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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160441
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/48 20060101AFI20241107BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241107BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241107BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A61K36/48
A61P31/04
A61P29/00
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075418
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】503249119
【氏名又は名称】株式会社 ソーシン
(71)【出願人】
【識別番号】522376276
【氏名又は名称】福山 朋季
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 到
(72)【発明者】
【氏名】福山 朋季
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB59
4C088AC04
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA17
4C088MA43
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB11
4C088ZB35
(57)【要約】
【課題】ムクナ豆を有効成分として含有する抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤を提供することにある。
【解決手段】抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤であって、ムクナ豆を有効成分として含有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムクナ豆を有効成分として含有することを特徴とする抗菌剤。
【請求項2】
前記ムクナ豆は、粉末である請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項3】
前記粉末は、前記抗菌剤に対して、0.01~50%である請求項2に記載の抗菌剤。
【請求項4】
前記ムクナ豆は、ムクナ豆エキスである請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項5】
前記ムクナ豆エキスは、前記抗菌剤に対して、0.1~40%の希釈剤の溶液である請求項4に記載の抗菌剤。
【請求項6】
ムクナ豆を有効成分として含有することを特徴とする抗炎症剤。
【請求項7】
前記ムクナ豆は、粉末である請求項6に記載の抗炎症剤。
【請求項8】
前記粉末は、前記抗炎症剤に対して、0.01~50%である請求項7に記載の抗炎症剤。
【請求項9】
前記ムクナ豆は、ムクナ豆エキスである請求項6に記載の抗炎症剤。
【請求項10】
前記ムクナ豆エキスは、前記抗炎症剤に対して、0.1~40%の希釈剤の溶液である請求項9に記載の抗炎症剤。
【請求項11】
ムクナ豆を有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項12】
前記ムクナ豆は、粉末である請求項11に記載の皮膚外用剤。
【請求項13】
前記粉末は、前記皮膚外用剤に対して、0.01~50%である請求項12に記載の皮膚外用剤。
【請求項14】
前記ムクナ豆は、ムクナ豆エキスである請求項11に記載の皮膚外用剤。
【請求項15】
前記ムクナ豆エキスは、前記皮膚外用剤に対して、0.1~40%の希釈剤の溶液である請求項11に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムクナ豆(八升豆若しくはベルベットビーン)を有効成分として含有する抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー若しくはアレルギー反応は、免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こる反応のことをいう。アレルギーが起こる原因は解明されていないが、生活環境のほか、抗原に対する過剰な曝露、遺伝などが原因ではないかと考えられている。なお、アレルギーを引き起こす抗原を特にアレルゲンと呼ぶ。ハウスダストや、犬若しくは猫の毛、ダニ、カビ、花粉等といった生物や植物に由来するもの、蕎麦、米、小麦、酵母、ゼラチン、乳製品、鶏卵等といった食物に由来するものなど実に様々なものがアレルゲンとなる。また、薬剤においても成分によってはアレルゲンになったりする。
【0003】
ここで、アレルゲンに対して免疫反応が起こる機序としては、IgE、IgG又はIgMといった免疫グロブリン系抗体のアレルゲンに対する過剰反応、感作T細胞のアレルゲンに対する過剰反応、ヘルパーT細胞若しくはその亜種(例えばTh1、Th2細胞)並びに/又は好中球、好酸球、マクロファージ、サイトカイン(主にインターロイキン(IL))、のアレルゲンに対する過剰反応などがある。
【0004】
そして、アレルギー反応により、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸炎、気管支喘息、小児喘息、食物アレルギー、薬物アレルギー、蕁麻疹等といった、いわゆるアレルギー性疾患を発症する。上記アレルギー性疾患は主にヒトにおいて発症するが、他の哺乳動物(例えば犬や猫)でもヒト同様に皮膚炎や結膜炎などといった疾患を発症する。
【0005】
ところで、アレルギー性疾患を治療する、即ち過剰な免疫反応を司る受容体(例えばロイコトリエンLT受容体やヒスタミンH受容体)やメディエータ(ヒスタミンやサイトカイン)自体に対する拮抗剤、阻害剤、抑制剤或いは遊離剤がある。前述した免疫反応における拮抗、阻害、抑制、若しくは遊離においては、ステロイド系化合物を有効成分とするステロイド系製剤又はステロイド系に依らない例えば第一世代若しくは第二世代抗ヒスタミン製剤、ケミカルメディエータ遊離剤などの非ステロイド製剤に大まかに分類される。
【0006】
一般的に、ステロイド系製剤は、主に免疫反応及び免疫反応を司る受容体やメディエータ等の働きを抑制する役割を担う。更に、ステロイド系製剤は、免疫抑制剤としての抗アレルギー剤の役割だけではなく、抗炎症剤、血管収縮剤、細胞増殖抑制剤として用いられており、その剤型も内服薬、皮膚外用剤(塗布剤)、点眼薬、点滴等あらゆる剤型を採る。しかしながら、ステロイド系製剤は、軽症若しくは軽傷又は無症状に近い状態で用法を誤って使用してしまうと、アレルギーや疾患に直接関係のない因子(例えばインスリン等のホルモン)にまで抑制作用が起きてしまい、副作用を併発する可能性が高いという難点がある。また、抗ヒスタミン剤に代表されるような非ステロイド系抗アレルギー剤もまた、有効成分が多くを占めれば、非ステロイド系薬剤と同様に副作用を併発するという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-83764号公報
【特許文献2】国際公開第2021/235512号
