(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160471
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及び組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20241107BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241107BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20241107BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20241107BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20241107BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20241107BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20241107BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0587
H01M10/0585
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M50/262 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075495
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 奈央
(72)【発明者】
【氏名】藤田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】西出 太祐
【テーマコード(参考)】
5H029
5H040
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ12
5H029BJ14
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ15
5H029HJ20
5H040AA36
5H040NN01
(57)【要約】
【課題】出力抵抗を低減し、容量維持率の低下を抑制することができる非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】非水電解質二次電池は、電極体と電解液とを含む。電極体は、活物質層を有する正極板を備える巻回型電極体又は積層型電極体である。巻回型電極体の巻回軸に平行な方向における前記活物質層の長さは150mm以上である。積層型電極体の平面視形状は正方形又は長方形であり、正方形の一辺に平行な方向、又は、長方形の長辺に平行な方向における活物質層の長さは150mm以上である。非水電解質二次電池は、正極板の積層方向に0.5MPa以上の拘束圧が付与されている。電解液はLiFSO3を含み、電解液の25℃における電気伝導度は0.86S/m以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と電解液とを含む非水電解質二次電池であって、
前記電極体は、活物質層を有する正極板を備える巻回型電極体又は積層型電極体であり、
前記電極体が前記巻回型電極体である場合、巻回軸に平行な方向における前記活物質層の長さは、150mm以上であり、
前記電極体が前記積層型電極体である場合、
前記積層型電極体の平面視形状は、正方形又は長方形であり、
前記正方形の一辺に平行な方向、又は、前記長方形の長辺に平行な方向における前記活物質層の長さは、150mm以上であり、
前記非水電解質二次電池は、前記正極板の積層方向に0.5MPa以上の拘束圧が付与されており、
前記電解液は、LiFSO3を含み、
前記電解液の25℃における電気伝導度は、0.86S/m以上である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記電解液中のLiFSO3の含有量は、0.1質量%以上2.5質量%以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記電解液の25℃における電気伝導度は、0.90S/m以上である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記電解液の25℃における電気伝導度は、0.93S/m以上である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記電解液は、さらにLiPF6及びLiBF4のうちの少なくとも一方を含む、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記電解液は、さらにビニレンカーボネートを含む、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記電解液は、さらにエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジメチルカーボネートからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
