(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160434
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
B32B27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075402
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】勝木 海斗
(72)【発明者】
【氏名】辻 仁麻
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK46A
4F100AK46B
4F100AK46C
4F100AR00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100EH20
4F100EJ38
4F100EJ41
4F100JA06A
4F100JA06B
4F100JA06C
4F100JD02D
4F100JK09
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方が比較的良好な樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】樹脂フィルムは、少なくとも3層を備える。3層には、第1層と第2層とが含まれる。第1層及び第2層の各々は、主としてポリアミド6によって構成される。第2層は、第1層よりも表層側に位置している。第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は、3.5以上であり、かつ、第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度よりも0.5以上高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層を備える樹脂フィルムであって、
前記3層には、第1層と第2層とが含まれ、
前記第1層及び前記第2層の各々は、主としてポリアミド6によって構成され、
前記第2層は、前記第1層よりも前記樹脂フィルムの表層側に位置しており、
前記第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は、3.5以上であり、かつ、前記第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度よりも0.5以上高い、樹脂フィルム。
【請求項2】
バリア層をさらに備える、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記第1層及び前記第2層の各々におけるポリアミド6の含有率が90wt%以上であり、
前記第1層及び前記第2層の各々が耐屈曲剤を含まない、請求項1又は請求項2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
耐摩耗性試験を通じて測定される摩耗強度が400回以上であり、
3回のゲルボフレックス試験を通じて確認されるピンホールの数の合計が、25℃環境で前記ゲルボフレックス試験が行なわれた場合には5個以下であり、5℃環境で前記ゲルボフレックス試験が行なわれた場合には10個以下である、請求項1又は請求項2に記載の樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-002114号公報(特許文献1)は、ポリアミド系フィルムを開示する。このポリアミド系フィルムは、ポリアミドを86~98重量%及び耐屈曲剤を2~14重量%含有するポリアミド層を少なくとも有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている樹脂フィルムにおいては、エラストマー等の比較的柔らかい樹脂で構成される屈曲剤が含まれることによって、ゲルボフレックス試験(耐屈曲性試験)の結果が改善されている。しかしながら、エラストマー等の比較的柔らかい樹脂が含まれると、樹脂フィルムの耐摩耗性が低下する場合がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方が比較的良好な樹脂フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従う樹脂フィルムは、少なくとも3層を備える。3層には、第1層と第2層とが含まれる。第1層及び第2層の各々は、主としてポリアミド6によって構成される。第2層は、第1層よりも樹脂フィルムの表層側に位置している。第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は、3.5以上であり、かつ、第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度よりも0.5以上高い。
【0007】
本発明者(ら)は、樹脂フィルムにおいて、第2層が第1層よりも表層側に位置しており、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度が、3.5以上であり、かつ、第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度よりも0.5以上高い場合に、ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方が比較的良好となることを見出した。本発明に従う樹脂フィルムにおいては、第2層が第1層よりも表層側に位置しており、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度が、3.5以上であり、かつ、第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度よりも0.5以上高い。したがって、この樹脂フィルムによれば、ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方を比較的良好にすることができる。
【0008】
上記樹脂フィルムは、バリア層をさらに備えてもよい。
【0009】
この樹脂フィルムによれば、バリア層が設けられているため、酸素等の透過を抑制することができる。
【0010】
上記樹脂フィルムにおいて、第1層及び前記第2層の各々におけるポリアミド6の含有率が90wt%以上であってもよく、第1層及び第2層の各々が耐屈曲剤を含まなくてもよい。
【0011】
上記樹脂フィルムにおいて、耐摩耗性試験を通じて測定される摩耗強度が400回以上であってもよく、3回のゲルボフレックス試験を通じて確認されるピンホールの数の合計が、25℃環境でゲルボフレックス試験が行なわれた場合には5個以下であり、5℃環境でゲルボフレックス試験が行なわれた場合には10個以下であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方が比較的良好な樹脂フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】樹脂フィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図2】樹脂フィルムの製造装置の構成を模式的に示す図である。
