローサイトメトリー(FACS)により解析した。
【0243】
FACS解析について、細胞は、viability far red cell tracker(Invitrogen社)で染色され、CD2、CD4、CD8およびCD25(BD社)に対する抗体と直接結合された。細胞計数のために、較正ビーズとともにサンプルに解析が行われた。殺傷の特異性を評価するために、標的細胞は、Violet cell tracker陽性群としてゲーティングされた。生きている標的細胞の百分率は、以下のように計算された:生細胞%=(R1/R2)*100、式中、R1=抗体存在下での生きている標的細胞%、およびR2=被験抗体の非存在下での生きている標的細胞%。T細胞活性化は、CD2/CD4T細胞またはCD2/CD8T細胞のうちの活性化(CD25)T細胞の百分率により測定された。T細胞数は、較正ビーズ当たりの生きているCD4細胞またはCD8細胞の数を計算することにより測定された。
【0244】
培地中に蓄積されたサイトカインのレベルは、メーカーのプロトコールに従い、BD cytometric Bead Array(CBA)ヒトTh1/Th2/Th17サイトカインキットを使用して解析された。
【0245】
実施例7:腫瘍内T細胞クラスターの解析。
A431腫瘍異種移植片モデルにおいて、ヒトT細胞の活性化に対し、処置が大きな影響を与えたか否かを検証するために、腫瘍内T細胞がプロファイリングされた。CITRUS(クラスターの特定、特徴解析および回帰:cluster identification,characterization,and regression)は、統計的に有意に異なるT細胞クラスターを独立して階層化する方法であり、この方法を使用して、単一処置または併用処置を行った際の応答性ヒトCD8+/CD4+ T細胞クラスターを特定した。
【0246】
インビボ実験のフローサイトメトリー解析については、腫瘍が採取され、単一細胞懸濁液が調製されて、赤血球がACK Lysis緩衝液(ThermoFisher Scientific社)を使用して溶解された。生/死細胞の識別は、Live/dead
fixable blue dead cell staining kit(ThermoFisher Scientific社)を使用して実施された。サンプルは、Symphony(BD Bioscience社)で獲得され、Cytobankソフトウェア(Cytobank社、カリフォルニア州サンタクララ)を使用して解析された。解析は、1サンプル当たり、等しい数のイベントを用いて実施された。イベントの範囲は、最も少ないイベントが取得されたサンプルにより決定された。特定のマーカーに基づきT細胞を自動的にクラスター化するため、Cytobank社のCITRUS解析を使用した。
【0247】
EGFRxCD28(REGN7075)および抗PD-1 Ab(セミプリマブ)の両方の単剤処置が、CD8+ T細胞クラスターC1を減少させた。当該クラスターは、高レベルのPD-L1とICOSを発現している(図9Aおよび9Bを参照のこと)。PD-1単独遮断は高活性化の表現型(高レベルのCD2、CD86、GITR、TIGITおよびICOS)を伴うCD8+ T細胞クラスターC2の拡張を安定的に誘導した。驚くべきことに、より多様なCD4+ T細胞クラスターが、単剤処置または併用処置に応答したことが観察された(図9Cおよび9D)。併用処置のみが、エフェクターメモリー様の表現型が増殖したクラスターC2を有意に拡張させて(高Ki67、低CD45RAおよびCCR7)、疲弊エフェクターメモリー様クラスターC3はあまり拡張させなかった(低CD38、CD45RAおよびCCR7)。CD8+ T細胞と同様に、併用処置が、高レベルのPDL1発現を伴うクラスターC1を有意に減少させた。PD-1遮断の単剤療法は、より活性化した表現型を象徴する、高レベルのCD38発現(C4)を伴うエフェクターメモリー細胞の拡張を誘導した。EGFRxCD28単剤療法は、腫瘍において、小群のナイーブ様CD4+ T細胞(C5)を維持したが、抗PD1 Ab処置を行うことでさらにプライミング/活性化される可能性がある。
【0248】
これらのデータからは、ヒト化マウスにおけるヒト異種移植片腫瘍モデルは、単剤療法として、およびPD-1遮断薬との併用でのEGFRxCD28二特異性抗体を検証するための強力なプラットフォームを提供したことが示される。高次FACS解析、および完全自動化クラスター形成識別法を使用して、ヒト免疫系を再構成されたマウスにおける、基盤免疫メカニズムの詳細解析が可能となる。PD1遮断単独で活性化表現型を有するCD8+およびCD4+ T細胞の強固な拡張の誘導が可能であるが、メモリー発達を促進し、顕著な腫瘍阻害を誘導するには不充分であった。EGFRxCD28処置と組み合わせることで、バランスの取れたT細胞の活性化状態が獲得され、強固な抗腫瘍応答が誘導され得る。
【0249】
実施例8:EGFRxCD28の単独、または抗PD1療法との併用は、カニクイザルにおいて、CD28スーパーアゴニストと比較し、全身的なT細胞の活性化は誘導しない。
EGFRxCD28二特異性物質(REGN7075)単独での忍容性を評価するために、または抗PD1抗体との併用における相乗的な薬理作用の可能性について評価するために、カニクイザルの試験を実施した。一つの処置群当たり三匹のサルに、EGFRxCD28の単独、またはREGN2810(セミプリマブ)(10mg/kg)との併用での単回投与(10mg/kg)を、静脈内点滴を介して投与した(併用群では連続点滴を与えた)。
【0250】
カニクイザル試験は、IACUCガイドラインに準拠して実施された。EGFRxCD28を用いた試験に関して、メスのカニクイザル(Macaca fascicularis)をSNBL USAで実施した(実験動物管理公認協会(Assessment and Accredation of Laboratory Animal Care、AAALAC)により認定を受け;実験動物福祉局(Office of Laboratory Animal Welfare、OLAW)により公表された動物福祉法(Animal Welfare Assurance);米国農務省(United States Department of Agriculture、USDA)および実験動物委員会(institutional animal care and use committee、IACUC)に登録される)。フローサイトメトリーに関しては、拘束され意識のある動物の末梢血管から、EDTAカリウム管に血液を採取した。100μlの全血を、指定抗体で染色した。フローサイトメトリーデータの取得は、FACS Canto IIを使用して実施された。個々の群の絶対数は、以下の式に従い、親/祖父母の群のゲーティングから導かれる相対パーセンテージ、および認証済みの血液分析器からの親/祖父母群の総数から計算された:群の絶対数(x10/μL)=(群の相対割合%x親/祖父母群の総数)/100。血清サイトカインに関しては、血液は、抗凝固剤を含む血清分離器に採取された。血清は、4℃に設定された遠心分離機で遠心分離により分離された。MSD U-Plexプラットフォームを使用して解析された(IL-2、4、6、8、10、TNFαおよびIFNγ)。
【0251】
毒性評価は、臨床観察、定性的な食物摂取、体重およびバイタルサイン(体温、心拍、パルスオキシメトリー、および呼吸数)、ならびに実験完了時の臨床的および解剖学的な病理所見に基づいた。サイトカイン解析およびFACS免疫表現型解析のために血液サンプルが採取された。単独、またはセミプリマブとの併用でのEGFRxCD28は忍容性良好であり、全ての動物が予定された剖検時まで生存した。被験物質に関連した臨床観察事項は認められなかった(データは示さず)。臓器重量の変化は認められず、最終剖検時にも肉眼的変化は何も記録されなかった(データは示さず)。さらに有意なサイトカイン放出、T細胞の周縁化または活性化も観察されなかった(図10A~10C)。対照的に、CD28「スーパーアゴニスト」の投与を受けたサルにおいて、有意なサイトカイン放出、リンパ球周縁化、およびT細胞の活性化が認められた(データは示さず)。EGFRxCD28を単独、またはセミプリマブと併用して投与されたサルには、有意な処置関連の組織学的変化は認められなかった。
【0252】
実施例9.EGFRXCD28二特異性抗体(REGN7075)と抗PD-1抗体(REGN2810)の併用療法により介在される、用量依存性の抗腫瘍応答
材料と方法
NCI-H292
【0253】
NCI-H292細胞株は、32歳の女性患者から単離されたヒト粘膜表皮肺癌の細胞株である(ATCC CRL-1848)。当該細胞株は、PSG(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびグルタミン)を補充された10%FBSを含むRPMI-1640中に維持された。
【0254】
末梢血単核球(PBMC)
ヒトPBMCは、ReachBio社、カタログ番号0500-401から取得され、ドナー番号0190205を本試験で使用した。
【0255】
腫瘍試験に使用した手順:
メスのNSGマウス(約10週齢)を本実験に使用した。マウスに、2x10個のPBMCと混合された4x10個の腫瘍細胞を皮下移植した。腫瘍増殖は、試験期間中、週に二回、ノギスによりモニタリングした。表12に指定される抗体を、単剤療法または併用療法で腹腔内注射により規定用量で、腫瘍移植後の指定日に投与した。実験は、IACUC基準に従い、マウスが潰瘍化腫瘍となったとき、または腫瘍体積が1500cmを超えたときに終了した。統計解析を表13に示す。データは、図11および12に要約される。
