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特開2024-160354Pr3+活性化シリケートおよび必要に応じてGd3+共活性化シリケートなどのランタニドイオンからなる青色からUVへのアップコンバータ、および表面消毒目的でのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160354
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】Pr3+活性化シリケートおよび必要に応じてGd3+共活性化シリケートなどのランタニドイオンからなる青色からUVへのアップコンバータ、および表面消毒目的でのその使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/59 20060101AFI20241106BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20241106BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C09K11/59
C09K11/08 B
A61L2/10
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135344
(22)【出願日】2024-08-14
(62)【分割の表示】P 2022521606の分割
【原出願日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】19202910.6
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド ベーニシュ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ジャステル
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ シュルテ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス アラッキ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】青/緑から紫外線への放射を効率良くアップコンバートする無機材料、および当該材料の製造方法を提供する。
【解決手段】530nm未満の長波長の電磁放射エネルギーを220~425nmの範囲の短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート材料である材料。当該シリケート系材料は、特に、塩と有機溶媒とを含む混合物を、特定の焼成工程とトライボロジー衝撃とに供し、粒径を調整し、当該粒子の結晶化度を高めることによって得られる。当該シリケート系材料は、500nm未満の長波長の電磁放射エネルギーへの曝露下で、当該シリケート系材料からなる表面を覆う微生物または細胞を不活化するために使用され得る。
【選択図】図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、
前記シリケート系材料は、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート材料であり、
530nm未満の少なくとも1つの長波長の電磁放射エネルギーを、220~425nmの範囲の少なくとも1つのより短波長の電磁放射エネルギーに変換する、材料。
【請求項2】
前記ランタニドイオンでドープされた前記結晶性シリケート材料が、シクロシリケート、ピロシリケート、およびイノシリケートから選択される、請求項1記載のシリケート系材料。
【請求項3】
i)前記結晶性シリケート材料がシリケートの水和物でなく、特に、前記シリケートが結晶水を含まない、請求項1または請求項2記載のシリケート系材料。
【請求項4】
結晶化度が70%を超える、請求項1~請求項3のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項5】
i)結晶性純相からなる結晶性シリケート材料であるシリケート系材料であり、特に、前記結晶性材料が、前記結晶性材料の90重量%を包含する1つの結晶相からなり、特に、前記結晶相が、前記結晶性材料の95重量%以上、より好ましくは98重量%以上を包含する(100重量%)、請求項1~請求項4のいずれか1項記載の材料、または
ii)シリカ系材料からなる結晶性シリケート材料であるシリケート系材料であり、前記シリカ系材料が、前記シリカ系材料の少なくとも90重量%を包含する少なくとも1つの結晶相からなり、特に、前記結晶相が、前記シリカ系材料の95重量%以上を包含する(100重量%)、請求項1~請求項4のいずれか1項記載の材料。
【請求項6】
前記結晶性シリケート材料が、理想一般式I:
1-x-y-zB*SiO:Ln x,,Ln z,
(式中、x=0.0001~0.05、z=0またはz=0.0001~0.3、およびy=x+zであり、
Aは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択され、
Bは、Li、Na、K、RbおよびCsから選択され、
B*は、Li、NaおよびKから選択され、Bは、B*と等しいか、または等しくなく、好ましくは、BとB*は等しくなく、
Lnは、プラセオジム(Pr)、エルビウム(Er)、およびネオジム(Nd)から選択され、
任意のLnは、ガドリニウム(Gd)から選択される。)
から選択される、請求項1~請求項5のいずれか1項記載のシリケート系材料。
【請求項7】
前記結晶性シリケート材料がプラセオジムでドープされている、請求項1~6のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項8】
前記結晶性シリケート材料がプラセオジムでドープされ、かつガドリニウムで同時ドープされている、請求項1~請求項7のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項9】
前記結晶性シリケート材料が、少なくとも1つのアルカリイオンおよび少なくとも1つの土類アルカリイオンを含むランタニドイオンでドープされた1つまたは複数の結晶性シ
リケートの固溶体であり、
特に、前記結晶性シリケートは、プラセオジムでドープされ、かつ必要に応じてガドリニウムで同時ドープされている、請求項1~請求項8のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項10】
前記結晶性シリケート材料が、理想一般式Ia:
1-x-y-zB*SiO:Pr、Gd Ia
(式中、A=Mg、Ca、Sr、Ba、およびB=Li、Na、K、Rb、Cs、および、
x=0.0001~0.05、z=0またはz=0.0001~0.3、およびy=x+z、
B*は、Li、NaおよびKから選択され、およびKは、前記シリケートの荷電平衡のた
めに存在し、
Bは、B*と等しいか、または等しくなく、好ましくは、BとB*は等しくない。)
から選択される、請求項1~請求項9のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項11】
前記結晶性シリケート材料が、一般式II:
(Ca1-aSr1-2bLnNaLiSiO II
(式中、a=0.0001~1、好ましくは0.0001~0.1、
b=0.0001~1、好ましくは0.0001~0.1であり、
Lnは、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンであり、特に、プラセオジムと、必要に応じてガドリニウムと、が好ましい。)
から選択される、請求項1~請求項9のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項12】
500nm未満、特に500nm未満~400nmの長波長の電磁放射エネルギーを、230nm~380nmの範囲の短波長の電磁放射エネルギーに変換し、
特に、前記短波長の電磁放射エネルギーの最大放射強度が少なくとも1・10カウント/(mm*s)、特に1・10カウント/(mm*s)を超え、好ましくは1・10カウント/(mm*s)を超える、請求項1~請求項11のいずれか一項記載のシ
リケート系材料。
【請求項13】
前記式IIの前記結晶性シリケート材料が、23°2Θ~27°2Θ、および34°2Θ~39.5°2Θの範囲のXRPDシグナルを有する、請求項1~請求項12のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項14】
‐以下:
i)少なくとも1つのランタニド塩、特に、硝酸ランタニド、炭酸ランタニド、カルボン酸ランタニド、特に、酢酸ランタニド、硫酸ランタニドから選択されるもの、および/またはランタニド酸化物、
ii)シリケート、
iii)リチウム塩または任意のリチウム化合物から選択され、かつ必要に応じてナトリウム塩およびカリウム塩から選択される少なくとも1つの土類アルカリ塩および少なくとも1つのアルカリ塩
を準備する工程と、
‐以下:
a)ミル粉砕によって前記i)、前記ii)および前記iii)を混合し、混合物を得る作業、または
b)非プロトン性の有機極性または非極性溶媒中で前記i)、前記ii)および前記iii)を混合し、混合物を得て、得られた前記混合物b)を600℃~1,000℃で焼
成し、有機成分を除去する作業であり、特に、前記焼成を、標準大気(空気)下で少なくとも1時間(2時間)、600℃~1,000℃で実施し、焼成混合物を得る作業
を実施する工程と、
‐前記シリカ系材料の溶融温度より低い温度での焼成工程において、前記a)の混合物または前記b)の焼成混合物を焼成し、少なくとも部分結晶化を生じる工程と、
‐還元雰囲気下でのさらなる焼成工程において、前記ランタニドをLn3+イオンに還元する工程と、
‐シリケート系ランタニドイオンドープ材料を得る工程と、
を有し、
