(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160475
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075503
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】原田 千穂
(72)【発明者】
【氏名】太田 新
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01D
4F100AK51C
4F100AR00B
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100DG10A
4F100EH46C
4F100EH46E
4F100GB81
4F100HB31B
4F100JB13C
4F100JB13D
4F100JB14D
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】意匠性および含浸性が優れた化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】化粧紙10は、原反層1と、前記原反層1の上側UPに設けられた絵柄印刷層2と、前記絵柄印刷層2の前記上側UPに部分的に設けられた高意匠保護層3と、前記高意匠保護層3の前記上側UPに、前記高意匠保護層3と同調して設けられた高意匠樹脂層4と、を備える。化粧板100は、化粧紙10と、前記化粧紙10に含浸して硬化した含浸樹脂5と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反層と、
前記原反層の上側に設けられた絵柄印刷層と、
前記絵柄印刷層の前記上側に部分的に設けられた高意匠保護層と、
前記高意匠保護層の前記上側に、前記高意匠保護層と同調して設けられた高意匠樹脂層と、
を備える、
化粧紙。
【請求項2】
前記高意匠保護層の塗工面積は、前記高意匠樹脂層の塗工面積に対して0.5倍以上1.5倍以下である、
請求項1に記載の化粧紙。
【請求項3】
前記高意匠保護層は、熱硬化型樹脂を含む、
請求項1に記載の化粧紙。
【請求項4】
前記高意匠保護層は、カゼイン樹脂またはウレタン樹脂を含む、
請求項3に記載の化粧紙。
【請求項5】
前記高意匠樹脂層は、熱硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂を含む、
請求項1に記載の化粧紙。
【請求項6】
前記高意匠樹脂層は、前記絵柄印刷層の絵柄と同調して設けられている、
請求項1に記載の化粧紙。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の化粧紙と、
前記化粧紙に含浸して硬化した含浸樹脂と、
を備える、
化粧板。
【請求項8】
絵柄印刷層を形成する絵柄印刷工程と、
前記絵柄印刷層の上側に部分的に高意匠保護層を形成する保護層印刷工程と、
前記高意匠保護層と同調するように高意匠樹脂層を形成する表面樹脂層印刷工程と、
を備える、
化粧紙の製造方法。
【請求項9】
前記保護層印刷工程は、前記高意匠保護層の塗工面積が、前記高意匠樹脂層の塗工面積に対して0.5倍以上1.5倍以下となるように前記高意匠保護層を形成する、
請求項8に記載の化粧紙の製造方法。
【請求項10】
前記表面樹脂層印刷工程は、前記絵柄印刷層の絵柄と同調するように前記高意匠樹脂層を形成する、
請求項8に記載の化粧紙の製造方法。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の化粧紙の製造方法と、
前記化粧紙に含浸樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、
前記含浸樹脂を硬化させるプレス工程と、
を備える、
化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧紙にメラミン樹脂等の熱硬化型樹脂を含浸させ、含浸した熱硬化型樹脂を硬化させた化粧板がある。このような化粧板は、表面硬度が高く、耐汚染性、耐摩耗性、耐熱性および耐水性等に優れるため、机等の家具の表面材または店舗のカウンター等の什器の表面材として使用されることが多い。また、化粧紙および化粧板の表面に視覚的な立体感を付与するため、艶消し剤等により表面の樹脂層における光沢を調整した化粧紙および化粧板がある。
【0003】