表12-試験デザイン
【表12】
アイソタイプ対照No.1およびアイソタイプ対照No.2は、Feld1に結合する陰性対照抗体である。
REGN7075は、抗EGFRXCD28二特異性抗体であり、bsAb7075とも呼称される。
REGN2810は、抗PD-1抗体である。

表13:32日目の統計解析:混合効果モデル(REML)解析
【表13-1】

【表13-2】
【0256】
要約
図11および12に示されるように、データから、本モデルで検証した場合、いずれか抗体を単独で使用したときに取得された結果と比較して、REGN7075(抗EGFRX抗CD28)を抗PD-1抗体(REGN2810)と組み合わせたときに最も強固な抗腫瘍応答が観察されたことが示された。
【0257】
実施例10A:REGN6323を使用したフローサイトメトリー結合力価測定
フローサイトメトリー解析を利用して、数種の癌細胞株(A375、22RV1、PEO1、CAPAN2、SW1990、H292)、ヒトおよびカニクイザルのT細胞、ならびにJurkat細胞に対する抗EGFRX抗CD28二特異性抗体の結合を判定し、標識抗ヒト二次IgG抗体を用いて検出した。簡潔に述べると、1x10細胞/ウェルを、連続希釈したEGFRxCD28二特異性抗体または対照抗体(ヒトまたはカニクイザルのCD28に対する交差反応性が無いヒト抗原に結合するヒトIgG4抗体)とともに4℃で30分間インキュベートした。当該抗体は、ヒトおよびカニクイザルのT細胞に対しては100nM~1.5pMの範囲、EGFR発現細胞に対しては133nM~2pMの範囲であった。インキュベーション後、1%ろ過FBSを含有する冷却PBSで細胞を2回洗浄し、フルオロフォア結合抗ヒト二次抗体を細胞に添加してさらに30分間インキュベートした。生/死色素を、ヒトおよびカニクイザルのT細胞インキュベーション物に添加した。被験抗体を含まず、二次抗体のみを含むウェルを対照として使用した。
【0258】
EGFR発現細胞とのインキュベーション後、細胞を洗浄し、1%ろ過FBSを含有する冷却PBS 200μL中に再懸濁させ、BD FACS Canto IIのフローサイトメトリーにより解析した。
【0259】
ヒトまたはカニクイザルのT細胞とのインキュベーション後、細胞を洗浄し、Brilliant染色緩衝液中、抗CD2、抗CD16、抗CD4、および抗CD8抗体のカクテルを用いてさらに20分間、4℃のインキュベーションで染色した。洗浄後、細胞を、1%ろ過FBSを含有する冷却PBS 200μL中に再懸濁し、生/CD2+/CD4+/CD16-または生/CD2+/CD8+/CD16-でゲーティングし、BD FACS LSR-Fortessa-X20でフローサイトメトリーにより解析した。
【0260】
フローサイトメトリー結合力価測定の結果(表14Aおよび14B、ならびに図13A、13B、および13Cを参照のこと)
ヒトT細胞およびカニクイザルT細胞の表面に対する抗EGFRX抗CD28二特異性抗体(REGN6323)の結合は、フローサイトメトリーにより上述のように検証された。結果から、REGN6323はヒトおよびカニクイザルの両方のCD4+およびCD8+T細胞に結合したこと、選択された濃度範囲内では飽和に到達しなかったことが示された(図13A)。
【0261】
EGFRを発現する他の細胞株の表面に対する抗EGFRX抗CD28二特異性抗体(REGN6323)の結合も、フローサイトメトリーにより検証された。使用された細胞株は、ヒトTリンパ球細胞の不死化株であるJurkat細胞(図13Cを参照)、上皮メラノーマ細胞株であるA375細胞、上皮前立腺癌である22RV1細胞、腹水に由来する卵巣癌細胞株であるPEO1細胞、膵臓腺癌細胞株であるCAPAN2、転移部位(脾臓)に由来する膵臓腺癌であるSW1990、肺上皮癌細胞株であるH292であった。結果から、REGN6323は、A375に、1.48E-09MのEC50で結合したことが示された。REGN6323は、22RV1に、5.54E-10MのEC50で結合した。REGN6323は、PEO1に、6.67E-10のEC50で結合した。REGN6323は、CAPAN2に、1.29E-09MのEC50で結合した。REGN6323は、SW1990に、2.96E-09MのEC50で結合した。またREGN6323は、H292細胞に、6.74E-10のEC50で結合した(図13Bを参照のこと)。
【0262】
アイソタイプ対照抗体は、ヒトまたはカニクイザルのT細胞にいずれも結合せず、そしてEGFRを発現する細胞株にも結合しなかった。
【0263】
これらのデータから、REGN6323は、EGFRを発現する様々な癌細胞株に結合する能力を有すること、したがって複数の癌症状の治療に有効であり得ることが示唆される。
【0264】
実施例10B:REGN6321およびREGN6322を使用したフローサイトメトリー結合力価測定
他の抗EGFRX抗CD28二特異性抗体も、複数の細胞株に対する結合を呈し得るかを判定するための実験も行われた。上述のプロトコールに従い、REGN6321およびREGN6322を、同様の方法で検証した。REGN6323も本試験に含めた。
【0265】
図13Cに示されるように、結果から、REGN6321、REGN6322、およびREGN6323が、前立腺癌株22RV1、ならびに卵巣癌細胞株であるPEO1という名称の細胞株に対する結合を呈することが示された。これらの結果から、これら追加の抗EGFRX抗CD28抗体も、EGFRを発現する他の癌細胞株に結合する能力を有することが示された。
表14:様々なEGFRXCD28二特異性抗体を用いたフローサイトメトリー結合試験の要約
【表14-1】

【表14-2】

NC:EC50は計算されず:NT:検証されていない抗体。
【0266】
実施例11:フローサイトメトリーにより測定される細胞毒性
抗TSA X 抗CD3抗体およびEGFRxCD28抗体の組み合わせの存在下での、様々なサイズの腫瘍特異的抗原(TSA)を発現する細胞の殺傷をモニタリングするために、22RV1(PSMA+、STEAP2+)細胞、またはPEO1(MUC16+)細胞、またはCAPAN2(MUC16+)細胞、またはSW1990(MUC16+)細胞、またはH292(MUC16+)細胞を、1μMの蛍光トラッキング色素のViolet Cell Trackerで標識した。標識後、細胞を37℃で一晩静置した。それとは別にヒトPBMCを、1x10細胞/mLで補充RPMI培地中に播種して一晩、37℃でインキュベートし、付着マクロファージ、樹状細胞および一部の単球を激減させることによりリンパ球を富化させた。翌日、標的細胞は、付着細胞激減ナイーブPBMC(エフェクター/標的細胞が4:1の比率)、連続希釈された標的化TSAxCD3二特異性抗体、または対照TSAxCD3二特異性抗体(濃度範囲は、66.7nM~0.2pM)、および固定濃度のEGFRxCD28共刺激性分子REGN6323を2.5ug/ml(16.7nM)とともに37℃で96時間、共インキュベートした。トリプシン-EDTA解離緩衝液を使用して細胞を細胞培養プレートから取り出し、FACS BD LSRFortessa-X20でフローサイトメトリーにより解析した。フローサイトメトリー解析に関して、細胞は、dead/live Near IR Reactive(Invitrogen社)色素を用いて染色された。5E05の計数ビーズを各ウェルに添加し、直後にフローサイトメトリー解析を行った。1E05のビーズを各サンプルに対して収集した。殺傷の特異性を評価するために、細胞は、live Violet標識群に対してゲーティングされた。生細胞群の割合が記録され、生存率の計算に使用された。
【0267】
T細胞活性化は、CD2、CD4、CD8、CD25に対する直接結合抗体とともに細胞をインキュベートし、総T細胞数(CD2+)またはCD8+T細胞のうちの後期活性化T細胞の百分率を記録することにより評価された。
【0268】
フローサイトメトリーを基にした細胞障害アッセイの結果(表15ならびに図14および15を参照のこと)
共刺激性EGFRxCD28二特異性抗体のREGN6323を、様々なサイズ、およびいくつかの癌適応症の細胞表面抗原を標的とするTSAxCD3抗体の細胞障害能を強化する能力について検証した。
【0269】
REGN6323は、非刺激ヒトPBMCの存在下で、PSMAまたはMUC16またはSTEAP2を標的とする様々なTSAxCD3二特異性抗体の細胞障害能の強化に成功した。標的細胞の殺傷は、TSAxCD3の単剤処置と比較して、EGFRxCD28とTSAxCD3の二特異性抗体の組み合わせの存在下で強化されており、細胞は、pMのEC50で用量依存性に殺傷された。
【0270】
観察された標的細胞の溶解の強化は、T細胞上のCD25+発現の強化と関連しており、繰り返すが、pMのEC50であった。
表15
【表15-1】

【表15-2】
【0271】
実施例12:HDX-MSによる、REGN7075、REGN6323、およびREGN6322を用いたEGFR上のエピトープマッピング
水素-重水素交換質量分析法(HDX-MS)を実施して、REGN7075(mAb12999P2 x mAb14226P2)、mAb13006P(REGN6323
