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  • 特開-非水電解質二次電池用電極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160479
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20241107BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241107BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241107BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241107BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20241107BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20241107BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/505
C08L27/12
C08L27/16
C08K3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075516
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】相磯 侑花
(72)【発明者】
【氏名】在原 一樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 学
【テーマコード(参考)】
4J002
5H050
【Fターム(参考)】
4J002BD14X
4J002BD15W
4J002BD17W
4J002DE046
4J002GQ02
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA24
5H050HA02
5H050HA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非水電解質二次電池において、電池抵抗を低減させうる手段を提供する。
【解決手段】電極活物質およびバインダを含有する電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極において、所定の構造単位を有し、等価質量(EW)が700以上900以下であるフッ素系高分子電解質をバインダとして含ませる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質およびバインダを含有する電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極であって、
前記バインダは、下記化学式1で表される構造単位を有するフッ素系高分子電解質を含み、
前記フッ素系高分子電解質の等価質量(EW)は、700以上900以下である、非水電解質二次電池用電極;
【化1】

化学式1において、
、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、
aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数であり、
bは、0以上8以下の整数であり、
cは、0または1であり、
d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数であり、0<d+e+fを満たし、
およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、
は、COOZ、SOZ、POまたはPOHZ(Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であり、この際、前記フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である)である。
【請求項2】
前記バインダは、非イオン性バインダをさらに含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項3】
前記非イオン性バインダは、ポリフッ化ビニリデンを含む、請求項2に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項4】
前記フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部は、リチウムである、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項5】
前記フッ素系高分子電解質は、下記化学式2で表される構造単位を有する、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極;
【化2】

化学式2において、
nは、1以上の数である。
【請求項6】
非水電解質二次電池用正極であり、前記電極活物質が、下記一般式(1):
LiNiMnCo (1)
式中、a、b、c、d、xは、0.98≦a≦1.2、0.8≦b≦0.9、0<c≦0.2、0<d≦0.2、0≦x≦0.2、b+c+d+x=1を満たし、MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる少なくとも1種の元素である、
で表される組成を有する複合酸化物である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギー問題の解決へ向けて、種々の電気自動車の普及が期待されている。これら電気自動車の普及の鍵を握るモータ駆動用電源などの車載電源として、二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力が期待できるリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池に注目が集まっている。
【0003】
ここで、特許文献1には、正極活物質層に含まれるバインダとしてフッ素系高分子電解質を用いることにより、電池の耐久性等を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-33286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討を行ったところ、特許文献1に記載の技術を用いた非水電解質二次電池は、電池抵抗を充分に低減できない場合があることが判明した。
【0006】
そこで本発明は、非水電解質二次電池において、電池抵抗を低減させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その過程で、特定の構造単位を有するフッ素系高分子電解質を含有させるとともに、当該フッ素系高分子電解質の等価質量(EW)を所定範囲内に制御することにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一形態によれば、電極活物質およびバインダを含有する電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極が提供される。そして、当該電極に含有される前記バインダは、下記化学式1で表される構造単位を有するフッ素系高分子電解質を含み、前記フッ素系高分子電解質の等価質量(EW)は、700以上900以下である点に特徴がある。
【0009】
【化1】
