(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160430
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20241107BHJP
B23B 29/12 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B23Q11/00 L
B23B29/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075394
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】509202064
【氏名又は名称】株式会社メタルクリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】花井 猛司
(72)【発明者】
【氏名】小室 映滋
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046MM07
(57)【要約】
【課題】切削工具の支持部周囲に巻き付いた切屑を切削中に速やかに除去してその増大を防止し、併せて切削の作業サイクルの増大を回避することができる切削装置を提供する。
【解決手段】棒状支持部21に切刃22を備える構造の切削工具2を有し、支持部21の周囲に、当該支持部21の基端から先端方向へ所定の圧力で流体を供給する複数の供給口132が周方向等間隔で設けられ、これら供給口132から供給される流体の圧力によって支持部21の周囲に巻き付いた切屑Cが当該支持部21の先端から押出し除去される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状支持部に切刃を備える構造の切削工具を有し、前記支持部の周囲に、当該支持部の基端から先端方向へ所定の圧力で流体を供給する複数の供給口が周方向等間隔で設けられ、これら供給口から供給される流体の圧力によって前記支持部の周囲に巻き付いた切屑が当該支持部の先端から押出し除去される切削装置。
【請求項2】
前記切削工具の棒状支持部が挿入保持される接続口を設けたホルダを備え、前記ホルダには前記接続口の周囲の端面に前記供給口が開口し、これら各供給口がホルダ内に形成された流体供給用の流体流路に連通している請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
前記流体流路から前記各供給口へ至る分岐路に流量調節機構を設けた請求項2に記載の切削装置。
【請求項4】
前記流体としてクーラントを使用した請求項1ないし3のいずれかに記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削装置に関し、特にその切屑除去構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切削装置で使用される切削工具には棒状支持部の先端に切刃を備えた構造のものが多く、切削加工時に生じる細長い切屑が往々にして上記支持部の周囲に巻き付いて増大し、切削工具の破損や製品不良を生じることがある。また、巻き付いた切屑は作業者による除去にも難渋する。
【0003】
そこで、特許文献1には、棒状の切屑除去部材を固定して設け、切削加工終了後に切削工具を上記切屑除去部材の近くに移動させ、さらに切削工具をその支持部の長手方向へ移動させることにより当該支持部の基端から先端方向へ上記切屑除去部材を相対移動させて、上記支持部に巻き付いた切屑を支持部先端から押出し除去するようにした切削装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上記従来の構造では、切削終了後にしか切屑除去が行われないから、切削中に切削工具の支持部周囲に切屑が過大に巻き付いて当該切削工具の破損等が生じるという問題を完全には防止できないとともに、切屑の除去を行うために切削工具を余分に移動させる必要があって切削の作業サイクルが増大するという問題もある。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、切削工具の支持部周囲に巻き付いた切屑を切削中に速やかに除去して切削工具の破損等を確実に防止するとともに、切削作業サイクルの増大も回避できる切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明の切削装置(T)は、棒状支持部(21)に切刃(22)を備える構造の切削工具(2)を有し、前記支持部(21)の周囲に、当該支持部(21)の基端から先端方向へ所定の圧力で流体を供給する複数の供給口(132)が周方向等間隔で設けられ、これら供給口(132)から供給される流体の圧力によって前記支持部(21)の周囲に巻き付いた切屑(C)が当該支持部(21)の先端から押出し除去される。
