(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160322
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20241106BHJP
A01C 1/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
A01C1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024132105
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2021506730の分割
【原出願日】2019-08-08
(31)【優先権主張番号】62/716,457
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506029004
【氏名又は名称】ソウル バイオシス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOUL VIOSYS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】65-16,Sandan-ro 163 Beon-gil,Danwon-gu,Ansan-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コ,サン ミン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗酸化活性或いはフェノール性化合物の含量が高い植物を提供する。
【解決手段】本発明は、植物に光を印加し、機能性物質の含量を増大させる植物栽培装置に関するものであって、前記植物栽培装置は、前記光を前記植物の収穫直前に前記植物に印加し、前記光は、約200nm~約400nmの波長で約1時間~約30時間にわたって約1μW/cm
2~約500μW/cm
2のエネルギーで植物に照射されることによって、前記植物内のフェノール性化合物の総量及び抗酸化活性のうち少なくとも一つが増加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に光を印加し、機能性物質の含量を増大させる植物栽培装置において、
前記植物栽培装置は、前記光を前記植物の収穫直前に前記植物に印加し、
前記光は、約200nm~約400nmの波長で約1時間~約30時間にわたって約1μW/cm2~約500μW/cm2のエネルギーで植物に照射されることによって、前記植物内のフェノール性化合物の総量及び抗酸化活性のうち少なくとも一つが増加する植物栽培装置。
【請求項2】
前記植物栽培装置は、
光が遮断された環境で前記植物の種子に第1時間のあいだ水分を供給し、前記種子から生長した前記植物に収穫直前に第2時間のあいだ光を照射する、請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記第2時間は前記第1時間より短い、請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記光は約270nm~約315nmの波長の光を含む、請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記光は275nmの波長の光及び295nmの波長の光を含む、請求項4に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記光が照射される前記第2時間は、約6時間以上約48時間以下である、請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記種子は緑豆又は大豆である、請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項8】
前記種子及び前記植物は、可視光線が排除された環境で生長する、請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項9】
前記植物栽培装置は、
前記光を出射する光源部、及び
前記植物が提供される本体部を含み、
前記本体部は、前記種子及び前記植物に水分を供給するための水分供給装置を含む、請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項10】
前記抗酸化活性は、フェノール性化合物(Phenolic compound)、ビタミン類(Vitamin)、及びカロテノイド(Carotenoid)を含む抗酸化物質の抗酸化活性の総和である、請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項11】
フェノール性化合物は、フラボノイド(Flavonoid)、フェノール酸(Phenolic acid)、ポリフェノール(Polyphenol)、スチルベノイド(Stilbenoid)、ヒドロケイ皮酸(Hydrocinnamic acid)、又はクマル酸(Coumaric acid)を含む、請求項10に記載の植物栽培装置。
【請求項12】
植物に光を印加し、機能性物質の含量を増大させる植物栽培方法において、
前記光を前記植物の収穫直前に前記植物に印加する段階を含み、
前記光は、約200nm~約400nmの波長で約1時間~約30時間にわたって約1μW/cm2~約500μW/cm2のエネルギーで植物に照射されることによって、前
記植物内のフェノール性化合物の総量及び抗酸化活性のうち少なくとも一つが増加する植物栽培方法。
【請求項13】
前記植物栽培方法は、
前記植物の種子を発芽させた後で生長させる段階、
前記生長植物の収穫直前に前記植物に前記光を照射する段階、及び
前記種子から生長した前記植物を収穫する段階を含む、請求項12に記載の植物栽培方法。
【請求項14】
前記光は約270nm~約315nmの波長の光を含む、請求項13に記載の植物栽培方法。
【請求項15】
前記光が照射される時間は、約6時間以上約48時間以下である、請求項13に記載の植物栽培方法。
【請求項16】
前記種子は緑豆又は大豆である、請求項13に記載の植物栽培方法。
【請求項17】
前記種子及び前記植物は、可視光線が排除された環境で生長する、請求項16に記載の植物栽培方法。
【請求項18】
前記光は、約5μW/cm2~約15μW/cm2のエネルギーで照射される、請求項13に記載の植物栽培方法。
【請求項19】
前記抗酸化活性は、フェノール性化合物、ビタミン類、又はカロテノイドを含む抗酸化物質による抗酸化活性である、請求項12に記載の植物栽培方法。
【請求項20】
フェノール性化合物は、フラボノイド、フェノール酸、ポリフェノール、スチルベノイド、ヒドロケイ皮酸、又はクマル酸を含む、請求項19に記載の植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置及びこれを用いた栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康に対する関心が高まるにつれ、有機農業を始めとした安全な食材に対する需要が増加している。一般消費者の場合、有機農業の食材をマートや市場で購買して食べることが普通であるが、最近は、有機農業の食材を消費者が直接生産して消費しようとする欲求も強い。特に、野菜の場合は、他の食材と比べて消費者が直接栽培することが相対的に容易であるので、植物栽培装置に対する需要が大きい。
【0003】
併せて、健康に対する関心はアンチエイジング(Anti-aging)の側面で強くなっているが、最近は、医学的施術及び処方などの人為的な方法を通じたアンチエイジングよりも、食品内に存在する抗酸化物質の摂取を通じた自然親和的なアンチエイジング方法に対する関心が高い。活性酸素は、細胞及び組織の破壊を起こし、皮膚を含む身体の全ての組織の老化を促進させることで知られているが、抗酸化物質は、このような活性酸素を除去し、身体の老化を遅延させる。抗酸化活性が高い物質には、ビタミン類、フェノール類物質、カロチン系物質などがある。特に、フェノール類物質は、植物界に広く分布しており、抗酸化活性が高く、また、皮膚の老化を促進させる紫外線を直接遮断することもある。抗酸化物質が多いとして知られている植物は、豆類、ベリー類、野菜類などである。安全且つ健康に良い食材に対する需要に対応するために、家庭で日常的に栽培しやすい植物のフェノール性化合物の総量を高めるための方法に対する開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、抗酸化活性或いはフェノール性化合物の含量が高い植物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例は、植物を製造するための装置を含み、植物栽培装置は、前記光を前記植物の収穫直前に前記植物に印加する。ここで、前記光は、約200nm~約400nmの波長で約1時間~約30時間にわたって約1μW/cm2~約500μW/cm2のエネルギーで植物に照射されることによって、前記植物内のフェノール性化合物の総量及び抗酸化活性のうち少なくとも一つが増加する。
【0006】
本発明の一実施例において、前記植物栽培装置は、光が遮断された環境で前記植物の種子に第1時間のあいだ水分を供給し、前記種子から生長した前記植物に収穫直前に第2時間のあいだ光を照射することができる。