【特許文献3】特開2008-81478号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小西史子,“種々の食品の調理性,機能性及び嗜好性に関する研究”,日本家政学会誌,Vol.73,No.6,295-205頁(2022年).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、上記に述べたステロイド系製剤及び/又は抗ヒスタミン剤に代表されるような非ステロイド系抗アレルギー剤の副作用の懸念を解消すべく、近年では天然物に由来した免疫調整用組成物が、例えば特開2018-83764号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1に係る組成物は、キク科アザミ属ハマアザミ又はその抽出物を有効成分として免疫抑制機能を発現するという組成物である。そしてその組成物を食品等に混合して使用する。しかしながら、特許文献1においては、ハマアザミ抽出物に含まれるシルシマリン及び/又はシルシマリチンが、免疫調整に係る主成分であり、ハマアザミについては、葉や茎などの全草部分を乾燥したものが使用できる旨が記載されているが、結果的にはその乾燥物も熱水抽出して使用することになる。より免疫調整組成物としての精度を上げるためには、抽出物を更にクロマトグラフィー等で精製することにより、シルシマリン及び/又はシルシマリチンを単離しなくてはならない。その際の抽出物についても、熱水抽出ではなく、有機溶剤を使用して抽出をしなくてはならないため、用いる溶媒によっては溶媒の留去が負担になる可能性が高い。
【0010】
上記に述べた、有機溶剤を用いるまでもなく、単離精製が可能な材料として例えばマスティック(マスティハ)等が知られている。マスティック(マスティハ)は、ウルシ科のカイノキ属マスティクス(Pistacia lentiscus)を言い、ギリシャのヒオス島でしか産生しない。そして、マスティックは殺菌、抗微生物効果が知られており、例えば胃腸の疾患をもたらすピロリ菌やボツリヌス菌の殺菌、ヒトやヒト以外(例えば犬、猫)の動物に関わらず歯周病菌に対する殺菌効果、血圧低下作用、血糖値低下作用のほか、コレステロールの低下作用、免疫賦活効果、胆汁分泌の促進、舌が白くなる舌苔の防止、痛風やリウマチの痛みの緩和、傷口の殺菌、創傷治癒促進などの作用等、更にはう蝕菌、歯周病菌、日和見感染菌等の口腔内細菌若しくは真菌に対する抗菌効果が近年知られるようになった。一般的マスティックは、主成分としてはマスチカジエノン酸、イソマスチカジエノン酸、トリテルペン類、アルデヒド類、アルコール類、ポリβ‐ミルセン等を含有する「マスティック樹液」、マスティック樹液を、自然乾燥させ凝固させたものを「マスティック樹脂」、マスティック樹液又はマスティック樹脂を水蒸気蒸留法若しくは乾留により、揮発性の成分(主にテルペン類)を精油化した「マスティック精油(オイル)」の3種に分けて使用する。マスティックを先に述べたそれぞれの形態に分ける際、自然乾燥や水蒸気蒸留等といった、有機溶剤による抽出、分離をせずに簡便且つ安全な方法で、抽出や単離が可能である。
【0011】
本願の出願人らは、マスティック由来成分を含有した抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤、化粧品、及び経皮外用剤を国際公開第2021/235512号(特許文献2)に開示している。ここで、特許文献2に記載の発明は、アトピー性皮膚炎をはじめとするTh2型アレルギーを対象として、マスティック由来成分がサイトカイン(IL-4、IL-9、IL-13)やIL-1β、ペリオスチン、TSLP(胸腺間質性リンパ球新生因子)の抑制効果を有することを見出している。しかしながら、特許文献2においては、マスティック自体、先に述べたように、ギリシャのヒオス島でしか産生しないこと、それに伴い輸送コストがかかることから、大量生産には向いていない。
【0012】
一方、上述のマスティックのような、その中に含まれている成分が、例えば免疫抑制効果他の多機能な効果が期待される自然材料として、近年ではムクナ豆(八升豆若しくはベルベットビーンとも称される。以下本明細書では「ムクナ豆」に記載を統一する)が、注目されている。
【0013】
ムクナ豆は、ドーパミン前駆体であるL‐DOPA(3,4‐ジヒドロキシ‐L‐フェニルアラニン)が含まれており、例えばパーキンソン病の特効薬のL‐DOPA製剤の代替物が期待されており、その他例えばアルツハイマー型認知症の主な原因の1つであるβ-アミロイド及びタウタンパク質の阻害効果を有することが分かっている(非特許文献1参照)。更には、L‐DOPAが含まれていることにより、うつ症状やストレスの緩和などといった心因性の問題の改善効果等が期待される。また、ムクナ豆は、L‐DOPAの他、必須や非必須問わずL-α‐アミノ酸や、ポリフェノール類が含まれているため、疲労軽減、血糖値低下作用、降圧効果、抗酸化作用等が期待される。そして、ムクナ豆から抽出した抽出物について、当該抽出物を食品や飲料水に応用した発明が、例えば特開2008-81478号公報(特許文献3)に開示されている。特許文献3に記載の発明においては、前記抽出物に含まれるポリフェノール‐多糖類の複合体を活性化物質として、免疫機能増強活性と癌細胞に対するアポトーシス誘導能を有する抗癌・癌予防効果を見出したというものである。
【0014】
しかしながら、特許文献3においては、樹状細胞から産生したインタ-ロイキン6(IL-6)や腫瘍壊死因子(TNF-a)などのサイトカインを賦活する免疫賦活効果の増強作用は知られていても、先に述べたような逆にアレルギー性皮膚炎などに由来する炎症を引き起こすサイトカイン等の抑制(阻害)効果については記載や示唆が無い。言うなれば、アレルギー性皮膚炎などに由来する炎症を引き起こすサイトカイン等の抑制(阻害)効果、ひいては、抗炎症効果、更には殺菌作用については、未だにわからない。
【0015】
本発明は、上記の事情を鑑み、ムクナ豆を有効成分として含有する抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る抗菌剤の上記目的は、ムクナ豆を有効成分として含有することによって達成される。
【0017】
また、本発明に係る抗菌剤の上記目的は、前記ムクナ豆は、粉末であることにより、或いは前記粉末は、前記抗菌剤に対して、0.01~50%であることにより、或いは前記ムクナ豆は、ムクナ豆エキスであることにより、或いは前記ムクナ豆エキスは、前記抗菌剤に対して、0.1~40%の希釈剤の溶液であることにより、より効果的に達成される。
【0018】
更に、本発明に係る抗炎症剤の上記目的は、ムクナ豆を有効成分として含有することによって達成される。
【0019】
また更に、本発明に係る抗炎症剤は、前記ムクナ豆は、粉末であることにより、或いは前記粉末は、前記抗菌剤に対して、0.01~50%であることにより、或いは前記ムクナ豆は、ムクナ豆エキスであることにより、或いは前記ムクナ豆エキスは、前記抗菌剤に対して、0.1~40%の希釈剤の溶液であることにより、より効果的に達成される。
【0020】
更に、本発明に係る皮膚外用剤の上記目的は、ムクナ豆を有効成分として含有することによって達成される。
【0021】
また更に、本発明に係る皮膚外用剤は、前記ムクナ豆は、粉末であることにより、或いは前記粉末は、前記抗菌剤に対して、0.01~50%であるあることにより、或いは前記ムクナ豆は、ムクナ豆エキスであることにより、或いは前記ムクナ豆エキスは、前記抗菌剤に対して、0.1~40%の希釈剤の溶液であることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤によれば、ムクナ豆を使用することにより、製造コストが抑えられ、アレルギー性皮膚炎に係るメディエータ(サイトカイン)免疫抑制作用、並びに黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果を示すことが明らかになった。
