(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160374
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】薄膜処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 1/22 20060101AFI20241106BHJP
B01D 1/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B01D1/22 C
B01D1/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】37
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024139903
(22)【出願日】2024-08-21
(62)【分割の表示】P 2021573746の分割
【原出願日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】19179678.8
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519225761
【氏名又は名称】アウロテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AUROTEC GMBH
(71)【出願人】
【識別番号】521542395
【氏名又は名称】ブス-エスエムエス-カンツラー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Buss-SMS-Canzler GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ツィケリ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】キツラー,ハンネ
(72)【発明者】
【氏名】ツァウナー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】アイグナー,パウル
(72)【発明者】
【氏名】ロンギン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ネフ,ライナー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トラブルの少ない粘性材料を処理する薄膜処理装置を提供する。
【解決手段】ハウジング内部16を取り囲み、材料処理空間160を形成する加熱および/または冷却可能なハウジングケーシング14を備え、水平に対して最大20°の傾斜で方向付けられる処理ハウジング12と、処理される材料を材料処理空間に導入するために、プロセスハウジング12の入口ゾーン18に配置された入口ノズル20と、処理された材料を材料処理空間から排出するために、プロセスハウジング12の出口ゾーン22に配置された出口ノズル24と、材料処理空間内に配置され、ハウジングケーシングの内面上に材料膜を生成し、材料を出口ゾーン22に向かう方向に搬送するために同軸に延びる駆動可能なローター軸とを備え、ローター軸本体上に配置された少なくとも1つのリフト要素が、ローター軸の回転中にローター軸本体の方向に持ち上げ力を生じさせるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性材料を処理するための薄膜処理装置であって、
軸方向に延びる回転対称のハウジング内部(16)を取り囲み、材料処理空間(160)を形成する加熱可能および/または冷却可能なハウジングケーシング(14)を備え、水平に対して最大20°の傾斜で方向付けられる処理ハウジング(12)と、
処理される材料を材料処理空間(160)に導入するために、プロセスハウジング(12)の入口ゾーン(18)に配置された入口ノズル(20)と、
処理された材料を材料処理空間(160)から排出するために、プロセスハウジング(12)の出口ゾーン(22)に配置された出口ノズル(24)と、
材料処理空間(160)内に配置され、ハウジングケーシングの内面(15)上に材料膜を生成し、材料を入口ゾーン(18)から処理ゾーン(25)を経て出口ゾーン(22)に向かう方向に搬送するために同軸に延びる駆動可能なローター軸(44)であって、中央ローター軸本体(50)と、その周縁に配置され、その半径方向の最も外側端部がハウジングケーシングの内面(15)から距離を置かれるスイーパー要素(43)とを有するローター軸(44)とを備え、
ローター軸(44)が、ローター軸本体(50)上に配置された少なくとも1つのリフト要素(56)を備え、このリフト要素が、ローター軸(44)の回転中にローター軸本体(50)の方向に持ち上げ力を生じさせるように構成されていることを特徴とする、薄膜処理装置。
【請求項2】
リフト要素(56)は、回転方向の先端に先行端(64)を備えた平面状の入射流路部(62)を有し、この先行端は、該先行端より後に続く入射流路部(62)の領域(66)と比べ、ハウジングケーシングの内面(15)から、より大きな距離で配置され、それによって、回転方向と反対の方向に向かって狭くなるギャップ(68)が入射流路部(62)とハウジング内面(15)の間で形成されており、このギャップは、特に連続して狭まるギャップであることを特徴とする請求項1に記載の薄膜処理装置。
【請求項3】
前記入射流路部(62)は、前記ローター軸本体(50)の円周のうち少なくとも10°の角度範囲β1を占めていることを特徴とする請求項2に記載の薄膜処理装置。
【請求項4】
前記リフト要素(56)の少なくとも一部が、各場合のスイーパー要素(43)によって形成されていることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の薄膜処理装置。
【請求項5】
リフト要素(56)が、少なくともほぼ傾斜した屋根形状のウェブプレート(560)からなり、その頂上部(58)がローター軸(44)の軸方向と少なくともほぼ平行に延在していることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の薄膜処理装置。
【請求項6】
リフト要素(56)、特にウェブプレート(560)が、その半径方向外側に少なくとも1つの螺旋状に延在する搬送フィン(70)を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の薄膜処理装置。
【請求項7】
リフト要素(56)の少なくとも一部が、好ましくはプロセスゾーン(25)において、ローター軸(44)が支持されるローター軸受の間でその中央に位置する領域、に配置されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の薄膜処理装置。
【請求項8】
少なくとも一時的に粘度が100Pa・s以上である材料の処理の処理中に使用することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の薄膜処理装置の用途。
【請求項9】
セルロースを溶媒と揮発性非溶媒に溶解した懸濁液から、セルロースの溶媒溶解液を製造する方法であって、薄膜処理装置の入口に懸濁液を導入する工程、ハウジングケーシング上にフィルム状に塗布・分散する工程、薄膜処理装置のプロセスハウジング内で共通の軸を中心に回転するスイーパー要素により、熱交換器を用いて温度制御する工程、揮発性の非溶媒を蒸発させ、セルロースを溶解させる工程、セルロースの溶液を薄膜処理装置から出口を通して排出する工程を含み、
スイーパー要素の少なくとも一部が、出口における排出量が、収容ケーシングの温度制御された表面1平方メートル当たり300kg/h~600kg/h、好ましくは350kg/h~550kg/h、更に好ましくは380kg/h~480kg/hのセルロース溶液となるようにセルロースを出口方向に前進させることを特徴とする方法。
【請求項10】
スイーパー要素の比面積比が10m
2s/m
3以下、より好ましくは8m
2s/m
3以下、更に好ましくは5m
2s/m
3以下にあり、スイーパー要素の比面積比が、式
で表され、ここで、
ARは、スイーパー要素の比面積比(m
2s/m
3)、
AMは、薄膜処理装置の処理ゾーンにおけるケーシング内面(単位:m
2)、
ABは、スイーパー要素搭載面積(m
2)、
Vuは、スイーパー先端の周速(m/s)である、
ことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
a)入口ゾーンにおける比負荷が、80kg/h/dm3~380kg/h/dm3、好ましくは120kg/h/dm3~370kg/h/dm3、より好ましくは150kg/h/dm3~350kg/h/dm3、及び/又は
b)処理ゾーンにおける比負荷が65kg/h/dm3~260kg/h/dm3、好ましくは70kg/h/dm3~200kg/h/dm3、より好ましくは80kg/h/dm3~150kg/h/dm3、及び/又は
c)出口ゾーンにおける比負荷が、2kg/h/dm3~125kg/h/dm3、好ましくは 5kg/h/dm3~100kg/h/dm3、より好ましくは 10kg/h/dm3~50kg/h/dm3、及び/又は
d)後処理ゾーンにおける比負荷は、0kg/h/dm3~500kg/h/dm3、より好ましくは0kg/h/dm3~250kg/h/dm3である、
ことを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
懸濁液の導入からセルロース溶液の出力まで、又はセルロースの溶解までの処理時間が少なくとも60秒、好ましくは少なくとも100秒、より好ましくは100~1000秒であることを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
係合先端力が1.1kg/sm2~5.5kg/sm2、好ましくは1.1kg/sm2~2.8kg/sm2、より好ましくは1.1kg/sm2~1.4kg/sm2の範囲にあり、および/または熱交換器を用いて温度制御された収容ケーシングの表面が0.5m2~150m2、好ましくは60m2~125m2にあることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載された方法。
【請求項14】
スイーパー要素の半径方向最外端が、スイーパー要素の回転によって1.5m/sから12.5m/sの速度で移動されること、および/または熱交換器を用いて温度制御されたハウジングケーシングの一部にわたってスイーパー要素が1500から4000/minの周波数で連続して移動すること、および/または直接連続して配置されたスイーパー要素がスイーパー要素の半径方向最外端間に100mmから300mmの間隔で互いに後続していることを特徴とする請求項9から13までのいずれか一つの項に記載された方法。
【請求項15】
懸濁液が1mmから50mm、好ましくは2.0mmから15mmの膜厚で塗布されること、および/または
スイーパー要素が0.8dm2~2dm2の面積で平均して懸濁液または溶液と接触していること、および/または
懸濁液が、式s=(ln(ms/60))/xによる膜厚を有すること、ここで、sはmm単位で示された膜厚、msは懸濁液の搬送流量、xは0.45~7、好ましくは0.5866の定数であることを特徴とする、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、請求項1の前書き部分に記載の粘性材料を処理するための薄膜処理装置に関するものである。
一般的な薄膜処理装置は、当業者には既に知られており、例えば、様々な物質の蒸留、濃縮、脱揮、乾燥などに使用されている。さらに、薄膜処理装置は、混合や、少なくとも一時的に粘性状態が存在する反応、特に、例えば、重合反応などにも使用される。薄膜処理装置は、連続運転が主流である。
【背景技術】
【0002】
薄膜処理装置には、薄膜蒸発器が含まれる。これは、温度制御可能なハウジング壁の内面に材料を分散させることで高い熱流密度が得られ、最終的に単一のパスで大きな蒸発量と高い蒸発率を可能にするという原理に基づいている。
【0003】
材料を薄膜で分配するために、特にワイパー要素を取り付けたローターを提供することができる。材料搬送設備を付加的に備えた適切な薄膜蒸発器は、当業者にはフィルムトルーダーという名称で知られている。
【0004】
フィルムトルーダーの形態の薄膜加工装置は、例えば、CH523087に記載されている。この文献によると、加熱可能および/または冷却可能な処理室内において、筒状の本体の外周に傾斜羽根を均等に配置し、さらにハウジングケーシングの内周面近傍に軸方向に達するか内周面に接触するワイパー羽根を配置した駆動ローターを同軸上に配置し、この駆動ローターを回転させることにより、ハウジングケーシングの内周面近傍の傾斜羽根を回転させることが記載されている。運転中、被処理物は回転設定されたワイパーブレードによって掴まれ、ハウジングの内壁に薄膜状に分布し、斜めに配置された羽根部品が掴まれた被処理物に排出口に向かう運動成分を付与する。
【0005】
DE10050997C1には、さらなる薄膜蒸発器が記載されている。ここで、ハウジングの内側に導入された物質を分散させるためのスクレーパー要素を備えた軸が加熱室内に配置され、軸はベアリングブッシュに摺動可能に取り付けられたベアリングジャーナルを有している。
【0006】
動作中、通常垂直方向に配向される薄膜蒸発器に加えて、さらなる薄膜処理装置、例えば一般に水平方向に配向される薄膜乾燥器が当業者には知られている。
【0007】
これに対応する薄膜乾燥機はDE4117630に記載されており、それによると、熱交換器チューブ内に細長い羽根付きローターが配置されており、このローターは乾燥すべき材料を熱交換器チューブの内周面に搬送する。羽根付きローターの高い曲げ剛性を確保するために、羽根付きローターの周囲に、羽根付きローターの長手方向に走るクランピングタイと、クランピングタイを挟み込む締結フランジからなるバスケット状の構造を提案する。羽根付きローターがたわんだときの復元力をさらに高めるため、締結用フランジの間に羽根付きローターの長さ方向に均一に分布するラジアルスペーサを配置する。さらに、羽根付きローターのクランプタイに回動自在に取り付けられ、内周面の材料を掃く複数の補助羽根を備えている。また、補助ベーンはバスケット構造の剛性アップにも寄与する。しかし、これらは揺動可能に取り付けられているため、ベーン付きローターの軸に向かってラジアル方向の力を伝えることができない。この構造では、リアクターの製造に手間がかかり、処理する材料によっては、入口側から出口側への液体の流れに支障をきたすこととなる。
【0008】
WO93/11396は、熱処理、特にスラッジの乾燥のための蒸発器装置に関し、加熱可能な中空円筒形の蒸発器本体を備え、この蒸発器本体はほぼ水平に配向され、一端には製品入口が、他端には製品出口が設けられている。蒸発器本体の製品チャージされた内部には、実質的に半径方向に配向したベーンを備えた外部駆動可能なローターが配置されている。