2以上の電池を電気的に接続するように配列した組電池であって、
前記電池は、電極体と電解液とを含む非水電解質二次電池であり、
前記電極体は、活物質層を有する正極板を備える巻回型電極体又は積層型電極体であり、
前記電極体が前記巻回型電極体である場合、巻回軸に平行な方向における前記活物質層の長さは、150mm以上であり、
前記電極体が前記積層型電極体である場合、
前記積層型電極体の平面視形状は、正方形又は長方形であり、
前記正方形の一辺に平行な方向、又は、前記長方形の長辺に平行な方向における前記活物質層の長さは、150mm以上であり、
前記電解液は、LiFSO3を含み、
前記電解液の25℃における電気伝導度は、0.86S/m以上であり、
前記組電池は、前記電池の前記正極板の積層方向に0.5MPa以上の拘束圧が付与されるように拘束されている、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池及び組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池の電解液として、LiFSO3を用いることが知られている。例えば、特許文献1には、LiPF6及びLiFSO3を含む電解液を用いることにより、初期充電容量、入出力特性、電池内部インピーダンス特性が改善されることが開示されている。特許文献2には、非水電解液の組成を調整することにより、実用的に十分な伝導度が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-152956号公報
【特許文献2】特開2014-170730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LiFSO3を含む電解液を使用した電池において、ハイレートの充放電を繰り返すと、電池特性が低下することが見出された。
【0005】
本開示は、LiFSO3を含む電解液を用いてハイレートの充放電を繰り返した場合であっても、出力抵抗を低減し、容量維持率の低下を抑制することができる非水電解質二次電池及び組電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕 電極体と電解液とを含む非水電解質二次電池であって、
前記電極体は、活物質層を有する正極板を備える巻回型電極体又は積層型電極体であり、
前記電極体が前記巻回型電極体である場合、巻回軸に平行な方向における前記活物質層の長さは、150mm以上であり、
前記電極体が前記積層型電極体である場合、
前記積層型電極体の平面視形状は、正方形又は長方形であり、
前記正方形の一辺に平行な方向、又は、前記長方形の長辺に平行な方向における前記活物質層の長さは、150mm以上であり、
前記非水電解質二次電池は、前記正極板の積層方向に0.5MPa以上の拘束圧が付与されており、
前記電解液は、LiFSO3を含み、
前記電解液の25℃における電気伝導度は、0.86S/m以上である、非水電解質二次電池。
〔2〕 前記電解液中のLiFSO3の含有量は、0.1質量%以上2.5質量%以下である、〔1〕に記載の非水電解質二次電池。
〔3〕 前記電解液の25℃における電気伝導度は、0.90S/m以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の非水電解質二次電池。
〔4〕 前記電解液の25℃における電気伝導度は、0.93S/m以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
〔5〕 前記電解液は、さらにLiPF6及びLiBF4のうちの少なくとも一方を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
〔6〕 前記電解液は、さらにビニレンカーボネートを含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
〔7〕 前記電解液は、さらにエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジメチルカーボネートからなる群より選ばれる1種以上を含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
〔8〕 2以上の電池を電気的に接続するように配列した組電池であって、
前記電池は、電極体と電解液とを含む非水電解質二次電池であり、
前記電極体は、活物質層を有する正極板を備える巻回型電極体又は積層型電極体であり、