【0007】
本発明の一実施例において、前記第2時間は、前記第1時間より短くてもよい。
【0008】
本発明の一実施例において、前記植物栽培装置は、前記光を出射する光源部と、前記植物が提供される本体部とを含み、前記本体部は、前記種子及び前記植物に水分を供給するための水分供給装置を含んでもよい。
【0009】
本発明の一実施例によると、植物に光を印加し、機能性物質の含量を増大させる植物栽培方法において、前記光を前記植物の収穫直前に前記植物に印加する段階を含み、前記光は、約200nm~約400nmの波長で約1時間~約48時間にわたって約1μW/c
m2~約500μW/cm2のエネルギーで植物に照射されることによって、前記植物内のフェノール性化合物の総量及び抗酸化活性のうち少なくとも一つが増加する植物栽培方法が提供される。
【0010】
本発明の一実施例において、植物栽培方法は、前記植物の種子を発芽させた後で生長させる段階と、前記生長植物の収穫直前に前記植物に前記光を照射する段階と、前記種子から生長した前記植物を収穫する段階とを含んでもよい。
【0011】
本発明の一実施例において、前記光は、約270nm~約315nmの波長の光を含んでもよい。
【0012】
本発明の一実施例において、前記光が照射される時間は、約6時間以上約30時間以下であってもよい。
【0013】
本発明の一実施例において、前記種子は、緑豆又は大豆であってもよい。
【0014】
本発明の一実施例において、前記種子及び前記植物は、可視光線が排除された環境で生長してもよい。
【0015】
本発明の一実施例において、前記光は、約5μW/cm2~約15μW/cm2のエネルギーで照射されてもよい。
【0016】
本発明の一実施例において、前記抗酸化活性は、フェノール性化合物(Phenolic compound)、ビタミン類(Vitamin)、及びカロテノイド(Carotenoid)を含む抗酸化物質による抗酸化活性である植物が栽培されてもよい。
【0017】
本発明の一実施例において、フェノール性化合物は、フラボノイド(Flavonoid)、フェノール酸(Phenolic acid)、ポリフェノール(Polyphenol)、スチルベノイド(Stilbenoid)、ヒドロケイ皮酸(Hydrocinnamic acid)、又はクマル酸(Coumaric acid)を含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施例によると、商品性が高く、フェノール性化合物の総量及び抗酸化活性が高い植物を提供することができる。
【0019】
特に、本発明の一実施例によると、栽培しようとする種子から生長した植物の色が光の照射後に緑色に変化しないので、栽培した植物の商品性が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施例に係る植物栽培装置の断面図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る発光ダイオードを概略的に示した図である。
【
図3a】本発明の一実施例に係る植物栽培方法を示したフローチャートである。
【
図3b】本発明の一実施例に係る植物栽培方法を示したフローチャートである。
【
図4a】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物のフェノール性化合物の総量を示したグラフである。
【
図4b】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物のフェノール性化合物の総量を示したグラフである。
【
図5a】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物の抗酸化活性を示したグラフである。
【
図5b】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物の抗酸化活性を示したグラフである。
【
図6】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物の乾燥重量を示したグラフである。
【
図7a】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物のフェノール性化合物の総量を示したグラフである。
【
図7b】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物のフェノール性化合物の総量を示したグラフである。
【
図8a】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物の抗酸化活性を示したグラフである。
【
図8b】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物の抗酸化活性を示したグラフである。
【
図9】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物の乾燥重量を示したグラフである。
【
図10a】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物を撮影した写真である。
【
図10b】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物を撮影した写真である。
【
図10c】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物を撮影した写真である。
【
図11a】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物を撮影した写真である。
【
図11b】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物を撮影した写真である。
【
図11c】本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物を撮影した写真である。
【
図12a】波長別の光照射による大豆もやしの色変化を示した写真である。
【
図12b】波長別の光照射による大豆もやしの色変化を示した写真である。
【
図12c】波長別の光照射による大豆もやしの色変化を示した写真である。
【
図12d】波長別の光照射による大豆もやしの色変化を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有し得るので、特定の実施例を図面に例示し、これを本文で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物及び代替物を含むものと理解しなければならない。
【0022】
各図面を説明しながら、類似する参照符号を類似する構成要素に対して使用した。添付の図面において、各構造物の寸法は、本発明の明確性のために実際より拡大して示したものである。「第1」、「第2」などの用語は、多様な構成要素の説明に使用可能であるが、前記各構成要素は前記各用語によって限定してはならない。前記各用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない限り、第1構成要素は第2構成要素と命名することができ、同様に、第2構成要素も第1構成要素と命名することができる。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味を有していない限り、複数の表現を含む。
【0023】
本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせの存在を指定しようとするものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせなどの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとした場合、これは、他の部分の「直上に」ある場合のみならず、その中間に更に他の部分がある場合も含む。また、本明細書において、いずれかの層、膜、領域、板などの部分が他の部分の上(on)に形成されたとした場合、前記形成された方向は、上部方向のみに限定されなく、側面や下部方向に形成されたことを含む。その一方で、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あるとした場合、これは、他の部分の「直下に」ある場合のみならず、その中間に更に他の部分がある場合も含む。
【0024】
以下、添付の各図面を参照して本発明の好適な実施例をより詳細に説明する。
【0025】
本発明の一実施例に係る植物栽培方法を用いて植物を栽培すると、フェノール性化合物の総量が高く、且つ抗酸化活性(Antioxidant capacity)が高い植物を生産することができる。
【0026】
具体的に、本発明の一実施例によると、第1時間の間、暗室内で種子を育て、続いて、収穫直前に約200nm~約400nmの波長の光を第2時間のあいだ種子又は種子から生長した植物に照射することによって、植物の抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量を大きく高めることができる。以下では、まず、本発明の一実施例に係る植物栽培方法によって植物を育てるのに利用可能な植物栽培装置に対して説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施例に係る植物栽培装置の断面図である。
