(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160328
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ポリアミド及びそれらから製造される成形部品
(51)【国際特許分類】
C08G 69/00 20060101AFI20241106BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20241106BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08G69/00
C08L77/06
C08K7/04
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024133842
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2020543923の分割
【原出願日】2019-03-21
(31)【優先権主張番号】18163755.4
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18168594.2
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ファン ダイク, ハンス クラース
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフス, マーティン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エンジンマウント、エンジンカバー及びエンジン部品用のハウジングなどの自動車両において、金属部品に代わって使用できる機械的な高荷重に耐える特性を有するポリアミドポリマー及びポリアミドポリマー組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミドポリマーは、少なくとも145℃のガラス転移温度(Tg)及びTg+15℃に等しい温度(Tmod)で測定した、100Mpa~700MPaの範囲の動的弾性率(E’)を有する。また、前記ポリアミドポリマー及び繊維補強剤を含むポリマー組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも145℃のガラス転移温度(Tg)及びTg+15℃に等しい温度(Tmod)で測定した、100Mpa~700MPaの範囲の動的弾性率(E)を有するポリアミドポリマーであって、TgとE’の両方とも、ASTM-D5026-15の方法に従って動的機械的熱分析(DMTA)によって測定されるポリアミドポリマー。
【請求項2】
TmodでのE’が、200MPa~650MPa、好ましくは300MPa~600MPaの範囲であり、及び/又は前記ポリアミドポリマーが、少なくとも150℃、好ましくは155℃~175℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する請求項1に記載のポリアミドポリマー。
【請求項3】
前記ポリアミドポリマーが、少なくとも280℃、好ましくは300℃~350℃の範囲の溶融温度(Tm)を有する、半結晶性の半芳香族ポリアミドを含む請求項1又は2に記載のポリアミドポリマー。
【請求項4】
ジアミン及びジカルボン酸のモル量に対して、少なくとも95モル%の、ジアミン及びジカルボン酸に由来する繰り返し単位からなり、少なくとも40モル%、好ましくは少なくとも50モル%、より好ましくは少なくとも60モル%の、環式モノマーに由来する前記繰り返し単位を含む請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミドポリマー。
【請求項5】
前記環式モノマーが、芳香族モノマー又は脂環式モノマー、或いは芳香族モノマーと脂環式モノマーとの組み合わせ、好ましくは芳香族ジカルボン酸と脂環式ジアミンとの組み合わせを含む請求項4に記載のポリアミドポリマー。
【請求項6】
前記ポリアミドポリマーが、コポリアミド又は少なくとも2種のポリアミドのブレンドであり、XT/XIも若しくはXT/XI/YT/YI、XT/XI/RT/RI又はXT/XI/YT/YI/RT/RIの表記のうちの1つによって表される全モノマー組成を有し、式中
- Xは、鎖状脂肪族C4~C5ジアミンを表し、
- Yは、少なくとも6個の炭素原子を有する鎖状脂肪族ジアミンを表し、
- Rは、分岐のジアミン(B)又は環式ジアミン(C)、或いはそれらの組み合わせを表し、
- Iは、イソフタル酸を表し、及び
- Tは、テレフタル酸を表し、
並びに、前記ポリアミドが、
○ (X)+(Y)+(R)の総モル量に対して、15~100モル%のX、0~80モル%の(Y)、及び0~10モル%の(R)、及び
○ (I)+(T)の総モル量に対して、20~45モル%の(I)及び55~80モル%の(T)を含む
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミドポリマー。
【請求項7】
前記ポリアミドポリマーが、コポリアミド又は少なくとも2種のポリアミドのブレンドであり、ZT/BT若しくはZT/BT/ZI/BI、又はZT/BT/CT若しくはZT/BT/CT/ZI/BI/CIの表記のうちの1つによって表される全モノマー組成を有し、式中
- Xは、鎖状脂肪族C4~C5ジアミンを表し、
- Yは、少なくとも6個の炭素原子を有する鎖状脂肪族ジアミンを表し、
- Zは、少なくとも4個の炭素原子を有する鎖状脂肪族ジアミンを表し、(Z)は、(X)及び(Y)のうちの少なくとも一方であり;
- Iは、イソフタル酸であり、
- Tは、テレフタル酸を表し、
- Bは、分岐のジアミンを表し;及び
- Cは、環式ジアミンを表し;
並びに、前記ポリアミドが、
a.(I)+(T)の総モル量に対して、0~30モル%の(I)及び70~100モル%の(T)、並びに
b.(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、25~90モル%の(X)、0~60モル%の(Y)、10~50モル%の(B)及び0~5モル%の(C)又は
c.(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、15~80モル%の(X)、0~65モル%の(Y)、20~50モル%の(B)及び0~5モル%の(C)又は
d.(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、0~20モル%の(X)、25~70モル%の(Y)、25~50モル%の(B)及び0~5モル%の(C)のいずれかを含む請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミドポリマー。
【請求項8】
前記ポリアミドポリマーが、コポリアミド又は少なくとも2種のポリアミドのブレンドであり、ZT/CT、ZT/CT/ZI/CI、ZT/CT/BT及びZT/CT/BT/ZI/CI/BIの表記のうちの1つによって表される全モノマー組成を有し、式中
- Xは、鎖状脂肪族C4~C5ジアミンを表し、
- Yは、少なくとも6個の炭素原子を有する鎖状脂肪族ジアミンを表し、
- Zは、少なくとも4個の炭素原子を有する鎖状脂肪族ジアミンを表し、(Z)は、(X)及び(Y)のうちの少なくとも一方であり;
- Iは、イソフタル酸であり、
- Tは、テレフタル酸を表し、
- Bは、分岐のジアミンを表し;及び
- Cは、環式ジアミンを表し
並びに、前記ポリアミドが、
○ (I)+(T)の総モル量に対して、0~35モル%の(I)及び65~100モル%の(T)と、並びに
○ (X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、30~90モル%の(X)、0~60モル%の(Y)、5~40モル%の(C)及び0~30モル%の(B)又は
○ (X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、15~80モル%の(X)、0~70モル%の(Y)、10~40モル%の(C)及び0~30モル%の(B)
