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特開2024-160391有利な封止および装填特性を備えた心臓弁置換プロテーゼ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160391
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】有利な封止および装填特性を備えた心臓弁置換プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024143300
(22)【出願日】2024-08-23
(62)【分割の表示】P 2021512624の分割
【原出願日】2019-09-05
(31)【優先権主張番号】18193122.1
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518021632
【氏名又は名称】トライケアス
【住所又は居所原語表記】27avenue deI’Opera,75001 Paris,France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100210099
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 太介
(72)【発明者】
【氏名】コラリー マルシャン
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ゲラルド ウルタド アギラル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート シュトラウビンガー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有利な封止特性と、デリバリシステム、例えばカテーテルへの装填のための有利な特性とを備える置換心臓弁プロテーゼを提供する。
【解決手段】置換心臓弁プロテーゼであって、フレームと、該フレームに取り付けられた弁と、封止手段とを含み、前記封止手段は、2つ以上の封止特徴を含むかまたは2つ以上の封止特徴から成る、プロテーゼ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテーゼであって、フレームと、該フレームに取り付けられた弁と、封止手段とを含み、前記封止手段は、2つ以上の封止特徴を含むかまたは2つ以上の封止特徴から成る、プロテーゼ。
【請求項2】
前記フレームは、単一フレーム、複数部分フレーム、好ましくは二部または三部フレーム、またはステント構成におけるステントである、請求項1記載のプロテーゼ。
【請求項3】
前記フレームは、ポリマー材料、金属または/およびニチノールから形成されているまたはポリマー材料、金属または/およびニチノールを含む、請求項2記載のプロテーゼ。
【請求項4】
前記フレーム材料は、鋳造されている、レーザ切断されている、または/かつ編組メッシュである、請求項3記載のプロテーゼ。
【請求項5】
前記フレームは、好ましくは1つまたは複数の縫合糸、1つまたは複数の機械的コネクタまたは溶接によって、好ましくは互いに取り付けられた内側フレームおよび外側フレームから構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項6】
前記内側フレームおよび前記外側フレームは、レーザ切断されたニチノールチューブ、ワイヤニチノールメッシュ、好ましくは編組ニチノールメッシュ、またはレーザ切断されたニチノールチューブとワイヤニチノールメッシュとの組合せから形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項7】
前記弁または/および前記封止手段は、合成材料、例えばポリマー材料、または生物学的材料、好ましくはブタまたはウシ由来の、好ましくは心膜組織から形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項8】
1つの封止特徴は、前記プロテーゼの流入領域、例えば心房領域における封止カバーであり、別の封止特徴は、前記プロテーゼの流出領域、例えば心室領域における封止カバーである、請求項1から7までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項9】
前記流入および流出封止特徴は、2つまたはそれ以上の別個の部分であり、該別個の部分は、互いに取り付けられているまたは1つのユニットとして形成されている、請求項8記載のプロテーゼ。
【請求項10】
前記封止特徴は、前記フレームへの取付けのための特定の取付け点または領域によって特徴付けられている、請求項8または9記載のプロテーゼ。
【請求項11】
前記封止特徴と、前記フレームへの取付けのための前記封止特徴の取付け点または領域とは、前記封止材料と前記ステント材料との間の延伸の差によって破損または損傷されない、請求項10記載のプロテーゼ。
【請求項12】
前記封止特徴は、前記取付け点または領域I,E,Jまたは/およびKにおいて前記フレームに取り付けられている、請求項11記載のプロテーゼ。
【請求項13】
前記取付け点または領域I,E,Jおよび/またはKの配置は、前記プロテーゼのクリンプされた段階における前記封止カバー組織の延伸または折れ曲がりを防止する、請求項1から12までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項14】
前記取付け点IからKまでの距離が、12~30mm、例えば約15~26mmの範囲であり、前記取付け点JからKまでの距離が、12~30mm、例えば約15~26mmの範囲であり、前記取付け点KからEまでの距離が、0~15mm、例えば約3~10mmの範囲であり、好ましくは、距離IからKおよび距離JからKは、基本的に等しい、請求項1から13までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項15】
前記距離JからKに対する前記距離IからKの比は、約0.5~1.2、好ましくは1である、請求項14記載のプロテーゼ。
【請求項16】
前記プロテーゼは、大動脈弁プロテーゼ、僧帽弁プロテーゼ、肺動脈弁プロテーゼまたは三尖弁プロテーゼである、請求項1から15までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項17】
前記プロテーゼはクリンプすることができ、クリンプされた状態における前記プロテーゼの外径は、335フレンチ以下である、請求項1から16までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項18】
前記流入領域、前記流出領域またはそれらの両方における前記封止特徴は、収縮期および拡張期中のPVLを防止するまたは低減する、請求項1から17までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項19】
前記封止特徴材料は、生体適合性および/または非毒性である、請求項1から18までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項20】
前記封止特徴は、血栓症または停滞を促進しない、請求項1から19までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項21】
心臓弁疾患または心臓弁障害、例えば、心臓弁機能不全、心臓弁狭窄または逆流の治療において使用するための、請求項1から20までのいずれか1項記載のプロテーゼ。
【請求項22】
請求項1から20までのいずれか1項記載のプロテーゼの低侵襲埋込みの方法であって、前記プロテーゼをデリバリシステムによって展開させて装填し、前記デリバリシステムを経心尖的、経大腿的、経頸静脈的または経心房的に患者に導入し、前記プロテーゼを標的部位において展開する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有利な封止特性と、デリバリシステム、例えばカテーテルに装填するための有利な特性とを有する置換心臓弁プロテーゼに関する。
【0002】
背景
過去数十年において、低侵襲技術が進歩し、現在、多くの医療分野において実行可能である。
【0003】
幾つかの医療分野では、現在では低侵襲技術によって患者を治療することが可能であり、さもなければ身体状態および手術に関連したリスクにより十分に対処することができなかったこのような患者の治療が可能になっている。このような低侵襲方法の多くは、医療機器を所望の標的部位に埋め込むためのデリバリシステム、例えばカテーテルを適用する。
【0004】
近年、心臓弁疾患および心臓弁欠陥の治療はますます成功を収めている。その例は、心臓弁置換療法、例えば心臓の大動脈弁および僧帽弁の治療のための、経心尖方式、経頸静脈方式および経大腿方式である。
【0005】
多くの場合、組織ベースの置換弁を備えたステントベースのプロテーゼが使用され、生来の心臓弁と置換するために埋め込まれる。置換心臓弁は、カテーテルデリバリシステムを介して、制御および調整された形式で、標的部位において患者に配置される。
【0006】
置換心臓弁は、カテーテルシステムにクリンプおよび装填されなければならない。次いで、デリバリシステムは、患者の血管系内へ、例えば経大腿式に導入され、標的部位へ送られる。標的部位において、正しい展開を実現するために、置換心臓弁プロテーゼは、カテーテルからの最終的な解放前に、正確に位置決めされなければならない。
【0007】
置換心臓弁プロテーゼの正しい機能にとって同様に重要なのは、プロテーゼが密着し、弁周囲逆流(PVL)が発生しないことである。
【0008】
したがって、機能中の血液の逆流を回避する良好な封止特徴を示す置換心臓弁プロテーゼの必要性が存在する。
【0009】
置換心臓弁に関する公知の問題は、埋め込まれた置換心臓弁の十分な封止の欠如によりPVL(弁周囲逆流)を引き起こすこと、および置換心臓弁プロテーゼの不適切な機能である。
【0010】
特に、二重壁またはステント・イン・ステント設計で構成された置換心臓弁プロテーゼでは、置換心臓弁プロテーゼは、第2のステントに結合された第1のステントから構成されており、両ステントは適切な手段によって互いに取り付けられており、装置の十分な封止特性を提供するためにより大きな課題に直面する。
【0011】
大動脈置換心臓弁プロテーゼにおいて、弁輪および周囲の組織は比較的固い。プロテーゼの半径方向の力および単純な封止特徴はしばしば十分な封止を提供する。
【0012】
対照的に、その他の心臓弁、例えば、僧帽弁および三尖弁の解剖学的要件は、心臓弁置換手順をより複雑かつ困難にする。
【0013】
これらの心臓弁における生来の弁輪のサイズは比較的大きい。さらに、加えて、生来の埋込み部位が拡大される場合があり、これは特に三尖弁逆流および肺病変の治療に問題を引き起こす。また、必要な置換心臓弁プロテーゼの大きな弁輪直径および弁直径は、より長いプロフィルを誘発し、これは、心室腔または肺流出路内に達することがある。
【0014】
加えて、大きな置換心臓弁は、ある程度の抵抗を示す大きな弁尖から構成されているが、これらは適切に開閉させられなければならず、これは内在の血流の影響を受ける。PVLの問題は、適切な弁の開閉を妨げ、ひいては正しい置換心臓弁機能を妨げる。したがって、開閉局面は、より多くのエネルギーを必要とする。したがって、置換心臓弁プロテーゼの血行力学的特性および現場での位置決めが最適であることが最も重要である。
【0015】
あいにく、上記の心臓弁の生来の心臓弁輪、特に僧帽弁および三尖弁の房室心臓弁輪は、しばしば非円形の形状を有する。
【0016】
埋込み部位はまた、接触面全体を提供するのではなく、ほとんどの場合、接触線のみを提供する。接触線は、円形でも平面でもない。三尖弁輪は、例えば、サドル形をしている。その結果、埋込み部位は、管状の置換心臓弁支持部との適合の欠如により、埋込み部位が十分な表面接触を提供しないことがある。
【0017】
この表面および接触の欠如は、円筒形の弁支持部との直接接触のみを使用することにより、装置のアンカリングおよび封止を困難にする。
【0018】
最後に、上記の心臓弁、例えば三尖弁および僧帽弁の周囲組織の広範な軟組織により、半径方向の力の適用および単純な封止のみによっては封止を達成することができない。
【0019】
石灰化した大動脈弁/大動脈基部とは対照的に、肺動脈弁/三尖弁/僧帽弁は異なる病状を示す。その結果、例えば僧帽弁および三尖弁の埋込み部位はカルシウムによって硬化されず、ステントアンカリングのための堅固かつ持続可能な支持を提供しないことがある。したがって、半径方向の力は、標的部位の軟組織内に置換装置を固定およびシールするのに十分ではない。
【0020】
さらに、置換心臓弁の標的部位の周囲の軟組織は、血圧の変動および筋肉の収縮などの、周囲のストレスおよび動きに敏感である。その結果、埋込み部位は、特に心周期の間、大規模な変動を有することがある。
【0021】
加えて、複数部分から成る置換心臓弁システムが使用される場合、アンカリングシステム(最も外側のセクション)は、埋込み部位の軟組織、そのダイナミクスおよびその不規則な解剖学的構造に従わなければならない。
【0022】
したがって、ステント構成は心周期中に変化し、これは、適切な封止およびPVLの回避の問題を提供する。
【0023】
したがって、本開示の1つの目的は、置換心臓弁プロテーゼのより良好な封止を可能にする手段を提供するか、または少なくとも従来技術の欠点を低減するか、またはこれらの欠点を基本的に回避することである。
【0024】
本開示の別の目的は、埋込みの後およびその後に有利な封止特性を補助しかつ十分に密閉した封止を維持する封止手段を提供する、または従来技術の欠点を少なくとも低減する、またはこれらの欠点を基本的に回避する心臓弁置換プロテーゼを提供することである。
【0025】
本開示の別の目的は、心拍および心臓機能の間に有利な置換心臓弁の開閉を補助するのに役立つ封止特性を示す心臓弁置換プロテーゼを提供することである。
【0026】
開示の概要
一態様では、本開示は、置換心臓弁プロテーゼの改良された封止特性のための封止特徴に関する。
【0027】
別の態様では、本開示は、有利な封止特性または/および血流特性または/および弁機能を示す置換心臓弁プロテーゼに関する。
【0028】
別の態様では、本開示は、少なくとも2つの封止特徴を含む置換心臓弁プロテーゼに関する。
【0029】
別の態様では、本開示は、二重壁、例えば二部構成またはそれ以上の複数部分構成ステントプロテーゼ、または/および不連続なステント構成を示す置換ステントプロテーゼにおいて有用な、有利な封止特性または封止ソリューションに関する。
【0030】
別の態様では、本開示は、心拍および心臓機能の間に有利な置換心臓弁の開閉を補助するのに役立つ封止特性を示す心臓弁置換プロテーゼに関する。
【0031】
別の態様では、本開示は、有利な置換心臓弁機能および/または耐久性と組み合わされた、デリバリシステム、例えばカテーテルに装填するための有利な特性を有する置換心臓弁プロテーゼに関する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】房室心臓弁輪の不規則性の図である。
図2】本開示による一実施形態を示す図である。
図3図2の平面図である。
図4図2の側面図である。
図5】本開示による一実施形態を示す図である。
図6】本開示による一実施形態を示す図である。
図7】本開示による一実施形態を示す図である。
図8】本開示による一実施形態を示す図である。
図9】本開示による一実施形態を示す図である。
図10】置換心臓弁プロテーゼにおけるPVLの問題を示す図である。
図11】拡張期中の血流(DBF)を示す図である。
図12】収縮期中の血流(SBF)を示す図である。
図13】本開示による一実施形態を示す図である。
図14】本開示による一実施形態を示す図である。
図15】置換心臓弁(5)および内側ステント(2)を通る、拡張期中の血流(DBF)を示す図である。
図16】本開示による一実施形態を示す図である。
図17】クリンピング中のステント動作を示す図である。
図18】封止カバー取付け点IおよびEにおけるクリンピング中の流入封止カバー(3)の動作を示す図である。
