(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160364
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】改善されたイオン交換性および熱膨張を有するガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/064 20060101AFI20241106BHJP
C03C 3/066 20060101ALI20241106BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C03C3/064
C03C3/066
C03B17/06
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024138470
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2022147674の分割
【原出願日】2018-02-07
(31)【優先権主張番号】10 2017 102 482.4
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ フォザリンガム
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュヴァル
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ポイヒャート
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム クンツェ
(72)【発明者】
【氏名】マルトゥン ホヴハニスヤン
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ヴェーゲナー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な化学強化性と、低い脆弱性および有利な熱膨張特性とを併せ持ち、最新式の板ガラス製造法において製造可能なガラスを提供する。
【解決手段】ガラスは、所定のガラス構成相によって特徴付けられる組成を有し、二酸化ケイ素と三酸化二ホウ素の割合の合計が、最大35モル%であり、特定の式に従って計算された表面ガラスにおける熱膨張係数が、同様に計算されたバルクガラスにおける熱膨張係数の少なくとも50%かつ最大99%に相当する。前記ガラスは、最大2mm、特に最大1mmまたは最大0.5mmの平均厚さを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のガラス構成相:
【表1】
によって特徴付けられる組成を有するガラス。
【請求項2】
最大2mm、特に最大1mmまたは最大0.5mmの平均厚さを有する、請求項1記載のガラス。
【請求項3】
以下のガラス構成相:
【表2】
によって特徴付けられる組成を有する、請求項1または2記載のガラス。
【請求項4】
以下のガラス構成相:
【表3】
によって特徴付けられる組成を有する、請求項1または2記載のガラス。
【請求項5】
前記ガラス中のリードマーグナライトおよびカリウム-リードマーグナライトの割合の合計が、曹長石の割合よりも大きい、請求項1から4までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項6】
リードマーグナライトおよび/または曹長石の割合が、二酸化ケイ素の割合よりも大きく、特に少なくとも2倍大きい、請求項1から5までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項7】
前記構成相の他に、最大5モル%の割合を超過しない更なる成分の残分を含んでいてよく、特に、前記残分には、以下の酸化物:SiO2、TiO2、B2O3、Al2O3、ZnO、MgO、CaO、BaO、SrO、Na2Oおよび/またはK2Oは含まれない、請求項1から6までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項8】
前記残分が、ガラス中で最大2モル%、特に最大1モル%の割合を有する、請求項7記載のガラス。
【請求項9】
ケイ酸亜鉛鉱の割合が、少なくとも0.5モル%かつ最大7.5モル%である、請求項1から8までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項10】
リードマーグナライトの割合が、カリウム-リードマーグナライトの割合よりも大きく、特に、リードマーグナライトの割合は、カリウム-リードマーグナライトの割合よりも少なくとも2倍大きい、請求項1から9までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項11】
式(2)および(3)に従って計算された熱膨張係数が、6.5ppm/K~8ppm/Kであることと、式(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数が、最大0.30であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項12】
式(2)および(3)に従って計算された熱膨張係数が、4.5ppm/K~6.5ppm/Kであることと、式(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数が、最大0.30であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項13】
式(2)および(3)に従って計算された熱膨張係数が、3.5ppm/K~4.5ppm/Kであることと、式(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数が、最大0.30であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項14】
式(2)および(3)に従って計算された表面ガラスにおける熱膨張係数が、式(2)および(3)に従って計算されたバルクガラスにおける熱膨張係数の少なくとも50%に相当する、請求項1から13までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項15】
式(2)および(3)に従って計算された表面ガラスにおける熱膨張係数が、式(2)および(3)に従って計算されたバルクガラスにおける熱膨張係数の最大99%、好ましくは98%、特に好ましく95%に相当する、請求項1から14までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項16】
以下の工程:
・ 適切なガラス原料を溶融して、請求項1から15までのいずれか1項記載のガラスを製造する工程、
・ 溶融ガラスから、特にガラスリボンまたはガラスプレートの板状ガラス物品を成形する工程、
・ ガラスを冷却する工程
を有する、ガラスを製造する方法。
【請求項17】
前記ガラス物品の成形を、ダウンドロー法、オーバーフローフュージョン法またはリドロー法で行う、請求項16記載の方法。
【請求項18】
カバーガラスまたはディスプレイガラス、基材ガラスまたは電気絶縁性の誘電体中間層、特にインターポーザーとして、特にエレクトロニクスデバイスもしくはオプトエレクトロニクスデバイスにおいての、または表面造形におけるプラスチック代用品としての、請求項1から15までのいずれか1項記載のガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な化学強化性(Vorspannbarkeit)と、低い脆弱性および有利な熱膨張特性とを一つにまとめたガラスおよびガラス製品に関する。ここで、低い脆弱性は、化学強化結果と熱履歴(これは、特に強化前に成形加工が施されるガラスにおいて著しく異なり得る)との依存関係を可能な限り実質的になくす。
【0002】
特定の実施形態では、本発明は、厚さが400μm以下で20μm以下に至るまでのガラスを意味する超薄型ガラス(Duennstglaeser)に関する。
【0003】
そのようなガラスの製造方法およびその使用も本発明による。
【0004】
