(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160342
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】デジタル添削装置及び通信教育システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/20 20120101AFI20241106BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20241106BHJP
G06F 3/0483 20130101ALI20241106BHJP
【FI】
G06Q50/20 300
G09B19/00 Z
G06F3/0483
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134740
(22)【出願日】2024-08-13
(62)【分割の表示】P 2023090902の分割
【原出願日】2017-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2016225071
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】堀江 利彦
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デジタルデータの入力と修正を簡単かつ適切に行えると共に、デジタルデータの作成過程を簡単に再現するデジタル添削装置及び通信教育システムを提供する。
【解決手段】デジタル添削装置7において、時系列データ再生部707は、所定タイミング毎の時点情報と、この時点情報が示す時点における位置検出回路からの検出出力と、この時点情報が示す時点における操作部の操作状態を示す状態情報とを関連付けた時系列データを生成し、表示部704に表示されるタイムバー上のスライダーが操作された場合には、当該操作に対応して、時系列データに応じた解答を時系列順に再生するように、表示部704に表示する処理を行う。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル入力装置とデジタル添削装置とによって構成される通信教育システムの前記デジタル添削装置であって、
前記デジタル入力装置は、電子ペンによる指示位置に応じた座標を検出するセンサ部と、前記センサ部の下側あるいは上側に配置される表示部と、所定の書式フォーマット及び前記センサ部を通じて受け付けた前記電子ペンの指示位置に応じた入力情報を、前記表示部に表示する表示処理手段と、1以上の操作ボタンを備えた操作部と、所定タイミングごとの時点情報を提供する時点情報提供部と、前記時点情報が示す時点における、前記書式フォーマットに対する前記電子ペンの指示に応じた前記センサ部からの指示位置情報と、前記電子ペンからの当該電子ペンに関わる情報と、前記操作部の操作状態を示す操作情報とを関連付けた時系列データを生成する時系列データ生成部と、前記時系列データ生成部で生成される前記時系列データと前記所定の書式フォーマットとを関連付けて記憶する記憶部とを備え、前記操作部は、前記表示部を挟んで、使用者の左手で操作される左消去ボタンと、使用者の右手で操作される右消去ボタンとを含み、前記左消去ボタンあるいは前記右消去ボタンが押下操作されている場合の前記電子ペンによる前記センサ部に対する操作は、入力情報の消去操作として認識するようにされており、
前記デジタル入力装置の前記記憶部に記録された前記時系列データと前記所定の書式フォーマットの提供を受けて、これらを記憶保持する提供データ記憶手段と、
電子ペンによる指示位置に応じた座標を検出する添削装置センサ部と、
前記添削装置センサ部の下側あるいは上側に配置される添削装置表示部と、
前記添削装置表示部に前記提供データ記憶手段の前記時系列データに応じた情報と前記所定の書式フォーマットに応じた書式とを表示する添削装置表示処理手段と、
前記添削装置表示部に表示され、使用者により操作可能にされるソフトウェア操作子であって、前記提供データ記憶手段の前記時系列データに応じた情報を時系列に従って前記添削装置表示部に表示させるための指示入力を受け付ける再生指示子と
を備えることを特徴とするデジタル添削装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル添削装置であって、
電子ペンにより前記添削装置センサ部を通じて、前記添削装置表示部に表示された前記解答に対する添削入力を受け付けて、添削情報を形成する添削情報形成手段と、
前記添削情報形成手段により形成された前記添削情報を、前記添削装置表示部に表示する添削情報表示処理手段と、
前記書式フォーマットと、前記時系列データに応じた前記解答と、前記添削情報とを対応付けた添削済み情報を記憶する添削済み情報記憶部と
を備えることを特徴とするデジタル添削装置。
【請求項3】
請求項2に記載のデジタル添削装置であって、
前記添削情報形成手段は、前記添削情報を、前記時系列データに応じた前記解答とは異なる態様で表示されるように形成する
ことを特徴とするデジタル添削装置。
【請求項4】
デジタル入力装置とデジタル添削装置とによって構成される通信教育システムであって、
前記デジタル入力装置は、
電子ペンによる指示位置に応じた座標を検出するセンサ部と、
前記センサ部の下側あるいは上側に配置される表示部と、
所定の書式フォーマット及び前記センサ部を通じて受け付けた前記電子ペンの指示位置に応じた入力情報を、前記表示部に表示する表示処理手段と、
1以上の操作ボタンを備えた操作部と、
所定タイミングごとの時点情報を提供する時点情報提供部と、
前記時点情報が示す時点における、前記書式フォーマットに対する前記電子ペンの指示に応じた前記センサ部からの指示位置情報と、前記電子ペンからの当該電子ペンに関わる情報と、前記操作部の操作状態を示す操作情報とを関連付けた時系列データを生成する時系列データ生成部と、
前記時系列データ生成部で生成される前記時系列データと前記所定の書式フォーマットとを関連付けて記憶する記憶部と
を備え、
前記操作部は、前記表示部を挟んで、使用者の左手で操作される左消去ボタンと、使用者の右手で操作される右消去ボタンとを含み、前記左消去ボタンあるいは前記右消去ボタンが押下操作されている場合の前記電子ペンによる前記センサ部に対する操作は、入力情報の消去操作として認識するようにされており、
前記デジタル添削装置は、
前記デジタル入力装置の前記記憶部に記録された前記時系列データと前記所定の書式フォーマットの提供を受けて、これらを記憶保持する提供データ記憶手段と、
電子ペンによる指示位置に応じた座標を検出する添削装置センサ部と、
前記添削装置センサ部の下側あるいは上側に配置される添削装置表示部と、
前記添削装置表示部に前記提供データ記憶手段の前記時系列データに応じた情報と前記所定の書式フォーマットに応じた書式とを表示する添削装置表示処理手段と、
前記添削装置表示部に表示され、使用者により操作可能にされるソフトウェア操作子であって、前記提供データ記憶手段の前記時系列データに応じた情報を時系列に従って前記添削装置表示部に表示させるための指示入力を受け付ける再生指示子と
を備えることを特徴とする通信教育システム。
【請求項5】
請求項4に記載の通信教育システムであって、
前記デジタル添削装置は、
電子ペンにより前記添削装置センサ部を通じて、前記添削装置表示部に表示された前記解答に対する添削入力を受け付けて、添削情報を形成する添削情報形成手段と、
前記添削情報形成手段により形成された前記添削情報を、前記添削装置表示部に表示する添削情報表示処理手段と、
前記書式フォーマットと、前記時系列データに応じた前記解答と、前記添削情報とを対応付けた添削済み情報を記憶する添削済み情報記憶部と
を備えることを特徴とする通信教育システム。
【請求項6】
請求項5に記載の通信教育システムであって、
前記デジタル添削装置の前記添削情報形成手段は、前記添削情報を、前記時系列データに応じた前記解答とは異なる態様で表示されるように形成する
ことを特徴とする通信教育システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、入学試験などの大規模試験や個人を対象とした通信教育に利用して好適な装置、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
中学、高校、大学等の入学試験をはじめ、各種の検定試験や資格試験など、多数の受験者が受験する種々の大規模試験が行われている。このような大規模試験では、問題用紙と解答用紙とを受験者に配布して試験を行い、受験生が解答を記入した解答用紙を回収して採点し、採点結果に応じて合否判定を行うのが従来の一般的な方法である。そして、いわゆる大学入試センター試験のような受験者が多い試験の場合、採点を迅速、正確、公正に行うために、コンピュータによる採点処理が可能なマークシート方式の試験が行われることが多い。
【0003】
マークシート方式の試験の場合、受験生は予め設けられた複数の選択肢の中から正解と思われる選択肢を選び出し、その選び出した選択肢に対応する解答欄を鉛筆などにより塗り潰すことにより解答を行う。すなわち、解答だけを記載するため、理科系科目の場合には解答に至るまでの計算過程を採点対象とすることができないし、文系科目の場合には文章の作成能力などを採点の対象とすることができない。
【0004】
もちろん、従来から行われている試験のように、解答用紙に答えだけでなく計算過程を記載させるようにしたり、解答用紙に文章を記載させるようにしたりすることも可能である。しかし、この場合、受験生が多くなれば多くなるほど、解答用紙の保管には場所や費用が掛かるし、また、解答用紙を汚したり、破損させたりする可能性も生じる。また、採点者が受験者の思考過程などを考慮しながら採点する問題と、コンピュータにより機械的に採点が可能な問題とを混在させたい場合もある。
【0005】
そこで、後に記す特許文献1に開示された発明の学習支援プログラムおよび学習支援装置のように、ペン入力用パネルを備えたパーソナルコンピュータやスマートフォンやタブレット型コンピュータなどの電子機器を、解答に利用することが考えられる。ここで、ペン入力用パネルは、表示装置といわゆるタッチセンサとを組み合わせた電子部品であり、電子ペンを用いることにより、受験者が計算式や文章の筆記入力が可能である。
【0006】
この場合、ペン入力用パネルを通じて入力された解答情報を電子データとして扱うことができるので、解答用紙の保管の問題も生じないし、解答用紙を汚したり、破損させたりするといった問題も生じない。また、解答情報を電子データとして扱うことができるので、計算式や文章などは、採点者が受験者の思考過程などを考慮しながら採点することができる。また、選択肢を選択させる問題などの場合には、コンピュータによる機械的な採点も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したペン入力用パネルを備えた電子機器を、解答を入力する装置として用いるシステムの場合には、一度入力した解答情報を修正する場合に問題が生じる場合がある。すなわち、ペン入力用パネルに対して電子ペンを用いて解答情報を入力しており、解答を書き直すには、まず入力されている解答情報を消去しなければならない。入力されている解答情報を消去するには、ペン入力用パネルに対して解答の入力時とは異なる信号を供給する消去用指示子(消去用電子ペン)が必要になる。
【0009】
この消去用電子ペンは、解答用電子ペンとは別体のものとして構成したり、また、1本の電子ペンの一方の端部を解答用電子ペンとし、他方の端部を消去用電子ペンとして構成したりする。この場合、受験者が、解答用電子ペンと消去用電子ペンとを間違えて使用してしまうといったことが起こる可能性がある。したがって、受験者は、常に解答用電子ペンと消去用電子ペンとを認識して、解答用電子ペンと消去用電子ペンとを使い分けなければならず面倒である。また、解答用電子ペンと消去用電子ペンとを持ち替える場合には、一連の思考の妨げになる場合があると考えられる。
【0010】
また、出来上がった解答結果だけを見るのではなく、複数の問題がある場合に、どの問題から解答を始めたのか、どこをどのように直したのかなどを必要に応じて見ることができれば、より適切かつ正確に採点を行うことができる場合もある。このことは、入学試験、検定試験、資格試験などのいわゆる大規模試験だけでなく、個人を対象に行われる通信教育の場合にも、受講者の解答の過程が詳細に再現できれば、より適切な指導を行うことができるようになる。
【0011】
以上のことに鑑み、この発明は、電子ペンと位置検出装置とを用いてデジタルデータの入力が可能な入力装置を用いる場合に、デジタルデータの入力と修正を簡単かつ適切に行えると共に、入力されたデジタルデータの作成過程(入力過程)を簡単に再現することをできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のデジタル添削装置は、
デジタル入力装置とデジタル添削装置とによって構成される通信教育システムの前記デジタル添削装置であって、