前記電極体が前記巻回型電極体である場合、巻回軸に平行な方向における前記活物質層の長さは、150mm以上であり、
前記電極体が前記積層型電極体である場合、
前記積層型電極体の平面視形状は、正方形又は長方形であり、
前記正方形の一辺に平行な方向、又は、前記長方形の長辺に平行な方向における前記活物質層の長さは、150mm以上であり、
前記電解液は、LiFSO3を含み、
前記電解液の25℃における電気伝導度は、0.86S/m以上であり、
前記組電池は、前記電池の前記正極板の積層方向に0.5MPa以上の拘束圧が付与されるように拘束されている、組電池。
【発明の効果】
【0007】
本開示の非水電解質二次電池は、ハイレートの充放電を繰り返しても、出力抵抗を低減し、容量維持率の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(非水電解質二次電池)
本実施形態の非水電解質二次電池(以下、「本電池(1)」ともいう。)は、電極体と電解液とを含む。電極体は、正極活物質層(活物質層)を有する正極板を含み、巻回型電極体又は積層型電極体である。電極体が巻回型電極体である場合、巻回軸に平行な方向における正極活物質層の長さは150mm以上である。電極体が積層型電極体である場合、積層型電極体の平面視形状は正方形又は長方形であり、正方形の一辺に平行な方向、又は、長方形の長辺に平行な方向における正極活物質層の長さは、150mm以上である。本電池(1)は、正極板の積層方向に0.5MPa以上の拘束圧が付与されている。電解液はLiFSO3を含み、電解液の25℃における電気伝導度は0.86S/m以上である。
【0009】
電極体は通常、正極板に加えて、負極板及びセパレータを有する。負極板は、負極活物質を含む負極活物質層を有する。セパレータは、正極板と負極板との間に介在する。
【0010】
電極体が巻回型電極体である場合、巻回軸に平行な方向における正極活物質層及び負極活物質層の長さは、それぞれ独立して、150mm以上であってもよく、150mm以上350mm以下であってもよく、180mm以上350mm以下であってもよく、200mm以上300mm以下であってもよい。電極体が、平面視形状が正方形又は長方形である積層型電極体である場合、正方形の一辺に平行な方向における正極活物質層及び負極活物質層の長さ、又は、長方形の長辺に平行な方向における正極活物質層及び負極活物質層の長さは、それぞれ独立して、150mm以上であってもよく、150mm以上350mm以下であってもよく、180mm以上350mm以下であってもよく、200mm以上300mm以下であってもよい。電極体は、好ましくは、正極活物質層及び負極活物質層の両方の長さが上記した範囲にある。
【0011】
本電池(1)に付与される拘束圧は、正極板の積層方向に0.5MPa以上であればよい。正極板の積層方向は通常、正極板及び負極板を積層した積層方向と同じ方向である。拘束圧は、0.5MPa以上5MPa以下であってもよく、1MPa以上4MPa以下であってもよく、2MPa以上4MPa以下であってもよい。拘束圧は、ロードセルによって荷重を測定することにより算出することができる。本電池(1)に付与される拘束圧は、本電池(1)を組電池とした状態で付与されてもよい。組電池とする方法は、後述する本電池(2)を組電池とする方法が挙げられる。
【0012】
電解液は通常、非水電解液であり、好ましくは有機溶媒等の非水溶媒中に支持塩を含有させたものである。電解液はLiFSO3を含む。電解液中のLiFSO3の含有量は、好ましくは0.1質量%以上2.5質量%以下であり、0.5質量%以上2.0質量%以下であってもよく、0.7質量%以上1.5質量%以下であってもよい。電解液中のLiFSO3の含有量は、電解液の総量に対するLiFSO3の量である。
【0013】
電解液が含んでいてもよい支持塩としては、上記したLiFSO3の他、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiBOB(リチウムビス(オキサラト)ボレート)等が挙げられる。電解液は、これらのうちの1種又は2種以上を含んでいてもよい。電解液は、LiFSO3に加えて、好ましくはLiFSO3以外の支持塩を含み、より好ましくはLiPF6及びLiBF4のうちの少なくとも一方を含み、LiPF6を含んでいてもよい。
【0014】
電解液がLiPF6及びLiBF4のうちの少なくとも一方を含む場合、電解液中のLiPF6及びLiBF4の濃度は、好ましくは0.5mol/L以上1.5mol/L以下であり、0.7mol/L以上1.4mol/L以下であってもよく、0.8mol/L以上1.2mol/L以下であってもよい。上記濃度は、電解液中の非水溶媒1Lに対するLiPF6及びLiBF4の合計モル数である。上記濃度は、電解液中にLiPF6及びLiBF4のうちの一方を含む場合は当該一方の濃度であり、電解液中にLiPF6及びLiBF4の両方を含む場合はLiPF6及びLiBF4の合計の濃度である。
【0015】