○ 又は(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、0~20モル%の(X)、10~80モル%の(Y)、15~40モル%の(C)及び0~30モル%の(B)のいずれかを含む請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミドポリマー。
【請求項9】
前記ポリアミドが、半結晶性ポリアミドと非晶性の半芳香族ポリアミドとのブレンドを含み、且つ前記非晶性ポリアミドが、PA-BT、PA-BI、PA-BT/BI、PA-ZI/ZT、PA-CT及びPA-CI、並びにそれらのブレンド及びコポリマーからなる群から選択される非晶性の半芳香族ポリアミドであり、式中、Tは、テレフタル酸であり、Iは、イソフタル酸であり、(Z)は、少なくとも4個の炭素原子を有する鎖状ジアミンであり、(B)は、分岐の脂肪族ジアミンであり、(C)は、環式ジアミンである請求項1~8のいずれか1項に記載のポリアミドポリマー。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載のポリアミドポリマーであって、
- 前記分岐の脂肪族ジアミン(B)が、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(D)、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、又はそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、或いは
- 前記脂環式ジアミン(C)が、ビス-(アミノメチル)-シクロヘキサン(BAC)、イソホロンジアミン(IPD)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(MAC)及びビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PAC)のうちのいずれか1種、又は2種以上のそれらの組み合わせからなる群から選択され、
- 或いは、前記選択された分岐の脂肪族ジアミン(B)と前記選択された脂環式ジアミン(C)との組み合わせ
ポリアミドポリマー。
【請求項11】
ポリマー組成物であって、
(a)ポリアミドポリマー、及び
(b)繊維補強剤若しくは充填材、又はそれらの組み合わせを含み、
前記ポリアミドポリマーが、少なくとも145℃のガラス転移温度(Tg)及びTg+15℃に等しい温度(Tmod)での、高くとも700MPaの動的弾性率(E’)を有し、前記Tg及びE’の両方ともASTM-D5026-15に従った方法で、DMTAによって測定されるポリマー組成物。
【請求項12】
前記ポリアミドポリマーが、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリアミドポリマーである請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記繊維補強剤が、ガラス繊維又は炭素繊維、或いはそれらの組み合わせを含む請求項11又は12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記組成物が、
(a)30~80重量%、好ましくは40~75重量%の前記ポリアミドポリマー、及び
(b)20~70重量%、好ましくは25~60重量%の前記繊維補強剤若しくは前記充填材、又はそれらの組み合わせを含み
前記重量パーセントが、前記組成物の総重量に対してである請求項11~13のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記ポリアミドポリマーの前記ガラス転移温度(Tg)が、少なくとも150℃、好ましくは155℃~175℃の範囲であり、及び/又はTg+15℃に等しい前記温度、Tmodでの前記動的弾性率(E’)が、100MPa~700MPa、好ましくは200MPa~650MPa、より好ましくは300MPa~600MPaの範囲である請求項11~14のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
請求項11~15のいずれか1項に記載のポリマー組成物からなる又は製造される成形部品。
【請求項17】
前記部品が、好ましくはエンジンマウント、エンジンカバー、又はエンジン部品用のハウジングである自動車のエンジンルームに使用される耐荷重性の構造部品である請求項16に記載の成形部品。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の成形部品を含む自動車両。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ポリアミドポリマーと、ポリアミドポリマー及び補強剤を含むポリマー組成物と、並びにそれらから製造される成形部品とに関する。本発明は、航空機、自動車、建築用途などの機械的な高荷重に耐えるプラスチック部材、例えばエンジンのサスペンションマウント、バー及びフレーム、並びにエンジン部品用のエンジンカバー及びハウジングに使用できるポリマー組成物に関する。
【0002】
軽量化を達成するために、金属部品に代わってプラスチック部品が、多くの車両サブシステム及び部材で既に使用されている。しかしながら、プラスチック部材は、非耐荷重性又は適度な耐荷重性の用途に適用され、例外的に中程度の耐荷重性の用途だけに適用される。熱硬化性樹脂を浸み込ませた炭素繊維構造体をベースとする連続繊維強化プラスチック(CFRP)は、約35年前に開発された。これらは主に航空用途に使用されるが、自動車用途に殆ど使用されていない。動的荷重条件下での不十分な疲労特性が、重大な欠点となった。鋼及びアルミニウム構造体は、今もなお、高荷重に耐える構造要素の選択で、特に自動車用途において一番目に選ぶ材料である。構造部品の寸法を増大することによって、荷重に耐える特性の点でプラスチック材料の欠点を補うことでは、必要とされる軽量化をもたらさない。さらに、自動車エンジンのサスペンションに適用される多軸応力の状況である耐荷重性部品は、厳しい動的条件及び環境条件の下で作動しなければならず、その条件下で、耐荷重性部品は、荷重変動、及び温度変動並びに化学物質の曝露を受ける。繊維強化ポリマー組成物中の繊維含有量を増大して、剛性を高め、それにより金属の機械物性を厳密に満たすことでは、求められる解決策がもたらされることはない。
【0003】
金属を置き換える主要な領域は、自動車のエンジンのサスペンションマウント及びエンジン搭載サブシステムにおいてである。金属部品が、耐高荷重性であることで適用される他の用途は、例えば、エンジン部品用のハウジング及びカバーである。これらの部品では、高荷重に対する耐性力及び高い緩和力(dampening)が必要とされるだけでなく、ハウジングの場合には、高い表面品質及び高い破裂圧力による良好な封止性能も必要であることが多い。
【0004】
プラスチック部材は、高剛性及び高強度を有すると同時に、長期間の荷重条件下で低クリープを示し、大きな曲げ力に耐えることができ、動的荷重条件下で良好な疲労特性を有するのが望ましい。エネルギー価格の高騰、エネルギー消費の削減及び環境汚染の削減によって、さらに軽量化する必要性があることを考慮して、プラスチック材料及び構造部品の設計をさらに改善することに尽力がなされている。
【0005】
したがって、本発明の第一目的は、機械的な高荷重に耐えるプラスチック部材に使用できるポリマーだけでなく、そこで使用するために改善した特性を有するポリマー組成物を提供することである。さらなる目的は、金属部品に代わって使用できる機械的な高荷重に耐える特性を有するプラスチック部品を提供することである。
【0006】
この目的は、本発明によるポリアミドポリマー及びポリマー組成物、並びにそれらから製造される耐荷重性の構造部品で達成された。
【0007】
本発明によるポリアミドポリマーは、少なくとも145℃のガラス転移温度(Tg)及びTg+15℃に等しい温度(Tmod)で測定した、100Mpa~700MPaの範囲の動的弾性率(E’)を有し、TgとE’の両方とも動的機械的熱分析(DMTA)によって測定される。
【0008】
本発明によるポリマー組成物は、
- ポリアミドポリマー、及び
- 繊維補強剤、
- 並びに場合によりさらなる成分を含み、
