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特開2024-160425加熱処理設備の運転方法及び制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160425
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】加熱処理設備の運転方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/10 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
C02F11/10 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075377
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井上 智行
(72)【発明者】
【氏名】宮本 博司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】隅 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】竹田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕大
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA01
4D059AA02
4D059AA03
4D059AA07
4D059AA23
4D059BA12
4D059BB03
4D059BC01
4D059BE10
4D059BE15
4D059BE16
4D059BE26
4D059BE37
4D059CA01
4D059CA11
4D059EA01
4D059EA06
4D059EA09
4D059EB01
(57)【要約】
【課題】効率的な運転を実現可能な加熱処理設備の運転方法を提供する。
【解決手段】水を含む固形物を固液分離する固液分離器30と、固液分離器30で含水率が低下した固形物を加熱する加熱処理装置40と、加熱処理装置40の加熱源となる熱媒を加温する熱源器50と、を備えた加熱処理設備100の運転方法は、加熱処理装置40に導入される固形物の含水率を所定値に設定したときに熱媒の加温に必要な第一熱エネルギー、及び、熱源器50が加熱処理装置40に供給可能な第二熱エネルギーを予測する予測ステップと、第一熱エネルギーが第二熱エネルギーよりも小さいとき、固液分離器30の運転能力を低下させて固形物の含水率を所定値より大きくし、第一熱エネルギーが第二熱エネルギーよりも大きいとき、固液分離器30の運転能力を上昇させて固形物の含水率を所定値よりも小さくする含水率調整ステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む固形物を固液分離する固液分離器と、前記固液分離器で含水率が低下した前記固形物を加熱する加熱処理装置と、前記加熱処理装置の加熱源となる熱媒を加温する熱源器と、を備えた加熱処理設備の運転方法であって、
前記加熱処理装置に導入される前記固形物の含水率を所定値に設定したときに前記熱媒の加温に必要な第一熱エネルギーを予測すると共に、前記熱源器が前記加熱処理装置に供給可能な第二熱エネルギーを予測する予測ステップと、
前記予測ステップで予測された前記第一熱エネルギーが前記第二熱エネルギーよりも小さいとき、前記固液分離器の運転能力を低下させて前記固形物の含水率を所定値より大きくすると共に、前記予測ステップで予測された前記第一熱エネルギーが前記第二熱エネルギーよりも大きいとき、前記固液分離器の運転能力を上昇させて前記固形物の含水率を所定値よりも小さくする含水率調整ステップと、を含む加熱処理設備の運転方法。
【請求項2】
前記含水率調整ステップでは、前記固形物の含水率を低下させるために前記固液分離器に投入される薬品の量によって前記運転能力を調整する請求項1に記載の加熱処理設備の運転方法。
【請求項3】
前記含水率調整ステップでは、前記固液分離器における前記固形物の滞留時間を調節することによって前記運転能力を調整する請求項1に記載の加熱処理設備の運転方法。
【請求項4】
前記熱源器は、メタン発酵によって発生した消化ガスを用いて発電することにより発生する廃熱の熱エネルギーによって前記熱媒を加温する発電機と、前記消化ガスとは別の燃料により発生した熱エネルギーにより前記熱媒を加温するボイラとを有している請求項1~3の何れか一項に記載の加熱処理設備の運転方法。
【請求項5】
前記予測ステップでは、前記発電機で回収可能な前記第二熱エネルギーを予測する請求項4に記載の加熱処理設備の運転方法。
【請求項6】
前記予測ステップでは、前記加熱処理装置に投入される前記固形物の投入量及び温度に基づいて前記第一熱エネルギーを予測する請求項5に記載の加熱処理設備の運転方法。
【請求項7】
前記予測ステップでは、前記固液分離器で処理されて含水率が低下した固形物以外の追加固形物を前記加熱処理装置に投入する場合、前記発電機及び前記ボイラで回収可能な前記第二熱エネルギーを予測する請求項5に記載の加熱処理設備の運転方法。
【請求項8】
水を含む固形物を固液分離する固液分離器と、前記固液分離器で含水率が低下した前記固形物を加熱する加熱処理装置と、前記加熱処理装置の加熱源となる熱媒を加温する熱源器と、を備えた加熱処理設備の制御装置であって、
前記加熱処理装置に導入される前記固形物の含水率を所定値に設定したときに前記熱媒の加温に必要な第一熱エネルギーを予測すると共に、前記熱源器が前記加熱処理装置に供給可能な第二熱エネルギーを予測する予測部と、
前記予測部で予測された前記第一熱エネルギーが前記第二熱エネルギーよりも小さいとき、前記固液分離器の運転能力を低下させ、前記予測部で予測された前記第一熱エネルギーが前記第二熱エネルギーよりも大きいとき、前記固液分離器の運転能力を上昇させる制御部と、を備えた加熱処理設備の制御装置。
【請求項9】
前記予測部は、前記加熱処理装置に投入される前記固形物の投入量及び温度に基づいて前記第一熱エネルギーを予測する請求項8に記載の加熱処理設備の制御装置。
【請求項10】
