(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016040
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】去勢抵抗性前立腺癌
(51)【国際特許分類】
C07K 7/02 20060101AFI20240130BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240130BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240130BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20240130BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240130BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20240130BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240130BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240130BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C07K7/02
C12N15/11 Z ZNA
A61P35/00
A61P13/08
A61K31/713
A61K47/65
A61K47/60
A61K47/59
A61K48/00
A61K35/17
A61P37/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023177018
(22)【出願日】2023-10-12
(62)【分割の表示】P 2020517546の分割
【原出願日】2018-09-27
(31)【優先権主張番号】17193577.8
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17201728.7
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519072970
【氏名又は名称】ターグイミューン セラピューティクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ポンボ-ビラ, エステバン
(72)【発明者】
【氏名】レヴィツキ, アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ラングット, ヤエル
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー, マヤ
(72)【発明者】
【氏名】シーラー, アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】キタス, エリック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療における使用のためのポリプレックスを提供する。
【解決手段】ポリマー接合体は線状ポリエチレンイミン(LPEI)、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分、1つ以上のリンカー、および1つ以上の標的化部分からなり、該LPEIは1つ以上のPEG部分に共有結合し、該1つ以上のPEG部分の各々が該1つ以上のリンカーのうちの1つを介して該1つ以上の標的化部分のうちの1つに接合し、該1つ以上の標的化部分の各々が癌抗原に結合することができ、該癌抗原は前立腺表面膜抗原(PSMA)である。さらに、本発明はCRPCの治療において使用するための医薬組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖RNA(dsRNA)およびポリマー接合体を含む、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療における使用のためのポリプレックスであって、
前記ポリマー接合体は、線状ポリエチレンイミン(LPEI)、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分、1つ以上のリンカー、および1つ以上の標的化部分からなり、
前記LPEIは1つ以上のPEG部分に共有結合し、前記1つ以上のPEG部分の各々が前記1つ以上のリンカーのうちの1つを介して前記1つ以上の標的化部分のうちの1つに接合し、
前記1つ以上の標的化部分の各々が、癌抗原に結合することができ、
前記癌抗原が前立腺表面膜抗原(PSMA)である、使用のためのポリプレックス。
【請求項2】
前記dsRNAが、ポリイノシン-ポリシチジン酸二本鎖RNA(polyIC)である、請求項1に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項3】
前記LPEIが、1つのPEG部分(LPEI-PEG 1:1)に共有結合しているかまたは3つのPEG部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合している、請求項1または2に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項4】
前記リンカーがペプチド部分であり、前記ペプチド部分が3~7個のアミノ酸残基からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項5】
前記ペプチド部分がアミノ酸残基-(NH-(CH2)7-CO)-を含む、請求項4に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項6】
前記ペプチド部分が、
-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)、または
-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)である、請求項5に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項7】
前記ポリマー接合体が式(a)、(b)、(c)または(d)から選択され、
(a)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG-LPEI、
(b)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG-LPEI、
(c)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG]3-LPEI、または
(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEI、
前記Tが前記標的化部分を表す、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項8】
前記ポリマー接合体が式(i)、(ii)、(iii)および(iv)からなる群より選択され、
式中、R1は以下であり、
式中、R2は以下であり、
式中、R1は以下であり、
式中、R2は以下であり、
前記Tは前記標的化部分を表し、
nは40~45である、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項9】
前記標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA部分)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項10】
CRPCが非転移性CRPCまたは転移性CRPCであり、好ましくはCRPCが転移性CRPCである、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項11】
前記CRPCがアンドロゲン受容体(AR)非依存性CRPCまたはAR依存性CRPCであり、好ましくは前記CRPCがAR非依存性CRPCである、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のためのポリプレックス
【請求項12】
前記アンドロゲン受容体(AR)非依存性CRPCが神経内分泌前立腺癌である、請求項11に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項13】
前記ポリプレックスが免疫細胞と組み合わせて使用される、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項14】
前記免疫細胞が、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)、腫瘍特異的改変T細胞、および末梢血単核球(PBMC)からなる群より選択される、請求項13に記載の使用のためのポリプレックス。
【請求項15】
去勢抵抗性前立腺癌の治療において使用するための医薬組成物であって、薬学的に許容される担体および請求項1~14のいずれか1項に記載のポリプレックスを含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前立腺癌治療の分野に関する。具体的には、本発明は、ポリプレックスおよび当該ポリプレックスを含む医薬組成物に関し、それらはいずれも、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療における使用のためのものである。該ポリプレックスは、二本鎖RNA(dsRNA)およびポリマー接合体を含み、該ポリマー接合体は線状ポリエチレンイミン(LPEI)、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分、1つ以上のリンカー、および1つ以上の標的化部分からなり、該LPEIは該1つ以上のPEG部分に共有結合し、該1つ以上のPEG部分の各々が該1つ以上のリンカーのうちの1つを介して該1つ以上の標的化部分のうちの1つに接合し、該1つ以上の標的化部分の各々が癌抗原に結合することができ、該癌抗原は前立腺表面膜抗原(PSMA)である。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は世界的に男性で2番目に最も一般的に診断される種類の癌であると考えられる。放射線または外科手術による治療後に生化学的な再発が診断される場合、観察またはアンドロゲン除去療法(ADT)のいずれかが標準的治療である。アンドロゲン除去による治療は短期寛解を達成するには非常に効果的であるが、ほとんどの患者はこの治療に抵抗性となり、疾患が進行し、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)を発症する(Luo et al.,Treatment of Nonmetastatic Castration-Resistant Prostate Cancer,Oncology 2016,30(4):336-44、Kumar et al,Design of a Small-Molecule Drug Conjugate for Prostate Cancer Targeted Theranostics,Bioconjugate Chem.2016,27:1681-1689)。
【0003】
転移性の去勢抵抗性前立腺癌を有する男性の緩和管理のために、ドセタキセルおよびプレドニソンは、寛容性に加えて生存の延長、腫瘍応答、疼痛減少および改善された生活の質に基づいて、アメリカ食品医薬品局(FDA)によって2004年に承認された(Tannock et al,Docetaxel plus prednisone or mitoxantrone plus prednisone for advanced prostate cancer,N Engl J Med.2004,351(15):1502-12)。ドセタキセルの承認にもかかわらず、無増悪生存期間の平均は依然として約6ヶ月であり、全体的な生存期間は化学療法を行って2年未満である(Bellmunt et al.,Castration-resistant prostate cancer:new science and therapeutic prospects,Ther Adv Med Oncol 2010,2(3):189-207)。
【0004】
FDAが第2相の転移性去勢抵抗性前立腺癌の治療として2010年にカバジタキセルを承認したので、さらなる進歩は見られた。しかしながら、多剤耐性および細胞傷害性剤の安全性の心配のために、前立腺癌の化学療法はなお望ましくないようである(Kumar et al.,2016、前掲)。
【0005】
救済化学療法の分野の努力は、プラチナ製剤および新規の微小管標的化剤を含む数種類の細胞傷害性剤に焦点を当ててきた。しかしながら、プラチナ製剤サトラプラチンのようなもともと有望な物質では統計的に有意な利益を欠いており、このことはこの疾患の化学療法単独の興味を減少させてきた。このことは、標的化剤単独または化学療法と組み合わせる方向への理論的根拠をつくる(Bellmunt et al,2010、前掲)。
【0006】
いくつかの治験薬は、前立腺癌の病原性、維持および進行の経路を標的化する。これらは、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ/(PI3K)/Akt、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)、およびインスリン様成長因子(IGF)-1経路を標的化する治療法を含む。前臨床的証拠がこれらの分子的経路の重要性を支持するとしても、ほとんどのこれらの薬物の臨床試験は未成熟なままである(Bellmunt et al,2010、前掲)。
【0007】
いくつかの小分子薬物接合体が報告されており、その中には前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的化するものもある。PSMAは、正常な前立腺と比べて、前立腺癌細胞によって非常に高い割合で発現される細胞表面糖タンパク質である(Silver et al.,1997,Prostate-specific membrane antigen expression in normal and malignant human tissues,Clin.Cancer Res.3,81-85)。
【0008】
前立腺癌の標的画像化および化学療法のための小分子薬物接合体(T-SMDC)のセラノスティクデザインが開発された。ポリエチレングリコール(PEG)足場上に構築されたT-SMDCの構造は、(i)68Gaの陽電子放出放射性同位体で標識された時の陽電子放出断層撮影(PET)画像化のためのキレート部分、(ii)前立腺癌標的化のための前立腺特異的膜抗原(PSMA)特異的リガンド、および(iii)化学療法のための細胞傷害性剤(DM1)からなる。概念実証のために、例えばT-SMDC、NO3A-DM1-Lys-Urea-Gluが合成され、評価された(Kumar et al.,2016、前掲)。
【0009】
PEI、PEGおよび標的化部分のポリプレックスを用いるdsRNA(PEI-PEG-標的化部分/dsRNAポリプレックス)の標的化送達が開発された。これらの接合体の標的化部分は、上皮成長因子受容体(EGFR)、ヒト上記成長因子受容体2(HER2)、前立腺表面膜抗原(PSMA)、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)または線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)であり得る癌抗原に結合する(WO 2015/173824)。
【0010】
したがって、去勢抵抗性前立腺癌の効果的な治療法の強い必要性がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、本明細書にこの要件を満たす新しい手法を提示し、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療を提供する。
【0012】
第1の態様では、本発明は、二本鎖RNA(dsRNA)およびポリマー接合体を含む去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療において使用するためのポリプレックスであって、該ポリマー接合体は、線状ポリエチレンイミン(LPEI)、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分、1つ以上のリンカー、および1つ以上の標的化部分からなり、該LPEIは該1つ以上のPEG部分に共有結合し、該1つ以上のPEG部分の各々は該1つ以上のリンカーの1つを介して該1つ以上の標的化部分の1つに接合し、該1つ以上の標的化部分の各々は癌抗原に結合することができ、該癌抗原は前立腺表面膜抗原(PSMA)である、使用のためのポリプレックスに関する。