前記i)において、前記ランタニド酸化物および/または前記ランタニド塩中のランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択され、
前記ii)において、好ましくは、前記リチウム塩の塩が前記ii)から選択され、かつリチウムシリケートである、
シリケート系材料の製造方法。
【請求項15】
得られたシリケート系ランタニドイオンドープ材料を粉砕する、特に、トライボロジー衝撃を受けていない前記材料と比較して結晶化度を向上させるのに十分な量のトライボロジー衝撃を、前記材料に与える、請求項14記載の方法。
【請求項16】
粉砕材料としてコランダムを使用して、100~500回転/分で1~6時間、特に、200回転/分で2~5時間、得られたシリケート系材料にトライボロジー衝撃を与える、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項14~請求項16のいずれか一項記載の方法で得られる、長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、
プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート材料であり、
前記ランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート系材料が、少なくとも1つのアルカリイオンおよび少なくとも1つの土類アルカリイオンを含む1つまたは複数の結晶性シリケートの固溶体であり、
結晶化度が80%を超え、
必要に応じて、530nm未満の少なくとも1つの長波長の電磁放射エネルギーを、220~400nmの範囲の少なくとも1つの短波長の電磁放射エネルギーに変換する、シリケート系材料。
【請求項18】
自己消毒用途または微生物減少用途の、請求項1~請求項17のいずれか一項記載のシリケート系材料からなる組成物、箔またはフィルム。
【請求項19】
UV滅菌用途、屋内UV滅菌用途、特に、最大放出が450~480nmの範囲であるLED、特にpcLEDからの電磁放射エネルギーを利用する屋内UV滅菌用途における、
表面のコーティングの添加剤、もしくは材料に表面をもたらす、前記材料の添加剤、または500nm未満の長波長の電磁放射エネルギー、特に、最大放出が450~480nmの範囲である500nm未満の長波長の電磁放射エネルギーへの曝露下で、前記表面または前記コーティングを覆う微生物を不活化することができるコーティングとしての、
請求項1~請求項17のいずれか一項記載のシリケート系ランタニドイオンドープ材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
530nm未満の長波長の電磁放射エネルギーを220~425nmの範囲の短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート材料である材料。さらに、当該シリケート系材料は、特に、塩と有機溶媒とを含む混合物を、特定の焼成工程とトライボロジー衝撃とに供し、粒径を調整し、当該粒子の結晶化度を高めることによって得られる。当該シリケート系材料は、500nm未満の長波長の電磁放射エネルギーへの曝露下で、微生物または細胞を不活化するために使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
効率的に青色または紫外線A波(UV-A)を放出するInN、GaN半導体材料(365~500nm)の発明により、無機固体光源は、白熱灯や放電ランプなどの他の照明技術を凌いでいる。それによって、屋内照明、そして屋外照明は、無機半導体材料(InN、GaN)を主要な放射線源として利用するリン光体変換発光ダイオード(pcLED)が多数派を占めている。
【0003】
この状況は今後数十年で解消し、主要放射線源として青色発光InN、GaN LEDを利用する光源が、あらゆる種類の照明用途領域(例:屋内照明、屋外照明、広告照明、建築照明、装飾照明、特殊照明、街路灯)に浸透し、多数派になると予想される。
【0004】
したがって、屋内照明は、400~480nmの放出帯域を持ち、かつ無機リン光体によって部分的に他の色に変換されて白色光が得られる半導体光源を利用するだろう。だたし、全体のパワー分布の約5~10%に照準を定めた色温度に応じて、青色のスペクトル範囲に留まるだろう。つまり、この放射によって、照射されたアップコンバータの励起が強制され、照射点でUV放射を得ることができる。
【0005】
最近、これを契機に、YSiO:Pr、Gd、Liなどの効率的な青色から放射線C波(UV-C)へのアップコンバージョン材料の特定を目的とした専門の研究開発プロジェクトが発足した。これまでに発見および公開された材料の主な課題は、アップコンバージョン効率の低さであり、検出レベルまたは検出シグナル対雑音比すれすれである。
【0006】
さらに、特許文献1は、微生物を不活性化または死滅させるために、初期電磁エネルギー(A)を電磁エネルギー(B)に変換することができるリン光体含有組成物を開示している。ただし、そこに記載されている方法は、アップコンバージョン特性を有するリン光体を提供するものではない。
【0007】
真に求められているのは、アップコンバート材料である。これによって、昼光照明の典型的な時間内、つまり数時間以内に感染性微生物を大幅に減らすことができるため、効率的に微生物を日々減らすことができる。さらに、当該材料は環境に無害でなければならず、そして少なくとも10,000時間の稼働寿命を示さなければならない。最後に、このような表面コーティングへ広く浸透させるには、当該材料は費用効果が高く、リサイクル可能でなければならない。
【0008】
さらに、LEDの全体的なパワー分布のうちの残りの5~10%のみが青色スペクトル範囲に残り、かつ照射されたアップコンバータの励起を強制して照射点でUV放射を得るのに使用されるべきなので、アップコンバージョン材料の効率は、既知の材料よりもはるかに優れていなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開番号第2013/0052079号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の主題は、青/緑から紫外線への放射を効率良くアップコンバートする無機材料、ならびに当該材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
当該主題は、開示された新規の青/緑から紫外線へのアップコンバート無機シリケート系材料と、それらの製造方法と、コーティング、マトリックス材料表面、薄膜、複合層におけるそれらの適用と、によって解決される。特に好ましい実施形態は、従属請求項および明細書に開示されている。本発明の好ましい実施形態の1つは、理想一般式A1-x-y-zB*SiO:Prおよび必要に応じてGdで表されるPr3+活性化
およびGd3+同時ドープシリケートであり、特に、A1-x-y-zB*SiO
:Prおよび必要に応じてGd(式中、A=Mg、Ca、Sr、Baであり、B=Li、Na、K、Rb、Cs、好ましくはLi、Na、K、特に好ましくはLiであり、B*=Li、Na、K、Rb、Cs、好ましくはNa、Kである。)である。両式中、x
=0.0001~0.05、好ましくは0.001~0.05、z=0またはz=0.0001~0.3、好ましくは0.001~0.3、y=x+z(式中、y=0.0001~0.35であってよく、好ましくは、i)z=0の場合はy=x、ii)z=0.001~0.3の場合はy=0.0002~0.35である。)であり、B*は、Pr
Gdの電荷補償として機能する。好ましい例は、Ca0.98Pr0.01Na0.01LiSiOまたはCa0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOである。
【0012】
あるいは、理想一般式は、A1-2x-2zB*x+zSiO:Pr、Gd
(式中、B*中のx+zは、PrおよびGdと結合している。)であってもよい。
【0013】
本発明の別の実施形態は、そのようなVisおよび/またはUV放射アップコンバータ材料のポリマーマトリックスへの組み込みに関する。
【0014】
ランタニドイオンでドープされた本発明に係るシリカ系材料は、太陽光またはLEDランプの照明時に表面の微生物濃度を低下させることができる。
【0015】
本発明の主題は、UV放出材料、特に、220~425nmの範囲、特に240nm~320nm、最も好ましくは250~320nmの範囲の波長で電磁放射エネルギーを放出することができる材料を提供することである。プラセオジムとガドリニウムを同時ドープしたシリケートは、311nmで非常に強力な放出を示す(図26)。本発明の別の主題は、自己消毒目的で、少なくとも1種の光ルミネセンス無機マイクロスケール粒子を含む組成物またはフィルムを提供することである。これらの粒子は、青~緑(380~550nm)の光子をUV光子に変換することができる。これは、アップコンバージョンとして知られているプロセスである。特に、当該粒子は、70%を超える、特に80%以上、90%以上、より好ましくは95%以上、98%以上、最も好ましくは99%以上の結晶
化度を有する。結晶化度は、リートベルト解析を使用する、当業者(結晶学者)に公知の方法で評価できる(Madsenら、X線粉末回折によるアモルファス含有量の測定方法の説明と調査、Z.Kristallog 226(2011年)944~955頁)。
【0016】
本発明の主要な態様によれば、UV放出材料であるシリケート系ランタニドイオンドープ材料、特に、220~425nm、特に240nm~320nmの範囲の波長(短波長)で電磁放射エネルギーを放出することができる当該材料は、照射されていなくても、特に450nm以上の範囲の波長、特に450~530nmの範囲の波長で照射されていなくても、微生物に害を及ぼさない。UV放出材料であるシリケート系ランタニドイオンドープ材料に、450nm以上の範囲の波長、特に450~530nmの範囲の波長を照射すると、220~425nm、特に240~320nmの範囲の(短)波長で電磁放射エネルギーの放出が誘発され、これは微生物に有害である。
