IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-試薬容器、及び、自動分析装置 図1
  • 特開-試薬容器、及び、自動分析装置 図2
  • 特開-試薬容器、及び、自動分析装置 図3
  • 特開-試薬容器、及び、自動分析装置 図4
  • 特開-試薬容器、及び、自動分析装置 図5
  • 特開-試薬容器、及び、自動分析装置 図6
  • 特開-試薬容器、及び、自動分析装置 図7
  • 特開-試薬容器、及び、自動分析装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160465
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】試薬容器、及び、自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20241107BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G01N35/02 A
G01N35/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075482
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 晋
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CE02
2G058CE03
2G058EA04
2G058GB05
2G058GB10
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】試薬の泡の発生を抑制すること。
【解決手段】本実施形態に係る試薬容器は、ケースと、袋部と、連通路と、筒部とを備える。前記袋部は、前記ケースに内蔵され、試薬を密閉した状態で収容する。前記連通路は、前記袋部に設けられる。前記筒部は、一端に前記連通路が設けられ、前記袋部から前記連通路を経由して流入する前記試薬を収容し、当該一端側とは反対側の他端側から前記試薬を吸引するプローブが挿入される。これにより、本実施形態に係る試薬容器は、試薬の泡の発生を抑制することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに内蔵され、試薬を密閉した状態で収容する袋部と、
前記袋部に設けられる連通路と、
一端に前記連通路が設けられ、前記袋部から前記連通路を経由して流入する前記試薬を収容し、当該一端側とは反対側の他端側から前記試薬を吸引するプローブが挿入される筒部と、
を備える試薬容器。
【請求項2】
前記袋部は、前記プローブによる前記試薬の吸引に伴って収縮する、
請求項1に記載の試薬容器。
【請求項3】
前記連通路は、前記袋部の底部から前記試薬が流出し、前記筒部の底部から前記試薬が流入するように設けられる、
請求項1に記載の試薬容器。
【請求項4】
前記袋部の底部は、前記連通路が設けられる位置に向かって傾斜している、
請求項3に記載の試薬容器。
【請求項5】
前記筒部から前記袋部の方向への前記試薬の逆流を防止する弁、
を更に備える請求項1に記載の試薬容器。
【請求項6】
前記弁は、前記連通路に設けられる、
請求項5に記載の試薬容器。
【請求項7】
前記連通路に設けられ、前記試薬の使用時に開通する機構、
を更に備える請求項1に記載の試薬容器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の試薬容器と、
前記試薬容器内の試薬を吸引して、前記吸引した試薬を反応容器内に吐出する試薬分注部と、
を備える自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、試薬容器、及び、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置において、プローブにより試薬の分注が行われる。例えば、プローブは、ターンテーブルに保持された試薬容器内の試薬を吸引して、試料が吐出された反応容器内に吐出する。ここで、試薬には界面活性剤等の泡立ちやすい成分が含まれているものがある。このため、試薬容器の輸送時や、試薬容器の輸送後に行われるターンテーブルの回転動作時などの移動時において、試薬容器内の試薬の液面が波立つことにより、泡が発生する場合がある。泡が発生する場合、試薬の分注に影響を与えるため、様々な対策が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-4731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、試薬の泡の発生を抑制することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る試薬容器は、ケースと、袋部と、連通路と、筒部とを備える。