図19】ポイントEおよびJによって表された封止カバー取付けにおけるクリンピング中の流出封止カバー(4)の動作を示す図である。
図20】I、J、EおよびKによって表された封止カバー取付け点におけるクリンピング中の流入封止カバー(3)および流出封止カバー(4)の動作を示す図である。
図21】I、JおよびEによって表された取付け点を用いたクリンピング中の流入封止カバー(3)および流出封止カバー(4)の動作を示す図である。
図22】埋込み後の本開示による埋め込まれた置換心臓弁プロテーゼと、非対称の生体内状態とを示す図である。
図23】本開示による一実施形態を示す図である。
図24】本開示による一実施形態を示す図である。
図25-B1a】従来技術の置換心臓弁プロテーゼの一例を示す図である。
図25-B1b】従来技術の置換心臓弁プロテーゼの一例を示す図である。
図25-B2a】本開示の一態様を示す図である。
図25-B2b】本開示の一態様を示す図である。
図25-B3a】本開示の一態様を示す図である。
図25-B3b】本開示の一態様を示す図である。
図25-B4】本開示の一態様を示す図である。
図25-B5a】本開示の一態様を示す図である。
図25-B5b】本開示の一態様を示す図である。
図25-B6a】本開示の一態様を示す図である。
図25-B6b】本開示の一態様を示す図である。
図25-B7】本開示の一態様を示す図である。
図25-B8】本開示の一態様を示す図である。
図25-B9】本開示の一態様を示す図である。
図25-B10】本開示の一態様を示す図である。
図25-B11】本開示の一態様を示す図である。
図25-B12】本開示の一態様を示す図である。
図25-B13】本開示による結合手段(19)の一実施形態の拡大図である。
図25-B14a)】本開示の一態様を示す図である。
図25-B14b)】本開示の一態様を示す図である。
図25-B14c)】本開示の一態様を示す図である。
図25-B15a)】クリッピング手段(19)の変化態様を示す図である。
図25-B15b)】クリッピング手段(19)の変化態様を示す図である。
図25-B16】本開示の一態様を示す図である。
図25-B17】本開示の一態様を示す図である。
図25-B18】本開示の一態様を示す図である。
図25-B19】本開示の一態様を示す図である。
図25-B20】本開示の一態様を示す図である。
図25-B21】本開示の一態様を示す図である。
図25-B22】本開示の一態様を示す図である。
図25-B23】本開示の一態様を示す図である。
図25-B24】本開示の一態様を示す図である。
図25-B25a)】本開示の一態様を示す図である。
図25-B25b)】本開示の一態様を示す図である。
図25-B26】結合手段(19)の別の変化態様である本開示の一態様を示す図である。
図25-B27】本開示の一態様を示す図である。
図25-B28】本開示の一態様を示す図である。
図25-B29a)】本開示の一態様を示す図である。
図25-B29b)】本開示の一態様を示す図である。
図25-B29c)】本開示の一態様を示す図である。
図25-B29d)】本開示の一態様を示す図である。
図25-B29e)】本開示の一態様を示す図である。
図25-B29f)】異なるステント部分の結合領域および結合手段の拡大詳細図である。
図25-B30】内在の三尖弁の心臓標的部位への埋込み中の本開示による置換心臓弁プロテーゼを示す図である。
【0033】
図1は、房室心臓弁輪の不規則性の図である。図1aは、房室弁輪の非円形形状を指摘する心臓の平面図を示している。僧帽弁輪の斜視図は、図1bにおいて房室弁輪の非平面性を示している。
【0034】
図2は、本開示による一実施形態、すなわち、2つの封止特徴を含む外側の編組ニチノールステント(1)に取り付けられた、置換心臓弁を支持する内側ステント(例えば、レーザ切断されたニチノール)(2)から構成された、二部構成ステントを示す。ここで、一方の封止特徴は、流出封止カバー(4)と組み合わされた流入封止カバー(3)であり、流入フランジ(11)が示されている。
【0035】
図3は、図2の平面図であり、流入フランジ(11)、内側ステント(2)および流入封止カバー(3)を示している。
【0036】
図4は、図2の側面図であり、流入フランジ(11)、内側ステント(2)、流入封止カバー(3)および流出封止カバー(4)ならびに外側ステント(例えば、編組されたニチノール)(1)を示している。
【0037】
図5は、本開示による一実施形態、すなわち、カテーテルシート(9)に装填された置換心臓弁プロテーゼを示しており、内側ステント(2)および外側ステント(1)がクリンプ直径(10)にクリンプされている。
【0038】
図6は、本開示による一実施形態、すなわち、複数部分構成の置換心臓弁プロテーゼを示しており、外側ステント(1)および内側ステント(2)が示されている。内側ステント(2)は置換心臓弁(図示せず)を支持している。左側では、壁部の動きによる心周期へのステントのコンプライアンス(追従)が「Co」として示されている。内向きの力は、外側ステント(1)の内向きの動きおよび圧縮をもたらす矢印(Co)によって示されている。本発明の開示による複数の封止特徴(ここには示されていない)は、収縮期および拡張期の心臓サイクルにおいて有利な封止を維持するように設計されている。
【0039】
図7は、本開示による一実施形態、すなわち、複数部分構成の置換心臓弁プロテーゼを示しており、外側ステント(1)と、流入フランジ(11)を備えた内側ステント(2)とが示されている。外側ステント(1)に配置されかつ外側ステント(1)と組み合わされたスタビライザ(7)およびループ(8)も示されている。流入封止カバー(心房)(3)および流出封止カバー(心室)(4)が外側ステント(1)に取り付けられて示されている。
【0040】
図8は、本開示による一実施形態、すなわち、遠位側で内側ステント(2)と結合されていない外側ステント(1)の別の構成を示している。流入封止カバー(3)および流出封止カバー(4)が示されている。
【0041】
次の図9図15において、当業者は、これらの図が一般的な封止概念を示しており、封止カバー、プロテーゼ、内在の腱索、弁尖および心臓壁と組み合わされた生来の弁尖の封止特徴を強調することを意図していると理解するであろう。これらの部分は、互いに接近して表されているが、実際のように完全には取り付けられていない。
【0042】
図9は、本開示による一実施形態、すなわち、複数部分構成の置換心臓弁プロテーゼを示しており、外側ステント(1)と、置換弁(5)および流入フランジ(11)を支持した内側ステント(2)とが示されている。プロテーゼは標的部位に埋め込まれ、外側ステント(1)は心臓壁(例えば、三尖弁または僧帽弁の壁部)と接触している。外側ステント(1)は、生来の弁尖(NL)および腱索(Ch)を心臓壁(CW)の方向に押し付ける。心周期の間、心臓壁(CW)は図示されているように内側の方向に押し込まれる(Co)。外側ステント(1)の変形は、封止に関する問題を示唆し、これらの問題は、ここに示されていない複数の封止特徴(3,4)によって対処および解決される。有利には、本開示による複数の封止特徴は、以下でさらに詳述されるように、それらの特定の設計およびプロテーゼのステント構成要素を用いた固定により、開示されるプロテーゼの有利な封止特性を提供する。
【0043】
図10は、置換心臓弁プロテーゼにおけるPVLの問題を示している。ステント(1)は、表面(S-S1,S2)において心臓壁(CW)と接触しておりかつ/または生来の弁尖(NL)および腱索(Ch)と接触している。置換弁(5)が閉鎖されている場合、外側ステント(1)を介してPVLが生じ、置換弁(5)が開放している場合にも生じる(図示せず)。したがって、PVLは双方向矢印で示されている。また、図の左側と右側とにおいて異なる幅および長さで示された外側ステント(1)の変形および延伸も示されている。
【0044】
図11は、拡張期中の血流(DBF)を示している。拡張期の血行動態および血流により、置換弁(5)が開放し、心房カバー(3)が、流入フランジ(11)と、外側ステント(1)の流入領域とに押し付けられる(SPD)。接触面(S1)は、流入領域における外側ステント(1)が心臓壁(CW)に向かって押し付けられ、流入カバー(3)によってPVLが回避されることを示している。プロテーゼと心臓壁との間の主な接触は、表面および領域S1におけるものである。これは、内側ステント(2)に取り付けられた置換心臓弁(5)の適切な開放および有利な置換心臓弁プロテーゼ機能につながる。
【0045】
図12は、収縮期中の血流(SBF)を示しており、置換心臓弁プロテーゼにおけるPVLの発生を示している。置換心臓弁(5)は閉鎖されている。流入封止カバー(3)は、収縮期血流(SBF)に対する封止をある程度提供する。一定量の血液が、プロテーゼと心臓壁(CW)との間で置換心臓弁プロテーゼを通過する。
【0046】
図13は、本開示による一実施形態を示しており、すなわち、収縮期血流(SBF)圧力に対する収縮期中の流出封止カバー(4)の封止能力を示している。SPS(収縮期の封止圧力)も示されている。本発明の封止カバー(4)の構成は、収縮期中のPVLを基本的に防止する。流入封止カバー(3)(ここには示されていない)と組み合わせて、本開示は、収縮期および拡張期の間の有利な封止特徴の組合せを提供し、PVL自体を防止するのみならず、さらに、開閉および正確な接合の観点から、置換心臓弁(5)の適切かつ正確な機能を確保する。特別な封止取付け点と複数の封止特徴(3,4)の設計との組合せは、封止特徴自体に加えて、有利なクリンピングおよびカテーテル装填機能を提供する。
【0047】
図14は、本開示による一実施形態を示しており、すなわち、流出封止特徴、すなわち流出封止カバー(4)が、どのように動作し、収縮期封止と、置換心臓弁(5)機能の適切な補助を提供するかが示されている。置換心臓弁プロテーゼ(1,2,5,11,3,4を含む)と、心臓壁(CW)とは、表面(S2)において接触し、収縮期血流(SBF)は、CWおよび/または生来の弁尖に向かう収縮期中の封止圧力(SPS)をもたらす。流出封止カバー(4)(封止特徴)は、収縮期PVLを防止するために有利な形式において外側ステント(1)における取付け点を備えて構成されている。加えて、流出封止カバー(4)による封止は、置換弁(5)の弁尖の良好な接合、ひいては、有利な置換心臓弁プロテーゼ機能を補助する。
【0048】
図15は、置換心臓弁(5)および内側ステント(2)を通る、拡張期中の血流(DBF)を示している。また、ぴったりとシールされた表面を生じるように流出封止カバー(4)が収縮期の流れによってCWおよび/またはNLに対して押し付けられていないので、心臓壁(CW)および/または生来の弁尖と、外側ステント(1)との間の、流出封止カバー(4)を通過する、置換心臓弁プロテーゼのエッジにおける潜在的なPVLも示されている。図11に示された流入封止カバー(3)は、このようなPVLを防止することができる。複数の封止特徴、例えば流出および流入封止カバー(3,4)の調和させられた設計が、図16に示されている。
【0049】
図16は、本開示による一実施形態、すなわち、流入封止カバー(3)および流出封止カバー(4)の設計および封止カバー(封止特徴)取付け点(I,J,K,E)および弁輪(An)に対するそれらの配置を示している。置換心臓弁(5)は、接合および閉鎖されて示されている。封止カバーの取付け点IおよびJは、それぞれ弁輪の上側および下側に配置されている。さらに、置換弁(5)の弁尖は、流出封止カバー(4)と一直線に形成されており、これにより、収縮期の間、血流を方向付け、外側ステント(1)と、心臓壁(CW)および/または生来の弁尖および弁輪(An)との間の良好な接触を補助し、これは、流出封止カバー(4)の封止特徴をも補助する。拡張期には、流入封止カバー(3)が収縮期血流(SBF)によって心臓壁(CW)および弁輪(An)に対して押し付けられ、収縮期の間、PVLに対してシールし、基本的に血流全体を、内側ステント(2)を通過するように方向付け、ひいては、置換心臓弁(5)の適切な開放を補助する。したがって、本開示は、複数の封止特徴間の調和した機能を示すのみならず、これにより基本的に収縮期および拡張期の間のPVLを防止することができる置換心臓弁プロテーゼを提供する。さらに、この調和させられた機能は、心拍の間の有利な置換心臓弁の開閉を補助する。したがって、好ましくない内側ステントおよび置換心臓弁の寸法(準最適な機能の傾向がある)を示す置換プロテーゼにおいてさえ、例えば、僧帽弁または三尖弁と置換するために埋め込まれたときに置換心臓弁の良好な開閉を達成することができる。さらに、封止カバー取付け点の特別な設計および配置、ならびにそれらの互いに対する配置は、クリンピングの容易さに関して有利な特性を提供し、クリンピングおよび標的部位におけるプロテーゼの展開の間の封止カバー組織の損傷を回避する。
【0050】
図17は、クリンピング中のステント動作を示しており、これは、組織、特に、置換心臓弁プロテーゼのステントに取り付けられた封止組織に関する問題を提供する。
【0051】
図18図21は、置換心臓弁プロテーゼのクリンピングの間の封止特徴動作およびそれらの封止カバー取付け点を示している。
【0052】
図18は、封止カバー取付け点IおよびEにおけるクリンピング中の流入封止カバー(3)の動作を示している。封止カバーのサイズは、完全に展開されたプロテーゼの寸法によって規定される。取付け点Iの位置は、荷重を緩和するための封止カバー組織折り目なしにプロテーゼがクリンピングされたときに、2つのステント層の相対的な長手方向の位置を規定する。
【0053】
図19は、取付け点EおよびJによって表された封止カバー取付けにおけるクリンピング中の流出封止カバー(4)の動作を示している。封止カバーのサイズは、完全に展開されたプロテーゼの寸法によって規定される。取付け点Jの位置は、装填を容易にするためにカバー組織の折り目をシールせずにプロテーゼがクリンプされるとき、2つのステント層の相対的な長手方向の位置を規定する。
【0054】
図20は、この場合、I、J、EおよびKによって表された封止カバー取付け点におけるクリンピング中の流入封止カバー(3)および流出封止カバー(4)の動作を示している。封止カバーのサイズは、完全に展開されたプロテーゼの寸法によって規定される。ステントまたは組織の損傷をもたらすことがある組織の伸長を防止するために、クリンプされたステント長さIJが組織長さIKJ以下になるように取付け点Kの位置が決定されなければならない。好ましくは、組織折り目を防止しかつこれによりプロテーゼ装填を容易にするために、取付け点Kの位置は、クリンプされたステント長さIJが組織長さIKJと等しくなるように決定されなければならない。
【0055】
図21は、I、JおよびEによって表された取付け点を用いたクリンピング中の流入封止カバー(3)および流出封止カバー(4)の動作を示している。これは、組織集積を誘発する、封止カバー寸法および/または取付け点の封止カバー不適合を有する、クリンプされた構成におけるプロテーゼの図である。低侵襲装置内でのプロテーゼの装填実現可能性を確保するために、装置のクリンプされたサイズは最小でなければならない。組織が過剰になると、クリンピング構成において折り目が生じ、この折り目は、装置のクリンプされたサイズを増大させる。本開示によるプロテーゼは、対照的にかつ有利にこの目標を達成する。
【0056】
図22は、埋込み後の本開示による埋め込まれた置換心臓弁プロテーゼと、非対称の生体内状態とを示している。流入フランジ(11)を備えた外側ステント(1)に結合された、置換弁(5)を支持する内側ステント(2)を含むプロテーゼが、前方(an)および後方(po)を示すように描かれている。また、房室結節(AVN)、冠状静脈洞(CS)および中隔(S)が描かれている。
【0057】
図23は、本開示による一実施形態を示しており、標的部位におけるプロテーゼの改良された固定のための付加的なステント特性を示している。外側メッシュステント(1)は、それに取り付けられたZ字リング(13)を含み、流入フランジ(11)が示されている。置換心臓弁(5)および封止特徴(3,4)が示されており、標的部位における弁輪(An,12)に整列したプロテーゼ部分も示されている。
【0058】