【0010】
化学式1において、
、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、
aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数であり、
bは、0以上8以下の整数であり、
cは、0または1であり、
d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数であり、0<d+e+fを満たし、
およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、
は、COOZ、SOZ、POまたはPOHZ(Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であり、この際、前記フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である)である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非水電解質二次電池において、電池抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である、積層型(扁平型)の非双極型(内部並列接続タイプ)二次電池を模式的に表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一形態は、電極活物質およびバインダを含有する電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極であって、前記バインダは、下記化学式1で表される構造単位を有するフッ素系高分子電解質を含み、前記フッ素系高分子電解質の等価質量(EW)は、700以上900以下である、非水電解質二次電池用電極である。
【0014】
【化2】
【0015】
化学式1において、
、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、
aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数であり、
bは、0以上8以下の整数であり、
cは、0または1であり、
d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数であり、0<d+e+fを満たし、
およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、
は、COOZ、SOZ、POまたはPOHZ(Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であり、この際、前記フッ素系高分子電解質中のZの少なくとも一部は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である)である。本形態に係る非水電解質二次電池用電極によれば、非水電解質二次電池において、電池抵抗を低減させることができる。
【0016】
以下、図面を参照しながら、上述した本形態の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)、相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である扁平型(積層型)の非双極型(内部並列接続タイプ)二次電池(以下、単に「積層型二次電池」とも称する)を模式的に表した断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の積層型二次電池10aは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、ラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極集電体11’の両面に正極活物質層13が配置された正極と、電解液を含有するセパレータからなる電解質層17と、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された負極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、正極、電解質層および負極がこの順に積層されている。
【0019】
これにより、正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型二次電池10aは、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層の正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層の負極集電体が位置するようにし、該最外層の負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されるようにしてもよい。
【0020】
正極集電体11’および負極集電体12には、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートフィルム29の端部に挟まれるようにしてラミネートフィルム29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27は、それぞれ必要に応じて正極端子リードおよび負極端子リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11’および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0021】
以下、本形態に係る非水電解質二次電池用電極の主要な構成部材について説明する。本形態に係る非水電解質二次電池用電極は、電極活物質と、バインダとを必須に含む電極活物質層を有する。
【0022】
[集電体]
集電体は、後述する正極活物質層や負極活物質層からの電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はない。集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0023】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
【0024】
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。さらに、後述する正極活物質層や負極活物質層がそれ自体で導電性を有し集電機能を発揮できるのであれば、これらの電極活物質層とは別の部材としての集電体を用いなくともよい。このような形態においては、後述する正極活物質層がそのまま正極を構成し、後述する負極活物質層がそのまま負極を構成することとなる。
【0025】
[電極活物質層]
電極活物質層は、任意に設けられる集電体の表面に形成されてなり、電極活物質およびバインダを必須に含む。電極活物質層は、導電助剤等の他の成分をさらに含んでもよい。本形態に係る電極が正極である場合には、電極活物質は正極活物質であり、本形態に係る電極が負極である場合には、電極活物質は負極活物質である。なお、本明細書において、特記しない限り、正極および負極に共通する事項については「電極」として表記するものとする。
【0026】
(正極活物質)
正極活物質は、充電時にリチウムイオン等のイオンを放出し、放電時にリチウムイオン等のイオンを吸蔵する機能を有する。本形態において、正極活物質の種類は特に制限されないが、より高い容量を有することから、R3mの空間群からなるものであることが好ましい。空間群R3mに帰属される正極活物質は所定の層状構造(層状岩塩型構造)を有する。したがって、このような正極活物質を用いることで、非水電解質二次電池の電池容量を向上させることができる。
