(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160358
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】コンタクトレンズパッケージ
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20241106BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20241106BHJP
A61L 12/04 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B65D77/20 E
G02C7/04
A61L12/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024137517
(22)【出願日】2024-08-19
(62)【分割の表示】P 2020067580の分割
【原出願日】2020-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】掛樋 奈穂子
(72)【発明者】
【氏名】フェルティ ヨランダ シマトゥパン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】テルペノイドの揮散や吸着を適切にコントロールし、装用感に優れたソフトコンタクトレンズを提供するためのコンタクトレンズパッケージを提供する。
【解決手段】密閉蓋付きの樹脂製容器と、該樹脂製容器に収容されたソフトコンタクトレンズと、該ソフトコンタクトレンズを浸漬し、(A)テルペノイド及び(B)非イオン性界面活性剤を含有するコンタクトレンズ包装液とを備える、コンタクトレンズパッケージであって、該コンタクトレンズパッケージが、高圧蒸気滅菌されたものであり、該(B)非イオン性界面活性剤の含有量が、該包装液全量に対して、0.01~0.1質量%であり、該密閉蓋の内面が平坦である場合の、該樹脂製容器に対する該包装液の充填率が、60%以上である、コンタクトレンズパッケージを提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉蓋付きの樹脂製容器と、
該樹脂製容器に収容されたソフトコンタクトレンズと、
該ソフトコンタクトレンズを浸漬し、(A)テルペノイド及び(B)非イオン性界面活
性剤を含有するコンタクトレンズ包装液とを備える、コンタクトレンズパッケージであって、
該コンタクトレンズパッケージが、高圧蒸気滅菌されたものであり、
該(B)非イオン性界面活性剤の含有量が、該包装液全量に対して、0.001~0.5質量%であり、
該密閉蓋の内面が平坦である場合の、該樹脂製容器に対する該包装液の充填率が、60%以上である、コンタクトレンズパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ包装液中のテルペノイドの安定性を高めたコンタクトレン
ズパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
日本におけるコンタクトレンズ装用人口は1,564万人(2018年(株)矢野経済
研究所)と言われている。その内、1ケ月以内で使い捨てるディスポーザブルタイプのソ
フトコンタクトレンズ装用者が増加しており、2019年における装用人口は1,449
万人と主流になっている。また、その使い捨てソフトコンタクトレンズ装用人口において
、41%が洗浄・消毒して一定期間使用する頻回交換のソフトコンタクトレンズであり、
59%がいわゆる洗浄・消毒が不要な1日使い捨てタイプのソフトコンタクトレンズ(以
下1DSCLと略記)である。この1DSCLがここまで増えた理由は、コンタクトレン
ズメーカーによる製造原価抑制によるところが大きい。一方で、コンタクトレンズの装用
感を向上させることや、コンタクトレンズ装用者が感じやすい乾きや掻痒感を抑制するこ
とが強く求められているものの、代表的なコンタクトレンズの装用感向上技術であるコー
ティングや表面処理は製造工数が増えることにより製造原価を押し上げる主因となってい
る。よって、製造原価抑制が必須である1DSCLにおいては、特にレンズ製造工数を増
やすことなく、装用感を向上させる技術が強く求められている(特許文献1)。
【0003】
一方、コンタクトレンズ包装液に、各種機能性成分を添加することで装用感を向上させ
る方法が知られている(特許文献2、非特許文献1)。しかしながら、包装液中の機能性
成分は、コンタクトレンズ装着時に結膜嚢内で涙液に拡散し、点眼後の薬物動態と同様に
涙液と共に、1~2分でその大部分が排出される。よって、当該機能性成分が装用感向上
をもたらす時間は8時間以上に及ぶ装用時間に対しあまりにも短い。また、コンタクトレ
ンズの構成ポリマーに物理的に吸着させることで効果が持続する高分子成分と製法が知ら
れているが、このような工数の多い特殊な製造方法は製造原価を押し上げるために1DS
CLには不適である。
【0004】
コンタクトレンズ装着時・装用中の不快感を抑制するために、1DSCL包装液にメン
トールを配合した製品が市販されていた(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5877793号公報
【特許文献2】特許第5247597号公報
【特許文献3】特許第5622589号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.B. Gorbet et al. Corneal epithelial cell biocompatibility to SiH & conventional hydrogel CL packaging solutions, Molecular Vision 2010; 16:272-282