図24は、本開示による一実施形態、すなわち、複数部分構成ステントを示しており、両ステント部分は、ニチノール切断ステントから形成されており、内側および外側ステントは結合手段(14)によって結合されている。また、標的部位におけるプロテーゼの改良された固定ための付加的なステント特性、すなわちZ字リング(13)も示されている。また、標的部位における弁輪(An,12)に整列したプロテーゼ部分も示されている。置換心臓弁(5)および封止特徴(3,4)も示されている。
【0059】
上記明細書および上記図面および請求の範囲に記載された本開示の有利な封止特徴と組み合わせることができる以下の付加的なステント構成図(「参照符号リストB」に従って「B」によっても示された参照符号を含む図Bとして示されている)を説明する。
【0060】
図B1aおよび図B1bは、弁を支持することが意図されたレーザ切断された管状の内側ステント(2)と、標的部位におけるプロテーゼの配置および固定のために内側ステント(2)と組み合わされた、外側メッシュステントとも呼ばれる編組された外側ステント(1)とから成る(二部構成ステント)、従来技術の置換心臓弁プロテーゼの一例を示している。
【0061】
図B2aおよび図B2bは、本開示の一態様、すなわち、標的部位における弁輪における固定を補助することが意図された溝の遠位に(下方として見ることもできる)配置されたスタビライザ手段(3)を含む、図1の二部構成ステントを示している。
【0062】
図B3aおよび図3bは、本開示の一態様、すなわち、加えて、埋込み後のより良好な固定のためのループ(4)を含む、図2の二部構成ステントを示している。図示の実施形態(3a,3b)では、ループ(4)は、外側ステント(1)の溝の下方に配置されており、したがって、埋込み後、遠位方向または流出方向において弁輪の下方に配置される。したがって、外側ステント(1)は、埋込み部位における置換心臓弁プロテーゼの固定に寄与する。ループ(4)は、弁輪下側または/および心室組織に接触し、したがって、プロテーゼと埋込み部位との間の摩擦を増大させ、埋込み部位におけるプロテーゼのより良好な固定を提供する。ループ(4)が腱索に干渉し、これによりプロテーゼを所定の位置において安定させる場合、プロテーゼのループによって、さらに改良された固定および摩擦を示すことができる。ループ(4)は、外側ステント(1)に対して変化する角度を成すことができ、したがって、心臓組織に向かって半径方向の力も示す。図3bは、プロテーゼの断面図を示しており、したがって、内側ステント(2)が見えている。
【0063】
図B4は、本開示の一態様、すなわち、様々なタイプおよび形状のループを示している。
【0064】
図B5aおよび図B5bは、本開示の一態様を示しており、すなわち、ループ(4)は、編組された外側ステント(メッシュステント1)の遠位領域に配置されている。外側ステントは、中央領域において、レーザ切断された内側ステント(2)に結合されている。外側ステントは、遠位領域において内側ステント(2)に結合されていない。外側メッシュステント(1)の外側メッシュ(5)および内側メッシュ(6)は、中央または/および遠位領域において二重層を形成しており、この二重層は、特定の場合の要件に関して設計することができる安定性または/および軸方向の力を提供する。特定の実施形態では、スタビライザ特徴(V字溝の下方の付加的なワイヤまたは/およびねじられたワイヤなど)は存在していないが、本開示による他の実施形態では、ステント安定性およびステントの軸方向の力を設計するために追加することができる。
【0065】
図B6aおよび図B6bは、本開示の一態様、すなわち、遠位において外側ステント(1)が内側ステント(2)に結合されていないダブルステントプロテーゼを示している。内側メッシュ(6)および外側メッシュ(5)は折り畳まれ、遠位領域において互いに近くに向けられている。さらに、内側メッシュ(6)および外側メッシュ(5)は、互いに角度を成しており(説明の目的で外側ステント内へ引かれた2本の補助線によって形成された「角度構造」)、角度は「アルファα」としてマークされている。「アルファα」は、内側ステント(2)と外側ステント(1)との両方が結合されている内側ステント(2)の結合部への方向における中心軸側での、図における補助線によって示され2つの矢印の先端間の領域である。したがって、内側メッシュ(6)および外側メッシュ(5)は、安定性および寸法の要件に応じて選択することができる角度を形成する。「角度α」と組み合わされた内側メッシュ(6)および外側メッシュ(5)の接近する方向付けは、図6bに示したように多くの利点を提供する。例えば、これは、内側ステント(2)と外側ステント(1)との結合の不存在を提供し、したがって、プロテーゼが埋め込まれたときに、遠位方向でばねまたは吸収効果および柔軟性を生じることができる。さらに、この構造は、プロテーゼをカテーテルにクリンプするときの有利な柔軟性につながる。角度「α」は、例えば5°~15°の範囲とすることができ、これは、プロテーゼの固定特徴に関連する外側ステント(1)の安定性および半径方向の力に寄与するまたは/かつこれを規定する。
【0066】
図B7は、本開示の一態様、すなわち、プロテーゼは、3つの領域、すなわち、近位領域(または流入領域)、中間領域(または溝領域、例えばV字溝またはU字溝であって、溝下側領域と称することもできる)および遠位領域(または流出領域)に画定されている。溝領域および遠位領域はまた、弁輪下側領域と称することができる。これらの領域は、それらの寸法において適合させられてもよい。したがって、プロテーゼの安定性/柔軟性の特徴が設計されてもよく、プロテーゼは、標的部位の特定の形状ならびに患者の形状および詳細に適合させられてもよい。
【0067】
図B8は、本開示の一態様、すなわち、患者の血管系を通じて送達するためにカテーテル(7)の装填部分にクリンプされた本開示のプロテーゼを示している。この図は、ループ(4)が、外側ステント(1)の外側メッシュ(5)および内側メッシュ(6)と重ならないように配置され、したがって、クリンプされたプロテーゼの低プロフィルを提供することを示している。本開示の一態様では、ループ(4)は、カテーテル内の最適化された位置決めおよび低プロフィルのために、クリンピング/装填または再装填手順中に反転するように設計されてもよい。したがって、ループは、例えば、基本的に180°または最大180°まで反転する。
【0068】
図B9は、本開示の一態様を示しており、レーザ切断された内側ステント(2)が、レーザ切断された外側ステント(11)内に示されている。V字溝(16)は、患者に埋め込まれたときに内在の弁輪領域の領域に配置されることが意図されている。レーザ切断された外側ステント(11)の遠位領域には、標的部位における改良された固定のためにアンカリングセル(15)が含まれている。レーザ切断された内側ステント(2)およびレーザ切断された外側ステント(11)は、結合ストラット(12)を介して結合されており、したがって、内側/外側ステント(13)を直接(または結合手段を介して)結合している。結合ストラット(12)は、溶接、接着、公知の結合手段、またはクリッピング手段または機構のような特別に設計された結合手段などの、当技術分野において公知のあらゆる有用な方法によって結合することができる。結合ストラット(12)は、近位および環状領域に配置されている。
【0069】
図B10は、本開示の一態様を示しており、2つのレーザ切断されたステントの安定した組立てのための、結合ストラット(12)および結合手段(19)が示されている。結合ストラット(12)は、レーザ切断された内側ステント(2)とレーザ切断された外側ステント(11)との間に配置されており、これにより、レーザ切断された外側ステント(11)に二重層を形成してもよい。二重壁は、埋込み時に、弁輪または弁輪下側領域にあるかまたは基本的に心室領域にある。したがって、結合手段(19)は、(埋込み後)埋込み部位の環状領域に配置されており、ここで、置換心臓弁プロテーゼのこの領域は、心拍中に、低減された衝撃を受ける。これは、結合手段(19)が、心拍による応力および衝撃を受けにくいことを達成するという利点を提供する。
【0070】
図B11は、本開示の一態様を示しており、結合手段(19)の位置の変化態様が示されている。結合手段(19)は、プロテーゼの近位領域に配置されてもよい。加えて、結合ストラットガイド(17)が示されている。置換心臓弁プロテーゼを構成するレーザ切断されたステントは、結合手段の数に関して変化させることができる。プロテーゼは、2つのレーザ切断されたステントまたは3つのレーザ切断されたステント部分から構成することができ、レーザ切断された内側ステント(2)(3つの弁尖を備えた当技術分野で通常使用される弁を支持している)は、結合ストラットガイド(17)と組み合わされた結合手段(19)を介して、レーザ切断された近位の外側ステント部分(11a)(最終的に心房内に配置される)に結合されている。レーザ切断された付加的な外側ステント遠位部分(11b)(最終的に心室内に配置される)は、ストラットガイド(17)を結合することによって、他のステント部分と結合される。レーザ切断された内側ステント(2)を起点とする結合ストラット(12)は、結合ストラットガイド(17)を通して(例えば、1つずつ)配置または移動させられる。結合ストラットガイド(17)は、レーザ切断された外側ステント遠位部分(11b)を起点とし、結合ストラットを、結合ストラットガイド(17)を通じて動かすことによって、全ての3つのステント部分(11a,11bおよび2)が、個人に埋め込まれたとき、少なくとも基本的に弁輪領域において結合される。このような三部構成のレーザ切断された置換心臓弁プロテーゼの利点は、改良された柔軟性および前記プロテーゼの改良された固定である。本開示による様々な設計上の特徴は、共同で、標的部位におけるプロテーゼおよびその構成要素の有利な改良された固定および低減された長手方向の動きを達成する。開示されたプロテーゼの有利な柔軟性および固定は、埋込み後、外側ステント(11)の近位プロテーゼ部分が心拍中に基本的に動かないことを特徴とする。外側ステント(11)の遠位プロテーゼ部分(11b)は、心臓の心室組織に対する有利な追従機能を補助する、近位外側ステント部分(11a)に対する有利な運動自由度を有する。したがって、外側ステント(11)の遠位部分(11b)は、心拍および心臓機能中に心室と協調して動くことができる。この増大した柔軟性を溝またはV字溝(16)の柔軟性として表すこともできる。これにより、心室外側ステント部分(11b)におけるプロテーゼのさらなる変形が可能となり、これは、埋込み部位(標的部位)におけるプロテーゼの改良された正確な長期固定に寄与する。
【0071】
図B12は、本開示の一態様を示しており、ステントプロテーゼにおけるステントの異なる長手方向領域、すなわち、近位領域(20)、中間領域(23)および遠位領域(22)が示されている。遠位領域には、ループまたはアンカリングセルが含まれている。
【0072】
図B13は、本開示による結合手段(19)の一実施形態の拡大図である。この図は、クリッピング手段が示されている本開示の一態様を表している。結合ストラット(12)は、前記クリッピング手段によって結合されている。この図は、レーザ切断された内側ステント(2)とレーザ切断された外側ステント(11)との結合ストラット(12)の解放可能な結合のための手段または装置を表している。解放可能な結合は、インターロッキング爪(9)、インターロッキングヨーク(18)およびスリーブ(10)の相互作用によって達成される。
【0073】
図B14a)、図B14b)、図B14c)は、本開示の一態様を示しており、クリッピング手段(19)を閉鎖するシーケンスが示されている。
【0074】
図B14a)において、インターロッキングヨーク(18)は、レーザ切断された内側または外側ステントの結合ストラット(12、12’)のいずれかに結合されて示されている。インターロッキングヨーク(18)は、他方のステント(カウンター結合ストラットを表す外側または内側ステントのいずれか)の結合ストラット(12、12’)のインターロッキング爪(9)を受け入れる準備ができた開放状態において描かれている。カウンター結合ストラットは、スリーブ(10)を通じて導入されるインターロッキング爪(9)を支持している。
【0075】
図B14b)において、他方のステント(およびカウンター結合ストラット)の結合ストラット(12,12’)のインターロッキング爪(9)が、インターロッキングヨーク(18)に導入されており、2つのレーザ切断されたステントの安定した結合を提供している。2つの部品(9)および(18)による安定した結合は、インターロッキング部品の特定の形状によって達成される。この形状は異なってもよく、ここに示されている形状に限定されない。
【0076】
図B14c)は、2つのレーザ切断されたステントの結合ストラット(12,12’)の最終的な結合を示している。スリーブ(10)が、インターロックされた部品(18)および(9)上に押し被せられており、スリーブ(10)は、インターロッキングヨーク(18)の遠位部分との相互作用によって固定状態を安定させる。スリーブ(10)は、インターロッキングヨーク(18)の2つの遠位部分が押し合わせられると解放させることができ、したがって、スリーブ(10)は、一方の結合ストラット(12’)上に再び押し被せられてもよい。部品(18)の端部において、ストップ手段は、スリーブ(10)がインターロッキング手段(18)および(9)上を行き過ぎるのを防止する。インターロッキングヨークの端部は、結合ストラットに沿って少なくとも一方向または両方向で、スリーブの移動を防止する。
【0077】
図B15a)および図B15b)は、クリッピング手段(19)の変化態様を示している。インターロッキングヨーク(18)は、その遠位端部においてその形状が変化している。インターロッキングヨーク(18)は、異なるストッパ形状と、スリーブ(10)との相互作用とを特徴としかつその解放機構に関して特徴がある。図15a)における1つの設計では、スリーブ(10)を解放するために、(18)の遠位部分が押し合わされるのに対し、図15b)においては、遠位先端部は、解放のために内方へ押される必要があるばねを含んでいる。また、インターロッキング爪(9)は、図15a)および図15b)のそれぞれにおいて特定の形状を有する。
【0078】
図B16は、本開示の一態様を示しており、これは、プロテーゼのレーザ切断されたステントにおいて使用されるストラットの特別な形状に関する。S字ストラット(8)は、波形またはS字形の形状を特徴とする。レーザ切断されたステントの特定の領域において、このようなS字ストラット(8)は、所定の柔軟性を達成するためにまたは一方のステントから他方のステントへの動き、例えば、外側ステントによって受け取られる心拍によって生じる動きを隔離するために、導入されている。しかしながら、心拍によるこれらのショック(動き)は、内側のステントに伝達されることは望ましくない。1つの目標は、これらのショックを、弁を支持する内側ステントから、または/かつ適切な弁の接合または/および機能を潜在的に損なう内側ステントの変形から、隔離することである。このように外側ステントにおいて見られる変形は、弁を支持する内側ステントに伝達されない。その目的は、内側ステントが基本的にその丸い形状のままであることであり、これは、弁機能のために、特に弁尖の良好な接合のために有利である。
【0079】
図B17および図B18は、本開示の一態様、すなわち、生体内の心拍中のレーザ切断された外側ステントの変形、および弁を支持するレーザ切断された内側ステントの元の丸い形状の保存および維持を示している。本発明の結合手段によって所定の位置において結合された2つのレーザ切断されたステント、好ましくはニチノールステントの本発明の設計は、有利には、標的部位におけるプロテーゼの正確な配置、良好な固定特性、およびレーザ切断された内側ステントに固定された弁の基本的に漏れのない機能を達成する。2つのステントの所定の結合を備えた2つのレーザ切断されたステントを使用する本発明の設計は、有利な耐圧潰性を提供し、置換心臓弁プロテーゼの正しい弁機能を可能にする。
【0080】