前記デジタル入力装置は、電子ペンによる指示位置に応じた座標を検出するセンサ部と、前記センサ部の下側あるいは上側に配置される表示部と、所定の書式フォーマット及び前記センサ部を通じて受け付けた前記電子ペンの指示位置に応じた入力情報を、前記表示部に表示する表示処理手段と、1以上の操作ボタンを備えた操作部と、所定タイミングごとの時点情報を提供する時点情報提供部と、前記時点情報が示す時点における、前記書式フォーマットに対する前記電子ペンの指示に応じた前記センサ部からの指示位置情報と、前記電子ペンからの当該電子ペンに関わる情報と、前記操作部の操作状態を示す操作情報とを関連付けた時系列データを生成する時系列データ生成部と、前記時系列データ生成部で生成される前記時系列データと前記所定の書式フォーマットとを関連付けて記憶する記憶部とを備え、前記操作部は、前記表示部を挟んで、使用者の左手で操作される左消去ボタンと、使用者の右手で操作される右消去ボタンとを含み、前記左消去ボタンあるいは前記右消去ボタンが押下操作されている場合の前記電子ペンによる前記センサ部に対する操作は、入力情報の消去操作として認識するようにされており、
前記デジタル入力装置の前記記憶部に記録された前記時系列データと前記所定の書式フォーマットの提供を受けて、これらを記憶保持する提供データ記憶手段と、
電子ペンによる指示位置に応じた座標を検出する添削装置センサ部と、
前記添削装置センサ部の下側あるいは上側に配置される添削装置表示部と、
前記添削装置表示部に前記提供データ記憶手段の前記時系列データに応じた情報と前記所定の書式フォーマットに応じた書式とを表示する添削装置表示処理手段と、
前記添削装置表示部に表示され、使用者により操作可能にされるソフトウェア操作子であって、前記提供データ記憶手段の前記時系列データに応じた情報を時系列に従って前記添削装置表示部に表示させるための指示入力を受け付ける再生指示子と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、操作部の利用により、入力情報の修正を簡単かつ適切に行うようにすることができる。また、入力情報を時系列データとして形成し、当該時系列データを利用することにより、情報の入力過程を簡単に再現することができる。したがって、入力した情報の修正を適切に行うことができると共に、情報の入力過程を適切に再現することができる。このため、入学試験をはじめとする種々の試験を行う場合にこの発明を適用することによって、解答の入力過程を適切に把握し、解答に対する評価をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施の形態の大規模試験システムの概要を説明するための図である。
【
図2】第1の実施の形態の大規模試験システムのデジタル解答装置の外観を説明するための外観図である。
【
図3】第1の実施の形態の大規模試験システムのデジタル解答装置の内部構造の概要を説明するための図である。
【
図4】第1の実施の形態のデジタル解答装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【
図5】第1の実施の形態のデジタル解答装置に搭載された位置検出装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【
図6】第1の実施の形態のデジタル解答装置に対する解答の入力操作について説明するための図である。
【
図7】第1の実施の形態のデジタル解答装置で生成される時系列データである解答情報の例を説明するための図である。
【
図8】第1の実施の形態のデジタル解答装置で形成される時系列データである解答情報の構成と送信用解答情報の構成を説明するための図である。
【
図9】第1の実施の形態のデジタル解答装置で生成される時系列データである解答情報の例を説明するための図である。
【
図10】第2の実施の形態の通信教育システムの概要を説明するための図である。
【
図11】第2の実施の形態の通信教育システムのデジタル添削装置の外観を説明するための外観図である。
【
図12】第2の実施の形態の通信教育システムで処理されるデータのレイヤー構造について説明するための図である。
【
図13】第2の実施の形態の通信教育システムのデジタル添削装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【
図14】第2の実施の形態のデジタル添削装置における解答情報の再生時の表示情報の例について説明するための図である。
【
図15】第2の実施の形態のデジタル添削装置で生成される送信用添削情報の例を説明するための図である。
【
図16】第2の実施の形態のデジタル添削装置において実行される添削処理について説明するためのフローチャートである。
【
図18】答案フォーマットが複数頁に渡る場合の頁別解答情報の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しながら、この発明の装置、システムの実施の形態について説明する。以下においては、大規模試験システムに適用した場合の例である第1の実施の形態と、通信教育システムに適用した場合の例である第2の実施の形態について説明する。
【0016】
[第1の実施の形態(大規模試験システム)]
図1は、第1の実施の形態の大規模試験システムの概要を説明するための図である。第1の実施の形態において、大規模試験システムは、例えば、中学校、高校、大学などの入学試験や各種の検定試験、資格試験など、多数の受験者が1カ所以上の試験会場に集合して試験を受ける場合に構築されて活用されるものである。
【0017】
図1に示すように、第1の実施の形態の大規模試験システムは、デジタル解答装置1(1)、1(2)、…、電子ペン2(1)、2(2)、…、アクセスポイント(以下、APと略称する。)3(1)、3(2)、…、ホストコンピュータ4、クラウドシステム5からなる。デジタル解答装置1(1)、1(2)、…、及び、電子ペン2(1)、2(2)、…、のそれぞれは、試験を受験する受験者のそれぞれが利用するものであり、この第1の実施の形態においては、試験の主催者が受験者に対して貸与し、試験終了後に回収するものである。
【0018】
AP3(1)、3(2)、…、のそれぞれは、試験会場となる教室、講義室、講堂などに配置され、デジタル解答装置1(1)、1(2)、…との無線通信を可能にする。ホストコンピュータ4は、1カ所以上の試験会場のそれぞれに少なくとも1台が設けられる。そして、ホストコンピュータ4は、AP3(1)、3(2)、…を介して、デジタル解答装置1(1)、1(2)、…のそれぞれとの間で通信を行い、答案フォーマットや試験問題の配布、解答情報の回収を行う。クラウドシステム5は、種々のデータの格納部や解答の採点や評価を行う処理部を備える。
【0019】
近年においては、ソフトウェアやハードウェアの利用権などをネットワーク越しにサービスとして利用者に提供するクラウドコンピューティング方式が広く利用されている。このようなクラウドコンピューティング方式を実現するために、インターネット上に設けられているデータセンターやサーバ群のことをクラウドと呼んでいる。
【0020】
すなわち、クラウドは、使用者にリアルなサーバを意識させることなく、目的とするソフトウェアやハードウェアなどを使用者に提供するものである。そして、この実施形態においては、
図1に示すように、クラウド上にクラウドシステム5として、データ格納部51、採点評価部52、評価結果格納部53が設けられている。
【0021】
クラウドシステム5のデータ格納部51は、答案フォーマットや試験問題などの提供データの格納領域と、各デジタル解答装置1(1)、1(2)、…から収集した解答情報の格納領域とを備えている。そして、クラウドシステム5は、各試験会場のそれぞれに設けられたホストコンピュータ4からの要求に応じて、答案フォーマットと試験問題をデータ格納部51から読み出し、これを要求元のホストコンピュータ4に配布する。
【0022】
ホストコンピュータ4は、AP3(1)、3(2)、…を通じて無線により、各デジタル解答装置1(1)、1(2)、…に、答案フォーマットと試験問題とを配布する。第1の実施の形態の大規模試験システムにおいては、ホストコンピュータ4が、各デジタル解答装置1(1)、1(2)、…に対して、答案フォーマットと試験問題の表示開始と表示終了のタイミングが制御できるようになっている。これにより、試験時間開始前に解答をはじめたり、試験時間終了後にも解答を行ったりするといった不正な解答が防止できる。
【0023】
もちろん、各デジタル解答装置1(1)、1(2)、…に対して、事前に答案フォーマットと試験問題とを配布しておき、試験官の開始の指示により、各デジタル解答装置1(1)、1(2)、…に対して、受験者が電源を投入する。これにより、各デジタル解答装置1(1)、1(2)、…において、答案フォーマットと試験問題とを表示して、受験者が解答の入力を行うようにすることもできる。
【0024】
各受験者は、自己に貸与されたデジタル解答装置1(1)、1(2)、…を通じて試験問題を表示して読み、解答を考える、そして、各受験者は、自己のデジタル解答装置1(1)、1(2)、…に表示された答案フォーマットに対して、自己の電子ペン2(1)、2(2)、…を用いて解答を書き込むようにして、解答を入力する。このようにして入力された解答情報は、自己のデジタル解答装置1(1)、1(2)、…内のメモリに蓄積され、試験時間の終了後に提出操作を行うことにより、ホストコンピュータ4に対して提出する。ホストコンピュータ4は、各デジタル解答装置1(1)、1(2)、…からの解答情報を収集し、これを記憶保持する。
【0025】
そして、第1の実施の形態の大規模試験システムの場合、ホストコンピュータ4は、収取した各受験者の解答情報を、クラウドシステム5に送信する。クラウドシステム5は、各試験会場のホストコンピュータ4からの解答情報を受信して、データ格納部51の解答情報の格納領域に格納する。この後、クラウドシステム5の採点評価部52が機能して、データ格納部51の解答情報の格納領域に格納された解答情報を採点して評価し、評価結果を形成して、これを評価結果格納部53に格納する。
【0026】
なお、評価結果から合格者が定員より多い場合や逆に合格者が定員より少ない場合には、採点者が解答情報を再度確認し、合格者の調整を行うことができる。この場合、詳しくは後述もするが、解答情報は時系列データとして形成され、解答の状況を正確に再現することができるようにされている。これにより、解答の過程をつぶさに再現し、より緻密に解答が考えられている受験者を見つけたり、逆に解答の過程がおおざっぱで、偶然正解に至った受験者を見つけたりするなど、詳細な評価を行うことができるようにされる。
【0027】
これにより、採点者などの責任ある者が、解答情報をきめ細かくチェックし、思考過程や理解度を適切に把握した上で、最終的な合格者を決定することができるようにされる。そして、クラウドシステム5は、評価結果格納部53の格納データに基づいて、合格者に対して、合格証を発行して郵送するなどのことができるようにされる。
【0028】
そして、第1の実施の形態の大規模試験システムにおける重要な特徴は、デジタル解答装置1(1)、1(2)、…にある。第1の実施の形態のデジタル解答装置1(1)、1(2)、…のそれぞれは、電子ペン2(1)、2(2)、…を用いて解答を入力するが、解答を間違えたときに、簡単かつ適切に、間違えた箇所を消去して入力のし直しをすることができるようにしている。
【0029】
さらに、第1の実施の形態のデジタル解答装置1(1)、1(2)、…のそれぞれは、解答情報を時系列データとして細かく形成することにより、解答の状況を正確に再現することができるようにしている。これにより、上述もしたように、解答の過程をつぶさに再現し、より緻密に解答が考えられている受験者を見つけたり、逆に解答の過程がおおざっぱで、偶然正解に至った受験者を見つけたりするなど、きめ細かな採点ができるようにしている。
【0030】
以下に、第1の実施の形態のデジタル解答装置1(1)、1(2)、…の詳細について説明する。なお、デジタル解答装置1(1)、1(2)、…のそれぞれは、同様の構成を有するものである。このため、以下においては、特に区別して示す必要のある場合を除き、デジタル解答装置1(1)、1(2)、…のそれぞれを、デジタル解答装置1と総称する。また、電子ペン2(1)、2(2)、…についても、同様の構成を有するものであるので、特に区別して示す必要のある場合を除き、電子ペン2(1)、2(2)、…のそれぞれを、電子ペン2と総称する。
【0031】
[デジタル解答装置1の詳細]
図2は、第1の実施の形態の大規模試験システムのデジタル解答装置1の外観を説明するための外観図である。
図2に示すように、デジタル解答装置1は、いわゆるタブレット型PC(Personal Computer)の形態を有するものであり、右上側面部には電源ボタンK1が設けられている。そして、A4判サイズの表示画面を有する表示部104を備え、この表示部104の下には、表示部104の表示画面の全面に対応する位置検出センサ105Aが設けられている。これにより、表示部104の表示画面上に電子ペン2を接触させて操作することにより、文字、記号、図形などの種々の情報を手書きにより入力することができるようになっている。
【0032】
そして、表示部104の表示画面の周囲には、フロントパネル1Aによって構成されるベゼル部が設けられる。このベゼル部の上部側の部分には、提出ボタンK2、右改頁ボタンK3R、左改頁ボタンK3Lが設けられている。また、当該ベゼル部の右側部には、元に戻るボタン(右)K4R、消しゴムボタン(右)K5Rが設けられ、当該ベゼル部の左側部には、元に戻るボタン(左)K4L、消しゴムボタン(左)K5Lが設けられている。元に戻るボタン(右)K4R、消しゴムボタン(右)K5Rは、左利きの使用者用操作子であり、元に戻るボタン(左)K4L、消しゴムボタン(左)K5Lは、右利きの使用者用操作子である。
【0033】