【0013】
第2の態様では、本発明は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療において使用するための医薬組成物であって、薬学的に許容される担体、および二本鎖RNA(dsRNA)およびポリマー接合体を含む本発明のポリプレックスを含み、該ポリマー接合体は、線状ポリエチレンイミン(LPEI)、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分、1つ以上のリンカー、および1つ以上の標的化部分からなり、該LPEIは該1つ以上のPEG部分に共有結合し、該1つ以上のPEG部分の各々は該1つ以上のリンカーの1つを介して該1つ以上の標的化部分の1つに接合し、該1つ以上の標的化部分の各々は癌抗原に結合することができ、癌抗原は前立腺表面膜抗原(PSMA)である、医薬組成物に関する。
【0014】
本発明者らは驚くべきことに、本発明のポリプレックスがCRPCに効果的な治療であることを見出した。
【0015】
標的化されたポリプレックスは、polyIC等のdsRNAの、CRPCの組織に含まれたPSMA過剰発現細胞への選択的送達を許容する。DsRNA特にポリイノシン-ポリシトシン(ポリイノシン-ポリシチジル酸二本鎖RNA、polyIC)は、細胞系の複数の死亡経路を活性化する。癌細胞への取り込み後に、polyICはアポトーシスを誘導し、標的化癌細胞の急速かつ効果的なクリアランスをもたらす。さらに、polyICは、標的化細胞のならず、非標的化隣接腫瘍細胞を殺す、腫瘍に対する免疫系を活性化する「バイスタンダー効果」を誘導する。
【0016】
両効果の組み合わせは、CRPCを有する患者の強力な治療を提供し、これは異種の腫瘍の退行をもたらし、薬物耐性の発症を防ぐ。しかしながら、ネイキッドdsRNAおよび特にpolyICは、高い毒性を有し、それ自体、全身性用途には好適でない。
【0017】
そのため、発明者らは、polyIC等のdsRNAの、PSMA過剰発現細胞への選択的送達のための標的化ポリプレックスを開発した。CRPC標的としてのPSMAを用いて、dsRNAを含む本発明のポリプレックスは、高度にPSMAを過剰発現するCRPC細胞および組織に直接的かつ選択的に送達される。前立腺癌の初期段階と比べて、PSMA発現は高いステージの癌、転移性疾患およびホルモン不応性前立腺癌でさらに増加する。さらに、PSMA発現は、アンドロゲンレベルによって不可逆的に調節される(Liu et al.,Constitutive and Antibody- induced Internalization of Prostate- specific Membrane Antigen,Cancer Research 1998,58,4055-4060)。したがって、標的としてPSMAを用いることは、本発明のポリプレックスのCRPC細胞への選択的送達を許容する。
【0018】
polyICは全身的に投与されると非常に毒性が高いので、その使用は狭い治療濃度域に限定される。dsRNAをCRPC細胞に選択的に標的化することによって、その能力を利用することができ、同時に全身的使用で典型的に受ける毒性を避ける。さらに、標的化送達は、非常に低用量が使用できるとの利点を提供し、これはpolyICの寛容性も改善する。
【0019】
本発明のポリプレックスは、polyICのCRPC細胞への選択的送達および内在化を許容し、アポトーシスを誘導し、サイトカイン分泌および免疫細胞(ヒト末梢血単核球、PBMC)の補充を許容する。アンドロゲン抵抗性前立腺癌のインビボ腫瘍モデルでは、腫瘍過剰発現PSMAを有する部分的に再構築された免疫系を有するNOD-SCIDマウスは、polyICを含む本発明のPSMA標的化ポリプレックスで処置した。腫瘍成長は、本発明のポリプレックスの投与後に妨げられたかまたは退行した。したがって、本発明者らは、本発明のポリプレックスがCRPCの治療に顕著な効果を有することを示した。
【0020】
証明されたインビボおよびインビトロ効果は、本発明のポリプレックスがCRPC組織に送達されるのみならず、本発明のポリプレックスの設計が、CRPC組織を透過し、CRPC細胞に内在化し、CRPC細胞に対する抗腫瘍効果を有するようになされている、との結論を導いた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】A.DUPA-ペプチドリンカーの構造、B.DUPA-ペプチドリンカー-Dylight680接合体のPSMA過剰発現細胞への選択的取り込み。DUPA-ペプチドリンカー-Dylight680で処置後の培養されたPC3-PSMAおよびLNCaP細胞または対照細胞MCF7の顕微鏡画像(レーザー走査型共焦点蛍光顕微鏡による視覚化)。蛍光Dylight680のシグナルを白で示す。
【
図1B】A.DUPA-ペプチドリンカーの構造、B.DUPA-ペプチドリンカー-Dylight680接合体のPSMA過剰発現細胞への選択的取り込み。DUPA-ペプチドリンカー-Dylight680で処置後の培養されたPC3-PSMAおよびLNCaP細胞または対照細胞MCF7の顕微鏡画像(レーザー走査型共焦点蛍光顕微鏡による視覚化)。蛍光Dylight680のシグナルを白で示す。
【
図2A】PPD/polyICでの処置で起こったPSMA過剰発現細胞中における選択的細胞死およびアポトーシス。 A.LNCaP、VCaP、PC3-PSMA、PC3およびMCF7細胞を、PPD/polyICに含まれた0.1μg/ml、0.25μg/ml、0.5μg/mlまたは1μg/mlのpolyICで処置した。対照:PPD/polyIまたはpolyIC単独で処置、あるいは非処置(UT)。CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)による処置の開始後96時間での細胞生存率の測定(***P≦0.001 LNCaPまたはVCaPまたはPC3-PSMA対MCF7またはPC3、****P≦0.001 1μg/ml PPD/polyIC対1μg/ml PPD/polyIまたは1μg/ml polyIC単独)。
【
図2B】B.LNCaP細胞をPPD/polyICで処置した。表示の濃度はPPD/polyICに含まれたpolyICを指す。CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)による細胞生存性の測定。
【
図2C】C.PPD/polyICでの処置によるアポートーシスシグナル伝達経路の活性化。LNCaP細胞からの全細胞溶解物をPPD/polyIC(2μg/ml polyIC)で処置し、開裂/完全長カスパーゼ3、開裂/完全長PARP3およびGAPDHの発現レベルをウェスタンブロットで検出した。
【
図3A】PPD/polyICでの処置による前炎症性および細胞障害性サイトカインの分泌。48時間および72時間(A)、(B)または4時間および8時間(C)のPPD/polyICでのLNCaPおよびPC3-PSMA細胞の処置。表示の濃度はPPD/polyICに含まれたpolyICを指す。ランテスのタンパク質レベルの測定(活性化の調節、発現および分泌された正常T細胞)(A)、およびELISAアッセイによるIL-10の測定(B)およびqRT-PCRによるIFN-β mRNAの測定(C)。
【
図3B】PPD/polyICでの処置による前炎症性および細胞障害性サイトカインの分泌。48時間および72時間(A)、(B)または4時間および8時間(C)のPPD/polyICでのLNCaPおよびPC3-PSMA細胞の処置。表示の濃度はPPD/polyICに含まれたpolyICを指す。ランテスのタンパク質レベルの測定(活性化の調節、発現および分泌された正常T細胞)(A)、およびELISAアッセイによるIL-10の測定(B)およびqRT-PCRによるIFN-β mRNAの測定(C)。
【
図3C】PPD/polyICでの処置による前炎症性および細胞障害性サイトカインの分泌。48時間および72時間(A)、(B)または4時間および8時間(C)のPPD/polyICでのLNCaPおよびPC3-PSMA細胞の処置。表示の濃度はPPD/polyICに含まれたpolyICを指す。ランテスのタンパク質レベルの測定(活性化の調節、発現および分泌された正常T細胞)(A)、およびELISAアッセイによるIL-10の測定(B)およびqRT-PCRによるIFN-β mRNAの測定(C)。
【
図4A】PPD/polyICでの処置によるヒトPBMCの走化性および活性化。表示濃度はPPD/polyICに含まれたpolyICを指す。A.走化性インデックス:(i)処置細胞由来の調整培地の存在下で移動した細胞数の、(ii)非処置細胞由来の調整培地の存在下で移動した細胞数に対する比。B.処置LNCaP細胞由来の調整培地でインキュベート後のPBMC中のIL2、TNF-αおよびINF-γ mRNA発現の測定。PPD/polyICで48時間処置したLNCaP細胞由来の調整培地で24時間インキュベート後のPBMCからの総細胞RNAの単離。qRT-PCRによるRNA定量化。HUPOのmRNAレベルへの標準化。
【
図4B】PPD/polyICでの処置によるヒトPBMCの走化性および活性化。表示濃度はPPD/polyICに含まれたpolyICを指す。A.走化性インデックス:(i)処置細胞由来の調整培地の存在下で移動した細胞数の、(ii)非処置細胞由来の調整培地の存在下で移動した細胞数に対する比。B.処置LNCaP細胞由来の調整培地でインキュベート後のPBMC中のIL2、TNF-αおよびINF-γ mRNA発現の測定。PPD/polyICで48時間処置したLNCaP細胞由来の調整培地で24時間インキュベート後のPBMCからの総細胞RNAの単離。qRT-PCRによるRNA定量化。HUPOのmRNAレベルへの標準化。
【
図5A】PPD/polyICによる処置によって起こったバイスタンダー効果。細胞をPPD/polyICで処置し、表示濃度はpolyICの表示濃度でのPPD/polyICに含まれたpolyICを指す。ルシフェラーゼアッセイ(Promega)による細胞生存率の測定。 A.PPD/polyICの低用量によるLNCaP細胞のクリアランス。処置開始後24時間、PBMCまたは細胞培地のみをさらに48時間または72時間、培地に加えた。
【
図5B】BおよびC.直接およびPBMC-介在バイスタンダー効果によってPPD/polyICでの処置によって誘導された非標的化細胞の死。PPD/polyICによる培養LNCaP細胞またはPC3-PSMA細胞の処置。処置開始後24時間、PC3-Luc細胞またはMCF7-Luc細胞を培地に加え、PBMCまたは細胞培地のみを6時間後に培地に加えた。共培養物をさらに72時間インキュベートした。
【
図5C】BおよびC.直接およびPBMC-介在バイスタンダー効果によってPPD/polyICでの処置によって誘導された非標的化細胞の死。PPD/polyICによる培養LNCaP細胞またはPC3-PSMA細胞の処置。処置開始後24時間、PC3-Luc細胞またはMCF7-Luc細胞を培地に加え、PBMCまたは細胞培地のみを6時間後に培地に加えた。共培養物をさらに72時間インキュベートした。
【
図6】PPD/polyIC処置によるインビボモデルでのアンドロゲン抵抗性前立腺癌におけるPSMA過剰発現腫瘍の後退。腫瘍担持マウスにPPD/polyIC単独、PBMC単独またはPPD/polyICおよびPBMCで注射した(***P≦0.001、PPD/polyIC+PBMC処置対非処置マウス。**P≦0.01、PPD/polyIC+PBMC処置対PPD/polyIC単独)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の態様では、本発明は、二本鎖RNA(dsRNA)およびポリマー接合体を含む去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療において使用するためのポリプレックスであって、該ポリマー接合体は、線状ポリエチレンイミン(LPEI)、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分、1つ以上のリンカー、および1つ以上の標的化部分からなり、該LPEIは該1つ以上のPEG部分に共有結合し、該1つ以上のPEG部分の各々は該1つ以上のリンカーの1つを介して該1つ以上の標的化部分の1つに接合し、該1つ以上の標的化部分の各々は癌抗原に結合することができ、癌抗原は前立腺表面膜抗原(PSMA)である、使用するためのポリプレックスに関する。
【0023】
本発明のポリプレックスは、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療方法において使用するためのものであり、該ポリプレックスは、二本鎖RNA(dsRNA)およびポリマー接合体を含み、該ポリマー接合体は、線状ポリエチレンイミン(LPEI)、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分、1つ以上のリンカー、および1つ以上の標的化部分からなり、該LPEIは該1つ以上のPEG部分に共有結合し、該1つ以上のPEG部分の各々は該1つ以上のリンカーの1つを介して該1つ以上の標的化部分の1つに接合し、該1つ以上の標的化部分の各々は癌抗原に結合することができ、癌抗原は前立腺表面膜抗原(PSMA)である。
【0024】
生化学的な再発、すなわち前立腺特異的抗原(PSA)の上昇レベルが放射線または外科手術による治療の試行後に起こる場合には、観察またはアンドロゲン除去療法(ADT)のいずれかが治療の標準である。前立腺癌は1940年代の独創的研究においてアンドロゲン依存性であることが最初に示され、それ以降、前立腺癌細胞のアポトーシスおよび成長阻害をもたらすADTは進行した前立腺癌を治療するために必須となっている。外科手術または医薬的のいずれかである去勢は、<50ng/dLの血漿テストステロンレベルをもたらす。前立腺癌は、血漿PSAレベルが上昇する時点および/または転移が現れる時点で、<50ng/dLの血漿テストステロンレベルにもかかわらず、最終的にはほとんどすべての患者においてADTに抵抗性である(Luo et al,2016、前掲)。
【0025】
本明細書で使用される用語「去勢抵抗性前立腺癌」(CRPC)は典型的におよび好ましくは<50ng/dLの血漿テストステロンレベル、および上昇する前立腺特異的抗原(PSA)レベルおよび/または検出可能な転移(metastasis)または転移(metastases)によって定義される。
【0026】
検出可能な転移(metastasis)または転移(metastases)は、好ましくは臨床的にまたは画像化技術によって検出される。好ましい画像化技術は、X線撮影法、コンピュータ断層撮影法(CT)または核磁気共鳴画像法(MRI)である。
【0027】
PSAレベルは好ましくは患者の血液または血清試料に基づいて試験され、好ましくは遊離のおよび結合されたPSAの合計である総PSAが検出される。PSAレベルの測定は、典型的にはおよび好ましくは当業者に周知である標準的なPSA試験を用いて行われる。好ましくは、このような標準的なPSA試験は、免疫検定、より好ましくは化学ルミネセンス免疫検定、さらにより好ましくは例えばRoche MODULAR E170を採用することによって行われる電気化学発光免疫検定である。本明細書で使用される上昇PSAの定義は、Prostate Cancer Working Group 2(PCWG2)に由来し、最下点から25%の増加であって、2ng/mLの最小上昇のあるものを言い、その値は2回測定され、第1の値は第2の値によって確認されなければならず、典型的におよび好ましくは第1の値後1~3週で得られる。
【0028】
血清テストステロンレベルは好ましくは患者の血液または血清試料に基づいて試験され、好ましくは総テストステロンレベルが検出される。テストステロンレベルの測定は、典型的にはおよび好ましくは当業者に周知である標準的な試験を用いて行われる。好ましくは、このような標準的な試験は、ELISA、化学ルミネセンス免疫検定、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)またはLC-MS/MSである。
【0029】
好ましい態様において、該CRPCは、<50ng/dLの血清テストステロンレベルおよび検出可能な転移(metastasis)または転移(metastases)によって定義される。より好ましい態様において、CRPCは、<50ng/dLの血清テストステロンレベルおよび上昇する前立腺特異的抗原(PSA)レベルの存在によって定義される。
【0030】