前記予測部は、メタン発酵槽から発生した消化ガスを用いて発電する発電機に導入される前記消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーに基づいて前記第二熱エネルギーを予測する請求項8又は9に記載の加熱処理設備の制御装置。
【請求項11】
前記加熱処理設備は、被処理物を受け入れてメタン発酵処理するメタン発酵槽を更に備え、
前記熱源器は、前記メタン発酵処理によって発生した消化ガスを用いて発電することにより発生する廃熱の熱エネルギーによって前記熱媒を加温する発電機であり、前記廃熱の熱エネルギーによって前記メタン発酵槽を更に加温する請求項8又は9に記載の加熱処理設備の制御装置。
【請求項12】
前記予測部は、前記消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーから前記メタン発酵槽の加温に必要となる熱エネルギーを減算することにより前記第二熱エネルギーを予測する請求項11に記載の加熱処理設備の制御装置。
【請求項13】
前記メタン発酵槽の加温に必要となる熱エネルギーは、前記メタン発酵槽に投入される前記被処理物の投入量及び温度、前記メタン発酵槽から排出される前記被処理物の投入量及び温度、前記消化ガスの熱量および前記メタン発酵槽の熱損失に基づいて予測される請求項12に記載の加熱処理設備の制御装置。
【請求項14】
前記予測部は、メタン発酵槽から発生した消化ガスを用いて発電する発電機に導入される前記消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーから前記メタン発酵槽で必要となる熱エネルギー及び前記固液分離器で必要となる換算された熱エネルギーを減算することにより前記第二熱エネルギーを予測する請求項8又は9に記載の加熱処理設備の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理設備の運転方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固液分離器(文献では、脱水機)と、固液分離器で含水率が低下した固形物(文献では脱水ケーキ)を加熱する加熱処理装置(文献では炭化設備)と、加熱処理装置の加熱源となる熱媒を加温する熱源器(文献では熱供給装置)と、を備えた加熱処理設備の運転方法(文献では汚泥処理方法)が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の汚泥処理方法は、消化槽で高濃度汚泥をメタン発酵処理して発生した消化ガスにより生成可能な1日当たりの熱量が、消化槽の加温に必要な1日当たりの必要加熱熱量と、炭化設備による脱水ケーキの炭化に必要な1日当たりの必要炭化熱量との和よりも大きいことを前提としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-51417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の汚泥処理方法は、高濃度消化を前提として加熱処理装置への加熱熱量が全て消化ガスの熱量で補えるものである。しかしながら、高濃度消化でない通常のメタン発酵処理では、消化ガスだけで加熱処理装置への加熱熱量が補えない場合が想定されるため、改善の余地がある。
【0006】
そこで、効率的な運転を実現可能な加熱処理設備の運転方法及び制御装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加熱処理設備の運転方法の特徴は、水を含む固形物を固液分離する固液分離器と、前記固液分離器で含水率が低下した前記固形物を加熱する加熱処理装置と、前記加熱処理装置の加熱源となる熱媒を加温する熱源器と、を備えた加熱処理設備の運転方法であって、前記加熱処理装置に導入される前記固形物の含水率を所定値に設定したときに前記熱媒の加温に必要な第一熱エネルギーを予測すると共に、前記熱源器が前記加熱処理装置に供給可能な第二熱エネルギーを予測する予測ステップと、前記予測ステップで予測された前記第一熱エネルギーが前記第二熱エネルギーよりも小さいとき、前記固液分離器の運転能力を低下させて前記固形物の含水率を所定値より大きくすると共に、前記予測ステップで予測された前記第一熱エネルギーが前記第二熱エネルギーよりも大きいとき、前記固液分離器の運転能力を上昇させて前記固形物の含水率を所定値よりも小さくする含水率調整ステップと、を含む点にある。
【0008】
本方法では、加熱処理装置に導入される固形物の含水率を所定値に設定したときに熱媒の加温に必要な第一熱エネルギーを予測している。つまり、固形物の含水率の変動を受けずに、第一エネルギーを予測することが可能となる。そして、例えば消化ガスで駆動される熱源器が供給可能な第二熱エネルギーを予測し、これら第一熱エネルギーと第二熱エネルギーとを比較するため、第二熱エネルギーが増減する状況下で加熱処理装置に余剰熱エネルギーが存在するかを判定できる。
【0009】
更に本方法における含水率調整ステップでは、第一熱エネルギーが第二熱エネルギーよりも小さいとき、固液分離器の運転能力を低下させて固形物の含水率を所定値より大きくする。一方、第一熱エネルギーが第二熱エネルギーよりも大きいとき、固液分離器の運転能力を上昇させて固形物の含水率を所定値よりも小さくする。つまり、加熱処理装置に余剰熱エネルギーが存在する場合、固液分離器の運転能力を低下させて運転効率を高めることができる。一方、加熱処理装置の熱エネルギーが不足する場合、固液分離器の運転能力を上昇させることで固形物の含水率を下げ、加熱処理装置による適切な炭化処理を実現することができる。
【0010】
このように、効率的な運転を実現可能な加熱処理設備の運転方法となっている。
【0011】
他の特徴として、前記含水率調整ステップでは、前記固形物の含水率を低下させるために前記固液分離器に投入される薬剤の量によって前記運転能力を調整する点にある。
【0012】
本方法のように、加熱処理装置の熱エネルギーが不足する場合に薬剤の量によって固液分離器の運転能力を調整すれば、制御形態が簡便であり、固形物の含水率を確実に低下させることができる。
【0013】
他の特徴として、前記含水率調整ステップでは、前記固液分離器における前記固形物の滞留時間を調節することによって前記運転能力を調整する点にある。
【0014】