【非特許文献2】シード1dayFine C(Cool)添付文書、2010年4月1日(新様式第1版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、当該製品のように、ポリプロピレン容器をアルミシールしたブリスター
パックという包装形態では、包装液中のテルペノイドが、製造工程にて実施される高圧蒸
気滅菌により揮散し、もしくはポリプロピレン容器やアルミシート接着面のポリエチレン
あるいはポリプロピレンに吸着することで、テルペノイドが大量に減少してしまうという
課題が生じることを新たに見出した。
【0008】
この課題を解決するために、あらかじめ過剰量のテルペノイドを添加しておくという方
法があり得るが、大量のテルペノイド添加により、ソフトコンタクトレンズそのものにも
大量のテルペノイドが吸着し、装用後にそれが涙液中に放出され、過剰なテルペノイドに
よる眼刺激が更なる課題となる。
【0009】
一方、包装容器として、テルペノイドの吸着が少ないガラス製容器を用いる包装形態も
ある。しかしながら、前述のように製造原価を低く抑えなければならない1DSCLにお
いて、1枚のソフトコンタクトレンズに対して、一瓶のガラス製容器を用いる包装形態は
採り得ず、事実上、ガラス瓶は使われていない。
【0010】
よって、本発明の目的は、テルペノイドの揮散や吸着を適切にコントロールし、装用感
に優れたソフトコンタクトレンズを提供するためのコンタクトレンズパッケージを提供す
ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者等が種々検討した結果、コンタクトレンズ包装液
に、一定量の非イオン性界面活性剤を含有させ、この包装液を包装容器に対して一定範囲
の充填率に調整することで、コンタクトレンズパッケージの製造過程におけるテルペノイ
ドの揮散・吸着を適切にコントロールすることができ、その結果、コンタクトレンズ装用
時・装用中の不快感を抑制しつつも過剰な刺激を与えないことを見出し、本発明を完成す
るに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げるコンタクトレンズパッケージを提供する。
[1]
密閉蓋付きの樹脂製容器と、
該樹脂製容器に収容されたソフトコンタクトレンズと、
該ソフトコンタクトレンズを浸漬し、(A)テルペノイド及び(B)非イオン性界面活
性剤を含有するコンタクトレンズ包装液とを備える、コンタクトレンズパッケージであっ
て、
該コンタクトレンズパッケージが、高圧蒸気滅菌されたものであり、
該(B)非イオン性界面活性剤の含有量が、該包装液全量に対して、0.001~0.
5質量%であり、
該密閉蓋の内面が平坦である場合の、該樹脂製容器に対する該包装液の充填率が、60
%以上である、コンタクトレンズパッケージ。
【0013】
コンタクトレンズパッケージに対する高圧蒸気滅菌は、無菌性の担保を図るため、通常
、高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)を用いて行われる。本明細書において、滅菌とは、
コンタクトレンズパッケージにおいて、生育可能な微生物が存在しない状態にするために
用いられる方法をいう。コンタクトレンズパッケージは、製造過程において、滅菌工程を
経て、製品化される。
【0014】
ソフトコンタクトレンズを収容したコンタクトレンズパッケージは、通常、ポリプロピ
レン等の樹脂製容器を密閉蓋によりヒートシールした構造を有している。収容されている
ソフトコンタクトレンズは、乾燥を防ぐ等の目的のため、コンタクトレンズ包装液に浸漬
されている。
【0015】
このコンタクトレンズ包装液にテルペノイドを配合する場合、当該成分は揮発性を有す
るため、オートクレーブを用いた滅菌条件ではコンタクトレンズパッケージ内でテルペノ
イドが揮発し、更に、時間経過により樹脂製容器や密閉蓋に吸着され、包装液中のテルペ
ノイド含量が大量に減少してしまうという新たな課題が見出された。
【0016】
本発明のコンタクトレンズパッケージによると、(B)非イオン性界面活性剤の含有量
が、包装液全量に対して、0.001~0.5質量%であるため、ソフトコンタクトレン
ズを収容したコンタクトレンズパッケージを高圧蒸気滅菌した場合であっても、テルペノ
イドの揮散を抑制し、及び/又は、包装容器等へ利用される樹脂への吸着を抑制すること
が可能となる。また、包装液に、テルペノイドと共に、非イオン性界面活性剤を含有させ
ることにより、非イオン性界面活性剤がテルペノイドを抱合することで、テルペノイドの
角結膜の冷感レセプターへの結合を緩やかにして、これにより、テルペノイドによる不快
感抑制を長く持続させながらも、装用初期の過剰な冷感ピークを緩やかにすることが可能
となる。
【0017】
また、本発明のコンタクトレンズパッケージによると、密閉蓋の内面が平坦である場合
の、樹脂製容器に対する包装液の充填率が、60%以上である。従来、市販されているコ
ンタクトレンズパッケージでは、樹脂製容器に対する包装液の充填率は製品によって様々
である。充填率が60%を下回る製品も存在し、充填率を高める目的は明確にされていな
い。本発明によると、樹脂製容器に対する包装液の充填率を一定以上に高めることにより
、包装液に配合されているテルペノイドの気相部分への揮散を、他の構成と相俟って顕著
に抑制することが可能となる。
【0018】
[2]
高圧蒸気滅菌後の前記包装液における(A)テルペノイドの含有量が、0.00005
~0.015質量%である、[1]に記載のコンタクトレンズパッケージ。
【0019】
本発明のコンタクトレンズパッケージによると、高圧蒸気滅菌した場合であっても、テ
ルペノイドの揮散を抑制し、及び/又は、包装容器等へ利用される樹脂への吸着を抑制す
ることが可能となり、コンタクトレンズの装用時にテルペノイドによる官能が快適な濃度