ポリアミドポリマーは、少なくとも145℃のガラス転移温度(Tg)及びTg+15℃に等しい温度(Tmod)で測定した、100Mpa~700MPaの範囲の動的弾性率(E’)を有し、TgとE’の両方とも動的機械的熱分析(DMTA)によって測定される。本明細書においては、TgとE’の両方ともASTM-D5026-15の方法に従ってDMTAにより測定する。
【0009】
本発明によるポリアミドポリマーの効果は、Tgが低いポリアミドを含む組成物、又はTgが高く且つTmodでのE’が高いポリアミドを含む組成物、又はTgが高く、TmodでのE’が低い非晶性ポリアミドを含む組成物と比較すると、それらの組成物が、高量のガラス繊維を含有する場合、又は衝撃改質剤で強化されている場合でさえも、本発明によるポリアミドポリマーを含む組成物から製造した構造部分は、変動する温度に曝されながらも、動的な多軸荷重下で、上述の組成物よりも良好に作動することである。上述の組成物は、低温で強度が低下するか、適用温度でかなりの歪が生じるかのどちらかである。さらに、本発明による組成物は、ダブルノッチ引張強さが大きく、多軸曲げ性能が高いことを示す。これらの結果は、本発明による組成物においてTgを超えるポリアミドの特性が、周囲条件で機械物性に良い効果をもたらすという意味で非常に驚くべきである。
【0010】
耐荷重性の部品のために組成物に使用される、本発明のポリアミドポリマーのTmodでのE’は、150MPa~700MPa、好ましくは200MPa~650MPa、より好ましくは300MPa~600MPaの範囲であるのが好適である。最大動的弾性率が小さいことの利点は、改善されたダブルノッチ引張強さである一方で、最小動的弾性率が大きいと、圧力下での変形を抑えるのが有利となる。
【0011】
ポリアミドポリマーは、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも155℃、そして好適には155℃~175℃以上の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するのが好ましい。Tgが高いと、高いピーク温度又は高い連続的な使用温度を有する用途を可能にするので、高いTgは、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】試験したビーム型の製品の略図である。変動荷重下及び変動温度下で試験するための試験品として、従来の射出成形条件を用いて、全長250mm並びに幅及び高さ30mmのビーム型の製品を射出成形した。ビーム型製品は、リブ付きで、肉厚3,0mmを有する。製品の半径は、0,5mmである。
【
図2】ノッチ付きの試験片の略図である。ISO527-1A引張試験片(断面積-幅×厚さ-10,0+0,2×4,0±0,2mm
2)に、先端(密閉)角度45°、ノッチ半径0,25mmを有するV字型のノッチを用いて両側からノッチを付けた。ノッチの深さは、2±0.05mmであり、ノッチの深さを除いた残りの断面幅は、6±0.02mmである。ノッチの部分を除いた残りの断面積は、6±0.02×4±0.2mm
2である。
【0013】
本発明の好ましい一実施形態においては、ポリアミドポリマーは、少なくとも半結晶性ポリアミドを含む。本明細書においては、ポリアミドポリマーは、単一の半結晶性ポリアミド、又は少なくとも2種混和の半結晶性ポリアミドのブレンド、又は少なくとも1種の半結晶性ポリアミドと少なくとも1種の非晶性ポリアミドとの混和性ブレンドからなるのが好適である。半結晶性ポリアミドは、半結晶性の半芳香族ポリアミドでも、半結晶性の脂肪族ポリアミドであってもよい。本明細書においては、半結晶性ポリアミドは、脂環式モノマーを含む脂肪族モノマーに由来する繰り返し単位からなる脂肪族ポリアミド、又は芳香族モノマー及び脂肪族モノマーに由来する繰り返し単位を含む半芳香族ポリアミドであるのが好適である。ポリアミドポリマーは、半結晶性ポリマーからなるのが好ましい。半結晶性ポリアミドは、半結晶性の半芳香族ポリアミドであるのが最も好ましい。
【0014】
ポリアミドポリマーが、2種以上のポリアミドの混和性ブレンドからなる場合は、DMTA測定は、1つのガラス転移温度を示すこととなる。
【0015】
半結晶性ポリマーに関しては、本明細書においては、ガラス転移を特徴とする非晶相、及び融点を特徴とする結晶相を有するポリマーと理解する。
【0016】
ポリアミドポリマーは、少なくとも280℃の溶融温度(Tm)、そして好ましくは300℃~350℃の範囲のTmを有する、半結晶性の半芳香族ポリアミドを好適に含む。
【0017】
本明細書においては、溶融温度(Tm)は、20℃/分の加熱速度及び冷却速度でのN2雰囲気下における予備乾燥したサンプルにおいて、ISO-11357-1/3,2011に従ってDSC法により測定される。本明細書においては、Tmは、第二加熱サイクルにおける最大融解ピークのピーク値から算出している。
【0018】
本発明によるポリアミドポリマーは、ジアミン及びジカルボン酸に由来する繰り返し単位、並びに場合により他のモノマーに由来する繰り返し単位を含む。このような他の繰り返し単位、又は他のモノマーの量は、ジアミン、ジカルボン酸及び他のモノマーの総モル量に対して、5モル%未満、好ましくは3モル%未満に制限して保たれるものとする。つまり、ポリアミドポリマーは、少なくとも95モル%、そして好ましくは少なくとも97モル%の、ジアミン及びジカルボン酸に由来する繰り返し単位からなる。ポリアミドポリマーが、ジアミン、ジカルボン酸及び他のモノマーの総モル量に対して、98~100モル%の、ジアミン及びジカルボン酸に由来する繰り返し単位と、0~2モル%の、ジアミン及びジカルボン酸と異なる他のモノマーに由来する繰り返し単位を含むのが最も好ましい。
【0019】
前記繰り返し単位を誘導するジアミン及びジカルボン酸は、ジアミン及びジカルボン酸のモル量に対して、少なくとも40モル%、好ましくは少なくとも50モル%、より好ましくは少なくとも60モル%の環式モノマーを含むのが好適である。
【0020】
環式モノマーは、芳香族モノマー又は脂環式モノマー或いは芳香族モノマーと脂環式モノマーの組み合わせを含むのが好適である。好適な芳香族モノマーは、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアミン及びアリールアルキルジアミンである。好適な脂環式モノマーは、脂環式ジアミン及び脂環式ジカルボン酸である。環式モノマーは、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアミン、アリールアルキルジアミン、脂環式ジアミン及び脂環式ジカルボン酸のうちの1種、又はそれらのうちの2種以上のいずれかの組み合わせを含んでもよい。環式モノマーは、芳香族ジカルボン酸と脂環式ジアミンの組み合わせを含むのが好ましい。
【0021】
ジアミン及びジカルボン酸は、環式モノマーの次に、他の二官能性モノマーを含んでもよい。これらの他の二官能性モノマーは、鎖状脂肪族ジアミン、鎖状脂肪族ジカルボン酸、分岐の脂肪族ジアミン又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、或いはそれらのいずれかの組み合わせを含むのが好適である。
【0022】
ポリアミドポリマーは、半結晶性ポリアミドを含むのが好ましく、半結晶性ポリアミドは、半結晶性の脂肪族ポリアミドでも半結晶性の半芳香族ポリアミドでもよく、好ましくは半結晶性の半芳香族ポリアミドである。
【0023】
半結晶性の脂肪族ポリアミド中の脂環式モノマーは、脂環式ジカルボン酸又は脂環式ジアミン、或いはそれらの組み合わせを含んでよい。本明細書においては、脂環式モノマーは、鎖状脂肪族ジアミン、鎖状脂肪族ジカルボン酸、分岐の脂肪族ジアミン、又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、或いはそれらのいずれかの組み合わせである、他の脂肪族モノマーと組み合わせるのが好適である。
【0024】
半芳香族ポリアミド中の芳香族モノマーは、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアミン又はアリールアルキルジアミン、或いはそれらの組み合わせを含むのが好適である。脂肪族モノマーは、本明細書において、鎖状脂肪族モノマー若しくは分岐の脂肪族モノマー又は脂環式モノマー或いはそれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0025】