【0023】
また、ムクナ豆を使用しているので、副作用の無い若しくは少ない抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤の作製が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1におけるムクナ抽出液の皮膚常在性ブドウ球菌の抗菌効果に係るグラフである。
図2】実施例2におけるヒト表皮角化細胞から産生されるサイトカインに対するムクナ抽出液の作用効果を示すグラフである。
図3】実施例3におけるアトピー性皮膚炎モデルマウスの経表皮水分蒸散量を示すグラフである。
図4】実施例3においてムクナ抽出液(ムクナ豆エキス)を用いた場合の抗炎症作用効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤について、詳細を説明する。本発明で言う「ムクナ豆(八升豆若しくはベルベットビーン)」は学名をMucuna pruriens var. utilisといい、マメ亜科トビカズラ属に属する植物である。また、「%」については、特段の記載が無い場合には、全て重量百分率とする。
【0026】
なお、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤における抗アレルギー反応については、クームスの分類にて分類されるI型、II型、III型、IV型の四種類のアレルギー反応型に対して有効である。更には、前記四種類のアレルギー反応型のうち、例えば皮膚炎を発症するI型、IV型の二種類のアレルギー反応型に対して有効である。そして、I型、IV型のアレルギー反応型における抗体として、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して有効である(抑制効果を有する)。
【0027】
また、本発明に係る抗菌剤においては、その対象菌として、皮膚常在性のブドウ球菌、例えば、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌、腐生ブドウ球菌等といったブドウ球菌類、マラセチア、トリコフィトン、アスペルギルスやカンジダ等の真菌類に対して有効である。
【0028】
次に本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤におけるムクナ豆について説明する。
【0029】
先ず、ムクナ豆を粉状にした場合(以下、「粉末ムクナ豆」とする。)について説明する。粉末ムクナ豆は、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤において、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して有効性を示す重要な構成要素の一形態である。粉末ムクナ豆は、文字通り、ムクナ豆を粉末化させたものを使用する。ちなみにその粉末化については、常法(例えばミルや凍結乾燥法等)によって可能であり、任意の手段を取り得る。
【0030】
粉末ムクナ豆の配合量であるが、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤に対して、0.01%~80%、好ましくは0.1~50%でより有効性を発揮する。マスティックパウダーの配合量が、0.01%未満であると、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して有効効果が示されない。また粉末ムクナ豆の配合量が、80%より過剰であると、却って何らかの炎症やアレルギー反応を起こすといった懸念があり、且つ場合によってはこの濃度範囲内よりもIgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して免疫抑制効果が低下する可能性もある。また、粉末ムクナ豆の配合量が、80%より過剰であると、生体内で必要な抗体等を破壊してしまう可能性がある。
【0031】
ところで、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤において、当該抗菌剤等の形態(剤型等)によっては、粉末ムクナ豆のような固体粉末を配合するよりも、液体状(エキスやオイル状も含む)やゲル(ジェル)状で配合した方が都合の良い場合がある。ここで、ムクナ豆エキスについて説明する。ムクナ豆エキスは、固体状若しくは粉末状のムクナ豆を希釈剤に溶解させて使用する。希釈剤に溶解させる理由は、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤がジェルや液体等の種々の態様を採ったときに種々の材料との相溶性を検討した結果である。
【0032】
ムクナ豆を溶解させるための希釈剤としては、水、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、脂肪酸トリグリセリド(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、脂肪酸モノグリセリド(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)、モノカプリン酸グリセリル、脂肪酸エステル(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸エチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、高級アルコール(炭素数8~22程度)、オレイルアルコール、ソルビタン脂肪酸エステル(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)、ショ糖脂肪酸エステル(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)といった多価アルコール脂肪酸エステル、並びに/又は天然油脂類、特にオリーブ油やヤシ油などの植物由来不飽和脂肪酸、パーム油などの飽和脂肪酸、ヤシ油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、エゴマ油、亜麻仁油、魚油、大豆油、コーンオイルといった植物若しくは動物油、アルコール系溶剤(但し、エタノールやイソプロパノール系等)といったものを使用することができる。
【0033】
なお、ムクナ豆エキスの濃度は、上記希釈剤の0.1~40%の溶液が望ましい。ちなみに、その濃度が0.1%未満であると、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して免疫抑制効果が低下する又は免疫抑制効果が得られず、その濃度が40%より過剰であると、不均一系溶液になってしまい、且つ0.1%未満のときほどではないものの先に述べたメディエータに対する免疫抑制効果も低下する。
【0034】
ムクナ豆エキスの調製方法については、上記濃度を順守すれば常法で構わない。そして、固体若しくは粉末状のムクナ豆の溶解温度は、溶剤の沸点等を考慮すれば適宜温度上昇させてよく、場合によっては常温で構わない。
【0035】
また、本発明の抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤の剤型としては、液体、ゲル状、パスター(軟膏)、粉末、シロップ剤、錠剤、顆粒状散剤、カプセル等の形状を採ることが可能である。なお、これらの剤型の形態においては、それぞれ既知の工法で製造中若しくは製造後にムクナ豆部分を添加すればよい。そしてまた、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤は、化粧品及び/又は経皮外用剤のいずれかにも応用が可能である。