に維持される。テルペノイドが上記の含有量で維持されることによって、上述した通り、
非イオン性界面活性剤による抱合により、テルペノイドの角結膜の冷感レセプターへの結
合を緩やかにして、これにより、テルペノイドによる不快感抑制を長く持続させながらも
、装用初期の過剰な冷感ピークを緩やかにすることが可能となる。
【0020】
[3]
高圧蒸気滅菌後の包装液における(A)テルペノイド1質量部に対する、(B)非イオ
ン性界面活性剤の含有量が、0.2~2000質量部である、[1]又は[2]に記載の
コンタクトレンズパッケージ。
【0021】
本発明によると、高圧蒸気滅菌後の包装液では、テルペノイドが適切に維持されている
ため、非イオン性界面活性剤による抱合を効率的に行うことで、コンタクトレンズ装用時
の官能を高めることが可能となる。
【0022】
[4]
前記樹脂製容器における樹脂が、熱可塑性樹脂である、[1]~[3]のいずれか1に
記載のコンタクトレンズパッケージ。
【0023】
樹脂製容器における樹脂が、熱可塑性樹脂である場合、当該樹脂の構成ポリマーが高圧
蒸気滅菌による影響を受けやすく、樹脂製容器へのテルペノイドの吸着という上記課題が
顕著に生じる。
【0024】
[5]
前記密閉蓋における前記樹脂製容器との接触面が、熱可塑性樹脂を有する、[1]~[
4]のいずれか1に記載のコンタクトレンズパッケージ。
【0025】
密閉蓋における前記樹脂製容器との接触面が、熱可塑性樹脂を有する場合、当該樹脂の
構成ポリマーが高圧蒸気滅菌による影響を受けやすく、密閉蓋へのテルペノイドの吸着と
いう上記課題が顕著に生じる。
【0026】
[6]
前記密閉が、ヒートシール処理によりなされたものである、[1]~[5]のいずれか
1に記載のコンタクトレンズパッケージ。
【0027】
コンタクトレンズパッケージの蓋部材では、多くの場合、少なくとも樹脂製容器との接
触面が樹脂を有するよう構成されており、ヒートシール処理により蓋部材と樹脂製容器と
の接触面が密閉される。
【0028】
[7]
前記高圧蒸気滅菌の条件が、高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)を用いて100℃~1
50℃で5~30分間行うことである、[1]~[6]のいずれか1に記載のコンタクト
レンズパッケージ。
【0029】
高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)の条件は、コンタクトレンズパッケージの製造におい
て用いられる条件であれば特に制限されない。高圧蒸気滅菌の条件としては、115℃に
て30分間、121℃にて20分間、126℃にて15分間、又は、134℃にて10分
間等が利用されている。
【0030】
[8]
前記(B)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類
、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンヒマシ油類、ポロクサマー類
及びモノステアリン酸ポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種
である、[1]~[7]のいずれか1に記載のコンタクトレンズパッケージ。
【0031】
テルペノイドの揮散を抑制し、及び/又は、包装容器等へ利用される樹脂への吸着を抑
制する観点、並びに、非イオン性界面活性剤によるテルペノイドの抱合を効率的に行うこ
とで、コンタクトレンズ装用時の官能を高める観点から、非イオン性界面活性剤が好まし
く用いられる。上記の非イオン性界面活性剤は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、
好ましく用いられる。
【0032】
[9]
前記包装液が、更に、緩衝剤を含有する、[1]~[8]のいずれか1に記載のコンタ
クトレンズパッケージ。
【0033】
テルペノイドの揮散を抑制し、及び/又は、包装容器等へ利用される樹脂への吸着を抑
制する観点から、コンタクトレンズ包装液には、更に、緩衝剤を含有させることが好まし
い。
【0034】
[10]
前記緩衝剤が、リン酸緩衝剤、及び/又は、ホウ酸緩衝剤である、[9]に記載のコン
タクトレンズパッケージ。
【0035】
上記の緩衝剤は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましく用いられる。
【0036】
また、本発明は、下記に掲げるコンタクトレンズパッケージの製造方法を提供する。
【0037】
[11]
コンタクトレンズパッケージの製造方法であって、
樹脂製容器に、ソフトコンタクトレンズと、(A)テルペノイド及び(B)非イオン性
界面活性剤を含有するコンタクトレンズ包装液とを収容する工程、
該樹脂製容器を蓋により密閉する工程、
該密閉蓋付きの樹脂製容器を高圧蒸気滅菌する工程を備え、
該高圧蒸気滅菌前における(A)テルペノイド1質量部に対する、(B)非イオン性界
面活性剤の含有量が、0.001~200質量部であり、
該密閉蓋の内面が平坦である場合の、該樹脂製容器に対する該包装液の充填率が、60
%以上である、コンタクトレンズパッケージの製造方法。
【0038】
本発明の製造方法において、高圧蒸気滅菌前におけるテルペノイドと非イオン性界面活
性剤との含有量の比率を調整することにより、製造過程におけるテルペノイドの揮散・吸
着を適切にコントロールすることができる。
【0039】
[12]
高圧蒸気滅菌後の前記包装液における(A)テルペノイドの残存率が、3%以上である
、[11]に記載の製造方法。
【0040】
本発明の製造方法によると、製造過程におけるテルペノイドの揮散・吸着を適切にコン
トロールすることができるため、高圧蒸気滅菌後の包装液におけるテルペノイドの残存率
を効果的に高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0041】