前記袋部は、前記ケースに内蔵され、試薬を密閉した状態で収容する。前記連通路は、前記袋部に設けられる。前記筒部は、一端に前記連通路が設けられ、前記袋部から前記連通路を経由して流入する前記試薬を収容し、当該一端側とは反対側の他端側から前記試薬を吸引するプローブが挿入される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る試薬容器が適用される自動分析装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、図1の分析装置の構成の一例を示す斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係る試薬容器の構成の一例を示す断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る試薬容器の構成の一例を示す断面図である。
図5図5は、本実施形態に係る試薬容器の構成の一例を示す断面図である。
図6図6は、本実施形態に係る試薬容器の構成の一例を示す断面図である。
図7図7は、本実施形態に係る試薬容器の他の構成の一例を示す断面図である。
図8図8は、本実施形態に係る試薬容器の他の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、試薬容器、及び、自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0008】
図1は、本実施形態に係る試薬容器が適用される自動分析装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す自動分析装置100は、分析装置70と、駆動装置80と、処理装置90とを備えている。
【0009】
分析装置70は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料(血液や尿などの生体試料)と、各検査項目の分析に用いる試薬との混合液を測定して、標準データや被検データを生成する。分析装置70は、試料の分注、試薬の分注等を行う複数のユニットを備え、駆動装置80は、分析装置70の各ユニットを駆動する。処理装置90は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0010】
処理装置90は、入力装置50と、出力装置40と、処理回路30と、記憶回路60とを有する。
【0011】
入力装置50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各検査項目の分析パラメータを設定するための入力、被検試料の被検識別情報及び検査項目を設定するための入力等を行う。
【0012】
出力装置40は、プリンタと、ディスプレイとを備えている。プリンタは、処理回路30で生成されたデータの印刷を行う。ディスプレイは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶パネルなどのモニタであり、処理回路30で生成されたデータの表示を行う。
【0013】
記憶回路60は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などである。
【0014】
処理回路30は、システム全体を制御する。例えば、処理回路30は、図1に示すように、データ処理機能31及び制御機能32を実行する。制御機能32は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。データ処理機能31は、分析装置70で生成された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する。
【0015】
例えば、分析装置70により生成される標準データは、物質の量や濃度を判定するためのデータ(検量線あるいは標準曲線)を表し、分析装置70により生成される被検データは、被検試料を測定した結果のデータを表す。また、処理回路30から出力される検量データは、被検データと標準データとから導かれる物質の量や濃度などの測定結果を表すデータを表し、処理回路30から出力される分析データは、陽性又は陰性の判定結果を表すデータを表す。すなわち、検量データは、陽性又は陰性の判定結果を表す分析データを導くためのデータである。
【0016】
ここで、例えば、処理回路30の構成要素が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路60に記録されている。処理回路30は、各プログラムを記憶回路60から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路30は、図1の処理回路30内に示された各機能を有することとなる。