【0009】
さらに、WO2004/041420には、水平に配置された混合装置の形態で、混合されるべき成分が中空円筒体の内壁に薄膜状に分布し、ローターブレードと中空円筒体の内壁との相互作用によって成分が混合される薄膜処理装置が開示されている。
【0010】
GB952,101Aは、蒸発室を画定する水平円筒形容器からなる蒸発装置を開示している。蒸発装置はまた、撹拌要素を備えた撹拌器を有し、この撹拌器は、容器の長手方向軸と同心に配置された軸要素によって支持されている。攪拌機とその駆動装置は、攪拌機の回転に伴って被処理物が蒸発室の壁面に衝突するように設計されています。一実施形態では、攪拌機は、周方向に均一に配置された6つの放射状に延びるアームから構成されている。アームは、軸方向に伸びる帯状の撹拌部材を支持しており、その両端は調整可能に取り付けられており、内側に回されるようになっている。
【0011】
先行技術に記載された水平薄膜処理装置は、処理される材料が乾燥状態にされるプロセス、特に粒状に変換され得るプロセスに向けられたものである。薄膜処理装置の用途によっては、長いローター軸を装備する必要がある。例えば、セルロースを溶液化し、そこから例えばリヨセル繊維と呼ばれるものを製造するための装置では、処理ゾーンだけで10mから15mのオーダーで比較的長いローター軸が使用されている。これは、装置に投入されたセルロース懸濁液からまず水が蒸発し、このように蒸発した懸濁液を均質化しなければ、求められる品質の溶液を得ることができないからである。リヨセル法用に設計されたこのような装置は、通常、フィルムトルーダーの場合と同様に、垂直方向に構築され、重力のために、追加の搬送部材が設けられ、最終的に装置の処理面の良好な洗浄も達成されるようにする。しかし、縦型であるため、装置を格納するための非常に高い建物を用意しなければならない。既知の縦型装置では、製品供給口が上部に配置されているため、製品供給もそれに合わせて設定する必要がある。また、駆動、加熱、真空などの機器も同様である。
【0012】
「リヨセル」は、BISFA(The International Bureau for Standardization of Man-Made Fibres)が、セルロースから誘導体を形成せずに製造したセルロース繊維の総称として定めているものである。リヨセル法では、セルロースを化学修飾せずに溶解する必要がある(Zhang et al, BioResources 13(2), 2018参照:4577-4592)。この溶解工程は、1段階または複数段階で行うことができる。例えばDE4441468に記載されているような二段階法は、異なる装置、特に予備蒸発のための蒸発器と水平スクリュー溶解器において行われる二段階において、およびその間の水、溶媒およびセルロース濃度の調整が難しく、結果として紡糸というさらなる処理段階に対して悪い特性を有する不均一なセルロース溶液が提供されるという欠点を持っている。WO2013/156489A1には、同様の2段階法が記載されており、成形品の基材、例えばセルロース溶液を、垂直薄膜蒸発器および厚膜溶解器(混練反応器)で出発物質を処理することにより、成形品が得られる。
【0013】
2段式の装置を避けるためには、1段式の装置で溶解の全工程を完了できるようにしなければならない。そのため、一般的に大きなサイズの装置が必要となる。垂直薄膜処理装置を用いてセルロース溶液を製造する例については、EP0356419A2、WO94/06530A1、WO2008/154668A1に記載されている。
【0014】
縦型の場合、装置関連や建設コストがかかるため、薄膜処理装置は基本的に横型が望ましいとされている。しかし、ローター軸の重量とそれに伴う重力の影響によるたわみのため、特に比較的長いローター軸を持つ装置では、垂直設置の場合と同じプロセス条件でのトラブルフリーな運転を実現することは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明の目的は、比較的長いローター軸が設けられた場合でも、トラブルのない運転を確保できる実質的に水平な薄膜処理装置を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、単一の装置、特に薄膜処理装置において、セルロースを固体材料から溶解状態へと迅速かつ十分に移行させる、セルロースの効果的な溶解プロセスを提供することである。この処理は、実質的に水平な薄膜処理装置で可能であることが好ましい。
【0017】
前記第1の目的は、請求項1に記載の薄膜処理装置によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0018】
請求項1によれば、本発明は、以下の構成からなる粘性材料の処理用薄膜処理装置に関するものである。
軸方向に延びる回転対称のハウジング内部を囲み、材料処理空間を形成する、加熱および/または冷却可能なハウジングケーシングを備え、水平に対して最大20°の傾きを持つプロセスハウジングと、
プロセスハウジングの入口ゾーンに配置され、被処理物を処理空間に導入するための入口ノズルと、
前記プロセスハウジングの出口ゾーンに配置され、前記材料処理空間から処理材料を排出するための出口ノズルと、
ハウジング内部に配置され、ハウジングケーシングの内面に材料膜を生成し、材料を入口ゾーンから処理ゾーンを経て出口ゾーンに向かう方向に搬送するために同軸上に延びる駆動可能なローター軸とを備える。
【0019】
前記ローター軸は、中央のローター軸本体とその外周に配置されたスイーパー要素からなり、前記スイーパー要素の径方向外端は、前記ハウジングケーシングの内面から離間していることを特徴とする。これらのスイーパー要素は、一般に、ローター軸の円周上に分布する軸方向に延びる複数のブレード列に配置され、その数はローター軸本体の円周に依存する。
【0020】
本発明によれば、ローター軸は、ローター軸本体上に配置された少なくとも1つのリフト要素を備え、このリフト要素は、以下にさらに説明するように、ローター軸の回転中にローター軸本体の方向に持ち上げ力を発生するように設計されている。
【0021】
本発明によるプロセスハウジング、すなわちその長手方向軸は、水平に対して最大20°傾斜して配向され、好ましくは最大10°傾斜して配向され、特に好ましくは水平に、すなわち少なくとも約0°の傾斜角度をもって配向される。本発明による装置のプロセスハウジングの実質的に水平な向きのために、プロセスハウジングは一般に、入口ゾーンに対応する近位端領域および出口ゾーンに対応する遠位端領域において適切な支持軸受に支持される。さらに、ハウジング内部に配置されたローター軸は、近位端領域及び遠位端領域において適切なローター軸受に取り付けられ、好ましくは、ローター軸受は近位端領域において半径方向及び軸方向の両方の力を受け、遠位端領域において半径方向の軸受として設計されている。後述するように、少なくとも1つのリフト要素は、好ましくはローターの中心、すなわち最大偏向の領域に配置される。
【0022】
本発明によれば、驚くべきことに、重力の力によって引き起こされるローター軸のたわみが、ローター軸本体に配置されたリフト要素またはリフト要素によって効果的に打ち消され得ることが見いだされた。このため、特にリヨセル法で使用されるような比較的長いローター軸を持つ装置でも、装置を水平にした状態でもトラブルなく運転することが可能である。したがって、本発明に従って得られる技術的効果は、材料処理空間を形成するハウジング内部が5m以上、好ましくは8m以上の長さに及ぶ薄膜処理装置において特に顕著に発揮されるものである。そのため、この長さであっても、スイーパー要素とハウジングケーシングの内面との間には、(垂直方向の)フィルムトルーダーと同等の隙間を確保することができる。
【0023】
さらに、ローター軸が適切な搬送要素を備えていれば、横型装置でも非常に高粘度の材料を十分に良好に搬送できることが、本発明の過程で明らかになった。
【0024】
このように、ローター軸体の外周に配置されたスイーパー要素は、少なくとも一部が搬送要素として具現化されている。
【0025】
スイーパー要素の一部は一般に搬送要素の形態で提供され、スイーパー要素のさらなる一部は分配要素の形態で提供される。本発明の説明では、主にハウジングケーシングの内面上に材料を分配するスイーパー要素を「分配要素」と呼び、主に出口ノズルに向かう搬送成分を材料に付与するスイーパー要素を「搬送要素」と呼ぶ。また、スイーパー要素が搬送と分配の両方に作用することも考えられる。このようなスイーパー要素は、本発明の説明では、「搬送・分配要素」と呼ばれる。
【0026】
分配要素と搬送要素は、一般に、それぞれの場合の分配要素の剪断エッジが、搬送に関して少なくともほぼ中立となるように軸方向との角度を囲んでいる点で異なる。一方、搬送部材の剪断端は、出口ノズル方向の搬送成分が材料に付与されるように、軸方向に対して角度がつけられている。したがって、それぞれの場合の分配要素の剪断端は、一般に、搬送要素の剪断端が軸方向となす角度よりも小さい軸方向となす角度を囲んでいる。分配要素の剪断端と軸方向とで囲まれる角度は、各場合において5°未満であることが好ましく、この具体的な場合において少なくとも約0°であることが好ましい。一方、搬送部材の剪断端と軸方向とで囲まれる角度は、いずれも15°以上である。
【0027】
搬送要素の存在により、一方では非常に粘度の高い材料も十分に高い搬送速度で処理室内を搬送できることが保証されている。最大50,000kg/hの高い生産能力が得られることに加え、温度に敏感な材料でも高い品質が得られる。なぜなら、材料が高温と高せん断速度にさらされる滞留時間や処理時間を十分に短くすることができるからである。
【0028】
一方、分配要素の存在により、材料が非常に高い粘度を有する場合にも、ハウジングケーシングの内面(以下「処理面」ともいう)における非常に良好な分配と最適な表面再生が確保される。
【0029】
最終的に、非常に高粘度の材料の最適な処理、特に高い脱揮率は、このように本発明に従って達成することができる。同時に、材料へのエネルギー投入を特定の方法に必要なレベルに制限することができ、そのレベルでは材料は損傷を受けず、特に熱による劣化を受けない。
【0030】
前述のように、プロセスハウジングが水平に対して若干傾斜していることが考えられる。そのため、材料が逆流することなく、プロセスハウジング内に長く留まることができ、用途によっては好ましい。
【0031】
本発明による装置の回転軸本体は、特に、スピンドルと、その円周上に配された軸方向に延びる締結帯とを含んでいてもよく、その締結帯によって、スイーパー要素をスピンドルに締結することができる。しかし、スピンドルの代わりにローター軸体を中空軸で構成し、中空軸の円周上にスイーパー要素を分散配置することも考えられる。
【0032】
プロセスハウジングは、前述のように、軸方向に延びる回転対称のハウジング内部を取り囲む加熱可能および/または冷却可能なハウジングケーシングを有する。この装置の材料処理空間を形成するハウジング内部は、概ね円形の筒状である。しかし、ハウジング内部が搬送方向に円錐状に狭くなっている実施形態や、ハウジング内部が第1の領域で円筒状であり、搬送方向下流側に位置する領域で円錐状に狭くなっている実施形態も考えられる。
【0033】
好ましい実施形態における材料処理空間は、処理される材料が処理中に通過する状態に応じて、異なるゾーンに分割することができる。または処理工程の条件や目的に応じて、具体的には、入口ゾーン(「供給ゾーン」ともいう)、処理ゾーン、出口ゾーン(「排出ゾーン」ともいう)、およびオプションの後処理ゾーンに分けることができる。処理ゾーンはさらに、分配ゾーンと搬送ゾーンに分けることができ、分配ゾーンでは、ハウジングケーシングの内面における材料の良好な分配と表面再生が最前線に位置する。一方、輸送領域では、主に良好な物質輸送を達成する必要がある。入口ゾーン、処理ゾーン(特に分配ゾーンと搬送ゾーンを含む)、出口ゾーン、後処理ゾーンは、一般的に物理的に連続して配置されている。この場合、後処理ゾーンはプロセスハウジングの外側に配置されるが、空間的にはそこに接続されている。しかし、後処理ゾーンが排出ゾーンの前に、つまりプロセスハウジング内に配置されることも考えられる。
【0034】
一方では、例えばリヨセル法用に設計された装置では、セルロース懸濁液からの水の蒸発と同時に、材料の良好な分配と迅速な輸送が入口領域の最先端で成される。処理ゾーンでは,主な熱処理は,意図的に設定された分配と搬送の組合せによって実現され,そこではさらに水が蒸発される。水の蒸発が進むと懸濁液がよく溶液に移行することが、主にこの分配領域で求められている。分配ゾーンに続く搬送ゾーンでは、セルロースが多く溶解した材料に出口ゾーン方向へのより強い搬送成分を付与することが望ましく、材料は対応する出口ノズルを介して出口ゾーンに排出され、後処理ゾーンで後処理が施される。この溶液は、後処理ゾーンでせん断と混合により均質化され、さらに滞留時間が延長される。一方、処理ゾーンにあるセルロースは、一般的にほぼ完全に溶液化される。また、排出部や後処理部においてのみセルロースが完全に溶液化するように処理することも考えられる。前述のように、後処理ゾーンは排出ゾーンの前または後に任意に配置することが可能である。
【0035】
本発明による装置がセルロース溶液の製造に適しているという事実の他に、粘性のある材料を処理する他の用途も考えられる。ここで、「粘性のある材料」という用語は、本発明の説明では、本発明による装置での処理中に少なくとも一時的に100~15000Pasの粘度を有する材料を意味する。粘性材料は、好ましくは、薄膜処理装置で除去(蒸発または昇華)され得る揮発性物質を含む。
【0036】
前述のように、本発明に従って得られる技術的効果は、少なくとも3m、好ましくは少なくとも8m、特に好ましくは少なくとも10mの長さに渡って軸方向に延びる材料処理空間において特に顕著である。従って、ローター軸は、近位領域と遠位領域の回転ベアリングの間を、好ましくは少なくとも4m、好ましくは10~15mの長さに渡って延在する。
【0037】
さらに後述するように、当該ゾーンで実行される処理ステップの目的を満たすように、ゾーンに応じて、ローター軸および/またはローター軸上に配置されたスイーパー要素の異なる構成を提供することが特に好ましい。
【0038】
ハウジングケーシングの内部には、一般に、加熱および/または冷却のために熱媒体が通過することを目的としたハウジングケーシング空洞が形成されている。ハウジングケーシングは、通常、ハウジングケーシング内壁と、その間に隙間を有するハウジングケーシング外壁とを有し、その中に、熱媒体、典型的には蒸気または温水を伝導するための伝導スパイラルが配設されている。後述するように、特に2つ以上の伝熱回路を設けることが考えられ、これらの伝熱回路は互いに別々の導電性スパイラルを有し、したがって互いに独立して温度制御が可能である。このため、薄膜処理装置の特定のゾーンに望まれるハウジングケーシングの内面温度を、他のゾーンの温度と独立して設定することが可能である。この点からも、処理ゾーンでは蒸気を、出口ゾーンでは温水を熱媒体として使用することが好ましい。
