(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160319
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/18 20060101AFI20241106BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20241106BHJP
B60L 53/16 20190101ALN20241106BHJP
【FI】
G01N25/18 D
H01R43/00 Z
B60L53/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024132006
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2022104282の分割
【原出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 寿人
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 浩章
(72)【発明者】
【氏名】久須美 秀年
(57)【要約】
【課題】コネクタの冷却性能を適切に評価することが可能な評価方法を提供すること。
【解決手段】評価方法は、冷却液によって冷却されることが可能な一対の雄端子11を備えるコネクタにおける一対の雄端子11に対し、レファレンス治具における一対のレファレンス端子100を接続することにより、コネクタの冷却性能を評価する評価方法である。この評価方法は、一対の雄端子11に一対のレファレンス端子100を接続する接続工程と、雄端子11及びレファレンス端子100間の接触部分の抵抗を含む抵抗が0.06mΩ以上0.15mΩ以下となった状態で雄端子11及びレファレンス端子100に400Aの充電電流を30分間供給したときの雄端子11及びレファレンス端子100の温度が90℃以下であるか否かによって冷却性能を評価する評価工程と、を備える。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液によって冷却されることが可能な一対の雄端子を備えるコネクタにおける前記一対の雄端子に対し、前記一対の雄端子に接続可能な一対の端子を備える治具における前記一対の端子を接続することにより、前記コネクタの温度の上昇に関する性能を評価する評価方法であって、
前記一対の雄端子に前記一対の端子を接続する接続工程と、
前記雄端子の測定部及び前記端子の測定部間の抵抗であって前記雄端子と前記端子との接触部分の抵抗を含む抵抗が0.06mΩ以上0.15mΩ以下となった状態で前記雄端子及び前記端子に400Aの充電電流を30分間供給したときの前記雄端子及び前記端子の温度が90℃以下であるか否かによって前記性能を評価する評価工程と、を備える、評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
設備側の充電コネクタと車両側の充電インレットとの接続部は、通電時に接触抵抗に起因して発熱する。このことは、大電流(例えば400A)によって急速充電が行われる場合に特に顕著となる。このため、充電コネクタを水等の液体によって冷却可能な液冷式充電コネクタが知られている。例えば、特開2019-187035号公報には、車両インレットに接続可能なコネクタと、このコネクタを冷却液(冷却水)によって冷却可能な冷却機構と、を備える液冷式充電コネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2019-187035号公報に見られるような充電コネクタでは、冷却性能のバラツキは、充電時間に影響を与える。例えば、冷却性能が比較的低い充電コネクタでは、充電に要する時間が長くなる。よって、充電コネクタの冷却性能を適切に評価したいというニーズがある。
【0005】
本開示の目的は、コネクタの冷却性能を適切に評価することが可能な評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、充電コネクタの一対の雄端子に接続可能な一対の雌端子を備える評価治具により、充電コネクタの冷却性能(雄端子と雌端子との接続部における温度上昇の程度)を評価することが考えられる。
【0007】
ここで、評価時における雄端子及び雌端子間の接触抵抗が評価の度に変化すると、評価結果の信頼性が低下する。このため、冷却性能の評価は、前記接触抵抗が所定の範囲内である状態で行われることが望ましい。
【0008】