この発明は、ベースガラスから構成された組成を有するガラスに関する。これらのガラスは、有利な熱膨張係数を兼ねつつ良好な化学強化性を有することを特徴とする。それらの組成および製造方法に基づき、ガラスの特性であるそれらの表面における均質性は、バルクガラスと比較して大きい。さらに、これらのガラスの脆弱性は低く、そのため非常に薄型のガラス物品へと加工することができる。
【背景技術】
【0005】
良好なイオン交換性、つまり、良好な化学強化性と、低いいわゆる脆弱性および有利な熱膨張とを有するガラスが、多くの用途に必要とされている。ここで、パラメーター(TG/T)に従った粘度の常用対数の導関数としてC.A.Angellによって導入された脆弱性の意義は、それがガラス中での立体配置自由度(Konfigurationsfreiheitsgrade)の数に関係していることである(例えばR.Boehmer,K.L.Ngai,C.A.Angell,D.J.Plazek,J.Chem.Phys.,99(1993)4201-4209参照)。脆弱性が大きいほど、立体配置自由度の数が大きくなり、異なる熱履歴に起因して異なる立体配置(この配置でガラスは存在し得る)がますます実質的に異なったものとなる。TGとは、ガラス転移温度を意味し、粘度曲線に関する定義においては、つまり、粘度が1012パスカル秒である温度である。
【0006】
これらの異なる立体配置はまた、応力緩和、つまり、イオン交換による応力発生時に生じる不可避の相反作用に影響を及ぼす。これは、同じイオン交換プロセスにおいて熱履歴を異にする同一組成のガラスサンプルが、異なる応力を生むことを意味する。このことは、強化前に異なる形状付与プロセスに供されるガラスにとって特に重要であり、当然、形状付与プロセスには、異なる熱履歴が含まれる。
【0007】
化学強化の方法は、化学プレストレス、化学アニーリング、化学硬化、イオン交換硬化、イオン交換アニーリング、イオン交換強化、またはイオン交換プレストレスとも呼ぶことができる。これらのすべての用語は、ガラス中のより小さなイオンがより大きなイオンで置き換えられる方法に関する。例えば、ナトリウムがカリウムで置き換えられるか、またはリチウムがナトリウムまたはカリウムで置き換えられ、それによって圧縮応力層がガラスの表面に形成される。
【0008】
応力緩和を説明する熱粘弾性モデルは、例えば、George W.Scherer:Relaxation in Glass and Composites.Krieger Publishing Company Malabar(1992)に記載されており、立体配置が応力緩和の熱活性化に及ぼす影響を説明する、いわゆる非線形性パラメーター「x」と脆弱性との関連性は、例えば、Roland Boehmer,Non-linearity and non-exponentiality of primary relaxations,Journal of Non-Crystalline Solids,172-174(1994),628-634の中で議論されている。
【0009】
本発明によるガラスは、非強化状態でも確実に使用可能であるべきことから、低い脆弱性が、可能性として考えられるガラス転移温度を下回るすべての熱負荷においてガラスの高い寸法安定性を意味していることが一層重要であり、このことは、熱膨張係数の立体配置部分と相関し(Raphael M.C.V.Reis,John C.Mauro,Karen L.Geisingera,Marcel Potuzak,Morten M.Smedskjaer,Xiaoju Guo,Douglas C.Allan,Relationship between viscous dynamics and the configurational thermal expansion coefficient of glass-forming liquids,Journal of Non-Crystalline Solids 358(2012)648-651参照)、熱膨張係数のこの立体配置部分については、立体配置部分の数と相関している(上記参照)。
【0010】
超薄型ガラスは、脆弱性および熱膨張係数の立体配置部分によって特別な形で影響を受ける。上述したように、広い範囲にわたる厚さは、質量スループットおよび引上げ速度によって決定される。同一のガラス種の超薄型ガラスが、同一の引上げ装置、一定の質量スループットおよび引上げリボンの均一な幅で製造されるべき場合、まず、一定の質量スループットおよび均一な引上げリボン幅を考慮して、引上げ速度は、厚さに逆比例して選択されなければならない。引上げ速度の差が著しいのは、上記の典型的なガラス厚さの範囲を原因としている。それとは無関係に、ガラスは、ノズルから出てきた後に、一般的に冷却シャフトとして形成された実質的に同一の冷却セクションを通過する。なぜなら、それは同一の引上げ装置であり、冷却セクションの最初と最後の温度は等しいからである。最初の温度は、引上げタンク内の温度に等しく、最後の温度は、ガラスを自由に取り扱うことができる温度に等しい。これは、冷却速度も厚さに逆比例していなければならないことを意味する。つまり、ガラスは、明らかに異なる冷却速度で冷却シャフトを通過し、ここで、特に冷却速度が高速の場合、リボン断面の幅にわたって均一な温度を生むことは困難である。しかしながら、ガラスリボンの幅にわたって異なる温度履歴は歪みをもたらし、その大きさは、温度履歴におけるこれらの差に依存するか、あるいはさらに熱膨張係数の上述の立体配置部分、ひいては脆弱性にも依存する。つまり、低い脆弱性が、製造プロセス中の干渉の影響に対する超薄型ガラスの一定の頑丈性を保証する。
【0011】
経済的に特に重要なのは、そのようなガラスを、エレクトロニクスデバイスのディスプレイ用カバーガラスとして使用することである。ここで、より高いイオン交換性をもたらす措置は、しばしばより高い脆弱性をもたらし、逆もまた同様である。
【0012】
米国特許出願公開第2013/0165312号明細書(US2013/0165312A1)には、特定の熱膨張、低いアルファ線および高い弾性率を有することを特徴とする、半導体製造用のカバーガラスが開示されている。ここに記載されたガラスは、非常に高い割合のアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物を含有し、それによって高い熱膨張が可能となる。しかしながら、本発明のガラスとは化学量論的な観点で異なることから、本発明のベースガラス系では説明することができない。さらに、そこに記載されたガラスは、非常に高い割合のAl2O3と、同時に比較的少量のMgOとを含有し、そのため脆弱性を増加させる高い割合の曹長石が見込まれる。さらに、そこに記載されているガラスの場合、B2O3含有量が非常に低いことから、本発明により所望される、それに脆弱性を低下させるものであるリードマーグナライトの割合が不足している。上述の非常に高い割合のアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物は、熱膨張係数の高い値をもたらし、これは、実施例では少なくとも99.2×10-7/Kと非常に大きい。
【0013】
独国実用新案第202012012876号明細書(DE202012012876U1)は、ガラスのイオン交換性を取り扱っている。そこに記載されているガラスの場合、一方では破損および裂断を回避するために、他方ではガラス成分の浸出を回避するために、加水分解安定性および機械安定性が大変重要である。この文献中の大部分のガラスにB2O3は含まれていない。特許請求の範囲に記載される多くの組成物において、ホウ素はそもそも存在していない。明細書中でホウ素割合は定量化されていない。実施例では、最大4.6%のホウ素割合が生じている。しかしながら、同時に、ホウ素割合には測定規則が立てられており、それによれば、モルパーセント単位のホウ素割合は、一方ではアルカリ金属酸化物割合の合計と、他方ではアルミナ割合との差に0.3を乗算したものよりも低くなければならない。この測定規則は、可能な限り高いイオン移動度を達成するのに用いられる。本発明に記載された組成物は、この測定規則と共通性を持たない。本発明では、脆弱性および熱膨張係数の所望の値を達成するために、高いイオン移動度ではあるものの、非常に高くはないイオン移動度が求められる。これがなぜ、そしてどのように互いに相容れないのかは、本発明の説明において記述される。