電解液が含んでいてもよい非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、及びジエチルカーボネート(DEC)等が挙げられる。電解液は、これらのうちの1種又は2種以上の非水溶媒を含むことができる。電解液は、好ましくはEC、EMC、及びDMCからなる群より選ばれる1種以上を含み、より好ましくはEC、EMC、及びDMCを含む。
【0016】
電解液に用いる非水溶媒がEC、DMC、及びEMCを含む場合、EC:DMC:EMC=5~50:10~70:10~70(体積比)の混合比で含んでいてもよく、EC:DMC:EMC=10~40:20~60:20~60(体積比)の混合比で含んでいてもよく、EC:DMC:EMC=20~40:30~50:30~50(体積比)の混合比で含んでいてもよい。本明細書において、x~y(x,yは数値を表す)は、x以上y以下であることを示す。
【0017】
電解液は、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。電解液は、これらのうちの1種又は2種以上の添加剤を含むことができる。電解液は、好ましくはVCを含む。電解液中の上記の添加剤の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であってもよく、0.5質量%以上3質量%以下であってもよく、1質量%以上2質量%以下であってもよい。電解液中の上記の添加剤の含有量は、電解液の総量に対する上記の添加剤の量であり、2以上の添加剤を含む場合はその合計量である。
【0018】
電解液の25℃における電気伝導度は、0.86S/m以上であればよく、0.88S/m以上であってもよく、好ましくは0.90S/m以上であり、より好ましくは0.93S/m以上である。電解液の25℃における電気伝導度は特に制限されないが、1.5S/m以下であり、1.0S/m以下であってもよい。電解液の電気伝導度は、電解液に含まれる支持塩の種類及び含有量、並びに、非水溶媒の種類及び組成等によって調節することができる。電解液の電気伝導度は、25℃の環境下で電気伝導度計を用いて測定することができる。
【0019】
活物質層の長さが上記の範囲にあり、上記の大きさの拘束圧が付与されている非水電解質二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)では、電極体の位置によって電解液の塩濃度にばらつきが生じやすい。具体的には、電極体の端部において電解液の塩濃度が相対的に小さくなりやすい。そのため、二次電池の充放電を繰り返すと、電極体の端部側において正極板の電位が上昇し、正極活物質とFSO3
-との反応電位に達しやすい。正極板の電位が反応電位に達すると、正極活物質中の遷移金属が溶出し、溶出した遷移金属が負極板に堆積する。これにより、二次電池においてハイレートでの充放電を繰り返すと容量維持率が低下すると考えられる。これに対し、本電池(1)は、電解液の電気伝導度が上記した範囲にあるため、充放電を繰り返した場合にも、正極板の電位が上昇しにくくなり、正極板の分極も抑制されると考えられる。これにより、正極活物質とFSO3
-との反応を抑制し、正極活物質中の遷移金属の溶出を抑制できるため、本電池(1)においてハイレートでの充放電を繰り返しても、容量維持率の低下を抑制することができる。
【0020】
上記したように、電極体は例えば、正極板、負極板、及び、セパレータを有することができる。電極体は外装体に収容され、電極を収容した外装体内に電解液が注液される。電解液が注液された外装体の開口部は、封口板により封口される。
【0021】
正極板は、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極活物質層とを有することができる。正極集電体は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金等のアルミニウム材料を用いて構成された金属箔である。正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質としては例えば、層状系又はスピネル系等のリチウム遷移金属酸化物(例えば、LiNiCoMnO2、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCrMnO4、LiFePO4、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)が挙げられる。
【0022】
正極活物質層は、正極活物質以外に結着材及び導電助剤のうちの一方又は両方を含むことができる。結着材としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。導電助剤としては、繊維状炭素、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、コークス、活性炭等の炭素材料が挙げられる。繊維状炭素としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう。)が挙げられる。CNTは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)であってもよく、2層カーボンチューブ(DWCNT)等の多層カーボンナノチューブであってもよい。
