(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160443
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】射出成形機、及び射出成形機の運転支援システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075425
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 優紀
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM22
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP14
4F206JP22
4F206JP27
4F206JP30
4F206JQ51
4F206JQ81
4F206JQ82
4F206JQ83
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】金型または部材を目視で確認しながら動作確認や設定を行うことができる射出成形機を提供する。
【解決手段】射出成形機1は、金型または射出成形機1の部材を撮影する少なくとも一つの撮影装置41~45と、制御装置4と、を有している。制御装置4は、金型または部材に関連する命令を受付ける命令入力部55と、少なくとも一つの撮影装置41~45で撮影した画像の表示部51と、を有し、表示部51は命令入力部55での命令の受付けと連動して、命令に関連する金型または部材の画像を表示する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を装着可能な射出成形機であって、
前記金型または前記射出成形機の部材を撮影する少なくとも一つの撮影装置と、制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記金型または前記部材に関連する命令を受付ける命令入力部と、前記少なくとも一つの撮影装置で撮影した画像の表示部と、を有し、前記表示部は前記命令入力部での前記命令の受付けと連動して、前記命令に関連する前記金型または前記部材の画像を表示する射出成形機。
【請求項2】
前記部材は可動部材であり、前記命令は前記可動部材を動かす命令である、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記命令入力部での前記命令の受付けと連動して、前記命令に関連する前記撮影装置を選択し、
前記表示部は、選択された前記撮影装置が撮影する画像を表示する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記選択された撮影装置の撮影条件を受け付ける撮影条件入力部を有する、請求項3に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記選択された撮影装置は、前記撮影条件入力部で受け付けた前記撮影条件に従って前記金型または前記部材を撮影する、請求項4に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記制御装置は、
過去の前記命令と、前記過去の命令と組み合わせて入力された前記撮影条件と、を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記命令及び前記撮影条件に基づき、新たな前記命令に対応する前記撮影条件を設定する撮影条件設定部と、
を有し、
前記選択された撮影装置は、前記撮影条件設定部で設定された前記撮影条件に従って前記金型または前記部材を撮影する、請求項4に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記撮影条件は前記選択された撮影装置のズーム倍率を含む、請求項4に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記少なくとも一つの撮影装置は、撮影位置と撮影角度の少なくともいずれかの調整が可能であり、
前記撮影条件は、前記選択された撮影装置の前記撮影位置と前記撮影角度の少なくともいずれかを含む、請求項4に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記少なくとも一つの撮影装置は赤外線を検知する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記表示装置は前記射出成形機の運転パラメータを前記画像とともに表示する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記部材は射出装置、トグル機構、エジェクタピン、金型固定装置の少なくともいずれかを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項12】