【0014】
課題
先行技術では、良好な化学強化性と、低い脆弱性および有利な熱膨張特性とを併せ持つガラスがない。さらに、これらのガラスは、最新式の板ガラス製造法において製造可能でなければならない。
【0015】
この課題は、特許請求の範囲の主題によって解決される。
【0016】
本発明の説明
この課題は、化学量論的なガラス、つまり、同じ化学量論比で結晶としても存在するガラスであって、その特性が-文献中の多数の実施例ではNMR測定等によって調べられるように-ガラスと結晶それぞれの構成単位(Baugruppen)の同一のトポロジーに基づき非常に類似したものと見なすことのできるガラスを適切に組み合わせることによって解決される。このために、その混合物が本発明による課題を解決する意味での挙動を達成可能にする化学量論的なガラスが選択される。この出願では、これらの化学量論的なガラスは、「ベースガラス」または「構成相(konstituierende Phasen)」とも呼ばれる。
【0017】
ガラスを、それらに属する構成相で説明することは、新しい概念ではない。ベースガラスを明示することによって、ガラスの化学構造についての結論を導き出すことができる(Conradt R:「Chemical structure,medium range order,and crystalline reference state of multicomponent oxide liquids and glasses」,Journal of Non-Crystalline Solids,Volumes 345-346,15 October 2004,Pages 16-23参照)。
【0018】
以下のガラス構成相によって特徴付けられるベースガラスと組み合わせたガラスが本発明による。
【0019】
【0020】
本発明のガラスは、それらの組成および構成によって特徴付けられる。組成は、ガラス構成相に関して本明細書に記載された限界値内で選択される。
【0021】
当然のことながら、ガラス構成相は、それ自体ガラス製品中で結晶質ではなく、非晶質で存在する。しかしながら、このことは、非晶質状態における構成相が、結晶質状態とは完全に異なる構成単位を有することを意味するものではない。上記で述べたように、構成単位のトポロジー、つまり、例えば、関与するカチオンの周囲の酸素原子による配位またはこれらのカチオンと周囲の酸素原子との間の配位および結合の強度から得られる原子間距離が比較可能である。それゆえ、本発明のガラスの多くの特性は、特に本発明の成果および本発明により克服された問題を説明するために、構成相を使って十分に説明することができる(これに関しては上記引用文中のConradt R参照)。当然、ガラスの製造は、対応する結晶を使用するだけでなく、化学量論比だけでベースガラスの対応する構成単位の形成が可能である限りは、通常のガラス原料を使用して行うこともできる。
【0022】
適切な溶融塩、例えば硝酸カリウム中でナトリウムをカリウムと交換することによる化学強化性は、本発明によるガラスの場合、ナトリウムを含有し、高いナトリウム移動度を有する構成単位の相当量の割合によって達成される。化学強化性に積極的に影響を及ぼす構成相の1つの例が曹長石である。本発明の好ましいガラスおよびガラス物品は、化学強化されている。
【0023】
脆弱性の所望の値は、実際に指向されるパラメーター、すなわち、立体配置自由度の数、および対応する計算規定の条件にマッピングされる。C.A.Angell(例えば、R.Boehmer,K.L.Ngai,C.A.Angell,D.J.Plazek,J.Chem.Phys.,99(1993)4201-4209参照)の著書によれば、脆弱性は、アレニウスの法則に従った粘性曲線のプロファイルとして現れ、汚染されていない、特にOHを含まない石英ガラスによって近似的に達成される最小値に等しく、加えて、TGで「融解」し、そこでcpジャンプとして動的熱量測定において明らかになる立体配置自由度の数と相関する別の寄与がある。
【0024】
この数は、トポロジー的方法および熱量測定による比較によって測定することができる。各立体配置変化は、非類似性マッピングであり、それゆえ原子の角度の変化を含むことから、1モル当たりの立体配置自由度の数は、1原子当たりの角度自由度(Winkelfreiheitsgrade)の数から生じる。後者は、独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE102014119594A1)に記載された方法に従って計算され、ここで、カチオン-酸素結合のイオン化度については、Alberto Garcia, Marvon Cohen,First Principles Ionicity Scales,Phys.Rev.B 1993,4215-4220に記載される関係式が使用される。Borofloat33、Borofloat40、LF5、LLF1、K7、AF45等の様々な市販のガラスの例において行われている、気体定数Rを乗算した結果とTGでのcpジャンプとの比較から、この手順の正当性が証明される。
【0025】
本発明によるガラスは、上記の構成相の組合せを表すことから、計算規則を立てるのには、各構成相について1原子当たりの角度自由度の数を数値で示すことで十分である。
【0026】
【0027】
そのため、完成したガラスにおける1原子当たりの角度自由度fを測定するための計算規則は、次のようになる:
【数1】
式中、c
iは、考慮されるガラス組成物中でi番目の構成相のモル分率であり、z
iは、i番目の構成相における構成単位1個当たりの原子の数であり、f
iは、i番目の構成相における1原子当たりの角度自由度の数である。「n」は、構成相の数である。
【0028】
熱膨張係数の目標とされる範囲における位置も、計算規則によって同様に保証される。これは平均結合強度からもたらされる。文献から知られているのは、熱膨張係数がこれ(または「原子間ポテンシャル井戸の深さ」)に反比例することである。酸化物ガラスの単純なイメージでは、カチオンが、それぞれ周囲の酸素原子によって形成されたポテンシャル井戸に置かれ、周囲の酸素原子に対する様々な単結合の結合強度の合計、つまり、ポテンシャル井戸における中心のカチオンと周辺の酸素原子との全体の相互作用エネルギーを集約させたものがその深さとされる。それにより、逆のケースはもはや考慮する必要がない。その分析は1個の酸素原子が複数の異なる種類のカチオン間に存在し得ることからより困難であり、このことは、逆に純粋な酸化物ガラスでは起こり得ない。これらの値は、例えば独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE102014119594A1)で表にまとめられている。
【0029】
【0030】
Sr、Ba、ZnおよびTiの値は、独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE102014119594A1)からではなく、そこに引用されている出典とまさしく同じの、そこに記載された方法に従って計算している。
【0031】
上記の構成相からのガラスの組成、それぞれの相に含まれる異なるカチオンの数、およびカチオン1個当たりの上記表にまとめたポテンシャル井戸深さから、平均ポテンシャル井戸深さを算出することができる:
【数2】
式中、mは、発生するカチオン種の数であり、E
pot,jは、上記表にまとめたj番目のカチオン種のポテンシャル井戸深さであり、かつz
j,iは、i番目の構成相におけるj番目の種類のカチオンの数である。jに関する合計を、以下で表にまとめている:
【表4】
【0032】
この平均結合強度は、Borofloat33、Borofloat40、AF5、AF32等の様々な市販のガラスとの比較から判明するように、次式に従って熱膨張係数と関係がある:
【数3】
【0033】
構成相の選択を行うのは、それらの組合せが所望のイオン交換挙動ならびに脆弱性および膨張係数の所望の値を示すからである。個々の構成相の役割については、以下で再度詳しく説明される。
【0034】
曹長石(Albit)