【0028】
図1を参考にすると、本発明の一実施例に係る植物栽培装置10は、本体部100及び光源部200を含み、本体部100内には種子300が提供される。
【0029】
本体部100は、内部に種子300が蒔かれ得る空きスペースを含み、外部の光を遮断できるボックス状に提供されてもよい。
【0030】
本体部100は、内部に蒔かれた種子300が生長できる環境を提供する。本体部100は、複数個の種子300が蒔かれ、生長できる大きさを有し得る。併せて、本体部100の大きさは、植物栽培装置10の用途によって変わり得る。例えば、植物栽培装置10が家庭で使用する小規模の植物栽培に用いられる場合、本体部100の大きさは相対的に小さくてもよい。その一方で、植物栽培装置10が商業的に植物を栽培・販売するのに使用される場合、本体部100の大きさは相対的に大きくてもよい。
【0031】
本体部100は、本体部100の外側の光が本体部100の内部に入り込まないように光を遮断することができる。よって、本体部100の内部には、外部と隔離された暗室環境が提供され得る。これによって、外部の光が不必要に本体部100の内部に蒔かれた種子300に照射されることを防止することができる。特に、本体部100は、外部の可視光線が種子300に照射されることを防止することができる。
【0032】
本体部100の内部表面には光触媒が塗布されてもよい。光触媒は、光源部200から照射される光を浴びて、光触媒反応を活性化させることができる。これによって、本体部100の内部が湿気の多い暗室環境に維持される場合にも、本体部100の内部で細菌又はカビが増殖することを防止することができる。このような機能を行うための光触媒物質は、二酸化チタン(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化亜鉛(ZnO)、タングステン酸化物(WO3)、及び酸化スズ(SnO2)から選ばれた少なくとも一つであってもよい。
【0033】
本体部100は、水分供給装置及び栽培台130を含んでもよい。
【0034】
水分供給装置は、本体部100の内部に蒔かれた各種子300及び各種子300から生長した植物に水分を供給するための部材である。水分供給装置は、水分供給部110及び水分排出部120を含んでもよい。
【0035】
水分供給部110は、各種子300及び各種子300から生長した植物に水分を供給し、水分排出部120は、供給後に残った余分の水を本体部100の外側に排出する。
【0036】
水分供給部110は、シャワーヘッドの形態で設けられてもよく、本体部100の上端で各種子300及び各種子300から生長した植物に向けて水を噴射することができる。但し、水分供給部110の形態がシャワーヘッドの形態に制限されるのではなく、通常の技術者は、各種子300の種類及び本体部100の形態に合わせて多様な形態の水分供給部110を設けることができる。例えば、水分供給部110は、回転するスプリンクラー、ミストノズル噴射、煙霧機などの形態で設けられてもよい。
【0037】
水分供給部110は、一つ又は複数個で設けられてもよい。水分供給部110の個数は本体部100の大きさによって変わり得るが、相対的に小さい家庭用植物栽培装置10の場合は、本体部100が小さいので、一つの水分供給部110が設けられてもよい。その一方で、相対的に大きい商業用植物栽培装置10の場合は、本体部100が大きいので、複数個の水分供給部110が設けられてもよい。
【0038】
水分供給部110は、本体部100に設けられた水槽又は本体部100の外部の水栓に連結されてもよい。併せて、水分供給部110は、水中に浮遊する汚染物質が各種子300及び各種子300から生長した植物に付着しないようにろ過装置をさらに含んでもよい。ろ過装置は、活性炭、不織布などのフィルターを含んでもよく、これによって、ろ過装置を経た水は浄水され得る。ろ過装置は、場合によって光照射フィルターをさらに含んでもよいが、光照射フィルターは、紫外線などを水に照射し、水中に存在する細菌、バクテリア、カビ胞子などを除去することができる。水分供給部110が上述した各ろ過装置を含むことによって、水分排出部120を介して出た水を再活用したり、雨水などを直ぐ栽培に使用したりする場合にも、本体部100の内部、各種子300及び各種子300から生長した植物が汚染するおそれがない。
【0039】
水分供給部110はタイマーを含んでもよい。これによって、ユーザーが操作しなくても、水分供給部110は、既に設定された時間間隔で種子300及び種子300から生長した植物に水分を供給することができる。水分を供給する間隔は、種子300の種類によって変わり得る。生長に多くの水を必要とする植物の場合は、相対的に短い間隔で水分を供給することができ、生長に少ない水を必要とする植物の場合は、相対的に長い間隔で水分を供給することができる。
【0040】
水分排出部120は、水分供給部110から供給された水のうち、各種子300及び各種子300から生長した植物が吸収してから残った水を本体部100の外側に排出する。水分排出部120は、例えば、漏斗状の部材を含む筒であってもよい。この場合、水分供給部110から供給された水のうち余分の水は、漏斗状の部材を介して筒に集まるようになる。ユーザーは、水分排出部120に設けられた筒に水が一杯になったとき、水分排出部120を本体部100から分離し、水を空にすることができる。但し、水分排出部120の形態が上述したものに制限されるのではなく、水分排出部120に溜まった水は、ユーザーが操作することなく自動で本体部100の外側に排出されてもよい。例えば、水分排出部120は、本体部100の底面と連結された配管の形態で設けられ、本体部100の底面に充填された水を外部に排出することができる。
【0041】
水分排出部120に集まった水は、場合によって、再び水分供給部110に供給されてもよい。水分排出部120に集まった水に存在し得る異物などは、各種子300及び各種子300から生長した植物に供給される前に水分供給部110でろ過・浄水されるので、再活用した水が各種子300及び各種子300から生長した植物を汚染させるおそれはない。
【0042】
水分排出部120には殺菌装置がさらに設けられてもよい。殺菌装置は、水分排出部120に集まった水を殺菌することができる。殺菌装置は、水分排出部120に集まった水に紫外線を含む光を照射することができる。これによって、水分排出部120に水が溜まっていても、溜まった水から細菌及びカビが増殖するおそれがない。併せて、殺菌装置は、水分排出部120に集まる水によって故障しないように防水構造を有してもよい。
【0043】
栽培台130は、各種子300及び各種子300から生長した植物を支持する。このために、栽培台130は、板(Slate)の形態で設けられてもよい。栽培台130の大きさは、本体部100の断面の大きさと同一であってもよく、栽培台130の形態も本体部100の断面の形態に対応し得る。
【0044】
各種子300は、栽培台130上で生長することができる。栽培台130は、本体部100の内部に嵌められる形態で提供されてもよい。本体部100内で栽培台130が設けられる位置は、栽培しようとする種子300の種類によって変わり得る。例えば、高く育つ植物の種子300の場合は、栽培台130を相対的に本体部100の下端の近くに配置してもよい。その一方で、低く育つ植物の種子300の場合は、栽培台を相対的に本体部100の上端の近くに配置してもよい。
【0045】
栽培台130は、複数個の開口を含む多孔性板(Porous Slate)であってもよい。これによって、栽培台130上に噴射された水のうち、各種子300及び各種子300から生長した植物によって吸収されてから残った余分の水は、栽培台130に設けられた開口を介して流れ出ることができる。よって、栽培台130上に持続的に水を噴射する場合にも、栽培台130上に水が溜まり、各種子300が水に浸るおそれがない。栽培台130に設けられた各開口の大きさは、各種子300の大きさより小さくてもよい。これによって、各種子300が栽培台130に設けられた開口を介して流れ出るおそれがない。
【0046】
栽培台130の一面、特に、各種子300が蒔かれる面は、吸湿性素材で製作されてもよい。これによって、栽培台130上に噴射された水のうち少なくとも一部は、各種子300と当接する栽培台130の一面上に残存し得る。よって、連続して水分を供給しなくても、各種子300は継続して湿った状態で残存することができ、その結果、各種子300の生長が促進され得る。
【0047】
図面には示していないが、本体部100内には、酸素発生器及び気体交換装置がさらに設けられてもよい。これによって、本体部100が、種子300及び種子300から生長した植物が提供される内部を密閉する場合にも、種子300の生長に必要な酸素が持続的に供給され得る。
【0048】
併せて、本体部100は収穫装置をさらに含んでもよい。収穫装置は、種子300の生長が完了した後、種子及び種子から生長した植物を水分から隔離することによって、植物が目標よりさらに生長することを防止する。
【0049】
光源部200は、種子300から生長した植物に向けて光を出射する。
【0050】
光源部200が出射する光は、約200nm~約400nmの波長の光を含んでもよい。本発明の一実施例において、光源部200が出射する光は、例えば、約250nm~約350nmの波長帯域の光であってもよく、約270nm~約315nmの波長帯域の光であってもよく、295nmの波長を有する光であってもよい。