本方法のように、固液分離器における前記固形物の滞留時間を調節することによって前記運転能力を調整すれば、制御形態が簡便である。
【0015】
他の特徴として、前記熱源器は、メタン発酵によって発生した消化ガスを用いて発電することにより発生する廃熱の熱エネルギーによって前記熱媒を加温する発電機と、前記消化ガスとは別の燃料により発生した熱エネルギーにより前記熱媒を加温するボイラとを有している点にある。
【0016】
本方法のように、熱源器が発電機の廃熱利用だけでなく、別の燃料により熱エネルギーを発生されるボイラを有していれば、仮に消化ガスに基づく発電機の第二熱エネルギーが不足する場合でも、緊急的にボイラを使用して第二熱エネルギーを補うことができる。
【0017】
他の特徴として、前記予測ステップでは、前記発電機で回収可能な前記第二熱エネルギーを予測する点にある。
【0018】
本方法のように発電機で回収可能な第二熱エネルギーを予測することにより、例えば熱処理装置に供給するエネルギーを消化ガスのみで発生させることが可能である場合は、熱媒を加温するためにボイラに供給する別の燃料を使用する必要がなくなり、運転コストを低減することができる。
【0019】
他の特徴として、前記予測ステップでは、前記加熱処理装置に投入される前記固形物の投入量及び温度に基づいて前記第一熱エネルギーを予測する点にある。
【0020】
本方法のように、加熱処理装置に投入される固形物の投入量及び温度に基づいて第一熱エネルギーを予測すれば、第一熱エネルギーの予測精度が高まる。
【0021】
他の特徴として、前記予測ステップでは、前記固液分離器で処理されて含水率が低下した固形物以外の追加固形物を前記加熱処理装置に投入する場合、前記発電機及び前記ボイラで回収可能な前記第二熱エネルギーを予測する点にある。
【0022】
本方法のように場外から搬入された追加固形物を加熱処理装置に投入する場合に、ボイラで発生した熱エネルギーも活用することにより、加熱処理された固形物を多く製造することができる。
【0023】
本発明に係る加熱処理設備の制御装置の特徴構成は、水を含む固形物を固液分離する固液分離器と、前記固液分離器で含水率が低下した前記固形物を加熱する加熱処理装置と、前記加熱処理装置の加熱源となる熱媒を加温する熱源器と、を備えた加熱処理設備の制御装置であって、前記加熱処理装置に導入される前記固形物の含水率を所定値に設定したときに前記熱媒の加温に必要な第一熱エネルギーを予測すると共に、前記熱源器が前記加熱処理装置に供給可能な第二熱エネルギーを予測する予測部と、前記予測部で予測された前記第一熱エネルギーが前記第二熱エネルギーよりも小さいとき、前記固液分離器の運転能力を低下させ、前記予測部で予測された前記第一熱エネルギーが前記第二熱エネルギーよりも大きいとき、前記固液分離器の運転能力を上昇させる制御部と、を備えた点にある。
【0024】
本構成では、加熱処理装置に導入される固形物の含水率を所定値に設定したときに熱媒の加温に必要な第一熱エネルギーを予測している。つまり、固形物の含水率の変動を受けずに、第一エネルギーを予測することが可能となる。そして、例えば消化ガスで駆動される熱源器が供給可能な第二熱エネルギーを予測し、これら第一熱エネルギーと第二熱エネルギーとを比較するため、第二熱エネルギーが増減する状況下で加熱処理装置に余剰熱エネルギーが存在するかを判定できる。
【0025】
更に本構成における制御部は、第一熱エネルギーが第二熱エネルギーよりも小さいとき、固液分離器の運転能力を低下させる。その結果、加熱処理装置に導入される固形物の含水率が所定値より大きくなる。一方、第一熱エネルギーが第二熱エネルギーよりも大きいとき、固液分離器の運転能力を上昇させる。その結果、加熱処理装置に導入される固形物の含水率が所定値より小さくなる。つまり、加熱処理装置に余剰熱エネルギーが存在する場合、固液分離器の運転能力を低下させて運転効率を高めることができる。一方、加熱処理装置の熱エネルギーが不足する場合、固液分離器の運転能力を上昇させることで固形物の含水率を下げ、加熱処理装置による適切な炭化処理を実現することができる。
【0026】
このように、効率的な運転を実現可能な加熱処理設備の制御装置となっている。
【0027】
他の特徴構成として、前記予測部は、前記加熱処理装置に投入される前記固形物の投入量及び温度に基づいて前記第一熱エネルギーを予測する点にある。
【0028】
本構成のように、加熱処理装置に投入される固形物の投入量及び温度に基づいて第一熱エネルギーを予測すれば、第一熱エネルギーの予測精度が高まる。
【0029】
他の特徴構成として、前記予測部は、メタン発酵槽から発生した消化ガスを用いて発電する発電機に導入される前記消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーに基づいて前記第二熱エネルギーを予測する点にある。
【0030】
本構成のように、消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーに基づいて第二熱エネルギーを予測すれば、メタン発酵槽の消化ガスを用いて加熱処理装置を加温できる。
【0031】
他の特徴構成として、前記加熱処理設備は、被処理物を受け入れてメタン発酵処理するメタン発酵槽を更に備え、前記熱源器は、前記メタン発酵処理によって発生した消化ガスを用いて発電することにより発生する廃熱の熱エネルギーによって前記熱媒を加温する発電機であり、前記廃熱の熱エネルギーによって前記メタン発酵槽を更に加温する点にある。
【0032】
本構成のように、消化ガスを用いて発電する発電機の廃熱を用いて加熱処理装置及びメタン発酵槽を加温すれば、廃熱を有効活用できる。
【0033】
他の特徴構成として、前記予測部は、前記消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーから前記メタン発酵槽の加温に必要となる熱エネルギーを減算することにより前記第二熱エネルギーを予測する点にある。
【0034】
本構成のように、消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーからメタン発酵槽の加温に必要となる熱エネルギーを減算することにより第二熱エネルギーを予測すれば、第二熱エネルギーの予測精度を更に高めることができる。
【0035】