【0017】
なお、図1においては、単一の処理回路30にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0018】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路60に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路60にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0019】
図2は、図1の分析装置70の構成の一例を示す斜視図である。
【0020】
分析装置70は、複数の試料容器11を保持するサンプルディスク5を備えている。試料容器11は、各検査項目の標準試料や被検試料等の試料を収容する。
【0021】
分析装置70は、更に、複数の試薬容器6と、複数の試薬容器6の各々を格納する試薬庫1と、複数の試薬容器7と、複数の試薬容器7の各々を格納する試薬庫2とを備えている。試薬容器6、7は、試料に含まれる各検査項目の成分と反応する成分を含有する試薬を収容する。試薬庫1は、各検査項目の試薬容器6を回動可能に保持するターンテーブルである試薬ラック1aを備えている。試薬庫2は、各検査項目の試薬容器7を回動可能に保持するターンテーブルである試薬ラック2aを備えている。
【0022】
分析装置70は、更に、円周上に配置された複数の反応容器3と、複数の反応容器3の各々を回転移動可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0023】
分析装置70は、更に、試料分注プローブ16と、試料分注アーム10と、試料分注ポンプユニット16aと、試料検出器16bと、洗浄槽16cとを備えている。試料分注プローブ16は、試料の分注を行う。具体的には、試料分注プローブ16は、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料を検査項目毎に吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試料を反応容器3内へ吐出する。試料分注アーム10は、試料分注プローブ16を回動及び上下移動可能に支持する。試料分注ポンプユニット16aは、試料分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせる。試料検出器16bは、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料の液面に、当該液面の上方から下降した試料分注プローブ16の先端部が接触したときに、試料容器11内の試料を検出したと判定する。具体的には、試料検出器16bは、試料分注プローブ16と電気的に接続され、試料分注プローブ16の先端部が試料容器11内の試料と接触したときの静電容量の変化により、試料容器11内の試料の液面を検出する。試料容器11内の試料の液面が検出されると、試料分注ポンプユニット16aは、試料分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせる。洗浄槽16cは、試料分注プローブ16を試料の分注終了毎に洗浄する。
【0024】
分析装置70は、更に、試薬分注プローブ14と、試薬分注アーム8と、試薬分注ポンプユニット14aと、試薬検出器14bと、洗浄槽14cと、撹拌子17と、撹拌アーム18と、洗浄槽17aとを備えている。試薬分注プローブ14は、試薬容器6内の試薬の分注を行う。具体的には、試薬分注プローブ14は、試薬ラック1aに保持された各検査項目の試薬容器6内の試薬を吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試薬を、試料が分注された反応容器3内に吐出する。試薬分注アーム8は、試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に支持する。試薬分注ポンプユニット14aは、試薬分注プローブ14に試薬の吸引及び吐出を行わせる。試薬検出器14bは、液面検知機能として、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の試薬の液面に、当該液面の上方から下降した試薬分注プローブ14の先端部が接触したときに、試薬容器6内の試薬を検出したと判定する。具体的には、試薬検出器14bは、試薬分注プローブ14と電気的に接続され、試薬分注プローブ14の先端部が試薬容器6内の試薬と接触したときの静電容量の変化により、試薬容器6内の試薬の液面を検出する。試薬容器6内の試薬の液面が検出されると、試薬分注ポンプユニット14aは、試薬分注プローブ14に試薬の吸引及び吐出を行わせる。洗浄槽14cは、試薬分注プローブ14を試薬の分注毎に洗浄する。撹拌子17は、反応容器3内に分注された試料と試薬との混合液を撹拌する。撹拌アーム18は、撹拌子17を回動及び上下移動可能に支持する。洗浄槽17aは、撹拌子17を混合液の撹拌毎に洗浄する。