金型を装着可能な射出成形機の運転支援システムであって、
前記金型または前記射出成形機の部材を撮影する少なくとも一つの撮影装置と、
前記少なくとも一つの撮影装置で撮影した画像の表示部と、を有し、
前記表示部は、前記金型または前記部材に関連する命令を受付ける前記射出成形機の命令入力部での前記命令の受付けと連動して、前記命令に関連する前記金型または前記部材の画像を表示する、射出成形機の運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機、及び射出成形機の運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は様々な可動部材を有することから、作動状態を可視化する試みがなされている。特許文献1には、作動状態を動画として表示する動画表示画面を備えた射出成形機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オペレータは、実際の射出成形機や金型を目視で確認しながら射出成形機の様々な動作確認や設定を行うことがある。特許文献1に記載された射出成形機は、射出成形機の作動状態を模式的なアニメーションとして表示するため、実際の射出成形機や金型の状態を動画表示画面で確認することができない。このため、オペレータは不自然な姿勢で、またはその都度移動しながら射出成形機の動作確認や設定を行わなければならない場合があり、作業性の向上が望まれている。
【0005】
本開示は、金型または部材を目視で確認しながら動作確認や設定を行うことができる射出成形機と、射出成形機の運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、射出成形機は、金型または部材を撮影する少なくとも一つの撮影装置と、金型または部材に関連する命令を受付ける命令入力部と、撮影装置で撮影した画像の表示部と、を有し、表示部は命令入力部での命令の受付けと連動して、命令に関連する金型または部材の画像を表示する。また、射出成形機の運転支援システムは、金型または部材を撮影する少なくとも一つの撮影装置と、撮影装置で撮影した画像の表示部と、を有し、表示部は、金型または部材に関連する命令を受付ける射出成形機の命令入力部での命令の受付けと連動して、命令に関連する金型または部材の画像を表示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、可動部材または金型を目視で確認しながら動作確認や設定を行うことができる射出成形機と、射出成形機の運転支援システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る射出成形機の概略正面図である。
【
図2】可動金型と固定金型の一例をより詳細に示す断面図である。
【
図4】制御装置と可動部材、撮影装置、センサの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明は射出成形機と射出成形機の運転支援システムに関する。射出成形機は金型が装着可能であるとともに、様々な可動部材を備えている。可動部材の例として、射出ノズル(射出装置)、トグル機構、エジェクタ、可動盤などが挙げられる。金型の内部で摺動運動をするガイドピン、アンギュラピン、中子なども可動部材の例である。
【0010】
<全体構成>
図1は本実施形態に係る射出成形機1の概略正面図を示している。射出成形機1は、金型を型締めする型締装置2と、射出される材料を加熱溶融して射出する射出装置3と、制御装置4と、から概略構成されている。制御装置4は射出成形機1の作動全般を制御するために設けられており、本実施形態に関連する機能については後述する。以下の説明で、スクリュ33の移動方向あるいは可動金型M1の移動方向を方向Xという。方向Xは水平方向と平行である。可動金型M1と固定金型M2を合わせて金型Mという場合がある。
【0011】
<型締装置2>
型締装置2は、ベッド21上に固定され固定金型M2が取り付けられる固定盤22と、ベッド21上をスライド可能な型締ハウジング23と、ベッド21上をスライド可能で可動金型M1が取り付けられる可動盤24と、を備えている。固定盤22と型締ハウジング23は複数本のタイバー25によって連結されている。可動盤24と型締ハウジング23の間には、金型Mを開閉するための型締機構26が設けられている。型締機構26は、トグル機構27と、トグル機構27を駆動する型締モータ28と、を有している。図示は省略するが、型締機構26は直圧式の型締機構、つまり油圧式の型締シリンダから構成してもよい。