EGFR アーム親)、およびmAb35193P(REGN6322 EGFR アーム親)と相互作用する上皮細胞増殖因子受容体(組み換えヒトEGFR、付録にアミノ酸配列)のアミノ酸残基を決定した。HDX-MSの概要説明は、例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259;およびEngen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A~265Aに記載されている。結果を、表16、17および18に示す。
【0272】
HDX-MS実験は、統合型MSプラットフォーム上で実施された。当該プラットフォームは、重水素の標識およびクエンチ用のLeaptec HDX PALシステム、サンプル消化とローディング用のWaters Acquity M-Class(Auxiliary solvent manager)、分析的勾配用のWaters Acquity M-Class(μBinary solvent manager)、およびペプチド質量測定用のThermo Q Exactive HF質量分析器からなる。
【0273】
標識溶液は、DO中、pD 7.0でPBS緩衝液として調製された(10mM リン酸緩衝液、140mM NaCl、および3mM KCl、25℃でpH7.4に等しい)。重水素標識については、REGN7075と1:1のモル比で予混合された、11μLの52.0μM hEGFR.mmh(Regeneron社の社内作製タンパク質
REGN355)またはhEGFR.mmh(Ag-Ab複合体)、mAb13006P2と1:0.6のモル比で予混合された、11μLの34.3μM hEGFR.mmH(Regeneron社の社内作製タンパク質 REGN355)またはhEGFR.mmH(Ag-Ab複合体)、mAb35193P2と1:0.6のモル比で予混合された、11μLの31.4μM hEGFR.mmH(Regeneron社の社内作製タンパク質 REGN355)またはhEGFR.mmH(Ag-Ab複合体)を、20℃で、44μLのDO標識溶液中、様々な時点に関し、二重でインキュベートした(例えば、非重水素化対照=0秒、重水素標識化は、5分および10分)。重水素反応は、予め冷却されたクエンチ緩衝液(0.5M TCEP-HCl、8M尿素、および1%ギ酸)55μLを各サンプルに20℃、5分間のインキュベーションで添加することにクエンチされた。次いでクエンチされたサンプルをWaters HDX Managerに注入し、オンラインのペプシン/プロテアーゼXIII消化を行った。消化ペプチドは、-9.5℃、0%~90%B(移動相A:0.5%ギ酸および4.5%アセトニトリル水溶液、移動相B:0.5%ギ酸のアセトニトリル溶液)の22分の勾配でC8カラム(1.0mm x 50mm、NovaBioassays社)により分離された。溶出されたペプチドは、LC-MS/MSまたはLC-MSモードで、Thermo Q Exactive HF質量分析器により分析された。
【0274】
非重水素化EGFRサンプルのLC-MS/MSデータを、hEGFR.mmH(REGN355)配列とそのリバース配列を含むデータベースに対して、Byonic検索エンジン(Protein Metrics社)を使用して検索した。検索パラメーターは、共通可変改変として非特異的酵素消化とヒトグリコシル化を使用したデフォルトとして設定された。次いで特定されたペプチドのリストを、HDX Workbenchソフトウェア(バージョン3.3)にインポートして、全ての重水素化サンプルからLC-MSにより検出された各ペプチドの重水素取り込みを計算した。所与のペプチドに対し、各時点での質量中心(強度-重み付け平均質量)を使用して、重水素取り込み(D)と、重水素取り込みのパーセンテージ(%D)を計算した。

重水素取り込み(D-取り込み)=平均質量(重水素化)-平均質量(非重水素化)
【数1】
【0275】
hEGFR.mmH(REGN355)に由来する総数で271個のペプチドが、hEGFR.mmH単独、またはREGN7075と複合体化されたhEGFR.mmHサンプルから特定され、これはhEGFR.mmHの84.4%の配列カバー率を表している。5%を超える、異なる百分率のD-取り込み値を呈するペプチドは全て、有意に保護されたと規定された。hEGFR.mmH上のアミノ酸345-368(LHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQEL 配列番号70)および399-416(LEIIRGRTKQHGQFSLAV 配列番号71)に対応するペプチドが、REGN7075により有意に保護されていた(hEGFR.mmH残基は、hEGFR.mmH配列に従い番号付けされている)。
【0276】
hEGFR.mmH(REGN355)に由来する総数で341個のペプチドが、hEGFR.mmH単独、またはmAb13006Pと複合体化されたhEGFR.mmHサンプルから特定され、これはhEGFR.mmHの85.8%の配列カバー率を表している。5%を超える、異なる百分率のD-取り込み値を呈するペプチドは全て、有意に保護されたと規定された。hEGFR.mmH上のアミノ酸345-368(LHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQEL 配列番号70)および399-416(LEIIRGRTKQHGQFSLAV 配列番号71)に対応するペプチドが、mAb13006Pにより有意に保護されていた(hEGFR.mmH残基は、付録のhEGFR.mmH配列に従い番号付けされている)。
【0277】
hEGFR.mmH(REGN355)に由来する総数で335個のペプチドが、hEGFR.mmH単独、またはmAb35193Pと複合体化されたhEGFR.mmHサンプルから特定され、これはhEGFR.mmHの85.5%の配列カバー率を表している。5%を超える、異なる百分率のD-取り込み値を呈するペプチドは全て、有意に保護されたと規定された。hEGFR.mmH上のアミノ酸133-154(CNVESIQWRDIVSSDFLSNMSM 配列番号72)に対応するペプチドが、mAb35193Pにより有意に保護されていた(hEGFR.mmH残基は、hEGFR.mmH配列に従い番号付けされている)。
表16:hEGFR.mmH単独と比較し、hEGFR.mmH-REGN7075複合体の形成時に、hEGFR.mmHペプチドは有意な保護を受ける
【表16】
表17:hEGFR.mmH単独と比較し、hEGFR.mmH-mAb13006P複合体の形成時に、hEGFR.mmHペプチドは有意な保護を受ける
【表17-1】

【表17-2】


表18:hEGFR.mmH単独と比較し、hEGFR.mmH-mAb35193P複合体の形成時に、hEGFR.mmHペプチドは有意な保護を受ける
【表18】
【0278】
hEGFR.mmhのアミノ酸配列
hEGFR(ECD).CPGG.MMH6(REGN355):ヒトEGFR(アミノ酸L25-A647、アクセッション番号NM_005228.4)、C末端 CPGG.mycエピトープ(E1-L10).GlyGly.myc エピトープ(E1-L10).SerGly.6XHis.SSGタグを含む(mmhタグは下線部分)
LEEKKVCQGTSNKLTQLGTFEDHFLSLQRMFNNCEVVLGNLEITYVQRNYDLSFLKTIQEVAGYVLIALNTVERIPLENLQIIRGNMYYENSYALAVLSNYDANKTGLKELPMRNLQEILHGAVRFSNNPALCNVESIQWRDIVSSDFLSNMSMDFQNHLGSCQKCDPSCPNGSCWGAGEENCQKLTKIICAQQCSGRCRGKSPSDCCHNQCAAGCTGPRESDCLVCRKFRDEATCKDTCPPLMLYNPTTYQMDVNPEGKYSFGATCVKKCPRNYVVTDHGSCVRACGADSYEMEEDGVRKCKKCEGPCRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPSIACPGGEQKLISEEDLGGEQKLISEEDLSGHHHHHHSSG(配列番号69)
【0279】
実施例13:EGFRxCD28二特異性物質、ならびにEGFRおよびCD28に対する関連親抗体の表面プラズモン共鳴から導かれた結合アフィニティおよび反応速度定数
EGFR実験手順
捕捉された抗EGFRxCD28二特異性AbへのhEGFR.mmH(REGN355)の結合に対する平衡解離定数(K値)が、Biacore4000装置を使用したリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを使用して決定された。CM5 Biacoreセンサー表面を、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(REGN2567、ロット番号 REGN2567-L1)とのアミンカップリングにより誘導体化して、精製抗EGFRxCD28二特異性Abが捕捉された。Biacore結合実験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05% v/v Surfactant P20(HBS-EPランニング緩衝液)から構成される緩衝液中で実施された。C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグを含む様々な濃度のhEGFR.mmH(REGN355)が、HBS-EPランニング緩衝液中で調製され(30nM~120pMの範囲で3倍連続希釈)、30μL/分の流速でAb捕捉表面に注入された。結合は5分間モニタリングされ、HBS-EPランニング緩衝液中のhEGFR.mmHの解離は、10分間モニタリングされた。結合反応速度実験は全て25℃で実施された。Scrubber2.0c 曲線適合ソフトウェアを使用して、リアルタイムセンサーグラムを1:1結合モデルに適合させることにより、結合(k)および解離(k)の反応速度定数が決定された。結合解離平衡定数(K)および解離半減期(t1/2)を、反応速度定数から以下のように計算した:
