(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160332
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】太陽電池に使用される埋め込み空洞を有する積層構造体および関連する製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/054 20140101AFI20241106BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20241106BHJP
G02B 1/118 20150101ALI20241106BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L31/04 620
G02B5/02 C
G02B1/118
G02B5/18
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134053
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2022063869の分割
【原出願日】2011-04-06
(31)【優先権主張番号】61/388,233
(32)【優先日】2010-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/282,818
(32)【優先日】2010-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512261702
【氏名又は名称】オーワイ アイシーエス インテリジェント コントロール システムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】リンコ,カリ
(57)【要約】
【課題】現在の構成によってまだ満足に対処されていない1つ以上の問題を軽減し、かつ太陽光技術関連での使用に適した光学機能性構造体などの様々な機能性構造体の製造のために実施可能な代替案を提供する。
【解決手段】その中への光透過を可能にする実質的に光透過性材料を任意に含む第1の担体要素704と、いくつかの表面レリーフ形態708を含み、かつ入射光に対して少なくとも1つの所定の光学機能を有する少なくとも1つの表面レリーフパターンが設けられた第2の担体要素702であって、その中への光透過を可能にする実質的に光透過性材料を含む第2の担体要素とを含み、少なくとも1つの表面レリーフパターンが組み立てられた積層構造体内に埋め込まれ、いくつかの関連の空洞709が第1および第2の担体要素の界面に形成されるように、第1および第2の担体要素は互いに積層されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池用の集積化積層構造体であって、
- 平坦な要素として構成された第1の担体要素と、
- 中に少なくとも1つの表面レリーフパターンが形成される、平坦な要素として構成された第2の担体要素であって、前記表面レリーフパターンは、前記第1の担体要素と接合領域を確立するように構成されたいくつかの表面レリーフ形態と、前記表面レリーフ形態とは互い違いのいくつかの関連する凹部とを含む、第2の担体要素と、
を含む、集積化積層構造体であり、
前記第1の担体要素および前記第2の担体要素は、その中への光透過を可能にする光透過性材料からなり、
前記第1の担体要素および前記第2の担体要素を接合させることによる前記集積化積層構造体の形成の際に、少なくとも1つの分離した表面レリーフパターンが確立された積層構造体の内部に埋め込まれており、
それにより、いくつかの光学機能性空洞を含む少なくとも1つの埋め込みレリーフパターンが、前記第1の担体要素と前記第2の担体要素との間の界面に形成されており、
前記光学機能性空洞のうちの少なくとも1つは、その大きさに関してミクロ空洞であるかまたはより小さく、前記ミクロ空洞は、前記第1の担体要素の材料および前記第2の担体要素の材料のうちの1つとは異なる屈折率を有する固体材料を含み、
前記埋め込みレリーフパターンは、外部入射光に対して、典型的には日光として光学機能を果たすようにさせるレリーフ形態および関連する空洞を有するように構成されており、前記光学機能は、前記光を太陽電池構造体内部に維持することを改良し、従って光エネルギーの吸収および効率を改良するための、前記太陽電池構造体内での光再方向づけ機能である、集積化積層構造体。
【請求項2】
前記第1の担体要素は、全体的に平坦な要素として構成されている、請求項1に記載の集積化積層構造体。
【請求項3】
前記第1の担体要素の材料および前記第2の担体要素の材料の屈折率は、空気の屈折率よりも高い、請求項1または2に記載の集積化積層構造体。
【請求項4】
前記集積化積層構造体内に形成された空洞は、前記第1の担体要素の材料および前記第2の担体要素の材料のうちの1つとは異なる屈折率を有する気体を含む、請求項1~2の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項5】
前記気体は空気である、請求項4に記載の集積化積層構造体。
【請求項6】
前記集積化積層構造体内に形成された空洞は、前記第1の担体要素の材料および前記第2の担体要素の材料のうちの1つとは異なる屈折率を有する液体またはゲルを含む、請求項1に記載の集積化積層構造体。
【請求項7】
前記第1の担体要素および前記第2の担体要素のうちの何れか1つはフィルムである、請求項1~6の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項8】
前記フィルムは柔軟で屈曲可能なフィルムである、請求項7に記載の集積化積層構造体。
【請求項9】
前記第1の担体要素のフィルムは、前記第2の担体要素のフィルムよりも薄い、請求項7または8に記載の集積化積層構造体。
【請求項10】
前記埋め込みレリーフパターンは、前記構造体に入った入射光を結合するように構成されており、結合された入射光の入射角は、少なくとも130度の範囲全体を画定し、前記埋め込みレリーフパターンは、太陽電池の所定の方向に視準機能を用いて前記入射光を結合するように構成されている、請求項1~9の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項11】
埋め込みレリーフパターンまたは形態において光を到達した方向に戻すように後方結合および/または再方向づけすることによる内部光捕捉のために構成されたパターンまたは形態、および、反射機能を用いるかまたは反射機能を用いない、内部光の結合および/または再方向づけのために構成された埋め込みレリーフパターンまたは形態からなる群から選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項1~10の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項12】
前記集積化積層構造体は、共通の機能を有するレリーフ形態の少なくとも部分的に埋め込まれた多層パターンを含み、前記多層パターンは、前記集積化積層構造体内で互いに積層された1つ以上の要素によって確立される、請求項1~11の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項13】
前記埋め込みレリーフパターンの光学機能は、光方向づけ機能、光捕捉機能、反射機能、透過機能、半透過機能、光取り込み機能、光取り出し機能、偏光機能、回折機能、屈折機能、防眩機能、不透明機能、反射防止機能、レンズ機能、収束機能、発散機能、波長修正機能、散乱機能、着色機能、媒体分配機能、および拡散機能からなる群から選択される少なくとも1つの機能である、請求項1~12の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項14】
前記第1の担体要素または前記第2の担体要素は、プラスチック、エラストマー、ポリマー、ガラス、半導体、シリコン、接着剤、樹脂、およびセラミック材料からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1~13の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項15】
前記集積化積層構造体は、コーティングおよび/または表面構造体として提供される機能性表層を含み、前記機能性表層は、反射防止機能、疎水機能、親水機能、および自己洗浄機能からなる群から選択される少なくとも1つの機能を有する、請求項1~14の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項16】
前記第1の担体要素の両方の側面上に配置された少なくとも2つの機能性表層を含む、請求項1~15の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項17】
前記埋め込みレリーフパターンは、溝、突起部、隆起部、凹部、バイナリー形態、傾斜形態、長方形形態、正方形形態、三角形形態、回折格子ピクセル形態、台形形態、二等辺台形形態、およびレンズ形態からなる群から選択される少なくとも1つのレリーフ形態を含む、請求項1~16の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項18】