【0012】
<射出装置3>
射出装置3は基台31上に設けられている。射出装置3は、シリンダ32と、シリンダ32に収容されたスクリュ33と、スクリュ33を駆動する駆動機構34と、を備えている。スクリュ33は駆動機構34によって回転駆動されるとともに方向Xに駆動される。駆動機構34はカバー35で覆われている。シリンダ32の材料の射出方向に関する後端部近傍に、射出される材料を供給するホッパ36が設けられている。シリンダ32の材料の射出方向に関する先端には、固定金型M2に突き当たって、キャビティC(
図2参照)に射出材料を供給する射出ノズル37が設けられている。
【0013】
射出装置3はノズルタッチ装置38を備えている。ノズルタッチ装置38は射出装置3を前進させ、それによって射出ノズル37が金型MのスプルーブッシュM3にタッチする。ノズルタッチ装置38は駆動機構34と固定盤22とを連結している。ノズルタッチ装置38は、ボールねじを用いたトグル機構によって構成されるが、油圧シリンダを用いた機構を用いてもよい。
【0014】
<金型M>
図2は可動金型M1と固定金型M2の一例をより詳細に示す断面図である。
図2は可動金型M1と固定金型M2が型締めされた状態を示している。可動金型M1の内面M4と固定金型M2の内面M5との間に射出材料(例えば樹脂)が充填されるキャビティCが形成されている。固定金型M2のスプルーブッシュM3に、キャビティCに射出材料を供給する射出ノズル37が押し当てられている。射出ノズル37はノズルタッチ力を発生させる。
【0015】
可動金型M1は、固定金型M2との接触面(パーティングライン)を構成する本体M6と、本体M6に支持され、本体M6から固定金型M2に向けて突き出すガイドピンM7と、を有している。ガイドピンM7は、可動金型M1と固定金型M2の位置決めのために設けられている。固定金型M2にはガイドピンM7を受け入れる受け孔M8が設けられている。可動金型M1の移動中、ガイドピンM7は受け孔M8と摺動する。
【0016】
可動金型M1には、可動金型M1から成形品を押し出すためのエジェクタピンM9が内蔵されている。エジェクタピンM9は可動金型M1の本体M6を貫通している。可動金型M1の本体M6には空洞M10が設けられ、エジェクタプレートM11が空洞M10に収容されている。射出成形機1はエジェクタピンM9を駆動するエジェクタピン駆動機構29を有している。すなわち、エジェクタピン駆動機構29は射出成形機1のエジェクタロッド30に接続され、エジェクタロッド30は可動金型固定具5(後述)と可動盤24とを貫通してエジェクタプレートM11を押しつける。エジェクタプレートM11がエジェクタピンM9を押すことによって、エジェクタピンM9が駆動される。
【0017】
可動金型M1は可動金型固定具5に固定され、可動金型固定具5はボルトなどの固定具(図示せず)で可動盤24に取り付けられている。固定金型M2は固定金型固定具6に固定され、固定金型固定具6はボルトなどの固定具(図示せず)で固定盤22に取り付けられている。可動金型固定具5と固定金型固定具6は電磁力を発生し、電磁力に基づく吸着力でそれぞれ可動金型M1と固定金型M2を固定する。
【0018】
<撮影装置41~45>
図1を参照すると、射出成形機1は少なくとも一つの可動部材を撮影する少なくとも一つ(本実施形態では5つの)の撮影装置41~45を有している。撮影装置41~45は制御装置4の共通バス54(
図4参照)に接続されている。本実施形態では、固定盤22からみて可動盤24の裏側に設置されたエジェクタ用カメラ41と、固定盤22と可動盤24との間に設置された金型用カメラ42と、可動盤24からみて固定盤22の裏側に設置された射出ノズル用カメラ43と、射出装置3の射出方向における後端に設置されたバックモニター用カメラ44と、トグル機構27の近傍に設置されたトグル機構用カメラ45と、が設けられている。
【0019】
なお、本明細書では、撮影装置41~45とエジェクタ用カメラ41、金型用カメラ42、射出ノズル用カメラ43、バックモニター用カメラ44、トグル機構用カメラ45を、それぞれ同じ意味で用いる。
【0020】
エジェクタ用カメラ41は主に、エジェクタロッド30やエジェクタプレートM11(いずれも
図2参照)の作動状態を確認することができる。金型用カメラ42は主に金型Mの周辺を撮影し、可動金型M1と固定金型M2の取付状態、ガイドピンM7(