【0039】
好ましい実施形態によれば、リフト要素は、回転方向に先行端を有する平面状の入射流部分を有し、この先行端は、先行端の後ろに続く入射流部分の領域よりもハウジングケーシングの内面から大きく離れて配置されている。このため、入射流路部とハウジングケーシングの内面との間には、回転方向と反対方向に向かって狭まるように構成された隙間が形成される。特に好ましい実施形態によれば、入射流部は、ハウジングケーシングの内面の接線または接線面に対して傾斜して配向された面内で延び、それによって、入射流部とハウジングケーシングの内面との間に、回転方向と反対方向に向かって連続して狭まるように構成された隙間が形成される。さらに、ハウジングケーシングの内面の接線または接線平面と入射流部分との間の角度が15°~30°の範囲にあることが好ましく、特に約25°であることが好ましい。ここで、ハウジングケーシングの内面の「接線」とは、断面が円形のハウジングケーシングの内面に、入射流部の半径方向最外端に最も近い位置で接する接線を意味する。ハウジングケーシングの内面と入射流部との間に形成される隙間は、好ましくは10倍以上に狭まる。
【0040】
ローター軸が回転することで、一般的に粘度の高い被処理物が隙間に押し込まれ、これにより、入射流部分に作用するローター軸の流力により、入射流方向と直交する方向の流体力学的揚力成分が得られる。このリフト成分は、特に粘度の高い材料、特に100Pas以上の粘度の材料の場合には、比較的高くなる。このため、軸のたわみを効果的に抑制することができ、特に高粘度の材料を処理する場合にその効果が顕著になる。
【0041】
起動時に既に流体力学的リフト成分が得られるようにするために、少なくとも起動段階において、リフト要素が存在する薄膜処理装置の領域、特に処理ゾーンに処理される材料の部分流を導入することが好ましい。この目的のために、薄膜処理装置は、入口ゾーンの入口ノズルに加えて、入口ゾーンの下流に配置され、特に処理ゾーンに配置されるさらなる入口ノズルを有することができる。装置に導入される材料の総量に占めるこの部分流の割合は、一方では十分に高いリフト成分が得られ、他方では薄膜処理装置内での材料の滞留時間が依然として所望の処理を保証するのに十分な長さとなるように、ここで選択される。処理ゾーンに導入される材料における部分流の割合は、好ましくは約20%以下であり、したがって、入口ゾーンに導入される材料における割合は、約80%以上である。
【0042】
本発明の目的のために特に有利なリフト効果は、ローター軸本体の円周の少なくとも10°の角度範囲、特に10°から20°の角度範囲、特に約12°の角度範囲をカバーする入射流部分について得られる。
【0043】
特に好ましい実施形態によれば、リフト要素の少なくとも一部は、各場合にスイーパー要素によって形成されている。このスイーパー要素は、リフト要素としての機能の他に、処理される材料を分配する機能(分配要素として形成されたスイーパー要素の場合)、または材料に材料出口方向の搬送成分を追加で付与する機能(搬送要素として形成されたスイーパー要素の場合)を併せ持つものである。リフト要素を形成するスイーパー要素は、特に好ましくは、搬送要素および分配要素として機能する、すなわち、搬送および分配要素として提供される。
【0044】
リフト要素は、特に好ましくは、少なくともほぼ等間隔の屋根状のウェブプレートからなり、そのリッジは、ローター軸の軸方向と少なくともほぼ平行に走る。角度のある形状のため、ウェブプレートは、このように、互いに斜めに走る平面にある第1および第2のウェブプレート表面に分割される。
【0045】
回転方向に先行する第1のウェブプレート面は、リフト要素の入射流部分を形成する。上述したように、この第1ウェブ板面は、ローター軸本体の円周の少なくとも10°、特に10°~20°の角度範囲β1に亙っている。後方の第2ウェブプレート表面は、一般に、少なくとも15°、特に15°~30°の角度範囲β2をカバーする。したがって、ウェブプレート全体がカバーする角度範囲βは、好ましくは25°から50°の範囲にある。
【0046】
第1ウェブプレート面と第2ウェブプレート面との間に囲まれた角度は、好ましくは110°~150°の範囲にある。入射流部分を形成する辺と後続部分を形成する辺の長さの比は、好ましくは1:0.5から1:0.8の範囲にある。
【0047】
スイーパー要素が、リフト要素としての機能の他に、主に搬送要素として、あるいは分配要素として、追加的に機能することが意図されているかどうかに応じて、ウェブプレートの半径方向外側に異なる方法で走行するフィンを配置することができる。このように、リフト要素は、搬送効果も意図している場合のために、その外面に少なくとも1つの螺旋状に走る搬送フィンを備えている。リフト要素が分配要素としても機能する場合、フィンは搬送に関して中立となるように、特に軸方向に対して直角または最大搬送角5°で配向される。
【0048】
ウェブプレートの角張った形状により、軸方向に走る剪断エッジが提供される。リフト要素の主な機能が搬送要素であろうと分配要素であろうと、材料はいずれにせよこの剪断エッジによってハウジングケーシングの内面に分配される。搬送フィンが設けられている場合、一般的に搬送部材と分配部材の両方がウェブプレートによって提供されるため、この場合、ウェブプレートは搬送・分配部材を形成する。剪断エッジは、搬送フィンと同一平面上にあり、したがって、搬送フィンの半径方向外縁と処理面から同じ距離に配置されていることが好ましい。あるいは、搬送フィンの径方向外縁に対して剪断刃を後退させ、これと比較して処理面からの距離を大きくして配置することも可能である。
【0049】
好ましい実施形態によれば、リフト要素の少なくとも一部は、ローター軸が支持されるローター軸受の間の中心に位置する領域に配置される。具体的な実施形態によれば、この領域は装置の処理ゾーンに存在する。従って、リフト要素によって提供されるリフト成分は、ローター軸のたわみが最も強くなる領域またはゾーンで効果を発揮する。
【0050】
この実施形態に関して、リフト要素の少なくとも一部が、処理ゾーンにおいて互いに螺旋状にオフセットしてローター軸本体上に配置されていることも好ましい。したがって、個々のリフト要素が提供する揚力または揚力成分の最適な分布は、任意の長さの処理ゾーンの部分にわたって達成することができる。
【0051】
さらに、特に処理ゾーンでは、リフト要素の一部が搬送・分配要素を形成していることが好ましい。具体的には、特定のリフト要素、特にウェブプレートの半径方向外側に、少なくとも1つの螺旋状に伸びる搬送フィンが配置されている。
【0052】
搬送フィンの径方向外縁は、一般に軸方向に対して45°より大きい角度を囲んでいる。非常に粘度の高い材料でも、リフト要素による搬送成分が十分に高いため、材料処理空間を所望の搬送速度で通過させることができる。搬送フィンの径方向外縁は、好ましくは、軸方向と最大65°の角度を囲む。特に、この角度は、50°から60°の範囲にある。
【0053】
搬送要素の搬送効果は、搬送フィンの半径方向外縁の迎え角によって決定されることに加え、搬送フィンの数または軸方向に連続して配置された搬送フィン間の距離を介してリフト要素の搬送効果を追加的に調整することができる。
【0054】
さらなる好ましい実施形態によれば、ハウジングケーシングの内面とローター軸本体との間に配置され、少なくともローター軸本体をほぼ完全に囲む同心の保護ケーシングが、入口ゾーンに形成される。この保護ケーシングにより、処理中に粘度が上昇する前、つまり入口領域で材料がローター軸本体に滴下したり飛散したりしないことが保証される。
【0055】
この好ましい実施形態によれば、処理される材料および処理中に逃げるガス状物質成分は、このように並流で案内され、ここで、材料およびガス状物質成分は、入口ゾーンに隣接する処理ゾーンにおいて逆流で案内されることもまた好ましい。入口ゾーンでは、材料の粘度が低く、蒸発成分による「材料の巻き込み」の可能性があるため、装置のセットアップに関して考慮される。一方、後続の処理ゾーンでは、処理される材料と蒸気の大部分の接触が最小化されるため、最適な脱揮が達成される。
【0056】
上述の実施形態の特に好ましい変形例によれば、保護ケーシングは、少なくとも部分的に、周方向に分布する複数のリフト要素、特にウェブプレートによって形成される。このように、本発明に従って求められるリフト成分は、入口ゾーンでも達成される。
【0057】
入口ゾーンに配置されたウェブプレートは、特にこの領域で高い搬送速度を達成し、材料の蓄積を抑制するために、その半径方向外側に、少なくとも1つの螺旋状に延びる搬送フィンを有することが好ましい。
【0058】
ここで、半径方向に後退したチャネルが、周方向に連続して配置された2つのリフト要素、特にウェブプレートの間に、それぞれのケースで形成されていることも好ましい。原料の処理中に発生する蒸気は、この流路を通り、保護ケーシングの端に達した後、保護ケーシングに囲まれた内部を通って処理室とは別の空間に入り、蒸気抽出器を介して除去される。
【0059】
さらなる好ましい実施形態に従って、ハウジングケーシングの内面とローター軸本体との間に配置され、ローター軸本体を少なくともほぼ完全に囲む同心の保護ケーシングが、処理ゾーンおよび/または出口ゾーンに形成されてもよく、特に、周方向に分布する複数のリフト要素によって少なくとも一部が形成された保護ケーシングが形成されてもよい。保護ケーシングの存在により、これらのゾーンでも材料がローター軸本体に落下し、加熱されていないローター軸本体に「凍り付いた」状態で残ることが防止される。この実施形態は、特に、処理ゾーンまたは出口ゾーンでも処理される材料が、材料の滴下または滴下を完全に防止するほど高い粘度を有していない場合に有利である。このことは,特に装置の起動時や停止時,あるいは故障の場合に関係する。また、ローター軸本体に滴下した材料が凍結しないように、ローター軸を加熱可能な設計にすることが好ましい場合もある。すなわち、この好ましい実施形態では、ローター軸、特にローター軸本体を加熱するための手段が、このように提供される。
【0060】
好ましくは搬送要素、分配要素、または搬送および分配要素の機能も有する前述のリフト要素の他に、さらなる好ましい実施形態によるローター軸は、半径方向に突出する歯からなるスイーパー要素をさらに備え、この歯は一般に、中空軸に配置された複数の軸方向に延びるフランジの1つにそれぞれのケースで固定される。このようなスイーパー要素は、一般にローター軸に揚力成分を与えないか、あるいはごくわずかな揚力成分しか与えない。
【0061】
軸方向に対する歯の剪断エッジの向きによって、すでにリフト要素と関連して同様に説明されているように、対応するスイーパー要素によって分配要素または搬送要素が形成される。歯が軸方向との角度を15°未満、特に5°未満で囲む剪断縁を有するスイーパー要素は、したがって分配要素を形成し、一方、剪断縁と軸方向との角度が15°以上、特に45°以上の場合、スイーパー要素は、運搬要素を形成する。
【0062】
特定の実施形態に従って、前記角度が15°~30°の範囲にあり、特に約20°であるスイーパー要素が、搬送要素として機能するスイーパー要素として提供される。例えば、歯は、軸方向と平行な面内でフランジを介して取り付けられる径方向内側部と、軸方向に対して傾斜した面内で径方向外側端が剪断端となる径方向外側部とを有することが考えられる。
【0063】
用途に応じて、またこの実施形態に代えて、スイーパー要素の少なくとも一部の剪断縁が、上記の角度よりも小さい角度を囲み、特に軸方向に対して少なくともほぼ平行に走る、すなわち軸方向に対して約0°の角度を囲むことが好ましい場合がある。後者の場合、分配要素として機能するこれらのスイーパー要素は、搬送に関して中立的であり、専ら分配機能を有する。スイーパー要素のどの具体的な構成を選択するかの決定は、最終的には処理される材料に依存し、変化する可能性がある。
【0064】
前述のように、分配要素と搬送要素の間の分配は、装置の意図された目的と当該ゾーンに大きく依存する。好ましい実施形態によれば、搬送ゾーンでは材料の搬送がより重要視されるため、例えば搬送要素の数と分配要素の数との比は、分配ゾーンよりも搬送ゾーンで大きくなる。
【0065】
さらなる好ましい実施形態によれば、処理表面上の材料の非常に均質な分布がこのように確保され得るので、分配要素は、ローターの円周方向に搬送要素と交互に配置される。
【0066】
処理ゾーンに隣接する排出ゾーンでは、排出ノズルを介して処理空間から排出されるが、回転軸は、ハウジング内壁を清掃し、下方へ分岐する搬送部材に製品を掃き出す構成を用いてもよい。例えば、搬送部材が垂直に配置された円錐形の形態で提供され、その中で材料が十分な供給高さに達し、スクリューまたはより好ましくはギアポンプによって排出されることが考えられる。さらに、遠位端領域、すなわちプロセスハウジングのエンドカバーの直前でローター軸にスパイラルが適用され、このスパイラルが出口ノズルおよびその下流に配置された排出システムによって回収されなかった材料を出口ノズルの方に戻し、遠位端から遠ざけることが考えられる。
【0067】
用途によっては、さらに、排出のために別の排出装置を設けることが好ましいし、考えられる。特に、出口ノズルは、好ましくはプロセスハウジングの軸方向と直角な軸方向を持つ、シングル吐出スクリューまたはツイン吐出スクリューの形態の吐出システムにつながることが考えられる。この排出システムの目的は、処理された材料や製品をポンプに送り、下流の処理、特にリヨセル溶液の場合は下流のフィルターや紡糸ノズルのために圧力を高めることである。このため、ブースターポンプを追加で使用することもある。
【0068】
ツインディスチャージスクリューの形態の排出システムの場合、さらに、ニーディングブロックおよび/またはディスパージングブロックを装備することが好ましい場合があり、それによって高いせん断が達成され、最終的にさらなる均質化が得られ、リヨセル法の場合、材料質量中の最小粒子の溶液が得られる。
【0069】
排出装置は、水平方向に延びる搬送方向または垂直方向に延びる搬送方向のいずれかを構成することができる。吐出ポンプは、一般に吐出システムの出口側領域に設置され、この吐出ポンプを介して、吐出される材料が除去されるか、またはフィルターおよび/またはスピニングノズルなどのさらなる装置に供給されることができる。
【0070】
特に、吐出装置は、垂直方向に延びる搬送方向と、そこに配置され、同軸に延び、少なくとも一部の領域で単一の吐出スクリューを有する吐出軸を有するファンネルを有することが考えられる。この実施形態は、プロセスハウジング内に存在するローター軸の回転速度を、排出システム内の排出軸の回転速度から切り離すことができるという利点がある。
【0071】
また、ファンネルの軸をローター軸の軸と一致させた吐出装置を提供することも考えられる。特にここでは、回転軸がファンネル内に突出し、搬送方向に円錐状のファンネル部に隣接する円筒状のファンネル部に1本の排出スクリューを有することが考えられる。