図B17は、本開示によるステントプロテーゼにおける本発明のレーザ切断されたステントの写真(図18)の概略図である。濃い線は、近位領域(20)を示しており、薄い線は、図12の中央および遠位領域(22/23)を示している。図B17において、プロテーゼに対して応力インパクトが作用しても、内側ステント(2)は影響を受けず、弁は適切に機能することができ、その機能は維持されており、これは極めて有利である。図B17は、本開示によるステントプロテーゼにおけるレーザ切断されたステントの動作をシミュレーションしている。中央および遠位領域におけるステントプロテーゼ内のレーザ切断されたステントが強い変形応力を受けたとしても、このような応力インパクトは、好ましくはより少ない程度で近位領域に伝達されるにすぎない。また、この応力インパクトは、弁を支持する内側ステントに達しないまたは影響しない。これは、部分的または基本的に、この領域における結合手段の配置によるものである。心拍が、レーザ切断された外側ステント(11)に作用する場合、1つの目標は、置換心臓弁プロテーゼの弁支持部分(内側ステント(2))の最適な形状を維持すると同時に、プロテーゼの有利な固定を提供することである。本発明者らは、弁を支持する内側ステント(2)を基本的に元の形状に維持することを基本的に達成することができる特別な結合手段および設計を特徴とする2つのレーザ切断されたステントを使用する構造を見出した。同時に、埋込み後の標的部位における置換心臓弁プロテーゼの有利な固定を提供する。
【0081】
図B17および図B18の両方に示されているように、レーザ切断された外側ステント(11)は柔軟であり、心臓での埋込み部位における周囲の組織との接触を維持する。したがって、レーザ切断された外側ステント(11)は、内在の周囲組織に対する良好な追従を示す。さらに、このようにして、プロテーゼの外側ステントは、組織との可能な限り大きな摩擦を維持し、プロテーゼの他の態様とともに有利な固定に寄与する。同時に、弁を支持したレーザ切断された内側ステント(2)は、基本的にその丸い形状を維持し、したがって、最適な弁機能のための最適な形状を維持する。特に、変形および心臓組織との接触の維持は、レーザ切断された外側ステントの中央および遠位領域(22/23)において見ることができる。近位領域(20)は、変形を生じにくいまたは全く変形を生じない。結合ストラット(12)および結合手段(19)は、レーザ切断された内側および外側ステントの安定した結合を提供する。同時に、これらの構造は、有利には、プロテーゼのレーザ切断された外側ステントからの、レーザ切断された内側ステントの衝撃隔離(若しくは衝撃緩衝)に寄与する。さらに、これらの要素(12)(19)の配置は、有利な耐圧潰性およびレーザ切断された内側ステントの変形の低減を提供する。さらに、結合手段(19)と組み合わされたS字ストラット(8)と、置換心臓弁プロテーゼ内でのそれらの特定の配向および配置とは、ポジティブな耐圧潰性、基本的に丸い形状でのレーザ切断された内側ステントの維持および基本的に最適な弁機能形状を補助する。
【0082】
図B19は、本開示の一態様を示しており、解放後の外側ステントの折れ曲がり(28)が示されている。このような折れ曲がりは回避されなければならず、本明細書における本開示による発明は、置換心臓弁プロテーゼのこのような不利な折れ曲がりおよび誤動作の防止を補助する。
【0083】
図B20および図B21は、本開示の一態様を示しており、レーザ切断された内側および外側ステントならびに結合ストラット(12)および結合手段(19)の特定の配置および配向が説明されている。
【0084】
図B22図B23図B24は、本開示の一態様を示しており、アンカリングセル(15)および固定ループは、異なる実施形態および設計で示されている。
【0085】
図B25a)は、本開示の一態様、すなわち、カテーテルに再装填された本開示による置換心臓弁プロテーゼのメッシュステントにおけるレーザ切断されたステントを示している。本開示によるループ設計の利点は、ループ(4)の柔軟性および回収または再装填操作中に反転することによってカテーテルシャフトへの回収性を可能にするループの特別な設計である。
【0086】
図B25b)は、本開示の一態様を示しており、すなわち、本開示による置換心臓弁プロテーゼのメッシュステントに結合されたレーザ切断されたステントが、カテーテル(7)に装填されて示されている。内側メッシュ(6)および外側メッシュ(5)が内側ステント(2)に結合されたワイヤ編組外側ステント(1)が示されており、Z字リング(27)が外側メッシュ(5)に結合されている。さらに、この図から、ワイヤ編組外側ステント(1)は負荷時に伸長し、Z字リング(27)は内側ステント(2)と重なっておらず、内側ステント(2)から遠位の位置に達しており、これは、有利にはカテーテルの直径を減じるのに役立つことが明らかである。
【0087】
図B26は、結合手段(19)の別の変化態様である本開示の一態様を示している(図14および図15も参照)。インターロッキング歯(14)の別の実施形態は、結合ストラット(12,12’)を結合するためにスリーブ(10)によって被覆されている。
【0088】
図B27は、本開示の一態様を示しており、レーザ切断された内側ステント(2)は、外側メッシュ(5)上のワイヤ編組外側ステント(1)に結合されたZ字リング(27)を含む外側メッシュステントに結合されている。Z字リング(27)は、例えば、遠位領域における外側メッシュ(5)の外側、例えば、その遠位端部において縫合されている。Z字リング(27)は、スタビライザ機能とループ機能とを組み合わせている。これは、有利には、特に心室における索(腱索)に干渉する(1つまたは複数の腱索に引っ掛かる、またはこれによって捕捉される)ことによって、埋込み部位または標的部位における置換心臓弁プロテーゼの改良された固定に寄与する。Z字リングは、当業者に公知の手段によって、例えば、縫合、クリッピングまたはその他の有用な手段によって外側ステントに取り付けることができる。有利には、Z字リングはジグザグの線として形成されており、前記ジグザグ形状によって形成された先端は、基本的に近位および遠位方向に向けられている。Z字リングはストラットから構成されている。前記ストラットは、基本的にストラットの中間部分において外側ステント(例えば、外側メッシュ)に結合されており、したがって、ストラットの先端部は基本的に自由であり、心臓の標的部位におけるプロテーゼの改良された固定のために腱索と干渉することができる。Z字リングはまた、通常の距離において先端部が前記Z字リングによって構成される限り、波形または曲がった形状などのその他の有用な形状(依然として本明細書ではZ字リングと称される)を示してもよい。また、プロテーゼは、互いにおよび/またはプロテーゼの外側ステントに結合されたまたは結合されていない1つ、2つ、3つまたはそれ以上のZ字リングを含んでもよい。また、溝(16)が示されている。
【0089】
図B28は、本開示の一態様を示しており、図B27のプロテーゼは、切断された図で示されている。内側ステント(2)および編組メッシュ外側ステント(1)ならびに標的部位におけるプロテーゼの固定にも寄与するV字溝またはU字溝(16)が示されている。Z字リング(27)は、外側メッシュ(5)の外側に配置されており、例えば、縫合糸によって外側メッシュ(5)に固定されている。縫合糸は、Z字リングの各ストラットに特有のものであって、ストラットごとに2本から数本の縫合糸が割り当てられていてよい。または縫合糸は、1つの位置を起点とし、再び始点に達するようにステントの周囲で連続していてもよい。内側メッシュ(6)は、レーザ切断された内側ステント(2)と整列しており、例えば縫合によって結合されている。図の左側には、外方に向けられていることを特徴としかつ外側メッシュ(5)に結合されていないZ字リング(27)の1つの先端部を見ることができる。Z字リングの他方の先端部も同じ特徴を示す。
【0090】
図B29a)~図B29f)は、本開示の一態様を示しており、切断ステント置換心臓弁プロテーゼ内の切断ステントが示されている。図B29f)は、異なるステント部分の結合領域および結合手段の拡大詳細図を示している。
【0091】
図B29a)~図B29c)は、本開示によるプロテーゼの3つの部分、すなわち、レーザ切断された近位のステント(11a)と、アンカリングセル(15)および結合ストラットガイド(17)を含むレーザ切断された遠位のステント(11b)と、結合ストラット(12)を備える内側ステント(2)とを示している。
【0092】
図B29d)において、ステント部分(2)および(11b)が組み立てられており、結合ストラット(12)は、結合ストラットガイド(17)を通過している。
【0093】
図B29e)は、本開示による置換心臓弁プロテーゼを示しており、レーザ切断された外側ステント部分(11a,11b)、V字溝(16)、アンカリングセル(15)、結合手段(19)、結合ストラット(12)および結合ストラットガイド(17)が示されている。レーザ切断された外側ステント部分(11a,11b)、すなわち、患者の心房に配置される近位部分(11a)と、埋込み中に患者の弁輪/心室に配置される遠位部分(11b)とが示されている。したがって、プロテーゼは、三部構成ステントに関する。3つのステント部分(2,11a,11b)は、それぞれ、結合手段(19)および結合ストラットガイド(17)によって結合されている。この図において特に重要なのは、参照記号(19)の周囲の様々なステントまたは/および様々なステント部分の相互結合を示した領域である。この領域は、図29fに示されかつさらに説明されている。
【0094】
図29e)の拡大詳細図B29f)は、結合ストラット(12)、結合手段(19)の端部(結合手段(19)の残りの部分は示されていない)および結合ストラットガイド(17)を示している。結合ストラット(12)は、結合ストラットガイド(17)に挿通されており、結合ストラット(12)の端部は、最終的に、相手方の結合ストラット(12’)に結合されており(図示せず)、上記のように結合手段(19)によって結合されている(例えば、図14図15および図26)。結合ストラット(12,19)の遠位部分は、結合ストラットガイド(17)の開口またはアイレットに容易に挿通することができるように形成されている。結合ストラット(12)は、レーザ切断された内側ステント(2)(図示せず)から延びており、結合ストラットガイド(17)は、レーザ切断された外側ステント(11b)の遠位部分から延びている。相手方の結合ストラット(12’-図示せず)は、レーザ切断された外側ステント(11a)の近位部分から延びており、結合手段(19-全ての部分がここに示されているわけではない)によって結合され、レーザ切断された内側ステント(2-図示されていない弁を支持している)と、レーザ切断された近位の外側ステントと、レーザ切断された遠位の外側ステント(11)とを、結合手段(19)および結合ストラットガイド(17)によって安定的に結合する。本明細書に記載の本開示による特別な結合構造は、置換心臓弁プロテーゼの有利な柔軟性の特徴を提供し、弁機能、ひいてはプロテーゼの改良された固定および機能性を補助する。有利には、プロテーゼの遠位領域、特に外側ステント(11b)の遠位領域は、これにより、心臓の心室組織と極めて良好に相互作用することができ、プロテーゼの改良された固定が達成される。置換心臓弁プロテーゼの有利な追従作用が達成される。他方、弁(図示せず)を支持したレーザ切断された内側ステント(2)もまた、外側ステントから有利に隔離されている。外側ステント部分(11a,11b)に押圧力を与える心拍による動きまたは変形は、内側ステント(2)に伝達されず、したがって、内側のステント(2)はその好ましい形状のままであり、正しい弁機能が保証される。さらに、埋め込まれた状態における様々なステント部分(17,19)を結合するために重要なステント部分の位置は、基本的に標的部位の弁輪領域にあり、したがって、心拍による衝撃または応力が、プロテーゼの結合部分により高い力を与えると予想される心臓の心房または心室領域と比較して、小さくなる。図29a)~図29f)に示したような本発明の構造はまた、標的部位におけるプロテーゼ自体の望ましくない長手方向の動きを低減するまたは基本的に防止する。プロテーゼは、内在の心臓弁機能を置換し、その置換弁は、心拍中に開閉する。弁が閉鎖すると、長手方向応力が、近位方向(心房方向)において置換心臓弁に影響を与え、内側ステント(2)が上向き(近位)方向に移動させられる傾向がある。これに関してより重要なのは、本発明の結合構造が、置換心臓弁プロテーゼにおいて置換弁を支持した内側ステントの長手方向の動きを防止するようにも作用するということである。3つのステント部分(2,11a,11b)の結合部は、有利には、内側ステント(2)の近位に配置されている。加えて、結合ストラットガイド(17)はV字形であるかまたはここに示すように、内側ステント2を起点とする結合ストラット(12)を支持するために使用されるリングまたはアイレットが、弁が閉鎖されて圧力が近位方向に生じたときに内側ステントの長手方向の動きを阻止する。同時に、規定された数の結合手段(19)および結合ストラット(12)を特徴とする本発明の構成は、心拍によって生じかつプロテーゼを内側に圧迫する圧力が、基本的に内側ステント(2)に達しないことを保証する。したがって、内側ステント(2)は、内側ステント(2)に取り付けられた置換弁の弁機能のために、基本的な丸い形状および有利な形状を維持している。結合ストラットガイド(17)と、その他の結合ストラット(12)との結合ストラットガイド(17)の特別な相互結合とは、内側ステント(2)を所定の位置に固定および保持し、外側ステント(11a,11b)内での内側ステント(2)の長手方向の動きを防止するための付加的な手段を表す。したがって、心房内への内側ステント(2)の動きは、基本的に防止される。
【0095】
図B30は、内在の三尖弁の心臓標的部位への埋込み中の本開示による置換心臓弁プロテーゼを示している。プロテーゼは、カテーテル(7)から標的部位内へ部分的に解放されており、展開中の、内在の三尖弁(30)、弁輪(31)、腱索(32)、および右心室(29)、部分的に解放されたプロテーゼ(1)、解放されるV字溝(16)、Z字リング(27)が示されている。
【0096】
詳細な説明
以下では、開示の特定の用語が定義される。それ以外の場合、開示の文脈における技術用語は、該当する当業者によって理解されるように理解される。
【0097】
本開示の意味における「プロテーゼ」または「医療機器」または「インプラント」という用語は、低侵襲形式で所定の部位に送達することができるあらゆる医療機器として理解されるべきである。これらの用語は互換的に使用することができる。この用語は、例えば、ステントまたはステントベースのプロテーゼ、または大動脈弁、僧帽弁または三尖弁などのステントベース置換心臓弁であってよい。
【0098】
本開示の意味における「カテーテル」または「デリバリ装置」という用語は、例えば、大動脈弁、僧帽弁または三尖弁のような心臓弁を置換するために、患者の規定の部位においてプロテーゼを展開するために使用される装置として理解される。
【0099】
本開示の意味における「メッシュステント」、「編組メッシュステント」または「編組ステント」は、例えばレーザ切断されたニチノールチューブとは対照的に、ワイヤから構成されたステントである。
【0100】
本開示の意味における「切断されたステント」または「レーザ切断されたステント」は、ニチノールチューブからレーザ切断されたステントである。
【0101】
本開示の意味における「ステント領域」は、外側ステント、メッシュステントまたは置換心臓弁プロテーゼの規定された領域であり、特に、近位、中間または遠位領域として規定された長手方向セクションまたは外側セクションである。
【0102】
本開示の意味における「近位領域」、「中間領域」、「遠位領域」は、カテーテルを使用することによって埋込みを実施するオペレータから見たステントまたはプロテーゼの領域を意味し、近位はオペレータに近く、遠位はオペレータから遠い。「中間領域」は、開示の意味におけるステントまたはプロテーゼにおいて、遠位領域と近位領域との間の領域を意味する。個人(人または患者)における現場、すなわち生体内での自然血流に関して、「近位領域」は流入端部または流入領域を意味することもでき、「遠位領域」は流出端部または流出領域を意味することもできる。
【0103】
本開示の意味における「弁輪領域」は、内在の心臓弁のそれぞれの領域であるかまたは埋込み部位に配置されかつ内在の弁輪と整列することが意図された置換心臓弁またはステントにおけるそれぞれの領域を規定している。
【0104】
本開示の意味における「弁輪下側領域」は、内在の心臓弁の弁輪の遠位方向(または流出方向)にあるプロテーゼの領域である。プロテーゼは、「弁輪下側領域」を溝領域および遠位領域によってカバーしてもよい。