【0027】
正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、Li(Ni-Mn-Co)O等の層状岩塩型活物質、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO等のオリビン型活物質、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の金属酸化物としては、例えば、LiTi12が挙げられる。これらのなかでも、リチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が好ましく用いられ、さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
【0028】
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
【0029】
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiNiMnCo(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.98≦a≦1.2、0.6≦b≦0.9、0<c≦0.4、0<d≦0.4、0≦x≦0.3、b+c+d+x=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。また、本形態に係る非水電解質二次電池用電極において、正極活物質は、上述した一般式(1)において、0.8≦b≦0.9、0<c≦0.2、0<d≦0.2、0≦x≦0.2を満たすNMC複合酸化物(ハイニッケルNMC複合酸化物)であることが特に好ましい。Niの原子比bが0.8以上であると容量と寿命特性とのバランスにより優れるため好ましい。また、Niの原子比bが0.9以下であると電極反応に伴うガスの発生が低減されうる。そのため、ガスの発生に起因するサイクル耐久性の低下が生じにくいため好ましい。また、ハイニッケルNMC複合酸化物は、高容量であることから電極活物質あたりのリチウムイオンの出し入れが多く、電極活物質表面により多くのリチウムイオンを輸送させることが必要であることから、本発明の効果がより顕著に得られうる。この際、一般式(1)において、cおよびdが、0.05≦c≦0.2、0.03≦d≦0.2であることが、容量と寿命特性とのバランスを向上させるという観点からより好ましい。
【0030】
正極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1~100μm、より好ましくは1~20μmである。本明細書において、粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法の粒度分布測定装置により計測されたメディアン径(D50)を採用するものとする。
【0031】
正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されないが、例えば、活物質層の全固形分100質量%に対して、60~99質量%の範囲内であることが好ましく、80~98質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0032】
(負極活物質)
負極活物質は、放電時にリチウムイオン等のイオンを放出し、充電時にリチウムイオン等のイオンを吸蔵する機能を有する。負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料(スズ、シリコン)、ケイ素含有合金系負極材料(例えば、Si60Sn10Ti30)、リチウム合金系負極材料(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム-マンガン合金等)などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、ケイ素含有合金系負極材料、炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム合金系負極材料が、負極活物質として好ましく用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0033】
負極活物質の平均粒子径(D50)は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1~100μm、より好ましくは1~20μmである。
【0034】
負極活物質層における負極活物質の含有量は、活物質層の全固形分100質量%に対して、例えば60質量%以上100質量%未満であり、好ましくは80質量%以上99.5%以下であり、より好ましくは95質量%を超えて99.0質量%以下であり、さらに好ましくは97質量%以上98.5質量%以下である。負極活物質の含有量が上記範囲であれば、電池容量と出力特性とを両立させることができる。
【0035】
(バインダ)
〈フッ素系高分子電解質〉
バインダは、電極活物質層に含まれる部材を互いに結着することにより、電極活物質層の構造を維持する機能を有する。本形態に係る電極では、電極活物質層のバインダとして特定の構造単位を有するフッ素系高分子電解質を含有させるとともに、当該フッ素系高分子電解質の等価質量(EW)を700以上900以下に制御する点に特徴がある。なお、本形態に係る電極が用いられる非水電解質二次電池においては、正極活物質層または負極活物質層の少なくとも1つが上記特徴を有していればよい。
【0036】
フッ素系高分子電解質は、下記化学式1で表される構造単位を有し、Zの少なくとも一部がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であるフッ素系高分子電解質からなるものである。ここで、「Zの少なくとも一部」は、フッ素系高分子電解質中のZの10モル%以上であること意味し、50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0037】
【化3】
【0038】
化学式1において、X、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であることがより好ましく、フッ素原子であることがさらに好ましい。aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1である。bは0以上8以下の整数である。cは0または1である。d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数である(ただし、0<d+e+fである)。RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、ハロゲン原子または炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、ハロゲン原子であることがより好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であることがさらに好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。Xは、COOZ、SOZ、POまたはPOHZであり、ここでZは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であり、アルカリ金属であることが好ましく、リチウムであることがより好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態においては、Zの少なくとも一部がリチウムである。このような形態であると、上記フッ素系高分子電解質が電極活物質の表面を覆うことで活物質表面にリチウムイオンを供給し、反応場を増加させて反応抵抗をより低減させることができる。前記アンモニウム基は、NH、NH、NH、NHYまたはNY(Y、Y、Y、Yは、アルキル基またはアリール基)である。
