(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160362
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】歯列ファントムモデル、これを用いたスキャナーのスキャニング精度評価方法およびこれを用いた3Dプリンティング精度評価方法{Phantom model of teeth set, method of evaluating scanning precision of scanner using the same and method of evaluating 3D printing precision using the same}
(51)【国際特許分類】
G09B 23/30 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G09B23/30
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024137866
(22)【出願日】2024-08-19
(62)【分割の表示】P 2023500285の分割
【原出願日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0123332
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】323009689
【氏名又は名称】オーディーエス カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】シム ミヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンボム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スキャナーのスキャニング精度を精密に評価できる歯列ファントムモデルを提供する。
【解決手段】歯列ファントムモデル100は、第1ベース層110および第2ベース層120からなるベース層および該ベース層上に配置されたもので、歯の模型を含む歯列層130を含み、前記歯の模型は、ある一方向から観察された形状が残りの他の方向から観察された形状とそれぞれ異なるように構成される。
【選択図】
図1aa
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層;および
前記ベース層上に配置されたもので、歯の模型を含む歯列層を含み、
前記歯の模型は、ある一方向から観察された形状が残りの他の方向から観察された形状とそれぞれ異なるように構成された歯列ファントムモデル。
【請求項2】
前記歯の模型は、三次元位置データが構築されたものであることを特徴とする請求項1に記載の歯列ファントムモデル。
【請求項3】
前記歯列ファントムモデルは、複数の歯の模型を含み、前記各歯の模型は、任意の方向から観察された形状が任意の方向から観察された残りの他の歯の模型の形状とそれぞれ異なるように構成された請求項1に記載の歯列ファントムモデル。
【請求項4】
前記各歯の模型は、前記歯列ファントムモデルの正面、背面、平面、左側面および右側面の形状から観察された形状が残りの他の歯の模型の対応形状とそれぞれ異なるように構成された請求項3に記載の歯列ファントムモデル。
【請求項5】
前記ベース層は、人の歯茎形態に形象化されたものであることを特徴とする請求項1に記載の歯列ファントムモデル。
【請求項6】
前記ベース層は第1ベース層および第2ベース層を含み、前記第2ベース層は前記第1ベース層上に段差をつけて形成され、前記歯列層は前記第2ベース層上に配置されたものであることを特徴とする請求項1に記載の歯列ファントムモデル。
【請求項7】
前記ベース層および前記歯の模型のうち、少なくとも一つに配置されたパターンをさらに含むものであることを特徴とする請求項1に記載の歯列ファントムモデル。
【請求項8】
前記ベース層および前記歯の模型は、金属を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の歯列ファントムモデル。
【請求項9】
CADプログラムを用いて三次元位置データを有する仮想の歯列ファントムモデルを作図する段階(S10-1);
前記作図された仮想の歯列ファントムモデルに従って3D加工法で実際の歯列ファントムモデルを製造する段階(S20-1);
前記製造された実際の歯列ファントムモデルを非接触式口腔外スキャナーでスキャニングしてスキャンデータを獲得する段階(S30-1);および
前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータを前記仮想の歯列ファントムモデルの三元位置データと比較して前記非接触式口腔外スキャナーのスキャニング精度を評価する段階(S40-1)を含むスキャナーのスキャニング精度評価方法
【請求項10】