本発明により、コンタクトレンズパッケージにおいて、テルペノイドを含有するコンタ
クトレンズ浸漬液を用いた場合であっても、テルペノイドの揮散・吸着を適切にコントロ
ールすることができ、コンタクトレンズ装用時又は装用中の不快感を抑制することが可能
となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、本発明に係るコンタクトレンズパッケージの一例を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るコンタクトレンズパッケージの一例であり、一部、蓋を剥がした状態を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るコンタクトレンズパッケージから、蓋を剥がした状態の一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、試験例1のコンタクトレンズパッケージにおける、高圧蒸気滅菌後のメントール残存率の結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、試験例2のコンタクトレンズパッケージにおける、高圧蒸気滅菌後のメントール残存率の結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、試験例3のコンタクトレンズパッケージにおける、高圧蒸気滅菌後のメントール残存率の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0044】
[コンタクトレンズパッケージ]
本発明のコンタクトレンズパッケージ1は、例えば、
図1に示すように、密閉蓋2付き
の樹脂製容器3と、該樹脂製容器3に収容されたソフトコンタクトレンズ4と、該ソフト
コンタクトレンズ4を浸漬し、(A)テルペノイド及び(B)非イオン性界面活性剤を含
有するコンタクトレンズ包装液5とを備える。
【0045】
本明細書において、コンタクトレンズパッケージとは、樹脂製容器にコンタクトレンズ
が収容され、コンタクトレンズ包装液と共にパッケージング(包装)されたコンタクトレ
ンズ製品をいう。上述の通り、コンタクトレンズパッケージは無菌性を担保するため、高
圧蒸気滅菌に供される。
【0046】
(コンタクトレンズ包装液)
コンタクトレンズ包装液は、少なくとも、(A)テルペノイド及び(B)非イオン性界
面活性剤を含有する。
【0047】
(A)テルペノイド
テルペノイドとしては、例えば、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲ
ラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモ
ネン、リナロール、酢酸リナリル、及びこれらの誘導体等が挙げられる。なお、これらの
化合物はd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0048】
これらの中で、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、及びゲラニオールか
らなる群より選択される少なくとも1種のテルペノイドが好ましく、装用感を向上させる
観点から、メントール及び/又はカンフルがより好ましい。これらを含有する精油として
は、クールミント、ペパーミント油、ハッカ油、樟脳油、ローズ油等が例示される。
【0049】
より具体的には、メントール、またはカンフルを使用する場合は、装用感を向上させる
観点から、l-メントール、dl-メントール、d-カンフル及びdl-カンフルを使用
することが好ましく、l-メントール及びd-カンフル、dl-カンフルが更に好ましく
、l-メントールが特に好ましい。
【0050】
テルペノイドの含有量は、高圧蒸気滅菌後の包装液全量に対して、例えば、0.000
05~0.015質量%が好ましく、0.00006~0.014質量%がより好ましく
、0.00007~0.013質量%が更に好ましく、0.00008~0.012質量
%が更に好ましく、0.00009~0.011質量%が特に好ましく、0.0001~
0.01質量%が最も好ましい。
【0051】
(B)非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限
り、特に制限されない。
このような非イオン性界面活性剤として、具体的には、ポリオキシエチレン(以下、P
OEともいう。)-ポリオキシプロピレン(以下、POPともいう。)ブロックコポリマ
ー(例えば、ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188などのポロ
クサマー類);ポロキサミンなどのエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマ
ー付加物;モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノオレ
イン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、POEソルビタンモノステア
レート(ポリソルベート60)、POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート6
5)などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE硬化ヒマシ油5、POE硬化ヒマ
シ油10、POE硬化ヒマシ油20、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油50
、POE硬化ヒマシ油60、POE硬化ヒマシ油100などのPOE硬化ヒマシ油類;P
OEヒマシ油3、POEヒマシ油10、POEヒマシ油35などのPOEヒマシ油類;P