【0051】
本発明の一実施例によると、光源部200が出射する光は、約275nmの波長の光及び約295nmの波長の光を含んでもよい。
【0052】
光源部200が出射する光は、植物に所定の機能性物質が生成されるように所定時間にわたって印加されてもよい。例えば、前記光は、約1時間~約48時間、約6時間~約48時間、約1時間~約30時間、又は約24時間にわたって植物に照射されてもよい。また、光源部200が出射する光は、植物に所定の機能性物質が生成されるように所定のエネルギーで植物に印加されてもよい。例えば、前記光は、約1μW/cm2~約500μW/cm2のエネルギー、約5μW/cm2~100μW/cm2のエネルギー、又は約10μW/cm2のエネルギーで植物に照射されてもよい。
【0053】
上述した波長の光を種子300から生長した植物に照射することによって、植物の抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量が増加し得る。上述した光を種子300から生長した植物に照射することによって、植物の生長に影響することなくフェノール性化合物の総量及び抗酸化活性を向上させることができる。
【0054】
光源部200は、光を照射するために発光ダイオードを含んでもよい。光源部200又は光源部200に含まれた発光ダイオードは、それぞれ複数個設けられてもよい。この場合、複数個の発光ダイオードは、互いに異なる波長の光を出射することができる。例えば、一部の光源部200又は発光ダイオードは約275nmの波長の光を出射し、他の光源部200又は発光ダイオードは約295nmの波長の光を出射するように光源部200を構成することができる。
【0055】
光源部200が多様な波長帯域の光を出射するとき、光源部200は、可視光線帯域の光を出射しない場合がある。これは、前記可視光線帯域の光が種子300及び種子300から生長した植物に照射されたとき、葉緑素の生成が促進され得るためである。光源部200が可視光線帯域の光を出射することなく、本体部100が外部の光を遮断するので、種子300は、可視光線が排除された環境で生長し得る。これによって、種子300の生長過程で葉緑素が生成されることを防止することができる。
【0056】
図2は、本発明の一実施例に係る発光ダイオードを概略的に示した図である。
【0057】
図2を参照すると、発光ダイオードは、第1半導体層223、活性層225、及び第2半導体層227を含む発光構造体と、発光構造体に連結された第1電極221及び第2電極229とを含んでもよい。
【0058】
第1半導体層223は、第1導電型ドーパントがドーピングされた半導体層である。第1導電型ドーパントはp型ドーパントであってもよい。第1導電型ドーパントは、Mg、Zn、Ca、Sr、Baなどであってもよい。本発明の一実施例において、第1半導体層223は窒化物系半導体材料を含んでもよい。本発明の一実施例において、第1半導体層223の材料としては、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、InN、InAlGaN、AlInNなどを挙げることができる。
【0059】
活性層225は、第1半導体層223上に設けられ、発光層に該当する。活性層225は、第1半導体層223を介して注入される電子(又は正孔)と、第2半導体層227を
介して注入される正孔(又は電子)とが互いに出合い、活性層225の形成物質によるエネルギーバンドのバンドギャップの差によって光を放出する層である。
【0060】
活性層225は、化合物半導体で具現され得る。活性層225は、例として、III族-V族及びII族-VI族の化合物半導体のうち少なくとも一つで具現され得る。
【0061】
第2半導体層227は活性層225上に設けられる。第2半導体層227は、第1導電型ドーパントと反対の極性を有する第2導電型ドーパントを有する半導体層である。第2導電型ドーパントはn型ドーパントであってもよいので、第2導電型ドーパントは、例えば、Si、Ge、Se、Te、O、Cなどを含んでもよい。
【0062】
本発明の一実施例において、第2半導体層227は窒化物系半導体材料を含んでもよい。第2半導体層227の材料としては、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、InN、InAlGaN、AlInNなどを挙げることができる。
【0063】
第1電極221及び第2電極229は、それぞれ第1半導体層223及び第2半導体層227と連結されるように多様な形態で設けられ得る。本実施例では、第1半導体層223の下部に第1電極221が設けられ、第2半導体層227の上部に第2電極229が設けられたことを示したが、これに限定されるのではない。本発明の一実施例において、第1電極221及び第2電極229は、例えば、Al、Ti、Cr、Ni、Au、Ag、Ti、Sn、Ni、Cr、W、Cuなどの多様な金属又はこれらの合金からなってもよい。第1電極221及び第2電極229は、単一層又は多重層に形成されてもよい。
【0064】
本発明の一実施例において、発光ダイオードがバーチカルタイプで設けられたことを説明したが、発光ダイオードが必ずしもバーチカルタイプである必要はなく、本発明の概念に符合する限り、他のタイプで設けられてもよい。
【0065】
本発明の一実施例によると、試料に光を印加するために、光源として、既存の一般ランプでない発光ダイオードを使用することによって、次のような効果を得ることができる。
【0066】
本発明の一実施例によって発光ダイオードを光源として使用する場合、既存の一般ランプ(例えば、既存のUVランプ)から出射された光と比べて特定波長の光を植物に出射することができる。既存のランプから出射された光は、発光ダイオードから出射された光と比べて広い領域でブロードなスペクトルを有する。これによって、既存のUVランプの場合、出射された光の波長帯域のうち一部の帯域の光のみを分離することが容易でない。その一方で、発光ダイオードから出射された光は、特定波長でのシャープなピークを有し、既存のランプからの光と比べて半値幅が非常に狭い特定波長の光を出射する。これによって、特定波長の光を選択することが容易になり、その選択された特定波長の光のみを試料に出射することができる。
【0067】
また、既存のランプの場合は、試料に光を出射するため光量の正確な限定が難しくなり得るが、発光ダイオードの場合は、光量を明確に限定して出射することができる。また、既存のランプの場合は、光量の正確な限定が難しくなり得るので、照射時間も広い範囲に設定され得るが、発光ダイオードの場合は、相対的に短い時間にわたって明確な時間内に試料に必要な光を出射することができる。
【0068】
上述したように、既存のランプの場合、相対的に広い範囲の波長、広い範囲の光量、及び広い範囲の照射時間によって光照射量の明確な判断が難しい。その一方で、発光ダイオードの場合は、相対的に狭い範囲の波長、狭い範囲の光量、及び狭い範囲の照射時間によって明確な光照射量を出射することができる。
【0069】
これに加えて、既存のランプの場合は、電源をオンにした後、最大光量まで到逹するのに相当な時間がかかった。その一方で、発光ダイオードの場合は、電源をオンにした後、ウォーミングアップ時間が実質的にほとんどなく、直ぐに最大光量まで到逹する。よって、発光ダイオードの場合は、植物に特定波長の光を照射するとき、光の照射時間を明確に制御することができる。
【0070】
光源部200は防水構造を有してもよい。これによって、光源部200に水が飛散した場合にも光源部200が故障するおそれがない。
【0071】
種子300は、本体部100の内部に設けられ、水分の供給を受けて本体部100内で生長する。種子300は、水耕栽培(Hydroponic Culture)に適した種類であり得る。これによって、植物が生長するための土壌がなくても、種子300を栽培台130上に蒔き、植物が生長することができる。例えば、種子300は緑豆又は大豆であってもよく、種子300から生長する植物は緑豆もやし又は大豆もやしであってもよい。
【0072】
種子300は、本体部100内で可視光線が排除された環境で成長することができる。これによって、種子300から栽培された植物は、葉緑素が実質的に生成されていないものであり得る。例えば、種子300が緑豆又は大豆である場合、種子300から生長した緑豆もやし又は大豆もやしは、葉緑素が実質的に生成されないので黄色光を帯びることができる。
【0073】
種子300から生長した植物は、光源部200から照射された光を受ける。光源部200から照射された光は、種子300から生長した植物の抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量を増加させる。具体的に、光源部200から照射された約200nm~約400nmの波長の光は、種子300から生長した植物の二次代謝物質の生合成を活性化させ、これによって、抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量が増加し得る。
【0074】
種子300から生長した植物に約200nm~約400nmの波長の光が照射されたとき、上述した波長の光は、植物細胞にDNA-損傷効果を与えて、活性酸素を発生させるなどのメカニズムを誘発し、これによって、細胞及び組織に深刻な損傷が発生する。植物は、組織細胞を保護するために、上述した光を吸収したり、活性酸素を消去できる二次代謝産物の生成を促進したりするようになる。