前記集積化積層構造体は、光透過性材料を含みかつ少なくとも1つの表面レリーフパターンを設けられた少なくとも2つの要素を含み、前記少なくとも2つの要素は互いに積層され、それにより、前記少なくとも2つの要素のうちの1つの少なくとも1つの表面レリーフパターンが前記集積化積層構造体内に埋め込まれており、前記いくつかの光学機能性空洞は、前記少なくとも2つの要素の界面に形成されている、請求項1~17の何れか一項に記載の集積化積層構造体。
【請求項19】
その集積された固定部分として、請求項1~18の何れか一項に記載の集積化積層構造体を含む太陽電池構造体。
【請求項20】
その表面積を増加させる表面レリーフパターンを設けられた半導体材料含有要素を含む、請求項19に記載の太陽電池構造体。
【請求項21】
前記表面レリーフパターンは、太陽電池の効率を上げるために、材料内への光吸収を高めかつ/またはそこからの反射を減少させるように構成されている、請求項20に記載の太陽電池構造体。
【請求項22】
請求項1~18の何れか一項に記載の集積化積層構造体および太陽電池構造体を含むシステムであって、前記太陽電池構造体は光起電力電池であり、前記集積化積層構造体は、前記太陽電池構造体上に配置され、かつ前記太陽電池構造体に固定されている、システム。
【請求項23】
太陽電池用の集積化積層構造体を構築するための方法であって、前記集積化積層構造体は太陽電池を組み込むか、または少なくとも太陽電池の全体にわたって配置されており、前記方法は、
- 平坦な要素として構成された第1の担体要素を得ることと、
- 中に少なくとも1つの表面レリーフパターンが形成される、平坦な要素として構成された第2の担体要素を得ることであって、前記表面レリーフパターンは、前記第1の担体要素と接合領域を確立し、それにより平坦な接触面を有するように構成されたいくつかの表面レリーフ形態と、前記表面レリーフ形態とは互い違いのいくつかの関連する凹部とを含むことであり、
前記第1の担体要素および/または前記第2の担体要素は、その中への光透過を可能にする光透過性材料からなることと、
- ロールツーロールで、前記第1の担体要素および前記第2の担体要素を互いに積層することであって、それにより、前記第2の担体要素の全ての表面レリーフ形態が、前記少なくとも1つの表面レリーフパターンが確立された集積化積層構造体の内部に埋め込まれているように、前記第1の担体要素と接合領域を確立し、それにより、いくつかの光学機能性空洞を含む少なくとも1つの埋め込みレリーフパターンが、全体的に平坦で平らな第1の担体要素と、前記第2の担体要素の平坦な表面領域との間の平坦な界面に形成されており、
前記埋め込みレリーフパターンは、入射光に対して光学機能を果たすようにさせるレリーフ形態および関連する空洞を有するように構成されており、前記光学機能は、光結合機能、光方向づけ機能、および光視準機能からなる群から選択され、
前記集積化積層構造体内に形成された空洞は、前記第1の担体要素の材料および前記第2の担体要素の材料のうちの1つとは異なる屈折率を有する固体をその中に包含することと、
を含む、方法。
【請求項24】
表面レリーフ製造用マスターを製造する間に、表面レリーフ形態のパターンを有するプレマスターを作製することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
エンボス加工、転写、リソグラフィー、成形、ミクロ成形、および鋳造からなる群から選択される少なくとも1つの技術を用いて表面レリーフ形態を作製することをさらに含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記表面レリーフパターンの積層化および/または形成の間に接着剤および/または硬化を適用することをさらに含む、請求項23~25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の担体要素は、前記少なくとも1つの表面レリーフパターンの母材となる硬化材料を含む、請求項23~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
- 前記第1の担体要素のどちらかの側面上に1つの機能性表層を配置することと、
- 前記第1の担体要素の別の側面上に別の機能性表層を配置することであって、それにより、前記1つの機能性表層および前記別の機能性表層のうちの少なくとも1つが、前記第1の担体要素と前記第2の担体要素との間に配置されることと、
を含む、請求項23~27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
太陽電池用の集積化積層構造体の薄いフィルムのロールであって、前記薄いフィルムは、
- 平坦な要素として構成された第1の担体要素と、
- 中に少なくとも1つの表面レリーフパターンが形成される、平坦な要素として構成された第2の担体要素であって、前記表面レリーフパターンは、前記第1の担体要素と接合領域を確立し、それにより平坦な接触面を有するように構成されたいくつかの表面レリーフ形態と、前記表面レリーフ形態とは互い違いのいくつかの関連する凹部とを含む、第2の担体要素と、
を含む、ロールであり、
前記第1の担体要素および/または前記第2の担体要素は、その中への光透過を可能にする光透過性材料からなり、
前記第1の担体要素および前記第2の担体要素を接合させることによる前記集積化積層構造体の形成の際に、前記第2の担体要素の全ての表面レリーフ形態は、前記少なくとも1つの表面レリーフパターンが確立された集積化積層構造体の内部に埋め込まれているように、前記第1の担体要素と接合領域を確立し、それにより、いくつかの光学機能性空洞を含む少なくとも1つの埋め込みレリーフパターンが、全体的に平坦で平らな第1の担体要素と、前記第2の担体要素の平坦な表面領域との間の平坦な界面に形成されており、
前記埋め込みレリーフパターンは、入射光に対して光学機能を果たすようにさせるレリーフ形態および関連する空洞を有するように構成されており、前記光学機能は、光結合機能、光方向づけ機能、および光視準機能からなる群から選択され、
前記集積化積層構造体内に形成された空洞は、前記第1の担体要素の材料および前記第2の担体要素の材料のうちの1つとは異なる屈折率を有する固体をその中に包含する、ロール。
【請求項30】
前記ロールは、柔軟で屈曲可能な薄いフィルムとして提供される、請求項1~18の何れか一項に記載の集積化積層構造体を含む、請求項29に記載のロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は光学部品に関する。特に、限定されるものではないが、本発明は、埋め込まれた光学機能性空洞を有する積層構造体および太陽光技術関連でのその製造に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、照明器具および電子機器などの異なる光学部品を含む装置のマイクロプリズムまたは回折格子などの微細構造は、光透過性基板の表面領域のみに作製されている。これらの構造体は当初、ある所定の方法で、入射光を(再)方向づけまたは結合するか、それ以外の方法で相互作用するように構成されたものであるが、材料の表面にそれらを配置すると、通常いくつかの問題が生じ、すぐにではないとしても、少なくとも長期的には欠陥が生じる。
【0003】
すなわち、結合光学部品などの光学的に重要な表面レリーフ構造体は、当然のことながら使用場面に応じて、塵、砂、水、グリースおよび一般の汚れによる汚染などの様々な外的因子によって引き起こされるストレスに曝されることが非常に多い。さらに、表層形態は、外部物体による衝撃に対して一般に弱く、例えば、僅かマイクロメートルまたはナノメートルの大きさであり得るこれらの脆い構造体は、外部物体により破壊、変形および損傷されることがある。意図的に接触させた外部要素によってもたらされる圧力でさえ、接触面にパターン形成された表面構造に損傷を与え、その所望の機能を妨げることがある。
【0004】
上記問題の一部を示すために、
図1aは、特に太陽電池の例示的な状況における一般に光伝搬および媒体境界を含む同じ使用場面で一緒に生じ得る2つの最初の問題を視覚化している。左側では、太陽などの光源によって放出された光のうち顕著な入射角を有する太陽電池104のカバーガラス102への入射106が、望ましくないことに、空気-ガラス界面で、カバーガラス102の表面から部分的に反射108されている。第2に、カバーガラス102を通過した光の一部は、ガラス-太陽電池界面103からさらに一部が内部で反射110されている。外部媒体が空気である場合、対応する屈折率は、媒体、ガラス材料、および電池の上部のそれぞれについて、n
空気、n
1およびn
2となり得る。従って、最終的に、カバーガラス102に実質的に垂直に入射する光線112などの限られた量の入射光のみが、カバーガラス102を通過し、光路全体で遭遇する界面での反射により相当量の関連する電磁エネルギーが失われることなく太陽電池104に入ることができる。そのため、効率的な光の取り込み(incoupling、入力結合)を可能する入射角範囲は狭く、全体的効率は低いままである。
【0005】
上に説明した界面に対処し、かつ結合効率を高めるために、実質的に
