(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160368
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】医療機器用衝撃検知装置
(51)【国際特許分類】
G01P 15/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G01P15/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024139230
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2020122565の分割
【原出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】517449316
【氏名又は名称】株式会社サンテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】表 則夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳司
(72)【発明者】
【氏名】西尾 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 光崇
(57)【要約】
【課題】本発明は、常時遠隔監視を行うことなく、コストを抑えた医療機器用管理システムの提供、また、医療機器用管理システムに用いる衝撃検知装置として最適な医療機器用衝撃検知装置を提供する。
【解決手段】医療機器MDへ着脱可能に取り付けられ、医療機器MDへ加わる衝撃を検知する衝撃検知装置1と、衝撃検知装置1からの衝撃情報を取得して、医療機関MDへの衝撃情報を管理する管理装置3と、からなる医療機器用管理システム100であり、衝撃検知装置1は、衝撃を計測するセンサ部15、16と計測値を記憶しておく記憶部14と、操作者による送信開始の操作により管理装置3へ記憶部31の計測情報を送信する通信部13と、電源部からなり、管理装置3は、衝撃検知装置1の通信部13からの計測情報を受信する通信部33と、受信した計測情報を基に医療機器MDの管理を行う管理部からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器へ加わる衝撃を計測する医療機器用衝撃計測装置であって、
医療機器の加速度を常時計測することで自由落下したことを検知する第1センサと、
前記第1センサによる自由落下が検知されると衝撃の計測を行う第2センサと、
前記第2センサにより一定以上の衝撃が計測されたか否かを判定する判定部と、
前記判定部により一定以上の衝撃が計測されたと判定されると報知を行う報知部と、
電源部と、
を備えたことを特徴とする医療機器用衝撃検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器用衝撃検知装置に関し、詳しくは、医療機器へ加わる衝撃を検知する医療機器用衝撃検知装置であって、2つのセンサと電源部を備えた医療機器用衝撃検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジポンプや輸液ポンプ等の医療機器は、通常はMEセンターと言われるような保守管理が行われる場所に保管されており、必要になるとそこから病室等の医療現場に持ち出されて使用される。
【0003】
従って、持ち出しの際や取り付けの際、看護士等が医療機器を落としてしまったり、壁にぶつけてしまったり、というように医療機器に予期せぬ衝撃を加えてしまうことがある。このような医療機器への衝撃は、医療機器の故障や誤動作につながることから、できるだけ防止する必要があり、もしそのような衝撃が加わった場合には、その事実を正確に把握し、修理、点検を行う必要がある。つまり、医療機器は衝撃によるリスク管理が重要である。
【0004】
このような医療機器に加わる衝撃によるリスク管理を行うものとして、特許文献1には、常時遠隔監視による医療機器運用管理システムがある。この文献1の管理システムは、物理的な衝撃を検知するための加速度センサを備えた遠隔監視用アクティブ型RFIDタグ(以下において適宜、検知装置と記す)を医療機器に装着して、常時遠隔監視を行うシステムとなっている。
【0005】