図2参照)、エジェクタピンM9(
図2参照)、アンギュラピン(図示せず)、中子(図示せず)などの作動状態を確認することができる。射出ノズル用カメラ43は主に射出ノズル37の先端を撮影し、射出ノズル37が金型MのスプルーブッシュM3に適切に接触しているかを確認することができる。バックモニター用カメラ44は射出装置3の後退時に射出装置3の後方の安全性(人や障害物の有無など)を確認することができる。トグル機構用カメラ45は主にトグル機構27の作動状態を確認することができる。
【0021】
可動部材と、可動部材を撮影する撮影装置とは、一対一に対応している必要はない。一つの撮影装置で複数の可動部材を撮影可能であってもよいし、一つの可動部材が複数の撮影装置で撮影可能であってもよい。
【0022】
撮影装置41~45はCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの2次元の撮像素子を備えたデジタル方式のものが使用されるが、撮像方式は限定されない。撮影装置41~45は動画撮影が可能であることが好ましいが、静止画のみを撮影するものでもよい。撮影装置41~45は好ましくはズーム機能を有しており、ズーム方式は光学ズーム、デジタルズームのいずれでもよい。
【0023】
撮影装置41~45は撮影角度を調整するための首振り機構(
図4に矢印46で模式的に示す)を備えていてもよく、撮影位置を調整するため移動機構(
図4に矢印47で模式的に示す)を備えていてもよい。移動機構47は例えば、撮影装置41~45を可動に支持するレールと、撮影装置41~45の駆動装置と、で構成することができる。移動機構47は少なくとも1次元または2次元の移動ができるものが好ましく、3次元の移動ができるものでもよい。
【0024】
<制御装置4>
次に、制御装置4の構成について詳細に説明する。
図3は制御装置4の正面図、
図4は制御装置4と可動部材、撮影装置41~45、センサS1~S3の構成図である。以下の説明では、可動部材はエジェクタプレートM11、可動金型M1、射出ノズル37、射出装置3、トグル機構27であるとする。制御装置4は表示部51と操作部52と内部回路63(
図4参照)とを有し、これらが一つの筐体53に収容されている。
図4に示すように、表示部51と操作部52と内部回路63の各要素は共通バス54で接続されている。
【0025】
図3を参照すると、表示部51は少なくとも一つ(ここでは5つ)の撮影装置41~45(
図2参照)から、後述する方法によって選択された撮影装置41,42、43,44または45で撮影した画像を表示する。表示部51は液晶などで構成されたディスプレイであり、様々な画像情報や文字情報を表示することができる。操作部52はオペレータが指で操作可能なスイッチやボタンを備えている。スイッチやボタンは物理的なスイッチやボタンでもよいし、タッチパネル方式であってもよい。操作部52は、可動部材に関連する命令を入力する命令入力部55と、撮影装置41~45の撮影条件を入力する撮影条件入力部56と、その他の入力部60と、を備えている。
【0026】
命令入力部55は少なくとも一つ(ここでは5つ)の可動部材に対する命令を受付ける。命令は可動部材を動かす命令であるが、可動部材に関連する命令である限りこれに限定されない。命令入力部55はエジェクタ作動スイッチ55Aと、型開閉スイッチ55Bと、射出装置作動スイッチ55Cと、を含んでいる。
図3に示すように、各スイッチはロータリースイッチで構成され、中央がオフの位置である。スイッチ55A~55Cの構成は限定されず、例えばスライドスイッチで構成することもできる。
【0027】
図4に示すように、命令入力部55は共通バス54を介して可動部材の駆動機構に接続されている。エジェクタプレートM11の駆動機構はエジェクタピン駆動機構29であり、可動金型M1及びトグル機構27の駆動機構は型締モータ28であり、射出ノズル37及び射出装置3の駆動機構はノズルタッチ装置38である。
【0028】
エジェクタ作動スイッチ55Aを左に回すと、エジェクタピン駆動機構29の作動によりエジェクタプレートM11が後退し、右に回すとエジェクタプレートM11が前進し(逆でも可)、中央に戻すとエジェクタプレートM11が停止する。前進はエジェクタプレートM11が固定金型M2に近づく動きであり、後退はエジェクタプレートM11が固定金型M2から離れる動きである。
【0029】
