(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160408
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】水田作業機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
A01C11/02 350G
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024145938
(22)【出願日】2024-08-27
(62)【分割の表示】P 2023018364の分割
【原出願日】2017-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
(57)【要約】
【課題】走行時の前方視野を十分に確保し、かつ、予備苗載台へのアクセスを悪化させることなく、作業性を低下させずに表示装置を配置する。
【解決手段】田植機1(水田作業機)は、操向ハンドル13及びダッシュボード15が設けられるボンネット16と、ボンネット16の左右方向に対向配置される予備苗載台17と、ボンネット16と予備苗載台17の間の空間に支持フレーム43(支持構造)を介して設置されるタブレット40(表示装置)と、を備える。タブレット40(表示装置)は入力操作可能に構成されている。タブレット40(表示装置)は、予備苗載台17側に取り付けられた支持フレーム43(支持構造)によって支持される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向ハンドル及びダッシュボードが設けられるボンネットと、
前記ボンネットの左右方向に対向配置される予備苗載台と、
前記ボンネットと予備苗載台の間の空間に支持構造を介して設置される表示装置と、を備え、
前記表示装置は、入力操作可能に構成され、
前記表示装置は、前記予備苗載台側に取り付けられた前記支持構造によって支持される、
ことを特徴とする水田作業機。
【請求項2】
前記表示装置は、前記ボンネットと前記予備苗載台の間の空間で姿勢変更可能に支持される、
ことを特徴とする請求項1に記載の水田作業機。
【請求項3】
前記支持構造は、前記予備苗載台の上下方向に延びるフレームに取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水田作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田作業機の操向ハンドル近傍に表示装置を新たに配置する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部のコンピュータシステムなどとデータ交換するために利用されるスマートフォンを支持する構成が開示されている。ここでのスマートフォンを支持する支持アームは、ハンドルポストから右斜め前方に延出される基部と、基部から折り曲げられて横外側に延出される中間部と、さらに上方に折り曲げられて延出される端部とを有することで、スマートフォンを作業者の操向ハンドル付近に配置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、スマートフォンなどの表示装置を配置する台は固定式であるために、大型のタブレット端末等、表示装置の大型化を図った場合に、操向ハンドルの側方のスペースが狭くなり、予備苗載台へのアクセスが悪化するという課題がある。また、それと同時に表示装置の視認性や走行時の前方視野を確保すること、操向ハンドルの操作性を悪化させないこと等、操向ハンドル付近であって、ダッシュボードから離れた位置に計器類とは別の表示装置を設置する際に満足すべき種々の要望がある。本発明は、これらの課題を解決すべく提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
操向ハンドル及びダッシュボードが設けられるボンネットと、前記ボンネットの左右方向に対向配置される予備苗載台と、前記ボンネットと予備苗載台の間の空間に支持構造を介して設置される表示装置と、を備え、前記支持構造は、前記表示装置を前記ボンネットと予備苗載台の何れか一側に退避させて、前記ボンネットと予備苗載台の間の空間を空けることが可能に構成される。
【0006】
前記支持構造は、少なくとも上下方向を中心として前後方向に回動可能であり、前記表示装置を前後方向に回動することで、前記表示装置を前記ボンネットと予備苗載台の何れか一側に退避させる。
【0007】
前記支持構造は、前記表示装置の設置高さを調節可能に構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、走行時の前方視野を十分に確保し、かつ、予備苗載台へのアクセスを悪化させることなく、作業性を低下させずに表示装置を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び