他の特徴構成として、前記メタン発酵槽の加温に必要となる熱エネルギーは、前記メタン発酵槽に投入される前記被処理物の投入量及び温度、前記メタン発酵槽から排出される前記被処理物の投入量及び温度、前記消化ガスの熱量および前記メタン発酵槽の熱損失に基づいて予測される点にある。
【0036】
本構成のように、被処理物由来の熱エネルギーに加えて消化ガスの熱量およびメタン発酵槽の熱損失も加味してメタン発酵槽の加温に必要となる熱エネルギーを予測すれば、第二熱エネルギーの予測精度を更に高めることができる。
【0037】
他の特徴構成として、前記予測部は、メタン発酵槽から発生した消化ガスを用いて発電する発電機に導入される前記消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーから前記メタン発酵槽の加温に必要となる熱エネルギー及び前記固液分離器で必要となる換算された熱エネルギーを減算することにより前記第二熱エネルギーを予測する点にある。
【0038】
本構成のように、メタン発酵槽の加温に必要となる熱エネルギーに加えて固液分離器で必要となる換算された熱エネルギーも加味して余剰エネルギーを予測すれば、設備全体でのエネルギーコストを節約できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】加熱処理設備及び制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】加熱処理設備の運転方法を示すフローチャートである。
図3】加熱処理設備における熱収支を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明に係る加熱処理設備の運転方法及び制御装置は、加熱処理設備を効率的に運転できるように構成されている。以下、本実施形態の加熱処理設備100の運転方法及び制御装置1について説明する。ただし、加熱処理設備100の運転方法及び制御装置1は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0041】
図1は、加熱処理設備100及び制御装置1の構成を示すブロック図である。また、図2は、加熱処理設備100の運転方法を示すフローチャートである。
【0042】
図1に示されるように、加熱処理設備100は、メタン発酵槽20と、固液分離器30と、加熱処理装置40と、熱源器50とを備えている。制御装置1は、予測部10と制御部15とを備えている。制御装置1の各機能部は、加熱処理設備100の運転に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0043】
メタン発酵槽20は、被処理物を受け入れてメタン発酵処理する。被処理物とは、有機性廃棄物からなる汚泥である。有機性廃棄物は、例えば下水汚泥、し尿汚泥、農業集落排水汚泥、浄化槽汚泥、生ごみ等の食品廃棄物(食品系バイオマス)、古紙・廃紙等のリグノセルロース系廃棄物、農業残渣、及び家畜糞尿等が相当する。これらの有機性廃棄物は、夫々、単独で処理されてもよいし、混合処理されてもよい。以下では、被処理物を単に汚泥と称して説明する。
【0044】
メタン発酵槽20には汚泥が投入され、投入された汚泥を嫌気性発酵処理する。メタン発酵槽20に投入される汚泥は、固形物濃度が例えば3.0重量%以上10.0重量%以下である。メタン発酵槽20では中温発酵処理と高温発酵処理とを行うことが可能である。中温発酵処理では、例えば約30~42℃の温度で、15~30日程度の滞留時間で運転される。また、高温発酵処理では、約50~60℃の温度で、7~20日程度の滞留時間で運転される。
【0045】
メタン発酵槽20では、汚泥の嫌気性発酵により消化ガスが発生する。消化ガスは、メタンが約60容量%、二酸化炭素が約40容量%のガス(バイオガス)である。詳細は後述するが、発生した消化ガスは、メタン発酵槽20から取り出され、メタン発酵槽20や後述する加熱処理装置40の加温のための燃料として利用されたり(図示せず)、熱源器50の燃料として利用されたりする。すなわち、加熱処理設備100では汚泥を嫌気性発酵処理することにより、汚泥が有するエネルギーを消化ガス(ガスエネルギー)として回収する。メタン発酵槽20において嫌気性発酵処理された後の汚泥の発酵残渣、すなわち発酵処理汚泥は、後述する固液分離器30へ移送される。
【0046】
固液分離器30は、水を含む固形物を固液分離する。水を含む固形物とは、本実施形態ではメタン発酵槽20から移送される発酵処理汚泥が相当する。固液分離器30は、メタン発酵槽20から移送された発酵処理汚泥を脱水する機械である。発酵処理汚泥の固形物濃度は、例えば1.5~5質量%である。固液分離器30は、例えばベルトプレス脱水機、遠心脱水機、スクリュープレス脱水機、フィルタープレス脱水機、ベルト濃縮機、及び遠心濃縮機のうちのいずれかを用いることが可能である。もちろん、他の脱水機を用いて構成することも可能である。
【0047】
固液分離器30において固液分離された(脱水処理された)発酵処理汚泥は、例えば含水率が80質量%程度の脱水汚泥となる。固液分離器30において脱水処理された脱水処理物(脱水汚泥)は、後述する加熱処理装置40に移送される。
【0048】
加熱処理装置40は、固液分離器30で含水率が低下した固形物を加熱する。固液分離器30で含水率が低下した固形物とは、上述した固液分離器30において脱水処理された脱水汚泥にあたる。本実施形態では、加熱処理装置40は、固液分離器30から移送された脱水汚泥の水熱炭化処理を行う。水熱炭化処理とは、脱水汚泥を、酸素を含まないガスの雰囲気中、酸素濃度が低いガスの雰囲気中、及び酸素を遮断した状態のいずれかにおいて、高温高圧処理を行って炭化させることをいう。この場合、加熱処理装置40は、水熱炭化処理装置で構成することが可能である。
【0049】
加熱処理装置40では、まず、固液分離器30から移送された脱水汚泥(例えば含水率が80質量%程度)が予熱される。予熱された脱水汚泥は、上述した高温高圧処理が行われる。このときの高温高圧処理は、例えば酸素濃度が5体積%以下のガス雰囲気中において行われる。この高温高圧処理は加熱処理装置40が有するリアクター(図示せず)において行われるが、この処理中はリアクター内が、酸素濃度が略0体積%に保たれる。リアクター内では、炭化された汚泥(炭化汚泥スラリー)とリアクターに供給された脱水汚泥とが混合・撹拌される。