型開閉スイッチ55Bを左に回すと、型締モータ28の作動によりトグル機構27が駆動され、可動盤24が移動して型開きが行われ、右に回すとトグル機構27が駆動され、可動盤24が移動して型閉じが行われ(逆でも可)、中央に戻すと可動盤24が停止する。射出装置作動スイッチ55Cを左に回すと、ノズルタッチ装置38の作動により射出装置3(射出ノズル37)が前進し、右に回すと射出装置3(射出ノズル37)が後退し(逆でも可)、中央に戻すと射出装置3が停止する。前進は射出装置3が金型Mに近づく動きであり、後退は射出装置3が金型Mから離れる動きである。
【0030】
撮影条件入力部56は、撮影装置41~45の撮影条件を入力する入力部である。撮影条件は撮影装置41~45の撮影位置、撮影角度、ズーム倍率の3つである。後述するように、撮影条件入力部56で撮影条件が設定されるのは撮影装置41~45のうち、一つの特定の撮影装置だけである。
【0031】
撮影条件入力部56は、移動レバー57と、角度スイッチ58と、ズームレバー59とを含んでいる。移動レバー57とズームレバー59の中央はニュートラル位置である。移動レバー57を左に動かすと撮影装置41~45が左に移動し(すなわち撮影位置が左に移動し)、右に動かすと撮影装置41~45が右に移動する(すなわち撮影位置が右に移動する)。ズームレバー59を左に動かすと撮影装置41~45のズーム倍率が大きくなり、ズームレバー59を右に動かすと撮影装置41~45のズーム倍率が小さくなる(逆でも可)。角度スイッチ58はレバーの形状を有しており、レバーを倒した方向に撮影装置41~45の光軸(レンズの中心軸)が移動する。
【0032】
図4を参照すると、制御装置4の内部回路63は中央処理ユニット(CPU61)と記憶部62とを備えている。CPU61は制御装置4の各部の制御の他、可動部材、撮影装置41~45、センサS1~S3の制御を行う。記憶部62は入力された各種設定を記憶し、後述する機械学習のために過去の操作履歴を保存することもできる。
【0033】
<センサS1~S3>
射出成形機1は様々なセンサを有している。センサの例として、可動盤24と固定盤22との間の距離を測定する盤間距離センサS1、型締モータ28の負荷率を測定するモータセンサS2、ノズルタッチ力を測定するノズルタッチ力センサS3が挙げられるが、これらに限定されない。これらのセンサS1~S3の出力は共通バス54を通ってCPU61に送られる。表示部51は可動盤24と固定盤22との間の距離、型締モータ28の負荷率、ノズルタッチ力などの射出成形機1の運転パラメータを、撮影装置41~45が撮影した画像とともに表示することができる。
【0034】
<射出成形機1の動作確認、設定方法>
射出成形機1の動作確認や各種設定は、目視確認を伴って行われることがある。型締時及び型開時にはガイドピンM7(
図2参照)、アンギュラピン(図示せず)、中子(図示せず)などの摺動部の作動確認を行うことがある。具体的には、型開閉スイッチ55Bを操作して金型Mを開閉しながら、これらの摺動部が問題なく作動することを確認することがある。この際、トグル機構27が問題なく作動することを確認することもある。
【0035】
射出装置3の前進時には射出ノズル37が金型MのスプルーブッシュM3に適切にタッチしていることを確認することがある。金型Mが開いている状態でエジェクタプレートM11を前進させ、エジェクタプレートM11、エジェクタピンM9などが問題なく作動していることを確認することがある。射出装置3の後退時には射出装置3の後方に人や障害物が無いことを確認することがある。この操作は安全の確認を目的とするものであるが、広い意味で射出成形機1の動作確認の一部である。
【0036】
この様に、射出成形機1の動作確認や設定は可動部材を動かしながら行われることが多い。オペレータは可動部材を目視しながら、制御装置4の命令入力部55を操作することが必要となる。制御装置4とこれらの可動部材が離れている場合、オペレータは体を傾け、または命令入力部55の操作を一端止めて、可動部材まで移動して目視確認を行うことが必要となる。
【0037】
図3,4を参照して、エジェクタプレートM11を例に、射出成形機1の動作確認や設定の手順を説明する。上述のように、可動部材はエジェクタプレートM11と、可動金型M1と、射出ノズル37と、射出装置3と、トグル機構27であるとする。
図4ではエジェクタプレートM11に関連する要素を三角で、可動金型M1及びトグル機構27に関連する要素を二重四角で、射出ノズル37及び射出装置3に関連する要素を丸で模式的に示し、エジェクタプレートM11に関連する部分を太線で表示している。
【0038】
まず、オペレータがエジェクタプレートM11の作動状態を確認するために、命令入力部55のエジェクタ作動スイッチ55Aを左に回してエジェクタプレートM11を前進させる。エジェクタ作動スイッチ55Aは左に回されたことを検知し、その旨の信号(以下、エジェクタ作動信号という)を発生させる。エジェクタ作動信号は共通バス54を通じてエジェクタピン駆動機構29に送られ、エジェクタプレートM11が前進する。