【0075】
例えば、上述した光が、発芽された種子300から生長した植物に与えられたとき、上述した活性を有する二次代謝産物の生合成に関与するフェニルアラニンアンモニア-リアーゼ(Phenylalanine ammonia-lyase)などの酵素が活性化される。これによって、フェノール性化合物の生合成が促進され、その結果、植物の抗酸化活性が増進し、上述した光による組織損傷が緩和される。
【0076】
上述した方法によって生長した植物が含む抗酸化物質は、フェノール性化合物、ビタミン類、カロテノイドなどであってもよい。併せて、フェノール性化合物は、フラボノイド、フェノール酸、ポリフェノール、スチルベノイド、ヒドロケイ皮酸、クマル酸などを含んでもよい。種子300から生長した植物が含むフラボノイドは、例えば、フラボノール(flavonol)、フラボン(Flavone)、イソフラボン(isoflavone)、フラバノン(Flavanone)、フラバノノール(Flavanonol)、フラバン(Flavan)、アントシアニン(anthocyanin)、アピゲニン-7-モノグルコシド(apigenin-7-monoglucoside)などであってもよい。
【0077】
本発明の一実施例によると、約200nm~約400nmの波長の光を用いて種子300を栽培することによって、種子300から生長した植物内の抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量を増加させることができる。併せて、種子300は、生長中に可視光線に出合わないので、種子300から葉緑素が生成され、植物が緑色を帯びることを防止することができる。これによって、抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量が高いと共に、食べやすい黄色を帯びる植物を生産することができる。
【0078】
以下では、上述した長所を有する植物を生産するための方法に対してさらに詳細に説明する。
【0079】
図3aは、本発明の一実施例に係る植物栽培方法を示したフローチャートである。
【0080】
図3aによると、本体部内に種子を蒔いた後、種子に第1時間P1のあいだ水分を供給する(S100)。種子は、第1時間P1のあいだ水分の供給を受けて、光が遮断された環境で生長することができる。第1時間P1のあいだ、連続して種子に水分を供給しなければならないのではない。第1時間P1のあいだ一定間隔で種子に水分を供給することもできる。
【0081】
次に、種子に第2時間P2のあいだ光を照射する(S200)。第2時間P2のあいだ種子に水分が供給されてもよい。これによって、種子は、第2時間P2のあいだ同時に光と水分の供給を受けることができる。第2時間P2のあいだ供給される光は、波長が約200nm~約400nmであってもよい。
【0082】
第2時間P2は、第1時間P1より短くてもよい。よって、光を照射する時間は、光を照射しない時間と比べて相対的に短くてもよい。例えば、光を照射しない第1時間P1は、種子が緑豆や大豆である場合、約48時間~約72時間であってもよい一方で、光を照射する第2時間P2は、約6時間~約48時間であってもよい。
【0083】
併せて、第2時間P2は、種子から生長した植物の収穫直前に提供されてもよい。よって、植物は、収穫時点から逆算し、第2時間P2のあいだ光を受けることができ、これによって、植物内の二次代謝産物の生合成が促進され、抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量が増加し得る。
【0084】
光源部は、第2時間P2のあいだ種子又は植物に約5μW/cm2~15μW/cm2の量の光を照射することができる。上述した範囲の光量を受けることによって、植物細胞の損傷/変形なしで抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量のみを高めることができる。例えば、種子又は植物に約5μW/cm2未満の光量の光が照射される場合、植物細胞に加えられるストレスが微弱になり、抗酸化物質の生産のための反応が十分に起こらなくなり得る。その一方で、種子又は植物に約15μW/cm2を超える光量の光が照射される場合、植物細胞が損傷/変形し得る。
【0085】
第2時間P2のあいだに光源部が出射する光の強さは、全ての波長帯域で同一ではない。種子の種類によって、前記約200nm~約400nmの波長の光のうち特定波長帯域の光の強さを高めることができる。例えば、種子が緑豆である場合、約200nm~約400nmの波長帯域のうち、特に約295nmの波長の光の強さを高めることができる。これによって、種子又は種子から生長した植物の種類別にオーダーメイド型の光照射が可能であり、種子又は種子から生長した植物内の抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量が最大になり得る。
【0086】
第2時間P2の光照射及び水分供給が終了した後、種子から生長した植物が収穫され得る(S300)。このとき、収穫装置が用いられてもよいが、収穫装置は、第1時間P1及び第2時間P2が経過した後、種子及び植物を水分から隔離する。これによって、植物が目標より過度に生長することを防止することができる。
【0087】
本発明の一実施例によると、収穫直前に第2時間P2のあいだ種子に光を照射することによって、植物の抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量を高めることができる。併せて、光を照射する第2時間P2は、光を照射しない第1時間P1より短いので、過度な光照射によって植物が損傷することを防止することができる。
【0088】
以上では、本発明の一実施例によって植物を栽培する方法を簡略に説明した。本発明の一実施例によると、植物は、ユーザーが操作することなく自動で栽培され得るが、以下では、ユーザーが操作することなく植物を栽培するための方法に対してさらに詳細に説明する。
【0089】
図3bは、本発明の一実施例に係る植物栽培方法を示したフローチャートである。
【0090】
図3bによると、まず、種子に第1時点T1から水分を供給しはじめる(S101)。第1時点T1は、本発明の一実施例に係る植物栽培装置に種子を入れて、ユーザーが栽培を開始するための動作を実施した時点であってもよい。例えば、栽培を開始するための動作とは、植物栽培装置の電源をオンにし、栽培開始ボタンを押す行為などであってもよい。
【0091】
次に、植物栽培装置は、現在の時刻T1と第1時点T1との差、すなわち、第1時点T1から現在まで経過した時間を算出する(S102)。そして、植物栽培装置は、現在まで経過した時間(T-T1)が、既に設定された総栽培時間Ptと、同様に既に設定された第2時間P2との差(Pt-P2)以上であるかどうかを判断する。第2時間P2は、以上で説明したように、種子から生長した植物に光を照射する時間であるので、総栽培時間Ptと第2時間P2との差(Pt-P2)は、総栽培時間Ptのうち光を照射せずに栽培する時間を意味する。
【0092】
総栽培時間Pt及び第2時間P2は、植物栽培装置の動作前にユーザーが設定することができる。よって、ユーザーは、嗜好及び植物の種類に合わせて総栽培時間Pt及び第2時間P2を設定することができる。また、場合によって、植物栽培装置は、植物又は種子の種類別に最適化された総栽培時間Pt及び第2時間P2のデータを格納しておき、ユーザーが栽培しようとする植物又は種子の種類を選択すると、これに合わせて総栽培時間Pt及び第2時間P2を設定することもできる。
【0093】
第1時点T1から現在の時刻Tまで経過した時間(T-T1)が総栽培時間Ptと第2時間P2との差(Pt-P2)以上であるとき、植物栽培装置は、種子から生長した植物に光を照射する(S201)。その一方で、第1時点T1から現在の時刻Tまで経過した時間(T-T1)が総栽培時間Ptと第2時間P2との差(Pt-P2)未満の場合、植物栽培装置は、種子から生長した植物に光を照射することはまだ早いと判断し、継続して水分のみを供給する。
【0094】
種子から生長した植物に照射される光は、約200nm~約400nmの波長の光である。上述した光が照射されることによって、種子から生長した植物の二次代謝物質の生合成が活性化され、種子から生長した植物内の抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量が増加し得る。植物内の抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量は、照射される光の波長、エネルギー量、照射時間に影響を受けることができ、所定条件で増加する。例えば、細
胞内のUVR8受容体は、UV波長帯域の光を吸収することによって、フェノール性物質などの機能性物質を生成することができる。UVR8受容体を刺激するHY5は、所定波長以下、例えば、315nm以下のUV-B波長で活性化され得る。
【0095】
次に、植物栽培装置は、現在の時刻Tと第1時点T1との差(T-T1)、すなわち、第1時点T1から現在Tまで経過した時間が総栽培時間Pt以上であるかどうかを判断する(S202)。第1時点T1から現在Tまで経過した時間が総栽培時間Pt未満である場合、植物栽培装置は、種子から生長した植物に継続して光を照射する。
【0096】