本発明のガラス中で構成相として代表されるベースガラスは、曹長石ガラスである。曹長石(NaAlSi3O8)は、骨格中で移動可能なナトリウムイオンを有するSiO4-およびAlO4四面体の骨格からなるその構造に基づき高いナトリウム拡散率を有することが知られている(Geochimica et Cosmochimica Acta,1963,Vol.27,107-120参照)。それゆえ、曹長石ガラスの割合は、ガラスのイオン交換ひいては化学強化性に影響を及ぼすのに有益な高いナトリウム移動度に寄与する。曹長石は、さらに一層高いナトリウム拡散率を有するかすみ石(カリウムを含まない人工変異体:NaAlSiO4)と比較して、著しく融点が低い(1100~1120℃)という利点を有し、これによりガラスの溶融性が改善される。
【0035】
本発明によるガラス中の曹長石の計算上の割合は、少なくとも10モル%かつ最大40モル%である。曹長石の量が少なすぎると、カリウムによるナトリウムの交換に関してイオン交換性または化学強化性が損なわれる。有利には、ガラスは、少なくとも15モル%、より好ましくは少なくとも18モル%、特に好ましくは少なくとも20モル%の割合の曹長石を含有する。純粋な曹長石ガラスは、おそらく最適な化学強化性を有するが、必要とされる脆弱性に関しては有効ではない。曹長石について、1原子当たりの角度自由度の数は、0.318898019であり、ひいては本発明によるガラスよりも高い。したがって、曹長石は、有利には、35モル%以下、特に32モル%以下、より好ましくは30モル%以下、特に好ましくは25モル%以下の割合で用いられる。本発明によれば、1モルの曹長石は、1モルの(Na2O・Al2O3・6SiO2)/8を意味する。
【0036】
リードマーグナライト(Reedmergnerit)
ホウ素類似体のリードマーグナライトは、1原子当たりの角度自由度の数が曹長石よりも相当低く、すなわち、0.235470229である。それゆえ、本発明によるガラスは、更なるベースガラスとしてリードマーグナライトガラスを含有し、特に、ガラスは、曹長石よりも多くのリードマーグナライトを含有する。このベースガラスは、Al-O結合と比較してB-O結合のより大きい結合強度に従って、SiO4-およびBO4四面体からの曹長石ガラスと同様に構築されているが、より密集した構造を有する。さらに、B-O結合は、Al-O結合よりも共有結合的である。第一にいずれも脆弱性に対する寄与は低いが、アンダーソンとスチュアートの方法に従った骨格中で移動可能なナトリウム原子(Journal of the American Ceramic Society,Vol.37,No.12,573-580)は、曹長石ガラスよりも熱活性エンタルピーが高く、そのため、リードマーグナライトガラスにおける同一の温度でのナトリウムイオン移動度への寄与は、曹長石ガラスにおいてよりも低い。本発明によれば、本明細書に記載されるガラスは、有利には、少なくとも10モル%のリードマーグナライト、より好ましくは少なくとも15モル%または少なくとも18モル%、特に少なくとも20.5モル%または少なくとも25モル%、特に好ましくは少なくとも30モル%のリードマーグナライトを含む。しかしながら、十分な強化性を保証するために、リードマーグナライトの量は、最大65モル%、好ましくは最大60モル%、より好ましくは最大45モル%、より好ましくは最大40モル%、特に好ましくは35モル%に制限される。本発明によれば、1モルのリードマーグナライトは、1モルの(Na2O・B2O3・6SiO2)/8を意味する。
【0037】
カリウムリードマーグナライト(Kalium-Reedmergnerit)
失透安定性を高めるために、ガラスにリードマーグナライトのカリウム類似体をさらに添加することができる。完成したガラスは、アルカリ金属としてそのような添加を行った場合、ナトリウムだけでなくカリウムも含み、それゆえ失透に対してより安定性である。1原子当たりの角度自由度の数に関しては、リードマーグナライトと同じように挙動する。この数は、0.238787725である。このベースガラスは、これ以降、「カリウム-リードマーグナライト」と呼ばれる。なぜなら、それはダンビュライト構造を有するリードマーグナライトのカリウム-類似体として理解され得るからである。
【0038】
本発明のガラスは、0~32モル%または30モル%までの割合でカリウムリードマーグナライトを含有することができる。失透安定性の観点から、好ましい実施形態は、少なくとも1モル%のカリウム-リードマーグナライト、特に少なくとも5モル%または少なくとも8モル%のカリウムリードマーグナライトを含有する。化学強化性を損なわないために、本発明によるガラス中のカリウムリードマーグナライトの量は、有利には、最大25mol%、より好ましくは最大20mol%、特に好ましくは最大15mol%に制限される。1モルのカリウム-リードマーグナライトは、1モルの(K2O・B2O3・6SiO2)/8を意味する。
【0039】
好ましい実施形態では、ガラス中のリードマーグナライトの割合は、カリウム-リードマーグナライトの割合よりも大きく、特に少なくとも2倍大きい。
【0040】
本発明のガラスにおける上記したベースガラスの曹長石、リードマーグナライトおよびカリウム-リードマーグナライトの割合は、合計で、有利には少なくとも50モル%、特に少なくとも60モル%である。しかしながら、その割合は、有利には、最大90モル%、特に最大80モル%に制限される。上記で提示してきた3つの構成相(曹長石、リードマーグナライトおよびカリウム-リードマーグナライト)に共通している点は、高い熱膨張をもたらす相当量のアルカリ金属を含むことである。それゆえ、アルカリ金属の代わりに、アルカリ土類金属または亜鉛、つまり、平均膨張係数をもたらすカチオンが存在する更なる構成相が導入される。
【0041】
グロッシュラー(Grossular)、コーディエライト(Cordierit)およびケイ酸亜鉛鉱(Willemit)
任意に存在する更なる3つの構成相であるグロッシュラー(Ca3Al2Si3O12)、コーディエライト(Mg2Al4Si5O18)およびケイ酸亜鉛鉱(Zn2SiO4)は、それぞれ、アルカリ土類金属または亜鉛の割合が高く、そのため膨張係数の影響が著しい。逆に、1原子当たりの角度条件のそれぞれの数は、非常に高い(グロッシュラー:0.666147023、コーディエライト:0.427525473、ケイ酸亜鉛鉱:0.725827911)。
【0042】
それゆえ、本発明によるガラスは、グロッシュラーを0~10モル%の割合で、特に9モル%までまたは8.5モル%までの量で含有することができる。好ましい実施形態では、少なくとも1モル%、特に少なくとも3モル%、好ましくは少なくとも5モル%のグロッシュラーが用いられる。本発明のガラスの特定の実施形態では、グロッシュラーは含まれない。1モルのグロッシュラーは、1モルの(3CaO・Al2O3・3SiO2)/7を意味する。
【0043】
本発明によるガラスは、コーディエライトを0~10モル%の割合で、特に8.5モル%までまたは最大5モル%の量で含有することができる。好ましい実施形態では、少なくとも1モル%、特に少なくとも3モル%、好ましくは少なくとも4モル%のコーディエライトが用いられる。本発明のガラスの特定の実施形態では、コーディエライトは含まれない。1モルのコーディエライトは、1モルの(2MgO・2Al2O3・5SiO2)/9を意味する。
【0044】
それゆえ、本発明によるガラスは、ケイ酸亜鉛鉱を0~15モル%の割合で、特に10モル%まで、好ましくは8.5モル%までまたは7.5モル%までの量で含有することができる。好ましい実施形態では、少なくとも0.5モル%、特に少なくとも3モル%、好ましくは少なくとも5モル%のケイ酸亜鉛鉱が用いられる。1モルのケイ酸亜鉛鉱は、1モルの(2ZnO・SiO2)/3を意味する。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明によるガラス中のグロッシュラー、コーディエライトおよびケイ酸亜鉛鉱の割合の合計は、所望されるように熱膨張係数に影響を及ぼすために、少なくとも3モル%、特に少なくとも4モル%または少なくとも5モル%である。しかしながら、合計25モル%以下、特に20モル%以下、15モル%以下または10モル%以下でこれらのベースガラスを用いることが有利であると判明した。