一方、接触抵抗は、雄端子の測定点及び雌端子の測定点に応じて変化する。このため、各端子の測定点が適切に決定されることが好ましい。本開示は、上記の観点に基づいてなされたものである。
【0009】
本開示の一局面に従った評価方法は、冷却液によって冷却されることが可能な一対の雄端子と、前記一対の雄端子を挿通させた状態で前記一対の雄端子を保持する底壁と、を備える充電コネクタにおける前記一対の雄端子に対し、前記一対の雄端子に接続可能な一対の雌端子を備える評価治具における前記一対の雌端子を接続することにより、前記充電コネクタの冷却性能を評価する評価方法であって、前記一対の雄端子に前記一対の雌端子を接続する接続工程と、前記雄端子及び前記雌端子間の接触抵抗が所定の範囲内となるように前記雄端子と前記雌端子との接続状態を調整する調整工程と、を備え、前記調整工程では、前記接触抵抗として、前記雄端子のうち前記底壁の表面から4.5mmの点と、前記雌端子のうち前記底壁の前記表面から43mmの点と、の間の抵抗が測定される。
【0010】
この評価方法では、雄端子及び雌端子間の接触抵抗の測定点が決定されているため、冷却性能の適切な評価結果を得ることが可能となる。具体的に、雄端子側の測定点は、底壁の表面から4.5mmの点である。この点では、雄端子の断面積が十分に大きいため、接触抵抗に与える影響が小さくなる。また、雌端子側の測定点は、底壁の前記表面から43mmの点である。この点は、雄端子を含む充電コネクタを設計する際における規格の影響を受ける領域と影響を受けない領域との境界付近である。このため、この点で測定した接触抵抗以下となるように充電インレットの雌端子を設計することにより、前記規格を満足する充電コネクタによって充電が行われた際、充電時における雄端子及び雌端子の温度が基準値以下に抑えられる。
【0011】
また、前記評価方法において、前記調整工程後、前記雄端子及び前記雌端子に400Aの充電電流を30分間供給したときの前記雄端子及び前記雌端子の温度が90℃以下であるか否かによって前記冷却性能を評価する評価工程をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、コネクタの冷却性能を適切に評価することが可能な評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車両に充電している状態を概略的に示す図である。
【
図3】
図2のおけるIII-III線での断面図である。
【
図4】本開示の一実施形態の評価治具の斜視図である。
【
図6】評価治具の雌端子と調整部材との関係を示す斜視図である。
【
図9】
図8とは異なる角度における雌端子の斜視図である。
【
図11】
図7におけるXI-XI線での断面図である。
【
図12】
図7におけるXII-XII線での断面図である。
【
図13】
図12に示される実線XIIIで示される範囲の拡大図である。
【
図14】雄コネクタにおける筒壁の一部が除去された状態の正面図である。
【
図17】
図15に示される雄コネクタの雄端子に評価治具の雌端子が接続された状態を示す斜視図である。
【
図19】雄端子と雌端子との接続部を中心とする各部位における温度上昇の程度を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0015】
図1は、車両に充電している状態を概略的に示す図である。より詳細には、
図1には、車両1の充電インレット2に対して、設備側電線6を介して充電スタンド等の設備7に接続された充電コネクタ5が接続された状態が示されている。なお、車両1は、例えば電気自動車である。
【0016】
充電コネクタ5は、使用者により把持される持ち手部(図示略)と、持ち手部に接続された雄コネクタ10(
図2を参照)と、を備えている。充電コネクタ5は、冷却液によって冷却される。つまり、充電コネクタ5は、いわゆる液冷式充電コネクタである。冷却液として、冷却水等が挙げられる。なお、冷却液は、設備側電線6を介して設備7及び充電コネクタ5間を流れる。
【0017】
雄コネクタ10は、車両1の充電インレット2に接続される部位である。本実施形態では、雄コネクタ10は、チャオジー(ChaoJi)規格に基づいている。
図2に示されるように、雄コネクタ10は、一対の雄端子11と、保護アース端子12と、一対の充電連結確認端子13と、一対の充電通信端子14と、雄ケーシング15と、を有している。
【0018】
各雄端子11は、円柱状に形成されている。各雄端子11は、直流電源端子である。一方の雄端子11は、正極であり、他方の雄端子11は、負極である。本実施形態では、雄端子11の外形は、9mmである。
【0019】
保護アース端子12は、一対の雄端子11間の中央部から、一対の雄端子11同士を結ぶ方向(