前記段階(S20-1)と前記段階(S30-1)の間に、前記段階(S20-1)で製造された実際の歯列ファントムモデルを接触式口腔外スキャナーでスキャニングして前記実際の歯列ファントムモデルの三次元位置データを獲得する段階(S25)をさらに含み、前記段階(S40-1)は前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータを前記仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較する代わりに、前記実際の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較して前記非接触式口腔外スキャナーのスキャニング精度を評価することを特徴とする請求項9に記載のスキャナーのスキャニング精度評価方法。
【請求項11】
前記段階(S40-1)以降に、前記段階(S20-1)で製造された実際の歯列ファントムモデルを口腔スキャナーでスキャニングしてスキャンデータを獲得する段階(S50-1)および前記獲得された口腔スキャナーのスキャンデータを前記段階(S30-1)で獲得された前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータと比較して前記口腔スキャナーのスキャニング精度を評価する段階(S60-1)をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のスキャナーのスキャニング精度評価方法。
【請求項12】
前記仮想の歯列ファントムモデルおよび前記実際の歯列ファントムモデルは一つ以上の歯の模型を含む請求項9に記載のスキャナーのスキャニング精度評価方法。
【請求項13】
前記実際の歯列ファントムモデルは請求項1ないし請求項7のいずれかによる 請求項12に記載の歯列ファントムモデルであるスキャナーのスキャニング精度評価方法。
【請求項14】
前記仮想の歯列ファントムモデルおよび前記実際の歯列ファントムモデルは歯の模型を含まない請求項9に記載のスキャナーのスキャニング精度評価方法。
【請求項15】
CADプログラムを用いて三次元位置データを有する仮想の歯列ファントムモデルを作図する段階(S10-2);
前記作図された仮想の歯列ファントムモデルに従って3Dプリンティングして実際の歯列ファントムモデルを製造する段階(S20-2);
前記製造された実際の歯列ファントムモデルをスキャナーでスキャニングしてスキャンデータを獲得する段階(S30-2);および
前記スキャナーのスキャンデータを前記仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較して前記3Dプリンティングの精度を評価する段階(S40-2)を含む3Dプリンティング精度評価方法。
【請求項16】
前記スキャナーは、接触式または非接触式口腔または口腔外スキャナーであることを特徴とする請求項15に記載の3Dプリンティング精度評価方法。
【請求項17】
前記仮想の歯列ファントムモデルおよび実際の歯列ファントムモデルは一つ以上の歯の模型を含む請求項15に記載の3Dプリンティング精度評価方法。
【請求項18】
前記実際の歯列ファントムモデルは、請求項1ないし請求項7のいずれかによる歯列ファントムモデルである請求項17に記載の3Dプリンティング精度評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
歯列ファントムモデル、これを用いたスキャナーのスキャニング精度評価方法およびこれを用いた3Dプリンティング精度評価方法が開示される。さらに詳しくは、スキャナーの精度を精密に評価できる歯列ファントムモデル、これを用いたスキャナーのスキャニング精度評価方法およびこれを用いた3Dプリンティング精度評価方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
口腔スキャナー(intraoral scanner)は、伝統的な印象(impression)の対案を提供することができる。このような口腔スキャナーは、必ず正確なスキャンを生成できなければならない。
【0003】
口腔スキャナーの精度を評価するのに使われる一つの方法としては、反復されたスキャンデータ間の平均距離偏差を測定し、平均距離偏差が小さいほど口腔スキャナーの精度が優れていると判定する方法がある。しかし、平均値の測定は、誤謬を過小評価することがあり、これは誤解の余地のある結論と臨床決定を招くおそれがある。
【0004】
口腔スキャナーの精度を評価するために使われるもう一つの方法としては、天然歯列を模写してラバー印象ストーンモデルを製作し、前記ラバー印象ストーンモデルに対する非接触式口腔外スキャナー(extraoral scanner)(特に、モデルスキャナー(model scanner))のスキャンデータおよび口腔スキャナーのスキャンデータを順に獲得した後、これらスキャンデータ間の偏差が小さいほど口腔スキャナーの精度が優れていると判定する方法がある。しかし、モデルスキャナーのスキャンデータは、ラバー印象ストーンモデル自体が口腔内の原本(すなわち、実際の人の歯列)と誤差が大きいため、モデルスキャナーのデータと口腔スキャナーのデータを比較することは、原本が異なる二つのモデルを比較する結果を招くことになる。したがって、原本と異なると見るべきラバー印象ストーンモデルをスキャニングして獲得したモデルスキャナーのデータと口腔スキャナーのデータを基に口腔スキャナーの精度を判定する場合、誤った判定結果を招くおそれがある。