【0050】
リアクターはジャケット(図示せず)で外周が覆われており、このジャケット内に、後述する熱源器50が有する発電機51の廃熱の熱エネルギーによって加温された熱媒(例えば熱媒油)や、ボイラ52で加温された熱媒(例えば熱媒油)が流通される。これにより、リアクター内の炭化汚泥スラリーは熱媒により、例えば200℃に加温される。このとき、リアクター内の圧力は、リアクター内の温度に対応する亜臨界水相当の圧力に、被処理物の成分の分解によって生じたガスによる圧力が加わった圧力とされる。なお、リアクター内の炭化汚泥スラリーの温度は200℃に限定されるものではなく、例えば160℃から250℃の範囲のうちの任意の温度であってもよい。リアクター内の圧力は、ゲージ圧0.6MPaからゲージ圧3MPa程度の圧力とされる。したがって、加熱処理装置40では、脱水汚泥の温度が160℃以上250℃以下であって、且つ、リアクター内の圧力がゲージ圧0.6MPa以上ゲージ圧3MPa以下の状態で、高温高圧処理が行われる。
【0051】
熱源器50は、加熱処理装置40の加熱源となる熱媒を加温する。加熱処理装置40では、上述したように、固液分離器30からの脱水汚泥が予熱されて高温高圧処理される。熱源器50は、このような脱水汚泥を予熱して高温高圧処理するための加熱源となる熱媒を加温する。
【0052】
本実施形態では、熱源器50は、発電機51とボイラ52とを有する。発電機51は、メタン発酵によって発生した消化ガスを用いて発電することにより発生する廃熱の熱エネルギーによって熱媒を加温する。メタン発酵によって発生した消化ガスとは、メタン発酵処理によって発生した消化ガスであって、メタン発酵槽20における、汚泥の嫌気性発酵により発生した消化ガスである。したがって、発電機51は、メタン発酵槽20において、汚泥の嫌気性発酵により発生した消化ガスを燃料として用いて発電する。この発電時には、発電機51において廃棄される熱(廃熱)が生じる。この廃熱として、例えば発電機51の筐体から放出される熱や発電機51から排出される排ガスの熱が挙げられる。熱媒とは、上述したようにリアクター内の炭化汚泥スラリーを加温する熱媒油にあたる。熱源器50は、このような発電機51の廃熱を利用して、熱媒油を加温する。
【0053】
発電機51の廃熱は、更にメタン発酵槽20を加温する熱エネルギーとしても利用される。ここで、上述したように、メタン発酵槽20では、中温発酵処理と高温発酵処理とが可能である。発電機51の廃熱は、中温発酵処理や高温発酵処理における汚泥の加温に利用される。
【0054】
ボイラ52は、消化ガスとは別の燃料により発生した熱エネルギーにより熱媒を加温する。ボイラ52は、加熱処理装置40へ供給する熱媒(熱媒油)を加温する熱媒油ボイラに相当する。ボイラ52の燃料として、例えば都市ガスが利用される。ボイラ52で加温された熱媒油は、加熱処理装置40に供給される。加熱処理装置40に供給された熱媒油は、発電機51からの廃熱と同様に、加熱処理装置40のリアクター内の炭化汚泥スラリーの加温に用いられる。なお、ボイラ52の燃料は、都市ガスに代えて重油であってもよい。
【0055】
本実施形態では、熱源器50は、更にボイラ56を有する。ボイラ56は、消化ガスとは別の燃料により発生した熱エネルギーにより熱媒を加温する。ボイラ56は、メタン発酵槽20を加温する熱媒(温水)を生成する温水ボイラに相当する。ボイラ56の燃料として、例えば都市ガスが利用される。ボイラ56で生成された温水は、メタン発酵槽20に供給される。ボイラ56からの温水は、メタン発酵槽20において、中温発酵処理や高温発酵処理における汚泥の加温に利用される。なお、ボイラ56の燃料は、都市ガスに代えて重油であってもよい。
【0056】
ここで、固液分離器30において、当該固液分離器30から加熱処理装置40に導入される脱水汚泥の含水率を小さくする程、固液分離するのに必要なエネルギー(相当エネルギー)が増大する。このため、目標とする含水率(脱水汚泥の含水率)が小さい程、相当エネルギーを要する。この相当エネルギーは、例えば固液分離器30に添加する薬品や、固液分離器30の圧力や機械駆動力を高くする装置を介して供給される。薬品に関する相当エネルギーは、例えば凝集剤等の薬品の量と当該薬品の価格との積によりエネルギー値に換算して示すことが可能であり、圧力を高くする装置に関する相当エネルギーは、当該装置を駆動するエネルギー(電気エネルギー)の電力量で示すことが可能である。加熱処理設備100の運転方法及び制御装置1では、目標とする脱水汚泥の含水率から、固液分離器30が固液分離するのに必要なエネルギーを予測し、この予測したエネルギーを加熱処理設備100において効率よく得ることができるように構成されている。
【0057】
このように、固液分離器30において、固液分離するのに必要なエネルギーは、目標とする脱水汚泥の含水率と、固液分離器30に添加する凝集剤等の薬品の量と当該薬品の価格との積によりエネルギー値に換算して示される薬品に関する相当エネルギーと、固液分離器30の圧力や機械駆動力を発生する駆動装置を駆動するエネルギーの電力量で示される装置に関する相当エネルギーと、から予測することができる。このような固液分離器30において固液分離するのに必要なエネルギーは、固液分離器30で必要となる換算された熱エネルギーに相当する。
【0058】
予測部10は、第一熱エネルギーを予測する。第一熱エネルギーとは、加熱処理装置40に導入される固形物の含水率を所定値に設定したときに熱媒の加温に必要な熱エネルギーである。加熱処理装置40に導入される固形物とは、固液分離器30において脱水処理され、含水率が低下した固形物、すなわち脱水汚泥にあたる。加熱処理装置40では、脱水汚泥の予熱や、高温高圧処理において、熱媒が利用される。一方、上述したように、加熱処理設備100では、脱水汚泥の含水率がどの程度であるか設定値により設定される。そこで、予測部10は、第一熱エネルギーを予測するにあたり、まず、加熱処理装置40に導入される脱水汚泥の含水率がどの程度であるかを規定した設定値を取得する(図2の#1)。この設定値は、脱水汚泥における目標含水率に相当する。
【0059】