【0025】
分析装置70は、更に、試薬分注プローブ15と、試薬分注アーム9と、試薬分注ポンプユニット15aと、試薬検出器15bと、洗浄槽15cと、撹拌子19と、撹拌アーム20と、洗浄槽19aとを備えている。試薬分注プローブ15は、試薬容器7内の試薬の分注を行う。ここで、試薬分注プローブ15、試薬分注アーム9、試薬分注ポンプユニット15a、試薬検出器15b、洗浄槽15c、撹拌子19、撹拌アーム20、洗浄槽19aの機能は、それぞれ、試薬分注プローブ14、試薬分注アーム8、試薬分注ポンプユニット14a、試薬検出器14b、洗浄槽14c、撹拌子17、撹拌アーム18、洗浄槽17aの機能と同じであるため、説明を省略する。
【0026】
分析装置70は、更に、測定部13と、反応容器洗浄ユニット12とを備えている。測定部13は、撹拌子17に撹拌された混合液を収容する反応容器3や、撹拌子19に撹拌された混合液を収容する反応容器3に、光を照射して混合液を測定する。具体的には、測定部13は、回転移動している測定位置の反応容器3に光を照射し、この照射により反応容器3内の試料及び試薬の混合液を透過した光を検出する。そして、測定部13は、検出した信号を処理してデジタル信号で表される標準データや被検データを生成して処理装置90の処理回路30に出力する。反応容器洗浄ユニット12は、測定部13による測定が終了した反応容器3内を洗浄する。
【0027】
駆動装置80は、分析装置70の各ユニットを駆動する。
【0028】
駆動装置80は、分析装置70のサンプルディスク5を駆動する機構を備え、各試料容器11を回動移動させる。また、駆動装置80は、試薬庫1の試薬ラック1aを駆動する機構を備え、各試薬容器6を回動移動させる。また、駆動装置80は、試薬庫2の試薬ラック2aを駆動する機構を備え、各試薬容器7を回動移動させる。また、駆動装置80は、反応ディスク4を駆動する機構を備え、各反応容器3を回転移動させる。
【0029】
また、駆動装置80は、試料分注アーム10を回動及び上下移動させる機構を備え、試料分注プローブ16を試料容器11と反応容器3との間で移動させる。また、駆動装置80は、試料分注ポンプユニット16aを駆動する機構を備え、試料分注プローブ16に試料を分注させる。すなわち、試料分注プローブ16に試料容器11の試料を吸引させ、当該試料を反応容器3に吐出させる。
【0030】
また、駆動装置80は、試薬分注アーム8、9を回動及び上下移動させる機構を備え、試薬分注プローブ14、15をそれぞれ試薬容器6、7と反応容器3との間で移動させる。また、駆動装置80は、試薬分注ポンプユニット14a、15aを駆動する機構を備え、試薬分注プローブ14、15に試薬を分注させる。すなわち、試薬分注プローブ14、15に試薬容器6、7の試薬を吸引させ、当該試薬を反応容器3に吐出させる。また、駆動装置80は、撹拌アーム18、20を駆動する機構を備え、撹拌子17、19を反応容器3内に移動させる。そして、駆動装置80は、撹拌子17、19を駆動する機構を備え、反応容器3内の試料及び試薬の撹拌を行わせる。
【0031】
処理装置90の制御機能32は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0032】
以上、本実施形態に係る試薬容器が適用される自動分析装置100の全体構成について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係る試薬容器は、試薬容器の輸送時や、試薬容器の輸送後に行われるターンテーブル(例えば、試薬庫1の試薬ラック1a、試薬庫2の試薬ラック2a)の回転動作時などの移動時において、試薬の泡の発生を抑制する。
【0033】
試薬には界面活性剤等の泡立ちやすい成分が含まれているものがある。このため、試薬容器6、7の輸送時や、試薬容器6、7の輸送後に行われるターンテーブルの回転動作時などの移動時において、試薬容器6、7内の試薬の液面が波立つことにより、泡が発生する場合がある。そこで、自動分析装置100では、試薬分注プローブ14、15が降下し試薬に突入する際に、静電容量の変化を検知し、プローブ先端が試薬液面から一定の深さで止まるような液面検知機能(例えば、試薬検出器14b、15b)を備えている。自動分析装置100では、試薬の液面の波立ちで泡が発生した場合、液面検知機能が試薬上部の泡を検知し、プローブ先端が液面に届かない、もしくは、浅い深さで停止すると、試薬吸引時に空吸いしたり、必要な試薬量を吸引できなかったりすることから、試薬の分注が行われる際に、プローブにより分注に必要な量の試薬を正しく吐出できない可能性がある。
【0034】