【0036】
そして、ムクナ豆については、粉末ムクナ豆及びムクナ豆エキスを併せて用いてもよい。
【0037】
以上に述べた態様で、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤については実施可能であるが、種々の添加剤を含有させても良い。その添加剤について次に説明する。
【0038】
本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤において、ムクナ豆(粉末ムクナ豆若しくはムクナ豆エキス)の免疫抑制効果を高める助剤として、例えば上述のマスティック(マスティハ)由来各成分を用いてもよい。なお、本明細書において、「マスティック樹液」はウルシ科のカイノキ属マスティクス(Pistacia lentiscus)から採れる樹液を言い、背景技術の項で上述したように主成分としてはマスチカジエノン酸、イソマスチカジエノン酸、トリテルペン類、アルデヒド類、アルコール類、ポリβ‐ミルセン等である。「マスティック樹脂」とはマスティック樹液を、自然乾燥させて凝固させたものを言う。「マスティックオイル」とは、マスティック樹液及び/又はマスティック樹脂を、後述する希釈剤に溶解させ、その溶液をろ過したものをいう。「マスティック精油」とは、マスティック樹液又はマスティック樹脂を水蒸気蒸留法若しくは乾留により、揮発性の成分(主にテルペン類)を精油化したものをいう。
【0039】
次に各マスティック成分について説明する。
【0040】
先ず、マスティックパウダーについて説明する。マスティックパウダーは、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤において、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して有効性を示す重要な構成要素の一形態である。マスティックパウダーは、上述のように、マスティック樹液及び/又はマスティック樹脂を粉末化させたものを使用する。なお、マスティック樹液及び/又はマスティック樹脂を粉末化としたのは、マスティック樹液及びマスティック樹脂については、水分が蒸発した以外は、含まれている成分がほとんど変わらないためであるのと、最終的には粉末になればよいためである。ちなみにその粉末化については、常法(例えばミルや凍結乾燥法等)によって可能であり、マスティック樹液若しくはマスティック樹脂の状態によって、任意の手段を取り得る。
【0041】
マスティックパウダーの配合量であるが、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤に対して、0.01%~80%、好ましくは0.1~50%でより有効性を発揮する。マスティックパウダーの配合量が、0.01%未満であると、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して有効効果が示されない。またマスティックパウダーの配合量が、80%より過剰であると、却って何らかの炎症やアレルギー反応を起こすといった懸念があり、且つ場合によってはこの濃度範囲内よりもIgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して免疫抑制効果が低下する可能性もある。また、マスティックパウダーの配合量が、80%より過剰であると、生体内で必要な抗体等を破壊してしまう可能性がある。
【0042】
ところで、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤において、当該剤の形態によっては、マスティックパウダーのような固体粉末を配合するよりも、オイル状で配合、即ちマスティックオイルとして配合した方が都合の良い場合がある。ここで、マスティックオイルについて説明する。マスティックオイルは上述したように、マスティック樹液(樹脂)を希釈剤に溶解させて使用する。希釈剤に溶解させる理由は、マスティック樹液(樹脂)自体が水に不溶であること、当該剤がジェルや液体等の種々の態様を採ったときに種々の材料との相溶性を検討した結果である。
【0043】
マスティック樹液(樹脂)を溶解させるための希釈剤としては、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、脂肪酸トリグリセリド(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、脂肪酸モノグリセリド(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)、モノカプリン酸グリセリル、脂肪酸エステル(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸エチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、高級アルコール(炭素数8~22程度)、オレイルアルコール、ソルビタン脂肪酸エステル(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)、ショ糖脂肪酸エステル(脂肪酸由来部分については炭素数8~18程度で、中でも炭素数8~12のものが望ましい。)といった多価アルコール脂肪酸エステル、並びに/又は天然油脂類、特にオリーブ油やヤシ油などの植物由来不飽和脂肪酸、パーム油などの飽和脂肪酸、ヤシ油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、エゴマ油、亜麻仁油、魚油、大豆油、コーンオイルといった植物若しくは動物油、アルコール系溶剤(但し、エタノールやイソプロパノール系等)といったものを使用することができる。
【0044】
なお、マスティックオイルの濃度は、上記希釈剤の0.1~60%の溶液が望ましい。ちなみに、その濃度が0.1%未満であると、IgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対して免疫抑制効果が低下する又は免疫抑制効果が得られず、その濃度が60%より過剰であると、不均一系溶液になってしまい、且つ0.1%未満のときほどではないものの先に述べたメディエータに対する免疫抑制効果も低下する。
【0045】
マスティックオイルの調製方法については、上記濃度を順守すれば常法で構わない。そして、マスティック樹液(樹脂)の溶解温度は、溶剤の沸点等を考慮すれば適宜温度上昇させてよく、場合によっては常温で構わない。なお、マスティック樹液(樹脂)を先に述べた希釈剤に溶解させた後に、濾過をして、マスティックオイルとして使用するのが望ましい。
【0046】
なお、マスティックオイルの配合量は、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤全量に対し、0.01~80%、好ましくは0.1~80%でより有効性を発揮する。マスティックオイルの配合量が、0.01%未満であると、免疫抑制効果が十分に示されない。またマスティックオイルの配合量が、80%より過剰であると、却って何らかの炎症やアレルギー反応を起こすといった懸念があり、且つ場合によってはこの濃度範囲内よりも却って免疫賦活効果が増加する可能性もある。
【0047】
次に、マスティック精油について説明する。ちなみに、マスティック精油については、上述のように、マスティック樹液又は樹脂を水蒸気蒸留して揮発性成分(主にテルペン類)を精油化したものを使用すればよい。なお精油化については常法で良い。
【0048】