【0005】
したがって、非接触式口腔外スキャナーの精度と共に、口腔スキャナーの精度を正確に判断できる歯列ファントムモデルの開発が急がれる実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一具現例は、スキャナーのスキャニング精度を精密に評価できる歯列ファントムモデルを提供する。
本発明の他の具現例は、前記歯列ファントムモデルを用いたスキャナーのスキャニング精度評価方法を提供する。
本発明のさらに他の具現例は、前記歯列ファントムモデルを用いた3Dプリンティング精度評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、
ベース層;および
前記ベース層上に配置されたもので、歯の模型を含む歯列層を含み、
前記歯の模型は、ある一方向から観察された形状が残りの他の方向から観察された形状とそれぞれ異なるように構成された歯列ファントムモデルを提供する。
【0008】
前記歯模型は、三次元位置データが構築されたものであり得る。
【0009】
前記歯列ファントムモデルは、複数の歯の模型を含み、前記各歯の模型は任意の方向から観察された形状が任意の方向から観察された残りの他の歯の模型の形状とそれぞれ異なるように構成することができる。
【0010】
前記各歯の模型は、前記歯列ファントムモデルの正面、背面、平面の左側面および右側面の形状から観察された形状が、残りの他の歯の模型の対応形状とそれぞれ異なるように構成することができる。
【0011】
前記ベース層は、人の歯茎の形態に形象化されたものであり得る。
前記ベース層は、第一ベース層および第二ベース層を含み、前記第二ベース層は前記第一ベース層上に段差をつけて形成され、前記歯列層は前記第二ベース層上に配置され得る。
【0012】
前記歯列ファントムモデルは、前記ベース層および前記歯の模型のうち、少なくとも一つに配置されたパターンをさらに含めることができる。
前記ベース層および前記歯の模型は、金属を含めることができる。
【0013】
本発明の他の側面は、
CADプログラムを用いて三次元位置データを有する仮想の歯列ファントムモデルを作図する段階(S10-1);
前記作図された仮想の歯列ファントムモデルに従って3D加工法で実際の歯列ファントムモデルを製造する段階(S20-1);
前記製造された実際の歯列ファントムモデルを非接触式口腔外スキャナーでスキャニングしてスキャンデータを獲得する段階(S30-1);および
前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータを前記仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較して、前記非接触式口腔外スキャナーのスキャニング精度を評価する段階(S40-1)を含むスキャナーのスキャニング精度評価方法を提供する。
【0014】
前記スキャナーのスキャニング精度評価方法は、前記段階(S20-1)と前記段階(S30-1)の間に、前記段階(S20-1)で製造された実際の歯列ファントムモデルを接触式口腔外スキャナーでスキャニングして、前記実際の歯列ファントムモデルの三次元位置データを獲得する段階(S25)をさらに含み、前記段階(S40-1)は前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータを前記仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較する代わりに、前記実際の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較して、前記非接触式口腔外スキャナーのスキャニング精度を評価することができる。
【0015】
前記スキャナーのスキャニング精度評価方法は、前記段階(S40-1)以降に、前記段階(S20-1)で製造された実際の歯列ファントムモデルを口腔スキャナーでスキャニングしてスキャンデータを獲得する段階(S50-1)および前記獲得された口腔スキャナーのスキャンデータを前記段階(S30-1)で獲得された前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータと比較して、前記口腔スキャナーのスキャニング精度を評価する段階(S60-1)をさらに含めることができる。
【0016】
本発明のさらに他の側面は、
CADプログラムを用いて三次元位置データを有する仮想の歯列ファントムモデルを作図する段階(S10-2);
前記作図された仮想の歯列ファントムモデルに従って3Dプリンティングして実際の歯列ファントムモデルを製造する段階(S20-2);