電源ボタンK1は、電源のオン/オフ用の操作子であり、提出ボタンK2は、試験問題に対する入力した一連の解答情報をホストコンピュータ4に提出(送信)する場合に操作する操作子である。右改頁ボタンK3R、左改頁ボタンK3Lのそれぞれは、矢印が示す方向に頁送りをするための操作子である。また、元に戻るボタン(右)K4Rと元に戻るボタン(左)K4Lとは、直前の入力情報を取り消して、1つ前の入力状態に戻るための操作子である。消しゴムボタン(右)K5Rと消しゴムボタン(左)K5Lとは、これらが押下操作されている間においては、電子ペン2による位置検出センサ105Aに対する操作は、入力情報の消去操作として処理するようにされる。
【0034】
図3は、
図2に示した外観を有するデジタル解答装置1の内部構造の概要を説明するための図である。
図3に示すように、デジタル解答装置1は、筐体1Cの内部に、下から順に、回路基板1B、位置検出センサ105A、表示部104が積層され、これらがフロントパネル1Aによって封入される構成になっている。なお、フロントパネル1Aは、表示部104の表示画面部分は開口部となっているが、当該開口部にはたとえば保護ガラスが設けられ、表示部104の表示画面が保護される。
【0035】
図4は、デジタル解答装置1の構成例を説明するためのブロック図である。送受信アンテナ101Aと無線通信部101とは、無線通信機能を実現する部分である。これらの部分が実現する無線通信機能は、例えば、Wi-Fi(登録商標)規格の無線LAN(Local Area Network)により、AP3(1)、3(2)、…を通じて、ホストコンピュータ4との間で相互に無線通信ができるようにする。
【0036】
制御部102は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどが、バスを通じて接続されて構成されたコンピュータ装置部である。制御部102は、デジタル解答装置1の各部を制御する機能を実現する。メモリ部103は、内部メモリと外部メモリとの一方または両方を備え、これらのメモリに対して、制御部102の制御の下、例えば、答案フォーマットや解答情報などの各種の情報の書き込み/読み出しができるようになっている。
【0037】
メモリ部103に搭載される内部メモリとしては、例えば、フラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)などがある。また、メモリ部103に対して着脱可能にされる外部メモリとしては、USBメモリやSDカードメモリ、SDカードの上位カードメモリなどの種々のものを用いるようにすることができる。
【0038】
なお、メモリ部103に内部メモリと外部メモリとの両方を備えるようにした場合には、それぞれに異なる情報を記録するようにして使い分けるようにすることができる。また、内部メモリと外部メモリとに同じ情報を記録するようにして、内部メモリに記録したデータは試験の実施者側が利用し、外部メモリは取り外して、デジタル解答装置1を用いて試験を受けた受験者が持ち帰って利用するといったことができる。
【0039】
表示部104は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display)などの薄型の表示素子と表示処理回路とからなる部分である。表示部104には、制御部102の制御の下、答案フォーマットや試験問題、更には受験者(使用者)によって入力された受験番号、氏名、解答情報などを表示することができるようにされている。
【0040】
位置検出センサ105Aと位置検出回路105Bとは、位置検出装置105を構成する。この実施の形態において、位置検出装置105は、EMR(登録商標)方式、すなわち電磁誘導授受方式ものである。位置検出装置には、静電容量方式のものもある。しかし、静電容量方式の位置検出装置の場合には、使用者の指などによっても指示入力が可能であり、誤入力の発生頻度が高くなる可能性がある。このため、デジタル解答装置1では、電磁誘導授受方式の位置検出装置105を採用している。なお、電磁誘導授受方式の位置検出装置105の構成例については後述する。
【0041】
操作部106は、上述もしたように、電源ボタンK1、提出ボタンK2、右改頁ボタンK3R、左改頁ボタンK3L、元に戻るボタン(右)K4R、元に戻るボタン(左)K4L、消しゴムボタン(右)K5R、消しゴムボタン(左)K5Lを備えたものである。これらの操作ボタンが操作された場合に、操作されたボタンに応じた信号を制御部102や時系列データ生成部107に供給できるようになっている。
【0042】
時系列データ生成部107は、受験者によって位置検出センサ105Aに対して行われた入力操作や操作部106の各操作ボタンに対する入力操作に応じて、時系列データとしての解答情報を生成する処理を行う。時計回路108は、例えば、0.5秒ごと、1秒ごとなどのように、時系列データとしての解答情報を形成するタイミングを提供するものである。この他、時計回路108は、現在年月日、現在曜日、現在時刻を提供する機能も有する。なお、時系列データ生成部107における時系列データの生成処理の詳細は後述する。そして、表示部104と位置検出センサ105Aとを除いた各部分が、
図3に示した回路基板1B上に設けられる。
【0043】
図5は、デジタル解答装置1に搭載された電磁誘導授受方式の位置検出装置105と電子ペン2の構成例を説明するためのブロック図である。
【0044】
電子ペン2は、回路構成としては、信号送受用のコイル21と、このコイル21に接続された筆圧検出部22と、この筆圧検出部22に並列に接続される共振コンデンサCf等からなる共振回路によって現される。すなわち、電子ペン2は、位置検出装置に対して位置検出センサ105A上の位置を指示すると共に、その時に受験者によって電子ペン2に加えられた筆圧を検出し、これを位置検出装置105に対して通知することもできるものである。
【0045】
一方、位置検出装置105には、X軸方向ループコイル群Xaと、Y軸方向ループコイル群Ybとを積層させて設けることにより、電磁誘導方式の位置(座標)検出センサ105Aが形成されている。各ループコイル群Xa,Ybは、例えば、それぞれ40本の矩形のループコイルからなっている。各ループコイル群Xa,Ybを構成する各ループコイルは、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。
【0046】
また、位置検出装置105には、X軸方向ループコイル群Xa及びY軸方向ループコイル群Ybが接続される選択回路B3が設けられている。この選択回路B3は、2つのループコイル群Xa,Ybのうちの一のループコイルを順次選択する。
【0047】
さらに、位置検出装置105には、発振器B1と、電流ドライバB2と、切り替え接続回路B4と、受信アンプB5と、検波器B6と、低域フィルタB7と、サンプルホールド回路B8と、A/D変換回路B9と、同期検波器B10と、低域フィルタB11と、サンプルホールド回路B12と、A/D変換回路B13と、処理部B14とが設けられている。
【0048】
発振器B1は、周波数f0の交流信号を発生し、電流ドライバB2と同期検波器B10に供給する。電流ドライバB2は、発振器B1から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路B4へ送出する。切り替え接続回路B4は、後述する処理部B14からの制御により、選択回路B3によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子S)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバB2が、受信側端子Sには受信アンプB5が、それぞれ接続されている。
【0049】
選択回路B3に選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路B3及び切り替え接続回路B4を介して受信アンプB5に送られる。受信アンプB5は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、検波器B6及び同期検波器B10へ送出する。
【0050】
検波器B6は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、低域フィルタB7へ送出する。低域フィルタB7は、前述した周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、検波器B6の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路B8へ送出する。サンプルホールド回路B8は、低域フィルタB7の出力信号の所定のタイミング、具体的には受信期間中の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路B9へ送出する。A/D変換回路B9は、サンプルホールド回路B8のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理部B14に出力する。
【0051】
一方、同期検波器B10は、受信アンプB5の出力信号を発振器B1からの交流信号で同期検波し、それらの間の位相差に応じたレベルの信号を低域フィルタB11に送出する。この低域フィルタB11は、周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、同期検波器B10の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路B12に送出する。このサンプルホールド回路B12は、低域フィルタB11の出力信号の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路B13へ送出する。A/D変換回路B13は、サンプルホールド回路B12のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理部B14に出力する。
【0052】
処理部B14は、位置検出装置105の各部を制御する。すなわち、処理部B14は、選択回路B3におけるループコイルの選択、切り替え接続回路B4の切り替え、サンプルホールド回路B8、B12のタイミングを制御する。処理部B14は、A/D変換回路B9、B13からの入力信号に基づき、X軸方向ループコイル群Xa及びY軸方向ループコイル群Ybから一定の送信継続時間をもって電波を送信させる。
【0053】
X軸方向ループコイル群Xa及びY軸方向ループコイル群Ybの各ループコイルには、電子ペン2から送信される電波によって誘導電圧が発生する。処理部B14は、この各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン2のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。また、処理部B14は、送信した電波と受信した電波との位相差に基づいて筆圧を検出する。このように、この実施の形態の電磁誘導授受方式の電子ペン2と
図4に示した電磁誘導授受方式の位置検出装置105とにより、入力装置が構成される。
【0054】
[デジタル解答装置1に対する解答の入力と解答情報の生成処理]
次に、上述し構成を有するデジタル解答装置1を用いた解答の入力の仕方と、デジタル解答装置1における解答情報の生成処理について説明する。
図6は、デジタル解答装置1に対する解答の入力操作について説明するための図である。
【0055】
上述したように、デジタル解答装置1は、ホストコンピュータ4から送信される答案フォーマット及び試験問題を受信し、これを制御部102内の不揮発メモリに格納する。そして、制御部102は、不揮発性メモリに格納した答案フォーマット及び試験問題を表示部104に供給し、
図6(A)に示すように、当該答案フォーマットに応じた解答欄と試験問題とを表示部104の表示画面に表示する。
【0056】
受験者は、表示部104に表示された試験問題を読み、同じく表示部104に表示された解答欄に解答を、電子ペン2を用いて入力する。
図6(A)に示した例は、説明を簡単にするため、小学校低学年程度の算数の試験問題が出題された場合を示している。もちろん、実施される試験の受験対象者に応じて、種々の問題が出題されることになる。
【0057】
そして、
図6(B)に示すように、出題された試験問題に対して解答するために、受験者が表示部104に表示された答案フォーマットに応じた計算式の記載欄に、電子ペン2を用いて計算式の記載を始めたとする。そして、受験者が、等号(=)の上の横棒を記載しようとしたところで、最初に記載した数字は「2」でなく、「8」であることに気が付いたとする。ここでは、受験者は、右利きであるものとする。
【0058】
この場合、元に戻すボタン(左)K4Lを用いたのでは、数字の「3」→「-(マイナス)」→数字の「2」というように、後ろから順番に入力情報を消去することになる。この例の場合には、先頭の数字「2」だけを消去すれば足りる。そこで、受験者は、
図6(C)に示すように、左手で消しゴムボタン(左)K5Lを押下操作しながら、右手に持った電子ペン2を用いて、数字「2」が表示されている表示部104上の位置をなぞったり、数字「2」が表示されている表示部104上の領域を塗り潰すようにしたりする。
【0059】
このように、消しゴムボタン(左)K5Lが押下操作されている間においては、制御部102は、電子ペン2による表示部104の表示画面上への操作は消去操作であると判別できる。そして、消しゴムボタン(左)K5Lが押下操作されている間において、なぞられた部分あるいは塗り潰された部分に記載された情報は消去対象であると判別する。そして、制御部102は、表示部104を制御して、
図6(C)に示すように、なぞられた部分あるいは塗り潰された部分に記載されている情報、この例の場合には数字「2」を消去する。