【0039】
CPU61は、命令入力部55での命令の受付け、すなわちエジェクタ作動スイッチ55Aの回転操作と連動して、この命令に関連する撮影装置を選択する。より具体的には、エジェクタ作動信号はCPU61にも送信され、CPU61はエジェクタ作動信号に基づき、撮影対象がエジェクタプレートM11であることを認識する。記憶部62は可動部材と撮影装置41~45との対応関係を記憶している。すなわち、記憶部62はエジェクタプレートM11を撮影する撮影装置がエジェクタ用カメラ41であることを記憶している。
【0040】
CPU61はこの対応関係を参照して、撮影対象であるエジェクタプレートM11を撮影する撮影装置がエジェクタ用カメラ41であると判断し、エジェクタ用カメラ41を選択する。CPU61は表示部51に、選択された撮影装置から送信される画像を表示するよう命令する。表示部51は、選択された撮影装置、すなわちエジェクタ用カメラ41が撮影する画像を表示する。換言すれば、表示部51は命令入力部55での命令の受付けと連動して、この命令に関連する部材の画像を表示する。
【0041】
以上の操作は瞬間的に行われるので、オペレータがエジェクタ作動スイッチ55Aを左に回したのとほぼ同時に、表示部51にエジェクタ用カメラ41で撮影されたエジェクタプレートM11の画像が表示される(
図4参照)。こうして、オペレータはエジェクタ作動スイッチ55Aを操作しながらエジェクタプレートM11の動きを確認することができる。エジェクタ作動スイッチ55Aを右に回してエジェクタプレートM11を後退させる操作も同様に行うことができる。
【0042】
撮影装置41~45の電源は予め投入しておいてもよいし、CPU61からの指令に基づいて投入してもよい。例えば、CPU61はエジェクタ作動信号を受信したときに、エジェクタ用カメラ41に電源投入指令を送信することができる。
【0043】
オペレータが表示部51に写された画像を修正する場合、オペレータは撮影条件入力部56に撮影装置(エジェクタ用カメラ41)の撮影条件を入力する。具体的には、オペレータは撮影条件入力部56の移動レバー57と角度スイッチ58とズームレバー59の少なくともいずれかを操作する。例えば、ズームレバー59を操作すると、ズームレバー59は操作されたことを検知し、その旨の信号(以下、ズーム信号という)を発生させる。ズーム信号は共通バス54を通じてエジェクタ用カメラ41に送られ、エジェクタ用カメラ41は入力された撮影条件に従って指定された倍率のズーム操作を行う。
【0044】
撮影条件入力部56に入力された撮影条件は、表示部51に表示された画像を撮影する撮影装置に送信される。エジェクタ用カメラ41の画像が表示部51に表示されているときに撮影条件入力部56に入力された撮影条件は、エジェクタ用カメラ41の撮影条件として認識される。従って、撮影条件入力部56を撮影装置41~45毎に設ける必要はない。オペレータにとっても、撮影条件入力部56を操作すれば現在見ている画像が直ちに修正されるので、シンプルな操作感が得られる。
【0045】
<撮影条件の自動設定>
上述の実施形態では、エジェクタ用カメラ41が選択されたときは、エジェクタ用カメラ41の撮影位置、撮影角度及びズーム倍率は初期設定値となっている。このため、例えば、射出成形機1の再起動後にエジェクタプレートM11の作動状態を確認する場合、オペレータは好ましい画像を得るために撮影条件を改めて設定する必要がある。撮影条件の自動設定機能を用いると、制御装置4は撮影条件を自動設定することができる。自動設定機能は例えば、操作部52の入力部60に設けられたスイッチ(図示せず)で起動することができる。
【0046】
図4を参照すると、記憶部62は、過去の命令と、当該過去の命令と組み合わされて入力された撮影条件と、を記憶する。例えば、オペレータがエジェクタ作動スイッチ55Aを左に回し、エジェクタ用カメラ41の画像が表示部51に表示されているとする。オペレータが角度スイッチ58とズームレバー59を操作してある特定の画像を得た場合、記憶部62はこの操作で決定された撮影条件を、エジェクタプレートM11を動かす命令と紐づけて記憶する。角度スイッチ58やズームレバー59を複数回操作した場合は、最終的な角度スイッチ58やズームレバー59の位置に基づく撮影条件が記憶される。
【0047】