そして、常時遠隔監視であるため、現場で医療機器の落下等が生じると、そのことが直ぐにわかるため、現場の看護士等に連絡する等すれば現場における医療機器のリスク管理を行うことができる。また、落下等が生じた記録も残っているので、保守管理の際の医療機器のリスク管理も行うことができる。つまり、医療現場と保守管理という2つの場面で医療機器のリスク管理を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】株式会社ムトウテクノス ショックウォッチ、[令和2年6月5日検索]、インターネット〈http://hosma.net/shockwatch/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、常時遠隔監視を行うシステムであるため、導入コストや運用コストが大きいという問題がある。
【0009】
例えば、導入コストであれば、特許文献1のシステムは、医療機器に装着する遠隔監視用アクティブ型RFIDタグの他に、ロケーション管理用小型中継無線線が必須となっている。また、無線LANネットワーク経由での運用のため当然ながら院内に無線LANネットワークが導入されている必要が生じる。小規模な病院はこのような環境整備のための導入コストが負担となるのは当然であるが、医療機器の数が数千台にもなるような大規模な病院においても、システム構築のための機器の数が多くなることからも導入コストが大きくなってしまう。
【0010】
また、運用コストであれば、常時監視のシステムであることから、監視を行う臨床工学技士等の人材が常時必要となる。しかしながら、現実的には医療機器へ生じるトラブルの発生確率は低いため、低い発生確率において、常時人が監視しておくことは人的コストの増加につながる。
【0011】
また、特許文献1のようなシステムは、現場において医療機器を設置や使用する看護士等にとって、常に監視されているという精神的な負担を生んでしまう。このため、本来の業務の負担ですら大きい看護士等にとって、余計な負担が増すために好ましいことではない。また、医療機器によっては、例えばその医療機器を点滴スタンドに取り付けた状態で、患者自身が移動することもある。このような使用の場合に、医療機器が常時遠隔監視されていることを患者が知っていると、患者にとっても精神的な負担となる。
【0012】
また、特許文献1のシステムにおいて、医療機器に装着される検知装置からは、定期的に情報発信が行われるため、電磁波による医療機器や周辺の機器への影響も考えられる。
【0013】
また、特許文献1の検知装置は、段落番号[0069]に記載されているように、装着位置が商用電源の受電検知可能な位置に限定されてしまう。しかしながら、実際の医療機器の形状は様々であり、例えば、医療機器の操作部の近くには、このような検知装置を装着したくないという場合でも、商用電源の受電検知可能な位置と、医療機器の操作部とが非常に近い医療機器もある。従って、検知装置の装着位置については、限定されない方が好ましい。
【0014】
また、医療機器の現場での使用期間も様々であることから、長期間使用された場合にも稼働できるよう検知装置の消費電力はできるだけ少なくすることが好ましい。しかしながら、特許文献1のようなシステムでは、定期的な通信が必要となることからも、検知装置の消費電力が多くなってしまうため、長期の使用が難しいか、電源の大型化による検知装置の大型化というような問題も生じる。
【0015】
また、病院の規模によっては、病院内にMEセンターのような保守管理を行う部署がおけないことも考えられる。このような状況下で、例えば、医療機器の保守管理の外注化や医療機器のリースも考えられ得るが、文献1のようなシステムでは、このような利用は想定されておらず、実際に運用することはできない。
このように、特許文献1のシステムは、コストの増大等の問題が多いことから、実際の導入は難しい。
【0016】
一方、非特許文献1のような医療機器用衝撃検知チップは、特許文献1のような導入の難しさはないが、所定の衝撃が検知されてしまうと、その都度取り換えが必要となる。また、病室での使用等、現場における医療機器のリスク管理としては使用できるが、保守管理の際の医療機器のリスク管理としては、使用し難い。具体的には、非特許文献1のチップは、ある一定以上の衝撃が加わると変化するか、一定以上の衝撃が加わらなければ変化が起きない。しかしながら、一定以下の衝撃が複数回加わっていたような場合に機器の使用に問題が生じることもある。非特許文献1の医療機器用衝撃検知チップでは、このような過去の詳しい履歴を知ることができない。