光沢調整が施された化粧紙と、その化粧紙に樹脂を含浸させた化粧板として、特許文献1に記載のある樹脂含浸化粧板用化粧紙および樹脂含浸化粧板がある。特許文献1に記載のある樹脂含浸化粧板用化粧紙および樹脂含浸化粧板は、原紙と、原紙の上に絵柄模様を印刷して形成された絵柄模様層と、絵柄模様層の上に設けられた撥液性硬化膜とを備える。撥液性硬化膜は、絵柄模様層の全体を覆う第1撥液性硬化膜と、第1撥液性硬化膜の上の一部に設けられた第2撥液性硬化膜とからなり、第1撥液性硬化膜と第2撥液性硬化膜とが異なる艶性(光沢)を有し、特許文献1に記載のある樹脂含浸化粧板用化粧紙および樹脂含浸化粧板は、光沢調整が施された意匠を有する。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のある樹脂含浸化粧板用化粧紙および樹脂含浸化粧板は、撥液性硬化膜が原紙に染み込むことにより、光沢調整がされた所望の意匠を得られず、意匠性が劣る虞がある。
【0005】
また、特許文献2に記載のある化粧シート並びに該化粧シートを備える化粧板は、紙質基材の上に設けられた装飾層と、装飾層の上に設けられ、装飾層が有する絵柄模様の低光沢としたい領域と同調して形成された離型層と、離型層に隣接する領域に形成されて高光沢な表面層と、を備える。離型層と表面層とが光沢の差を有し、特許文献2に記載のある化粧シート並びに該化粧シートを備える化粧板は、光沢調整が施された意匠を有する。また、表面層は、化粧シートに含浸させて硬化させたメラミン樹脂によって形成されている。
【0006】
さらに、特許文献2に記載のある化粧シート並びに該化粧シートを備える化粧板は、表面層および離型層と、装飾層との間に被覆層を有する。しかしながら、被覆層によってメラミン樹脂の含浸が阻害され、含浸性が劣る虞がある。また、メラミン樹脂が十分に含浸されないために、耐溶剤性が劣る虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-176484号公報
【特許文献2】特開2019-64120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、意匠性および含浸性が優れた化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の化粧紙は、原反層と、前記原反層の上側に設けられた絵柄印刷層と、前記絵柄印刷層の前記上側に部分的に設けられた高意匠保護層と、前記高意匠保護層の前記上側に、前記高意匠保護層と同調して設けられた高意匠樹脂層と、を備える。
【0010】
上記化粧紙では、前記高意匠保護層の塗工面積は、前記高意匠樹脂層の塗工面積に対して0.5倍以上1.5倍以下であってもよい。
【0011】
上記化粧紙では、前記高意匠保護層は、熱硬化型樹脂を含んでいてもよい。
【0012】
上記化粧紙では、前記高意匠保護層は、カゼイン樹脂またはウレタン樹脂を含んでいてもよい。
【0013】
上記化粧紙では、前記高意匠樹脂層は、熱硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂を含んでいてもよい。
【0014】
上記化粧紙では、前記高意匠樹脂層は、前記絵柄印刷層の絵柄と同調して設けられていてもよい。
【0015】
本発明の化粧板は、上記に記載のいずれかの化粧紙と、前記化粧紙に含浸して硬化した含浸樹脂と、を備える。
【0016】
本発明の化粧紙の製造方法は、絵柄印刷層を形成する絵柄印刷工程と、前記絵柄印刷層の上側に部分的に高意匠保護層を形成する保護層印刷工程と、前記高意匠保護層と同調するように高意匠樹脂層を形成する表面樹脂層印刷工程と、を備える。
【0017】
上記化粧紙の製造方法では、前記保護層印刷工程は、前記高意匠保護層の塗工面積が、前記高意匠樹脂層の塗工面積に対して0.5倍以上1.5倍以下となるように前記高意匠保護層を形成してもよい。
【0018】
上記化粧紙の製造方法では、前記表面樹脂層印刷工程は、前記絵柄印刷層の絵柄と同調するように前記高意匠樹脂層を形成してもよい。
【0019】
本発明の化粧板の製造方法は、上記に記載のいずれかの化粧紙の製造方法と、前記化粧紙に含浸樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、前記含浸樹脂を硬化させるプレス工程と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法によれば、意匠性および含浸性が優れた化粧紙および化粧板並びに化粧紙および化粧板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る化粧紙の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る化粧板の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】同化粧紙における高意匠樹脂層の塗工面積に対して高意匠保護層の塗工面積が大きい例を示す断面図である。