【0072】
さらなる好ましい実施形態によれば、薄膜処理装置は、さらに、エンドカバーが開かれたときにプロセスハウジング内に導入され、軸方向に往復移動可能であるように設計された洗浄器具を備える。そのための洗浄装置としては、例えば、適切に配置されたブラシや高圧水噴射を備えることが考えられる。特に、周方向に連続して配置された2枚のウェブプレートの間の入口ゾーンに長手方向に走る蒸気流路が形成されている上記実施形態では、このように薄膜処理装置の迅速かつ簡易な洗浄を確保することができる。特に、洗浄装置を洗浄すべき箇所に到達させるための複雑な装置の分解を回避することができる。
【0073】
さらに、ローター軸本体上に、遠位側すなわちプロセスハウジングの前側に直接隣接して、板状のクリーニング要素を配置することが考えられ、このクリーニング要素は、遠位端面の内面に材料が堆積するのを防ぎ、また遠位側ローター軸受を材料による汚れから保護する。
【0074】
前述のように、本発明による装置は、特に物質混合物の熱分画のために設計され、特に薄膜蒸発器、薄膜乾燥器、又は薄膜反応器の形態で、好ましくは薄膜蒸発器の形態で提供される。
【0075】
この装置により、最大15000Pa・sの粘度を持つ材料を最適に処理することができ、特に脱揮を行い、場合によっては脱揮と組み合わせて、または独立して反応させることができる。
【0076】
典型的には、本発明による装置で処理される材料の粘度は、100から5000Pa・s、特に300から3000Pa・s、特に500から1000Pa・sの範囲にある。ここでいう粘度とは、使用温度、せん断速度D=10sec-1に関するものである。
【0077】
さらに、本装置は比較的温度に敏感な材料の処理に特に適しており、何故なら材料がさらされる熱エネルギーは、処理表面上の比較的低い選択可能な温度と滞留時間によって最適に設定される可能性があるからである。
【0078】
前述のように、本発明による薄膜処理装置は、特にセルロース溶液、特にリヨセル繊維の製造に用いるセルロース溶液の製造に好適である。
【0079】
具体的には、本発明による薄膜処理装置の動作温度は、一般に80~120℃、特に90~115℃、とりわけ100~110℃の範囲にある。
【0080】
セルロース溶液を可能な限り最良の方法で均質な溶液に移すために、製造(例えば以下に述べるように)は、真空下(圧力p、単位mbar)で理想的に実施できることができ、例えば記載された式(p = 122.e^ - (0.05c(Cell)) )に従って、見出されている。本明細書におけるセルロース濃度(「c(Cell)」、質量%)は、6%~20%、特に10%~15%であることが好ましい。これらの濃度範囲では、セルロースの効率的で迅速かつ実質的な完全溶解が可能であった。
【0081】
本発明による薄膜処理装置のローター軸の周速は、一般に6~12m/秒、特に8~10m/秒の範囲にある。
【0082】
さらなる態様では、本発明は、溶媒および揮発性非溶媒中のセルロースの懸濁液から、溶媒を用いたセルロースの溶液を製造する方法に関し、次のステップを有する。薄膜処理装置の入口に懸濁液を導入すること、薄膜処理装置のプロセスハウジング内で共通の軸を中心に回転するスイーパー要素により、熱交換器を用いて温度制御されたハウジングケーシング上に懸濁液をフィルム状に塗布・分布させること、揮発性の非溶媒を蒸発させ、セルロースを溶解させること、及び薄膜処理装置からセルロースの溶液を排出口から出力すること。ここで、前記スイーパー要素の少なくとも一部が、前記セルロースを前記排出口の方向に前進させることを特徴とする。特に好ましくは、排出口での排出量が、温度制御された(熱交換器を用いた)ハウジングケーシング(内壁)の表面1平方メートルあたり、セルロース溶液で300kg/h以上、特に好ましくは350kg/h以上となるような進度であることが望ましい。
【0083】
本発明によるスイーパー要素、特に搬送要素を用いると、リヨセル法におけるセルロース懸濁液または得られた溶液の迅速な前進が可能となる。これにより、セルロースやセルロース溶液の処理、溶解、排出を迅速に行うことができる。例えば、本発明に係る実施例(テーブルのac行を参照)において、1平方メートル当たり145.8kg/hから1平方メートル当たり887.5kg/hの量を製造できることが示されている。これは、0.55平方メートルの熱交換器(「熱交換器表面」ともいう)を用いてハウジングケーシングの表面を温度制御した実験室規模の薄膜処理装置の場合である。これらは、例えばEP 0356419 A2に記載されていたもの(同様のサイズの装置で72kg/h)よりも本質的に多い量である。排出されるセルロース溶液の量に応じて経済的に成立する溶解装置の大きさを実現するためには、の温調面が1平方メートル当たり300kg/h以上のセルロース溶液の量が有利であることが分かっている。1平方メートル当たり約600kg/hの量から、溶液の品質(均質性)が低くなることがテストで確認された。このように、水平方向には重力による搬送部材がないため、スイーパーを高速搬送に設定することで、セルロースの効率的な溶解処理が可能になる。驚くべきことに、プロセスハウジングの中で処理が順方向に駆動されることにより、高効率の溶解プロセスももたらされ、リヨセル法の範囲内で、セルロースを不均一な懸濁液から均一なセルロース溶液に迅速かつ完全に移行させることができる。得られたセルロース溶液の品質は、紡糸してフィラメントを形成するなどのリヨセル法における成形工程の前提条件を満たすものである。これらの利点は、原理的に水平方向の設定に依存しない。本発明による装置は水平支持のために開発されたが、特に高粘度の懸濁液または溶液が処理される場合、用途に関する利点は垂直方向にも提供される。したがって、本発明のこの側面は、プロセスハウジングの向きに依存しないが、ここでももちろん、水平方向が好ましい。
【0084】
スイーパー要素による排出口方向への前進は、排出口での排出量が、熱交換器を用いて温度制御されたハウジングケーシングの表面1平方メートル当たり300~600kg/h、好ましくは350kg/h~550、特に好ましくは380~480kg/hのセルロース溶液(プロセスハウジング内の完全処理物)となるようにすることが好ましい。
【0085】
前進は、例えば、前進に関連するスイーパー要素(上述の搬送要素)の数、それらの角度、および搬送要素の回転速度によって調整することができる。搬送要素の剪断端と軸方向とがそれぞれの場合に囲む角度は、好ましくは15°以上、より好ましくは15°~30°、特に好ましくは約20°である。スイーパー要素の少なくとも1/3は、搬送要素であることが好ましい。
【0086】
本発明による分割は、異なる処理ゾーン(入口ゾーン、処理ゾーン、出口ゾーン)にさらに特に有利であり、本発明による前進で迅速に前進される得られたセルロース溶液の品質に好影響を与えるものである。入口ゾーンでは、材料、特に懸濁液の温度は、処理ゾーンより少なくとも10℃低いことが好ましい。前述したピッチド屋根形状のウェブプレートは、入口ゾーンに設けられていることが好ましい。このため、装置への懸濁液の入口での塊の形成が効果的に回避され、材料と蒸気流の並行流による効率的な輸送が保証される。入口ゾーンでは、ハウジングケーシングの内面にできるだけ均一な懸濁液の層を塗布する。
【0087】
以上および以下に説明する搬送要素および分配要素は、特に処理ゾーンに設けられる。ここで、搬送要素と分配要素の比率は、2:1~1:2が好ましく、両機能(搬送要素と分配要素)を有するスイーパー要素を両グループに割り当てることが好ましい。外側の剪断端、すなわちサスペンションと接触する要素の半径方向外側の端部の長さの比率は、追加的または交互に調整されることが好ましい。搬送要素の外側剪断縁の長さの和と分配要素の外側剪断縁の長さの和との比は、2:1~1:2であることが好ましい。
【0088】
出口ゾーンには、好ましくは搬送要素がないか、または少数の搬送要素のみ、すなわちほとんど分配要素のみが存在する。好ましくは、出口ゾーンのスイーパー要素の最大10%が搬送要素であり、および/またはスイーパー要素の少なくとも90%が搬送機能を持たない分配要素である。これらの比率は,上記と同様に,スイーパー要素の外側の剪断エッジの長さの合計に基づいて解釈することもできる。言い換えれば、スイーパー要素の外側剪断エッジの長さの合計の最大10%が搬送要素に割り当てられることが好ましく、および/またはスイーパー要素の外側剪断エッジの長さの合計の少なくとも90%が分配要素に割り当てられることが好ましい。
【0089】
ゾーンの長さの比率は、入口ゾーン5%~25%、処理ゾーン50%~90%、残りの5%~25%が出口ゾーンであることが好ましい。しかし、上記の実施形態とは別に、排出ゾーンに搬送要素を設けないか、または少数の搬送要素しか設けないことによれば、排出システムが水平方向に延びる搬送方向を有する場合には、材料に搬送成分を作用させる掃引要素を設けることが好ましい。特に、上記の説明によるウェブプレートが、出口ゾーンの遠位端領域または排出システムにおいてローター軸体上に配置され、このウェブプレートが、一方ではリフト要素として、他方では搬送および分配要素としても機能することが好ましい。このように、吐出装置が水平方向にある場合には、重力成分の力が作用しないことが考慮されている。しかし、このような水平排出システムにおいても、搬送・分配装置が存在するため、排出される材料が比較的高粘度であっても、材料の効率的な排出が保証される。
【0090】
また、この実施形態では、ウェブプレートが、出口ゾーンの遠位端領域に対応するローター軸の長手方向部分において互いに螺旋状にオフセットしてローター軸本体上に配置されていることが特に好ましい。
【0091】
出口での製品量は、供給された懸濁液の量に依存するが、プロセスハウジング内の非溶媒が蒸発するため、若干低くなる。蒸発した非溶媒は、好ましくはセルロース溶液(高粘性液塊)の出口で排出されるのではなく、好ましくはセルロース懸濁液の流れと逆流するように蒸気相で導かれ、したがって、入口近辺で除去される。
【0092】
ハウジングのケーシング(内壁)は、熱交換器を用いて温度制御されることが好ましい。リヨセル法で発生する高温流体の熱は、熱交換器によって装置を加熱することで経済的に利用することができる。熱交換器またはハウジングケーシング(プロセスハウジング)の内壁は、好ましくは90℃から130℃の温度に加熱される。特に、少なくともプロセスゾーンは直接温度制御される。処理ゾーンからの廃熱は、入口ゾーンと出口ゾーンの加熱に使用することができ、熱交換器によって間接的に温度制御される。熱交換器の熱媒体には、水、油、蒸気のいずれかを使用することができる。また、電気加熱による温度制御も可能である。
【0093】
熱交換器を用いて温度制御される入口から出口までの収容ケーシングの長さは、0.5m以上、好ましくは1m~20m、例えば4m~18m、または6m~17m、または8m~16m、好ましくは10~15mが望ましい。懸濁液の処理時間が同じでも、長さが長いと、材料の進みが早くなり、生産量も多くなる。
【0094】
プロセスハウジング内で処理可能な容積に関する本質的な基準は、懸濁液の処理に使用されるその表面、すなわち、加熱によって非溶媒の蒸発をもたらす熱交換器の影響下にある表面である。熱交換器を用いて温度制御される収容ケーシングの表面は、好ましくは0.5平方メートル~150平方メートル、例えば1平方メートル~140平方メートル、2平方メートル~130平方メートル、5平方メートル~120平方メートル、10平方メートル~100平方メートル、15平方メートル~80平方メートル、好ましくは60平方メートル~125平方メートルである。本発明による水平支持のため、薄膜処理装置の簡単な取り扱いが水平面内で可能となるため、垂直薄膜処理装置におけるサイズ制限の構造的理由(建物の高さなど)はもはや関係ない。
【0095】
本発明による一実施形態における個々の処理ゾーンの体積および対応する比負荷は、以下の通りである。
【0096】
試験した薄膜処理装置において、特定の懸濁液の供給により、理想的な均質セルロース溶液が得られることを明らかにした。導入された懸濁液または溶液(kg/h)を供給された体積(dm3)で割ると、一般的な比較可能な特性値として好都合である。これによって、「比負荷」と呼ばれるものが得られる。この比負荷は、導入された質量流量を個々のゾーンに供給された体積で割ったもの、つまり
比負荷=質量流量/ゾーンの体積
で定義される。
【0097】
この方法は、入口ゾーンで76-378kg/h/dm3、プロセスゾーンで66-262kg/h/dm3、出口ゾーンで2-125kg/h/dm3、後処理ゾーンで0-500kg/h/dm3の特定の負荷で最良の溶液品質を提供する。好ましい実施形態では、プロセスハウジング内のセルロースの平均処理時間(入口から出口までの時間)は、少なくとも20秒、好ましくは30秒~1000秒である。処理時間は、プロセスハウジング(特に熱交換器を備えた部分)の前進速度と長さに影響される。例えば、処理時間は、60秒~900秒、または70秒~800秒、または80秒~700秒、または90秒~600秒、または100秒~500秒、または110秒~400秒、または120秒~350秒、または130秒~300秒である。処理時間は、好ましくは最大で350秒、特に好ましくは最大で300秒である。
【0098】
スイーパー要素は、好ましくは、少なくとも毎分50回転の速度で回転させる。ローター軸体の回転によりスイーパー要素が共通軸を中心に回転するので、その速度もローター軸体の回転速度に対応する。スイーパー要素の速度は、好ましくは少なくとも50回転/分、より好ましくは少なくとも100回転/分、より好ましくは少なくとも200回転/分、より好ましくは少なくとも300回転/分、より好ましくは少なくとも350回転/分、より好ましくは少なくとも400回転/分、より好ましくは少なくとも450回転/分、より好ましくは少なくとも500回転/分または少なくとも550回転/分、あるいはこれらの値またはそれ以上の任意の範囲、好ましくは50回転/分から800回転/分の範囲にある。
【0099】
スイーパー要素の半径方向最外端は、好ましくは、1.5m/s~12.5m/sの速度で移動させることができる。その動きは、スイーパー要素の回転によって実現される。スイーパー要素の半径方向最外端は、サスペンションと接触し、これを処理する。
【0100】
1つ以上のスイーパー要素は、熱交換器を用いて温度制御されたハウジングケーシングの一部上で連続して1500~4000/分の周波数で移動させることが好ましい。このパラメータは、ブレードサクセッション周波数とも呼ばれ、1分間に何個のスイーパー要素を部分的に掃引するかを示すパラメータである。放射状に配置されたスイーパー要素の数と回転速度によって決定される。ゾーンによって、放射状に配置されたスイーパー要素の数が異なる場合がある。スイーパー要素はローター上にオフセットして配置されることがあり、その結果、回転方向にオフセット配置の重なりが生じることがあるので、いくつかの部分(同じゾーン内でも)には、連続したより高いブレード周波数が適用されることがある。オフセット配置による重なりのない領域、処理ゾーンにおいて、1500~4000/分の規定頻度を達成することが好ましい。周波数は1800~3000/分が好ましい。
