(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160421
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】搬送用ハンド
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20241107BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20241107BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J15/08 Z
C04B38/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075362
(22)【出願日】2023-05-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り アスザック株式会社が、「SEMICON JAPAN 2022(2022年12月14~16日:東京ビッグサイト東展示棟・会議棟にて開催)」にて、本願発明に係る搬送用ハンドを公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】000126447
【氏名又は名称】アスザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】久保 勲
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 静雄
【テーマコード(参考)】
3C707
4G019
5F131
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES17
3C707EV02
4G019FA11
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131CA23
5F131DA32
5F131DA37
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB05
5F131DB32
5F131DB34
5F131DB42
5F131DB45
(57)【要約】
【課題】製造コストの高騰を招くことなく、薄厚化および軽量化を図り、かつ温度変化に起因する変形が生じ難い搬送用ハンドを提供する。
【解決手段】薄板状の搬送対象物を載置可能に構成されると共に搬送対象物を搬送する搬送装置に取り付け可能に構成され、少なくとも搬送対象物が載置される載置部(載置面10の形成部位)が多孔質セラミックスで薄板状に形成されている。この搬送用ハンドは、気孔率が50%以上70%以下の範囲内の多孔質セラミックスで形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の搬送対象物を載置可能に構成されると共に当該搬送対象物を搬送する搬送装置に取り付け可能に構成された搬送用ハンドであって、
少なくとも前記搬送対象物が載置される載置部が多孔質セラミックスで薄板状に形成されている搬送用ハンド。
【請求項2】
前記搬送装置に取り付ける取付部から前記載置部まで前記多孔質セラミックスで一体形成されている請求項1記載の搬送用ハンド。
【請求項3】
気孔率が50%以上70%以下の範囲内の前記多孔質セラミックスで形成されている請求項1または2記載の搬送用ハンド。
【請求項4】
前記載置部に前記搬送対象物を嵌入可能な凹部が形成されている請求項1または2記載の搬送用ハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物のシリコンウエハ等を載置可能に構成されると共にシリコンウエハ等を搬送する搬送装置に取り付け可能に構成された搬送用ハンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体の製造現場には、スタック位置と処理位置との間でシリコンウエハを搬送する搬送装置が設置されている。この場合、スタック位置では、限られたスペース内に多数のシリコンウエハを効率良くスタックすることができるように、各シリコンウエハが厚み方向で極く近距離に接近させられた状態でスタックされている。したがって、この種の搬送装置では、スタック位置において近接させられている各シリコンウエハの間に挿入可能な薄厚の搬送用ハンドを備え、この搬送用ハンド上にシリコンウエハを載置した状態で搬送することができるように構成されている。