【
図4】同化粧紙における高意匠樹脂層の塗工面積に対して高意匠保護層の塗工面積が小さい例を示す断面図である。
【
図5】同化粧板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る化粧紙10の構成を模式的に示す断面図である。
図2は、化粧紙10に含浸樹脂5を含浸させた化粧板100の構成を模式的に示す断面図である。
【0024】
本実施形態では、
図1および
図2に示すように、化粧紙10および化粧板100の厚さ方向を「上下方向V」、化粧紙10の原反層1が設けられる側を上下方向Vにおける「下側LO」、下側LOと反対側を上下方向Vにおける「上側UP」と定義する。
【0025】
化粧板100は、化粧紙10と、含浸樹脂5と、を備える。化粧板100は、化粧紙10に含浸樹脂5を含浸させ、含浸させた含浸樹脂5を硬化させて形成されている。化粧紙10に含浸樹脂5を含浸させることで、含浸樹脂5が化粧紙10の内部へ浸透し、また、
図2に示すように、含浸樹脂5が化粧紙10の表面を覆って硬化する。含浸樹脂5を含浸させて硬化させた化粧板100は、高い表面硬度、耐溶剤性、耐汚染性、耐摩耗性、耐熱性および耐水性等の優れた特性を有する。
【0026】
含浸樹脂5は、樹脂含浸化粧板に用いられる公知の熱硬化型樹脂である。含浸樹脂5として、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂または尿素系樹脂等を採用できる。含浸樹脂5は、水中に溶解または分散した水系含浸液として化粧紙10に含浸される。含浸樹脂5として、高強度で、耐溶剤性、耐汚染性、耐摩耗性、耐熱性および耐水性に優れたメラミン樹脂を採用するのが望ましい。
【0027】
化粧紙10は、原反層1と、絵柄印刷層2と、高意匠保護層3と、高意匠樹脂層4と、を備える。
原反層1は、化粧紙10の下側LOに設けられた層である。原反層1は、含浸樹脂5の含浸が可能な公知の繊維質シートである。原反層1としては、例えば、チタン紙、薄葉紙、上質紙、未晒クラフト紙または晒クラフト紙等を採用できる。原反層1として、印刷適性および樹脂含浸適性に優れたチタン紙を採用するのが望ましい。原反層1の厚さには制約はなく、一般的に、坪量20g/m2以上200g/m2以下のものが使用される。
【0028】
絵柄印刷層2は、原反層1の上側UPに設けられた層であり、例えば、木目、石目または砂目等の印刷を施すことで形成される。絵柄印刷層2の印刷方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷またはインクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用できる。また、絵柄印刷層2には、採用する印刷方法に適した公知の印刷インキを採用できるが、水性インキを採用するのが望ましい。水性インキは、油性インキと比較して含浸樹脂5の水溶液と馴染みやすく、化粧紙10に含浸樹脂5を含浸させる際、迅速、かつ、均一に含浸でき、さらに、含浸樹脂5と一体化することで優れた強度を有することができる。
【0029】
また、絵柄印刷層2に採用する水性インキとして、バインダ樹脂がカゼインまたはエマルジョン樹脂を主成分とするものを採用するのが望ましい。カゼインまたはエマルジョン樹脂を主成分とするバインダ樹脂は、インキの印刷後に乾燥工程を経ることによって難水溶化する性質を有しており、含浸樹脂5を含浸させる工程において、含浸樹脂5の水溶液に再溶解しにくく、絵柄印刷層2が有する絵柄模様を損ないにくく、かつ、溶解した絵柄印刷層2に含浸樹脂5が汚染されるのを抑制できる。
【0030】
バインダ樹脂に含まれるエマルジョン樹脂としては、例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、スチレン系、ウレタン系等を採用できる。また、バインダ樹脂としては、カゼインまたはエマルジョン樹脂の他に、インキの安定性の向上を目的として、例えば、ポリビニルアルコールまたはポリアクリルアミド等の水溶性樹脂、多糖類、セルロース誘導体等の水溶性高分子等を併用したものを採用してもよい。
【0031】
高意匠保護層3は、絵柄印刷層2の上側UPに設けられた層である。高意匠保護層3は、例えば、