(M)=k/kおよびt1/2(分)=0.693/k/60
【0280】
25℃での精製EGFRxCD28 Abに対するhEGFR.mmHの結合反応速度パラメーターを、以下の表19に示す。
【0281】
CD28実験手順
捕捉されたhCD28.mFc(REGN2012)に対する精製二特異性Ab結合の平衡解離定数(K値)が、Biacore T-200装置を使用したリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを使用して決定された。CM5 Biacoreセンサー表面は、ポリクローナルウサギ抗マウスFc抗体(GE Healthcare社、カタログ番号BR100838)でアミンカップリングされることにより誘導体化され、C末端Fcタグを有する精製hCD28(hCD28.mFc、REGN2012)が捕捉された。Biacore結合実験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M
NaCl、3mM EDTA、0.05% v/v Surfactant P20(HBS-EPランニング緩衝液)から構成される緩衝液中で実施された。HBS-EP(90nM~1.1nMの範囲で3倍連続希釈)中で調製された様々な濃度の二特異性Abが、50μL/分の流速でhCD28.mFc捕捉表面に注入された。結合は4分間モニタリングされ、HBS-EP中の二特異性Abの解離は、10分間モニタリングされた。結合反応速度実験は全て25℃で実施された。Scrubber2.0c曲線適合ソフトウェアを使用して、リアルタイムセンサーグラムを1:1結合モデルに適合させることにより、結合(k)および解離(k)の反応速度定数が決定された。結合解離平衡定数(K)および解離半減期(t1/2)を、反応速度定数から以下のように計算した:
(M)=k/kおよびt1/2(分)=0.693/k/60
【0282】
25℃でのhCD28.mFcに対するEGFRxCD28 Abの結合反応速度パラメーターを、以下の表20に示す。
【0283】
表形式でのデータ要約
表19:25℃での抗EGFRxCD28二特異性mAbに対するhEGFR.mmHの結合反応速度
【表19】

表20:25℃での抗EGFRxCD28二特異性mAbに対するhCD28.mFcの結合反応速度
【表20】
【0284】
実施例14:ヒトEGFRを過剰発現するよう操作されたBaF3細胞を使用した、リガンド介在性細胞増殖アッセイにおけるEGFRxCD28二特異性抗体の特徴解析。
EGFR(ErbB1、HER1)受容体は、多細胞生物の細胞の増殖、生存、分化および遊走を制御する受容体チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーの一種である。受容体の活性化は、その可溶性リガンドの例えばEGFまたはTGFβ等の結合を介して発生し、EGFRのホモ二量体化および自己リン酸化を誘導し、最終的に例えばRas/MAPK、PLCγ1/PKC、PI3-キナーゼ/Akt、およびSTAT経路など、多数の細胞内シグナル伝達カスケードの活性化をもたらす(Wieduwilt et al.2008;Cell Mol Life Sci.May;65(10):1566-1584)。
【0285】
EGFRシグナル伝達に対する抗EGFRxCD28抗体のブロッキング効果を試験するために、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(EGFR-Genbankアクセッション番号NP_005219.2のアミノ酸M1~A1210)を安定的に過剰発現するよう遺伝子改変された操作IL-3依存性Ba/F3マウス造血細胞株を使用した増殖アッセイを展開した(Kong et al.2017;Oncotarget,Vol.8,(No.22),pp:35488-35489)。操作BaF3/hEGFR細胞は、力価測定された抗体の存在下で、リガンド(ヒトEGFまたはTGFβ)で刺激され、細胞増殖は、細胞増殖の関数としてのトリチウム取り込みにより測定された。
【0286】
実験手順
操作BaF3/hEGFR細胞は、培養培地(RPMI1640+10% FBS+ペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミン+10μg/mL マウスIL-3+0.5μg/mL ピューロマイシン)中で増殖され、24時間、IL-3を含まない培地(RPMI1640+1% FBS)中で飢餓状態に置かれ、その後、細胞増殖アッセイに使用した。簡潔に述べると、96ウェルの丸底組織培養プレートに、12.5×10^5細胞/ウェルを、15.2pM~100nMの範囲で1:3の連続希釈された抗体を、一定のリガンドのhEGF(0.5nM)またはhTGFβ(0.5nM)の存在下で添加した(抗体を含有しない対照を含む)。37℃/5% COで72時間、プレートをインキュベートし、0.3μCi/ウェルのトリチウム化チミジンを細胞に加え、プレートをさらに16時間インキュベートした。チミジン、すなわちトリチウムは、分割細胞で新たに合成されるDNAに多量に取り込まれる。インキュベーション後、細胞を96ウェルのUniFilterプレートに採取し、30μLのシンチレーション液を各ウェルに加えた。トリチウム取り込みは、Microplate Scintillation & Luminescence Counter TopCount NXT装置を使用して、1分当たりのカウント数(CPM)として測定された。細胞、抗体およびリガンドは、アッセイ培地(Opti-MEM+0.1%ウシ血清アルブミン)中で調製され、全ての連続希釈は二重で試験された。
【0287】
抗体のIC50/EC50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用した10点の用量応答性曲線での4-パラメーターロジスティック方程式から決定された。増殖の最大阻害は、以下の式により決定された:
【数2】
【0288】
結果の要約:
EGFR x CD28二特異性物質(REGN6322;REGN6323およびREGN7075)およびその対応する親EGFR抗体(mAb35193P2;mAb13006P2およびmAb12999P2)は、社内製造された比較抗体(アービタックス(Erbitux))およびアイソタイプ合致陰性対照とともに、0.5nM hEGFまたはhTGFβの存在下で検証された(表21を参照のこと)。
【0289】
0.5nM EGFの存在下:
二特異性抗体((REGN6322;REGN6323およびREGN7075)はいずれも用量依存性の増殖阻害を示さなかった。その最大阻害値は30.5~-6.8%の範囲であった(マイナス値は、増殖の上昇を意味する)。一方でmAb35193P2、mAb12999P2、および社内製造されたアービタックスは、BaF3/hEGFR細胞の増殖を阻害し、そのIC50および最大阻害値はそれぞれ、2.55nM/29.6%、19.8nM/91.8%、および6.69nM/97.6%であった。mAb13006P2は、93.2%の最大阻害を示し、IC50値は計算できなかった。陰性アイソタイプ対照抗体は、予測されたように阻害を示さなかった。
【0290】
0.5nM hTGFβの存在下:
REGN6322は、40.6%の増殖の上昇を示し、EC50は3.67nMであった。一方でREGN6323およびREGN7075は、陰性アイソタイプ対照抗体と同じように反応を示さなかった。対照的に、mAb13006P2、mAb12999P2、および社内製造のアービタックスは増殖を阻害し、IC50および最大阻害値はそれぞれ、6.55nM/97.2%、7.79nM/95.9%、および1.38nM/99.8%であった。mAb35193P2は、32.7%までの増殖の上昇を示し、EC50値は914pMであった。
表21:抗体の最大阻害および有効値
【表21-1】

【表21-2】

略語 ND:未決定;NC:計算できず;有効値は、PRISMにより決定できなかった。

実施例15:NCI-H292およびヒト初代T細胞を使用した同種T細胞活性化アッセイにおけるEGFRxCD28二特異性抗体の特徴解析
表22:試薬/抗体情報/材料:
【表22】
【0291】
背景
「シグナル1」と「シグナル2」の2つのシグナルが、適切なT細胞の活性化に必要である。「シグナル1」は、抗原提示細胞(APC)上のペプチドが結合した主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)分子に、T細胞上のT細胞受容体(TCR)が結合することにより誘導される。一方で「シグナル2」は、T細胞上の共刺激性CD28受容体が、APC上に存在するリガンドのcluster of differentiation 80または86(CD80/CD86)に会合することにより生じる(Martin et