好ましい一実施形態においては、半結晶性ポリアミドは、ジアミン及びジカルボン酸に由来する繰り返し単位を含む半結晶性の半芳香族ポリアミドを含み、又はからなり、少なくとも95モル%のジカルボン酸は、香族ジカルボン酸、又は芳香族ジカルボン酸と脂環式ジカルボン酸との組み合わせである。少なくとも98モル%のジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸であるのがより好ましい。本明細書においては、ジアミンは、場合により、1種又は複数種の分岐の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、アリールアルキルジアミン、及び芳香族ジアミン、或いはそれらの組み合わせと合わせて鎖状脂肪族ジアミンを含むのが好適である。
【0026】
好適な鎖状脂肪族ジアミンの例は、1,2-エチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン及び1,12-ドデカンジアミンである。
【0027】
好適な分岐の脂肪族ジアミンの例は、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン及び2-メチル-1,8-オクタンジアミンである。
【0028】
好適な脂環式ジアミンは、シクロヘキサンジアミンなどの6~24個の炭素原子を含む脂環式ジアミン、[例えば1,3-シクロヘキシルジアミン及び1,4-シクロヘキシルジアミン、例えば、1,4-トランス-シクロヘキサンジアミン]、ビス-(アミノメチル)-シクロヘキサン(BAC)、[例えば1,3-ビス-(アミノメチル)-シクロヘキサン及び1,4-トランス-ジアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン(IPD)、アルキル置換したビス-(アミノシクロヘキシル)メタン、[例えばビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)]、ビス-(アミノシクロヘキシル)プロパン、[例えばビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)]、ノルボルナンジアミン、[例えば2,6-ノルボルナンジアミン]、ノルボルナンジメチルアミン、[例えば2,6-ビス-(アミノメチル)-ノルボルナン]、2,2-(4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)-プロパン(PACP)、ビス-(4-アミノ-3-エチル-シクロヘキシル)-メタン(EACM)、及びビス-(4-アミノ-3,5-ジメチル-シクロヘキシル)-メタン(TMACM)、又はそれらの混合物である。
【0029】
具体的には、ビス-(アミノメチル)-シクロヘキサン(BAC)、イソホロンジアミン(IPD)、アルキル置換したビス-(アミノシクロヘキシル)メタン又はビス-(アミノシクロヘキシル)プロパンが好ましく、より具体的にはビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)又はビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、或いはそれらの組み合わせが好ましい。
【0030】
アリールアルキジアミンの例は、メタ-キシリレンジアミン(MXD)及びパラ-キシリレンジアミン(PXD)である。
【0031】
芳香族ジアミンの例は、メタ-フェニレンジアミン及びパラ-フェニレンジアミンである。
【0032】
鎖状脂肪族ジカルボン酸は、4~18個の炭素原子を有する鎖状脂肪族ジカルボン酸が好適であり、それらの例は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及び1,12-ドデカン二酸である。
【0033】
脂環式ジカルボン酸の例は、シス型及びトランス型並びにそれらのいずれかの混合物を含むシクロヘキサンジカルボン酸である。
【0034】
芳香族ジカルボン酸の例は、テレフタル酸(T)、ナフタレンジカルボン酸(N)、ビフェニルジカルボン酸(BDA)及びイソフタル酸(I)である。
【0035】
好ましい一実施形態においては、ポリアミドポリマーは、芳香族ジカルボン酸及びジアミンに由来する繰り返し単位を含む半結晶性の半芳香族ポリアミドを含み、又はからなり、芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はビフェニルジカルボン酸、或いはそれらの少なくとも2種の組み合わせからなる。本明細書においては、ジアミンは、鎖状ジアミンと分岐のジアミンの組み合わせ、又は鎖状ジアミンと脂環式ジアミン、或いは鎖状ジアミン、分岐のジアミン及び脂環式ジアミンの組み合わせを含むのが好ましい。
【0036】
別の好ましい一実施形態においては、ポリアミドポリマーは、芳香族ジカルボン酸及びジアミンに由来する繰り返し単位を含む半結晶性の半芳香族ポリアミドを含む、又はからなり、芳香族ジカルボンは、イソフタル酸とテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びビフェニルジカルボン酸のうちの1種との組み合わせ、又はイソフタル酸とテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びビフェニルジカルボン酸のうちの少なくとも2種との組み合わせからなる。本明細書においては、ジアミンは、少なくとも鎖状C4又は鎖状C5ジアミン(つまり、1,4-ジアミノブタン又は1,4-ブタンジアミン(DAB)(C4鎖状脂肪族ジアミン)及び1,5-ジアミノペンタン又は1,5-ペンタンジアミン(PDA)(C5鎖状脂肪族ジアミン));或いは鎖状ジアミンと分岐のジアミン、又は鎖状ジアミンと脂環式ジアミン、又は鎖状ジアミン、分岐のジアミン及び脂環式ジアミンの組み合わせを含むのが好ましい。ジアミンは、少なくとも鎖状C4又はC5ジアミン及び脂環式ジアミンを含むのがより好ましい。
【0037】
更に好ましい一実施形態においては、ポリアミドポリマーは、芳香族ジカルボン酸と、脂環式ジカルボン酸と、ジアミンとの組み合わせに由来する繰り返し単位を含む半結晶性の半芳香族ポリアミドを含む、又はからなる。本明細書においては、芳香族ジカルボンは、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びビフェニルジカルボン酸のうちの1種、又はそれらの少なくとも2種の組み合わせ、或いはそれらの少なくとも1種とイソフタル酸との組み合わせからなる。本明細書においては、ジアミンは、少なくとも1種の鎖状ジアミン、又は鎖状ジアミンと分岐のジアミン及び脂環式ジアミンのうちの少なくとも1種との組み合わせを含むのが好ましい。
【0038】
本発明の特定の一実施形態においては、ポリアミドポリマーは、ポリアミドコポリマー又は2種以上のポリアミドのブレンドからなり、コポリマー又はそのブレンドは、以下の表記のひとつにより表される全体組成を有し、
- Xは、鎖状脂肪族C4~C5ジアミン(1,4-ブタンジアミン及び1,5-ペンタンジアミンの少なくとも1種を含む)を表し、
- Yは、少なくとも6個の炭素原子を有する鎖状脂肪族ジアミンを表し、
- Zは、少なくとも4個の炭素原子を有する鎖状脂肪族ジアミンを表し、(Z)は、(X)及び(Y)のうちの少なくとも一方であり、
- Bは、分岐のジアミンを表し、及び
- Cは、環式ジアミンを表し、
- Rは、分岐のジアミン(B)又は環式ジアミン(C)、或いはそれらの組み合わせを表し、
- Iは、イソフタル酸を表し、及び
- Tは、テレフタル酸を表す。
【0039】
好適な全モノマー組成の第一表記は:
- XT/XI又はXT/XI/YT/YIであり、或いは少量の分岐のジアミン及び又は環式ジアミンでのそれらの変性は、表記XT/XI/RT/RI又はXT/XI/YT/YI/RT/RIにより表され、
○ (X)+(Y)+(R)の総モル量に対して、15~100モル%のX、0~80モル%の(Y)、及び0~10モル%の(R)、並びに