図2における左右方向)及び各雄端子11の軸方向の双方に直交する直交方向(
図2における上下方向)における一方側に離間した位置に配置されている。
【0020】
各充電連結確認端子13は、一方の雄端子11から前記直交方向における一方側に離間した位置に配置されている。
【0021】
各充電通信端子14は、他方の雄端子11から前記直交方向における一方側に離間した位置で、かつ、一対の雄端子11同士を結ぶ方向と平行な方向に各充電連結確認端子13から離間した位置に配置されている。
【0022】
雄ケーシング15は、各端子11~14を保持している。雄ケーシング15は、樹脂からなる。雄ケーシング15は、底壁16と、筒壁17と、を有している。
【0023】
図3に示されるように、底壁16は、各端子11~14を挿通させた状態で各端子11~14を保持している。底壁16は、平板状に形成されている。なお、
図3には、充電インレット2の雌コネクタ20の一部が示されている。
【0024】
筒壁17は、雄端子11を包囲している。筒壁17は、底壁16のうち雄端子11の周囲の部位から起立している。筒壁17は、円筒状の内周面を有している。この内周面及び雄端子11の外周面間の空間に、充電インレット2の雌コネクタ20が挿入される。
図3に示されるように、筒壁17の内径は、23mmに設定されている。
【0025】
充電インレット2は、車両1の外表面に設けられている。充電インレット2は、雌コネクタ20を備えている。雌コネクタ20は、一対の雌端子21と、雌ケーシング25と、を有している。
【0026】
各雌端子21は、雄端子11に接続可能である。
図3に示されるように、各雌端子21は、雄端子11を受け入れ可能な形状を有している。
【0027】
雌ケーシング25は、雌端子21を保持している。雌ケーシング25は、樹脂からなる。
図3に示されるように、雌ケーシング25は、対向部26と、筒部27と、を有している。
【0028】
対向部26は、雄端子11の軸方向と平行な方向(
図3における上下方向)に筒壁17と対向する部位である。対向部26の表面26Sは、平坦に形成されている。
図3に示されるように、雄端子11の軸方向と平行な方向における対向部26の表面26Sと底壁16の表面16Sとの距離は、40mmに設定されている。
【0029】
筒部27は、雌端子21を包囲する円筒状に形成されている。筒部27は、当該筒部27の中心軸が対向部26と直交する姿勢で対向部26に接続されている。筒部27の外径は、筒壁17の内径よりも小さい。充電インレット2に充電コネクタ5が接続された状態では、筒部27の先端部27aが底壁16の表面16Sに当接している。
図3に示されるように、筒部27の軸方向と平行な方向における先端部27aの長さは、6mmに設定されている。
【0030】
次に、
図4~
図13を参照しながら、評価治具50について説明する。評価治具50は、充電コネクタ5の冷却性能(雄端子11と雌端子との接続部における発熱量)を評価可能な治具である。
図4に示されるように、評価治具50は、一対の雌端子100と、電線200と、一対の圧着端子300と、一対の調整部材400と、を備えている。
【0031】
各雌端子100は、雄端子11に接続される端子である。各雌端子100は、複数の(本実施形態では8つの)接触片110と、支持部120と、雌側フランジ130と、を有している。
【0032】
各接触片110は、雄端子11に接触可能な部位である。複数の接触片110は、中心軸A(
図11~
図13を参照)まわりに間隔を置いて配置されている。具体的に、複数の接触片110は、中心軸Aまわりに等間隔に配置されている。なお、接触片110の数は、3以上8以下に設定されることが好ましく、8に設定されることが特に好ましい。各接触片110は、可撓片112と、接触部114と、を有している。
【0033】
可撓片112は、中心軸Aと平行な方向に沿って延びる形状を有している。可撓片112は、中心軸Aを有する円筒の一部を構成している。つまり、
図12及び
図13に示される断面において、可撓片112の外周面は、円弧状である。前記円筒の周方向に隣接する一対の可撓片112間には、スリット112Sが設けられている。
【0034】
中心軸Aと平行な方向における可撓片112の長さL1(
図7を参照)は、前記円筒の外径の2倍以上に設定されている。本実施形態では、前記円筒の外径φ2(
図11を参照)は、17mmであり、可撓片112の長さL1は、35mmである。前記円筒の内径φ1(
図11を参照)は、13mmである。つまり、可撓片112の厚みは、2mmである。
【0035】