【0046】
本明細書において、ガラスが、1つの成分または構成相を含まないかまたはある特定の成分または構成相を含まないという場合、この成分または構成相が、場合によってはガラス中に不純物として存在していてもよいことを意図している。つまり、それは本質的な量で添加されていないことを意味する。非本質的な量は、本発明によれば、300ppm(モル)未満、好ましくは100ppm(モル)未満、特に好ましくは50ppm(モル)未満、最も好ましくは10ppm(モル)未満の量である。本発明のガラスは、特に、リチウム、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマスおよび/またはカドミウムを含まない。
【0047】
二酸化ケイ素および三酸化二ホウ素
最後に、脆弱性を低く調整するために、純粋なSiO2からなるベースガラスの割合を含ませることも可能である。本発明によるガラスは、ベースガラスとしてSiO2を少なくとも0モル%、最大50モル%、最大40モル%、最大30モル%、最大25モル%、または最大20モル%の割合で有することができる。しかしながら、その含有率は、最大18モル%、より好ましくは最大16モル%、さらに好ましくは最大14モル%または最大12モル%に制限される。二酸化ケイ素の割合が高すぎると溶融性が損なわれるため、特に好ましい態様では、この成分は10モル%未満で含まれる。SiO2を少なくとも1モル%、特に少なくとも3モル%または少なくとも5モル%の量で用いることが有利であると判明した。
【0048】
二酸化ケイ素の割合は、有利には、リードマーグナライトおよび/または曹長石のそれぞれの割合よりも低い。それどころか、特に、リードマーグナライトおよび/または曹長石に対する二酸化ケイ素の割合のモル比は、最大1:2、最大1:3、特に最大1:4にすぎない。二酸化ケイ素の割合を制限するのは、特に、本発明のガラス中の本質的なベースガラスであるリードマーグナライトおよび曹長石の特性を際立たせるためと見なされる。
【0049】
三酸化二ホウ素の割合も、二酸化ケイ素よりも少量ではあるが、溶融性に影響を及ぼさずに脆弱性を低下させる。それゆえ、0モル%~15モル%、~12モル%または~10モル%の三酸化二ホウ素の割合を提供することができる。好ましい実施形態では、三酸化二ホウ素の割合は、少なくとも1モル%、特に最大5モル%、または最大3モル%である。
【0050】
二酸化ケイ素と三酸化二ホウ素の割合の合計は、本発明によれば、好ましくは最大50モル%、最大40モル%、最大35モル%、または最大30モル%、特に最大20モル%、より好ましくは最大15モル%、特に好ましくは最大12.5モル%である。
【0051】
屈折率増加成分
窓ガラスを光学カバーガラスとして代用するためには、屈折率を1.5~1.6、例えば1.523の値(ナトリウムD線における窓ガラスの典型的な屈折率、M.Rubin,Optical properties of soda lime silica glasses,Solar Energy Materials 12(1985),275-288参照)に調整する必要がある。したがって、本発明によれば、屈折率を増加させる重イオン、すなわち、チタン-ワデアイト(Wadeit)(チタン含有)、ストロンチウム-長石(ストロンチウム含有)、重土長石(バリウム含有)の3成分までが提供される。
【0052】
本発明のガラス中のチタン-ワデアイトの割合は、0モル%~24モル%であってよい。有利には、含有率は、最大20モル%、より好ましくは最大18モル%である。本発明のガラスのいくつかの実施形態では、チタン-ワデアイトは含まれない。しかしながら、好ましい実施形態では、この成分の含有率は、少なくとも1モル%、少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、または少なくとも13モル%でさえある。1モルのチタン-ワデアイトは、1モルの(K2O・TiO2・3SiO2)/5を意味する。ガラス中に存在するTiO2は、耐ソラリゼーション性を高め、これは特に長期耐用性が有利な用途にとって重要である。
【0053】
本発明のガラス中のストロンチウム-長石の割合は、0モル%~20モル%であってよい。有利には、含有率は、最大10モル%、より好ましくは最大5モル%である。本発明のガラスのいくつかの実施形態では、ストロンチウム-長石は含まれない。しかしながら、好ましい実施形態では、この成分の含有率は、少なくとも0.5モル%、少なくとも1モル%、少なくとも2モル%、または少なくとも3モル%でさえある。1モルのストロンチウム-長石は、1モルの(SrO・Al2O3・2SiO2)/4を意味する。
【0054】
本発明のガラス中の重土長石の割合は、0モル%~20モル%であってよい。有利には、含有率は、最大10モル%、より好ましくは最大5モル%である。本発明のガラスのいくつかの実施形態では、重土長石は含まれない。しかしながら、好ましい実施形態では、この成分の含有率は、少なくとも0.5モル%、少なくとも1モル%、少なくとも2モル%、または少なくとも3モル%でさえある。1モルの重土長石は、1モルの(BaO・Al2O3・2SiO2)/4を意味する。
【0055】
1.45~1.6の範囲の屈折率を選択するための測定規則として、計算方法および必要なパラメーターの詳しい記載を含むH.Bach,N.Neuroth,Properties of Optical Glass,second corrected printing,Schott-Series on Glass,Springer-Verlag Berlin Heidelberg New York(1998),73-76に詳細に説明されているAppenの規則が使用される。Schott刊行シリーズのこの言及した刊行物は、この出願の開示内容に完全に含まれる。Schott刊行シリーズのこの刊行物には、Appenの原文献が引用されている。
【0056】
更なる成分
既に述べた成分に加えて、ガラスは、本明細書では「残分」と呼ばれる更なる成分を含有することができる。本発明によるガラスの残分の割合は、有利には、適切なベースガラスを慎重に選択することによって調整されるガラス特性を乱さないために、最大5モル%である。特に好ましい実施形態では、ガラス中の残分の割合は、最大4モル%または最大3モル%、より好ましくは最大2モル%または最大1モル%である。残分は、特に、本明細書に記載されるベースガラスに含まれていない酸化物を含有する。したがって、残分には、特にSiO2、TiO2、B2O3、Al2O3、ZnO、MgO、CaO、BaO、SrO、Na2OまたはK2Oは含まれない。本発明によれば、残分として、いわゆる「中間体」、つまり、SiO2のような網目形成体とNa2Oのような網目変換体との間に位置する酸化物の更なる単純な酸化物の添加物が用いられる(K.H.Sun,Journal of The American Ceramic Society Vol.30,Nr.9(1947),277-281参照)。これらの酸化物は、単独ではガラスを形成しないが、上述のパーセント範囲内で網目内に組み込まれることができる。したがって、この残分は、特にZrO2のような酸化物を含むことができる。A.Dietzel,Die Kationenfeldstaerken und ihre Beziehungen zu Entglasungsvorgaengen,zur Verbindungsbildung und zu den Schmelzpunkten von Silicaten,Berichte der Bunsengesellschaft fuer physikalische Chemie Vol.48 Nr.1(1942),9-23の理論によれば、R.Shannon,Revised Effective Ionic Radii and Systematic Studies of Interatomic Distances in Halides and Chalcogenides,Acta Cryst.(1976)A32,751-767に従ったイオン半径を使用して計算することができるように、「中間体」には、Nb2O5およびTa2O5も含まれる。
【0057】
有利な実施形態