前記製造された実際の歯列ファントムモデルをスキャナーでスキャニングしてスキャンデータを獲得する段階(S30-2);および
前記スキャナーのスキャンデータを前記仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較して前記3Dプリンティングの精度を評価する段階(S40-2)を含む3Dプリンティング精度評価方法を提供する。
【0017】
前記スキャナーは、接触式または非接触式口腔または口腔外スキャナーであり得る。
前記仮想の歯列ファントムモデルおよび前記実際の歯列ファントムモデルは、一つ以上の歯の模型を含めることができる。
前記実際の歯列ファントムモデルは、前記歯列ファントムモデルであり得る。
前記仮想の歯列ファントムモデルおよび前記実際の歯列ファントムモデルは、歯の模型を含まないことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一具現例による歯列ファントムモデルは、スキャニング性に優れ、非接触式口腔外スキャナーおよび口腔スキャナーの精度、そして3Dプリンティングの精度を精密に評価することができる。したがって、前記歯列ファントムモデルは、スキャナーのスキャニング精度または3Dプリンティングの精度を評価するための標準歯列パターンモデルとして使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1aa】本発明の一具現例による歯列ファントムモデルの斜視図である。
【
図1ab】本発明の一具現例による歯列ファントムモデルの斜視図である。
【
図1ac】本発明の一具現例による歯列ファントムモデルの斜視図である。
【
図1ad】本発明の一具現例による歯列ファントムモデルの斜視図である。
【
図1b】実施例1で製造された歯列ファントムモデルのスキャニングイメージである。
【
図2a】参考例1で製造された歯列ファントムモデルの斜視図である。
【
図2b】参考例1で製造された歯列ファントムモデルのスキャニングイメージである。
【
図3a】参考例2で製造された歯列ファントムモデルの斜視図である。
【
図3b】参考例2で製造された歯列ファントムモデルのスキャニングイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一具現例による歯列ファントムモデルを詳細に説明する。
本明細書において、「歯の模型(tooth model)」とは、歯型の人工構造物を意味する。
また、本明細書において、「三次元位置データ(three dimensional location data)」とは、任意の地点の空間座標(spatial coordinate)を意味し、空間座標とは、空間上の点に対してその位置を3つの実数の順序対(x, y, z)で示したことを意味する。歯列ファントムモデル上のすべての地点の空間座標を有していれば、歯列ファントムモデルの全体的な形状だけでなく、各歯の模型の位置と三次元サイズ、および歯の模型間の距離を知ることができる。
【0021】
また、本明細書において、「スキャンデータ(scan data)」とは、スキャナーでスキャニングして得た三次元位置データを意味する。
また、本明細書において、「仮想の歯列ファントムモデル」とは、CADのような図面作成プログラムで作成された歯列ファントムモデル(すなわち、CADなどの図面ファイル)を意味する。
また、本明細書において、「実際の歯列ファントムモデル」とは、金属などの材料で製作された、物理的形態を有する歯列ファントムモデルを意味する。
【0022】
図1aaないし
図ladは本発明の一具現例による歯列ファントムモデル(100)の斜視図であり、
図laeは
図1の歯列ファントムモデル(100)の正面図であり、
図lafは
図1の歯列ファントムモデル(100)の背面図であり、
図1agは
図1の歯列ファントムモデル(100)の平面図であり、
図1ahは
図1の歯列ファントムモデル(100)の底面図であり、
図1aiは
図1の歯列ファントモデル(100)の右側面図であり、
図1ajは
図1の歯列ファントムモデル(100)の左側面図である。
【0023】
図1を参照すると、本発明の一具現例による歯列ファントムモデル(100)は、ベース層(110、120)および歯列層(130)を含む。
ベース層(110、120)は、第一ベース層(110)および第二ベース層(120)を含めることができる。
【0024】
第二ベース層(120)は、第一ベース層(110)上に段差をつけて形成することができる。具体的には、第二ベース層(120)は、第一ベース層(110)より幅と長さが短いように形成することができる。
また、第二ベース層(120)は、一つ以上のパターン(P1、P2)をさらに含めることができる。
【0025】
前記パターンは、歯列ファントムモデル(100)のスキャニング性をさらに向上させる役割を果たす。