図1bの1つに従った解決法を考察することができる。下に位置する太陽電池104を保護し、よって、ここでも入射光を受容する第1の要素である上記カバーガラスなどの最も外側の層102には、光を結合し、かつ所定の角度の範囲内で電池104に向かって再方向づけするように構成された表面レリーフパターン114が設けられている。例えば、そのパターンは、具体的には、光線120を電池104に対してより垂直に再方向づけするように構成されたものである。しかし、そのような構造体は、表面レリーフ形態によって画定された凹部に詰まった塵埃粒子または水滴などのさらなる物質118によって容易に汚染されることは明らかであるため、遅かれ早かれ、パターン114の効果は低いことが判明するが、それは、入射光の少なくとも一部が汚染118によって実際に反射され、かつ/または、いくらかランダムな角度で電池104に向かって結合し、それにより、ガラス-電池境界103でさらなる望ましくない反射が生じ、かつ提供された構造体の全体的効率が低下するからである。
【0006】
太陽電池の例示的な状況についてさらに続けるが、現代の解決法で達成される全体的効率は驚くほど低く、恐らく約15%未満であり、その大きな原因は、汚染によって誘発される反射および誤結合、表面反射、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)層と太陽電池光学構造体に一般に適用される他の層との媒体境界での反射などの内部反射である。太陽電池を含む光学構造体への日光の入射の大部分は、それと共に利用される従来の光学部品によって特定の入射角が基本的に無視されるため、利用されていない。言い換えると、太陽エネルギーの図示されている状況では、太陽電池に垂直に到達する直射日光のみが、このように太陽位置に極めて影響される太陽電池の効率を増加させると言える。
【0007】
歴史的に、内部の局所的な変化の生成(例えば、それと共に内部回折格子を模倣する担体材料の屈折率)におけるレーザーの使用さえも提案されている。また、所定の高屈折率または低屈折率の特定のコーティングも、その中の光伝搬を制御するために基板構造体に塗布されている。それにも関わらず、広範囲にわたる工業規模の利用を鑑みると、これらの解決法および他の現代の解決法であっても、あまりに制限的で、性能的に不十分であり、複雑で高価であることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本目的は、現在の構成によってまだ満足に対処されていない1つ以上の上記問題を軽減し、かつ太陽光技術関連での使用に適した光学機能性構造体などの様々な機能性構造体の製造のために実施可能な代替案を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、本発明に係る積層構造体および関連する製造方法の実施形態によって達成される。「発明の概要」は一般に、以下の「発明を実施するための形態」にさらに記載されている概念の抜粋を紹介するために提供されていることに留意されたい。但し、「発明の概要」は、特許請求されている主題の唯一の重要な特徴または特に必須の特徴を具体的に特定することによって、特許請求されている主題の範囲を限定するものではない。
【0010】
従って、本発明の一態様では、太陽光技術関連での用途に適した集積化積層構造体は、
- その中への光透過を可能にする実質的に光透過性材料を好ましくは含む、プラスチックまたはガラス板などの第1の担体要素と、
- いくつかの表面レリーフ形態を含み、かつそこへの光入射に対して少なくとも1つの所定の光学機能を有する少なくとも1つの表面レリーフパターンが設けられたプラスチックまたはガラス板などの第2の担体要素であって、その中への光透過を可能にする実質的に光透過性材料を好ましくは含む第2の担体要素と、
を含み、
少なくとも1つの表面レリーフパターンが組み立てられた積層構造体内に埋め込まれ、かついくつかの関連の光学機能性空洞が前記第1および第2の担体要素の界面に形成されるように、第1および第2の担体要素は互いに積層されている。
【0011】
好ましくは、少なくとも1つの埋め込み表面レリーフパターンによって形成された所望の好ましくは光学機能性空洞を当然に除外して、空隙などの望ましくない隙間がその間に全く残らないように、積層された要素は、積層化によって互いに確実に接合されている。
【0012】
さらに、積層化の間に担体要素の表面レリーフパターンまたは形態が埋め込まれる場合、それらは、組み立てられた積層構造体の表面に現れず、構造体の表面レリーフパターンまたは形態ではなくなることに通常気づくであろう。
【0013】
それでもなお、光学用途では、同じ屈折率を有するパターン形成された積層体の層は、そこへの光入射に対して光学機能の点で単一の要素を形成してもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の担体要素には、そこへの光入射に対して所定の光学機能を有し、かついくつかの表面レリーフ形態を含む少なくとも1つの表面レリーフパターンが設けられていてもよい。例えば、上記パターンは、積層化(埋め込み)時またはその後に、第2の担体要素に面する側またはその反対側にあってもよい。後者の場合、上記パターンは、構造体の表面に残っていても、例えば、さらなる要素によって覆われることで、埋め込まれていてもよい。例えば、第1および第2の担体要素のパターンは、少なくとも1つの共通の機能を有する1つにまとめられた多層パターンを形成していてもよい。第1または第2の担体要素などの担体要素は一般に実質的に平らであってもよいが、他の形状も可能である。
【0015】
いくつかの実施形態では、好ましくは、積層構造体内に埋められた第2の担体および/または第1の担体要素の少なくとも1つの表面レリーフパターンは、実際には、その界面で、任意に第1の担体および/または第2の要素それぞれの対向部と共にいくつかの好ましくは光学機能性空洞をその中に画定するように構成されていてもよい。埋め込み閉空洞は、その大きさに関して、例えばミクロ空洞またはナノ空洞であってもよい。上記空洞は、第1および/または第2の担体要素の材料とは異なり得るいくつかの材料を含んでいてもよい。空洞は、空気などの流体、好適な液体および/または固体を含むか、それらが充填されていてもよい。空洞はゲルを含んでいてもよい。また、インクが塗布されていてもよい。インクは、透明であっても有色であってもよい。例えば屈折率に関して所定の光学性能を得るようにその物質を選択してもよい。屈折率は関連する担体要素の屈折率とは異なっていても同じであってもよい。空洞は、例えば、ドットのような形状、細長い形状またはより複雑な形状を有していてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、いくつかの表層レリーフ形態を含む、場合によっては埋め込まれた利用される表層レリーフパターンの任意に光学的な機能の少なくとも1つとしては、光方向づけ機能、光捕捉機能、反射機能、透過機能、半透過機能、結合機能、光取り込み機能、光取り出し(outcoupling、出力結合)機能、偏光機能、回析機能、屈折機能、防眩機能、不透明(anti-clear)機能、反射防止機能、視準機能、前視準機能(pre-collimation function)、レンズ機能、収束機能、発散機能、波長修正機能、散乱機能、着色機能、媒体分配機能および拡散機能の群から選択される機能が挙げられる。埋め込みパターンの場合、1つ以上の機能を、要素界面に形成された関連の空洞によって達成してもよい。界面またはその所定の部分は、所望であれば、例えば屈折率(同じ)の適切な選択によって、光透過性にしてもよい。
【0017】
パターンの複数の表面レリーフ形態は、同じ機能を有していてもよい。あるいは、パターンの異なる形態は、異なる機能を有していてもよい。一実施形態では、単一の形態は、いくつかの(少なくとも2つの)機能を提供してもよい。同じパターンまたは形態でさえも、光を透過的に結合しながら、他方で、例えば光を反射するように構成されていてもよい。機能は、入射角および/または波長などの光の性質、および/または例えば形態の光が入射する側によって決まってもよい。埋め込みまたは非埋め込み表面レリーフ形態は、例えば、関連材料(輪郭の材料および充填材料)、寸法、位置および/または位置合わせを適切に選択することによって、所定の数の機能のために構成されていてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、積層構造体は、第3および任意にいくつかのそれに続く担体要素を含んでいてもよい。これらは、その上にさらなる表面レリーフパターンを含んでいてもよい。表面レリーフパターンは、積層構造体内に埋め込まれていてもよい。第1、第2または任意のさらなる要素のいずれかは、積層体または他の種類の多層および/または多くの部分からなる要素であってもよい。中間要素は、例えば任意に埋め込まれたいくつかの表面レリーフパターンが設けられていてもよいフィルムなどの周囲の上部および底部要素よりも厚くてもよい。また、中間要素には、積層構造体の製造中に積層体内に埋め込まれる表面レリーフパターンが設けられていてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、集積化積層構造体は、(最初に)表面レリーフパターンの複数の層を含んでいてもよい。フィルム、箔またはシートなどの各積層された要素は、1つ以上の表面レリーフパターンを含んでもいてもよく、1つ以上の光学機能性層をそれぞれ構成していてもよい。各層は、専用の光学機能またはいくつかの機能を有していてもよい。最初にその両側に表面レリーフ形態の層を有する単一の担体要素によって多層パターンを形成してもよく、かつ/またはそれぞれに表面レリーフ形態の少なくとも1つの層が設けられた複数の担体要素を利用して、集合的に多層パターンを形成してもよい。多層パターンの層は、少なくとも1つの集合的な機能を有していてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1および/または第2の担体要素は、実質的に柔軟で屈曲可能である。柔軟性および曲げ性の程度は、実施形態によって異なってもよい。例えば、所定の屈曲(例えば180°)は、材料を破損しない所定の曲げ半径によって達成してもよい。さらなる担体要素も柔軟で屈曲可能であってもよい。積層構造体は柔軟でさらに屈曲可能であってもよい。