【0017】
本発明は、Pr3+でドープされ、かつ必要に応じてGd3+で同時ドープされたホストシリケート系材料の使用によって実現された。当該材料では、
‐青色光(500nm未満の波長)が、Pr3+の基底状態配置[Xe]4fレベルから0,1,2励起状態への遷移を介して吸収される。光子エネルギーは、440~490nmの範囲の波長を有する光子に対応する。
‐第2工程では、レベルに緩和した後、青色ポンプ光源を再度利用することにより、励起状態の吸収は、励起状態配置[Xe]4f5dの占有を生じる励起状態吸収が起こる。これには、220~250nmのスペクトル範囲にある励起状態配置[Xe]4f5dの結晶場成分が必要である。よって、適切な発光材料が、このスペクトル範囲で5d励起状態を得るために、適切な結晶場分裂を示さなければならず、かつ特許請求されている。
‐励起後、励起状態配置[Xe]4f5dの最低結晶場成分は、光子を基底状態に放出すると戻り、UV放射をもたらす。
【0018】
特許請求されたGd3+による材料の同時ドーピングは、Pr3+とGd3+間のエネルギー移動をもたらし、続いて311nmでの主放出をもたらす。
【0019】
現在、pcLEDが最も効率的な白色光源であるため、あらゆる種類の一般的照明用途で広く使用されている。最良実施例(ベストプラクティス)である青みを帯びた白色のpcLEDのウォールプラグ効率はほぼ60%であり、放射束はpcLEDあたり数光ワットの範囲である。アップコンバージョン方法では約25%の効率が得られ、屋内照明には少なくとも500lm/mまたは5W/m(100lm/Wの光源の場合)が必要であるため、この方法が、表面のいわゆる低線量消毒のために放出スペクトルの青から緑の部分を使用する点は非常に興味深い。
【0020】
本発明によれば、アップコンバージョンとは、長波長、特に500nm未満、好ましくは365~500nmの範囲、最も好ましくは440~490nmの範囲の電磁放射エネルギーを、短波長、特に220~425nmの範囲、好ましくは250~325nmの範囲の電磁放射エネルギーに変換することを意味する。
【0021】
したがって、本発明の主題は、
長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、
プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオン、好ましくはランタニドイオン(III+)でドープされた結晶性シリケート材料であり、
特に、530nm未満、好ましくは500nm未満、例えば365~500nm、特に
440~495nm、最も好ましくは440nm~490nmの少なくとも1つの長波長の電磁放射エネルギーを、220~425nm、特に250~350nm、より好ましくは250~320nmの範囲の少なくとも1つの短波長の電磁放射エネルギーに変換する材料である。
特に、結晶性シリケート材料は、ランタニドイオンでドープまたは同時ドープされており、ランタニドイオンは、ランタニドイオン(III+)から選択される。
【0022】
本発明の最も好ましい実施形態によれば、本発明の主題は、長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、プラセオジム(III+)、ガドリニウム(III+)、エルビウム(III+)、ネオジム(III+)から選択され、同時ドープの場合は、これらのイオン(III+)のうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオン(III+)でドープされた結晶性シリケート材料であるシリケート系ランタニドイオンドープ材料である。
【0023】
本発明の最も好ましい態様によれば、ランタニドイオンは、プラセオジム(III+)(Pr3+)、ガドリニウム(III+)(Gd3+)、エルビウム(III+)(Er3+)およびネオジム(III+)(Nd3+)から選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択される。好ましい実施形態では、シリケート系ランタニドイオンドープ材料は、特に、還元雰囲気下での焼成のために、ランタニドイオン(IV+)を含まない。
【0024】
したがって、本発明に係る材料は、530nm未満、特に440~495nm、好ましくは440nm~490nmの少なくとも1つの長波長の電磁放射エネルギーで照射される場合、220~425nmの範囲、特に250~350nmの範囲、より好ましくは250~320nmの少なくとも1つの短波長の電磁放射エネルギーを放出する。
【0025】
図11および12によると、CaLiSiO:Pr、Na(1モル%)((Ca0.98Pr0.01Na0.01)LiSiOおよびCaLiSiO:Pr、Gd(1モル%)、Na(2モル%)とも呼ばれ、(Ca0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02)LiSiOとも呼ばれる。)の放出スペクトルは、275~375nmの範囲を明確に示しており、強度は少なくとも1×10カウント/(mm*s)
である(励起レーザー:445nm、75mW)。488nmのレーザーと150mWの効率で励起すると(図11および12を参照)、CaLiSiO:Pr、Na(1モル%)((Ca0.98Pr0.01Na0.01)LiSiOおよびCaLiSiO:Pr、Gd(1モル%)、Na(2モル%)とも呼ばれ、(Ca0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02)LiSiOとも呼ばれる。)の放出スペクトルになり、225~425nmの範囲の放出スペクトルの強度を明確に示し、強度の最大値は、特に230~325nmの部分範囲において、かつ必要に応じて365nm~425nmの部分範囲において、少なくとも1×10カウント/(mm*s)である。特に好
ましいのは、275nm~320nmの範囲の強度の最大値であり、特に、少なくとも2×10カウント/(mm*s)、より好ましくは2.5×10カウント/(mm*s)の強度である。488nmのレーザーと150mWの効率、または445nmのレーザーと75mWの効率で励起すると(図12を参照)、CaLiSiO:Pr、Gd(1モル%)、Na(2モル%)((Ca0.98Pr0.01Gd0.01Na0.02)LiSiOとも呼ばれる。)の放出スペクトルになり、300~320nmの範囲、特に312nmの放出スペクトルで追加強度を明確に示し、強度の最大値は、少なくとも5×10カウント/(mm*s)、特に少なくとも6×10カウント/(mm
*s)、より好ましくは少なくとも7×10カウント/(mm*s)である。
約312nmでの強力な放出は、ガドリニウム(Gd)によって生じる。
【0026】
220~425nmの範囲で放出される電磁スペクトルの強度は、少なくとも5×10カウント/(mm*s)、好ましくは少なくとも1×10カウント/(mm*s)、より好ましくは少なくとも2×10カウント/(mm*s)である。特に、220
~330nmの範囲で放出される電磁スペクトルの強度は、少なくとも2×10カウント/(mm*s)であり、220~425nmの範囲で放出される電磁スペクトルの強
度は、少なくとも2×10カウント/(mm*s)である。放出スペクトルは、レー
ザー、特に、445nmで75mWの効率および/または488nmで150mWの効率を有するレーザーで励起される。
【0027】
変換された電磁放射エネルギーの好ましい最大値は、250~350nm、特に250~350nm、最も好ましくは280~330nmの範囲である。
【0028】
好ましいシリケート系材料は、プラセオジムでドープされ、かつガドリニウムで同時ドープされている。特に、結晶性シリケート材料は、プラセオジムでドープされ、かつガドリニウムで同時ドープされている。
【0029】
本発明の一態様によれば、シリケート系材料が好ましく、ランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート材料は、例えば、シクロシリケート(例:[Si6-、[Si128-および/または[Si1812-)、ピロシリケート(例:[Si6-)、およびイノシリケート(いわゆる、原子比が単鎖ではSi:O=1:3であり、二重鎖ではSi:O=4:11である鎖状シリケート)から選択される。
【0030】
本発明の好ましい主題は、長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、当該シリケート系材料は、ランタニドイオン(III+)(Ln3+)でドープされた結晶性シリケート材料であり、特に、還元性雰囲気中で当該シリケート系ランタニドイオンドープ材料を加熱、好ましくは焼成することによって得られる。特に、還元雰囲気中で、600℃より高く融点未満、好ましくは融点より50℃~200℃低い温度に加熱する。空気中で先に焼成した後の還元工程は、ランタニドイオン(III+)の量を増やし、それによって材料のアップコンバージョン強度を高めることと特に関係している。最も好ましい実施形態によれば、結晶性シリケート材料は、ランタニドイオンでドープまたは同時ドープされており、ランタニドイオンは、ランタニドイオン(III+)から選択される。
【0031】
本発明の一態様によれば、シリケート系材料が好ましく、ランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート材料は、結晶水、-OH官能性を有する結晶溶媒和物を含まないシリケートから選択される。特に、ランタニドイオン、好ましくはLn3+、最も好ましくは95%を超えるLn3+および5%未満のLn4+でドープされた結晶性シリケート材料は、化学量論的水和物および/または溶媒和物を含まないシリケートから選択される。
【0032】