【
図3】他の実施の形態に従う樹脂フィルムの断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施の形態」とも称する。)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれている。
【0015】
[1.樹脂フィルムの構成]
図1は、本実施の形態に従う樹脂フィルム10の断面を模式的に示す図である。樹脂フィルム10は、ポリアミド系のフィルムである。
図1に示されるように、樹脂フィルム10は、3層を積層することによって構成されており、第1層100と、第2層110,120とを含んでいる。第1層100は、樹脂フィルム10の厚み方向において、第2層110,120の間に位置している。第2層110,120の各々は、第1層100よりも樹脂フィルム10の表層側に位置している。
【0016】
樹脂フィルム10の総厚みは、例えば10μm~50μmであり、10μm~30μmであることが好ましい。また、第1層100の厚みと、第2層110,120の厚みの合計との比は、例えば30:70~70:30であり、40:60~60:40であることがより好ましい。
【0017】
第1層100及び第2層110,120の各々は、主としてポリアミド6によって構成されている。第1層100及び第2層110,120の各々におけるポリアミド6の含有率は、例えば、90wt%以上であり、95wt%以上であることが好ましく、98wt%以上であることがより好ましく、99wt%以上であることがさらに好ましい。第1層100及び第2層110,120の各々においては、ポリアミド66等のポリアミド6以外の樹脂が含まれていてもよい。
【0018】
第1層100に含まれているポリアミド6(以下、「第1ポリアミド6」とも称する。)と、第2層110,120の各々に含まれているポリアミド6(以下、「第2ポリアミド6」とも称する。)とは、種類が異なる。具体的には、第1ポリアミド6と第2ポリアミド6とは、互いに相対粘度が異なる。第1ポリアミド6の相対粘度と第2ポリアミド6の相対粘度との関係は、以下の式(1)~(3)で表わされる。なお、以下の式(1)~(3)の関係を満たすポリアミド6が第2層110,120の両方に含まれている必要は必ずしもない。以下の式(1)~(3)の関係を満たすポリアミド6が第2層110,120の少なくとも一方に含まれていればよい。
ηa-ηb≧0.5 ・・・(1)
ηa>ηb ・・・(2)
ηa≧3.5 ・・・(3)
【0019】
上記式(1)-(3)において、ηaは第1ポリアミド6の相対粘度を示し、ηbは第2ポリアミド6の相対粘度を示す。すなわち、第1ポリアミド6の相対粘度は、3.5以上であり、かつ、第2ポリアミド6の相対粘度よりも0.5以上高い。なお、各相対粘度は、JIS K-6920-2に準拠した方法で測定される。
【0020】
なお、第1層100及び第2層110,120の各々においては、複数種類のポリアミド6が含まれていてもよい。この場合には、第1層100に含まれる複数種類のポリアミド6のうち最も高い相対粘度を有するポリアミド6の相対粘度がηaとなる。また、第2層110,120の各々に含まれる複数種類のポリアミド6のうち最も高い相対粘度を有するポリアミド6の相対粘度がηbとなる。例えば、第1層100において、押出し成形時の不具合を改善する目的で、高粘度のポリアミド6に加えて中粘度のポリアミド6が含有されてもよい。
【0021】
第1層100及び第2層110,120の各々において、複数種類のポリアミド6が含まれる場合には、最も高い相対粘度を有するポリアミド6の含有率が、10wt%以上であり、20wt%以上であることが好ましく、30wt%以上であることがより好ましく、40wt%以上であることがさらに好ましい。
【0022】
また、第1層100及び第2層110,120の各々には耐屈曲剤が含まれていない。耐屈曲剤の一例としては、熱可塑性エラストマーが挙げられる。熱可塑性エラストマーの一例としては、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、アイオノマー重合体が挙げられる。
【0023】
このように、樹脂フィルム10においては、第1層100に含まれているポリアミド6の相対粘度が高く、第2層110,120の各々に含まれているポリアミド6の相対粘度が低い。樹脂フィルム10がこのように構成されている理由について次に説明する。
【0024】
樹脂フィルムの耐屈曲性を測定する試験としてゲルボフレックス試験が一般的に知られている。樹脂フィルムにエラストマー等の比較的柔らかい樹脂(例えば、耐屈曲剤)が含まれると、ゲルボフレックス試験の結果が改善される。エラストマー等のゴム系の成分は、ガラス転移点が低く、低温環境でも柔軟な状態を保持するためである。しかしながら、エラストマー等の比較的柔らかい樹脂が樹脂フィルムに含まれると、樹脂フィルムの耐摩耗性が低下する場合があることを本発明者(ら)は見出した。
【0025】
本発明者(ら)は、ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方が良好な樹脂フィルムを実現するために鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者(ら)は、樹脂フィルム10において、第2層110,120の各々が第1層100よりも表層側に位置しており、第1層100に含まれるポリアミド6の相対粘度が、3.5以上であり、かつ、第2層110,120の各々に含まれるポリアミド6の相対粘度よりも0.5以上高い場合に、ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方が比較的良好となることを見出した。
【0026】
ゲルボフレックス試験の結果は、高粘度のポリアミド6が用いられることで改善されると考えられる。高粘度のポリアミド6は、高い分子量を有し、分子鎖の絡まりに起因する強固で柔軟な構造を有することにより高い耐屈曲性を有するためである。そのため、樹脂フィルム10においては、第1層100に高粘度のポリアミド6が含有されている。
【0027】
また、耐摩耗性は、中粘度又は低粘度のポリアミド6が用いられることで改善されると考えられる。高分子が硬いほど摩耗は生じにくく、結晶化度が高いほど高分子が硬くなる。一般的に分子量が低いほど結晶化度が高くなる。中粘度又は低粘度のポリアミド6は、高粘度のポリアミド6と比較して低い分子量を有し、結晶化度が高いため高い耐摩耗性を有する。そのため、中粘度又は低粘度のポリアミド6が表層側に用いられることで、耐摩耗性が改善されると考えられる。樹脂フィルム10においては、第2層110,120の各々に中粘度のポリアミド6が含有されている。