【0101】
直接連続するスイーパー要素は、好ましくは、スイーパー要素の半径方向最外端の両端間において、100mmから300mmの間隔で連続している。この距離は、刃先間隔とも呼ばれる。この間隔は、好ましくは、オフセット配置による重なりのない領域でも選択され、および/または処理ゾーンに設けられる。ブレード先端間隔は、好ましくは、150mm~280mm、または180mm~260mm、または190mm~250mm、または200mm~240mmである。
【0102】
スイーパー要素の効果によりフィルム状に塗布・分散される懸濁液の剪断速度は、好ましくは3000s-1~30000s-1、特に好ましくは4000s-1~28000s-1である。5000s-1~26000s-1、6000s-1~24000s-1、7000s-1~22000s-1、8000s-1~20000s-1または10000s-1~30000s-1、11000s-1~28500s-1、12000s-1~27000s-1、12000s-1~25500s-1、13000s-1~24000s-1の範囲である。剪断により、懸濁液は十分に混合され機械的に処理されるため、非溶媒の蒸発が促進され、十分に混合された均質な溶液の生成に寄与する。
【0103】
好ましくは、スイーパー要素1個あたり1.5kg/h~30kg/h、好ましくは5kg/h~20kg/hの懸濁液を入口で導入する。20~5000個のスイーパー要素が好ましく、例えば25~4000個または30~3000個または40~2000個のスイーパー要素が提供される。好ましくは1時間当たり300kg~100000kg、好ましくは10000kg~50000kgの懸濁液が導入される。
【0104】
リヨセル法では、処理ゾーンにおける懸濁液の好ましい膜厚(層厚)は、1mm~50mm、好ましくは2.0mm~15mm、特に好ましくは2.2mm~5mmである。層の厚さは、導入される懸濁液の量と処理速度(回転数、スイーパー要素の数、特に搬送要素の数、その角度、したがって前進)によって制御することができる。これは、スイーパー要素の半径方向最外端の、ハウジングケーシングの内面からの間隔によっても制御される。この間隔は、平均して1mm~50mm、好ましくは2.0mm~15mm、特に好ましくは2.2mm~5mmの範囲にあることが望ましい。
【0105】
好ましい実施形態では、スイーパー要素は、0.8dm2~2dm2の面積にわたって平均的に懸濁液または溶液と接触している。
【0106】
好ましい実施形態では、ローターブレードの先端負荷領域は、サスペンションの活性処理領域に関する重要な変数である。このことは、排出されるセルロース溶液の品質に非常に大きな影響を与える。このローターブレード先端負荷領域は、処理ゾーンにあるすべてのスイーパー要素と搬送要素(共同で「ローターブレード」)の端面の合計を表している。その端部または「先端」は、「エンドエリア」と呼ばれる領域によって形成されている。エンドエリアとは、ハウジングケーシングの内面に対向するスイーパーまたは搬送要素の任意の領域のことである。通常、スイーパー要素と搬送要素は、その先端部(ローター軸からの最大距離)に、ハウジングケーシングの内面輪郭に沿い、そこから一定の距離をおいて走るエリアを持つ。ハウジングケーシングの内面と対向する表面は、特にスイーパー要素と搬送要素の場合、トリートメントゾーンにおいて深く関連しているが、リフト要素の場合はそうでない。このパラメータ(表のad参照)は、試験した薄膜処理装置では約0.02m2である。このパラメータは、大規模施設の要件に従って大きくなり、好ましくは0.02m2~6m2 の範囲、特に好ましくは2m2~6m2の範囲、さらに特に好ましくは4m2~6m2の範囲になる。これらの範囲において、ローターの駆動装置の好ましい性能が達成される。同時に、排出されたセルロース溶液は、セルロースの溶解の完全性とセルロース溶液の均質性に関して、非常に良好な品質を示す。さらに、係合力というパラメータがある(テーブルのafを参照)。これは、処理ゾーンのスイーパーと搬送要素のエンドエリア面積の合計(m2)を基準に、1秒あたりの懸濁液の導入量(kg)から算出される。このパラメータが1.10~1.40kg/sm2の範囲であれば、最良のセルロース品質が得られる。それ以上の値、例えば5.5kg/sm2以上では、排出口での質量/溶液の均質性が悪くなる。係合力は、本方式の設計パラメータを決定するための重要なパラメータである。特に、単位時間当たりの懸濁液の投入量によって決定される。懸濁液の導入量が多すぎると、方法に負担がかかり、セルロースが溶媒に十分な量で溶解しない。つまり、その手法の下流工程がうまく機能しない、あるいは全く機能しなくなる。
【0107】
懸濁液は、好ましくは、式s=(ln(ms/60))/xによる膜厚(層厚)を有し、ここで、sは膜厚(mm)、msは懸濁液の搬送流量、xは0.45~7、好ましくは0.5866の定数である。この膜厚は、好ましくは処理ゾーンで達成される。
【0108】
もちろん、これらのパラメータは互いに組み合わせてもよい。例えば、排出口での排出量が、温度制御された(熱交換器を用いた)ハウジングケーシング(内壁)の表面1m2あたり、セルロース溶液300kg/h以上、特に好ましくは350kg/h以上であれば、特に好ましい。また、プロセスハウジング内のセルロースの平均処理時間(入口から出口までの時間)は、少なくとも150秒、好ましくは150秒~1000秒である。そして、(1つ以上の)スイーパー要素は、熱交換器を用いて温度制御された収容ケーシングの一部の上を、1500~4000/分の頻度(スイーパー要素頻度)で連続して移動し、及び/又は、スイーパー要素の効果によりフィルム状に塗布・分散された懸濁液のせん断速度が3000s-1~30000s-1である。
【0109】
回転するスイーパー要素の共通軸は、好ましくは、水平に対して最大20°傾いている。方法に関して、本発明によるパラメータが観察される場合、特に前進、溶液の改良された生産は、水平配向でなくても達成されるが、それでもこの配向が好ましい。したがって、上述したような薄膜処理装置は、本発明による方法において(すなわち、記載された特定のまたは好ましい各実施形態において)必ずしも水平配向を提供することなく使用される。
【0110】
溶媒は、セルロースを溶解するための薬剤である。ここで、温度は通常高温が用いられ、例えば70℃以上、特に75℃以上または78℃以上が好ましい。通常、非溶媒、すなわちセルロースを溶解できない物質と混合して、懸濁液を得、その後溶液を得るが、この混合もセルロースを溶解するのに適している。ここで、特に、混合物中の溶媒の割合は高く、例えば60%(質量%)以上が必要であり、溶媒によってはこれが異なる場合があり、その割合は溶解試験において当業者が容易に決定することが可能である。
【0111】
セルロース溶液は、好ましくは、リヨセル法における通常の量のセルロース濃度を有する。従って、セルロース溶液中のセルロース濃度は、4%~23%、好ましくは6%~20%、特に8%~18%、又は10%~16%(いずれも質量%にて規定)であってよい。
【0112】
反応器内の絶対圧力は、好ましくは100mbar以下、特に40mbar~70mbarの間である。
【0113】
セルロースの溶媒は、好ましくは3級アミンオキシド(アミン-N-オキシド)、特に好ましくはN-メチルモルホリン-N-オキシドである。代替的に、または追加的に、イオン性溶媒であってもよい。このようなイオン性溶媒は、例えば、WO03/029329; WO2006/000197A1; WO2007/076979A1; Parviainen et al., RSC Adv., 2015, 5, 69728-69737; Liu et al., Green Chem. 2017, DOI: 10.1039/c7gc02880f; Hauru et al., Zellulose (2014) 21:4471-4481; Fernandez et al. J Membra Sci Technol 2011, S:4; 等に記載されている。このようなイオン性溶媒は、好ましくはアンモニウム、ピリミジウム、ピロリジニウムまたはイミダゾリウムカチオンのような有機カチオン、好ましくは1,3-ジアルキル-イミダゾリウム塩、例えばハライドを含有するのがよい。また、ここでは、添加される非溶媒として、水が好ましく用いられる。セルロースと1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BMIM)、例えば対イオンとして塩化物を用いたもの(BMIMCl)、または1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(これも塩化物、酢酸またはジエチルリン酸が好ましい)、または1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムまたは1-ヘキシル-1-メチルピロリジニウム(ビス(トリフルオロメチルサルホニル)アミドアニオンが好ましい)と水との溶液は特に好ましいものである。さらにイオン性溶媒は、1,5-ジアザビシクロ[4.3. 0]ノン-5-エニウム、好ましくはアセテートとしてである。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1,3-ジメチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルフォスフェート、1-メチル-3-メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムホルメート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムオクタノエート、1,3-ジエチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオネートなどを用いる。
【0114】
本発明による方法で好ましく処理される懸濁液は、58から75.3質量%のN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMNOまたはNMMO)、19から26.1質量%の水、および5.7から15.9質量%のセルロースを含む。セルロースを20質量%以上含む溶液の製造も可能である。
【0115】
以下、添付の図を参照して本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1は、本発明による薄膜処理装置を側面から見た模式図である。
図2は、
図1に示す薄膜処理装置を上方から見た図である。
図3は、さらなる薄膜処理装置を上方から見た図である。
図4は、
図3に示す薄膜処理装置のプロセスハウジングの、
図3の平面A-Aを通る断面図である。
図5は、本発明による装置のためのローター軸の一部の透視図である。
図6は、入口ゾーンに対応する領域における、本発明による薄膜処理装置のさらなるローター軸の一部を示す透視図である。
図7は、
図6に示すローター軸をプロセスハウジングに配置した状態の断面図である。
図8は、垂直方向に延びる排出システムを有する本発明による薄膜処理装置のさらなる実施形態の排出ゾーンの側面図である。
図9は、
図8に示す実施形態の出口ゾーンを上方から見た平面図である。
図10は、
図8に示す実施形態を正面から見た平面図である。
図11は、水平方向に延びる排出装置を有する本発明による薄膜処理装置のさらなる実施形態の排出ゾーンの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
図1に示す薄膜処理装置10は、軸方向に延びる円筒状のハウジング内部16を囲むハウジングケーシング14を有するプロセスハウジング12を備えている。このハウジングの内部が材料処理空間160を形成する。
【0118】
プロセスハウジング12の近位端領域には、処理されるべき材料を材料処理空間160に導入するための入口ノズル20が配置される一方、プロセスハウジング12の遠位端領域には、材料を材料処理空間160から排出するための出口ノズル24が配置されている。したがって、近位端領域は、プロセスハウジングの入口ゾーン18に対応する一方、遠位端領域は、出口ゾーン22に対応する。処理ゾーン25は、入口ゾーンと出口ゾーンの間にある。
【0119】
プロセスハウジング12は、近位端領域および遠位端領域において適切な支持ベアリングを介して、具体的には、近位端領域において固定ベアリング26を、遠位端領域において浮動ベアリング28を介して支持されている。
【0120】
入口ノズル20は、図示の実施形態では、ハウジングケーシング14の接線方向に配置され、特に
図3から分かるように、下半分において材料処理空間160に通じている。
【0121】
出口ノズル24は、図示の実施形態では、ハウジングケーシング14の最下部で、そのすぐ下に配置された排出システム30に、この具体例ではプロセスハウジング12の軸方向に対して直角に走る搬送方向を有するツイン排出スクリュー300に通じる開口の形態に構成されている。
【0122】
ハウジングケーシング14は、図示の実施形態では二重壁である、ハウジングケーシング内壁と、ハウジングケーシング外壁とを有すると共に、その中間に隙間を有し、隙間には熱交換媒体、典型的には蒸気または温水を伝導するための伝導スパイラルが配設されている。図示の具体例では、2つの熱伝達回路が設けられている。ひとつは、プロセスゾーン25の入口ゾーンまたは入口側領域にある第1の熱媒体入口32と、プロセスゾーン25の出口側領域にある第1の熱媒体出口34とを有する第1の熱媒体回路であり、もうひとつは、出口ゾーン22の遠位領域に第2の熱媒体入口36を有し、その近位領域に第2の熱媒体出口38を有する第2の熱伝達回路である。2つの熱交換回路は、導電性スパイラルを互いに分離しているため、互いに独立して温度制御が可能である。この目的のために、熱伝達媒体の温度を制御するための個別の加熱要素と冷却要素(図示せず)が各熱伝達回路に割り当てられ、熱伝達媒体はそこから熱伝達ポンプを介して熱伝達媒体入口32または36から対応する導電性螺旋の中に導入される。例えば、処理ゾーン25に関連する第1の熱伝達回路では蒸気を熱媒体として使用し、出口ゾーン22に関連する第2の熱伝達回路では温水を熱媒体として使用することが考えられる。
【0123】
さらに、ハウジングケーシング14内には、上方に走行する蒸気ノズル40が配置されており、この蒸気ノズルを介して、材料処理空間160から低沸点成分を除去することができるようになっている。
【0124】
この装置はさらに、例えば
図4に示すように、ハウジングケーシングの内面46に材料膜を生成するための、ハウジング内部16に配置され同軸に延びる駆動可能なローター軸44からなるローター42を備えている。
【0125】