可撓片112は、当該可撓片112と支持部120との接続部である基端部に対して当該可撓片112の先端部112aが前記円筒の径方向に変位するように弾性変形可能である。すなわち、複数の接触片110(前記円筒)は、縮径可能である。
【0036】
図12及び
図13に示されるように、可撓片112は、前記円筒の周方向に当該可撓片112に隣接する可撓片112と対向する対向面112bを有している。前記周方向に互いに対向する一対の対向面112bは、互いに平行である。一対の対向面112b間の間隔は、1mmである。
【0037】
接触部114は、可撓片112の内面から中心軸Aに向けて突出する形状を有している。接触部114は、可撓片112の内面のうち中心軸Aと平行な方向に先端部112aから離間した部位に接続されている。すなわち、可撓片112の先端部112aは、中心軸
Aと平行な方向に支持部120から離間する向き(
図11における下向き)に接触部114から突出する突出部を構成している。
【0038】
接触部114は、前記径方向における内向きに凸となるように湾曲する形状を有している。
図13に示されるように、可撓片112と接触部114との境界部113は、湾曲する形状を有している。接触部114の頂部114cの曲率は、境界部113の曲率よりも小さい。本実施形態では、頂部114cの曲率半径は、1mmである。境界部113の曲率半径は、例えば0.5mmである。
【0039】
図13に示されるように、特定の頂部114cと中心軸Aとを結ぶ直線と、前記特定の頂部114cに隣接する頂部114cと中心軸Aとを結ぶ直線と、のなす角は、45度に設定されている。前記周方向における接触部114の一方側の端部における接線と、前記周方向における接触部114の他方側の端部における接線と、のなす角は、30度に設定されている。
【0040】
接触部114は、中心軸Aと平行な方向に沿って延びる形状を有している。
図10及び
図11に示されるように、接触部114は、接触縁部114aと、連結部114bと、を有している。
【0041】
接触縁部114aは、中心軸Aと平行な方向に沿って延びる形状を有している。接触縁部114aの長さL3は、4.7mmに設定されている。
【0042】
連結部114bは、接触縁部114aと可撓片112の内面とを連結している。連結部114bは、中心軸Aと平行な方向に接触縁部114aから離間するにしたがって次第に可撓片112の内面に近づくように傾斜する形状を有している。連結部114bと可撓片112の内面との境界部の曲率半径は、0.5mmである。連結部114bと接触縁部114aとの境界部の曲率半径は、1.5mmである。
【0043】
支持部120は、複数の接触片110を支持している。本実施形態では、支持部120は、中心軸Aを中心とする円筒状に形成されている。支持部120の外周面は、各可撓片112の外周面と連続的につながっている。つまり、支持部120の外径は、複数の可撓片112により構成される前記円筒の外径と同じである。
【0044】
図11に示されるように、支持部120の厚みは、各可撓片112の厚みと同じである。
図7に示されるように、中心軸A方向における支持部120の長さL2は、各可撓片112の長さL1よりも小さく設定されている。具体的に、支持部120の長さL2は、22mmである。なお、支持部120は、円柱状や四角筒状等に形成されてもよい。
【0045】
雌側フランジ130は、支持部120の外周面から支持部120の径方向の外向きに張り出す形状を有している。雌側フランジ130は、平坦に形成されている。中心軸Aと平行な方向における雌側フランジ130の長さは、支持部120のそれと同じ(本実施形態では22mm)に設定されている。
【0046】
雌側フランジ130には、挿通孔130hが設けられている。挿通孔130hの径は、10.5mmである。中心軸A及び挿通孔130hの中心間の距離は、21mmである。
【0047】
電線200は、一対の雌端子100同士を接続するためのものである。電線200は、銅又は銀からなる。電線200の断面積は、70mm
2以上95mm
2以下に設定されることが好ましい。本実施形態では、電線200の断面積は、95mm
2に設定されている。電線200の長さは、2m以上に設定される。この理由を
図19を参照しながら説明す
る。
【0048】
図19には、雄端子11が雌端子21に接続された状態において、400Aの電流が30分間供給されたときにおける各端子及び各電線の温度が示されている。なお、
図19において、雄端子11と雌端子21との接続部の領域Rは、最も高温になる領域である。
【0049】
図19に示されるように、車両側電線3の断面積が95mm