マスティック精油の配合量は、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤全量に対し、0.01%~4%、好ましく0.01~3%でより有効性を発揮する。マスティック精油の配合量が、4%より過剰であると、マスティックオイルと同様に、却って何らかの炎症やアレルギー反応を起こすといった懸念があり、且つ場合によってはIgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対する抑制効果が低下する可能性がある。ちなみに、マスティック精油については、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤に含有させなくても、即ちマスティックパウダーやマスティックオイルのみでもIgE細胞、ヘルパーT細胞から産生されるヒスタミン、ECF-A、ロイコトリエン、PAF、リンホカイン、IL(インターロイキン)、IFN-r、サイトカイン、サイトカイニン等といったメディエータに対する抑制効果を示すが、含有させればより良い抑制効果が得られる。
【0049】
次に、マスティックウォータについて説明する。ちなみに、マスティックウォータについては、上述のように、マスティック樹液又は樹脂を水蒸気蒸留して分離した揮発性成分(マスティック精油に用いる)と水溶性成分のうち、水溶性成分を用いる。
【0050】
なお、マスティックウォータの配合量は、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤全量に対し、0.1~100%、好ましくは1~50%でより有効性を発揮する。マスティックウォータの配合量が、0.1%未満であると、却って免疫抑制効果が低下する又はその免疫抑制効果が示されない。またマスティックオイルの配合量が、100%より過剰であると、却って炎症やアレルギー反応を起こすといった懸念があり、且つ場合によってはこの濃度範囲内よりもこれらのメディエータに対する抑制効果が低下する可能性や、却って免疫賦活効果が増加する可能性もある。
【0051】
そして、先に述べた剤の形状や態様を採るのに合わせて、マスティック成分としては、マスティックパウダー、マスティックオイル、マスティック精油、又はマスティックウォータのいずれかが選択できる。更には、マスティックパウダー、マスティックオイル、マスティック精油、又はマスティックウォータのうち2種類以上を選択してもよい。
【0052】
本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤において、ムクナ豆(粉末ムクナ豆若しくはムクナ豆エキス)の免疫抑制効果を高める更なる助剤として、乳酸菌及び乳酸菌生産物質を配合させることが可能である。なお、この場合における乳酸菌の体長については特に制限はない。
【0053】
本発明に係る動物用の抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤にて使用する乳酸菌やビフィズス菌には、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブレビス・サブスピーシス・コアギュランス(L. brevis subspecies coagulans)、ラクトバチルス・アシドフィルス(L. acidphilus)、ラクトバチルス・ガセリ(L. gasseri)、ラクトバチルス・マリ(L. mali)、ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L. buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L. johnsonii)、ラクトバチルス・ガリナラム(L. gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L. amylovorus)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L. rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L. kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L. paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L. crispatus)、ラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)、ラクトバチルス・カルバータス(L. curvatus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(L. delbr bulgaricus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L. fermentum)ラクトバチルス・ヘルベティカス(L. helveticus)、ラクトバチルス・サケイ(L. sakei)、ラクトバチルス・サリバリウス(L. salivarius)等のラクトバチルス属細菌類、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)等のラクトコッカス属細菌類、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)等のエンテロコッカス属細菌類、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(B. adolescentis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B. breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B. catenulatum)、ビフィドバクテリウム・ラクチス(B. animalis lactis)等のビフィドバクテリウム属細菌、などが挙げられる。その中でもラクトバチルス属細菌類が好ましく、更にその中でもラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)又はラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)が好ましい。なお、当該乳酸菌やビフィズス菌は死菌を使用するのが好ましい。これは、本発明で使用する乳酸菌として調製する際、その調製が容易だからであるのと、死菌でも十分に所望の免疫抑制効果を発揮するからである。また、これらの細菌に係る菌株は特に問わない。また、乳酸菌生産物質としては、乳酸桿菌溶解質(例えば、ラクトバチルス・クリスパタス KT-11の派生製品であって、製品名KT-11HKN、KT-11 HP等)、乳酸菌発酵エキス(例えば、エクオール乳酸菌、還元発酵乳酸菌)が使用できる。また、上記以外の乳酸菌としては、ブリス(BLIS)菌(ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)K12及びM18菌)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、スタフィロコッカス・キシローサス(Staphylococcus xylosus)、スタフィロコッカス・カルノーサス(Staphylococcus carnosus)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、オエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)も使用可能であり、生菌及び死菌のいずれかでも構わない。