このためのローター42は、好ましくは速度可変の駆動部48を有する。図示の具体例では、平歯車モーター480が設けられており、このモーターは、ローター軸44を回転させるために、ローター軸44のドライブ軸部分に作用する。ここで、ドライブ軸部は、材料処理空間160に対してメカニカルシールにより密閉されている。
【0126】
材料フィルムはハウジングケーシングの内面15上に生成され、材料はスイーパー要素43を介して出口ノズルの方向に搬送され、これらは、さらに後述するように、その主要機能に応じて分配要素431および搬送要素432に分けられる。
【0127】
本発明による装置のローター軸を
図5に示す。これは、ローター軸本体50を有し、このローター軸本体50は、主軸52と、この主軸に溶接されその周方向に分布する軸方向に走る6本の締結帯54とから構成されている。これらの締結帯54にはリフト要素56がフランジ状に装着されており、図示の具体例におけるこのリフト要素は、勾配付き屋根形状のウェブプレート560の形態で設けられており、その頂上部58はローター軸44の軸方向と少なくともほぼ平行に走っている。
【0128】
角度のある形態を有するウェブプレート560は、このように、互いに相対的に斜めに走る平面にある第1および第2のウェブプレート面60a、および60bに分けられる。回転方向の先頭の第1ウェブプレート60aは、リフト要素56の入射流路部62を形成している。入射流路部62の回転方向先端部64は、入射流路部62の先端部より後方に延在する領域66よりもハウジングケーシングの内面15から大きく離れて配置されている。このため、入射流路部62とハウジングケーシングの内面15との間には、回転方向と反対方向に向かって連続的に狭くなる隙間68が形成されている。ローター軸の回転に伴い、今度は被処理物である高粘性材料が隙間68に押し込まれ、これにより入射流路部62に作用するローター軸44の流力は、入射流方向と直交する流体力学的揚力成分を付与し、ローター軸44の偏向を打ち消すことができる。
【0129】
図7に具体的に示す例では、第1ウェブプレート60aまたは入射流路部62は、ハウジングケーシングの内面15の接線または接平面と角度αを囲み、ローター軸本体50の円周方向に角度範囲β1を占めている。連続して延在するウェブプレートの表面は、角度範囲β2を占めている。このように、リフト要素は全体として角度βを占めている。
【0130】
螺旋状に潜在する搬送フィン70は、ウェブプレート560の径方向外側に向かって配置され、ローター軸44の軸方向に対して斜めに配向している。
【0131】
ウェブプレート560の切妻58は、軸方向に走る剪断縁72を形成し、この剪断縁は、搬送フィン70の半径方向外縁に対して後退し、したがって、これと比較して、ハウジングケーシングの内面15からより大きな距離を置いて配置されている。
【0132】
このようにして、一方では、ローター軸44に配置されたウェブプレート560によって、中央ローター軸本体50の方向の流体力学的な揚力成分がローター軸44に付与される。他方では、材料は軸方向に走る剪断刃72によってハウジングケーシングの内面15上に分配され、材料はさらに搬送フィン70によって出口ノズルの方向への搬送成分を付与される。その結果、リフト要素56として機能するウェブプレート560は、材料を分配して搬送するためのスイーパー要素も構成し、したがって、搬送・分配要素を構成する。
【0133】
図5からわかるように、ゾーンによってローター形状あるいはローター軸本体に配置されたスイーパー要素43は異なる構成になっている。したがって、近位端領域に対応する入口ゾーンには、傾斜型屋根形状のウェブプレート560のみが配置される。具体的には、ローター軸44の周方向に6枚のウェブプレートが配されており、周方向に連続して配された各2枚のウェブプレートは、全体に保護ケーシング76が形成されるように接続プレート74によって互いに接続されている。
【0134】
保護ケーシング76の形成により、処理される材料と処理中に逃げるガス状材料成分は、入口ゾーン18において平行流で導かれ、それにより、逃げる成分による可能な「材料巻き込み」のリスクが最小にされる。
【0135】
ウェブプレート560も、入口ゾーン18に隣接する処理ゾーン25に配置されているが、ウェブプレートは、処理ゾーンに対応するローター軸44の長手方向部分において互いに螺旋状にオフセットしてローター軸本体50上に配置されており、それによって、処理ゾーン25全体にわたって個々のリフト要素によって発生するリフトまたはリフト力の最適分布が得られる。
【0136】
十分に高い搬送効果を得るために、リフト要素および搬送・分配要素として機能するウェブプレート560に加えて、搬送効果を高めたスイーパー要素43もさらに設けられる。具体的には、歯78からなり、その剪断端が軸方向に対する迎え角が5°より大きく、したがって搬送要素432を構成するが、リフト要素ではないスイーパー要素43も処理ゾーン25に配置されている。具体的には、複数の歯78をそれぞれ有し、前記迎え角を有するスイーパーブレード80が提供される。さらに、剪断端が軸方向と平行に走るため搬送に関して中立である歯79を有するスイーパー要素43が設けられており、これらのスイーパー要素により純粋に分配要素431が構成されている。分配要素431と搬送要素432は、図示の実施形態では処理ゾーン25に交互に配置されており、前述のように、ウェブプレート560が6つの締結帯54のうちの1つに、または6列のブレードのうちの1つに固定される。
【0137】
入口ゾーン18に特に好ましいローター軸44の構成も
図6および
図7に示されている。従って、同軸スリーブ77が設けられ、このスリーブは、ウェブプレート560を半径方向に突出させ、保護ケーシング76として機能する。周方向に連続して配置された2枚のウェブプレート560の間において、スリーブ77の外周面には、径方向に後退したチャネル82が形成されている。この実施形態によれば、材料の処理中に生じた蒸気は、チャネル82を介して案内されてもよい。保護ケーシング76の端部に到達すると、蒸気は、保護ケーシング76またはスリーブ77に囲まれた内部84を通り、一般的なラビリンスシールを介して、材料処理空間160から分離された蒸気空間へ至り、そこで蒸気は蒸気ノズル40を介して除去され得る。
【0138】
本発明による薄膜処理装置は、
図1~
図4に示した、搬送方向が水平でプロセスハウジングの向きと直角に走るツインディスチャージスクリューの形態の排出装置に代えて、
図8~
図10に示すように、搬送方向が垂直の排出装置30で構成することも可能である。
【0139】
この代替実施形態によれば、排出システム30は、その中に配置され同軸に延びる排出軸88を有するファンネル86から構成される。ファンネルは、搬送方向に先細りになっているほぼ円錐形のファンネル部分90と、それに隣接する円筒形のファンネル部分92とを有する。その入口側(広い)領域において、先細りのファンネル部分90は、ファンネル開口部94を有し、それによってファンネル86はプロセスハウジング12のハウジング内部16に接続される。出口側では、ファンネル86または円筒形のファンネル部分92は、排出ポンプ96に接続されており、このポンプによって、排出される材料は、フィルターおよび/または回転ノズルなどのさらなる装置に除去または供給されることができる。
【0140】
排出軸88は、第1排出軸部98を有し、その上に搬送要素432'が配置されており、この搬送要素によって、排出される材料が円筒状のファンネル部92の方向に搬送される。この円筒状のファンネル部92は、材料を排出ポンプ96に向けて搬送するための単一の排出スクリュー100がその上に形成された状態で配置された第2の排出軸部99の軸受ブッシュとして機能するものである。特に
図9及び
図10から分かるように、ローター軸44は、プロセスハウジング12の遠位方向、すなわち遠位端面に配置されたローター軸受に取り付けられている。ファンネル86は、ローター軸44またはプロセスハウジング12の軸方向に対してオフセットして配置されており、具体的には、遠位ローター軸受102に隣接して上方に延びる排出軸88に十分な空間が提供され、この排出軸はその上端部で排出軸駆動部104に接続されている。ファンネルをオフセット配置し、この配置によりファンネル開口部の最適な開口断面を確保するため、ファンネル86は、特に
図8および
図9に示されるように、その上部入口側領域において円錐形から逸脱した形を有している。
【0141】
その遠位端領域において、2つの円周リーマ106がローター軸本体50上に配置され、これらのリーマによって、材料はプロセスハウジング12の下側に存在するファンネル開口94の中に搬送される。具体的には、リーマ106はそれぞれリーマバー112を有し、このリーマバー112は、リーマアーム114によってローター軸本体50の軸52に固定され、このリーマバー112によって排出物がファンネル開口94に向かって移動される。
【0142】
また、プロセスハウジング12の遠位端面108に直接隣接してローター軸本体50上に板状のクリーニング要素110が配置されており、このクリーニング要素は、遠位端面108の内面に材料が堆積するのを防ぎ、さらに遠位ローター軸受102を材料による汚れから保護してもいる。
【0143】
図8および
図9に示すように、図示の実施形態の出口ゾーン22には、3つの出口ゾーン部分22a、22b、22cが存在する。第1の出口ゾーン部分22aでは、スイーパー要素43がローター軸本体50の対応する長手方向部分に配置され、歯からなり、その剪断縁は軸方向に対して約45°傾斜しており、したがって搬送要素432として機能する。分配要素432、具体的には剪断エッジがプロセスハウジング12又はローター軸44の軸方向と平行に走る歯を有するスイーパー要素は、第1出口ゾーン部分22aにおいて搬送要素432と交互に配置される。別の構成として、搬送要素432のみが存在することも考えられ、それによって、第1の出口ゾーン部分22aにおいて搬送効果の増大がもたらされる。
【0144】
搬送方向において第1出口ゾーン部分22aに隣接する第2出口ゾーン部分22bにおいて、搬送要素432は、
図5と併せて説明してきたように、リフト要素および搬送・分配要素として機能するウェブ板560と周方向で交互に配置されている。
【0145】
搬送方向に向かってこれに隣接する第3出口ゾーン部22cがあり、この第3出口ゾーンはファンネル86内に通じており、ローター軸本体に上述したリーマ106が順番に配置されているだけである。搬送プロセスに対して中立である分配要素431が第1の出口ゾーン部分に存在するのとは対照的に、搬送要素432に加えてさらなる要素が第2の出口ゾーン部分に設けられ、材料に搬送する力成分を付与する。それによって、材料が非常に高い粘度を有していても、第3の出口ゾーン部分22cまたはリーマ106への搬送が保証される。
図5と関連して説明した搬送フィンは、処理ゾーンにおいて、軸に対して例えば5°の比較的小さな角度だけを囲むのに対し、出口ゾーンに配置されたウェブプレート560の搬送フィンは、より大きな角度、特に45°、とすることができ、それによってプロセスゾーンと比較してより強い搬送作用が得られる。
【0146】
図8~
図10に示す実施形態は、プロセスハウジング内に存在するローター軸44の回転速度を排出軸88の回転速度から切り離すことができるという利点を有している。
【0147】
図8~
図10に示す実施形態に代えて、
図11に示す実施形態では、排出系が水平方向に向いている。具体的には、排出システム30は、プロセスハウジングにフランジマウントされたファンネル86’を有し、ローター軸44は当該ファンネル内に突出する。ファンネル86’は、円錐状に先細りのファンネル部分90’を有し、このファンネル部分は、その広い近位端でプロセスハウジング12にフランジ接続され、その軸がプロセスハウジングの軸と一致する。ファンネル部90’では、ローター軸44の直径がそれに応じて先細りになっている。この円錐状ファンネル部90’には、搬送方向に円筒状ファンネル部92’が隣接しており、それは、その中に配置されたシングル排出スクリュー100’のベアリングブッシュとして機能する。
【0148】
図8~
図10に示す実施形態と合わせて説明したように、
図11に示す実施形態の出口ゾーンも、第1出口ゾーン部分22a’と、第1出口ゾーン部分に隣接する第2出口ゾーン部分22b’を有する。本実施形態においても、分配要素431の代わりに、第2出口ゾーン部分22b’にウェブプレート560が形成されている。第1出口ゾーン部分22a’に存在する分配要素431は、搬送プロセスとして機能しない。このウェブプレート560は、リフト要素としても、搬送及び分配要素としても機能する。また、ファンネル86’内に突出するローター軸44の領域においても -第2の出口ゾーン部分22b’と同様に- ウェブ板560が搬送要素432と共にローター軸体50上に配置されている。具体的には、ここでは、ウェブプレート560は、互いに螺旋状にオフセットして配置されている。
【0149】
ハウジング内部の内径が280mm、周長が0.88mの薄膜処理装置を用いて、セルロースのNMMNO/水溶液を製造する実験を行った。水平ローター軸は、異なるスイーパー要素を備え、それらはローター軸の周りに最大8つの水平列に配置され、プロセスゾーンではスイーパーの各2列目はα=20°の角度で傾斜していた。残りのローターブレードは傾いていない。スイーパー要素の外側の端部同士の間隔は、108mmから216mmであった。スイーパー要素は,水平方向に移動する懸濁液への介入面積が最大1.9dm2であり,加熱されたケーシング内面に面して配置され,プロセスハウジングのケーシング内面から2.75~3.5mm離間していた。水平支持型ローターの最高回転数は650min-1であったため、スイーパー要素の先端部の周速は最大9.3m/s、スイーパー要素の最大連続周波数は2600/minであった。その他のパラメータは表1に示す。
【0150】
セルロース溶液を製造するために、使用したユーカリパルプタイプのセルロースを脱塩水に懸濁させた。セルロース繊維を水に完全に懸濁させた後、余分な水を濾過により分離し、得られたパルプケーキを固形分濃度約50%まで圧搾した。脱水後のパルプケーキは、ニードルロールとシュレッダーを経由して脱バイに導かれた。得られた細かく解繊された湿潤セルロースを3級アミン酸化物水溶液(NMMNO)に連続的に導入し、懸濁液を作製した。リングレイヤーミキサーやタービュレントミキサーは、この目的に適した装置である。
【0151】
組成の異なる水、セルロース、NMMNOの懸濁液(表1のb、c、d列参照)は、セルロース溶液を製造するために、工程のさらなる段階で薄膜処理装置に導入された。導入した懸濁液の質量基準の水分含有率が19%~26%、セルロース含有率が5.7%~11.9%、NMMNO含有率が65%~75%であると有利であることが証明されている。このような懸濁液では、供給ゾーンにおける懸濁液の良好な分布が達成され得る。出発組成物(式中の指数=前)から目的組成物(式中の指数=後)への変換は、有利にはある比率に従うことが見出された。この比率は、