2である場合、雄端子11から100cmまでの部分が水冷されているとき、及び、前記部分が水冷されていないときのいずれにおいても、車両側電線3のうち雌端子21から100cm離間した部位の温度が安定する(雄端子11と雌端子21との接続部における発熱の影響が実質的に無視可能となる)ことが確認された。
【0050】
また、前記部分が水冷されているとき、車両側電線3の断面積が70mm2及び95mm2のいずれにおいても、車両側電線3のうち雌端子21から100cm離間した部位の温度が安定する(雄端子11と雌端子21との接続部における発熱の影響が実質的に無視可能となる)ことが確認された。
【0051】
以上の結果より、電線200の長さを2m以上とすることにより、一方の雄端子11と一方の雌端子21との接続部で発生した熱が、電線を介して他方の雄端子11及び他方の雌端子21の接続部に与える影響が無視可能となることが分かる。よって、本実施形態では、電線200の長さは、2m以上に設定されている。
【0052】
各圧着端子300は、電線200の端部210に接続されている。各圧着端子300は、圧着部310と、圧着側フランジ320と、を有している。
【0053】
圧着部310は、電線200の端部210を圧着している。
【0054】
圧着側フランジ320は、圧着部310に接続されている。圧着側フランジ320は、平坦に形成されている。圧着側フランジ320には、挿通孔(図示略)が設けられている。圧着側フランジ320は、ボルトB及びナット(図示略)によって雌側フランジ130に固定されている。ボルトBは、雌側フランジ130の挿通孔130h及び圧着側フランジ320の挿通孔に挿通されている。
【0055】
調整部材400は、雌端子100と雄端子11との接触抵抗を調整可能である。具体的に、調整部材400は、各雌端子100を縮径させる外力を当該雌端子100に付与することが可能である。調整部材400は、環状バンド410と、金属バンド420と、調整部430と、を有している。
【0056】
環状バンド410は、複数の接触片110の周囲に取り付けられている。環状バンド410は、複数の接触片110の全周を包囲している。環状バンド410は、電気絶縁性及び熱絶縁性を有する材料(樹脂等)からなる。中心軸Aと平行な方向における環状バンド410の長さは、同方向におけるスリット112Sの長さよりも小さい。
【0057】
金属バンド420は、環状バンド410の周囲に巻き付けられている。金属バンド420は、雌端子100の複数の接触片110を縮径させる外力を当該複数の接触片110に対して付与可能である。
【0058】
調整部430は、金属バンド420による複数の接触片110の締付け力(複数の接触片110を縮径させる外力)を調整可能である。具体的に、調整部430は、金属バンド420の径を調整することによって前記締付け力を調整する。調整部430は、金属バン
ド420の径を調整可能なネジを有している。
【0059】
次に、評価治具50を用いた充電コネクタ5の冷却性能の評価方法について説明する。具体的には、雄コネクタ10における一対の雄端子11に対し、評価治具50の一対の雌端子100を接続することによって、充電コネクタ5の冷却性能が評価される。この評価方法は、除去工程と、接続工程と、調整工程と、評価工程と、を備えている。
【0060】
除去工程は、雄ケーシング15の各筒壁17の一部を除去する工程である。具体的に、
図13~
図15に示されるように、除去工程では、調整部430による前記外力の調整操作が可能となる操作空間17Sが雄端子11の周囲に形成されるように、各筒壁17の一部が除去される。これにより、各雄端子11の一部が露出する。このため、除去工程では、雄端子11同士、あるいは、雄端子11と他の端子12~14との短絡が生じるのを抑制可能な部位、すなわち、筒壁17のうち一対の筒壁17同士が互いに対向する部位とは異なる部位が除去される。本実施形態では、筒壁17のうち雄端子11保護アース端子12とを結ぶ方向における雄端子11の外側の部位が除去される。
【0061】
接続工程は、一対の雄端子11に評価治具50の一対の雌端子100を接続する工程である。接続工程では、各雌端子100の複数の接触片110の周囲に環状バンド410及び金属バンド420が取り付けられた状態で当該雌端子100が雄端子11に接続される。
図17及び
図18に示されるように、接続工程では、各可撓片112の先端部112aが雄ケーシング15の底壁16の表面16Sに当接するまで雌端子100が差し込まれる。なお、
図17では、一方の雌端子100のみが雄端子11に差し込まれた状態が示されている。
【0062】