本発明は、現場における医療機器のリスク管理と、保守管理の際の医療機器のリスク管理を行うことができる医療機器用管理システムに用いる衝撃検知装置として最適な医療機器用衝撃検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の一つの態様に係る医療機器用衝撃検知装置においては、医療機器へ加わる衝撃を計測する医療機器用衝撃計測装置であって、医療機器の加速度を常時計測することで自由落下したことを検知する第1センサと、前記第1センサによる自由落下が検知されると衝撃の計測を行う第2センサと、前記第2センサにより一定以上の衝撃が計測されたか否かを判定する判定部と、前記判定部により一定以上の衝撃が計測されたと判定されると報知を行う報知部と、電源部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
通常は消費電力の少ない第1センサで、医療機器に生じた落下の開始のような小さな衝撃を計測しておき、第1センサで計測されると、第2センサを起動させることで、実際に医療機器へ加わった大きな衝撃を計測することで、装置全体での消費電力を抑えることができる。そのため、電源部も小型でよいので、装置の小型化になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】Aは本発明の実施形態に係る医療機器用管理システムのイメージを示す図であり、Bは衝撃検知装置の外観を示す斜視図であり、Cは衝撃検知装置のプリント基板の要部を示す斜視図であり、DはCの底面の斜視図である。
【
図2】
図1の衝撃検知装置の要部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の管理装置の要部の構成を示すブロック図である。
【
図4】衝撃検知装置の衝撃検出に係る、第1センサと第2センサの要部の波形を示す図である。
【
図5】
図1の衝撃検知装置の要部の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の管理装置の要部の動作を示すフローチャートである。
【
図7】Aは管理装置の判定結果の表示画面であり、Bは保存データの表示例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は発明請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0021】
[実施形態]
本発明の実施形態の医療機器用管理システム100の要部の構成を説明する。
図1Aは医療機器用管理システム100のイメージを示す図である。医療機器用管理システム100は、医療機器MDへ両面テープで着脱可能に取り付けられ医療機器MDへ加わる衝撃を検知する衝撃検知装置1と、ME(Medical Engineering)センターに設置されて衝撃検知装置1からの衝撃情報を取得して、医療機関への衝撃情報を管理する管理装置3と、からなる。
【0022】
衝撃検知装置1が取り付けられた医療機器MDは、輸液ポンプやシリンジポンプ等であり、これらは病室や病床の医療現場で使用される。また、医療機器MDの保守管理を行うMEセンターでは、医療現場での使用を終えた医療機器MDを回収する。そして、臨床工学技士が衝撃検知装置1から衝撃情報を管理装置3に取り込んで、この衝撃情報を確認する。衝撃情報を確認し、医療機器MDの点検や修理のメンテナンスが必要と判定されると、メンテナンスが行われる。衝撃情報を確認し使用について問題のない医療機器MDやメンテナンスが終わった医療機器MDは、使用されるまで保管され、必要となると医療現場へと持ち出される。
【0023】
なお、本実施形態における管理装置3としては、ノートパソコンが用いられているが、デスクトップパソコンや専用機でも構わない。また、管理装置3の設置場所は、国家資格の臨床工学技士が必要なMEセンターに限定するものではなく、一般の医療従事者や職員が管理装置3を所望する場所で使用してもよい。また、病院内に限定されるわけではなく、
図1AのMEセンターが、メンテナンスの外注業者や、医療機器MDのレンタル会社ということでも構わない。また、衝撃検知装置1は、医療機器MDに両面テープで取り付けているが、面ファスナーや、取付用アタッチメントを介して着脱可能に取り付けても構わない。
【0024】
[医療機器用管理システムの構成]
図1B、
図1C、
図2、
図3を用いて医療機器用管理システム1の各要部の構成を説明する。
図1Bは衝撃検知装置1の外観の斜視図であり、
図1Cは衝撃検知装置1のプリント基板11の斜視図であり、
図1Dは