ここで、試薬の泡の発生を抑制する場合、試薬に含まれる成分を、界面活性剤等の泡立ちやすい成分から、泡立ちにくい成分に変更することが考えられるが、試薬の性能に影響を及ぼす可能性がある。また、試薬の泡の発生を抑制する場合、試薬容器内にバッフルを設けることも考えられるが、試薬容器内のバッフル自体によって試薬の液面が波立つことにより、泡が発生する可能性がある。泡が発生する場合、上述のように試薬の分注に影響を与えるため、自動分析装置が正しい測定結果を得ることができない可能性がある。
【0035】
そこで、本実施形態に係る試薬容器は、ケースと、袋部と、連通路と、筒部とを備える。袋部は、ケースに内蔵され、試薬を密閉した状態で収容する。連通路は、袋部に設けられる。筒部は、一端に連通路が設けられ、袋部から連通路を経由して流入する試薬を収容し、当該一端側とは反対側の他端側から試薬を吸引するプローブが挿入される。本実施形態に係る試薬容器は、袋部に試薬を収容しているため、試薬容器の輸送時や、試薬容器の輸送後に行われるターンテーブルの回転動作時などの移動時において、試薬の泡の発生を抑制することができる。
【0036】
以下、図3図6を用いて、本実施形態に係る試薬容器200について説明する。例えば、本実施形態に係る試薬容器200は、図2に示す試薬容器6、7に相当する。
【0037】
図3に示すように、本実施形態に係る試薬容器200は、ケース210と、袋部220と、パイプ240と、筒部230とを備えている。パイプ240は連通路の一例である。
【0038】
袋部220は、ケース210に内蔵されている。例えば、袋部220は、ケース210内で固定されている。袋部220は、試薬を密閉した状態で収容する。袋部220は、ケース210よりも柔軟な素材で形成され、例えば、樹脂フィルムとナイロンフィルムとを重ねることによって形成されている。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、及び、ポリブチレン等で構成されたグループから選択されたポリマ材料が使用される。袋部220は、当該選択されたポリマ材料のフィルム(樹脂フィルム)とナイロンフィルムとによって形成される。
【0039】
例えば、袋部220は、第1フィルム(樹脂フィルム)と第2フィルム(ナイロンフィルム)とを重ねることによって形成されている。具体的には、袋部220は、第1フィルム及び第2フィルムの面が互いに対向するように、第1フィルム及び第2フィルムを接合することによって構成されている。第1フィルム及び第2フィルムの接合には、例えば、熱溶着などが用いられる。図3に示すように、袋部220は、第1フィルム及び第2フィルムを熱溶着することによって形成され、袋部220には、試薬が収容される。
【0040】
パイプ240は、袋部220に設けられる。例えば、パイプ240は、袋部220の底部220aから試薬が流出するように設けられる。パイプ240は、ケース210よりも柔軟な部材で形成され、例えば、樹脂によって形成されている。パイプ240の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、及び、ポリブチレン等で構成されたグループから選択されたポリマ材料が使用される。パイプ240は、当該選択されたポリマ材料(樹脂)によって形成される。また、例えば、パイプ240は袋部220と一体型に形成されてもよい。
【0041】
筒部230は、下端である一端230aにパイプ240が設けられる。即ち、上述のパイプ240は、袋部220の底部220aから試薬が流出し、筒部230の一端230a(底部)から試薬が流入するように設けられる。筒部230は、例えば、中空の円筒形状であり、樹脂によって形成されている。筒部230の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、及び、ポリブチレン等で構成されたグループから選択されたポリマ材料が使用される。筒部230は、当該選択されたポリマ材料(樹脂)によって形成される。
【0042】
図3に示すように、袋部220の底部220aは、パイプ240が設けられる位置に向かって高さが低くなるように傾斜している。例えば、袋部220の底部220aは、図3の矢印A、A’が示す方向に傾斜している。
【0043】
袋部220は試薬を密閉した状態で収容するため、袋部220内の試薬については使用が開始されるまで常温保存することができる。ここで、例えば、図3に示すように、パイプ240には、試薬の使用時に開通する機構250が設けられている。当該機構250は、例えば、電磁弁を有する。例えば、ケース210の外側には、電磁弁を開放するための図示しないボタンが設けられ、試薬の使用時にユーザが当該ボタンを押下したときに、電磁弁が開放する。電磁弁が開放した場合、機構250は、袋部220と筒部230との間の流路を開通させる。このとき、図4に示すように、機構250が袋部220と筒部230との間の流路を導通させることによって、袋部220からパイプ240を経由して筒部230に試薬が流入する。なお、機構250を、ユーザが当該ボタンを再度押下したときに電磁弁が閉じる構成とした場合、袋部220内の試薬については未使用時に常温保存することができる。