【0054】
また、前記乳酸菌は、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤においては、該抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤の全量に対し、0.01~1.0%配合させることが好ましい。0.01%未満であると、免疫抑制効果を発揮しない。また、1.0%より過剰であると、免疫抑制効果を発揮するには発揮するが、逆に免疫賦活効果が出てしまう可能性もある。
【0055】
更に上記乳酸菌同様の助剤として、更にパパイアエキス及び/又はキトサンを配合させることによって、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤が成る。
【0056】
パパイアエキスは、天然パパイア果実由来のエキスであり、天然パパイアの果実を擦り潰し、エタノール等の溶媒に漬け込んで抽出したエキスであり、パパイアの果実については、熟したものであっても、まだ青い状態の未完熟のものであってもよい。このパパイアエキスの配合量は特に限定はないが、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤の全量に対し、0.005%~10%が望ましい。0.005%未満であると上述の効果が発揮されず、10%より過剰になると本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤の免疫抑制効果が薄れてしまう可能性や、却って免疫賦活効果が増加する可能性がある。
【0057】
対してキトサンは、カニやエビ等の甲殻類の外骨格から得られるキチンを強アルカリ等の煮沸処理などで得られるものである。多糖類であるため、粘結剤として使用されることもある。このキトサンの配合量は特に限定はないが、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤の全量に対し、0.005%~10%が望ましい。0.005%未満であると上述の効果が発揮されず、10%より過剰になると免疫抑制効果が薄れてしまう可能性や、却って免疫賦活効果が増加する可能性がある。
【0058】
さらに、キトサン及びパパイアエキスを同時に配合しても良い。この場合の配合量も特に限定はないが、キトサン及びパパイアエキスそれぞれ0.005%~10%が望ましい。0.005%未満であると上述の効果が発揮されず、10%より過剰になると免疫抑制効果が薄れてしまう可能性がある。
【0059】
更に、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤において、キトサン及び/又はパパイアエキスの他、マスティック成分の免疫抑制効果を高める、即ち免疫抑制効果の相乗効果を高める助剤として、卵黄油、リシン(アミノ酸)、柿由来のタンニン、含ポリフェノール天然物エキス、ラクトフェリン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE及び/又はビタミンKといった脂溶性ビタミン、ビタミンCや葉酸を含むビタミンB類といった水溶性ビタミン、ビオチンやコエンザイムQ10(ユビキノン)等の補酵素類、ルテイン、アスタキサンチン、ベータカロチンなどのカロテノイド類を配合させることが可能である。
卵黄油について、説明する。卵黄油とは、鶏卵の卵黄を加熱して生成した固化成分と油脂分のうち、油脂分を一般的に卵黄油若しくは卵油と称している。一般的な卵黄油には、脂溶性ビタミンであるビタミンE(トコフェロール)、卵黄レシチン、コリン(及びフォスファチジルコリン)、フォスファチジルアミン、パルミチン酸(炭素数16。不飽和度0。)、ステアリン酸(炭素数18。不飽和度0。)、オレイン酸(炭素数18。不飽和度1。)、及びリノール酸(炭素数18。不飽和度2。)といった脂肪酸、前記脂肪酸から誘導されたリン脂質、トリグリセリド等が含まれる。なお、これらの成分は、鶏の種類、鶏に対する飼料、有精卵若しくは無精卵、又は飼育環境などの条件によって、成分比が多少変化することはあるが、成分自体は、このような条件の如何に関わらず、変わるものではない。
【0060】
本発明において卵黄油を使用する場合、卵黄油の製法、餌や飼育場などの鶏の飼育環境の違い、有精卵か無精卵かといったことは特に制限がない。また、本発明においては、市販品を利用しても、用事調製のいずれでも構わない。また、用事調製の場合、製造方法は公知技術でよく、製造方法の条件(例えば加熱温度や容器の材質など)は特に制限はない。また、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤において、抑制対象のメディエータ等の種類により抗体化された鶏卵から製造した卵黄油を使用してもよいが、その限りではなく、抗体化は特にしなくてもよい。なお、鶏卵の抗体化については常法による。
【0061】
本発明において、卵黄油は、本発明の抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤に対して1~30%が望ましい。1%未満であると、免疫抑制効果が十分に発揮できない。30%よりも多いと、免疫抑制効果がさほど出ないか、或いは却って免疫抑制に係るメディエータを賦活させる可能性がある。
【0062】
次に、リシンについて説明する。本発明において使用するリシンを使用する場合、本発明の抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤に対して0.005~40%が望ましい。0.005%未満であると、免疫抑制効果が十分に発揮できない。40%よりも多いと、免疫抑制効果がさほど出ないか、或いは逆に免疫賦活効果が出る可能性がある。本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤にて使用するリシンは、α‐L-リシン、α‐L-リシン塩酸塩、又はε‐ポリ(L‐リシン)のいずれかから選択可能である。
【0063】
次に、本発明において含ポリフェノール天然物エキスを使用する場合、藍抽出物エキス、茶(緑茶、ウーロン茶、紅茶)エキス、甜茶抽出物、抹茶粉末、桜葉(サクラバ)エキス、レモンエキス、グレープフルーツ種子抽出物エキス、シラカバエキス、ブドウ、リンゴ、ブルーベリー、キイチゴ、チョコレート、ココア、大豆、ビワ葉エキス、ワレモコウエキス、オトギリソウエキス、ハマメリス抽出液、オウゴンエキス、シラカバエキス、ノバラエキス、シソ種子抽出物、グアバ葉エキス、クワ葉エキス、ゲッケイジュ葉エキス、ブドウ種子抽出物、ワインエキス、ブドウ葉抽出物、リンゴ抽出物、リンゴタンニンなどといった、フラボノイドやカテキン、タンニン系のポリフェノール類を含むものから選択され、特に免疫抑制効果が期待できるものとしては、藍抽出物エキス、茶(緑茶)エキス、桜葉(サクラバ)エキス、レモンエキスが望ましい。
【0064】
ちなみに、本発明で使用する含ポリフェノール天然物エキスは、リシン同様に本発明の抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤に対して0.01~40%が望ましい。0.01%未満であると、免疫抑制効果が十分に発揮できない。40%よりも多いと、免疫抑制効果といった効果がさほど出ないか、却って逆に免疫賦活効果が増加する可能性がある。なお、含ポリフェノール天然物エキスについては、一般的に当該エキスの抽出溶媒(例えばアルコール類や水)の溶液で市販化されている。その際、抽出溶媒たるアルコール類や水は、歯周病菌に対する抗菌効果を期待されるものではないため、濃度調整が必要な場合は、それらアルコール類や水を希釈に用いればよい。
【0065】