○ (I)+(T)の総モル量に対して、20~45モル%の(I)及び55~80モル%の(T)を含む。
【0040】
好ましい一実施形態においては、(X)の量は、(X)+(Y)の総モル量に対して、30~100モル%であり、及び(Y)の量は、0~70モル%である。(I)が、(I)+(T)の総モル量に対して、20~40モル%の量で存在し、且つ(T)が、60~80モル%の量で存在するのも好ましい。(R)が、環式ジアミンからなるのもまた好ましい。本明細書においては、(R)の量は、例えば、0モル%、2モル%、又は5モル%、或いは8モル%であってよい。
【0041】
(Y)が長鎖の脂肪族ジアミンからなる場合、それらの量は、好ましくはさらに制限される;例えば、
- (Y)はヘキサメチレンジアミン(C6ジアミン)であり、それらの量は好ましくは多くとも85モル%の量であり、(X)は少なくとも15モル%であり、より好ましくは多くとも70モル%の量であり、(X)は少なくとも30モル%の量である;
- (Y)はノナンジアミン(C9ジアミン)であり、それらの量は好ましくは多くとも75モル%、(X)は少なくとも25モル%、より好ましくは多くとも60モル%の量であり、(X)は少なくとも40モル%の量である;
- (Y)はデカンジアミン(C10ジアミン)であり、それらの量は好ましくは多くとも65モル%であり、(X)は少なくとも35モル%、より好ましくは多くとも50モル%の量であり、(X)は少なくとも50モル%の量である;及び
- (Y)は、ドデカンジアミン(C12ジアミン)であり、それらの量好ましくは多くとも最大50モル%であり、(X)は少なくとも50モル%、より好ましくは多くとも35モル%の量であり、(X)は少なくとも65モル%の量である。
【0042】
この第一群の表記からのポリアミドの例は、PA-4T/6T/4I/6I、PA-5T/6T/5I/6IPA-5T/4T/5I/4I及びPA-4T/10T/4I/10Iであり、それぞれのモノマーが上述のモル量で存在する。
【0043】
好適な全モノマー組成の第二表記は:ZT/CTであり、及びイソフタル酸及び/又は分岐のジアミンでのそれらの変性は、表記:ZT/CT/ZI/CI、ZT/CT/BT、及びZT/CT/BT/ZI/CI/BIにより表され:
○ (I)+(T)の総モル量に対して、0~35モル%の(I)及び65~100モル%の(T)と、
○ (X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、30~90モル%の(X)、0~60モル%の(Y)、5~40モル%の(C)及び0~30モル%の(B)、又は
○ (X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、15モル%~80モル%の(X)、0~70モル%の(Y)、10~40モル%の(C)、及び0~30モル%の(B)、
○ 又は(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、0~20モル%の(X)、10~80モル%の(Y)、15~40モル%の(C)及び0~30モル%の(B)のいずれかを含む。
【0044】
それらの好ましい第一実施形態においては、(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、30~90モル%であり、及び(Y)の量は、0~60モル%であり、(C)の量は、10~40モル%であり、(B)の量は、0~20モル%の(B)である。より好ましくは(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、30~90モル%であり、(Y)の量は、0~55モル%であり、(C)の量は、15~40モル%であり、(B)の量は0~10モル%の(B)である。
【0045】
それらの好ましい第二実施形態においては、(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、15~80モル%であり、(Y)の量は、0~70モル%の(Y)であり、(C)の量は、15~40モル%であり、(B)の量は0~30モル%である。より好ましくは(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、15~80モル%であり、(Y)の量は、0~65モル%の(Y)であり、(C)の量は、20~40モル%であり、(B)の量は0~20モル%である。
【0046】
それらの好ましい第三実施形態においては、(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、0~20モル%であり、(Y)の量は、15~80モル%の(Y)であり、(C)の量は、20~40モル%であり、(B)の量は0~25モル%である。好適には(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、0~15モル%であり、(Y)の量は、25~70モル%の(Y)であり、(C)の量は、20~40モル%であり、(B)の量は10~20モル%である。
【0047】
それらの好ましい第四実施形態においては、(I)の量は、(I)+(T)の総モル量に対して、10~35モル%の(I)であり、(T)の量は、65~100モル%の(T)である。この好ましい第四実施形態は、第一から第三の好ましい実施形態のいずれかひとつと、又は上述のより好ましい量で組み合わせられるのが好適である。
【0048】
第二表記による組成を有するポリアミドの例は、6T/6I/MACMT/MACMI;6T/MACMT/DT;4T/4I/PACMT/PACMI;4T/10T/MACMT及び6T/6I/IPDT/IPDI;であり、それぞれのモノマーは、上述の量で存在する。
【0049】
好適な全モノマー組成の第三表記は:
- ZT/BT又はZT/BT/ZI/BI、又はZT/BT/CT又はZT/BT/CT/ZI/BI/CIであり、
○ (I)+(T)の総モル量に対して、0~30モル%の(I)及び70~100モル%の(T)と、並びに
○ (X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、25~90モル%の(X)、0~60モル%の(Y)、10~50モル%の(B)及び0~5モル%の(C)又は
○ (X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、15~80モル%の(X)、0~65モル%の(Y)、20~50モル%の(B)及び0~5モル%の(C)又は
○ (X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、0~20モル%の(X)、25~70モル%の(Y)、25~50モル%の(B)及び0~5モル%の(C)のいずれかを含む。
【0050】
それらの好ましい第一実施形態においては、(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、30~90モル%であり、及び(Y)の量は、0~50モル%であり、(B)の量は、20~50モル%であり、(C)の量は、0~5モル%の(B)である。より好ましくは(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、40~80モル%であり、(Y)の量は、0~40モル%であり、(B)の量は、20~40モル%であり、(C)の量は0~5モル%の(B)である。
【0051】
それらの好ましい第二実施形態においては、(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、15~80モル%であり、(Y)の量は、0~60モル%の(Y)であり、(B)の量は、25~50モル%であり、(C)の量は0~5モル%である。より好ましくは(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、15~75モル%であり、(Y)の量は、0~60モル%の(Y)であり、(B)の量は、25~40モル%であり、(C)の量は0~5モル%である。
【0052】
それらの好ましい第三実施形態においては、(X)の量は、(X)+(Y)+(B)+(C)の総モル量に対して、10~20モル%であり、(Y)の量は、35~65モル%の(Y)であり、(B)の量は、25~40モル%であり、(C)の量は0~5モル%である。