【0003】
一方、下記の特許文献1には、SiC-Si複合材料で構成された一対の平板の間に、SiC-Si複合材料で構成されたハニカム構造体が挟み込まれ、両平板とハニカム構造体とが一体的に接合されて構成された搬送装置用ハンド(以下、単に「搬送用ハンド」ともいう)が開示されている。この搬送用ハンドの構成では、心材をハニカム構造体で構成したことにより、軽量化が図られ、かつ熱伝導率が小さくなっている。これにより、アルミニウムの無垢材等で形成された搬送用ハンドと比較して、自重に起因する撓み量が小さく、かつ温度変化に伴う変形が生じ難い搬送用ハンドを提供することが可能となっている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、炭素繊維および樹脂の複合材で構成された層と、金属(アルミニウム合金)で構成された層とを有する積層体で構成された搬送装置用ハンド(以下、単に「搬送用ハンド」ともいう)が開示されている。この搬送用ハンドは、複数枚のプリプレグ(樹脂を含浸させた炭素繊維シート)を積層した未硬化のプリプレグ層と、金属で形成した層(金属の板)とを積層し、この積層物を加熱加圧することによってプリプレグを硬化させつつ金属の層と一体化させて製造されている。これにより、アルミニウムの無垢材等で形成された搬送用ハンドと比較して、外力に起因する変形や、温度変化に伴う変形が生じ難い搬送用ハンドを提供することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-175141号公報(第2-3頁、第1図)
【特許文献2】特開平11-354607号公報(第2-4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の各特許文献に開示の搬送用ハンドには、以下のような解決すべき課題が存在する。
【0007】
具体的には、上記特許文献1に開示の搬送用ハンドは、押し出し成形法などでハニカム構造体を製作し、別途製作した平板に接合剤を塗布してハニカム構造体の両面に貼り付け、その後に加熱処理することによって構造体の両面に平板を接合して一体化させた後に、ハニカム構造体において平板からはみ出している部位を切除したり、取り付け用の孔を開口したりすることで製造されている。
【0008】
この場合、この搬送用ハンドでは、ハニカム構造体を心材として使用することで軽量化が図られている。しかしながら、押し出し成形法によって形成可能な空隙の小径化には限界があるため、製作されるハニカム構造体の厚みを十分に薄厚化するのが困難となっている。この結果、この搬送用ハンドを挿入可能とするために、スタック位置においてシリコンウエハを十分に離間させてスタックしなくてはならず、限られたスペース内にスタック可能な枚数が少数となったり、上下方向において十分に離間させられている各シリコンウエハを搬送するために搬送用ハンドを上下方向に大きく移動させる必要が生じたりするという課題が存在する。
【0009】
加えて、上記特許文献1に開示の搬送用ハンドでは、押し出し成形法によるハニカム構造体の製作コストが高く、さらに、平板の接合(接合剤の塗布および加熱処理)などの複数の工程を経る必要があることから、その製造コストの低減が困難となっているという課題も存在する。
【0010】
また、上記特許文献2に開示の搬送用ハンドは、炭素繊維が所定の配向となるように複数枚のプリプレグを積層し、さらに、金属の板を積層した状態で加熱加圧することでこれらを一体化させる製造方法、または、複数枚のプリプレグを積層した積層物を加熱硬化させた後に、金属の板と接着剤で貼り合わせる製造方法などで製造されている。
【0011】
この場合、この搬送用ハンドでは、炭素繊維と樹脂との混合材を使用することで、必要とされる物理的強度を確保しつつ、軽量化が図られている。しかしながら、プリプレグの硬化物(複合材)と、金属の板(アルミニウム等)とでは、その熱膨張率が大きく相違し、温度変化が生じたときの熱膨張量/収縮量が大きく相違する。このため、この搬送用ハンドでは、温度変化に起因する撓み(搬送用ハンドの変形)が生じるおそれがある。また、熱膨張/収縮が生じる都度、プリプレグの硬化物と金属の板との接合面に、互いを面方向に沿って引き離そうとする力が生じるため、接合力が低下して剥離が生じるおそれもある。
【0012】