例えば、パターン(P1、P2)は星の形状、波の形状、ダンベルの形状、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形)のような様々な形状を有することができる。
【0026】
また、パターン(P1、P2)が複数ある場合、そのようなパターンは少なくとも一部が互いに同じであることもあり、少なくとも一部が互いに異なることもある。
また、パターン(P1、P2)は、溝および/または突起であり得る。
【0027】
また、ベース層(110、120)は、人の歯茎の形態に形象化されたものであり得る。
また、ベース層(110、120)は、金属を含めることができる。このようにベース層(110、120)が金属を含むことにより、スキャニング性が変化(例えば、向上)し得る。
【0028】
歯列層(130)は、第二ベース層(120)上に配置することができる。
また、歯列層(130)は、一つ以上の歯の模型を含めることができる。例えば、歯列層(130)は、一つまたは二つ以上の歯の模型を含むことができる。例えば、歯列層(130)は、
図1に示すように、八つの歯の模型(131~138)を含めることができる。
【0029】
各歯の模型(131~138)は、ある方向から観察された形状が残りの他の方向から観察された形状とそれぞれ異なるように構成することができる。例えば、各歯の模型(131~138)が複数の面(例えば、三つまたは四つ)を含む場合、各歯の模型(131~138)は各面の形状が残りの他の面の形状とそれぞれ異なるように構成することができる。
【0030】
また、各歯の模型(131~138)は、三次元位置データが構築されたものであり得る。例えば、各歯の模型(131~138)は、CAD(Computer Aided Design)プログラムを用いて三次元位置データを有する仮想の歯列ファントムモデルを作図した後、前記作図された仮想の歯列ファントムモデルによって3D加工法(例えば、3Dプリンティング、メタルミーリングなど様々な方法)で製造されたものであり得る。これとは異なり、天然歯の印象(impression)採得を通じて製造された歯の模型は、不規則な形状によって三次元位置データが構築できない。
【0031】
また、各歯の模型(131~138)は、底部面積(すなわち、第二ベース層(120)と接触する面の面積)が対応天然歯の底部面積を模倣するように構成することができる。例えば、歯の模型(131)の底部面積は、歯の模型(132)の底部面積より大きいが、これは底部面積の側面で人の歯列をそのまま模倣したものである。
【0032】
また、各歯の模型(131~138)は、エナメル質破折、歯冠破折、歯根破折、歯の脱臼、歯の脱落、骨折、歯肉損傷のような天然歯の外傷を模倣するように構成することができる。
また、歯列ファントムモデル(100)は、複数の歯の模型(131~138)を含み、各歯の模型(例えば、131)は、任意の方向から観察された形状が任意の方向から観察された残りの他の歯の模型(例えば、132~138)の形状とそれぞれ異なるように構成することができる。
【0033】
例えば、
図1aeないし
図1ag、
図1aiおよび
図1ajを参照すると、各歯の模型(例えば、131)は、歯列ファントムモデル(100)の正面、背面、平面、左側面および右側面の形状から観察された形状が、歯列ファントムモデル(100)の正面、背面、平面、左側面および右側面の形状から観察された残りの他の歯の模型(例えば、132~138)の対応形状とそれぞれ異なるように構成することができる。ここで、「対応形状」とは、各歯の模型(例えば、131)の特定の形状と同一方向から観察された残りの他の歯の模型(例えば、132~138)の形状を意味する。
また、各歯の模型(131~138)は、一つ以上のパターン(未図示)をさらに含めることができる。
【0034】
前記パターンは、歯列ファントムモデル(100)のスキャニング性をさらに向上させる役割を果たす。
また、各歯の模型(131~138)は、金属を含めることができる。このように各歯の模型(131~138)が金属を含むことによって、スキャニング性が変化(例えば、向上)し得る。
【0035】
以下、本発明の一具現例によるスキャナーのスキャニング精度評価方法を詳しく説明する。
本発明の一具現例によるスキャナーのスキャニング精度評価方法は、CADプログラムを用いて三次元位置データを有する仮想の歯列ファントムモデルを作図する段階(S10-1)、前記作図された仮想の歯列ファントムモデルによって3D加工法(例えば、3Dプリンティング、メタルミーリングなど様々な方法)で実際の歯列ファントムモデルを製造する段階(S20-1)、前記製造された実際の歯列ファントムモデルを非接触式口腔外スキャナー(extraoral scanner)でスキャニングしてデータを獲得する段階(S30-1)、および前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータを前記仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較して(例えば、重畳させて)前記非接触式口腔外スキャナーのスキャニング精度を評価する段階(S40-1)を含む。