図1に示すように、絵柄印刷層2の上側UPに部分的に設けられている。高意匠保護層3には、絵柄印刷層2の絵柄を透視できる程度に透明または半透明な材質を採用するのが望ましい。高意匠保護層3の材質は限定されないが、熱硬化型樹脂を採用するのが望ましい。高意匠保護層3に使用する樹脂として、例えば、カゼイン樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。
【0032】
高意匠保護層3を形成する方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷またはインクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用できる。また、高意匠保護層3は、公知のコーティング装置を用いて形成されてもよい。
【0033】
高意匠樹脂層4は、高意匠保護層3の上側UPに設けられた層である。なお、高意匠樹脂層4を形成する樹脂の全てが高意匠保護層3の上側UPに配置されていなくてもよく、高意匠樹脂層4は、高意匠樹脂層4を形成する樹脂の少なくとも一部が高意匠保護層3の上側UPに設けられていればよい。その場合、高意匠樹脂層4の一部は絵柄印刷層2の上側UPに配置される。高意匠樹脂層4の一部が絵柄印刷層2の上側UPに配置される例については後述する。
【0034】
高意匠樹脂層4には、高意匠保護層3を通して絵柄印刷層2の絵柄を透視できる程度に透明または半透明な材質を採用するのが望ましい。高意匠樹脂層4として、熱硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂またはそれらの混合物等を採用できる。高意匠樹脂層4として、例えば、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アミノアルキド系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化型樹脂や、(メタ)アクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を採用できる。
【0035】
高意匠樹脂層4を形成する方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷またはインクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用できる。また、高意匠樹脂層4は、公知のコーティング装置を用いて形成されてもよい。
【0036】
また、高意匠樹脂層4は、例えば、
図1に示すように、高意匠保護層3と同調して設けられている。高意匠樹脂層4は、絵柄印刷層2の絵柄と同調して設けられるのが望ましい。その場合、高意匠保護層3および高意匠樹脂層4が、絵柄印刷層2の絵柄と同調して設けられる。
【0037】
高意匠保護層3の塗工面積は、高意匠樹脂層4の塗工面積に対して0.5倍以上1.5倍以下であるのが望ましい。ここで、塗工面積とは、化粧紙10において、上側UPから見た平面視における面積を示す。
【0038】
例えば、
図1に示す断面図において、高意匠保護層3の塗工面積は、高意匠樹脂層4の塗工面積に対して1.0倍である。そのため、
図1に示す化粧紙10を上側UPからの平面視で見たとき、高意匠保護層3は、高意匠樹脂層4と重なっているため見えない。
【0039】
図3は、化粧紙10における高意匠樹脂層4の塗工面積に対して高意匠保護層3の塗工面積が大きい例を示す断面図である。
図3において、高意匠保護層3の塗工面積は、高意匠樹脂層4の塗工面積に対して1.5倍程度である。
【0040】
図4は、化粧紙10における高意匠樹脂層4の塗工面積に対して高意匠保護層3の塗工面積が小さい例を示す断面図である。
図4において、高意匠保護層3の塗工面積は、高意匠樹脂層4の塗工面積に対して0.5倍程度である。
【0041】
高意匠樹脂層4は、高意匠保護層3の上側UPに設けられているため、原反層1に染み込みにくい。すなわち、高意匠保護層3によって、原反層1への高意匠樹脂層4の染み込みが抑制されている。そのため、高意匠保護層3の上側UPに形成される高意匠樹脂層4の面積が染み込みにより所望の面積より小さくなることを抑制し、意匠性が低下するのを抑制できる。
【0042】
高意匠樹脂層4の塗工面積に対して高意匠保護層3の塗工面積が小さい場合(例えば、
図4)であっても、高意匠樹脂層4の少なくとも一部は、高意匠保護層3の上側UPに設けられている。そのため、高意匠保護層3は、高意匠樹脂層4が原反層1に染み込むのを抑制することができる。高意匠樹脂層4の塗工面積に対して高意匠保護層3の塗工面積が小さい場合、
図4に示すように、高意匠樹脂層4の一部は絵柄印刷層2の上側UPに配置されている。
【0043】