CRPCを有する患者の画層化試験によって転移性傷害が検出され得ない場合には、この病態は、本明細書では好ましくはおよび典型的に「非転移性去勢抵抗性前立腺癌」(nmCRPC)と定義される。CRPCを有する患者の画層化試験によって転移が検出され得る場合には、この病態は、本明細書では好ましくはおよび典型的に「転移性去勢抵抗性前立腺癌」(nmCRPC)と定義される。画層化試験は、典型的におよび好ましくは核医学テクネチウム-99mシンチグラフィ(骨スキャン)ならびに胸、腹部および骨盤のコンピュータ断層撮影(CT)である(Luo et al,2016、前掲)。nmCRPCは、二次的ホルモン操作に応答するホルモン感受性nmCRPCおよびホルモン治療に抵抗性であるホルモン不応性nmCRPCを含む。
【0031】
好ましい実施形態では、該CRPCは非転移性CRPCまたは転移性CRPCである。好ましくは、該CRPCは転移性CRPCである。別の実施形態では、該CRPCは非転移性CRPCである。
【0032】
好ましい実施形態では、該CRPCは、アンドロゲン受容体(AR)非依存性(AR抵抗性とも称される)CRPCまたはAR依存性CRPCである。より好ましくは、該CRPCは神経内分泌前立腺癌等のAR非依存性CRPCである。
【0033】
AR依存性CRPCは、好ましくはアンドロゲン感受性CRPCと定義される。AR依存性CRPCは、アンドロゲンの全身性除去にもかかわらず、好ましくはARシグナル伝達軸に依存性であり続ける。
【0034】
AR非依存性CRPCは、好ましくはアンドロゲン治療に抵抗性(すなわち、非感受性)であると定義される。
【0035】
本発明の使用のためのポリプレックスは、核酸分子のポリアニオン性のために核酸分子と非共有結合的に縮合および会合する能力を有する線状ポリカチオンである線状ポリエチレンイミン(LPEI)を含む。好ましい実施形態において、LPEIはLPEIの1端または両端にヒドロキシル基を含む。好ましくは、該ヒドロキシル基はLPEIの末端-NH2基の代わりである。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、LPEIは約10~30kDaの分子量を有する。より好ましくは、LPEIは約22kDaの分子量を有する。
【0037】
本発明の使用のためのポリプレックスは、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分を含む。本発明のPEG部分は、その分子量によって、ポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)部分としても知られる。本明細書で使用される用語「ポリエチレングリコール部分」(PEG部分)は、典型的におよび好ましくはポリエチレングリコール(PEG)の両端に2つの官能基を含むPEG部分を指す。該官能基は該LPEIまたは該標的化部分のいずれかと反応することができる。
【0038】
本発明の1つの実施形態では、該少なくとも1つの該PEG部分の各々は、約2~8kDa、好ましくは2kDaの分子量を有する。
【0039】
好ましい実施形態では、LPEIは約10~30kDaの分子量を有し、該少なくとも1つのPEG部分は約2~8kDaの分子量を有する。より好ましい実施形態では、LPEIは22kDaの分子量を有し(LPEI22k)、該少なくとも1つのPEG部分は2kDaの分子量を有する(PEG2K)。
【0040】
好ましい実施形態では、LPEI22kは1つのPEG2K部分または3つのPEG2K部分に共有結合する。別の好ましい実施形態では、LPEI22kは1つのPEG2Kに共有結合する。さらに好ましい実施形態では、LPEI22kは3つのPEG2Kに共有結合する。
【0041】
用語「dsRNA」は、典型的におよび好ましくは1つ以上のリボヌクレオチドが対応する天然リボヌクレオチドの化学的アナログまたは修飾誘導体でよい任意の長さの二本鎖リボヌクレオチドポリマーを指す。用語「dsRNA」はまた、典型的にはミスマッチdsRNAを含む。
【0042】
最も好ましい実施形態では、該dsRNAはポリイソシン酸-ポリシチジル酸二本鎖RNA(polyIC)である。PolyICは、1本鎖はイノシン酸のポリマーであり、もう1本鎖はシチジル酸のポリマーである二本鎖RNAである。
【0043】
本発明の使用のためのポリプレックスのpolyICはdsRNAからなってよく、各々の鎖は少なくとも22、好ましくは少なくとも45リボヌクレオチドからなる。ある実施形態では、各々の鎖は20~8000リボヌクレオチドからなる。より好ましい実施形態では、各々の鎖は200~1000リボヌクレオチドからなる。より好ましい実施形態では、該polyICは0.2kb~1kbの分子量を有する。
【0044】
本明細書で使用される用語「LPEI-PEG 1:1」または「1つのPEG部分に共有結合されたLPEI[...]」は、本明細書では交換的に使用され、LPEI対PEGのモル比を指し、LPEI-PEG 1:1は、典型的におよび好ましくは、1モルLPEI当たり約1モルのPEGがポリマー接合体に含まれていることを意味する。本明細書で使用される用語「LPEI-PEG 1:3」または「1つのPEG部分に共有結合されたLPEI[...]」は、典型的におよび好ましくは、1モルLPEI当たり約3モルのPEGがポリマー接合体に含まれていることを意味する。値は好ましくは1H-NMR分析によって決定される。好ましくは、PEG(-CH2-CH2-O-)の水素原子の相対的整数値およびLPEI(-CH2-CH2-NH-)の水素原子の整数値を用いて、1H-NMRによって値が決定される。本明細書における用語「約」は、約0%~10%、より好ましくは0%~5%、さらに好ましくは0%~2%の偏差を指す。
【0045】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、本発明の使用のためのポリプレックスのポリマー接合体の該LPEIは1つのPEG部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:3)。
【0046】
好ましい実施形態では、該dsRNAはpolyICであり、該LPEIは1つのPEG部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:1)。この実施形態では、本発明のポリプレックスの該1つ以上のPEG部分は1つのPEG部分である。したがって、該LPEIは1つのPEG部分に共有結合され、該1つのPEG部分は1つの標的化部分に1つのリンカーによって接合される。
【0047】
別の好ましい実施形態では、該dsRNAはpolyICであり、該LPEIは3つのPEG部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:3)。この実施形態では、本発明のポリプレックスの該1つ以上のPEG部分は3つのPEG部分である。したがって、該LPEIは3つのPEG部分に共有結合され、該3つのPEG部分の各々は1つの標的化部分に1つのリンカーによって接合される。
【0048】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、本発明の使用のためのポリプレックスのポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kである。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、本発明の使用のためのポリプレックスのポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:3)。好ましい実施形態では、該dsRNAはpolyICであり、該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:3)。好ましい実施形態では、該dsRNAはpolyICであり、該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:1)。
【0049】
好ましい実施形態では、該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該1つ以上のPEG部分はPEG2Kである。好ましい実施形態では、該dsRNAはpolyICであり、該LPEIは1つのPEG2K部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG2K部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:3)。好ましい実施形態では、該dsRNAはpolyICであり、該LPEIは1つのPEG2K部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:1)。好ましい実施形態では、該dsRNAはpolyICであり、該LPEIは3つのPEG2K部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:3)。
【0050】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、該1つ以上のPEG部分はPEG2K部分である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG2K部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG2K部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:3)。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG2K部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:1)。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG2K部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:3)。
【0051】
PolyICは非共有または共有結合によってポリマー接合体に結合され、非共有結合が好ましい。好ましい実施形態では、該PolyICはLPEIに非共有結合され、好ましくはイオン結合によって共有結合される。
【0052】
本発明の使用のためのポリプレックスのポリマー接合体の該LPEIは、1つ以上のPEG部分に共有結合される。好ましい実施形態では、本発明の使用のためのポリプレックスのポリマー接合体の該LPEIは、1つのPEG部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:3)。より好ましい実施形態では、本発明の使用のためのポリプレックスのポリマー接合体の該LPEIは、1つのPEG部分に共有結合される(LPEI-PEG 1:1)。
【0053】
好ましい実施形態では、該1つ以上のPEG部分は、各々独立に該LPEIと-NH-CO-結合を形成する。
【0054】
好ましい実施形態では、該1つ以上のPEG部分は、各々独立に該リンカーと-NH-CO-、-CO-NH-、S-C-、-S-S-、-O-CO-または-CO-O-から選択される結合を形成する。好ましい実施形態では、該1つ以上のPEG部分は、各々独立に該リンカーと結合してジスルフィド結合を形成する。好ましい実施形態では、該1つ以上のPEG部分は、各々独立に-NH-CO-CH2-S-Sによって該リンカーと結合してジスルフィド結合を形成する。
【0055】
好ましい実施形態では、該1つ以上のPEG部分は各々独立に該LPEIと-N-CO-または-NH-CO-結合を形成する。
【0056】
好ましい実施形態では、該1つ以上のPEG部分は、各々独立に該LPEIと-N-CO-または-NH-CO-結合を形成し、該リンカーと-NH-CO-、-CO-NH-、S-C-、-S-S-、-O-CO-または-CO-O-から選択される結合を形成する。好ましい実施形態では、該1つ以上のPEG部分は、各々独立に該LPEIと-N-CO-または-NH-CO-結合を形成し、該リンカーと-S-S-結合を形成する。好ましい実施形態では、該1つ以上のPEG部分は、各々独立に該LPEIおよび該リンカーと-NH-CO-または-N-CO-結合を形成する。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明の使用のためのポリプレックスの該リンカーは、ペプチド部分である(本明細書ではペプチドリンカーとも称される)。用語「ペプチド」または「ペプチド部分」は、本明細書では交換的に使用され、典型的におよび好ましくはアミノ酸残基のポリマーを指す。用語「ペプチド部分」は、典型的におよび好ましくは、1つ以上のアミノ酸が対応する天然のアミノ酸の化学的アナログまたは修飾誘導体であるアミノ酸ポリマーも含む。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明のポリプレックスの該リンカーは、3~7個のアミノ酸残基からなるペプチド部分である。
【0059】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは1つのPEG2K部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分であり、好ましくは該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは1つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該リンカーはペプチド部分であり、好ましくは該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分であり、好ましくは該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなる。
【0060】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該リンカーはペプチド部分であり、好ましくは該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分であり、好ましくは該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなる。
【0061】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分であり、好ましくは該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該リンカーはペプチド部分あり、好ましくは該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分であり、好ましくは該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなる。
【0062】
好ましい実施形態では、本発明のポリプレックスの該リンカーは、6または7個のアミノ酸残基からなるペプチド部分である。
【0063】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは1つのPEG2K部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分あり、好ましくは該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは1つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該リンカーはペプチド部分あり、好ましくは該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分あり、好ましくは該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなる。
【0064】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分あり、好ましくは該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該リンカーはペプチド部分あり、好ましくは該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分あり、好ましくは該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなる。