【0060】
そして、消しゴムボタン(左)K5Lの押下操作をやめれば、電子ペン2による表示部104上への操作は、入力操作であると判別できる。このため、受験者は、
図6(D)に示すように、数字「2」を消去した部分に、電子ペン2を用いて、正しい記載である数字「8」を記載し直すことにより、入力情報の修正を、簡単に、かつ、直接的に行うことができる。しかも、消去用電子ペンに持ち替えるといった動作を行うこともないので、受験者の思考が停滞するような状況の発生を極力避けることができる。
【0061】
なお、ここでは、受験者は右利きであるものとしたが、左利きの受験者の場合には、消しゴムボタン(右)K5Rを用いて同様の修正処理を行うことができる。すなわち、左利きの受験者の場合には、右手で消しゴムボタン(右)K5Rを押下操作する。そして、押下操作中において、左手に持った電子ペン2を用いて、消去対象の文字が表示されている表示部104上の位置をなぞったり、消去対象の文字が表示されている表示部104上の領域を塗り潰すようにしたりする。これにより、消去対象の文字の消去が行える。したがって、右利きと左利きとで入力操作に有利状況や不利な状況を生じさせないようにできる。
【0062】
このように、受験者は、電子ペン2を用いてデジタル解答装置1に対して解答情報を入力することができると共に、消しゴムボタン(左)K5L、消しゴムボタン(右)K5Rを用いて、目的とする文字だけを消去して修正を行うことができる。
【0063】
そして、デジタル解答装置1は、受験者によって入力された解答情報を時系列データとして生成する。この場合、時系列データとしての解答情報は、入力操作だけでなく、消去操作も含めて形成され、試験開始から試験終了までの間にデジタル解答装置1に対して行われた全ての操作に対応したデータが形成される。
【0064】
[時系列データとしての解答情報の具体例]
図7は、
図6を用いて説明した解答の入力操作と消しゴムボタン(左)K5Lを用いた消去操作とを行った場合に生成される解答情報の例を示している。また、
図8は、デジタル解答装置1で形成される時系列データである解答情報の構成と送信用解答情報の構成を説明するための図である。
【0065】
デジタル解答装置1では、時計回路108が提供する所定のタイミングごとの時点において、位置検出装置105の位置検出回路105Bからの検出出力と、操作部106の操作ボタンの操作情報とが取得され、これらから時系列データが形成される。この時系列データのである解答情報の集合が、試験問題に対する一連の解答情報となる。
【0066】
解答情報の最小単位の構成は、
図8(A)に示すように、時点tn、X座標Xn、Y座標Yn、筆圧Pn、ボタンステータスSnからなる。時点tnは、時計回路108から提供される所定のタイミングごとの時点を示す情報であり、第1の実施の形態では、例えば、0.5秒おきの時点を示す情報である。もちろん、時点tnは、0.5秒ごとよりも短い間隔ごとの時点としたり、0.7秒ごと、1秒ごとといった比較的に長い間隔ごとの時点としたりすることもできる。
【0067】
X座標Xnと、Y座標Ynと、筆圧Pnとは、
図5を用いて説明した位置検出装置105の位置検出回路105Bからの検出出力である。ボタンステータスSnは、操作部106からの操作された操作ボタンを示す情報(操作情報)である。そして、デジタル解答装置1の時系列データ生成部107は、時計回路108からの0.5秒ごとの時点において、当該時点tnと、X座標Xn、Y座標Yn、筆圧Pnと、ボタンステータスSnとによって、時系列データである解答情報を形成する。
【0068】
したがって、時点tnにおいて、電子ペン2により表示部104上で何も操作が行われていない時には、X座標Xn、Y座標Yn、筆圧Pnのそれぞれの値は「0(ゼロ)」となる。また、時点tnにおいて、操作部106のどの操作ボタンも操作されていない時には、ボタンステータスSnの値は「0(ゼロ)」となる。
【0069】
そして、
図6を用いて説明した例の場合には、
図7の「操作入力」の欄に示すように、まず、時点t1~時点t5において、数字「2」が、電子ペン2を用いて表示部104の表示画面上で記載されたとする。この場合、時系列データ生成部107は、時計回路108からの時点情報と、位置検出回路105Bからの検出出力と、操作部106からの出力値とから、
図7の「入力時系列データ」の欄に示すように、時点t1~時点t5までの5つの時系列データを形成する。
【0070】
時点t1~時点t5においては、操作部106の操作ボタンは操作されていないので、ボタンステータスS1~S5の値はいずれも「0(ゼロ)」である。それ以外の時点t1~t5、X座標X1~X5、Y座標Y1~Y5、筆圧P1~P5には、実際の検出値が入力される。そして、
図7の「表示」の欄に示すように、表示部104の表示画面の操作対応部分には、数字「2」が表示される。
【0071】
次の時点t6においては、何らの操作も行われていない状態、すなわち、電子ペン2が表示部104の表示画面上から離れ、操作部106の操作ボタンも押下されていない状態になったとする。この場合にも、時系列データは生成される。そして、電子ペン2が表示部104の表示画面上から離れている場合でも、電子ペン2による位置検出センサ105A上の指示位置が検出できる場合と検出できない場合とがある。
【0072】
前者は、電子ペン2のペン先が表示部104の表示画面に近接しているために、電子ペン2による位置検出センサ105A上の指示位置が検出できる場合であり、例えば、1つの文字の入力が終了し、次の文字の入力などに移る場合である。この場合には、筆圧及びボタンステータスの値が「0(ゼロ)」とされ、時点、X座標、Y座標の値として、それぞれの検出値が用いられる。したがって、
図7の時点t6においては、数字「2」の入力が終了し、記号「-(マイナス)」の入力への移行過程である。このため、時点t6には時計回路108からの時点情報が、X座標X6、Y座標Y6のそれぞれには、当該時点における位置検出回路105Bからの検出値が入力され、筆圧P6及びボタンステータスS6の値は「0(ゼロ)」とされる。
【0073】
後者は、電子ペン2が表示部104の表示画面上から数センチメートル以上離れているために、電子ペン2による位置検出センサ105A上の指示位置が検出できない場合であり、そもそも文字等の入力状態ではない場合である。この場合には、時点以外のX座標、Y座標、筆圧、ボタンステータスのいずれの値も「0(ゼロ)」とされる。このように、時点以外のパラメータの値がすべて「0(ゼロ)」の時系列データが連続する場合には、入力操作がなされる状態ではなく、デジタル解答装置1の使用者(受験者)が思考中であると推定できる。
【0074】
また、X座標とY座標とが検出されている場合であって、それらの示す座標位置が変わらない場合、すなわち電子ペン2の指示位置が変わらないために、時点が変化し、X座標とY座標とが変化せず、少なくともボタンステータスが「0(ゼロ)」となっているデータが連続する場合にも、デジタル解答装置1の使用者が思考中であると推定できる。このように、入力された時系列データによって、デジタル解答装置1の使用者が、文字等を入力している場合と、思考中の場合とを把握することができる。
【0075】
次に、
図7の「操作入力」の欄に示すように、時点t7~時点t9において、記号「-(マイナス)」が、電子ペン2を用いて表示部104の表示画面上で記載されたとする。この場合、時系列データ生成部107は、時計回路108からの時点情報と、位置検出回路105Bからの検出出力と、操作部106からの出力値とから、
図7の「入力時系列データ」の欄に示すように、時点t7~時点t9までの3つの時系列データを形成する。
【0076】
時点t7~時点t9においても、操作部106の操作ボタンは操作されていないので、ボタンステータスS7~S9の値はいずれも「0(ゼロ)」である。それ以外の時点t7~t9、X座標X7~X9、Y座標Y7~Y9、筆圧P7~P9には、実際の検出値が入力される。そして、
図7の「表示」の欄に示すように、表示部104の表示画面の操作対応部分には、記号「-(マイナス)」が表示される。
【0077】
次の時点t10においては、記号「-(マイナス)」の入力が終了し、数字「3」の入力への移行過程であり、電子ペン2のペン先は表示部104の表示画面と近接している状態にある。このため、時点t6の場合と同様に、時点t10には時計回路108からの時点情報が、X座標X10、Y座標Y10のそれぞれには位置検出回路105Bからの検出値が入力され、筆圧P10及びボタンステータスS10の値は「0(ゼロ)」とされる。
【0078】
次に、
図7の「操作入力の欄」に示すように、時点t11~時点t15において、数字「3」が、電子ペン2を用いて表示部104の表示画面上で記載されたとする。この場合、時系列データ生成部107は、時計回路108からの時点情報と、位置検出回路105Bからの検出出力と、操作部106からの出力値とから、
図7の「入力時系列データ」の欄に示すように、時点t11~時点t15までの5つの時系列データを形成する。
【0079】
時点t11~時点t15においても、操作部106の操作ボタンは操作されていないので、ボタンステータスS11~S15の値はいずれも「0(ゼロ)」である。それ以外の時点t7~t9、X座標X7~X9、Y座標Y7~Y9、筆圧P7~P9には、実際の検出値が入力される。そして、
図7の「表示」の欄に示すように、表示部104の表示画面の操作対応部分には、数字「3」が表示される。
【0080】
次の時点t16においても、数字「3」の入力が終了し、次の操作への移行過程であり、電子ペン2のペン先は表示部104の表示画面と近接している状態にある。このため、時点t6の場合と同様に、時点t16には、時計回路108からの時点情報が、X座標X16、Y座標Y16のそれぞれには位置検出回路105Bからの検出値が入力され、筆圧P16及びボタンステータスS16の値は「0(ゼロ)」とされる。
【0081】
そして、数字「3」を入力した直後に受験者が最初に入力(記載)した数字「2」が間違えであることに気付き、
図7の「操作入力」の欄に示すように、時点t17~時点t21において、数字「2」の消去操作を行ったとする。すなわち、時点t17~時点t21において、消しゴムボタン(左)K5Lを押下操作しながら、表示部104に表示されている数字「2」を電子ペン2でなぞる操作を行ったとする。この場合、時系列データ生成部107は、時計回路108からの時点情報と、位置検出回路105Bからの検出出力と、操作部106からの出力値とから、
図7の「入力時系列データ」の欄に示すように、時点t17~時点t21までの5つの時系列データを形成する。
【0082】
時点t17~時点t21においては、操作部106の消しゴムボタン(左)K5Lが操作されているので、ボタンステータスS17~S21には、消しゴムボタン(左)K5Lが操作されたことを示す値が入力される。そして、時点t17~t21、X座標X17~X21、Y座標Y17~Y21、筆圧P17~P21には、実際の検出値が入力される。そして、
図7の「表示」の欄に示すように、表示部104の表示画面の操作対応部分においては、最初に入力された数字「2」が消去された表示状態になる。
【0083】
この場合、
図7の消しゴムマークを付した操作入力欄において、消去対象である数字「2」を点線で囲んで示したように、消しゴムボタン(左)K5Lが操作されている間においては、電子ペン2の指示位置近傍の所定の範囲が消去対象とされる。より具体的には、制御部102は、消去対象の数字「2」の開始点(時点t17)、終了点(時点t21)に小さな円を付して示したように、電子ペン2の指示位置を中心として所定の半径の円の範囲が、仮想的な消しゴムの接触面とする。そして、電子ペン2の移動に伴って、仮想的な消しゴムの接触面も移動するので、制御部102は、当該仮想的な消しゴムの設置面の範囲に存在する表示軌跡、この例の場合には数字「2」を消去するように表示制御処理を行う。
【0084】
次の時点t22においては、数字「2」の消去が完了し、次の操作への移行過程であり、電子ペン2のペン先は表示部104の表示画面と近接している状態にある。このため、時点t6の場合と同様に、時点t22には時計回路108からの時点情報が、X座標X22、Y座標Y22のそれぞれには位置検出回路105Bからの検出値が入力され、筆圧P22及びボタンステータスS22の値は「0(ゼロ)」とされる。
【0085】
そして、
図7の「操作入力」の欄に示すように、時点t23~時点t27において、正しいと考えられる数字「8」が、電子ペン2を用いて表示部104の表示画面上の数字「2」を消去した部分に記載されたとする。この場合、時系列データ生成部107は、時計回路108からの時点情報と、位置検出回路105Bからの検出出力と、操作部106からの出力値とから、
図7の「入力時系列データ」の欄に示すように、時点t23~時点t27までの5つの時系列データを形成する。
【0086】
時点t23~時点t27においても、操作部106の操作ボタンは操作されていないので、ボタンステータスS23~S27の値はいずれも「0(ゼロ)」である。それ以外の時点t23~t27、X座標X23~X27、Y座標Y23~Y27、筆圧P23~P27には、実際の検出値が入力される。そして、
図7の「表示」の欄に示すように、表示部104の表示画面の操作対応部分には、数字「8」が表示される。
【0087】
そして、
図7を用いて説明したように、時系列データとしての解答情報は、数字「2」の入力→記号「-(マイナス)」の入力→数字「3」の入力→数字「2」の消去→数字「8」の入力というように、すべての操作入力に対応して形成される。すなわち、入力操作だけでなく、消去操作についても解答情報に含められる。これにより、間違えた部分、間違えに気付いたタイミング、書き直した解答などのすべてを把握できる。
