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  • 特開-機能性セルロースナノファイバー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160438
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】機能性セルロースナノファイバー
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/53 20060101AFI20241107BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20241107BHJP
【FI】
D06M15/53
D06M101:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075413
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】319012211
【氏名又は名称】株式会社ザック
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】野地 欣久
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AB01
4L033AC15
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】 本発明は、金属または金属化合物を容易に析出することができるセルロースナノファイバーを提供する。
【解決手段】 本発明にかかる機能性セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーに、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドのトリブロック共重合体を含浸させること、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドからなるトリブロック共重合体が含浸されたセルロースナノファイバーを乾燥させることによって生成されるものである。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)セルロースナノファイバーに、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドのトリブロック共重合体を含浸させる段階、および、
(2)前記トリブロック共重合体が含浸されたセルロースナノファイバーを乾燥させる段階からなることを特徴とする機能性セルロースナノファイバーの製造方法。
【請求項2】
セルロースナノファイバーに、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドのトリブロック共重合体を含浸させること、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドからなるトリブロック共重合体が含浸されたセルロースナノファイバーを乾燥させることによって生成されること特徴とする機能性セルロースナノファイバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属または金属化合物を容易に析出することができる機能性セルロースナノファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(国際公開WO2010/095574)は、(A)表面にカルボキシル基を有するセルロースナノファイバー及び(B)金属ナノ粒子を含む複合体であって、前記(B)金属ナノ粒子は、前記カルボキシル基またはカルボキシレート基を接点として担持されている複合体を開示する。この複合体は、前記(A)セルロースナノファイバーを準備する工程、前記(A)セルロースナノファイバーと金属化合物水溶液を接触させて、前記カルボキシル基等と前記金属化合物を結合させる工程、および当該金属化合物を還元して金属ナノ粒子を形成する工程を経て生成されるものである。また、特許文献1では、カルボキシル基またはカルボキシレート基を有するセルロースナノファイバーを準備するために、N-オキシル化合物を用いてセルロースを酸化することにより、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にカルボキシル基またはカルボキシレート基を有するセルロースナノファイバーが得られることが開示されている。ここで、N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを有する化合物をいうことが開示されている。
【0003】
特許文献2(特開2014-240538号公報)は、セルロース系ファイバー表面に金属ナノ粒子を担持させるコストの低く、環境負荷の少ない方法を提供するものである。この特許文献2において、表面にアルデヒド基を有するセルロース系ファイバーと金属化合物水溶液とを接触させ、アルデヒド基によって金属化合物を還元して、ファイバー表面に金属ナノ粒子を形成させるものである。セルロース系ファイバーの表面に存在するアルデヒド基によって金属化合物を還元することができるので、ファイバー表面に金属ナノ粒子を担持させるに際して還元剤溶液の使用量を大幅に低減させることができ、又は還元剤溶液を使用しなくてもよくなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2010/095574
【特許文献2】特開2014-240538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法として、セルロースナノファイバーに金属イオンの水溶液を取り込む方法としては、セルロースナノファイバーを、金属イオンの水溶液に浸漬し、還元処理(還元剤、電気化学還元、熱還元)を行う方法がある。これらの方法には、高温処理が必要で工業的には不向きな点があること、電気化学的析出法ではセルロースナノファイバーを電極として使用するため、複雑な装置が必要であること、液相法では還元剤を使用するため、セルロースナノファイバーに金属を析出ための選択肢が制限されるという不具合がある。