【0105】
本開示の意味における「溝」は、他の領域よりも小さい直径を示すステントまたはプロテーゼの領域を意味し、前記溝の遠位および近位において、より大きな直径を有するステントまたはプロテーゼの他の領域が、前記溝に隣接している。前記溝は、V字形、U字形、それらの組合せまたはその他の有用な形状を有することができる。
【0106】
本開示の意味における「二部構成ステント」は、内側および外側ステントから構成されており、内側ステントは、内側ステントに取り付けられた心臓弁を支持しており、内側および外側ステントは、1つまたは複数の縫合糸、クリック機構などの特定の機構または置換心臓弁プロテーゼを形成するあらゆるその他の適切な結合手段によって結合されている。本開示の意味におけるこのようなプロテーゼは、僧帽弁または三尖弁である機能不全の内在の心臓弁を治療するために、すなわち置換するために適切であって、埋め込むことができる。
【0107】
本開示の意味における「複数部分構成ステント」において、外側ステントは、例えば、レーザ切断されたチューブから形成された2つ、3つまたはそれ以上の部分から構成されており、これらの部分は、結合手段および結合ガイドによって、弁を支持するレーザ切断された内側ステントと結合されている。「複数部分構成ステント」プロテーゼは、少なくとも3つ以上、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14の、結合手段および結合ガイドを含むことができる。結合ガイドは、有利には、内側ステントから基本的に近位に配置することができ、内側ステントの長手方向の動きを防止または制限することができる。上記の「二部構成ステント」の定義はこの一部を成しており、ここではこの定義にしたがう。
【0108】
本開示の意味における「標的部位」は、置換心臓弁プロテーゼが埋め込まれかつ機能障害または機能不全が治療されなければならない位置または場所である。
【0109】
本開示の意味におけるステントの「結合」は、縫合、クリッピングまたはクリック機構、またはステントを互いに取り付けるためのあらゆるその他の有用な方法または手段によって、2つ以上のステントを互いに固定する方法である。
【0110】
本開示の意味における「結合手段」は、メッシュステントまたはレーザ切断されたステントにおける2つのストラットまたは2つの部分の機械的または物理的結合であり、2つのステントは、結合されて安定したユニットを形成する。結合手段は、例えば、溶接、連結、縫合、接着、またはあらゆるその他の公知の方式、プロセスまたは手段によるものであってよい。結合手段は、解放可能または解放不可能な結合のための特別な設計および形状を示す取付けまたはクリッピング手段であることもできる。
【0111】
本開示の意味における「結合ストラット」は、2つのステントを互いに結合するために使用される2つの異なるステントまたは2つの異なるレーザ切断されたステントのストラットである。結合ストラットは、レーザ切断されたステントのストラットに関し、その機能は、レーザ切断された内側および外側ステントを結合することである。結合は、解離不可能な結合によってまたは結合手段によって解離可能または解離不可能であってよい。
【0112】
本開示の意味における「アンカリングセル」は、ループと、レーザ切断されたステントのステントセルとの組合せであり、ループは、半径方向に移動可能でありかつ傷付けない構成に形成されている。「アンカリングセル」は、レーザ切断されたステントまたはその一部のステントセルが、半径方向に移動可能でかつ傷付けない構成に形成されたループを形成する、1つの単一体として形成することができる。
【0113】
本開示の意味における「結合ストラットガイド」は、三部構成ステントの結合を補助または支援するために使用される。結合ストラットガイドは、結合ストラットと相互作用する。好ましくは、結合ストラットおよび結合ストラットガイドは、溝(V字溝またはU字溝)内に、例えば、遠位領域の中間および近位領域の周囲に配置される。結合ストラットガイド端部は、アイレットとして、または結合ストラットが通過してその結合ストラット対応部分と結合できるようにする別の形式で形成することができる。このようにして、ステントの近位部分(プロテーゼ)、ステントの遠位部分(プロテーゼ)および内側ステントが結合される。したがって、プロテーゼの中間および遠位のステント部分は、自由に動くことができ、心室組織およびその形状と容易に整列することができる。このようにして、弁を支持した内側ステントは、プロテーゼの外側ステント部分から切り離され、プロテーゼの外側ステント部分への心拍衝撃による変形は、内側ステントに達しない。したがって、適切な弁の接合および弁機能、すなわち弁尖の正しい開閉に有利な内側ステントの丸い形状が、有利にも保証される。
【0114】
本開示の意味における「S字ストラット」または「U字またはV字ストラット」は、レーザ切断されたステント、例えばニチノールステントのステントストラットであり、ストラットは、S、UまたはV単位の反復する数を含むまたはそれから成り、これにより、真っ直ぐなストラットと比較してその他の特性を示す特定の形状を形成する。例示的なS字ストラットが、図B16に示されている。S字ストラットは、本開示による、レーザ切断されたステントの結合ストラットまたは/および結合手段と一緒に使用されてもよい。
【0115】
本開示の意味における「ループ」は、ステントまたはプロテーゼの改良された固定に有用な手段であり、ループは、外側ステントに固定されているか、外側ステントに結合されているか、外側ステントの一部を形成しているかまたは外側ステントの一体的部分である。本開示の意味における「ループ」は、円形、正方形などの様々な形状を有することができ、規定されたパターンで、規定された領域に配置されている。本開示の意味における「ループ」は、外側ステント表面に関して、規定された角度を成し、初期の、場合によっては部分的な展開後にステントまたはプロテーゼがカテーテル内へ回収されたときに反転するように構成されてもよい。本開示の意味におけるループは、アンカリングセルに含むことができる。
【0116】
本開示の意味における「スタビライザ」は、標的部位、すなわち、置換される内在の心臓弁におけるステントまたは置換心臓弁プロテーゼの改良された固定を補助する構造体である。「スタビライザ」は、強化手段として理解することもできる。「スタビライザ」は、本開示の意味において、柔軟性または軸方向の力などの、ステントまたはプロテーゼの特定の特性を、完全にまたは規定された領域において補助することができる。例えば、スタビライザは、付加的なワイヤまたはステント層であってよい。「スタビライザ」は、例えば、好ましくはメッシュステントの内側または外側に取り付けられるかまたはメッシュステントのメッシュと組み合わされるかまたはメッシュステントのメッシュに導入された、少なくとも1つのニチノールリングであり、好ましくは、少なくとも1つのニチノールリングは、波形の、またはV字またはU字形状、またはジグザグ形状を有し、または「スタビライザ」をZ字リングとして形成することができる。
【0117】
本開示の意味における「Z字リング」は、固定機能を提供するもの、またはスタビライザ機能とループ機能とを組み合わせたものである。さらに、固定機能またはループ機能は、有利には、心臓構造、例えば、標的部位の腱索との干渉を提供し、これにより、標的部位におけるプロテーゼの改良された固定が達成される。本開示によるプロテーゼは、1つ、2つまたは3つのZ字リングを含んでもよい。このようなZ字リングは、互いに相互結合されてもよいか、または外側ステント、好ましくは外側メッシュステントと独立して結合されてもよい。Z字リングは、10~30個のセル(小部分)または15~25個のセルから構成することができかつ/または各セルのストラット長さは、5~12mm、好ましくは8~10mmの範囲であってもよい。Z字リングは、あらゆる中間または遠位領域またはその一部に配置されてもよく、例えば、遠位領域、好ましくは外側メッシュステントの遠位端部に配置されてもよい。Z字リングは、外側のメッシュステントと組み合わせることができるあらゆる材料から形成することができ、例えば、レーザ切断されたニチノール、ワイヤ、ニチノールワイヤから形成することができる。Z字リングには、Z字形、V字形、U字形またはジグザグ形状などのあらゆる有用な形状を有することもできる。Z字リングは、好ましくは、レーザ切断された部品であり、ニチノールから形成されている。Z字リングは、外側メッシュステントの外側に配置され、公知の手段、例えば、メッシュステント内への縫合、溶接、織り込み、クリッピングまたは編組によって、外側メッシュステントと結合されてもよい。
【0118】
Z字リングは、外側ステントの周囲に円周方向に配置されてもよい。Z字リングは、外側ステントの周囲に周方向の単一のリングを意味しないが、外側ステントの周囲に配置された単一のユニットまたは部分から構成されたZ字リングを形成することが実行可能である場合がある。相互作用および改良された固定機能の傾向がある内在の構造に対して好ましい領域に配置するために、単一のZ字リングユニットまたは部分を外側ステントの規定された領域に配置することも実行可能である。Z字リングの重要な側面は、基本的に遠位または近位に向けられた端部が自由となっており、それらの固定機能を示すために外側ステントと結合されていないことである。
【0119】
本開示の意味における「角度構造」または「角度」は、内側ステントなどの他方のステント構造に関して前記ステント層の特定の形状を規定するために、特定の領域またはステント層と接する2つの補助線の間の角度である。
【0120】
本開示の意味における「角度アルファ」または「角度α」は、それぞれがメッシュステントの1つの外層または内層に接している外側メッシュステントの2つの補助線の間の角度である。
【0121】
本開示の意味における「ばね」または「ばね機能」または「吸収」は、2層として折り畳まれたときの外側メッシュステントの機能に関し、外側メッシュステントは、特定の半径方向力および柔軟性を有し、これにより、例えば、心拍からの動きおよび衝撃を吸収することができ、これは、三尖弁または僧帽弁などの軟組織における改良された固定を補助する。同じ有利な作用が、レーザ切断された外側ステントを使用する場合にも得られる。
【0122】
本開示の意味における「半径方向力」は、半径方向外向き方向にステントまたはプロテーゼによってもたらされる力、より具体的には、メッシュまたはレーザ切断されたステント、例えば、ニチノールステントであってもよいプロテーゼの外側ステントによってもたらされる力である。半径方向の力は、特定のメッシュまたは切断されたステントの構成に依存し、材料密度、例えば、メッシュステントにおける正方形面積あたりのワイヤの密度、または特定のレーザ切断されたステントのレベルまたは領域における、例えば近位、中央または遠位領域における、円周方向でのセルの数および前記セルのサイズに関係する。本開示による置換心臓弁プロテーゼの半径方向力は、周囲組織との良好な接触を提供しかつそれとの良好な接触を提供するための大きさに各領域に対して選択される。他方、半径方向力は、埋込み部位ならびに内在の組織および機能との干渉を回避するための大きさに選択される。半径方向力は、その他の手段、例えば固定のためのループによって、その固定機能のために補助されてもよい。
【0123】
本開示の意味における「固定の改良」は、それぞれの構造特徴を有しないステントまたは置換心臓弁と比較して現場または生体内でのより良好な固定を意味するか、または一般に、所望の埋込み部位における安定しかつ長期の埋込みを補助するステントまたは置換心臓弁についての良好な固定を意味する。
【0124】
本開示の意味における「装填」という用語は、カテーテルが患者への送達および展開操作を開始する準備ができているような形式でプロテーゼをカテーテル内に配置することであると理解されるべきである。
【0125】
本開示の意味における「標的領域」は、例えば三尖弁であってよい生来の心臓弁などの生来の器官を取り囲んでいるか、またはその器官の中にある三次元空間である。
【0126】
本開示の意味におけるループの「傷付けない構成」は、ループ、またはステントまたはプロテーゼのその他の手段または部分が、周囲組織、または前記部分または少なくとも、接触している組織の損傷または/および負傷を最小限にする形式で製造された部分と接触する組織の、あらゆるまたは基本的にあらゆる損傷を回避するように構成されているということである。
【0127】
本開示の意味における、例えば、外側メッシュステント内にレーザ切断された内側ステントを含む、またはレーザ切断された外側ステント内のレーザ切断された内側ステントを含む、ステントまたは置換心臓弁プロテーゼの「コンプライアンス」若しくは「追従性」は、標的組織との積極的干渉に関与する。「コンプライアンス」は、標的部位へのステントまたはプロテーゼの良好な幾何学的適応を示す構成に関係し、ステントまたはプロテーゼは、有利な固定特性、弁機能に関する良好な機能および同時に内在の心臓構造および心臓機能への最小限の干渉を示す。
【0128】
本開示の意味におけるステントまたは置換心臓弁プロテーゼまたはプロテーゼの「耐圧潰性」は、外側ステント、例えば、メッシュステントまたはレーザ切断されたニチノールステントの構成による、内側ステントの形状の維持または/および置換弁機能の機能性の維持に関係し、これは、プロテーゼの外側ステントに対する内在の心拍の衝撃に関連して内側ステントと外側ステントとの分離を提供する。本開示によるプロテーゼの積極的な「耐圧潰性」は、有利には、内側ステントの形状の維持および基本的に正しい置換心臓弁機能を達成する。特に有利なのは、標的部位への固定力を提供し、同時に内在組織および機能を妨害しない外側ステントの半径方向の力である。例えば、外側メッシュステントを含む、本開示によるプロテーゼは、全体として依然として半径方向外向きの力を有しながら、適時変形可能性を示す。同時に、プロテーゼは、心室心臓組織に対する有利な追従を提供するように変形可能である。したがって、例えば、外側メッシュステントを含む、本開示によるプロテーゼは、有利な追従作用を提供するために、周方向の外向きの半径方向力および適時変形可能性を示す。したがって、耐圧潰性は小さく、この外向きの半径方向力は、支持および固定機能を提供する大きさである。外側ステントの有利な耐圧潰性は、有利には、標的領域における適時応力影響の分散および低減を達成する。
【0129】
本開示の意味における「フレーム」または「ステント」は、クリンプし、デリバリシステムまたはカテーテルを介して個人内の標的部位に送達することができる置換心臓弁プロテーゼの一部である。フレームの特定の部分は、弁および封止特徴を備えており、弁は、内在の心臓弁の機能を置換し、封止特徴は、PVL(弁周囲逆流)を防止するのに役立つ。
【0130】
本開示の意味における「単一フレーム」は、1つの部分から形成されたまたは個人内への送達前に1つの機能部分を形成するように組み立てられた、フレームである。
【0131】
本開示の意味における「多重フレーム」または「ステント・イン・ステント」構造は、置換心臓弁プロテーゼの一部を形成し、2つ以上の部分が、弁および封止特徴を支持した単一フレームを形成する。ステント・イン・ステント構造は、2つ以上のステント、例えば、1つ、2つまたは3つのレーザ切断されたニチノールステント、または例えば、ニチノールから形成された1つ、2つまたはそれ以上のレーザ切断されたステントと組み合わされた編組ステントを含んでもよい。
【0132】
本開示の意味における「弁」または「置換心臓弁」は、置換心臓弁プロテーゼのフレームまたはステント部分に結合され、第1の方向への血流を可能にしかつ第2の方向への血流を防止するのに役立つ。弁は、当業者に知られているあらゆる有用な材料から形成されてもよいまたはこれを含んでもよい。材料は、例えば、ウシまたはブタの心膜組織またはポリマー組織から選択されてもよい。
【0133】
本開示の意味における「封止特徴(sealing feature)」は、特定の方向または領域への望ましくない血流を防止するための手段である。封止特徴は、特に本明細書に開示される置換心臓弁プロテーゼの弁と調和した機能において、一方向または複数の方向への血流を防止しても、または一方向への血流を防止し、別の方向への血流を許容してもよい。封止特徴は、1つ、2つまたは複数であってよく、各封止特徴は特定の機能を有することができ、各封止特徴は、他の封止特徴とは異なる機能を有することができる。各封止特徴は他方、異なる領域に分割することができる。1つの封止特徴は、近位または流入領域において置換心臓弁プロテーゼの外側部分に配置されてもよく、別の封止特徴は、環状または中間領域に配置されてもよく、別の封止特徴は、遠位または流出領域に配置されてもよい。材料は、例えば、ウシまたはブタの心膜組織またはポリマー組織から選択されてもよい。