【0088】
しかも、何らの操作も行われておらず、電子ペン2による位置検出センサ105A上の指示位置も検出されていない場合にも、時系列データが形成される。このため、例えば、試験問題ごとに受験者の思考時間も把握することができる。すなわち、時点以外のX座標、Y座標、筆圧、ボタンステータスの値が「0(ゼロ)」である時系列データが連続する期間が思考時間である。そして、この思考時間は、この思考時間の直後に電子ペン2を用いて解答がなされた問題に対するものとして把握できる。
【0089】
このようにして形成される時系列データとしての解答情報は、制御部102の不揮発性メモリに記録されて保持される。そして、
図8(B)に示すように、送信用解答情報として求められて、提出ボタンK2を押下操作した場合に、ホストコンピュータ4に対して送信される。
【0090】
提出用解答情報は、
図8(B)に示すように、受験地、科目、受験番号、氏名などからなるヘッダ情報と、
図7を用いて説明したように形成される時系列データとしての解答情報の集合と、答案フォーマット及び問題とからなるものである。答案フォーマット及び問題は、採点官が解答情報を再生して採点を行う場合に、
図6(A)に示した態様で、答案フォーマットと試験問題を表示し、さらに解答情報に応じた解答の状況を再生して、採点を行うことができるようにするために付加されている。
【0091】
なお、答案フォーマットや試験問題に識別情報が付与さえていれば、
図8(B)に示したように、答案フォーマットや試験問題自体を送信用解答情報に含めなくてもよい。答案フォーマットや試験問題に付与されている識別情報を、送信用解答情報に付加すればよい。なお、答案フォーマットと試験問題とのそれぞれに別々の識別情報を付与して別々に管理することもできるし、試験問題も答案フォーマットの一部とし、これを1つの識別情報で一体的に管理することもできる。
【0092】
また、上述もしたように、元に戻すボタン(左)K4L、元に戻すボタン(右)K4Rを備えており、直前の入力情報を取り消して、入力した解答を1つ前の状態に戻すこともできる。この場合にも、
図7を用いて説明した場合と同様にして、時系列データとしての解答情報が形成される。
【0093】
図9は、解答の入力操作と元に戻るボタン(左)K4Lを用いた消去操作とを行った場合に生成される解答情報の例を示している。この例の場合には、
図9に示すように、時点t1~時点t5において数字「8」が、時点t7~時点t9において記号「-(マイナス)」が、時点t11~時点t15において数字「2」が入力されたとする。この場合には、
図9にも示したように、表示部401には、「8-2」という表示がされる。また、時点t6、t10、t16においては、数字や記号の入力が完了し、次の操作への移行過程となっている。したがって、時点t1~時点t16において形成される時系列データは、入力される数字の違いはあっても、
図7を用いて説明した時点t1~時点t16において形成される時系列データと同様にして形成される。
【0094】
そして、時点t11~時点t15において、数字「2」を入力した直後に、受験者が数字「2」は入力間違えであることに気付き、
図9の「操作入力」の欄に示すように、時点t17において、元に戻すボタン(左)K4Lを押下操作したとする。この場合、時系列データ生成部107は、時計回路108からの時点情報と、位置検出回路105Bからの検出出力と、操作部106からの出力値とから、
図9の「入力時系列データ」の欄に示すように、時点t17における時系列データを1つ形成する。
【0095】
時点t17においては、操作部106の元に戻すボタン(左)K4Lが操作されているので、ボタンステータスS17には、元に戻すボタン(左)K4Lが操作されたことを示す値が入力される。そして、時点t17、X座標X17、Y座標Y17、筆圧P17には、実際の検出値が入力されるが、この場合、位置検出回路105Bからの検出出力はないので、X座標X17、Y座標Y17、筆圧P17には、値「0(ゼロ)」が入力される。
【0096】
そして、制御部102は、元に戻すボタンK4Lが操作される直前に行われた操作である時点t11~t15に行われた操作を取り消す。これにより、
図9の「表示」の欄に示すように、表示部104の表示画面には、元に戻すボタン(左)K4Lが操作される直前に入力された数字「2」が消去された状態の表示がされる。なお、元に戻すボタン(左)K4Lが操作される直前の入力操作は、入力操作が行われていない時点である、時点t10と時点t16との間に行われた操作として特定することができる。
【0097】
次の時点t18においては、元に戻すボタン(左)K4Lの押下操作終了後、次の操作への移行過程となっており、電子ペン2が表示部104の表示画面上から離れ、操作部106の操作ボタンも押下されていない状態であとする。しかし、電子ペン2のペン先は表示部104の表示画面と近接しているために、電子ペン2による位置検出センサ105A上の指示位置の検出は可能な状態にある。したがって、時点t18には時計回路108からの時点情報が、X座標X18、Y座標Y18のそれぞれには位置検出回路105Bからの検出値が入力され、筆圧P18及びボタンステータスS18の値は「0(ゼロ)」とされる。
【0098】
そして、
図9の「操作入力」の欄に示すように、時点t19~時点t23において、正しいと考えられる数字「3」が、電子ペン2を用いて表示部104の表示画面上の数字「2」が消去された部分に記載されたとする。この場合、時系列データ生成部107は、時計回路108からの時点情報と、位置検出回路105Bからの検出出力と、操作部106からの出力値とから、
図9の「入力時系列データ」の欄に示すように、時点t19~時点t23までの5つの時系列データを形成する。
【0099】
時点t19~時点t23においても、操作部106の操作ボタンは操作されていないので、ボタンステータスS19~S23の値はいずれも「0(ゼロ)」である。それ以外の時点t19~t23、X座標X19~X23、Y座標Y19~Y23、筆圧P19~P23には、実際の検出値が入力される。そして、
図9の「表示」の欄に示すように、表示部104の表示画面の操作対応部分には、数字「3」が表示される。
【0100】
そして、
図9を用いて説明したように、時系列データとしての解答情報は、数字「8」の入力→記号「-(マイナス)」の入力→数字「2」の入力→元に戻すボタンの入力(直前に入力された数字「2」の消去)→数字「3」の入力というように、すべての操作入力に対応して形成される。すなわち、入力操作だけでなく、消去操作についても解答情報に含められる。このようにして形成された解答情報もまた、
図8(B)に示した送信用解答情報としてまとめられ、ホストコンピュータ4に送信される。
【0101】
これにより、元に戻すボタン(左)K4Lを操作した場合にも、間違えた部分、間違えに気付いたタイミング、書き直した解答などのすべてを把握できる。もちろん、元に戻すボタン(右)K4Rを操作した場合にも、同様に時系列データとしての解答情報の生成と、操作に応じた入力情報の表示や消去を行うことができる。
【0102】
そして、ホストコンピュータ4は、各デジタル解答装置1からの送信用解答情報をクラウドシステム5に送信し、クラウドシステムにおいて、採点や評価を行って、合格者を決定するようにし、合格者リストを試験の実施者に提供できる。そして、上述もしたように、試験の実施者(採点者)は、必要に応じて解答情報をチェックし、適切に合格者を特定することができる。
【0103】
このように、第1の実施の形態のデジタル解答装置1は、電子ペン2を用いて行われる受験者からの解答の入力を受け付けて、これに応じた時系列データとしての解答情報を形成して保持することができる。そして、送信用解答情報を形成して、ホストコンピュータ4を介して、解答情報をクラウドシステムに提出できる。
【0104】
また、消しゴムボタン(左)K5L、消しゴムボタン(右)K5Rを用いることにより、電子ペン2を持ち替えることなく、間違って入力した解答部分を消去し、正しい解答を迅速かつ適切に入力し、全体として正しいと考えられる解答を迅速に整えることができる。しかも、解答情報は、時系列データであるので、必要に応じて、採点者が解答時の状況を再生し、解答の再評価などを適切に行うことができる。
【0105】
なお、例えば、提出ボタンK2が押下操作されたときに、制御部102の不揮発瀬メモリに形成された
図8(B)に示した送信用解答情報を、メモリ部103の外部メモリに記録し、これを受験者が持ち替えるようにすることもできる。これにより、受験者は自宅のパーソナルコンピュータなどを用いて、当該外部メモリに格納された送信用解答情報を再生し、自己採点を行うことができる。
【0106】
なお、メモリ部103の外部メモリに送信用解答情報を記録するようにした場合には、当該送信用解答情報は、改ざんすることができないように、書き換えが不能にされる。例えば、読み出し専用メモリとするように、ヘッダ部など情報を書き換え、当該情報が書き換えられた場合には、当該メモリを使用不能にするといった対応を取ることができる。この他にも、書き換えを不能にする方法は、種々の方法を用いることができる。
【0107】
このように、メモリ部103の外部メモリに格納された送信用解答情報の改ざんができないようにしておけば、受験者がこれを手元に残すようにし、採点に疑義が生じた場合に、異議を申し立てる場合の証拠とすることができる。
【0108】
また、消しゴムボタン(左)K5Lの操作時には、消しゴムボタン(右)K5Rの操作を不能し、消しゴムボタン(右)K5Rの操作時には、消しゴムボタン(左)K5Lの操作を不能にするといったことも、制御部102の制御により行うことができる。
【0109】
[第1の実施の形態の効果]
この第1の実施の形態のデジタル解答装置1の場合には、消しゴムボタン(左)K5L、消しゴムボタン(右)K5Rを利用することにより、消去専用電子ペンを別途用意することもなく、筆記に用いる電子ペン2を用いて、目的とする部分の消去が行える。したがって、消去専用電子ペンに持ち替える動作が必要ないので、入力動作が一連の思考の妨げになるようなことを防止できる。
【0110】
また、解答情報は、時系列データとして作成することができる。これにより、解答をコンピュータによって採点することも可能であるし、必要に応じて解答の状況を再生(再現)して、当該解答の再評価などを行うことも簡単にできる。
【0111】
[第2の実施の形態(通信教育システム)]
図10は、第2の実施の形態の通信教育システムの概要を説明するための図である。
図2に示すように、第2の実施の形態において、通信教育システムは、受講者が例えば自宅などで利用するパーソナルコンピュータ6及びデジタル解答装置1Xと、添削者(指導者)が利用するデジタル添削装置7とが、クラウドシステム5Aを通じて接続されて構成される。このような通信教育システムを通じては、例えば、小学生、中学生、高校生を対象とする教科学習講座や受験対策講座、あるいは、大学生や社会人を対象とする検定試験対策講座や資格試験対策講座など、種々の目的の通信教育が行える。
【0112】
図10に示すように、クラウドシステム5Aには、データ格納部51Aと授業提供部52Aとが設けられている。データ格納部51Aは、受講者に提供する答案フォーマットや試験問題が格納されたフォーマット等格納領域と、受講者からの解答情報を格納する解答情報格納領域と、講座の授業を構成する動画情報や静止画の資料情報などを授業情報格納領域とを有する。
【0113】
授業提供部52Aは、受講者からの要求に応じて、データ格納部51Aの授業情報格納領域から授業を構成する動画や静止画の資料を提供することにより、受講者の目的とする講座の授業を提供する。また、授業提供部52Aは、受講者に対して、データ格納部51Aに格納されている試験問題や答案フォーマットを提供し、授業の理解度をチェックする試験を行う機能も備える。
【0114】
受講者は、例えば自宅などにおいて、自己のパーソナルコンピュータ6を通じてクラウドシステム5Aの授業提供部52Aに対して授業の提供を要求し、目的とする講座の動画や静止画をパーソナルコンピュータ6で再生して授業を受ける。また、受講者は、自己のパーソナルコンピュータ6を通じてクラウドシステム5Aの授業提供部52Aに対して、試験の実施を要求し、試験の答案フォーマットや試験問題の提供を受けて試験を受ける。この場合、試験問題は、パーソナルコンピュータ6で表示して受講者に提供し、答案フォーマットはパーソナルコンピュータ6からデジタル解答装置1Xに提供する。
【0115】
デジタル解答装置1Xは、
図2~
図5を用いて説明した第1の実施の形態のデジタル解答装置1と同様の構成を有するものである。このため、デジタル解答装置1Xもまた、
図2~
図5に示した構成を有するものとして説明する。但し、第2の実施の形態のデジタル解答装置1Xは、例えば、USB(Universal Serial Bus)規格などのデジタルインターフェイスを備え、有線によりパーソナルコンピュータ6に対して接続可能にされている。この点だけが、第1の実施の形態のデジタル解答装置1とは異なっている。そして、デジタル解答装置1Xは、パーソナルコンピュータ6に対してデジタルインターフェイスを通じて接続されると、パーソナルコンピュータ6の入力装置として機能する。
【0116】
そして、デジタル解答装置1Xは、パーソナルコンピュータ6から答案フォーマットの提供を受けると、これを表示部104に表示し、この答案フォーマットに対する解答の入力を、位置検出装置105を通じて受け付けるようにする。受講者は、第1の実施の形態の場合と同様に、電子ペン2を用いて、デジタル解答装置1Xに対して解答を入力する。そして、デジタル解答装置1Xにおいても、