OE(9)ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(
4)セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフ
ェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類;ステアリン酸ポリオキシル4
0などのモノステアリン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。なお、括弧内の数
字は付加モル数を示す。
【0052】
これらの中で、テルペノイドの揮散を効果的に抑制し、及び/又は、包装容器等へ利用
される樹脂への吸着を効果的に抑制する観点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸
エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンヒマシ油類、ポロ
クサマー類、及び、モノステアリン酸ポリエチレングリコールからなる群より選択される
少なくとも1種が好ましく、ポロクサマー407、ポロクサマー188、ポリオキシエチ
レンヒマシ油10、ポリオキシエチレンヒマシ油35、ポリソルベート80、ポリオキシ
エチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、及び、ステアリン酸
ポリオキシル40からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、ポリソルベ
ート80、及び/又は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が更に好ましい。
【0053】
これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に
組み合わせて使用してもよい。
【0054】
非イオン性界面活性剤の含有量は、テルペノイドの揮散を効果的に抑制し、及び/又は
、包装容器等へ利用される樹脂への吸着を効果的に抑制する観点から、包装液全量に対し
て、0.001~0.5質量%であり、0.002~0.4質量%が好ましく、0.00
3~0.3質量%がより好ましく、0.004~0.2質量%が更に好ましい。
【0055】
高圧蒸気滅菌後の包装液におけるテルペノイド1質量部に対する、非イオン性界面活性
剤の含有量は、非イオン性界面活性剤による抱合を効率的に行い、コンタクトレンズ装用
時の官能を高める観点から、例えば、0.2~2000質量部とすることができ、0.5
~1800質量部が好ましく、1~1500質量部がより好ましく、2~1200質量部
が更に好ましく、5~1000質量部が特に好ましい。
【0056】
また、高圧蒸気滅菌前の包装液におけるテルペノイド1質量部に対する、非イオン性界
面活性剤の含有量は、非イオン性界面活性剤による抱合を効率的に行い、コンタクトレン
ズ装用時の官能を高める観点から、0.001~200質量部であり、0.005~18
0質量部が好ましく、0.01~150質量部がより好ましく、0.05~130質量部
が更に好ましく、0.1~110質量部が特に好ましい。
【0057】
また、高圧蒸気滅菌後の前記包装液における(A)テルペノイドの残存率は、例えば、
3%以上とすることができ、3.1%以上が好ましく、3.2%以上がより好ましく、3
.3%以上が更に好ましく、3.5%以上が特に好ましく、4%以上が最も好ましい。
【0058】
(C)緩衝剤
コンタクトレンズ包装液は、テルペノイドの揮散を抑制し、及び/又は、包装容器等へ
利用される樹脂への吸着を抑制する観点から、更に緩衝剤を含有することが好ましい。
【0059】
緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤
等を使用することができる。
【0060】
リン酸緩衝剤としては、例えば、リン酸、又は、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカ
リ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。
【0061】
ホウ酸緩衝剤としては、例えば、ホウ酸、又は、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカ
リ土類金属塩等のホウ酸塩を使用することができる。
【0062】
これらの中で、本発明の効果を顕著に奏する観点から、リン酸緩衝剤、及び/又は、ホ
ウ酸緩衝剤が好ましく、リン酸、及び/又は、ホウ酸がより好ましい。
【0063】
これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使
用してもよい。
【0064】
緩衝剤の含有量は、テルペノイドの揮散を効果的に抑制し、及び/又は、包装容器等へ
利用される樹脂への吸着を効果的に抑制する観点から、包装液全量に対して、0.01~
1質量%であり、0.02~0.9質量%が好ましく、0.03~0.8質量%がより好
ましく、0.04~0.7質量%が更に好ましい。
【0065】
(他の配合成分)
コンタクトレンズ包装液は、上述の各成分の他に、(B)成分以外の界面活性剤、等張
化剤、増粘剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、水等の水性溶媒を配合することがで
きる。これらの成分は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用
してもよい。
【0066】
(B)成分以外の界面活性剤としては、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、又は