【0039】
本発明の好ましい実施形態においては、フッ素系高分子電解質は、下記化学式2で表される構造単位を有する化合物(リチウム化NafionまたはLi-Nafionとも称される、Nafionは登録商標)であることが特に好ましい。上記構造を有するフッ素系高分子電解質を用いることにより、電池抵抗をよりいっそう低減できる。
【0040】
【化4】
【0041】
化学式2において、nは、1以上の数である。
【0042】
本形態に係る電極においては、フッ素系高分子電解質(好ましくは上記構造を有する化合物(リチウム化Nafion))の等価質量(Equivalent Weight;EW)が700以上900以下であることを必須とする。EWは、プロトン伝導性を有する交換基の当量重量を表している。当量重量は、イオン交換基1当量あたりのフッ素系高分子電解質の乾燥重量であり、「g/eq」の単位で表される。EWが700未満であるまたは900を超えると、非水電解質二次電池における電池抵抗を充分に低減できないおそれがある。EWが700未満であると、イオン交換基の割合が高くなることで、フッ素系高分子電解質おける結着力が弱まり、電極活物質層中の電子伝導性が低下することによると考えられる。また、EWが900を超えると、フッ素系高分子電解質におけるイオン交換基の割合が低くなることで、隣接するイオン交換基の間のリチウムイオンの移動(リチウムイオンホッピング)が起こりにくくなり、リチウムイオン伝導性が低下することで電池抵抗が上昇すると考えられる。EWは、電池抵抗をよりいっそう低減する観点から、720以上880以下であることが好ましく、750以上850以下であることがより好ましく、790以上830以下であることがより好ましい。
【0043】
フッ素系高分子電解質は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されても構わない。フッ素系高分子電解質が2種以上含まれる場合において、EWの値としては、各フッ素系高分子電解質のEWを質量割合で重みづけした、加重平均値を採用するものとする。
【0044】
フッ素系高分子電解質(好ましくは上記構造を有する化合物(リチウム化Nafion))の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、好ましくは1×10~1×10であり、より好ましくは1×10~1×10である。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)の値としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の値を採用するものとする。
【0045】
フッ素系高分子電解質については、特許文献1(特開2012-33286号公報)や文献(Jin et al., RSC Advances, 2013, 3, 8889)の記載に基づいて作製することができる。なお、フッ素系高分子電解質のEWは、重合反応に供する全モノマーに対するイオン交換基を有するモノマーの割合や、イオン交換基を有するモノマーの分子量により制御できる。イオン交換基を有するモノマーの割合が大きいほど、また、イオン交換基を有するモノマーの分子量が小さいほど、EWは小さくなる。
【0046】
電極活物質層に含まれるフッ素系高分子電解質の含有量は、電極活物質層の全固形分100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上3質量%未満であり、より好ましくは0.8質量%以上2.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上2質量%以下である。フッ素系高分子電解質の含有量が上記範囲内であれば電池抵抗の低減と、エネルギー密度の向上とを両立させることができる。
【0047】
〈非イオン性バインダ〉
電極活物質層は、上記のフッ素系高分子電解質からなるバインダ以外に、電池抵抗をよりいっそう低減させる観点から、非イオン性バインダを含むことが好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態においては、バインダは、非イオン性バインダをさらに含む。非イオン性バインダとしては、特に制限されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)などが挙げられる。中でも、電池抵抗のさらなる低減を図る観点から、非イオン性バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含むことが好ましい。PVdFは結晶性が高いことから、これを添加することによりフッ素系高分子電解質の絡み合いが抑制されうる。また、PVdFのフッ素原子と、フッ素系高分子電解質の側鎖のフッ素原子とが反発しあうことで、フッ素系高分子電解質の側鎖がフレキシブルに動きやすくなる。これらによって、電極活物質層中のリチウムイオンの輸送性がよりいっそう向上すると考えられる。
【0048】
電極活物質層に含まれる非イオン性バインダ(好ましくはPVdF)の含有量は、電極活物質層の全固形分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上2質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.8質量%以上1.2質量以下である。非イオン性バインダ(好ましくはPVdF)の含有量が上記範囲内であれば電池抵抗のさらなる低減と、エネルギー密度の向上とを両立させることができる。
【0049】
(導電助剤)
電極活物質層は、導電助剤をさらに含むことが好ましい。導電助剤は、正極活物質層中で電子伝導パス(導電通路)を形成する機能を有する。このような電子伝導パスが正極活物質層中に形成されると、電池の内部抵抗が低減し、高レートでの出力特性が向上しうる。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等の粒子状炭素材料、およびカーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブおよび複層カーボンナノチューブ)、カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維、電界紡糸法炭素繊維、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の繊維状炭素材料が挙げられる。導電助剤は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
電極活物質層に含まれる導電助剤の含有量は、電極活物質層の全固形分100質量%に対して、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。かような上限値であると、導電助剤同士の凝集が抑制されることにより電子伝導パスが良好に形成されるため、出力特性をより向上することができる。また、非水電解質二次電池のエネルギー密度をより向上させることが可能となる。なお、導電助剤の含有量の下限値は特に制限されないが、0質量%を超え、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。かような下限値であると、電子伝導パスを形成するための十分な導電助剤が存在することから、出力特性をより向上することができる。