al.1986;June et al.1987;Harding et al.1992)。ゆえにCD28シグナル伝達の活性化により、既存のTCRシグナル伝達を強化する標的化方法がもたらされる。
【0292】
EGFRxCD28二特異性抗体は、同種T細胞活性化アッセイにおいて、EGFR標的細胞とCD28T細胞を架橋することにより天然リガンドのCD28を模倣し、「シグナル2」を生じさせて、既存の「シグナル1」の存在下でT細胞の活性化を強化するように設計されている。しかしT細胞活性化は、T細胞上のプログラム細胞死タンパク質1(programmed cell death protein 1)受容体(PD-1)と、そのリガンドのAPC上のPD-L1とがライゲーションすることにより阻害され得る。PD-1のライゲーションによって、CD28およびTCR複合体へのホスファターゼのリクルートが生じ(Zou et al.2008,Francisco et al.2010,Hui et al.2017)、次いでTCRシグナル伝達とCD28刺激が減弱される。したがってEGFRxCD28二特異性抗体と併用してセミプリマブを用いてPD-1/PD-L1相互作用を遮断することにより、T細胞機能を強化し、例えば癌中の標的細胞の殺傷が促進され得る。
【0293】
実験手順
EGFRとCD28を会合させて「シグナル2」を伝達することにより、ヒト初代T細胞を活性化するEGFRxCD28二特異性抗体の能力は、IL-2の放出とT細胞の増殖により判定され、「シグナル1」としての役割を果たすのに充分な同種TCR応答を生じさせるEGFR/PD-L1ヒト肺癌細胞株(NCI-H292)の存在下で評価された。
【0294】
ヒト初代CD3 T細胞の単離
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、Precision for Medicine(ドナー555015)から、健康なドナーの白血球パックより、メーカーの推奨プロトコールに従ってEasySep(商標)Direct ヒトPBMC単離キットを使用して単離され、凍結された。CD3 T細胞は、凍結PBMCのバイアルを溶解させて単離された。ドナーPBMCは、StemCell Technologies社のEasySep(商標)Human CD3 T細胞単離キットをメーカーの推奨説明書に従い使用してCD3 T細胞を富化された。
【0295】
IL-2放出アッセイ
富化CD3 T細胞を、刺激培地中に再懸濁し、1×10細胞/ウェルの濃度で96ウェルの丸底プレートに添加された。増殖停止したNCI-H292細胞は、内因性のEGFRとPD-L1を発現しており、これを5×10細胞/ウェルの最終濃度でCD3 T細胞に添加した。続いて、REGN6322、REGN6323、REGN7075、非TAAxCD28、およびそれらのアイソタイプ合致対照(IsoC-2)を、1:4希釈で0.76pM~50nMに濃度測定し、ウェルに添加した。10点希釈の最終点は、濃度測定抗体を含まない。濃度測定抗体の添加後、セミプリマブ、またはそのアイソタイプ合致対照(IsoC-1)のいずれかの一定濃度の20nMをウェルに添加した。プレートを37℃、5%COで96時間インキュベートし、50μLの総上清を取り出し、収集された上清から5μLをIL-2の測定に使用した。アッセイ上清中のIL-2の量は、PerkinElmer社のAlphaLisaキットをメーカーのプロトコールに従い使用して決定された。IL-2測定値は、Perkin Elmer社のマルチラベルプレートリーダーのEnvisionで取得され、値はpg/mLとして報告された。全ての連続希釈が三重で検証された。
【0296】
抗体のEC50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用した10点の用量応答性曲線での4-パラメーターロジスティック方程式から決定された。最大IL-2は、検証された用量範囲内で検出された平均最大応答として与えられる。
【0297】
T細胞増殖アッセイ
37℃、5%COで96時間インキュベーションした後、上清を取り出し(IL-2放出アッセイを参照のこと)、0.25mCi/ウェルの濃度測定されたチミジンを細胞に添加し、プレートをさらに6~8時間インキュベートした。チミジン、すなわちトリチウムは、分割細胞で新たに合成されるDNAに多量に取り込まれる。インキュベーション後、細胞を96ウェルのUniFilterプレートに採取し、30μLのシンチレーション液を各ウェルに加えた。トリチウム取り込みは、Microplate Scintillation & Luminescence Counter TopCount
NXT装置を使用して、1分当たりのカウント数(CPM)として測定された。全ての連続希釈が三重で検証された。
【0298】
抗体のEC50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用した10点の用量応答性曲線での4-パラメーターロジスティック方程式から決定された。最大CPMは、検証された用量範囲内で検出された平均最大応答として与えられる。
【0299】
結果の要約(表23)
セミプリマブの存在下で、EGFRxCD28抗体処置(REGN6322、REGN6323、およびREGN7075)により、非TAAxCD28、およびIsoC-2、CD28二特異性物質の各アイソタイプ合致対照と比較して高いIL-2および増殖応答が得られた。一方でセミプリマブの非存在下でも、EGFRxCD28抗体処置は、非TAAxCD28、およびIsoC-1と比較して高いIL-2と増殖応答が得られたが、最大値は低かった。
表23:最大IL-2放出および増殖、ならびに抗体の有効値
【表23】
略語 ND:未決定;NC:計算できず;有効値は、PRISMにより決定できなかった。
【0300】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態により、その範囲は限定されない。実際に、本明細書に記載されるものに加えて本発明の様々な改変が前述の説明および添付の図面から当業者には明白である。そうした改変は、添付の請求の範囲内にあることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
単離された多特異性抗原結合分子であって、
a)37℃で表面プラズモン共鳴により測定されたときに、ヒトCD28に約2x10-7M未満のKで結合する第一の抗原結合ドメイン(D1)、および
b)37℃で表面プラズモン共鳴により測定されたときに、標的腫瘍細胞上のヒト上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に約10-8M未満のKで特異的に結合する第二の抗原結合ドメイン(D2)、を含む、単離された多特異性抗原結合分子。
(項目2)
前記二特異性抗原結合分子が、インビトロでのFACS結合アッセイにより測定されたときに、約10-5M未満のEC50でヒトT細胞の表面に結合する、項目1に記載の単離された多特異性抗原結合分子。
(項目3)
前記二特異性抗原結合分子が、インビトロでのFACS結合アッセイにより測定されたときに、約10-5M未満のEC50でカニクイザルのT細胞の表面に結合する、項目1に記載の単離された多特異性抗原結合分子。
(項目4)
前記二特異性抗原結合分子が、インビトロでのFACS結合アッセイにより測定されたときに、約2.5x10-8M未満のEC50でEGFRを発現する細胞株の表面に結合する、項目1に記載の単離された多特異性抗原結合分子。
(項目5)
前記D2ドメインが、
(a)配列番号2、30、40および50からなる群から選択される一つに記載されるアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む重鎖可変領域のHCDRを含む免疫グロブリン鎖、および/または
(b)配列番号16に記載されるアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む軽鎖可変領域のLCDRを含む免疫グロブリン鎖、を含み、または
前記D1ドメインが、
(c)配列番号10、59および63からなる群から選択される一つに記載されるアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む重鎖可変領域のHCDRを含む免疫グロブリン鎖、および/または
(d)配列番号16および67からなる群から選択される一つに記載されるアミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含む軽鎖可変領域のLCDRを含む免疫グロブリン鎖、を含む、項目1~4のいずれか1項に記載の多特異性抗原結合タンパク質。
(項目6)
前記D2ドメインが、
(a)配列番号2、24、30、38、40、48、50および58に記載されるアミノ酸配列もしくはそのバリアントに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域、および/または
(b)配列番号16および28に記載されるアミノ酸配列もしくはそのバリアントに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域を含み、
または前記D1ドメインが、