図6~
図9を用いて説明したように、電子ペン2による解答の入力を受け付けて、時系列データとしての解答情報を生成し、送信用解答情報にまとめて、パーソナルコンピュータ6を通じてクラウドシステム5Aに送信する。これにより、受講者のデジタル解答装置1Xで生成された送信用解答情報が、クラウドシステム5Aのデータ格納部51Aの解答情報格納領域に格納される。
【0117】
一方、添削者(指導者)は、デジタル添削装置7を用いてクラウドシステム5Aにアクセスし、自分が受け持つ受講者の送信用解答情報をデータ格納部51Aの解答情報格納領域からダウンロードして、デジタル添削装置7の記憶部に格納する。そして、当該送信用解答情報を再生するようにして、受講者の理解度を確認しながら、電子ペン2Bを用いて、受講者の解答を採点、添削し、○、×、解説文、コメント文などを入力する。これらの入力情報を、添削情報として記憶保持する。この生成された添削情報は、送信用解答情報に付加されてデジタル添削装置7からクラウドシステム5Aにアップロードされ、受講者が自己のパーソナルコンピュータ6及びデジタル解答装置1Xを用いて添削の内容を確認することができるようにされる。
【0118】
そして、この第2の実施の形態においても、受講者のデジタル解答装置1Xにおいて、解答情報が時系列データとして生成される。デジタル添削装置7では、デジタル解答装置1で生成された時系列データとしての解答情報をそのまま用いて解答の状況を把握することができるので、受講者の理解度をより的確に把握することができる。
【0119】
すなわち、ただ間違えた問題が分かるだけでなく、どのように解答して間違えたのか、どのように修正を行ったために間違えたのか、逆に正確に至ったのかを的確に把握できる。また、解答の順番や解答に掛かった時間なども把握でき、時間を掛けて悩んだ問題はどれなのか、時間を掛けずに解答できた問題はどれなのかといったことも簡単に把握ができる。
【0120】
[デジタル添削装置7の詳細]
図11は、第2の実施の形態の通信教育システムのデジタル添削装置7の外観を説明するための外観図である。
図11に示すように、デジタル添削装置7は、いわゆるタブレット型PC(Personal Computer)の形態を有するものである。このデジタル添削装置7にも、第1の実施の形態のデジタル解答装置1と同様の操作ボタンが設けられている。このため、
図11に示したデジタル添削装置7において、第1の実施の形態のデジタル解答装置1が備える操作ボタンと同様の機能を実現する操作ボタンには同じ参照符号を付し、それらの詳細な説明については省略する。
【0121】
すなわち、
図11に示すように、デジタル添削装置7の右上側面部には電源ボタンK1が設けられている。そして、A4判サイズの表示画面を有する表示部704を備え、この表示部704の下には、表示部704の表示画面の全面に対応する位置検出センサ705Aが設けられている。これにより、表示部704の表示画面上に電子ペン2Bを接触させて操作することにより、文字、記号、図形などの種々の情報を手書きにより入力することができるようになっている。なお、電子ペン2Bは、電子ペン2と同様に構成されるものである。
【0122】
そして、表示部704の表示画面の周囲には、フロントパネル7Aによって構成されるベゼル部が設けられる。このベゼル部の上部側の部分には、右改頁ボタンK3R、左改頁ボタンK3Lが設けられている。また、当該ベゼル部の右側部には、元に戻るボタン(右)K4R、消しゴムボタン(右)K5Rが設けられ、当該ベゼル部の左側部には、元に戻るボタン(左)K4L、消しゴムボタン(左)K5Lが設けられている。
【0123】
また、デジタル添削装置7の場合にも、
図3を用いて説明したデジタル解答装置1の場合と同様に、下から順に筐体→回路基板→位置検出センサ705A→表示部704→フロントパネル7Aが積層されて構成されたものである。また、上述もしたように、デジタル添削装置7に対しても、第1の実施の形態のデジタル解答装置1の場合と同様に、電子ペン2により入力操作ができるようになっている。
【0124】
そして、
図11に示すように、デジタル添削装置7の表示部704には、タイムバーTB、スライダーSL、解答レイヤーボタンLB1、採点レイヤーボタンLB2、検印レイヤーボタンLB3が表示されている。これらは、ソフトウェアにより表示されて操作可能にされるいわゆるソフトウェア操作子である。
【0125】
具体的に、タイムバーTB及びスライダーSLは、時系列データである解答情報を、時系列に沿って再生する場合に操作するものである。すなわち、タイムバーTBの上端部を試験開始時点とし、下端部を試験終了時点とする。そして、タイムバーTB上において、スライダーSLの位置をスライド移動させることにより、スライダーSLのスライド移動にしたがって、時系列データである解答情報に対応した解答の状況を順次に表示部704に再生(表示)させることができる。
【0126】
そして、タイムバーTBの上端部の試験開始時点からスライダーSLを位置付けた時点までの解答情報に応じた解答を表示部704に表示させることができる。したがって、タイムバーTBの下端部にスライダーSLを位置付ければ、答案フォーマットの当該頁に対する解答をすべて表示させることができる。しかも、タイムバーTB上のスライダーSLのスライド移動に対応して、時系列データである解答情報に応じた解答を徐々に表示部704に表示させることができるので、添削者は、受講者の解答の状況をつぶさに確認しながら添削を行うことができる。
【0127】
また、デジタル添削装置7では、処理するデータはレイヤー構造とされ、レイヤーに応じて処理対象とするデータを変えることができる。このために、解答レイヤーボタンLB1、採点レイヤーボタンLB2、検印レイヤーボタンLB3が設けられている。
【0128】
図12は、第2の実施の形態の通信教育システムで処理されるデータのレイヤー構造について説明するための図である。第2の実施の形態では、
図12に示すように、答案フォーマットレイヤーLY1、解答レイヤーLY2、採点レイヤーLY3、検印レイヤーLY4の4階層構造とされる。答案フォーマットレイヤーLY1は、主には答案フォーマットに応じたフォーマットを表示するためのものレイヤーであり、解答レイヤーLY2は、解答情報に応じた解答を表示するためのレイヤーである。採点レイヤーLY3は、解答に対して、採点を行い、添削情報を入力するためのレイヤーであり、検印レイヤーLY4は、検印情報を入力するためのレイヤーである。
【0129】
そして、
図11に示した解答レイヤーボタンLB1が押下操作された時には、答案フォーマットレイヤーLY1に展開された答案フォーマットと、解答レイヤーLY2に展開された解答情報に応じた解答とが、表示部704に表示するようにされる。そして、右改頁ボタンK3R、左改頁ボタンK3Lの操作に応じて、改頁を行って、答案フォーマットの各頁の解答を確認することができるようにされる。
【0130】
また、採点レイヤーボタンLB2が押下操作された時には、答案フォーマットレイヤーLY1に展開された答案フォーマットと、解答レイヤーLY2に展開された解答情報に応じた解答とが、表示部704に表示される。この場合、タイムバーTB上のスライダーSLを操作し、解答情報に応じた解答をスライド移動に応じて再生(表示)することができるようにされる。さらに、採点レイヤーLY3に対して、○や×や解説文やコメント文などの添削情報の入力ができるようにされる。
【0131】
また、検印レイヤーボタンLB3が押下操作された時には、答案フォーマットレイヤーにLY1に展開された答案フォーマットと、解答レイヤーLY2に展開された解答情報に応じた解答と、採点レイヤーLY3に展開された添削情報に応じた添削の内容とが、表示部704に表示される。さらに、検印レイヤーLY4に対して、検印情報の入力ができるようにされる。
【0132】
図13は、デジタル添削装置7の構成例を説明するためのブロック図である。送受信アンテナ701Aと無線通信部701とは、無線通信機能を実現する部分である。これら送受信アンテナ701Aと無線通信部701との機能により、例えば、Wi-Fi(登録商標)規格の無線LAN及びインターネットを通じて、あるいは、携帯電話網及びインターネットを通じて、クラウドシステム5Aにアクセスできるようにされる。
【0133】
制御部702は、図示しないが、CPU、ROM、RAM、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発映像メモリなどが、バスを通じて接続されて構成されたコンピュータ装置部である。制御部102は、デジタル添削装置7の各部を制御する機能を実現する。メモリ部703は、上述したデジタル解答装置1のメモリ部103と同様に、内部メモリと外部メモリとの一方あるいは両方を備えている。そして、制御部702の制御の下、メモリ部703の内部メモリや外部メモリに対して、答案フォーマット、解答情報、添削情報、検印情報などの書き込み、消去、読み出しができるようになっている。
【0134】
表示部704は、例えば、LCDや有機ELディスプレイなどの薄型の表示素子と表示処理回路とからなる部分である。表示部704には、制御部702の制御の下、答案フォーマット、解答情報、添削情報、検印情報など、種々の情報を表示することができるようにされている。
【0135】
位置検出センサ705Aと位置検出回路705Bとにより位置検出装置705が構成される。位置検出装置705は、電磁誘導授受方式(EMR(登録商標)方式)のものである。したがって、デジタル添削装置7の位置検出装置705もまた、
図5を用いて説明したデジタル解答装置1の位置検出装置105と同様に構成されたものである。
【0136】
操作部706は、上述もしたように、電源ボタンK1、右改頁ボタンK3R、左改頁ボタンK3L、元に戻るボタン(右)K4R、元に戻るボタン(左)K4L、消しゴムボタン(右)K5R、消しゴムボタン(左)K5Lを備えたものである。これらの操作ボタンが操作された場合に、操作されたボタンに応じた信号を制御部702に供給できるようになっている。
【0137】
時系列データ再生部707は、例えば、メモリ部703の外部メモリに格納された受講者の解答情報に応じた解答を、
図11を用いて説明したように、スライダーSLのタイムバーTB上でのスライド移動に応じて表示部704に再生(表示)させる処理を行う。すなわち、時系列データ再生部707は、試験開始時点からタイムバーTB上のスライダーSLが位置付けられた時点までの解答情報に応じた解答を表示部704に表示する処理を行う。
【0138】
レイヤー制御部708は、解答レイヤーボタンLB1、採点レイヤーボタンLB2、検印レイヤーボタンLB3の操作の状況に応じて、用いるレイヤーを特定し、表示する情報と入力を受け付ける情報とを制御する処理を行う。すなわち、添削を行う場合、添削者は、クラウドシステム5Aから目的とする受講者の送信用解答情報をダウンロードしてきてメモリ部703の外部メモリに格納する。
【0139】
そして、解答レイヤーボタンLB1が押下操作された時には、レイヤー制御部708は、メモリ部703の外部メモリに格納した答案フォーマットを答案フォーマットレイヤーLY1に展開し、解答情報を解答レイヤーLY2に展開して、これらを同時に表示部704に表示する処理を行う。また、採点レイヤーボタンLB2が押下操作された時には、レイヤー制御部708は、答案フォーマットレイヤーLY1に展開された答案フォーマットと、解答レイヤーLY2に展開された解答情報に応じた解答とを表示部704に表示する。そして、タイムバーTB上のスライダーSLのスライド移動に応じて、時系列データ再生部707が解答情報の再生を行うようにし、レイヤー制御部708が、採点レイヤーLY3に対して添削情報の入力を可能にする。
【0140】
また、検印レイヤーボタンLB3が押下操作された時には、レイヤー制御部708は、答案フォーマットレイヤーLY1に展開された答案フォーマットと、解答レイヤーLY2に展開された解答情報に応じた解答と、採点レイヤーLY3に展開された添削情報に応じて添削の内容とを表示部704に表示する。さらに、レイヤー制御部708は、検印レイヤーLY4に対して、検印情報の入力を可能にする。
【0141】
このように、レイヤー制御部708は、答案フォーマットと解答とを表示部704に表示する。さらに、採点レイヤーボタンLB2が押下操作されたときには、採点レイヤーLY3への添削情報の入力を可能にし、検印レイヤーボタンLB3が押下操作されたときには、検印レイヤーLY4への検印情報の入力を可能にする。
【0142】
[デジタル添削装置7に対する添削の入力]
次に、上述し構成を有するデジタル添削装置7を用いた解答の再生と添削の入力の仕方について説明する。
図14は、デジタル添削装置7における解答情報の再生時の表示情報の例について説明するための図である。
【0143】
添削者は、デジタル添削装置7の表示部704の所定の位置に、採点対象とする受講者の「受講者No.」を入力し、この「受講者No.」を含む送信用解答情報の提供要求を形成して、これをクラウドシステム5Aに送信する。これに応じて、クラウドシステム5Aからは、指定した「受講者No.」で特定される受講者の送信用解答情報が送信されて来るので、デジタル添削装置7は、これを送受信アンテナ701A及び無線通信部701を通じて受信する。そして、制御部102は、受信した送信用解答情報をメモリ部703の外部メモリに格納して利用可能にする。
【0144】
この後、添削者が、表示部704に表示された採点レイヤーボタンLB2を、電子ペン2を用いて押下操作すると、答案フォーマットを答案フォーマットレイヤーLY1に展開し、これを