調整工程は、雄端子11と雌端子100との接続状態を調整する工程である。具体的に、調整工程では、調整部430によって前記外力(金属バンド420による締付け力)が調整される。より詳細には、調整工程では、雄端子11及び雌端子100間の接触抵抗が所定範囲内となるように、操作空間17Sにおいて操作工具(図示略)により調整部430を操作することによって前記外力が調整される。この工程では、例えば、
図17における上方から、前記操作工具によって調整部430の締付け力が調整される。
【0063】
調整工程では、前記接触抵抗が0.06mΩ以上0.15mΩ以下となるように前記外力が調整されることが好ましく、前記接触抵抗が0.08mΩ以上0.1mΩ以下となるように前記外力が調整されることがより好ましい。
【0064】
ここで、前記接触抵抗は、
図18に示されるように、底壁16の表面16Sから4.5mmの点P1と、底壁16の表面16Sから43mmの点P2と、の間の抵抗値が測定される。この接触抵抗は、ミリオームテスターにより測定されてもよいし、400Aの電流が供給されたときの電圧降下により求められてもよい。なお、点P2は、雄端子11を含む雄コネクタ10を設計する際における規格の影響を受ける領域と影響を受けない領域との境界付近である。
【0065】
評価工程では、雄端子11と雌端子100とが接続された状態において、400Aの充電電流を30分間供給したときの雄端子11及び雌端子100の温度が90℃以下であるか否かによって冷却性能が評価される。なお、雄端子11及び雌端子100の温度は、雄端子11又は雌端子100に設けられた温度センサ(図示略)によって検出されてもよい。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態の評価治具50を用いることにより、充電コネクタ5の通電時における発熱量を適切に評価することが可能となる。
【0067】
以上に説明した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例である。
【0068】
上記実施形態の評価治具は、充電コネクタの一対の雄端子に接続可能な一対の雌端子と、前記一対の雌端子同士を接続する電線と、を備え、前記電線の断面積は、70mm2以上95mm2以下であり、前記電線の長さは、2m以上である。
【0069】
この評価治具では、電線の断面積が70mm2以上95mm2以下であり、電線の長さが2m以上であるため、通電時(評価時)に、電線の放熱特性の影響を実質的に受けずに、雄端子と雌端子との接続部における発熱量(温度上昇の程度)を適切に評価することが可能となる。このため、評価結果に基づいて各端子を設計することが可能となる。
【0070】
また、前記電線は、銅からなることが好ましい。
【0071】
また、評価治具は、充電コネクタの一対の雄端子に接続可能な一対の雌端子と、前記雌端子と前記雄端子との接触抵抗を調整可能な調整部材と、を備え、前記雌端子は、縮径可能であり、前記調整部材は、前記雌端子の外周面に取り付けられており、前記雌端子を包囲する環状に形成された環状バンドと、前記環状バンドの外周面に取り付けられており、前記雌端子を縮径させる外力を当該雌端子に対して付与可能な金属バンドと、前記金属バンドによる前記雌端子に対する前記外力を調整可能な調整部と、を有し、前記環状バンドは、電気絶縁性及び熱絶縁性を有する材料からなる。
【0072】
この評価治具は、金属バンドによる雌端子に対する外力(締付け力)を調整可能な調整部を備えているため、雄端子及び雌端子間の接触抵抗を調整可能であり、さらに、雌端子と金属バンドとの間に配置された環状バンドが電気絶縁性及び熱絶縁性を有する材料からなるため、金属バンドないし調整部における放熱が抑制される。よって、雄端子と雌端子との接続部における発熱量の評価精度の低下が抑制される。
【0073】
また、上記実施形態の評価方法は、冷却液によって冷却されることが可能な一対の雄端子を備える充電コネクタにおける前記一対の雄端子に対し、前記一対の雄端子に接続可能な一対の雌端子を備える評価治具における前記一対の雌端子を接続することにより、前記充電コネクタの冷却性能を評価する評価方法であって、前記一対の雄端子に前記一対の雌端子を接続する接続工程と、前記雄端子及び前記雌端子間の接触抵抗が0.06mΩ以上0.15mΩ以下となるように前記雄端子と前記雌端子との接続状態を調整する調整工程と、前記調整工程後、前記雄端子及び前記雌端子に400Aの充電電流を30分間供給したときの前記雄端子及び前記雌端子の温度が90℃以下であるか否かによって冷却性能を評価する評価工程と、を備える。
【0074】