【0028】
これらの検討を経て、本発明者(ら)は、樹脂フィルム10において、第2層110,120の各々が第1層100よりも表層側に位置しており、第1層100に含まれるポリアミド6の相対粘度が、3.5以上であり、かつ、第2層110,120の各々に含まれるポリアミド6の相対粘度よりも0.5以上高い場合に、ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方が比較的良好となることを見出した。
【0029】
本実施の形態に従う樹脂フィルム10においては、第2層110,120の各々が第1層100よりも表層側に位置しており、第1層100に含まれるポリアミド6の相対粘度が、3.5以上であり、かつ、第2層110,120の各々に含まれるポリアミド6の相対粘度よりも0.5以上高い。したがって、樹脂フィルム10によれば、ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方を比較的良好にすることができる。
【0030】
[2.樹脂フィルムの製造方法]
図2は、本実施の形態に従う樹脂フィルム10の製造装置20の構成を模式的に示す図である。製造装置20によって、樹脂フィルム10が製造される。
図2に示されるように、製造装置20は、Tダイ200と、キャストロール210,220と、縦延伸機240と、横延伸機250とを含んでいる。
【0031】
Tダイ200は、Tダイ本体201と、原料投入部230,231,232とを含んでいる。原料投入部230には、第2層120を形成するための原料が投入される。原料投入部230には、例えば、第2ポリアミド6からなる樹脂が投入される。原料投入部231には、第1層100を形成するための原料が投入される。原料投入部231には、例えば、第1ポリアミド6からなる樹脂が投入される。原料投入部232には、第2層110を形成するための原料が投入される。原料投入部232には、例えば、第2ポリアミド6からなる樹脂が投入される。原料投入部230,232の各々には、例えば、アンチブロッキング剤、帯電防止剤及び酸化防止剤の少なくとも一部がさらに投入されてもよい。また、原料投入部231には、例えば、酸化防止剤がさらに投入されてもよい。
【0032】
Tダイ本体201は、原料投入部230,231,232を介して投入された原料を共押出しすることによって、各原料投入部に投入された原料の溶融物同士を融着させて1枚の一体化したフィルム(溶融材料)とするように構成されている。キャストロール210,220は、押し出された溶融材料を冷却するとともに、下流へ送るように構成されている。縦延伸機240は、キャストロール210,220によって冷却された溶融材料に対してMD(Machine Direction)における延伸を施す。横延伸機250は、MDにおける延伸が施された樹脂フィルム10に対してTD(Transverse Direction)における延伸を施す。
【0033】
各種延伸が施された樹脂フィルム10は、下流に位置する巻取りロール(不図示)によって巻き取られる。製造装置20における製造工程を経て樹脂フィルム10の巻取体が製造される。
【0034】
[3.特徴]
以上のように、本実施の形態に従う樹脂フィルム10においては、第2層110,120の各々が第1層100よりも表層側に位置しており、第1層100に含まれるポリアミド6の相対粘度が、3.5以上であり、かつ、第2層110,120の各々に含まれるポリアミド6の相対粘度よりも0.5以上高い。したがって、樹脂フィルム10によれば、ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方を比較的良好にすることができる。
【0035】
[4.他の実施の形態]
上記実施の形態の思想は、以上で説明された実施の形態に限定されない。例えば、いずれかの実施の形態の少なくとも一部の構成と、他のいずれかの実施の形態の少なくとも一部の構成とが組み合わされてもよい。以下、上記実施の形態の思想を適用できる他の実施の形態の一例について説明する。
【0036】
上記実施の形態において、樹脂フィルム10は3層で構成された。しかしながら、樹脂フィルム10は、必ずしも3層で構成されなくてもよい。例えば、樹脂フィルム10は、4層以上で構成されてもよい。
【0037】
図3は、他の実施の形態に従う樹脂フィルム10Aの断面を模式的に示す図である。
図3に示されるように、樹脂フィルム10Aは、5層を積層することによって構成されており、第1層100X,100Yと、第2層110,120と、バリア層130とを含んでいる。
【0038】
樹脂フィルム10Aにおいては、バリア層130が第1層100X,100Yの間に位置している。第1層100Xのバリア層130が積層されている面と反対側の面に第2層110が積層されている。第1層100Yのバリア層130が積層されている面と反対側の面に第2層120が積層されている。
【0039】
第1層100X,100Yの各々は、例えば、上記実施の形態における第1層100と同様の組成を有している。バリア層130は、例えば、EVOH(ethylene vinylalcohol copolymer)又はm-キシリレンジアミン(MXD)によって構成される。樹脂フィルム10Aによれば、バリア層130が設けられているため、酸素等の透過を抑制することができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について例示的に説明した。すなわち、例示的な説明のために、詳細な説明及び添付の図面が開示された。よって、詳細な説明及び添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が詳細な説明及び添付の図面に記載されているからといって、それらの必須でない構成要素が必須であると直ちに認定されるべきではない。
【0041】
また、上記実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。上記実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【実施例0042】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0043】
[1.実施例及び比較例]
以下の方法で、実施例1~5及び比較例1~6の樹脂フィルムを製造した。各層を構成する原料組成物を250℃の押出機に供給し、250℃のTダイスから冷却水が循環するチルロール上に原料組成物をシート状に押し出すことによって、3層のポリアミド系シートを得た。次いで、得られたシートを65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理することによって、厚さ15μmの3層のポリアミド系フィルムを得た。各樹脂フィルムの構成は、
図1に示される3層構成であった。得られた各樹脂フィルムの総厚みは15μmであった。各樹脂フィルムにおいて、第1層の厚みが8μm、各第2層の厚みが3.5μmであった。