【0051】
本形態に係る非水電解質二次電池用電極において、電極活物質層の厚さは特に制限されず、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、電極活物質層の厚さは、通常1~1000μm程度、好ましくは20~800μmであり、より好ましくは30~500μmであり、さらに好ましくは40~200μmである。電極活物質層の厚さが大きいほど、十分な容量(エネルギー密度)を発揮するための電極活物質を保持することが可能となる。一方、電極活物質層の厚さが小さいほど、出力特性が向上しうる。
【0052】
本形態に係る非水電解質二次電池用電極は、非水電解質二次電池に適用されることにより、非水電解質二次電池の出力特性を向上することができる。よって、本発明の他の形態によれば、正極活物質層と、電解質層と、負極活物質層と、がこの順に積層されてなる発電要素を備え、前記正極活物質層または前記負極活物質層の少なくとも1つが、上述した本発明の一形態に係る非水電解質二次電池用電極である非水電解質二次電池が提供される。非水電解質二次電池の電極以外の構成要素について、以下に簡単に説明する。
【0053】
[電解質層]
電解質層は、セパレータに電解液(液体電解質)が含浸されてなる構成を有することが好ましい。
【0054】
(電解液)
電解液は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解液は、非水溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。
【0055】
非水溶媒は、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピオン酸メチル(MP)、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)、4-メチルジオキソラン(4MeDOL)、ジオキソラン(DOL)、2-メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびγ-ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。なかでも、非水溶媒は、急速充電特性および出力特性をより向上できるとの観点から、好ましくは鎖状カーボネートであり、より好ましくはジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)からなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはエチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)から選択される。
【0056】
リチウム塩としては、Li(FSON(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI)、Li(CSON、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。なかでも、リチウム塩は、電池出力および充放電サイクル特性の観点から、好ましくはLiPF、LiPO等のフッ化リン酸系のリチウム塩を含む。電解液中におけるリチウム塩の濃度は、0.1~3.0mol/Lであることが好ましく、0.8~2.2mol/Lであることがより好ましい。
【0057】
電解液は、上述した成分以外の添加剤をさらに含有してもよい。かような化合物の具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1-メチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、添加剤を電解液に使用する場合の使用量は、適宜調整することができる。
【0058】
(セパレータ)
電解質層を構成するセパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。セパレータの形態としては、例えば、上記電解液を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
【0059】
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0060】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装体から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0061】
[電池外装体]
電池外装体としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図1に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができ、所望の電解液層厚みへと調整容易であることから、外装体はアルミネートラミネートがより好ましい。
【0062】
本形態に係る非水電解質二次電池は、優れた出力特性を発揮することができる。したがって、本形態に係る非水電解質二次電池は、EV、HEVの駆動用電源として好適に使用される。
【0063】
なお、以下の実施形態も本発明の範囲に含まれる:請求項2の特徴を有する請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極;請求項3の特徴を有する請求項2に記載の非水電解質二次電池用電極;請求項4の特徴を有する請求項1~3のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電極;請求項5の特徴を有する請求項1~4のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電極;請求項6の特徴を有する請求項1~5のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電極。
【実施例0064】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が以下の実施例のみに限定されるわけではない。
【0065】
[実施例1]
<正極の作製>
正極活物質としてのNMC複合酸化物(Ecopro社製、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、NMC811、平均粒子径10.2μm)95質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)(デンカ株式会社製、デンカブラック(登録商標);平均粒子径(一次粒子径):0.023μm)3質量部とからなる粉体組成物を、遊星撹拌型混合混練装置「あわとり練太郎」(ARE-310、株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで1分間混合した。次いで、スラリー粘度調整溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の適量を上記粉体組成物に添加し、同装置を用いて2000rpmで2分間混合した。その後、バインダとしての下記化学式2においてn=4.4である構造単位を有するフッ素系高分子電解質(Sigma-Aldrich社製、EW:720、水に分散されたもの)2質量部(固形分量)をさらに添加し、同装置を用いて2000rpmで4分間混合して、正極スラリーを作製した。平滑盤上に設置したアルミニウム箔(厚さ20μm)の上に、正極活物質層の質量(目付量)が10mg/cmとなるように、上記で得られた正極スラリーを、ドクターブレードを用いて均一に塗布し、80℃のホットプレート上で1時間乾燥させた。次いで、得られた積層体を、ロールプレス機を用いてプレスした。その後、得られた積層体を真空乾燥機に入れ、真空条件下、130℃にて8時間乾燥させて、本実施例の正極を作製した。なお、得られた正極における正極活物質層の空孔率は25%であり、厚さは31μmであった。