【0065】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分あり、好ましくは該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該リンカーはペプチド部分あり、好ましくは該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該リンカーはペプチド部分あり、好ましくは該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなる。
【0066】
本明細書で交換可能に使用される用語「アミノ酸残基」または「アミノ酸」は、そのL-またはD-立体異性体における任意の天然または合成(すなわち、非天然)アミノ酸残基を指す。用語「アミノ酸残基」は、別のアミノ酸、すなわち、ペプチド部分等の異なった部分の末端に結合されたアミノ酸、または2つの異なった部分に結合されたアミノ酸、例えばペプチド鎖内に含まれたアミノ酸を含む。天然アミノ酸はタンパク質における天然の20個のアミノ酸残基のいずれか1個であるが、合成/非天然アミノ酸という用語は、典型的におよび好ましくは、20個の天然アミノ酸の1つでない、任意のアミノ酸、修飾アミノ酸および/またはそのアナログを指す。非天然アミノ酸の例には、オルニチン、ホモリジン、2,4-ジアミノブチル酸(DABA)、2,3-ジアミノプロピオン酸DAP)、8-アミノオクタン酸(EAO)、ホモフェニルアラニン、ホモバリンまたはホモロイシンが含まれ、好ましくはこれらである。
【0067】
ある実施形態では、該リンカーは、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンまたはホモフェニルアラニン等の少なくとも1つ、特に2つまたは3つの芳香族アミノ酸残基を含むペプチド部分である。
【0068】
好ましい実施形態では、該リンカーはペプチド部分であり、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-を含む。より好ましい実施形態では、該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなり、1個のアミノ酸残基は--(NH-(CH2)7-CO)-である。
【0069】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは好ましくはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該PEGは好ましくはPEG2Kであり、該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなり、1個のアミノ酸残基は-(NH-(CH2)7-CO)-である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは好ましくはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該PEGは好ましくはPEG2Kであり、該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなり、1個のアミノ酸残基は-(NH-(CH2)7-CO)-である。別の好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは好ましくはLPEI22kであり、3つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該PEGは好ましくはPEG2Kであり、該ペプチド部分は3~7個のアミノ酸残基からなり、1個のアミノ酸残基は-(NH-(CH2)7-CO)-である。
【0070】
好ましい実施形態では、該リンカーはペプチド部分であり、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-を含む。より好ましい実施形態では、該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなり、1個のアミノ残残基は-(NH-(CH2)7-CO)-である。
【0071】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは好ましくはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合されるか(LPEI-PEG 1:1)、または3つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該PEGは好ましくはPEG2Kであり、該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなり、1個のアミノ酸残基は-(NH-(CH2)7-CO)-である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは好ましくはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該PEGは好ましくはPEG2Kであり、該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなり、1個のアミノ酸残基は-(NH-(CH2)7-CO)-である。別の好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは好ましくはLPEI22kであり、3つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該PEGは好ましくはPEG2Kであり、該ペプチド部分は6または7個のアミノ酸残基からなり、1個のアミノ酸残基は-(NH-(CH2)7-CO)-である。
【0072】
好ましい実施形態では、該ペプチド部分は、-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)または-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)である。好ましい実施形態では、該ペプチド部分は、-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)である。好ましい実施形態では、該ペプチド部分は、-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)である。
【0073】
好ましい実施形態では、該ペプチド部分は、-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)または-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、配列番号1または2の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって該標的化部分または1つ以上のPEG部分に結合される。好ましい実施形態では、該ペプチド部分は、-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)または-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、配列番号1または2の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって該標的化部分に結合される。好ましい実施形態では、該ペプチド部分は、-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)または-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、配列番号1または2の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。好ましい実施形態では、該ペプチド部分は、-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、配列番号1の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。好ましい実施形態では、該ペプチド部分は、-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、配列番号2の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。
【0074】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは1つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、好ましくは配列番号1の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは1つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、好ましくは配列番号2の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。
【0075】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、好ましくは配列番号1の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、好ましくは配列番号2の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。
【0076】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICあり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、好ましくは配列番号1の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、好ましくは配列番号2の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。
【0077】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、好ましくは配列番号1の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、好ましくは配列番号2の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。
【0078】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、好ましくは配列番号1の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:1)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、好ましくは配列番号2の該ペプチド部分はそのCys残基のメルカプト基によって1つ以上のPEG部分に結合される。
【0079】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG2K部分に共有結合され(LPEI-PEG 1:3)、該ペプチド部分は-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)である。
【0080】
本発明の使用のためのポリプレックスは、該ポリマー接合体が式(a)、(b)、(c)または(d)から選択され、
(a)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG-LPEI、
(b)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG-LPEI、
(c)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG]3-LPEI、または
(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEI、
該Tは該標的化部分を表す。
【0081】
好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(a)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(b)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(c)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0082】
好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(a)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(b)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(c)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0083】
好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(a)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG2K-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(b)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2K-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(c)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG2K]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(d)該標的化部分に結合された[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2K]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0084】
好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(a)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG2K-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(b)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2K-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(c)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG2K]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2K]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0085】
本発明の使用のためのポリプレックスは、該ポリマー接合体が式(a)、(b)、(c)または(d)から選択され、
(a)T-(NH-(CH
2)
7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH
2-CH(NH
2)-CO)-Asp-Cys-PEG-LPEI、
(b)T-(NH-(CH
2)
7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG-LPEI、
(c)\[T-(NH-(CH
2)
7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH
2-CH(NH
2)-CO)-Asp-Cys-PEG]
3-LPEI、または
(d)\[T-(NH-(CH
2)
7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]
3-LPEI、
該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、
式中、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合される。
【0086】
好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(a)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、ポリマー接合体は、(b)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(c)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0087】