【0021】
担体要素は、薄いフィルムなどのように薄くてもよい。担体要素の厚さも実施形態に応じて異なっていてもよい。それは、例えば、僅か数ナノメートルから最大数ミリメートルの厚さであってもよい。上記を積層構造体のさらなる担体要素にも適用する。但し、明らかにより厚い1つ以上の要素を代わりに使用してもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1および/または第2の担体要素は、ポリマーまたはエラストマーなどのプラスチック材料、ガラスおよび/またはセラミック材料を含む。追加または代わりとして、半導体材料(例えばシリコンまたはシリコンウェーハ)などの1種以上の他の材料を使用してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、任意に埋め込まれた表面レリーフパターンは、回折格子、回折格子溝、バイナリー形状、傾斜形状、方形もしくは矩形形状、三角形形状、台形形状、ピクセル、回折格子ピクセル、突起部、凹部、窪みおよびレンズ形状からなる群から選択される少なくとも1つの実体を画定するいくつかの表面レリーフ形態を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、積層構造体は、透過性、反射性または半透過性要素の少なくとも一部を含むかそれらを形成していてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、積層構造体は、コーティングなどの機能性表層および/または表面レリーフ形態を含む層を含むか、それらが設けられている。これらの形態は、実際には積層構造体の表面に残っていてもよい。それらの機能(または「特性」)としては、例えば、反射防止機能、疎水機能、親水機能および/または自己洗浄機能が挙げられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、積層構造体内に埋め込まれているかそれ以外の方法でそれに設けられている表面レリーフ形態および/または関連のパターンは、その長さ、深さ/高さおよび/または幅に関して、実質的にミクロン以下の大きさであってもよい。あるいは、その形態および/またはパターンの大きさは、数ミクロンまたは数十ミクロン、例えば、約20または約30ミクロンから最大数ミリメータであってもよい。さらにより大きな大きさを適用してもよい。
【0027】
別の態様では、太陽光技術関連での光学応用のための集積化構造体を組み立てる方法は、
- その中への光透過を可能にする実質的に光透過性材料を好ましくは含むプラスチックまたはガラス板などの第1の担体要素を入手すること、
- いくつかの表面レリーフ形態を含み、かつ入射光に対して少なくとも1つの所定の光学機能を有する少なくとも1つの表面レリーフパターンが設けられたプラスチックまたはガラス板などの第2の担体要素であって、その中への光透過を可能にする実質的に光透過性材料を好ましくは含む第2の担体要素を入手すること、および
- 少なくとも1つの表面レリーフパターンが組み立てられた積層構造体内に埋め込まれるように、第1および第2の担体要素を互いに積層すること、
を含む。
【0028】
少なくとも1つの表面レリーフパターンを埋めることにより、いくつかの関連の空洞を実質的に積層体内の第1および第2の担体要素の関連する界面に実際に位置づけてもよい。そのようにして、空洞縁部の一部を、第1の担体要素の対向表層によって画定してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、ロールツーロール法を本方法に適用する。例えば、担体要素表面に表面レリーフパターンを形成するために、ロールツーロールエンボス加工またはロールツーロール転写などのロールツーロール法を適用してもよい。代わりまたは追加として、例えば、エンボス加工、転写、ミクロ機械加工、UVエンボス加工、UV転写、リソグラフィー、ミクロ成形および鋳造からなる群から選択される少なくとも1つの技術を利用して、表面レリーフパターンを形成することができる。それでもなお、積層化方法は、ロールツーロールまたは平面処理技術を利用してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、例えば、電鋳、鋳造または成形などの好適な技術を利用してプレマスター要素(例えば、プレマスタリングパターンを含むプレマスタープレート)を最初に形成するように、第2の担体要素などの担体要素を少なくとも1つの表面レリーフパターンによって用意する。ニッケルシム、プラスチックマスタープレート、鋳込材料プレートまたは成形プレートなどのマスター要素を、プレマスター要素に基づいて形成してもよい。任意で、プレマスター要素の1つ以上のパターンを、印刷などの好適な技術によって調節してもよい。プレマスターのインク充填部分が標的要素(すなわちマスター要素)内にそのまま現れないように、例えば調節のために、インクジェット装置による滴下充填を適用してもよい。
【0031】
当業者には理解されるように、積層構造体の様々な実施形態に関する先に提示した考察を、必要な変更を加えて本方法の実施形態に臨機応変に適用してもよく、またそれを逆に適用してもよい。
【0032】
本発明の有用性は一般に、各特定の実施形態に応じて複数の問題から生じる。第一に、様々な機能を有する光学構造体などの単純および非常に複雑な高性能の集積化ナノスケールまたはマイクロスケール構造体は、互いに取り付けられる少なくとも2つの層を画定する少なくとも2つの要素を含む積層構造体内に埋め込まれていてもよい。取り付けが確実であり、かつ/または積層された要素間に(意図しない)隙間が実質的に残らないように、利用される積層化技術を選択することが好ましい。さらなる集積された要素、層またはコーティングが、得られた積層体のあらゆる側に設けられていてもよい。大部分の実施形態では、工業規模の比較的単純で低コストな方法を用いて積層構造体を製造することができる。それでもなお、積層体の埋め込み構造体は、外部の衝撃および汚染から保護されたままである。関連製品の耐用年数は延び、それらの多くは実際に保守不要となり得る。
【0033】
また、埋め込まれた多段/多層構造体を容易に組み立ててもよい。内部で光を反射させるために、例えば特定の幾何学形状、屈折率および/または材料を利用する内部光捕捉構造体が設けられていてもよい。広範囲にわたる入射角を有する光を効果的に捕捉および視準する光捕捉層が実装されていてもよい。太陽エネルギー関連に加えて、例えば、集積電子装置、半導体、(生物)医学システム、トライボロジシステム、窓照明などの窓、温室照明、広告、セキュリティ用途、自動車および一般に乗物産業、街路照明、一般照明ならびに道路標識および発光タグなどの様々な看板またはプレートに本積層体を適用してもよい。
【0034】
太陽電池への入射(表面)光のより効率的な捕捉、より効率的な内部光捕捉、および完全になくならなくとも減少した汚染問題により、特に太陽エネルギーおよび太陽電池(光起電力電池)関連での動作効率の向上を達成してもよい。太陽電池は固定されたままであってもよく、効率の上昇にも関わらずそのアラインメントを調整するための移動手段の実装は不要である。太陽電池に取り付けられた積層構造体には、自己洗浄ナノ構造体、コーティングなどのさらなる機能および層がさらに設けられていてもよい。より大きな機能性表面が設けられていてもよい。剛性または柔軟な太陽電池構造体を検討してもよい。
【0035】
「いくつかの(a number of)」という表現は、本明細書では1から始まる任意の正の整数、例えば、1、2または3を指す。
【0036】
「複数の(a plurality of)」という表現は、本明細書では2から始まる任意の正の整数、例えば、2、3または4を指す。
【0037】
「含む」という表現は、列挙されていない特徴の存在を必要とすることも除外することもしない非限定的なものとして本明細書では用いられている。
【0038】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、量の限定を意味するものではないが、参照されている項目の少なくとも1つの存在を意味する。
【0039】
同様に、「第1」および「第2」という用語は、順序、量または重要性を決して意味するものでなく、むしろ、ある要素と別の要素とを区別するために用いられている。
【0040】
「光」という用語は、可視光などの電磁放射線を指すが、可視光に限定されない。
【0041】
「担体要素」という用語は一般に、本明細書では、光を運ぶための材料などの所定の材料を含む積層体の要素、コーティングなどの所定の機能性要素または表面レリーフパターンまたは関連の空洞などの構造体の少なくとも一部を含む要素、および/または完成した積層体中の他の1つ以上の要素を、支持、運搬、保護しているか、そこに固定されており、よって、積層体の不可欠な部分を形成している要素を指すものである。
【0042】