例えば、脱水汚泥の含水率(目標含水率)が小さい場合には、加熱処理設備100に導入される汚泥の量は少ない方が目標含水率を達成し易い。また、脱水汚泥の含水率(目標含水率)が小さい場合には、加熱処理設備100に導入される汚泥の量が増大すると、固液分離器30が固液分離するのに必要なエネルギーが大きくなる。一方、脱水汚泥の含水率(目標含水率)が大きい場合には、加熱処理設備100に導入される汚泥の量は多くても目標含水率を達成し易い。また、脱水汚泥の含水率(目標含水率)が大きい場合には、加熱処理設備100に導入される汚泥の量が増大しても、固液分離器30が固液分離するのに必要なエネルギーは小さくてもよい。
【0060】
予測部10は、取得した設定値に対して、熱媒の加温に必要な第一熱エネルギーを予測する。第一熱エネルギーは、メタン発酵槽20における熱の需要量と加熱処理装置40における熱の需要量との和に相当する。以下では、図3に示されるように、第一熱エネルギーをAとし、メタン発酵槽20における熱の需要量をBとし、加熱処理装置40における熱の需要量をCとして説明する。
【0061】
メタン発酵槽20における熱の需要量Bは、一例としてメタン発酵槽20における汚泥の処理量と、メタン発酵槽20における汚泥の加熱量との積で算定される(図3参照)。メタン発酵槽20における汚泥の処理量は、メタン発酵槽20に投入される汚泥の投入量に相当し、図1に示されるように、メタン発酵槽20へ汚泥が投入される投入路21に設けられた流量計22の計測値により取得することが可能である。メタン発酵槽20における汚泥の加熱量は、メタン発酵槽20に投入される汚泥の温度とメタン発酵槽20における汚泥の温度との差に比例係数を乗じて算出する。メタン発酵槽20に投入される汚泥の温度は、投入路21に設けられた温度計23の計測値により取得し、メタン発酵槽20における汚泥の温度は、メタン発酵槽20に設けられる温度計24の計測値により取得することが可能である。したがって、メタン発酵槽20における熱の需要量Bは、流量計22の計測値と、温度計24の計測値及び温度計23の計測値の差異との積に基づいて予測される。また、メタン発酵槽20における熱の需要量Bは、後述のように、さらに外気温を考慮して予測されてもよい。
【0062】
加熱処理装置40における熱の需要量Cは、加熱処理装置40における脱水汚泥の処理量と、加熱処理装置40における脱水汚泥の加熱量と、脱水相当エネルギー係数との積で算定される(図3参照)。加熱処理装置40における脱水汚泥の処理量は、加熱処理装置40に投入される固形物である脱水汚泥の投入量に相当し、図1に示されるように、固液分離器30から加熱処理装置40へ脱水汚泥が移送される移送路31に設けられた流量計32の計測値により取得することが可能である。加熱処理装置40における脱水汚泥の加熱量は、加熱処理装置40に投入される固形物である脱水汚泥の温度と加熱処理装置40における脱水汚泥の温度との差に相当し、一例として加熱処理装置40に投入される固形物である脱水汚泥の温度と加熱処理装置40における脱水汚泥の温度との差に比例係数を乗じて算出する。加熱処理装置40に投入される脱水汚泥の温度は、移送路31に設けられた温度計33の計測値により取得し、加熱処理装置40における脱水汚泥の温度は、加熱処理装置40に設けられる温度計(加温処理温度計)41の計測値により取得することが可能である。脱水相当エネルギー係数は、上記のように取得された含水率の設定値に応じた補正係数に相当する。この脱水相当エネルギー係数は、目標とする含水率が小さい程、小さな値となる。これは、上述したように、目標とする含水率が小さい程、その含水率を実現するために固液分離器30において固液分離に必要なエネルギーが大きくなるとともに、加熱処理装置40において加熱処理に必要なエネルギーが小さくなるからである。したがって、加熱処理装置40における熱の需要量Cは、流量計32の計測値と、温度計33の計測値及び温度計41の計測値の差異と、脱水相当エネルギー係数との積により予測される。加熱処理装置40における熱の需要量Cは、後述のように、さらに外気温を考慮して予測されてもよい。
【0063】
例えば、上述した補正係数は、脱水汚泥の目標含水率に応じて設定するとよい。具体的には、目標含水率が小さい程、補正係数を小さくし、目標含水率が大きい程、補正係数を大きくするとよい。これにより、脱水汚泥の固液分離に要するエネルギーに応じて(大小関係に応じて)、補正係数を設定し、重み付けを行うことが可能となる。
【0064】
図3に示されるように、第一熱エネルギーAは、メタン発酵槽20における熱の需要量Bと加熱処理装置40における熱の需要量Cとの和である。したがって、第一熱エネルギーAは、メタン発酵槽20における熱の需要量Bである、「流量計22の計測値と、温度計24の計測値及び温度計23の計測値の差異との積」と、加熱処理装置40における熱の需要量Cである、「流量計32の計測値と、温度計33の計測値及び温度計41の計測値の差異と、脱水相当エネルギー係数との積」との和により予測される。このように、予測部10は、加熱処理装置40に投入される脱水汚泥の投入量に及び温度に基づいて第一熱エネルギーAを予測する(図2の#2)。
【0065】
また、予測部10は、第二熱エネルギーを予測する。第二熱エネルギーとは、熱源器50が加熱処理装置40に供給可能な熱エネルギーである。以下では、第二熱エネルギーをQとして説明する。第二熱エネルギーQは、熱源器50から加熱処理装置40への熱の供給量に相当する。第二熱エネルギーQは、図3に示されるように、熱源器50に導入されるバイオガスの流量と、バイオガスに含まれる可燃分(あるいは可燃分中のメタン)の濃度と、可燃分(あるいは可燃分中のメタン)の熱量と、熱源器50の熱回収効率との積で算定される。熱源器50とは、本実施形態では、上述したように発電機51及びボイラ52である。バイオガスとは、メタン発酵槽20において嫌気性発酵により発生するガスである。熱源器50に導入されるバイオガスの流量とは、換言すれば、メタン発酵槽20から発生した消化ガスを用いて発電する発電機51に導入される消化ガスの流量に相当する。バイオガスの流量は、図1に示されるように、熱源器50へバイオガスが供給される供給路53に設けられた流量計54の計測値により取得することが可能である。バイオガス(消化ガス)の濃度は、消化ガス中の可燃分の濃度であって、供給路53に設けられた濃度計55の計測値により取得することが可能である。供給路中にガスホルダを設けて、ガスホルダから熱源器50へバイオガスが供給される供給路に流量計が設けられてもよい。消化ガスの可燃成分であるメタンの熱量は、802kJ/モルである。熱源器50の熱回収効率は、発電機51やボイラ52により規定される。したがって、第二熱エネルギーQは、「流量計54の計測値と、濃度計55の計測値と、消化ガスに含まれる可燃分(あるいは可燃分中のメタン)の熱量と、発電機51及びボイラ52の熱回収効率との積」により予測される(図2の#3)。また、熱媒油の温度および流量を測定し、その測定値から加熱処理装置40に供給されている熱エネルギーを算出して、予測された第二熱エネルギーと比較することにより、第二熱エネルギーを算出するための例えば熱源器50の熱回収効率を補正してもよい。