【0134】
低侵襲心臓弁プロテーゼとの調和した機能において、封止特徴は、異なる取付け手段、例えば、縫合、接着、カプセル化またはその他のあらゆる公知の処置またはプロセスまたは手段によって、二重または多重ステントフレームに取り付けられてもよい。
【0135】
ステントおよび封止特徴は、他の置換心臓弁構成要素と適合性を有し、好ましくは生体適合性の多くの材料から形成することができる。本開示の意味におけるステントまたはフレームは、ニチノールから形成することができるまたはニチノールを含むことができる。ステントまたはフレームは、1つまたは複数のポリマー材料、例えば、PLLAまたは/および1つまたは複数の金属、例えば、ステンレス鋼またはコバルトクロム、白金-クロム合金、マグネシウムを含んでもよい。封止特徴は、例えばウシまたはブタの心膜から形成することができる。
【0136】
本開示の意味における「取付け点」は、置換心臓弁プロテーゼのフレームとの封止特徴の結合部を規定する。「取付け点」は、封止特徴のその他の特性に関連しており、置換心臓弁プロテーゼの有利な封止特性および有利なクリンピング特性を補助しまたは/かつ提供する。「取付け点」は、例えば、I、E、J、Kで示されてもよい。この文脈におけるその他の取付け点をさらに規定することができる。取付け点は、2つの取付け点間の距離および2つの取付け点と他の2つの取付け点との比率を規定する。置換心臓弁プロテーゼ内の特定の取付け点の位置、特にプロテーゼフレーム上のその位置との組合せにおける規定された距離および比率は、封止特性または/および十分にクリンピングされるその能力に関して有利な機能を提供する。I~KおよびK~Jの間の距離は、様々なステント構成に適合させることができ、クリンプされたステントの寸法と、メッシュステント内のニチノール切断チューブステントまたはニチノール切断チューブ内のニチノール切断チューブなどのステント構成とに依存する場合がある。
【0137】
K~Eまでの距離は、様々なステント構成に適合させることができ、クリンプされたステントの寸法と、メッシュステント内のニチノール切断チューブステントまたはニチノール切断チューブ内のニチノール切断チューブなどのステント構成に依存する場合がある。一態様における封止およびクリンピング目的のために、距離J~KおよびK~Jは等距離を有する。
【0138】
本開示の意味における「取付け領域」は、置換心臓弁プロテーゼのステント内の取付け点の領域に関する。
【0139】
以下では、上記および図面および特許請求の範囲に記載されているように、本開示の有利な封止特徴と組み合わせることができる付加的なステント構造を説明する。以下の説明は、特に「B」参照リストおよび「B」図に関連している。これらの特徴は、互いにおよび上で概説したような特徴と組み合わせることができ、このような組合せは、当業者によって理解される多くの利点を含むであろう。
【0140】
一態様では、付加的なステント構造は、ステントが1つまたは複数の強化領域を含むメッシュステントであってよい。
【0141】
一態様では、付加的なステント構造は、1つまたは複数の固定ループを含むメッシュステントであってよい。
【0142】
一態様では、付加的なステント構造は、1つまたは複数の強化領域および1つまたは複数の固定ループを含むステントの組合せであってもよい。場合によっては、埋込み部位の自然組織との整列の能力を有利には示す特定の外側ステント構造が、加えて、改良された固定を補助してもよい。
【0143】
上記の付加的なステント構造は、本明細書に記載されたような封止特徴と組み合わせることができる。
【0144】
したがって、一態様では、付加的なステント構造は、有利な固定特性および改良された封止特性を示すステントまたは/および置換心臓弁プロテーゼを提供することができる。
【0145】
別の態様では、付加的なステント構造は、上記のメッシュステントに関し、1つまたは複数の固定ループは、ワイヤが、ステントから延びておりかつステントへ戻り、好ましくはステントの弁輪下側領域(心室領域)に配置された、近位方向(流入方向)に好ましくは30°~90°、好ましくは50°~60°の角度で、ステントから外方へ延びたループを形成しており、好ましくは、複数のループが、互いに同じまたは異なる距離で、ステントの周囲に配置されておりまたは/かつ複数の列またはレベルに配置されておりまたは/かつ異なる列においてまたは/かつ交互の位置に配置されていることを特徴とする。
【0146】
本開示によるループは、あらゆる有用な形式および形状で形成することができ、好ましくは、ループは、楕円形、円形、開放型、閉鎖型または/およびテーパした形状として形成される。有利には、ループは、長さが2mm~15mmの範囲の寸法を有するまたは/かつループは、直径が2mm~10mmの範囲にある。
【0147】
好ましくは、本開示によるメッシュステントでは、ループは、傷付けない構成に形成されている。したがって、ループは、周囲組織のあらゆる損傷または基本的にあらゆる損傷を回避するように形成されているまたは少なくとも、ループが接触する組織の損傷および/および負傷を最小限に抑える形式で製造されている。
【0148】
ループは、プロテーゼの固定特性を高めるのに最も有用であるように配置することができる。したがって、ループは、近位方向または遠位方向のいずれかにおいてメッシュステントに対して角度を成すことができる。一態様では、本開示によるメッシュステントは、現場でステントをカテーテル内へ再装填する際に遠位方向(流出方向)に反転するように形成されたループを示す。
【0149】
好ましい態様では、本開示によるメッシュステントは、本開示の本発明の特徴の組合せによって特徴付けられ、強化領域は、スタビライザおよび/または1つ、2つまたはそれ以上の付加的なメッシュ層によって支持されている。スタビライザは、メッシュステントに取り付けられたまたはメッシュステントと組み合わされた1つ、2つ、3つまたはそれ以上のスタビライザであってよく、好ましくは、スタビライザは、好ましくはメッシュステントの内側または外側に取り付けられたまたはメッシュステントのメッシュと組み合わされたまたはメッシュステントのメッシュに導入された、少なくとも1つまたは2つのニチノールリングまたはワイヤである。スタビライザは、異なる領域においてまたはメッシュステントの周囲で所定の形状を示すことができ、好ましくは、少なくとも1つのニチノールリングは、波形、またはV字またはU字形状、またはジグザグの形状を有する。
【0150】
一態様では、本開示は、外側ステントが、外側ステント(例えば、メッシュステント)の遠位領域の外側に、好ましくは外側ステントの遠位端部に配置されたZ字リングを含む実施形態に関する。Z字リングは、有利には、強化機能またはスタビライザ機能を組み合わせ、その先端が基本的に近位および遠位方向に突出している。Z字リングは、ループ機能、または心臓構造部分、例えば腱索に干渉するのに役立つ機能によっても特徴付けられ、したがって、本明細書に開示されるように置換心臓弁プロテーゼの改良された固定特性に寄与する。
【0151】
一態様では、本開示は、標的部位、好ましくは心臓における、前記ステントを含む置換心臓弁プロテーゼの1つのステント、二部構成ステント、三部構成ステントの安定した固定を補助または改良するために有用な、Z字リングまたは複数のZ字リング部分に関する。Z字リングまたはZ字リング部分は、少なくとも2つのバーと、1つの方向における少なくとも1つのピークまたは先端部と、基本的に反対方向における少なくとも2つのピークまたは先端部とを特徴とする。バー、先端部/ピークの数は、プロテーゼの全体的なサイズと、所要の固定機能に関する機能要件とに応じて異なる。このようなZ字リングまたはZ字リング部分は、先端部またはピークが外側ステントと基本的に結合されないように保持され、かつ内在の構造または組織との相互作用を可能にする形式で、例えば、置換心臓弁プロテーゼの外側ステントに結合され、これは、プロテーゼの改良された固定を補助する。外側ステントは、Z字リングまたはZ字リング部分が結合されたまたは織り合わされたメッシュステントであってもよい。
【0152】
Z字リングまたはZ字リング部分は、有利には、外側ステントの中間領域または遠位領域またはそのサブ領域に配置することができる。外側ステントの全ての湾曲した領域が好ましい。
【0153】
一態様では、Z字リングまたはZ字リング部分が置換心臓弁プロテーゼの外側ステントの遠位領域に配置される場合も有利である。なぜならば、このような配置は、置換プロテーゼ部分、例えば、内側ステント、Z字リングまたはZ字リング部分並びにカテーテルに装填しかつクリンプされたプロテーゼ直径に重要な残りのプロテーゼ部分の有利な配置により、カテーテル直径に関して利点を提供するからである(図B25b)参照)。このようにして、Z字リングおよび内側ステントは、互いに隣接して配置され、重ね合わされないため、増大した直径を生じさせない。プロテーゼ部分のこのような有利な装填された配置は、有利には、Z字リングまたはZ字リング部分および内側ステントのクリンピングおよび配置の間の、長手方向への外側メッシュステントの伸長を有利に使用することによって達成され、したがって、これらは、カテーテル内で並列位置を達成する。
【0154】
一態様では、Z字リングまたはZ字リング部分の使用は、相対的に小さい半径方向力を示す外側ステントと組み合わされた、相対的に高い半径方向力を示す内側ステントの配置構成を補助し、標的部位に対する極めて良好なコンプライアンス(追従性)を提供し、前記部分を含むプロテーゼの改良されたまたは有利な固定特性を提供する。したがって、Z字リングまたはZ字リング部分は、有利な固定特性を提供しながら、外側ステントにおいて比較的小さい半径方向力を維持することを可能にする。
【0155】
有利な形式において、本開示によるメッシュステントは、強化領域を有し、強化領域は、外側ステントに取り付けられたまたは外側ステントの一体部分であるループの組合せであり、メッシュステントは、二重、三重または四重の層によって強化されておりまたは/かつ内側ステントに結合されていない。
【0156】
上記の特徴は、ステント領域が、標的部位において展開されたとき、標的部位の環状またはサブ環状領域または心室領域に基本的に従順である外側メッシュステントの構成と組み合わされてもよい。したがって、メッシュステントが内在の心臓組織と十分に整列するだけでなく、メッシュステントと内在の組織との接触面積が増大させられる。このようにして、本開示によるメッシュステントおよびプロテーゼは、改良された摩擦による改良された固定を達成する。なぜならば、ステントまたは置換心臓弁のより多くの表面が、これにより、内在の弁周囲組織の表面と接触するからである。本開示によるメッシュステントは、有利には、楕円形の内在の心臓弁形状への元来円形のメッシュステントの適合を達成する場合があり、したがって、ステントまたは置換心臓弁プロテーゼは、現場で改良された固定特性を示す。ステントまたは置換心臓弁プロテーゼが内在の組織または内在の心室組織との部分的な整列のみを達成する場合、改良された固定特性も達成することができる。さらに、腱索とのループの干渉は、プロテーゼの改良された固定特性に寄与することができる。
【0157】
一態様では、本開示によるメッシュステントは、1つまたは複数の強化領域を有し、好ましくは、強化領域は、好ましくは三尖弁または僧帽弁の置換心臓弁に関連して、標的部位において展開されたとき、標的部位の心室領域と基本的に整列するメッシュステント領域上に配置されるか、または強化領域は、好ましくは大動脈弁または肺動脈弁の置換心臓弁に関連して、標的部位において展開されたとき、標的部位の大動脈領域または肺領域と基本的に整列するメッシュステント領域に配置される。
【0158】
本開示によるメッシュステントの一態様では、強化領域は、メッシュステントの流出領域におけるメッシュステント領域に配置されている。
【0159】
本開示によるメッシュステントは、1つまたは複数の強化領域を有することができ、一態様では、強化領域は、好ましくは一部構成メッシュから形成された、好ましくはバックループを特徴とする、メッシュ二重層または三重層を特徴とする。バックループは特別に形成されている。再装填操作では、ループがひっくり返り、ループをカテーテルに引き戻すことができる。これは、メッシュステントの不可欠な部分を形成する。一部構成メッシュを使用することができ、好ましくは、外側ステントの層が同じ三次元形状を有し、重ねられた層構造を形成している。このような重ねられたステント構造において、様々な層は、特定のステント領域における半径方向力の規定および設計に寄与することができ、したがって、積極的かつ有利なばねまたは吸収効果に寄与することができる。メッシュステントの層は、縫合糸などの有用な手段によって互いに結合することができる。
【0160】
一態様では、強化された領域は、メッシュ層間の空間または/および2つまたは3つのメッシュ層の円錐形状をさらに特徴とするメッシュ二重または三重層を特徴とし、好ましくは、円錐形状および/または距離は、近位(流入)方向に向けてメッシュ層の間で増大している。
【0161】
本開示によるメッシュステントの柔軟性特性は、強化特徴によってまたは強化特徴の組合せによって構成しかつ適応させることができ、強化領域は、強化されていないメッシュステント領域と比較して減じられた柔軟性を特徴としまたは/かつ強化されていないメッシュステント領域と比較して増大した半径方向力を特徴とする。
【0162】
本開示によるメッシュステントは、近位領域または心房領域または流入領域と、中間領域または弁輪領域(または溝下側領域)と、遠位領域または心室領域または流出領域とによって規定された3つの領域を特徴とすることができる。
【0163】
本発明は、有利には、本開示の構成特徴を単一の特徴または特徴の組合せとして規定および選択することによってプロテーゼの特定の動作を有利に達成することができ、これにより、特定の半径方向の力の分布を達成することができ、これにより、移植部位におけるプロテーゼの改良された固定を達成することができる。
【0164】
従来技術では、置換心臓弁プロテーゼの設計は、異なる領域において(プロテーゼの長さにわたって)半径方向力を示す場合があり、このことは、特に僧帽弁または三尖弁の置換治療に関連して、最適化されたプロテーゼ固定にとって不利である。最新のプロテーゼは、遠位方向に高すぎる半径方向力を示す場合がある。したがって、これは、現場における埋込み後および心臓が拍動しているとき、プロテーゼが次第に近位方向(すなわち、流入方向)に押されることにつながる場合があり、プロテーゼの位置ずれにつながる場合がある。
【0165】
本開示によるプロテーゼは、今度は、強化特徴、例えば、メッシュの遠位部分が内側ステントと結合されていない強化された領域または構成によって、改良された半径方向力分布と、所望の埋込み部位における置換心臓弁プロテーゼの改良された固定とを達成する場合がある。
【0166】
ループなどの付加的な構成特徴または/および心室領域における内在の心臓組織との外側メッシュステントの改良された整列は、このような改良された固定に寄与する場合がある。
【0167】
本開示によるメッシュステントは、寸法が特定の患者または患者グループに適しているように構成され、3つのプロテーゼ領域の寸法は、最も適切であるように選択される。一態様では、本開示によるプロテーゼは、近位領域が1~25mm、好ましくは1~5mmの長手方向寸法を有し、中間領域が1~25mm、好ましくは4~10mmの長手方向寸法を有し、遠位領域が、1~25mm、好ましくは4~10mmの長手方向寸法を有するプロテーゼ寸法を有する。
【0168】
別の態様では、本開示は、上記のメッシュステント(第1のステント)および第2のステントを含む心臓弁プロテーゼに関し、第1のステントは、メッシュステント(外側ステント)であり、第2のステントは、好ましくは1つまたは複数の縫合糸によって第2のステントに固定された弁を含む内側ステントである。
【0169】