好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(a)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(b)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(c)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0088】
好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(a)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG2K-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(b)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2K-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、ポリマー接合体は、(c)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG2K]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(d)該標的化部分に結合された[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2K]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0089】
好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(a)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG2K-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(b)T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2K-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(c)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-PEG2K]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2K]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)の部分であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0090】
好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は(i)、(ii)、(iii)または(iv)から選択され、
式中、R1は以下であり、
式中、R2は以下であり、
式中、R1は以下であり、
式中、R2は以下であり、
該Tは該標的化部分を表し、nは40~45である。
【0091】
本発明の使用にためのポリプレックスにおいて、標的化部分は癌抗原に結合することができ、癌抗原は前立腺表面膜抗原(PSMA)である。標的化部分は野生型、天然または修飾リガンドまたはそのアナログ、または非天然リガンド、例えば抗体、一本鎖可変断片(scFv)、または癌抗原のいずれか1つに対する抗体ミメティック、例えばアフィボディでもよい。
【0092】
好ましい実施形態では、該標的化部分は、本明細書でDUPA残基として称されるHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-である。
【0093】
好ましい実施形態では、該標的化部分は、HOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)または-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)である。好ましい実施形態では、標的化部分は、HOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)である。好ましい実施形態では、該標的化部分は、HOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)である。
【0094】
DUPAのそのPSMA結合部位へのアクセスは、深く、徐々に狭い2つの疎水性穴を有するチャネルを介する(Kularatne SA,et al.(2009)Design,synthesis,and preclinical evaluation of prostate-specific membrane antigen targeted(99m)Tc-radioimaging agents.Mol Pharm 6(3):790-800)。本発明のリンカー、特に配列番号1および2等のペプチドリンカーは、坑口の構造および化学に適合する。したがって、本発明のポリプレックスは、polyICのPSMA過剰発現細胞、特にCRPC細胞への選択的送達および内在化を成功裏にもたらす(
図2Aおよび6)。内在化の後に、polyICは8時間以内にアポトーシス経路を活性化し、96時間後に細胞根絶を完了するように誘導する(
図2B、C)。本発明のポリプレックスは、高い選択性および急速な死滅を組み合わせ、したがってそれらが抵抗性を発症する前に腫瘍細胞を消滅させ、毒性の副作用は実質的に減少すると予想される。
【0095】
より好ましい実施形態では、該標的化部分は、HOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(i)、(ii)、(iii)または(iv)から選択される。別のより好ましい実施形態では、該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分は、HOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(i)、(ii)、(iii)または(iv)から選択される。
【0096】
より好ましい実施形態では、該標的化部分は、HOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(i)または(ii)から選択される。別の好ましい実施形態では、該標的化部分は、HOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(iii)または(iv)から選択される。
【0097】
好ましい実施形態では、該標的化部分は該DUPA残基であり、該ポリマー接合体は該DUPA残基に結合した式(i)の二接合体である。好ましい実施形態では、該標的化部分は該DUPA残基であり、該ポリマー接合体は該DUPA残基に結合した式(ii)の二接合体である。好ましい実施形態では、該標的化部分は該DUPA残基であり、該ポリマー接合体は該DUPA残基に結合した式(iii)の二接合体である。好ましい実施形態では、該標的化部分は該DUPA残基であり、該ポリマー接合体は該DUPA残基に結合した式(iv)の二接合体である。
【0098】
好ましい実施形態では、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(i)である。好ましい実施形態では、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(ii)である。好ましい実施形態では、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(iii)である。好ましい実施形態では、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(iv)である。
【0099】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(i)または(ii)から選択される。別の好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(iii)または(iv)から選択される。
【0100】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分はDUPA残基であり、該ポリマー接合体は該DUPA残基に結合した式(i)の二接合体である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分は該DUPA残基であり、該ポリマー接合体は該DUPA残基に結合した式(ii)の二接合体である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分は該DUPA残基であり、該ポリマー接合体は該DUPA残基に結合した式(iii)の二接合体である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分は該DUPA残基であり、該ポリマー接合体は該DUPA残基に結合した式(iv)の二接合体である。
【0101】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(i)である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(ii)である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(iii)である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(iv)である。
【0102】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは1つのPEG2K部分(LPEI-PEG 1:1)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは1つのPEG2K部分(LPEI-PEG 1:1)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。
【0103】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは3つのPEG2K部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは3つのPEG2K部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。
【0104】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分(LPEI-PEG 1:1)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG部分(LPEI-PEG 1:1)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。
【0105】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。
【0106】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG2K部分(LPEI-PEG 1:1)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG2k部分(LPEI-PEG 1:1)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。
【0107】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG2K部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG2k部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)である。
【0108】
好ましい実施形態では、該CRPCは転移性CRPCである。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは3つのPEG部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該CRPCは転移性CRPCである。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはLPEIはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIは3つのPEG部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該CRPCは転移性CRPCである。
【0109】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該CRPCは転移性CRPCである。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該CRPCは転移性CRPCである。
【0110】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG2K部分(LPEI-PEG 1:1)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該CRPCは転移性CRPCである。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、1つのPEG2K部分(LPEI-PEG 1:1)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該CRPCは転移性CRPCである。
【0111】
好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG2K部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号1)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該CRPCは転移性CRPCである。好ましい実施形態では、ポリプレックスの該dsRNAはpolyICであり、ポリマー接合体の該LPEIはLPEI22kであり、3つのPEG2K部分(LPEI-PEG 1:3)に共有結合され、該リンカーは、ペプチド部分-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Phe-(NH-CH2-CH(NH2)-CO)-Asp-Cys-(配列番号2)であり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該CRPCは転移性CRPCである。
【0112】
好ましい実施形態では、本発明の使用のためのポリプレックスは、免疫細胞と組み合わせて使用される。好ましくは、該免疫細胞は、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)、腫瘍特異的改変T細胞、または末梢血単核球(PBMC)である。好ましくは、該免疫細胞は、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)または腫瘍特異的改変T細胞である。より好ましい実施形態では、該免疫細胞は、末梢血単核球(PBMC)である。より好ましい実施形態では、該免疫細胞は、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)である。より好ましい実施形態では、該免疫細胞は、腫瘍特異的改変T細胞である。
【0113】
さらなる態様では、本発明は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療において使用するための医薬組成物であって、薬学的に許容される担体と、二本鎖RNA(dsRNA)およびポリマー接合体を含むポリプレックスとを含み、該ポリマー接合体は、線状ポリエチレンイミン(LPEI)、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分、1つ以上のリンカー、および1つ以上の標的化部分からなり、該LPEIは該1つ以上のPEG部分に共有結合し、該1つ以上のPEG部分の各々は該1つ以上のリンカーの1つを介して該1つ以上の標的化部分の1つに接合し、該1つ以上の標的化部分の各々は癌抗原に結合することができ、癌抗原は前立腺表面膜抗原(PSMA)である、医薬組成物に関する。