好ましい実施形態では、本発明によるガラスは、ベースガラス組成物における以下の好ましいおよび特に好ましい構成相の割合によって特徴付けられる。本発明によるガラスに関する上記および下記で記載される好ましい割合の範囲および更なる特徴は、以下で概説される好ましいおよび特に好ましい実施形態にも適用される:
【表5】
【0058】
好ましい実施形態では、本発明によるガラスは、ベースガラス組成物における以下の好ましいおよび特に好ましい構成相の割合によって特徴付けられる。本発明によるガラスに関する上記および下記で記載される好ましい割合の範囲および更なる特徴は、以下で概説される好ましいおよび特に好ましい実施形態にも適用される:
【表6】
【0059】
他のガラス特性
本発明のガラスは、有利にはガラス製品として、特に、最大2mm、特に最大1mm、特に好ましくは最大500μm、最大250μm、最大150μmまたは最大100μmの厚さを有するガラスリボンまたはガラスプレートとして存在する。本発明のガラスは、薄型ガラスまたは超薄型ガラスへと加工可能である。特に薄型ガラスは、化学強化が困難な場合があり、そのため、本発明によるガラスが強化されていないときに有する高い硬度が、薄型ガラスの場合に特に有利である。
【0060】
本発明のガラスは、ガラス構成相の組合せに基づき、最大8ppm/K、特に最大7.5ppm/Kの、多くの用途にとって有利な熱膨張(CTEとも)を示す。上述の熱膨張係数は、好ましい実施形態では、少なくとも4ppm/Kまたは少なくとも5ppm/Kである。熱膨張は、式(3)において上述したように計算することができる。
【0061】
ガラスは、その実質的な割合の曹長石ガラスに基づき、有利には、KNO3中で450℃の温度にて少なくとも15μm2/hまたは少なくとも20μm2/hの拡散能の境界値によって特徴付けられる化学強化性を有する。拡散能の境界値は、化学強化中にカリウムイオンがガラス中に取り込まれる速度の尺度である。境界値は、独国実用新案第202012012876号明細書(DE202012012876U1)に説明されているように、圧縮応力層の深さ(DoL)と時間(t)から計算される。
【0062】
実施形態1:6.5ppm/K<CTE<8ppm/K
1つの実施形態では、本発明によるガラスは、6.5ppm/K~8ppm/Kの間のCTEを有する。この実施形態のガラスは、前述の不等式を満たし、かつ上記式(3)を適用することによって達成される。この実施形態では、ガラスは、アルミナセラミックとの組合せを特に意図しているが、排他的ではない。例示的なそのような構造は、米国特許第6109994号明細書(US6,109,994)に記載されている。そこでは、ガラスカバープレートの終端は、アルミナのカラム構造を含む電界放出ディスプレイ構造体である。高いCTEは、非常に低い脆弱性と両立し得ないものの、上記式(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数は、<0.30、好ましくは<0.29、特に好ましくは<0.28、さらにより好ましくは<0.27、さらにより好ましくは<0.26、さらにより好ましくは<0.25である必要がある。特に、1原子当たりの角度自由度の数は、少なくとも0.1である。
【0063】
実施形態2:4.5ppm/K<CTE<6.5ppm/K
1つの実施形態では、本発明によるガラスは、4.5ppm/K~6.5ppm/Kの間のCTEを有する。この実施形態のガラスは、前述の不等式を満たし、かつ上記式(3)を適用することによって達成される。この実施形態では、ガラスは、窒化アルミニウムとの組合せを特に意図しているが、排他的ではない(例えばC.K.Lee,S.Cochran,A.Abrar,K.J.Kirk,F.Placido,Thick aluminium nitride films deposited by room-temperature sputtering for ultrasonic applications,Ultrasonics 42(2004)485-490参照)。上記式(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数は、<0.30、好ましくは<0.29、特に好ましくは<0.28、さらにより好ましくは<0.27、さらにより好ましくは<0.26、さらにより好ましくは<0.25、さらにより好ましくは<0.24、さらにより好ましくは<0.23、さらにより好ましくは<0.22、さらにより好ましくは<0.21、さらにより好ましくは<0.20である必要がある。特に、1原子当たりの角度自由度の数は、少なくとも0.1である。
【0064】
実施形態3:3.5ppm/K<CTE<4.5ppm/K
1つの実施形態では、本発明によるガラスは、3.5ppm/K~4.5ppm/Kの間のCTEを有する。この実施形態のガラスは、前述の不等式を満たし、かつ上記式(3)を適用することによって達成される。この実施形態では、ガラスは、ケイ素またはケイ素ベースの構成要素との組み合わせを特に意図しているが、排他的ではない。この範囲の熱膨張を有するガラスは、幅広くケイ素またはケイ素ベースの構成要素と結合される(例えばF.Saharil,R.V.Wright,P.Rantakari,P.B.Kirby,T.Vaha-Heikkila,F.Niklaus,G.Stemme,J.Oberhammer,Low-temperature CMOS-compatible 3D-integration of monocrystalline-silicon based PZT RF MEMS switch actuators on rf substrates“,2010 IEEE 23rd International Conference on Micro Electro Mechanical Systems(MEMS),2010,47-50参照)。上記式(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数は、<0.30、好ましくは<0.29、特に好ましくは<0.28、さらにより好ましくは<0.27、さらにより好ましくは<0.26、さらにより好ましくは<0.25、さらにより好ましくは<0.24、さらにより好ましくは<0.23、さらにより好ましくは<0.22、さらにより好ましくは<0.21、さらにより好ましくは<0.20、さらにより好ましくは<0.19、さらにより好ましくは<0.18、さらにより好ましくは<0.17、さらにより好ましくは<0.16、さらにより好ましくは<0.15である必要がある。特に、1原子当たりの角度自由度の数は、少なくとも0.1である。
【0065】
特に、本発明のガラスには、バルク中の1原子当たりの角度自由度の数が、0.30未満、好ましくは0.29未満、特に好ましくは0.28未満、さらにより好ましくは0.27未満、さらにより好ましくは0.26未満、さらにより好ましくは0.25未満、さらにより好ましくは0.24未満、さらにより好ましくは0.23未満、さらにより好ましくは0.22未満、さらにより好ましくは0.21未満、さらにより好ましくは0.20未満、さらにより好ましくは0.19未満、さらにより好ましくは0.18未満、さらにより好ましくは0.17未満、さらにより好ましくは0.16未満、さらにより好ましくは0.15未満であることが適用される。1原子当たりの角度自由度の数がこの値を超えないことが保証される場合、脆弱性は、所望の範囲にとどまる。特に、この値は、超薄型ガラス物品の製造も可能にするために有利である。特に、1原子当たりの角度自由度の数は、少なくとも0.1である。
【0066】
製造方法
以下の工程:
- ガラス原料を溶融する工程、
- 溶融ガラスからガラス物品、特にガラスリボンまたはガラスプレートを成形する工程、
- ガラスを冷却する工程
を有する、本発明のガラスの製造方法も本発明による。
【0067】
冷却は、冷却剤、例えば冷却流体を用いた能動冷却であってよく、または受動冷却によって実施することができる。
【0068】
1つの実施形態では、ガラス物品の成形は、ダウンドロー法、オーバーフローフュージョン法またはリドロー法で行われる。板ガラス法では、所望の非常に低い厚さを有するガラスが製造可能である。さらに、これらの方法は、高い冷却速度を達成することができるという利点を有する。