【0053】
それらの好ましい第四実施形態においては、(I)の量は、(I)+(T)の総モル量に対して、10~35モル%の(I)であり、(T)の量は、65~100モル%の(T)である。この好ましい第四実施形態は、第一から第三の好ましい実施形態のいずれかと、又は上述のより好ましい量で組み合わせられるのが好適である。
【0054】
それらの例は、PA-4T/6T/DT、PA-4T/10T/DT、PA-5T/6T/6*T、PA-4T/4I/6T/6I/DT/DI、及びPA-5T/5I/6*T/6*Iであり、それぞれのモノマーは、上述のモル量で存在する。本明細書においては、Dは、2-メチルペンタ-メチレンジアミン又は3-メチル-1,5-ペンタンジアミン或いはそれらの混合物を表し、及び6*は、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、或いはそれらの組み合わせである。
【0055】
上の表記によるポリアミドにおいては、環式ジアミン(C)は、好ましくはビス-(アミノメチル)-シクロヘキサン(BAC)、イソホロンジアミン(IPD)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)及びビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、又はそれらの組み合わせ、より好ましくはビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)又はビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、或いはそれらの組み合わせからなる群のひとつを含む。
【0056】
本発明の別の好ましい実施形態においては、ポリアミドポリマーは、上の表記のいずれかひとつによる組成を有し、全テレフタル酸の少なくとも一部は、ナフタレンジカルボン酸(N)又はビフェニルジカルボン(BDA)、或いはそれらの組み合わせで置換される。ナフタレンジカルボン酸(N)によるテレフタル酸の完全な置換に関して、表記は、以下の通りである:
第一郡の表記:XN/XI、XN/XI/YN/YI、XN/XI/RN/RI XN/XI/YN/YI/RN/RI;
第二郡の表記:ZN/CN、ZN/CN/ZI/CI、ZN/CN/BN、及びZN/CN/BN/ZI/CI/BI;並びに
第三郡の表記:ZN/BN、ZN/BN/ZI/BI、及びZN/BN/CN。
【0057】
上の表記によるポリアミドポリマーは、ジアミン及びジカルボン酸の次に、少量の他のモノマー単位を含有してもよいが、しかし、それは限定した量であることを留意されたい。それらの量は、ジアミン、ジカルボン酸及び他のモノマーの総モル量に対して、多くとも2モル%、好ましくは多くとも1モル%、又は更により良好には0~0.5モル%であるのが好ましいとするものとする。このような他のモノマーは、例えば、その両方共が末端封止剤として働くことができる、1種又は複数種のモノカルボン酸及びモノアミン、並びに分岐化剤として働くことができる、トリアミン及びトリカルボン酸を含んでよい。
【0058】
上の表記によるポリアミドポリマーにおいて、(X)は、DAB又はPDAのいずれか、或いはそれらの組み合わせを含む。(Y)は、少なくとも6個の炭素原子を有する、少なくとも1種の鎖状脂肪族ジアミンを含む。(Y)は、6個以上の炭素原子を有する、少なくとも2種以上の鎖状脂肪族ジアミンの組み合わせを含んでもよい。少なくとも6個の炭素原子を有する鎖状脂肪族ジアミン、又は6個以上の炭素原子を有する、2種以上のジアミンの組み合わせを含む組成物においては、(Y)は、少なくとも1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)を含むのが好ましい。より好ましくは少なくとも50モル%、更により好ましくは少なくとも70モル%、又は更に少なくとも80モル%の(Y)は、HMDAである。
【0059】
実施形態においては、ポリアミドポリマーは、分岐の脂肪族ジアミン(B)を含み、(B)は、少なくとも1種類の分岐のジアミンを含む。(B)は、少なくとも2種以上の異なる分岐の脂肪族ジアミンの組み合わせを含んでもよい。分岐のジアミン(B)は、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、又は2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンのいずれか、或いはそれらのいずれかの組み合わせを含むのが好ましい。より好ましくは少なくとも50モル%、そして更により好ましくは少なくとも70モル%、又は更に少なくとも80モル%の(B)は、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン又は3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、或いはそれらの組み合わせからなる。
【0060】
実施形態においては、ポリアミドポリマーは、環式ジアミン(C)を含み、(C)は、少なくとも1種類の環式ジアミンを含む。(C)は、少なくとも2種以上の異なる環式ジアミンの混み合わせを含んでもよい。その組み合わせは、少なくとも1種の脂環式ジアミンと少なくとも1種のアリールアルキルジアミンとの組み合わせからだけでなく、2種以上の脂環式ジアミンからでも、2種以上のアリールアルキルジアミンからなってもよい。好ましくは(C)は、脂環式ジアミンを含む。環式ジアミン(C)は、ビス-(アミノメチル)-シクロヘキサン(BAC)、イソホロンジアミン(IPD)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)、及びビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)のうちのいずれか1種、或いはそれらの組み合わせを含むのが好ましい。より好ましくは少なくとも50モル%、そして更により好ましくは少なくとも70モル%、又は更に少なくとも80モル%の(C)は、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)又はビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、或いはそれらの組み合わせからなる。
【0061】
上の表記によるポリアミドポリマーにおいては、ジアミンが、少なくとも1種の鎖状C4又はC5のジアミン及び脂環式ジアミンを含むそれらの実施形態が、最も好ましい。
【0062】
実施形態においては、ポリアミドポリマーは、半結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドとのブレンドを含み、非晶性ポリアミドは、非晶性の半芳香族ポリアミド又は非晶性の脂肪族ポリアミド、或いはそれらの組み合わせであってよく、好ましくは、非晶性の半芳香族ポリアミドである。
【0063】
このような非晶性ポリアミドの例は、脂環式ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸をベースとする非晶性の脂肪族ポリアミド、並びに脂環式ジアミン及び芳香族ジカルボン酸をベースとする非晶性の半芳香族ポリアミド、又はジアミン及び少なくとも50モル%のイソフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸をベースとする非晶性の半芳香族ポリアミド、又は分岐のジアミン及び芳香族ジカルボン酸、或いはそれらの組み合わせをベースとする非晶性の半芳香族ポリアミドである。
【0064】
非晶性の半芳香族ポリアミドは、PA-BT/BI、PA-ZI/ZT(少なくとも50/50のI/Tモル比を有する)、PA-CT及びPA-CI、並びにそれらのブレンド及びコポリマーからなる群から好適に選択される。本明細書においては、Tは、テレフタル酸であり、Iは、イソフタル酸であり、Zは、少なくとも4個の炭素原子を有する鎖状ジアミンであり、Bは、分岐の脂肪族ジアミンであり、Cは、環式ジアミンである。非晶性の半芳香族ポリアミドの例は、PA-6I、PA-6I/6T、PA-PACMI、PA-PACMT、PA-MACMT、PA-MACMI、PA-IPDT、PA-IPDI、PA-6*T、PA-6*I、PA-DT/DI、PA-DT及びPA-DI、並びにそれらのコポリマーである。