【0066】
加熱処理装置40に供給可能な熱エネルギー(すなわち、第二熱エネルギーQ)は、例えば、熱源器50から発生する熱量から、メタン発酵槽20において汚泥を消化するために加温するのに必要なエネルギーの量とメタン発酵槽20における放熱量(放熱によるエネルギーのロス量)と加熱処理装置40における放熱量(放熱によるエネルギーのロス量)とを減じて算出することが可能である。熱源器50から発生する熱量は、熱源器50の設備能力や、バイオガスの発生量と所定の係数との積により算出することが可能である。メタン発酵槽20において汚泥を消化するために加温するのに必要なエネルギーの量は、「メタン発酵槽20から排出される汚泥の量と当該汚泥の温度との積」から「メタン発酵槽20に導入される汚泥の量と当該汚泥の温度との積」を減じ、この減じた値と、バイオガスの持ち出し熱量との和で算出することが可能である。バイオガスの持ち出し熱量は、バイオガスの質量(体積)と温度との積で算出可能である。メタン発酵槽20における放熱量は、メタン発酵槽20の表面積と所定の係数と外気との温度差との積により算出可能である。また、加熱処理装置40における放熱量は、加熱処理装置40の表面積と所定の係数と外気との温度差との積により算出可能である。さらに、熱源器50で加熱された熱媒を加熱処理装置40に供給する熱媒供給経路における熱媒の放熱を考慮して減じて算出したり、加熱処理装置40と熱媒油との間の熱交換効率(例えば、加熱処理装置40が熱媒から供給される熱量と熱媒油の保有熱量との比率)を考慮して算出したりしてもよい。
【0067】
以上のように、予測部10は、メタン発酵槽20から発生した消化ガスを用いて発電する発電機51に導入される消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーに基づいて第二熱エネルギーQを予測する。
【0068】
ここで、本実施形態では、上述したように、発電機51の廃熱は、メタン発酵槽20を加温する熱エネルギーとしても利用される。そこで、予測部10は、消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーからメタン発酵槽20の加温に必要となる熱エネルギーを減算することにより第二熱エネルギーQを予測することが可能である。具体的には、上述した「流量計54の計測値と、濃度計55の計測値と、メタンの熱量と、発電機51及びボイラ52の熱回収効率との積」からなる熱エネルギーから、メタン発酵槽20の加温に必要となる熱エネルギーを減算した値を、第二熱エネルギーQとして予測することも可能である。
【0069】
この場合、メタン発酵槽20の加温に必要となる熱エネルギーは、メタン発酵槽20に投入される被処理物の投入量及び温度、メタン発酵槽20から排出される被処理物の投入量及び温度、消化ガスの熱量およびメタン発酵槽20の熱損失に基づいて予測することが可能である。メタン発酵槽20に投入される被処理物とは、メタン発酵槽20に投入される汚泥であって、この汚泥の投入量及び温度は、投入路21に設けられた流量計22の計測値及び温度計23の計測値から取得される。メタン発酵槽20から排出される被処理物の投入量及び温度とは、メタン発酵槽20から固液分離器30へ排出される発酵処理汚泥であって、この発酵処理汚泥の投入量及び温度は、移送路25に設けられた流量計26の計測値及びメタン発酵槽20に設けられた温度計24の計測値から取得される。消化ガスの熱量およびメタン発酵槽20の熱損失とは、消化ガス中の可燃分(あるいは可燃分中のメタン)の熱量、および、メタン発酵槽20の外に設けられた外気温度計60の計測値と温度計24との差に基づいて取得される。
【0070】
また、予測部10は、メタン発酵槽20から発生した消化ガスを用いて発電する発電機51に導入される消化ガスの流量及び濃度に基づいて予測された熱エネルギーからメタン発酵槽20で必要となる熱エネルギー及び固液分離器30で必要となる換算された熱エネルギーを減算することにより第二熱エネルギーQを予測することが可能である。
【0071】
以上のような、加熱処理装置40に導入される固形物の含水率を所定値に設定したときに熱媒の加温に必要な第一熱エネルギーAを予測すると共に、熱源器50が加熱処理装置40に供給可能な第二熱エネルギーQを予測する工程は、加熱処理設備100の運転方法における予測ステップに相当する。また、上記のように、予測ステップでは、加熱処理装置40に投入される固形物の投入量及び温度(脱水汚泥の投入量及び温度)に基づいて第一熱エネルギーAを予測する。更に、予測ステップでは、発電機51で回収可能な第二熱エネルギーQを予測する。
【0072】
ここで、固液分離器30で処理されて含水率が低下した固形物以外の追加固形物を加熱処理装置40に供給することも可能である。固液分離器30で処理されて含水率が低下した固形物以外の追加固形物とは、例えば、加熱処理設備100の外部において固液分離器30とは別の固液分離器で処理されて生成し、加熱処理設備100に追加される脱水汚泥や、固液分離器30からの脱水汚泥をホッパ(図示せず)等に受け入れて通常時より長期間貯留してから、通常時より多くの供給量で加熱処理装置40に供給される脱水汚泥をいう。なお、「通常時」とは、加熱処理装置40での脱水汚泥の1日当たりの処理量が、発酵処理汚泥の1日当たり発生量に相当する脱水汚泥の処理量である、加熱処理装置40の運転を行っているような状態であることをいう。この場合には、予測ステップでは、発電機51及びボイラ52で回収可能な第二熱エネルギーを予測するとよい。
【0073】