さらに、上記特許文献1,2に開示の搬送用ハンドは、いずれも、シリコンウエハの載置面が平坦に形成されている。このため、これらの搬送用ハンド上にシリコンウエハを載置した状態で搬送している最中に搬送用ハンドに対して振動が加わったときに、搬送用ハンドに対してシリコンウエハが移動してしまうおそれがある。かかる場合には、搬送したシリコンウエハを処理装置やスタック具にセットすることができなくなったり、最悪の場合には、シリコンウエハが落下してしまったりする。このため、これらの搬送用ハンドには、振動に起因するシリコンウエハの移動を回避するために、搬送時における移動速度を低下せざるを得ないという課題が存在する。
【0013】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、製造コストの高騰を招くことなく、薄厚化および軽量化を図り、かつ温度変化に起因する変形が生じ難く、搬送時に搬送対象物を高速移動させることが可能な搬送用ハンドを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の搬送用ハンドは、薄板状の搬送対象物を載置可能に構成されると共に当該搬送対象物を搬送する搬送装置に取り付け可能に構成された搬送用ハンドであって、少なくとも前記搬送対象物が載置される載置部が多孔質セラミックスで薄板状に形成されている。
【0015】
請求項2記載の搬送用ハンドは、請求項1記載の搬送用ハンドにおいて、前記搬送装置に取り付ける取付部から前記載置部まで前記多孔質セラミックスで一体形成されている。
【0016】
請求項3記載の搬送用ハンドは、請求項1または2記載の搬送用ハンドにおいて、気孔率が50%以上70%以下の範囲内の前記多孔質セラミックスで形成されている。
【0017】
請求項4記載の搬送用ハンドは、請求項1または2記載の搬送用ハンドにおいて、前記載置部に前記搬送対象物を嵌入可能な凹部が形成されている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の搬送用ハンドによれば、少なくとも搬送対象物が載置される載置部を多孔質セラミックスで薄板状に形成したことにより、別途製作した部材を積層・接合して形成した搬送用ハンドと比較して、製造コストの高騰を招くことなく、十分に薄厚で軽量な搬送用ハンドを提供することができる。これにより、極く近距離に近接させられた搬送対象物の間に搬送用ハンドを好適に差し込むことができるため、スタック位置の限られたスペースに多数の搬送対象物をスタックすることができ、これらの搬送に際して搬送用ハンドを上下方向に移動させる距離を十分に短縮することができると共に、搬送対象物の搬送中に加わった振動を短時間で減衰させることができる結果、ある程度の振動が加わる状態でも搬送対象物を好適に搬送することができ、これにより、搬送対象物を高速移動させることができる。また、熱膨張率が異なる異種材料の部位が存在しないため、温度変化が生じたときに、搬送用ハンドの各部を一様に熱膨張/収縮させることができるため、温度変化に起因する搬送用ハンドの変形を回避することができる。
【0019】
また、請求項2記載の搬送用ハンドによれば、搬送装置に取り付ける取付部から載置部まで多孔質セラミックスで一体形成したことにより、例えば取付部と載置部とを異なる素材で形成した搬送用ハンドとは異なり、取付部と載置部とを接合する工程が不要となる分だけ、搬送用ハンドの製造コストを低減することができると共に、温度変化が生じたときに取付部と載置部とを同様に熱膨張/収縮させることができるため、長期に亘って使用して熱膨張/収縮が繰り返し発生したとしても、取付部と載置部とが分離するような破損が生じるのを好適に回避することができる。
【0020】
また、請求項3記載の搬送用ハンドによれば、気孔率が50%以上70%以下の範囲内の多孔質セラミックスで形成したことにより、気孔率を50%以上としたことで十分に軽量化することができ、気孔率を70%以下としたことで十分な物理的強度を得ることができる。
【0021】
また、請求項4記載の搬送用ハンドによれば、搬送対象物を嵌入可能な凹部を載置部に形成したことにより、搬送中の搬送対象物が載置部から離脱する事故を好適に回避することができる。これにより、搬送対象物を一層高速に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、「搬送用ハンド」の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1,2に示す搬送用ハンド1は、「搬送用ハンド」の一例であって、「薄板状の搬送対象物」の一例であるシリコンウエハ(図示せず:以下、単に「ウエハ」ともいう)を載置可能に構成されると共に、半導体等の製造現場に設置されている搬送装置(図示せず)に取り付け可能構成されている。