次に一般的な添加物を本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤に添加してもよい。
【0066】
無機系添加剤として第二リン酸カルシウム二水和物、第二リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、などが挙げられる。これらのうち1種又は2種以上を併用して用いることができる。これらの無機系添加剤の配合量は、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤全量に対して0.001~20%が一般的である。
【0067】
湿潤剤としてグリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ソルビット、マルチトール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、ローズマリーエキス、クマザサエキス、キク花エキス等の植物エキス、ソルビット液等の糖質類並びに乳由来のホエイが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0068】
粘結剤(増粘剤)として、カラギーナン類、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルシウム含有アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウムなどアルギン酸及びその誘導体、キサンタンガム、グァーガム、ゼラチン、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、プルランや、ヤシ油、パーム油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、エゴマ油、亜麻仁油、大豆油、魚油、グリセリン脂肪酸エステルなどの天然油脂類などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0069】
また、保存剤や防腐剤として安息香酸若しくは安息香酸ナトリウム、ソルビン酸若しくはソルビン酸カリウム、ヒノキチオール、グレープフルーツ種子エキス、丁子油やハッカ油などの天然香油及び精油類などがあげられ、これらの1種又は2種以上を併用することができる。
【0070】
pH(水素イオン濃度)調整剤としてクエン酸、クエン酸(モノ若しくはジ)ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸(モノ若しくはジ)ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸(モノ若しくはジ)ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、乳酸、乳酸(モノ若しくはジ)ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用することができる。
【0071】
本発明の抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤の有効成分を滞留(持続)させるための滞留剤として、流動パラフィン、流動パラフィン及びポリエチレンの混合物であるゲル化炭化水素、植物油、ミツロウなどが使用でき、これらを1種又は2種以上を併用することができる。なお、前記ゲル化炭化水素は、ゲル化剤としての役割も果たす。
【0072】
甘味剤としてサッカリンナトリウム、アスパルテーム、L-フェニルアラニン化合物、トレハロース、ステビオサイド、ステビアエキス、p-メトキシシンナムアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、ハチミツ、オリゴ糖、デキストリンなどがある。なお、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールは、免疫抑制効果助剤としての役割も果たす。
【0073】
香料成分としてl-メントール、アネトール、メントン、シネオール、リモネン、カルボン、メチルサリシレート、エチルブチレート、オイゲノール、チモール、シンナムアルデヒド、トランス-2-ヘキセナールなどの中から1種又は2種以上を併用することができる。これらの成分は単品で配合してもよいが、これらを含有する精油などを用いてもよい。
【0074】
ちなみに、上記に述べた添加剤の配合量は、特に限定はないが、抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤全量に対して0.001~20%の範囲が一般的である。
【0075】
また、上記香料成分に加えて、脂肪族アルコールやそのエステル、テルペン系炭化水素若しくはテルペン系アルコール、フェノールエーテル、アルデヒド、ケトン、ラクトンなどの香料成分、精油(マスティック精油以外)を本発明の効果を妨げない範囲で配合してもよい。上記香料の配合量は、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤全量に対して0.001~20%の範囲が一般的である。
【0076】
本発明の抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤には、上記のほか、更なる有効成分を配合してもよい。そのような有効成分としてアスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸塩類、トコフェロール、塩化ナトリウム、デキストラナーゼなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合することができる。該有効成分については、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤全量に対して0.001~20%の範囲が一般的である。
【0077】
そして、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤全量に対して、上記に述べたマスティック樹脂(但し、マスティック樹脂液として)、マスティック精油、卵黄油、添加物等について上記に述べた数値範囲で混合した場合、その残部を溶媒(例えばマスティック樹脂を溶解させた溶剤等)やゲル化剤等として良い。
【0078】
本発明の抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤は、常法に準じて製造することができ、その製法は特に限定されるものではない。
【0079】
以上に本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤についての実施態様を述べたが、上記の態様の限りではなく、特許請求の範囲及び本明細書の記載の事項を逸脱しない範囲であれば、種々の態様が採用可能であることは言うまでもない。
【実施例0080】
上記に述べた実施形態について、本発明に係る抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤についての試験(実施例)を述べて更に説明する。
【0081】
[製造例]ムクナ豆抽出エキスの作成方法
後述のインビトロ(In vitro)実験では、40%エタノールで抽出したエキスないし注射用水もしくは培養液中に混合し、超音波処理をした抽出液を使用した。また、インビボ(In vivo)で行う実験には1%ムクナエキス含有ジェルを用いた。なお、該ムクナエキス含有ジェルにおけるジェル(ゲル化剤)については、抗菌剤、抗炎症剤又は皮膚外用剤に係る薬効成分ではないので、適宜上記実施形態に述べた希釈剤をゲル化したもので良い。