【0023】
負極板は、負極集電体と、負極集電体上に形成された負極活物質層とを有することができる。負極集電体は、例えば、銅及び銅合金等の銅材料を用いて構成された金属箔である。負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質としては例えば、黒鉛(グラファイト)等の炭素(C)原子を含む炭素系活物質;ケイ素(Si)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)からなる群から選択される元素を含む金属単体又は金属酸化物等の金属元素を含む金属系活物質が挙げられる。負極活物質層は、金属系活物質としてケイ素元素を含むSi系活物質を含んでいてもよい。
【0024】
Si系活物質としては、ケイ素単体、SiC(ケイ素及び炭素の複合材料であり、例えば、多孔質炭素粒子内にケイ素のナノ粒子が分散されたもの等)、SiOx、LixSiyOz等が挙げられる。Si系活物質は充放電に伴う膨張収縮が大きく、ハイレートの充放電を繰り返すと電解液の塩濃度にばらつきが発生しやすい。本電池(1)は、電解液の電気伝導度を上記した範囲としているため、Si系活物質を含む負極活物質を有し、ハイレートでの充放電を繰り返した場合であっても、容量維持率の低下を抑制することができると考えられる。
【0025】
負極活物質層は、負極活物質以外に結着材及び導電助剤のうちの一方又は両方を含むことができる。結着材としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系結着材;スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。導電助剤としては、上記したものが挙げられる。
【0026】
セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる多孔質シート(フィルム、不織布等)が挙げられる。多孔質シートは、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。セパレータは、多孔質シートの表面に機能層を有していてもよい。機能層は、耐熱層、並びに、正極板及び負極板に接着するための接着層のうちの少なくとも一方が挙げられる。
【0027】
外装体は、電極体を収容する筐体であり、電極体を収容するための開口部を有する。外装体の開口部は、封口板を用いて封口することができる。外装体及び封口板は、好ましくは金属製であり、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、又は鉄合金等を用いて形成でき、例えばアルミニウムラミネートフィルムを用いて形成することができる。
【0028】
(組電池)
本実施形態の組電池は、2以上の電池を電気的に接続するように配列したものである。組電池が有する電池は、非水電解質二次電池(以下、「本電池(2)」ともいう。)であり、電極体と電解液とを含む。電極体は、活物質層を有する正極板を備える巻回型電極体又は積層型電極体である。電極体が巻回型電極体である場合、巻回軸に平行な方向における正極活物質層の長さは150mm以上である。電極体が、積層型電極体である場合、積層型電極体は平面視形状は正方形又は長方形であり、正方形の一辺に平行な方向、又は、長方形の長辺に平行な方向における正極活物質層の長さは、150mm以上である。電解液はLiFSO3を含み、電解液の25℃における電気伝導度は0.86S/m以上である。組電池は、本電池(2)の正極板の積層方向に0.5MPa以上の拘束圧が付与されるように拘束されている。
【0029】
本電池(2)が含む電極体及び電解液は、本電池(1)が含む電極体及び電解液として説明したものが挙げられる。電極体及び電解液は通常、上記した外装体に収容され、外装体の開口部は封口板によって封口される。正極活物質層の長さ、負極活物質層の長さ、及び、電解液の電気伝導度は、本電池(1)で説明した範囲とすることができる。
【0030】
組電池は通常、本電池(2)の正極板の積層方向に、2以上の本電池(2)を相互に隣接するように配置したものであり、本電池(2)の正極板の積層方向が同じ方向となるように本電池(2)が配列されている。
【0031】
組電池の拘束圧は、0.5MPa以上5MPa以下であってもよく、1MPa以上4MPa以下であってもよく、2MPa以上4MPa以下であってもよい。拘束圧は、ロードセルによって荷重を測定することにより算出することができる。組電池の拘束圧は、好ましくは、本電池(2)に対して正極板の積層方向に0.5MPa以上の拘束圧が付与されるように設定する。本電池(2)に対して付与される拘束圧は、0.5MPa以上5MPa以下であってもよく、1MPa以上4MPa以下であってもよく、2MPa以上4MPa以下であってもよい。