【0044】
以下の方法で、実施例6の樹脂フィルムを製造した。各層を構成する原料組成物を250℃の押出機に供給し、250℃のTダイスから冷却水が循環するチルロール上に原料組成物をシート状に押し出すことによって、バリア樹脂層を含む5層のポリアミド系シートを得た。次いで、得られたシートを65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理することによって、厚さ15μmの5層のポリアミド系フィルムを得た。各樹脂フィルムの構成は、
図3に示される5層構成であった。得られた樹脂フィルムの総厚みは15μmであった。樹脂フィルムにおいて、各第1層の厚みが3.25μm、各第2層の厚みが3.5μm、バリア層の厚みが1.5μmであった。
【0045】
実施例1~6及び比較例1~6の各々において、ポリアミド6の相対粘度は、JIS K-6920-2に準拠した方法で測定された。
【0046】
実施例1の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は4.0であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.2であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0.8であった。相対粘度が4.0であるポリアミド6の第1層における含有率は100wt%であり、相対粘度が3.2であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、実施例1の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0047】
実施例2の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.5であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.0であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0.5であった。相対粘度が3.5であるポリアミド6の第1層における含有率は100wt%であり、相対粘度が3.0であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、実施例2の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0048】
実施例3の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は4.0であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.2であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0.8であった。相対粘度が4.0であるポリアミド6の第1層における含有率は100wt%であった。相対粘度が3.2であるポリアミド6の各第2層における含有率は70wt%であり、相対粘度が2.4であるポリアミド6の各第2層における含有率は30wt%であった。第2層における相対粘度としては、より高い方の相対粘度である3.2が用いられた。なお、実施例3の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0049】
実施例4の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は4.0であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.2であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0.8であった。相対粘度が4.0であるポリアミド6の第1層における含有率は60wt%であり、相対粘度が3.2であるポリアミド6の第1層における含有率は40wt%であった。第1層における相対粘度としては、より高い方の相対粘度である4.0が用いられた。相対粘度が3.2であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、実施例4の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0050】
実施例5の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は4.0であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は2.4であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は1.6であった。相対粘度が4.0であるポリアミド6の第1層における含有率は100wt%であり、相対粘度が2.4であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、実施例5の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0051】
実施例6の樹脂フィルムにおいて、各第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は4.0であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.2であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0.8であった。相対粘度が4.0であるポリアミド6の各第1層における含有率は100wt%であり、相対粘度が3.2であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、実施例6の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0052】
比較例1の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は4.0であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は4.0であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0であった。相対粘度が4.0であるポリアミド6の第1層における含有率は100wt%であり、相対粘度が4.0であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、比較例1の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0053】