【0036】
前記仮想の歯列ファントムモデルは、CADファイルであり得る。
前記非接触式口腔外スキャナーは、通常モデルスキャナー(model scanner)と呼ばれる3Dスキャナーであり得る。
前記段階(S40-1)では、前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータと前記仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データ間の偏差が小さいほど、前記非接触式口腔外スキャナーのスキャニング精度が高いと評価できる。
【0037】
また、前記スキャナーのスキャニング精度評価方法は、前記段階(S20-1)と前記段階(S30-1)の間に、前記段階(S20-1)で製造された実際の歯列ファントムモデルを接触式口腔外スキャナーでスキャニングして前記実際の歯列ファントムモデルの三次元位置データを獲得する段階(S25)をさらに含めることができる。この場合、前記段階(S40-1)は、前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータを前記仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較する代わりに、前記実際の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較して前記非接触式口腔外スキャナーのスキャニング精度を評価することができる。またこの場合、前記段階(S40-1)では、前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータと前記実際の歯列ファントムモデルの三次元位置データ間の偏差が小さいほど前記非接触式口腔外スキャナーのスキャニング精度が高いと評価できる。
【0038】
前記接触式口腔外スキャナーは、3Dスキャナーであり得る。
また、前記スキャナーのスキャニング精度評価方法は、前記段階(S40-1)以降に、前記段階(S20-1)で製造された実際の歯列ファントムモデルを口腔スキャナー(intraoral scanner)でスキャニングしてスキャンデータを獲得する段階(S50-1)および前記獲得された口腔スキャナーのスキャンデータを前記段階(S30-1)で獲得された非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータと比較して(例えば、重畳させて)前記口腔スキャナーのスキャニング精度を評価する段階(S60-1)をさらに含めることができる。
【0039】
前記段階(S60-1)では、前記口腔スキャナーのスキャンデータと前記非接触式口腔外スキャナーのスキャンデータ間の偏差が小さいほど、前記口腔スキャナーのスキャニング精度が高いと評価できる。
前記口腔スキャナーは、接触式または非接触式3Dスキャナーであり得る。
【0040】
一例として、前記仮想の歯列ファントムモデルおよび前記実際の歯列ファントムモデルは、一つ以上の歯の模型を含めることができる。この場合、前記実際の歯列ファントムモデルは、上述の歯列ファントムモデル(100)であり得る。
【0041】
他の例として、前記仮想の歯列ファントムモデルおよび前記実際の歯列ファントムモデルは、歯の模型を含まないことができる。この場合、前記仮想の歯列ファントムモデルおよび前記実際の歯列ファントムモデルは、上述した歯列ファントムモデル(100)のうちベース層(110、120)だけを含み、歯列層(130)は含まないことができる。
【0042】
以下、本発明の一具現例による3Dプリンティング精度評価方法を詳しく説明する。
本発明の一つの具現例による3Dプリンティング精度評価方法は、CADプログラムを用いて三次元位置データを有する仮想の歯列ファントムモデルを作図する段階(S10-2)、前記作図された仮想の歯列ファントムモデルによって3Dプリンティングして実際の歯列ファントムモデルを製造する段階(S20-2)、前記製造された実際の歯列ファントムモデルをスキャナーでスキャニングしてスキャンデータを獲得する段階(S30-2)、および前記スキャナーのスキャンデータを前記仮想の仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較して前記3Dプリンティングの精度を評価する段階(S40-2)を含む。
【0043】
前記3Dプリンティングは、3Dプリンターによって遂行される。
前記3Dプリンティングの精度は、前記スキャナーの精度が高い場合は、前記3Dプリンターの精度を示すものであり得、前記3Dプリンターの精度が高い場合は、前記スキャナーの精度を示すものであり得、前記3Dプリンターの精度と前記スキャナーの精度が両方とも
場合は、全体の精度を示すものであり得る。
【0044】
前記スキャナーは、接触式または非接触式3D口腔または口腔外スキャナーであり得る。