図1Cの底面の斜視図であり、
図2は衝撃検知装置1のブロック図である。
図3は管理装置3のブロック図である。
【0025】
衝撃検知装置1は、衝撃を計測するセンサ部と、計測値を記憶しておく記憶部と、操作者による送信開始の操作により管理装置3へ記憶部の計測情報を送信する送信部と、電源部と、からなっている。より具体的には、
図1C、
図1Dに示すように、衝撃検知装置1を構成するプリント基板11には、制御部12と送受信可能な通信部13を備えたLSIと、EEPROM等からなる記憶部14と、第1センサ15と、第2センサ16と、赤色(R)のLED171と、スイッチ18と、着脱可能な電池19が搭載される。
【0026】
ここで、第1センサ15は、医療機器MDが自由落下等したことを検知するために用いる3軸の加速度センサである。具体的には、STマイクロエレクトニクス製のLIS2DW12を用いている。そして、第1センサ15は、計測範囲が±16gと狭いが、第2センサ16よりも小型で省電力な加速度センサである。
【0027】
また、第2センサ16は、医療機器MDに加わった衝撃を計測するために用いる加速度センサである。具体的には、アナログデバイス製のADXL375を用いている。第2センサ16は、計測範囲が±200gと広く、3軸の加速度センサである。また、電池19は電源部を構成するものであり、具体的には、CR2032のボタン電池を用いている。
【0028】
図1Bに示すように、プリント基板11はパッキン(図示せず)付きのケース20と底蓋21に収納されている。LED171からの発光は透明な報知灯172で導光・拡散されて使用者から視認される。
【0029】
ケース20には一端側をネジ221で螺着されたオペレーション用のボタン22が取り付けられている。そして、ボタン22の他端側が使用者によって押圧されることにより、スイッチ18がONとなり、その押圧の付勢が無くなれば、スイッチ18はOFFに復帰する。また、ケース22から回転させることで着脱可能な電池蓋23によって、電池19は交換可能となっている。
【0030】
図2のブロック図に示すように、衝撃検知装置1の記憶部14は、オペレーションシステムやアプリケーションプログラム等のプログラム141と、登録名、重さグループや衝撃情報等のデータ142を記憶する。CPUである制御部12は、プログラム141に基づいて各部を制御する(
図6参照)。アンテナ131を備えた通信部13は、管理装置3と送受信を行う。第1センサ15は、計測した加速度の情報を制御部12に送る。第2センサ16は計測した加速度の情報を制御部12に送る。スイッチ18はON/OFFの情報を制御部12に送る。LED171と報知灯172からなる報知部17は、制御部12の動作に基づき赤色(R)を発光する。電池19は、各部の電源部であり、各部へ駆動電力を供給する。
【0031】
管理装置3は、衝撃検知装置1の通信部13からの計測情報を受信する受信部と、受信した計測情報を基に医療機器MDの管理を行う管理部と、からなる。より具体的には、
図3のブロック図に示すように、管理装置3の記憶部31は、オペレーションシステムやアプリケーションプログラム等のプログラム311と、登録名、重さグループや衝撃情報等のデータ312(
図5A参照)を記憶する。CPUである管理部32は、プログラム311に基づいて各部を制御する(
図7参照)。アンテナ331を備えた送受信可能な通信部33は、衝撃検知装置1と送受信を行う。入力部34は、キーボード等からなり、入力されたデータを管理部32に送信する。液晶表示装置からなる表示部35は、管理部32に基づいて表示を行う。電源部36は充電式電池や商用電源からなり、各部に駆動電力を供給する。
【0032】
次に
図4を用いて、本実施形態の衝撃検知装置1における衝撃の検出と判定について説明する。
図4は衝撃検知装置1における計測方法を示す第1センサ15と第2センサ16の波形である。
【0033】
衝撃検知装置1が取り付けられた医療機器MDの自然落下が開始すると、第1センサ15で計測する加速度が減少し始め、計測値がゼロになっていく。制御部12は、この変化量を基にして自然落下の開始を検出する(
図4のT0)。そして、制御部12は第2センサ16での加速度の計測を開始させる(
図4のT0)。そして、医療機器MDが床に落下すると、第2センサ16では衝撃値(加速度)が計測され始める(
図4のT1)。そして、衝撃がおさまると、すなわち、閾値未満の加速度が所定時間続くと(
図4のT2)、制御部12は第2センサ16での加速度の計測を停止させる。そして、制御部12は、計測された衝撃の最大値を衝撃情報として記憶部14に記憶する。