【0114】
好ましい実施形態では、本発明の使用のための医薬組成物は、免疫細胞をさらに含む。好ましくは、該免疫細胞は、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)、腫瘍特異的改変T細胞、または末梢血単核球(PBMC)である。好ましくは、該免疫細胞は、該免疫細胞は、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)または腫瘍特異的改変T細胞である。より好ましい実施形態では、該免疫細胞は、末梢血単核球(PBMC)である。より好ましい実施形態では、該免疫細胞は、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)である。より好ましい実施形態では、該免疫細胞は、腫瘍特異的改変T細胞である。
【0115】
さらなる態様では、本発明は、去勢抵抗性前立腺癌の治療方法であって、二本鎖RNA(dsRNA)およびポリマー接合体を含むポリプレックスをそれを必要としている患者に投与することを含み、該ポリマー接合体は、線状ポリエチレンイミン(LPEI)、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分、リンカー、および標的化部分からなり、LPEIは1つ以上のPEG部分に共有結合し、各PEG部分はリンカーを介して標的化部分に接合し、標的化部分は癌抗原に結合することができ、癌抗原は前立腺表面膜抗原(PSMA)である、方法に関する。用語「患者」は交換的に使用され、ヒトまたは非ヒト動物のいずれか、好ましくはヒトを指す。
【0116】
例えばポリプレックスまたは医薬組成物の投与方法は、非経口、例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、粘膜(例えば、経口、鼻腔内、舌下、膣内、直腸内、眼内)、髄腔内、局所および皮内経路を含むが、これらに限定されない。投与は全身性でも局所でもよい。ある実施形態では、医薬組成物は脳内投与に適している。好ましい実施形態では、ポリプレックスまたは医薬組成物は注射によって全身的に投与される。
【0117】
好適な担体、投与形式、投薬剤形等は当業者には周知である。用語「担体」は、活性物質が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。医薬組成物中の担体は、結合剤、例えば微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン(ポリビドンまたはポピドン)、トラガカントガム、ゼラチン、デンプン、ラクトースまたはラクトース一水和物;崩壊剤、例えばアルギン酸、トウモロコシデンプン等;潤滑剤または界面活性剤、例えばステアリン酸マグネシウム、またはラウリル硫酸ナトリウム;および滑剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素を含んでよい。
【0118】
組成物は、ボーラス注射または連続注入のような注射による非経口投与のために製剤化することができる。注射用製剤は、添加の保存料を含む、単位投薬剤形例えばアンプルまたはマルチドーズ容器で提供することができる。組成物は、油性または水性のビヒクル中で懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤等の製剤化物質を含んでもよい。あるいは、活性成分は、使用前に、例えば発熱性物質除去蒸留水等の好適なビヒクルとの構成のために粉末形態でもよい。
【0119】
吸入による投与のためには、例えば鼻腔投与のためには、本発明の組成物は、好適な発射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスの使用により、加圧パックまたはネブライザーからのアエロゾルスプレイ提示の形態で簡便に送達される。加圧されたアエロゾルの場合には、投薬単位は、計測された量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)で使用のためのゼラチン等のカプセルおよびカートリッジが製剤化されてもよく、それらは化合物およびラクトースまたはデンプン等の好適な粉末基剤の粉末混合物を含む。
【0120】
ある実施形態では、医薬組成物は、上記の任意の既知の方法によって投与のために製剤化される。本明細書において企図された特定の投与方法は、静脈内および脳内(大脳内)投与である。
【0121】
上で定義された実施形態のいずれか1つの医薬組成物は、静脈内、脳内(大脳内)、経口、皮内、筋肉内、皮下、経皮、経粘膜、鼻腔内または眼内投与のために製剤化することができる。
【0122】
さらなる態様では、本発明は、二本鎖RNA(dsRNA)およびポリマー接合体を含むポリプレックスであって、該ポリマー接合体は、線状ポリエチレンイミン(LPEI)、3つのポリエチレングリコール(PEG)部分、3つのリンカー、および3つの標的化部分からなり、該LPEIは3つのPEG部分の各々に共有結合し、該3つのPEG部分の各々は該3つのリンカーの1つを介して該3つの標的化部分の1つに接合し、該3つの標的化部分の各々は癌抗原に結合することができ、癌抗原は前立腺表面膜抗原(PSMA)であり、該ポリマー接合体は式(d)であり、
(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEI、
該Tは標的化部分を表す。
【0123】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該dsRNAはポリイソシン酸-ポリシチジル酸二本鎖RNA(polyIC)である。
【0124】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は2kDの分子量を有する。本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該LPEIは22kDの分子量を有する。本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は2kDの分子量を有し、該LPEIは22kDの分子量を有する。
【0125】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は2kDの分子量を有し、該dsRNAはポリイノシン-ポリシチジル酸二本鎖RNA(polyIC)である。本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該LPEIは22kDの分子量を有し、該dsRNAはポリイノシン-ポリシチジル酸二本鎖RNA(polyIC)である。本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は2kDの分子量を有し、該LPEIは22kDの分子量を有し、該dsRNAはポリイノシン-ポリシチジル酸二本鎖RNA(polyIC)である。
【0126】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は式(d):
(d)\[T-(NH-(CH
2)
7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]
3-LPEI
であり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)のPEGであり、
式中、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合される。
【0127】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)のPEGであり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0128】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)のPEGであり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0129】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、該標的化部分に結合された(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)のPEGであり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0130】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分を表し、該PEG部分は式(v)のPEGであり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によってCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0131】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、本発明のポリプレックスのポリマー接合体は、式(iv)であり、
式中、R2は以下であり、
該Tは該標的化部分を表し、nは40~45である。
【0132】
本発明のポリプレックスの標的化部分は、野生型、天然または修飾リガンドまたはそのパラログ、または非野生型リガンド、例えば抗体、一本鎖可変断片(scFv)、または癌抗原のいずれか1つに対する抗体ミメティック、例えばアフィボディでもよい。
【0133】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該標的化部分は、本明細書でDUPA残基と称されるHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-である。
【0134】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、ポリマー接合体は、式(d):
(d)\[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEI
であり、該Tは該標的化部分HOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)を表す。好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は式(d)であり、該Tは該標的化部分HOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)を表し、該dsRNAはpolyICである。
【0135】
本発明のポリプレックスのより好ましい実施形態では、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(iv)を有する。別の好ましい実施形態では、該dsRNAはpolyICであり、該標的化部分はHOOC(CH2)2-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-(DUPA残基)であり、該ポリマー接合体は式(iv)である。
【0136】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は2kDの分子量を有する。本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該LPEIは22kDの分子量を有する。本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は2kDの分子量を有し、該LPEIは22kDの分子量を有する。
【0137】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は2kDの分子量を有し、該dsRNAはポリイノシン-ポリシチジル酸二本鎖RNA(polyIC)である。本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該LPEIは22kDの分子量を有し、該dsRNAはポリイノシン-ポリシチジル酸二本鎖RNA(polyIC)である。本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は2kDの分子量を有し、該LPEIは22kDの分子量を有し、該dsRNAはポリイノシン-ポリシチジル酸二本鎖RNA(polyIC)である。
【0138】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は式(v)であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によって(d)のCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0139】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は式(v)であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によって(d)のCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0140】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、該標的化部分に結合された式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は式(v)であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によって(d)のCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0141】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は式(v)であり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によって(d)のCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0142】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、ポリマー接合体は式(d)を有し、
(d)[T-(NH-(CH
2)
7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]
3-LPEI、
該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は式(v)のPEGであり、
式中、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によって(d)のCys残基に結合される。
【0143】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は式(v)のPEGであり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によって(d)のCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである
【0144】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、PEG部分は式(v)のPEGであり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によって(d)のCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0145】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は、該標的化部分に結合された式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k]3-LPEIであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は式(v)のPEGであり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によって(d)のCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0146】