の式を満たす場合に適していることが証明され、それぞれの場合における100%への差はNMMNO濃度により形成されている。濃度(cH2O, cCell)はすべて質量%で表記している。驚くべきことに、
の比が1.8~2.5、
が0.8~0.95のときに最良の結果を得ることができた。
【0152】
懸濁液を異なる処理ゾーンに通過させることで、その組成を目的の組成に変化させる。目標組成が達成された場合、本方法の実施中にそれ以上変化することはない。この目標組成は、好ましくは、式
c(Cell)≦35.9-1.736*c(H2O)、
及び/又は、式
c(Cell)≧32.4-2.17*c(H2O)
を満足すべきであり、ここでc(Cell)はセルロースの質量%での含有量、c(H2O)はセルロース溶液中の水の質量%での含有量である。出発組成は個々の成分を混合することにより達成されるが、目標組成は本方法を実施することにより達成される。組成物は、存在する物理的条件の結果として、個々のゾーンで異なって形成されるので、本発明による方法に記載されたパラメーターおよび範囲が観察されると有利である。経験上、求められる目標組成は、
c(H2O)=(33.5-c(Cell)/1.91)
の式で表される。目標組成は、求める目標組成と異なっていてもよいが、好ましくは、上記目標組成の規定式の範囲にあることが望ましい。目標組成は出口領域の終点で決定される。処理中に目標組成に到達する速度は異なる場合がある。したがって、この目標組成がプロセスゾーンの終了時に到達していると、本方法にとって有利である。しかし、全処理時間の3分の1が経過した時点で、すでに目標組成に到達していることも十分にあり得る。総処理時間は、懸濁液/溶液が入口ゾーンの開始から出口ゾーンの終了まで通過するのに必要な時間である。目標組成に達した後は、セルロース溶液の組成はそれ以上変化しない。
【0153】
この水平型薄膜蒸発器では、激しい混合・混練作用により、セルロース溶液をパーティクルフリーで連続的に製造することができた。処理時間(t)が150秒の場合、セルロースは完全に溶解した。
【0154】
ローターブレード先端の面積(上記)に基づくハウジングケーシング内面の幾何学的条件と、ローターブレード先端の周速度(すなわち軸から最も離れた位置)から、経済的に好都合で同時に導入懸濁液の溶解を効率的に評価するための有効な特性値を得ることができた。このパラメータを以下のように設定することで、経済的な手法でありながら、解の品質も非常に高いものになる。このパラメータは、ここではローターブレードの比表面積比として定義する(表のae行)。
【0155】
ローターブレードの比面積比(表の行ae)=ハウジングケーシング内壁の熱交換面積(表の行h)/(ローターブレード先端負荷面積(表の行ad)*ブレード先端速度(表の行1))
【0156】
良好な品質、すなわち紡糸準備溶液のスコア<2(表の行x)の場合、ローターブレードの比面積比は好ましくは10未満、特に好ましくは8未満、非常に特に好ましくは5m2s/m3未満であることが見出されている。したがって、これらのパラメータ範囲は特に好ましい。
【0157】
プロセス管理を確実に行うために、溶媒を安定させ、セルロースの分解を防ぐために、さらに安定剤を懸濁液に添加した。連続的に生成された懸濁液は、温度(u、v、w)および負圧(j)を加え、水平せん断下で高粘弾性溶液に変換され、過剰の水は45~90mbarの減圧(j)で除去された。装置の加熱は、1~2バールの圧力で飽和蒸気を用いて行い、蒸気温度は100℃から121℃の間であった。
【0158】
内部に広がった層の厚さは、2.75~3.5mmであった(i)。温度と負圧によって蒸発した水は、80~85℃の温度で懸濁流に向流で除去され、ここで蒸気流(s)は最大で61.5kg/hであった。剪断速度(o)は5000~21000s-1であり、速度「ユーロ」におけるローターは、-0~37kWの電力(f)を消費した。
【0159】
出口では、完成したセルロース溶液が排出スクリューで排出された(k)。吐出スクリューは、内部で発生する負圧を常圧に戻すために使用される。1時間当たり、約100℃の温度(w)で最大484kgの均質なセルロース溶液を得ることができた。横型装置での懸濁液の処理時間(t)は、-0~360秒であった。
【0160】
こうして得られた高粘度のセルロース溶液は、紡糸の前に脱揮と濾過の工程が追加された。溶液を顕微鏡で観察した結果、実施例5および6のみ、溶液中に未溶解のセルロース粒子が存在することが判明した。このため、ready-to-spin溶液(x)の採点は以下の方式に従った。採点は顕微鏡下で行い、1点から3点までとした。1点は、未溶解の粒子がもはや存在しないことを意味し、2点は、未溶解の粒子が少し存在することを意味し、3点は、未溶解の粒子がたくさん存在することを意味する。濾過後、すべてのセルロース溶液は紡糸に適している。
【0161】
セルロース溶液は、WO2013/030399Aに記載されているようにフィラメントに紡糸され、圧力下で1つ以上の押出開口部を通して溶液を押し出すことと、回収浴中で成形セルロース体を固化することからなり、溶液は押出開口部と回収浴の間の空隙を通して案内された。
【0162】
特性値
【0163】
レイノルズ数ローター(y):
【0164】
【0165】
レイノルズ数フィルム(z):
【0166】
【0167】
ニュートン数(aa):
【0168】
【0169】
オイラー数(ab):
【0170】
【0171】
リアクター内の圧力計算
【0172】
【0173】
p=リアクター内の絶対圧力[mbar]
c(cell)=懸濁液中のセルロース濃度(質量%)
【0174】
ローターブレード(スイーパー要素)の比表面積比。
【0175】
【0176】
AR ... ローターブレードの比表面積比(m2s/m3)
AM ... 処理ゾーンのケーシング内面(単位:m2)
AB ... ローターブレード先端負荷面積(m2)
Vu ... ブレード先端周速(m/s)
【0177】
【0178】
参照符号
10 薄膜処理装置
12 プロセスハウジング
14 ハウジングケーシング
15 ハウジングケーシングの内面
16; 160 ハウジング内部;材料処理空間
18 入口ゾーン
20 入口ノズル
22 出口ゾーン
24 出口ノズル
25 処理ゾーン
26 固定ベアリング
28 フローティングベアリング
30; 300排出方式;ツイン排出スクリュー
32 第1の熱媒体入口
34 第1の熱媒体排出口
36 第2の熱媒体入口
38 第2の熱媒体排出口
40 ベーパーノズル
42 ローター
43 スイーパー要素
431, 432 分配要素、搬送要素
44 ローター軸
48; 480 ドライブ; 平歯車モーター
50 ローター軸本体
52 スピンドル
54 締結帯
56; 560 リフト要素; ウェブプレート
58 ウェブプレートの頂上部
60a、b 第1及び第2のウェブプレート表面
62 入射流路部
64 入射流部の先端部
66 入射流部分の後方領域
68 ギャップ
70 搬送用フィン
72 ウェブプレートの軸方向に延びる剪断縁部
74 接続プレート
76 保護ケーシング
77 スリーブ
78 アタック角のある歯
79 アタック角のない歯
80 スイーパーブレード
82 チャンネル
84 保護ケーシングの内部
86、86’ ファンネル
88 吐出軸
90、90’ 先細りファンネル部
92 円筒状ファンネル部
94 ファンネル開口部
96 吐出ポンプ
98 第1の吐出軸部
99 第2排出軸部
100 シングルディスチャージスクリュー
102 ディスタルロータリーベアリング
104 吐出軸駆動
106 リーマ
108 プロセスハウジングの遠位端面
110 クリーニング要素
112 リーマバー
114 リーマアーム
【0179】
好ましい実施形態
【0180】
本発明は次の様に特定される。
【0181】
1. 粘性材料を処理するための薄膜処理装置であって、
軸方向に延びる回転対称のハウジング内部(16)を取り囲み、材料処理空間(160)を形成する加熱可能および/または冷却可能なハウジングケーシング(14)を備え、水平に対して最大20°の傾斜で方向付けられる処理ハウジング(12)と、
処理される材料を材料処理空間(160)に導入するために、プロセスハウジング(12)の入口ゾーン(18)に配置された入口ノズル(20)と、
材料処理空間(160)内に配置され、ハウジングケーシングの内面(15)上に材料膜を生成し、材料を入口ゾーン(18)から処理ゾーン(25)を経て出口ゾーン(22)に向かう方向に搬送するために同軸に延びる駆動可能なローター軸(44)を備え、ローター軸(44)は中央ローター軸本体(50)とその周縁に配置されて、その半径方向の最も外側端部がハウジングケーシングの内面(15)から距離を置かれているスイーパー要素(43)とを有し、
前記ローター軸(44)は、前記ローター軸本体(50)上に配置された少なくとも1つのリフト要素(56)を備え、このリフト要素は、前記ローター軸(44)の回転中に前記ローター軸本体(50)の方向に持ち上げ力を生成するように設計されていることを特徴とする薄膜処理装置。
【0182】
2. リフト要素(56)が、回転方向の先端における先行端(64)を有する平面状の入射流路部(62)を備え、この端は、この先行端より後ろに延在する入射流路部(62)の領域(66)よりもハウジングケーシングの内面(15)から大きな距離に配置され、それによって、回転方向と反対の方向に向かって狭まる様に構成された隙間(68)が入射流路部(62)とハウジング内面(15)の間に形成され、この隙間が連続的に狭まる隙間であることを特徴とする1に記載の薄膜処理装置。
【0183】
3. 前記入射流路部(62)は、前記ローター軸本体(50)の円周のうち少なくとも10°の角度範囲β1に亙っていることを特徴とする2に記載の薄膜処理装置。
【0184】
4. リフト要素(56)の少なくとも一部が、スイーパー要素(43)によって形成されていることを特徴とする1~3に記載の薄膜処理装置。
【0185】
5. リフト要素(56)が、少なくともほぼ傾斜した屋根形状のウェブプレート(560)からなり、その頂上部(58)がローター軸(44)の軸方向と少なくともほぼ平行に走っていることを特徴とする1~4に記載の薄膜処理装置。
【0186】
6. リフト要素(56)、特にウェブプレート(560)が、その半径方向外側に少なくとも1つの螺旋状に延在する搬送フィン(70)を有することを特徴とする1~5に記載の薄膜処理装置。
【0187】
7. リフト要素(56)の少なくとも一部が、好ましくはプロセスゾーン(25)において、ローター軸(44)が支持されるローター軸受の間でその中央に位置する領域、に配置されることを特徴とする1~6に記載の薄膜処理装置。
【0188】
8. 前記リフト要素(56)の少なくとも一部は、前記ローター軸本体(50)上のプロセスゾーン(25)において、互いに螺旋状にオフセットして配置されていることを特徴とする1~7に記載の薄膜処理装置。
【0189】
9. 前記ハウジングケーシングの内面(15)と前記ローター軸本体(50)との間に配置され、前記ローター軸本体を少なくとも略完全に囲む同心状の保護ケーシング(76)が前記入口領域(18)に形成されていることを特徴とする1~8に記載の薄膜処理装置。
【0190】
10. 保護ケーシング(76)は、周方向に分布する複数のリフト要素(56)、特にウェブプレート(560)によって少なくとも一部が形成されていることを特徴とする9に記載の薄膜処理装置。
【0191】
11. 周方向に連続して配置された2つのリフト要素(56)の間のそれぞれに、特に2つウェブプレート(560)の間のそれぞれに、半径方向に後退したチャネル(82)が形成されていることを特徴とする10に記載の薄膜処理装置。
【0192】
12. 前記処理ゾーン(25)は、搬送方向下流側に配置された分配ゾーンと搬送ゾーンとを有し、分配要素(431)の数に対する搬送要素(432)の数の比率は、分配ゾーンよりも搬送ゾーンの方が高いことを特徴とする1~11に記載の薄膜処理装置。
【0193】
13. 出口ノズル(24)が、好ましくはプロセスハウジング(12)の軸方向と直交する軸方向を有する、シングル排出スクリューまたはツイン排出スクリュー(300)の形態の排出システム(30)につながることを特徴とする1~12に記載の薄膜処理装置。
【0194】
14. 前記プロセスハウジング(12)内に導入可能に構成され、前記エンドカバーの開放時に軸方向に往復移動可能なクリーニング装置をさらに備えることを特徴とする1~13に記載の薄膜処理装置。
【0195】
15. 物質混合物の熱分画のために設計され、特に薄膜蒸発器、薄膜乾燥器または薄膜反応器の形態で、好ましくは薄膜蒸発器の形態で提供されることを特徴とする1~14に記載の薄膜処理装置。
【0196】
16. 少なくとも一時的に100Pa・s以上の粘度を有する材料の処理の処理中に使用することを特徴とする1~15に記載の薄膜処理装置の用途。
【0197】
17. セルロースを溶媒と揮発性非溶媒に溶解した懸濁液から、セルロースの溶媒溶解液を製造する方法であって、薄膜処理装置の入口に懸濁液を導入する工程、ハウジングケーシング上にフィルム状に塗布・分散する工程、薄膜処理装置のプロセスハウジング内で共通の軸を中心に回転するスイーパー要素により、熱交換器を用いて温度制御する工程、揮発性の非溶媒を蒸発させ、セルロースを溶解させる工程、セルロースの溶液を薄膜処理装置から出口を通して排出する工程を含む、方法。
【0198】
18. スイーパー要素の少なくとも一部が、出口における排出量が、収容ケーシングの温度制御された表面1平方メートル当たり300kg/h~600kg/h、好ましくは350kg/h~550kg/h、更に好ましくは380kg/h~480kg/hのセルロース溶液となるようにセルロースを出口方向に前進させることを特徴とする17に記載の方法。
【0199】
19. プロセスゾーンにおける導入された懸濁液の温度が100~125℃、好ましくは100~110℃、特に好ましくは100~105℃であることを特徴とする17または18に記載の方法。
【0200】
20. 式p=122*e^-0.05c(Cell))、ここでpは絶対圧力をmbarで示し、c(Cell)はサスペンション中のセルロース濃度を質量%で表す、
で示されるプロセスゾーン内の絶対圧力が、少なくとも±10%、好ましくは±5%の範囲である17~19に記載の方法。
【0201】
21.ローターブレードの比面積比(表、ae)が10m2s/m3以下、好ましくは8m2s/m3以下、より好ましくは5m2s/m3以下にあることを特徴とする17~20に記載の方法。
【0202】
22.ローターブレード先端負荷面積(表、ad)が、好ましくは0.02m2~6m2の範囲、特に好ましくは2m2~6m2の範囲、さらに特に好ましくは4m2~6m2の範囲であることを特徴とする17~21に記載の方法。
【0203】
23. a)入口ゾーンにおける比負荷が、80kg/h/dm3~380kg/h/dm3、好ましくは120kg/h/dm3~370kg/h/dm3、より好ましくは150kg/h/dm3~350kg/h/dm3、