(c)配列番号10、26、59および63に記載されるアミノ酸配列もしくはそのバリアントに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域、および/または
(d)配列番号16、28および67に記載されるアミノ酸配列もしくはそのバリアントに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域を含む、項目5に記載の多特異性抗原結合タンパク質。
(項目7)
前記D2ドメインが、
(a)配列番号2、30、40または50に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、配列番号2、30、40または50に記載される前記アミノ酸配列に対してそれぞれ少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域、および/または
(b)配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、配列番号16に記載される前記アミノ酸配列に対してそれぞれ少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域を含み、
または前記D1ドメインが、
(c)配列番号10、59または63に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域の
HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、配列番号10、59または63に記載される前記アミノ酸配列に対してそれぞれ少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域、および/または
(d)配列番号16または67に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、配列番号16または67に記載される前記アミノ酸配列に対してそれぞれ少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖免疫グロブリンもしくはその可変領域を含む、項目5に記載の多特異性抗原結合タンパク質。
(項目8)
(1)アミノ酸配列:GDSIITFY(配列番号4、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、
アミノ酸配列:IYYSGIT(配列番号6、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、
アミノ酸配列:ARVSEDSYFHYGMDV(配列番号8、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、
ならびに
アミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、
アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、および
アミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むD2ドメイン、
ならびに
アミノ酸配列:GGSISSYY(配列番号12、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、
アミノ酸配列:IYYSGIT(配列番号6、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、および
アミノ酸配列:ARWGVRRDYYYYGMDV(配列番号14、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、
ならびに
アミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、
アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、および
アミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むD1ドメイン
(2)アミノ酸配列:GFTFSTFI(配列番号32、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、
アミノ酸配列:ISSNGGTI(配列番号34、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、および
アミノ酸配列:TRGGDFWSGYYPFDY(配列番号36、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、
アミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、
アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、および
アミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むD2ドメイン、
ならびに
アミノ酸配列:GGSISSYY(配列番号12、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、
アミノ酸配列:IYYSGIT(配列番号6、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、
アミノ酸配列:ARWGVRRDYYYYGMDV(配列番号14、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、
ならびに
アミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、
アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、および
アミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むD1ドメイン、
(3)アミノ酸配列:GFSFRDAW(配列番号42、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、
アミノ酸配列:IRNKIDGGTT(配列番号44、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、および
アミノ酸配列:TTDIWNYVLFYYYGLDV(配列番号46またはそのバリアント)を含むCDR-H3、
ならびに
アミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、
アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、および
アミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むD2ドメイン、
ならびに
アミノ酸配列:GGSISSYY(配列番号12、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、
アミノ酸配列:IYYSGIT(配列番号6、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、および
アミノ酸配列:ARWGVRRDYYYYGMDV(配列番号14、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、
ならびに
アミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、
アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、および
アミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むD1ドメイン、または
(4)アミノ酸配列:DDSIISYY(配列番号52、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、
アミノ酸配列:IYYSGRT(配列番号54、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、および
アミノ酸配列:ARVSEDSYYHYGMDV(配列番号56、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、
ならびに
アミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、
アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、および
アミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むD2ドメイン、
ならびに
アミノ酸配列:GGSISSYY(配列番号12、またはそのバリアント)を含むCDR-H1、
アミノ酸配列:IYYSGIT(配列番号6、またはそのバリアント)を含むCDR-H2、および
アミノ酸配列:ARWGVRRDYYYYGMDV(配列番号14、またはそのバリアント)を含むCDR-H3、
ならびに
アミノ酸配列:QSVSSSY(配列番号18、またはそのバリアント)を含むCDR-L1、