【0025】
この搬送用ハンド1は、ウエハが載置される載置面10が設けられている部位(「載置部」の一例)から、搬送用ハンド1を搬送装置に取り付けるためのボルトを挿通可能な挿通用孔11,11が設けられている部位(「取付部」の一例)まで、その全体が多孔質セラミックスによって薄板状(略平板状)に一体形成されている(「取付部から載置部まで多孔質セラミックスで一体形成されている」との構成の一例)。この場合、本例の搬送用ハンド1では、気孔率が50%以上70%以下の範囲内(一例として、気孔率60%±10%の範囲内で、気孔径4μm~50μm程度)の多孔質セラミックスで形成されている。
【0026】
また、載置面10には、ウエハの嵌入が可能な位置決め用凹部12a,12b(「搬送対象物を嵌入可能な凹部」の一例)が設けられている。この場合、本例の搬送用ハンド1では、大径のウエハを嵌入可能な位置決め用凹部12a、および小径のウエハを嵌入可能な位置決め用凹部12b(以下、区別しないときには「位置決め用凹部12」ともいう)が平面視同心円状となるように形成されている。また、本例の搬送用ハンド1では、先端部側(両図における右側:挿通用孔11,11が設けられている部位の反対側)に、位置決め用凹部12に達する開口長の切欠き13が設けられている。これにより、この搬送用ハンド1では、位置決め用凹部12に嵌入されたウエハを、その周方向における3箇所で挟持(保持)することが可能となっている。
【0027】
この搬送用ハンド1の製造に際しては、一例として、原料調合工程、造粒工程、成形工程、焼成工程、および整形工程をこの順で実行する。この場合、原料調合工程では、一例として、アルミナやSiC(炭化ケイ素)などの主材にバインダー、気孔形成用の樹脂粉体、および溶媒などを混合し、ボールミルにて攪拌しつつ粉砕することで原料スラリーを製作する。また、造粒工程では、原料調合工程によって製作した原料スラリーを、スプレードライヤー装置にセットして80ミクロン程度の顆粒体とする。また、成形工程では、造粒工程によって製作した顆粒体を型枠に詰め込み、加圧することで平板状に加工する。また、焼成工程では、成形工程によって平板状に加工した成形物を1500℃~1700℃程度の炉内で焼成することで焼結体を製作する。また、整形工程では、焼成工程によって製作された焼結体を所望の外形に切断すると共に、挿通用孔11や位置決め用凹部12を形成し、かつウエハが接する面(載置面10)を平滑化する。以上により、
図1,2に示す搬送用ハンド1が完成する。
【0028】
この搬送用ハンド1では、搬送対象物であるウエハが載置される「載置部(位置決め用凹部12が設けられている部位:載置面10の部位)を含む搬送用ハンド1の全体が、気孔率50%以上70%以下の範囲内(本例では、気孔率60%±10%の範囲内)の多孔質セラミックスによって形成されている。したがって、この搬送用ハンド1では、挿通用孔11を挿通させたボルトによって搬送装置に取り付けられた状態において搬送装置から側方に突出させられる部位が非常に軽量で、かつ十分な物理的強度(形状復元力)を有する状態となっている。これにより、この搬送用ハンド1では、ウエハの搬送中に振動が加わったとしても、搬送用ハンド1の自重によって「載置部」の上下方向への移動(振動)が増幅される事態を招くことなく、その形状復元力によって振動を短時間で減衰させることが可能となっている。したがって、この搬送用ハンド1によれば、ある程度の振動が加わったとしても脱落や傷付きを招くことなくウエハを搬送できるため、スタック位置と処理位置との間でウエハを高速移動させることが可能となっている。
【0029】
この場合、気孔率50%を下回る多孔質セラミックスによって搬送用ハンド1と同形状の搬送用ハンドを製造したときには、その搬送用ハンドの自重が搬送用ハンド1よりも大きくなるため、搬送中に振動が加わったときに、この振動が搬送用ハンドの自重によって増幅され、大きな振動が長時間に亘って継続する事態を招くこととなる。この結果、ウエハを高速移動させることでやや大きな振動が加わったときに、搬送用ハンドとウエハとが小刻みに接触/離反してウエハが傷付いたり、搬送用ハンドからウエハが脱落したりするおそれがある。一方、気孔率70%を超える多孔質セラミックスによって搬送用ハンド1と同形状の搬送用ハンドを製造したときには、その自重を搬送用ハンド1よりも小さくすることができるものの、製造された搬送用ハンドの物理的強度(形状復元力)が不足し、長期間の使用によって繰り返し振動が加わったときに割れや欠けが生じるおそれがある。