【0069】
原料の選択は、特定の原料に制限されない。特に、原則的に可能であっても、これらのガラスの原料として上記のベースガラスを使用する必要はない。むしろ、ベースガラスがガラス中で化学量論的に含まれるように、原料を適切な化学量論組成で用いることが重要である。
【0070】
表面品質
本発明のガラスは、有利には、バルクガラスとガラス製のガラス物品の表面との間の特性勾配によって特徴付けられる。同様に、本明細書に記載されるガラスよりなるガラス物品も本発明の一部である。
【0071】
「表面」とは、本発明によれば、ガラス/空気の界面に近いガラスの部分を意味する。表面を形成するガラスは、ここでは「表面ガラス」と呼ばれ、さらに内側にあるガラスの残りのガラスは、ここでは「バルクガラス」と呼ばれる。表面とバルクとの間を正確に線引きすることは困難であり、それゆえ、本発明では、表面ガラスが約6nmの深さで存在すると定義される。したがって、深さ約6nmの表面ガラスの特性が調べられる。バルクガラスの特性が計算により調べられるのは、ガラス組成が製造によってそれより深くは変化しないからである。いずれにしても、バルクガラスは500nmの深さで存在する。表面は、ガラス製造中の特定の措置によって有利に影響を及ぼすことができる。表面ガラスの特性は、表面で測定されるガラスの特定の特性にとって非常に重要である。これらには、特に耐アルカリ性および耐加水分解性が含まれる。約6nmの深さの表面ガラスの組成は、Cs-TOF-SIMSによって1000eVで測定することができる。
【0072】
本発明によるガラスの製造の範囲で生じる表面材料の損失は、大部分がナトリウムおよびホウ素に関係していることがわかった。ナトリウムは、本発明によるガラス中のリードマーグナライトおよび曹長石に割り当てられている。ホウ素は、本発明によるガラス中のリードマーグナライトまたはカリウム-リードマーグナライトのいずれかに割り当てられているか、または固有の構成相B2O3として存在する。さらに、ナトリウム、ホウ素および他の成分が損失する代わりに、ケイ素が表面で相対的に富化することがわかった。しかしながら、これは限界値内でのみ望ましい。
【0073】
独国特許出願公告第102014101756号明細書(DE102014101756B4)によれば、特に、ナトリウムイオンが表面で低下している場合、加水分解安定性のために好ましい。しかしながら、この低下は同時に、脆弱性または角度自由度の数および熱膨張係数に影響を与える。後者は、平均ポテンシャル井戸深さについての上記式(2)を、個々のカチオンの標準化された割合d
j/Σd
jとの関係が明らかになるように変形した場合に特に明らかになる:
【数4】
【0074】
表3に記載の低いポテンシャル井戸深さを有するカチオンの割合が低下したときの平均ポテンシャル井戸深さを計算すると、明らかに表面領域における値がより高いものとなる。これは、表面における熱膨張係数がより小さく、ひいては内部と表面における膨張係数が異なることを意味する。
【0075】
有利には本発明のガラスに施される熱成形によって、表面においてガラス組成の変化が生じる。この変化は、バルクガラスと比較して表面ガラスの熱膨張の偏りをもたらす。組成に基づき、そして製造方法の好ましい態様と組み合わせることで、本発明によるガラスは、表面において約6nmの深さで、式(4)に従ってCs-TOF-SIMSにより測定された組成物から計算された、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%の熱膨張率(CTE)をバルクガラス中で有することが可能であり、本発明によれば特に好ましい。加水分解安定性の観点から、式(4)に従って計算された熱膨張率は、表面において約6nmの深さで、バルクガラスのそれと比べて、最大99%、特に最大98%または最大95%である。この値は、特にガラスの製造直後に測定することができる。
【0076】
ガラス表面の特定のガラス成分の損失、ひいては熱膨張も、ガラス組成に依存するだけでなく、製造方法にも依存する。特に、遊離B2O3の損失は、ガラス物品を成形する際に水蒸気分圧を調整することによって調整することができる。水蒸気分圧がより高ければ、より多くの三酸化二ホウ素がメタホウ酸の形態で蒸発することになる。同様に、引上げ速度を増加させ、水蒸気分圧を低下させることによって、表面ガラスにおける熱膨張率にも影響を及ぼすことができる。したがって、当業者は、所望の特性を調整することができる。
【0077】
本発明のガラスは、ガラス製品、特に板ガラスまたはガラスプレートの形態で存在してよく、少なくとも1つ、特に2つの火炎研磨された表面を有していてよい。「火炎研磨された表面」は、粗さが特に低いことを特徴とする表面である。本発明による製造方法によって、特別な表面品質を有するガラス製品を製造することができる。ガラス製品は、それが得られる製造方法に基づき、少なくとも1つ、特に2つの火炎研磨表面を有する。機械的研磨とは対照的に、火炎研磨に際して表面は削り落とされないが、被研磨材料は、それが平滑に流れるように高温加熱される。それゆえ、火炎研磨によって平滑な表面を製造するためのコストは、機械的に研磨された表面を製造するコストよりも実質的に低い。火炎研磨された表面の粗さは、機械的に研磨された表面の粗さよりも低い。「表面」とは、成形されたガラス物品に関して、上面および/または下面を意味し、つまり、この2つの面は、他の面と比較して最大である。
【0078】
本発明のガラスの火炎研磨された表面は、有利には、最大5nm、好ましくは最大3nm、特に好ましくは最大1nmの二乗平均平方根粗さ(RqあるいはRMS)を有する。ガラスの表面粗さRtは、有利には最大6nm、さらに好ましくは最大4nm、特に好ましくは最大2nmである。粗さ深さは、DIN EN ISO 4287に従って決定される。粗さRaは、本発明によれば、好ましくは1nm未満である。
【0079】
機械的に研磨された表面の場合、粗さの値は悪化する。さらに、機械的に研磨された表面の場合、原子間力顕微鏡(AFM)の下で研磨トラックを認めることができる。さらに、ダイヤモンド粉末、酸化鉄および/またはCeO2などの機械的研磨剤の残分もAFMの下で同様に認めることができる。機械的に研磨された表面は、研磨後に常に清浄化されなければならないので、ガラスの表面で特定のイオンの浸出が起こる。この特定のイオンの消耗は、二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)により検出することができる。そのようなイオンは、例えばCa、Zn、Baおよびアルカリ金属である。
【0080】
使用
カバーガラスまたはディスプレイガラス、特に金属線用の基材ガラスまたは電気絶縁性の誘電体中間層として、特にインターポーザーとして、例えばエレクトロニクスデバイスもしくはオプトエレクトロニクスデバイスにおいての、または表面造形におけるプラスチック代用品としての本発明に従ったガラスの使用も本発明による。
【0081】
実施例
ベースガラス中で示される組成は、行列(マトリックス)を用いてモル%単位の組成に容易に換算することができる。ベースガラス中の組成は、上記のように以下の標準化された形態で示される:
【表7】
【0082】
これらの組成の、以下の単純な酸化物に関するモル%単位の組成表記への換算は、下記の行列を用いて行われる。
【0083】
【表8】
ここで、ベースガラスに関するモル%単位の組成表記は、列ベクトルとして右側から行列に乗算される。
【0084】
【0085】
列ベクトルを行列に乗算した結果、モルパーセント単位のガラスの組成が得られる。
【0086】
逆に、モルパーセント単位の組成は、それぞれの逆行列を介してベースガラス組成に容易に変換することができる。この場合、当然のことながら、換算時にベースガラスに負の値を与えないベースガラス組成のみが本発明によるものと見なされる。
【0087】
本発明によるガラス
第1の実施例として、次の組成を有するガラスを考察する:
実施例1
【表10】
【0088】
このガラスは、以下の特性を有する:
1.(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数は、したがって0.291である。
2.(2)に従って計算された平均ポテンシャル井戸深さは、1499kJ/molであり、これはまた(3)に従って7.4ppm/Kの熱膨張をもたらす。