また、高意匠保護層3は、例えば、絵柄印刷層2の絵柄と同調し、絵柄印刷層2の上側UPに部分的に設けられているため、化粧紙10に含浸樹脂5が十分に含浸するのを阻害しない。そのため、化粧紙10に十分に含浸樹脂5を含浸させることができる。また、化粧紙10に含浸樹脂5を含浸させて形成した化粧板100は、十分に含浸樹脂5が含浸しているため、優れた耐溶剤性を有する。
【0044】
高意匠保護層3を絵柄印刷層2の上側UPに部分的に設け、高意匠樹脂層4を高意匠保護層3と同調して設けることで、化粧紙10は、優れた意匠性と含浸性とを両立できる。また、化粧紙10に含浸樹脂5を含浸させて形成した化粧板100は、優れた意匠性と耐溶剤性とを両立できる。
【0045】
高意匠保護層3または高意匠樹脂層4に光沢調整を施し、化粧紙10および化粧板100にグロス表現またはマット表現を付与してもよい。高意匠保護層3または高意匠樹脂層4に光沢調整を施す方法として、高意匠保護層3または高意匠樹脂層4に艶消し剤を添加する方法がある。
【0046】
例えば、高意匠樹脂層4に艶消し剤を添加し、高意匠保護層3に艶消し剤を添加しない場合、高意匠樹脂層4の光沢は、高意匠保護層3の光沢よりも低くなる。高意匠保護層3と高意匠樹脂層4との光沢に差を付与できる程度に、高意匠保護層3と高意匠樹脂層4とに異なる添加量の艶消し剤を添加してもよい。高意匠保護層3と高意匠樹脂層4との光沢の差によって、人間の目の錯覚を利用して視覚的に立体感を感じさせることができる。
【0047】
例えば、絵柄印刷層2の絵柄が木目の場合、絵柄印刷層2の絵柄と同調して高意匠保護層3および高意匠樹脂層4を設け、高意匠保護層3および高意匠樹脂層4を木目の導管部分の上側UPに設ける。その結果、高意匠保護層3および高意匠樹脂層4の上下方向Vにおける厚さによって、木目の導管部分に触感による立体感を付与することができる。
【0048】
また、絵柄と同調して配置された高意匠樹脂層4に艶消し剤を添加して低光沢とすることで、化粧紙10の上側UPの面において、高意匠樹脂層4が配置されている部分と、配置されていない部分とに異なる光沢(光沢差)を付与することができる。その結果、高意匠樹脂層4が配置された木目の導管部分は、高意匠樹脂層4が配置されていない部分と比較して光沢が低くなり、人間の目の錯覚を利用して、視覚的に立体感を感じさせることができる。
【0049】
高意匠保護層3または高意匠樹脂層4に添加する艶消し剤としては、例えば、シリカ、アルミナ(α-アルミナ等)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリナイト、アルミナシリケート等の無機物、ポリカーボネート、ナイロン、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂等の有機物からなる微粒子などを採用できる。
【0050】
このような艶消し剤の平均粒子径は、1~30μm程度のものが好ましく用いられ、艶消し剤の添加量は、所望の光沢(艶性)に応じて適宜選択できる。
【0051】
次に、化粧紙10および化粧板100の製造方法について説明する。
図5は、化粧紙10および化粧板100を化粧板製造システムにより製造する工程の一例を示すフローチャートである。ここで、化粧板製造システムとは、化粧紙10および化粧板100の製造を実行するシステムである。
【0052】
まず、化粧板製造システムは、ステップS1(絵柄印刷工程)を実施する。ステップS1において、原反層1の上側UPに絵柄を印刷して、絵柄印刷層2を形成する。
【0053】
次に、化粧板製造システムは、ステップS2(保護層印刷工程)を実施する。ステップS2において、絵柄印刷層2の上側UPに高意匠保護層3を形成する。このとき、絵柄印刷層2の上側UPに部分的に高意匠保護層3を形成する。
【0054】
次に、化粧板製造システムは、ステップS3(表面樹脂層印刷工程)を実施する。ステップS3において、高意匠保護層3の上側UPに高意匠樹脂層4を形成して、化粧紙10を得る。このとき、高意匠樹脂層4は、高意匠保護層3と同調して設けられる。そのため、高意匠保護層3によって原反層1への高意匠樹脂層4の染み込みが抑制される。
【0055】
例えば、高意匠樹脂層4が原反層1に染み込むと、高意匠樹脂層4が有する光沢(高光沢または低光沢)によるグロスマット表現が弱くなり、意匠性が低下する。また、高意匠樹脂層4の染み込み具合がバラつくことにより、生産安定性が低下する。
【0056】
化粧紙10は、高意匠保護層3が原反層1への高意匠樹脂層4の染み込みを抑制し、意匠性の低下および生産安定性の低下を抑制できるため、意匠性および生産安定性が優れている。
【0057】