この評価方法では、雄端子及び雌端子間の接触抵抗が0.06mΩ以上0.15mΩ以下の範囲に規定されているため、評価結果にバラツキが生じることが抑制される。よって、充電コネクタの冷却性能を適切に評価することが可能となる。また、前記接触抵抗が0.06mΩ以上0.15mΩ以下となるように充電インレットの雌端子を設計することにより、評価工程において良好な評価結果が得られた充電コネクタで充電した場合に、400Aの充電電流を30分間供給したときの雄端子及び雌端子の温度が90℃以下となる。
【0075】
また、前記調整工程では、前記接触抵抗が0.08mΩ以上0.1mΩ以下となるように前記接続状態が調整されることが好ましい。
【0076】
また、上記実施形態の評価方法は、冷却液によって冷却されることが可能な一対の雄端子と、前記一対の雄端子を挿通させた状態で前記一対の雄端子を保持する底壁と、を備え
る充電コネクタにおける前記一対の雄端子に対し、前記一対の雄端子に接続可能な一対の雌端子を備える評価治具における前記一対の雌端子を接続することにより、前記充電コネクタの冷却性能を評価する評価方法であって、前記一対の雄端子に前記一対の雌端子を接続する接続工程と、前記雄端子及び前記雌端子間の接触抵抗が所定の範囲内となるように前記雄端子と前記雌端子との接続状態を調整する調整工程と、を備え、前記調整工程では、前記接触抵抗として、前記雄端子のうち前記底壁の表面から4.5mmの点と、前記雌端子のうち前記底壁の前記表面から43mmの点と、の間の抵抗が測定される。
【0077】
この評価方法では、雄端子及び雌端子間の接触抵抗の測定点が決定されているため、冷却性能の適切な評価結果を得ることが可能となる。具体的に、雄端子側の測定点は、底壁の表面から4.5mmの点である。この点では、雄端子の断面積が十分に大きいため、接触抵抗に与える影響が小さくなる。また、雌端子側の測定点は、底壁の前記表面から43mmの点である。この点は、雄端子を含む充電コネクタを設計する際における規格の影響を受ける領域と影響を受けない領域との境界付近である。このため、この点で測定した接触抵抗以下となるように充電インレットの雌端子を設計することにより、前記規格を満足する充電コネクタによって充電が行われた際、充電時における雄端子及び雌端子の温度が基準値以下に抑えられる。
【0078】
また、前記評価方法において、前記調整工程後、前記雄端子及び前記雌端子に400Aの充電電流を30分間供給したときの前記雄端子及び前記雌端子の温度が90℃以下であるか否かによって前記冷却性能を評価する評価工程をさらに備えることが好ましい。
【0079】
また、上記実施形態の評価治具は、充電コネクタの一対の雄端子に接続可能な一対の雌端子と、前記雌端子と前記雄端子との接触抵抗を調整可能な調整部材と、を備え、前記雌端子は、縮径可能であり、前記調整部材は、前記雌端子を縮径させる外力を当該雌端子に対して付与可能である。
【0080】
この評価治具では、雌端子が縮径可能であり、調整部材は、雌端子を縮径させる外力を当該雌端子に対して付与可能であるため、雄端子と雌端子との接触抵抗が所定の範囲内となるように調整することが可能となる。よって、充電コネクタの冷却性能を適切に評価することが可能となる。
【0081】
また、上記実施形態の評価方法は、冷却液によって冷却されることが可能な一対の雄端子と、前記一対の雄端子の各雄端子を包囲する一対の筒壁と、を備える充電コネクタにおける前記一対の雄端子に対し、前記一対の雄端子に接続可能でかつ縮径可能な一対の雌端子と、前記一対の雌端子の各雌端子を縮径させる外力を当該雌端子に付与することが可能な調整部材と、を備える評価治具における前記一対の雌端子を接続することにより、前記充電コネクタの冷却性能を評価する評価方法であって、前記調整部材による前記外力の調整操作が可能となる操作空間が前記雄端子の周囲に形成されるように、前記一対の筒壁の各筒壁の一部を除去する除去工程と、前記一対の雄端子に前記一対の雌端子を接続する接続工程と、前記雄端子及び前記雌端子間の接触抵抗が所定範囲内となるように、前記操作空間において前記調整部材によって前記外力を調整する調整工程と、を備える。
【0082】
この評価方法では、外力の調整操作が可能となる操作空間が雄端子の周囲に形成されるため、雄端子に評価治具の雌端子を接続した状態で接触抵抗を調整することが可能となる。
【0083】
また、前記除去工程では、前記筒壁のうち前記一対の筒壁同士が互いに対向する部位とは異なる部位を除去することが好ましい。
【0084】
このようにすれば、雄端子同士の短絡が抑制される。
【0085】