アミノ酸配列:GAS(配列番号20、またはそのバリアント)を含むCDR-L2、および
アミノ酸配列:QQYGSSPWT(配列番号22、またはそのバリアント)を含むCDR-L3、を含むD1ドメイン、を含む項目5~7のいずれか1項に記載の多特異性抗原結合タンパク質。
(項目9)
(1)配列番号2に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および
配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域を含むD2ドメイン、
ならびに
配列番号10に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および
配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域を含むD1ドメイン、
(2)配列番号30に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および
配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域を含むD2ドメイン、
ならびに
配列番号10に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および
配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域を含むD1ドメイン、
(3)配列番号40に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および
配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域を含むD2ドメイン、
ならびに
配列番号10に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および
配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域を含むD1ドメイン、または
(4)配列番号50に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および
配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域を含むD2ドメイン、
ならびに
配列番号10に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖可変領域、および
配列番号16に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖可変領域を含むD1ドメイン、を含む、EGFRおよびCD28に結合する項目5~8のいずれか1項に記載の多特異性抗原結合タンパク質。
(項目10)
(1)配列番号24に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および
配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むD2ドメイン、
ならびに
配列番号26に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および
配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むD1ドメイン、
(2)配列番号38に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および
配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むD2ドメイン、
ならびに
配列番号26に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および
配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むD1ドメイン、
(3)配列番号48に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および
配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むD2ドメイン、
ならびに
配列番号26に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および
配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むD1ドメイン、または
(4)配列番号58に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および
配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むD2ドメイン、
ならびに
配列番号26に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む重鎖、および
配列番号28に記載されるアミノ酸配列(またはそのバリアント)を含む軽鎖、を含むD1ドメイン、を含む、EGFRおよびCD28に結合する項目5~9のいずれか1項に記載の多特異性抗原結合タンパク質。
(項目11)
二特異性である、項目5~10のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目12)
ヒトEGFRおよびヒトCD28に特異的に結合する二特異性抗原結合分子であって、第一の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトCD28への結合に関して競合し、HCDR1が、配列番号12のアミノ酸配列を含み、HCDR2が配列番号6のアミノ酸配列を含み、HCDR3が配列番号14のアミノ酸配列を含み、LCDR1が配列番号18のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号20のアミノ酸配列を含み、およびLCDR3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、二特異性抗原結合分子。
(項目13)
ヒトEGFRおよびヒトCD28に特異的に結合する二特異性抗原結合分子であって、第一の抗原結合ドメインが、配列番号10、59および63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)ならびに配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトCD28への結合に関して競合する、二特異性抗原結合分子。
(項目14)
ヒトEGFRおよびヒトCD28に特異的に結合する二特異性抗原結合分子であって、第二の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトEGFRへの結合に関して競合し、HCDR1が、配列番号4、32、42および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、配列番号6、34、44および54からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR3が、配列番号8、36、46および56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR1が、配列番号18のアミノ酸配列を含み、LCDR2が配列番号20のアミノ酸配列を含み、およびLCDR3が配列番号22のアミノ酸配列を含む、二特異性抗原結合分子。
(項目15)
ヒトEGFRおよびヒトCD28に特異的に結合する二特異性抗原結合分子であって、第二の抗原結合ドメインが、配列番号2、30、40および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)ならびに配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトEGFRへの結合に関して競合する、二特異性抗原結合分子。
(項目16)
ヒトEGFRおよびヒトCD28に特異的に結合する二特異性抗原結合分子であって、第一の抗原結合ドメインが、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)および配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトCD28への結合に関して競合し、第二の抗原結合ドメインが、配列番号2、30、40および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)ならびに配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトEGFRへの結合に関して競合する、二特異性抗原結合分子。
(項目17)
(a)前記抗原結合タンパク質の免疫グロブリン鎖をコードする一つ以上のポリヌクレオチドを、宿主細胞に導入すること、
(b)前記ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で前記宿主細胞を培養すること、および