その一方で、第1時点T1から現在Tまで経過した時間が総栽培時間Pt以上である場合、植物栽培装置は、水分供給及び光照射を中断する(S301)。水分供給が中断されることによって、種子から生長した植物はこれ以上生長しなくなり得る。
【0097】
次に、植物栽培装置に残っている水分によって種子から生長した植物が計画以上に生長することを防止するために、種子から生長した植物を収穫する(S302)。植物を収穫することは、植物を水分から完全に隔離することを意味し得る。このために、植物栽培装置は、水分供給部から分離された別途の収穫装置内に収穫された植物を移すことができる。ユーザーは、収穫装置内に提供された植物を容易に取得することができる。
【0098】
本発明の一実施例によると、ユーザーが栽培過程に関与しなくても、既に設定された基準によって抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量が高い植物が栽培され得る。これによって、植物栽培に対する知識がないユーザーも、抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量が高い植物を容易に栽培・収穫することができる。
【0099】
これに加えて、本発明の一実施例によると、抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量が高いと共に、緑変が最小化されることによって、商品性が高い野菜(特に、大豆もやし及び緑豆もやし)を提供することができる。特に、大豆もやしの場合は、緑変が起こって緑色を帯びる場合、食品の味感を低下させ、商品性が低下するという問題がある。しかし、本発明の一実施例によると、緑変が起こらないか、緑変が起こったとしても最小化されることによって、機能性に加えて商品性が高い野菜を提供することができる。
【0100】
以上では、抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量が高い植物を栽培するための植物栽培装置及び植物栽培方法に対して説明した。以下では、本発明の一実施例に係る植物栽培装置及び植物栽培方法を通じて得ることができる植物のフェノール性化合物の総量及び抗酸化活性に対してデータを通じてさらに詳細に説明する。
【0101】
1.光照射による大豆もやしのフェノール性化合物の総量
【0102】
図4a及び
図4bは、実施例及び比較例に係る植物栽培方法を用いて栽培した大豆もやしのフェノール性化合物の総量を比較した図である。
【0103】
実施例1及び実施例3に係る大豆もやしの場合は、栽培過程中に約295nmの波長の光が照射され、実施例2及び実施例4に係る大豆もやしの場合は、栽培過程中に約275nmの波長の光が照射された。実施例1乃至実施例4の大豆もやしの場合は、いずれも収穫直前に24時間にわたって各波長帯域の光が照射された。
【0104】
比較例1及び比較例2の大豆もやしの場合は、栽培過程で約200nm~約400nmの波長の光が照射されなかった。
【0105】
約200nm~約400nmの波長の光の照射有無の他に、実施例1乃至実施例4と比
較例1及び比較例2の大豆もやしは、いずれも同一の環境で生長した。前記実施例及び比較例の大豆もやしは、いずれも約200nm~約400nmの波長の光以外の光に露出しない植物栽培装置内で約96時間にわたって栽培された。
【0106】
図4aを参考にすると、比較例1の大豆もやしと実施例1及び実施例2の大豆もやしとを比較したとき、実施例1及び実施例2の大豆もやしは、比較例1の大豆もやしと比べてフェノール性化合物の総量が有意味に高いことを確認することができた。
【0107】
具体的に、実施例1の大豆もやしは、比較例1の大豆もやしよりフェノール性化合物の総量が約20.9%だけ高く、実施例2の大豆もやしは、比較例1の大豆もやしよりフェノール性化合物の総量が約14.1%だけ高かった。
【0108】
図4bを参考にすると、比較例2の大豆もやしと実施例3及び実施例4の大豆もやしとを比較したとき、実施例3及び実施例4の大豆もやしは、比較例2の大豆もやしと比べてフェノール性化合物の総量が有意に高いことを確認することができた。
【0109】
具体的に、実施例3の大豆もやしは、比較例2の大豆もやしよりフェノール性化合物の総量が約14.6%だけ高く、実施例4の大豆もやしは、比較例2の大豆もやしよりフェノール性化合物の総量が約23.7%だけ高かった。
【0110】
したがって、実施例1乃至実施例4と比較例1及び比較例2とを比較すると、大豆から生長した大豆もやしの場合、約200nm~約400nmの波長の光が照射されるかどうかによって大豆もやし内のフェノール性化合物の総量が大きく変わり得ることを確認した。
【0111】
次に、フェノール性化合物の総量の差が実際の抗酸化活性の差で表れるかどうかを確認するために、
図5a及び
図5bに示した抗酸化活性測定試験を行った。
【0112】
2.光照射による大豆もやしの抗酸化活性
【0113】
図5a及び
図5bは、実施例1乃至実施例4と比較例1及び比較例2の抗酸化活性を測定して示した図である。
【0114】
抗酸化活性は、実施例及び比較例の大豆もやしに含有された全ての抗酸化物質の活性酸素消去能力を測定することによって確認した。
【0115】
抗酸化活性は、ABTS[2,2’-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulphonic acid]を用いるABTS検出法を用いて測定した。青色を帯びるABTSラジカルカチオンは、抗酸化物質と出合って無色の中性形態に還元されるが、抗酸化物質が多いほど、ABTSラジカルカチオンが無色の中性形態に還元される量が増加し、ABTSが帯びる青色が薄くなる。よって、実施例及び比較例の大豆もやし抽出液をABTS溶液と反応させた後、ABTS溶液の色変化を分光光度法的(Spectrophotometric)に分析し、抗酸化物質であるトロロックス(Trolox)の抗酸化活性と比べた抗酸化活性を測定した。
【0116】
図5aを参考にすると、比較例1の大豆もやしと実施例1及び実施例2の大豆もやしとを比較したとき、実施例1及び実施例2の大豆もやしは、比較例1の大豆もやしと比べて抗酸化活性が有意に高いことを確認することができた。
【0117】
具体的に、実施例1の大豆もやしは、比較例1の大豆もやしより抗酸化活性が約19.
7%だけ高く、実施例2の大豆もやしは、比較例1の大豆もやしより抗酸化活性が約19.8%だけ高かった。
【0118】
図5bを参考にすると、比較例2の大豆もやしと実施例3及び実施例4の大豆もやしとを比較したとき、実施例3及び実施例4の大豆もやしは、比較例2の大豆もやしと比べて抗酸化活性が有意に高いことを確認することができた。
【0119】
具体的に、実施例3の大豆もやしは、比較例2の大豆もやしより抗酸化活性が約8.4%だけ高く、実施例4の大豆もやしは、比較例2の大豆もやしより抗酸化活性が約14.3%だけ高かった。
【0120】
これによって、約200nm~約400nmの波長の光が照射されるかどうかによって大豆もやし内のフェノール性化合物の総量が大きく変わり、これは、有意な抗酸化活性の差につながり得ることを確認することができた。
【0121】
3.光照射による大豆もやしの乾燥重量
【0122】
次に、約200nm~約400nmの波長の光が照射されることによって大豆もやしの生長が阻害され得るかどうかを確認するために、比較例及び実施例の大豆もやしの乾燥重量を測定した。
【0123】
図6は、比較例及び実施例の大豆もやしの乾燥重量を示した図である。
【0124】
図6を参考にすると、比較例1に係る大豆もやしの乾燥重量を100%としたとき、実施例1に係る大豆もやしの乾燥重量は97.2%で、実施例2に係る大豆もやしの乾燥重量は96.1%であることを確認することができた。
【0125】
比較例及び実施例に係る大豆もやしの乾燥重量は、4%未満の範囲で差を有することを確認することができ、測定誤差を考慮したとき、実施例及び比較例に係る大豆もやしの重量は実質的に同一であることが確認された。これによって、約200nm~約400nmの波長の光を照射すると、大豆もやしの生長を阻害することなく、大豆もやし内のフェノール性化合物の総量のみを高めることができることを確認することができた。
【0126】
4.光照射による緑豆のフェノール性化合物の総量
【0127】
【0128】
まず、
図7a及び
図7bは、実施例及び比較例に係る植物栽培方法を用いて栽培した緑豆もやしのフェノール性化合物の総量を比較した図である。
【0129】
実施例5及び実施例7に係る緑豆もやしの場合は、栽培過程中に約295nmの波長の光が照射されており、実施例6及び実施例8に係る緑豆もやしの場合は、栽培過程中に約275nmの波長の光が照射された。実施例5乃至実施例8の緑豆もやしの場合は、いずれも収穫直前に24時間にわたって各波長帯域の光が照射された。
【0130】
比較例3及び比較例4の緑豆もやしの場合は、栽培過程で約200nm~約400nmの波長の光が照射されなかった。
【0131】
約200nm~約400nmの波長の光の照射有無の他に、実施例5乃至実施例8と比較例3及び比較例4の緑豆もやしは、いずれも同一の環境で生長した。前記実施例及び比較例の緑豆もやしは、いずれも約200nm~約400nmの波長の光以外の光に露出しない植物栽培装置内で約96時間にわたって栽培された。
【0132】