図2を参照して、水田作業機の一例である田植機1の全体構成について説明する。田植機1は、走行機体2と、その後部に装着される植付作業機3とを備え、走行機体2によって走行しつつ植付作業機3によって植付作業を行う。水田作業機としては、田植機1と同様に、走行機体と特定の作業を行う作業機を備えているものであれば良く、播種機、移植機、水田管理作業機等が挙げられる。
【0011】
走行機体2は、エンジン4、エンジン4からの動力を変速するトランスミッション5、エンジン4及びトランスミッション5を支持する機体フレーム6、エンジン4及びトランスミッション5から伝達される動力によって駆動される前輪7及び後輪8等を備える。
【0012】
エンジン4及びトランスミッション5からの動力は、それぞれフロントアクスルケース9、リアアクスルケース10に伝達される。フロントアクスルケース10は、機体フレーム6の前部に支持されるとともに、その左右両端部に前輪7が支承される。同様に、リアアクスルケース10は、機体フレーム6の後部に支持されるとともに、その左右両端部に後輪8が支承される。機体フレーム6の上部は、ステップ11によって被覆されており、オペレータは、ステップ11上を移動可能である。
【0013】
走行機体2の前後中途部に運転席12が配置され、その前方に操向ハンドル13、操作ペダル14、及び、ダッシュボード15等が設けられる。操向ハンドル13及びダッシュボード15は、エンジン4を被覆するボンネット16に設けられている。ダッシュボード15には、操向ハンドル13に加えて主変速レバー、条止めスイッチ等の各種操作用の操作具や作業情報を表示するモニタパネルが配置されている。ステップ11の前方両側部には、予備苗載台17が設けられる。予備苗載台17は、ボンネット16を挟んだ左右対向位置に配置される。予備苗載台17は、ステップ11の側端部から上方に向けて設けられる前後のフレーム18に支持されている。
【0014】
植付作業機3は、走行機体2に対して、昇降リンク機構20を介して連結されている。昇降リンク機構20は、左右一対の上リンク21及び下リンク22、昇降シリンダ等を備える。昇降シリンダによって下リンク22、上リンク21を回動させて植付作業機3を昇降させる。
【0015】
植付作業機3は、植付アーム31、植付爪32、苗載台33、フロート34等を備える。植付爪32は、植付アーム31に取り付けられている。植付作業機3は、トランスミッション5から後方に向けて延出されるPTO軸によって駆動される。より詳細には、PTO軸から植付センターケース35を介して植付作業機3に設けられる植付伝動ケース36に動力が伝達されて、植付伝動ケース36から植付アーム31、植付爪32に動力が分配される。
【0016】
植付アーム31は、植付伝動ケース36から伝達される動力によって回転する。植付爪32には、苗載台33から苗が供給される。植付アーム31の回転運動に伴って、植付爪32が圃場内に挿入され、所定の植え付け深さとなるように苗が植え付けられる。なお、本実施形態では、ロータリ式の植付爪を採用しているが、クランク式のものを用いても良い。
【0017】
苗載台33は、板状の部材によって構成され、機体側面視において前高後低状に傾斜するように配設される。苗載台33の後面には、苗マットを載置する載置面が植付アームの数(田植機の条数)に応じて形成される。本実施形態の田植機1は、6条植えの田植機であるため、載置面が6つ形成されている。
【0018】
次に、田植機1の操向ハンドル13の近傍にタブレット端末40を配置する実施形態について説明する。タブレット端末40は、入力操作可能な表示装置を備える一般的なタブレット端末であり、例えば、田植機1の自動走行を行う際に走行ルートを表示したり、自動走行と手動走行の切り換え操作を行ったりするものである。
【0019】
以下、本発明の要部について説明する。
図3に示すように、タブレット端末40は、操向ハンドル13の側方であって、ボンネット16と左右一側の予備苗載台17の間の設置エリアAに配置される。つまり、タブレット端末40は、ボンネット16と予備苗載台17との間の通路上に設置される。また、タブレット端末40は、ダッシュボード15の下端位置よりも上方に配置することにより、ダッシュボード15上に設けられた各種操作具やモニタパネルからの視線移動を少なくすることができる。これにより、運転操作装置としてのタブレット端末40を導入する際にも、運転者に疲れにくいレイアウトにすることができる。すなわち、タブレット端末40を設置する目安としては、視認性の確保、運転操作への影響を考慮し、ダッシュボード15の下端位置よりも上方とすることが好ましい。
【0020】
他方、タブレット端末40を上方に配置しすぎると、前方視野に影響を及ぼし得ることから、操向ハンドル13の高さを大きく超えて設置することは好ましくない。つまり、視認性確保及び作業性確保の観点からタブレット端末40の設置エリアAとしては、おおよそダッシュボード15から側方に向けて延長されたような領域とすることが好ましい。また、タブレット端末40の配置を操向ハンドル13の側方領域とすることで、操向ハンドル13の操作への妨げになることがなくなる。