【0089】
8%のカリウム-リードマーグナライトを曹長石に切り換えることによって、第2の実施例のガラスが得られる。その目的は、化学強化性を高めることである。
実施例2
【表11】
【0090】
このガラスは、以下の特性を有する:
1.(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数は、したがって0.298である。
2.(2)に従って計算された平均ポテンシャル井戸深さは、実施例1と同様に1499kJ/molであり、これはまた(3)に従って7.4ppm/Kの熱膨張をもたらす。
【0091】
実施例1および実施例2を、実験用溶融物として製造した。どのようにしてガラスが化学強化され得るのかについて調べた。サンプルを、440℃で1回、450℃で1回、9時間にわたりKNO3中で強化した。
【0092】
ガラスシート(30mm×30mm×1mm)を実験用溶融物から製造した。表面を均質化するために、サンプルを超音波浴中で37kHzにより1%の12PA(弱アルカリ性洗浄剤)中で3分間にわたり予備洗浄した。サンプルを440℃および450℃でそれぞれ9時間にわたりKNO3中で処理した。イオン交換後、サンプルから硝酸カリウム塩を除去しなければならない。このために、サンプルを130kHzにより1%の12PA中で5分間にわたり洗浄し、引き続き脱イオン水ですすいだ。
【0093】
シート上の圧縮応力(CS)および浸透深さ(DoL)を測定した。圧縮応力および浸透深さの測定は、表面応力計で実施した。
【0094】
各サンプルについて、CSおよびDoLを各面の真ん中で3回測定した。表は、測定された実験用溶融物(VSM)の平均値および標準偏差を示す。
【0095】
【0096】
この実施例は、インゴットとして実行されている。引上げ技術による製造の場合、水蒸気分圧は、表面の全ホウ素含有率がガラスの内部のホウ素含有率の少なくとも80%になるように調整する。
【0097】
【0098】
このガラスは、以下の特性を有する:
1.(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数は、したがって0.25である。
2.(2)および(3)に従って計算された熱膨張は、6.62ppm/Kである。
【0099】
【0100】
このガラスは、以下の特性を有する:
1.(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数は、したがって0.196である。
2.(2)および(3)に従って計算された熱膨張は、4.96ppm/Kである。
【0101】
【0102】
このガラスは、以下の特性を有する:
1.(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数は、したがって0.193である。
2.(2)および(3)に従って計算された熱膨張は、4.67ppm/Kである。
【0103】
【0104】
このガラスは、以下の特性を有する:
1.(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数は、したがって0.274である。
2.(2)および(3)に従って計算された熱膨張は、7.01ppm/Kである。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のガラス構成相:
【表1】
によって特徴付けられる組成を有
し、二酸化ケイ素と三酸化二ホウ素の割合の合計が、最大35モル%である、ガラスであって、式(2)
【数1】
および式(3)
【数2】
に従って計算された表面ガラスにおける熱膨張係数が、式(2)および(3)に従って計算されたバルクガラスにおける熱膨張係数の少なくとも50%かつ最大99%に相当し、上記式中、mは、発生するカチオン種の数であり、E
pot,j
は、j番目のカチオン種のポテンシャル井戸深さであり、かつz
j,i
は、i番目の構成相におけるj番目の種類のカチオンの数である、ガラス。
【請求項2】
最大2mm、特に最大1mmまたは最大0.5mmの平均厚さを有する、請求項1記載のガラス。
【請求項3】
以下のガラス構成相:
【表2】
によって特徴付けられる組成を有する、請求項1または2記載のガラス。
【請求項4】
以下のガラス構成相:
【表3】
によって特徴付けられる組成を有する、請求項1または2記載のガラス。
【請求項5】
カリウム-リードマーグナライトおよび/またはグロッシュラーの割合が少なくとも1モル%である、請求項1から4までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項6】
前記構成相の他に、最大5モル%の割合を超過しない更なる成分の残分を含んでいてよく、特に、前記残分には、以下の酸化物:SiO2、TiO2、B2O3、Al2O3、ZnO、MgO、CaO、BaO、SrO、Na2Oおよび/またはK2Oは含まれない、請求項1から5までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項7】
前記残分が、ガラス中で最大2モル%、特に最大1モル%の割合を有する、請求項6記載のガラス。
【請求項8】
前記ガラスが、コーディエライト、ケイ酸亜鉛鉱、チタン-ワデアイト、ストロンチウム-長石および/または重土長石を含まない、請求項1から7までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項9】
リードマーグナライトの割合が、カリウム-リードマーグナライトの割合よりも大きく、特に、リードマーグナライトの割合は、カリウム-リードマーグナライトの割合よりも少なくとも2倍大きい、請求項1から8までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項10】
前記ガラスの曹長石、リードマーグナライトおよびカリウム-リードマーグナライトの割合が、合計で、少なくとも50モル%、特に少なくとも60モル%である、請求項1から9までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項11】
式(1)
【数3】
に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数が、
最大0.24であり、上記式中、c
i
は、i番目の構成相のモル分率であり、z
i
は、i番目の構成相における構成単位1個当たりの原子の数であり、f
i
は、i番目の構成相における1原子当たりの角度自由度の数であり、かつ「n」は、構成相の数であることを特徴とする、請求項1から
10までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項12】
式(1)に従って計算された1原子当たりの角度自由度の数が、0.23未満、特に0.22未満である、請求項1から11までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項13】
式(2)および(3)に従って計算された表面ガラスにおける熱膨張係数が、式(2)および(3)に従って計算されたバルクガラスにおける熱膨張係数の最大98%、好ましくは最大95%に相当する、請求項1から12までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項14】
以下の工程:
・ 適切なガラス原料を溶融して、請求項1から13までのいずれか1項記載のガラスを製造する工程、
・ 溶融ガラスから、特にガラスリボンまたはガラスプレートの板状ガラス物品を成形する工程、
・ ガラスを冷却する工程
を有する、ガラスを製造する方法。
【請求項15】
前記ガラス物品の成形を、ダウンドロー法、オーバーフローフュージョン法またはリドロー法で行う、請求項14記載の方法。
【請求項16】
カバーガラスまたはディスプレイガラス、基材ガラスまたは電気絶縁性の誘電体中間層、特にインターポーザーとして、特にエレクトロニクスデバイスもしくはオプトエレクトロニクスデバイスにおいての、または表面造形におけるプラスチック代用品としての、請求項1から13までのいずれか1項記載のガラスの使用。
【外国語明細書】