【0044】
図3図4において、パイプ240に上記機構250が設けられる構成を例に挙げているが、試薬の使用時にユーザがパイプ240を袋部220に繋げることができる構成にしてもよい。例えば、ユーザがパイプ240を袋部220に繋げたとき、袋部220からパイプ240を経由して筒部230に試薬が流入する。なお、ユーザがパイプ240を袋部220から外せる構成とした場合、袋部220内の試薬については未使用時に常温保存することができる。
【0045】
図5に示すように、筒部230は、プローブ110の挿入方向に沿ってケース210内で立設されている。例えば、筒部230はケース210と一体型に形成される。筒部230は、袋部220からパイプ240を経由して流入する試薬を収容し、一端230a側とは反対側(上側)の他端230b側から試薬を吸引するプローブ110が挿入される。例えば、プローブ110は、図2に示す試薬分注プローブ14、15に相当する。
【0046】
袋部220は、プローブ110による試薬の吸引に伴って収縮する。更に、袋部220の底部220aは、図3の矢印A、A’が示す方向に傾斜している形状であるため、プローブ110により試薬が吸引されたときに、図6に示すように、筒部230内の試薬が少なくなることに伴って、袋部220からパイプ240を経由して筒部230に試薬が流入し、袋部220が収縮する。
【0047】
ここで、筒部230内の試薬の液面は、袋部220内の試薬が少なくなることに伴って、徐々に下がっていく。例えば、プローブ110には液面センサが設けられているため、液面センサは、筒部230内の試薬の液面に、当該液面の上方から下降したプローブ110の先端部が接触したときに、筒部230内の試薬を検出したと判定することができる。そして、筒部230内の試薬の液面が検出されると、ポンプユニットは、プローブ110に試薬の吸引を行わせる。例えば、液面センサは、図2に示す試薬検出器14b、15bに相当し、ポンプユニットは、図2に示す試薬分注ポンプユニット14a、15aに相当する。
【0048】
試薬の吸引はポンプユニットにより行われるため、例えば、分析装置70を制御する処理回路30が、検査で使用した分の試薬の量を計算により求めることができる。このため、処理回路30は、検査で使用した分の試薬の量を計算することで、筒部230内の試薬の液面の位置を計算により求めることができる。
【0049】
なお、筒部230内の試薬の液面は液面センサにより検出することができるが、筒部230内の試薬の液面の位置は計算により求めることができるため、プローブ110に液面センサが設けられなくてもよい。
【0050】
このように、本実施形態に係る試薬容器200では、柔軟な部材で形成された袋部220に試薬を収容しているため、試薬容器200の輸送時や、試薬容器200の輸送後に行われるターンテーブル(例えば、試薬庫1の試薬ラック1a、試薬庫2の試薬ラック2a)の回転動作時などの移動時において、試薬の泡の発生を抑制することができる。
【0051】
ここで、試薬容器200は、図2に示す試薬庫1、2の径方向において、内側に筒部230、外側に袋部220が配置される。これにより、内側に筒部230が配置されることにより、筒部230が回転するときの半径を短くすることができるため、試薬の泡の発生を抑制することができる。なお、本実施形態では、柔軟な部材で形成された袋部220を用いることで試薬の液面が波立ちにくいため、図2に示す試薬庫1、2の径方向において、内側に袋部220、外側に筒部230が配置されてもよい。
【0052】
また、筒部230は、ある半径以下であれば、ターンテーブルの回転動作時などの移動時においても、筒部230内の試薬の液面の表面張力によって試薬の液面が波立ちにくいため、筒部230内で泡が発生しない。例えば、筒部230の直径は15mm~20mmに設定される。この直径は水の粘性により決定される。即ち、筒部230の直径は、筒部230内に水が収容されても、表面張力が支配的になって、筒部230内の水が泡立ちにくい径として設定される。ここで、一般の試薬容器では、ターンテーブルの回転停止後に、試薬の液面が揺れてしまうことにより、液面検知機能が液面を誤検知する可能性がある。一方、本実施形態に係る試薬容器200では、筒部230内の試薬の液面の表面張力によって、試薬の液面が揺れないので、液面検知機能が液面を誤検知することを防止することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る試薬容器200では、袋部220が試薬を密閉した状態で収容するため、空気との接触による試薬の劣化を防止することができる。