【0034】
このように衝撃検知装置1は、常時加速度の計測を行う超省電力の第1センサ15を用いることにより、衝撃が予測されるときのみ間欠的に第2センサ16での加速度検出を行う構成となっている。つまり、第2センサ16は、加速度検出を行っていない状態では(
図4Bの計測期間以外のとき)待機モードとなり、電力消費をほとんど行わない。従って衝撃検知装置1は、電池19を軽くしたり、電池19の寿命を長くしたりすることができ、小型、軽量で長期間使用できることから、医療機器用衝撃検知装置として非常に適している。
【0035】
なお、第1センサ15は、3軸の加速度センサであり、自由落下の方向以外は通常加速度がゼロになっているが、医療機器MDが真横の壁に衝突するような自由落下を伴わない場合、横方向の加速度が急激に増えることになる。従って衝撃検知装置1は、第1センサ15でのこのゼロから所定の値までの変化量を基にして第2センサ16での計測を開始することで、自由落下を伴わないような衝撃の計測も行うことができる。
【0036】
また、衝撃検知装置1の第1センサ15として、本実施形態で例示したものに限定されるわけではなく、また加速度センサ以外に例えば、振動センサを用いることもできる。
【0037】
[医療機器用管理システムの動作]
図5、
図6、
図7を用いて、医療機器用管理システムの主要な動作を説明する。
図5は衝撃検知装置1の制御部12の動作を示すフローチャートである。
図6は管理装置3の管理部32の動作を示すフローチャートである。
図7Aは管理装置の判定結果の表示画面であり、
図7Bは保存データの表示例を示す表である。
【0038】
まず、図示していないが衝撃検知装置1には、取り付けられた医療機器MDに関する情報が、管理装置3との通信により取得され、記憶部14に記憶されている。管理装置3との通信は、送信開始の操作により行われるが、具体的には、衝撃検知装置1のボタン22が押圧されることにより行われる。また、医療機器MDに関する情報としては、医療機器MDを特定するための登録名や、後述する医療機器MDの重さグループや、重さグループに対応した使用を中止すべき衝撃値の情報等である。
【0039】
次に、衝撃検知装置1の衝撃検知動作について説明する。まず、第1センサ15の計測により医療機器MDの自然落下が検出されると(S1のY)、第2センサ16により加速度の計測を開始し、落下が終了するまで計測を行う(S2)。そして計測期間中の最大の衝撃値(加速度)を記憶部14に衝撃情報として記憶する(S3)。なお、この衝撃情報には、最大の衝撃値の他に、計測していた期間(ms)の情報や、検出軸の方向に関する情報、日時に関する情報等、他の情報が含まれていても構わない。
【0040】
そして、次に計測した衝撃値に基づいて、報知部17による報知が必要か否かの判定を行う(S4)。具体的には、計測した衝撃値が、記憶部14に記憶されている使用中止すべき衝撃値よりも大きいかどうかで判定を行う。そして、判定の結果が、使用を中止すべき衝撃値よりも大きければ(S4のY)、報知部17の赤色LED171を点灯させる(S5)。
【0041】
このように、衝撃検知装置1における報知部17での点灯は、看護士等に医療機器MDの使用をいったん中止させるための報知である。従って、医療機器用管理システム100は、衝撃検知装置1を用いて医療現場における医療機器のリスク管理も行うことができる。なお、衝撃検知装置1における報知方法は光に限定するものではなく、例えば、音による報知でもよい。
【0042】
次に、管理装置3の衝撃情報の管理動作について説明する。管理装置3は
図7Aに示すような、衝撃検知装置1のボタン押しの要求画面を表示部35に表示する(S11)。表示部35の表示を確認し、送信開始の操作となる衝撃検知装置1のボタン22が押されると、通信を開始する。そして、衝撃検知装置1の登録名や衝撃情報が送信され、管理装置3はこの情報を受信する(S12)。そして、受信した衝撃情報等を記憶部31に保存する(S13)。そして、表示部35上の判定開始(図示せず)が臨床工学技士等によって選択されると(S14のY)、判定処理が行われる。
【0043】
この判定処理について説明する。医療機器MDには様々な機器があり、機器によって重さも異なっている。そして同じ衝撃値であっても、その重さによって、医療機器MDに与えるダメージも異なってくる。本実施形態においては、管理装置3は、医療機器MDの重さを