制御部15は、予測部10で予測された第一熱エネルギーAと第二熱エネルギーQとを比較する。第一熱エネルギーAは、加熱処理装置40に導入される固形物の含水率を所定値に設定したときに熱媒の加温に必要な熱エネルギーであって、第二熱エネルギーQとは、熱源器50が加熱処理装置40に供給可能な熱エネルギーである。
【0074】
制御部15は、第一熱エネルギーAが第二熱エネルギーQよりも小さいとき(図2の#4:Yes)は、加熱処理装置40に導入される固形物の含水率を設定値にするために必要な熱エネルギーに対して、熱源器50が加熱処理装置40に供給可能な熱エネルギーが十分である(熱エネルギーに余裕がある)ことから、固液分離器30の運転能力を低下させる(図2の#5)。
【0075】
また、第一熱エネルギーAが第二熱エネルギーQよりも小さいときには、固液分離器30で処理されて含水率が低下した固形物以外の追加固形物の量を増大させてもよい。
【0076】
更に、第一熱エネルギーAが第二熱エネルギーQよりも小さいときには、制御部15は、例えば、固形物の含水率を低下させるために固液分離器30に投入される薬品の量を減らす、又は、固液分離器30における固形物の滞留時間を短くすることによって運転能力を低下することが可能である。
【0077】
一方、制御部15は、第一熱エネルギーAが第二熱エネルギーQよりも大きいとき(図2の#4:No、且つ、図2の#6:Yes)は、加熱処理装置40に導入される固形物の含水率を設定値にするために必要な熱エネルギーに対して、熱源器50が加熱処理装置40に供給可能な熱エネルギーが不足している(エネルギーに余裕がない)ことから、固液分離器30の運転能力を上昇させる(図2の#7)。
【0078】
この場合には、制御部15は、例えば、固形物の含水率を低下させるために固液分離器30に投入される薬品の量を増大して、運転能力を上昇させるように構成してもよいし、固液分離器30における固形物の滞留時間を長くすることによって運転能力を上昇させてもよい。
【0079】
ここで、固液分離器30は、一般的に固形物当たりの処理時間を長くする(滞留時間を長くする)ことで、運転能力を上昇させて、含水率を下げることが可能である。滞留時間を長くする方法としては、固形物の固液分離器30への単位時間当たりの供給量を減らしたり、固液分離器30の処理速度を下げる(例えばスクリュー式脱水機の場合、回転速度を減らしたりすることによって、固液分離器30内の汚泥の移送速度を下げて滞留時間を増やす)ことができる。
【0080】
また、第一熱エネルギーAが第二熱エネルギーQよりも大きい場合において、固液分離器30で処理されて含水率が低下した固形物以外の追加固形物を導入しているときには、当該追加固形物の量を減少させるとよい。具体的には、固液分離器30で処理されて含水率が低下した固形物以外の追加固形物を一時的に貯留したり、受け入れを中止したりするとよい。
【0081】
なお、制御部15は、第一熱エネルギーAと第二熱エネルギーQとが互いに等しいとき(図2の#4:No、且つ、図2の#6:No)は、加熱処理設備100において生じるエネルギーを余すことなく利用できている状態であるため、固液分離器30の運転能力を変更しなくてもよい。
【0082】
以上のような、予測ステップで予測された第一熱エネルギーAが第二熱エネルギーQよりも小さいとき、固液分離器30の運転能力を低下させて固形物の含水率を所定値より大きくすると共に、予測ステップで予測された第一熱エネルギーAが第二熱エネルギーQよりも大きいとき、固液分離器30の運転能力を上昇させて固形物の含水率を所定値よりも小さくする工程は、加熱処理設備100の運転方法における含水率調整ステップに相当する。含水調整ステップでは、固形物の含水率を低下させるために固液分離器30に投入される薬品の量によって運転能力を調整することが可能である。更に、含水率調整ステップでは、固液分離器30における固形物の滞留時間を調節することによって運転能力を調整することが可能である。
【0083】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、熱源器50を、メタン発酵によって発生した消化ガスを用いて発電することにより発生する廃熱の熱エネルギーによって熱媒を加温する発電機51と、消化ガスとは別の燃料により発生した熱エネルギーにより熱媒を加温するボイラ52とを有しているものとしたが、熱源器50は、消化ガスを燃料として発生した熱エネルギーにより熱媒を加温するボイラを有しているものであってもよい。
【0084】
上記実施形態では、加熱処理装置40が固液分離器30から移送された脱水処理物の水熱炭化処理を行う水熱炭化処理装置で構成することが可能であるとして説明した。しかしながら、加熱処理装置40は水熱炭化処理装置に限定されず、例えば送風により水分を蒸発させて乾燥させる乾燥機(乾燥装置)で構成することも可能である。
【0085】
上記実施形態では、加熱処理設備100が、メタン発酵槽20を備えるとして説明したが、加熱処理設備100はメタン発酵槽20を備えなくてもよい。この場合には、加熱処理設備100の外部に設けられるメタン発酵槽20から消化ガスを導入するとよく、この消化ガスを発電機51に供給することも可能である。
【0086】
上記実施形態では、加熱処理設備100の各部に、流量計、濃度計、温度計、含水率計が設けられているとして説明したが、これらの少なくとも一部は加熱処理設備100に設けられていなくてもよい。この場合には、上述した加熱処理設備100の制御方法及び制御装置1において、予め設定された固定値を用いることが可能である。
【0087】
上述した実施形態におけるメタン発酵槽20は、固形物濃度が3.0重量%以上10.0重量%以下の高濃度消化として説明したが、固形物濃度が2.0重量%以上5.0重量%以下の通常のメタン発酵処理であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、加熱処理設備の運転方法及び制御装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1:制御装置
10:予測部
15:制御部
20:メタン発酵槽
30:固液分離器
40:加熱処理装置
50:熱源器
51:発電機
52:ボイラ
100:加熱処理設備
A:第一熱エネルギー
Q:第二熱エネルギー
図1
図2
図3