本発明のポリプレックスの好ましい実施形態では、該ポリマー接合体は式(d)[T-(NH-(CH2)7-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k]3-LPEI22kであり、該Tは該標的化部分DUPA残基を表し、該PEG部分は式(v)のPEGであり、nは40~45であり、式(v)のPEG部分はジスルフィド結合によって(d)のCys残基に結合され、好ましくは該dsRNAはpolyICである。
【0147】
本発明は以下の非限定的実施例によって例証されるだろう。
【実施例0148】
実施例1-ポリプレックスの調製
LPEIおよびPEG化の合成のための化学
約2kDaの分子量を有するPDP-PEG-NHS(PDP:ピリジルジチオプロピオン酸エステル)とも称されるNHS-PEG-OPSS(オルト-ピリジルジスルフィド-ポリ-エチレングリコール-N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル)をCreative PEGworks(Winston,USA)から購入した。ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、平均分子量(Mn)約50kDa、および無水ジメチルホルムアミド(DMSO)をSigma-Aldrich(Israel)から購入した。無水エタノールをRomical(Israel)から購入した。すべての溶媒はさらに精製することなく用いた。
【0149】
LPEI(遊離塩基形態)の合成
LPEIの合成およびLPEIのPEG化は、先に記載したようにして行った(WO 2015/173824; Joubran,et ah,2014,Optimization of liganded polyethylenimine polyethylene glycol vector for nucleic acid delivery,Bioconjug Chem 2014,25(9):1644-1654)。
【0150】
8.0g(0.16mmol)のポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)を100mLの濃HCl(37%)で加水分解し、48時間リフラックスし、白色沈殿を得た。固体をインターグラスで減圧濾過して、水で数回洗浄した。得られたLPEI塩酸塩を終夜風乾し、50mLの水に溶解し、凍結乾燥した(5g、78%、1H-NMR、D2O,400MHz:シングレット3.5ppm)。得られたLPEI塩(4.5g)をNaOH水溶液(3M)を加えてアルカリ性にし、得られた白色沈殿を濾過し、中性になるまで水で洗浄した。次いで、固体を水に溶かし、さらに凍結乾燥し白色固体を得た(2g、81%)。
【0151】
LPEI-PEG2k-OPSS二接合体(二接合体1:1および1:3)の合成
識別的にPEG化コポリマーを作製するために、LPEI上の二級アミンをPEG上の末端NHSエステルオルトゴナル保護基に接合した。N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)エステルはLPEIの二級骨格アミンと自発的に反応性であり、LPEIの効率的なPEG化をもたらす。さらに、NHS-PEG-OPSSとPEIのアミンとの反応は、安定で不可逆的なアミド結合の形成をもたらす。
【0152】
174mg(8μmol)のLPEIを2.7mLの無水EtOHに溶解し、室温で15分間撹拌した。5倍モーラー過剰のOPPS-PEG2k-CONHS 79mg,39.5μmol)を500μlの無水DMSOに溶解し、LPEI混合物に少量で加えた。反応混合物をボルテックススターラーで周囲温度で3時間約800rpmで撹拌した。MacroPrep High S樹脂(BioRad)で充填したHR10/10カラムを用いて、イオン交換クロマトグラフィーで異なったPEG置換LPEIを分離した。分析 Vydac C-8モノメリック5μmカラム(300Å、4.6×l50mm)を備えた逆相HPLCを用い、1mL/分の流速で25分での5~95%アセトニトリルの線形グラジエントを用いて、二接合体の溶出画分の純度を評価した。95%以上の純度を有する画分を混合した。混合画分を20mM HEPES pH7.4にさらに透析した。二接合体中のLPEIに接合されたPEG2k基の割合を1HNMRで決定した。PEG-(CH2-CH2-O)-からの水素およびLPEI-(CH2-CH2-NH)-からの水素の整数値を用いて、2つの接合コポリマー間の比を決定した。カチオン交換から得られた様々な生成物のうちで、三接合体の作製のために、2つの生成物、LPEI-PEG2k-OPSS(二接合体1:1、LPEI対PEGのモーラー比約1:1)およびLPEI-(PEG2k)3-(OPSS)3(二接合体1:3,モーラー比約1:3)が選択された。コポリマー濃度を評価するためにコッパーアッセイを用いた。要するに、コポリマーをCuS04(100mLの酢酸バッファに23mg溶解した)でインキュベートし、285nmでのその吸収を測定した。
【0153】
DUPA-ペプチドリンカーの合成
DUPA部分の調製:DUPA部分はKularatne SA等(2009)(Design,synthesis,and preclinical evaluation of prostate-specific membrane antigen targeted(99m)Tc-radioimaging agents.Mol Pharm 6(3):790-800)にしたがって合成した。ペプチドリンカーの合成:Fmoc-Cys(trt)-wang樹脂(商業的に入手可能)を固体支持体として使用し、標準的なFmoc SPPS手法(ローデング0.47mmol/gm、合成スケールは0.25mmolである)によってペプチドを合成した。Fmoc-Cys(trt)-wang樹脂は、ジクロロメタン(DCM)中で2時間、ジメチルホルムアミド(DMF)中で20分間膨潤した。Fmocの除去:Fmocを除去するために、Fmoc-ペプチジル樹脂を20%ピペリジンのDMF(10mL)でインキュベートした(室温で10分および15分)。固体支持体をDMF(5×5mL)で濯ぐ前に、カイザー試験を用いてFmocの完全な除去を確認した。ペプチドリンカーへのアミノ酸の結合:5等量のFmoc-保護アミノ酸、4.5等量のHATUおよび8等量のDIPEAをDMF(6mL)に溶解した。反応混合物を0℃で5分間活性化し、次いで遊離アミンを有するペプチド樹脂に添加した。この樹脂を約45分間混合し、次いで、固体支持体をDMF(4×5mL)で濯いだ。結合が完了したことを確認するために、カイザー試験を再度用いた。無水酢酸によるキャッピング:未反応の遊離アミン官能基をブロックするために、第1アミノ酸結合後に無水酢酸で樹脂をインキュベートした。樹脂を無水酢酸(10等量)およびDIPEA(8等量)のDMF溶液で20分間処理し、DMF(5×5mL)およびDCM(3×5mL)で濯いだ。ペプチドリンカーへのDUPA部分の結合:遊離酸を有する完全に保護されたDUPA部分(5等量)、HATU(4.5等量)およびDIPEA(8等量)をDMF(6mL)に溶解した。混合反応物を0℃で5分間活性化した。次いで、予め活性化されたDUPA部分をN-又ン遊離アミンを担持するペプチド樹脂と混合した。この溶液を約60分間混合し、DMF(5×5mL)で濯いだ。DUPA部分の結合をカイザー試験で確認した。樹脂からのDUPA-ペプチドリンカーの放出:トリフルオロ酢酸(TFA)/トリイソプロピルシラン(TIS)/TDW(95:2.5:2.5)の新しく調製された溶液(5mL)を0℃に冷却し、次いで200mgの樹脂結合ペプチド-DUPAに添加した。この溶液を4時間RTで混合し、濾過し、3mLの濃TFAで濯いだ。この溶液に冷エーテルをゆっくりと混合することによって、得られたDUPA-ペプチドリンカーを沈殿させ、次いで遠心分離し、冷エーテルで2回濯いだ。最小量の1:1ACN/TDW溶液を使用して、粗DUPA-ペプチドリンカーを溶解し、次いで凍結乾燥し、最終的にRP-HPLCによって精製した。DUPA-ペプチドリンカーの形成をLC-MSにより確認した。報告した手法(Kelderhouse et al.,Development of tumor-targeted near infrared probes for fluorescence guided surgery,Bioconjug Chem 2013,24(6):1075-1080)を用いて、Dylight680接合を行った。
【0154】
PEI-PEG-DUPA(PPD)の合成
4.37mg(1.2×10-4mmol)PEI-PEG(1:1)を940μlの20mM HEPES pH7.4)に溶かした。1mg(9.1×10-4mmol、約5等量)のDUPA-ペプチドリンカーを2mlの1:1 ACN(HPLC等級)/(20mM HEPES,pH7.4)に溶かし、PEI-PEG溶液に滴下した。約10%ACNの総濃度を得るために4mLの20mM HEPES pH7.4をこの溶液に添加した。Joubran等、2014(前掲)に記載のようにしてさらなる反応を行った。
【0155】
PPD/polyIC複合体の形成
窒素(PPD由来)/リン酸塩(polyIC)比(N/P比)8で、polyIC(低分子量(LMW)polyIC、例えばInvivoGenによる)とPPDを複合体化した。LMWは0.2kb~1kbである。インビボ実験のために、HBGバッファ(20mM HEPES,pH7.4,5%グルコース,w/v)を用いた。インビトロ実験のために、HBSバッファ(20mM HEPES,150mM NaCl,pH7.4)を用いた。PPDをpolyICに添加し、RTで45分間、polyICとインキュベートした。Joubran等、2014(前掲)に記載のようにPPD/polyIC複合体の大きさを動的光散乱法によって測定した。複合体の大きさは105±16.7nmであることがわかった。
【0156】
実施例2-アッセイ
共焦点顕微鏡
DUPA-ペプチドリンカー-Dylight 680を用いて、PSMA-過剰発現細胞のDUPA部分の選択性を確認した。共焦点蛍光顕微鏡(FLUOVIEW FV-1000,Olympus,Japan)を用いてDUPA-ペプチドリンカー-Dylight 680の取り込みを監視した。先ず、細胞を8ウェルμスライド(Ibidi、型番80826)に播き(8000細胞/ウェル)、72時間成長させた。次いで、DUPA-ペプチドリンカー-Dylight 680(70nM)およびスルホローダミン(緑)を含む新鮮培地を加えた。細胞をタイムラプス顕微鏡で5時間監視した。
【0157】
細胞生存性
PC3-PSMA、LNCaP、VCaP、MCF7およびPC3細胞を播き(96ウェルプレート、5000細胞/ウェル、3連)、1日間成長させ、次いでPPD/polyIC、PPD/polyIまたはpolyIC単独でインキュベートした。インキュベーション後、細胞生存率を定量した(CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay,Promega)。
【0158】
ウェスタンブロット分析
LNCaP細胞(6ウェルプレート、1×106細胞/ウェル)を播き、1日間成長させ、次いでPPD/polyICでインキュベートし、湯気を立てているレムリサンプルバッファで溶解させ、一次抗体抗カスパーゼ3(Cell Signaling Technology、型番96625)、抗開裂カスパーゼ3(Cell Signaling Technology、型番96615)および抗PARP(Cell Signaling Technology、型番95425)を用いてカスパーゼ-3およびPARPの開裂活性の研究のためにウェスタンブロットによって分析した。抗GAPDHを用いて、カスパーゼ-3およびPARP発現レベルをGAPDH発現に標準化した(Santa Cruz,sc-25778)。
【0159】
ELISAによるIP-10およびRANTESサイトカインの定量化
PC3-PSMAおよびLNCaP細胞を播き(96ウェルプレート、3連、PC3-PSMA:2,000細胞/ウェル、LNCaP:10,000細胞/ウェル)、1日間成長させ、次いでPPD/polyICでインキュベートした。48時間または72時間後に、培地からサンプルを採取し、IP-10およびRANTESの分泌されたサイトカイン濃度をELISA(PeproTech)で検出した。
【0160】
qRT-PCRによるIFN-β、IFN-γ、IL-2およびTNF-αの定量
PC3-PSMAおよびLNCaP細胞からの総RNA抽出:PC3-PSMA(100,000細胞/ウェル)およびLNCaP細胞(500,000細胞/ウェル)を播き、1日間成長させ、次いでPPD/polyICでインキュベートした。4時間または8時間後に、総RNAを単離した(EZ-10 DNA Away RNA- Miniprep Kit,Bio Basic)。刺激PBMCからの総RNA抽出:LNCaP細胞を播き(1×106細胞/ウェル、ポリリジンプレコート6ウェルプレート)、1日間成長させ、次いでPPD/polyICでインキュベートした。48時間後に、調整培地からのサンプルを播種し(6ウェルプレート、1×107細胞/ウェル)および新しく単離されたPBMCを成長させるために使用し、24時間インキュベートした。次いで、総RNAをPBMC(EZ-10 DNA Away RNA-Miniprep Kit,Bio Basic)から単離した。
【0161】
RNAを逆に転写し(High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit,Applied Biosystems)、表1に列挙されたプライマーを用いてqRT-PCRを行った(Fast SYBR Green,Applied Biosystems)。サイトカイン転写物の相対量をGAPDHまたはHUPO転写物に標準化し、非処置細胞と比較した(ΔΔCT法)。
【0162】
走化性アッセイ
LNCaP細胞を播き(ポリリジンプレコート24ウェルプレート、密度250,000細胞/ウェル)、1日間成長させた。培養培地を0.15%FBSのみを含む新鮮な培地と交換し、次いで細胞をPPD/polyICでインキュベートした。48時間後に調整培地からのサンプルをPBMCの走化性を刺激するその能力について試験した(Transwellプレート、微孔性ポリカーボネート膜、0.5μm、Corning,Costar)。詳細には、調整培地をTranswellプレート(0.15%FBSのみで補充した培地)のより低いウェルにピペットし、新しく単離されたPBMCを各ウェルのより上部のTranswellインサートに播いた(100μl培地/ウェル中、1×106細胞)。37℃で4時間のインキュベーション後、移動したPBMCを含む培地をFACS、散乱ゲーティング(scatter-gating)によって分析して、リンパ球亜群を列挙した。結果を、処置細胞由来の調整培地に向かって移動したPBMC数の、新鮮な成長培地に向かって移動したPBMC数に対する比として表す。
【0163】
実施例3-インビトロおよびインビボ試験
PPD/polyIC処置によって誘導されたバイスタンダー効果のインビトロ分析
共培養系を用いて、インビトロにおけるPPD/polyICバイスタンダー効果を分析した。処置PSMA過剰発現細胞を、PBMC単独またはPBMCおよび隣接癌細胞を提示しそうであるPSMAを発現していない細胞で共培養した。安定にルシフェラーゼを発現する細胞株を介してバイスタンダー効果を評価した(LNCaP-Luc/GFP、PC3-Luc/GFPまたはMCF7-Luc/GFP)。これらの細胞の生存率を測定した(ルシフェラーゼ活性)(Luciferase Assay System,Promega)。
【0164】
LNCaP-Luc/GFP-PBMCの共培養系:LNCaP-Luc/GFP細胞を播き(10,000細胞/ウェル、ポリリジンでプレコートした96ウェルプレート、3連)、1日間成長させ、PPD/polyICでインキュベートした。24時間後、新しく単離されたPBMC(ウェルあたり1×lO5細胞)を培養物に加え、24時間後にLNCaP-Luc/GFP細胞の生存率を検出した(ルシフェラーゼ活性)。
【0165】
LNCaP-PBMC-PC3-Luc/GFPの共培養系:LNCaP細胞(6,000細胞/ウェル)を播き(ポリリジンでプレコートした96ウェルプレート、3連)、1日間成長させ、PPD/polyICでインキュベートした。16時間後にPC3-Luc/GFP細胞(4,000細胞/ウェル)、およびさらに6時間後に新しく単離されたPBMC(ウェルあたり1×105細胞)を培養物に加えた。48時間後にPC3-Luc/GFP細胞の生存率を検出した(ルシフェラーゼ活性)。
【0166】
PC3-PSMA-PBMC-MCF7-Luc/GFPの共培養系:PC3-PSMA細胞(2,000細胞/ウェル)を播き(ポリリジンでプレコートした96ウェルプレート、3連)、1日間成長させ、PPD/polyICでインキュベートした。16時間後にMCF7-Luc/GFP細胞(4,000細胞/ウェル)、およびさらに6時間後に新しく単離されたPMBC(ウェルあたり1kx105細胞)を培養物に加えた(ウェルあたり1×105細胞)。48時間後にMCF7-Luc/GFP細胞の生存率を検出した(ルシフェラーゼ活性)