【0032】
組電池が備える本電池(2)は、本電池(1)であってもよい。例えば、組電池は、2以上の本電池(1)を電気的に接続するように配列したものであってもよい。この場合、組電池は、本電池(1)の正極板の積層方向に、2以上の本電池(1)を相互に隣接するように配置したものであり、本電池(1)の正極板の積層方向が同じ方向となるように本電池(1)が配列されていてもよい。本電池(1)に付与される拘束圧は、本電池(1)を組電池とした状態で付与された拘束圧であってもよい。
【実施例0033】
以下、実施例、比較例、及び参考例を示して本開示をさらに具体的に説明する。
〔比較例1〕
(正極板の作製)
正極活物質としてのLiNiCoMnO2、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、LiNiCoMnO2:AB:pVdF=100:1:1(質量比)で用い、これをN-メチルピロリドン(NMP)と混合して正極合剤スラリーを得た。正極集電体としてのアルミニウム箔上に、正極合剤スラリーを塗布して乾燥し、所定の厚みになるように圧縮することにより、アルミニウム箔上に正極活物質層を形成した後、所定の幅で切り出すことにより、正極板を得た。正極板は、幅方向において、アルミニウム箔上に正極活物質層が形成されている領域と、正極活物質層が形成されておらずアルミニウム箔が露出している領域とを有していた。正極板の正極活物質層の幅(後述する電極体の巻回軸に平行な方向の長さ)は150mmであった。
【0034】
(負極板の作製)
負極活物質としての黒鉛、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を、黒鉛:SBR:CMC=100:1:1(質量比)で用い、これを水と混合して負極合剤スラリーを得た。負極集電体としての銅箔上に、負極合剤スラリーを塗布して乾燥し、所定の厚みになるように圧縮することにより、銅箔上に負極活物質層を形成した後、所定の幅で切り出すことにより、負極板を得た。負極板は、幅方向において、銅箔上に負極活物質層が形成されている領域と、負極活物質層が形成されておらず銅箔が露出している領域とを有していた。負極板の負極活物質層の幅(後述する電極体の巻回軸に平行な方向の長さ)は155mmであった。
【0035】
(電極体の作製)
ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層の層構造を有するセパレータを準備した。上記で得た正極板と負極板とを上記セパレータを介して積層して巻回することにより、巻回型電極体を得た。巻回型電極体は、巻回軸に平行な方向の一端に正極集電体が露出し、他端に負極集電体が露出していた。巻回型電極体の正極集電体が露出している領域に外部集電用のアルミニウム板を溶接し、負極集電体が露出している領域に外部集電用の銅板を溶接した後、巻回型電極体を、アルミニウムラミネートフィルムで形成された外装体に収容した。
【0036】
支持塩としてLiPF6を用い、非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒(EC:EMC:DMC=30:50:20(体積比))を用い、LiPF6の濃度が1.1mol/L、及び、添加剤としてのビニレンカーボネート(VC)の含有量が1質量%となるように、LiPF6、VC、及び混合溶媒を混合して比較電解液(1)を調製した。この比較電解液(1)を、巻回型電極体を収容した外装体に注液した後、外装体の開口部を封口板で封口し、組立体を得た。
【0037】
組立体において、巻回型電極体の巻回軸に平行な2つの面(すなわち、巻回型電極体の正極板及び負極板の積層方向に直交する2つの面)のそれぞれにステンレスの拘束板を配置して、組立体を2枚の拘束板で挟み込んだ。この2枚の拘束板の四つの角を、ボルト及びナットを用いて互いに締結し、組立体に0.5MPaの拘束圧が付与されるように荷重を調整することにより、非水電解質二次電池を得た。拘束圧は、ロードセルによって荷重を測定することにより算出することができる。
【0038】
〔比較例2〕
支持塩としてLiPF6及びLiFSO3を用い、LiPF6の濃度が1.1mol/L、LiFSO3の含有量が1質量%、VCの含有量が1質量%となるようにしたこと以外は、比較電解液(1)と同じ手順で比較電解液(2)を調製した。比較電解液(1)に代えて比較電解液(2)を用いたこと以外は、比較例1と同じ手順で非水電解質二次電池を得た。
【0039】
〔比較例3、実施例1~4〕
表1に示す混合比でEC、EMC、及びDMCを混合した混合溶媒を用いたこと以外は、比較電解液(2)と同じ手順で比較電解液(3)及び電解液(1)~(4)を調製した。比較電解液(1)に代えて比較電解液(3)及び電解液(1)~(4)を用いたこと以外は、比較例1と同じ手順で非水電解質二次電池を得た。