制御装置4は、記憶部62に記憶された命令及び撮影条件に基づき、新たな命令に対応する撮影条件を設定する撮影条件設定部64を有している。撮影条件設定部64はCPU61の機能の一つとして構成することができる。例えば、オペレータがエジェクタ作動スイッチ55Aを左に回した場合、撮影条件設定部64は記憶部62に記憶された、エジェクタ作動スイッチ55Aを左に回す操作と組み合わされた過去の撮影条件を検索する。撮影条件が発見された場合、その撮影条件をあらたな撮影条件として自動設定する。選択された撮影装置は、撮影条件設定部64で自動設定された撮影条件に従って部材を撮影する。オペレータはエジェクタ作動スイッチ55Aを作動させると、直ちに好ましい画像を表示部51で見ることができる。
【0048】
記憶部62が過去のある一つの命令と組み合わされた複数の撮影条件を記憶している場合、エジェクタ作動スイッチ55Aを操作しただけでは撮影条件を一義的に決定することができない。例えば、エジェクタ作動スイッチ55Aを左に回す操作に対し、互いに異なる複数の撮影条件が記憶されている可能性がある。その理由として、オペレータによって好ましいと考える画像が異なる可能性や、オペレータが確認したい部位がその都度異なることが考えられる。
【0049】
この様な場合、撮影条件の自動設定に機械学習を組み合わせることができる。記憶部62に記憶された複数の過去の命令と、その過去の命令と組み合わせて入力された撮影条件とを用いて機械学習を行う。機械学習は例えば、記憶部62に接続されたコンピュータ(図示せず)で行うことができ、学習済モデルは記憶部62に格納することができる。あらたにエジェクタ作動スイッチ55Aを左に回す操作が行われた場合、撮影条件設定部64は学習済モデルを用いて最適な撮影条件を自動的に設定する。可動部材の移動距離(例えば、可動金型M1の位置)に応じて最適な撮影条件が異なる可能性がある場合、可動部材を動かしている時間(可動部材の移動距離)を機械学習の項目として追加してもよい。
【0050】
他の可動部材についてもエジェクタプレートM11と同様の方法で動作確認や設定を行うことができるが、若干の補足説明を述べる。射出装置作動スイッチ55Cは射出ノズル用カメラ43及びバックモニター用カメラ44と対応しているが、射出ノズル用カメラ43は主に射出装置3の前進時に使用し、バックモニター用カメラ44は主に射出装置3の後退時に使用する。従って、CPU61は、射出装置作動スイッチ55Cが左に回されたときに(射出装置3の前進時)射出ノズル用カメラ43を選択し、射出装置作動スイッチ55Cが右に回されたときに(射出装置3の後退時)バックモニター用カメラ44を選択することができる。
【0051】
型開閉スイッチ55Bは金型用カメラ42及びトグル機構用カメラ45と対応しているが、作動スイッチ55Cと異なり、型開閉スイッチ55Bを回す方向によってどちらのカメラを選択するかを決定することが難しいことも考えられる。この場合、CPU61は金型用カメラ42とトグル機構用カメラ45の優先順位を記憶しておき、型開閉スイッチ55Bが操作されたときに優先順位の高いカメラ(例えば、金型用カメラ42)を選択することができる。優先順位は操作部52の入力部60から設定できるようにすることが好ましい。また、優先順位の低いカメラ(例えば、トグル機構用カメラ45)への切り替えも操作部52の入力部60から行えるようにすることが好ましい。
【0052】
本発明は以上説明した実施形態に限定されない。例えば、撮影装置41~45は赤外線を検知する赤外線カメラであってもよい。赤外線カメラは暗所での撮影が可能である。例えば、金型用カメラ42や射出ノズル用カメラ43やトグル機構用カメラ45は射出成形機1の筐体や安全ドアに囲まれた比較的暗い場所を撮影するため、赤外線カメラを好適に利用することができる。各撮影装置に、可視光を検出する一般的なカメラと赤外線カメラとを搭載してもよい。赤外線カメラを用いることで視認性が向上するため、作業性の向上につながる。また、撮影装置41~45は、必ずしも、射出成形機1、金型Mのいずれかに固定されていなくてもよく、例えば、射出成形機1から離れた支持部(図示せず)やドローンなどの飛行体に設置されていてもよい。
【0053】
図4に示すように、本発明は射出成形機の運転支援システム101も含む。運転支援システム101は既存の射出成形機に追加設置することができる。運転支援システム101は、上述の制御装置4の少なくとも一部を含む制御装置104と、撮影装置41~45と、を含む。制御装置104は既存の射出成形機の制御装置とは別に設けてもよいが、既存の射出成形機の制御装置に上述した機能を追加したものであることが好ましい。この場合、制御装置104は
図4に示すように、既存の射出成形機の制御装置全体をリプレースしたものでもよいし、既存の射出成形機の制御装置のソフトウェアを上述した機能を含むようにアップデートしたものでもよい。