また、前記調整部材は、前記雌端子の外周面に取り付けられており、前記雌端子を包囲する環状に形成された環状バンドと、前記環状バンドの外周面に取り付けられており、前記雌端子を縮径させる力を当該雌端子に対して付与可能な金属バンドと、前記金属バンドによる前記雌端子の締付け力を調整可能な調整部と、を有し、前記環状バンドは、電気絶縁性及び熱絶縁性を有する材料からなっていてもよい。この場合において、前記接続工程では、前記各雌端子に前記環状バンド及び前記金属バンドが取り付けられた状態で前記一対の雌端子を前記一対の雄端子に接続し、前記調整工程では、前記操作空間において前記金属バンドによる前記雌端子の締付け力を調整することが好ましい。
【0086】
また、上記実施形態の評価治具は、充電コネクタの雄端子に接続可能な雌端子を備え、前記雌端子は、それぞれが前記雄端子に接触可能であり、中心軸まわりに間隔を置いて配置された複数の接触片と、前記複数の接触片を支持する支持部と、を有し、前記複数の接触片の各接触片は、前記支持部から前記中心軸と平行な方向に沿って延びる形状を有する可撓片と、前記可撓片の内面から前記中心軸に向けて突出する接触部と、を有し、前記可撓片は、前記中心軸を有する円筒の一部を構成しており、前記中心軸と平行な方向における前記可撓片の長さは、前記円筒の外径の2倍以上であり、前記可撓片は、当該可撓片と前記支持部との接続部である基端部に対して当該可撓片の先端部が前記円筒の径方向に変位するように弾性変形可能であり、前記接触部は、前記径方向における内向きに凸となるように湾曲する形状を有している。
【0087】
この評価治具では、中心軸と平行な方向における可撓片の長さが円筒の外径の2倍以上であるため、雌端子の雄端子への接続及び雌端子の雄端子からの引抜きが繰り返された際における各可撓片の塑性変形が抑制され、しかも、各接触部は、径方向における内向きに凸となるように湾曲する形状を有しているため、雄端子に安定的に接触する。よって、所定の接触抵抗が安定的に再現されるため、充電コネクタの冷却性能を適切に評価することが可能となる。
【0088】
また、前記接触部は、前記中心軸と平行な方向に沿って延びる形状を有することが好ましい。
【0089】
このようにすれば、雌端子の中心軸が雄端子の中心軸に対して傾斜した状態で雌端子が雄端子に接続されたとしても、両中心軸が一致するように雌端子の姿勢が誘導される。
【0090】
また、前記可撓片は、前記中心軸と平行な方向に前記支持部から離間する向きに前記接触部から突出する突出部を有することが好ましい。
【0091】
また、前記可撓片と前記接触部との境界部は、湾曲する形状を有していることが好ましい。
【0092】
この場合において、前記接触部の頂部の曲率は、前記境界部の曲率よりも小さいことが好ましい。
【0093】
また、前記可撓片は、前記円筒の周方向に当該可撓片に隣接する可撓片と対向する対向面を有し、前記周方向に互いに対向する一対の対向面は、互いに平行であることが好ましい。
【0094】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範
囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1 車両、2 充電インレット、3 車両側電線、5 充電コネクタ、6 設備側電線、7 設備、10 雄コネクタ、11 雄端子、15 雄ケーシング、16 底壁、17
筒壁、17S 操作空間、20 雌コネクタ、21 雌端子、25 雌ケーシング、26 対向部、27 筒部、27a 先端部、50 評価治具、100 雌端子、110 接触片、112 可撓片、112a 突出部、112b 対向面、112S スリット、113 境界部、114 接触部、114a 接触縁部、114b 連結部、114c 頂部、120 支持部、130 雌側フランジ、130h 挿通孔、200 電線、210 端部、300 圧着端子、310 圧着部、320 圧着側フランジ、400 調整部材、410 環状バンド、420 金属バンド、430 調整部、A 中心軸。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液によって冷却されることが可能な一対の雄端子を備えるコネクタにおける前記一対の雄端子に対し、前記一対の雄端子に接続可能な一対の端子を備える治具における前記一対の端子を接続することにより、前記コネクタの温度の上昇に関する性能を評価する評価方法であって、
前記一対の雄端子に前記一対の端子を接続する接続工程と、
前記雄端子の測定部及び前記端子の測定部間の抵抗であって前記雄端子と前記端子との接触部分の抵抗を含む抵抗が0.06mΩ以上0.15mΩ以下となった状態で前記雄端子及び前記端子に400Aの充電電流を30分間供給したときの前記雄端子及び前記端子の温度によって前記性能を評価する評価工程と、を備える、評価方法。