図7aを参考にすると、比較例3の緑豆もやしと実施例5及び実施例6の緑豆もやしとを比較したとき、実施例5及び実施例6の緑豆もやしは、比較例3の緑豆もやしと比べてフェノール性化合物の総量が有意に高いことを確認することができた。
【0133】
具体的に、実施例5の緑豆もやしは、比較例3の緑豆もやしよりフェノール性化合物の総量が約25.8%だけ高く、実施例6の緑豆もやしは、比較例3の緑豆もやしよりフェノール性化合物の総量が約22.5%だけ高かった。
【0134】
図7bを参考にすると、比較例4の緑豆もやしと実施例7及び実施例8の緑豆もやしとを比較したとき、実施例7及び実施例8の緑豆もやしは、比較例4の緑豆もやしと比べてフェノール性化合物の総量が有意に高いことを確認することができた。
【0135】
具体的に、実施例7の緑豆もやしは、比較例4の緑豆もやしよりフェノール性化合物の総量が約29.3%だけ高く、実施例8の緑豆もやしは、比較例4の緑豆もやしよりフェノール性化合物の総量が約53.5%だけ高かった。
【0136】
したがって、実施例5乃至実施例8と比較例3及び比較例4とを比較すると、緑豆から生長した緑豆もやしの場合、約200nm~約400nmの波長の光が照射されるかどうかによって緑豆もやし内のフェノール性化合物の総量が大きく変わり得ることを確認した。
【0137】
5.光照射による緑豆の抗酸化活性
【0138】
次に、フェノール性化合物の総量の差が実際の抗酸化活性の差として表れるかどうかを確認するために、
図8a及び
図8bに示した抗酸化活性測定試験を行った。
【0139】
図8a及び
図8bは、実施例5乃至実施例8と比較例3及び比較例4の抗酸化活性を測定して示した図である。
【0140】
図8aを参考にすると、比較例3の緑豆もやしと実施例5及び実施例6の緑豆もやしとを比較したとき、実施例5及び実施例6の緑豆もやしは、比較例3の緑豆もやしと比べて抗酸化活性が有意に高いことを確認することができた。
【0141】
具体的に、実施例5の緑豆もやしは、比較例3の緑豆もやしより抗酸化活性が約59.6%だけ高く、実施例6の緑豆もやしは、比較例3の緑豆もやしより抗酸化活性が約67.8%だけ高かった。
【0142】
図8bを参考にすると、比較例4の緑豆もやしと実施例7及び実施例8の緑豆もやしとを比較したとき、実施例7及び実施例8の緑豆もやしは、比較例4の緑豆もやしと比べて抗酸化活性が有意に高いことを確認することができた。
【0143】
具体的に、実施例7の緑豆もやしは、比較例4の緑豆もやしより抗酸化活性が約36.5%だけ高く、実施例8の緑豆もやしは、比較例4の緑豆もやしより抗酸化活性が約67.5%だけ高かった。
【0144】
これによって、約200nm~約400nmの波長の光が照射されるかどうかによって緑豆もやし内のフェノール性化合物の総量が大きく変わり、これは、有意な抗酸化活性の差につながり得ることを確認することができた。
【0145】
6.光照射による緑豆の乾燥重量
【0146】
次に、約200nm~約400nmの波長の光が照射されることによって緑豆もやしの生長が阻害され得るかどうかを確認するために、比較例及び実施例の緑豆もやしの乾燥重量を測定した。
【0147】
図9は、比較例及び実施例の緑豆の乾燥重量を示した図である。
【0148】
図9を参考にすると、比較例3に係る緑豆もやしの乾燥重量を100%にしたとき、実施例5に係る緑豆もやしの乾燥重量は107.7%で、実施例6に係る大豆もやしの乾燥重量は99.7%であることを確認することができた。
【0149】
したがって、約200nm~約400nmの波長の光が照射されたとき、緑豆もやしの生長が増加したり(実施例5)、そのままであったりすること(実施例6)を確認することができ、これによって、約200nm~約400nmの波長の光は、緑豆もやしの生長を妨害しないことを確認することができた。
【0150】
7.光照射による大豆もやし及び緑豆もやしの色比較
【0151】
図10a乃至
図10cは、本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物を撮影した写真である。
図11a乃至
図11cは、本発明の実施例及び比較例によって栽培した植物を撮影した写真である。
【0152】
図10a乃至
図10cは、実施例及び比較例の方法によって大豆から栽培した大豆もやしの色の差を比較するための図で、
図11a~
図11cは、実施例及び比較例の方法によって緑豆から栽培した緑豆もやしの色の差を比較するための図である。
【0153】
図10a及び
図11aは、それぞれ比較例の方法で約200nm~約400nmの光を照射せずに暗室条件で栽培した大豆もやし及び緑豆もやしを撮影したものである。
図10b及び
図11bは、収穫直前に24時間にわたってそれぞれ約295nmの波長の光を照射して栽培した大豆もやし及び緑豆もやしを撮影したものである。
図10c及び
図11cは、収穫直前に24時間にわたってそれぞれ約275nmの波長の光を照射して栽培した大豆もやし及び緑豆もやしを撮影したものである。
【0154】
大豆もやし及び緑豆もやしの場合、通常、黄色を帯びると商品性が高い。よって、フェノール性化合物の総量が高い場合にも、緑色に変わると商品性が低下し得る。これによって、約200nm~約400nmの光を照射したとき、大豆もやし及び緑豆もやしの色が変わるかどうかを確認した。
【0155】
図10a乃至
図11cで確認できるように、約200nm~約400nmの光を照射したかどうかとは関係なく、大豆もやし及び緑豆もやしは、生長が阻害されることもなく、緑色に変化することもなかった。よって、本発明の一実施例に係る植物栽培装置又は植物栽培方法を用いると、外観上の変化、特に緑色に変わることによって商品性が低下することなく、抗酸化活性及びフェノール性化合物の総量を高めることができることを確認することができた。
【0156】
8.照射された光の波長による大豆もやしの色比較結果
【0157】
図12a乃至
図12dは、波長別の光照射による大豆もやしの色変化を示した写真で、
図12a乃至
図12cは、それぞれ対照群、実験例1乃至実験例3の写真である。
【0158】
本実施例において、対照群は、3日間暗室で大豆もやしの種子を育てた後、4日目に24時間にわたって暗室状態を維持したものであり、実験例1乃至実験例3は、それぞれ3日間暗室で種子を育てた後、4日目に295nm、315nm、及び365nmの光を24時間にわたって10μW/cm2のエネルギー量で照射したものである。
【0159】
図12a乃至
図12dを参照すると、同一のエネルギー量の光を同一の条件で波長のみを変えて大豆もやしに印加したが、大豆もやしの色変化が異なる形に表れた。特に、365nmの光を印加した大豆もやしの場合、緑変現象が激しく表れた。
【0160】
大豆もやしは、緑色を帯びる場合、商品性がないと判断される。
【0161】
9.照射された光の波長、照射エネルギー、及び照射時間による大豆もやしの機能性物質の比較
【0162】
表1は、商品性がないと判断された365nmの光を除いて、295nm及び315nmの光を印加した場合のフェノール性化合物の総量及び抗酸化活性を調査した結果である。表1において、対照群は、3日間暗室で大豆もやしの種子を育てた後、4日目に24時間にわたって暗室状態を維持したものであり、実験例1及び実験例2は、それぞれ3日間暗室で種子を育てた後、4日目に295nm及び315nmの光を24時間にわたって10μW/cm2のエネルギー量で照射したものである。対照群、実験例1乃至実験例2において、それぞれは5回にわたって繰り返し行われ、1回当りに20個の大豆が使用された。
【0163】
【0164】
表2及び表3は、表1の各結果をまとめたものであって、表2は、表1の対照群、実験例1及び実験例2の乾燥重量、総フェノール性物質、及び抗酸化活性の平均値を示したもので、表3は、表2の実験例1及び実験例2の結果値の対照群と比べた増減率を示したものである。
【0165】
【0166】
【0167】
表2及び表3を検討すると、295nm及び315nmの光を印加した実験例1及び実験例2において、実験例2の乾燥重量が減少したことが示されたが、その量が少ないので、有意な差異はないと判断された。
【0168】
総フェノール性物質の場合、295nmの光を印加した実験例1において、総フェノール性物質の含量が対照群と比べて約6.70%だけ増加したことが示されたが、実験例2において、増減率が-3.34%と大きくはないが、総フェノール性物質の含量が減少したことが示された。
【0169】
抗酸化活性の場合、315nmの光を印加した実験例1において、抗酸化活性が対照群と比べて約14.49%だけ増加したことが示され、実験例2においても、抗酸化活性が対照群と比べて約5.97%だけ増加したことが示された。
【0170】
これを通じて、295nmの光を印加した場合、315nmの光を印加した場合より機能性物質であるフェノール性物質の生成が促進されるという点を確認することができ、295nmの光を印加した場合、315nmの光を印加した場合より抗酸化活性も著しく増加するという点を確認することができた。特に、295nmの光を印加した実験例1において、対照群と比べて抗酸化活性が14.49%も増加した。
【0171】
10.光の照射時間による大豆もやしの機能性物質の比較
【0172】
295nmの光を照射する場合、総フェノール性化合物の含量及び抗酸化活性が増加したので、次に、295nmの光を照射するときの照射時間によるフェノール性化合物及び抗酸化活性程度を実験した。