本発明の異なる実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0043】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1a】現代の太陽電池構成に関連する様々な問題を示す。
【
図1b】典型的な使用条件(例えば屋外)に曝された際の表面レリーフ構造体の様々な問題を示す。
【
図2】本発明に係る積層構造体の一実施形態の断面図である。
【
図3】本発明に係る積層構造体の別の実施形態の断面図である。
【
図4】本発明に係る積層構造体のさらなる実施形態の断面図である。
【
図5】本発明に係る積層構造体のさらなる実施形態の断面図である。
【
図6】本発明に係る積層構造体のさらなる実施形態の断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る太陽電池用積層構造体の断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る光取り込み目的のための積層構造体の断面図である。
【
図9a】一般に本明細書に記載されている原理を利用する光取り込み目的のための構造体の断面図である。
【
図9b】一般に本明細書に記載されている原理を利用する光取り込み目的のための2つの他の構造体の断面図である。
【
図10】本発明に係る積層構造体の一実施形態の製造を示す。
【
図11】本発明に係る製造方法の一実施形態を開示するフローチャートである。
【
図12】考えられるロールツーロール製造場面の様々な側面を示す。
【
図13】本発明に係る積層構造体の一実施形態が作製される製造プロセスの選択された要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1aおよび
図1bについては、背景技術の説明と共に既に考察した。
【0046】
本発明の原理を、様々な使用場面および状況に適用することができる。例えば、その状況は、可視光線、赤外線および/または紫外線の利用に関してもよい。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、バルク板またはフィルムなどのバルク要素から積層構造体を製造してもよい。これらには、結合(例えば、光の取り込みまたは取り出し)機能などの所望の光学機能を有する光学パターンが設けられていてもよい。回折格子、バイナリー、ブレーズド、傾斜および/または台形形態などの小さな表面レリーフ形態を有するパターンを利用してもよい。回折格子ピクセル、小さな凹部などの分離したパターンあるいは連続形態、細長い凹部またはチャネル、基本的にほとんどあらゆる種類の2次元または3次元形態を利用してもよい。好ましくは、関連する積層体の層の接着を高め、かつ/または所望の光伝搬および/または他の挙動を得るために、積層体接合領域(界面)に少なくとも小さな平坦部(すなわち接触面)が存在する。
【0048】
埋め込み表面レリーフパターンは、接合領域に、空気または他の媒体が充填されたミクロ空洞などのいくつかの閉空洞を形成しているかそれらを含むものとみなしてもよい。また、屈折構造体などのいくつかのより大きな構造体が設けられていてもよい。従って、上記空洞は、好ましくは光学機能性であり、少なくとも1つの所定の光学機能を有する。従って、埋め込まれる表面レリーフ形態/パターンを設計する場合、当然のことながら、周囲の積層材料、形状および形態ならびに界面に形成される空洞などが、例えばそれらの光学効果に関して適切に考慮されるように、積層体内に埋め込まれる形態/パターンの機能を想定すべきである。
【0049】
いくつかの実施形態では、上部または底部の積層体要素などの最も外側の積層体要素は、使用時に、光取り込み光学部品、光取り出し光学部品、および/またはワイヤーグリッドまたは他の回折格子解決法などの偏光回折格子などの必要不可欠な光結合光学部品を含んでいてもよい。上記光学部品としては、埋め込み光学部品および/または表面光学部品が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、いくつかの光源は、視準および/または反射光学部品などの任意に積層体および/または光源が集積された好適な結合光学部品を用いて、例えば縁部を介して積層構造体に機能的かつ/または物理的に接続されていてもよい。底部結合も、さらなる可能性の1つである。
【0051】
いくつかの実施形態では、二層などの多層光学構造体が、結合または他の目的のために積層体によって実装されている。積層体の層または他の要素は、特定の範囲の波長などの、特定の(範囲の)光の波長のために構成されていてもよい。別の層は、他の波長のために構成されていてもよい。例えば、表層または表面により近い層は、赤外線(より長い波長)のために、また構造体のより深くに存在する別の層は可視光線(より短い波長)のために、あるいはその逆に構成されていてもよい。層の厚さは、標的の波長に基づいて選択してもよい。適切な厚さについては、所望の波長の観点から所望の層を実際には見えない程度にしてもよい。積層体には、その複数の側に結合光学部品(例えば表面レリーフパターンを有する結合層)が組み込まれていてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、積層構造体を、太陽光技術の代わりに、あるいは、それに加えて、広告および表示窓、ディスプレイ、看板または標識に適用してもよい。積層体であってもよいプレートまたはフィルムなどの光学機能性要素は、別個の要素として標的画像または他の標的要素上に配置されていても、それらと共に集積(例えば、積層化)されていてもよい。それは、コントラストを高めるために、対向面よりも画像または他の標的要素に任意により近くに配置された表面レリーフパターンを含んでいてもよい。例えばパネル要素と共に、バイナリー回折格子または他のパターンを利用してもよい。バイナリー回折格子は、より大きな視角用途のために望ましく、ブレーズド回折格子はより狭い角度に望ましいかもしれない。ハイブリッド回折格子解決法も可能である。ホットスポットの回避のため、およびより均一な照明のために、拡散光学部品を利用してもよい。上記解決法は、例えばUI解決法およびナンバープレートにも適用可能である。その上に識別データまたは他の視覚的データが設けられたナンバープレートまたは他の要素の場合、例えば、コントラストを高めるために、表示される数、文字などは、数/文字の周囲を照らすようにフロントプレートに接触して積層されていてもよい。
【0053】
本発明の様々な実施形態では、積層構造体の1つ以上の要素は、実質的に光透過性であっても、半透明または不透明であってもよい。各要素の必要な透過度は、当然のことながら、特定の各使用事例によって決まる。例えば、いくつかの実施形態では、光の所定の波長(例えば、赤外線、可視光線または紫外線)に対する好ましい透過率は、その状況で実質的に光透過性であるとみなされる材料では、例えば、約80~95%の範囲内であってもよい。
【0054】
図に戻ると、
図2は、本発明の一実施形態が適用され得る1つの場面を表す。集積化積層構造体202は、互いに積層された2つの平らな担体要素204および206を含む。必要に応じて、より多くの要素を追加することができる。破線は、図の中の2つの積層された要素204(以後、図の中の位置により「上部要素」というが、使用中にその位置は、例えば、積層体の位置合わせに応じて「上部」または「側面」になる可能性がある)と、206(以後、同じ理由により「底部要素」という)との(元)界面を示す。先に記載したように、界面は光透過性であってもよい。ごく少数の光線が、図の中に実線の矢印として視覚化されている。
【0055】
最初に、上部要素204には、その間の対応する凹部210と共にその底にいくつかの突出する表面レリーフ形態208を含む表面レリーフパターンを設けた。次いで、例えば円錐台(図の中の二等辺四辺形の断面形態に留意されたい)の形状を有して下方に延在する表面レリーフパターンの突起部208を、図示されている事例では実質的に平らな接触面を有する下部要素206の位置合わせ的に対応する表面部分に接触させるように、上部要素204と、上部要素204の基板担体であって要素204、206の界面でその壁の少なくとも一部を画定する形成された空洞のための部分的な基板としてみなされる得る下部要素206とを互いに積層させた。そうすると、凹部210は、真空が提供されていない限りその中に閉じ込められた空気などの材料を含み得る閉空洞を好ましくは形成する。従って、上記材料は、周囲の材料とは異なる屈折率を有していてもよい。例えば、要素204の材料がプラスチックである場合、その屈折率は一般に空気の屈折率よりも高い。
【0056】
一般に異なる材料または屈折率の使用に関して、材料層などの複数の要素が同じ屈折率を有する場合、これらを光によって単一の要素とみなしてもよく、このようにして、光透過性界面が画定されている。逆に、所望どおりに光の管理(例えば、全体的内部反射率)を修正するために、等しくない屈折率を有する異なる材料を利用してもよい。
【0057】
要素204、206によって担持される材料の利用される形状および/または屈折率n空気、n1、n2は、光伝搬の点で所望の機能的効果が得られるように選択してもよい。異なる入射角を有するいくつかの光線が、どのようにして積層体の層およびその中の表面レリーフパターンの適用される構成によって視準されて、実質的に垂直に積層体の底に向かって進むかについて、図の中に矢印で示されている。従って、上部要素204は、下にある1つ以上の要素206のための光捕捉層として機能するものとみなしてもよい。いくつかの実施形態では、要素204は薄く、基本的にフィルムであってもよく、例えば、僅か数ナノメートルの厚さを有するが、いくつかの他の実施形態では、数ミリメートルの厚さであっても、さらに大きな厚さであってもよい。同じ考察を下部層206に適用する。例えば、図示の実施形態または同様の実施形態を、窓照明または太陽電池関連に適用することができる。