本開示による心臓弁プロテーゼにおいて、内側ステントは、レーザ切断されたニチノールチューブであり、内側ステントは、好ましくは、8mm~40mmの間の内径を有するまたは/かつ内側ステントは、15mm~41mmの外径を有するまたは/かつ内側ステントは、拡張した構成において8~35mmの長手方向寸法を有する。内側ステントは、2列、3列、4列、5列または6列のセルから構成されてもよい。
【0170】
本開示による心臓弁プロテーゼでは、2つのステントは、適切なかつ当業者において一般的に知られる手段によって結合されてもよい。内側ステントは、好ましくは1つまたは複数の縫合糸によってまたは1つまたは複数の結合構造によって外側ステントと結合されてもよい。このような結合構造は、クリップまたはさもなければ互いに結合されると安定したままである二部構成の手段であってもよい。
【0171】
本開示による心臓弁プロテーゼでは、内側ステントおよび外側ステントは、プロテーゼの機能にとって適切かつ有用であるように、加えてクリンピング操作にとって有用であるように、互いに結合および固定することができる。特定の実施形態では、内側ステントは、好ましくはその遠位領域(流出領域)および近位領域(流入領域)において、または基本的にその近位領域において外側ステントに結合されているまたは/かつ外側ステントの遠位領域は内側ステントに結合されていない。
【0172】
一態様では、本開示による心臓弁プロテーゼは、有利であり、外側メッシュステントの遠位領域(流出領域)は内側ステントと結合されておらず、内側ステントに対する外側メッシュステントの角度は具体的に選択される。加えて、角度アルファは、特定の寸法で選択することができる。全ての3つの構成特徴は、埋込み部位におけるメッシュステントおよび心臓弁プロテーゼの改良された固定に寄与する。本開示による特定の実施形態では、外側ステントは、好ましくは25~50°、より好ましくは35~45°の角度を内側ステントに対して成している。
【0173】
本開示による心臓弁プロテーゼは、カテーテルシステムによって展開させられてもよい。通常、カテーテルに装填された心臓弁プロテーゼの低プロフィルを達成することが望ましい。したがって、一実施形態におけるクリンプされた構成における本開示による心臓弁プロテーゼでは、ループが、心室領域においてメッシュステントに配置されており、ループは、メッシュステントがループ自体と重ならない領域または/およびプロテーゼがそのクリンプされた構成において1つのステント層を有する領域においてメッシュステントに配置される(例えば、図B8参照)。
【0174】
本開示によるメッシュステントまたは本開示による心臓弁プロテーゼにおいて、使用および有利な埋込みおよび固定に最も適しているように寸法を選択することができることが上記で説明されている。メッシュ領域がそれらの長手方向寸法において適合させることができることも説明されている。改良された固定特性のためにメッシュステントまたは心臓弁プロテーゼの直径を適合させることも可能である。したがって、メッシュステントまたは心臓弁プロテーゼの3つの領域は、異なる外径を有してもよく、好ましくは、3つの外径は、ステントの拡張状態において40~90mmまたは20~90mmの範囲にある。外径は、等しいまたは異なることができる。
【0175】
一態様では、本開示によるメッシュステントまたは本開示による心臓弁プロテーゼは、中央領域が他の2つの領域よりも基本的に小さい外径を有し、好ましくは溝を形成するように構成されている。このような溝は、内在の心臓組織および形状との改良された整列を達成するために、基本的にV字溝またはU字溝、またはこのような形状のあらゆる組合せとして成形することができる。
【0176】
本開示による全体的なメッシュステントおよび心臓弁プロテーゼの構成は、長手方向寸法における特定の半径方向力分布につながる。特定の実施形態では、環状下側領域における半径方向力は、メッシュステントまたはプロテーゼの心室または流出領域と比較して基本的に等しいまたはより高い。本明細書に開示されるようなプロテーゼに対する半径方向力は、好ましくは以下の通りである。すなわち、近位領域(流入領域)対中間領域対遠位領域(流出領域)は、1~2対0.5~1対2~3に等しい。
【0177】
一態様では、本開示によるメッシュステントまたは心臓弁プロテーゼは、2~20Nの範囲の、弁輪領域における半径方向力を示す。Z字リングの領域では、半径方向力は、15~40Nであってよい。
【0178】
別の態様では、本開示は、外側ステントがレーザ切断されたステント、好ましくはニチノールステントである、上記のような心臓弁プロテーゼに関する。
【0179】
一態様では、本開示は、好ましくは1つまたは複数の結合手段によってまたは溶接などの物理的方法によって結合され、好ましくは弁を内側ステントに取り付けている、2つのレーザ切断されたニチノールステント、すなわち内側および外側のステントを含むまたはこれらから成るステントまたは置換心臓弁プロテーゼに関する。
【0180】
本開示によるレーザ切断された外側ステントに結合されたレーザ切断された内側ステントは、有利には、標的部位における良好な長期固定を達成し、同時に、良好な置換心臓弁機能を提供する。有利には、外側ステントに対する内側ステントの長手方向の動きが回避される。また、置換心臓弁プロテーゼの長手方向の動きも基本的に回避され、これは、置換心臓弁プロテーゼの正しい機能に寄与する。
【0181】
本開示による2つのレーザ切断されたステントの組合せは、有利には、プロテーゼの有利な耐圧潰性を提供し、これにより、置換心臓弁の優れた機能を提供する。
【0182】
置換心臓弁プロテーゼの問題は、標的部位における展開中のステント部品の折れ曲がりである。本開示による置換心臓弁プロテーゼの特定の構成は、基本的に前記問題を回避することを達成する。
【0183】
置換心臓弁プロテーゼは、長手方向で3つの領域に分割することができる。第1の領域は、近位領域または流入領域または心房領域である。第2の領域は、中間領域または好ましくは溝領域または環状領域である。第3の領域は、遠位領域または流出領域または環状下側領域である。異なる領域は、特定の内在の心臓弁の形状および寸法に最も良く適合するように設計される。3つの領域は、以下の寸法:
- 近位領域:1mm~25mm、直径20~90mm、周方向でのステントセル数6~48、好ましくは10~18;
- 中間領域:1mm~25mm、直径10~80、周方向でのステントセル数6~48、好ましくは10~18;
- 遠位領域:1mm~35mm、直径20~90、周方向でのステントセル数6~48、好ましくは10~18:
を有することがすることができる。
【0184】
一態様では、本開示は、レーザ切断された外側ステントが、少なくとも4つのループおよび/またはアンカリングセル、好ましくは6~18、8~12または10のループおよび/またはアンカリングセルを特徴とする、上記の心臓弁プロテーゼに関する。レーザ切断された外側ステントは、周方向で、異なるステント領域における規定された数のセルを特徴としてもよい。本開示によるレーザ切断された外側ステントは、近位領域における14~22または16~18のセル(支持セルとも呼ばれる)および遠位領域における14~22または16~18のセルを特徴としてもよい。遠位領域は、1列、2列、3列、4列または5列のセルを含むかまたはそれらから構成されてもよい。遠位領域が2列以上のセルから構成された実施形態では、周方向セルの数は、16~34または18~28のセル数である。
【0185】
レーザ切断された内側ステントは、2列、3列、4列、5列または6列のセルを特徴としてもよい。周方向で、内側ステントは、各列において10~30または14~20または16~18のセルを含むまたはそれらから構成されてもよい。
【0186】
レーザ切断された外側ステントは、1つまたは複数または全てのセルの近位端にアイレットを含んでもよく、アイレットは、展開のためにカテーテルに容易に装填するのに役立ってもよい。
【0187】
内側ステントと遠位で結合されていない本開示によるレーザ切断された外側ステントは、本開示によるプロテーゼの有利な追従機能にも寄与する。
【0188】
本開示による置換心臓弁プロテーゼは、現場で、埋込み部位における有利な固定につながる有利な半径方向力分布を特徴とする。本開示によるプロテーゼは、心房領域における動きが基本的にないかまたは僅かな動きのみを特徴とする。心室領域では、改良された固定および長期機能に寄与する有利な柔軟性および/または追従性を特徴とする。
【0189】
上記の開示による構成は、潜在的なステント破壊および損傷を起こしやすいステント領域が回避されるという利点も含む。例えば、遠位外側部分または/および端部は、開放した形状を示す。これにより、本開示によるプロテーゼでは、外側遠位ステントが内側ステントの内側遠位部分に結合されている閉鎖構造と比較して、ステント破壊が生じない場合がある。
【0190】
上記のような置換心臓弁プロテーゼは、外側ステントが流出領域、好ましくはその流出端部(遠位端部)におけるセルにループを含むという有利な固定特性を示す。一実施形態では、プロテーゼは、好ましくは、少なくとも2つのアンカリングセル、例えば4~20のアンカリングセルを特徴とする。プロテーゼは、加えて、レーザ切断されたステントの一体部分としてのまたはあらゆる有用な形式でステントに固定されたループを含むこともできる。
【0191】
上記のような置換心臓弁プロテーゼでは、ループは、最も遠位のセルに配置されてもよく、ループは、外方へ突出してもよく、内方への柔軟性を有してもよい。
【0192】
アンカリングを含む本開示による一実施形態は、図B22図B24に示されている。このようなアンカリングセルは、有利には、標的部位における、傷付けない構成形式における置換心臓弁プロテーゼの改良された固定に寄与する。外側ステントの支持セル内に配置されたループは、組織との摩擦および干渉を提供し、これが、埋込み後の標的部位におけるプロテーゼの適切な固定を向上させるという利点を示す。
【0193】
アンカリングセルおよびアンカリングセルに含まれるループの一体性の利点は、付加的な製造ステップにおいて材料または手段の付加が加えられる必要がなく、また、プロテーゼの耐久性の観点からも、プロテーゼの寿命が延長させられる場合があり、潜在的なステント破壊の傾向がない場合があるということである。
【0194】
上記の開示によるループは、加えて、ループが外方を指向し、これにより、ループの固定目的を補助するように形成することができる。
【0195】
外側ステントは、例えば4~20、8~16または10~12のアンカリングセルを含むことができ、アンカリングセルは、プロテーゼの遠位領域または流出端部において周方向に一列に配置されている。アンカリングセルは、例えば、外側ステントにおいて交互の位置に2列で配置することもできる。
【0196】
上記の開示による1つのアンカリングセルは、3~5mmの直径を有することができる。
【0197】
上記の置換心臓弁プロテーゼは、結合手段を用いてまたは例えば溶接などの物理的方法を用いる直接形式においてまたは1つまたは複数の縫合糸、1つまたは複数のねじまたは1つまたは複数のクリッピング手段によって結合された内側ステントおよび外側ステントを有してもよい。
【0198】
外側ステントは、規定された領域または位置においてS字ストラットを含むこともできる。S字ストラットは、結合手段と組み合わされてもよく、1つまたは2つのS字ストラットが、結合手段の各側に配置されてもよい。S字ストラットと結合手段は、置換心臓弁の交連(接合部)が同じレベルにあるのではなく、角度βだけ変位させられるように配置されている。2つの結合手段または/および2つまたは4つのS字ストラットが、置換心臓弁の交連の間に配置されている。これにより、結合手段およびストラットは、有利な耐圧潰性に寄与する。また、これにより、ステントの好ましくない折れ曲がりが防止される場合がある。最後に、置換心臓弁の弁尖の接合機能も、これにより改良または維持される。
【0199】
S字ストラットエレメントは、様々な利点を含む。S字ストラットエレメントは、製造中のより容易な成形を提供する場合があり、送達のためにプロテーゼをカテーテルに装填する際のクリンピング操作中の利点も含む場合がある。さらに、プロテーゼ内の材料張力が減じられ、適時応力が減じられ、疲労挙動が改善される。
【0200】
上記の心臓弁プロテーゼにおいては、クリッピング手段が、相互結合手段およびスリーブのような固定手段により特徴付けられている。
【0201】
1つまたは複数のクリッピング手段を使用することによる内側および外側ステントの結合は自明ではなく、また、心房の領域における前記クリッピング手段の利点および特定の配置も自明ではなかった。前記クリッピング手段をこの領域に配置する発明者の発見は、心拍の間、埋め込まれたプロテーゼが応力にさらされるとき、クリッピング手段が配置された環境が、例えば心臓の心室環境と比較してより少ない応力にさらされるという利点を有する。これは、クリッピング手段がより小さい応力にさらされ、これにより、埋め込まれたプロテーゼの寿命および疲労が、積極的に影響されにくいことを達成することができた。さらに、クリッピング手段は、弁輪領域に配置されることが意図されているプロテーゼの領域を視覚化することを容易にする比較的多量でかつ高密度の材料を有している。これにより、金、タンタル、白金-イリジウムなどの不透明なマーカを必要とせずに、プロテーゼを正しく方向付けかつ配置することができる。
【0202】
有利な実施形態では、内側ステントに配置された置換心臓弁プロテーゼの弁の交連(または弁を支持するポストまたは弁に結合されたポスト)は、結合ストラットまたは/およびクリッピング手段などの結合手段の間に配置されている。
【0203】
これらのプロテーゼ構造は、有利には、所定の距離または角度で配置されてもよい。これにより、プロテーゼの弁尖の最適化された接合を有しかつ非効率的な置換心臓弁プロテーゼ機能を回避することを達成することができる。さらに、このようにして、心拍および組織の動きによる、弁を支持する内側ステントの変形が低減され、可能な限り最小限に保たれる。これは、埋込み後の正しい置換心臓弁プロテーゼ機能にも寄与する。
【0204】
これにより、この構造設計の特徴により、内側ステントの安定性および形状変化の低減に関して協調的または相乗的な効果を達成することができ、内側ステントに結合された弁尖の正しい開閉を補助する。
【0205】
耐圧潰性は、内在の心臓構造および埋め込まれたプロテーゼの機能的に関連する動作に関して最適化されるべきである。本明細書に開示されたプロテーゼによって達成される1つの目標は、埋め込まれたプロテーゼが、内在組織および心拍要求と協調するまたは/かつ有利なコンプライアンス(追従作用)を有し、これにより、本明細書に開示されたプロテーゼは、長期の正しい機能および同時に内在の心臓構造との可能な限り少ない干渉のために安全に配置および固定されるということである。
【0206】
好ましくは結合手段によって互いに結合された2つのレーザ切断されたステントを含む置換心臓弁プロテーゼは、有利には、良好な弁機能を備えた高い耐圧潰性を有する内側ステントの組合せを提供することを達成し、外側ステントは、特に、流出領域において低い耐圧潰性を有し、これにより、有利には、心室心臓領域と僅かにしか干渉しない。これにより、本明細書に開示されるプロテーゼは、内側ステントにおいて高い耐圧潰性を有し、外側ステントにおいて低い耐圧潰性を示す。実際、本開示のプロテーゼの本発明の設計により、外側ステントは、心室形状に大きすぎる影響を与えることなく、自然の内在の心室形状に適応する。
【0207】
内在の心臓組織および構造とのこの積極的な相互作用は、結合ストラットおよびクリッピング手段と組み合わされてもよいS字ストラットなどの上記のエレメントによっても改良される。これらの要素は、交連の特定の配置および配向ともに、有利な機能を提供する。プロテーゼの遠位領域にアンカリングセルを含むことおよびアンカリングセルの傷付けない構成は、組織損傷を低減または回避すると同時に、埋込み後のプロテーゼの改良された固定および長期の固定を可能にする。結合手段の組合せおよび配置は、有利には、本明細書に説明されているように内側ステントの長手方向の動きを回避または制限する。
【0208】