【0030】
また、この搬送用ハンド1では、前述の特許文献1,2に開示の搬送用ハンドのような多層構造の搬送用ハンドとは異なり、その全体が多孔質セラミックスで一体形成されている。このため、別途製作した部材の積層・接合(接着)の工程が不要となる分だけ、その製造コストを低減することができる。また、前述の特許文献1に開示の搬送用ハンドのようなハニカム構造体を心材とする搬送用ハンドと比較して十分に薄厚化することができるため、極く近距離に近接させたウエハの間に搬送用ハンド1をスムースに差し込むことが可能となっている。また、熱膨張率が相違する複数種類の材料で構成された搬送用ハンドとは異なり、温度変化が生じたときに、搬送用ハンド1の各部を一様に熱膨張/収縮させることができる。このため、その外形を好適に維持することが可能となっている。
【0031】
このように、この搬送用ハンド1によれば、少なくとも搬送対象物のウエハが載置される「載置部」を多孔質セラミックスで薄板状に形成したことにより、別途製作した部材を積層・接合して形成した搬送用ハンドと比較して、製造コストの高騰を招くことなく、十分に薄厚で軽量な搬送用ハンド1を提供することができる。これにより、極く近距離に近接させられたウエハの間に搬送用ハンド1を好適に差し込むことができるため、スタック位置の限られたスペースに多数のウエハをスタックすることができ、これらの搬送に際して搬送用ハンド1を上下方向に移動させる距離を十分に短縮することができると共に、ウエハの搬送中に加わった振動を短時間で減衰させることができる結果、ある程度の振動が加わる状態でもウエハを好適に搬送することができ、これにより、ウエハを高速移動させることができる。また、熱膨張率が異なる異種材料の部位が存在しないため、温度変化が生じたときに、搬送用ハンド1の各部を一様に熱膨張/収縮させることができるため、温度変化に起因する搬送用ハンド1の変形を回避することができる。
【0032】
また、この搬送用ハンド1によれば、搬送装置に取り付ける「取付部」から「載置部」まで多孔質セラミックスで一体形成したことにより、例えば「取付部」と「載置部」とを異なる素材で形成した搬送用ハンドとは異なり、「取付部」と「載置部」とを接合する工程が不要となる分だけ、搬送用ハンド1の製造コストを低減することができると共に、温度変化が生じたときに「取付部」と「載置部」とを同様に熱膨張/収縮させることができるため、長期に亘って使用して熱膨張/収縮が繰り返し発生したとしても、「取付部」と「載置部」とが分離するような破損が生じるのを好適に回避することができる。
【0033】
また、この搬送用ハンド1によれば、気孔率が50%以上70%以下の範囲内の多孔質セラミックスで形成したことにより、気孔率を50%以上としたことで十分に軽量化することができ、気孔率を70%以下としたことで十分な物理的強度を得ることができる。
【0034】
また、この搬送用ハンド1によれば、搬送対象物のウエハを嵌入可能な位置決め用凹部12を「載置部(載置面10)」に形成したことにより、搬送中のウエハが載置面10から離脱する事故を好適に回避することができる。これにより、ウエハを一層高速に移動させることができる。
【0035】
なお、「搬送用ハンド」は、上記した各製造方法の例に限定されない。
【0036】
例えば、「取付部」から「載置部」まで多孔質セラミックスで一体形成した搬送用ハンド1の構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、多孔質セラミックスで形成された「載置部」と、多孔質セラミックス以外の素材(アルミニウムなどの金属材料等)で形成された「取付部」とを接合して一体化した構成を採用することもできる。このような構成を採用するときには、搬送用ハンドに加わる振動に起因して接合強度が大きく低下することのないように、振動が伝わり難い部位(搬送装置に対して面的に接する部位など)で「取付部」と「載置部」とを接合するのが好ましい。また、「搬送対象物」としてのシリコンウエハを搬送可能な搬送用ハンド1の構成を例に挙げて説明したが、「搬送対象物」はこれに限定されず、小型液晶パネルや小型有機ELパネル等の表示器用部品などの各種の「薄板状の物品」を「搬送対象物」として搬送可能に構成することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 搬送用ハンド
10 載置面
11 挿通用孔
12a,12b 位置決め用凹部
13 切欠き