特に好ましいのは、シリケート系材料であり、i)結晶性シリケート材料はシリケートの水和物でなく、特に、シリケートは結晶水を含まない。水を含まないシリケートも好ましい。シリケート系材料の表面に吸着された水または当該表面上の水は、シリケートの水和物または結晶化からの水とは見なされない。そうではあるが、シリケート系材料は、材料の粒子の表面に吸着された水を含まず、かつ当該表面上の水を含まないことが好ましい。
【0033】
シリケート系材料の結晶化度、特に、上記に開示された粒径分布を有する粒子の結晶化度は、70%よりも大きいことが特に好ましく、特に、材料の結晶化度は80%以上、より好ましくは85%以上、90%以上、95%以上、最も好ましくは98%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上である(分析例:長期XRPDのピークの半分の
幅による粒径測定およびデバイ-シェラー法(Debye-Scherrer-equitation);最も強い
反射の高さも使用してよい、XRPD、リートベルト解析)。
【0034】
さらに、シリケート系材料は、特に、アモルファス相を有しておらず、シリケート系材料にアモルファス相がないとは、5%未満、好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満、0.01%未満、0.001%未満、0.0001%未満であることを意味する(分析は上記を参照、XRPD、リートベルト解析)。
【0035】
より好ましいのは、シリケート系材料であり、シリケート系材料は、以下を含む結晶性シリケート材料である。
i)結晶性純相。特に、結晶性材料は、結晶性材料の90重量%を包含する結晶相、特に1つの結晶相を含む。特に、結晶相は、結晶性材料(100重量%)の95重量%以上、より好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%、99.5重量%または99.8重量%を包含する。あるいは、
ii)シリカ系材料は、シリカ系材料(100重量%)の90重量%、特に95重量%以上、より好ましくは98重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、99.8重量%以上、99.9重量%以上を包含する少なくとも1つの結晶相、特に1つの結晶相を含む。
【0036】
最も好ましいのは、結晶性純相(例えば、異なる結晶性相またはアモルファス相を含まない)のシリケート系材料である。
【0037】
本発明の別の態様によれば、結晶性シリケート材料は、好ましくは、少なくとも1つのアルカリイオンおよび少なくとも1つの土類アルカリイオンからなるランタニドイオンでドープされた結晶性シリケートの固溶体であり、特に、シリケートは、プラセオジムでドープされ、かつ必要に応じてガドリニウムで同時ドープされている。特に好ましいのは、Li、Na、K、Rb、Csから、好ましくはLiおよび必要に応じてNaまたはKから、最も好ましくはLiおよび必要に応じてNaから選択される少なくとも1つのアルカリイオンと、Mg、Ca、Sr、Baから、好ましくはCaから選択される少なくとも1つの土類アルカリイオンと、を含むプラセオジムイオンおよび必要に応じてガドリニウムイオンから選択されるランタニドでドープされた結晶性シリケートである。最も好ましいのは、上記の結晶性シリケートであり、結晶化度は90%以上、好ましくは95%以上であり、平均粒径D50は1μm~20μmの範囲、好ましくは5~15μmの範囲である。
【0038】
ランタニドイオンでドープされ、かつ少なくとも1つのアルカリイオンおよび少なくとも1つの土類アルカリイオンを含む好ましい結晶性シリケート材料は、水を含まないシリケート、または結晶水(例えば、シクロシリケート([Si6-、[Si128-、[Si1812-)、ピロシリケート([Si6-)およびイノシリケート(鎖状シリケート、Si:O=1:3(単鎖)、Si:O=4:11(二重鎖)から選択される結晶水)を含まないシリケートから選択される。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態は、シリケート系材料またはシリカ系材料であり、結晶性シリケート材料は、理想一般式Iから選択される。
1-x-y-zB*SiO:Ln x,,Ln z, (I)
(式中、x=0.0001~0.05、z=0またはz=0.0001~0.3、およびy=x+zであり、
Aは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択され、
Bは、Li、Na、K、RbおよびCsから選択され、
B*は、Li、NaおよびKから選択され、Bは、B*と等しいか、または等しくなく、好ましくは、BとB*は等しくなく、
Lnは、プラセオジム(Pr)、エルビウム(Er)、およびネオジム(Nd)から選択され、
任意のLnは、ガドリニウム(Gd)から選択される。)
【0040】
最も好ましいのは、上記式Iの結晶性シリケートであり、結晶化度は90%以上、好ましくは95%以上であり、平均粒径D50は1μm~20μmの範囲、好ましくは5~15μmの範囲である。
【0041】
本発明のさらに好ましい実施形態は、シリケート系材料またはシリカ系材料であり、結晶性シリケート材料は、理想一般式Iaから選択される。
1-x-y-zB*SiO:Prx,Gdz, Ia
(式中、A=Mg、Ca、Sr、Ba、およびB=Li、Na、K、Rb、Cs、および、
x=0.0001~0.05、z=0またはz=0.0001~0.3、およびy=x+z、
B*は、Li、NaおよびKから選択され、およびKは、前記シリケートの荷電平衡のた
めに存在し、
Bは、B*と等しいか、または等しくなく、好ましくは、BとB*は等しくない。)
【0042】
最も好ましいのは、シリケート系材料であり、結晶性シリケート材料は理想一般式IIから選択される。
(Ca1-aSr1-2bLnNaLiSiO II
(式中、a=0.0001~1、好ましくは0.0001~0.1、
b=0.0001~1、好ましくは0.0001~0.1、あるいは
a=0または0.0001~0.1、好ましくはa=0、
b=0.0001~0.35、好ましくはb=0.001~0.1であり、
Lnは、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンであり、特に、プラセオジムと、必要に応じてガドリニウムと、が好ましい。)
【0043】
本発明に係る好ましいシリケート系ランタニドイオンドープ材料は、A0.9998-0.9B*0.0001-0.05SiO:Pr0.0001-0.05およびA
0.9998-0.30B*0.0001-0.35SiO:Pr0.0001-
0.05Gd0.0001-0.30であり、Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選択され、Bは、Li、Na、K、Rb、Csから、好ましいLi、Na、Kから、より好ましくはLiから選択され、B*は、NaおよびKから選択される。
【0044】
特に好ましいのは、Ca0.98Pr0.01Na0.01LiSiO、Ca0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiO、Sr0.98Pr0.01Na0.01LiSiO、Sr0.96r0.01Gd0.01Na0.02LiSiOである。
【0045】
例えば、SrLiSiO:Pr3+などの土類アルカリイオンとしてのストロンチウムをベースとする本発明に係るシリケート系結晶性材料は、254~375nmで放出を示し、特に320nmで最大値を示す。SrLiSiO:Pr3+、Gd3+では、254~375nmで放出を示し、特に312nmで最大値を示す。
【0046】
特に、結晶性シリケート材料は、少なくとも2つの異なるアルカリイオンを含む。より好ましい結晶性シリケート材料は、少なくとも1つの土類アルカリイオンと少なくとも2つの異なるアルカリイオンとを含む。
【0047】
本発明の一態様によれば、シリケート系材料である、式2の結晶性シリケート材料は、XRPDシグナル、特に、23°2Θ~27°2Θの範囲、および34°2Θ~39.5°2Θの範囲、特に24.4°2Θ°~25.4°2Θの範囲、および36.8°2Θ~37.8°2Θの範囲の高強度のシグナルを有する。特に、シグナルは、Cu-Kα放射を使用したBragg-Brentano型ジオメトリに従って測定される。
【0048】
また、本発明の主題は、プラセオジムでドープされ、かつ以下のリストから選択されるガドリニウムで必要に応じて同時ドープされたシリケート系結晶性材料である。驚くべきことに、これらの材料は、かなり効率的な青色から紫外線へのアップコンバージョンを示すことがわかった。
Mg1-x-y-zPrGdB*LiSiO(x=0.0001~0.05、
好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Ca1-x-y-zPrGdB*LiSiO(x=0.0001~0.05、
好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Sr1-x-y-zPrGdB*LiSiO(x=0.0001~0.05、
好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Ba1-x-y-zPrGdB*LiSiO:Pr(x=0.0001~0.
05、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Mg1-x-y-zPrGdB*NaSiO:Pr(x=0.0001~0.
05、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Ca1-x-y-zPrGdB*NaSiO:Pr(x=0.0001~0.
05、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Sr1-x-y-zPrGdB*NaSiO:Pr(x=0.0001~0.