【0058】
図3は、2つの担体要素304、306を有する別の実施形態302を開示している。本実施形態では、下部要素306は、その上に平らな上部要素304が積層され、かつ突起部308aおよび中間凹部308b形態または「プロファイル」を有する表面レリーフパターン308を含む。ここでも、形成された空洞は、空気および/または数種の他の材料を含んでいてもよい。
【0059】
図4は、一実施形態402を開示しており、ここでは、複数の異なる埋め込み表面レリーフ形態が、互いに積層された要素404、406に対していくつかの埋め込み表面レリーフパターンを形成するように構成されている。三角形408、台形410および傾斜(長方形または正方形)412形態が、図に示されている。例えば、それらの形態および関連のパターンは、光の取り出しおよび/または矢印によって図の中に視覚化されるような他の種類の光の再方向づけのために構成されていてもよい。異なる形状および/または材料の形態は、共通の集合的な光学機能を提供するように構成されていてもよく、あるいは、それらを異なる目的のために利用してもよい。特定の埋め込み表面レリーフ形態は、例えば入射角および/または光面に応じて複数の使用を有していてもよい。例えば、図の中では、左端の三角形形態または空洞は、2つの光線によって視覚化されている光の取り出しおよび光の捕捉機能の両方を有する。形成された空洞は、空気および/または数種の他の材料を含んでいてもよい。例えば、積層構造体402は、いくつかの使用場面では、ポスター、看板またはプレートなどの表示要素の上に配置されていても、任意でそれらに積層されていてもよい。
【0060】
図5は、3つの担体要素504、505、506が互いに積層されているさらなる実施形態502を示す。要素504、505、506のそれぞれは、いくつかの表面レリーフパターンおよび/または他の特徴を含んでいてもよいが、図示されている例では、下部要素506はそれらを含まず、単に上部要素504、505の基板として機能している。下部要素506は、いくつかの使用事例では、例えば、表示データ(広告データ、情報伝達的データ)を含み、かつ/またはそれらを提示していてもよい。それは、例えば、その上に印刷されるかそれ以外の方法で形成された表示データを有する看板またはプレートであってもよい。
【0061】
中間要素505は、実質的に矩形の(バイナリー)形態508の表面レリーフパターンを含み、それはドットもしくはピクセルのような形態または回折格子の溝などのより長い溝あるいは対応する突起部であってもよい(断面図の中には見えない)。上部要素504は、三角形形態510のパターンを含む。上部要素504は、積層体内に少なくとも1つの光学機能性層を形成していてもよく、その埋め込み表面レリーフパターンは、光取り込みまたは光取り出し機能などの少なくとも1つの所定の機能を有する。中間要素505は、少なくとも1つの他の光学機能性層を形成していてもよく、その埋め込み表面レリーフパターンは、場合によっては反射機能などの他の所定の機能を有する。ここでも、ミクロ構造体のいくつかの異なる形態および/または層は、視準または脱視準(decollimation)特性などの所定の光取り込みまたは光取り出し特性などの所望の機能の観点から、共通の機能に関して構成されていてもよい。埋め込み表面レリーフ形態によって形成された空洞は、空気および/または数種の他の材料を含んでいてもよい。
【0062】
図6は、積層体の上部要素604が、積層構造体内で下部要素606に面する表面にいくつかの第1の基本的に正方形の表面レリーフ形態608と、第2の基本的に矩形の表面レリーフ形態610とを含む少なくとも1つのパターンを含む、さらなる実施形態602を開示している。これらの形態は、同様または異なる目的を有していてもよい。例えば、第1の形態608は、光の取り出しまたは取り込みなどの機能のために、利用される1種以上の材料、寸法および/または位置決めの観点から構成されていてもよいが、第2の形態610は、反射、場合によっては鏡面反射のためのものである。
【0063】
図7は、太陽エネルギー生成、すなわち太陽光発電および太陽電池関連に特に適したさらなる実施形態を示す。場合によっては光捕捉要素として機能するように構成された、薄いフィルム要素702(図示されている厚さおよび他の寸法は明確性のために一般に原寸どおりではない)などの担体要素には、要素702の表面を透過し、かつパターンに入射する外部光(典型的には日光)のより広範囲の入射角から、所定の方向(実質的に太陽電池706の下にある構成要素の方向)に向かって積層構造体内で光を視準する(より狭い分布を有する)ことができる複数の表面レリーフ形態708を含む表面レリーフパターンが設けられていてもよい。例えば、上記パターンの表面レリーフ形態708の高さ/深さは、約10μmであってもよい。
【0064】
太陽電池構造体のプラスチックまたはガラスカバーとしても機能し得るフィルム要素702および担体要素704(実際は、太陽電池には、必要不可欠なカバーガラスが設けられていることが多い)を、例えば、最初に互いに積層し、保管し、かつ本明細書に提案されている完全な太陽電池構造体の残り706とのその後の接合のために搬送する。これは、図の702aに強調されており、ここでは、垂直な矢印は、その事実、すなわち既に積層されたフィルム要素702およびカバーガラス704が、複数の水平線によって図に示されている複数の異なる層および関連の要素を典型的に含む太陽電池スタック706に接合される方法を示している。
【0065】
例えば、好ましくは強化ガラスを含むカバーガラス704の下に積み重ねられ得る太陽電池構造体706には、バック接点、p型半導体、n型半導体、フロント接点、透過性接着剤および反射防止コーティングからなる群から選択された1つ以上の層または要素が組み込まれていてもよい。
【0066】
702bには、必要不可欠な部分として光捕捉用フィルム要素702も含む太陽電池構造体全体の製造を完了した後の使用状況が示されている。あるいは、フィルム要素702は、既に適所にカバーガラス704を有する太陽電池構造体上にそのまま設けられていてもよい。さらなる代替案または追加のオプションとして、要素702は、ガラス704と太陽電池構造体706の残りとの間に設けられていてもよい。なお、さらなる例として、ガラス704には、表面レリーフパターンが設けられていてもよい。形成された空洞は、積層構造体の製造プロセス中にその中に残されたか具体的にはその中に配置された空気および/または数種の他の材料を含んでいてもよい。
【0067】
一般に、記載されているナノおよびマクロ空洞フィルム技術は、太陽電池製品702bの異なる層に利用することができる。例えば、複雑なアンダーカットプロファイルも可能である。また、先に想定されているような複数のプロファイルを有する多層は好適である。光学機能性層を製造し、上面、いくつかの内面(例えば、ガラス板の下の中央)、またはシリコン/光起電力表面に可能なナノプロファイルを含むシリコン表面/太陽電池表面に直接塗布して、光吸収を高めることができる。光学プロファイルは、好ましくは完全に集積されている。
【0068】
図の中の矢印は、提案されている構造により、様々な方法で太陽電池の効率を高め得る方法を示している。入射光の結合および/または方向づけ(例えば視準)機能708aに加えて、あるいはそれらの代わりに、反射機能および一般に「光捕捉」機能710、712を、空洞を含む利用されるパターン、それらの位置決め、位置合わせおよび材料選択よって達成してもよい。従って、光捕捉は、担体材料内に本物の反射鏡面を含めずに形成されていてもよい。
【0069】
本明細書に提案されている太陽電池構造体は、従来の解決法よりも約20~40%高い効率を提供することができ、その全体的効率は、例えば40%または50%に近いかもしれない。剛性および柔軟な太陽電池材料および構造体を適用および構成してもよい。
【0070】
図8は、太陽電池の残り806を保護するガラス804に積層された光捕捉フィルムまたはプレート要素802に、例えば、特定のフィルム、コーティング、表面レリーフパターンあるいは上記および/または他の要素のあらゆる組み合わせによって実装された機能性表層808がさらに設けられた一実施形態801を視覚化している。
【0071】
例えば、表面反射および汚染を最小限に抑えるために、いくつかの反射防止(AR)および/または自己洗浄(ナノ)プロファイルを利用してもよい。太陽電池が可能な限り多くの光を受容し、かつその効率を最大にし得るように、AR機能は、構造体表面(標準)に対して約70または80°の角度などの大気から構造体内への非常に大きな入射角でさえも日光の光の取り込みを可能にし得ることが好ましい。これは、図の中に矢印808bで示されている。次いで、要素802の埋め込み表面レリーフパターン802aを利用して、取り込まれた光を太陽電池806に向かって方向づけ、かつ視準してもよい。パターン802aは、所望どおりに、広範囲の入射角(例えば、120、130、140、150または160°の範囲全体)を結合することができるように設計されていてもよい。
【0072】