図14(A)に示すように、これを表示部704に表示する。
図14の例の場合、答案フォーマットは、問題1の式の記入欄AR1と、問題1の答えの記入欄AR2と、問題2の式の記入欄AR3と、問題2の答えの記入欄AR4とが設けられたものである。
【0145】
さらに、解答レイヤーLY2に解答情報に応じた解答を展開して表示できるようにするが、解答情報に応じた解答の展開は、タイムバーTB上のスライダーSLのスライド移動に応じて行い、これを表示部704に表示できるようにされる。スライダーSLのスライド移動は、スライダーSLの表示位置上に電子ペン2を接触させ、接触させたまま電子ペン2を移動させることにより行うことができる。
【0146】
なお、デジタル添削装置7の表示部704の表示画面に対応して、更に静電容量方式のタッチセンサを設け、このタッチセンサからの出力信号から指示位置の検出が可能な検出回路を設けることもできる。すなわち、電磁誘導方式の位置検出センサ705Aと、静電容量方式のセンサとのハイブリッドの位置検出機能を搭載することもできる。このように、静電容量方式のタッチセンサを搭載した場合には、添削者が自分の指を用いて、スライダーSLを操作したり、解答レイヤーボタンLB1、採点レイヤーボタンLB2、検印レイヤーボタンLB3を操作したりすることができる。
【0147】
そして、タイムバーTBの上端部に位置付けられているスライダーSLを、タイムバーTBの中間位置まで徐々にスライド移動させたとする。この場合、時系列データ再生部707の機能により、
図14(B)に示すように、試験開始時点からスライダーSLが位置付けられた時点までの解答情報に応じた解答が、スライダーSLのスライド移動に対応して解答レイヤーLY2に展開され、これが順次に表示部704に表示される。すなわち、問題1の式の記入欄AR1と、問題1の答えの記入欄AR2への解答(記入)の状況が再生される。
【0148】
この場合、解答情報に応じた解答が、スライダーSLのスライド移動に対応して解答レイヤーLY2に展開されて順次に表示されるので、受講者が解答を修正したりしていれば、その修正の状況も再生される。例えば、
図6、
図7を用いて説明したように解答の入力を行った場合には、例えば、先頭の数字「2」を消して、数字「8」に書き直した状況も確認できる。
【0149】
そして、タイムバーTBの中間位置に位置付けられているスライダーSLを、タイムバーTBの下端位置まで徐々にスライド移動させたとする。この場合、時系列データ再生部707の機能により、
図14(C)に示すように、スライダーSLが位置付けられたタイムバーTBの中間位置に対応する時点からスライダーSLが位置付けられたタイムバーTBの下端位置に対応する時点までの解答情報に応じた解答が、スライダーSLのスライド移動に対応して解答レイヤーLY2に展開され、これが順次に表示部704に表示される。すなわち、問題2の式の記入欄AR3と、問題2の答えの記入欄AR4への解答(記入)の状況が再生される。
【0150】
このように、解答情報に応じた解答をタイムバーTB上のスライダーSLのスライド移動に呼応するように解答情報に応じた解答の状況を表示部704に再生(表示)して、添削者がその解答の状況をつぶさに確認することができる。そして、
図14に示した状況の時には、表示部704の表示画面上に対して電子ペン2を用いて操作を行うことにより、採点レイヤーLY3に対して、位置検出装置105を通じて添削情報を入力することができる。入力された添削情報は、制御部702の制御の下、メモリ部703の外部メモリに記録される。
【0151】
したがって、
図12に示したように、採点レイヤーLY3に対して、○や×を付けたり、解説文やコメント文を入力することができる。この場合、ペン色の指定を可能にしておくことにより、○や×、解説文やコメント文は、例えば、赤色で入力したり、○や×は赤色で入力し、解説文やコメント文は青色で入力したりするといったことができるようにされる。このように、添削は解答とは異なる態様で入力することができる。
【0152】
なお、
図14に示した例の場合には、問題1→問題2の順番で解答がなされた場合を示している。しかし、問題2→問題1の順番で解答がなされる場合もある。この場合には、先に問題2の解答が表示され、次に問題1の解答が表示されるというように、時系列データである解答情報にしたがって解答が再生するようにされる。
【0153】
そして、検印レイヤーボタンLB3を押下操作すれば、検印レイヤーLY4への検印情報の入力が可能にされる。検印情報は予め用意された添削者の氏名及び添削年月日を含む印影画像を答案フォーマット上の所定の位置に付加することができるようにされる。この検印レイヤーには、添削者により、講評やまとめのコメント、今後の学習方針などの文字情報を入力して付加することもできる。
【0154】
図15は、デジタル添削装置7で生成される送信用添削情報の例を説明するための図である。
図15に示すように、送信用添削情報は、「受講者No.」、「受講者氏名」、「科目」などのヘッダ情報と、解答情報(解答レイヤーの情報)、答案フォーマット(答案フォーマットレイヤーの情報)、添削情報(採点レイヤーの情報)、検印情報(検印レイヤーの情報)を備えたものである。
【0155】
ヘッダ情報、解答情報、答案フォーマットは、受講者のデジタル解答装置1Xで作成された送信用解答情報に応じた情報である。これらの情報が、デジタル添削装置7において変更されることはない。そして、添削情報と検印情報とが、デジタル添削装置7に対して添削者によって入力された情報である。添削作業後においては、図示しないがデジタル添削装置7の表示部704の所定の位置に表示された添削終了ボタンを押下操作することにより、
図15に示した送信用添削情報がメモリ部703の外部メモリに形成される。この送信用添削情報が、クラウドシステム5Aにアップロードされ、例えば、データ格納部51Aに格納され、受講者が自己のパーソナルコンピュータ6を用いてダウンロードして確認することができるようにされる。
【0156】
なお、この第2の実施の形態の通信教育システムにおいて、デジタル添削装置7において入力されて生成される添削情報は、解答情報とは異なり、時系列データである必要はない。このため、添削情報は、答案フォーマットの1ページごとに画像情報としたり、○や×は画像情報とし、解説文やコメント文などの文章は文字情報としたりするなど、種々の対応のデータとすることができる。
【0157】
また、デジタル添削装置7に、デジタル解答装置1と同様の時系列データ生成部と時計回路とを設けることにより、解答情報の場合と同様に、添削情報も時系列データとして形成することもできる。
【0158】
[デジタル添削装置7での処理のまとめ]
図16、
図17は、デジタル添削装置7において実行される添削処理について説明するためのフローチャートである。
図16、
図17に示す処理は、デジタル添削装置7に電源が投入された後、所定のメニュー画面から「添削処理」に対応する項目を選択することにより、制御部702において実行される。
【0159】
まず、制御部702は、表示部704に、「受講者No.」などの入力を受け付ける初期画面を表示し(ステップS101)、添削者(使用者)からの操作入力を受け付けるようにする(ステップS102)。この後、制御部702は、ステップS102において、例えば表示部704に表示された終了ボタンの押下操作などの所定の終了操作を受け付けたか否かを判別する(ステップS103)。ステップS103の判別処理において、所定の終了操作を受け付けたと判別したときには、ステップS101で表示した初期入力画面を消去して、添削処理の実行前の状態に戻す一連の終了処理を実行し(ステップS104)、この
図16、
図17に示す処理を終了する。
【0160】
一方、ステップS103の判別処理において、所定の終了操作は受け付けていないと判別したときには、「受講者No.」を受け付けた後、確認入力を受け付けたか否かを判別する(ステップS105)。ステップS105の判別処理において、「受講者No.」を受け付けた後、確認入力を受け付けていないと判別したときには、有効な操作は行われていないので、ステップS102からの処理を繰り返すようにする。
【0161】
また、ステップS105の判別処理において、「受講者No.」を受け付けた後、確認入力を受け付けたと判別したとする。この場合、制御部702は、入力された「受講者No.」を含む送信用解答情報の提供要求を形成し、これをクラウドシステム5Aに送信して、目的とする受講者の送信用解答情報の提供を受けて取得し、メモリ部103の外部メモリに格納する(ステップS106)。
【0162】
そして、制御部102は、
図11に示したように、解答レイヤーボタンLB1、採点レイヤーボタンLB2、検印レイヤーボタンLB3を表示し、添削者からのレイヤーの選択入力を受け付ける(ステップS107)。この後、制御部702は、採点レイヤーボタンLB2が押下操作されたか否か、すなわち、採点レイヤーが選択されたか否かを判別する(ステップS108)。
【0163】
ステップS108の判別処理において、採点レイヤーは選択されていないと判別した時には、制御部702は、選択されたレイヤーに応じた処理を実行する(ステップS109)。例えば、解答レイヤーボタンLB1が選択された場合には、ステップS109では、制御部702の制御の下、レイヤー制御部708が機能して、答案フォーマットと解答情報に応じた解答の表示を表示部704に行う。また、検印レイヤーボタンLB3が選択された場合には、ステップS109では、制御部702の制御の下、レイヤー制御部708が機能して、答案フォーマットと解答情報に応じた解答と添削情報の表示を表示部704に行う。そして、制御部702は、検印レイヤーへの入力を可能し、検印情報の入力を受け付けるようにする。
【0164】
ステップS108の判別処理において、採点レイヤーが選択されたと判別したとする。この場合、制御部702は、レイヤー制御部を制御し、答案フォーマットを表示すると共に、解答情報に応じた解答の再生を可能にし、更に採点レイヤーへの添削情報の受付を開始する(ステップS110)。そして、制御部702は、
図14を用いて説明したように、タイムバーTB及びスライダーSLを用いた解答情報の時系列再生をできるようにする(ステップS111)。
【0165】
そして、ステップS111の処理の後と、ステップS109の処理の後においては、
図16のステップS112の処理に進み、表示部704上の所定の位置に表示された添削終了ボタンに対する操作入力を受け付けるようにする(ステップS112)。この後、制御部702は、ステップS112において、添削終了ボタンが操作されたか否かを判別する(ステップS113)。
【0166】
ステップS113の判別処理において、添削終了ボタンは操作されていないと判別したときには、制御部702は、ステップS112からの処理を繰り返す。この場合、ステップS110で開始させた添削情報の入力と、ステップS111で開始させた解答情報の時系列再生とが継続して行うようにされる。
【0167】
また、ステップS113の判別処理において、添削終了ボタンが操作されたと判別したときには、制御部702は、
図15を用いて説明した送信用添削情報を形成し、これをクラウドシステム5Aにアップロードする処理を実行する(ステップS114)。この後、制御部702は、今回指示した「受講者No.」により特定される受講者の解答情報に対しする添削は終了し、
図16のステップS101からの処理を行う。これにより、他の受講者の解答情報に対する添削を行うようにしたり、添削処理自体を終了させるようにしたりすることができる。
【0168】
[第2の実施の形態の効果]
この第2の実施の形態においても、デジタル解答装置1Xの場合には、消しゴムボタン(左)K5L、消しゴムボタン(右)K5Rを利用することにより、消去専用電子ペンを別途用意することもなく、筆記に用いる電子ペン2を用いて、目的とする部分の消去が行える。したがって、消去専用電子ペンに持ち替える動作が必要ないので、入力動作が一連の思考の妨げになるようなことを防止できる。
【0169】
また、解答情報は、時系列データとして作成することができる。これにより、解答をコンピュータによって採点することも可能であるし、必要に応じて解答の状況を再生(再現)して、当該解答の再評価などを行うことも簡単にできる。
【0170】
特に、デジタル添削装置7を用いて添削を行うようにすることによって、解答情報の時系列再生を行いながら、採点、添削を行うことができる。これにより、どこでつまずいているのか、どこで間違ったのか、どこが得意なのか、カンニングなどの不正な解答はしていないかといった事項の確認ができる。また、解答情報に含められている計算式、図、文章などにより、思考過程、発想や着想の状況などを知ることができるので、受講者が天才的な思考力の持ち主であることなども把握可能になる。
【0171】
これにより、受講者の学習の到達状況も確認できることになり、受講者のそれぞれに応じた授業を提供したり、授業の提供のスピードを調整したりするなど、受講者ごとに適切な対応を取ることができるようになる。
【0172】
また、時系列データである解答情報を用いることにより、例えば、漢字の書き順が正しいか否かを採点するなどのことも可能である。
【0173】
[答案フォーマットが複数頁にわたる場合の対応]
上述した実施の形態において、デジタル解答装置1、1A、デジタル添削装置7は、改頁ボタンK3L、K3Rを備えている。このため、答案フォーマットが複数頁に渡る場合には、適宜、改頁操作を行って、答案フォーマットの目的とする頁を表示し、解答を入力したり、添削を行ったりすることができる。
【0174】