05、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Ba1-x-y-zPrGdB*NaSiO:Pr(x=0.0001~0.
05、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Mg1-x-y-zPrGdB*SiO:Pr(x=0.0001~0.0
5、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Ca1-x-y-zPrGdB*SiO:Pr(x=0.0001~0.0
5、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Sr1-x-y-zPrGdB*SiO:Pr(x=0.0001~0.0
5、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Ba1-x-y-zPrGdB*SiO:Pr(x=0.0001~0.0
5、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Mg1-x-y-zPrGdB*RbSiO:Pr(x=0.0001~0.
05、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Ca1-x-y-zPrGdB*RbSiO:Pr(x=0.0001~0.
05、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Sr1-x-y-zPrGdB*RbSiO:Pr(x=0.0001~0.
05、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)
Ba1-x-y-zPrGdB*RbSiO:Pr(x=0.0001~0.
05、好ましくは0.001~0.05、z=0)および必要に応じてGd(z=0.0001~0.3)、
すべての式において、B*は、Li、Na、Kから選択される追加のアルカリ金属であり
、Bと等しいか、または異なっていてもよい。好ましくは、BおよびB*は、アルカリ金
属から選択され、異なっている。
【0049】
シリカ系結晶性材料の粒径は、好ましくは、1μm~100μmの範囲、より好ましくは1μm~50μmの範囲、より好ましくは1μm~20μmの範囲である。
【0050】
好ましくは、シリカ系結晶性材料の平均粒径(D50)は、好ましくは1μm~100μmの範囲、より好ましくは1μm~50μmの範囲、より好ましくは1μm~20μmの範囲である。より好ましくは、シリカ系結晶性材料の平均粒径(D50)は、2μm~20μmの範囲、より好ましくは5μm~20μmの範囲、より好ましくは5μm~15μmの範囲、特に約10μm±5μmである。1つの特に好ましい実施形態によれば、粒径分布は、D10=2~7μm、D50=5~15μm、およびD90=20μm未満、好ましくは18μm未満である。粒径分布は、Horiba LA-950-V2有機粒径アナライザーを使用して、動的レーザー光散乱法で測定した。
【0051】
本発明に係るシリケート系結晶性材料はすべて、少なくとも3価の活性剤Pr3+を含んでおり、基底状態配置[Xe]4fは、励起配置[Xe]4f5dの最低結晶場成分の下に位置する13のレベルを提供する。ホスト材料を適切に選択することにより、Pr3+の励起配置の最低結晶場成分を、基底状態構成に属する基底状態レベルよりも35000~40000cm-1上に調整することができる。このようにして、単一イオンでの2光子吸収プロセスが可能になり、その結果、UV光子の放出が可能となる。
【0052】
特に、本発明に係るPr3+ドープシリケート系材料、および本発明に従ってトレッドされた(treaded)材料は、青色からUV放射へのアップコンバータ材料を提供し、これは
、これまでの特許および査読済みの文献に公開されたものよりもはるかに効率的である。
【0053】
本発明のさらなる主題によれば、220~250nmのスペクトル範囲に位置する励起状態配置[Xe]4f5dの結晶場成分を有するシリケート系ランタニドドープ材料が特許請求されている。
【0054】
本発明のさらなる主題によれば、250~320nmのスペクトル範囲の放出を有する励起状態配置[Xe]4f5dの結晶場成分を有するシリケート系ランタニドドープ材料が特許請求されている。
【0055】
特に好ましいシリケート系材料は、500nm未満、特に490nm未満~450nmの長波長の電磁放射エネルギーを、230nm~380nmの範囲の短波長の電磁放射エネルギーに変換するシリケート系材料である。特に、短波長(特に、放出された短波長の少なくとも1つの最大値、または放出された短波長の2つの最大値)の電磁放射エネルギーの最大放出の強度は、独立して少なくとも1・10カウント/(mm2*s)、特に1
・10カウント/(mm2*s)を超え、好ましくは1・10カウント/(mm2*s)を超え、最も好ましくは2・10カウント/(mm2*s)を超える。本発明の好ましい態様によれば、230nm~275nmの短波長の範囲で1・103カウント/(mm2*s)の強度を有する2つの最大値と、最大強度が少なくとも1・10カウント/(mm2*s)を超え、好ましくは1・10カウント/(mm2*s)を超え、最も好ましくは2・10カウント/(mm2*s)を超える、275nm~380nmの範囲の第2最大値と、が好ましい。特に、言及されたレーザー445nm 75mWまたは488nm 150mWを使用する。
【0056】
放出を増やすには、特定の粒径が最も好ましい。したがって、開示された材料は、10nm~100μmの範囲のμスケール、部分μスケールからナノスケールの粒子として特許請求される。
【0057】
また、本発明の主題は、シリケート系材料の製造方法、および当該方法に従て得られる結晶性シリケート系材料であり、当該方法は下記の工程を有する。
‐以下i)~iii)を準備する工程、
i)少なくとも1つのランタニド塩、特に、硝酸ランタニド、炭酸ランタニド、カルボン酸ランタニドから選択されるもの、特に、酢酸ランタニド、硫酸ランタニド、ランタニド酸化物、特に、Pr11および/またはGd
(ランタニド酸化物またはランタニド塩中のランタニドイオンは、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択される。)、
ii)シリケート、特に、シリケートの塩、より具体的には、シリケートのアルカリ塩、
iii)リチウム塩または任意のリチウム化合物から選択され、かつ必要に応じてナトリウム塩およびカリウム塩から選択される少なくとも1つの土類アルカリ塩および少なくとも1つのアルカリ塩、特にアルカリシリケート
(好ましくは、リチウム塩の塩は、ii)から選択され、リチウムシリケートである。)‐以下a)またはb)を実施する工程、
a)ミル粉砕によってi)、ii)およびiii)を混合し、混合物を得る作業、
b)非プロトン性の有機極性または非極性溶媒中でi)、ii)およびiii)を混合し、混合物を得て、得られた混合物b)を600℃~1,000℃で焼成し(工程1a)、有機成分を除去する作業
(特に、焼成は、標準大気(空気)下で少なくとも1時間、特に2時間以上、600℃~1,000℃で実施し、焼成混合物を得る。)
‐少なくとも部分的な結晶化が生じる、シリカ系材料の溶融温度より低い温度で、特に空気下で、a)の混合物またはb)の焼成混合物を焼成する工程、
(シリケート系材料を結晶するための、シリカ系材料の溶融温度よりも低い温度での、好ましくは空気中での、50~200℃の温度の少なくとも3時間のさらなる焼成工程(工程1b)では、好ましい温度は、800~900℃、好ましくは約850℃であり、結晶化は少なくとも3時間、特に少なくとも12時間、好ましくは空気中で生じる。)
‐高温、特に800℃を超え、かつ材料の溶融温度よりも50~200℃低い温度(例:850℃)で、少なくとも3時間、より好ましくは少なくとも6時間、還元雰囲気下でのさらなる焼成工程において、ランタニドをLn3+イオンに還元する工程、
‐特に、材料を冷却した後、シリケート系ランタニドイオンドープ材料を得る工程。
【0058】
還元性雰囲気は、NまたはアルゴンとHとの混合物などのフォーミング・ガスであってよい。別の還元性雰囲気は、不活性ガスを含んでよく、還元成分としてCOまたはNHなどのガスを含んでよい。
【0059】
材料の冷却は、100℃/時間~300℃/時間、好ましくは200℃/時間~300℃/時間の速度の冷却で実施されることが好ましい。
【0060】
焼成工程1aおよび/または1bでの加熱および冷却は、それぞれ独立して、100℃/時間~300℃/時間、好ましくは300℃/時間の加熱および冷却速度である。焼成工程2での加熱および冷却は、100℃/時間~300℃/時間の速度で実施され、200℃/時間の加熱および冷却速度が好ましい。線形冷却速度が特に好ましい。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、得られたシリケート系ランタニドイオンドープ材料を粉砕し、特に、トライボロジー衝撃を受けていない材料と比較して、材料の結晶化度(特に、シリケート系材料の主結晶相の結晶化度)を増加させるのに十分な量のトライボロジー衝撃を、材料に対して与える。特に、アモルファス相は還元され、結晶側相は主結晶相に協奏する。好ましくは、シリケート系ランタニドイオンドープ材料の主反射強度は、少なくとも5%、特に10%、より好ましくは少なくとも20%増加する。式IIに係るシリケートの場合、34°2Θ~39.5°2Θの範囲の主反射強度は、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%増加する。