図7Aに示すようにA、B、Cの3つのグループに大まかに分類している。例えば、医療機器MDの重さが1kg前後をAグループ、2kg前後をBグループ、3kg前後をCグループとしている。
【0044】
そして、管理装置3では、事前に検証した結果に基づいて、Aグループでは、衝撃値が80(g)以下は使用に問題のない判定結果G(緑色)、80(g)~110(g)では点検が必要な判定結果Y(黄色)、110(g)以上は使用できない判定結果R(赤色)とする判定基準が設定されている。また、Bグループでは、70(g)以下が判定結果G、70(g)~100(g)が判定結果Y、100(g)以上が判定結果Rとする判定基準が設定されている。Cグループは、60(g)以下が判定結果G、60(g)~90(g)が判定結果Y、90(g)以上が判定結果Rとする判定基準が設定されている。管理装置3では、このような判定基準に基づいた判定処理が行われる。
【0045】
そして、判定処理が行われた判定結果が表示部35に表示される(S15)。本実施形態では、
図7Aに示すように、Bグループに属する医療機器MD(登録名:SHOCK-01)に、使用できない判定結果Rが点灯(塗りつぶし箇所)している。そして、画面上の保存データ表示が選択されると(S16のY)、
図7Bに示すデータが表示される(S17)。
【0046】
図7Bの表示を確認することで、医療機器MD(登録名:SHOCK-01)には、Bグループにおいて、点検が必要な衝撃(70~100g)が使用中に1回、使用を中止する衝撃(100g~)が使用中に1回加わっていたことがわかる。
【0047】
このように、管理装置3を介して衝撃のランクを臨床工学技士などに知らせることができるため、保守管理の場面において医療機器のリスク管理を簡単に行うことができる。
【0048】
なお、
図7Bの表示例は、あくまでも説明のための表示例である。そして、本実施形態においては、衝撃検知装置1において、衝撃を5回まで記憶できる構成となっており、
図7Bでは、衝撃検知装置1において4回衝撃が計測されたことを示している。また、衝撃計測の回数は5回に限定する必要はなく、もっと多くの回数でも構わないが、医療機器MDの通常の使用においては、5回程度の衝撃が計測できれば十分であると思われる。
【0049】
また、衝撃検知装置1は、報知部17を備えており、医療現場において、医療機器MDに大きな衝撃が加わった場合に報知を行うが、報知部17での報知を行う基準と、管理装置3で行う保守管理の際の判定基準(G、Y、R)とは異なる基準で構わない。
【0050】
また、衝撃検知装置1はボタン22が押されたときのみに管理装置3へ衝撃情報の送信を行うので、常時遠隔監視ではなく、システムの導入コストが削減され、電磁波による医療機器などへの影響が少ない。なお、衝撃検知装置1と管理装置3の通信接続はアンテナ通信であったが、本発明はこれに限定するものではなく、有線ケーブルやUSBなどのコネクタであってもよい。
【0051】
また、医療機器用管理システム100においては、衝撃検知装置1では送受信可能な通信部13を用い、管理装置3では送受信可能な通信部33を用いた構成となっているが、衝撃検知装置1では送信のみの送信部、管理装置3では受信のみの受信部を用いた構成としても構わない。
【0052】
また、図示していないが本発明の医療機器用管理システム100は、衝撃検知装置1の、記憶部14の登録名、重さグループを変更することができる。例えば、
図7Aの「初期登録」タブをクリックして表示される画面で登録名を消去、変更できる。また、本発明の医療機器用管理システム100は、衝撃記録データを読み出すと同時に、衝撃記録データを消去する。これらの機能により、医療機器MDの動作検査後に問題無しとなった医療機器MDでの衝撃検知装置1の再使用や、他の医療機器MDへの衝撃検知装置1の流用が可能となる。
【0053】
また、本実施形態において衝撃検知装置1は、医療機器用管理システム100を管理装置3とともに構成していたが、衝撃検知装置1は、単独の医療機器用衝撃検知装置としても使用することができる。単独の医療機器用衝撃検知装置として使用したとしても、小型で長期間使用することができ、また医療現場における医療機器のリスク管理を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
100:医療機器用管理システム
1:衝撃検知装置
12:制御部
13:通信部
14:記憶部
15:第1センサ
16:第2センサ
17:報知部
19:電池
22:ボタン
3:管理装置
31:記憶部
32:管理部
33:通信部
MD:医療機器