(c)任意で、前記宿主細胞から、および/または前記宿主細胞が増殖した培地から、前記抗原結合タンパク質または免疫グロブリン鎖を単離すること、を含む、項目1~16のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質を作製する方法。
(項目18)
前記宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞である、項目17に記載の方法。
(項目19)
項目17~18のいずれか1項に記載の方法の産物である、抗原結合タンパク質または免疫グロブリン鎖。
(項目20)
項目1~16および19のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質の免疫グロブリン鎖をコードするポリヌクレオチド。
(項目21)
項目20に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
(項目22)
項目1~16および19~21のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質もしくはポリヌクレオチド、および/またはベクターを含む、宿主細胞。
(項目23)
項目1~16および19のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質のうちの一つ以上を、任意でさらなる治療剤と関連付けて含有する組成物またはキット。
(項目24)
項目1~16および19のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質、ならびに薬学的に許容可能な担体または賦形剤、ならびに任意でさらなる治療剤を含む、医薬製剤。
(項目25)
PD-1阻害剤、PD-1抗体またはその抗原結合断片、PD-L1阻害剤、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片、プラチナ系抗癌化学療法剤のパクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、抗癌抗体またはその抗原結合断片であるペムブロリズマブ、ニボルマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、およびセミプリマブからなる群から選択されるさらなる治療剤と関連付けられた、項目1~16、19、23および24のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質、組成物または製剤。
(項目26)
項目1~16、19、23、24または25のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質または組成物または製剤を含む、容器または注射用デバイス。
(項目27)
項目1~16、19、23、24または25のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質、組成物または製剤を対象に投与するための方法であって、前記抗原結合タンパク質、組成物または製剤を、前記対象の身体内に注入することを含む、方法。
(項目28)
その必要のある対象において、過増殖性疾患を治療または予防する方法であって、前記対象に、項目1~16、19、23、24または25のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質または組成物または製剤の有効量を投与することを含む、方法。
(項目29)
前記過増殖性疾患が、癌であり、ならびに前記抗原結合タンパク質を投与する前に、前記癌の細胞がEGFRを発現するかを判定すること、または別の個人もしくは実体にそのような判定を実施することを指示すること、およびEGFR発現が存在した場合、前記対象にEGFRxCD28抗原結合タンパク質を投与することをさらに含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記過増殖性疾患が、EGFR発現癌である、項目28~29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記過増殖性疾患が、食道癌、肺扁平上皮細胞癌、肺腺癌、子宮頚扁平上皮細胞癌、子宮内膜腺癌、膀胱尿路上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、皮膚癌、頭頚部扁平上皮細胞癌、脳腫瘍、多形性膠芽腫、乳癌、胃食道癌、胃食道腺癌、前立腺癌または卵巣癌である癌である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記抗原結合タンパク質が、前記対象の身体内への、皮下注射、静脈内注射または筋肉内注射により投与される、項目27~31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記抗原結合分子が、1x10-12M~1x10-5MのEC50値で、CD28発現ヒトT細胞に結合する、項目1~16のいずれか1項に記載の多特異性抗原結合分子。
(項目34)
前記抗原結合分子が、1x10-9M~1x10-5MのEC50値で、CD28発現ヒトT細胞に結合する、項目1~16のいずれか1項に記載の多特異性抗原結合分子。
(項目35)
前記抗原結合分子が、ヒトCD28を発現するヒト細胞、およびカニクイザルCD28を発現するカニクイザル細胞に結合する、項目33または34に記載の多特異性抗原結合分子。
(項目36)
項目33~35のいずれか1項に記載の二特異性抗原結合分子、および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
(項目37)
項目33~35のいずれか1項に記載の二特異性抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
(項目38)
項目37に記載の核酸を含む発現ベクター。
(項目39)
項目38に記載の発現ベクターを含有する宿主細胞。
(項目40)
対象において癌の増殖を阻害する方法であって、項目33~35のいずれか1項に記載の単離二特異性抗体、または項目36に記載の医薬組成物を、前記対象に投与し、それにより前記対象において前記癌の増殖を阻害することを含む、方法。
(項目41)
第二の治療剤を投与することをさらに含む、項目28または40に記載の方法。
(項目42)
抗腫瘍剤、放射線療法、抗体薬剤結合物質、チェックポイント阻害物質、同じ腫瘍標的抗原に結合する第一の抗原結合ドメインとT細胞上のCD3に結合する第二の抗原結合ドメインを含む別の異なる二特異性抗体、異なる腫瘍標的抗原に結合する第一の抗原結合ドメインとT細胞上のCD3に結合する第二の抗原結合ドメインを含む別の異なる二特異性抗体、またはそれらの組み合わせである、項目41に記載の方法。
(項目43)
対象において癌を治療する方法であって、前記対象に、項目24または36に記載の医薬組成物を投与することを含み、それにより前記対象において前記癌を治療することを含む、方法。
(項目44)
前記癌が、EGFR発現癌である、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記EGFR発現癌が、食道癌、肺扁平上皮細胞癌、肺腺癌、子宮頚扁平上皮細胞癌、子宮内膜腺癌、膀胱尿路上皮癌、肺癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、皮膚癌、頭頚部扁平上皮細胞癌、脳腫瘍、多形性膠芽腫、乳癌、胃食道癌、胃食道腺癌、前立腺癌および卵巣癌からなる群から選択される、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記対象に、第二の治療剤を投与することをさらに含む、項目43~45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記第二の治療剤が、抗腫瘍剤、放射線療法、抗体薬剤結合物質、チェックポイント阻害物質、同じ腫瘍標的抗原に結合する第一の抗原結合ドメインとT細胞上のCD3に結合する第二の抗原結合ドメインを含む別の異なる二特異性抗体、異なる腫瘍標的抗原に結合する第一の抗原結合ドメインとT細胞上のCD3に結合する第二の抗原結合ドメインを含む別の異なる二特異性抗体、またはそれらの組み合わせである、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記チェックポイント阻害物質が、セミプリマブである、項目42または47に記載の方法。
(項目49)
前記異なる二特異性抗体が、PSMA、MUC16、およびSTEAP2からなる群から選択される異なる腫瘍抗原に結合する第一の抗原結合ドメインと、T細胞上のCD3に結合する第二の抗原結合ドメインを含む、項目42または47に記載の方法。
(項目50)
前記二特異性抗原結合分子が、配列番号72に記載されるEGFRのアミノ酸残基133-154、または配列番号70に記載されるEGFRのアミノ酸残基345-368、または配列番号71に記載されるEGFRのアミノ酸残基399-416のうちの一つ以上と相互作用する、項目1~16のいずれか1項に記載の二特異性抗原結合分子。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図15D
【配列表】
2024160318000001.app
【外国語明細書】