【0054】
制御装置104の機能は上述した通りである。すなわち、制御装置104は撮影装置41~45で撮影した画像の表示部51を有し、表示部51は命令入力部55での命令の受付けと連動して、命令に関連する金型または可動部材の画像を表示することができる。
【0055】
撮影される部材は可動部材に限らず、例えば、可動金型固定具5や固定金型固定具6(
図2参照)のような固定部材でもよい。金型固定具5,6は可動部材ではないが、金型Mを金型固定具5,6に取り付ける際に、可動金型固定具5や固定金型固定具6の近傍を目視することがある。また、金型固定具5,6の制御部は制御装置4に設けられていることが多いため、金型固定具5,6の目視と制御装置4の操作を同時に行う場合が生じ、前述と同様の課題が生じる。金型固定具5,6の近傍に専用の撮影装置を設置するか、金型用カメラ42を利用することで、金型固定具5,6を表示部51で目視確認しながら金型固定具5,6の操作を行うことができる。
【0056】
(付記)本明細書は以下の開示を含む。
[構成1]
金型を装着可能な射出成形機であって、
前記金型または前記射出成形機の部材を撮影する少なくとも一つの撮影装置と、制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記金型または前記部材に関連する命令を受付ける命令入力部と、前記少なくとも一つの撮影装置で撮影した画像の表示部と、を有し、前記表示部は前記命令入力部での前記命令の受付けと連動して、前記命令に関連する前記金型または前記部材の画像を表示する射出成形機。
[構成2]
前記部材は可動部材であり、前記命令は前記可動部材を動かす命令である、構成1に記載の射出成形機。
[構成3]
前記制御装置は、前記命令入力部での前記命令の受付けと連動して、前記命令に関連する前記撮影装置を選択し、
前記表示部は、選択された前記撮影装置が撮影する画像を表示する、構成1または2に記載の射出成形機。
[構成4]
前記制御装置は、前記選択された撮影装置の撮影条件を受け付ける撮影条件入力部を有する、構成3に記載の射出成形機。
[構成5]
前記選択された撮影装置は、前記撮影条件入力部で受け付けた前記撮影条件に従って前記金型または前記部材を撮影する、構成4に記載の射出成形機。
[構成6]
前記制御装置は、
過去の前記命令と、前記過去の命令と組み合わせて入力された前記撮影条件と、を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記命令及び前記撮影条件に基づき、新たな前記命令に対応する前記撮影条件を設定する撮影条件設定部と、
を有し、
前記選択された撮影装置は、前記撮影条件設定部で設定された前記撮影条件に従って前記金型または前記部材を撮影する、構成4に記載の射出成形機。
[構成7]
前記撮影条件は前記選択された撮影装置のズーム倍率を含む、構成4から6のいずれか1項に記載の射出成形機。
[構成8]
前記少なくとも一つの撮影装置は、撮影位置と撮影角度の少なくともいずれかの調整が可能であり、
前記撮影条件は、前記選択された撮影装置の前記撮影位置と前記撮影角度の少なくともいずれかを含む、構成4から7のいずれか1項に記載の射出成形機。
[構成9]
前記少なくとも一つの撮影装置は赤外線を検知する、構成1から8のいずれか1項に記載の射出成形機。
[構成10]
前記表示装置は前記射出成形機の運転パラメータを前記画像とともに表示する、構成1から9のいずれか1項に記載の射出成形機。
[構成11]
前記部材は射出装置、トグル機構、エジェクタピン、金型固定装置の少なくともいずれかを含む、構成1から10のいずれか1項に記載の射出成形機。
[構成12]
金型を装着可能な射出成形機の運転支援システムであって、
前記金型または前記射出成形機の部材を撮影する少なくとも一つの撮影装置と、
前記少なくとも一つの撮影装置で撮影した画像の表示部と、を有し、
前記表示部は、前記金型または前記部材に関連する命令を受付ける前記射出成形機の命令入力部での前記命令の受付けと連動して、前記命令に関連する前記金型または前記部材の画像を表示する、射出成形機の運転支援システム。
【符号の説明】
【0057】
1 射出成形機
2 型締装置
3 射出装置
4 制御装置
27 トグル機構
41~45 撮影装置
51 表示部
52 操作部
54 共通バス
55 命令入力部
55A エジェクタ作動スイッチ
55B 型開閉スイッチ
55C 射出装置作動スイッチ
56 撮影条件入力部
57 移動レバー
58 角度スイッチ
59 ズームレバー
61 中央処理ユニット(CPU)
62 記憶部
64 撮影条件設定部
101 運転支援システム
M 金型