【0040】
〔比較例4〕
EC:EMC:DMC=30:30:40(体積比)の混合溶媒を用いたこと以外は、比較電解液(1)と同じ手順で比較電解液(4)を調製した。比較電解液(1)に代えて比較電解液(4)を用いたこと以外は、比較例1と同じ手順で非水電解質二次電池を得た。
【0041】
〔実施例5及び6〕
表1に示す含有量となるようにLiFSO3を用いたこと以外は、実施例3の電解液(3)と同じ手順で電解液(5)及び(6)を調製した。比較電解液(1)に代えて電解液(5)及び(6)を用いたこと以外は、比較例1と同じ手順で非水電解質二次電池を得た。
【0042】
〔比較例5〕
拘束圧を付与しなかったこと以外は、実施例3と同じ手順で非水電解質二次電池を得た。
【0043】
〔参考例1〕
正極板の正極活物質層の幅(電極体の巻回軸に平行な方向の長さ)を100mm、負極板の負極活物質層の幅(電極体の巻回軸に平行な方向の長さ)を103mmに変更したこと以外は、比較例1と同じ手順で巻回型電極体を得、この巻回型電極体を用いて非水電解質二次電池を得た。
【0044】
〔参考例2〕
正極板の正極活物質層の幅(電極体の巻回軸に平行な方向の長さ)を100mm、負極板の負極活物質層の幅(電極体の巻回軸に平行な方向の長さ)を103mmに変更したこと以外は、比較例2と同じ手順で巻回型電極体を得、この巻回型電極体を用いて非水電解質二次電池を得た。
【0045】
[電気伝導度の測定]
電解液の電気伝導度は、25℃の恒温槽内で、電気伝導度計(東亜DKK社製)を用いて測定した。
【0046】
<評価>
(初期活性化)
25℃の環境下において、上記で得た非水電解質二次電池をC/10の電流値で、4.2Vcccv(定電流・定電圧)まで充電し、60℃で24時間保存した。その後、C/10の電流値で3Vの電位まで放電することにより、非水電解質二次電池の初期の活性化を行った。
【0047】
[出力抵抗の評価]
初期活性化した非水電解質二次電池を、25℃の環境下において、C/3の電流値でSOC(充電率)が50%になるまで充電して30分休止した後、非水電解質二次電池の電圧V0を測定した。その後、25℃の環境下において、2Cの電流値で10秒間放電し、10秒目の非水電解質二次電池の電圧V1を測定した。下記式にしたがって非水電解質二次電池の抵抗を算出した。
抵抗[Ω]=(V0-V1)/2Cの電流値
【0048】
比較例1の抵抗の値を100%(基準)としたときの相対値として、比較例2~5、実施例1~6の抵抗の値を換算した。参考例1の抵抗の値を100%(基準)としたときの相対値として、参考例2の抵抗の値を換算した。結果を表1に示す。
【0049】
[サイクル試験]
25℃の恒温槽において、初期活性化した非水電解質二次電池を2Cの電流値で、4.2Vcccv(定電流・定電圧)まで充電し、1Cの電流値で3Vの電位まで放電する充放電を1サイクルとして、このサイクルを繰り返し行った。下記式にしたがって、1サイクル目の放電容量W1に対する500サイクル目の放電容量W500の維持率を容量維持率[%]として算出した。結果を表1に示す。
容量維持率[%]=(W500/W1)×100
【0050】
【0051】
LiFSO3を含む電解液を用いた比較例2は、LiFSO3を含まない電解液を用いた比較例1に比べると出力抵抗が低減されたが、容量維持率も低下した。比較例2では、LiFSO3を含むことにより出力抵抗が低減できたが、ハイレートでの充電時に正極活物質とFSO3
-とが反応し、正極活物質中の遷移金属が溶出したことにより、容量維持率が低下したと推測される。
【0052】
比較例3と実施例1~4との対比から、混合溶媒中のEMCとDMCの体積比(EMC/DMC)の値が小さいほど、電気伝導率が大きくなり、出力抵抗が低減され、容量維持率が向上することがわかる。また、比較例4と実施例5及び6との対比から、混合溶媒中のLiFSO3の含有量が大きくなると、出力抵抗を低減することができ、良好な容量維持率を実現できることがわかる。LiFSO3を含むことにより出力抵抗を低減でき、電解液の電気伝導度を大きくすることにより、ハイレートでの充電時に正極活物質とFSO3
-との反応を抑制し、正極活物質中の遷移金属の溶出を抑制できたため、容量維持率を向上できたと考えられる。
【0053】
拘束圧を付与していない比較例5では、拘束圧を付与した実施例3に比較して、電極間距離が大きくなった結果、出力抵抗が大きくなったと考えられる。そのため、比較例3では、実施例3に比較すると、Liイオンの可逆性が悪化し、容量維持率も悪化したと考えられる。
【0054】
参考例1及び2では、比較例1及び2に比較すると、正極活物質層の幅が小さい。参考例2と比較例2との対比から、正極活物質層の幅が小さい場合には電解液の塩濃度にばらつきが生じにくく、ハイレートでの充電を行っても正極活物質とFSO3
-との反応が生じにくく、正極活物質中の遷移金属が溶出しにくいと考えられる。そのため、参考例2は、比較例2に比較すると、容量維持率が向上したと推測される。