【0021】
上述のようにタブレット端末40の設置エリアAは、ボンネット16と予備苗載台17との間の空間であることから、予備苗載台17に置かれた予備苗マットを継ぎ足す際や、田植機1の前方を畦際に近づけて機体前側から乗り降りする際に、その空間を通行する必要がある。このため、本実施形態では、タブレット端末40を支持する支持構造を工夫している。すなわち、タブレット端末40を使用時は、設置エリアAに配置し、使用しないときには、設置エリアAから退避させて、その空間を空けることができる構造を採用している。
【0022】
例えば、
図4に示すように、上下方向に延びる軸(後側のフレーム18)周りに回動(田植機1の前後方向に回動)可能な関節部41及びタブレット端末40を保持可能な保持部42を有した支持フレーム43を用いて、予備苗載台17のフレーム18に取り付けることで、設置エリアAに配置した使用位置と、設置エリアAから退避した退避位置とに切り替えることが可能である。関節部41は、フレーム18に着脱自在に取り付けられる。保持部42は、関節部41から水平方向に延出され、その先端にタブレット端末40を保持する保持具を有している。
【0023】
また、フレーム18に固定用穴44を上下方向に複数設け、支持フレーム43の取り付け位置(つまり関節部41の取り付け位置)として予備苗載台17のフレーム18の任意の固定用穴44を選択することで、タブレット端末40の上下位置を容易に調節することが可能である。
【0024】
以上のように、本実施形態の支持構造によれば、タブレット端末40をボンネット16と予備苗載台17の左右方向の間(設置エリアA)に配置するとともに、予備苗マットの苗継ぎ作業の際等、その空間を通行する時には、支持フレーム43を予備苗載台17側に折り畳むことで、ボンネット16と予備苗載台17の間の空間を通路として空けることができる。これにより、田植機1の走行時の前方視野を十分に確保しつつ、予備苗載台17へのアクセスを悪化させることなく、作業性を低下させずに大型の表示装置としてのタブレット端末40を良好に配置することが可能である。
【0025】
さらに、支持フレーム43を、比較的設計自由度の高い予備苗載台17のフレーム18に取り付けることで既存機種への拡張性を向上することができる。また、支持フレーム43をフレーム18の任意の取り付け位置に取り付けることが可能であることから、高さ方向に調節して運転者の体格や姿勢等に応じた最適な位置にタブレット端末40を配置することが可能となっている。
【0026】
図4に示す例では、タブレット端末40の支持フレーム43に前後方向に回動する関節部41を設けた実施形態について説明したが、タブレット端末40を支持する支持構造としては、タブレット端末40を設置エリアA内の位置から折り畳んだ位置に移動可能なものであればこれに限定されることはない。例えば、多関節の支持構造としても良いし、予備苗載台17側ではなく、ボンネット16側に取り付けても良い。
【0027】
図5に示す支持構造50は、上下方向を中心として前後方向に回動する関節部41とタブレット端末40を保持する保持部42に加えて、水平方向を中心として前後方向に傾倒するチルト部51を備える。支持構造50は、チルト部51を備えることでタブレット端末40を傾倒させて支持することが可能となる。これにより、タブレット端末40を運転者に向けて傾倒させることができ、視認性を向上することができる。なお、チルト部51を保持部42に組み込んでも良い。
【0028】
図6に示す支持構造60は、上下方向を中心に前後方向に回動する第一関節61及び第二関節部62と、タブレット端末40を三次元方向に自在に傾倒可能な第三関節部63と、を備える。第三関節部63は、球状の関節部材を含み、タブレット端末40を三次元方向に傾倒可能に保持している。このように、支持構造60は、位置調節のための関節として、第一関節部61及び第二関節部62の二つの関節を有することで、位置調節の範囲を広げることができ、より適正な位置にタブレット端末40を配置することが可能となる。これとともに、支持構造60は、タブレット端末40を三次元的に傾倒するための関節として、第三関節部63を備える。支持構造60は、タブレット端末40を前後方向に傾倒するだけでなく、自在にタブレット端末40の角度を調節できる多関節構造とすることで、タブレット端末40の表示装置としての視認性を向上することができ、ひいては田植機1の操作性を向上することができる。
【0029】
また、以上の例ではタブレット端末40を予備苗載台17側に取り付けているが、ボンネット16側に取り付けることも可能である。その際も、上述と同様の支持構造を採用することができる。さらに、タブレット端末40を予備苗載台17側とボンネット16側の両方から支持する構造としても良い。
【符号の説明】
【0030】
1:田植機(水田作業機)、13:操向ハンドル、15:ダッシュボード、16:ボンネット、17:予備苗載台、18:フレーム、40:タブレット端末(表示装置)、41:関節部、42:保持部、43:支持フレーム(支持構造)