陰イオン性界面活性剤が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルジアミノエチル
グリシン等が挙げられ、陽イオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベ
ンゼトニウム等が挙げられる。また、陰イオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼン
スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α-スルホ
メチルエステル、及びα-オレフィンスルホン酸等が挙げられる。
【0067】
例えば、等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、プロピレン
グリコール、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、ホウ砂等が挙げられる。また、コ
ンタクトレンズ素材の膨潤を制御する観点から、等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩
化カリウムが好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。また、同様の観点から、コンタ
クトレンズ包装液中の等張化剤の濃度は、0.2~5(w/v)%が好ましく、0.5~
2(w/v)%がより好ましい。
【0068】
増粘剤としては、アラビアガム末、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリ
コールエステル、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ソルビトール、デキストラン70、ト
ラガント末、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロ
ース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルア
ルコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴール4000等が挙げられる。
【0069】
キレート剤としては、エデト酸、エデト酸塩類(エデト酸二ナトリウム、エデト酸カル
シウム二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム)、ニトリロ三酢酸
及びその塩、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ヘキサメタリン酸ソーダ、クエン酸等
が挙げられる。
【0070】
安定化剤としては、上述のエデト酸及びエデト酸塩類や、亜硫酸水素ナトリウム等が挙
げられる。
【0071】
pH調節剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、硫酸、酢酸等が挙げ
られる。
【0072】
コンタクトレンズ包装液の製造方法は、特に限定されず、当業者が一般的に実施する方
法で行うことが可能である。例えば、滅菌した精製水等に、上述した各成分を所定の濃度
となるように添加して均一に溶解し、pHを調整すること等により得ることができる。
【0073】
(コンタクトレンズ)
コンタクトレンズとしては、米国食品医薬品局(FDA)基準によるソフトコンタクト
レンズ分類グループI~IVに分類される、いずれであっても用いることができる。これ
らの中で、グループI(含水率が50%未満、非イオン性)、グループII(含水率が5
0%以上、非イオン性)、又は、グループIV(含水率が50%以上、イオン性)に属す
るコンタクトレンズが好ましく、グループI又はグループIVがより好ましく、製造原価
抑制等の観点から、グループIに分類されるコンタクトレンズが更に好ましい。非イオン
性とは、コンタクトレンズにおけるイオン性成分の含有率が1mol%未満であることを
言う。
【0074】
また、コンタクトレンズの米国認証名(United States Approve
d Names、USAN)では、メタフィルコン(methafilcon)、オマフ
ィルコン(omafilcon)、ステンフィルコン(Stenfilcon)、ソモフ
ィルコン(Somofilcon)、アルファフィルコン(Alfafilcon)、テ
トラフィルコン(tetrafilcon)、オキュフィルコン(ocufilcon)
、ネルフィルコン(nelfilcon)、ネフィルコン(nefilcon)、フェム
フィルコン(phemfilcon)、ポリマコン(polymacon)、ヒラフィル
コン(hilafilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、及びエタフ
ィルコン(etafilcon)からなる群より選択される少なくとも1種が特に好まし
く、ネルフィルコン(nelfilcon)A、エタフィルコン(etafilcon)
A、メタフィルコン(methafilcon)A、オマフィルコン(omafilco
n)A、テトラフィルコン(tetrafilcon)A、及びオキュフィルコン(oc
ufilcon)Bからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0075】
また、コンタクトレンズとしては、ハイドロゲルとして2-ヒドロキシエチルメタクリ
レート(HEMA)を含有するハイドロゲルコンタクトレンズが好適に使用される。
【0076】
コンタクトレンズとしては、ネルフィルコン(nelfilcon)A、又は、エタフ
ィルコン(etafilcon)Aが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、特に好ま
しい。
【0077】
また、コンタクトレンズパッケージの種類の一例としては、ワンデーディスポーザブル