【0167】
再構築された免疫系を有するアンドロゲン抵抗性前立腺癌異種移植モデル
アンドロゲン抵抗性(アンドロゲン独立性)前立腺癌細胞、PC3-PSMA(4.6×l0<6)をNOD-SCID雄性マウス(Harlan Laboratories,Inc.)に皮下注射した。14日後に、腫瘍が100mm3に達し、マウスは4群にランダムに分け(7マウス/群)、2群をPPD/polyIC(0.25mg/kg、N/P比は8)の腹腔内注射で処置し、他の2群を非処置対照である。1つの処置群および1つの非処置群の各々においてそれぞれ、免疫系を部分的に再構築した(3日目および8日目での4x106ヒトPBMCの静脈内投与)。腫瘍体積の計算:腫瘍幅W2×腫瘍長L/2。
【0168】
実施例4-インビトロ試験の結果
特定のペプチドリンカーによってDylight680に結合したDUPAの、PSMA過剰発現細胞への特異的結合および取り込み
この実施例は、ペプチドリンカーによって蛍光色素またはPEI-PEG/polyICからなるポリプレックス等のさらなる化合物に結合されたPSMAリガンドDUPAがPSMA過剰発現細胞を選択的に標的化し、これらの細胞に本発明のポリプレックスを送達することを証明した。
【0169】
DUPAは、8-アミノオクタン酸の炭化水素鎖からなる特別に設計されたペプチドリンカーによって蛍光色素Dylight680(Thermo Scientific)に接合され、単鎖ペプチド部分は、PSMAリガンドDUPAの立体障害から自由になる。この実施例で使用されたペプチドリンカーは、配列番号1(Cys-Gly-Trp-Trp-Gly-Phe、
図1A参照)のペプチド部分を含む。
【0170】
DUPA-リンカー-Dylight680接合体の癌細胞への結合を共焦点蛍光顕微鏡によって測定した。LNCaP細胞、PSMA過剰発現細胞PC3-PSMAおよびPSMA非過剰発現細胞MCF7を、DUPA-リンカー-Dylight680で5時間処理した。DUPA-リンカー-Dylight680はうまく結合し、LNCaPおよびPC3-PSMA細胞に入ったが、MCF7細胞は入らなかった(
図1B)。
【0171】
PSMAへの結合は、2つの疎水性穴をもった深く狭いギャップによってのみ接近できる結合部位によって起こる。PEI-PEG/polyICからなるポリプレックスまたはPEI-PEGからなる接合体に接合されたDUPAの、PSMAへの選択的結合を可能にするために、PEI-PEG/polyICポリプレックスまたはPEI-PEG接合体とDUPAとの間の距離は、特定のペプチドリンカーを用いて伸長される。この実施例では、DUPAは、Cys-Gly-Trp-Trp-Gly-Phe-8-アミノオクタン酸からなるリンカーによって、polyIC結合部分PEI-PEG接合体(PP)に接合され(
図1A)、このことは、PSMA結合部位およびその入口部位の構造および結合特性に最適に適合する。
【0172】
PPD/polyICはPSMAを過剰発現する前立腺癌細胞を選択的に全滅させる。
PSMA過剰発現前立腺癌細胞の選択的死滅は、PEI-PEG-DUPA(PPD)/polyICからなるポリプレックスを用いて証明された。PPD/polyICを作製するために、本発明者らは、先に記載したように(Joubran S,et Al,2014、前掲)、ペプチドリンカーによってポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール(PP)にDUPAを接合し、PPD接合体にpolyICを結合した。
【0173】
有効性および選択性についてPPD/polyICを試験した。PSMA過剰発現細胞LNCaP、VCaPおよびPC3-PSMA、ならびにPSMA非過剰発現細胞MCF7およびPC3を、PPD/polyICで4日間処理し、80~95%のPSMA過剰発現細胞LNCaP、VCaPおよびPC3-PSMA細胞を効率的に殺したが、MCF7およびPC3細胞はインタクトのままであった(
図2A)。
【0174】
LNCaP細胞のPPD/polyIC誘導死は、適用されたpolyIC濃度(0.5、1および2μg/mlのPPDに結合されたpolyIC、
図2B参照)の任意の濃度による処理を開始してから24時間後に明らかとなった。さらなるPPD/polyIC処理の過程で、死細胞の数がさらに増加した。96時間後、ほとんど100%のLNCaP細胞が適用された最低polyIC濃度によってさえ死滅した(0.5μg/mlの、
図2B参照)。PPD/polyIC処理の4時間および8時間後には、カスパーゼおよびPARPの開裂がそれぞれ明らかとなった。この開裂はpolyICがアポトーシスによって細胞死を誘導したことを示唆している(
図2C)。
【0175】
これらの結果は、(i)PPDに結合したpolyICがPSMA過剰発現細胞に選択的に送達された、(ii)PPD/polyICによる処理がアポトーシスを起こし、PSMA過剰発現細胞の急速かつ効率的な死滅を誘導した(
図2A、B、C)ことを証明した。CRPCを有する患者において、PPD/polyIC処置によって誘導された急速かつ効率的な細胞死滅は、化学療法に対する耐性が発症し得る前に、腫瘍細胞の絶滅を可能にする。さらに、PPD/polyICの高い細胞マーカー選択性は、polyICが全身的に投与された時にさもないと癌患者が苦しまなければならない毒性の副作用を最小限に抑える利益を有する。
【0176】
PPD/polyICでの処理は実質的にサイトカイン分泌を増加させた。
細胞中での、dsRNA、特にpolyICはサイトカインの産生および放出を誘発した。これらのサイトカインは、免疫細胞を刺激し、感染領域にそれらを補充した。本発明者らは、サイトカイン産生、およびLNCaPおよびPC3-PSMA細胞に対するPPD/polyIC処理の効果を証明した。PPD/polyIC処理は、いずれも走化性サイトカインであるIP-10およびRANTESの分泌を引き起こした(
図3A、B、ELISA)。PPD/polyIC処理を開始した4時間後に細胞傷害性サイトカインIFN-βを測定した(qRT-PCR、
図3C)。
【0177】
CRPC等の悪性腫瘍は、免疫学的癌防御および癌細胞のクリアランスを害するメカニズムを発症することができる。本発明のポリプレックスは腫瘍細胞を直接死滅させるが(例えば、腫瘍細胞アポトーシスによって)、癌細胞に対して作用するように患者に免疫系を活性化もする(例えば、PPD/polyIC誘発産生およびサイトカインの放出)。本発明のポリプレックスを用いて、非標的化隣接癌細胞もバイスタンダー効果によって死滅された。PolyICは、中でも、Toll様受容体-3(TLR3)への作動性結合、dsRNA依存性タンパク質キナーゼ(PKR)の活性化、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-1)およびメラノーマ分化関連遺伝子5(MDA5)のアップレギュレーションに作用する(Levitzki A,Targeting the Immune System to Fight Cancer Using Chemical Receptor Homing Vectors Carrying Polyinosine/Cytosine(PolyIC),Front Oncol 2012,2:4)。これらのシグナルタンパク質は異なったアポトーシス経路を同時に誘発し、また癌細胞を産生させ、免疫刺激性サイトカインを放出する。
【0178】
PPD/polyICによる処理は走化性およびPBMC活性化を誘発した。
さらに、本発明のPPD/polyICポリプレックスは免疫細胞(走化性)およびPBMC活性化の補充をもたらす。LNCaP細胞をPPD/polyICで48時間処理した。非処理対照細胞由来の培地と比較して、これらのPPD/polyIC処理細胞由来の調整培地は、末梢血単核球(PBMC)の増加した走化性をもたらした(5倍増加、
図4A)。PPD/polyIC処理細胞由来の調整培地は、IL-2の増加したレベルをもたらし、PBMCに毒性の前炎症性サイトカインIFN-γおよびTNFαを分泌するように誘発した(
図4B)。TNF--αは特定の前立腺細胞株PC-3、DU-145およびLNCaPには細胞傷害性であり(Sherwood ER et al.,1990,Therapeutic efficacy of recombinant tumor necrosis factor alpha in an experimental model of human prostatic carcinoma,J Biol Response Mod 9(l):44-52)、IL-2の上昇した発現はPBMCが調整培地によって活性化されたことを指摘している(Kruse et al.,2001,Characterization of early immunological responses in primary cultures of differentially activated human peripheral mononuclear cells,J Immunol Methods 247(1-2):131-139)。
【0179】
PPD/polyICによる処理はバイスタンダー効果を誘発した。
PPD/polyIC処理によって誘発されたバイスタンダー効果は、安定にルシフェラーゼ(Luc)を発現する、LNCaP-Luc、PC3-LucおよびMCF7-Luc細胞での共培養系で研究された。
【0180】
LNCaP-Luc細胞を低用量のPPD/polyICで処理し、処置開始後72時間に最大50%の癌細胞死を起こす。予備処理LNCaP-Luc細胞にPBMCを48時間添加すると、まさに癌細胞の100%が死滅した。PPD/polyICで処理しなかった対照細胞はPBMCで影響を受けなかった(
図5A)。
【0181】
加えて、直接的なバイスタンダー効果は、(i)PPD/polyIC-処理LNCaP細胞でPC3-Luc細胞を共培養することによって、および(ii)またはPPD/polyIC-処理PC3-PSMAでMCF7-Luc細胞を共培養することによって示された。PPD/polyIC単独での処理は、PC3-Luc細胞(
図5B)でのMCF7-Luc細胞(
図5C)でも何ら効果を示さなかった。PPD/polyIC-処理LNCaP細胞でのPC3-Luc細胞の共培養は、最大70%≧のPC3-Luc細胞の死をもたらし(
図5B)、PPD/polyIC-処理PC3-PSMAでのMCF7-Luc細胞の共培養は、最大50%のMCF7-Luc細胞の死をもたらした(
図5C)。したがって、PPD/polyIC-処理PSMA過剰発現細胞からの細胞傷害性サイトカインの分泌は、それ自体PPD/polyICによる処理に反応しない共培養された細胞の減少を誘発した。
【0182】
本発明者らは、PSMAを過剰発現しない細胞に対するPPD/polyIC処理の直接的および間接的な合わせたバイスタンダー効果を試験した。再度、(i)PC3-Luc細胞をPPD/polyIC-処理LNCaP細胞と共培養し、および(ii)MCF7-Luc細胞をPPD/polyIC-処理PC3-PSMAと共培養し、細胞培養物の両方の種類にPBMCを添加した。PBMCおよびPPD/polyIC-処理PSMA過剰発現細胞の組み合わせは、PSMAを過剰発現しない実質的な数の細胞の死滅をもたらした。PBMCをPPD/polyIC-処理PC3-LucまたはMCF7-Luc細胞と共培養すると、すなわちPSMA過剰発現細胞なしで共培養すると、おそらく活性化PBMCによってLuc過剰発現細胞の最大20%≧が死滅した(
図5B、C)。本発明者らは、標的化polyICを内在化することができないPC3-LucまたはMCF7-Luc細胞に対するこの効果は、培地中で蓄積しPBMCの活性化を誘発するPPD/polyICによって誘導されると考えている。
【0183】
したがって、これらの実験は、PPD/polyICによる処理がそれ自体PPD/polyICによって標的化されない共培養癌細胞の死をもたらすことを示している。直接的なバイスタンダー効果は、処理した標的化細胞から放出された毒性サイトカインによって誘発され、隣接の非標的化癌細胞の約70%の死もたらした。この効果は、免疫細胞介在間接的バイスタンダー効果を誘発するPBMCを添加することによってさらに亢進することができた。PPD/polyIC単独の適用と比較すると、PBMCの添加は、相当に低いPPD/polyIC用量を用いて細胞死の増加したレベルをもたらした。このことは、抗癌免疫の亢進が全身的に投与されたpolyICの望ましくない副作用を減少させることができることを示している。
【0184】
実施例5-インビトロ試験の結果
PPD/polyICとPBMCとの組み合わせの全身性投与は。前立腺腫瘍異種移植片の退行を誘発する。さらに、PPD/polyICのCRPCに対する効果は、アンドロゲン抵抗性前立腺癌の動物モデルにおいて研究された。雄性NOD-SCIDマウスを、ヒトPSMAを過剰発現するPC3-PSMA細胞で皮下注射した。このようにして生じた腫瘍が約100mm
3の大きさを有していた時に処置を行った。免疫系に対するPPD/polyIC処理の効果および両方の組み合わせた効果を試験するために、動物の免疫系をヒトPBMCの投与によって一部再構築した。NOD-SCIDマウスを3週間以内にPPD/polyICで繰り返し処置し、PPD/polyIC処置中にPBMCで2回注射した(
図6A)。PPD/polyIC非処置対照マウスおよびPBMCでのみ処置したマウスは、大きな腫瘍を発症し、PPD/polyIC処置が開始した3週間後に屠殺しなければならない。反対に、PPD/polyIC処置マウスでは、腫瘍成長は実質的に遅くなった。さらに、PPD/polyIC処置と免疫再構築(PBMCの注射)との組み合わせは、腫瘍サイズの減少さえもたらした。PPD/polyIC+PBMC処置を受けた7匹中4匹では、腫瘍は消えるか、または検出閾値を下回った(
図6B)。したがって、組み合わせたPPD/polyIC+PBMC処置の効果は、単独で投与されたPPD/polyICの効果よりも顕著に優れていた。このことは、免疫細胞の存在下で引き出されたPPD/polyIC自体の直接的な殺腫瘍効果とバイスタンダー効果との組み合わせが、CRPCにおける実質的な腫瘍後退をもたらしたことを示唆している。
【0185】
総合すれば、アンドロゲン抵抗性前立腺癌の異種移植片動物モデルにおいて、PPD/polyICによる処置は腫瘍成長の強力な減少をもたらした。PPD/polyICとPBMCとの組み合わせ処置は腫瘍の大きさを減少させるかまたは腫瘍の根絶さえもたらした。
【0186】
PBMC誘発毒性を避けるために、少数の細胞のみを投与した。このような少数の細胞の強力な効果は、それらが腫瘍に直接に補充されたことを示している。この処置の高スピードおよび高い有効性はこの化学療法に対する抵抗性の発症を抑制するはずである。さらに、バイスタンダー効果によって、不均一腫瘍も効率的に治療しおよび根絶することができる。
【0187】
免疫欠損マウスとは異なり、ヒトCRPC患者は活性な免疫系を有する。この背景の前には、上記の結果は、PSMA標的化polyICがインビボモデルのマウスよりヒトCRPC患者においてさらにより効果的であろうと示唆している。
【0188】
実施例6-細胞培養
すべての組織培養培地は10%胎児ウシ血清、ペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100mg/l)を含んだ。細胞株は5%C0
2で、37℃で培養した。細胞株は表2で指示した培地で成長した。
【0189】
Luc/GFPを有するレンチウイルスを使用して、Zigler et al,2016にしたがってPC3およびLNCaP細胞を感染させ、それによってPC3-Luc/GFPおよびLNCaP-Luc/GFPが産生された(Zigler et al,HER2-Targeted Polyinosine/Polycytosine Therapy Inhibits Tumor Growth and Modulates the Tumor Immune Microenvironment,Cancer Immunol Res 2016,4(8):688-697)。Shir A,et al,2010によれば、Ficoll-Paque PLUS(GE Healthcare)密度勾配遠心分離法によって血液バフィーコートからヒトPBMCが単離され、維持され(Shir A,et al.,EGFR-homing dsRNA activates cancer-targeted immune response and eliminates disseminated EGFR-overexpressing tumors in mice.Clin Cancer Res 2010,17(5):1033-1043)。