【0062】
本発明のさらに別の実施形態は、粉砕材料を使用して、200回転/分で1~6時間、好ましくは約4時間、得られたシリケート系材料にトライボロジー衝撃を与える方法である。粉砕は、遊星ボールミル(PM 200、Retsch社)、最大37.1gのg力(g-force)、ビーカー/ジャー:コランダムおよび粉砕ボール(Al)、50mL(9個のボール、サンプル約4.5g)または125mL(24個のボール、サンプル約20g)で実施される。粉砕ビーカー/ジャーは、遊星ボールミルのサンホイール上に偏心配置されている。サンホイールの移動方向は、1:約2の比率で粉砕ジャーの移動方向と反対である。粉砕ビーカー/ジャー内の粉砕ボールは、多重の回転運動、いわゆるコリオリの力を受ける。ボールとジャーの速度の違いにより、摩擦力と衝撃力の間に相互作用が生じ、高い動的エネルギーが放出される。
【0063】
得られたシリケート系ランタニドイオンドープ材料の好ましい主反射強度は、粉砕工程によって、少なくとも25%、特に30%、より好ましくは少なくとも40%、50%、60%、70%、または80%増加し得る。式IIに係るシリケートの場合、34°2Θ~39.5°2Θの範囲の主反射強度は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%増加する。好ましくは、この粉砕工程は、粒径を小さくし、かつ固体中の不要相を低減するための、方法中の第1粉砕工程である。
【0064】
本発明の主題はまた、長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、本発明の方法に従って得ることができる。
‐シリケート系材料は、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート材料であり、
ランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート系材料は、少なくとも1つのアルカリイオン、好ましくは少なくとも2つの異なるアルカリイオンを含む結晶性シリケートの固溶体であり、シリケート系材料の結晶化度は、80%を超え、特に、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上であり、
530nm未満、特に490~450nmの範囲の少なくとも1つの長波長の電磁放射エネルギーを、220~400nmの範囲、特に250~320nmの範囲の少なくとも1つの短波長の電磁放射エネルギーに変換する。
【0065】
長波長は、規定ごとに、常に短波長よりも長い。
【0066】
さらなる実施形態によれば、シリケート系材料を含む組成物、箔またはフィルムは、自己消毒目的で、または微生物を減らすために開示されている。組成物は、任意の賦形剤を含んでよく、組成物は、1~15重量%を超える量、特に10重量%を超える量の水または非プロトン性溶媒を含まない。
【0067】
本発明の主題はまた、UV滅菌または消毒用途での、屋内UV滅菌用途での、特に、最大放出が450~480nmの範囲である500nm未満の長波長の電磁放射エネルギーの曝露下において、最大放出が450~480nmの範囲であるLED、特にpcLEDからの電磁放射エネルギーを利用する屋内UV滅菌用途での、シリケート系ランタニドイオンドープ材料の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1a】合成されたYSiOのX線粉末回折(XRPD)である上部のXRPDと、YSiOの計算されたXRPDである。
図1b】レーザーによる445nm(75mW)および488nm(150mW)での励起時のYSiO:Pr3+の放出スペクトルである。
図2】レーザーによる445nm(75mW)および488nm(150mW)での励起時のCa0.98Pr0.01Na0.01LiSiOの放出スペクトルである。
図3】Cu-Kα放射線に対する、Ca0.98Pr0.01Na0.01LiSiOのX線回折パターン(実施例1)である。
図4】Cu-Kα放射線に対する、Ca0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOのX線回折パターン(実施例2)である。
図5】Cu-Kα放射線に対する、Sr0.98Pr0.01Na0.01LiSiOのX線回折パターン(実施例3)である。
図6】Cu-Kα放射線に対する、Sr0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOのX線回折パターン(実施例4)である。
図7】160nmでの励起時のCa0.98Pr0.01Na0.01LiSiOの放出スペクトル(実施例1)である。
図8】160nmでの励起時のCa0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOの放出スペクトル(実施例2)である。
図9】160nmでの励起時のSr0.98Pr0.01Na0.01LiSiOの放出スペクトル(実施例3)である。
図10】160nmでの励起時のSr0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOの放出スペクトル(実施例4)である。
図11】レーザーによる445nm(75mW)および488nm(150mW)での励起時のCa0.98Pr0.01Na0.01LiSiOの放出スペクトル(実施例1)である。
図12】レーザーによる445nm(75mW)および488nm(150mW)での励起時のCa0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOの放出スペクトル(実施例2)である。
図13】レーザーによる445nm(75mW)および488nm(150mW)での励起時のSr0.98Pr0.01Na0.01LiSiOの放出スペクトル(実施例3)である。
図14】レーザーによる445nm(75mW)および488nm(150mW)での励起時のSr0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOの放出スペクトル(実施例4)である。
図15】Ca0.98Pr0.01Na0.01LiSiOの反射スペクトル(実施例1)である。BaSOを参照として使用した。
図16】Ca0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOの反射スペクトル(実施例2)である。BaSOを参照として使用した。
図17】Sr0.98Pr0.01Na0.01LiSiOの反射スペクトル(実施例3)である。BaSOを参照として使用した。
図18】Sr0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOの反射スペクトル(実施例4)である。BaSOを参照として使用した。
図19】300nmでのCa0.98Pr0.01Na0.01LiSiOモニタリング放出の励起スペクトル(実施例1)である。
図20】312nmでのCa0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOモニタリング放出の励起スペクトル(実施例2)である。
図21】320nmでのSr0.98Pr0.01Na0.01LiSiOモニタリング放出の励起スペクトル(実施例3)である。
図22】312nmでのSr0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiOモニタリング放出の励起スペクトル(実施例4)である。
図23a】高エネルギー粉砕(200U/分、4時間)によるCaLiSiO:Pr3+の結晶化度の増加と、不純物としての追加相の減少を示す。
図23b】高エネルギー粉砕(200U/分、4時間)によるCaLiSiO:Pr3+の結晶化度の増加と、不純物としての追加相の減少を示す。
図24a】)100U/分で4時間の場合のCaLiSiO:Pr3+の粒径分布である。
図24b】200U/分で4時間の場合のCaLiSiO:Pr3+の粒径分布である。
図24c】相の純度および結晶化度の増加に伴い、放出が増加したことを示す。
図25a】相の純度および結晶化度の増加に伴い、放出が増加したことを示す。
図25b】不純物としての追加相が減少し、結晶化度が増加したことを示す。
図25c】200U/分で4時間の場合のCaLiSiO:Pr3+の粒径分布である。
図26】UV放出をもたらすアップコンバージョンメカニズムに関与する関連する光遷移とエネルギー移動プロセスを示す、Pr3+(基底状態配置[Xe]4f)およびGd3+(基底状態配置[Xe]4f)の簡略化されたエネルギーレベルスキームである。
図27a】上部は、粉砕前の抽出物のXRPDであり、下部は、計算されたCaLiSiOのXRPDである。
図27b】上部は、粉砕された抽出物のXRPDであり、下部は、計算されたCaLiSiOのXRPDである。
図27c】上部は、空気中850℃で12時間粉砕されたシリケート系ランタニドイオンドープ材料加熱物(焼成物)であり、反射2Θ=37.39°、13357カウントである。下部は、計算されたCaLiSiOのXRPDである。