ステップS2において、高意匠保護層3の塗工面積が、高意匠樹脂層4の塗工面積に対して0.5倍以上1.5倍以下となるように高意匠保護層3を形成することで、原反層1への高意匠樹脂層4の染み込みをより抑制することができる。
【0058】
次に、化粧板製造システムは、ステップS4(樹脂含浸工程)を実施する。ステップS4において、ステップS3で得た化粧紙10に、含浸樹脂5を含浸させる。このとき、化粧紙10の上側UPから含浸樹脂5を含浸させてもよいし、下側LOから含浸させてもよい。また、上側UPまたは下側LOから複数回に分けて含浸させてもよいし、上側UPおよび下側LOから同時に含浸させてもよい。
【0059】
このとき、ステップS2で形成された高意匠保護層3は、絵柄印刷層2の上側UPに部分的に設けられているため、化粧紙10に含浸樹脂5が含浸するのを阻害しない。そのため、化粧紙10に十分に含浸樹脂5を含浸させることができ、化粧紙10は、優れた含浸性を有する。
【0060】
次に、化粧板製造システムは、ステップS5(プレス工程)を実施する。ステップS5において、ステップS4で含浸樹脂5を含浸させた化粧紙10を上側UPおよび下側LOから金属板等のプレスプレートで挟み、化粧紙10を上側UPおよび下側LOから加圧および加熱する。加圧および加熱することで含浸樹脂5を形成する熱硬化型樹脂が硬化し、化粧板100が形成される。化粧紙10を加熱および加圧する方法として、金属板を当接して平圧プレスする方法や、円圧式の連続ラミネート方式等を採用することができる。
【0061】
ステップS5で得られた化粧板100は、高意匠保護層3が原反層1への高意匠樹脂層4の染み込みを抑制しているため、意匠性が優れている。また、化粧板100を形成する化粧紙10が優れた含浸性を有し、化粧紙10に含浸樹脂5(例えば、メラミン樹脂)が十分に含浸しているため、優れた耐溶剤性を有する。
【0062】
本実施形態の化粧紙10および化粧板100並びに化粧紙10および化粧板100の製造方法によれば、化粧紙10および化粧板100は、原反層1と、原反層1の上側UPに設けられた絵柄印刷層2と、絵柄印刷層2の上側UPに部分的に設けられた高意匠保護層3と、高意匠保護層3の上側UPに、高意匠保護層3と同調して設けられた高意匠樹脂層4とを備える。
【0063】
その結果、化粧紙10および化粧板100は、高意匠保護層3が原反層1への高意匠樹脂層4の染み込みを抑制することで優れた意匠性を有し、また、高意匠保護層3が、含浸樹脂5が化粧紙10へ含浸するのを阻害しないため、優れた含浸性を有する。そのため、化粧板100は、含浸樹脂5が十分に含浸しており、優れた耐溶剤性を有する。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0065】
(変形例1)
上記実施形態において、化粧板100は、化粧紙10と含浸樹脂5とを備えるが、化粧板の態様はこれに限定されない。化粧板は、化粧紙10の下側LOに、コア紙または基材を備えてもよい。
【0066】
化粧紙10の下側LOに積層するコア紙として、例えば、チタン紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、ガラス繊維不織布等を採用できる。また、熱硬化型樹脂を含浸させたコア紙を化粧紙10の下側LOに積層して加圧および加熱してもよい。コア紙に含浸させる熱硬化型樹脂として、例えば、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂等が採用できる。
【0067】
また、化粧紙10の下側LOに積層する基材として、パーチクルボードまたは中密度繊維板(MDF)等の木質基材、アルミニウムまたはステンレス等の金属系の板状の部材、ポリエチレン等の樹脂からなる芯材の両側にアルミニウム等の金属を貼り付けた複合板等を採用できる。化粧紙10の下側LOにコア紙または基材を積層する場合、接着剤を介して積層してもよい。化粧紙10の下側LOにコア紙または基材を積層して化粧板を形成することで、剛性の向上や厚さの調整等の任意の機能を化粧板に付与することができる。
【0068】
以下実施例により、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
原反層1として、坪量80g/m2のチタン紙を準備した。原反層1の上側UPに、絵柄を有する絵柄印刷層2を形成した。また、絵柄印刷層2の上側UPに絵柄印刷層2の絵柄と同調した高意匠保護層3を形成した。
【0070】
高意匠保護層3の上側UPに、絵柄印刷層2の絵柄と同調した高意匠樹脂層4を形成し、実施例1の化粧紙10を得た。