【0065】
非晶性脂肪族ポリアミドは、PA-BQ、PA-CQ、PA-BL、PA-CL及びPA-ZQ、並びにそれらのブレンド及びコポリマーからなる群から好適に選択される。本明細書においては、Zは、少なくとも4個の炭素原子を有する鎖状ジアミンであり、Bは、分岐の脂肪族ジアミンであり、Cは、環式ジアミンであり、Lは、鎖状脂肪族ジカルボン酸であり、Qは、脂環式ジカルボン酸である。非晶性の脂肪族ポリアミドの例は、PA-MACM6、PA-PACM6、PA-PACM10、及びPA-IPD6である。PA-MACM12及びPA-PACM12。
【0066】
半結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドとのブレンドを含むポリアミドポリマーは、非晶性ポリアミドとして非晶性の半芳香族ポリアミドを含むのが好ましい。
【0067】
本発明はまた、ポリマーを含む熱可塑性ポリマー組成物に関する。本発明による熱可塑性ポリマー組成物は、少なくとも(a)ポリアミドポリマー及び(b)繊維補強剤又は充填材、或いはそれらの組み合わせを含む。ポリアミドポリマーは、少なくとも145℃のガラス転移温度(Tg)及びTg+15℃に等しい温度(Tmod)で測定した、100Mpa~700MPaの範囲の動的弾性率(E’)を有する。本明細書においては、Tg及びE’は、上述のASTM-D5026-15に従った方法により、測定される。
【0068】
熱可塑性ポリマー組成物に関して、本明細書においては、溶融加工できるポリマー組成物、つまり、ポリマーが加熱時に溶融状態であり、溶融加工した後に冷却することにより、再び固体化できるポリマー組成物と理解している。
【0069】
本発明による熱可塑性ポリマー組成物中のポリアミドポリマーは、本発明によるポリアミドポリマー又は本明細書において既に記載したそれらの特定の若しくは好ましい実施形態のいずれかのポリアミドポリマーである。
【0070】
繊維に関しては、本明細書においては、幅(W)に対する長さ(L)のアスペクト比が少なくとも10である細長のボディ又は細長の微粒子と解釈される。これは、幅(W)に対する長さ(L)のアスペクト比が少なくとも10未満である微粒子と理解されている充填材と異なる。
【0071】
本発明による熱可塑性ポリマー組成物中の繊維補強剤は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維及び鉱物繊維からなる群から選択される繊維を含んでよい。組成物は、少なくともガラス繊維又は炭素繊維、或いはそれらの組み合わせを含むのが好ましい。ガラス繊維は、例えば、A-ガラス、C-ガラス、D-ガラス、E-ガラス、H-ガラス、M-ガラス、R-ガラス及びS-ガラス、又はそれらのいずれかの混合物から選択できる。E-ガラス、又はE-ガラスと1種若しくは複数種の他のガラス繊維を含むガラス繊維の混合物から製造されるガラス繊維が好ましい。
【0072】
繊維は、丸形、つまり円形断面を有しても、又は例えば、板状、楕円形、長円形、長楕円形又は長方形断面を有する非円形断面を有してもよい。ガラス繊維のうちで、板ガラス繊維が、特に好ましい。
【0073】
丸形若しくは円形ガラス繊維は、5~20μm、好ましくは5~15μmそして特に好ましくは6~12μmの直径を好適に有する。炭素繊維は、3~15μm、好ましくは4~12μm、特に好ましくは4~10μmの直径を好適に有する。
【0074】
非円形ガラス繊維は、幅の厚さに対するアスペクト比、W/Tの少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2、そしてより好ましくは2.5~6の範囲の断面を好適に有する。本明細書においては、Wは、幅、つまり断面の最大寸法を表し、Tは、厚さ、つまり断面の最小寸法を表す。本明細書においては、断面寸法、幅(W)及び厚さ(T)は、断面の長さ方向に垂直な繊維の断面で測定される。
【0075】
組成物は、連続繊維(ロービング)、長繊維(LFT繊維)、チョップドファイバー(短繊維)又はミルドファイバー、或いはそれらのいずれかの組み合わせを含有してもよい。チョップドファイバー又は短繊維は、1~25mm、好ましくは1.5~20mm、より好ましくは2~12mmそして最も好ましくは2~8mmの繊維長さを好適に有する。
【0076】
組成物は、ガラス繊維と炭素繊維との組み合わせを含むのが好ましい。そのような組み合わせは、機械物性、コスト及び軽量化において最適なバランスをもたらす。繊維は、30~70重量%のガラス繊維と、70~30重量%の炭素繊維とからなるのが好適である。
【0077】
組成物が、少なくとも非円形ガラス繊維を含むのもまた好ましい。組成物が、非円形ガラス繊維、及び円形ガラス繊維又は炭素繊維のいずれか、或いはそれらの組み合わせを含むのは好適である。好ましい一実施形態においては、繊維は、30~70重量%の板ガラス繊維と、70~30重量%の円形ガラス繊維又は炭素繊維、或いはそれらの組み合わせからなる。
【0078】
使用できる充填材は、当業者に公知の全ての粒子状充填材である。これらには、具体的には、鉱物、タルク、雲母、ドロマイト、ケイ酸塩、石英、珪灰石、カオリン、ケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チョーク、重質ガラス、ガラスフレーク、金属フレーク、金属被覆粒子、重質炭素繊維、重質鉱物繊維、重質ガラス繊維、重質又は沈降炭酸カルシウム、石灰、長石、硫酸バリウム、永久磁性若しくは着磁性金属又は合金、ガラスビード、中空ガラスビード、中空球形ケイ酸塩充填材及びそれらの混合物からなる群から選択される粒子状充填材が含まれる。
【0079】
ポリマー組成物は、
(a)30~80重量%、好ましくは40~75重量%のポリアミドポリマー、及び
(b)20~70重量%、好ましくは25~60重量%の繊維補強剤又は充填材、或いはそれらの組み合わせ
を含むのが好適であり、
本明細書においては、重量パーセントは、組成物の総重量に対してである。
【0080】
好ましい一実施形態においては、ポリマー組成物は、
(a)30~80重量%、好ましくは40~70重量%のポリアミドポリマー、及び
(b)20~70重量%、好ましくは25~55重量%の繊維補強剤又は充填材、或いはそれらの組み合わせ、及び
(c)0~30重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0.01~10重量%の1種又は複数種の他の成分;
からなり、
重量パーセントは、組成物の総重量に対してである。
【0081】
好ましい一実施形態においては、成分(b)は、50~100重量%の繊維補強剤及び50~0重量%の充填材からなる。繊維補強剤は、成分(b)の総重量に対して、70~100重量%の量で存在し、そして充填材は、30~0重量%の量で存在するのがより好ましい。
【0082】
本発明によるポリマー組成物は、ポリアミドポリマーの次に、1種又は複数種の他のポリマー成分、つまり、ポリアミドポリマー以外の他のポリマー成分を含んでもよいが、但し、それらの量を制限することにより、組成物の良好な機械物性及び耐荷重特性を保持し続けることを条件とする。ポリマー組成物は、多くとも10重量%、好ましくは0~5重量%、より好ましくは0~2.5重量%の他のポリマー成分を含むのが好ましい。本明細書においては、重量パーセント(重量%)は、ポリアミドポリマーと他のポリマー成分との総重量に対してである。使用できる他のポリマー成分は、仮に使用するならば、例えば、顔料マスターバッチに顔料担体として使用されるポリマーである。
【0083】
本発明による組成物が含んでもよい他の成分は、例えば、充填又は強化されたポリアミド組成物に使用される難燃剤及び補助添加剤である。これらの添加物は、安定剤、[例えば無機安定剤、有機安定剤、具体的には酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、及びUV安定剤]、光吸収剤、[例えばUV吸収剤又はUV遮断剤、IR吸収剤及びNIR吸収剤]、粘着防止剤、造核剤、晶析促進剤、結晶抑制剤、触媒、鎖調整剤、脱泡剤、鎖長延長剤、伝導剤、剥離剤、潤滑剤、染料、マーキング剤、無機顔料、有機顔料、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、二酸化チタン、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸バリウム、フォトクロミック剤、帯電防止剤、離型剤、螢光発光剤、メタリック顔料、及びそれらの混合物からなる群から好適に選択される。