図27d】上部は、第2の加熱:6時間、850℃、フォーミング・ガス(H(5%)/N(95%))、反射2Θ=37.39°、15423カウントである。下部は、計算されたCaLiSiOのXRPDである。
図27e】上部は、さらなる粉砕により結晶化度が低下したことを示す:反射2Θ=37.39°、13576カウントに減少。下部は、計算されたCaLiSiOのXRPDである。
図28a】上部では、ケシリケート系ランタニドイオンドープ材料(CaLiSiO:Pr3+、Na)を空気中850℃で12時間加熱(焼成)し、その後、高温の還元性雰囲気(H/不活性ガス、6時間850℃、粉砕されていない)に置いた。反射2Θ=37.39°、10964カウント。下部は、計算されたCaLiSiOのXRPDである。
図28b】上部は、還元雰囲気での焼戻しした後の粉砕されたシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、反射2Θ=37.39°、18665カウント(粉砕:4時間で200rpm、CaLiSiO:Pr3+、Na)である。下部は、計算されたCaLiSiOのXRPDである。
【実施例0069】
測定技術
Cu-Kα放射線とラインスキャンCCDセンサを使用するBragg-Brentano型ジオメトリで動作するパナリティカルX’PertPROMPD回折計を使用して、X線回折図を記録した。積分時間は、0.017°のステップ幅で20秒に達した。
Coherent社製の488nm連続波OBISレーザーと、ペルティエ冷却(-20℃)単一光子計数光電子増倍管(浜松 R2658P)と、を備えたエディンバラ装置FLS920分光計で、放出スペクトルを記録した。モノクロメーターによって引き起こされる二次反射による励起を抑制するためにフィルターを使用した。
粉砕については、最後焼成工程の冷却後、遊星ボールミル(PM 200、Retsch社)、ビーカー/ジャー:コランダムおよび粉砕ボール(Al)、50mL(9個のボール、サンプル約4.5g)または125mL(24個のボール、サンプル約20g)で、200回転/分で4時間実施する。還元雰囲気(H/不活性ガス、特にH/Nが好ましい(H(5%)/N(95%))。
【0070】
粉末サンプル合成
実施例1:Ca0.98Pr0.01Na0.01LiSiO
めのう乳鉢内で、CaCO3.3349g(33.3200ミリモル)、LiSiO3.0588g(34.0000ミリモル)、Pr(NO・6HO0.1479g(0.3400ミリモル)、および)NaCO0.0180g(0.1700ミリモル)をヘキサンに配合した。Ca2+/Pr3+の電荷補償にNaCOを使用した。この前駆体配合物を空気中で700℃で2時間焼成し、有機残留物を除去した。続いて、空気中で850℃で12時間焼成を行い、生成物相を得た。Pr4+をPr3+に還元するには、還元性雰囲気中850℃で6時間の最終焼成工程が必要である。
【0071】
実施例2:Ca0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiO
めのう乳鉢内で、CaCO3.2668g(32.6400ミリモル)、LiSiO3.0588g(34.0000ミリモル)、Pr(NO・6HO0.1479g(0.3400ミリモル)、Gd0.0616g(0.1700ミリモル)、およびNaCO0.0360g(0.3400ミリモル)を、ヘキサンに配合した。Ca2+/Pr3+の電荷補償にNaCOを使用した。この前駆体配合物を空気中で700℃で2時間焼成し、有機残留物を除去した。続いて、空気中で850℃で12時間焼成を行い、生成物相を得た。Pr4+をPr3+に還元するには、還元性雰囲気中850℃で6時間の最終焼成工程が必要である。
【0072】
実施例3:Sr0.98Pr0.01Na0.01LiSiO
めのう乳鉢内で、SrCO3.6169g(24.5000ミリモル)、LiSiO2.2491g(25.0000ミリモル)、Pr(NO・6HO0.1088g(0.2500ミリモル)、およびNaCO0.0132g(0.1250ミリモル)を、ヘキサンに配合した。Ca2+/Pr3+の電荷補償にNaCOを使用した。この前駆体配合物を空気中で700℃で2時間焼成し、有機残留物を除去した。続いて、空気中で850℃で12時間焼成を行い、生成物相を得た。Pr4+をPr3+に還元するには、還元性雰囲気中850℃で6時間の最終焼成工程が必要である。
【0073】
実施例4:Sr0.96Pr0.01Gd0.01Na0.02LiSiO
めのう乳鉢内で、SrCO4.8186g(32.6400ミリモル)、LiSiO3.0588g(34.0000ミリモル)、Pr(NO・6HO0.1479g(0.3400ミリモル)、Gd0.0616g(0.1700ミリモル)、およびNaCO0.0360g(0.3400ミリモル)を、ヘキサンに配合した。Ca2+/Pr3+の電荷補償にNaCOを使用した。この前駆体配合物を空気中で700℃で2時間焼成し、有機残留物を除去した。続いて、空気中で850℃で12時間焼成を行い、生成物相を得た。Pr4+をPr3+に還元するには、還元性雰囲気中850℃で6時間の最終焼成工程が必要である。
【0074】
比較例1
比較例として、下記の出版物に開示されている他のランタニドドープシリケート系を同じ条件下で作製および測定した(Lu:Pr3+およびYSiO:Pr3+セラミックの可視からUVCへのアップコンバージョン効率とメカニズム、Cates,Ezra L.;Wilkinson,Angus P.;Kim,Jae-Hong、Journal of Luminescence 160(2015年)202~209頁)。要約:Pr3+ドープ材料による可視からUVCへのアップコンバージョン(UC)は、光活性化抗菌表面および太陽水処理などの持続可能な消毒技術への応用の有力候補である。この研究で、Lu:Pr3+セラミックを使用して、オキシフッ化物ホストシステムでのPr3+のアップコンバージョンを初めて研究した。以前に研究したYSiO:Pr3+参照材料と比較して、オキシフッ化物ホストは、おそらく最大フォノンエネルギーが低いために、中間状態の寿命が5倍に増加した。しかし、UC強度は60%の増加しか観察されなかった。この食い違いを説明するために、発光スペクトル分布と減衰速度論を、両方のリン光体系で研究した。各リン光体のPr3+4f5dバンドのエネルギー分布は、まだ明らかにされていないUCメカニズムの発生を許可または禁止することによって、重要な役割を果たすことがわかり、これは全体の効率に重大な影響を及ぼした。
【0075】
Lu:Pr3+は、開示された温度では得られなかった。控えめなプレスを利用したために、高温および350MPaの圧力下での合成はできなかった。
【0076】
SiO:Pr3+は、出版物に従って純粋相と同じように合成された。
【0077】
比較例2
別の比較例として、ランタニドドープシリケートを、焼成温度に関して米国特許公開番号第2013/502079号に開示された条件で製造する。
めのう乳鉢内で、CaCO3.3349g(33.3200ミリモル)、LiCO2.5123g(34.0000ミリモル)、Pr(NO・6HO0.1479g(0.3400ミリモル)、およびNaCO0.0180g(0.1700ミリモル)を、ヘキサンに配合しした。Ca2+/Pr3+の電荷補償にNaCOを使用した。この前駆体配合物を空気中で700℃で2時間焼成し、有機残留物を除去した。その後、空気中で1,100℃(およびそれを超える温度)で12時間焼成すると、アモルファスでガラス状の生成物が生成され、るつぼに付着する。このアモルファス生成物を、Alるつぼから分離させることはできなかった。
【0078】
粉砕の試み
Retsch社製の遊星ボールミルPM200を以下の粉砕にも使用した。粉砕ボウルの内壁と粉砕ボールはコランダム(Al)でできている。2つの異なる粉砕ボウルを使用した:50mLおよび125mL。この大きさに応じて、9個または24個の粉砕ボールを使用した。それらの大きさに応じて、ボウルにも4.5gまたは20gのサンプルを投入した。粉砕ボウルの速度は200rpmである。粉砕時間は4時間である。
動作原理:粉砕ボウルを、遊星ボールミルのサンホイール上に偏心して配置する。サンホイールの回転運動は、粉砕ボウルの回転運動と1:約2の比率で逆回転する。粉砕ボウル内の粉砕ボールは、多重の回転運動、いわゆるコリオリの力の影響を受ける。ボールと粉砕ボウルの速度差により、摩擦力と衝撃力が相互作用し、高い動的エネルギーが放出される。これらの力の相互作用により、遊星ボールミルによる高度で非常に効果的な粉砕がもたらされる。
【0079】
最初に、未処理抽出物(CaCO、LiCO、Pr11、NaCO、およびSiO)のXRDを記録した(図27a)。次に、抽出物混合物を上記の遊星ボールミルで処理した(200rpmで4時間、図27b:XRPD)。粉末回折パターンは、標的相が存在しないことを示している(図27b)。したがって、粉砕中のエネルギー入力は、標的相を合成するのに十分でないと言える。エネルギー入力の正確な値を計算することはできない。
次に、粉末を空気中850℃で12時間焼結した。
【0080】
この工程の後、反応物混合物は標的相に反応した。2Θ=37.39°で最も強い反射は、13357カウントの強度を有する(図27c)。