コンタクトレンズ(1日使い捨てレンズ)、頻回交換レンズ(例えば14日間ごと)、連
続装用ディスポーザブルコンタクトレンズ(例えば1週間ごと)などのディスポーザブル
コンタクトレンズ、従来型レンズ(定期交換ソフトコンタクトレンズを含む)のいずれで
あってもよい。特に、本発明においては、製造原価抑制が必要とされ、レンズ製造工数を
増やすことなく、装用感を向上させる観点から、ディスポーザブルコンタクトレンズが好
ましく、ワンデーディスポーザブルコンタクトレンズ、又は、頻回交換レンズが更に好ま
しく、ワンデーディスポーザブルコンタクトレンズが特に好ましい。
【0078】
[コンタクトレンズパッケージの製造方法]
次に、コンタクトレンズパッケージの製造方法の一例を説明する。なお、コンタクトレ
ンズの製造方法は、以下に示す方法に限定されず、従来公知の方法であれば、どのような
方法であっても良い。
【0079】
図1に示すように、コンタクトレンズパッケージ1は、樹脂製容器3に、ソフトコンタ
クトレンズ4と、コンタクトレンズ包装液5とを収容する。具体的には、樹脂製容器3に
、コンタクトレンズ包装液5を添加し、ソフトコンタクトレンズ4を浸漬させる。
【0080】
樹脂製容器3における樹脂は、コンタクトレンズパッケージ1で用いることができる素
材であれば特に制限されないが、当該樹脂の構成ポリマーが高圧蒸気滅菌による影響を受
けやすく、樹脂製容器へのテルペノイドの吸着という上記課題が顕著に生じる観点から、
例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0081】
熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(ポリエチレン(PE)、(低密度ポリエチレ
ン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)を含む)、ポリプロピレン、環状オレフィ
ン・コポリマー(COC)等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポ
リブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート等)、ポリフェニレンエーテル系
樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、硬質塩化ビニ
ル樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体
(ABS樹脂)を含むアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)等)等が挙げら
れる。
【0082】
これらの中でも、上記課題が顕著に生じる観点から、熱可塑性樹脂としては、例えば、
オレフィン系樹脂、又は、ポリエステル系樹脂が用いられ、ポリエチレン、ポリエチレン
テレフタレート、環状オレフィン・コポリマー(COC)、又は、ポリプロピレンが用い
られる。熱可塑性樹脂としてポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィ
ン・コポリマー(COC)、又は、ポリプロピレンを用いる場合には、これらが、樹脂全
体の50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有し
ていればよい。
【0083】
次いで、上述の樹脂製容器3を、蓋2により密閉する。コンタクトレンズパッケージの
形状に限定はされないが、樹脂製容器3が蓋2により密閉され、ブリスターパック形状を
有していることが好ましい。
【0084】
蓋2の材質は、コンタクトレンズパッケージ1で用いることができる素材であれば特に
制限されないが、例えば、アルミフィルム等が挙げられる。
【0085】
密閉蓋2における前記樹脂製容器3との接触面が、熱可塑性樹脂を有することが好まし
い。熱可塑性樹脂を有する部分は、蓋2の全面であってもよく、密閉がなされる態様であ
れば一部分であってもよい。蓋2における熱可塑性樹脂は、樹脂製容器3において上述の
熱可塑性樹脂を同様に用いることが可能である。
【0086】
限定はされないが、樹脂製容器3を蓋2にて被覆し、ヒートシール(熱溶着)処理によ
り密閉されることが好ましい。密閉蓋2における前記樹脂製容器3との接触面において、
樹脂製容器3と蓋2の素材が共に熱可塑性樹脂であれば熱溶着が効果的に行われるため、
容器密閉性の観点から好ましい。この場合、樹脂製容器3と蓋2の素材が異なる種類の熱
可塑性樹脂であってもよく、
【0087】
図2に示すように、コンタクトレンズパッケージ1から、コンタクトレンズ4を取り出
す際には、蓋2を剥がす必要がある。蓋2を完全に剥がした状態を
図3に示す。蓋2を剥
がす利便性の観点から、密閉蓋2における前記樹脂製容器3との接触面のうち、剥がし口
を除く部分に熱可塑性樹脂を有することが好ましい。
【0088】
オートクレーブによる高圧蒸気滅菌を行うことにより、コンタクトレンズパッケージが
製造される。
【0089】
包装液に配合されているテルペノイドの気相部分への揮散を、他の構成と相俟って顕著
に抑制する観点から、密閉蓋2の内面が平坦である場合の、樹脂製容器3に対する包装液
の充填率は、60%以上とすることができ、65%以上が好ましく、70%以上がより好
ましく、75%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。上記充填率の上限値は
、本発明の効果を奏する限り限定されず、100%以下、99%以下、98%以下、97
%以下、96%以下、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、
90%以下等が挙げられる。
【0090】
上記充填率の測定方法としては、密閉蓋2の内面が平坦である場合の、樹脂製容器3に