比較例2の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.2であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.2であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0であった。相対粘度が3.2であるポリアミド6の第1層における含有率は100wt%であり、相対粘度が3.2であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、比較例2の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0054】
比較例3の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.5であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.2であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0.3であった。相対粘度が3.5であるポリアミド6の第1層における含有率は100wt%であり、相対粘度が3.2であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、比較例3の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0055】
比較例4の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は4.0であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.2であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0.8であった。相対粘度が4.0であるポリアミド6の第1層における含有率は100wt%であり、相対粘度が3.2であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、比較例4の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤(ポリエステル系エラストマー)が含まれていた。
【0056】
比較例5の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.2であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は2.4であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0.8であった。相対粘度が3.2であるポリアミド6の第1層における含有率は100wt%であり、相対粘度が2.4であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、比較例5の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0057】
比較例6の樹脂フィルムにおいて、第1層に含まれるポリアミド6の相対粘度は3.2であり、各第2層に含まれるポリアミド6の相対粘度は4.0であった。すなわち、第1層と第2層との間における相対粘度差は0.8であった。相対粘度が3.2であるポリアミド6の第1層における含有率は100wt%であり、相対粘度が4.0であるポリアミド6の各第2層における含有率は100wt%であった。なお、比較例6の樹脂フィルムにおいては、耐屈曲剤が含まれていなかった。
【0058】
実施例1~6及び比較例1~6の各樹脂フィルムの組成を以下の表1に示す。
【0059】
【0060】
[2.各種試験]
実施例1~6及び比較例1~6の各樹脂フィルムに関し以下の各試験を行なった。
【0061】
<2-1.ゲルボフレックス試験>
理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて測定した。折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋した樹脂フィルムをゲルボフレックステスターに装着し、最初の88.9cmで440°の捻りを与え、その後63.5cmは直線水平運動となる繰り返しの屈曲直線運動を25℃及び5℃の条件下で試験速度40回/分にて1000回繰り返した後、それぞれ浸透液を用いてピンホールの数を調べた。なお、ピンホール数の測定はサンプルの中央部における300cm2の箇所で行なった。3枚のサンプルについてピンホールの数を測定し、ピンホールの数の合計数を測定結果とした。
【0062】
<2-2.耐摩耗性試験>
形が錐状のアルミニウム製の治具に、テープ等を用いて樹脂フィルムを装着し、錐状の治具の頂点を、樹脂フィルムを介してボール紙(コクヨCampus 板目 美膿判用 430g/m2)に接触させた。頂点のRは摺動方向R=10mmとした。
【0063】
次いで、治具に25gの荷重を乗せた。湿度65%の条件下で、治具を6000mm/分の速度で、かつ移動距離45mmの範囲でボール紙に対して平行に摺動させ、摺動回数25回単位で測定し、ピンホールが開いた時点での回数を測定した。例えば、ピンホールが300回で開いて275回で開かない場合は300回とした。
【0064】
ピンホールの発生は、樹脂フィルムに治具の頂点が当たっていたところに浸透液を滴下して、白色紙の上で浸透するか否かにより判定した。
【0065】
[3.試験結果]
各試験結果を以下の表2に示す。
【0066】
【表2】
表2に示されるように、実施例1~6の各樹脂フィルムにおいては、25℃環境におけるゲルボフレックス試験の結果が2個以下(5個以下)であり、5℃環境におけるゲルボフレックス試験の結果が8個以下(10個以下)であった。実施例1~6の各樹脂フィルムは、冷蔵流通する食品等の包装に適していることが分かった。また、実施例1~6の各樹脂フィルムにおいては、耐摩耗性試験を通じて測定される摩耗強度が400回以上であった。すなわち、実施例1~6の各樹脂フィルムにおいては、ゲルボフレックス試験の結果及び耐摩耗性の両方が比較的良好であった。
【0067】
一方、比較例1の樹脂フィルムにおいては耐摩耗性が低く、比較例2の樹脂フィルムにおいては5℃環境におけるゲルボフレックス試験の結果が悪かった。また、比較例3の樹脂フィルムにおいては5℃環境におけるゲルボフレックス試験の結果が悪く、比較例4の樹脂フィルムにおいては耐摩耗性が低かった。比較例5の樹脂フィルムにおいては25℃及び5℃の各々の環境におけるゲルボフレックス試験の結果が悪く、比較例6の樹脂フィルムにおいては耐摩耗性が低かった。
10,10A 樹脂フィルム、20 製造装置、100,100X,100Y 第1層、110,120 第2層、130 バリア層、200 Tダイ、201 Tダイ本体、210,220 キャストロール、230,231,232 原料投入部、240 縦延伸機、250 横延伸機。