前記段階(S40-2)では、前記口腔外スキャナーのスキャンデータと前記仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データ間の偏差が小さいほど、前記3Dプリンティングの精度が高いと評価できる。
【0045】
一例として、前記仮想の歯列ファントムモデルおよび前記実際の歯列ファントムモデルは、一つ以上の歯の模型を含めることができる。この場合、前記実際の歯列ファントムモデルは、上述の歯列ファントムモデル(100)であり得る。
他の例として、前記仮想の歯列ファントムモデルおよび前記実際の歯列ファントムモデルは、歯の模型を含まないことができる。この場合、前記仮想の歯列ファントムモデルおよび前記実際の歯列ファントムモデルは、上述の歯列ファントムモデル(100)のうちベース層(110、120)だけを含み、歯列層(130)は含まないことができる。
【0046】
以下、本発明について下記実施例を挙げて説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるわけではない。
実施例1および参考例1~2:歯列ファントムモデルの製造
CADプログラムおよび3Dプリンターを用いて、
図1ag、
図2aおよび
図3aに図示された形状の歯列ファントムモデルを製造した。
【0047】
評価例
前記製造された各歯列ファントムモデルをスキャナー(3Shape社のTRIOS 3)でスキャニングしてスキャニングイメージを得た。
図1bは実施例1で製造された歯列ファントムモデルのスキャニングイメージであり、
図2bは参考例1で製造された歯列ファントムモデルのスキャニングイメージであり、
図3bは参考例2で製造された歯列ファントムモデルのスキャニングイメージである。
【0048】
図1agおよび
図1bを参照すると、
図1b(実施例1)のスキャニングイメージは
図1ag(実施例
1)の歯列ファントムモデルを完璧に具現したことが分かった。
一方、
図2aおよび
図2bを参照すると、
図2b(参考例1)のスキャニングイメージは
図2a(参考例1)の歯列ファントムモデルをほとんど具現していないことが分かった。
【0049】
同様に、
図3aおよび
図3bを参照すると、
図3b(参考例2)のスキャニングイメージは
図3a(参考例2)の歯列ファントムモデルをほとんど具現していないことが分かった。
【0050】
前記の結果から、実施例1の歯列ファントムモデルは、スキャニング性に優れ、スキャナーのスキャニング精度または3Dプリンティングの精度を評価するための標準歯列パターンモデルとして使用できることが確認できる。
【0051】
一方、参考例1および2の歯列ファントムモデルに対するスキャニングイメージから分かるように、実施例1の歯列ファントムモデルと少しでも異なる形状を持つ歯列ファントムモデルは、スキャニング性が劣悪でスキャナーのスキャニング精度または3Dプリンティングの精度を評価するための標準歯列パターンモデルとして使用できないことが確認できる。
【0052】
以上で図面を参照して本発明による望ましい具現例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野で通常の知識を持つ者であれば、これから様々な変形および均等な他の具現例が可能だという点を理解できる。したがって、本発明の保護範囲は、添付された特許請求の範囲によって定められなければならない。
【符号の説明】
【0053】
100: 歯列ファントムモデル 110: 第1ベース層
120: 第2ベース層 130: 歯列層
131~138: 歯の模型
【手続補正書】
【提出日】2024-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CADプログラムを用いて三次元位置データを有する仮想の歯列ファントムモデルを作図する段階(S10-2);
前記作図された仮想の歯列ファントムモデルに従って3Dプリンティングして実際の歯列ファントムモデルを製造する段階(S20-2);
前記製造された実際の歯列ファントムモデルをスキャナーでスキャニングしてスキャンデータを獲得する段階(S30-2);および
前記スキャナーのスキャンデータを前記仮想の歯列ファントムモデルの三次元位置データと比較して前記3Dプリンティングの精度を評価する段階(S40-2)を含む3Dプリンティング精度評価方法。
【請求項2】
前記スキャナーは、接触式または非接触式口腔または口腔外スキャナーであることを特徴とする請求項1に記載の3Dプリンティング精度評価方法。
【請求項3】
前記仮想の歯列ファントムモデルおよび実際の歯列ファントムモデルは一つ以上の歯の模型を含む請求項1に記載の3Dプリンティング精度評価方法。
【請求項4】
前記実際の歯列ファントムモデルは、
ベース層;および
前記ベース層上に配置されたもので、歯の模型を含む歯列層を含み、
前記歯の模型は、ある一方向から観察された形状が残りの他の方向から観察された形状とそれぞれ異なるように構成された歯列ファントムモデルである請求項3に記載の3Dプリンティング精度評価方法。