例えば、適切に結合された入射角が少なくとも約120、130、140、150または160°の範囲を任意に画定するように、パターン802aは、構造体内に入った日光などの入射光を結合するように構成されていてもよく、上記パターンは、実質的に太陽電池の所定の方向に向かって視準機能を用いて入射光を結合するように構成されている。
【0073】
また、ミクロ空洞を有する集積化反射体を太陽電池構造体に採用し、それにより、日光を構造体内部により長く維持するように改良してもよく、そこへのエネルギー吸収をさらにより向上させることができる。従って、いくつかの実施形態では、提案されている積層構造体により、太陽電池の効率をかなり高めることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、光捕捉要素または他の積層された要素を含む組み立てられた太陽電池構造体全体は、複数の、例えば2つの反射防止などの機能性層を含んでいてもよいと言えるであろう。1つをカバーガラスの片側に配置し、もう1つを、光捕捉フィルム要素よりも前に外部入射光を好ましくは受容するように、光捕捉フィルム要素に関連してもう片側に配置してもよい。
【0075】
大きな入射角視準を有する太陽電池結合フィルムまたは他の要素に対して先に提示されている主要な考えは、例えば温室関連の実施形態を含む他の場面にも一般に適用可能である。例えば、これらの種類のフィルムにより、余分な鏡を用いずに、日光の使用を増加させてもよい。フィルムの透過性を、例えばその大きさに対して最小限に抑えられたパターン特徴によって高めてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、ナノ反射体などのいくつかの埋め込み反射体を、本明細書に提示されている技術によって製造してもよい。例えば従来の再帰反射フィルムを用いた場合とは異なり、小さなパターン(例えば、回折格子系反射プロファイル)を例えば平らな反射体に直接積層することができ、積層された要素のそれらの小さな表面レリーフパターンを完全に埋め込むことができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている原理に従って偏光子を製造してもよい。例えば、回折格子/ワイヤーグリッド偏光子を、任意でロールツーロール法によって製造してもよい。例えば、紫外線硬化および関連の硬化材料を適用することによって、基本的なプロファイルを製造してもよく、その後、レーザーアシスト蒸着を用いたより高い屈折率による蒸着コーティングをライン上で行ってもよい。レーザーを使用して、多くの異なる材料を蒸着してもよい。また、定方向の指向性蒸着(正規位置蒸着、非対称蒸着)も可能である。回折格子プロファイルは、異なる傾斜面などを有するバイナリー、傾斜、正方形などであってもよい。
【0078】
いくつかの場面では、光の取り込みおよび関連の解決法に関連して本発明のいくつかの特徴を利用してもよい。今日では、典型的に平らな要素のための例えばLED光の取り込みおよび視準は重大な問題となり得る。任意に横並びの形態の平らなボールレンズバーは独特な解決法である。それは、視準線に応じて二次元または三次元表面を含むことができる。基本的には、1つの視準軸で十分かもしれない。そのような光学的解決法を、平らな要素とは別に、または一緒に製造してもよい。可能な製造方法としては、射出成形、鋳造、レーザカットなどが挙げられる。光方向の制御のために上部および下部に鏡面を使用することができる。また、縁部および/または例えば上部の特別な回折格子方向づけパターンによって、所望の解決法を得てもよい。空気媒体による楔形の視準は、さらなる実施可能な選択肢である。
【0079】
図9aは、光取り込み目的のための場面を示す。光取り込み要素902は、いくつかの埋め込まれ得る(例えば積層フィルム)反射形態908と、プラスチックまたはガラスなどの担体材料904の所定の表面に積層される層/要素として設けられ得る場合によっては埋め込まれた(例えば積層フィルム)光方向づけ構造体906とを含む。図示されている事例では、複数のLED910は光源として適用されている。
【0080】
図9bは、光取り込み構造体に関するさらなる場面を示す。920では、左側920aに、LED910などの複数の光源、レンズ形態924aなどの光取り込み形態、および標的要素922を含む一実施形態の上面/底面図が示されている。図示されているレンズ形態は、基本的に円形もしくは楕円形である。右側920bには、レンズ形態924bなどの異なる光取り込み形態を有する他の実施形態が提示されている。
【0081】
930には、好ましくは集積されたさらなる反射要素932を有する、考えられる対応する側面図が示されている。レンズ形状924a、924bが図の中に明確に示されている。
【0082】
従って、本発明の様々な実施形態では、レンズフィルムなどの積層されるレンズ要素を利用して、ナノ/ミクロ空洞結合構造体を形成してもよい。エンボス加工/転写フィルムを担体材料/フィルムに積層することができる。これにより、多層パターンを有する新しいレンズ構造体を製造することができる。別の利点は、光学的パターンが完全に集積され/埋め込まれており、それらは容易に離脱または破壊され得ないという点である。街灯、ハロゲン交換などのいくつかの実施可能な用途がある。
【0083】
別の可能な照明レンズは、例えば空気媒体からの光を結合し、かつ好ましい角度にそれを方向づける無指向性透過要素である。1つの表面が反射体(二次元または三次元)を有し、他の表面が表面結合パターン(二次元または三次元)を有していてもよい。
【0084】
LEDなどの光源バーは、少なくとも二次元水平方向に視準されていてもよい。これにより、結合パターンをより単純かつ効率的にしてもよい。上記解決法は、例えば街灯、公共照明などでの用途を有し得る。
【0085】
別の用途は、光のバー、ロッドまたは管であり、ここでは、結合構造体またはフィルムは、光を結合し、かつ方向づけるために、その外面または内面を形成しているか、それらの中にある。管の解決法では、反射ロッドを中心(内側部分)に利用してもよい。結合フィルムをガラスの中に積層して、光を好ましい角度(内側または外側)に方向づけてもよい。
【0086】
回折格子レンズなどの表面レリーフ系の(任意に埋め込まれた)レンズを用いる1つのさらなる利点は効率であり、それは、例えば、従来のより大きなパターンよりも非常に少ない後方反射を有するより小型の特徴と、さらにパターンの可能な(底部)位置により、例えば従来のフレネルレンズを用いる場合よりも良好である。それらのパターンが構造体全体の底側にある場合、媒体担体が上側にあるため、それ程多くの直接的後方反射は生じない。
【0087】
これは、例えば擬似信号効果(後方反射)の低下よる道路標識の利点であってもよい。さらに、本解決法は、例えば乗物のブレーキおよび信号燈に適している。
【0088】
図10は、本発明の一実施形態に係る、複数の要素1004、1006を含む積層構造体1002を示す。表面レリーフパターンおよび/または特定の材料(例えば、屈折率の点で)を有する機能性担体フィルム1004などの新規な要素をそこに追加することによって、いくつかの埋め込まれた集積機能が積層体1002に設けられていてもよい。表面レリーフパターンは標的表面に直接形成されていてもよい。ラッカーなどの硬化材料を利用してもよい。基本的に、必要な結合および/または他の光学部品は、その担体実体にフィルムまたはより厚い要素として積層されていてもよい。ロールツーロール加工技術が可能であり、当然ながら、なお、実施形態および適用される要素の柔軟性および厚さなどの性質に応じて、多くの場合好ましい。
【0089】
図11は、単なる一例として、本発明に係る製造方法のフローチャートを開示している。
【0090】
開始1102では、エンボス加工/転写歯車、成形歯車、鋳造歯車、積層化歯車、硬化歯車および/またはロールツーロール歯車などの必要な設備を入手および構成する。さらに、存在する場合には必要な接着剤などの積層体の層および積層体自体のための原料を入手する。
【0091】
1104では、集積化積層構造体の少なくとも1つの層を画定する第1の担体要素を入手する。第1の要素には、所望の表面レリーフパターンおよびコーティングが設けられていてもよい。例えば、ラッカーなどの硬化材料を用意し、表面レリーフパターンを含むようにエンボス加工するかそれ以外の方法で処理し、硬化させる。上記要素を、プラスチックまたはガラスなどのより大きな原材料板から所望の寸法に成形または切断してもよい。それをいくつかの処理に供し、かつ/または積層化目的のためにそこに接着剤を設けてもよい。任意で、第1の要素は、積層体要素自体などの多層要素である。それは、例えば、複数の太陽電池構成層および/または要素を含んでいてもよい。
【0092】
1106では、集積化積層構造体に利用される第2の担体要素を入手する。第2の担体要素は、その表面に、ロールツーロールエンボス加工/転写、リソグラフィー、マイクロ成形、鋳造などの異なる方法で、第1の要素のように作製し得るいくつかの表面レリーフパターンを含む。第2の担体要素は、例えば、プラスチック、ガラスまたはセラミック材料を含んでいてもよい。好適な硬化を適用してもよい。さらに、所望のさらなる要素および/またはコーティングが第2の要素に設けられていてもよい。第2の要素は、積層体要素などの多層要素であってもよい。
【0093】