この焼結工程の後、Pr3+に加えてPr4+が存在するため、粉末は茶色の体色を示す。後者は、フォーミング・ガス(H(5%)/N(95%))下、第2焼結工程(850℃で6時間)で還元される必要がある。
【0081】
この工程の後、図27dを参照すると、最も強い反射は、15423カウントの強度を有している。したがって、結晶化度は、この焼結工程によって増加させることができる。新たに粉砕すると、結晶化度が低下する(図27eを参照)。反射のカウント数は13576に減少する。
【0082】
第2の一連の実験では、従来の合成を使用して、CaLiSiO:Pr、Naを提供した。この目的のために、めのう乳鉢内で出発材料をアセトンと混合し、次に空気中850℃で12時間焼結した。次に、第2焼結工程をフォーミング・ガス下で実施した(図28a:XRPD)。最も強い反射は10964カウントの強度を有している。次に、粉末サンプルを上記のように粉砕した。
【0083】
特に200rpmで4時間粉砕した後、図28bを参照すると、観察された反射の強度は18665カウントに上昇した。その結果、結晶化度は、その後の粉砕によって大幅に増加し得る。さらに、種々の異相反射も粉砕中に消失することが観察できる。
【0084】
抽出物を事前に粉砕しても、その後の粉砕よりも標的相の結晶化度が高くなることはない。加えて、出発材料が焼結前に粉砕されている場合は、焼結工程後も異相反射が観察され得る。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23a
図23b
図24a
図24b
図24c
図25a
図25b
図25c
図26
図27a
図27b
図27c
図27d
図27e
図28a
図28b
【手続補正書】
【提出日】2024-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、
前記シリケート系材料は、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート材料であり、
前記ランタニドイオンでドープされた前記結晶性シリケート材料が、シクロシリケート、ピロシリケート、およびイノシリケートから選択され、
530nm未満の少なくとも1つの長波長の電磁放射エネルギーを、220~425nmの範囲の少なくとも1つのより短波長の電磁放射エネルギーに変換する、材料。
【請求項2】
i)前記結晶性シリケート材料がシリケートの水和物でな、請求項1記載のシリケート系材料。
【請求項3】
結晶化度が70%を超える、請求項1又は2記載のシリケート系材料。
【請求項4】
i)結晶性純相からなる結晶性シリケート材料であるシリケート系材料であ、請求項1~請求項のいずれか1項記載の材料、または
ii)シリカ系材料からなる結晶性シリケート材料であるシリケート系材料であり、前記シリカ系材料が、前記シリカ系材料の少なくとも90重量%を包含する少なくとも1つの結晶相からな、請求項1~請求項のいずれか1項記載の材料。
【請求項5】
前記結晶性シリケート材料が、理想一般式I:
1-x-y-zB*SiO:Ln x,,Ln z,
(式中、x=0.0001~0.05、z=0またはz=0.0001~0.3、およびy=x+zであり、
Aは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択され、
Bは、Li、Na、K、RbおよびCsから選択され、
B*は、Li、NaおよびKから選択され、Bは、B*と等しいか、または等しくな
Lnは、プラセオジム(Pr)、エルビウム(Er)、およびネオジム(Nd)から選択され、
任意のLnは、ガドリニウム(Gd)から選択される。)
から選択される、請求項1~請求項のいずれか1項記載のシリケート系材料。
【請求項6】
前記結晶性シリケート材料がプラセオジムでドープされている、請求項1~のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項7】
前記結晶性シリケート材料がプラセオジムでドープされ、かつガドリニウムで同時ドープされている、請求項1~請求項のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項8】
前記結晶性シリケート材料が、少なくとも1つのアルカリイオンおよび少なくとも1つの土類アルカリイオンを含むランタニドイオンでドープされた1つまたは複数の結晶性シリケートの固溶体である、請求項1~請求項のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項9】
前記結晶性シリケート材料が、理想一般式Ia:
1-x-y-zB*SiO:Pr、Gd Ia
(式中、A=Mg、Ca、Sr、Ba、およびB=Li、Na、K、Rb、Cs、および、
x=0.0001~0.05、z=0またはz=0.0001~0.3、およびy=x+z、
B*は、Li、NaおよびKから選択され、およびKは、前記シリケートの荷電平衡のために存在し、
Bは、B*と等しいか、または等しくない。)
から選択される、請求項1~請求項のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項10】
前記結晶性シリケート材料が、一般式II:
(Ca1-aSr1-2bLnNaLiSiO II
(式中、a=0.0001~1、b=0.0001~1であり、
Lnは、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンであ。)
から選択される、請求項1~請求項のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項11】
500nm未満の長波長の電磁放射エネルギーを、230nm~380nmの範囲の短波長の電磁放射エネルギーに変換する、請求項1~請求項10のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項12】
前記式IIの前記結晶性シリケート材料が、23°2Θ~27°2Θ、および34°2Θ~39.5°2Θの範囲のXRPDシグナルを有する、請求項1~請求項11のいずれか一項記載のシリケート系材料。
【請求項13】
以下:
i)少なくとも1つのランタニド塩、および/またはランタニド酸化物、
ii)シクロシリケート、ピロシリケート、およびイノシリケートから選択されるシリケート、
iii)リチウム塩または任意のリチウム化合物から選択され、かつ必要に応じてナトリウム塩およびカリウム塩から選択される少なくとも1つの土類アルカリ塩および少なくとも1つのアルカリ塩
を準備する工程と、
以下:
a)ミル粉砕によって前記i)、前記ii)および前記iii)を混合し、混合物を得る作業、または
b)非プロトン性の有機極性または非極性溶媒中で前記i)、前記ii)および前記iii)を混合し、混合物を得て、得られた前記混合物b)を600℃~1,000℃で焼成し、有機成分を除去する作業であり
を実施する工程と、
‐前記シリカ系材料の溶融温度より低い温度での焼成工程において、前記a)の混合物または前記b)の焼成混合物を焼成し、少なくとも部分結晶化を生じる工程と、
‐還元雰囲気下でのさらなる焼成工程において、前記ランタニドをLn3+イオンに還元する工程と、
‐シリケート系ランタニドイオンドープ材料を得る工程と、
を有し、
前記i)において、前記ランタニド酸化物および/または前記ランタニド塩中のランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択され、
前記ii)において、前記リチウム塩の塩が前記ii)から選択され、かつリチウムシリケートである、
シリケート系材料の製造方法。
【請求項14】
得られたシリケート系ランタニドイオンドープ材料を粉砕す、請求項13記載の方法。
【請求項15】
粉砕材料としてコランダムを使用して、100~500回転/分で1~6時間、得られたシリケート系材料にトライボロジー衝撃を与える、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項13~請求項15のいずれか一項記載の方法で得られる、長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのシリケート系ランタニドイオンドープ材料であり、
プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート材料であり、
前記ランタニドイオンでドープされた結晶性シリケート系材料が、少なくとも1つのアルカリイオンおよび少なくとも1つの土類アルカリイオンを含む1つまたは複数の結晶性シリケートの固溶体であり、
結晶化度が80%を超え、
必要に応じて、530nm未満の少なくとも1つの長波長の電磁放射エネルギーを、220~400nmの範囲の少なくとも1つの短波長の電磁放射エネルギーに変換する、シリケート系材料。
【請求項17】
自己消毒用途または微生物減少用途の、請求項1~請求項16のいずれか一項記載のシリケート系材料からなる組成物、箔またはフィルム。
【請求項18】
UV滅菌用途における、
表面のコーティングの添加剤、もしくは材料に表面をもたらす、前記材料の添加剤、または500nm未満の長波長の電磁放射エネルギーへの曝露下で、前記表面または前記コーティングを覆う微生物を不活化することができるコーティングとしての、
請求項1~請求項16のいずれか一項記載のシリケート系ランタニドイオンドープ材料の使用。