b)処理ゾーンにおける比負荷が65kg/h/dm3~260kg/h/dm3、好ましくは70kg/h/dm3~200kg/h/dm3、より好ましくは80kg/h/dm3~150kg/h/dm3、
c)出口ゾーンにおける比負荷が、2kg/h/dm3~125kg/h/dm3、好ましくは 5kg/h/dm3~100kg/h/dm3、より好ましくは 10kg/h/dm3~50kg/h/dm3、
d)後処理ゾーンにおける比負荷は、0kg/h/dm3~500kg/h/dm3、より好ましくは0kg/h/dm3~250kg/h/dm3である、
ことを特徴とする17~22に記載の方法。
【0204】
24. セルロース溶液の全処理時間が少なくとも60秒、好ましくは100秒以上、より好ましくは100~1000秒であることを特徴とする17~23に記載の方法。
【0205】
25. 出発組成物と目標組成物の比が、次式に基づく、
ここで、c(Cell)は溶液中のセルロースの濃度、c(H2O)は溶液中の水の濃度であり、それぞれ質量%で規定される、
ことを特徴とする17~24に記載の方法。
【0206】
26. a)
の比が1.8~2.5の範囲に、好ましくは2.1~2.4の範囲にあり、
b)
の比が0.8~0.95の範囲に、好ましくは0.8~0.88の範囲にあることを特徴とする17~25に記載の方法。
【0207】
27. 先端効率が1.1kg/sm2~5.5kg/sm2、好ましくは1.1kg/sm2~2.8kg/sm2、より好ましくは1.1kg/sm2~1.4kg/sm2の範囲にあることを特徴とする17~26に記載の方法。
【0208】
28. 目標組成が、好ましくは全処理時間の少なくとも1/3経過後、より好ましくは全処理時間の2/3経過後、更に好ましくは処理ゾーンの終了時に達成されることを特徴とする17~27に記載の方法。
【0209】
29. 熱交換器を用いて温度制御された収容ケーシングの、入口から出口までの長さが0.5m以上、好ましくは1m~20mであることを特徴とする17~28に記載の方法。
【0210】
30. 熱交換器を用いて温度制御された収容ケーシングの表面が、0.5m2~150m2、好ましくは60m2~125m2であることを特徴とする17~29に記載の方法。
【0211】
31. スイーパー要素の半径方向最外端が、スイーパー要素の回転によって、1.5m/sから12.5m/sの速度で移動することを特徴とする17~30に記載の方法。
【0212】
32. 熱交換器を用いて温度制御されたハウジングケーシングの一部にわたって、スイーパー要素を毎分1500~4000の頻度で連続して移動させることを特徴とする17~31に記載の方法。
【0213】
33. 直接連続するスイーパー要素は、スイーパー要素の半径方向最外端において100mmから300mmの間隔をおいて互いに連続していることを特徴とする17~32に記載の方法。
【0214】
34. スイーパー要素当たり1.5kg/h~20kg/hの懸濁液を入口から導入することを特徴とする17~33に記載の方法。
【0215】
35. 懸濁液を1mm~50mm、好ましくは2.0mm~15mmの膜厚で塗布することを特徴とする17~34に記載の方法。
【0216】
36. スイーパー要素が0.8dm2~2dm2の面積で平均して懸濁液または溶液と接触していることを特徴とする17~35に記載の方法。
【0217】
37. 懸濁液が、式s=(ln(ms/60))/xによる膜厚を有すること、ここで、sはmm単位で示された膜厚、msは懸濁液の搬送流量、xは0.45~7であり、好ましくは0.5866の定数であることを特徴とする17~36に記載の方法。
【0218】
38. 300kg~100000kg、好ましくは10000kg~50000kgの懸濁液を1時間当たり導入することを特徴とする17~37に記載の方法。
【0219】
39. 回転するスイーパー要素の共通軸が、水平に対して最大20°傾いていることを特徴とする17~38に記載の方法。
【0220】
40.項目1~15のいずれか1項に記載の薄膜処理装置を用いた17~39に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースを溶媒と揮発性非溶媒に溶解した懸濁液から、セルロースの溶媒溶解液を製造する方法であって、薄膜処理装置の入口に懸濁液を導入する工程、ハウジングケーシング上にフィルム状に塗布・分散する工程、薄膜処理装置のプロセスハウジング内で共通の軸を中心に回転するスイーパー要素により、熱交換器を用いて温度制御する工程、揮発性の非溶媒を蒸発させ、セルロースを溶解させる工程、セルロースの溶液を薄膜処理装置から出口を通して排出する工程を含み、
スイーパー要素の少なくとも一部が、出口における排出量が、収容ケーシングの温度制御された表面1平方メートル当たり300kg/h~600kg/h、のセルロース溶液となるようにセルロースを出口方向に前進させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記出口における排出量が、収容ケーシングの温度制御された表面1平方メートル当たり350kg/h~550kg/hのセルロース溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出口における排出量が、収容ケーシングの温度制御された表面1平方メートル当たり380kg/h~480kg/hのセルロース溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
スイーパー要素の比面積比が10m
2s/m
3以下であり、スイーパー要素の比面積比が、式
で表され、ここで
ARは、スイーパー要素の比面積比(m
2s/m
3)、
AMは、薄膜処理装置の処理ゾーンにおけるケーシング内面(単位:m
2)、
ABは、スイーパー要素搭載面積(m
2)、
Vuは、スイーパー先端の周速(m/s)
であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スイーパー要素の比面積比は、8m2s/m3以下であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スイーパー要素の比面積比は、5m2s/m3以下であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
a)入口ゾーンにおける比負荷が、80kg/h/dm3~380kg/h/dm3、及び/又は
b)処理ゾーンにおける比負荷が、65kg/h/dm3~260kg/h/dm3、及び/又は
c)出口ゾーンにおける比負荷が、2kg/h/dm3~125kg/h/dm3、及び/又は
d)後処理ゾーンにおける比負荷が、0kg/h/dm3~500kg/h/dm3、
であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
a)入口ゾーンにおける比負荷が、120kg/h/dm3~370kg/h/dm3、
b)処理ゾーンにおける比負荷が、70kg/h/dm3~200kg/h/dm3、
c)出口ゾーンにおける比負荷が、5kg/h/dm3~100kg/h/dm3、
d)後処理ゾーンにおける比負荷は、0kg/h/dm3~500kg/h/dm3、
であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
a)入口ゾーンにおける比負荷が、150kg/h/dm3~350kg/h/dm3、
b)処理ゾーンにおける比負荷が、80kg/h/dm3~150kg/h/dm3、
c)出口ゾーンにおける比負荷が、10kg/h/dm3~50kg/h/dm3、
d)後処理ゾーンにおける比負荷が、0kg/h/dm3~250kg/h/dm3、
であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
懸濁液の導入からセルロース溶液の出力まで、又はセルロースの溶解までの処理時間が少なくとも60秒であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
懸濁液の導入からセルロース溶液の出力まで、又はセルロースの溶解までの処理時間が少なくとも100秒であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
懸濁液の導入からセルロース溶液の出力まで、又はセルロースの溶解までの処理時間が100~1000秒であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
係合先端力が1.1kg/sm2~5.5kg/sm2の範囲にあり、および/または熱交換器を用いて温度制御された収容ケーシングの表面が0.5m2~150m2であることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載された方法。
【請求項14】
係合先端力が1.1kg/sm2~2.8kg/sm2の範囲にあることを特徴とする請求項13に記載された方法。
【請求項15】
係合先端力が1.1kg/sm2~1.4kg/sm2の範囲にあることを特徴とする請求項13に記載された方法。
【請求項16】
熱交換器を用いて温度制御された収容ケーシングの表面が60m2~125m2にあることを特徴とする請求項13に記載された方法。
【請求項17】
スイーパー要素の半径方向最外端が、スイーパー要素の回転によって1.5m/s~12.5m/sの速度で移動されること、および/または熱交換器を用いて温度制御されたハウジングケーシングの一部にわたってスイーパー要素が1500~4000/minの周波数で連続して移動すること、および/または直接連続して配置されたスイーパー要素がスイーパー要素の半径方向最外端間に100mm~300mmの間隔で互いに後続していることを特徴とする請求項1~16までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項18】
懸濁液が1mm~50mmの膜厚で塗布されること、および/または
スイーパー要素が0.8dm2~2dm2の面積で平均して懸濁液または溶液と接触していること、および/または
懸濁液が、式s=(ln(ms/60))/xによる膜厚を有すること、ここで、sはmm単位で示された膜厚、msは懸濁液の搬送流量、xは0.45~7の定数であることを特徴とする、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
懸濁液が2.0mm~15mmの膜厚で塗布されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
xは0.5866の定数であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
プロセスゾーンにおける導入された懸濁液の温度が100~125℃であることを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式p=122*e^-0.05c(Cell))、
ここで、pは絶対圧力をmbarで示し、c(Cell)は懸濁液中のセルロース濃度を質量%で表す、
で示されるプロセスゾーン内の絶対圧力が、少なくとも±10%の範囲である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ローターブレード先端負荷面積が、好ましくは0.02m2~6m2の範囲であることを特徴とする、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
出発組成物と目標組成物の比が、次式に基づく、
ここで、c(Cell)は溶液中のセルロースの濃度、c(H2O)は溶液中の水の濃度であり、それぞれ質量%で規定されることを特徴とする、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
の比が1.8~2.5の範囲にあり、
の比が0.8~0.95の範囲にあることを特徴とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
先端効率が1.1kg/sm2~5.5kg/sm2の範囲にあることを特徴とする、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
目標組成が、全処理時間の少なくとも1/3経過後、又は全処理時間の2/3経過後、又は処理ゾーンの終了時に達成されることを特徴とする、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
熱交換器を用いて温度制御された収容ケーシングの、入口から出口までの長さが0.5m以上であることを特徴とする、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
スイーパー要素の半径方向最外端が、スイーパー要素の回転によって、1.5m/s~12.5m/sの速度で移動することを特徴とする、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
熱交換器を用いて温度制御されたハウジングケーシングの一部にわたって、スイーパー要素を毎分1500~4000の頻度で連続して移動させることを特徴とする、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
直接連続するスイーパー要素は、スイーパー要素の半径方向最外端において100mm~300mmの間隔をおいて互いに連続していることを特徴とする、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
スイーパー要素当たり1.5kg/h~20kg/hの懸濁液を入口から導入することを特徴とする、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
懸濁液を1mm~50mmの膜厚で塗布することを特徴とする、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
スイーパー要素が平均して0.8dm2~2dm2の面積で懸濁液または溶液と接触していることを特徴とする、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
懸濁液が、式s=(ln(ms/60))/xに基づく膜厚を有すること、ここで、sはmm単位で示された膜厚、msは懸濁液の搬送流量、xは0.45~7の定数であることを特徴とする、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
1時間当たり300kg~100000kgの懸濁液を導入することを特徴とする、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
回転するスイーパー要素の共通軸が、水平に対して最大で20°傾いていることを特徴とする、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】