本発明と共に、プレマスターパターン、マスターパターンおよび関連の要素によって表面レリーフパターンを作製してもよい。最初に、プレマスタリングパターンを有するプレマスター要素を、ミクロ機械加工、リソグラフィー、転写、エンボス加工および/またはいくつかの他の方法によって作製してもよい。次いで、このプレマスタリングパターンを、電鋳、鋳造または成形によって複製してもよい。次いで、形成されたニッケルシム、プラスチックマスタープレート、鋳込材料プレート、成形プレートに、好ましくは小さな溝、凹部、ドット、ピクセルなどの複数のミクロレリーフパターンを表面に含めてもよい。
【0094】
有利なことに、プレマスターの好ましくは凹状レリーフパターンは、インクジェットおよび/または印刷調節プロセスに適している。印刷調節プロセスはプロファイル充填方法に基づいていてもよく、ここでは、既存の溝、凹部、ドット、ピクセルなどが、場合によってはインクジェット/印刷材料で完全に充填されている。既存のパターンを充填し、かつ「隠す」ために、小さなピコ滴を形成することによってこの材料を分配する。本方法は、標的要素(すなわちマスター)の表面の充填要素の調節を完了するのに適している。当然のことながら、本方法は、充填要素だけでなく、多くの他の用途にも適している。本方法は、例えば、異なる分離した図形、アイコン、形態および形状を設計するのにも適している。これにより、低コストの光学的設計プロセスを作成することができ、これは、高速かつ柔軟であり、何よりもまず利用が容易である。当業者であれば、本明細書に提案されているプロファイル充填方法は、本出願の単なる積層体状況以外の別の状況でも一般に実施可能であることを理解するであろう。
【0095】
インクなどの充填材料は透過性であり、かつ光学的に透明であってもよく、プレート材料と同じ屈折率を好ましくは有する。このようにして、本当の機能試験および試行を行うことができる。しかし、例えば、有色インクも可能であるが、その場合、機能的な光学的試験部分を得るために複製プロセスが必要になることがある。
【0096】
考慮される1つの問題は、滴の大きさおよび材料の粘度であるかもしれない。これは、制御された高品質の充填の観点から重要となり得る。粘度があまりに低い場合、滴は大きな領域に向かって流れ、溝の底に沿って進む。従って、完全に充填された構造体の達成がより難しくなる。粘度が高い場合、滴径はより大きくなっていくが、その形態がより小さいため、溝の上をあまり流れない。従って、好ましい解決法としては、小さな滴径を保証する低粘性材料が挙げられる。小さなパターン、分離した溝、凹部、ドットまたはピクセルのみを利用する場合、滴は、有利なことに所望の位置で好ましいパターンのみを充填する。従って、プレマスターは、小さなピクセルまたは分離したプロファイルを有するようにパターン形成し得ることが好ましい。
【0097】
1108では、互いに積層される要素間に好適な圧力、熱および任意で1種以上の接着剤を利用して、第1および第2の要素ならびに任意にさらなる要素を互いに積層する。実施可能な硬化を適用してもよい。埋め込み表面レリーフプロファイルは、基本的に関連するミクロおよび/またはナノ空洞パターンを形成する。場合によっては非常に複雑な体積(例えば空洞)を作製することができるが、他の方法によって不可能ではない場合にもそれは難しい。多段/多層パターンは、いくつかのパターン形成された媒体担体(要素)を互いに積層することによって可能である。積層体内に含まれる要素は、その複数の側に表面レリーフパターンを含んでいてもよい。異なるパターンにより、積層体内に異なる機能を得ることができる。
【0098】
1つの実現とは、プラスチックまたはガラスプレートなどのより厚い担体上に例えば紫外線エンボス加工/転写された薄いフィルム(パターン形成したフィルム)を積層し、次いで、積層されたフィルムとプレートとの間に良好な接着を得るために最終硬化を実行することを意味する。積層される要素が本目的に適している、すなわち十分に薄くかつ柔軟である場合、ロールツーロール積層化が可能である。
【0099】
1110では、積層体にさらなる要素および/または機能を設けてもよい。切断、過剰材料の除去、(再)巻き取り、試験などの後処理操作を行ってもよい。
【0100】
本方法の実施は、1112で終了する。
【0101】
上に開示されている本方法のフローチャートの方法項目の相互順序および全体的な存在は、各特定の使用場面によって設定される要求に基づいて当業者が変更してもよい。さらに、いくつかの方法項目の実施を、破線矢印で示されているように本方法の間に繰り返してもよい。
【0102】
図12は、本発明に関連して適用可能な考えられるロールツーロール製造場面の様々な側面を示す。図示されている概略では、基本的にフィルム、シートまたは箔である2つの要素1204、1206を互いに積層し、積層化前のプロセス中に、円筒体/ロール1208によって、要素1206に表面レリーフパターン1206bを複製する。積層構造体1216を形成し、積層化円筒体/ロール1210によって、パターン1206bを構造体1216内に積層する。紫外線硬化などの事前硬化1212を行ってもよく、事後硬化1214を任意で再び紫外線硬化を用いて行ってもよい。切断、巻き取りおよび試験操作などのいくつかのさらなるプロセス操作を実施してもよい(図示せず)。要素1204などの標的要素には、任意でその両側にフィルムなどの複数のさらなる層を設けることもできる。円筒体/ロールなどの必要なハードウェアの量および性質が十分である場合、これを1回の試みで実施することができる。あるいは、例えば、1回転につき単層が積層体に追加される行為を複数回行うことによって同じ結果を得ることができる。
【0103】
図13は、好ましくは本発明に係るロールツーロール系製造方法のさらなる実施形態の異なる可能な項目を示す。特定の例は箔積層化に関するものであるが、当業者であればこの原理が積層される様々な他の担体要素にも当てはまることを理解するであろう。1302では、一般に、光学機能性要素などの機能がフィルムなどの担体材料に設けられる方法が示されている。図に記載されているように、最初に、箔、フィルムまたは他の種類の要素に、表面レリーフ形態をその中に形成することを可能にし、かつ硬化可能であるラッカーなどの材料を設けてもよい(1312)。表面レリーフパターンの母材は、他の選択肢の中でも、例えば、実際には熱硬化性、紫外線硬化性、湿気硬化性または電子ビーム硬化性であってもよい。さらに、使用される材料に応じて、紫外線硬化+熱硬化、紫外線硬化+湿気硬化、熱硬化+電子ビーム硬化などの少なくとも2種類の硬化法を利用する組み合わせ硬化技術が適用可能であってもよい。
【0104】
エンボス加工またはいくつかの他の技術によってラッカーに設けられた箔上に表面レリーフパターン「A」を確立した(1316)後、必要であれば、紫外線硬化などの好適な方法によってこのパターンを事前硬化し(1318)、場合によってはその後に、別のフィルムなどの担体要素に積層化(1320)してもよい。好ましくは埋め込まれたパターンAを含む組み立てられた積層体「A」を1322で硬化してもよく、その後、それに対する好ましくは積層化1324によって、箔などのさらなる機能性要素を接合してもよく、これについては、単なる一例として、「b」が追加されているが同じ符号によって示されている実質的に同様のプロセス項目を有する1304に一般に示されている。但し、これらのプロセス項目は類似している必要はなく、例えば、異なるパターン形成技術および/または硬化技術を適用することができる。さらなる機能性要素は、図に示すようにパターン「B」を含んでいてもよい。パターンAおよびBを含む最終の積層体を、いくつかの適用可能な硬化1326手順および/または他の処理に供してもよい。
【0105】
従って、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲を実施するために、存在する場合には必要な修正、削除および追加を伴う各特定の使用事例に、本開示および一般知識に基づいて提供されている教示を適用することができる。
【0106】
例えば、いくつかの実施形態では、集積化積層構造体の1つ以上の要素は、均一照射または分離した照明などの所定の目的のために、説明されている空洞光学部品を含んでいてもよい。光学機能性要素は、様々な電子装置または他の装置のカバーなどの他の要素との積層化によって集積されていてもよい。
【0107】
本発明は、積層体などの集積化構造体に局所的な光学機能を提供することができる。その特定の実施形態において、局所効果や情報を与える表示などの視覚的表示を作製してもよい。
【0108】
一般に本発明の異なる実施形態では、レリーフ形態は、担体基板の関連する表面準位に対して凸状であっても凹状であってもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、積層化の代わりに、またはそれに加えて、集積化構造体の要素を、機械的固定構造体、単なる接着剤などのいくつかの他の方法を用いて取り付けてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明に係る積層構造体は、チップ、チップパッケージ、太陽電池構造体、光源、照明要素、電子装置、カバーまたは本体構造体など他の要素にさらに集積されていても、それらを含むように構成されていてもよい。
【0111】
上に説明した様々な機能/機能性はそれぞれ、専用の要素、共有要素によって、あるいは複数の協働要素によって、積層構造体内に実装されていてもよい。
【0112】
光学部品および特に太陽光技術の代わりに、またはそれらに加えて、本明細書に提示されている積層体解決法を、マイクロフルイディクスなどの他の状況に利用することができる。例えば、冷却構造体および冷却チャネルをそれと共に製造することができる。潤滑剤チャネルも形成することができる。