おける最大容量を求め、当該最大容量に対するコンタクトレンズ包装液5の液量が占める
割合を求めることで算出できる。例えば、最大容量が1mLの容器であった場合、ソフト
コンタクトレンズを容器から取り出し、コンタクトレンズ包装液の液量が0.6mLであ
れば、充填率は60%となる。
【実施例0091】
[試験例1.コンタクトレンズ包装液中のメントール安定性試験1]
コンタクトレンズ包装液における非イオン性界面活性剤の含有量が与える影響を評価し
た。
下記表1の処方のコンタクトレンズ包装液を常法により調製し、ポリプロピレン(PP
)製の樹脂製容器(最大容量5mL、品名:TSE-5ML(PP)、大成化工株式会社
製)に、各3mL(充填率60%)ずつ各N=10で充填し、コンタクトレンズ(1da
yフレッシュビュー ロート製薬社製)を浸漬させ、蓋(PP製キャップ(品名:TSC
-16×19)にPE製中栓(TPG-8.2×16(N))の組み合わせ、大成化工株
式会社製)にて密閉を行い、121℃20分オートクレーブにかけてコンタクトレンズパ
ッケージを製造した。オートクレーブ前後に重量を測定した。また、オートクレーブ前後
のl-メントール含量を測定した。結果を
図4に示す。
図4において、縦軸は、オートク
レーブ前後のl-メントール含量から算出されるl-メントールの残存率(%)を示す。
【0092】
【0093】
l-メントール含量は、以下の分析条件により算出した。下記、試験例においても同様
である。
<分析条件>
検出器:水素炎イオン化検出器
カラム:Agilent DB-WAX(0.53×300mm、1μm)
カラム温度:100℃から160℃になるまで1分間に3℃の割合で温度を上昇、その
後試料溶液のみ220℃になるまで1分間に10℃の割合で温度を上昇。
キャリアガス:ヘリウム
流速:l-メントールの流出時間が約10分
注入量:2μL
注入方法:スプリット(スプリット比1:5)
注入口温度;230℃
【0094】
図4に示すように、コンタクトレンズ包装液に非イオン性界面活性剤を含有させること
により、コンタクトレンズパッケージにおけるメントールの残存率を効果的に高められる
ことが確認された。
【0095】
[試験例2.コンタクトレンズ包装液中のメントール安定性試験2]
容器に対するコンタクトレンズ包装液の充填率、及び、高圧蒸気滅菌前のメントール含
量が、コンタクトレンズパッケージにおけるメントールの残存量に与える影響を評価した
。
下記表2の処方のコンタクトレンズ包装液を常法により調製し、ポリプロピレン(PP
)製の樹脂製容器(最大容量5mL、品名:TSE-5ML(PP)、大成化工株式会社
製)に各1.5mL(充填率30%、比較例2-1)、3mL(充填率60%、実施例2
-1)、及び、3.75mL(充填率75%、実施例2-2)ずつ各N=10で充填し、
コンタクトレンズ(ロート1dayフレッシュビュー、ロート製薬株式会社製)を浸漬さ
せ、蓋(PP製キャップ(品名:TSC-16×19)にPE製中栓(TPG-8.2×
16(N))の組み合わせ、大成化工株式会社製)にて密閉を行い、121℃20分オー
トクレーブにかけてコンタクトレンズパッケージを製造した。オートクレーブ前後に重量
を測定した。また、オートクレーブ前後のl-メントール含量を測定した。結果を
図5に
示す。
図5において、縦軸は、オートクレーブ前後のl-メントール含量から算出される
l-メントールの残存率(%)を示す。
【0096】
【0097】
図5に示すように、樹脂製容器に対する包装液の充填率を60%以上とすることにより
、コンタクトレンズパッケージにおけるメントールの残存率を効果的に高められることが
確認された。
【0098】
[試験例3.コンタクトレンズ包装液中のメントール安定性試験3]
容器に対するコンタクトレンズ包装液の充填率、及び、緩衝剤の種類が、コンタクトレ
ンズパッケージにおけるメントールの残存量に与える影響を評価した。
下記表3の処方のコンタクトレンズ包装液を常法により調製し、ポリプロピレン(PP
)製の樹脂製容器(最大容量5mL)に各1.5mL(充填率30%、比較例3-1)、
3mL(充填率60%、実施例3-1)、及び、3.75mL(充填率75%、実施例3
-2)ずつ各N=10で充填し、コンタクトレンズ(ロート1dayフレッシュビュー、
ロート製薬株式会社製)を浸漬させ、ポリエチレン製の蓋にて密閉を行い、121℃20
分オートクレーブにかけてコンタクトレンズパッケージを製造した。オートクレーブ前後
に重量を測定した。また、オートクレーブ前後のl-メントール含量を測定した。結果を
図6に示す。
図6において、縦軸は、オートクレーブ前後のl-メントール含量から算出
されるl-メントールの残存率(%)を示す。
【0099】
【0100】
図6に示すように、コンタクトレンズ包装液に緩衝剤としてホウ酸又はリン酸を含有さ
せることにより、コンタクトレンズパッケージにおけるメントールの残存率を効果的に高
められることが確認された。
【0101】
下記表4に記載の処方、包装形態により、コンタクトレンズパッケージを製造し、オー
トクレーブ後のメントール残存率と、取り出したコンタクトレンズの装用感を評価した。
結果を表4に合わせて示す。
【0102】
装用感の官能評価は、以下の基準にて行った。
◎:コンタクトレンズパッケージから取り出したコンタクトレンズを装用した際のメン
トールによる清涼感を、比較例01と同等に感じる
○:コンタクトレンズパッケージから取り出したコンタクトレンズを装用した際のメン
トールによる清涼感が、比較例01には劣るものの感じられる
清涼感不足:メントールが揮散・吸着してしまい、メントールによる清涼感が感じられ
ない
過剰刺激:メントールによる刺激感が感じられ、清涼感として感じられない
【0103】
オートクレーブ後のメントール残存率の評価は、以下の基準にて行った。
◎:4%以上
○:3~4%
△:2~3%
×:2%未満
【0104】