【0054】
ここで、袋部220は試薬を密閉した状態で収容することで、袋部220内の試薬が空気と接触しないため、試薬の劣化を防止することができ、試薬容器220を冷蔵保存しなくてもよいという利点がある。
【0055】
また、本実施形態に係る試薬容器200では、袋部220と筒部230との配置により、袋部220内の試薬を使い切ることができる。例えば、袋部220は、しぼんだときにパイプ240を経由して筒部230に試薬を供給できるぐらいの柔らかい部材で形成されているため、袋部220内の試薬を使い切ることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る試薬容器200では、袋部220からパイプ240を経由して試薬が筒部230に流入することで、袋部220がしぼむため、例えば、袋部内に筒部を設ける構成に比べて、袋部220内の試薬を使い切ることができる。袋部内に筒部を設ける構成では、筒部によって、袋部がしぼりにくく、袋部内の試薬を使い切れない可能性がある。また、袋部内に筒部を設ける構成では、袋部内の試薬が空気と接触するため、試薬容器を冷蔵保存する必要がある。本実施形態に係る試薬容器200では、例えば、試薬の使用時に開通する機構250をパイプ240に設ける構成や、試薬の使用時にユーザがパイプ240を袋部220に繋げる構成とすることで、袋部220内の試薬については未使用時に常温保存することができる。このように、本実施形態に係る試薬容器200では、袋部内に筒部を設ける構成に比べて、袋部220内の試薬を使い切ることができる上に、試薬の劣化を防止することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る試薬容器200では、図2に示す試薬庫1、2の径方向において、内側又は外側に筒部230が配置されることにより、プローブ110として、既存のプローブを使用することができる。
【0058】
以上、説明したとおり、本実施形態に係る試薬容器200では、柔軟な部材で形成された袋部220に試薬を収容しているため、試薬容器200の輸送時や、試薬容器200の輸送後に行われるターンテーブルの回転動作時などの移動時において、試薬の泡の発生を抑制することができる。また、本実施形態に係る試薬容器200では、袋部220が試薬を密閉した状態で収容するため、空気との接触による試薬の劣化を防止することができる。また、本実施形態に係る試薬容器200では、袋部220と筒部230との配置により、袋部220内の試薬を使い切ることができる。
【0059】
なお、図7に示すように、本実施形態に係る試薬容器200は、更に、筒部230から袋部220の方向への試薬の逆流を防止する弁260を備えてもよい。例えば、弁260は、パイプ240に設けられる。これにより、袋部220内に筒部230からの気泡の侵入を防止することができる。
【0060】
また、上述した実施形態では、パイプ240は袋部220と一体型に形成され、筒部230がケース210と一体型に形成されているが、例えば、袋部220、パイプ240、筒部230、ケース210は別々に形成されてもよい。また、筒部230とパイプ240とがケース210と一体型に形成されてもよい。例えば、筒部230とパイプ240とがケース210と一体型に形成された場合、試薬を使い切った使用済みの袋部220をケース210から外し、未使用の袋部220だけをケース210に取り付ければよいため、筒部230がケース210と一体型に形成された場合に比べて、製造コストを削減できる。
【0061】
また、図8に示すように、本実施形態に係る試薬容器200は、更に、ケース210内で袋部220を吊るして固定するための部材270を備えてもよい。具体的には、部材270の一端はケース210の上部の内壁面に設けられ、部材270の他端は、例えば、L字形状や円弧形状などのフック形状に形成されている。袋部220の上部220bには貫通孔220cが設けられ、部材270のフック形状の部分を貫通孔220cに通すことで、部材270は、ケース210内で袋部220を吊るして固定する。これにより、袋部220が吊るされた状態になるため、袋部220からパイプ240を経由して筒部230に試薬が流入するときに袋部220がしぼみやすくなり、袋部220内の試薬を使い切ることができる。
【0062】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、試薬の泡の発生を抑制することができる。
【0063】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
100 自動分析装置
110 プローブ
200 試薬容器
210 ケース
220 袋部
230 筒部
240 パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8