さらに、本明細書に開示されるプロテーゼは、有利な固定特徴および特性を有し、三部構成ステントにおいて、結合ストラットおよび結合ストラットガイドの特定の組合せは、心臓の収縮期収縮中の長手方向動きの制限を提供する。結合ストラット、結合ストラットガイドおよび結合手段の三者結合および内部ステントから近位におけるその配置は、弁が閉鎖されているとき内側ステントの長手方向動きを基本的に防止または制限する。結合ストラットガイドは、アイレット、V字形またはU字形を有することができ、アイレット形状が好ましい。アイレット形状は、有利には、全ての部分を所定の位置に維持し、僅かな動きのみを許容し、置換心臓弁機能中に所定の形状を維持する。
【0209】
本開示の一態様は、内側および外側ステントが4~20、好ましくは6~14、8~18または8~12の結合手段によって結合されている、上記のような置換心臓弁プロテーゼでもある。
【0210】
上記のような置換心臓弁プロテーゼでは、プロテーゼを16~35フレンチ(3フレンチ=1mm)、20~35フレンチまたは25~35フレンチの直径にクリンプすることができる。
【0211】
置換弁は、内側ステントに結合されており、通常、最新技術に従って1つまたは3つのピースで製造されかつ内側ステントに縫合された3つの弁尖から構成されている。材料は、例えばウシまたはブタの心膜、ポリマー材料などのあらゆる公知の有用な材料から選択することができる。材料は、ここでより詳細に説明する必要はない。なぜならば、材料およびそれらの準備は、当技術分野において周知であるからである。プロテーゼは、その機能に適しているため、カバーおよび封止を含んでもよい。
【0212】
外側ステントのサイズが変化する場合があるあらゆるプロテーゼサイズにおいて、置換弁を支持した内側ステントが常に同じ直径および寸法を有してもよく、これは、製造を容易にしかつ製造コストを削減するということは、1つの利点である。
【0213】
本明細書に開示された全ての変化態様および実施形態に共通する1つの有利な概念は、改良された固定特性を有する外側ステントであり、外側ステントは、同時に、内側ステントまたは/および弁形状に関して内側ステントを基本的に変形または衝撃から切り離し、隔離しまたは保護し、これにより、改良された固定特性および改良された置換弁機能を組み合わせる。
【0214】
本開示による、置換心臓弁プロテーゼのレーザ切断されたステント内のレーザ切断ステントの1つの利点は、製造に関して非常に高度なノウハウが存在し、これにより、このようなプロテーゼを極めて費用対効果の高い形式で製造することができるということである。
【0215】
また、製造プロセスは、レーザ切断されたステントを製造するときに容易に制御可能であり、これにより、コストおよび品質管理の観点から、これは利点を含む。
【0216】
本開示は、様々なステント実施形態に関し、この場合、ステントは、外側メッシュステントに結合されたレーザ切断された内側ステントまたはレーザ切断された外側ステントに結合されたレーザ切断された内側ステント(二部構成または三部構成ステント)を特徴とする二部構成ステントであってよく、ここで、外側ステントは付加的な特徴を含んでもよい。本明細書に説明された全ての実施形態および変化態様において、標的部位における改良された固定の目標は、様々な数の特徴または特徴の組合せによって達成される。
【0217】
これにより、本開示は、好ましくは三尖弁または僧帽弁に関して、置換心臓弁の改良された固定の同じ問題を解決する異なる有利な解決手段の変化態様を提供する。さらに、本開示は、その標的部位における置換心臓弁プロテーゼの改良された固定に有用な幾つかの手段を提供することに関する。
【0218】
別の態様では、本開示は、置換心臓弁治療またはその埋込み方法において使用するための、記載された置換心臓弁の使用に関する。本明細書に記載の置換心臓弁プロテーゼは、例えば、患者の三尖弁を交換するために、公知のカテーテル技術を用いて所望の標的部位に送達しかつ埋め込むことができる。送達および展開の経路は、例えば、経大腿(経皮)カテーテル埋込みである。
【0219】
別の態様では、本開示は、プロテーゼが例えば経大腿でカテーテルを使用して送達される、上記の心臓弁プロテーゼの埋込みの方法であって、プロテーゼをカテーテルに装填するステップと、カテーテルを個人に導入するステップと、カテーテル先端部を標的部位へ移動させるステップと、プロテーゼを展開するステップとを含む、方法に関する。
【0220】
別の態様では、本開示は、インターロッキングヨーク、インターロッキング爪または複数の歯およびインターロッキングヨークを特徴とする、ステント用の結合手段であって、インターロッキングヨーク、爪または/および歯、好ましくは、結合ストラットガイドは、2つまたは3つの結合ストラットを好ましくは解離可能な形式で結合する、結合手段に関する。
【0221】
本明細書に記載の封止特徴と組み合わされた上記の付加的なステント構成は、改良された封止特性と組み合わされた改良された固定を本明細書に記載のプロテーゼによって提供することができるという付加的な利点を達成する。
【0222】
本明細書において上記に記載の単一の特徴のそれぞれは、あらゆる可能な形式または組合せで組合せ可能であることが意図されており、特定の特徴組合せにおいて図面または上記の説明に記載の特定の実施形態は前記組合せのみに限定されず、本明細書に記載の特定の実施形態は本開示の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。
【0223】
本開示の基本的な概念は、置換心臓弁、例えば、三尖弁、僧帽弁または肺動脈弁の置換心臓弁における特別な封止概念および設計に関する。この新規の封止概念は、調和した形式で機能しかつ収縮期および拡張期のPVL(弁周囲逆流)を基本的に防止する2つ以上の封止特徴を特徴とする。1つまたは複数の封止特徴のための特定の取付け点I、J、Eおよび/またはKは、収縮期および拡張期の心臓収縮中に有利でかつ調和させられた封止を提供し、同時に、置換弁機能を改善する。
【0224】
この有利な封止の概念は、本明細書に概説されるような多数のステント構成に適用することができる。特に、図面、図面に記載のステント構成および代替的なステント構成を提供する「B」図が参照され、これらは、本明細書に記載の封止特徴と組み合わされたとき本発明の趣旨に十分に当てはまる。
【0225】
これにより、本発明の概念は、置換心臓弁プロテーゼの有利な置換弁機能および耐久性を達成する。本開示による新規の封止概念はさらに、送達のためにカテーテルに装填されたときに有利なクリンピング特性を示す。
【0226】
本開示による封止特徴の一般的な概念は、本明細書に記載のステント構成のいずれかと組み合わせることができる。
【0227】
適用の基礎となる目的は、フレーム、フレームに取り付けられた弁および封止手段を含む心臓弁プロテーゼであって、封止手段が、1つまたは複数の封止特徴を含むまたはそれらから成る、心臓弁プロテーゼによって解決される。
【0228】
原則として、有利な封止特徴は、有利な封止特徴が望ましい当技術分野において公知の異なるステント構成およびタイプと組み合わせることができる。特に、本開示によるプロテーゼは、フレームを含むまたはフレームから成ることができ、フレームは、単一フレーム、二重フレームまたはステント構成におけるステントである。
【0229】
当業者は、金属、ニチノール、プラスチック、ポリマーなどの様々な材料を適用し、本開示による有利な封止と組み合わせることができることを理解するであろう。一実施形態では、本開示によるプロテーゼは、フレームを有し、フレームは、ポリマー材料、金属または/およびニチノール材料から形成されているまたはそれらを含む。特に、本開示によるプロテーゼは、鋳造された、レーザ切断されたまたは/かつ編組メッシュであるフレーム材料を有する。
【0230】
本開示によるプロテーゼでは、フレームは、好ましくは互いに、好ましくは縫合によって取り付けられた内側フレームおよび外側フレームから構成することができ、内側フレームはレーザ切断されたニチノールチューブであり、外側フレームは編組ニチノールメッシュであるかまたは内側と外側ステントはレーザ切断されたニチノールステントである。
【0231】
本開示によるプロテーゼの弁は、あらゆる有用な材料およびプロテーゼの他の特徴および材料と組合せ可能な材料から形成することができ、例えば、弁は、好ましくはウシまたはブタ由来の心膜組織でから形成されているまたはそれらを含む。
【0232】
特に重要なのは、複数の封止特徴とそれらの相互作用、およびステント構成部材とプロテーゼのフレーム内でのそれらの配置である。一態様では、本開示によるプロテーゼは、封止特徴を含むまたは包含し、第1の封止特徴は、プロテーゼの流入領域、例えば心房領域における封止カバーであり、第2の封止特徴は、プロテーゼの流出領域、例えば心室領域における封止カバーである。
【0233】
流入および流出封止特徴は、互いに取り付けられた複数の別個の部分であってよいかまたは1つのユニットとして形成することができる。
【0234】
本開示によるプロテーゼは、複数の封止特徴を有し、複数の封止特徴は、フレームに取り付けるための特定の取付け点または領域を特徴とする。
【0235】
本開示によるプロテーゼが、例えば図にI、E、Jまたは/およびKとして示したように、特定の取付け点または領域においてフレームに取り付けられた複数の封止部分を有すると有利であることが示されている。
【0236】
複数の封止特徴と、それらの特別な構成および寸法との相互作用は、プロテーゼの機能、その封止特性、およびカテーテルへの容易な装填機能にとって、ならびにリード中の封止特徴の損傷を回避するために、有利であることが証明された。一態様では、本開示によるプロテーゼは、取付け点IからKまでの距離が12~30mm、例えば約15~26mmの範囲であり、取付け点KからJまでの距離が12~30mm、例えば約15~26mmの範囲であり、好ましくは、距離IKとJKとが基本的に等しくなるように設計されている。
【0237】
本開示によるプロテーゼでは、プロテーゼのフレーム内の複数の封止特徴の組合せおよび配置により、封止特性が有利である。これは有利であり、封止特徴の長さと、1つの固定点から他の固定点までの規定された距離との比で設計することができ、例えば、距離I~K:距離K~Jの比は、約0.5~1.2、好ましくは1である。
【0238】
本開示によるプロテーゼの封止特徴は、異なる弁タイプにおいて適用することができ、プロテーゼは、大動脈弁プロテーゼ、僧帽弁プロテーゼ、肺動脈弁プロテーゼまたは三尖弁プロテーゼであってよい。
【0239】
本開示によるプロテーゼは、有利なクリンピング動作も特徴とし、これにより、プロテーゼを有利な直径にクリンプすることができ、プロテーゼは、クリンプされた状態において13~35、15~30フレンチ、好ましくは16~18フレンチの外径を有することができる。プロテーゼが、クリンプされた状態において35フレンチ以下の外径を有すると有利である。
【0240】
本開示によるプロテーゼにおいて、封止特徴は、収縮期および拡張期の間のPVLを基本的に防止し、これは、有利には、適切かつ長期の弁機能およびプロテーゼ耐久性を補助する。
【0241】
別の態様では、本開示は、心臓弁疾患または心臓弁障害、例えば、心臓弁不全、心臓弁狭窄または逆流の治療において使用するための、本明細書に開示された心臓弁プロテーゼに関する。
【0242】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示されたプロテーゼの低侵襲埋込みの方法に関し、プロテーゼは、デリバリシステムに装填され、デリバリシステムは、経心尖、経大腿、経頸静脈、経心房的に患者に導入され、プロテーゼは標的部位において展開される。
【0243】
本開示は、有利な封止特性および有利な置換弁機能を備えた置換心臓弁プロテーゼを提供する。この置換心臓弁プロテーゼは、さらに、より良好な血行力学(動態)により、血栓症のより少ないリスクおよびより良好な長期機能という利点を含む。開示された置換心臓弁プロテーゼは、血栓症の発生に積極的影響を与える心臓機能中の準最適な血流により公知の装置において発生する渦流、乱流、せん断力およびせん断応力を低減する。さらに、本開示によるプロテーゼの患者への影響も、それ自体のより良好な置換機能により観察され、基本的にPVLを回避する。
【0244】
全体的な置換弁機能の改良および本開示による置換心臓弁プロテーゼによる基本的にPVLの回避は、置換心臓弁プロテーゼのみならず、全体的な心臓状態および生理学的パラメータにも積極的な影響を与えるであろう。これにより、開示されたプロテーゼは、特に、弁の開閉、圧力勾配、全体的な弁機能、全体的な心臓状態および置換心臓弁プロテーゼ耐久性に関して改良を提供する。
【0245】
本明細書に記載の単一の特徴のそれぞれは、あらゆる可能な形式または組合せで組合せ可能であることが意図されており、特定の特徴組合せにおいて図面または上記の説明に記載された特定の実施形態は、前記組合せのみに限定するものと解されるべきではなく、本明細書に記載の特定の実施形態は、本開示の範囲を限定することを意図したものではないことが理解されよう。
【符号の説明】
【0246】
1 編組ニチノールステント(メッシュステント)
2 レーザ切断されたニチノールステント
3 流入封止カバー
4 流出封止カバー
5 置換弁
6 ステントを一緒に保持するための縫合糸
7 スタビライザ
8 ループ
9 カテーテルシート
10 クリンプされた直径
11 流入(近位)フランジ
12 弁輪に整列したプロテーゼ部分
13 Z字リング
14 結合手段
A 大動脈弁
P 肺動脈弁
M 僧帽弁
T 三尖弁
AN 弁輪
MA 僧帽弁輪
AVN 房室結節
S 中隔
CS 冠状静脈洞
po 後部
an 前部
Co 心周期壁運動に対する編組ステントの追従
CW 心臓壁
NL 生来の弁尖
Ch 腱索
PVL 弁周囲逆流
S 外側ステント(編組メッシュステント)と埋込み部位との間の接触面
S1 表面1
S2 表面2
BF 血流
SBF 収縮期血流
DBF 拡張期血流
SPS 収縮期中の封止圧力
SPD 拡張期中の封止圧力
I,J,E ステント(外側ステント/編組ステント)を備える封止カバー取付け点
K 封止カバー取付け点(1つのカバーがIとJとの間に結合されている場合)
A,B,C,D,F 規定されたステントポイント
「B」図の参照番号リスト
1 ワイヤ編組外側ステント(メッシュステント)
2 レーザ切断された内側ステント
3 スタビライザ(例えば、V字溝の下側の付加的なワイヤおよび/またはねじれワイヤ)
4 ループ
5 外側メッシュ
6 内側メッシュ
7 カテーテル
8 S字ストラット
9 インターロッキング爪
10 スリーブ
11 レーザ切断された外側ステント
11a レーザ切断された近位の外側ステント(ステント部分)
11b レーザ切断された遠位の外側ステント(ステント部分)
12,12’ 結合ストラット
13 結合内側/外側ステント
14 インターロッキング歯
15 アンカリングセル
16 V字溝
17 結合ストラットガイド
18 インターロッキングヨーク
19 結合手段
20 近位領域
21 交連
22 遠位領域
23 中間領域
24 弁尖
25 ループストラット
26 RFストラット
27 Z字リング
28 折れ曲がり
29 右心室
30 三尖弁
31 弁輪
32 腱索
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25-B1a】
図25-B1b】
図25-B2a】
図25-B2b】
図25-B3a】
図25-B3b】
図25-B4】
図25-B5a】
図25-B5b】
図25-B6a】
図25-B6b】
図25-B7】
図25-B8】
図25-B9】
図25-B10】
図25-B11】
図25-B12】
図25-B13】
図25-B14a)】
図25-B14b)】
図25-B14c)】
図25-B15a)】
図25-B15b)】
図25-B16】
図25-B17】
図25-B18】
図25-B19】
図25-B20】
図25-B21】
図25-B22】
図25-B23】
図25-B24】
図25-B25a)】
図25-B25b)】
図25-B26】
図25-B27】
図25-B28】
図25-B29a)】
図25-B29b)】
図25-B29c)】
図25-B29d)】
図25-B29e)】
図25-B29f)】
図25-B30】
【手続補正書】
【提出日】2024-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテーゼであって、フレームと、該フレームに取り付けられた弁と、封止手段とを含み、前記封止手段は、2つ以上の封止特徴を含むかまたは2つ以上の封止特徴から成る、プロテーゼ。
【外国語明細書】