【0173】
表4は、295nmの光を印加した場合のフェノール性化合物の総量及び抗酸化活性を調査した結果であって、対照群は、3日間暗室で大豆もやしの種子を育てた後、4日目に24時間にわたって暗室状態を維持したものであり、実験例1乃至実験例5は、それぞれ3日間に暗室で種子を育てた後、4日目に収穫直前に1時間、3時間、6時間、12時間、及び24時間にわたって照射したものである。実験例1乃至実験例5において、照射された光の総エネルギー量は10μW/cm2に設定された。
【0174】
対照群、実験例1乃至実験例5において、それぞれは5回にわたって繰り返し行われ、1回当りに20個の大豆が使用された。ここで、0日目は、4日にわたる処理が終了した
直後、すなわち、光を照射した直後を意味し、3日目は、4日にわたる処理が終了した後、一般的な大豆もやしの保存過程と類似する形で1℃~4℃の冷蔵庫で3日間保管した後を意味する。0日目において、直後に各機能性物質の含量を確認できない場合、4日目の処理が終了した後の状態が実質的に同一に維持されるように急冷し、-80℃の冷凍庫に保管した後で各機能性物質の含量を確認した。
【0175】
【0176】
表5及び表6は、表4の各結果をまとめたものであって、表5は、表4の対照群、実験例1乃至実験例5の乾燥重量、総フェノール性物質、及び抗酸化活性の平均値を示したもので、表6は、表4の実験例1乃至実験例5の結果値の対照群と比べた増減率を示したものである。
【0177】
【0178】
【0179】
表5及び表6を検討すると、時間によって光を印加した実験例1乃至実験例5において、0日目及び3日目のいずれも全体的に乾燥重量が減少する傾向性を示したが、その量が少ないので、有意な差異はないと判断された。
【0180】
総フェノール性物質の場合、0日目及び3日目の光の照射時間が増加するほど、概ね増加する傾向性を有すると見なされるが、減少する実験例もあり、光の照射時間がすなわちフェノール性物質の含量を高めると見なすことは困難であった。
【0181】
但し、実験例5の場合、すなわち、24時間にわたって光を照射したとき、他の実験例と比べて著しく高い程度にフェノール性物質が増加することを確認することができた。0日目の場合、実験例5を除いて、対照群と比べて最も高いフェノール性物質の増加量は9.11%であったが、実験例の場合、増加量が21.45%に該当した。3日目の場合も、実験例5を除いて、対照群と比べて最も高いフェノール性物質の増加量は7.14%であったが、実験例5の場合、増加量が17.79%に該当した。
【0182】
抗酸化活性の場合、0日目及び3日目の光の照射時間が増加するほど、概ね増加する傾向性を有すると見なされるが、減少する実験例もあり、光の照射時間がすなわち抗酸化活性の含量を高めると見なすことは困難であった。
【0183】
但し、実験例5の場合、すなわち、24時間にわたって光を照射したとき、他の実験例
と比べて著しく高い程度に抗酸化活性が増加することを確認することができた。0日目の場合、実験例5を除いて、対照群と比べて最も高い抗酸化活性の増加量は7.18%であったが、実験例の場合、増加量が14.49%に該当した。3日目の場合も、実験例5を除いて、対照群と比べて最も高い抗酸化活性の増加量は12.92%であったが、実験例5の場合、増加量が20.90%に該当した。
【0184】
これを通じて、特定波長、例えば、195nmの光を同一の量のエネルギーで印加したとしても、24時間にわたって印加する場合、著しく高い機能性物質の含量を有する野菜を得ることができることが確認された。
【0185】
以上では、本発明の好適な実施例を参照して説明したが、該当の技術分野で熟練した当業者又は該当の技術分野で通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載した本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更可能であることを理解できるだろう。
【0186】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載した内容に限定されるのではなく、特許請求の範囲によって定められるべきであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空きスペースを含む本体部と、
前記本体部の内部に嵌められた形態で提供される栽培台と、
光源部と、
を含み、
前記栽培台は、複数の開口部を含む板状部材であり、
前記光源部は、防水構造を有し、
前記光源部は、200nm以上400nm以下の波長の光を出射し、
前記光源部から出射された光が植物に照射されることにより、前記植物内のフェノール性化合物または抗酸化活性の少なくとも一つが増加する、植物栽培装置。
【請求項2】
前記光源部は、可視光が除外された環境で光を出射する、請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記栽培台は、前記本体部の下端に近接して配置されている、請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記光源部から出射された光が植物に照射されることにより、前記植物のフェノール性化合物の総量が増加する、請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記光源部は、異なる波長の光を出射する複数の発光ダイオードを含む、請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記光源部が200nm以上400nm以下の光を出射するとき、前記光源部は、可視光帯域の光を出射しない、請求項5に記載の植物栽培装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の一実施例において、植物栽培方法は、前記植物の種子を発芽させた後で生長させる段階と、生長した前記植物の収穫直前に前記植物に前記光を照射する段階と、前記種子から生長した前記植物を収穫する段階とを含んでもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
次に、植物栽培装置は、現在の時刻Tと第1時点T1との差、すなわち、第1時点T1から現在まで経過した時間を算出する(S102)。そして、植物栽培装置は、現在まで経過した時間(T-T1)が、既に設定された総栽培時間Ptと、同様に既に設定された第2時間P2との差(Pt-P2)以上であるかどうかを判断する。第2時間P2は、以上で説明したように、種子から生長した植物に光を照射する時間であるので、総栽培時間Ptと第2時間P2との差(Pt-P2)は、総栽培時間Ptのうち光を照射せずに栽培する時間を意味する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0169
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0169】
抗酸化活性の場合、295nmの光を印加した実験例1において、抗酸化活性が対照群と比べて約14.49%だけ増加したことが示され、実験例2においても、抗酸化活性が対照群と比べて約5.97%だけ増加したことが示された。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0181
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0181】
但し、実験例5の場合、すなわち、24時間にわたって光を照射したとき、他の実験例と比べて著しく高い程度にフェノール性物質が増加することを確認することができた。0日目の場合、実験例5を除いて、対照群と比べて最も高いフェノール性物質の増加量は9.11%であったが、実験例5の場合、増加量が21.45%に該当した。3日目の場合も、実験例5を除いて、対照群と比べて最も高いフェノール性物質の増加量は7.14%であったが、実験例5の場合、増加量が17.79%に該当した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0183
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0183】
但し、実験例5の場合、すなわち、24時間にわたって光を照射したとき、他の実験例と比べて著しく高い程度に抗酸化活性が増加することを確認することができた。0日目の場合、実験例5を除いて、対照群と比べて最も高い抗酸化活性の増加量は7.18%であったが、実験例5の場合、増加量が14.49%に該当した。3日目の場合も、実験例5を除いて、対照群と比べて最も高い抗酸化活性の増加量は12.92%であったが、実験例5の場合、増加量が20.90%に該当した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0184
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0184】
これを通じて、特定波長、例えば、295nmの光を同一の量のエネルギーで印加したとしても、24時間にわたって印加する場合、著しく高い機能性物質の含量を有する野菜を得ることができることが確認された。
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【外国語明細書】