【0008】
本第1発明によれば、切削工具の支持部の周囲に複数設けられた供給口から供給される流体によって、切削中においても常時、支持部の周囲に巻き付いた切屑が除去されるから、切削中に切屑が支持部に過大に巻き付いて当該工具の破損等を生じることが防止できる。また、切屑除去のために切削工具を余分に移動させる必要がないから、切削の作業サイクルが増大することも避けられる。
【0009】
本第2発明の切削装置は、前記切削工具(2)の棒状支持部(21)が挿入保持される接続口(12)を設けたホルダ(1)を備え、前記ホルダ(1)には前記接続口(12)の周囲の端面に前記供給口(132)が開口し、これら各供給口(132)がホルダ(1)内に形成された流体供給用の流体流路(13)に連通している。
【0010】
本第3発明の切削装置では、前記流体流路(13)から前記各供給口(132)へ至る分岐路(133)に流量調節機構(3)を設ける。
【0011】
本第3発明においては、流量調節機構によって各供給口から供給される流量(圧力)のバランスを、切屑を押出し除去するするのに最適に調節することができる。
【0012】
本第4発明の切削装置では、前記流体としてクーラントを使用する。
【0013】
本第4発明によれば、切屑の除去と同時に切刃の冷却も効率的に行うことができる。
【0014】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の切削装置によれば、切削工具の支持部周囲に巻き付いた切屑を切削中に速やかに除去して切削工具の破損等を確実に防止できるとともに、切削の作業サイクルの増大も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】
図1のX矢印方向から見た切削装置の端面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線に沿った切削装置の横断面図である。
【
図5】切屑除去を説明する切削装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0018】
図1には切削装置の部分半断面平面図を示す。また
図2には切削装置の側面図を、
図3には
図1のX方向から見たその端面図を示す。切削装置Tは円柱状のホルダ1を備えており、当該ホルダ1の外周は周方向の4面が面取りされて(
図4)平面部11となり回り止めとなっている。このようなホルダ1の先端面中心には接続口12が設けられて、ここに棒状支持部(シャンク)21の先端に切刃(チップ)22を形成した切削工具(チップインサート)2が挿入保持されている。ホルダ1は図略のアダプタ(サンドビック社製等)内に挿入保持され、アダプタが工作機械の刃物台等に装着される。
【0019】
ホルダ1内にはその軸中心に沿って流体流路13が形成されており、ホルダ1がアダプタ内に挿入保持された時点で流体流路13の基端開口131(
図1)はアダプタ内の流体流路に接続されて、所定圧(例えば7MPa)のクーラント液が流体流路13に流通可能となる。流体流路13はホルダ1の先端部に形成された大径部14内で外方の三方へ分岐して、ホルダ1の先端面で、接続開口12周りに周方向等間隔で3カ所に設けられた供給口132(
図3)に開口している。
【0020】
ホルダ1の大径部14外周には、
図1に示すように、流体流路13の各分岐路133に向けてネジ孔141が貫設してあり、これらネジ孔141内にはそれぞれ流量調節機構たる六角穴付き止めネジ3が螺入されている。止めネジ3をねじ込むとその先端が分岐路133内に進入し、これに応じて当該分岐路133の断面積が縮小する。
【0021】
このような構造の切削装置Tでワークを切削する場合には、流体流路13にクーラント液を供給して、分岐路13を経て(
図1中の矢印)3つの供給口132からクーラント液を所定の圧力で噴出させる。噴出したクーラント液は研削具2の支持部22の周囲をその基端から先端方向へ所定の圧力で噴出する。そこで、
図5に示すように、切削中に切削工具2の支持部21の周囲に切屑Cが巻き付いても、巻き付いた切屑Cは周方向の3カ所でほぼ均等に作用する流体圧によって支持部21の先端から押し出されるように除去される。この際、クーラント液は同時に切刃22にも当たってこれを冷却する。
【0022】
各供給口132から供給されるクーラント液の圧力を微調整したい場合には、各分岐路133に設けた止めネジ3のねじ込み量を変更して、当該分岐路133の断面積を適宜増減することによって行う。
【0023】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、クーラント液の供給口を3つとしたが、4つ以上としても良く、また、径方向対称位置の2カ所としても良い。