【0066】
【化5】
【0067】
<リチウムイオン二次電池(コインセル)の作製>
上記で作製した正極と対極Liとを対向させ、この間にセパレータ(ポリプロピレン製、厚さ:20μm)を2枚配置した。次いで、正極、セパレータおよび対極(Li金属)の積層体をコインセル(CR2032、材質:ステンレス鋼(SUS316))の底部側に配置した。さらに、電極同士の絶縁性を保つためガスケットを装着し、電解液をシリンジにより注入し、スプリングおよびスペーサを積層し、コインセルの上部側を重ねあわせ、かしめることにより密閉して、本実施例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。なお、上記電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比3:7)にLiPF 1mol/Lを溶解させて得られた電解液を用いた。
【0068】
[実施例2]
バインダとしての上記化学式2においてn=5.1である構造単位を有するフッ素系高分子電解質(Sigma-Aldrich社製、EW:790、水に分散されたもの)2質量部(固形分量)としたこと以外は、上述した実施例1と同じ方法により、本実施例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0069】
[実施例3]
バインダとしての上記化学式2においてn=5.5である構造単位を有するフッ素系高分子電解質(Sigma-Aldrich社製、EW:830、水に分散されたもの)2質量部(固形分量)としたこと以外は、上述した実施例1と同じ方法により、本実施例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0070】
[比較例1]
バインダとしての上記化学式2においてn=7である構造単位を有するフッ素系高分子電解質(Sigma-Aldrich社製、EW:980、水に分散されたもの)2質量部(固形分量)としたこと以外は、上述した実施例1と同じ方法により、本比較例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0071】
[比較例2]
バインダとしての下記化学式3においてn=6.5である構造単位を有するフッ素系高分子電解質(Ion Power社製LiTHion、EW:1100、Mw:2.3×10、イソプロパノールに分散されたもの)2質量部(固形分量)としたこと以外は、上述した実施例1と同じ方法により、本比較例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0072】
【化6】
【0073】
[実施例4]
バインダとして、上記化学式2においてn=4.4である構造単位を有するフッ素系高分子電解質(EW:720)1質量部(固形分量)と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)(クレハKFポリマーW#9700、Mw:8.8×10、株式会社クレハ製)1質量部とを併用したこと以外は、上述した実施例1と同じ方法により、本実施例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0074】
[実施例5]
フッ素系高分子電解質(EW:720、上記化学式2においてn=4.4である)に代えて、フッ素系高分子電解質(EW:790、上記化学式2においてn=5.1である)を添加したこと以外は、上述した実施例4と同じ方法により、本実施例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0075】
[実施例6]
フッ素系高分子電解質(EW:720、上記化学式2においてn=4.4である)に代えて、フッ素系高分子電解質(EW:830、上記化学式2においてn=5.5である)を添加したこと以外は、上述した実施例4と同じ方法により、本実施例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0076】
[比較例3]
フッ素系高分子電解質(EW:720、上記化学式2においてn=4.4である)に代えて、フッ素系高分子電解質(EW:980、上記化学式2においてn=7である)を添加したこと以外は、を添加したこと以外は、上述した実施例4と同じ方法により、本比較例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0077】
[比較例4]
フッ素系高分子電解質(EW:720、上記化学式2においてn=4.4である)に代えて、フッ素系高分子電解質(Ion Power社製LiTHion、EW:1100、Mw:2.3×10、イソプロパノールに分散されたもの、上記化学式3においてn=6.5である)を添加したこと以外は、を添加したこと以外は、上述した実施例4と同じ方法により、本比較例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0078】
<充放電試験>
実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池(コインセル)について、以下の手法により、直流抵抗(DCR)を測定した。測定は、充放電試験装置(北斗電工株式会社製、HJ-SD8)を用いて、25℃に設定した定温恒温槽中で行った。恒温槽内に電池を設置し、セル温度が一定になった後、0.05C、4.3Vの定電流定電圧(CCCV)充電をカットオフ電流値0.01Cに設定して行った後、0.1Cの定電流放電を2.5Vまで行った(初回充放電)。次に、0.1C、3.675Vの定電流定電圧充電をカットオフ電流値0.01Cに設定して行った後、0.5C、1C、2Cにてそれぞれ30秒間ずつ定電流放電を行った。そして、放電開始から10秒後までの電圧低下量と電流値とから、オームの法則に従って直流抵抗(DCR)を算出した。結果を下記表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、本発明によれば、正極活物質層のバインダとして特定の構造およびEW(当量重量)を有するフッ素系高分子電解質を含有させることにより、電池抵抗を有意に低減できることが分かる。また、特定のフッ素系高分子電解質と非イオン性バインダとを併用することにより、特定のフッ素系高分子電解質を単独で使用する場合と比較して、電池抵抗をよりいっそう低減できることも分かる。
【符号の説明】
【0081】
10a 積層型二次電池、
11a 正極側の最外層集電体、
11b 負極側の最外層集電体、
11’ 正極集電体
12 負極集電体
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 発電要素、
25 正極集電板(正極タブ)、
27 負極集電板(負極タブ)、
29 ラミネートフィルム。
図1