このように、答案フォーマットが複数頁に渡る場合には、答案フォーマットの頁ごとに、時系列データと当該答案フォーマットの頁とを関連付けて管理できるようにする。また、この場合、受験者ごとに複数頁からなる答案フォーマットについてのデータを一括して管理できるようにする。
【0175】
図18は、答案フォーマットが複数頁に渡る場合の頁別解答情報の構成例を説明するための図であり、
図18(A)は頁別解答情報の全体構成を示し、
図18(B)、(C)、(D)は、頁ごとの具体的な解答情報の例を示している。すなわち、この例の頁別解答情報は、
図18(A)に示すように、受験番号、科目、頁番号といったいわゆるヘッダ情報と、当該頁の時系列データと、当該頁の答案フォーマットデータとからなる。
【0176】
そして、
図18(B)、(C)、(D)に示すように、各頁別解答情報の受験番号が「123456」で、科目が「算数」と共通であるが、頁番号、時系列データ、答案フォーマットは頁ごとに異なったものとなる。すなわち、頁番号が「1」である解答情報の当該頁の時系列データは、第1頁の答案フォーマットに対して入力するようにされたものであり、当該頁の答案フォーマットは1頁の答案フォーマットとなる。
【0177】
同様に、頁番号が「2」である解答情報の当該頁の時系列データは、第2頁の答案フォーマットに対して入力するようにされたものであり、当該頁の答案フォーマットは2頁の答案フォーマットとなる。また、頁番号が「3」である解答情報の当該頁の時系列データは、第3頁の答案フォーマットに対して入力するようにされたものであり、当該頁の答案フォーマットは3頁の答案フォーマットとなる。以下、同様に答案フォーマットの頁数に応じて、頁別解答情報が形成されることになる。
【0178】
そして、始めは第1頁の答案フォーマットを表示部104に表示し、改頁ボタンK3L、K3Rを操作することにより、目的とする頁の答案フォーマットを表示して、解答の入力を行うことができる。また、
図18に示した頁別解答情報を形成することによって、頁ごとに答案フォーマットの表示と時系列データに応じた解答の表示とを行うことができる。簡単には、改頁ボタンK3L、K3Rを操作することにより、目的とする頁を指定するようにする。この場合、表示されている頁が基準頁となり、当該基準頁の前または後の頁を指示することができる。
【0179】
そして、指示された頁が特定されれば、その頁に対応する頁別解答情報を読み出し、読み出した頁別解答情報の当該頁の答案フォーマットデータを用いて答案フォーマットを表示部104に表示する。この後、当該読み出した頁別解答情報の当該頁の時系列データに応じた解答を、表示部104に表示されている答案フォーマットに重ねて表示するようにできる。このように、受験者は目的とする頁の答案フォーマットと入力済みの解答とを必要に応じて、表示し、修正や変更などの処理を簡単に行うことができる。
【0180】
このように、答案フォーマットが複数頁にわたる場合であっても、頁ごとに、答案フォーマットと時系列データとを関連付けて管理でき、これらを複数頁からなる答案フォーマットに関連する情報として一括して管理できる。なお、
図18を用いて説明したように、頁ごとの時系列データと頁ごとの答案フォーマットデータとを対応付けるのではなく、頁ごとの時系列データと頁ごとの答案フォーマットデータの識別IDとを対応付けて管理するようにしてもよい。
【0181】
また、第2の実施の形態の場合には、
図15に示した送信用添削情報の解答情報と、答案フォーマットと、添削情報と、検印情報とを、答案フォーマットの頁ごとに対応付けて記憶保持するようにすれば、添削時の処理も、答案フォーマットの頁単位に行うことが容易にできる。
【0182】
また、上述した実施の形態では、デジタル解答装置1、1Aで形成される時系列データに筆圧情報を付加するようにしたが、これに限るものではない。電子ペンに関する情報として、筆圧の他にも、例えば、電子ペンが、当該電子ペンの傾きを検出可能なものであれば、電子ペンの傾きを示す情報を付加してもよい。また、電子ペンにいわゆるサイドスイッチが設けられているものであれば、サイドスイッチの状態を示す情報を付加してもよい。
【0183】
なお、電子ペンに設けられたサイドスイッチには、例えば、デジタル解答装置1、1Aに設けていた消しゴムボタンとしての機能を持たせることができる。すなわち、サイドスイッチが押下されていないときと、押下されているときとで、例えば、電子ペンから送出される信号の周波数を変える。これにより、サイドスイッチが押下されていない時には、電子ペンによる筆記が行われており、また、サイドスイッチが押下されている時には、電子ペンによる消去が行われていると、デジタル解答装置などの入力装置側で判別し、これに応じた処理を行うことができる。
【0184】
[変形例]
なお、上述した実施の形態では、試験中において、所定のタイミングごとに解答情報を生成するものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、X座標Xn、Y座標Yn、筆圧Pn、ボタンステータスSnのいずれもが「0(ゼロ)」の解答情報は、送信用解答情報には含めないようにすることもできる。
【0185】
また、所定のタイミングごとに解答情報を生成するのではなく、電子ペン2による操作入力や操作ボタンに対する操作が行われた場合に、解答情報を生成するようにいてもよい。すなわち、位置検出回路105Bから指示位置や筆圧が出力された場合と、操作部106から操作されたボタンを示す情報が出力された場合に、時系列データ生成部107が、時計回路108から時点情報を取得して、解答情報を生成するようにしてもよい。
【0186】
また、上述した実施の形態では、クラウドシステム5、5Aから答案フォーマットや試験問題などの必要な情報の提供を受けるようにしたが、これに限るものではない。例えば、メモリ部103のメモリスロットに装着可能な外部メモリに、答案フォーマットや試験問題を記録して配布し、これをデジタル解答装置1、1Aで表示して用いるようにしてもよい。また、解答情報も、配布された当該外部メモリに記録し、これを回収して、採点や添削を行うようにしてもよい。
【0187】
また、上述した実施の形態では、位置検出装置105、705は、電磁誘導授受方式のものとしたが、これに限るものではない。例えば、電子ペンにより情報の入力が可能な静電容量方式の位置検出装置を用いるようにしてもよい。また、電磁誘導授受方式や静電容量方式以外の方式の位置検出装置を用いるようにしてもよい。
【0188】
また、問題だけは、紙媒体に印刷したものを、受験者や受講者に配布するようにしてもよい。また、問題は、試験会場の大きなスクリーンに投影させて、受験者に共通に提供するようにしてもよい。
【0189】
また、上述のデジタル解答装置1において、時計回路108が提供する現在時刻を表示部104に表示してもよい。受検者にとっては、試験の終了時間は重要な情報だからである。なお、試験終了となった場合は、自動的に入力が制限され、自動的に解答情報としての時系列データは転送されても良い。
【0190】
また、第2の実施の形態のデジタル添削装置7の重要な特徴は、タイムバーTB上のスライダーSLを移動させることに応じて、解答の履歴を再生表示することができる点にある。このため、添削作業専用のデジタル添削装置7を用いるのではなく、汎用のパーソナルコンピュータに、デジタル添削装置7が備える機能を搭載してデジタル添削装置を実現することもできる。
【0191】
この場合、当該パーソナルコンピュータの表示画面に、タイムバーTBとスライダーSLを表示し、キーボード操作やいわゆるマウスなどのポインティングデバイスの操作によって、タイムバー上のスライダーSLを移動させるようにする。そして、このスライダーSLの移動に応じて、解答の履歴である時系列データを再生表示するようにすれば、汎用のパーソナルコンピュータを利用して、デジタル添削装置7に対応する機能を実現できる。
【0192】
なお、汎用のパーソナルコンピュータをデジタル添削装置として用いる場合の添削情報の入力は、パーソナルコンピュータに接続可能な外付けのデジタイザを利用すればよい。この場合のデジタイザは、例えば、電磁結合方式の位置検出センサと、この位置検出センサからの出力信号に基づいて指示位置の検出が可能な位置検出回路からなる装置であり、
図5に示した構成を有するものである。
【0193】
また、第2の実施の形態において、スライダーSLは、デジタル添削装置7のいずれかの箇所に、ハードウェアの操作子として設けるようにしてもよい。また、スライダーSLは、デジタル添削装置7とは別体の操作装置として単独で設けるようにし、USB(Universal Serial Bus)規格のデジタルインターフェイスを通じて接続して用いるようにすることもできる。
【0194】
また、上述した実施の形態は、試験システム、通信教育システムにこの発明を適用した場合を例にして説明したが、これに限るものではない。例えば、病院で用いられるカルテ管理システムにこの発明を適用できる。すなわち、カルテの書式フォーマットデータを形成し、このカルテの書式フォーマットを上述したデジタル解答装置と同様の構成を有すカルテ入力装置の表示部に表示して、電子ペンを用いて患者ごとに情報の入力を行う。そして、カルテの書式フォーマットと、患者ごとの時系列データとを対応付けて管理するようにすれば、カルテ管理システムが構築できる。
【0195】
また、工場で用いられる生産情報管理システムに、この発明を適用できる。すなわち、生産工程表の書式フォーマットデータを形成し、この生産工程表の書式フォーマットを上述したデジタル解答装置と同様の構成を有する工程情報入力装置の表示部に表示して、電子ペンを用いて製品ごとに各工程での作業状況等の情報の入力を行う。そして、生産工程表の書式フォーマットと、製品ごと工程ごとの時系列データとを対応付けて管理するようにすれば、生産情報管理システムが構築できる。
【0196】
なお、上記のカルテ管理システムと生産情報管理システムに用いられる入力装置は、看護師や工程表担当者が持ち歩く場合が想定されるので表示装置付き電子ペン入力用携帯端末(いわゆるタブレット)が最適である。病室毎、工場の工程毎に携帯端末(タブレット)に書式フォーマットが無線送信され、電子ペンで記入して送り返すことが可能となる。
【0197】
このように、答案フォーマットに限らず、種々の書式フォーマットを形成し、この書式フォーマットを入力装置の表示画面に表示して、電子ペンにより情報の入力を行い、書式フォーマットと時系列データとを関連付けて管理できるようにする種々のシステムにこの発明を適用できる。
【0198】
[その他]
また、上述した実施の形態の説明からも分かるように、特許請求の範囲の記載と実施の形態の記載とを対応付けると以下のようになる。特許請求の範囲のデジタル入力装置(以下、単にデジタル入力装置と記載する。)の第1のセンサ部の機能は、実施の形態のデジタル解答装置1(以下、単にデジタル解答装置1と記載する。)の位置検出センサ105A及び位置検出回路105Bからなる位置検出装置105が実現している。また、デジタル入力装置の第1の表示部の機能は、デジタル解答装置1の表示部104が実現し、デジタル入力装置の第1の表示処理手段の機能は、デジタル解答装置1の主に制御部102が表示部104と協働して実現している。また、デジタル入力装置の第1の操作部の機能は、デジタル解答装置1の操作部106が実現し、デジタル入力装置の時点情報提供部の機能は、デジタル解答装置1の時計回路108が実現している。
【0199】
また、デジタル入力装置の時系列データ生成部の機能は、デジタル解答装置1の時系列データ生成部107が実現している。また、デジタル入力装置の第1の記憶部の機能は、例えば、制御部102内に設けられる不揮発性メモリやメモリ部103の内部メモリや外部メモリが実現している。
【0200】
また、特許請求の範囲のデジタル添削装置(以下、単にデジタル添削装置と記載する。)の第2のセンサ部の機能は、実施の形態のデジタル添削装置7(以下、単にデジタル添削装置7と記載する。)の位置検出センサ705A及び位置検出回路705Bからなる位置検出装置705が実現している。また、デジタル添削装置の第2の表示部の機能は、デジタル添削装置7の表示部704が実現し、デジタル添削装置の第2の表示処理手段の機能は、デジタル添削装置7の表示部704が実現している。
【0201】
また、デジタル添削装置の添削情報形成手段の機能は、デジタル添削装置7の主に制御部702が実現し、デジタル添削装置の第3の表示処理手段の機能は、デジタル添削装置7の制御部702が実現している。また、デジタル添削装置の第2の記憶部の機能は、デジタル添削装置7のメモリ部の内部メモリや外部メモリが実現し、デジタル添削装置の再生指示子の機能は、デジタル添削装置7のタイムバーTB及びスライダーSLが実現している。
【符号の説明】
【0202】
1、1A…デジタル解答装置、101A…送受信アンテナ、101…無線通信部、102…制御部、103…メモリ部、104…表示部、105A…位置検出センサ部、105B…位置検出回路、105…位置検出装置、106…操作部、107…時系列データ生成部、108…時計回路、2…電子ペン、3(1)、3(2)…アクセスポイント、4…ホストコンピュータ、5…クラウドシステム、51…データ格納部、52…採点評価部、53…評価結果格納部、5A…クラウドシステム、51A…データ格納部、52A…授業提供部、6…パーソナルコンピュータ、7…デジタル添削装置、701A…送受信アンテナ、701…無線通信部、702…制御部、703…メモリ部、704…表示部、705A…位置検出センサ部、705B…位置検出回路、705…位置検出装置、706…操作部、707…時系列データ再生部、708…レイヤー制御部