【0006】
本発明は、金属または金属化合物を容易に析出することができるセルロースナノファイバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、セルロースナノファイバーに、非イオン界面活性剤としてポリエチレンオキシド(PEO)/ポリプロピレンオキシド(PPO)/ポリエチレンオキシド(PEO)のトリブロック共重合体を含浸させ、乾燥させたセルロースナノファイバーがナノ金属粒子を効率よく析出することができることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、セルロースナノファイバーに、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドのトリブロック共重合体を含浸させること、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドからなるトリブロック共重合体が含浸されたセルロースナノファイバーを乾燥させることによって生成されること特徴とする機能性セルロースナノファイバーを提供するものである。
【0009】
この機能性セルロースナノファイバーを使用した金属または金属化合物、特にナノ金属粒子の析出は、本発明によって生成された機能性セルロースナノファイバーを、水に分散させて水溶液を形成し、この水溶液に金属酸化物溶液を加えることによって、特別な方法、例えば超音波振動、加熱、回転式拡散を用いることなく静置しておくだけで行うことができるものである。
【0010】
これは、本発明によって作成された機能性セルロールナノファイバーには、ポリプロピレンオキシドが存在し、このポリプロピレンオキシドの末端には、ヒドロキシル基が存在し、この基が金属イオンと相互作用することで、金属イオンが還元されるものである。また、ポリプロピレンオキシドは、炭素-酸素-炭素(C-O-C)結合を持つブロック共重合体であり、ポリプロピレンオキシドを表面に持つ機能性セルロースナノファイバーは、金属表面に存在するカルボキシル基(COOH基)やカルボニル基(CO基)と反応し、機能性セルロールナノファイバー上に金属化合物を析出することができるものである。
【0011】
尚、前記金属酸化物水溶液としては、硝酸銀、金(III)クロライド水溶液、パラジウム(II)クロライド水溶液、ロジウム(III)クロライド水溶液、プラチナ(II)クロライド水溶液がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セルロースナノファイバーに、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドのトリブロック共重合体を含浸させて乾燥させるだけで、水や溶剤に簡単に分散する機能性セルロースナノファイバーを生成することができるので、生成コストがかからず、工業的に量産できる機能性セルロースナノファイバーを提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によって作成された機能性セルロースナノファイバーの外観を示した外観写真である。
図2】本発明によって作成された機能性セルロースナノファイバーを水に1重量%の割合で分散させ、IN硝酸銀を、0.1重量%の割合で配合後静置した状態を示した写真である。
図3】本発明よって作成された機能性セルロースナノファイバーに金属酸化物溶液を添加して乾燥させた乾燥体(CNF-Ag)の外観写真である。
図4】前記乾燥体(CNF-Ag)の電子顕微鏡(SEM)写真である。
図5】本発明によって作成された前記乾燥体(CNF-Ag)の組成分析表である。
図6】本発明によって作成された機能性セルロースナノファイバー1重量%を水に分散させ、1N硝酸銀を0.5重量%配合した後、静置して乾燥させた乾燥体(CNF-Ag)の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、説明する。
【実施例0015】
1.機能性セルロースナノファイバーの製造方法
(1)セルロースナノファイバー(CNF)に、ポリエチレンオキシド(PEO)/ポリプロピレンオキシド(PPO)/ポリエチレンオキシド(PEO)のトリブロック共重合体を含浸させる。
(2)前記トリブロック共重合体が含浸されたセルロースナノファイバー(CNF)を乾燥させる。
【0016】
これによって、図1に示されるような機能性セルロースナノファイバー(CNF)を得ることができる。
【0017】
上記方法によって取得された機能性セルロースナノファイバー(CNF)には、ポリプロピレンオキシド(PPO)が存在し、PPOの末端には、ヒドロキシル基が存在するため、この基が金属イオンと相互作用することによって、金属イオンを還元することができるものである。尚、PPOは、炭素-酸素-炭素(C-O-C)結合を持つブロック共重合体であり、ポリプロピレンオキシド(PPO)を表面に持つことから、金属表面に存在するカルボキシル基(COOH基)やカルボニル基(CO基)と反応して金属化合物が摘出されるものである。
【0018】
この検証として、上述したように生成された機能性CNFを、水に1重量%に分散させ、金属酸化物溶液として1N硝酸銀を0.1重量%の割合で配合し、静置する(図2は反応写真である)。図3は、その後乾燥させた状態を示した外観写真である。また、図4は、乾燥体(CNF-Ag)の電子顕微鏡(SEM)写真である。機能性カーボンナノファイバー上に、銀が析出されている状態が見られる。
【0019】
また、図5で示される組成分析表から、乾燥体(CNF-Ag)の25%が銀(Ag)であることが確認できる。
【0020】
図6も同様に、本発明による機能性CNF1重量%を、水に分散させて分散溶液を作成し、この分散溶液に金属酸化物溶液として1N硝酸銀を0.5重量%の割合で配合し、静置後に乾燥させて得られた乾燥体(CNF-AG)の500倍の電子顕微鏡(SEM)写真である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6