【0082】
[実施例1]ムクナ抽出液の皮膚常在性ブドウ球菌に対する殺菌作用(インビトロ実験)
炎症性皮膚疾患の進行に大きく関与する皮膚常在性ブドウ球菌に着目し、ムクナ抽出液共培養下での殺菌作用を調査した。本実施例1では、犬の表在性膿皮症の起因菌でメチシリン耐性をもつStaphylococcus pseudintermedius(MRSP)を用いた。各ブドウ球菌は、LB培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に播種して好気条件下で一晩培養した後、およそ10個/mlとなるように菌液濃度を調製した。各ブドウ球菌培養液と40%エタノールないしムクナ抽出エキスを100%及び50%の割合で混合し、室温で5分間静置した後、各々の反応液をLB寒天培地に塗抹し、24時間37℃、好気条件下で培養した後の生菌数を測定した。
【0083】
その結果を図1として記す。図1においては、顕著なブドウ球菌の抗菌作用が見られないが、生菌数に関しては、10分の1程度の抑制が可能であることが分かった。
【0084】
[実施例2]ヒト表皮角化細胞から産生されるサイトカインに対するムクナ抽出液の作用(インビトロ実験)
ムクナ抽出液の抗炎症効果を検索する目的で、IFNγ+TNFα刺激に対してムクナ抽出液を添加した際のヒト表皮角化細胞(HaCaT細胞)から産生される炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-8、MCP-1及びTARC)に及ぼす影響を調査した。HaCaT細胞は10%牛胎児血清を添加したD-MEM培地で培養継代し、1×10cells/wellで96ウェル培養プレートに播種し、コンフルエント状態になるまで37℃、5%CO条件下で培養した。
【0085】
上記細胞に培養液で抽出したムクナ抽出液を添加したところ、いずれも2mg/mlより高濃度で生存率が70%以下となった。そこで、サイトカイン産生量確認実験では、2mg/ml以下を最高濃度として実験を行った。細胞にムクナ抽出液を播種後、IFNγ+TNFα刺激を行い、培養後24時間の培養液中のIL-6、IL-8、MCP-1、TARC産生量をELISA法により測定した。
【0086】
その結果を図2に示す。図2においては、ムクナ抽出液の処理により、ヒト表皮角化細胞から産生される炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8、TARC、MCP-1)量が有意に減少したことが分かった。このことにより、ムクナ豆の抗炎症作用が示唆された。
【0087】
[実施例3]アトピー性皮膚炎モデルマウスに対するムクナ含有ジェルの抗炎症作用確認(インビボ実験)
ムクナ含有ジェルのアトピー性皮膚炎に対する効能を調査する目的で、Th2型ハプテン誘発アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた検討を実施した。アトピー性皮膚炎モデルマウスの作製には、7週齢の雌性NC/Ngaマウスを用いた。アトピー性皮膚炎症状は、Th2型免疫反応を誘導する2,4-トルエンジイソシアネートをアセトンに5%ないし0.5%濃度で溶解し、投与の24時間以上前に剃毛した背部皮膚及び耳介皮膚に反復経皮投与することで誘発した。アトピー性皮膚炎症状が十分に惹起されたのちに、アトピー性皮膚炎スコアをもとに動物をプラセボ群及びムクナジェル投与群に分配し、プラセボジェルないしムクナ含有ジェルの経皮投与を期間中毎日実施した。実験期間中は毎週、アトピー性皮膚炎症状(症状が軽い~重度で0-6で評価)、経表皮水分蒸散量(TEWL)、背部皮膚厚、耳介皮膚厚、皮膚のpH及びかゆみ行動を解析した。最終測定翌日にイソフルラン吸入麻酔下で後大静脈から採血し、耳介リンパ節及び耳介皮膚・背部皮膚の採材を行った。解剖時に採取したリンパ節について、70μmセルストレーナー上でRPMI-1640培地を用いてすり潰した。得られた細胞懸濁液について、総細胞数を測定し、免疫担当細胞の割合をフローサイトメーターにて解析した。
【0088】
実施例3において、図3はアトピー性皮膚炎モデルマウスの経表皮水分蒸散量を示し、図4はムクナ抽出液含有ジェル(ムクナ豆エキス)を用いた場合の抗炎症作用を示す。
【0089】
図3及び4より、ムクナ含有ジェルのアトピー性皮膚炎症状に及ぼす影響についてハプテン誘導マウスモデルを用いて調査した。アトピー性皮膚炎症状及び経表皮水分蒸散量は、ムクナ抽出ジェル群でプラセボ群と比較して改善傾向が認められたが、両者間に統計学的に有意な変化は認められなかった。
【0090】
一方、動物から採材した組織の解析では、全体としてムクナ抽出ジェル投与による改善傾向が認められた。特に皮膚のIL-4及びTSLP発現はムクナ抽出ジェル投与において有意に減少していた。一方、耳介リンパ節中のエフェクターヘルパーT細胞数及びIgE陽性B細胞数は、ムクナ含有ジェル投与群で有意に減少していた。また、T細胞から産生されるTARC量がやはりムクナ含有ジェル投与群で有意に減少していた。
【0091】
[実施例1乃至3における統計検定]
実施例1乃至3における各検査項目について、コントロール群と各ベントナイト投与群間の統計学的有意差の有無を危険率5及び1%レベルで解析した。媒体対照群と被験物質群間でのデータについては、まずBartlettの等分散検定を行なった。この検定によって全用量群における分散が均一(p>0.05)であるという判定が出た場合には、一元配置分散分析法を用いて群間の有意差の有無を調べた。その結果群間に有意差が認められた時(p≦0.05)は、Dunnettの多重比較法を実施して対照群と各投与群間における有意差の有無を判定した。Bartlettの等分散検定で各群の分散が等しくない(p≦0.05)という判定が出た場合は、Kruskal-Wallisの検定法を用いて群間の有意差の有無を調べた。その結果群間には、Dunnett型のノンパラメトリックな多重比較法を用いて対照群と各投与群間における有意差の有無を判定した。
【0092】
[実施例1乃至3における考察]
実施例1乃至3においては、ムクナ抽出物のアトピー性皮膚炎症状に及ぼす影響を調査する目的で、1)ムクナ抽出液のブドウ球菌に対する抗菌作用検討(実施例1)、2)ムクナ抽出液の角化細胞産生サイトカインに及ぼす効能検討(実施例2)、3)ムクナ含有ジェルのハプテン誘導マウスモデルにおける抗炎症作用検討(実施例3)、を実施した。
【0093】
皮膚アレルギー疾患の増悪因子であるブドウ球菌に対しての効能は認められなかった一方、IFNγ及びTNFαで刺激した角化細胞から産生されるサイトカイン(IL-6、IL-8、MCP-1、TARC)はムクナ抽出液の曝露により有意に抑制された。また、アトピー性皮膚炎モデルマウスへのムクナ含有ジェルの経皮投与による皮膚炎症状及び皮膚バリアに及ぼす細胞数及び細胞数を有意に減少させており、細胞から産生される影響は軽微であったが、リンパ節中のエフェクターヘルパーT細胞数及びB細胞数を有意に減少させており、T細胞から産生されるTARC産生もムクナ含有ジェルの投与により有意に低下していたことから、ムクナ抽出物が局所皮膚免疫に直接作用し、炎症の制御を助ける可能性が示唆された。
【0094】
産生もムクナ含有ジェルの投与により、有意に低下していたことから、ムクナ抽出物が局所皮膚免疫に直接作用し、炎症の制御を助ける可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0095】
上述の実施形態及び実施例にて、本発明の抗菌剤、抗炎症剤及び皮膚外用剤について言及したが、本発明においては、ムクナ豆を使用しているため、ヒト又は犬や猫などの抗アレルギー薬剤として応用することが可能である。
図1
図2
図3
図4