このとき、高意匠保護層3の塗工面積は、高意匠樹脂層4の塗工面積に対して1.0倍である。また、絵柄印刷層2の絵柄には、高意匠樹脂層4の塗工面積が絵柄印刷層2の塗工面積に対して50%となる絵柄を用いた。すなわち、実施例1において、高意匠保護層3の塗工面積は、絵柄印刷層2の塗工面積に対して50%の面積である。
【0071】
(実施例2)
高意匠保護層3の塗工面積を、高意匠樹脂層4の塗工面積に対して1.5倍とした以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の化粧紙10を得た。
【0072】
(実施例3)
高意匠保護層3の塗工面積を、高意匠樹脂層4の塗工面積に対して0.5倍とした以外は実施例1と同様の方法により、実施例3の化粧紙10を得た。
【0073】
(比較例1)
高意匠保護層の塗工面積を、高意匠樹脂層の塗工面積に対して2.0倍とした以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の化粧紙を得た。高意匠樹脂層の塗工面積が絵柄印刷層の塗工面積に対して50%であるため、比較例1において、高意匠保護層は絵柄印刷層の上側の全面に設けられている。
【0074】
(比較例2)
高意匠保護層の塗工面積を、高意匠樹脂層の塗工面積に対して0.2倍とした以外は実施例1と同様の方法により、比較例2の化粧紙を得た。高意匠保護層の塗工面積が、高意匠樹脂層の塗工面積に対して非常に小さいため、比較例2の高意匠樹脂層は、高意匠保護層と同調しているとは言い難い。
【0075】
(試験1)
実施例1-3および比較例1-2の化粧紙に意匠性評価試験を実施した。意匠性評価試験では、10人の試験員で化粧紙の意匠性についての官能試験を実施し、化粧紙の意匠の見た目の程度について評価した。
評価基準は3段階とし、×以外を合格とした。
〇(Good):意匠の見た目が良いと評価した人が7人以上である。
△(Fair):意匠の見た目が良いと評価した人が5人以上6人以下である。
×(Poor):意匠の見た目が良いと評価した人が4人以下である。
【0076】
(試験2)
実施例1-3および比較例1-2の化粧紙に含浸性評価試験を実施した。含浸性評価試験では、5cm角にカットした化粧紙において、高意匠樹脂層が積層された側を下にして液状のメラミン樹脂に浮かべ、原反層が積層された側の面の全体にメラミン樹脂が染み込むのにかかった時間を評価した。
評価基準は3段階とし、×以外を合格とした。
〇(Good):20秒以下。
△(Fair):21秒以上30秒以下。
×(Poor):31秒以上。
【0077】
(試験3)
実施例1-3および比較例1-2の化粧紙に耐溶剤性(表面物性)評価試験を実施した。耐溶剤性評価試験では、化粧紙に含浸樹脂としてメラミン樹脂を含浸させて、高圧プレス機で加圧および加熱して化粧板を形成した。形成した化粧板の高意匠樹脂層が設けられた側(上側)の面に対して、メチルエチルケトン(MEK)を浸したコットンを10回往復させ、絵柄印刷層の絵柄の落ち具合を評価した。
評価基準は3段階とし、×以外を合格とした。
〇(Good):絵柄落ちが無い。
△(Fair):コットンへの色移りはあるが化粧板の絵柄落ちは無い。
×(Poor):化粧板の絵柄落ちが目立つ。
【0078】
(試験結果)
試験1-3の結果を表1に示す。表1には、実施例1-3および比較例1-2の化粧紙における試験1-3の結果を総合的に評価した総合評価結果も示す。総合評価の評価基準は、〇(Good)、△(Fair)、×(Poor)の3段階とし、×以外を合格とした。
【0079】
絵柄印刷層2の上側UPに部分的に設けられた高意匠保護層3と、高意匠保護層3と同調して設けられた高意匠樹脂層4とを備える実施例1-3は、全ての試験において良好な結果を示した。特に、高意匠保護層3の塗工面積が、高意匠樹脂層4の塗工面積に対して0.5倍以上1.5倍以下である実施例1-2は、試験1においてより良好な結果を示した。
【0080】
高意匠保護層が絵柄印刷層の上側の全面に設けられた比較例1は、試験2-3において不合格であった。なお、試験1において、比較例1は、メラミン樹脂が化粧紙の表面に留まって白化して見えたため、実施例1-2よりも劣った結果となった。
【0081】
高意匠保護層の塗工面積が高意匠樹脂層の塗工面積に対して非常に小さく、高意匠樹脂層が高意匠保護層と同調しているとは言い難い比較例2は、試験1において不合格であった。
【0082】
【符号の説明】
【0083】
100 化粧板
10 化粧紙
1 原反層
2 絵柄印刷層
3 高意匠保護層
4 高意匠樹脂層
5 含浸樹脂
V 上下方向
UP 上側
LO 下側
S1 絵柄印刷工程
S2 保護層印刷工程
S3 表面樹脂層印刷工程
S4 樹脂含浸工程
S5 プレス工程