【0084】
難燃剤として、ハロゲン無含有の難燃剤とハロゲン含有の難燃剤の両方とも、使用でき、ハロゲン無含有の難燃剤を使用するのが好ましい。
【0085】
熱可塑性ポリマー組成物は、少なくとも150℃、好ましくは155℃~175℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有するポリアミドポリマーを含むのが好ましい。また好ましくは、Tg+15℃に等しい温度、Tmodでのポリアミドポリマーの動的弾性率(E’)は、100MPa~700MPa、好ましくは200MPa~650MPa、より好ましくは300MPa~600MPaの範囲である。
【0086】
本発明はまた、成形部品、より具体的には、自動車エンジンルームで使用する耐荷重性の構造部品に関する。本発明による成形部品は、本発明又は既に記載したようにそれらのいずれかの実施形態によるポリマーから製造される。成形部品は、従来の成形技術、例えば射出成形により、及び当業者に公知の標準の成形条件を適用して製造できる。
【0087】
本発明による耐荷重性の構造部品は、本発明によるポリマー組成物で製造された少なくとも一部を含む。耐荷重性の構造部品は、ポリマー組成物部品で組み立てられる又はポリマー組成物でオーバーモールドされる、他の部品、例えば、金属インサートを含んでよい。結局は、耐荷重性の構造部品は、本発明によるポリマー組成物、又は既に記載したそれらのいずれかの実施形態よるポリマー組成物からなる。
【0088】
本発明による組成物はまた、他の用途のための成形部品にも使用でき、その用途には、他の自動車用途だけでなく他の分野の用途も含むことができる。
【0089】
本発明による成形部品が使用できる自動車用途の例としては、以下に限定することなく、座席部品及び座席骨組み、エンジンカバーブラケット、エンジンクレードル、サスペンションアーム及びサスペンションクレードル、スペアタイヤウェル、シャーシ補強材、フロアパン、フロントエンド・モジュール、ステアリングコラム・フレーム、計器板、ドアシステム、車体パネル(例えば、水平車体パネル及びドアパネルなど)、テールゲート、ハードトップフレーム構造、コンバーチブルトップフレーム構造、屋根材構造、エンジンカバー、トランスミッション及び動力伝達部品用のハウジング、クラッチスレーブシリンダー、油受皿、エアバッグ用ハウジングキャニスター、自動車内部衝撃構造、エンジンサポートブラケット、クロスカービーム、バンパービーム、歩行者用安全ビーム、防火壁、リアパーセルシェルフ、車両の横方向隔壁(cross vehicle bulkhead)、冷媒ボトル及び消火器及びトラック圧縮空気ブレーキシステム容器などの圧力容器、ハイブリッド内燃機関/電気又は電気自動車のバッテリートレイ、自動車サスペンション・ウィッシュボーン及びコントロールアーム、サスペンションスタビライザーリンク、板バネ、車輪、レジャー用車両及びオートバイ用スイングアーム、フェンダー、屋根フレーム及びタンクフラップが挙げられる。
【0090】
本発明の好ましい一実施形態においては、本発明による組成物は、エンジンマウント、エンジンカバー及びエンジン部品用のハウジングからなる群から選択される、耐荷重性の構造部品に使用される。
【0091】
本発明はまた、既に本明細書に記載した本発明による成形部品を含む自動車両に関する。自動車両は、具体的には、エンジンマウント、エンジンカバー及びエンジン部品用のハウジングである、上述の耐荷重性の構造部品を含むエンジンルームを含むのが好ましい。
【0092】
本発明は、以下の実施例及び比較例でさらに例証される。
【0093】
[材料及び材料の調製]
ベースポリマーは、市販のポリアミドポリマーであるか又は従来の方法により調製したものであるかのどちらかである。
【0094】
異なるベースポリマーを押出器内で均質ブレンドを得る条件下で、溶融ブレンドして、本発明によるコポリマー及び比較の材料を調製した。
【0095】
従来の配合条件を適用する二軸押出機内で、コポリマーをガラス繊維と50/50重量%の比率で溶融ブレンドして、ポリマー組成物を調製した。
【0096】
適切な金型を備えた、実験室規模の射出成形装置において、従来の射出成形条件を適用して、ポリマー組成物を射出成形して、試験サンプルを調製した。ISO527-1Aに従って、幅10mmの典型的な4mmの引張試験片を調製した。
【0097】
DMTA測定に関して、水冷したダイヤモンド・ソーを用いてISO-527-1A試験片から、厚さ2.0mm、幅±4.0mm、及び長さ±80mmのサンプルを切断した。較正したHeidenhain膜厚計を用いて、寸法を測定した。DMTA測定の前に、105℃、150ミリバールの窒素圧力で48時間、サンプルを乾燥させた。
【0098】
変動荷重下及び変動温度下で試験するための試験品として、従来の射出成形条件を用いて、全長250mm並びに幅及び高さ30mmのビーム型の製品を射出成形した。ビーム型製品は、リブ付きで、肉厚3,0mmを有する。製品の半径は、0,5mmである。試験したビーム型の製品の略図を
図1に示す。
【0099】
[試験方法]
[ガラス転移温度(Tg)]
ASTM-D5026-15の方法に従ってDMTAにより、様々なポリマーのTgを測定した。周波数1Hz、1℃/分の加熱速度で-100℃~320℃の範囲の温度にわたって、GABO Eplexor 500N検査システムを用いて、動的粘弾性分析を実施した。測定中に、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)及びタンジェントデルタ(tanδ)を温度の関数として求めた。
【0100】
[溶融温度(Tm)]
20℃/分の加熱速度及び冷却速度でのN2雰囲気下における予備乾燥したサンプルにおいて、ISO-11357-1/3,2011に従ってDSC法により、溶融温度(Tm)を測定した。本明細書においては、第二加熱サイクルにおける最高の融解ピークのピーク値からTmを算出している。
【0101】
[動的弾性率(E’)]
ASTM-D5026-15の方法に従ってDMTAにより、様々なポリマーのE’を測定した。本明細書においては、Tg+15℃に等しい温度TmodでのE’。周波数1Hz、1℃/分の加熱速度で-100℃~320℃の範囲の温度にわたって、GABO Eplexor500N検査システムを用いて、動的粘弾性分析を実施した。測定中に、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)及びタンジェントデルタ(tanδ)を温度の関数として求めた。
【0102】
[ダブルノッチ引張試験]
ISO527-1A引張試験片(断面積-幅×厚さ-10,0+0,2×4,0±0,2mm
2)に、先端(密閉)角度45°、ノッチ半径0,25mmを有するV字型のノッチを用いて両側からノッチを付けた。ノッチの深さは、2±0.05mmであり、ノッチの深さを除いた残りの断面幅は、6±0.02mmである。ノッチの部分を除いた残りの断面積は、6±0.02×4±0.2mm
2である。ノッチ付きの試験片の略図を
図2に示す。通常の10倍である、挿入長さ115mm及び試験速度6,6mm/分で、ノッチ付きの試験片を室温で、試験した。記録した最大の力を上述の断面積で割り、破断応力(ノッチ強度)を算出した。
【0103】
[曲げ試験]
積層体(layup)のスパン180mmでの3点曲げにおいて、ビームを室温で試験した。鋼製圧子は、15mmの半径、積層体の2つの支点を有し、10mm/分の荷重速度で試験を実施した。試験中に事前に記録した最大力(ニュートンで)は、破損強度として報告する。
【0104】
[結果]
ベースポリマー、ポリマー組成物並びにこのポリマーの試験データ及び試験サンプルを表1に要約する。
【0105】
本発明を満たすさらなるポリマー及び本発明を満たしていない比較例を表2に示す。
【0106】
【0107】
【外国語明細書】