【0024】
クーラントは液体である必要はなく気体を使用しても良い。また、必ずしも流体としてクーラントを使用して切刃の冷却を兼ねる必要はない。
【0025】
各供給口から噴出する流体は通常は同圧とするのが良いが、巻き付く切屑の形状等に応じて異ならせても良い。
【0026】
切削工具は上記構造のものに限られず、ロウ付けバイトやいわゆるスローアウェイ式のもの、あるいは必ずしもバイトには限られず、ドリルのようなものでも良い。
【符号の説明】
【0027】
1…ホルダ、12…接続口、13…流体流路、132…供給口、133…分岐路、2…切削工具、21…棒状支持部、3…止めネジ(流量調節機構)、C…切屑、T…切削装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
棒状支持部に切刃を備える構造の切削工具を有し、前記支持部の周囲の開放空間に向けて、当該支持部の基端から先端方向へ向かう所定圧力の流体を噴出させる複数の供給口が周方向等間隔で設けられ、これら供給口から供給される流体の圧力によって前記支持部の周囲に巻き付いた切屑が当該支持部の先端から押出し除去される切削装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明の切削装置(T)は、棒状支持部(21)に切刃(22)を備える構造の切削工具(2)を有し、前記支持部(21)の周囲の開放空間に向けて、当該支持部(21)の基端から先端方向へ向かう所定圧力の流体を噴出させる複数の供給口(132)が周方向等間隔で設けられ、これら供給口(132)から供給される流体の圧力によって前記支持部(21)の周囲に巻き付いた切屑(C)が当該支持部(21)の先端から押出し除去される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
このような構造の切削装置Tでワークを切削する場合には、流体流路13にクーラント液を供給して、分岐路13を経て(
図1中の矢印)3つの供給口132からクーラント液を所定の圧力で噴出させる。噴出したクーラント液は研削具2の
支持部21の周囲をその基端から先端方向へ所定の圧力で噴出する。そこで、
図5に示すように、切削中に切削工具2の支持部21の周囲に切屑Cが巻き付いても、巻き付いた切屑Cは周方向の3カ所でほぼ均等に作用する流体圧によって支持部21の先端から押し出されるように除去される。この際、クーラント液は同時に切刃22にも当たってこれを冷却する。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状支持部に切刃を備える構造の切削工具を有し、前記棒状支持部の周囲の開放空間に向けて、当該棒状支持部の基端から先端方向へ向かう所定圧力の流体を噴出させる複数の供給口が前記棒状支持部の基端周囲に周方向等間隔で設けられ、これら供給口から供給される流体の圧力によって前記棒状支持部の周囲に巻き付いた切屑が当該棒状支持部の先端から押出し除去される切削装置。
【請求項2】
前記切削工具の棒状支持部が挿入保持される接続口を設けたホルダを備え、前記ホルダには前記接続口の周囲の端面に前記供給口が開口し、これら各供給口がホルダ内に形成された流体供給用の流体流路に連通している請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
前記流体流路から前記各供給口へ至る分岐路に流量調節機構を設けた請求項2に記載の切削装置。
【請求項4】
前記流体としてクーラントを使用した請求項1ないし3のいずれかに記載の切削装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明の切削装置(T)は、棒状支持部(21)に切刃(22)を備える構造の切削工具(2)を有し、前記棒状支持部(21)の周囲の開放空間に向けて、当該棒状支持部(21)の基端から先端方向へ向かう所定圧力の流体を噴出させる複数の供給口(132)が前記棒状支持部(21)の基端周囲に周方向等間隔で設けられ、これら供給口(132)から供給される流体の圧力によって前記棒状支持部(21)の周囲に巻き付いた切屑(C)が当該棒状支持部(21)の先端から押出し除去される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
ホルダ1内にはその軸中心に沿って流体流路13が形成されており、ホルダ1がアダプタ内に挿入保持された時点で流体流路13の基端開口131(
図1)はアダプタ内の流体流路に接続されて、所定圧(例えば7MPa)のクーラント液が流体流路13に流通可能となる。流体流路13はホルダ1の先端部に形成された大径部14内で外方の三方へ分岐して、ホルダ1の先端面で、
接続口12周りに周方向等間隔で3カ所に設けられた供給口132(
図3)に開口している。